(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132885
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】デバイス保持装置、デバイス保持制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/32 20160101AFI20230914BHJP
A61M 25/02 20060101ALI20230914BHJP
A61M 25/082 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B34/32
A61M25/02 510
A61M25/082 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038455
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267BB04
4C267BB20
4C267BB54
4C267CC19
4C267EE07
4C267HH07
4C267HH22
(57)【要約】
【課題】カテーテルデバイスを進退可能に把持し、術者の操作内容に応じてカテーテルデバイスの把持のロック及びアンロックを制御することができるデバイス保持装置を提供する。
【解決手段】長尺のカテーテルデバイスを進退可能に保持するデバイス保持装置は、カテーテルデバイスの進退又は回転をロック可能に把持する把持部と、カテーテルデバイスに対する術者の操作内容に係る情報を取得する取得部と、取得部が取得した情報に基づいて、把持部のロック及びアンロックを制御する制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のカテーテルデバイスを進退可能に保持するデバイス保持装置であって、
前記カテーテルデバイスの動きをロック可能に把持する把持部と、
前記カテーテルデバイスに対する術者の操作内容に係る情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報に基づいて、前記把持部のロック及びアンロックを制御する制御部と
を備えるデバイス保持装置。
【請求項2】
前記操作内容に係る情報は、前記カテーテルデバイスの進退方向又は回転方向への移動量に関連する情報を含み、
前記制御部は、
前記カテーテルデバイスの進退方向又は回転方向への移動量が所定移動量範囲外にある場合、前記把持部をロックし、
前記カテーテルデバイスの進退方向又は回転方向への移動量が所定移動量範囲内にある場合、前記把持部をアンロックする
請求項1に記載のデバイス保持装置。
【請求項3】
前記移動量に関連する情報は、前記カテーテルデバイスの表面又は前記カテーテルデバイスを操作する術者の手を撮像して得られる時系列の画像データを含む
請求項2に記載のデバイス保持装置。
【請求項4】
前記操作内容に係る情報は、前記カテーテルデバイスが挿入される血管を撮像して得られたアンギオ画像データを含み、
前記制御部は、
前記カテーテルデバイスの先端部が病変部を含む所定範囲外にある場合、前記把持部をロックし、
前記カテーテルデバイスの先端部が前記所定範囲内にある場合、前記把持部をアンロックする
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデバイス保持装置。
【請求項5】
前記カテーテルデバイスに加えられた進退方向又は回転方向の力を検出するセンサを備え、
前記操作内容に係る情報は、前記センサによって検出された力を示す力情報を含み、
前記制御部は、
前記力情報に基づいて、前記把持部のロック及びアンロックを制御する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のデバイス保持装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記力情報が示す力が下限閾値未満である場合又は上限閾値以上である場合、前記把持部をロックし、
前記力情報が示す力が前記下限閾値以上、前記上限閾値未満である場合、前記力情報に基づいて、術者による前記カテーテルデバイスに対する操作であるか否かを判定し、
術者による操作であると判定された場合、前記把持部をアンロックする
請求項5に記載のデバイス保持装置。
【請求項7】
前記カテーテルデバイスに加えられた進退方向又は回転方向の力を示す力情報が入力された場合、術者による前記カテーテルデバイスに対する操作であるか否かを示す情報を出力するように学習された学習モデルを備え、
前記制御部は、
前記取得部にて取得した前記力情報を前記学習モデルに入力することによって出力された情報に基づいて、術者による前記カテーテルデバイスに対する操作であるか否かを判定する
請求項6に記載のデバイス保持装置。
【請求項8】
前記カテーテルデバイスは、
ワイヤ状の第1カテーテルデバイスと、
前記第1カテーテルデバイスに外嵌し、該第1カテーテルデバイスに沿って移動可能な筒状の第2カテーテルデバイスと
を含み、
前記把持部は、
前記第1カテーテルデバイスを挟持する挟持位置と、前記第1カテーテルデバイスから離隔する離隔位置との間を移動可能な第1挟持部材と、
前記第1挟持部材と異なる位置で前記第1カテーテルデバイスを挟持する挟持位置と、前記第1カテーテルデバイスから離隔する離隔位置との間を移動可能な第2挟持部材と
を含み、
前記取得部は、
前記第1挟持部材、前記第2挟持部材、前記第1カテーテルデバイス及び前記第2カテーテルデバイスを撮像して得られる画像データを取得し、
前記制御部は、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材が前記第1カテーテルデバイスを挟持している場合、前記取得部が取得した画像データに基づいて、前記第2カテーテルデバイスが前記第1挟持部材又は前記第2挟持部材に到達しているかを判定し、
前記第2カテーテルデバイスの先端部が前記第1挟持部材に到達した場合、前記第1挟持部材を前記離隔位置に移動させ、
前記第2カテーテルデバイスの先端部が前記第2挟持部材に到達した場合、前記第2挟持部材を前記離隔位置に移動させ、
前記第2カテーテルデバイスの末端部が前記第1挟持部材を通過した場合、前記第1挟持部材を前記挟持位置に移動させる
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のデバイス保持装置。
【請求項9】
カテーテルデバイスの進退又は回転をロック可能に把持する把持部の動作を制御するデバイス保持制御方法であって、
前記カテーテルデバイスに対する術者の操作内容に係る情報を取得し、
取得した情報に基づいて、前記カテーテルデバイスの進退又は回転のロック及びアンロックを制御する
デバイス保持制御方法。
【請求項10】
カテーテルデバイスの進退又は回転をロック可能に把持する把持部の動作をコンピュータに制御させるための制御プログラムであって、
前記カテーテルデバイスに対する術者の操作内容に係る情報を取得し、
取得した情報に基づいて、前記カテーテルデバイスの進退又は回転のロック及びアンロックを制御する
処理を前記コンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス保持装置、デバイス保持制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
狭心症又は心筋梗塞等の虚血性心疾患に対する低侵襲治療として、経皮的冠動脈インターベンション(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)に代表されるカテーテル治療が行われている。長尺のカテーテルを用いた手技時、カテーテルデバイスが清潔野から脱落しないようにカテーテルデバイスの近位側を把持する必要がある。カテーテルデバイスの近位側を把持する補助作業は術者の助手が行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
助手が行う作業を機械又は治具に代替することが考えられるが、治具によるカテーテルデバイスの把持のオンオフを術者が行う必要があり、手間がかかる。また、術者と助手のコミュニケーションミスがあると、手技の長時間化し、デバイス汚染につながる。
【0005】
本発明の目的は、カテーテルデバイスを進退可能に把持し、術者の操作内容に応じてカテーテルデバイスの把持のロック及びアンロックを制御することができるデバイス保持装置、デバイス保持制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るデバイス保持装置は、長尺のカテーテルデバイスを進退可能に保持するデバイス保持装置であって、前記カテーテルデバイスの動きをロック可能に把持する把持部と、前記カテーテルデバイスに対する術者の操作内容に係る情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報に基づいて、前記把持部のロック及びアンロックを制御する制御部とを備える。
【0007】
本開示に係るデバイス保持制御方法は、カテーテルデバイスの進退又は回転をロック可能に把持する把持部の動作を制御するデバイス保持制御方法であって、前記カテーテルデバイスに対する術者の操作内容に係る情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記カテーテルデバイスの進退又は回転のロック及びアンロックを制御する。
【0008】
本開示に係る制御プログラムは、カテーテルデバイスの進退又は回転をロック可能に把持する把持部の動作をコンピュータに制御させるための制御プログラムであって、前記カテーテルデバイスに対する術者の操作内容に係る情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記カテーテルデバイスの進退又は回転のロック及びアンロックを制御する処理を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、カテーテルデバイスを進退可能に把持し、術者の操作内容に応じてカテーテルデバイスの把持のロック及びアンロックを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係るデバイス保持装置の構成例を説明する模式図である。
【
図2】実施形態1に係るデバイス保持装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図3】カテーテルデバイスのロック範囲及びアンロック範囲を示す模式図である。
【
図4】実施形態2に係るデバイス保持装置の構成例を説明する模式図である。
【
図5】実施形態2に係るデバイス保持装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態3に係るデバイス保持装置の構成例を説明する模式図である。
【
図7】実施形態3に係るトルク学習モデルの構成例を示す概念図である。
【
図8】実施形態3に係るデバイス保持装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態4に係るデバイス保持装置の構成例を説明する模式図である。
【
図10】実施形態4に係るデバイス保持装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態4に係るデバイス保持装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図12】実施形態4に係るデバイス保持装置の制御方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態に係るデバイス保持装置等を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0012】
図1は、実施形態1に係るデバイス保持装置100の構成例を説明する模式図である。実施形態1に係るデバイス保持装置100は、長尺のカテーテルデバイス1を進退可能に保持する装置である。デバイス保持装置100は、カテーテル治療を行う術者の補助作業を代替するものである。デバイス保持装置100は、術者による操作内容あるいは操作意図に応じてカテーテルデバイス1の送給、並びにその進退のロック及びアンロックを制御する。
【0013】
本実施形態1で用いられる長尺のカテーテルデバイス1は、管状のホルダ10に収納保持されているものとする。ホルダ10に収納保持されたカテーテルデバイス1は、清潔野に配されている。カテーテルデバイス1は、例えば生理食塩水で満たされた容器2に浸されている。
なお、ホルダ10の形状は特に限定されるものでは無く、長尺のカテーテルデバイス1を引き出し可能に収納保持できる形状であれば足りる。例えば、ホルダ10は、平皿状の部材、カテーテルデバイス1が挿通する穴を有する箱体、カテーテルデバイス1が移動可能に嵌まる溝状の部材であってもよい。以下、本実施形態1では、ホルダ10は少なくともカテーテルデバイス1が出入りするホルダ端部10aを有するものとする。
【0014】
<デバイス保持装置100>
デバイス保持装置100は、制御装置3、送給装置4及び撮像装置5を備える。送給装置4はディスポーザブルユニットであり、制御装置3に着脱可能に取り付けられている。送給装置4は、カテーテルデバイス1を進退可能に送給する装置である。制御装置3は、送給装置4の動作を制御する回路である。
【0015】
送給装置4は、制御装置3に接続するためのディスポーザブルユニット側接続部4aと、ホルダ固定部41と、把持部42とを有する。
【0016】
ホルダ固定部41は、カテーテルデバイス1のホルダ端部10aを固定する部材である。ホルダ固定部41は、例えば断面U字状の部材であり、間隙を有して対向する1対の挟持板を有する。挟持板の間隔はホルダ端部10aの直径よりも小さい。ホルダ端部10aがホルダ固定部41の開口部、つまり挟持板の隙間に挿入されると、ホルダ端部10aはホルダ固定部41に締まり嵌めされ、固定される。ホルダ固定部41は弾性変形可能な部材、例えば樹脂で形成するとよい。
また、ホルダ固定部41は筒体であってもよい。筒体の内径はホルダ端部10aの外径以下である。ホルダ端部10aが筒体に挿入されると、ホルダ端部10aはホルダ固定部41に締まり嵌めされて固定される。
なお、上記したホルダ固定部41の構成は一例であり、ホルダ端部10aを固定することができれば、その構成は特に限定されるものでは無い。
【0017】
把持部42は、ホルダ固定部41に固定されたホルダ端部10aから引き出されるカテーテルデバイス1を進退可能に保持すると共に、カテーテルデバイス1の進退をロック可能に把持する部材である。把持部42は、例えば対向配置された1対のローラ42aと、後述するサーボモータ33aの駆動力をローラ42aに伝達して回転させるギア機構42bとを有する。ローラ42aは例えば樹脂製である。把持部42は、ホルダ固定部41に並び配されており、把持部42及びローラ42aは、ホルダ固定部41に固定されたホルダ端部10aから出たカテーテルデバイス1がローラ42aに引き込まれるような位置関係にある。1対のローラ42a間の距離は、カテーテルデバイス1を挟持することができる距離、言い換えるとカテーテルデバイス1の直径以下の距離である。カテーテルデバイス1が挟持される方向へ1対のローラ42aを付勢する付勢部材を備えてもよい。ローラ42aは、カテーテルデバイス1に対して所要の摩擦力を有し、ローラ42aが回転するとカテーテルデバイス1が進退方向へ移動し、ローラ42aが回転しないように固定された場合、カテーテルデバイス1の動きがロックされる。ローラ42aが固定されると、少なくともカテーテルデバイス1の進退がロックされる。また、ローラ42aが固定されると、カテーテルデバイス1の横方向及び上下方向、つまり進退方向に対して交差する方向への移動がロックされる。更に、ローラ42aが固定されると、カテーテルデバイス1の周方向の回転もロックされる。
【0018】
なお、カテーテルデバイス1の進退方向は、カテーテルデバイス1の長手方向を意味する。進出方向は清潔野からカテーテル挿入部位へ移動する方向、後退方向はカテーテル挿入部位から清潔野へ移動する方向を意味する。あるいは、進出方向はカテーテルデバイス1が近位側から遠位側へ移動する方向、後退方向はカテーテルデバイス1が遠位側から近位側へ移動する方向を意味する。
【0019】
制御装置3は、送給装置4に接続するための非ディスポーザブルユニット側接続部3aと、制御部31と、記憶部32と、駆動回路33と、サーボモータ33aと、取得部34と、出力部35と、操作部36とを備える。
【0020】
非ディスポーザブルユニット側接続部3aと、ディスポーザブルユニット側接続部4aとが接続されると、送給装置4が制御装置3に接続され、サーボモータ33aと、ギア機構42bとが接続される。
【0021】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子、計時部等を有するマイクロコンピュータである。制御部31には、記憶部32と、駆動回路33と、取得部34と、出力部35と、操作部36とが接続されている。制御部31は、記憶部32が記憶する制御プログラム32a(プログラム製品)を実行することによって、本実施形態1に係るデバイス保持制御方法を実施する。制御プログラム32aを実行することによって、制御部31は、術者の操作内容及び操作意図が反映されたカテーテルデバイス1の進退方向の移動状態及び移動量に応じて、サーボモータ33aの回転又は停止を指示する制御信号を駆動回路33へ出力することによって、カテーテルデバイス1の進退、そのロック及びアンロックを制御する。なお、デバイス保持制御方法に係る処理機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0022】
記憶部32は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部32は、把持部42の動作を制御するための制御プログラム32aを記憶する。
【0023】
制御プログラム32aは、外部サーバからネットワークを介して配信される態様でもよい。制御装置3は通信にて外部サーバから制御プログラム32aを取得して記憶部32に書き込む。制御プログラム32aは、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク、磁気ディスク等の記録媒体6に読み出し可能に記録された態様でもよい。
【0024】
サーボモータ33aは、駆動回路33によって駆動し、少なくとも一つのローラ42aを正方向又は逆方向に回転させる。ローラ42aが正方向へ回転すると、カテーテルデバイス1は進出方向へ移動する。ローラ42aが逆方向へ回転すると、カテーテルデバイス1は後退方向へ移動する。また、サーボモータ33aは、ローラ42aの回転を停止させ、ロックすることができる。ローラ42aの回転がロックされると、カテーテルデバイス1の進退がロックされる。
【0025】
駆動回路33は、制御部31から出力される制御信号に従って、サーボモータ33aを駆動させる。駆動回路33は、制御信号に応じて、サーボモータ33aを正逆回転させ又は停止させる。
【0026】
取得部34は、カテーテルデバイス1に対する術者の操作内容及び操作意図に係る情報を取得するインタフェースである。操作内容及び操作意図に係る情報は、例えば、カテーテルデバイス1の進退方向への移動量に関連する情報を含む。
具体的には、取得部34は、撮像装置5が接続されるインタフェースである。撮像装置5は、カテーテルデバイス1の表面又は術者の手を撮像し、撮像して得られた時系列の画像データを取得部34へ出力する。取得部34は、撮像装置5から出力された画像データを取得し、取得した画像データを制御部31に与える。画像データは、カテーテルデバイス1に対する術者の操作内容及び操作意図を表した情報である。制御部31は、画像データに基づいて、術者の操作内容及び操作意図、具体的には、カテーテルデバイス1の進退方向への移動状態及び移動量を検出することができる。
【0027】
出力部35は、制御部31の制御に従って、把持部42の状態を出力する装置である。出力部35は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置、LED等の発光素子、スピーカなどである。出力部35は、例えば、把持部42がカテーテルデバイス1の進退がロックされた状態にあるか否かを表示する。
【0028】
操作部36は、術者の操作を受け付けるタッチパネル、操作ボタン等のインタフェースである。操作部36は、術者の動きを検出するセンサ、すなわち術者のジェスチャー入力操作を受け付けるセンサであってもよい。また、操作部36は、術者の声入力による操作を受け付けるマイクであってもよい。その他の方法で術者の操作内容が制御装置3に入力されるように構成してもよい。制御部31は、操作部36を介して術者の操作を受け付ける。例えば、術者は、操作部36を用いて把持部42のロック及びアンロックを操作することができる。制御部31は、画像データに基づいて、把持部42のロック及びアンロックを制御しているが、操作部36を介してロック操作又はアンロック操作を受け付けた場合、操作内容を優先して、把持部42をロック又はアンロックする。
【0029】
<デバイス保持制御方法>
図2は、実施形態1に係るデバイス保持装置100の制御手順を示すフローチャート、
図3は、カテーテルデバイス1のロック範囲及びアンロック範囲を示す模式図である。制御部31は、カテーテルデバイス1の表面を撮像して得られる時系列の画像データを取得する(ステップS111)。制御部31は、取得した画像データに基づいて、カテーテルデバイス1の移動量を算出する(ステップS112)。移動量は、例えば、カテーテルデバイス1の先端部の移動量である。先端部の移動量は、撮像装置5の撮像範囲に当該先端部が入った位置を基準に測定するとよい。
【0030】
そして、制御部31は、カテーテルデバイス1の移動量が第1距離以上であるか否かを判定する(ステップS113)。移動量が第1距離以上で無いと判定した場合(ステップS113:NO)、制御部31は、カテーテルデバイス1の移動量が第1距離より短い第2距離以上であるか否かを判定する(ステップS114)。なお、制御部31は、第1距離及び第2距離の設定を操作部36にて受け付け、記憶部32に記憶しておくとよい。
【0031】
移動量が第2距離以上であると判定した場合(ステップS114:YES)、制御部31は把持部42をアンロックし(ステップS115)、移動量に応じてローラ42aを回転制御する(ステップS115)。つまり、制御部31は、カテーテルデバイス1の移動量と同程度の長さのカテーテルデバイス1を容器2から送給するために必要な回数だけローラ42aを回転させる(ステップS116)。
なお、制御部31は、把持部42がアンロック状態であることを示す情報を出力部35にて出力するとよい。
【0032】
ステップS113においてカテーテルデバイス1の移動量が第1距離以上であると判定された場合(ステップS113:YES)、又はステップS114においてカテーテルデバイス1の移動量が第2距離未満であると判定された場合(ステップS114:NO)、制御部31は、把持部42をロックする(ステップS117)。
なお、制御部31は、把持部42がロック状態であることを示す情報を出力部35にて出力するとよい。
【0033】
ステップS116又はステップS117の処理を終えた制御部31は、処理をステップS111へ戻し、把持部42のロック及びアンロック制御を継続する。
【0034】
実施形態1に係るデバイス保持装置100等によれば、カテーテルデバイス1を進退可能に把持し、術者の操作内容に応じてカテーテルデバイス1の把持のロック及びアンロックを制御することができる。
【0035】
また、カテーテルデバイス1の移動量が、病変部を含む所定範囲を超えた場合、把持部42をロックすることができる。カテーテルデバイス1が病変部を超え、術者が意図しない部位にまで進出することを制限することができる。
【0036】
更に、カテーテルデバイス1の表面を撮像して得られる画像データに基づいて、カテーテルデバイス1の移動量を算出し、術者の操作を補助するようにローラ42aを回転させてカテーテルデバイス1を送給し又は引き戻すことによって、術者のカテーテル操作を補助することができる。
【0037】
なお、本実施形態1では、サーボ機構を有するモータを用いて、ローラ42aのロック及びアンロックを制御する例を説明したが、カテーテルデバイス1の進退をロックする方法は特に限定されるものでは無い。カテーテルデバイス1を挟み込んでロックする機構等をモータと別体に設けてもよい。
【0038】
また、カテーテルデバイス1の表面を撮像して得られる画像データに基づいて、カテーテルデバイス1の移動量を算出する例を説明したが、術者の手を撮像して得られる画像データに基づいて、手の移動量をカテーテルデバイス1の移動量として算出してもよい。
【0039】
更に、把持部42として、1組のローラ42aを説明したが、複数の把持部42又は複数組みのローラ42aを備えてもよい。
更にまた、複数の把持部42又は複数組みのローラ42aを備え、複数のカテーテルデバイス1の進退、ロック及びアンロックを制御するように構成してもよい。
【0040】
更にまた、本実施形態1ではカテーテルデバイス1の進退方向への移動量を制限し、把持部42をロックする構成を説明したが、カテーテルデバイス1の回転方向への移動量を制限するように構成してもよい。制御部31は、カテーテルデバイス1の表面又は術者の手を撮像して得た画像データを取得し、取得した画像データに基づいて、カテーテルデバイス1の長軸回り又は中心線回りの回転量を検出することができる。制御部31は、回転量が所定回転量の範囲内であるか否かを判定し、回転量が所定回転量の範囲外であると判定した場合、把持部42をロックする。制御部31は、回転量が所定回転量の範囲内である場合、把持部42をアンロックする。制御部31は、上記所定回転量の設定を操作部36にて受け付け、記憶部32に記憶しておくとよい。
なお、カテーテルデバイス1の横方向及び上下方向の移動量を同様にして制限するように構成してもよい。
【0041】
(実施形態2)
実施形態2に係るデバイス保持装置200は、アンギオ画像を用いて把持部42のロック及びアンロックを制御する点が実施形態1と異なる。デバイス保持装置200のその他の構成は、実施形態1に係るデバイス保持装置100と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0042】
図4は、実施形態2に係るデバイス保持装置200の構成例を説明する模式図である。実施形態2に係る取得部34は、血管造影装置7が接続されるインタフェースである。血管造影装置7は、患者の血管に造影剤を注入しながら、患者の生体外からX線を用いて血管及びカテーテルデバイス1の先端部に設けられたX線不透過の造影マーカを撮像し、当該血管及び造影マーカの透視画像であるアンギオ画像を得るためのアンギオグラフィ装置である。血管造影装置7は、X線源及びX線センサを備え、X線源から照射されたX線をX線センサが受信することにより、患者のX線透視画像をイメージングする。血管造影装置7は、撮像して得られたアンギオ画像データを取得部34へ出力する。取得部34は、血管造影装置7から出力されたアンギオ画像データを取得し、取得したアンギオ画像データを制御部31に与える。
【0043】
記憶部32は、画像認識学習モデル8を記憶する。画像認識学習モデル8は、アンギオ画像に含まれる所定のオブジェクトを認識するモデルである。画像認識学習モデル8は、例えば、セマンティックセグメンテーション(Semantic Segmentation)を用いた画像認識技術を利用することにより、オブジェクトを画素単位でクラス分けすることができ、アンギオ画像に含まれる造影マーカの画像部分、病変部の画像部分、病変部よりも遠位側の血管の画像部分、病変部よりも近位側の血管の画像部分を認識することができる。
【0044】
画像認識学習モデル8は、例えば深層学習による学習済みの畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)である。画像認識学習モデル8は、アンギオ画像データが入力される入力層と、アンギオ画像の特徴量を抽出し復元する中間層と、アンギオ画像に含まれるオブジェクトを画素単位で示す部位抽出画像データを出力する出力層とを有する。画像認識学習モデル8は、例えばU-Netである。
【0045】
画像認識学習モデル8の入力層は、アンギオ画像データ、つまりアンギオ画像を構成する各画素の画素値の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された画素値を中間層に受け渡す。中間層は、畳み込み層(CONV層)と、逆畳み込み層(DECONV層)とを有する。畳み込み層は、アンギオ画像データを次元圧縮する層である。次元圧縮により、オブジェクトの特徴量が抽出される。逆畳み込み層は逆畳み込み処理を行い、元の次元に復元する。逆畳み込み層における復元処理により、各画素がオブジェクトのクラスに対応する画素値(クラスデータ)を有する部位抽出画像データが生成される。出力層は、部位抽出画像データを出力する複数のニューロンを有する。部位抽出画像は、アンギオ画像に含まれ得る造影マーカ、病変部、遠位側の血管、近位側の血管毎にクラス分け、例えば色分けされたような画像である。
【0046】
画像認識学習モデル8は、血管造影装置7にて得られるアンギオ画像データと、当該アンギオ画像の各画素に、対応するオブジェクトの種類に応じたクラスデータを付与した部位抽出画像データとを有する訓練データを用意し、当該訓練データを用いて未学習のニューラルネットワークを機械学習させることにより生成することができる。
【0047】
図5は、実施形態2に係るデバイス保持装置200の制御手順を示すフローチャートである。制御部31は、アンギオ画像データを取得する(ステップS211)。制御部31は、取得したアンギオ画像データに基づいて、アンギオ画像における造影マーカの位置を認識する(ステップS212)。つまり、制御部31は、カテーテルデバイス1の先端部の位置を認識する。また、制御部31は、アンギオ画像データに基づいて、アンギオ画像における血管及び病変部を認識する(ステップS213)。
【0048】
制御部31は、アンギオ画像データを画像認識学習モデル8に入力することによって、出力される部位抽出画像データの画素値(クラスデータ)に基づいて、造影マーカ、遠位側及び近位側の血管並びに病変部の位置を認識する。なお、造影マーカ、血管及び病変部の認識処理は、各オブジェクトの特徴量に基づくルールベースで認識してもよい。また制御部31は、アンギオ画像に含まれる血管の形状から、病変部の遠位側及び近位側をルールベースで判別するように構成してもよい。
【0049】
次いで、制御部31は、撮影範囲に造影マーカがあるか否かを判定する(ステップS214)。造影マーカが無いと判定した場合(ステップS214:NO)、制御部31は処理をステップS211へ戻す。造影マーカがあると判定した場合(ステップS214:YES)、制御部31は、撮影範囲に病変部があるか否かを判定する(ステップS215)。病変部が無いと判定した場合(ステップS215:NO)、制御部31は処理をステップS211へ戻す。
【0050】
撮影範囲に病変部があると判定した場合(ステップS215:YES)、制御部31は、造影マーカが血管に沿って病変部より遠位側にあるか否かを判定する(ステップS216)。
【0051】
造影マーカが病変部より遠位側に無いと判定した場合(ステップS216:NO)、つまり、造影マーカが病変部、又は病変部よりも近位側にあると判定した場合、制御部31は把持部42をアンロックし(ステップS217)、移動量に応じてローラ42aを回転制御する(ステップS218)。造影マーカが病変部よりも遠位側にあると判定した場合(ステップS216:YES)、制御部31は、把持部42をロックする(ステップS219)。ステップS218又はステップS219の処理を終えた制御部31は、処理をステップS211へ戻し、把持部42のロック及びアンロック制御を継続する。
【0052】
実施形態2に係るデバイス保持装置200等によれば、実施形態1と同様の効果を有し、カテーテルデバイス1の先端部が病変部よりも遠位側へ移動しないよう、把持部42をロックすることができる。カテーテルデバイス1が病変部を超え、術者が意図しない部位にまで進出することを制限することができる。
【0053】
本実施形態2では撮像装置5を備えずに、カテーテルデバイス1の移動量又は位置に応じた把持部42のロック及びアンロックを制御することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、造影マーカが病変部よりも遠位側にある場合、把持部42をロックする例を説明したが、ロック及びアンロックの範囲は特に限定されるものでは無い。カテーテルデバイス1の先端部に相当する造影マーカが病変部を含む所定範囲内にある場合、把持部42をアンロックし、所定範囲外にある場合、把持部42をロックするように構成してもよい。所定範囲は、病変部のカテーテル治療においてカテーテルの先端部が移動し得る範囲である。所定範囲は、操作部36を介して所定範囲の設定を受け付けるように構成してもよいし、所定範囲をルールベースで設定してもよい。例えば、病変部よりも血管に沿って、所定距離だけ遠位側の位置を所定範囲の遠位側の上限値として設定するとよい。
【0055】
また、本実施形態1及び実施形態2を組合せ、カテーテルデバイス1の表面を撮像して得られる画像データと、アンギオ画像データとを用いて、カテーテルデバイス1と、病変部との位置関係を認識し、把持部42のロック及びアンロックを制御するように構成してもよい。
【0056】
更に、本実施形態2ではカテーテルデバイス1の進退方向への移動量を制限し、把持部42をロックする構成を説明したが、カテーテルデバイス1の回転方向への移動量を制限するように構成してもよい。例えば、カテーテルデバイス1の先端部の周方向の異なる位置に複数の造影マーカが設けられている場合、制御部31は、アンギオ画像に含まれる造影マーカの位置に基づいて、カテーテルデバイス1の長軸回り又は中心線回りの回転量を検出することができる。制御部31は、実施形態1で説明したように、回転量が所定回転量の範囲内外であると判定した場合、把持部42をロックし、回転量が所定回転量の範囲内である場合、把持部42をアンロックする。
なお、カテーテルデバイス1の横方向及び上下方向の移動量を同様にして制限するように構成してもよい。
【0057】
(実施形態3)
実施形態3に係るデバイス保持装置300は、ローラ42aに加わるトルクの情報に基づいて、把持部42のロック及びアンロックを制御する点が実施形態1と異なる。デバイス保持装置300のその他の構成は、実施形態1に係るデバイス保持装置100と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0058】
図6は、実施形態3に係るデバイス保持装置300の構成例を説明する模式図である。実施形態3に係る取得部34は、トルクセンサ33bが接続されるインタフェースである。トルクセンサ33bは、術者によるカテーテルデバイス1の操作によって、把持部42のローラ42aに加わるトルクを検出するセンサである。トルクセンサ33bは、ローラ42aに加わるトルクを示すトルク信号を出力部35へ出力する。トルク信号は、トルクの向きを示す情報を含む。取得部34は、トルク信号をトルクデータにAD変換し、取得したトルクデータを制御部31に与える。
【0059】
記憶部32は、トルク学習モデル9を記憶する。トルク学習モデル9は、トルク波形データに基づいて、ローラ42aに加わったトルクが術者の操作によって発生したトルクと、ノイズ又は術者の意図に反して発生したトルクとを判別するモデルである。トルク波形データは、トルクデータが示すトルクの時間変化を示すデータである。
【0060】
図7は、実施形態3に係るトルク学習モデル9の構成例を示す概念図である。
トルク学習モデル9は、例えば、ローラ42aに加わるトルクの時間変化を示すトルク波形データが入力される入力層9aと、当該入力層9aに入力されたトルク波形データに対して学習済みの重み係数に基づく演算を行う中間層9bと、トルク波形が、術者によるカテーテルデバイス1の操作に起因するものであるか否かを示す確度データと、ノイズに起因するものである否かを示す確度データを出力する出力層9cとを備えたニューラルネットワークモデルである。換言すると、トルク学習モデル9は、カテーテルデバイス1に加えられた進退方向の力を示す力情報(例えば、トルク波形データ)が入力された場合、術者によるカテーテルデバイス1に対する操作であるか否かを示す情報(確度データ)を出力するように、コンピュータを機能させる学習された学習モデルである。
【0061】
トルク学習モデル9の学習は、トルク波形データと、当該トルク波形が術者の操作によるものか、ノイズによるものかを示す教師データとを含む訓練データを用意し、訓練データのトルク波形データが入力された場合、教師データが示す確度データが出力されるように、誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等を用いて、ニューラルネットワークの中間層9bの重み係数を最適化することによって、生成することができる。
【0062】
入力層9aは複数のニューロン(ノード)を備える。トルク波形のデータは、例えば複数時点のトルクを示すデータであり、トルク波形データは入力層9aを構成する複数のニューロン(ノード)に入力される。
【0063】
なお、トルク波形データは、当該トルク波形を表した画像データであってもよいし、時系列データであってもよい。トルク波形データが画像データの場合、畳み込みニューラルネットワークにてトルク学習モデル9を構成するとよい。畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)は、中間層9bとして、図示しない複数組みの畳み込み層及びプーリング層及び全結合層を有する。トルク波形のデータが時系列データの場合、回帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)を用いるとよい。
【0064】
出力層9cは一又は複数のノードを有する。例えば、第1のノードは、トルク波形がカテーテルデバイス1に対する操作に起因するものである確度を示す確度データを出力する。第2のノードは、トルク波形がノイズに起因するものである確度を示す確度データを出力する。
【0065】
図8は、実施形態3に係るデバイス保持装置300の制御手順を示すフローチャートである。制御部31は、トルクデータを取得する(ステップS311)。制御部31は、取得したトルクデータに基づいて、トルクが所定の上限値以上であるか否かを判定する(ステップS312)。検出されたトルクが上限値未満であると判定した場合(ステップS312:NO)、制御部31は、取得したトルクデータに基づいて、トルクが所定の下限値未満であるか否かを判定する(ステップS313)。
【0066】
検出されたトルクが下限値以上であると判定した場合(ステップS313:NO)、制御部31は、トルクデータに基づいて、術者によるカテーテルデバイス1の操作であるか否かを判定する(ステップS314)。具体的には、制御部31は、トルクデータに基づくトルク波形データをトルク学習モデル9に入力することによって、確度データを出力させる。制御部31は、トルク学習モデル9から出力される確度データに基づいて、検出されたトルクが、術者の操作に起因するものであるか、ノイズに起因するものであるかを判別する。例えば、術者の操作に起因するものであることを示す確度データが所定の第1閾値以上であり、かつ、ノイズに起因するものであることを示す確度データが所定の第2閾値未満である場合、制御部31は、術者の操作に起因するトルクであると判定する。
【0067】
検出されたトルクが術者の操作に起因するものであると判定された場合(ステップS314:YES)、制御部31は、把持部42をアンロックし(ステップS315)、移動量に応じてローラ42aを回転制御する(ステップS316)。
【0068】
検出されたトルクが上限値以上であると判定した場合(ステップS312:YES)、トルクが下限値未満であると判定した場合(ステップS313:YES)、トルクが術者の操作に起因するもので無いと判定した場合(ステップS314:NO)、制御部31は、把持部42をロックする(ステップS317)。ステップS316又はステップS317の処理を終えた制御部31は、処理をステップS311へ戻し、把持部42のロック及びアンロック制御を継続する。
【0069】
実施形態3に係るデバイス保持装置300等によれば、カテーテルデバイス1に異常な力が働いた場合、把持部42をロックすることができ、カテーテルデバイス1が清潔野から脱落する等の事故を防ぐことができる。
【0070】
また、カテーテルデバイス1に力が加わっていない状態においては、把持部42をロックし、カテーテルデバイス1が清潔野から脱落しないようにすることができる。
【0071】
更に、術者の操作によってカテーテルデバイス1に進退方向の力が加わった場合、把持部42はアンロック状態になり、術者の操作を補助するようにローラ42aが回転し、カテーテルデバイス1を送給し又は引き戻すことができる。
【0072】
更にまた、本実施形態3では、ローラ42aに加わるトルクが、術者の操作によるものであるか否かを学習モデルを用いて判別する構成であるため、より的確に把持部42のロック及びアンロックを制御し、術者を補助することができる。
【0073】
更にまた、本実施形態3ではカテーテルデバイス1の進退方向への移動量を制限し、把持部42をロックする構成を説明したが、カテーテルデバイス1の回転方向への移動量を制限するように構成してもよい。制御装置3はカテーテルデバイス1の周方向に加わる力によって、ローラ42aに加わるトルク又は力を検出するセンサ、例えば、圧力センサ、トルクセンサ、歪みセンサを備えるとよい。制御装置3は、当該セセンサにてカテーテルデバイス1の周方向に加わる力が所定の下限値未満である場合、又は上限値以上である場合、把持部42をロックする。
制御装置3は、トルク学習モデル9と同様、カテーテルデバイス1の周方向に加わる力の波形データに基づいて、術者の操作によって発生した力と、ノイズ又は術者の意図に反して発生した力とを判別するモデルを備える。当該モデルの構成、学習方法は、上記同様である。
制御部31は、上記センサを用いて検出された力の波形データを学習モデルに入力することによって、確度データを出力させる。制御部31は、学習モデルから出力される確度データに基づいて、検出された力が、術者の操作に起因するものであるか、ノイズに起因するものであるかを判別する。制御部31は、カテーテルデバイス1に加わった周方向の力がノイズに起因するものである場合、把持部42をロックし、術者の操作に起因するものである場合、把持部42をアンロックする。
なお、カテーテルデバイス1の横方向及び上下方向の移動量を同様にして制限するように構成してもよい。
【0074】
(実施形態4)
実施形態4に係るデバイス保持装置400は、把持部が接離可能に構成されたローラを2組み備える点が実施形態1と異なる。デバイス保持装置400のその他の構成は、実施形態1に係るデバイス保持装置100と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0075】
実施形態4においては、カテーテルデバイス1は、ワイヤ状の第1カテーテルデバイス11と、第1カテーテルデバイス11に外嵌し、第1カテーテルデバイス11に沿って移動することが可能な筒状の第2カテーテルデバイス12とを含むものとして説明する(
図12参照)。第2カテーテルデバイス12は、例えば、バルーンカテーテルである。
【0076】
図9は、実施形態4に係るデバイス保持装置400の構成例を説明する模式図である。実施形態4に係る把持部42は、対向配置された1対の第1ローラ442a(第1挟持部材)と、第1ローラ442aに駆動力を伝達する第1ギア機構442bとを有する。実施形態4に係る制御装置3は、駆動回路33によって駆動する第1サーボモータ433aを備える。第1サーボモータ433aの駆動力は第1ギア機構442bを介して第1ローラ442aに伝達し、第1ローラ442aは正方向又は逆方向に回転する。また、把持部42は、第1ローラ442aを、第1カテーテルに当接して挟持する挟持位置と、第1カテーテルデバイス11から離隔する離隔位置へ移動させる第1機構442cとを備える。第1機構442cは例えばリンク機構である。第2カテーテルデバイス12が第1カテーテルデバイス11に外嵌していない状態で、第1ローラ442aが挟持位置へ移動した場合、第1カテーテルデバイス11は第1ローラ442aによって挟持される。第1ローラ442aが離隔位置へ移動した場合、第1ローラ442aは第1カテーテルデバイス11から離隔し、第1カテーテルデバイス11に沿って第2カテーテルデバイス12が移動できる状態となる。
【0077】
同様にして、把持部42は、対向配置された1対の第2ローラ443a(第2挟持部材)と、第2ローラ443aに駆動力を伝達する第2ギア機構443bとを有すると、第2ローラ443aを挟持位置及び離隔位置へ移動させる第2機構443cとを備える。制御装置3は、駆動回路33によって駆動する第2サーボモータ433bを備える。第2サーボモータ433bの駆動力は第2ギア機構443bを介して第2ローラ443aに伝達し、第2ローラ443aは正方向又は逆方向に回転する。
【0078】
図10及び
図11は、実施形態4に係るデバイス保持装置400の制御手順を示すフローチャート、
図12は、実施形態4に係るデバイス保持装置400の制御方法を示す模式図である。制御部31は、
図12Aに示すように、第1機構442c及び第2機構443cを駆動し、第1ローラ442a及び第2ローラ443aを挟持位置へ移動させる(ステップS411)。第1カテーテルデバイス11は、第1ローラ442a及び第2ローラ443aによって挟持される。
【0079】
次いで、制御部31は、第1ローラ442a、第2ローラ443a、第1カテーテルデバイス11及び第2カテーテルデバイス12を撮像して得られる画像データを取得する(ステップS412)。制御部31は、取得した画像データに基づいて、第1ローラ442a及び第2ローラ443aの位置、第2カテーテルデバイス12の先端部及び末端部の位置を認識する(ステップS413)。先端部は、第2カテーテルデバイス12が患者に挿入される側の端部である。末端部は、先端部の反対側の端部である。
【0080】
制御部31は、第2カテーテルデバイス12の先端部が第1ローラ442aの近傍にあるか否かを判定する(ステップS414)。先端部が第1ローラ442a近傍にあると判定した場合(ステップS414:YES)、制御部31は、
図12Bに示すように、第1ローラ442aを離隔位置へ移動させる(ステップS415)。第1ローラ442aが離隔位置にある場合、第1カテーテルデバイス11に沿って第2カテーテルデバイス12を移動させ、第1ローラ442aを通過させることができる。
【0081】
ステップS415の処理を終えた場合、又は第2カテーテルデバイス12の先端部が第1ローラ442a近傍に無いと判定した場合(ステップS414:NO)、制御部31は、カテーテルデバイス1の先端部が第2ローラ443aの近傍にあるか否かを判定する(ステップS416)。先端部が第2ローラ443a近傍にあると判定した場合(ステップS416:YES)、制御部31は、
図12Cに示すように、第2ローラ443aを離隔位置へ移動させる(ステップS417)。第1ローラ442a及び第2ローラ443aが離隔位置にある場合、第1カテーテルデバイス11に沿って第2カテーテルデバイス12を移動させ、第1ローラ442a及び第2ローラ443aを通過させることができる。
【0082】
ステップS417の処理を終えた場合、又は第2カテーテルデバイス12の先端部が第2ローラ443a近傍に無いと判定した場合(ステップS416:NO)、第2カテーテルデバイス12の末端部が第1ローラ442aの近傍にあって、第1ローラ442aを通過したか否かを判定する(ステップS418)。末端部が第1ローラ442aを通過したと判定した場合(ステップS418:YES)、制御部31は、
図12Dに示すように、第1ローラ442aを挟持位置へ移動させる(ステップS419)。
【0083】
ステップS419の処理を終えた場合、又は第2カテーテルデバイス12の末端部が第1ローラ442a近傍に無く、又は第1ローラ442aを通過していないと判定した場合(ステップS418:NO)、制御部31は、カテーテルデバイス1の末端部が第2ローラ443aの近傍にあって、第2ローラ443aを通過したか否かを判定する(ステップS420)。末端部が第2ローラ443aを通過したと判定した場合(ステップS420:YES)、制御部31は、
図12Eに示すように、第2ローラ443aを挟持位置へ移動させる(ステップS421)。
【0084】
ステップS442の処理を終えた場合、又は第2カテーテルデバイス12の末端部が第2ローラ443a近傍に無く、又は第2ローラ443aを通過していないと判定した場合(ステップS420:NO)、制御部31は、実施形態1と同様、第1ローラ442a及び第2ローラ443aの回転、ロック及びアンロックの制御を行い(ステップS422)、処理をステップS412へ戻す。ただし、制御部31は、離隔位置にある第1ローラ442a又は第2ローラ443aの回転を制御しないように構成してもよい。
【0085】
実施形態4に係るデバイス保持装置400等によれば、ワイヤ状の第1カテーテルデバイス11に沿って筒状の第2カテーテルデバイス12を挿入させるような場合であっても第1カテーテルデバイス11の操作を補助することができる。
また、第2カテーテルデバイス12は把持部42を通過することができ、第1カテーテルデバイス11に沿って第2カテーテルデバイス12を自由に移動させることができる。
【符号の説明】
【0086】
100,200,300,400 デバイス保持装置
1 カテーテルデバイス
2 容器
3 制御装置
4 送給装置
5 撮像装置
6 記録媒体
7 血管造影装置
8 画像認識学習モデル
9 トルク学習モデル
10 ホルダ
11 第1カテーテルデバイス
12 第2カテーテルデバイス
41 ホルダ固定部
42 把持部
42a ローラ
42b ギア機構
31 制御部
32 記憶部
33 駆動回路
33a サーボモータ
33b トルクセンサ
34 取得部
35 出力部
36 操作部
32a 制御プログラム
433a 第1サーボモータ
433b 第2サーボモータ
442a 第1ローラ
442b 第1ギア機構
442c 第1機構
443a 第2ローラ
443b 第2ギア機構
443c 第2機構