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2023-132886情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132886
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230914BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230914BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20230914BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/483 C
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038456
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】磯部 厚志
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 太輝人
【テーマコード(参考)】
2G045
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB02
2G045FA16
5L099AA04
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】患者の局所的な血管内の状態に係る血栓症情報又はがん細胞情報を出力することができる情報処理方法を提供する。
【解決手段】コンピュータは、カテーテルデバイスにて患者から取得した血栓物質又は血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データを取得し、取得した前記画像データに基づいて、前記患者の血栓症に関する血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力する処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルデバイスにて患者から取得した血栓物質又は血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データを取得し、
取得した前記画像データに基づいて、前記患者の血栓症に関する血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力する
情報処理方法。
【請求項2】
前記画像データは、
前記患者の血管に挿抜され、表面に血栓物質又はがん細胞が付着した前記カテーテルデバイスを撮像して得られた画像データを含む
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
血栓物質が付着した前記カテーテルデバイスを撮像して得られる画像データが入力された場合に、前記患者の血栓症に関する血栓症情報を出力するように学習された学習モデルに、取得した前記画像データを入力して、前記患者の血栓症に関する血栓症情報を出力する
請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記患者の治療データを取得し、
血栓物質が付着した前記カテーテルデバイスを撮像して得られる画像データ及び前記患者の治療データが入力された場合に、前記患者の血栓症に関する血栓症情報を出力するように学習された学習モデルに、取得した前記画像データ及び前記治療データを入力して、前記患者の血栓症に関する血栓症情報を出力する
請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記カテーテルデバイスにて患者から取得した血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データが入力された場合に、前記患者のがん細胞に関するがん細胞情報を出力するように学習された学習モデルに、取得した前記画像データを入力して、前記患者のがん細胞に関するがん細胞情報を出力する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記患者の治療データを取得し、
前記カテーテルデバイスにて患者から取得した血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データ及び前記患者の治療データが入力された場合に、前記患者のがん細胞に関するがん細胞情報を出力するように学習された学習モデルに、取得した前記画像データ及び前記治療データを入力して、前記患者のがん細胞に関するがん細胞情報を出力する
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記血栓症情報又はがん細胞情報は悪性度に係る情報を含む
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記血栓症情報又はがん細胞情報は治療方針に係る情報を含む
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記血栓症情報又はがん細胞情報は予後に係る情報を含む
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記血栓症情報又はがん細胞情報は血栓症又はがんの病理データに係る情報を含む
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項11】
カテーテルデバイスにて患者から取得した血栓物質又は血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データを取得し、
取得した前記画像データに基づいて、前記患者の血栓症に関する血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
カテーテルデバイスにて患者から取得した血栓物質又は血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データを取得する取得部と
取得した前記画像データに基づいて、前記患者の血栓症に関する血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力する出力部と
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
狭心症又は心筋梗塞等の虚血性心疾患に対する低侵襲治療として、経皮的冠動脈インターベンション(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)に代表されるカテーテル治療が行われている。カテーテル治療においては、患者の全身状態を把握することを目的として手術前に血液検査が行われている。
【0003】
一方、特許文献1には、患者から採取した血液、血清等のサンプルを用いて心血管イベントの発症リスクを予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-008847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、術前に行われる血液検査は全身状態を把握するためのものであり、局所的な血管内の状態まではわからない。例えば、手術後、血管内の血栓が拡大する可能性があるかどうかはわからない。手術により血管内の血栓を取り除くことができても、血栓が再拡大すると再度手術が必要となる。
特許文献1に係る検査方法においても局所的な血管内の状態までは評価できない。
【0006】
一方、術前に行われる血液検査は全身状態を把握するためのものであり、患者のがん細胞情報は得られない。
【0007】
本開示の目的は、患者の局所的な血管内の状態に係る血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力することができる情報処理方法、コンピュータプログラム及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る情報処理方法は、カテーテルデバイスにて患者から取得した血栓物質又は血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データを取得し、取得した前記画像データに基づいて、前記患者の血栓症に関する血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力する。
【0009】
本開示の他の側面に係るコンピュータプログラムは、カテーテルデバイスにて患者から取得した血栓物質又は血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データを取得し、取得した前記画像データに基づいて、前記患者の血栓症に関する血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【0010】
本開示の他の側面に係る情報処理装置は、カテーテルデバイスにて患者から取得した血栓物質又は血液中のがん細胞を撮像して得られた画像データを取得する取得部と取得した前記画像データに基づいて、前記患者の血栓症に関する血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、患者の局所的な血管内の状態に係る血栓症情報又はがん細胞に関するがん細胞情報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係るデバイス保持装置の構成例を説明する模式図である。
図2】実施形態1に係る学習モデルの構成例を示す模式図である。
図3】実施形態1に係るテーブルを示す模式図である。
図4】実施形態1に係るデバイス保持装置の処理手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態1に係る血栓症情報出力画面の一例を示す模式図である。
図6】実施形態2に係るテーブルを示す模式図である。
図7】実施形態2に係るデバイス保持装置の処理手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態2に係る血栓症情報出力画面の一例を示す模式図である。
図9】実施形態3に係る学習モデルの構成例を示す模式図である。
図10】実施形態4に係るデバイス保持装置の構成例を説明する模式図である。
図11】実施形態4に係る学習モデルの構成例を示す模式図である。
図12】実施形態5に係るテーブルを示す模式図である。
図13】実施形態5に係るデバイス保持装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態に係るデバイス保持装置等を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るデバイス保持装置100の構成例を説明する模式図である。実施形態1に係るデバイス保持装置100は、長尺のカテーテルデバイス1を進退可能に保持する装置である。デバイス保持装置100は、カテーテル治療を行う術者の補助作業を代替するものである。デバイス保持装置100は、術者による操作内容あるいは操作意図に応じてカテーテルデバイス1の送給、並びにその進退のロック及びアンロックを制御する。
【0015】
本実施形態1で用いられる長尺のカテーテルデバイス1は、管状のホルダ10に収納保持されているものとする。ホルダ10に収納保持されたカテーテルデバイス1は、清潔野に配されている。カテーテルデバイス1は、例えば生理食塩水で満たされた容器2に浸されている。
なお、ホルダ10の形状は特に限定されるものでは無く、長尺のカテーテルデバイス1を引き出し可能に収納保持できる形状であれば足りる。例えば、ホルダ10は、平皿状の部材、カテーテルデバイス1が挿通する穴を有する箱体、カテーテルデバイス1が移動可能に嵌まる溝状の部材であってもよい。以下、本実施形態1では、ホルダ10は少なくともカテーテルデバイス1が出入りするホルダ端部10aを有するものとする。
【0016】
<デバイス保持装置100>
デバイス保持装置100は、制御装置(情報処理装置)3、送給装置4及び撮像装置5を備える。送給装置4はディスポーザブルユニットであり、制御装置3に着脱可能に取り付けられている。送給装置4は、カテーテルデバイス1を進退可能に送給する装置である。制御装置3は、送給装置4の動作を制御する回路である。
【0017】
送給装置4は、制御装置3に接続するためのディスポーザブルユニット側接続部4aと、ホルダ固定部41と、把持部42とを有する。
【0018】
ホルダ固定部41は、カテーテルデバイス1のホルダ端部10aを固定する部材である。ホルダ固定部41は、例えば断面U字状の部材であり、間隙を有して対向する1対の挟持板を有する。挟持板の間隔はホルダ端部10aの直径よりも小さい。ホルダ端部10aがホルダ固定部41の開口部、つまり挟持板の隙間に挿入されると、ホルダ端部10aはホルダ固定部41に締まり嵌めされ、固定される。ホルダ固定部41は弾性変形可能な部材、例えば樹脂で形成するとよい。
また、ホルダ固定部41は筒体であってもよい。筒体の内径はホルダ端部10aの外径以下である。ホルダ端部10aが筒体に挿入されると、ホルダ端部10aはホルダ固定部41に締まり嵌めされて固定される。
なお、上記したホルダ固定部41の構成は一例であり、ホルダ端部10aを固定することができれば、その構成は特に限定されるものでは無い。
【0019】
把持部42は、ホルダ固定部41に固定されたホルダ端部10aから引き出されるカテーテルデバイス1を進退可能に保持すると共に、カテーテルデバイス1の進退をロック可能に把持する部材である。把持部42は、例えば対向配置された1対のローラ42aと、後述するサーボモータ33aの駆動力をローラ42aに伝達して回転させるギア機構42bとを有する。ローラ42aは例えば樹脂製である。把持部42は、ホルダ固定部41に並び配されており、把持部42及びローラ42aは、ホルダ固定部41に固定されたホルダ端部10aから出たカテーテルデバイス1がローラ42aに引き込まれるような位置関係にある。1対のローラ42a間の距離は、カテーテルデバイス1を挟持することができる距離、言い換えるとカテーテルデバイス1の直径以下の距離である。カテーテルデバイス1が挟持される方向へ1対のローラ42aを付勢する付勢部材を備えてもよい。ローラ42aは、カテーテルデバイス1に対して所要の摩擦力を有し、ローラ42aが回転するとカテーテルデバイス1が進退方向へ移動し、ローラ42aが回転しないように固定された場合、カテーテルデバイス1の進退がロックされる。
【0020】
なお、カテーテルデバイス1の進退方向は、カテーテルデバイス1の長手方向を意味する。進出方向は清潔野からカテーテル挿入部位へ移動する方向、後退方向はカテーテル挿入部位から清潔野へ移動する方向を意味する。あるいは、進出方向はカテーテルデバイス1が近位側から遠位側へ移動する方向、後退方向はカテーテルデバイス1が遠位側から近位側へ移動する方向を意味する。
【0021】
制御装置3は、送給装置4に接続するための非ディスポーザブルユニット側接続部3aと、制御部31と、記憶部32と、駆動回路33と、サーボモータ33aと、取得部34と、出力部35と、操作部36とを備える。
【0022】
非ディスポーザブルユニット側接続部3aと、ディスポーザブルユニット側接続部4aとが接続されると、送給装置4が制御装置3に接続され、サーボモータ33aと、ギア機構42bとが接続される。
【0023】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)等の1又は複数の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子、計時部等を有するプロセッサ又はコンピュータである。制御部31は、物体検出及び画像認識に係る画像処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)又はAIチップ(AI用半導体)等の1又は複数の演算回路を備えてもよい。
制御部31には、記憶部32と、駆動回路33と、取得部34と、出力部35と、操作部36とが接続されている。制御部31は、記憶部32が記憶するコンピュータプログラム(プログラム製品)32aを実行することによって、本実施形態1に係る情報処理方法を実施する。コンピュータプログラム32aを実行することによって、制御部31は、カテーテルデバイス1を撮像して得られる画像データ(以下、カテーテル画像と呼ぶ。)に基づいて、患者の血栓症に関する血栓症情報を出力する。また、制御部31は、術者の操作内容及び操作意図が反映されたカテーテルデバイス1の進退方向の移動状態及び移動量に応じて、サーボモータ33aの回転又は停止を指示する制御信号を駆動回路33へ出力することによって、カテーテルデバイス1の進退、そのロック及びアンロックを制御する。なお、デバイス保持制御方法に係る処理機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0024】
記憶部32は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部32は、患者の血栓症情報を出力するためのコンピュータプログラム32aを記憶する。また、記憶部32は、カテーテルの表面を撮像して得られる画像データから患者の血栓症情報を得るための学習モデル7及びテーブル8を記憶する。学習モデル7及びテーブル8の詳細は後述する。
【0025】
コンピュータプログラム32aは、プログラム提供サーバからネットワークを介して配信される態様でもよい。制御装置3は通信にてプログラム提供サーバからコンピュータプログラム32aを取得して記憶部32に書き込む。コンピュータプログラム32aは、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク、磁気ディスク等の記録媒体6に読み出し可能に記録された態様でもよい。
【0026】
サーボモータ33aは、駆動回路33によって駆動し、少なくとも一つのローラ42aを正方向又は逆方向に回転させる。ローラ42aが正方向へ回転すると、カテーテルデバイス1は進出方向へ移動する。ローラ42aが逆方向へ回転すると、カテーテルデバイス1は後退方向へ移動する。また、サーボモータ33aは、ローラ42aの回転を停止させ、ロックすることができる。ローラ42aの回転がロックされると、カテーテルデバイス1の進退がロックされる。
【0027】
駆動回路33は、制御部31から出力される制御信号に従って、サーボモータ33aを駆動させる。駆動回路33は、制御信号に応じて、サーボモータ33aを正逆回転させ又は停止させる。
【0028】
取得部34は、撮像装置5が接続されるインタフェースである。撮像装置5は、カテーテルデバイス1の表面を撮像し、撮像して得られた時系列のカテーテル画像データを取得部34へ出力する。取得部34は、撮像装置5から出力されたカテーテル画像データを取得し、取得したカテーテル画像データを制御部31に与える。
カテーテル画像データ、特に血栓物質の画像を含む画像データは、患者の血栓症に関する情報を得るための元になるデータである。
また、カテーテル画像データは、カテーテルデバイス1に対する術者の操作内容及び操作意図を表した情報である。制御部31は、カテーテル画像データに基づいて、術者の操作内容及び操作意図、具体的には、カテーテルデバイス1の進退方向への移動状態及び移動量を検出することができる。
【0029】
出力部35は、カテーテル画像データに基づいて特定された血栓症情報を出力するインタフェースである。出力部35には、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置Aが接続されており、表示装置Aに血栓症情報を表示することができる。
【0030】
操作部36は、術者の操作を受け付けるタッチパネル、操作ボタン等のインタフェースである。操作部36は、術者の動きを検出するセンサ、すなわち術者のジェスチャー入力操作を受け付けるセンサであってもよい。制御部31は、操作部36を介して術者の操作を受け付ける。例えば、術者は、操作部36を用いて把持部42のロック及びアンロックを操作することができる。制御部31は、画像データに基づいて、把持部42のロック及びアンロックを制御しているが、操作部36を介してロック操作又はアンロック操作を受け付けた場合、操作内容を優先して、把持部42をロック又はアンロックする。
【0031】
図2は、実施形態1に係る学習モデル7の構成例を示す模式図である。学習モデル7は、例えば深層学習による学習済みの畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)を含む。学習モデル7は、カテーテル画像データが入力される入力層7aと、カテーテル画像データの特徴量を抽出する中間層7bと、検出されたオブジェクトに係る特徴マップを出力する出力層7cとを有する。学習モデル7は、例えばYOLOモデルである。
【0032】
学習モデル7の各層は複数のノードを有する。各層のノードはエッジで結ばれている。各層は、活性化関数(応答関数)を有し、エッジは重みを有する。各層のノードから出力される値は、前の層のノードの値と、エッジの重みと、層が持つ活性化関数とから計算される。エッジの重みは、学習によって変化させることができる。
【0033】
学習モデル7の入力層7aは、カテーテル画像データ、つまりカテーテル表面の画像を構成する各画素の画素値の入力を受け付ける複数のノードを有し、入力された画素値を中間層7bに受け渡す。なお、詳細にはカテーテル画像データは、所定サイズの正方形画像の画像データに正規化されて入力層7aに入力される。
中間層7bは、複数組みの畳み込み層(CONV層)及びプーリング層と、全結合層とを有する。畳み込み層は、前層のノードから出力された値に対してフィルタ処理を実行し、特徴マップを抽出する。プーリング層は、畳み込み層から出力された特徴マップを縮小して新たな特徴マップを得る。
出力層7cは、カテーテル画像から検出されたオブジェクトに係る最終的な特徴マップを出力するノードを有する。特徴マップは、オブジェクトを囲むバウンティングボックスの中心座標位置及び縦横サイズ、バウンティングボックスで囲まれた画像がオブジェクトの画像であることの確からしさを示す物体検出スコアと、オブジェクトが属するクラスの確からしさを示すクラススコア等を含む。
より具体的には、入力層7aに入力される正規化されたカテーテル画像は、複数のグリッドに分割され、複数のグリッド毎にバウンティングボックスの位置、サイズ、物体スコア、クラススコアが求められる。一つのグリッドにおけるバウンティングボックスの位置は、例えばグリッドの左上の頂点又は中心位置に対する相対的な位置として表される。
カテーテル画像がH×W個(H及びWは整数)のグリッドに分割され、検出するバウンティングボックスの候補の数がK個(Kは整数)、物体検出スコアがP次元(Pは整数)、クラス数がC個(Cは整数)であるとすると、特徴マップは、H×W×{K(2+2+P)+C}の要素で表されるテンソルデータとなる。
【0034】
なお、特徴マップには、互いに重複する複数のバウンティングボックスが含まれているが、重複するバウンティングボックスを除去する後処理、例えばNMS(Non-Maximum Suppression)処理によって、カテーテル画像に含まれる一又は複数のオブジェクトそれぞれを囲む最も確からしいバウンティングボックスの位置及びサイズ、物体検出スコア及びクラススコアが得られる。NMSは、クラススコア及びIoU(Intersection over Union)に基づく評価値によりバウンティングボックスの候補を絞り込む。
【0035】
学習モデル7の生成方法を説明する。まず、複数の正規化されたカテーテル画像データと、各カテーテル画像データのアノテーションファイルとを含む訓練データを用意する。アノテーションファイルは、対応するカテーテル画像に付与される正解値を示す教師データである。具体的には、アノテーションファイルは、対応するカテーテル画像に含まれる血栓画像を囲むバウンティングボックスの中心座標位置、縦横サイズ、クラスを示すデータである。クラスは、血栓再拡大の可能性(悪性度)と、最適な治療方針又は血栓物質の粘着性とに応じて分類されるグループを示す。カテーテル画像データと、クラスとの関係は、蓄積された患者のカルテデータから特定される。そして、制御部31は、訓練データのカテーテル画像が、CNNに入力された場合に、当該CNNから出力されるデータと、教師データが示すデータとの誤差(所定の損失関数又は誤差関数の値)が小さくなるように、誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等を用いて、ニューラルネットワークの重み係数を最適化することによって、学習モデル7を生成することができる。
【0036】
なお、学習モデル7の一例としてYOLOを説明したが、R-CNN、Fast R-CNN、Faster R-CNN、その他のCNN等を用いて学習モデル7を構成してもよい。また、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)、決定木、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)等のアルゴリズムを用いた学習モデル7を用いてもよい。更に学習モデル7は、上記した複数のアルゴリズムを組み合わせて構成してもよい。
また、血栓症の悪性度及び治療方針に係る情報として、クラスを特定可能な特徴マップを例示したが、出力データの態様は一例であり、血栓症の悪性度に係る情報及び治療方針に係る情報、又はこれらの情報に関連付けられた情報であれば、特に限定されるものでは無い。他の実施形態についても同様である。
【0037】
図3は、実施形態1に係るテーブル8を示す模式図である。テーブル8は、オブジェクトの種類、すなわち血栓物質の種類及び特性を示すクラスと、当該クラスに属する血栓物質の血栓再拡大の可能性(悪性度)と、最適な治療方針又は血栓物質の粘着性とを対応付けて記憶している。
【0038】
例えば、テーブル8は赤色血栓のクラス、白色血栓のクラスを含む。赤色血栓は、血液の滞留が原因で生ずるものであり、フィブリンを主体する血栓である。赤色血栓のクラスには、治療方針として「抗凝固薬」、例えばワルファリンカリウム、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩等の情報が対応付けられている。赤色血栓は、性状及び悪性度により更に複数のクラスに細分化される。
白色血栓は、動脈硬化が原因で生ずるものであり、血小板を主体とする血栓である。白色血栓のクラスには、治療方針として「抗血小板薬」、例えばクロピドグレル硫酸塩、アスピリン等の情報が対応付けられている。白色血栓は、性状及び悪性度により更に複数のクラスに細分化される。
なお、テーブル8は、治療方針に変えて、血栓物質の粘着性を示す情報を対応付けて記憶するように構成してもよい。血栓物質の粘着性は、治療方針に資する情報である。また、上記したクラスの分類は一例であり、上記のような分類に限定されるものではない。
【0039】
<情報処理方法(血栓症情報の出力)>
学習モデル7及びテーブル8を用いて、カテーテル治療が行われた患者の血栓再拡大の可能性(悪性度)と、治療方針又は血栓物質の粘着性とを特定して出力する方法を説明する。
【0040】
図4は、実施形態1に係るデバイス保持装置100の処理手順を示すフローチャート、図5は、実施形態1に係る血栓症情報出力画面9の一例を示す模式図である。制御部31は、カテーテルデバイス1の表面を撮像して得られる時系列のカテーテル画像データを取得する(ステップS111)。制御部31は、取得したカテーテル画像データに基づいて、把持部42のローラ回転を制御する(ステップS112)。具体的には、制御部31は、時系列のカテーテル画像データに基づいてカテーテルデバイス1の移動量を算出し、カテーテルデバイス1の移動量と同程度の長さのカテーテルデバイス1を容器2から送給するために必要な回数だけローラ42aを回転させる。また、制御部31は、カテーテルデバイス1の異常な動きを検出した場合、術者の意図に反する動きを検出した場合、把持部42をロックする。
【0041】
次いで、制御部31は、時系列のカテーテル画像データに基づいて、カテーテルデバイス1が引き戻されているか否かを判定する(ステップS113)。つまり、制御部31は、カテーテルデバイス1が患者側から把持部42及び容器2側へ移動しているか否かを判定する。
【0042】
なお、カテーテルデバイス1に設けられたマーカ、術者の手を撮像して得られた時系列の画像データに基づいてカテーテルデバイス1の移動方向を判定してもよい。患者の血管に造影剤を注入しながら、患者の生体外からX線を用いて血管及びカテーテルデバイス1の先端部に設けられたX線不透過の造影マーカを撮像して得られたアンギオ画像データに基づいて、カテーテルデバイス1の移動方向を判定してもよい。把持部42にトルクセンサを設け、術者によるカテーテルデバイス1の操作によってローラ42aに加わるトルクに基づいて、カテーテルデバイス1の移動方向を判定してもよい。術者による操作部36の操作内容に基づいて、カテーテルデバイス1の移動方向を判定してもよい。術者による操作内容は、ジェスチャ入力、声入力、その他の方法で制御装置3に入力されるように構成してもよい。
【0043】
カテーテルデバイス1が引き戻されていないと判定した場合(ステップS113:NO)、制御部31は処理をステップS111へ戻し、把持部42のローラ制御を継続する。カテーテルデバイス1が引き戻されていると判定した場合(ステップS113:YES)、制御部31は、取得部34にて取得したカテーテル画像データを学習モデル7に入力することによって、特徴マップを出力する(ステップS114)。特徴マップから、血栓物質を囲むバウンティングボックスの中心位置の座標、縦横サイズ、物体検出スコア、クラススコアが得られる。
【0044】
次いで、制御部31は、特徴マップから得られたクラススコアをキーとしてテーブル8を参照し、血栓再拡大の可能性(悪性度)と、治療方針又は粘着性とを特定する(ステップS115)。
【0045】
制御部31は、カテーテル表面に血栓物質が付着したカテーテル画像データを出力部35から表示装置Aに出力することによって、血栓物質画像を含むカテーテル画像を表示する(ステップS116)。
【0046】
例えば、制御部31は、図5に示すような血栓症情報出力画面9のデータを、出力部35を介して表示装置Aへ出力することによって、血栓症情報出力画面9を表示装置Aに表示させる。血栓症情報出力画面9は、カテーテル画像表示部91と、悪性度及び治療方針表示部92とを含む。制御部31は、所定値以上のクラススコアが得られたカテーテル画像をカテーテル画像表示部91に表示させる。
【0047】
次いで、制御部31は、血栓物質画像の縁に沿う縁画像91aをカテーテル画像に重畳表示させる(ステップS117)。制御部31は、特徴マップの情報から得られるバウンティングボックスの位置及びサイズの情報に基づいて、カテーテル画像データから血栓画像を含む画像部分を抽出することができる。制御部31は画像部分に対するエッジ検出処理によって、血栓物質の輪郭を囲む縁画像91aを得ることができ、当該縁画像91aをカテーテル画像に重畳させ、縁画像91aが重畳されたカテーテル画像のデータを出力部35から表示装置Aへ出力する。なお、縁画像91aは、図5に示すように、血栓物質の輪郭からの統計距離が最小になる楕円図形であってもよい。縁画像91aは血栓画像と同色であることが望ましい。
なお、制御部31は、特徴マップから得られるバウンティングボックスの位置及び縦横サイズの情報に基づいて、血栓物質の画像を囲む矩形枠画像を生成し、生成した矩形枠画像をカテーテル画像に重畳するように構成してもよい。
【0048】
次いで、制御部31は、ステップS115で特定した血栓再拡大の可能性(悪性度)と、治療方針又は粘着性とを表した文字画像データを、図5に示すように悪性度及び治療方針表示部92に表示する(ステップS118)。
【0049】
以上の通り構成された本実施形態1に係る制御装置(情報処理装置)3等によれば、カテーテルデバイス1に付着した血栓物質を撮像して得られるカテーテル画像データに基づいて、患者の局所的な血管内の状態に係る血栓症情報を出力することができる。
【0050】
具体的には、制御装置3は、カテーテル治療を行った患者の血栓の悪性度を示す情報を出力又は表示することができる。
【0051】
また、制御装置3は、カテーテル治療を行った患者の術後の治療方針又は血栓物質の粘着性に関連する情報を出力又は表示することができる。
【0052】
YOLO等の学習モデル7を用いることにより、時系列のカテーテル画像データから血栓物質の検出、クラス検出等をリアルタイムで実行することができる。また、学習モデル7によれば、血栓物質の形状、色、性状等の特徴から、当該血栓物質の再拡大の可能性(悪性度)、治療方針又は粘着性等の情報を特定し、出力することができる。
【0053】
なお、本実施形態1では、カテーテルデバイス1の表面を撮像して得た画像データを用いて、血栓症情報を得る例を説明したが、血栓物質の撮像方法は特に限定されるものでは無い。例えば、血管内の血栓物質を捕集するフィルタ等の捕集デバイスを備えたカテーテルデバイスを用いて、患者から血栓物質を採取し、フィルタに捕集された血栓物質を撮像装置5にて撮像するように構成してもよい。具体的にはカテーテルデバイス1が備えるフィルタを撮像して得た画像データを用いて、血栓症情報を出力するように構成してもよい。なお、捕集デバイスは、例えば筒状に形成された網線を有する部材である。捕集デバイスの種類、形態は特に限定されるものではない。
【0054】
(実施形態2)
実施形態2に係るデバイス保持装置100は、血栓症情報として更に病理データを表示することができる点が実施形態1と異なる。デバイス保持装置100のその他の構成は、実施形態1に係るデバイス保持装置100と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0055】
図6は、実施形態2に係るテーブル208を示す模式図である。実施形態2に係るテーブル208は、クラスと、血栓再拡大の可能性(悪性度)と、最適な治療方針又は血栓物質の粘着性と、当該クラスに属する血栓物質に関する典型的な病理データとを対応付けて記憶している。病理データは、例えば、当該血栓物質の病理検査により得られた画像(以下、病理検査画像と呼ぶ。)、血栓症拡大の因子等の情報を含む。血栓症に関連する因子としては、例えば、ヘキソキナーゼII、組織因子(Tissue Factor)、PAI-1(Plasminogen activator inhibitor-1)、フィブリン(Fibrin)等が挙げられる。病理検査画像は、例えばこれらの因子の陽性面積を示す検査結果画像である。
【0056】
図7は、実施形態2に係るデバイス保持装置100の処理手順を示すフローチャートである。実施形態2に係る制御部31は、実施形態1のステップS111~ステップS118と同様の処理を実行する(ステップS211~ステップS218)。次いで、制御部31は、特徴マップから得られたクラススコアをキーとしてテーブル208を参照し、検出された血栓物質の病理データを特定する(ステップS219)。そして、制御部31は、特定した病理データを表示装置Aに表示する(ステップS220)。
【0057】
図8は、実施形態2に係る血栓症情報出力画面209の一例を示す模式図である。実施形態2に係る血栓症情報出力画面209は、カテーテル画像表示部91及び悪性度及び治療方針表示部92に加え、検査結果表示部93と、因子表示部94とを含む。制御部31は、ステップS119及びステップS220の処理により、特定された病理検査画像を検査結果表示部93に表示し、血栓再拡大の因子を因子表示部94に表示する。
【0058】
実施形態2に係る制御装置(情報処理装置)3等によれば、カテーテル治療を行った患者の血栓再拡大の可能性、術後の治療方針に加え、病理データを表示することができる。病理データを参考にすることによって、血栓物質の種類に応じた適切な治療を行うことができる。
【0059】
(実施形態3)
実施形態3に係るデバイス保持装置100は、学習モデル307の構成が実施形態1と異なる。デバイス保持装置100のその他の構成は、実施形態1に係るデバイス保持装置100と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0060】
図9は、実施形態3に係る学習モデル307の構成例を示す模式図である。実施形態3に係る制御装置3は、学習モデル307として、物体検出学習モデル371と、病理認識学習モデル372と、画像抽出処理部373とを備える。物体検出学習モデル371は、実施形態1の学習モデル307と同じ構成であり、入力層371a、中間層371b及び出力層371cを備える。画像抽出処理部373は、物体検出学習モデル371から出力される特徴マップの情報に基づいて、カテーテル画像に含まれる血栓物質の画像部分の画像データ(以下、血栓物質画像データと呼ぶ)を抽出し、抽出した血栓物質画像データを病理認識学習モデル372に入力させる。
【0061】
病理認識学習モデル372は、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を含む。病理認識学習モデル372は、血栓物質画像データが入力される入力層372aと、血栓物質画像データの特徴量を抽出する中間層372bと、抽出された特徴量に応じた複数の血栓再拡大の因子がそれぞれ陽性であることの確からしさを示す確度データを出力する出力層372cとを有する。
【0062】
出力層372cは、例えば、ヘキソキナーゼII、組織因子、PAI-1、フィブリン、その他の因子が陽性である確からしさを示す確度データを出力する複数のノードを有する。複数のノードは、複数の因子にそれぞれ対応している。
【0063】
病理認識学習モデル372の生成方法を説明する。まず、複数の血栓物質画像データと、当該血栓物質の血栓再拡大に係る複数の因子が陽性であるか否かを示す教師データとを含む訓練データを用意する。そして、制御部31は、訓練データの血栓物質画像データが、CNNに入力された場合に、当該CNNから出力されるデータと、教師データが示すデータとの誤差(所定の損失関数又は誤差関数の値)が小さくなるように、誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等を用いて、ニューラルネットワークの重み係数を最適化することによって、病理認識学習モデル372を生成することができる。
【0064】
制御部31は、カテーテル画像データを物体検出学習モデル371に入力することによって、実施形態1と同様にして特徴マップを得ることができ、テーブル8を参照することによって血栓再拡大の可能性、治療方針等を特定する。また、画像抽出処理部373によって抽出された血栓物質画像データを病理認識学習モデル372に入力することによって、血栓再拡大の複数の因子それぞれが陽性であるか否かを特定する。制御部31は、特定された血栓再拡大の可能性、治療方針、陽性となった因子を示す情報を血栓症情報出力画面9に表示する。
【0065】
実施形態3に係る制御装置(情報処理装置)3等によれば、血栓物質の形状、色、性状等の特徴を病理認識学習モデル372によって認識し、血栓再拡大の因子を特定し、表示することができる。
【0066】
(実施形態4)
実施形態4に係るデバイス保持装置400は、患者のカテーテル治療の内容を考慮した血栓症情報を表示することができる点が実施形態1と異なる。デバイス保持装置400のその他の構成は、実施形態1に係るデバイス保持装置100と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0067】
図10は、実施形態4に係るデバイス保持装置400の構成例を説明する模式図である。実施形態4に係る制御装置403は、更に通信部37を備える。通信部37は、有線通信又は無線通信によって、インターネット又はLAN(Local Area Network)等のネットワークに接続するための通信回路であり、ネットワークを介して外部サーバ411との間でデータの送受信を行う。外部サーバ411は、患者の情報を蓄積した患者DB411aを備える。患者DB411aは、患者を識別する患者IDと、患者の年齢、性別、病名、既往歴等の患者情報と、患者に対するカテーテル治療の内容を示す治療データとを対応付けて記憶している。カテーテル治療の内容には、カテーテル治療が行われた血管が動脈であるか静脈であるかを示す情報が含まれる。
【0068】
図11は、実施形態4に係る学習モデル407の構成例を示す模式図である。実施形態4に係る学習モデル407の基本的な構成は、実施形態1の学習モデル7と同様であり、入力層407a、中間層407b及び出力層407cを備える。ただし、入力層407aは、カテーテル画像データに加え、患者の治療データが入力されるノードを有する。学習モデル407は、入力層407aに入力されたカテーテル画像データの特徴量と、治療データとに基づく特徴マップを出力する。
【0069】
制御部31は、取得部34にてカテーテル画像データを取得し、通信部37を介して治療データを取得する。そして、取得したカテーテル画像データ及び治療データを学習モデル407に入力することによって特徴マップを得る。以下の処理は、実施形態1~3と同様である。
【0070】
実施形態4に係る制御装置(情報処理装置)403等によれば、カテーテル画像データに加え、患者の治療データを加味して、血栓拡大の可能性、治療方針等を表示することができる。
【0071】
なお、外部サーバ411から治療データを取得する例を説明したが、操作部36にて治療情報の入力を受け付けるように構成してもよい。
また、治療データに加え、既往歴を含む患者の基本情報を学習モデル407に入力するように構成してもよい。既往歴は、当該患者に対して行った過去のカテーテル治療の内容を示す治療データが含まれる構成が望ましい。
【0072】
(実施形態5)
実施形態5に係るデバイス保持装置100は、撮像装置5、学習モデル7の構成及び処理内容が実施形態1及び4と異なる。デバイス保持装置100のその他の構成は、実施形態1又は4に係るデバイス保持装置100と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0073】
実施形態5に係る撮像装置5は、人の細胞を撮像できる分解能を有する。
実施形態5に係る制御装置3の制御部31は、カテーテルデバイス1を撮像して得られるカテーテル画像に基づいて、患者のがん細胞に関するかん細胞情報を出力する。実施形態5に係るカテーテル画像は、カテーテルデバイス1の表面に付着したがん細胞を撮像して得た画像である。なお、本実施形態5ではカテーテル表面を撮像することによって、患者のがん細胞の画像データを得る例を説明するが、カテーテルデバイス1を用いた血液中のがん細胞の撮像方法は特に限定されるものでは無い。例えば、
血液を吸引する吸引器等の吸引デバイスを備えたカテーテルデバイス1を用いて、患者から血液を採取し、採取された血液を撮像装置5にて撮像するように構成してもよい。また、例えば、抜去されたカテーテルデバイス1の表面から血液を採取する装置を用いて血液サンプルを採取し、採取された血液サンプルを撮像することによってがん細胞を撮像してもよい。
【0074】
実施形態5に係る学習モデル7の基本的な構成は、実施形態1の学習モデル7又は実施形態4の学習モデル407と同様である。ここでは、実施形態1と同様のモデルを説明する。ただし、実施形態5に係る学習モデル7は、カテーテル画像データが入力された場合に、患者のがん細胞に関するがん細胞情報を出力するように学習されている。具体的には、学習モデル7から出力される特徴マップが示すクラスは、がんの悪性度、予後、がんの治療方針情報、及びがんの病理データを示すデータである。
【0075】
学習モデル7の生成方法を説明する。まず、複数の正規化されたカテーテル画像データと、各カテーテル画像データのアノテーションファイルとを含む訓練データを用意する。アノテーションファイルは、対応するカテーテル画像に付与される正解値を示す教師データである。具体的には、アノテーションファイルは、対応するカテーテル画像に含まれるがん細胞画像を囲むバウンティングボックスの中心座標位置、縦横サイズ、クラスを示すデータである。クラスは、がんの悪性度と、予後と、最適ながんの治療方針と、当該がん細胞に類似の病理データとに応じて分類されるグループを示す。カテーテル画像データと、クラスとの関係は、蓄積された患者のカルテデータから特定される。そして、制御部31は、訓練データのカテーテル画像が、CNNに入力された場合に、当該CNNから出力されるデータと、教師データが示すデータとの誤差(所定の損失関数又は誤差関数の値)が小さくなるように、誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等を用いて、ニューラルネットワークの重み係数を最適化することによって、学習モデル7を生成することができる。
【0076】
なお、学習モデル7の種類及び出力データの態様がYOLO及び特徴マップに限定されないことは実施形態1~4と同様である。
【0077】
図12は、実施形態5に係るテーブル508を示す模式図である。制御装置3の記憶部32は、実施形態5に係るテーブル508を記憶する。テーブル508は、オブジェクトの種類、すなわちがん細胞の病理学的悪性度によって分類されたクラスと、当該クラスに属するがん細胞の悪性度と、最適ながんの治療方針と、当該クラスに分類されるがんの病理データとを対応付けて記憶している。
【0078】
図13は、実施形態5に係るデバイス保持装置の処理手順を示すフローチャートである。実施形態5に係る制御部31は、実施形態1のステップS111~ステップS114と同様の処理を実行する(ステップS511~ステップS514)。
【0079】
次いで、制御部31は、特徴マップから得られたクラススコアをキーとしてテーブル508を参照し、がん細胞の悪性度と、予後と、がんの治療方針を特定する(ステップS515)。
【0080】
制御部31は、がん細胞を含むカテーテル画像データを出力部35から表示装置Aに出力することによって、がん細胞を含むカテーテル画像を表示装置Aに表示する(ステップS516)。
【0081】
次いで、制御部31は、がん細胞の縁に沿う縁画像をカテーテル画像に重畳表示させる(ステップS517)。
【0082】
次いで、制御部31は、ステップS515で特定した悪性度と、予後と、治療方針とを表した文字画像データを表示装置Aに表示する(ステップS518)。
【0083】
次いで、制御部31は、特徴マップから得られたクラススコアをキーとしてテーブル508を参照し、検出されたがん細胞の病理データを特定する(ステップS519)。そして、制御部31は、特定した病理データを表示装置Aに表示する(ステップS520)。
【0084】
実施形態5に係る制御装置(情報処理装置)3等によれば、カテーテル治療を行った患者のがんの悪性度、予後、治療方針等を表示することができる。また、採取された血液中のがん細胞と類似のがんの病理データを表示することができる。悪性度、予後、病理データを参考にすることによって、がんの種類、病理的悪性度に応じた適切な治療を行うことができる。
【0085】
なお、実施形態4と同様、カテーテル画像に加え、患者の治療データも利用して、がん細胞情報を出力するように構成してもよい。つまり、カテーテル画像データに加え、患者の治療データが入力されるノードを学習モデル7の入力層7aに備えるとよい。
【0086】
また、実施形態1~4と、実施形態5とを組み合わせ、血栓症情報及びがん細胞情報の双方を出力するように構成してもよい。血栓症情報を得るための第1学習モデルと、がん細胞情報を得るための第2学習モデルを備えるように構成しても良いし、一つの学習モデル7を用いて、血栓物質画像及びがん細胞画像の特徴を検出するように構成してもよい。一つの学習モデル7で構成する場合もモデルの構成は実施形態1-5と同様であり、血栓物質及びがん細胞を判別し、血栓物質及びがん細胞それぞれを、悪性度、予後、治療方針に基づいて分類するように学習させるとよい。
【符号の説明】
【0087】
100,400 デバイス保持装置
1 カテーテルデバイス
2 容器
3 制御装置
4 送給装置
5 撮像装置
6 記録媒体
7 学習モデル
8,508 テーブル
9,209 血栓症情報出力画面
10 ホルダ
41 ホルダ固定部
42 把持部
42a ローラ
42b ギア機構 31 制御部
32 記憶部
33 駆動回路
33a サーボモータ
34 取得部
35 出力部
36 操作部
32a コンピュータプログラム
371 物体検出学習モデル
372 病理認識学習モデル
373 画像抽出処理部
A 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13