(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132908
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】成形装置および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/37 20190101AFI20230914BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20230914BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20230914BHJP
B29C 48/255 20190101ALI20230914BHJP
B29C 48/345 20190101ALI20230914BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20230914BHJP
C08G 63/06 20060101ALI20230914BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
B29C48/37
B29C48/30
B29C48/92
B29C48/255
B29C48/345
B29C43/34
C08G63/06
B29K67:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038489
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宇野 隆
【テーマコード(参考)】
4F204
4F207
4J029
【Fターム(参考)】
4F204AA24
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FF01
4F204FF23
4F204FG08
4F204FJ09
4F204FN11
4F204FN15
4F207AA24
4F207AJ08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL93
4F207KL94
4J029AA02
4J029AE01
4J029EA02
4J029HA01
4J029HB01
(57)【要約】
【課題】金型の複数の成形部に対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給する。
【解決手段】本発明の成形装置(100)において、溶融樹脂組成物を金型(30)へ供給する供給部(20)は、金型(30)の成形部(31a)毎に対応した複数の吐出口部(24)を有し、a)吐出口部(24)毎にギアポンプ(22)を備える、あるいは、b)吐出口部(24)毎に溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体を成形する成形部を複数有する金型と、
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、
前記溶融樹脂組成物を前記金型へ供給する供給部と、を備え、
前記供給部は、前記金型の前記成形部毎に対応した複数の吐出口部を有し、
a)前記吐出口部毎にギアポンプを備える、あるいは、
b)前記吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを備える、成形装置。
【請求項2】
前記供給部は、間欠的に、前記溶融樹脂組成物を前記吐出口部から吐出する、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
前記吐出口部は、前記溶融部から連続的に供給される前記溶融樹脂組成物を遮断する開閉ノズルを備える、請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記ギアポンプは、前記開閉ノズルの開閉と連動して駆動する、請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
前記金型は、下金型と、当該下金型に対応する上金型と、を備え、
前記溶融樹脂組成物は、前記下金型に供給される、請求項1~4の何れか1項に記載の成形装置。
【請求項6】
さらに、前記金型を型締めする圧縮成形部を備える、請求項1~5の何れか1項に記載の成形装置。
【請求項7】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、
成形体を成形する成形部を複数有する金型に対して前記溶融樹脂組成物を供給する供給工程と、を有し、
前記供給工程は、
前記金型の前記成形部毎に対応した複数の吐出口部から、当該吐出口部毎に設けられたギアポンプ、または当該吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを介して、前記金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する工程を含む、成形品の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、請求項7に記載の成形品の製造方法。
【請求項9】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)からなる群より選択される1種類以上である、請求項8に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成し、当該溶融樹脂組成物を金型へ供給しプレス成形加工する技術が知られている。当該技術では、圧縮成形装置が用いられる。
【0003】
例えば特許文献1には、圧縮成形装置の複数の金型へ溶融樹脂組成物を移送する技術が開示されている。特許文献1に開示された技術では、1つのギアポンプによって溶融樹脂組成物の圧力を調節しつつ、分岐管を経由して、融樹脂組成物を複数の金型へ順次注入している。特許文献1に開示された技術では、分岐管それぞれに設けられたバルブの開閉により、融樹脂組成物を複数の金型へ順次注入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、複数の金型に対して一斉に溶融樹脂組成物を供給する場合、複数のバルブを一斉に開放する必要がある。このため、複数の金型において溶融樹脂組成物の流路が異なることに起因して圧力損失が生じ、複数の金型間において溶融樹脂組成物の移送量のバラツキが生じるという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、金型の複数の成形部に対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給し得る成形装置および成形品の製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る成形装置は、成形体を成形する成形部を複数有する金型と、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、前記溶融樹脂組成物を前記金型へ供給する供給部と、を備え、前記供給部は、前記金型の前記成形部毎に対応した複数の吐出口部を有し、a)前記吐出口部毎にギアポンプを備える、あるいは、b)前記吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを備える、装置である。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、成形体を成形する成形部を複数有する金型に対して前記溶融樹脂組成物を供給する供給工程と、を有し、前記供給工程は、前記金型の前記成形部毎に対応した複数の吐出口部から、当該吐出口部毎に設けられたギアポンプ、または当該吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを介して、前記金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する工程を含む、方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、金型の複数の成形部に対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る成形装置の概略構成を説明するための図である。
【
図2】
図1に示す成形装置に使用される下金型の別の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す成形装置に備えられた供給部の変形例1の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す成形装置に備えられた供給部の変形例2の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0012】
(本発明の一実施形態の概要)
上述のように、従来技術では、複数の金型に対して一斉に溶融樹脂組成物を供給する場合、複数の金型間において溶融樹脂組成物の移送量のバラツキが生じるという問題がある。それゆえ、従来技術には、複数の金型に対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給することが困難であるという課題がある。
【0013】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果、複数の金型に吐出する吐出口部毎にギアポンプを配置することにより、金型へ溶融樹脂組成物を定量性良く供給できることを見出した。同様に、多ポートギアポンプを用いることにより、金型へ溶融樹脂組成物を定量性良く供給できることを見出した。
【0014】
本実施形態に係る成形装置(以下、本成形装置と称する場合がある)は、成形体を成形する成形部を複数有する金型と、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、前記溶融樹脂組成物を前記金型へ供給する供給部と、を備え、前記供給部は、前記金型の前記成形部毎に対応した複数の吐出口部を有し、a)前記吐出口部毎にギアポンプを備える、あるいは、b)前記吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを備える、装置である。
【0015】
また、本実施形態に係る成形品の製造方法(以下、本製造方法と称する場合がある)は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、成形体を成形する成形部を複数有する金型に対して前記溶融樹脂組成物を供給する供給工程と、を有し、前記供給工程は、前記金型の前記成形部毎に対応した複数の吐出口部から、当該吐出口部毎に設けられたギアポンプ、または当該吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを介して、前記金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する工程を含む、方法である。
【0016】
本成形装置および本製造方法によれば、前記金型の複数の成形部に対して、溶融樹脂組成物を定量性良く供給できる。
【0017】
さらに、本樹脂供給方法および本樹脂供給装置によれば、海洋における生分解性樹脂(例えば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂(以下、P3HA系樹脂と称する場合がある)等)を使用することにより、廃棄による海洋汚染を抑制することができ、これにより、例えば、目標12「持続可能な消費生産形態を確保する」や目標14「持続可能な開発のために、海・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」等の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。以下、本樹脂供給方法および本樹脂供給装置について、さらに詳述する。
【0018】
(成形装置)
図1は、本実施形態に係る成形装置100の概略構成を説明するための図である。
図1に示すように、成形装置100は、押出機10と、供給部20と、金型30と、圧縮成形部40と、備えている。成形装置100において、成形体を成形するための金型30は、下金型31と、下金型31に対応する上金型32と、を備えている。そして、下金型31には、成形体を成形する成形部31aが複数設けられている。このように、成形装置100は、金型30による一度の成形工程で、複数の成形体Mを成形可能な構成となっている。
【0019】
押出機10は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部に相当する。押出機10では、上記樹脂組成物は、投入口11から投入される。そして、投入口11から投入された樹脂組成物は、溶融混錬されて、溶融樹脂組成物となる。なお、上記溶融部は、
図1に示す押出機10に限定されず、樹脂組成物を溶融できるものであればよい。
【0020】
供給部20は、溶融樹脂組成物を金型30へ供給する構成となっている。成形装置100においては、供給部20により、溶融樹脂組成物は、下金型31の成形部31aに供給される。また、供給部20は、溶融樹脂組成物を金型30へ吐出する吐出部21を備えている。吐出部21は、下金型31の成形部31aに対応して設けられている。吐出部21の数は、成形部31aと同じである。また、
図1に示すように、複数の吐出部21は全て、上下方向において同一の位置に配置されている。また、複数の吐出部21それぞれには、溶融樹脂組成物が流入する流入口が設けられている。
【0021】
供給部20は、このような複数の吐出部21に対して、押出機10にて溶融された溶融樹脂組成物を移送するようになっている。供給部20において、溶融樹脂組成物を吐出部21へ移送するための移送装置は、溶融樹脂組成物を移送することが可能な構成であれば、公知の装置を採用することができる。当該移送装置は、押出機10と吐出部21とを繋ぐ単なる配管(例えばホットホース等)であってもよい。
【0022】
複数の吐出部21はそれぞれ、ギアポンプ22と、モータ23と、吐出口部24と、を備えている。ギアポンプ22は、押出機10から移送された溶融樹脂組成物を吐出口部24へ一定の圧力で移送する機能を有する。ギアポンプ22は、溶融樹脂組成物を移送できれば、公知のギアポンプを採用することができる。モータ23は、ギアポンプ22を駆動するための駆動源である。吐出口部24は、吐出部21の先端に設けられている。溶融樹脂組成物は、吐出部21の吐出口部24から吐出する。
【0023】
このように、成形装置100において、供給部20は、金型30の成形部31a毎に対応した複数の吐出口部24を有する。そして、供給部20は、吐出口部24毎にギアポンプ22を備えている。
【0024】
圧縮成形部40は、金型30を型締めする。より具体的には、圧縮成形部40は、下金型31と上金型32とを型締めし溶融樹脂組成物をプレス成形し冷却する。圧縮成形部40は、上下方向において金型30を固定する一対の固定盤41および42と、固定盤41および42により固定された金型30を型締めおよび型開きする成形機構(不図示)と、を備えている。
【0025】
成形装置100では、押出機10により生成された溶融樹脂組成物は、供給部20の吐出口部24から、下金型31の成形部31aそれぞれに供給される。このように溶融樹脂組成物が供給された下金型31は、圧縮成形部40へ搬送される。そして、圧縮成形部40では、固定盤41および42によって、当該下金型31は上金型32と合わさって固定される。そして、上記成形機構により、下金型31および上金型32(金型30)は、型締めされ、熱プレスされる。熱プレスが完了した金型30は、冷却される。このように、成形体Mは、金型30によって熱プレスおよび冷却して成形される。成形体Mは、上記成形機構により金型30が型開きされることにより、取り出され得る。なお、圧縮成形部40は、
図1に示す装置に限定されず、溶融樹脂組成物が供給された下金型31と上金型32とを合わせて型締めおよび型開きすることが可能なプレス成形装置であれば、公知のプレス成形装置を採用することができる。
【0026】
ここで、成形装置100によれば、供給部20は、金型30の成形部31a毎に対応した複数の吐出口部24を有し、吐出口部24毎にギアポンプ22を備えている。それゆえ、ギアポンプ22によって、吐出口部24それぞれに対して、一定の圧力で溶融樹脂組成物を移送することができる。その結果、複数の成形部31aに対して一斉に溶融樹脂組成物を供給する場合であっても、複数の吐出口部24間において溶融樹脂組成物の移送量のバラツキが生じることがない。したがって、成形装置100によれば、複数の成形部31aに対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給することができる。
【0027】
通常の熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物を用いた場合であれば、モータ23を停止すればギアポンプ22の駆動が停止し、吐出口部24から溶融樹脂組成物が吐出されない。その一方で、例えば、粘着性が比較的低い熱可塑性樹脂(例えば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂等)の溶融樹脂組成物を用いた場合、モータ23を停止しギアポンプ22の駆動を停止しても、吐出口部24に残存している溶融樹脂組成物が落下し下金型31の成形部31aに供給されるおそれがある。その結果、複数の成形部31aに対して溶融樹脂組成物の移送量のバラツキが若干生じる可能性がある。粘着性が比較的低い熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物を用いた場合においても、複数の成形部31aに対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給する観点では、供給部20は、間欠的に、溶融樹脂組成物を吐出口部24から吐出することが好ましい。すなわち、吐出口部24は、溶融樹脂組成物を間欠吐出する構成であることが好ましい。
【0028】
例えば、
図1に示すように、吐出口部24は、開閉ノズル24aを備えていることが好ましい。開閉ノズル24aは、押出機10から連続的に供給される溶融樹脂組成物を遮断する機能を有する。開閉ノズル24aは、溶融樹脂組成物が通過するノズル本体と、ノズル本体を開放または閉鎖する開閉機構と、を備えている。当該開閉機構によりノズル本体の閉鎖および開放が交互に行われることにより、開閉ノズル24aは、溶融樹脂組成物を間欠吐出する。なお、開閉ノズル24aは、従来公知の構成を採用することができ、例えば、開閉動作原理がスプリング式もしくはニードル式のシャットオフノズルなどが挙げられ、先端のキャビティが小さい(いわゆるゼロキャビティ)ノズルが好ましい。
【0029】
成形装置100によれば、ギアポンプ22の駆動が停止しても、吐出口部24の開閉ノズル24aが押出機10から連続的に供給される溶融樹脂組成物を遮断するので、吐出口部24に残存する溶融樹脂組成物の成形部31aへの落下を防止できる。このため、粘着性が比較的低い熱可塑性樹脂の溶融樹脂組成物を用いた場合においても、複数の成形部31aに対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給できる。
【0030】
また、溶融樹脂組成物の間欠吐出をスムーズに行うという観点では、ギアポンプ22は、開閉ノズル24aの開閉と連動して駆動することが好ましい。すなわち、ギアポンプ22の駆動源であるモータ23は、開閉ノズル24aの開閉機構と連動する。このような構成では、ギアポンプ22は、(I)開閉機構による開閉ノズル24aの開放に連動して駆動するとともに、(II)開閉機構による開閉ノズル24aの閉鎖と連動して駆動停止する。
【0031】
成形装置100によれば、複数の成形部31aに対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給する効果に加え、複数の成形部31aに対して同時に溶融樹脂組成物を供給できるという効果を奏する。例えば、複数の吐出部21において、モータ23によるギアポンプ22の駆動のタイミングを同じにすれば、複数の成形部31aに対して同時に溶融樹脂組成物を供給できる。
【0032】
成形装置100によれば、このように複数の成形部31aに対して同時に溶融樹脂組成物を供給できるので、複数の成形部31a間において、成形部31aへの溶融樹脂組成物の供給から圧縮成形部40によるプレス成形までの時間の差がなく、成形体Mの品質のバラツキを小さくできる。更に、溶融樹脂組成物の供給からプレス成形を短時間で完了させることが出来るので、成形サイクルを早めることができる。上記効果は、熱可塑性樹脂として、結晶化等の時間依存性が高い(時間経過に敏感な)特性を有する材料を用いた場合に有効である。特に熱可塑性樹脂としてポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂を用いた場合、上記効果は有効である。
【0033】
成形装置100に使用される金型30は、1つの下金型31に複数の成形部31aが形成された構成であった。しかし、金型30は、
図1に示す構成に限定されず、成形部31aが複数形成された構成であればよい。
図2は、成形装置100に使用される下金型の別の構成例を示す斜視図である。
【0034】
図2に示すように、下金型31Aは、複数の下金型要素31bから構成されている。そして、複数の下金型要素31bそれぞれに成形部31aが形成されている。下金型31Aを備えた成形装置であっても、複数の成形部31aに対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給することができる。
【0035】
(供給部の変形例1)
図1に示す供給部20の変形例について、説明する。
図3は、変形例1としての供給部20Aの概略構成を示す斜視図である。なお、
図3では、吐出口部を省略している。
【0036】
図3に示すように、供給部20Aは、吐出部21の配置が
図1に示す供給部20と異なる。供給部20Aにおいて、吐出部21は、上下方向において同一位置に配置されていない。複数の吐出部21は、千鳥状に配置されている。
【0037】
具体的には、上下方向において、複数の吐出部21は、複数段に配置されている。そして、複数の吐出部21同士の位置関係は、次のようになっている。すなわち、所定段に配置された任意の吐出部21と当該吐出部21に対応する成形部31aとを結ぶ直線が、上記所定段よりも下にある段に配置された全ての吐出部21を通過しない位置関係である。
【0038】
図3に示す吐出部21の位置関係では、上下方向において2段目に配置された任意の吐出部21とそれに対応する成形部31aとを結ぶ直線は、1段目に配置された全ての吐出部21を通過しないようになっている。
【0039】
供給部20Aの構成であっても、複数の成形部31aに対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給することができる。特に、吐出部21の設置スペースが限られる場合、供給部20Aのような吐出部21の配置が有効である。
【0040】
(供給部の変形例2)
図1に示す供給部20の他の変形例について、説明する。
図4は、変形例2としての供給部20Bの概略構成を示す斜視図である。なお、
図4では、吐出口部を省略している。
【0041】
図4に示すように、供給部20Bは、多ポートギアポンプ22Bと、モータ23Bと、を備えている点が
図1に示す供給部20と異なる。
【0042】
多ポートギアポンプ22Bは、複数の吐出口部を有し、吐出口部毎に溶融樹脂組成物を供給する構成となっている。多ポートギアポンプ22Bは、複数の吐出口部へ一斉に定量移送するための複数のポンプ機構を備えている。当該複数のポンプ機構は、複数のギア要素22aが組み合わさって構成されている。モータ23Bは、当該ポンプ機構のギア要素22aを駆動する駆動源である。また、多ポートギアポンプ22Bは、上記溶融部により生成された溶融樹脂組成物が流入する流入口を1つ備えている。
【0043】
多ポートギアポンプ22Bでは、複数のギア要素22aからなるポンプ機構がモータ23Bにより駆動されると、上記流入口から溶融樹脂組成物が流入し、複数の吐出口部から一斉に吐出されることになる。多ポートギアポンプ22Bは、1台のポンプ装置でありながら、装置内に、複数の吐出口部へ溶融樹脂組成物を一斉に定量移送するポンプ機構を複数備えた構成となっている。
【0044】
それゆえ、供給部20Bを備えた成形装置は、複数の成形部31aに対して同時に溶融樹脂組成物を供給する場合に特に有効である。多ポートギアポンプ22Bは、公知の装置を採用することができ、例えば、特許4980504号に開示された多ポートギアポンプなどが挙げられる。また、ウェブページ「https://www.ipros.jp/product/detail/2000316958」に開示された多ポートギアポンプも多ポートギアポンプ22Bとして適用可能である。
【0045】
(成形品の製造方法)
本製造方法は、溶融工程と、供給工程と、を有する。上記溶融工程では、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する。また、上記供給工程では、成形体を成形する成形部を複数有する金型に対して上記溶融樹脂組成物を供給する。そして、本製造方法において、上記供給工程は、上記金型の上記成形部毎に対応した複数の吐出口部から、(i)当該吐出口部毎に設けられたギアポンプ、または(ii)当該吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを介して、上記金型へ上記溶融樹脂組成物を供給する工程を含む。本製造方法は、上述した工程を有していれば、特に限定されないが、例えば、上述した成形装置を用いた成形品の製造方法が挙げられる。
【0046】
上記溶融工程では、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する。上記樹脂組成物の溶融方法は、熱可塑性樹脂を含有する溶融樹脂組成物を形成できる方法であれば、従来公知の方法を採用することができる。好ましくは、上記溶融工程は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程を含む。
【0047】
溶融混練工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を得ることができる限り、特に限定されない。溶融混練工程の具体例としては、例えば以下(a1)および(a2)の
方法が挙げられる:
(a1)混合装置などによる混合またはブレンドによって、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物を調製する。その後、当該樹脂組成物を溶融混練装置に供給し、溶融混練する方法;
(a2)熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給し、溶融混練装置内で樹脂組成物を調製する(完成させる)とともに、当該樹脂組成物を溶融混練する方法。
【0048】
前記(a1)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を混合またはブレンド(ドライブレンド)する順序は特に限定されない。前記(a2)の方法において、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物の原料を溶融混練装置に供給する順序は特に限定されない。
【0049】
前記(a1)の方法において、混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
【0050】
前記(a1)および(a2)の方法において、溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
【0051】
溶融混練工程において、例えば上記熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、樹脂組成物を溶融混練するときの温度は、P3HA系樹脂の物性(融点、重量平均分子量等)および使用する添加剤の種類等によるため一概には規定できない。樹脂組成物を溶融混練するときの温度に関して、例えば、吐出口部から吐出される溶融樹脂組成物の温度(以下、組成物温度と称する場合がある。)を140℃~190℃とすることが好ましく、150℃~180℃とすることがより好ましく、160℃~170℃とすることがさらに好ましい。組成物温度が150℃以下である場合、P3HA系樹脂の未溶融物が発生してしまう場合がある。一方、組成物温度が180℃以上である場合、P3HA系樹脂が熱分解してしまう場合がある。
【0052】
上記供給工程では、成形体を成形する成形部を複数有する金型に対して上記溶融樹脂組成物を供給する。上記供給工程にて使用されるギアポンプまたは多ポートギアポンプは、(成形装置)の項にて説明したギアポンプ22または多ポートギアポンプ22Bを採用することができる。本製造方法によれば、上記供給工程が、上記金型の上記成形部毎に対応した複数の吐出口部から、(i)当該吐出口部毎に設けられたギアポンプ、または(ii)当該吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを介して、上記金型へ上記溶融樹脂組成物を供給する工程を有する。それゆえ、複数の成形部に対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給することができる。
【0053】
また、特に粘着性が比較的低い溶融樹脂組成物に対しては、上記供給工程は、間欠的に、上記溶融樹脂組成物を前記吐出口部から吐出する工程Aを有することが好ましい。これにより、複数の成形部に対して溶融樹脂組成物を定量性良く供給できる。工程Aにおいては、上記吐出口部に備えられた開閉ノズルによって、上記溶融工程から連続的に供給される溶融樹脂組成物を遮断して、溶融樹脂組成物を吐出することが好ましい。工程Aにて使用される開閉ノズルは、(成形装置)の項にて説明した開閉ノズル24aを採用することができる。
【0054】
また、溶融樹脂組成物の間欠吐出は、吐出動作の実行および停止が交互に周期的に行われていてもよいし、非周期的に行われていてもよい。吐出動作の実行および停止が交互に周期的に行われる場合、吐出動作の実行および停止の周期は、組成物温度、溶融樹脂組成物の粘着性等に応じて適宜設定可能である。
【0055】
例えば上記熱可塑性樹脂がP3HA系樹脂である場合、溶融樹脂組成物の間欠吐出において、吐出動作は、1秒~30秒おきに停止することが好ましく、1秒~15秒おきに停止していることがより好ましい。また、吐出動作の停止時間は、1秒~15秒であることが好ましく、1秒~5秒であることがより好ましい。これにより、3HA系樹脂の溶融樹脂組成物を熱による樹脂の特性が劣化することが防止できるという利点を有する。
【0056】
本製造方法は、上記金型を型締めする圧縮成形工程をさらに含むことが好ましい。より具体的には、圧縮成形工程では、熱プレス成形機を用いて下金型と上金型とを型締めし溶融樹脂組成物をプレス成形する。そして、熱プレスが完了した金型を冷却することによって、プレス成形を実施する。プレス成形後、金型を型開きして、プレス成形品を得ることができる。上記圧縮成形工程にて使用される圧縮成形装置は、(成形装置)の項にて説明した圧縮成形部40を採用することができる。
【0057】
(熱可塑性樹脂)
本製造方法において使用される樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含む。当該熱可塑性樹脂は、特に限定されない。好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリロニトリル、ブタジエン、ポリスチレン、アクリル系ポリマーの汎用樹脂のほか、例えば、P3HA系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂が挙げられる。また、本製造方法において使用される樹脂組成物は、プレス成形において使用可能な熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0058】
特に、本製造方法において使用される熱可塑性樹脂は、P3HA系樹脂であることが好ましい。本明細書において、「P3HA系樹脂」とは、生分解性を有する脂肪族ポリエステル(好ましくは、芳香環を含まないポリエステル)を意味する。P3HA系樹脂は、一般式:〔-CHR-CH2-CO-O-〕で示される3-ヒドロキシアルカン酸繰り返し単位(式中、Rは、CnH2n+1で表されるアルキル基で、nは、1以上15以下の整数である。)を繰り返し単位として含む、ポリヒドロキシアルカノエートである。
【0059】
また、前記P3HA系樹脂は、3HB単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を少なくとも1種含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂における3-ヒドロキシブチレート単位が、全繰り返し単位(100モル%)中、94.5~98.5モル%であり、好ましくは95.0~98.5モル%であり、より好ましくは96.0~98.5モル%であり、さらに好ましくは、96.5~98.0モル%である。
【0060】
3HB繰り返し単位の組成比が94.5モル%以上であることにより、P3HA系樹脂の剛性がより向上し、また、結晶化速度が速くなり、バリが低減される、生産性向上する傾向がある。一方、3HB繰り返し単位の組成比が98.5モル%以下であることにより、融点が熱分解温度を下回るため、安定かつ連続生産が可能となる。なお、P3HA系樹脂のモノマー組成比は、ガスクロマトグラフィー等によって測定することができる(例えば、国際公開第2014/020838号参照)。
【0061】
より具体的には、P3HA系樹脂としては、3HBと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)等が挙げられる。
【0062】
なお、微生物により産生されるP3HA系樹脂(微生物産生P3HA系樹脂)は、通常、D体(R体)のポリヒドロキシアルカン酸モノマー単位のみから構成されるP3HA系樹脂である。微生物産生P3HA系樹脂の中でも、工業的生産が容易である点から、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB3HV3HH、P3HB4HBが好ましく、P3HB、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB4HBがより好ましい。
【0063】
微生物産生P3HA系樹脂を生産する微生物としては、P3HA系樹脂類の生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、P3HB生産菌としては、1925年に発見されたBacillus megateriumが最初で、他にもカプリアビダス・ネケイター(Cupriavidus necator)(旧分類:アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha))、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)等の天然微生物が挙げられる。これらの微生物ではP3HBが菌体内に蓄積されることが知られている。
【0064】
また、ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体の生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA系樹脂合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また上記以外にも、生産したいP3HA系樹脂に合わせて、各種P3HA系樹脂合成関連遺伝子を導入した遺伝子組換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0065】
P3HA系樹脂の分子量は、目的とする用途で実質的に十分な物性を示すものであればよく、特に限定されない。P3HA系樹脂の重量平均分子量の範囲は、10万~100万が好ましく、より好ましくは15万~70万、さらに好ましくは20万~50万、特に好ましくは25万~45万である。重量平均分子量が10万以上であると、適度な機械的強度が得られる。また、分子量が100万以下であると溶融粘度の上昇を抑制することができ、成形性に優れる。
【0066】
前記重量平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(昭和電工社製「Shodex GPC-101」)を用い、カラムにポリスチレンゲル(昭和電工社製「Shodex K-804」)を用い、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算した場合の分子量として求めることができる。この際、検量線は重量平均分子量31,400、197,000、668,000、1,920,000のポリスチレンを使用して作成する。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0067】
本製造方法における樹脂組成物は、前記P3HA系樹脂に加えて、第2のP3HA系樹脂を含んでいてもよい。前記第2のP3HA系樹脂は、3HB単位と他のヒドロキシアルカノエート単位との共重合体を少なくとも1種含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂における3HB単位が65.0~90.0モルであることが好ましく、68.0~88.0モルであることがより好ましく、70.0~85.0モルであることがさらに好ましい。前記樹脂組成物が第2のP3HA系樹脂をさらに含むことにより、成形品の靭性に優れる。
【0068】
第2のP3HA系樹脂は、前記P3HA系樹脂と異なるものであればよく、特に限定されない。第2のP3HA系樹脂としては、例えば、前記前記P3HA系樹脂として例示された樹脂が挙げられる。
【0069】
前記第2のP3HA系樹脂の含有量は、特に限定されないが、全P3HA系樹脂100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、より好ましくは45重量部以下であり、さらに好ましくは40重量部以下である。前記第2のP3HA系樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。なお、前記第2のP3HA系樹脂としては、上述したP3HA系樹脂を使用することができる。また、本明細書において、「全P3HA系樹脂」とは、本製造方法における樹脂組成物に含まれるすべてのP3HA系樹脂を意図する。
【0070】
前記樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、P3HA系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバテートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0071】
前記他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、全P3HA系樹脂100重量部に対して、50重量部以下が好ましく、より好ましくは40重量部以下である。さらに好ましくは30重量部以下である。前記他の樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。
【0072】
前記樹脂組成物は、無機フィラーを含有しなくともよいが、無機フィラーをさらに含むことが好ましい。前記樹脂組成物が無機フィラーを含むことにより、結晶化速度が向上し、バリ低減、生産サイクル向上等の効果を奏する。
【0073】
前記無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、タルク、ケイソウ土、白土、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、シリカ、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、石英、ガラスファイバー、ガラス粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0074】
前記前記無機フィラーの含有量は、全P3HA系樹脂100重量部に対して、例えば、0~60重量部であり、5~50重量部が好ましく、10~40重量部がより好ましく、15~35重量部が特に好ましい。無機フィラーの含有量が上記の範囲であると、十分な結晶化速度と靭性とを両立することができる。
【0075】
また、前記樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、P3HA系樹脂と共に使用可能な添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし。2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0076】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0077】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>成形体を成形する成形部を複数有する金型と、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融部と、前記溶融樹脂組成物を前記金型へ供給する供給部と、を備え、前記供給部は、前記金型の前記成形部毎に対応した複数の吐出口部を有し、a)前記吐出口部毎にギアポンプを備える、あるいは、b)前記吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを備える、成形装置。
<2>前記供給部は、間欠的に、前記溶融樹脂組成物を前記吐出口部から吐出する、<1>に記載の成形装置。
<3>前記吐出口部は、前記溶融部から連続的に供給される前記溶融樹脂組成物を遮断する開閉ノズルを備える、<1>または<2>に記載の成形装置。
<4>前記ギアポンプは、前記開閉ノズルの開閉と連動して駆動する、<3>に記載の成形装置。
<5>前記金型は、下金型と、当該下金型に対応する上金型と、を備え、前記溶融樹脂組成物は、前記下金型に供給される、<1>~<4>の何れかに記載の成形装置。
<6>さらに、前記金型を型締めする圧縮成形部を備える、<1>~<5>の何れかに記載の成形装置。
<7>熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を溶融させて溶融樹脂組成物を生成する溶融工程と、成形体を成形する成形部を複数有する金型に対して前記溶融樹脂組成物を供給する供給工程と、を有し、前記供給工程は、前記金型の前記成形部毎に対応した複数の吐出口部から、当該吐出口部毎に設けられたギアポンプ、または当該吐出口部毎に前記溶融樹脂組成物を供給する多ポートギアポンプを介して、前記金型へ前記溶融樹脂組成物を供給する工程を含む、成形品の製造方法。
<8>前記熱可塑性樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂である、<7>に記載の成形品の製造方法。
<9>前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)からなる群より選択される1種類以上である、<8>に記載の成形品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、P3HA系樹脂を用いたプレス成形体の製造の分野、その他の分野に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10 押出機
20、20A、20B 供給部
22 ギアポンプ
22B 多ポートギアポンプ
24 吐出口部
24a 開閉ノズル
30 金型
31、31A 下金型
31a 成形部
32 上金型
40 圧縮成形部
100 成形装置