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  • 特開-電流特定装置及びセンサ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013295
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電流特定装置及びセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
G01R15/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117364
(22)【出願日】2021-07-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-06
(71)【出願人】
【識別番号】398035604
【氏名又は名称】株式会社トラフィック・シム
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祥資
(72)【発明者】
【氏名】三宅 哲志
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AA04
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】 センサによって検出される磁界強度によって適切に電流が特定できない事態を把握し得る技術を提供する。
【解決手段】 電流特定装置は、多芯電線の被覆の外側に取り付けられる複数のセンサであって、それぞれのセンサが前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出する、前記複数のセンサと、前記複数のセンサのうちの少なくとも1個のセンサによって検出される前記磁界強度を用いて、前記多芯電線に流れる電流の電流値を特定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のセンサのうちの少なくとも2個のセンサによって検出される前記磁界強度の相対関係の変化を検出してもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多芯電線の被覆の外側に取り付けられる複数のセンサであって、それぞれのセンサが前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出する、前記複数のセンサと、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1個のセンサによって検出される前記磁界強度を用いて、前記多芯電線に流れる電流の電流値を特定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数のセンサのうちの少なくとも2個のセンサによって検出される前記磁界強度の相対関係の変化を検出する、電流特定装置。
【請求項2】
前記複数のセンサは、互いの相対位置が固定されている、請求項1に記載の電流特定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記磁界強度の前記相対関係の前記変化に基づいて、前記複数のセンサのうちの少なくとも1個のセンサの位置がずれたことに関する情報を出力する出力部を、さらに備える、請求項1又は2に記載の電流特定装置。
【請求項4】
前記少なくとも2個のセンサは、前記多芯電線の軸回りに並んで配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の電流特定装置。
【請求項5】
前記複数のセンサの相対位置が変化しないように前記複数のセンサを収容するホルダを、さらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の電流特定装置。
【請求項6】
前記複数のセンサは、第1センサと第2センサとを含み、
前記制御部は、
第1タイミングにおいて、前記第1センサによって検出される磁界強度と、前記第2センサによって検出される磁界強度と、の比率と、前記第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて前記第1センサによって検出される磁界強度と、前記第2センサによって検出される磁界強度と、の比率と、を比較することによって、前記磁界強度の前記相対関係の前記変化を検出する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電流特定装置。
【請求項7】
交流電源に接続される多芯電線の被覆の外側に取り付けられる複数のセンサを備え、
前記複数のセンサのそれぞれは、前記多芯電線に電流が流れると発生する磁界の磁界強度を検出し、
前記複数のセンサは、前記多芯電線の軸回りに並んで配置される2個以上のセンサを含む、センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、多芯電線に流れる電流を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1に、多芯電線に流れる電流の電流値を非接触で測定する電流センサが開示されている。電流センサは、磁気センサ素子で被測定電線の周囲に発生する磁界を検知することによって、電流を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-148597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、センサと多芯電線内の導体との距離に応じて磁界強度が変化する。この場合、例えば、多芯電線に対するセンサの位置が変化すると、多芯電線に同一の電流が流れていても、センサによって検出される磁界強度が変化する。この結果、磁界強度を用いて電流値を適切に特定することができない場合がある。
【0005】
本明細書では、センサによって検出される磁界強度によって適切に電流が特定できない事態を把握し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書には、電流特定装置に関する技術が開示されている。電流特定装置は、多芯電線の被覆の外側に取り付けられる複数のセンサであって、それぞれのセンサが前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出する、前記複数のセンサと、前記複数のセンサのうちの少なくとも1個のセンサによって検出される前記磁界強度を用いて、前記多芯電線に流れる電流の電流値を特定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数のセンサのうちの少なくとも2個のセンサによって検出される前記磁界強度の相対関係の変化を検出する。
【0007】
例えば、多芯電線に対する複数のセンサの位置が変化せず、センサによって検出される磁界強度によって適切に電流が特定することができる状況では、多芯電線に流れる電流が変化しても、複数のセンサによって検出される磁界強度の相対関係は変化しない。言い換えると、複数のセンサによって検出される磁界強度の相対関係が変化する状況では、センサで検出される磁界強度を利用して適切な電流値を特定することができない可能性がある。上記の構成によると、2個のセンサで検出される磁界強度の相対関係の変化を検出することによって、センサによって検出される磁界強度を用いて適切に電流値を特定することができない事態を把握することができる。
【0008】
本明細書には、さらに、センサ装置に関する技術が開示されている。センサ装置は、交流電源に接続される多芯電線の被覆の外側に取り付けられる複数のセンサを備え、前記複数のセンサのそれぞれは、前記多芯電線に電流が流れると発生する磁界の磁界強度を検出し、前記複数のセンサは、前記多芯電線の軸回りに並んで配置される2個以上のセンサを含む。
【0009】
上記のセンサ装置を用いることによって、2個のセンサで検出される磁界強度の相対関係の変化を検出することによって、センサで検出される磁界強度を用いて適切に電流値を特定することができない事態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電流特定装置の構成を示す。
図2】センサ部の正面図を示す。
図3】変形例のセンサ部の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示の技術の特徴を列挙する。なお、以下の各特徴は、それぞれ独立して有用なものである。
【0012】
複数のセンサは、互いの相対位置が固定されていてもよい。
【0013】
この構成によると、互いの相対位置が固定されている2個のセンサで検出される磁界強度の相対関係の変化を検出することによって、センサで検出される磁界強度を用いて適切に電流値を特定することができない事態を把握することができる。
【0014】
制御部は、磁界強度の相対関係の変化に基づいて、複数のセンサのうちの少なくとも1個のセンサの位置がずれたことに関する情報を出力する出力部を、さらに備えていてもよい。
【0015】
多芯電線に対するセンサの位置が変化すると、センサ同士の磁界強度の相対関係は変化する。このため、磁界強度の相対関係の変化を検出することによって、センサの位置ずれを特定することができる。ユーザは、出力された情報を確認することによって、センサの位置ずれが発生していることを認識することができる。これにより、センサの位置がずれた状態で誤って特定された電流値を利用する事態を回避することができる。
【0016】
少なくとも2個のセンサは、多芯電線の軸回りに並んで配置されていてもよい。
【0017】
この構成によると、センサと多芯電線とに位置ずれが発生しているにも関わらず、センサの位置ずれを特定することができない事態を抑制することができる。
【0018】
複数のセンサの相対位置が変化しないように複数のセンサを収容するホルダを、さらに備えていてもよい。
【0019】
この構成によると、ホルダを多芯電線に固定することによって、複数のセンサを多芯電線に固定することができる。
【0020】
複数のセンサは、第1センサと第2センサとを含み、制御部は、第1タイミングにおいて、第1センサによって検出される磁界強度と、第2センサによって検出される磁界強度と、の比率と、第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて第1センサによって検出される磁界強度と、第2センサによって検出される磁界強度と、の比率と、を比較することによって、磁界強度の相対関係の変化を検出してもよい。
【0021】
この構成によると、複数のタイミングにおける磁界強度の比率を比較することによって、予め基準値を設定せずに、磁界強度の相対関係の変化を検出することができる。
【0022】
(実施例)
図1及び図2を参照して、実施例の電流特定装置10を説明する。図1に示すように、電流特定装置10は、単相交流の交流電源100と対象機器2とを接続する多芯電線4に流れる電流の電流値を特定する。電流特定装置10は、処理装置11と、センサ部20と、を備える。対象機器2は、交流電源100から電力を受ける電気機器であり、例えば、ラックマウント型サーバである。なお、対象機器2は、これに限らず、電気機器等の負荷であればよい。
【0023】
図2に示すように、多芯電線4は、3本の電線8と、3本の電線8を覆う被覆6と、を備える。3本の電線8のうち、1本の電線8は接地され、他の2本の電線8に通電される。電線8は、導体8aと、導体8aを被覆する絶縁体8bと、を備える。多芯電線4では、電線8が被覆6に覆われており、被覆6の外側から見ると、3本の電線8がどのように配置されているか分からない。
【0024】
センサ部20は、ホルダ28と、基板24、25と、磁気センサモジュール22、23と、2個の信号処理回路(図示省略)と、コネクタ30、32と、を備える。基板24は、磁気センサモジュール22と、信号処理回路と、コネクタ30と、が搭載されるプリント基板である。磁気センサモジュール22は、ホール素子を有するホールIC(Integrated Circuitの略)である。磁気センサモジュール22は、磁気センサモジュール22周りに発生する磁界の磁界強度に応じて変化する電圧信号を出力する。信号処理回路は、磁気センサモジュール22から出力される電圧信号にフィルタ処理、AD変換処理等を実行して、処理済みの信号を出力する。基板25と磁気センサモジュール23とのそれぞれは、基板24と磁気センサモジュール22とのそれぞれと同様の構成を有する。即ち、基板25は、磁気センサモジュール23と、信号処理回路と、コネクタ32と、が搭載されている。磁気センサモジュール22、23は、多芯電線4の軸回りに並んで配置されている。磁気センサモジュール22、23は、多芯電線4の軸方向において同一の位置に配置されている。
【0025】
なお、変形例では、磁気センサモジュール22、23は、例えば磁気抵抗素子等のホール素子以外の素子を含んでいてもよい。この場合、基板24、25には、素子から出力される信号に適合する回路が搭載されていてもよい。
【0026】
コネクタ30は、基板24と処理装置11とを接続するケーブルを受け入れる。同様に、コネクタ32は、基板25と処理装置11とを接続するケーブルを受け入れる。
【0027】
基板24、25、磁気センサモジュール22、23、信号処理回路及びコネクタ30、32は、ホルダ28に収容されている。ホルダ28は、2個の部分ホルダ26、27を組み立てることによって構成されている。部分ホルダ26は、基板24、磁気センサモジュール22、信号処理回路及びコネクタ30を収容する収容空間を有する。基板24、磁気センサモジュール22、信号処理回路及びコネクタ30は、部分ホルダ26に対して固定されている。部分ホルダ27は、基板25、磁気センサモジュール23、信号処理回路及びコネクタ32を収容する収容空間を有する。基板25、磁気センサモジュール23、信号処理回路及びコネクタ32は、部分ホルダ27に対して固定されている。
【0028】
部分ホルダ26は、図2における左端に、貫通孔26bを有する固定片26aを備える。部分ホルダ26は、さらに、図2における右端に、固定片26aと同様の貫通孔26dを有する固定片26cを有する。図2では、固定片26cは、後述する部分ホルダ27の右端の固定片27aの紙面奥側で、固定片27aと重なった配置されている。部分ホルダ27は、図2における右端に、貫通孔27bを有する固定片27aを備える。さらに、図2における左端に、固定片27aと同様の貫通孔27dを有する固定片27cを有する。図2では、固定片27cは、部分ホルダ26の左端の固定片26aの紙面奥側で、固定片26aと重なった配置されている。
【0029】
ホルダ28では、部分ホルダ26、27が互いに接触して配置されている。ホルダ28では、部分ホルダ26、27との間に、多芯電線4を配置して挟持するための貫通孔が配置されている。部分ホルダ26、27が互いに接触している状態では、部分ホルダ26の左右の固定片26a、26cのそれぞれと、部分ホルダ27の左右の固定片27a、27cのそれぞれとが重なって配置される。この状態で、貫通孔26bと貫通孔27dとが重なり、貫通孔26dと貫通孔27bとが重なるように配置され、貫通孔26dと貫通孔27dとを貫通するピンが挿入され、貫通孔26dと貫通孔27bとを貫通するピンが挿入される。これにより、ホルダ28は、部分ホルダ26、27が多芯電線4を挟んで把持することによって、多芯電線4に固定される。
【0030】
センサ部20は、ケーブルを介して、処理装置11に接続されている。処理装置11は、制御部12と、センサ側インターフェイス14と、端末側インターフェイス16と、ケース18と、を備える。なお、図面及び以下では、「インターフェイス」を「I/F」と呼ぶ。制御部12、センサ側I/F14及び端末側I/F16は、ケース18に収容されている。制御部12は、センサ側I/F14及び端末側I/F16のそれぞれとバス線によって互いに通信可能に接続されている。センサ部20から延びるケーブルは、センサ側I/F14に接続されている。センサ側I/F14は、センサ部20から出力される信号を取得して制御部12に供給する。
【0031】
制御部12は、CPU、メモリ等を有する。制御部12は、メモリに格納されるプログラムに従って、様々な処理を実行する。制御部12が実行する処理は、後述する。
【0032】
端末側I/F16は、有線及び無線の少なくとも一方で、ユーザの端末200(例えばPC、携帯端末)等と通信可能に接続される。端末側I/F16は、制御部12から供給される情報を、端末側I/F16に接続されている端末に送信する。
【0033】
(電流値特定方法)
次いで、電流特定装置10が多芯電線4に流れる電流の電流値を特定する方法を説明する。制御部12は、電流値を特定すべきタイミングで、電流値を特定する。電流値を特定すべきタイミングとは、例えば、ユーザが端末200を操作することによって、端末200から送信される電流特定要求を、端末側I/F16を介して処理装置11が受信するタイミングであってもよく、予め決められた定期的なタイミングであってもよい。
【0034】
制御部12は、電流値を特定すべきタイミングで、センサ部20から、磁気センサモジュール22で検出される磁界強度に関連する信号を取得する。次いで、制御部12は、取得済みの信号を、予めメモリに格納されている換算式を用いて、電流値を特定する。次いで、特定済みの電流値を、端末側I/F16を介して端末200に送信する。端末200は、処理装置11から取得された電流値を取得すると、電流値を表示部に表示する。
【0035】
(位置ずれ検出処理)
次いで、電流特定装置10が実行するセンサ部20の位置ずれ検出処理を説明する。制御部12は、センサ部20が多芯電線4に設置されたタイミングで、磁気センサモジュール22、23で検出される磁界強度に関連する信号を取得する。次いで、制御部12は、磁気センサモジュール22での検出値X1に対する磁気センサモジュール23での検出値X2の比率X2/X1を算出してメモリに格納する。
【0036】
制御部12は、位置ずれを検出するタイミングが到来すると、制御部12は、磁気センサモジュール22、23で検出される磁界強度に関連する信号を取得する。次いで、制御部12は、磁気センサモジュール22での検出値X3に対する磁気センサモジュール23での検出値X4の比率X4/X3を算出する。次いで、制御部12は、比率X2/X1と、比率X4/X3と、が一致するか否かを判断する。比率X2/X1と比率X4/X3と、が一致する状態は、比率X2/X1と比率X4/X3とが完全に一致する状態の他に、例えば所定の範囲(例えば±5%)内でずれている状態も含まれる。
【0037】
なお、位置ずれを検出するタイミングとは、例えば、電流値を特定すべきタイミングと同一であってもよいし、ユーザが端末200を操作することによって、端末200から送信される位置ずれ検出要求を、端末側I/F16を介して処理装置11が受信するタイミングであってもよく、予め決められた定期的なタイミングであってもよい。
【0038】
制御部12は、比率X2/X1と比率X4/X3とが一致すると判断される場合に、位置ずれが発生していないことを示す情報を端末200に送信する。一方、比率X2/X1と比率X4/X3とが一致しないと判断される場合に、位置ずれが発生していることを示す情報を端末200に送信する。端末200は、処理装置11から受信された情報を表す画像を端末200の表示部に表示させる。これにより、ユーザは、センサ部20の位置がずれたか否かを認識することができる。
【0039】
電流特定装置10では、制御部12は、換算式を用いて、磁気センサモジュール22で検出される磁界強度を電流値に換算する。換算式は、予め磁界強度と電流値との相関関係から特定される。しかしながら、磁界強度と電流値との相関関係は、磁気センサモジュール22と導体8aとの距離等によって変化する。このことから、センサ部20と多芯電線4との位置関係が変化すると、予め特定された換算式を用いて、磁気センサモジュール22で検出される磁界強度から電流値を適切に特定することできない場合がある。
【0040】
センサ部20と多芯電線4との位置関係が変化すると、磁気センサモジュール22と導体8aとの距離及び磁気センサモジュール23と導体8aとの距離が変化する場合がある。この結果、磁気センサモジュール22によって検出される磁界強度と、磁気センサモジュール23によって検出される磁界強度と、の相対関係が変化する。電流特定装置10では、比率X2/X1と比率X4/X3とを比較することによって、磁気センサモジュール22、23によって検出される磁界強度の相対関係が変化しているか否かを判断する。これにより、センサ部20と多芯電線4との位置関係が変化しているか否かを判断することができる。この結果、予め特定された換算式を用いても磁界強度から電流値を適切に特定することができない状況で、電流値を特定する事態を回避することができる。
【0041】
センサ部20では、磁気センサモジュール22、23が多芯電線4の軸回りに並んで配置されている。この構成によると、センサ部20と多芯電線4との位置ずれによって磁気センサモジュール22における磁界強度と電流値との相関関係が変化しているにも関わらず、磁気センサモジュール22と導体8aとの距離と、磁気センサモジュール23と導体8aとの距離との相対関係が変化せずに、比率X2/X1と比率X4/X3とが変化しない事態が生じにくい。これにより、適切にセンサ部20と多芯電線4との位置ずれを特定することができる。
【0042】
センサ部20では、ホルダ28が、複数の磁気センサモジュール22、23を、相対位置が変化しないように保持している。この結果、ホルダ28を多芯電線4に固定することによって、複数の磁気センサモジュール22、23を、多芯電線4に固定することができる。
【0043】
ホルダ28は、部分ホルダ26、27を組み立てることによって、多芯電線4を挟んで多芯電線4に固定される。この構成によると、ホルダ28を、多芯電線4に容易に固定することができる。
【0044】
電流特定装置10では、比率X2/X1と比率X4/X3とを比較することによって、磁界強度の相対関係の変化を検出する。この構成によると、磁界強度の相対関係を予め特定せずに済む。なお、最新の比率X4/X3と比較される比率は、最新の比率X4/X3の1個前の比率でなくてもよく、センサ部20を多芯電線4に固定した後、最初に検出される磁界強度の比率であってもよいし、予め特定されていてもよい。
【0045】
本明細書の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0046】
センサ部20に配置される複数の磁気センサモジュール22、23の個数に制限は無く、3個以上の磁気センサモジュールが配置されていてもよい。この場合、電流特定装置10は、3個以上の磁気センサモジュールのうちの1個以上の磁気センサモジュールで検出される磁界強度を用いて、多芯電線4に流れる電流の電流値を特定してもよい。また、3個以上の磁気センサモジュールのうちの2個以上の磁気センサモジュールで検出される磁界強度を用いて、磁界強度の相対関係の変化を検出してもよい。
【0047】
複数の磁気センサモジュール22、23を保持するホルダの構成は、ホルダ28に限られない。例えば、図3に示すホルダ228は、部分ホルダ226と、部分ホルダ226と多芯電線4を挟んで対向して配置される部分ホルダ227と、を備えていてもよい。部分ホルダ226は、複数の磁気センサモジュール22、23と、基板24、25と、信号処理回路と、コネクタ30、32と、を収容していてもよい。部分ホルダ226と部分ホルダ227とは、多芯電線4を挟んでいる状態で、結束バンド240によって結束されることによって、多芯電線4に対して固定されていてもよい。
【0048】
複数の磁気センサモジュール22、23は、互いの相対位置が変更可能であってもよい。例えば、磁気センサモジュール22が多芯電線4に対して位置が変化し、磁気センサモジュール23が多芯電線4に対して位置が変化しない場合、磁気センサモジュール22、23で検出される磁界強度の相対関係が変化し得る。これにより、磁気センサモジュール22、23で検出される磁界強度の相対関係の変化を用いて、磁気センサモジュール22、23の多芯電線4に対する位置がずれたことを特定することができる。
【0049】
交流電源100は、例えば三相交流等、単相交流以外でもよい。この場合、多芯電線4は、交流電源100に合わせて2本以上の電線8が被覆6に覆われていてもよい。
【0050】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
2:対象機器、4:多芯電線、6:被覆、8:電線、8a:導体、10:電流特定装置、11:処理装置、12:制御部、20:センサ部、22、23:磁気センサモジュール、26、27:部分ホルダ、28:ホルダ、100:交流電源
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多芯電線の被覆の外側に取り付けられる複数のセンサであって、それぞれのセンサが前記多芯電線に流れる電流によって発生する磁界の磁界強度を検出する、前記複数のセンサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1個のセンサによって検出される前記磁界強度を用いて、前記多芯電線に流れる電流の電流値を特定し、
前記複数のセンサのうちの少なくとも2個のセンサによって検出される前記磁界強度の相対関係の変化を検出し、
前記複数のセンサは、第1センサと第2センサとを含み、
前記制御部は、第1タイミングにおいて、前記第1センサによって検出される磁界強度と、前記第2センサによって検出される磁界強度と、の比率と、前記第1タイミングと異なる第2タイミングにおいて前記第1センサによって検出される磁界強度と、前記第2センサによって検出される磁界強度と、の比率と、を比較することによって、前記磁界強度の前記相対関係の前記変化を検出し、前記第2タイミングにおける前記第1センサ及び前記第2センサのうちの少なくとも一方である特定のセンサの前記多芯電線に対する位置が、前記第1タイミングにおける前記特定のセンサの前記多芯電線に対する位置からずれが発生していることを示す情報を出力する、電流特定装置。
【請求項2】
前記複数のセンサは、互いの相対位置が固定されている、請求項1に記載の電流特定装置。
【請求項3】
前記少なくとも2個のセンサは、前記多芯電線の軸回りに並んで配置される、請求項1又は2に記載の電流特定装置。
【請求項4】
前記複数のセンサの相対位置が変化しないように前記複数のセンサを収容するホルダを、さらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の電流特定装置。