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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132938
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】光源装置及び濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 45/30 20200101AFI20230914BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230914BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20230914BHJP
   H05B 45/375 20200101ALI20230914BHJP
   H05B 45/38 20200101ALI20230914BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20230914BHJP
【FI】
H05B45/30
G01N21/27 Z
G01N21/01 D
H05B45/375
H05B45/38
H01L33/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038548
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 修
(72)【発明者】
【氏名】立石 幸一
(72)【発明者】
【氏名】田島 良一
(72)【発明者】
【氏名】有田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】大内 絃生
【テーマコード(参考)】
2G059
3K273
5F241
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059EE01
2G059EE12
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ03
2G059KK01
2G059MM01
3K273AA08
3K273BA31
3K273CA01
3K273CA02
3K273EA06
3K273EA07
3K273EA25
3K273EA32
3K273EA35
3K273EA36
3K273FA14
3K273FA26
3K273FA38
3K273GA14
5F241AA21
5F241BB07
5F241BB22
5F241BC02
5F241BC03
5F241BC33
5F241BC42
5F241BC43
5F241BC44
5F241BC46
5F241BC47
5F241FF16
(57)【要約】
【課題】半導体発光素子の順電圧を安定させて水溶液といった各種溶液に溶解する溶質や混合気体における各気体等の濃度を精度良く測定する。
【解決手段】光源装置2は、LED21及び以下の各部を有する。定電流駆動回路101は、LED21へ向けて定電流を供給する。電流補正回路102は、定電流駆動回路101から供給される定電流の一部をバイパス電流としてバイパス回路124に送り、残りの電流をLED電流としてLED21に供給し、LED電流が所定の目標電流値に対して小さい場合、バイパス電流を減らし、LED電流が所定の目標電流値に対して大きい場合、バイパス電流を増やすように補正する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子へ向けて定電流を供給する定電流駆動回路と、
前記定電流駆動回路から供給される定電流の一部をバイパス電流としてバイパス回路に送り、残りの電流を半導体発光素子電流として前記半導体発光素子に供給し、前記半導体発光素子電流が所定の目標電流値に対して小さい場合、前記バイパス電流を減らし、前記半導体発光素子電流が前記所定の目標電流値に対して大きい場合、前記バイパス電流を増やすように補正する電流補正回路と
を備えたことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記定電流駆動回路は、スイッチング素子及び前記スイッチング素子をオンオフ制御するスイッチング制御回路を有し、前記スイッチング素子のオンオフ動作に応じて前記定電流を供給する請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記電流補正回路は、前記バイパス電流の補正動作を前記スイッチング制御回路の前記スイッチング素子のオンオフ動作よりも高速に実行することを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記定電流駆動回路は、外部から与えられるタイミング信号に基づいて前記スイッチング素子を制御して、間欠的に前記定電流を供給することを特徴とする請求項2又は3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記スイッチング制御回路は、前記定電流駆動回路から出力された前記定電流の検出値を基に、前記スイッチング素子のオンオフの間隔を制御することを特徴とする請求項2~4のいずれか一つに記載の光源装置。
【請求項6】
前記電流補正回路は、前記半導体発光素子の出力側に配置された半導体発光素子電流検出用抵抗により検出される前記半導体発光素子の順電圧と基準電圧とを基に、前記バイパス電流の大きさを制御することを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の光源装置。
【請求項7】
前記電流補正回路は、差動増幅回路を有し、前記順電圧を入力として前記差動増幅回路から出力される電圧の電圧値と前記基準電圧とを比較して、前記バイパス電流の大きさを制御することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記定電流駆動回路は、入力電圧の入力端子と前記半導体発光素子との間に前記定電流の電流値を検出するハイサイド電流検出回路を有し、前記ハイサイド電流検出回路により検出された前記電流値を基に前記定電流を制御し、
前記電流補正回路は、前記順電圧の電圧値と前記基準電圧の電圧値との差を基に、前記バイパス電流の大きさを制御することを特徴とする請求項6に記載の光源装置。
【請求項9】
前記電流補正回路は、前記バイパス電流を、前記定電流の25%以下とすることを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の光源装置。
【請求項10】
濃度の測定対象と対応する特定波長を出射可能な半導体発光素子と、
前記半導体発光素子へ向けて定電流を供給する定電流駆動回路と、
前記定電流駆動回路から供給される定電流の一部をバイパス電流としてバイパス回路に送り、残りの電流を半導体発光素子電流として前記半導体発光素子に供給し、前記半導体発光素子電流が所定の目標電流値に対して小さい場合、前記バイパス電流を減らし、前記半導体発光素子電流が前記所定の目標電流値に対して大きい場合、前記バイパス電流を増やすように補正する電流補正回路とを備えた光源部と、
前記測定対象を介して受光した光を分光する分光部と、
前記半導体発光素子が有する順方向電圧を測定する測定部と、
予め取得された前記半導体発光素子の順方向電圧と前記半導体発光素子が出射する前記特定波長の光の発光強度との関係性を示す対応情報と、前記測定部により測定された順方向電圧と、前記分光部により分光された前記特定波長の光の強度とに基づいて、前記測定対象の濃度を測定する濃度測定部と
を有することを特徴とする濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液などの測定対象の濃度の測定に使用される光源装置及び測定を行う濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いて半導体のエッチング液や洗浄液といった水溶液の濃度を測定する技術が知られている。このような技術の一例として、半導体発光素子であるLED(Light Emitting Diode)の光を水溶液に照射し、この発光強度と、水溶液を介して受光した光の強度から水溶液の濃度を測定する技術が知られている。
【0003】
例えば、LEDに一定電流を流したときの順電圧(順方向電圧)を予め取得し、LEDが出射する特定波長の光の発光強度との関係性を示す対応情報と、測定部により測定された順電圧と、分光部により分光された特定波長の光の強度とに基づいて測定対象の濃度を測定する技術が提案されている。より詳しくは、光源であるLEDの順電圧Vfから発光強度を推定し、その推定した発光強度と分光器により検出された特定波長の受光強度とから測定対象の濃度を算出する方法がある。
【0004】
また、LEDの定電流駆動回路としては、高速応答かつ高精度の電流制御が可能なリニア方式と、回路の発熱が小さい、すなわち消費電力が小さいスイッチング方式が知られている。
【0005】
LEDの順電圧を用いて濃度測定を行う場合、液体の濃度を精度よく測定するためには、LEDの順電圧をできるだけ安定させることが望ましい。例えば、順電圧の変化量が大きかったり、再現性が悪かったりすると、発光強度の推定が困難になる。ただし、順電圧はLEDの駆動電流によって変化するため、LEDの順電圧を安定させるためには、駆動電流をできるだけ高精度かつ高安定にすることが望ましい。
【0006】
また、順電圧は、LED自身の発熱温度によって変化するため、LEDの順電圧を安定させるためには、必要最低限の点灯時間とすることが望ましい。必要最低限の点灯時間とは、分光器による受光強度の測定に必要な最短時間である。これにはLEDをダイナミック点灯(間欠点灯)とし、さらに消灯状態から点灯状態への駆動電流の立ち上がり応答をできるだけ速くすることが望ましい。
【0007】
例えば、立ち上がりの応答が遅いとその分点灯時間を長くする必要があり発熱量が増えてしまい、順電圧に影響がでる。この対策として、全体的な発熱量を抑えるために、点灯時間を長くした分だけ消灯時間を長くして、点滅周期(=PWM(Pulse Width Modulation)周期)を長くすることが考えられる。しかし、点滅周期を長くした場合、受光側の検出周期も長くなるため濃度計測の応答速度が遅くなり、結果的に濃度測定装置の性能に影響してしまう。例えば、気泡検知が困難になることが考えられる。したがって、立ち上がりの応答が遅いままで順電圧の変動を抑えるよりも、立ち上がりの応答を早くして順電圧の変動を抑える方が、濃度を精度よく測定することができる。なお、LEDは寿命により光度が徐々に低下してしまうため、ダイナミック点灯方式として寿命を延ばすことは一般的にも行われている。
【0008】
さらに、順電圧は、周辺温度の影響でも変化するため、LEDの順電圧を安定させるためには、一般的にLEDの近く又は同一ケース内に配置されるLED駆動回路の部品発熱もできるだけ小さい方が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-124385号公報
【特許文献2】特開2012-164746号公報
【特許文献3】特開2012-049179号公報
【特許文献4】特開2020-202689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
駆動電流の高精度化かつ高安定化及び消灯状態から点灯状態への駆動電流の立ち上がり応答の高速化については、リニア式の定電流駆動回路を使用すれば解決可能である。しかしながら、リニア式の場合、電流制御用トランジスタが発熱してしまうので、LED駆動回路の部品発熱の最小化を解決することは困難である。
【0011】
また、スイッチング式の定電流駆動回路を使用すれば、電流制御用トランジスタの発熱はリニア式よりも大幅に低減されるので、LED駆動回路の部品発熱の最小化については解決可能である。しかしながら、スイッチング式の定電流駆動回路では、駆動電流の高精度化かつ高安定化及び消灯状態から点灯状態への駆動電流の立ち上がり応答の高速化の解決は困難であった。すなわち、スイッチング式の場合、原理上リップル電流が発生するが、このリップル電流を除去するための平滑コンデンサの容量により、LED電流の立ち上がりが遅くなってしまう。また、LED電流の立ち上がりを早くするために平滑コンデンサの容量を小さくすると、リップル電流の完全な除去が困難となり、LED電流に大きなリップルが発生して発光強度の安定性が悪化してしまう。さらに、定電流制御回路の電流検出抵抗による電流検出信号のリップルも増大するため、高精度の定電流制御も困難になる。加えて、このリップルによるLED電流のピークが、LED素子の最大定格電流を超えてしまうと、LED素子が劣化し、寿命が大幅に短くなってしまうおそれもある。
【0012】
以上の通り、従来のLED駆動回路では、駆動電流の高精度化かつ高安定化、消灯状態から点灯状態への駆動電流の立ち上がり応答の高速化、及び、LED駆動回路の部品発熱の最小化という3つの問題を全て解決することは困難であった。すなわち、従来のLED駆動回路では、LEDの順電圧を安定させて濃度を精度よく測定することは困難であった。
【0013】
本願はこのような課題を解決するためのものであり、半導体発光素子の順電圧を安定させて水溶液といった各種溶液に溶解する溶質や混合気体における各気体等の濃度を精度良く測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願に係る光源装置は、半導体発光素子と、半導体発光素子へ向けて定電流を供給する定電流駆動回路と、定電流駆動回路から供給される定電流の一部をバイパス電流としてバイパス回路に送り、残りの電流を半導体発光素子電流として半導体発光素子に供給し、半導体発光素子電流が所定の目標電流値に対して小さい場合、バイパス電流を減らし、半導体発光素子電流が前記所定の目標電流値に対して大きい場合、バイパス電流を増やすように補正する電流補正回路とを備える。
【0015】
上記光源装置において、定電流駆動回路は、スイッチング素子及びスイッチング素子をオンオフ制御するスイッチング制御回路を有し、スイッチング素子のオンオフ動作に応じて完結的に前記定電流を供給してもよい。
【0016】
また、上記光源装置において、電流補正回路は、バイパス電流の補正動作を定電流駆動回路のスイッチング素子のオンオフ動作よりも高速に実行してもよい。
【0017】
また、上記光源装置において、定電流駆動回路は、外部から与えられるタイミング信号に基づいてスイッチング素子を制御してもよい。
【0018】
また、上記光源装置において、スイッチング制御回路は、定電流駆動回路から出力された定電流の検出値を基に、スイッチング素子のオンオフの間隔を制御してもよい。
【0019】
また、上記光源装置において、電流補正回路は、半導体発光素子の出力側に配置された半導体発光素子電流検出用抵抗により検出される半導体発光素子の順電圧と基準電圧とを基に、バイパス電流の大きさを制御してもよい。
【0020】
また、上記光源装置において、電流補正回路は、差動増幅回路を有し、順電圧を入力として差動増幅回路から出力される電圧の電圧値と基準電圧とを比較して、バイパス電流の大きさを制御してもよい。
【0021】
また、上記光源装置において、定電流駆動回路は、入力電圧の入力端子と半導体発光素子との間に定電流の電流値を検出するハイサイド電流検出回路を有し、ハイサイド電流検出回路により検出された電流値を基に定電流を制御し、電流補正回路は、順電圧の電圧値と基準電圧の電圧値との差を基に、バイパス電流の大きさを制御してもよい。
【0022】
また、上記光源装置において、電流補正回路は、バイパス電流を定電流の25%以下としてもよい。
【発明の効果】
【0023】
上述した光源装置によれば、定電流駆動回路から出力される平滑コンデンサで平滑化された出力電流のうち、半導体発光素子電流の制御目標値を超えた分の電流をバイパス経路にバイパス電流として流す。これにより、平滑コンデンサの容量を、必要最小限の容量とすることができる。そして、駆動電流の高精度化かつ高安定化、消灯状態から点灯状態への駆動電流の立ち上がり応答の高速化、及び、半導体発光素子駆動回路の部品発熱の最小化という3つの問題を全て解決することができる。したがって、半導体発光素子の順電圧を安定させて水溶液といった各種溶液に溶解する溶質や混合気体における各気体等の濃度を精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態における測定手法を説明するための図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るLED駆動回路の構成図である。
図3図3は、LED駆動回路の各部の動作波形を示す図である。
図4図4は、LED電流立ち上げ時の期間にあたる部分を拡大した波形を示す図である。
図5図5は、第2の実施形態に係るLED駆動回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0026】
[測定手法の原理について]
半導体の洗浄液やエッチング液として、塩酸、硝酸、リン酸、水酸化アンモニウム、過酸化水素等の水溶液が用いられており、水溶液の吸光度に基づいて、水溶液の濃度を測定する技術が知られている。単純には、光を水溶液に照射し、その透過した光を2つ以上の光の波長で分光、光強度を測定することで、濃度を計算する。より具体的には、光源が出射した光から分光した強度と、透過した光から分光した光の強度とから、水溶液の吸光度を算出し、算出された吸光度に基づいて、濃度の計算を行う。ここでは、このような濃度測定に用いられる光源としてLEDを用いる。
【0027】
図1は、実施形態における測定手法を説明するための図である。図1を用いて、実施形態における測定手法について説明する。
【0028】
例えば、濃度測定装置1は、光源装置2、フローセル3、分光装置4及び測定装置5を有する。
【0029】
光源装置2は、光を投光可能な光源装置であり、半導体発光素子であるLED21を光源として実現される。例えば、LED21は、測定装置5による制御に従って、所定の特定波長を含む光を出射する。このようにしてLED2により出射された光は、光路OPに沿って、フローセル3を介し、分光装置4へと伝達される。
【0030】
ここで、LED21は、1つ若しくは同時に濃度を測定する溶質のそれぞれと対応する特定波長を含む波長帯の光を出射可能な光源である。すなわち、LED21は、測定対象と対応する特定波長の光を、測定対象の測定において必要十分な強度(例えば、照度)で出射可能な光源である。例えば、LED21は、1550ナノメートル程度の中心波長を有し、半値幅が100ナノメートル程度の光源である。この場合、LED21は、溶質がアンモニアおよび過酸化水素である場合、少なくとも、1500ナノメートルから1600ナノメートルの波長帯の光を十分な強度で出力可能な光源が最適であるが、この波長帯に限らず他の波長帯を用いてもよい。この場合、光源の中心波長が使用波長帯に合ったものを選択する。
【0031】
なお、LED21は、分光装置4が分光して取り込むことができる波長の光を特定波長とし、このような特定波長を含む波長幅の光を出射できればよい。換言すると、LED21は、あらかじめ設定された目標精度で、測定対象の吸光度(ひいては、濃度)の測定を実現可能な波長を特定波長とし、特定波長に合わせた波長の光を出射する。
【0032】
フローセル3は、光源装置2が出射する光に対して透明な素材(例えば、石英ガラス等)からなり、内部に水溶液等のサンプルを流すことができる。なお、フローセル3は、試験管やセル等により実現されてもよいし、薬液の流れる配管そのものであってもよい。また、フローセル3は、全体が透明な素材である必要はなく、光源装置2から出射された光が入射される入射部分と、入射された光をサンプルを介して出射する出射部分とが特定波長に対して透明であればよい。
【0033】
分光装置4は、フローセル3を介して受光した光から特定波長の光を分光し、分光した光の強度を測定する装置であり、例えば、ファブリペロー干渉計(Fabry Perot Interferometer)と、ファブリペロー干渉計により分光された光の強度を測定する受光素子とにより実現される。ただし、分光装置4は、グレーティング型の分光器など他の分光方式を用いた分光器を使用してもよい。
【0034】
例えば、分光装置4は、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ41と受光素子42とを有する。ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ41は、透過可能な光の波長を変更することができるファブリペロー干渉計であり、平行に配置された2つの半透鏡を有する。例えば、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ41は、光源装置2側に設置された半透鏡である上部ミラーUMと、受光素子42側に配置された半透鏡である下部ミラーDMとを有する。そして、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ41は、上部ミラーUMと下部ミラーDMとの間隔を制御することで、フローセル3を介して受光した光から、上部ミラーUMと下部ミラーDMとの間隔に応じた波長の光を透過する。例えば、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ41は、測定装置5からの制御に従い、サンプルを介して受光した光から溶質と対応する特定波長の光を透過する。
【0035】
受光素子42は、ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ41により透過された光を受光すると、受光した光の強度を測定する素子であり、例えば、フォトダイオード等の光電素子等により実現される。例えば、受光素子42は、透過された光を受光すると、受光した光の強さを示す電気信号を生成し、生成した電気信号を測定装置5へと伝達する。
【0036】
測定装置5は、分光装置4が受光した光の強度に基づいて、サンプルに含まれる溶質の濃度を測定する。測定装置5は、タイミング発生回路51、生成部52、および濃度測定部53を有する。タイミング発生回路51は、LED駆動回路100にPWM信号を入力することで、定電流を間欠的に発生させLED21を間欠駆動させる。
【0037】
生成部52は、LED21の対応情報を生成する。例えば、生成部52は、LED21にLED駆動回路100からLED電流が流された際における順電圧の値を順方向電圧測定回路22から取得する。また、生成部52は、LED21にLED駆動回路100からLED電流が流された際において、受光素子42が受光した特定波長の光の強度を測定する。なお、対応情報を生成する際においては、フローセル3にサンプルが流れていないものとする。
【0038】
そして、生成部52は、電流が流された際におけるLED21の順電圧の値と、受光素子42が受光した特定波長の光の強度との間の関係性を示す対応情報を生成する。例えば、生成部52は、順電圧の値と特定波長の光の強度とを対応付けた対応情報を生成する。
【0039】
なお、測定に用いる特定波長が複数存在する場合、生成部52は、特定波長ごとに、対応情報の生成を行うこととなる。このような場合、例えば、LED駆動回路100は、分光装置4が各特定波長の光を分光し、分光した光の強度をそれぞれ測定する度に、LED21に加える電流の値を変更してもよい。また、例えば、LED駆動回路100は、第1電流値から第2電流値まで変化する電流をLED21に複数回流してもよい。このような場合、分光装置4は、電流が流される度に異なる特定波長の光を分光し、分光した光の強度の変化をそれぞれ測定する。
【0040】
濃度測定部53は、生成部52により生成された対応情報と、受光素子42により測定された特定波長の光の強度と、順方向電圧測定回路22によって測定された順電圧とに基づいて、サンプルの吸光度を測定し、測定した吸光度から溶質の濃度を推定する。例えば、濃度測定部53は、特定波長ごとに、対応情報において順方向電圧測定回路22により測定された順電圧と対応付けられた光の強度を出射光の強度として特定する。続いて、濃度測定部53は、LED42が受光した各特定波長の光の強度と、特定した出射光の強度とから、サンプルの吸光度を算出する。
【0041】
そして、測定装置5は、特定波長における吸光度を算出し、算出した吸光度から溶質の濃度を測定する。このように、測定装置5は、電流を流した際におけるLED21の順電圧とLED21の出射光の強度との間の関係性を示す対応情報を予め生成する。また、測定装置5は、予め測定された対応情報と、LED21の順電圧と、測定対象を介して受光した特定波長の光の強度とから、測定対象の濃度を測定する。
【0042】
[第1の実施形態]
[LED駆動回路]
ここで、濃度測定装置1は、LED21の順電圧Vfの値からLED21の発光強度を推定し、推定した発光強度と分光装置4により検出した受光強度から濃度を算出する。そこで、順電圧を安定させるために、LED駆動回路100は、LED21の駆動電流を高精度かつ高安定にしてLED21に供給する。図2は、第1の実施形態に係るLED駆動回路の構成図である。図2では、順方向電圧測定回路22に繋がる経路は省略した。以下に、図2を参照して、第1の実施形態に係るLED駆動回路100の詳細について説明する。LED駆動回路100は、図2に示すように、定電流駆動回路101及び電流補正回路102といった2つの回路ブロックを有する。
【0043】
[定電流駆動回路]
定電流駆動回路101は、入力電圧Vinを印加することにより、LED21へ定電流Ioutを出力する回路である。定電流駆動回路101は、定電流制御用IC(Integrated Circuit)111、スイッチング素子Q1、インダクタL1、還流ダイオードD1、平滑コンデンサC1及び出力電流検出素子R1から構成されている。定電流制御用IC111は、一般的なスイッチング式LEDドライバICを用いることができる。
【0044】
定電流制御用IC111は、出力電流検出素子R1で検出された出力電流フィードバック信号を自己が有する基準電圧と比較する。そして、定電流制御用IC111は、比較結果をスイッチング信号としてスイッチング素子Q1へ出力する。定電流制御用IC111は、スイッチング素子Q1へ出力するスイッチング信号により、スイッチング素子Q1のオン及びオフの時間比率を制御する。
【0045】
また、定電流制御用IC111は、タイミング発生回路51からのPWM信号が入力されることで、LED21をPWM信号に応じて定電流で間欠駆動させることもできる。
【0046】
スイッチング素子Q1は、スイッチング信号の入力を受ける。そして、スイッチング素子Q1は、スイッチング信号にしたがってオン又はオフを切り替え、オンの状態で入力電圧VinをインダクタL1へ供給する。
【0047】
還流ダイオードD1は、スイッチング素子Q1がオフのときに出力電流を還流させるためのダイオードである。
【0048】
インダクタL1は、スイッチング素子Q1がオンのときにVinが印加されてエネルギーを蓄積する。そして、インダクタL1は、スイッチング素子Q1がオフのときにエネルギーを放出する。
【0049】
平滑コンデンサC1は、出力電流Ioutのリップル成分を平滑化するためのコンデンサである。
【0050】
出力電流検出素子R1は、出力電流検出用の抵抗である。出力電流検出素子R1による検出信号は、定電流制御用IC111の内部基準電圧と比較されて、スイッチング素子Q1のオンとオフとの時間比率が制御される。このため、出力電流検出素子R1は、出力電流Ioutの制御目標電流値に応じて適切な定数を有するように設定される。
【0051】
ここで、平滑コンデンサC1は、容量を大きくした方が出力電流のリップル成分を減らすことができる。ただし、平滑コンデンサC1の容量を大きくすると、間欠駆動時の電流立ち上がり時間が長くなってしまう。逆に、平滑コンデンサC1の容量が小さすぎると、LED21の許容電流値を超えてLED21を劣化させてしまうおそれがあるとともに、LED21の発光強度ムラが受光側の計測に影響するおそれもある。このため、平滑コンデンサC1はLED21の許容電流値を超えない必要最低限の容量としておき、できるだけ立ち上がり時間が速くなるようにする。これにより、消灯状態から点灯状態への駆動電流の立ち上がり応答の高速化を実現することができる。なお、リップル電流による発光強度ムラの抑制は、後述する電流補正回路102により実現する。
【0052】
ここで、定電流駆動回路101の出力電流Ioutの精度はあまり正確でなくてもよく、温度による出力電流ドリフトもあまり問題にはならない。これは、後述する電流補正回路102の動作を理由とする。そのため、定電流制御用IC111には、一般的な照明LED用として流通している安価なICを使用することができる。
【0053】
[電流補正回路]
電流補正回路102は、定電流駆動回路101からLED21への出力電流Ioutの一部をバイパス電流Ibypだけバイパスさせて適正なLED電流Iledに補正するための回路である。電流補正回路102は、LED電流検出素子R10、差動増幅回路121、基準電圧Vref、オペアンプ(Operation Amplifier)123、バイパス電流制御用FET(Field Effect Transistor)Q10及び電流制限抵抗R15を有する。差動増幅回路121は、抵抗R11~R14及びオペアンプ122を有する。また、バイパス電流制御用FETQ10及び電流制限抵抗R15は、バイパス回路124を形成する。
【0054】
LED電流検出素子R10は、LED電流Iledの検出用抵抗であり、目標LED電流値に応じて適切な定数を有するように設定される。
【0055】
差動増幅回路121は、LED電流検出素子R10の両端電圧を増幅する差動増幅回路である。差動増幅回路121は、抵抗R11~R14を全て同じ定数とすれば、増幅率は1倍となる。このとき、LED電流Ioutの一部が、差動増幅回路121に流れ込むが、抵抗R11~R14を十分に大きな定数としておくことにより、差動増幅回路121に流れ込む電流を無視することができる。
【0056】
オペアンプ123、バイパス電流制御用FETQ10及び電流制限抵抗R15は、LED電流検出信号であるオペアンプ122からの出力電圧と基準電圧Vrefとの電圧差に応じてバイパス電流Ibypを制御する回路である。電流制限抵抗R15は、バイパス電流制御用FETQ10がショートした場合の過電流防止用の抵抗である。電流制限抵抗R15は、過電流を考慮しない場合、設けなくてもよい。
【0057】
オペアンプ123は、LED電流Iledが目標電流値に対して小さい場合、バイパス電流制御用FETQ10を流れる電流を絞ることで、バイパス電流Ibypを減らす方向に制御する。逆に、LED電流Iledが目標電流値よりも大きい場合、オペアンプ123は、バイパス電流制御用FETQ10を流れる電流を増やすことで、バイパス電流Ibypを増やす方向に制御する。
【0058】
また、定電流駆動回路の出力電流Ioutと、バイパス電流Ibypと、LED電流Iledとの関係式は次の数式(1)で表すことができる。
Iled=Iout-Ibyp・・・(1)
【0059】
すなわち、LED駆動回路100は、定電流駆動回路Ioutの制御目標電流値を、LED電流Iledの目標電流値よりも少し高い値に設定しておき、この差分を電流補正回路102のバイパス電流Ibypにより消費させる。これにより、定電流駆動回路101の出力電流Ioutにリップル成分が含まれていてもこれを抑制し、より直流化することが可能となる。
【0060】
また、LED電流Iledの電流精度は、電流補正回路102における基準電圧Vrefおよび部品精度によって決まることになる。そのため、定電流駆動回路101の出力電流Ioutの電流精度はあまり正確でなくてもよく、出力電流Ioutの温度ドリフトもあまり問題にはならない。以上のことから、定電流制御用IC111には一般的な照明LED用として流通している安価なICを使用することができる。
【0061】
なお、オペアンプ122及び123の周波数特性は、定電流駆動回路101のスイッチングICである定電流制御用IC111のスイッチング周波数に対して、十分に良いものであることが望ましい。具体的に例えば、定電流制御用IC111のスイッチング周波数が500kHzのとき、オペアンプ122及び123のユニティゲイン周波数が5MHz以上であることが望ましい。
【0062】
これにより、定電流駆動回路101の出力電流Ioutのリップル成分を十分に抑制し、LED電流Iledをより直流化することが可能となる。また、定電流駆動回路101の電流制御速度よりも、電流補正回路102の電流制御速度の方が十分に速くなるため、互いの制御が干渉するような不具合は発生しなくなる。これにより、駆動電流の高精度化かつ高安定化を実現することができる。
【0063】
また、前述したように、定電流駆動回路101の出力電流Ioutの制御目標電流値は、LED電流Iledの目標電流値よりも少し高い値に設定しておくが、この出力電流Ioutの制御目標電流値は、必要最小値としておくことが望ましい。これにより、電流補正回路102のバイパス電流Ibypも必要最小値となり、バイパス電流制御用FETQ10及び電流制限抵抗R15の発熱も最小に抑えることができる。これにより、LED駆動回路の部品発熱の最小化を実現することが可能となる。
【0064】
[動作波形の説明]
図3は、LED駆動回路の各部の動作波形を示す図である。また、図4は、LED電流立ち上げ時の期間にあたる部分を拡大した波形を示す図である。図4は、図3における期間T1の部分を拡大した波形を表す。ここでは、LED電流Iledの目標電流値を1000mAとして説明する。
【0065】
グラフ201、202、201及び211は、横軸で時間経過を表し、縦軸で電圧値を表す。グラフ201及び211は、定電流制御用IC111によるスイッチング素子Q1のスイッチング波形を表す。Vswonは、スイッチング素子Q1がオンされる電圧値を表す。また、グラフ202及び212は、測定装置5のタイミング発生回路51から入力されるPWM信号の波形を表す。Vpwmonは、PWM信号がオンの場合の電圧値を表す。
【0066】
グラフ203~205及び213~215はいずれも、横軸で時間経過を表し、縦軸で電流値を表す。また、グラフ203及び213は、定電流駆動回路101の出力電流Ioutの波形を表し、リップル成分を含む。また、グラフ204及び214は、電流補正回路102によるバイパス電流波形である。グラフ204及び214縦軸のスケールは、出力電流Ioutの1/10である110mAとした。また、グラフ205及び215は、出力電流Ioutからバイパス電流Ibypを差し引いた補正後のLED電流Iledの波形を表す。グラフ205及び215の縦軸のスケールはIoutと同じである。
【0067】
グラフ206及び216は、横軸で時間経過を表し、縦軸で電圧の大きさを表す。また、グラフ206及び216は、LED21の順電圧波形である。
【0068】
グラフ202及び212に示すPWM信号が入力されると、スイッチング素子Q1は、グラフ201及び211に示すようにスイッチングが繰り返される。これにより、定電流駆動回路101から、グラフ203及び213に示すような出力電流Ioutが出力される。
【0069】
ここで、平滑コンデンサC1は必要最小限の容量としているので、グラフ203及び213に示した出力電流Ioutはリップル電流を含む。また、グラフ213における電流値221は、LED電流Iledの目標電流値である1000mAを表す。すなわち、定電流駆動回路101は、グラフ203及び213に示すように、LED電流Iledの目標電流値である1000mAよりもやや高い制御目標電流値で出力電流Ioutを制御する。例えば、定電流駆動回路101は、出力電流Ioutの制御目標電流をおよそ1050mAとして制御する。補正回路102は、グラフ204及び214に示すように、出力電流Ioutにおいて1000mAを超えた量の電流をバイパス電流Ibypとして流してバイパスさせる。
【0070】
これにより、グラフ215に示すように、平滑コンデンサC1によるLED電流の立ち上がりの大きな遅れは削減され、また、グラフ215における電流値222は、LED電流Iledの目標電流値である1000mAを表す。すなわち、グラフ205及び215に示すように、LED電流Iledは目標電流の1000mAとなり、リップル成分も除去される。また、グラフ206及び216に示すように、電流立ち上がり後は、LED21の順電圧Vfは安定しており発光ムラの発生を抑制することができる。さらに、バイパス電流IbypはLED電流Iledの約1/10以下のため、バイパス電流制御用FETQ10の発熱は、従来のリニア式のトランジスタよりも大幅に低減が可能である。
【0071】
なお、実施例ではバイパス電流Ibypが約10%の例を示したが、25%程度でもリニア式より発熱低減効果は得られる。以上のように、第1の実施形態に係る光源装置2は、高速かつ安定した順電圧Vf及び発光強度を実現することができ、濃度測定装置1としても精度および再現性のよい測定が可能である。
【0072】
[順電圧を用いて測定精度を向上させる処理の原理について]
次に、順電圧を用いて測定精度を向上させる処理の原理について説明する。上述したように、測定装置5は、光源装置2が出射した光のうち特定波長の光の強度と、分光装置4が分光した特定波長の光の強度とを用いて、サンプルが有する吸光度を算出し、算出した吸光度からサンプルの濃度を推定する。しかしながら、LED21は、温度に応じて出射する光の光スペクトルが変化する。
【0073】
例えば、LED21が出射する光の強度は、LED21の温度が高くなるにつれて低下する。また、LED21が出射する光において、強度が最も高い波長(ピークとなる波長)は、LED21の温度が高くなるにつれてより長波長側に遷移する。このように、LED21の出射する光の強度は、環境温度により発光素子の温度が変化してしまうので、濃度の推定精度が低下するおそれがあった。
【0074】
このような温度の変化によりLED21から出射される光の強度の変化を補正するため、LED21に流す電流値を変化させた場合、周囲温度の上昇に伴ってより大きな電流を流さなければならず、発光素子の寿命を短くしてしまう。また、LED21自体やその周辺の温度(以下、「周辺温度」と総称する。)と発光素子から出射される光の強度との相関は、LED21毎に異なるため、LED21毎に相関を予め測定する必要がある。しかしながら、周辺温度を変化させるには、多くの時間がかかり手間がかかる。さらに、測定装置5の設置場所によっては、周辺温度を変化させることが難しい場合もある。
【0075】
一方、LED21は、一定の電流を流したときの順電圧(Vf)が周囲温度によって変動する特性を有する。換言すると、LED21は、アノードからカソードへ電流(順電流)を流すと、順電圧だけ電圧が下がる特性を有しており、このような順電圧は、周囲温度によって変化する。また、上述したように、LED21が出射する光の強度と周囲温度との間には、相関が存在する。このため、LED21が出射する光の強度と発光素子の順電圧との間には、相関が存在することとなる。
【0076】
そこで、測定装置5は、濃度測定に先駆けて、濃度測定装置1に設置された光源装置2のLED21に対し、電流値を変化させながら電流を流した際の順電圧を測定する。そして、測定装置5は、所定の電流値の電流が流された際に発光素子が出射した特定波長の光の強度と、所定の電流値の電流が流された際に測定工程により測定された順電圧との関係性を示す対応情報を生成する。
【0077】
また、測定装置5は、光源装置2が有するLED21を点灯させ、測定対象を介して受光した光から特定波長の光を分光させるとともに、発光素子が有する順電圧を測定する。そして、測定装置5は、予め生成された対応情報と、測定した順電圧と、特定波長の光の強度とに基づいて、測定対象の濃度を測定する。例えば、測定装置5は、LED21が出射した光の強度として、測定した順電圧と対応する光の強度を対応情報から推定する。そして、測定装置5は、推定した光の強度と、分光した特定波長の光の強度とに基づいて、測定対象の濃度を測定する。例えば、測定装置5は、LED21が出射した特定波長の光の強度を推定し、推定した光の強度と、分光した特定波長の光の強度とに基づいて、測定対象の吸光度を算出する。そして、測定装置5は、算出した吸光度に基づいて、測定対象の濃度を測定する。
【0078】
以下、図1に戻り、順電圧と発光素子が出射する光の強度との関係性を用いてサンプルの濃度を推定する測定手法の原理について説明する。例えば、図1に示すように、光源装置2は、LED21、順方向電圧測定回路22及びLED駆動回路100を有する。
【0079】
LED21は、電流が供給されると発光する半導体素子である。例えば、LED21は、測定対象が吸光しやすい波長の光を特定波長として含む光を出射する。なお、以下の説明では、LED21から出射される光を、出射光と称する場合がある。
【0080】
ここで、例えば、LED21を流れる電流が一定である場合、発光素子21の周辺温度と順電圧Vfとの間には、周辺温度が上がるにつれて、順電圧Vfの値が下がるという略線形の相関が存在する。この結果、LED21を流れる電流が一定である場合、LED21の出射光の強度と順電圧Vfとの間には、順電圧Vfの値が上がるにつれて、出射光の強度が上がるという略線形の相関が存在する。
【0081】
このように、順電圧Vfと出射光の強度との相関を用いて、LED21が出射した特定波長の光の強度を推定する場合、LED21の温度と関連する相関を予め取得せずとも、LED21の出射光の強度を推定することができると考えられる。換言すると、順電圧Vfと出射光の強度との相関を予め取得できるのであれば、LED21の周辺温度を変化させたりせずとも、濃度測定時においてLED21の出射光の強度を推定することが可能となる。
【0082】
ここで、LED21に流す電流値を変化させた場合、LED21の順電圧Vfが変化することが知られている。そこで、濃度測定装置1においては、LED21に流す電流値を変化させることで、LED21の順電圧Vfと出射光の強度との間の相関を対応情報として予め取得しておく。そして、濃度測定装置1においては、対応情報を用いて、濃度測定時におけるLED21の順電圧Vfから出射光の強度を推定し、推定した出射光の強度と測定対象を介して受光した光の強度とから、測定対象の濃度を測定する。
【0083】
なお、対応情報は、LED21毎に測定が行われたパラメータであってもよく、各光源装置2が共通して用いるものであってもよいが、LED21の特性は、製品ごとにばらつきがあるため、個体ごとに決定されたものであることが望ましい。
【0084】
また、このようなLED21の温度特性は、周囲の温度のみならず、LED21自体の自己発熱によっても変化する。また、LED21は、ハロゲンランプよりも長寿命であるものの、点灯時間が長いもしくは大きな電流を流せば流す程劣化し、電力から光への変換効率が低下してしまう結果、同一値の電流を流した際に出射する光が暗くなってしまう。このような問題を回避するため、濃度測定装置1は、微弱な電流を用いて、LED21の順方向電圧の値を測定し、測定した順電圧の値からLED21の温度を測定する。すなわち、濃度測定装置1は、いわゆるダイオード温度計と同様の原理によりLED21(すなわち、ダイオード自体)の温度を測定する。なお、濃度測定装置1は、上述した処理以外にも、ゲイン校正等の処理を行ってもよい。
【0085】
LED駆動回路100は、LED21に電圧を印加させて点灯させる。また、LED駆動回路100は、LED21における順電圧とLED21の出射光の強度との間の相関を測定するために用いる電流値の異なる複数の電流をそれぞれ生成する。また、LED駆動回路100は、濃度測定時においてLED21における順電圧の値を測定するための電流を生成する。
【0086】
順方向電圧測定回路22は、LED21の順電圧を測定する回路である。例えば、順方向電圧測定回路22は、対応情報を生成する際において、LED駆動回路100が発生させた電流がLED21を流れる際におけるLED21の順電圧を測定する。すなわち、順方向電圧測定回路22は、電流値が変化させたられた電流が流れた際におけるLED21の順電圧の変化を所定の分解能で測定する。そして、順方向電圧測定回路22は、測定した各順電圧の値を測定装置5に出力する。
【0087】
また、順方向電圧測定回路22は、濃度測定時において、LED駆動回路100が発生させた電流を用いて、発光素子21の順電圧を測定する。例えば、順方向電圧測定回路22は、電流が流れた際における発光素子21の電圧を順電圧として測定し、測定した順電圧の値を測定装置5に出力する。
【0088】
なお、順方向電圧測定回路22が出力する順電圧の値は、出射光の強度の予測に用いられる。このため、順方向電圧測定回路22が出力する順電圧の精度は、測定される濃度の精度に寄与することとなる。このため、順方向電圧測定回路22は、濃度を測定する際の精度を考慮した精度で順電圧を測定する。
【0089】
例えば、濃度の推定精度を±0.1パーセント以下に収めるには、順電圧の測定精度は、±20マイクロボルト以下に抑える必要がある。このような測定精度を保持するには、例えば、2ボルトの順電圧を、有効分解能が100000以上となるように、測定する必要がある。そこで、順方向電圧測定回路22は、例えば、17ビット以上の有効分解能を有するAD(Analog-to-Digital)コンバータを用いて、測定した順電圧の電圧値を出力する。より具体的な例を挙げると、順方向電圧測定回路22は、変換時間が長いΔΣ型のADコンバータを用いることとなる。なお、上述した例は、あくまで一例であり、例えば、1ボルト以下の順電圧の測定を行ってもよい。このように、どれくらいの精度に応じてどれくらいの順電圧を測定するかにより有効分解能が変化することとなり、このような有効分解を実現する回路を用いて、順電圧の測定を行えばよい。
【0090】
一方、測定装置5は、タイミング発生回路51、生成部52、および濃度測定部53を有する。タイミング発生回路51は、LED駆動回路100にPWM信号を出力する。これにより、LED21から光が出射され、順方向電圧測定回路22が、電流が流れた際におけるLED21の順方向電圧Vfの値を測定する。また、出射光がフローセル3を介して分光装置4へと伝わり、分光装置4が特定波長の光を分光する。
【0091】
生成部52は、LED21の対応情報を生成する。例えば、生成部52は、LED子21にLED駆動回路100から電流値がことなる電流それぞれが流された際における各順電圧の値を順方向電圧測定回路22から取得する。また、生成部52には、LED21に変電流発生回路22から電圧値が異なる電流それぞれが流された際において、受光素子42が受光した特定波長の光の強度を測定する。なお、対応情報を生成する際においては、フローセル3にサンプルが流れていない。
【0092】
そして、生成部52は、電圧値が異なる電流それぞれが流された際におけるLED21の順電圧の値と、受光素子42が受光した特定波長の光の強度との間の関係性を示す対応情報を生成する。例えば、生成部52は、順電圧の値と特定波長の光の強度とを対応付けた対応情報を生成する。
【0093】
なお、測定に用いる特定波長が複数存在する場合、生成部52は、特定波長ごとに、対応情報の生成を行うこととなる。このような場合、例えば、LED駆動回路100は、分光装置4が各特定波長の光を分光し、分光した光の強度をそれぞれ測定する度に、発光素子に加える電流の値を変更してもよい。また、例えば、LED駆動回路100は、第1電流値から第2電流値まで変化する変電流をLED21に複数回流してもよい。このような場合、分光装置4は、変電流が流される度に異なる特定波長の光を分光し、分光した光の強度の変化をそれぞれ測定する。
【0094】
濃度測定部53は、生成部52により生成された対応情報と、受光素子42により測定された特定波長の光の強度と、順方向電圧測定回路22によって測定された順電圧とに基づいて、サンプルの吸光度を測定し、測定した吸光度から溶質の濃度を推定する。例えば、濃度測定部53は、特定波長ごとに、対応情報において順方向電圧測定回路22により測定された順電圧と対応付けられた光の強度を出射光の強度として特定する。続いて、濃度測定部53は、受光素子42が受光した各特定波長の光の強度と、特定した出射光の強度とから、サンプルの吸光度を算出する。
【0095】
そして、測定装置5は、特定波長における吸光度を算出し、算出した吸光度から溶質の濃度を測定する。例えば、測定装置5は、各特定波長における吸光度をそれぞれ算出し、算出した吸光度からサンプルに含まれる溶質の濃度を算出する。
【0096】
このように、測定装置5は、LED21の順電圧と発光素子21の出射光の強度との間の関係性を示す対応情報を予め生成する。また、測定装置5は、予め測定された対応情報と、LED21の順電圧と、測定対象を介して受光した特定波長の光の強度とから、測定対象の濃度を測定する。このため、測定装置5は、濃度測定装置1の周辺温度を変化させずとも、容易かつ精度よく測定対象の濃度を測定することができる。
【0097】
[第1の実施形態における効果]
以上に説明したように、本実施形態に係るLED駆動回路100は、定電流駆動回路100から出力される平滑コンデンサC1で平滑化した出力電流Ioutのうち、LED電流Iledの制御目標値を超えた分の電流をバイパス経路にバイパス電流Ibypとして流す。また、平滑コンデンサC1の容量は、必要最小限の容量とすることができる。
【0098】
これにより、LED電流Iledの立ち上がりの遅延を抑えることが可能となる。また、LED電流Iledを制御目標値とすることができる。また、LED電流Iledのリップル成分も除去することができる。電流立ち上がり後は、LED21に対して安定した順電圧を供給することができ、発光ムラを抑えることができる。さらに、バイパス電流IbypをLED電流に比べて低く抑えることができ、電流制御用のトランジスタであるバイパス電流制御用FETQ10の発熱を大幅に低減することが可能である。したがって、駆動電流の高精度化かつ高安定化、消灯状態から点灯状態への駆動電流の立ち上がり応答の高速化、及び、LED駆動回路の部品発熱の最小化の全てを実現することが可能である。
【0099】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係るLED駆動回路の構成図である。図5では、順方向電圧測定回路22に繋がる経路は省略した。以下の説明では、第1の実施形態と同様の各部の動作については説明を省略する。
【0100】
[第1の実施形態との違い]
本実施形態に係るLED駆動回路100は、定電流制御用IC111として、ハイサイド電流検出タイプのICを使用する。そして、出力電流検出抵抗R1は、高電圧側、すなわち、定電流駆動回路101の内部に配置される。
【0101】
定電流制御用IC111は、定電流駆動回路101内に配置された出力電流検出素子R1による検出信号と内部基準電圧とを比較して、スイッチング素子Q1のオンとオフとの時間比率を制御する。このため、出力電流検出素子R1は、出力電流Ioutの制御目標電流値に応じて適切な定数を有するように設定される。
【0102】
出力電流検出抵抗R1を高電圧側に移動したことにより、出力電流の検出のために電流経路を定電流制御用IC111に戻さなくても良くなる。そこで、電流補正回路102内のLED電流検出用抵抗R10の他端は、出力電流検出抵抗R1などを介さずに回路GND(Ground)に直接接続される。
【0103】
これにより、バイパス電流Ibypを制御するオペアンプ123の非反転入力端子が、LED電流検出用抵抗R10に直接接続可能となる。そのため、本実施形態に係るLED駆動回路100の電流補正回路102には、差動増幅回路121を設けなくても良くなる。オペアンプ123は、LED21を経由して流れるLED電流Iledの入力を受け、LED電流Iledと基準電圧Vrefとを比較して、バイパス電流IbypとしてLED電流Iledと出力電圧Ioutとの差分が流れるように、比較結果を用いてバイパス電流制御用FETQ10を制御する。
【0104】
[第2の実施形態における効果]
以上に説明したように、本実施形態に係るLED駆動回路100は、差動増幅回路121を用いなくてもよいため、これらの部品定数のばらつきや温度ドリフトの影響を除去することができ、より高精度の電流制御が可能となる。
【0105】
[その他の実施形態]
第1及び第2の実施形態において、半導体発光素子としてLEDを使用した例を示したが、これに限定されず、例えばLD(Laser Diode)であってもよい。また、半導体発光素子の使用数は1個の場合で説明したが、複数個であっても構わない。
【0106】
また、定電流制御回路101の定電流制御用IC111として、降圧型の回路を使用した例を示したが、定電流制御用IC111は、昇圧型の回路や、昇降圧型の回路であってもよい。
【0107】
LED21は1つの場合の使用電圧は2V程度なので、定電流制御用IC111には降圧型の回路を用いることが好ましい。これに対して、LED21が複数ある場合は、定電流制御用IC111に昇圧型の回路を用いても良いし、バッテリが減ることを考慮して昇降圧型の回路を用いてもよい。
【0108】
また、以上の実施形態では還流ダイオードD1を使用したダイオード整流方式の回路例を示したが、この部分をFETなどのスイッチング素子に置き換えて同期整流方式としても良い。これにより、出力電流Ioutの出力効率がさらに向上し、より低発熱の定電流駆動回路にすることができる。
【0109】
[サンプルについて]
また、濃度測定装置1は、各種溶質が溶解した水溶液のみならず、例えば、各種溶質が溶解した有機溶剤等の溶液をサンプルとしてもよい。また、このような場合、濃度測定装置1は、溶媒の吸光度と溶質の吸光度との割合から算出される吸光度を採用してもよい。また、濃度測定装置1は、溶液のみならず、混合気体等、各種の気体をサンプルとし、サンプルに含まれる気体のうち任意の気体の濃度を測定してもよい。また、濃度測定装置1は、溶質ではなく、溶媒となる物質の濃度を測定してもよい。
【0110】
[測定について]
なお、上述した例では、濃度測定装置1は、各種の溶液に溶解した溶質の濃度や気体の濃度を推定した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、濃度測定装置1は、上述した構成により、所定の溶質や気体がサンプルに含まれているか否かを判定してもよい。例えば、濃度測定装置1は、ある波長における吸光度が所定の閾値を超える場合は、その波長と対応する溶質や気体がサンプルに含まれていると判定してもよい。すなわち、濃度測定装置1が実行する測定処理とは、溶質や気体等といった任意の検出対象を検出する処理を含む概念である。
【0111】
[装置構成について]
なお、濃度測定装置1の装置構成は、上述した説明に限定されるものではない。例えば、光源装置2と分光装置4と測定装置5とは、一体型の測定装置を構成してもよい。
【0112】
以上、実施形態の一例を説明したが、これらは例示であり、本実施形態は上記した説明に限定されるものではない。発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、実施形態の構成や詳細は、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で実施することができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 濃度測定装置
2 光源装置
3 フローセル
4 分光装置
5 測定装置
21 LED
22 順方向電圧測定回路
41 ファブリペロー分光用チューナブルフィルタ
42 受光素子
51 タイミング発生回路
52 生成部
53 濃度測定部
100 LED駆動回路
101 定電流駆動回路
102 電流補正回路
111 定電流制御用IC
121 差動増幅回路
122、123 オペアンプ
124 バイパス回路
Q1 スイッチング素子
Q10 バイパス電流制御用FET
R1 出力電流検出素子
R10 LED電流検出用抵抗
R11~R14 抵抗
R15 電流制限抵抗
C1 平滑コンデンサ
L1 インダクタ
図1
図2
図3
図4
図5