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特開2023-132821凝集沈澱装置、水処理装置及び凝集沈澱方法
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  • 特開-凝集沈澱装置、水処理装置及び凝集沈澱方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132821
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】凝集沈澱装置、水処理装置及び凝集沈澱方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/08 20060101AFI20230914BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20230914BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20230914BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20230914BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20230914BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B01D21/08 D
B01D21/01 B ZAB
B01D21/01 D
B01D21/08 C
B01D21/24 D
B01D21/24 F
B01D21/24 S
C02F1/56 J
C02F1/52 J
B01D21/01 108
C02F11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038364
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山平 晋也
(72)【発明者】
【氏名】成田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】福水 圭一郎
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA12
4D015BA15
4D015BB12
4D015BB14
4D015CA17
4D015DA04
4D015DA06
4D015DA13
4D015DA16
4D015DC06
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA32
4D059AA06
4D059BF14
4D059CC05
4D059DA01
(57)【要約】
【課題】凝集沈澱装置において、排泥濃度を高めつつ、スラッジブランケットを効率的に形成する。
【解決手段】凝集沈澱装置5では、凝集剤とフロックとを含む被処理水が供給され、凝集剤によってフロックが粗大化されてスラッジブランケットが生成される。凝集沈澱装置5は、スラッジブランケットが形成されるスラッジブランケット部5Aと、スラッジブランケット部5Aの下部に位置する、被処理水の供給口52と、凝集沈澱装置5の下部に位置し、沈殿した濃縮汚泥を取り出す濃縮汚泥取出部61と、スラッジブランケット部5Aの上部に位置し、スラッジブランケットに含まれる汚泥を実質的に連続的に取り出し、供給口52に再循環させるための汚泥取出部64と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤とフロックとを含む被処理水が供給され、前記凝集剤によって前記フロックを粗大化させてスラッジブランケットを生成する凝集沈澱装置であって、
前記スラッジブランケットが形成されるスラッジブランケット部と、
前記スラッジブランケット部の下部に位置する、前記被処理水の供給口と、
前記凝集沈澱装置の下部に位置し、沈殿した濃縮汚泥を取り出す濃縮汚泥取出部と、
前記スラッジブランケット部の上部に位置し、前記スラッジブランケットに含まれる汚泥を実質的に連続的に取り出し、前記供給口に再循環させるための汚泥取出部と、
を有する、凝集沈澱装置。
【請求項2】
前記濃縮汚泥取出部を有し、前記スラッジブランケットで粗大化した凝集フロックの一部を収集して濃縮させる汚泥濃縮部と、
前記スラッジブランケット部と前記汚泥濃縮部とを仕切る内壁と、を有し、
前記汚泥取出部は前記内壁の頂部より下方に位置する、請求項1に記載の凝集沈澱装置。
【請求項3】
前記凝集沈澱装置の内部を下方に延び、先端に前記供給口を備えた、前記被処理水の供給管と、
前記供給管を回転させる回転駆動機構と、
前記供給管の側面に設けられ、前記フロックを粗大化させるための造粒翼と、
を有し、
前記汚泥取出部は前記造粒翼の上方に位置する、請求項2に記載の凝集沈澱装置。
【請求項4】
前記スラッジブランケット部には、前記フロックを粗大化させる粗大化ゾーンと、前記粗大化ゾーンの上方に位置し、前記被処理水から前記フロックを分離する分離ゾーンと、が形成され、前記汚泥取出部は前記分離ゾーンに位置する、請求項1から3のいずれか1項に記載の凝集沈澱装置。
【請求項5】
前記汚泥取出部は前記分離ゾーンの下部に位置する、請求項4に記載の凝集沈澱装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の凝集沈澱装置と、
前記凝集沈澱装置の前段に設けられ、無機凝集剤の供給部を備え、前記無機凝集剤を被処理水と反応させる反応槽と、
前記反応槽と前記凝集沈澱装置との間に設けられ、第1の有機高分子凝集剤の供給部を備え、前記第1の有機高分子凝集剤を被処理水と反応させて前記フロックを形成する凝集槽と、
前記汚泥取出部を前記反応槽または前記凝集槽と接続する汚泥循環ラインと、
を有する水処理装置。
【請求項7】
前記凝集槽と前記供給口との間に設けられ、前記被処理水に前記凝集剤として第2の有機高分子凝集剤を添加する第2の有機高分子凝集剤の供給部を有する、請求項6に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記濃縮汚泥取出部に接続され、前記汚泥循環ラインとの共用ラインを有する濃縮汚泥取出ラインと、
前記共用ラインに設けられた汚泥移送ポンプと、
前記汚泥循環ラインと前記濃縮汚泥取出ラインの切り替え手段と、
を有する、請求項6または7に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記被処理水はフッ素を含む、請求項6から8のいずれか1項に記載の水処理装置。
【請求項10】
凝集沈澱装置のスラッジブランケット部の下部に位置する供給口から、凝集剤とフロックとを含む被処理水を前記スラッジブランケット部に供給することと、
前記凝集剤によって前記フロックを粗大化させて、前記スラッジブランケット部にスラッジブランケットを生成することと、
前記凝集沈澱装置の下部に位置する濃縮汚泥取出部から、沈殿した濃縮汚泥を取り出すこと、
前記スラッジブランケット部の上部に位置する汚泥取出部から前記スラッジブランケットに含まれる汚泥を実質的に連続的に取り出し、前記供給口に再循環させることと、
を有する凝集沈澱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集沈澱装置とこれを備えた水処理装置、及び凝集沈澱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スラッジブランケットを生成するスラッジブランケット型凝集沈殿装置が、用水処理や排水処理などに広く利用されている。凝集沈殿装置には凝集剤とフロックとを含む被処理水が供給される。被処理水の供給口は凝集沈殿装置の下部に設けられており、被処理水は上昇流として凝集沈殿装置の内部を流れる。凝集沈殿装置の内部には、フロックが粗大化したスラッジブランケットが形成される。被処理水がこのスラッジブランケットを通過する際、被処理水中の懸濁物質や凝集フロックがスラッジブランケットに捕捉され、被処理水がろ過される。凝集沈殿装置の底部に沈殿した濃縮汚泥は定期的に排泥される。
【0003】
特許文献1には、汚泥の一部を排泥し残りを再循環させる凝集沈澱装置が開示されている。汚泥はフロックの核となり、フロックを効率的に生成させる。特許文献2には、凝集沈澱装置に供給された汚泥の一部をスラッジブランケットの下方で取り出し再循環させる凝集沈澱装置が開示されている。濃縮汚泥は凝集沈殿装置の底部から排泥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-119061号公報
【特許文献2】特開2015-181975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スラッジブランケットを安定して維持するには、汚泥を連続的に循環させることが好ましい。しかし、特許文献1に開示された凝集沈澱装置では、循環のために取り出される汚泥の一部を排泥するため、排泥濃度を高めることが困難である。排泥濃度が低いと、排泥の量が増え、排泥処理に要するコストが増加する可能性がある。すなわち、特許文献1に記載の技術では、安定したスラッジブランケットの形成と高い排泥濃度とを両立させることが困難である。特許文献2に開示された凝集沈澱装置は、濃縮汚泥の取出部と、汚泥の再循環のための取出部が別々に設けられているため、排泥濃度を高めることは容易である。しかし、スラッジブランケット中でフロック形成に使われるべき未反応の凝集剤を前段に返送してしまうため、スラッジブランケット内でのフロック形成を効率的に行うことができない。
【0006】
本発明は排泥濃度を高めつつ、スラッジブランケットを効率的に形成することができる凝集沈澱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の凝集沈澱装置では、凝集剤とフロックとを含む被処理水が供給され、凝集剤によってフロックが粗大化されてスラッジブランケットが生成される。凝集沈澱装置は、スラッジブランケットが形成されるスラッジブランケット部と、スラッジブランケット部の下部に位置する、被処理水の供給口と、凝集沈澱装置の下部に位置し、沈殿した濃縮汚泥を取り出す濃縮汚泥取出部と、スラッジブランケット部の上部に位置し、スラッジブランケットに含まれる汚泥を実質的に連続的に取り出し、供給口に再循環させるための汚泥取出部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排泥濃度を高めつつ、スラッジブランケットを効率的に形成することができる凝集沈澱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る水処理装置の概略構成図である。
図2図1に示す水処理装置の凝集沈澱装置の概略構成図である。
図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係る水処理装置の概略構成図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る凝集沈澱装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下の説明において、「上方」「下方」はあるゾーンまたは構造物よりも上方または下方にあることを意味し、「上部」「下部」はあるゾーンまたは構造物自体の上部部分または下部部分を意味し、特に、高さ方向における中央よりも上側の部分または下側の部分を意味する。
【0011】
図1は本発明の第1の実施形態に係る水処理装置1の概略構成を、図2図1に示す水処理装置1の凝集沈澱装置5の概略構成図を示している。水処理装置1は、第1の反応槽2と、第2の反応槽3と、凝集槽4と、凝集沈澱装置5と、計量槽7と、再生槽8と、を有している。第1の反応槽2と、第2の反応槽3と、凝集槽4と、凝集沈澱装置5は、被処理水の供給ラインL1上に設置されている。被処理水の流通方向に関して第1の反応槽2の下流に第2の反応槽3が、第2の反応槽3の下流に凝集槽4が、凝集槽4の下流に凝集沈澱装置5が配置されている。凝集沈澱装置5には、濃縮汚泥取出ラインL2と汚泥循環ラインL3が接続されている。濃縮汚泥取出ラインL2からは凝集沈澱装置5の底部に沈殿した濃縮汚泥が取り出される。汚泥循環ラインL3は第2の反応槽3に接続されている。計量槽7と再生槽8は汚泥循環ラインL3上に設置されている。汚泥の循環方向に関して計量槽7の下流に再生槽8が配置されている。被処理水の種類は限定されないが、本実施形態における被処理水は半導体工場などから排出されるフッ素含有排水である。
【0012】
第1の反応槽2は、カルシウム剤を添加するカルシウム剤の供給部21を備え、カルシウム剤を被処理水と反応させる。カルシウム剤と被処理水を攪拌するために、第1の反応槽2はモータ駆動の攪拌翼22を備えている。被処理水がフッ素を含む場合、カルシウム剤を用いることが好ましい。カルシウム剤としてはCa(OH)2(消石灰)やCaCl2が好ましく用いられる。
【0013】
第2の反応槽3は、無機凝集剤を添加する無機凝集剤の供給部31を備え、無機凝集剤を被処理水と反応させる。無機凝集剤と被処理水を攪拌するために、第2の反応槽3はモータ駆動の攪拌翼32を備えている。無機凝集剤としてはアルミニウム系の凝集剤(ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)等)、鉄系の凝集剤(ポリ鉄、塩化第二鉄等)が使用されるが、これらに限定されない。被処理水がフッ素を含む場合、無機凝集剤としてPACを用いることが好ましい。被処理水のpHを調整するためのpH調整剤がさらに添加されてもよい。
【0014】
凝集槽4は、被処理水に第1の有機高分子(ポリマー)凝集剤を添加する第1の有機高分子凝集剤の供給部41を備え、第1の有機高分子凝集剤を被処理水と反応させる。凝集槽4は第2の反応槽3と凝集沈澱装置5との間に位置している。第1の有機高分子凝集剤と被処理水を攪拌するために、凝集槽4はモータ駆動の攪拌翼42を備えている。第1の有機高分子凝集剤は、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両性のいずれでもよいが、カチオン性の有機高分子凝集剤が好ましい。
【0015】
水処理装置1は、被処理水に第2の有機高分子(ポリマー)凝集剤を添加する第2の有機高分子凝集剤の供給部9(供給ラインL4)を有している。第2の有機高分子凝集剤は、カチオン性、アニオン性、ノニオン性、両性のいずれでもよいが、アニオン性の有機高分子凝集剤が好ましい。すなわち、カチオン性の有機高分子凝集剤を先に添加し、次にアニオン性の有機高分子凝集剤を添加することが好ましい。第2の有機高分子凝集剤を被処理水に添加するために専用の槽を設けることもできるが、本実施形態では槽の数を抑えるために専用の槽を設けていない。このため、本実施形態では、第2の有機高分子凝集剤の供給部9は凝集沈澱装置5の被処理水の入口51に設けられている。しかし、第2の有機高分子凝集剤の供給部9は、被処理水の供給ラインL1の、凝集槽4と凝集沈澱装置5との間の区間に設けてもよく、より一般的には、凝集槽4と供給口52との間にあればよい。
【0016】
被処理水は凝集沈澱装置5の内部空間(スラッジブランケット部5A)に導入される前に以下の処理を受ける。被処理水はまず第1の反応槽2に導入される。被処理水にカルシウム剤が添加され、フッ素とカルシウムが反応してフッ化カルシウムが生成される。次に、被処理水は第2の反応槽3に導入される。被処理水に無機凝集剤が添加され、被処理水と無機凝集剤が攪拌される。これによって、被処理水中に微小フロックが形成される。次に、被処理水は凝集槽4に導入される。被処理水に第1の有機高分子凝集剤が添加され、微小フロックが凝集して凝集フロックとなる。次に、被処理水に第2の有機高分子凝集剤が添加される。以上の処理をされた被処理水が、凝集沈殿装置の供給口52から凝集沈澱装置5の内部空間に導入される。
【0017】
凝集沈澱装置5は二重円筒構成の容器であり、二重円筒の外側がスラッジブランケット部5Aを、二重円筒の内側が汚泥濃縮部5Bを構成している。スラッジブランケット部5Aと汚泥濃縮部5Bは円筒形状の内壁53で仕切られている。スラッジブランケット部5Aと汚泥濃縮部5Bと内壁53は同心配置され、凝集沈澱装置5の中心軸CLは、スラッジブランケット部5A、汚泥濃縮部5B、内壁53の中心軸と一致している。従って、スラッジブランケット部5Aは環状の水平断面を有し、汚泥濃縮部5Bは円形の水平断面を有している。スラッジブランケット部5Aを二重円筒の内側、汚泥濃縮部5Bを二重円筒の外側に配置することも可能であるが、大きな容積を確保することが容易な二重円筒の外側部分をスラッジブランケット部5Aとすることが好ましい。
【0018】
凝集沈澱装置5は、凝集沈澱装置5の中心軸CLの周りを回転する回転軸54を有している。回転軸54は凝集沈澱装置5の上方に設けられたモータ55によって回転駆動される。凝集沈澱装置5には、凝集沈澱装置5の内部を下方に延びる、被処理水の供給管57が設けられている。供給管57は回転軸54に連結されており、回転軸54と一緒に中心軸CLの周りを回転する。従って、回転軸54とモータ55は供給管57を回転させる回転駆動機構56を構成する。供給管57は、回転軸54との連結部(図示せず)を備え回転軸54を覆うように上下方向に延びる第1の部分57Aと、第1の部分57Aに接続され斜めに(すなわち、上下方向且つ径方向に)延びる第2の部分57Bと、第2の部分57Bの下端に接続され上下方向に延びる第3の部分57Cと、を有している。第1の部分57Aの上端(被処理水の入口51)は開放端部とされており、被処理水の供給ラインL1と第2の有機高分子凝集剤の供給ラインL4が、開放端部の内側で終端している。第2の部分57Bは複数設けることが好ましく、本実施形態では180度間隔で2つの第2の部分57Bが設けられている。第3の部分57Cの下端には被処理水の供給口52が設けられている。被処理水の供給口52は凝集沈澱装置5の内部であって、スラッジブランケット部5Aの下部且つ後述する分離ゾーン5A2の下方に位置している。供給管57の第3の部分57Cの側面には造粒翼58が設けられている。造粒翼58は第3の部分57Cと直交する方向に突き出す平板である。造粒翼58は供給管57の回転に伴い被処理水を攪拌し、第2の有機高分子凝集剤と凝集フロックとの反応を促進し、フロックを粗大化させる。造粒翼58は高さ方向に複数段設けられることが好ましい。
【0019】
本実施形態によれば、凝集剤とフロックとを含む被処理水が凝集沈澱装置5のスラッジブランケット部5Aに供給され、凝集剤によってフロックが粗大化し、スラッジブランケット部5Aにスラッジブランケットが生成される。より詳細には、スラッジブランケット部5Aに供給された被処理水は、上昇流となってスラッジブランケット部5Aの上部に向けて流動する。この間、被処理水は造粒翼58によって緩やかに撹拌される。これにより、凝集フロックの衝突や転がり運動が繰り返し発生し、凝集フロックの粒径が徐々に増大し球状のペレットが形成される。ペレットは、自重と供給口52から供給される被処理水の上昇流とによって、スラッジブランケット(ペレットブランケット)を形成する。この結果、スラッジブランケット部5Aは、粗大化ゾーン5A1、すなわち第2の有機高分子凝集剤と凝集フロックとの反応が進行し、フロックを粗大化(成長)させるゾーンと、粗大化ゾーン5A1の上方に位置する分離ゾーン5A2、すなわちフロックが粗大化し安定したスラッジブランケットが形成されるゾーンと、に区分される。粗大化ゾーン5A1は概ね造粒翼58の設けられたゾーン及びその下方のゾーンに対応しており、便宜上は、最上段の造粒翼58の頂部の高さレベルを粗大化ゾーン5A1と分離ゾーン5A2の境界と考えることができる。第2の有機高分子凝集剤と凝集フロックとの反応は、分離ゾーン5A2ではほぼ終了している。
【0020】
分離ゾーン5A2では主に、粗大化したフロックによって、被処理水からフロックを分離(被処理水を浄化)する作用が行われる。これによって、分離ゾーン5A2の上方には比較的清澄な処理水のゾーン(処理水ゾーン5C)が形成される。処理水ゾーン5Cの頂部には処理水の取出部59が設けられている。処理水の取出部59は凝集沈澱装置5の外壁60の周囲に配置された堰である。処理水は外壁60に設けられた連通路(図示せず)から取出部59に流入し、取出部59に接続された処理水の取出ラインL5によって、凝集沈澱装置5の外部に排出される。
【0021】
分離ゾーン5A2の粗大化したフロックは、内壁53の頂部を超えて汚泥濃縮部5Bに流入する。大きなフロックは汚泥濃縮部5Bに流入するため、内壁53の頂部を分離ゾーン5A2ないしスラッジブランケット部5Aの上端と考えることができる。汚泥濃縮部5Bは、スラッジブランケット中の粗大化した凝集フロックの一部を収集して濃縮させる。凝集フロックは汚泥濃縮部5Bの内部を沈降し、底部に沈殿し、濃縮度が高められる。凝集沈澱装置5の下部、より具体的には汚泥濃縮部5Bの底部の近傍には、凝集沈澱装置5の底部に沈殿した濃縮汚泥を取り出すための濃縮汚泥取出部61が設けられている。濃縮汚泥取出部61には濃縮汚泥取出ラインL2が接続されている。濃縮汚泥取出ラインL2がスラッジブランケット部5Aを貫通しないように、汚泥濃縮部5Bの下部はスラッジブランケット部5Aの底部から下方に突き出しており、濃縮汚泥取出部61はこの突出し部62の側面に設けられている。回転軸54は汚泥濃縮部5Bの内部を上下に延びている。汚泥濃縮部5Bの内部における回転軸54の側面には、造粒翼58と同様の構造の攪拌翼63が設けられている。攪拌翼63は汚泥濃縮部5Bの内部の濃縮汚泥を攪拌し、汚泥濃縮部5Bが濃縮汚泥で詰まることを防止する。
【0022】
スラッジブランケット部5Aの上部に汚泥取出部64が設けられている。汚泥取出部64は汚泥の一部を第2の反応槽3に戻すための汚泥循環ラインL3に接続されている。すなわち、スラッジブランケットに含まれる汚泥は汚泥取出部64から実質的に連続的に取り出され、最終的に供給口52に再循環される。汚泥取出部64は分離ゾーン5A2、すなわち最上段の造粒翼58の上方で、且つ内壁53の頂部より下方に位置している。特に、汚泥取出部64は分離ゾーン5A2の下部に位置していることが好ましい。これは、分離ゾーン5A2の下部のほうが上部より汚泥の濃度が高いためである。また、分離ゾーン5A2の上部に汚泥取出部64を設けると、汚泥だけでなく処理水も汚泥取出部64に流入しやすくなり、汚泥を効率的に再循環させることが難しくなる。
【0023】
このように、スラッジブランケット部5Aの上部ないし分離ゾーン5A2に汚泥取出部64を設けることで、第2の有機高分子凝集剤の被処理水との十分な反応時間を確保することができる。すなわち、カルシウム剤と無機凝集剤と第1の有機高分子凝集剤はそれぞれ専用の槽で添加されるため、十分な反応時間を確保することが可能である。従って、カルシウム剤及び凝集剤と被処理水との反応は、第2の有機高分子凝集剤が添加される前に実質的に終了している。これに対して、第2の有機高分子凝集剤は被処理水と十分に反応する前に、供給口52から凝集沈澱装置5の内部空間に放出されるため、凝集沈澱装置5の内部空間で反応時間を確保することが望まれる。例えば、特許文献2に記載されているように、汚泥取出部64をスラッジブランケット部5Aの底部に設けると、未反応の第2の有機高分子凝集剤を取り出してしてしまうため、第2の有機高分子凝集剤を有効利用できないだけでなく、良好なスラッジブランケットの形成もできなくなる可能性がある。
【0024】
本実施形態では、まず第2の有機高分子凝集剤とフロックとを含む被処理水が、凝集沈澱装置5の内部に位置する供給口52から凝集沈澱装置5に供給される。そして、第2の有機高分子凝集剤によって(さらには、造粒翼58の作用によって)、フロックが粗大化され、供給口52の上方の分離ゾーン5A2に安定したスラッジブランケットが生成される。第2の有機高分子凝集剤と被処理水との反応は粗大化ゾーン5A1でほぼ終了している。従って、スラッジブランケット部5Aの上部ないし分離ゾーン5A2に汚泥取出部64を設けることで、第2の有機高分子凝集剤の被処理水との十分な反応時間を確保し、スラッジブランケットを効率的に形成することができる。
【0025】
汚泥循環ラインL3と濃縮汚泥取出ラインL2は各々の一部を共用する共用ラインLB(共用部)を有し、共用ラインLBに汚泥移送ポンプ10と流量計11が設けられている。具体的には、濃縮汚泥取出ラインL2の上流側部分L2Aと汚泥循環ラインL3の上流側部分L3Aはそれぞれ独立に設けられ、これらが合流して一つの共用ラインLBとなり、共用ラインLBは下流で濃縮汚泥取出ラインL2の下流側部分L2Cと汚泥循環ラインL3の下流側部分L3Cとに分岐する。これによって、汚泥の再循環と濃縮汚泥の取り出しをひとつの汚泥移送ポンプ10で行うことができ、水処理装置1のコストダウンが可能となる。
【0026】
水処理装置1はさらに、汚泥循環ラインL3と濃縮汚泥取出ラインL2の切り替え手段を有している。具体的には、切り替え手段は、濃縮汚泥取出ラインL2の上流側部分L2Aに設けられた第1の弁V1と、汚泥循環ラインL3の上流側部分L3Aに設けられた第2の弁V2と、濃縮汚泥取出ラインL2の下流側部分L2Cに設けられた第3の弁V3と、汚泥循環ラインL3の下流側部分L3Cに設けられた第4の弁V4と、を有している。スラッジブランケットを安定して形成するためには、汚泥の取り出しと再循環を実質的に連続して行うことが好ましい。これに対して、濃縮汚泥の取り出しは濃縮汚泥の濃縮度が高まったタイミングで間欠的に行うことが好ましい。従って、通常時は第2の弁V2と第4の弁V4が開いており、第1の弁V1と第3の弁V3が閉じている。これに対して、濃縮汚泥の取り出し時は、第2の弁V2と第4の弁V4が閉じられ、第1の弁V1と第3の弁V3が開かれる。濃縮汚泥の取り出しは1時間当たり数分程度である。従って、この間第2の弁V2と第4の弁V4が閉じられ汚泥の再循環が停止しても、スラッジブランケットの安定した形成に与える影響は無視できる。なお、上述の「実質的に連続的に」とは、第2の弁V2と第4の弁V4が閉じている時間が短いことを意味し、汚泥の再循環が行われる時間に対する汚泥の再循環が停止している時間との比は、概ね20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0027】
第1~第4の弁V1~V4の開閉のタイミングを制御するため、切り替え手段はタイマー12を有している。タイマー12は所定の時刻になった時(例えば、毎時55分)に第2の弁V2と第4の弁V4を閉じ、第1の弁V1と第3の弁V3を開き、別の所定の時刻になった時(例えば、毎時0分)に第2の弁V2と第4の弁V4を開き、第1の弁V1と第3の弁V3を閉じ、この過程を繰り返すことができる。あるいは、所定時間(例えば、55分間)の経過後第2の弁V2と第4の弁V4を閉じ、第1の弁V1と第3の弁V3を開き、別の所定時間(例えば、5分間)の経過後、第2の弁V2と第4の弁V4を開き、第1の弁V1と第3の弁V3を閉じ、この過程を繰り返すことができる。以上のように第1~第4の弁V1~V4の開閉のタイミングを制御することで、排泥濃度を高めることができる。なお、汚泥移送ポンプ10は常時稼働したままであるが、第1の弁V1と第3の弁V3が開いた時と、第2の弁V2と第4の弁V4が開いた時とで、流量を調整することが好ましい。このため、汚泥移送ポンプ10はインバータ制御とすることが好ましい。
【0028】
第2の弁V2と第4の弁V4は濃縮汚泥の取り出し時に開いたままとしてもよい。この間、再循環される汚泥と取り出される濃縮汚泥が混合するが、上述の通り、第1の弁V1と第3の弁V3が開いている時間は限られているので、大きな問題とはならない。この場合、第2の弁V2と第4の弁V4は常に開いた状態にあるので、タイマー12による制御が不要になる。あるいは、第2の弁V2と第4の弁V4を削除することも可能である。この構成では、スラッジブランケットに含まれる汚泥を汚泥取出部64から連続的に取り出すことができる。
【0029】
汚泥循環ラインL3を流通する汚泥は、再生槽8に導入される前に計量槽7で計量される。計量槽7は、三角堰の原理を利用して汚泥の流量を計測する。計量槽7の上流で汚泥循環ラインL3からバイパスラインL6が分岐しており、再生槽8に一定の流量の汚泥が導入されるように、バイパスラインL6に設けられた弁V5を制御する。バイパスラインL6は凝集槽4に接続されている。
【0030】
再生槽8は、汚泥に水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を添加するアルカリ性物質の供給部81を備えている。アルカリ性物質と汚泥を攪拌するために、再生槽8はモータ駆動の攪拌翼82を備えている。汚泥にアルカリ性物質が添加されることで、汚泥のpHが高められる。これによって、汚泥に含まれる不溶性の水酸化アルミニウムが溶解し、吸着していたフッ素がフッ素イオンとして放出され、凝集剤が再生される。再生槽8に水酸化カルシウムを添加して、放出されたフッ素を水酸化カルシウムと反応させて、フッ化カルシウムを生成させることが望ましい。再生された凝集剤は汚泥循環ラインL3を通って第2の反応槽3に戻されるため、無機凝集剤の使用量を抑えることができる。本実施形態では、汚泥循環ラインL3は汚泥取出部64を第2の反応槽3と接続しているが、汚泥取出部64を凝集槽4と接続してもよく、第2の反応槽3と凝集槽4の両者に接続してもよい。計量槽7と再生槽8は省略することも可能であるが、被処理水がフッ素を含む場合、これらの設備は設けることが好ましい。
【0031】
図3は、第1の実施形態の変形例に係る水処理装置1の概略構成を示している。本変形例では、濃縮汚泥取出ラインL2と汚泥循環ラインL3が完全に独立して設けられ、第1の実施形態の共用ラインLBと切り替え手段は設けられていない(但し、第1の弁V1と第2の弁V2は設けられている)。濃縮汚泥取出ラインL2と汚泥循環ラインL3には、第1の汚泥移送ポンプ10A/第1の流量計11Aと、第2の汚泥移送ポンプ10B/第2の流量計11Bがそれぞれ設けられている。それ以外の構成については第1の実施形態と同じである。本変形例では、汚泥移送ポンプの台数は増えるものの、汚泥の再循環と濃縮汚泥の取り出しを独立して行うことができるため、水処理装置1の運転の自由度が増加する。汚泥の再循環は濃縮汚泥の取り出し時にも停止する必要がない。また、第1の汚泥移送ポンプ10Aと第2の汚泥移送ポンプ10Bの容量は、それぞれ汚泥の再循環と濃縮汚泥の取り出しに必要な流量に応じて決定できるため、汚泥移送ポンプ10A,10Bのコストも抑制できる。
【0032】
図4は、第2の実施形態に係る水処理装置1の概略構成を示している。本実施形態においては、凝集沈澱装置5は一重円筒構成の容器である。凝集沈澱装置5の下部にはスラッジブランケット部5Aだけが設けられている。濃縮汚泥はスラッジブランケット部5Aの底部に沈殿する。このため、濃縮汚泥取出部61はスラッジブランケット部5Aの底部に設けられている。スラッジブランケットは、第1の実施形態と同様、スラッジブランケット部5Aに形成される。スラッジブランケット部5Aには、フロックを粗大化させる粗大化ゾーン5A1と、粗大化ゾーン5A1の上方に位置し、粗大化したフロックから被処理水を分離する分離ゾーン5A2と、が形成される。汚泥取出部64は分離ゾーン5A2、好ましくは分離ゾーン5A2の下部に設けられている。本実施形態においても、第1の実施形態と同様、排泥濃度を高めつつ、スラッジブランケットを効率的に形成することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 水処理装置
2 第1の反応槽
3 第2の反応槽
4 凝集槽
5 凝集沈澱装置
5A スラッジブランケット部
5A1 粗大化ゾーン
5A2 分離ゾーン
5B 汚泥濃縮部
52 被処理水の供給口
53 内壁
56 回転駆動機構
57 被処理水の供給管
58 造粒翼
61 濃縮汚泥取出部
64 汚泥取出部
9 第2の有機高分子凝集剤の供給部
10,10A,10B 汚泥移送ポンプ
L2 濃縮汚泥取出ライン
L3 汚泥循環ライン
LB 共用ライン
図1
図2
図3
図4