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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132890
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】荷棚走行ムーバー
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20230914BHJP
   B62D 63/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B62D63/02
B61B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038464
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522100198
【氏名又は名称】新幹線メンテナンス東海株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】望月 廣昭
(72)【発明者】
【氏名】保坂 栄二
(72)【発明者】
【氏名】栗林 宏臣
(72)【発明者】
【氏名】桑島 阿友美
(72)【発明者】
【氏名】安食 政寿
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BB12
3D101BB16
(57)【要約】
【課題】荷棚からの落下を防止できる安全性の高い荷棚走行ムーバーの提供。
【解決手段】荷棚走行ムーバー1は、荷棚2上を走行する車体10を備え、車体10は、荷棚2に沿って車体10を案内するガイド輪43と、荷棚2の縁側に配置され、荷棚2上を走行する駆動輪41と、駆動輪41よりも荷棚2の奥側に配置され、荷棚2上を走行する従動輪42と、を備え、車体10は、荷棚2の奥行き方向において、駆動輪41よりも従動輪42側に重心Gを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷棚上を走行する車体を備え、
前記車体は、
前記荷棚に沿って前記車体を案内するガイド輪と、
前記荷棚の縁側に配置され、前記荷棚上を走行する駆動輪と、
前記駆動輪よりも前記荷棚の奥側に配置され、前記荷棚上を走行する従動輪と、を備え、
前記車体は、前記荷棚の奥行き方向において、前記駆動輪よりも前記従動輪側に重心を有する、ことを特徴とする荷棚走行ムーバー。
【請求項2】
前記駆動輪は、少なくとも前記荷棚の縁側に1つ配置され、
前記従動輪は、少なくとも前記荷棚の奥側に2つ配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の荷棚走行ムーバー。
【請求項3】
平面視で、少なくとも前記1つの駆動輪および前記2つの従動輪による前記荷棚上の3つの接点を結んだ範囲内に、前記車体の重心を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の荷棚走行ムーバー。
【請求項4】
前記ガイド輪は、前記荷棚の奥側に配置され、前記荷棚の奥側に立設した壁に当接しながら転動する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の荷棚走行ムーバー。
【請求項5】
前記ガイド輪は、前記荷棚の縁側に配置され、前記荷棚の縁に当接しながら転動する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の荷棚走行ムーバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷棚走行ムーバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、航空機などの機内を監視する室内監視システムが開示されている。この室内監視システムは、機内の天井や壁に埋め込まれた配管内を自由に移動可能なマイクロマシン(ムーバー)を備える。マイクロマシンは、映像音声情報を取得するマイクロカメラユニットを搭載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3926155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記室内監視システムは、機内の天井や壁に、ムーバーの移動経路である配管を埋め込む必要があり、簡単に取り付けと取り外しをすることが困難であった。
この問題に対し、本願発明者らは、座席などの上方に配置された荷棚上を走行するムーバーを開発し、簡単に取り付けと取り外しが行えるようにすることを考えた。
しかしながら、荷棚は配管と違って、ムーバーの移動経路のサイドが閉じられていないため、ムーバーが脱輪する可能性があった。そして、万が一、ムーバーが脱輪した際には、ムーバーが暴走しないようにすぐに移動を停止し、落下を防止する必要があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、荷棚からの落下を防止できる安全性の高い荷棚走行ムーバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、荷棚上を走行する車体を備え、前記車体は、前記荷棚に沿って前記車体を案内するガイド輪と、前記荷棚の縁側に配置され、前記荷棚上を走行する駆動輪と、前記駆動輪よりも前記荷棚の奥側に配置され、前記荷棚上を走行する従動輪と、を備え、前記車体は、前記荷棚の奥行き方向において、前記駆動輪よりも前記従動輪側に重心を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、荷棚からの落下を防止できる安全性の高い荷棚走行ムーバーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る荷棚走行ムーバーの斜視図である。
図2図1に示す荷棚走行ムーバーの進行方向から視た荷棚の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバーの機能ブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバーの平面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバーの底面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバーの右側面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバーの分解斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバーの平面模式図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバーが荷棚の縁から脱輪した様子を示した平面模式図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る荷棚走行ムーバーの斜視図である。
図11図10に示す荷棚走行ムーバーの進行方向から視た荷棚の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、新幹線の車両の荷棚に、本発明の実施形態に係る荷棚走行ムーバーを適用した場合を例示する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバー1の斜視図である。図2は、図1に示す荷棚走行ムーバー1の進行方向から視た荷棚2の断面図である。
図1に示すように、荷棚走行ムーバー1は、荷棚2上を走行する車体10を備えている。荷棚2は、例えば、図示しない車両の座席の上方に設置されている。
【0011】
なお、以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。X軸方向は、荷棚走行ムーバー1の進行方向(荷棚2の長手方向とも言う)である。Y軸方向は、荷棚2の奥行き方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交する鉛直方向である。
【0012】
荷棚2は、図示しない車両の略全長に亘ってX軸方向に延在している。荷棚2の上面3は、荷棚走行ムーバー1の移動経路となっている。荷棚2の上面3は、図2に示すように、荷棚2の手前側から奥側にかけて下方に傾斜している。なお、荷棚2の上面3は、水平面であっても構わない。また、荷棚2の上面3には、段差があっても構わない。荷棚2の上面3の段差としては、荷棚構成部品の連結部や継ぎ目などを例示できる。
【0013】
荷棚2の手前側には、X軸方向に延びる縁4が形成されている。荷棚2の縁4は、やや上向きになっている。荷棚2の奥側には、壁5が立設している。荷棚2の壁5は、鉛直方向に立設すると共に、荷棚2の縁4と同様にX軸方向に延びている。なお、荷棚2の壁5における荷棚2の上面3との接続部5aは、奥行き方向奥側に向かって僅かに傾斜している。
【0014】
図3は、本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバー1の機能ブロック図である。
図3に示すように、荷棚走行ムーバー1は、電源部20と、制御部30と、走行部40と、前方検出部50と、後方検出部60と、操作部70と、通信部80と、機能拡張部90と、を備えている。
【0015】
電源部20は、制御部30と接続されている。電源部20は、例えば、充放電可能なバッテリー(二次電池)である。電源部20は、車体10に搭載されている機能部品の中で一番重い部品である。なお、電源部20は、二次電池に限らず、スーパーキャパシタなどであってもよい。また、電源部20は、一次電池などであっても構わない。
【0016】
制御部30は、電源部20、走行部40、前方検出部50、後方検出部60、操作部70、および通信部80と、有線または無線で接続されている。制御部30は、荷棚走行ムーバー1の全体の動きを制御する。走行部40は、制御部30の制御によって、車体10をX軸方向に移動させる。
【0017】
前方検出部50は、車体10の前方に配置され、車体10の進行方向前方側の終端の壁や障害物などを検出する。また、後方検出部60は、車体10の後方に配置され、車体10の進行方向後方側の終端の壁や障害物などを検出する。前方検出部50および後方検出部60は、検出結果を制御部30に出力する。
【0018】
前方検出部50及び後方検出部60は、例えば、レーザーの照射及び反射により壁や障害物の有無およびそれらと車体10との距離を計測するレーザーセンサである。
なお、車体10は、X軸方向の一方側と他方側のいずれにも移動できる。上述した前方検出部50及び後方検出部60は、車体10の進行方向によって前方と後方を言い換えることができる。
【0019】
操作部70は、例えば、物理スイッチであって、制御部30に走行開始などの指令を出力する。なお、操作部70は、画面を有するタッチパネルであっても構わない。通信部80は、図示しない外部装置と通信を行う。外部装置としては、荷棚走行ムーバー1を制御する上位装置や、インターネットなどのネットワーク上のサーバーなどを例示することができる。
【0020】
機能拡張部90は、荷棚走行ムーバー1の使用目的に応じて、機能を拡張する部分である。機能拡張部90としては、例えば、デジタルカメラ、赤外線カメラ、温度センサ、圧力センサ、湿度センサ、二酸化炭素センサ、掃除機や清掃用具(刷毛やワイパー)などである。本実施形態では、機能拡張部90として、デジタルカメラを搭載している。
【0021】
続いて、図4図7を追加参照して、荷棚走行ムーバー1の具体的な構成について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバー1の平面図である。図5は、本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバー1の底面図である。図6は、本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバー1の右側面図である。図7は、本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバー1の分解斜視図である。なお、図7では、図1に示す荷棚走行ムーバー1の車体10からカバー12を取り外した状態を示している。
【0022】
荷棚走行ムーバー1の車体10は、車体10の底部を構成するベースプレート11(図5参照)と、ベースプレート11の上面側を覆うカバー12(図4参照)と、を備えている。ベースプレート11は、強度部材であることが好ましく、例えば、金属などから形成されている。カバー12は、軽量部材であることが好ましく、例えば、樹脂などから形成されている。
【0023】
ベースプレート11は、図5に示す底面視で矩形に形成されている。ベースプレート11は、Y軸方向(荷棚2の奥行き方向)を長手方向とし、X軸方向(進行方向)を短手方向としている。図7に示すように、ベースプレート11には、電源部20、制御部30、走行部40、前方検出部50、後方検出部60、操作部70、および通信部80が搭載されている。また、ベースプレート11には、アーム13を介して機能拡張部90が搭載されている。
【0024】
電源部20は、ベースプレート11の長手方向の奥側(荷棚2の奥側)に配置されている。制御部30は、ベースプレート11の長手方向の略中間位置に配置されている。前方検出部50および後方検出部60は、ベースプレート11の長手方向の中間位置よりもやや手前側、且つ車体10の前後に配置されている。操作部70は、ベースプレート11の長手方向の手前側(荷棚2の縁側)の端部に配置されている。
【0025】
走行部40は、駆動輪41と、従動輪42と、ガイド輪43と、を備えている。駆動輪41は、図2に示すように、車体10における荷棚2の縁側に配置され、荷棚2上を走行する。駆動輪41は、図7に示すように、モーター41aと、モータードライバ41bと、を備えている。モータードライバ41bは、制御部30の制御によって、モーター41aを正転または逆転させる。
【0026】
モーター41aは、ベースプレート11の長手方向の略中間位置に配置されている。モータードライバ41bは、制御部30との間で、モーター41aをX軸方向で挟んで配置されている。駆動輪41は、モーター41aと接続され、図5に示すように、ベースプレート11に形成された第1開口部11aを介して、ベースプレート11の底面側に露出(突出)している。
【0027】
従動輪42は、図2に示すように、荷棚2の奥側に配置され、荷棚2上を走行する。従動輪42は、図7に示すように、ベースプレート11において電源部20よりも奥側(荷棚2の奥側)に配置され、且つ進行方向(X軸方向)に離間して一対で設置されている。一対の駆動輪41は、図5に示すように、ベースプレート11に形成された一対の第2開口部11bを介して、ベースプレート11の底面側に露出(突出)している。
【0028】
従動輪42は、例えば、ボールキャスターであって、荷棚2の上面3の路面状態(例えば微小な凹凸)に対応してあらゆる方向に回転する。なお、従動輪42は、ローラーキャスターであっても構わない。但し、ローラーキャスターの場合、ローラーの首振りで車体10が蛇行する場合がある。その点、ボールキャスターであれば、回転方向が変わっても荷棚2上の接点位置は動かないため、車体10の走行安定性を高めることができる。
【0029】
ガイド輪43は、図2に示すように、荷棚2の奥側に配置され、荷棚2の奥側に立設した壁5(接続部5a)に当接しながら転動する。これにより、荷棚2に沿って車体10をX軸方向に案内することができる。ガイド輪43は、図7に示すように、ベースプレート11において従動輪42よりも奥側(荷棚2の奥側)に配置され、且つ進行方向(X軸方向)に離間して一対で設置されている。
【0030】
ベースプレート11の側面には、図6に示すように、車体10の手前側に展開可能なアーム13が連結されている。アーム13は、図7に示すように、ベースプレート11の側面に回動軸13cを介して連結された一対の回動アーム13aと、回動アーム13aの先端部同士を連結する連結アーム13bと、を備えている。連結アーム13bの長手方向(X軸方向)の略中間位置には、機能拡張部90が取り付けられている。
【0031】
回動軸13cは、回動アーム13aの基端部をX軸方向に延びる軸回りに軸支している。ベースプレート11は、回動軸13cの近傍に、回動アーム13aに係止する係止片11cを備えている。アーム13は、連結アーム13b(機能拡張部90)がベースプレート11の上方に位置する収容位置と、連結アーム13b(機能拡張部90)が荷棚2の縁4よりも手前側に突出する展開位置との間で回動可能とされている。
【0032】
係止片11cは、上述した収容位置及び展開位置において回動アーム13aの基端部に係止し、アーム13の姿勢を維持する。アーム13が収容位置に位置するとき、回動アーム13aは、図6において二点鎖線で示すように、前方検出部50の一部を覆う(後方検出部60も同様)。前方検出部50は、レーザーを照射する投光部51および反射したレーザーを受光する受光部52を備え、収容位置では、投光部51が回動アーム13aによって覆われて(保護されて)いる。
【0033】
カバー12には、アーム13が収容位置に位置するときに、連結アーム13bおよび機能拡張部90を収容する収容溝12aが形成されている。収容溝12aは、X軸方向に延びる通し溝である。なお、収容溝12aよりもカバー12の手前側の上面は、水平な平面となっている。一方、収容溝12aよりもカバー12の奥側の上面は、荷棚2の奥側に向かって下方に傾斜する傾斜面となっている。
【0034】
ベースプレート11の底面には、図5に示すように、取手14が取り付けられている。取手14は、略U字状に形成され、ベースプレート11において第1開口部11a(駆動輪41)よりも手前側に配置されている。ベースプレート11の両側面には、終端の壁や障害物と車体10との衝突を防止するストッパー15が取り付けられている。ストッパー15は、少なくとも前方検出部50および後方検出部60よりもX軸方向に突出している。
【0035】
操作部70は、図5に示すように、電源スイッチ71と、複数の操作ボタン72と、非常停止ボタン73と、を備えている。操作ボタン72には、例えば、走行開始、前進や後退などの指令が割り振られている。なお、操作部70の各指令の割り振りは一例であって、この構成に限定されるものではない。
【0036】
続いて、図8図9を追加参照して、荷棚走行ムーバー1の重心位置及び荷棚2からの脱落防止作用について説明する。
図8は、本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバー1の平面模式図である。図9は、本発明の第1実施形態に係る荷棚走行ムーバー1が荷棚2の縁4から脱輪した様子を示した平面模式図である。
【0037】
図8に示すように、荷棚走行ムーバー1の車体10は、荷棚2の奥行き方向(Y軸方向)において、駆動輪41よりも従動輪42側に重心Gを有している。具体的に、車体10の重心Gは、荷棚2の奥行き方向において、駆動輪41から従動輪42までの距離をLとしたときに、従動輪42側(奥側)のL/2の範囲に位置している。従動輪42側のL/2の範囲には、重量部品である電源部20がレイアウトされている。
【0038】
駆動輪41は、荷棚2の縁側に1つ配置され、従動輪42は、荷棚2の奥側に2つ配置されている。車体10の重心Gは、駆動輪41の荷棚2上の接点P1および2つの従動輪42による荷棚2上の2つの接点P2を結んだ、平面視二等辺三角形の範囲A1内に位置している。これにより、車体10は、駆動輪41および従動輪42の3つの接点P1,P2によって安定して、荷棚2上を走行できる。なお、3つの接点P1,P2を確保できれば、駆動輪41は1つ以上、従動輪42は2つ以上あっても構わない。
【0039】
また、車体10の底部には、駆動輪41の近傍に、駆動輪41が荷棚2の縁4から脱輪した際に荷棚2上に当接する当接部16が設けられている。本実施形態の当接部16は、図5に示すように、駆動輪41を露出させるベースプレート11の第1開口部11aの開口縁である。より詳しくは、当接部16は、第1開口部11aのうち奥側(+Y側)の部分である。
【0040】
当接部16は、荷棚2に対する当接位置がずれないように、ベースプレート11の底面から下方に突出した凸部であっても構わない。また、当接部16は、荷棚2との当接時の衝撃を和らげる緩衝部材(スポンジ)や、荷棚2との当接時に荷棚2との摩擦力を高めて車体10の慣性移動を抑制する摩擦部材(高摩擦ゴム)などが設置、貼り付けられていても構わない。
【0041】
図8に示すように、車体10の重心Gは、当接部16の荷棚2上の接点P3および2つの従動輪42による荷棚2上の2つの接点P2を結んだ、平面視二等辺三角形の範囲A2内に位置している。範囲A2は、範囲A1よりも狭い範囲である。これにより、車体10は、駆動輪41が荷棚2の縁4から脱輪した場合であっても、当接部16および従動輪42の3つの接点P3,P2によって荷棚2上に確実に留まることができる。
【0042】
上記構成の荷棚走行ムーバー1によれば、車体10の底部の取手14を把持することで搬送することができ、また図1に示すように、荷棚2上に容易に取り付けることができる。そして、必要に応じてアーム13を荷棚2の手前側に展開し、荷棚2の手前側に配置された操作部70を操作することで、車体10を荷棚2に沿って走行させることができる。車体10は、駆動輪41が回転することで、従動輪42が回転し、また荷棚2の奥側の壁5に沿ってガイド輪43が転動することで、X軸方向に案内されながら移動する。
【0043】
車体10は、図2に示すように、荷棚2の縁側に配置され、荷棚2上を走行する駆動輪41と、駆動輪41よりも荷棚2の奥側に配置され、荷棚2上を走行する従動輪42と、を備えている。この構成によれば、万が一、荷棚走行ムーバー1が脱輪した場合には、先ず駆動輪41が荷棚2上から離れる。駆動輪41が荷棚2上から離れることで、駆動輪41が空転して車体10の推進力がなくなるため、荷棚走行ムーバー1は荷棚2上で暴走することなく速やかに停止する。
【0044】
車体10は、荷棚2の奥行き方向において、駆動輪41よりも従動輪42側に重心Gを有する。この構成によれば、図9に示すように、駆動輪41が脱輪した場合であっても、車体10の重心Gを荷棚2上に残すことができる。これにより、荷棚走行ムーバー1は、荷棚2から落下することがないため、走行の安全性の高めることができる。
【0045】
このように、上述の本実施形態に係る荷棚走行ムーバー1によれば、荷棚2上を走行する車体10を備え、車体10は、荷棚2に沿って車体10を案内するガイド輪43と、荷棚2の縁側に配置され、荷棚2上を走行する駆動輪41と、駆動輪41よりも荷棚2の奥側に配置され、荷棚2上を走行する従動輪42と、を備え、車体10は、荷棚2の奥行き方向において、駆動輪41よりも従動輪42側に重心Gを有する。この構成によれば、荷棚2からの落下を防止できる安全性の高い荷棚走行ムーバー1が得られる。
【0046】
また、本実施形態では、駆動輪41は、荷棚2の縁側に1つ配置され、従動輪42は、荷棚2の奥側に2つ配置されている。この構成によれば、図8に示すように、車体10は、駆動輪41および従動輪42の3つの接点P1,P2によって安定して荷棚2上を走行できる。つまり、車体10が仮に四輪の場合は、荷棚2上に4点で当接するため、荷棚2に凹凸がある場合には片側の車輪が浮く可能性があるが、車体10が三輪の場合は、荷棚2上に3点で安定して当接するため、荷棚2に凹凸がある場合であっても3点の接点を維持でき、走行の安定性を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態では、図9に示すように、車体10の底部には、駆動輪41の近傍に、駆動輪41が荷棚2の縁4から脱輪した際に荷棚2上に当接する当接部16が設けられ、平面視で、当接部16および2つの従動輪42による荷棚2上の3つの接点を結んだ範囲A2内に、車体10の重心Gを有する。この構成によれば、駆動輪41が脱輪した場合であっても、車体10の重心Gを確実に荷棚2上に残すことができる。
【0048】
また、本実施形態では、ガイド輪43は、荷棚2の奥側に配置され、荷棚2の奥側に立設した壁5に当接しながら転動する。この構成によれば、荷棚2に沿って車体10をX軸方向に案内することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0050】
図10は、本発明の第2実施形態に係る荷棚走行ムーバー1の斜視図である。図11は、図10に示す荷棚走行ムーバー1の進行方向から視た荷棚2の断面図である。
図10に示すように、第2実施形態の荷棚走行ムーバー1は、ガイド輪43Aが、荷棚2の縁側に配置され、荷棚2の縁4に当接しながら転動する点で、上記実施形態と異なる。
【0051】
ガイド輪43Aは、ベースプレート11の底面において、取手14をX軸方向で挟んで一対で設置されている。ガイド輪43Aは、ベースプレート11の底面から下方に延在している。ガイド輪43Aの長さは、図11に示すように、人の手で把持できる長さであるとよい。この構成によれば、一対のガイド輪43Aを両手で把持することで、荷棚2上への荷棚走行ムーバー1の取り付けと取り外しが容易になる。
【0052】
ガイド輪43Aの周面は、把持し易く、且つ荷棚2の縁4との当接を和らげることができるゴムなどから形成するとよい。ガイド輪43Aは、荷棚2の縁4に当接しながら転動するため、仮に荷棚2の奥行きの長さが車体10よりも長い場合であっても、車体10を荷棚2の縁4に位置決め(係止)して走行させることができる。また、ガイド輪43Aがある場合、車体10の走行の安定性が高まるため、荷棚2の奥側の従動輪42Aはキャスターでなく、通常のローラーにしても構わない。
【0053】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、本実施形態の荷棚走行ムーバー1を新幹線の車両の荷棚に適用した場合を例示したが、新幹線以外の鉄道車両の荷棚や、航空機の機内の荷棚、バスの車内の荷棚などに適用しても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1…荷棚走行ムーバー、2…荷棚、3…上面、4…縁、5…壁、5a…接続部、10…車体、11…ベースプレート、11a…第1開口部、11b…第2開口部、11c…係止片、12…カバー、12a…収容溝、13…アーム、13a…回動アーム、13b…連結アーム、13c…回動軸、14…取手、15…ストッパー、16…当接部、20…電源部、30…制御部、40…走行部、41…駆動輪、41a…モーター、41b…モータードライバ、42…従動輪、42A…従動輪、43…ガイド輪、43A…ガイド輪、50…前方検出部、51…投光部、52…受光部、60…後方検出部、70…操作部、71…電源スイッチ、72…操作ボタン、73…非常停止ボタン、80…通信部、90…機能拡張部、A1…範囲、A2…範囲、G…重心、P1…接点、P2…接点、P3…接点
図1
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