(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132898
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ハニカム構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20230914BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20230914BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20230914BHJP
B28B 3/20 20060101ALI20230914BHJP
C04B 38/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
B01J35/04 301F
B01J32/00
B01J27/224 A
B28B3/20 E
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038474
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 佑人
【テーマコード(参考)】
4G019
4G054
4G169
【Fターム(参考)】
4G019FA12
4G054AA05
4G054AB09
4G054BD00
4G169AA01
4G169BB02B
4G169BB15B
4G169BD05B
4G169CA03
4G169EA19
4G169EA26
4G169EB14Y
4G169ED03
4G169EE03
4G169FB06
4G169FB30
4G169FB36
4G169FB57
4G169FB58
4G169FB67
4G169FB74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加熱された際にハニカム構造体にクラックが発生する虞を低減できるハニカム構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】外周壁20と、外周壁20の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル21aを区画形成する隔壁21と、を有するハニカム構造部2を備えたハニカム構造体1であって、ハニカム構造体1の外周面から径方向内方に延び、かつ、セル21aの延伸方向に延びる複数のスリット3と、複数のスリット3に充填された充填材4と、をさらに備え、下記式(1)で示される充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとの差をスリット3毎に求めたとき、下記式(2)で示される前記差の最大値Aと前記差の最小値Bの差が0.4mm以下である。式(1)中、Xはハニカム構造体1の外周面におけるスリット3の幅、Yは径方向外方から充填材4を見たときの充填材4の幅を示す。式(1)Y-X、式(2)A-B
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体であって、
前記ハニカム構造体の外周面から径方向内方に延び、かつ、前記セルの延伸方向に延びる複数のスリットと、
前記複数のスリットに充填された充填材と、
をさらに備え、
下記式(1)で示される前記充填材の幅Yと前記スリットの幅Xとの差を前記スリット毎に求めたとき、下記式(2)で示される前記差の最大値Aと前記差の最小値Bの差が0.4mm以下である、
(Y-X) ・・・・(1)
(A-B) ・・・・(2)
(式(1)中、Xは前記ハニカム構造体の外周面における前記スリットの幅を示し、Yは前記ハニカム構造体の径方向外方から前記充填材を見たときの前記充填材の幅を示す)
ハニカム構造体。
【請求項2】
前記スリットの幅Xのそれぞれが、0.2mm~1.0mmである、
請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造部は、2本以上の前記スリットを有している、
請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記外周壁の外周面が前記ハニカム構造体の外周面の少なくとも一部を構成する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム構造部の中心軸を挟んで、前記外周壁の外面上において、前記セルの延伸方向に帯状に延びるように設けられた一対の電極層をさらに備え、
前記一対の電極層が設けられている位置では、前記一対の電極層の外周面が前記ハニカム構造体の外周面を構成する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体素体において、前記ハニカム構造体素体の外周面にマスキングを施すマスキング工程と、
前記マスキング工程の後に、径方向外方から前記ハニカム構造体素体に加工を施し、前記ハニカム構造体素体の外周面から径方向内方に延び、かつ、前記セルの延伸方向に延びる複数のスリットを前記ハニカム構造体素体に形成するスリット形成工程と、
前記スリット形成工程の後に、前記複数のスリットに充填材を充填する充填工程と、
前記充填材を充填した後に、前記マスキングを除去する除去工程と
を含む、
ハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、導電性セラミックスからなるハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、ハニカム構造体に担持された触媒をエンジン(内燃機関)の始動前に活性温度まで昇温させて、エンジンが始動直後の冷えた状態の際に排出される排気ガスの浄化を狙う電気加熱触媒(EHC)が知られている。
【0003】
下記の特許文献1には、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上するために側面に開口する1本以上のスリットがハニカム構造部に形成されたハニカム構造体が開示されている。また、耐熱衝撃性を維持しつつ、ハニカム構造体を通過するガスが上記スリットからハニカム構造体の外周側に漏れ出さないようにするために、少なくとも1本のスリットに充填材を充填することが提案されている。特許文献1には、充填材をスリットに充填する方法として、シリンジ又はヘラを用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、充填材をスリットに充填するとき、スリットが形成されたハニカム構造部の外周面にマスキングを施した後に、スリットに充填材を充填している。このとき、充填材を充填すべきスリットを除くようにマスキングが行われる。すなわち、ハニカム構造部の外周面上には、スリットに対応するようにマスキングが施されていない部分(マスキングスリット)が形成される。
【0006】
本発明者らの検討の結果、マスキングの施し方によって、充填材の幅のバラツキが生じ、これにより、ハニカム構造体の周方向に応力緩和性能のバラツキを生じさせ、ハニカム構造体が加熱された際にハニカム構造体にクラックを発生させる要因となる虞がある、ことが分かった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、加熱された際にハニカム構造体にクラックが発生する虞を低減できるハニカム構造体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るハニカム構造体は、一実施形態において、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体であって、ハニカム構造体の外周面から径方向内方に延び、かつ、セルの延伸方向に延びる複数のスリットと、複数のスリットに充填された充填材と、をさらに備え、下記式(1)で示される充填材の幅Yとスリットの幅Xとの差をスリット毎に求めたとき、下記式(2)で示される差の最大値Aと差の最小値Bの差が0.4mm以下である。
(Y-X) ・・・・(1)
(A-B) ・・・・(2)
式(1)中、Xはハニカム構造体の外周面におけるスリットの幅を示し、Yはハニカム構造体の径方向外方から充填材を見たときの充填材の幅を示す。
【0009】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造部を備えたハニカム構造体素体において、ハニカム構造体素体の外周面にマスキングを施すマスキング工程と、マスキング工程の後に、径方向外方からハニカム構造体素体に加工を施し、ハニカム構造体素体の外周面から径方向内方に延び、かつ、セルの延伸方向に延びる複数のスリットをハニカム構造体素体に形成するスリット形成工程と、スリット形成工程の後に、複数のスリットに充填材を充填する充填工程と、充填材を充填した後に、マスキングを除去する除去工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明のハニカム構造体及びその製造方法の一実施形態によれば、加熱された際にハニカム構造体にクラックが発生する虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態によるハニカム構造体を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態によるハニカム構造体の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態によるハニカム構造体1を示す斜視図である。
図1に示すハニカム構造体1は、ハニカム構造部2、複数のスリット3、充填材4及び一対の電極層5を備えている。
【0014】
ハニカム構造部2は、セラミックス製の柱状の部材であり、外周壁20と、外周壁20の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル21aを区画形成する隔壁21とを有している。
【0015】
ハニカム構造部2の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の他の形状とすることができる。柱状とは、セル21aの延伸方向(ハニカム構造体1の軸方向)に厚みを有する立体形状と理解できる。ハニカム構造部2の軸方向長さとハニカム構造部2の端面の直径又は幅との比(アスペクト比)は任意である。柱状には、ハニカム構造部2の軸方向長さが端面の直径又は幅よりも短い形状(偏平形状)も含まれていてよい。
【0016】
ハニカム構造部2の大きさは、耐熱性を高める(外周壁20の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0017】
セル21aの延伸方向に垂直な断面におけるセル21aの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体1に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0018】
セル21aを区画形成する隔壁21の厚みは、0.07~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。隔壁21の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造体1の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁21の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造体1を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁21の厚みは、セル21aの延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル21aの重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁21を通過する部分の長さとして定義される。
【0019】
ハニカム構造部2は、セル21aの延伸方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であるとハニカム構造部2を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁20部分を除くハニカム構造部2の一つの端面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0020】
ハニカム構造部2の外周壁20を設けることは、ハニカム構造部2の構造強度を確保し、また、セル21aを流れる流体が外周壁20から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁20の厚みは好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.10mm以上、更により好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁20を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁21との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁20の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁20の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁20の箇所をセル21aの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁20の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0021】
ハニカム構造部2は、セラミックス製であり、導電性を有することが好ましい。ハニカム構造部2は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、体積抵抗率については特に制限はないが、0.1~200Ωcmであることが好ましく、1~200Ωcmがより好ましい。本発明において、ハニカム構造部2の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0022】
ハニカム構造部2の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスからなる群から選択することができる。また、炭化珪素-金属珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造部2の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。ハニカム構造部2の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造部2が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。ハニカム構造部2の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造部2が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0023】
ハニカム構造部2が珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合、ハニカム構造部2に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部2に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部2に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。
【0024】
隔壁21は多孔質としてもよい。多孔質とする場合、隔壁21の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0025】
ハニカム構造部2の隔壁21の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0026】
複数のスリット3は、ハニカム構造体1の外周面から径方向内方に延び、かつ、セル21aの延伸方向に延びている。スリット3は、ハニカム構造部2の一方の端面から他方の端面までセル21aの延伸方向に延びている。スリット3の深さは、セル21aの延伸方向に垂直な断面において、ハニカム構造部2の半径の60%以下であることが好ましく、0.5%以上25%以下がより好ましい。スリット3の幅は、0.2mm以上2.0mm以下であってもよく、0.2mm以上1.0mm以下がより好ましい。スリット3の深さは、外周壁20の外周面からスリット3の先端までの距離と理解してよい。
【0027】
なお、外周壁20の外周面がハニカム構造体1の外周面の少なくとも一部を構成している。より具体的には、外周壁20の外周面が露出されている位置、すなわち外周壁20の外周面が電極層5によって覆われていない位置では、外周壁20の外周面がハニカム構造体1の外周面を構成している。一方、一対の電極層5が設けられている位置では、一対の電極層5の外周面がハニカム構造体1の外周面を構成している。別の観点では、ハニカム構造体1の外観を観察したとき、複数のスリット3が表れている面をハニカム構造体1の外周面として扱ってよい。ハニカム構造体1の外周面には、セル21aが開口するハニカム構造部2の端面は含まれないと理解してよい。
【0028】
充填材4は、スリット3に充填されている。充填材4は、スリット3の空間の少なくとも一部に充填されていることが好ましい。充填材4は、スリット3の空間の50%以上に充填されていることが好ましく、スリット3の空間の全部に充填されていることがより好ましい。
図1に示す態様では、充填材4は、スリット3の空間の全部に充填されており、ハニカム構造部2の両方の端面と一体の平面を形成し、ハニカム構造体1の外周面と一体の曲面を形成している。しかしながら、充填材4は、ハニカム構造部2の端面よりも軸方向の内側の位置まで充填されていてもよく、ハニカム構造体1の外周面よりも径方向の内側の位置まで充填されていてもよい。
【0029】
充填材4は、ハニカム構造部2の主成分が炭化珪素、又は金属珪素-炭化珪素複合材である場合、炭化珪素を20質量%以上含有することが好ましく、20~70質量%含有することが更に好ましい。これにより、充填材4の熱膨張係数を、ハニカム構造部2の熱膨張係数に近い値にすることができ、ハニカム構造部2の耐熱衝撃性を向上させることができる。充填材4は、シリカ、アルミナ等を30質量%以上含有するものであってもよい。
【0030】
一対の電極層5は、ハニカム構造部2の中心軸を挟んで、外周壁20の外面上において、セル21aの延伸方向に帯状に延びるように設けられている。図示はしないが、電極層5上には電極端子を設けることができる。これら電極端子及び電極層5を通してハニカム構造部2に電圧を印加して、ハニカム構造部2を発熱させることができる。
【0031】
一対の電極層5のそれぞれは、スリット3によって分離された第1及び第2部分電極層51,52を有している。すなわち、電極層5が設けられている位置では、スリット3は、電極層5から径方向内方に延び、電極層5の外周面において開口している。第1及び第2部分電極層51,52間においてもスリット3に充填材4が充填されていてよい。
【0032】
電極層5に電気を流しやすくする観点から、電極層5の体積抵抗率は、ハニカム構造部2の電気抵抗率の1/200以上、1/10以下であることが好ましい。
【0033】
電極層5の材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。
【0034】
電極層5を有するハニカム構造体1の製造方法としては、まず、ハニカム乾燥体の側面に、セラミックス原料を含有する電極層形成原料を塗布し、乾燥させて、ハニカム乾燥体の中心軸を挟んで、外周壁20の外面上において、セル21aの延伸方向に帯状に延びるように一対の未焼成電極層を形成して、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を作製する。次に、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を焼成して一対の電極層5を有するハニカム焼成体を作製する。これにより、電極層5を有するハニカム構造体1が得られる。なお、一対の電極層5は必須の構成要素ではなく、ハニカム構造体1は一対の電極層5を備えていなくてもよい。
【0035】
次に、
図2は、
図1の充填材4の詳細を示す説明図である。
図2の(a)~(c)のそれぞれの下側は、セル21aの延伸方向に直交する面における充填材4の断面を示している。また、
図2の(a)~(c)のそれぞれの上側は、ハニカム構造体1の径方向外方から充填材4を見たときの充填材4の外面を示している。
【0036】
図2の(a)~(c)に示すように、ハニカム構造体1の径方向外方から充填材4を見たとき、充填材4の幅Yがスリット3毎に異なる場合がある。
図2の(b)は、充填材4の幅Yが
図2の(a)における幅Yよりも大きい状態を示している。
図2の(c)は、充填材4の幅Yが
図2の(a)における幅Yよりも小さい状態を示している。
【0037】
図2の(a)及び(b)は、充填材4の幅Yがハニカム構造体1の外周面1aにおけるスリット3の幅Xよりも大きい状態を示している。一方、
図2の(c)は、充填材4の幅Yがハニカム構造体1の外周面1aにおけるスリット3の幅Xと同じ状態を示している。
【0038】
上述のように、ハニカム構造体1の外周面1aは、ハニカム構造部2の外周壁20又は電極層5の外周面と理解できる。スリット3及び充填材4の幅X,Yは、ハニカム構造体1(ハニカム構造部2)の周方向におけるスリット3及び充填材4の寸法と理解できる。スリット3及び充填材4の幅X,Yの差異は、ハニカム構造体1の外周面1aから径方向外方に充填材4が僅かに突出していることに起因することがある。ハニカム構造体1の外周面1aから突出された充填材4の部分を突出部4aと呼んでもよい。突出部4aは、スリット3に充填材4を充填する際にハニカム構造体1の外周面1aに施されたマスキングに起因することがある。すなわち、突出部4aの厚みはマスキングの厚みに相当することがある。
【0039】
スリット3毎の充填材4の幅Yのバラツキは、ハニカム構造体1の応力緩和性能のバラツキを生じさせ、ハニカム構造体1が加熱された際にハニカム構造体1にクラックを発生させる要因となる虞がある。このため、充填材4の幅Yのバラツキを小さくすることで、加熱された際にハニカム構造体1にクラックが発生する虞を低減できると考えられる。
【0040】
本実施の形態のハニカム構造体1では、下記式(1)で示される充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとの差(スリット毎の幅差)をスリット3毎に求めたとき、下記式(2)で示される前記差の最大値Aと前記差の最小値Bの差が0.4mm以下とされている。後に実施例を挙げて説明するように、下記式(2)の値を0.4mm以下とすることで、加熱された際にハニカム構造体1にクラックが発生する虞を低減できる。より好ましくは、前記差の最大値Aと前記差の最小値Bの差が0.2mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以下である。
(Y-X) ・・・・(1)
(A-B) ・・・・(2)
式(1)中、Xはハニカム構造体1の外周面1aにおけるスリット3の幅を示し、Yはハニカム構造体1の径方向外方から充填材4を見たときの充填材4の幅を示す。
【0041】
上記式(1)で示される充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとの差をスリット毎に求めたときの差のバラツキ(最大値Aと最小値Bとの差)を上記範囲に制御することで、加熱された際にハニカム構造体1にクラックが発生する虞を低減できる作用について、以下のように推測している。充填材4をスリット3に充填するとき、スリット3が形成されたハニカム構造体1の外周面1aにマスキングを施した後に、スリット3に充填材4を充填している。このとき、マスキングの配設方法によってマスキングスリットの幅にバラツキが生じると、スリット3に充填材4を充填した後に、ハニカム構造体1の径方向外方から充填材4を見たときの充填材4の幅Yにもバラツキが生じる。この充填材4の幅Yがバラつくことによって、ハニカム構造体1の周方向に応力緩和性能のバラツキを生じさせ、例えば、ハニカム構造体1の応力緩和性能の低い箇所でハニカム構造体1が加熱された際にクラックが生じる場合がある。これに対して、上述のように充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとの差のバラツキを抑えることで、充填材4の幅Yのバラツキを抑制し、ハニカム構造体1の周方向の応力緩和性能のバラツキを抑制していると、考えられる。
【0042】
各スリット3の幅Xは、セル21aの延伸方向におけるスリット3の両端をハニカム構造体1の端面側からマイクロスコープにて測長し、それらの平均値とすることができる。各充填材4の幅Yは、セル21aの延伸方向における充填材4の幅の両端をハニカム構造体1の端面側からマイクロスコープにて測長し、それらの平均値とすることができる。
【0043】
なお、スリット3の幅Xのそれぞれは、限定はされないが、0.2mm~1.0mmであってよい。スリット3の幅Xが0.2mm以上であることで、スリット3内に充填材4を円滑に充填することができる。スリット3の幅Xが1.0mm以下であることで、スリット3の形成時に、隣接するセル21aを区画形成する隔壁21を傷つける虞を低減できる。より好ましくは、スリット3の幅Xのそれぞれは0.4mm~0.7mmである。
【0044】
また、ハニカム構造体1は、応力緩和効果の観点から2本以上のスリット3を有していてよく、より好ましくは6本以上のスリット3を有している。スリット3の本数の上限は、特に制限はないが、12本以下であり得る。
【0045】
次に、
図3は、本発明の実施の形態によるハニカム構造体1の製造方法を示す説明図である。限定はされないが、上述のように充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとの差のバラツキが抑えられたハニカム構造体1を、
図3に示す製造方法により製造することができる。
【0046】
図3に示す製造方法は、準備工程(ステップS1)、マスキング工程(ステップS2)、スリット形成工程(ステップS3)、充填工程(ステップS4)及び除去工程(ステップS5)を含んでいる。
【0047】
準備工程(ステップS1)は、外周壁20と、外周壁20の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル21aを区画形成する隔壁21とを有するハニカム構造部2を備えたハニカム構造体素体10を準備する工程である。ハニカム構造体素体10は、スリット3及び充填材4を有しない点を除き、
図1を用いて説明した上述のハニカム構造体1と同じ構成を有していてよい。ハニカム構造体素体10は一対の電極層5を備えていてよい。準備工程では、第三者により製造されたハニカム構造体素体10を入手してもよい。すなわち、準備工程は、ハニカム構造体素体10の製造を伴わなくてもよい。
【0048】
マスキング工程(ステップS2)は、ハニカム構造体素体10の外周面10aにマスキング6を施す工程である。ハニカム構造体素体10の外周面10aは、上述のハニカム構造体1の外周面1aと同様に、ハニカム構造部2の外周壁20又は電極層5の外周面と理解してよい。マスキング6は、限定はされないが、マスキングシートをハニカム構造体素体10の外周面10aに巻き付けることで施すことができる。マスキング6は、外周面10aの全面を覆っている。マスキング6としては、例えば和紙基材でゴム系粘着剤の一般的なマスキングテープを用いることができる。
【0049】
スリット形成工程(ステップS3)は、マスキング6を施した後に、径方向外方からハニカム構造体素体10に加工を施し、ハニカム構造体素体10の外周面10aから径方向内方に延び、かつ、セル21aの延伸方向に延びる複数のスリット3をハニカム構造体素体10の外周面10aに形成する工程である。スリット3を形成するための加工は、径方向外方からハニカム構造体素体10の外周面10aの内側に加工工具を相対的に進入させること、及びセル21aの延伸方向に加工工具を相対的に移動させることを含んでいてよい。加工工具の進入及び移動は、ハニカム構造体素体10及び加工工具の少なくとも一方が他方に対して動かされることで実施できる。加工工具としては、外縁部に砥粒が付着された円板状の切削工具を用いることができる。
【0050】
このスリット形成工程では、スリット3の形成に合わせて、マスキング6にマスキングスリット60が形成される。スリット3及びマスキングスリット60は、実質的に同じタイミングで同じ加工工具により形成される。マスキングスリット60は、スリット3と同じ幅を有する。マスキングスリット60の位置は、スリット3と同じ位置である。
【0051】
充填工程(ステップS4)は、複数のスリット3を形成した後に、それらのスリット3に充填材4を充填する工程である。スリット3への充填材4の充填は、マスキングスリット60を通して行われる。限定はされないが、マスキング6の上に充填材4を供給した後、マスキング6の外面にヘラ(図示せず)の先端を押し当てつつハニカム構造体素体10を回転させることで、スリット3に充填材4を充填することができる。別の方法としては、シリンジ(図示せず)によりマスキングスリット60を通してスリット3内に充填材4を充填した後に、ヘラ(図示せず)によりマスキング6上の充填材4を均してもよい。
【0052】
除去工程(ステップS5)は、充填材4を充填した後に、マスキング6を除去する工程である。マスキング6の除去は、充填材4が固化した後に行ってよい。マスキング6を除去したハニカム構造体素体10をハニカム構造体1として扱うことができる。マスキング6が除去されることで、ハニカム構造体1の外周面1aが現れる。
【0053】
マスキング6が除去された後にハニカム構造体1の外周面1a上の充填材4を観察すると、凡そ
図2の(c)のような状態になっていると考えられる。すなわち、充填材4の幅Yがハニカム構造体1の外周面1aにおけるスリット3の幅Xと同じ状態になっていると考えられる。これは、スリット3及びマスキングスリット60が同じ工程で共に形成され、マスキングスリット60がスリット3と同じ幅を有しているためである。すべてのスリット3において充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとの差を小さくできる。すべてのスリット3において充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとの差が実質的に0となると考えられる。このため、スリット3毎の前記式(2)で示される値(最大値Aと最小値Bとの差)も0.4mm以下となることが期待される。
【0054】
上述の製造方法以外にも、上記マスキング工程(ステップS2)を行った後に、スリット形成部分に対応する部分のマスキングを除去し、その後に、スリット3を形成し、充填材4を充填するという方法によっても、前記式(2)で示される値(最大値Aと最小値Bとの差)を0.4mm以下とすることが可能である。また、所定幅のスリット3が設けられたマスキングテープをハニカム構造体素体10のスリット3に対して高精度な位置出しで貼り付けるという方法によっても、前記式(2)で示される値(最大値Aと最小値Bとの差)を0.4mm以下とすることが可能である。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと理解される。
【実施例0056】
次に実施例を挙げる。
(1.坏土、ハニカム成形体の作製)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合してセラミックス原料を調製する。そして、セラミックス原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とする。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部に制御する。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部に制御する。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部に制御する。
【0057】
上記の円柱状の坏土を碁盤目状の口金構造を有する押出成形機を用いて成形し、セルの流路方向に垂直な断面における各セル形状が六角形である円柱状ハニカム成形体を作製した。その後、ハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を作製した。
【0058】
(2.電極部形成ペーストの調製及び塗布)
金属珪素(Si)粉末、炭化珪素(SiC)粉末、メチルセルロース、グリセリン、及び水を、自転公転攪拌機で混合して、電極部形成ペーストを調製した。Si粉末、及びSiC粉末は体積比で、Si粉末:SiC粉末=40:60となるように配合する。また、Si粉末、及びSiC粉末の合計を100質量部としたときに、メチルセルロースは0.5質量部であり、グリセリンは10質量部であり、水は38質量部となるように制御する。
次に、この電極部形成ペーストを曲面印刷機によって、ハニカム乾燥体に対して、適切な面積及び膜厚で塗布した。
【0059】
(3.ハニカム焼成体の作製)
次に、電極部形成ペースト付きハニカム乾燥体をAr雰囲気にて1400℃で3時間焼成の後、大気雰囲気下1300℃で1時間酸化処理し、柱状のハニカム焼成体(ハニカム構造体素体10)を作製した。以上の工程は、
図3で説明した準備工程に当たる。
【0060】
(4.マスキング及びスリット形成)
上述のように作製したハニカム構造体素体10に対して、ハニカム構造体素体10の外周面10a(外周壁20及び電極層5の外周面)の全体を覆うようにマスキング6(ニチバン株式会社製、品名マスキングテープ)を施した後に、ハニカム構造体素体10の周方向に間隔をおいて複数のスリット3を形成した。スリット3の形成は、マスキング6の外方から外周壁20の内側に加工工具を進入させるとともに、セル21aの延伸方向に加工工具を移動させることで行った。加工工具としては、外縁部に砥粒が付着された円板状の切削工具(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製、品名ダイヤリムソー)を用いた。
【0061】
充填材は、以下のようにして作製したものを用いた。まず、炭化珪素粉末(平均粒子径8μm)とシリカ粉末(コロイダルシリカ)を固形分量として68:32の質量割合で混合した。このとき、シリカの質量は、酸化物(SiO2)換算した質量である。これに、バインダとしてカルボキシメチルセルロース、保湿剤としてグリセリンを添加すると共に、水を添加して混合することで、混合物を得た。次に、この混合物を混練して充填材とした。バインダの含有量は、炭化珪素粉末とシリカ粉末の固形分量の合計を100質量部としたときに1.0質量部であった。グリセリンの含有量は、炭化珪素粉末とシリカ粉末の固形分量の合計を100質量部としたときに4質量部であった。水の含有量は、炭化珪素粉末とシリカ粉末の合計を100質量部としたときに30質量部であった。
【0062】
(5.充填及びマスキング除去)
スリット3を形成した後、マスキング6のマスキングスリット60を通してスリット3に充填材4を充填した。充填材4の充填は、マスキング6の上に充填材4を供給した後、マスキング6の外面にヘラの先端を押し当てつつハニカム構造体素体10を回転させることで行った。その後、120℃で1時間乾燥させて、スリット3に充填された充填材4を固化させて、マスキング6を除去した。
【0063】
(6.寸法測定及び強度試験)
上述のような工程を経て作製した複数のハニカム構造体1(実施例)に対して、寸法測定及び強度試験を行った。
【0064】
寸法測定では、スリット3毎に充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとを測定した。また、下記式(1)で示される充填材4の幅Yとスリット3の幅Xとの差をスリット3毎に求めるとともに、下記式(2)で示される前記差の最大値Aと前記差の最小値Bとの差を求めた。なお、各スリット3の幅Xは、セル21aの延伸方向におけるスリット3の両端をハニカム構造体1の端面側からマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、装置名VHX-7000)にて測長し、それらの平均値とした。また、各充填材4の幅Yは、セル21aの延伸方向における充填材4の幅の両端をハニカム構造体1の端面側から上記マイクロスコープにて測長し、それらの平均値とした。
(Y-X) ・・・・(1)
(A-B) ・・・・(2)
【0065】
強度試験では、
図4に示すように3点曲げ強度試験を行った。すなわち、スリット3及び充填材4を含むようにハニカム構造体1の外周部分を円弧状に切り出すことで、ハニカム構造体1から複数の試験片100を作製した。試験片100の切り出しは、ハニカム構造体1の径方向と平行な直線に沿ってハニカム構造体1を切断することで行った。より具体的には、スリット3(及び充填材4)の先端(径方向内側の端部に位置する隔壁21)よりも1つのセル21a分だけ径方向内側の位置で上述の直線に沿ってハニカム構造体1を切断した後、スリット3の先端が現れるように上述の余分なセル21aを区画形成する隔壁21を削り落とした。この時、スリット3の先端部分が平になるようにした。スリット3及び充填材4は、試験片100の幅方向中央に位置していた。試験片100は、スリット3が延びる方向に約3.7mmの厚み、セル21aの延伸方向に約10mmの奥行、それらに直交する方向に25mm程度の幅を有する短冊状であった。これらの寸法はノギスを用いて測定した。また、測定装置としては、インストロン社製の圧縮試験機5569を用いた。試験片100のそれぞれについて、試験片100の直線状の切断面を上に向けた状態で、試験片100の曲面状の外周面を下から2つの支点101,102(支点間距離10mm)で支え、試験片100の上方に配置した押圧体103を試験片100の幅方向中央部に押し当てた。押圧体103はロードセルに固定されている。そして、1kNの荷重、及び0.5mm/minの荷重印加速度で押圧体103を試験片100に押し当てて、ロードセルによって測定される最大荷重から強度を計算した。より具体的には、押圧体103は半径0.5mmの半円状の先端103aを有しており、平に整形されたスリット3の先端部分にその押圧体103の先端103aを押し当てた。この強度の測定を、スリット3毎に行い、その中での最大値A及び最小値Bと、強度の最大値と最小値との差である強度バラツキとを求めた。
【0066】
また、比較のため、スリット3を形成した後に、スリット3の部分を除くようにハニカム構造体素体10の外周面に手作業でマスキング6を施した上で、スリット3に充填材4を充填したハニカム構造体1(比較例)も作製した。そして、そのような比較例に対しても上述のような寸法測定及び強度試験を行った。実施例及び比較例における寸法測定及び強度試験の結果を以下の表1に示す。
【0067】
【0068】
表1に示すように、比較例では、最大値Aと最小値Bとの差は1.0mmとなり、強度のバラツキ(強度の最大値と最小値との差)は0.3MPaであった。これに対して、いずれの実施例でも、最大値Aと最小値Bとの差は0.4mm以下であり、強度のバラツキは0.1MPa以下であった。この結果から、最大値Aと最小値Bとの差を0.4mm以下とすることで、加熱された際にハニカム構造体1にクラックが発生する虞を低減できることが分かる。また、マスキング6を施した後にスリット3を形成することで、最大値Aと最小値Bとの差を小さくできることも分かる。