(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132907
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】樹脂供給方法および樹脂供給装置、並びに、熱可塑性樹脂のプレス成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/34 20060101AFI20230914BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
B29C43/34
B29K101:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038488
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小鉄 貴広
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AA24
4F204AC02
4F204AJ08
4F204AR15
4F204FA01
4F204FB01
4F204FF23
4F204FF47
4F204FH06
4F204FH19
4F204FJ10
4F204FJ11
4F204FN11
4F204FN15
(57)【要約】
【課題】粘着性が高い溶融樹脂組成物を金型へ定量性良く供給する。
【解決手段】本発明の樹脂供給方法は、溶融樹脂組成物を生成する溶融工程(101)と、溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する移送工程(102)と、吐出部から前記金型へ溶融樹脂組成物を供給する吐出工程(103)と、金型へ吐出した溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱切断する加熱切断工程(104)と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、
前記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する移送工程と、
前記吐出部から金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する吐出工程と、
前記吐出部から前記金型へ吐出した前記溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する加熱切断工程と、を有する、樹脂供給方法。
【請求項2】
前記加熱切断工程は、前記溶融樹脂組成物に対して、熱風またはホットワイヤを用いて、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する工程を含む、請求項1に記載の樹脂供給方法。
【請求項3】
前記吐出工程は、前記溶融樹脂組成物を間欠吐出する工程を含む、請求項1または2に記載の樹脂供給方法。
【請求項4】
前記移送工程は、ギアポンプを用いて前記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する工程を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂供給方法。
【請求項5】
前記吐出工程は、ゼロキャビティノズルから前記金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する工程を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂供給方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂供給方法。
【請求項7】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)からなる群より選択される1種類以上である、請求項6に記載の樹脂供給方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の樹脂供給方法を一工程として含む、熱可塑性樹脂のプレス成形品の製造方法。
【請求項9】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、
前記溶融樹脂組成物を金型へ供給するための吐出部と、
前記溶融部から前記吐出部へ前記溶融樹脂組成物を移送する移送部と、
前記吐出部から前記金型へ吐出した溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する加熱切断部と、を備える、樹脂供給装置。
【請求項10】
前記加熱切断部は、前記溶融樹脂組成物に対して熱風を供給する熱風供給部、または、前記溶融樹脂組成物に対して非接触で、かつ瞬間的に加熱するホットワイヤを備える、請求項9に記載の樹脂供給装置。
【請求項11】
前記吐出部は、前記溶融樹脂組成物を間欠吐出するノズル部を備える、請求項9または10に記載の樹脂供給装置。
【請求項12】
前記ノズル部は、ゼロキャビティノズルである、請求項11に記載の樹脂供給装置。
【請求項13】
前記移送部は、ギアポンプを備える、請求項9~12の何れか1項に記載の樹脂供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂供給方法および樹脂供給装置、並びに、熱可塑性樹脂のプレス成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機などにより熱可塑性樹脂を加熱し溶融樹脂組成物を調製し、樹脂供給装置の吐出部から吐出した溶融樹脂組成物を定量的に金型へ供給して、プレス成形により製品を製造するプレス成形法が知られている。通常、溶融樹脂組成物は粘着性を有する。このため、プレス成形法においては、溶融樹脂組成物を金型へ定量供給するに際し、吐出部と金型との間に溶融樹脂組成物の糸引きが発生する。そして、吐出部と金型との間の糸引き分の溶融樹脂組成物の残留物は、樹脂供給の回数毎に重量が異なるため、金型に供給される溶融樹脂組成物の定量性が失われるという課題があった。
【0003】
上記課題に対して、例えば特許文献1には、ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂といった汎用樹脂の溶融樹脂組成物のプレス成形法において、吐出部と金型との間の溶融樹脂組成物の糸引き部分をカッターで切断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、上記汎用樹脂と比較して粘着性が高い、熱可塑性樹脂(例えば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂(以下、「P3HA系樹脂」と称する場合もある。))の溶融樹脂組成物に対して糸引き部分の切断が不十分であり、溶融樹脂組成物の金型への定量供給の点で改善の余地がある。
【0006】
本発明の一態様は、粘着性が比較的高い熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物に対して、吐出部と金型との間の糸引き部分を切断して金型へ定量性良く供給できる樹脂供給方法および樹脂供給装置、並びに、熱可塑性樹脂のプレス成形品の製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る樹脂供給方法は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、前記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する移送工程と、前記吐出部から金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する吐出工程と、前記吐出部から前記金型へ吐出した前記溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する加熱切断工程と、を有する。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る樹脂供給装置は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、前記溶融樹脂組成物を金型へ供給するための吐出部と、前記溶融部から前記吐出部へ前記溶融樹脂組成物を移送する移送部と、前記吐出部から前記金型へ吐出した溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する加熱切断部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、粘着性が比較的高い、熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物に対して、吐出部と金型との間の糸引き部分を切断して金型へ定量性良く供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂供給方法の各種工程を説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る樹脂供給装置の概略構成を模式的に示した図である。
【
図3】301および302は、
図2に示す樹脂供給装置における吐出部の昇降機構を説明するための図である。
【
図4】
図2に示す樹脂供給装置に備えられた加熱切断部の変形例の構成を示す図である。
【
図5】501は、
図2に示す吐出部のノズル部の構成例を概略的に示す断面図であり、502は、501に示すノズル部の変形例としてのゼロキャビティノズルの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0012】
〔本発明の一実施形態の概要〕
上述のように、従来、プレス成形法において、溶融樹脂組成物を金型へ定量供給するために、吐出部と金型との間の溶融樹脂組成物の糸引き部分に対してカッターで切断する技術が知られている。しかし、本発明者らは、粘着性が比較的高い熱可塑性樹脂(例えば、P3HA系樹脂等)の溶融樹脂組成物を用いた場合、当該技術では、(a)カッターに溶融樹脂組成物が付着したり、(b)カッターと金型との間で新たな糸引きが生じたりすることがわかった。その結果、上述の技術では、金型に溶融樹脂組成物を定量的に供給することが困難であるとの課題があることがわかった。特に、本発明者らが検討した結果、溶融樹脂組成物の付着防止を狙ったテフロン(登録商標)加工を施したカッターを用いても、糸引き部分の切断は困難であることがわかった。
【0013】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果、粘着性が比較的高い溶融樹脂組成物を金型へ供給するに際し、ノズル部と金型との間の溶融樹脂組成物に対して非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断することにより、金型へ溶融樹脂組成物を定量性良く供給できることを見出した。
【0014】
本実施形態に係る樹脂供給方法(以下、本樹脂供給方法と称する場合がある)は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、前記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する移送工程と、前記吐出部から金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する吐出工程と、前記吐出部から前記金型へ吐出した前記溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する加熱切断工程と、を有する。
【0015】
また、本実施形態に係る樹脂供給装置(以下、本樹脂供給装置と称する場合がある)は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、前記溶融樹脂組成物を金型へ供給するための吐出部と、前記溶融部から前記吐出部へ前記溶融樹脂組成物を移送する移送部と、前記吐出部から前記金型へ吐出した溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する加熱切断部と、を備える構成である。
【0016】
本樹脂供給方法および本樹脂供給装置によれば、前記吐出部から前記金型へ吐出した前記溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する。それゆえ、粘着性が比較的高い溶融樹脂組成物を金型へ供給するに際し、ノズル部と金型との間の糸引き部分を切断しても新たな糸引き部分が発生せず、金型へ溶融樹脂組成物を定量性良く供給できる。
【0017】
さらに、本樹脂供給方法および本樹脂供給装置によれば、海洋における生分解性樹脂(例えば、P3HA系樹脂等)を使用することにより、廃棄による海洋汚染を抑制することができ、これにより、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」や目標14「持続可能な開発のために、海・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。以下、本樹脂供給方法および本樹脂供給装置について、さらに詳述する。
【0018】
(樹脂供給方法)
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂供給方法の各種工程を説明するための図である。
図1に示すように、本樹脂供給方法は、溶融工程101と、移送工程102と、吐出工程103と、加熱切断工程104と、を含んでいる。
【0019】
溶融工程101では、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する。上記樹脂組成物の溶融方法は、熱可塑性樹脂を含有する溶融樹脂組成物を形成できる方法であれば、従来公知の方法を採用することができる。好ましくは、上記溶融工程は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程を含む。
【0020】
溶融混練工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を得ることができる限り、特に限定されない。溶融混練工程の具体例としては、例えば以下(a1)および(a2)の方法が挙げられる:
(a1)混合装置などによる混合またはブレンドによって、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を調製する。その後、当該樹脂組成物を溶融混練装置に供給し、溶融混練する方法;
(a2)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給し、溶融混練装置内で樹脂組成物を調製する(完成させる)とともに、当該樹脂組成物を溶融混練する方法。
【0021】
前記(a1)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を混合またはブレンド(ドライブレンド)する順序は特に限定されない。前記(a2)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給する順序は特に限定されない。
【0022】
前記(a1)の方法において、混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
【0023】
前記(a1)および(a2)の方法において、溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
【0024】
溶融混練工程において、例えば上記熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、樹脂組成物を溶融混練するときの温度は、P3HA系樹脂の物性(融点、重量平均分子量等)および使用する添加剤の種類等によるため一概には規定できない。樹脂組成物を溶融混練するときの温度に関して、例えば、吐出部から吐出される溶融樹脂組成物の温度(以下、組成物温度と称する場合がある。)を140℃~190℃とすることが好ましく、150℃~180℃とすることがより好ましく、160℃~170℃とすることがさらに好ましい。組成物温度が150℃以下である場合、P3HA系樹脂の未溶融物が発生してしまう場合がある。一方、組成物温度が180℃以上である場合、P3HA系樹脂が熱分解してしまう場合がある。
【0025】
移送工程102では、上記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する。上記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する方法は、特に限定されず、公知の移送方法を採用することができる。好ましくは、移送工程102では、吐出部へ溶融樹脂組成物を定量的に移送する。また、この場合、移送装置は、溶融樹脂組成物を定量的に移送可能であればよく、例えば、ショット式ポンプ(注:注射器のような定積型で吸引吐出を繰り返すポンプ)、マニホールドブロック、ギアポンプなどが挙げられる。これらの中でも、移送装置として、ギアポンプを用いることが好ましい。すなわち、移送工程102では、ギアポンプを用いて前記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送することが好ましい。当該ギアポンプは、溶融樹脂組成物を定量的に吐出部へ移送可能であれば特に限定されず、従来公知の装置を採用できる。
【0026】
また、移送工程102では、移送装置と吐出部との間に移送体を設け、当該移送体を介して、移送装置から吐出部へ溶融樹脂組成物を移送してもよい。上記移送体は、溶融樹脂組成物を移送可能な構成であれば、特に限定されない。上記移送体は、ホットホースであることが好ましい。ホットホースは、上述の組成物温度を有する溶融樹脂組成物を移送可能な構成であり、例えば、ヒーター、保温層、およびインナーチューブ等から構成されている。これらの中でも、耐圧、耐熱の観点から、ホットホースにおけるインナーチューブの材料は、テフロン(登録商標)であることが好ましい。
【0027】
吐出工程103では、上記吐出部から上記金型へ上記溶融樹脂組成物を供給する。上記吐出部から上記金型への上記溶融樹脂組成物の供給方法は、特に限定されない。好ましくは、プレス成形体の量産性の観点から、金型の真上に吐出部を設置し、当該吐出部から金型へ吐出落下させることにより、上記金型へ溶融樹脂組成物を供給する。
【0028】
また、吐出工程103において、上記吐出部の構成としては、溶融樹脂組成物を吐出可能な構成であれば、特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。上記吐出部の構成としては、例えば、ギアポンプを備えた構成、自動開閉ノズルを備えた構成などが挙げられる。吐出部の具体例は、プランジャー式吐出機、プリプランジャー式吐出機、スクリュー式吐出機である。
【0029】
また、特に粘着性が比較的高い溶融樹脂組成物に対しては、吐出工程103において、上記溶融樹脂組成物を間欠吐出することが好ましい。これにより、金型に対する溶融樹脂組成物の供給定量性が向上する。吐出工程103においては、上記吐出部は、溶融樹脂組成物を間欠吐出するノズルを備えることが好ましい。このようなノズル部は、例えば、吐出口を開閉する開閉機構を備えたノズル部によって実現することができる。当該開閉機構による吐出口の開動作および閉動作が交互に行われることにより、上記ノズル部は、溶融樹脂組成物を間欠吐出する。
【0030】
また、溶融樹脂組成物の間欠吐出は、吐出動作の実行および停止が交互に周期的に行われていてもよいし、非周期的に行われていてもよい。吐出動作の実行および停止が交互に周期的に行われる場合、吐出動作の実行および停止の周期は、組成物温度、溶融樹脂組成物の粘着性等に応じて適宜設定可能である。
【0031】
例えば上記熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、溶融樹脂組成物の間欠吐出において、吐出動作は、1秒~30秒おきに停止することが好ましく、1秒~15秒おきに停止していることがより好ましい。また、吐出動作の停止時間は、1秒~15秒であることが好ましく、1秒~5秒であることがより好ましい。これにより、P3HA系樹脂の溶融樹脂組成物について熱によるP3HA系樹脂の特性が劣化することを防止できるという利点を有する。
【0032】
さらに、金型に対する溶融樹脂組成物の供給定量性が向上する観点では、吐出工程103では、ゼロキャビティノズルから前記金型へ前記溶融樹脂組成物を供給することが好ましい。ゼロキャビティノズルを用いることにより、ノズル部と金型との間の溶融樹脂組成物の糸引きを防止することができる。ゼロキャビティノズルの具体的な構成については、後述する。
【0033】
加熱切断工程104では、上記吐出部から上記金型へ吐出した上記溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する。このように、溶融樹脂組成物を金型へ供給するに際し、ノズル部と金型との間の溶融樹脂組成物に対して非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断することにより、金型へ溶融樹脂組成物を定量性良く供給できる。
【0034】
ここで、「非接触で加熱して切断する」とは、加熱のための熱源と上記溶融樹脂組成物とを接触させることなく、上記溶融樹脂組成物を加熱して切断することを意味する。熱源と上記溶融樹脂組成物との離間距離は、上記溶融樹脂組成物を瞬間的に加熱して切断できれば、特に限定されない。上記熱源が後述の熱風ヒーターである場合、当該距離は、熱風ヒーターの性能、溶融樹脂組成物の粘着性等に応じて適宜設定可能である。また、上記熱源が後述のホットワイヤである場合、当該距離は、ホットワイヤの温度の性能、溶融樹脂組成物の粘着性等に応じて適宜設定可能である。また、「瞬間的に加熱して切断する」とは、熱源による加熱と同時に上記溶融樹脂組成物を切断することを意味する。ここでいう「熱源による加熱と同時」とは、測定限界内で同時であること意味し、熱源による加熱から3秒以内、好ましくは1秒以内を意図する。
【0035】
P3HA系樹脂といった比較的粘着性が高い熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物に対して、上記ゼロキャビティノズルおよび上記ギアポンプの少なくとも一方を用いても、ノズル部と金型との間の糸引き現象が発生するため、金型へ溶融樹脂組成物の定量供給性を向上させるには不十分であることを、本発明者らは新たに見出している。比較的粘着性が高い熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物に対して糸引き現象を防止する上で、加熱切断工程104は、必須である。
【0036】
加熱切断工程104での、前記溶融樹脂組成物の加熱切断方法は、溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断できれば、特に限定されない。例えば、熱源の輻射熱を利用して、溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断してもよい。この場合、熱風を用いて、溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断してもよい。そして、上記溶融樹脂組成物に対して熱風を供給する熱源として、熱風ヒーターを用いることが好ましい。このように熱風を用いた加熱切断方法を採用することにより、切断された溶融樹脂組成物による新たな糸引き現象が発生しにくくなる。それゆえ、吐出動作毎で、毎回同じ箇所で溶融樹脂組成物を切断できる。その結果、金型に対して、定量的に溶融樹脂組成物を供給できるという効果を奏する。
【0037】
また、加熱切断工程104では、ホットワイヤ(加熱した金属線)を用いて、溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断してもよい。この場合、熱源としてのホットワイヤを非接触で上記溶融樹脂組成物に接近させて、ホットワイヤからの輻射熱により、上記溶融樹脂組成物を瞬間的に加熱し切断する。
【0038】
また、加熱切断工程104では、上記溶融樹脂組成物を、上記熱可塑性樹脂の軟化温度+50℃以上に瞬間的に加熱することが好ましい。上記熱可塑性樹脂の軟化温度+50℃以上の瞬間的な加熱切断は、上記加熱切断工程を行うための加熱切断部と上記溶融樹脂組成物との位置関係に応じて適宜設定可能である。例えば、上記加熱切断部として熱風ヒーターを用いる場合、1つの熱風ヒーターの設定条件として、熱風ヒーター先端から上記溶融樹脂組成物までの距離を10mmとしたとき、熱可塑性樹脂の軟化温度+50℃以上に瞬間的に加熱できる条件である。具体的には、熱風ヒーターの熱風の風力の設定条件は、5L/min以上であることが好ましく、10L/min以上であることがより好ましい。さらに、熱風ヒーターの熱風温度の設定条件は、180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。
【0039】
なお、軟化温度とは、熱可塑性樹脂に対して、動的粘弾性測定により一定応力のもと、応力の変化を測定し、熱可塑性樹脂が軟化することで応力変化が発生したときの温度と定義する。例えば、上記熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、P3HA系樹脂の上記溶融樹脂組成物を、好ましくは200℃以上に、より好ましくは250℃以上に瞬間的に加熱する。
【0040】
(熱可塑性樹脂のプレス成形品の製造方法)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂のプレス成形品の製造方法は、上述の樹脂供給方法を一工程として含む。当該プレス成形品の製造方法は、上記金型を閉じて、上述の樹脂供給方法によって金型に溶融樹脂組成物に対して、プレス成形を行うプレス成形工程を含む。
【0041】
上記プレス成形工程では、上記金型に対して、熱プレス成形機を用いて熱プレスを行う。そして、熱プレスが完了した金型を冷却することによって、プレス成形を実施する。プレス成形後、金型を型開きして、プレス成形品を得ることができる。
【0042】
上記プレス成形工程にて使用される熱プレス成形機は、上記溶融樹脂組成物が供給された金型を熱プレス可能な構成であれば、特に限定されない。当該熱プレス成形機は、従来公知の装置を採用することができる。
【0043】
(樹脂供給装置)
本発明の一実施形態に係る樹脂供給装置は、本樹脂供給方法を実現できる構成となっている。
図2は、本実施形態に係る樹脂供給装置10の概略構成を模式的に示した図である。
図2に示すように、樹脂供給装置10は、押出機1と、移送部2と、吐出部3と、加熱切断部4と、を備えている。
【0044】
押出機1は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物11を生成する溶融部に相当する。押出機1では、上記樹脂組成物は、投入口1aから投入される。そして、投入口1aから投入された樹脂組成物は、溶融混錬されて、溶融樹脂組成物11となる。なお、上記溶融部は、
図1に示す押出機1に限定されず、樹脂組成物を溶融できるものであればよい。
【0045】
移送部2は、押出機1から吐出部3へ溶融樹脂組成物11を移送する。移送部2では、溶融樹脂組成物11は吐出部3へ定量移送される。移送部2は、吐出部3へ向けて溶融樹脂組成物11を定量吐出する定量吐出部と、当該定量吐出部から吐出された溶融樹脂組成物11を吐出部3へ移送する移送部本体と、を備えている。具体的には、移送部2は、上記定量吐出部としてのギアポンプ2aと、上記移送部本体としてのホットホース2bと、を備えている。ギアポンプ2aは、押出機1に接続されており、溶融樹脂組成物11を吐出部3へ向けて定量吐出する。ホットホース2bは、ギアポンプ2aと吐出部3との間を中継するホースである。移送部2では、溶融樹脂組成物11は、ギアポンプ2aにて定量吐出され、ホットホース2bを介して吐出部3へ移送される。上記定量吐出部は、ギアポンプ2aに限定されず、溶融樹脂組成物11を定量吐出可能な構成であれば、公知の装置を採用することができる。また、上記移送部本体は、ホットホース2bに限定されず、溶融樹脂組成物11を移送可能な構成であれば、公知の部材を採用することができる。
【0046】
吐出部3は、溶融樹脂組成物11を金型5へ供給する。吐出部3は、先端にノズル部31を備えている。溶融樹脂組成物11は、ノズル部31から金型5へ定量吐出される。吐出部3は、溶融樹脂組成物11を吐出可能な構成であれば特に限定されず、公知の装置を採用することができる。
【0047】
加熱切断部4は、吐出部3から金型5へ吐出した溶融樹脂組成物11に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する。加熱切断部4は、溶融樹脂組成物11に対して熱風を供給する熱風ヒーター4a(熱風供給部)を備えている。樹脂供給装置10によれば、加熱切断部4により、ノズル部31と金型5との間の溶融樹脂組成物11の糸引き部分を切断しても新たな糸引き部分が発生せず、金型5へ溶融樹脂組成物11を定量性良く供給できる。
【0048】
なお、加熱切断部4において、熱風ヒーター4aの風力および熱風温度、並びに熱風ヒーター4aと溶融樹脂組成物11との距離といった設定は、溶融樹脂組成物11に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断できれば、特に限定されない。例えば、熱風ヒーター4aと溶融樹脂組成物11との距離に関しては、熱風ヒーター4a先端と溶融樹脂組成物11との距離が10mmに設定され得る。
【0049】
樹脂供給装置10においては、吐出部3を昇降させる昇降機構が設けられていてもよい。
図3の301および302は、吐出部3の昇降機構を説明するための図である。
【0050】
図3の301および302に示されるように、昇降機構が設けられていることにより、吐出部3のノズル部31と金型5との距離を変更することが可能となる。例えば、使用する熱可塑性樹脂の粘着性に応じて、ノズル部31と金型5との距離を変更することができる。
【0051】
図3の301に示すように、ノズル部31から吐出される溶融樹脂組成物11の糸引き部分11aが太い場合、熱風ヒーター4aによって糸引き部分11aを瞬間的に加熱切断できない可能性がある。このような場合、
図3の302に示すように、昇降機構により、吐出部3を上昇させ、ノズル部31と金型5との距離を長くすることができる。そして、これにより、糸引き部分11aは、熱風ヒーター4aにより瞬間的に加熱できる程度に細くなる。このように昇降機構が設けられていることにより、熱可塑性樹脂の粘着性に応じて溶融樹脂組成物11の糸引き部分11aを瞬間的に加熱切断できる太さを設定することができる。
【0052】
なお、上記昇降機構は、吐出部3のノズル部31と金型5との距離を変更する構成であればよく、ノズル部31および金型5の少なくとも一方を昇降する機構である。例えば、昇降機構は、ノズル部31および金型5のうち金型5を昇降する機構であってもよい。
【0053】
(加熱切断部の変形例)
図2に示す加熱切断部4の変形例について、説明する。
図4は、
図2に示す樹脂供給装置10に備えられた加熱切断部4の変形例の構成を示す図である。
図4に示すように、加熱切断部4Aは、ホットワイヤ4bを備えている点が、
図1に示す加熱切断部4と異なる。すなわち、加熱切断部4Aは、溶融樹脂組成物11に対して非接触で、かつ瞬間的に加熱するホットワイヤ4bを備える。
【0054】
ホットワイヤ4bは、熱源であり、例えば通電加熱により加熱した金属線である。加熱切断部4Aの構成であっても、溶融樹脂組成物11の糸引き部分は、ホットワイヤ4bからの輻射熱によって、瞬間的に加熱切断され得る。加熱切断部4Aにおいて、ホットワイヤ4bの温度およびホットワイヤ4bと溶融樹脂組成物11との距離といった設定は、溶融樹脂組成物11に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断できれば、特に限定されない。
【0055】
(吐出部のノズル部について)
図2に示す樹脂供給装置10において、吐出部3のノズル部31は、溶融樹脂組成物11と吐出可能な構成であれば、特に限定されない。好ましくは、ノズル部31は、溶融樹脂組成物11を間欠吐出する構成である。
【0056】
図5の501は、ノズル部31の構成例を概略的に示す断面図である。
図5の501に示すように、ノズル部31は、ノズル本体31aと、キャビティ31bと、プランジャー31cと、を備えている。ノズル部31において、溶融樹脂組成物は、ノズル本体31aに収容される。
【0057】
キャビティ31bは、ノズル本体31aの金型側の先端に設けられた空洞部である。キャビティ31bは、ノズル本体31aの先端から鉛直下方に伸びている。また、キャビティ31bは、ノズル本体31aと連通している。吐出動作中、ノズル本体31a内の溶融樹脂組成物は、キャビティ31bを介して、金型へ吐出される。
【0058】
プランジャー31cは、鉛直方向に伸びる棒状であり、ノズル部31の開閉機構として機能する。当該開閉機構は、プランジャー31cと、プランジャー31cを上下動させる移動部と、を備えている。プランジャー31cは、ノズル本体31a内を上下動することにより、ノズル本体31aとキャビティ31bとの連通口を開放または閉塞する。そして、プランジャー31cにより上記連通口の開放および閉塞が交互に行われることにより、ノズル部31は、溶融樹脂組成物を間欠吐出する。
【0059】
図5の502は、ノズル部31の変形例としてのゼロキャビティノズル31Aの概略構成を示す断面図である。
図5の502に示すように、ゼロキャビティノズル31Aは、キャビティ31bが設けられていない点が、ノズル部31と異なる。
【0060】
ノズル部31では、プランジャー31cによりノズル本体31aとキャビティ31bとの連通口が閉塞し閉状態となっても、キャビティ31b内に溶融樹脂組成物が残留し得る。そして、キャビティ31b内の溶融樹脂組成物の残留物が起点となって、ノズル部31と金型との間に溶融樹脂組成物の糸引き現象が発生する可能性がある。ゼロキャビティノズル31Aの構成によれば、溶融樹脂組成物が残留し得るキャビティ31bが設けられていないので、溶融樹脂組成物の糸引き現象を防止し得る。このように、ゼロキャビティノズル31Aには、溶融樹脂組成物の糸引き防止効果がある。
【0061】
(熱可塑性樹脂)
本樹脂供給方法において使用される樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。当該熱可塑性樹脂は、特に限定されない。好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル、ブタジエン、ポリスチレン、アクリル系ポリマー等の汎用樹脂のほか、例えば、P3HA系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の溶融樹脂組成物は、樹脂組成物の溶融条件によっては、カッターで切断したときに上記糸引き現象が生じ得る。また、本製造方法において使用される樹脂組成物は、プレス成形において使用可能な熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0062】
特に、本樹脂供給方法において使用される熱可塑性樹脂は、P3HA系樹脂であることが好ましい。本明細書において、「P3HA系樹脂」とは、生分解性を有する脂肪族ポリエステル(好ましくは、芳香環を含まないポリエステル)を意味する。P3HA系樹脂は、一般式:〔-CHR-CH2-CO-O-〕で示される3-ヒドロキシアルカン酸繰り返し単位(式中、Rは、CnH2n+1で表されるアルキル基で、nは、1以上15以下の整数である。)を繰り返し単位として含む、ポリヒドロキシアルカノエートである。
【0063】
また、前記P3HA系樹脂は、3HB単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を少なくとも1種含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂における3-ヒドロキシブチレート単位が、全繰り返し単位(100モル%)中、94.5~98.5モル%であり、好ましくは95.0~98.5モル%であり、より好ましくは96.0~98.5モル%であり、さらに好ましくは、96.5~98.0モル%である。
【0064】
3HB繰り返し単位の組成比が94.5モル%以上であることにより、P3HA系樹脂の剛性がより向上し、また、結晶化速度が速くなり、バリが低減される、生産性向上する傾向がある。一方、3HB繰り返し単位の組成比が98.5モル%以下であることにより、融点が熱分解温度を下回るため、安定かつ連続生産が可能となる。なお、P3HA系樹脂のモノマー組成比は、ガスクロマトグラフィー等によって測定することができる(例えば、国際公開第2014/020838号参照)。
【0065】
より具体的には、P3HA系樹脂としては、3HBと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)等が挙げられる。
【0066】
なお、微生物により産生されるP3HA系樹脂(微生物産生P3HA系樹脂)は、通常、D体(R体)のポリヒドロキシアルカン酸モノマー単位のみから構成されるP3HA系樹脂である。微生物産生P3HA系樹脂の中でも、工業的生産が容易である点から、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB3HV3HH、P3HB4HBが好ましく、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBがより好ましい。
【0067】
微生物産生P3HA系樹脂を生産する微生物としては、P3HA系樹脂類の生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、P3HB生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)等の天然微生物が挙げられる。これらの微生物ではP3HBが菌体内に蓄積されることが知られている。
【0068】
また、ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体の生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA系樹脂合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また上記以外にも、生産したいP3HA系樹脂に合わせて、各種P3HA系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0069】
P3HA系樹脂の分子量は、目的とする用途で実質的に十分な物性を示すものであればよく、特に限定されない。P3HA系樹脂の重量平均分子量の範囲は、10万~100万が好ましく、より好ましくは15万~70万、さらに好ましくは20万~50万、特に好ましくは25万~45万である。重量平均分子量が10万以上であると、適度な機械的強度が得られる。また、分子量が100万以下であると溶融粘度の上昇を抑制することができ、成形性に優れる。
【0070】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31,400、197,000、668,000、1,920,000のポリスチレンを使用して作成する。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0071】
本製造方法における樹脂組成物は、前記P3HA系樹脂に加えて、第2のP3HA系樹脂を含んでいてもよい。前記第2のP3HA系樹脂は、3HB単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を少なくとも1種含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂における3HB単位が65.0~90.0モルであることが好ましく、68.0~88.0モルであることがより好ましく、70.0~85.0モルであることがさらに好ましい。前記樹脂組成物が第2のP3HA系樹脂をさらに含むことにより、成形品の靭性に優れる。
【0072】
第2のP3HA系樹脂は、前記P3HA系樹脂と異なるものであればよく、特に限定されない。第2のP3HA系樹脂としては、例えば、前記前記P3HA系樹脂として例示された樹脂が挙げられる。
【0073】
前記第2のP3HA系樹脂の含有量は、特に限定されないが、全P3HA系樹脂100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、より好ましくは45重量部以下であり、さらに好ましくは40重量部以下である。前記第2のP3HA系樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。なお、前記第2のP3HA系樹脂としては、上述したP3HA系樹脂を使用することができる。また、本明細書において、「全P3HA系樹脂」とは、本製造方法における樹脂組成物に含まれるすべてのP3HA系樹脂を意図する。
【0074】
前記樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、P3HA系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバテートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0075】
前記他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、全P3HA系樹脂100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、より好ましくは40重量部以下である。さらに好ましくは30重量部以下である。前記他の樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。
【0076】
前記樹脂組成物は、無機フィラーを含有しなくともよいが、無機フィラーをさらに含むことが好ましい。前記樹脂組成物が無機フィラーを含むことにより、結晶化速度が向上し、バリ低減、生産サイクル向上等の効果を奏する。
【0077】
前記無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、タルク、ケイソウ土、白土、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、シリカ、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、石英、ガラスファイバー、ガラス粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0078】
前記前記無機フィラーの含有量は、全P3HA系樹脂100重量部に対して、例えば、0~60重量部であり、5~50重量部が好ましく、10~40重量部がより好ましく、15~35重量部が特に好ましい。無機フィラーの含有量が上記の範囲であると、十分な結晶化速度と靭性とを両立することができる。
【0079】
また、前記樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、P3HA系樹脂と共に使用可能な添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし。2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0080】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0081】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、前記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する移送工程と、前記吐出部から金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する吐出工程と、前記吐出部から前記金型へ吐出した前記溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する加熱切断工程と、を有する、樹脂供給方法。
<2>前記加熱切断工程は、前記溶融樹脂組成物に対して、熱風またはホットワイヤを用いて、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する工程を含む、<1>に記載の樹脂供給方法。
<3>前記吐出工程は、前記溶融樹脂組成物を間欠吐出する工程を含む、<1>または<2>に記載の樹脂供給方法。
<4>前記移送工程は、ギアポンプを用いて前記溶融樹脂組成物を吐出部へ移送する工程を含む、<1>~<3>の何れかに記載の樹脂供給方法。
<5>前記吐出工程は、ゼロキャビティノズルから前記金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する工程を含む、<1>~<4>の何れかに記載の樹脂供給方法。
<6>前記熱可塑性樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、<1>~<5>の何れかに記載の樹脂供給方法。
<7>前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)からなる群より選択される1種類以上である、<6>に記載の樹脂供給方法。
<8><1>~<7>の何れかに記載の樹脂供給方法を一工程として含む、熱可塑性樹脂のプレス成形品の製造方法。
<9>
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、前記溶融樹脂組成物を金型へ供給するための吐出部と、前記溶融部から前記吐出部へ前記溶融樹脂組成物を移送する移送部と、前記吐出部から前記金型へ吐出した溶融樹脂組成物に対して、非接触で、かつ瞬間的に加熱して切断する加熱切断部と、を備える、樹脂供給装置。
<10>前記加熱切断部は、前記溶融樹脂組成物に対して熱風を供給する熱風供給部、または、前記溶融樹脂組成物に対して非接触で、かつ瞬間的に加熱するホットワイヤを備える、<9>に記載の樹脂供給装置。
<11>前記吐出部は、前記溶融樹脂組成物を間欠吐出するノズル部を備える、<9>または<10>に記載の樹脂供給装置。
<12>前記ノズル部は、ゼロキャビティノズルである、<11>に記載の樹脂供給装置。
<13>前記移送部は、ギアポンプを備える、<9>~<12>の何れかに記載の樹脂供給装置。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、例えば、P3HA系樹脂を用いたプレス成形体の製造の分野、その他の分野に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 押出機(溶融部)
2 移送部
2a ギアポンプ
3 吐出部
31 ノズル部
31A ゼロキャビティノズル
4、4A 加熱切断部
4a 熱風ヒーター(熱風供給部)
4b ホットワイヤ
5 金型
10 樹脂供給装置
11 溶融樹脂組成物
101 溶融工程
102 移送工程
103 吐出工程
104 加熱切断工程