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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132990
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20230914BHJP
   B60N 2/02 20060101ALI20230914BHJP
   B60N 2/62 20060101ALI20230914BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/02
B60N2/62
A47C7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038626
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 崇大
(72)【発明者】
【氏名】蓮實 英貴
(72)【発明者】
【氏名】中里 守
(72)【発明者】
【氏名】古野 宏哉
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084BA00
3B087BD15
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】シートクッションの可動部を上昇させてもクッションサイド部のシート幅方向外側の側面部において表皮に皺が発生するのを防止又は抑制することができる車両用シートを得る。
【解決手段】サイドサポート部12Sの表皮30の外側被覆部30Aには、その下端部にシート骨格20側への取付部であるJフック32が設けられると共に、可動部12Cが上昇するときに外側被覆部30Aに発生する応力を緩和するスリット34が形成されている。スリット34は、外側被覆部30Aの下部でかつシート側面視でJフック32に対してシート上方側の位置に形成されている。このスリット34は、シート前後方向に沿って延在する第一スリット部34Aと、第一スリット部34Aの長手方向中間部からシート上方側に延在する第二スリット部34Bと、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションのシート幅方向中間部を構成して乗員が着座するクッション座部に設けられ、上下に変位可能に構成された可動部と、
前記シートクッションにおいて前記クッション座部のシート幅方向両側に配置されたクッションサイド部と、
を有し、
前記クッションサイド部の表面を構成する表皮のうち前記シートクッションのシート幅方向外側の側面部に配置される外側被覆部には、その下端部にシート骨格側への取付部が設けられると共に、前記可動部が上昇するときに前記外側被覆部に発生する応力を緩和する応力緩和部が形成されている、車両用シート。
【請求項2】
前記外側被覆部には、前記応力緩和部として、スリットが形成されている、請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記スリットは、前記外側被覆部の下部でかつシート側面視で前記取付部に対してシート上方側の位置に形成されている、請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記スリットは、
シート前後方向に沿って延在する第一スリット部と、
前記第一スリット部の長手方向中間部からシート上方側に延在する第二スリット部と、
を備える、請求項3記載の車両用シート。
【請求項5】
前記クッションサイド部に対してシート幅方向外側には、前記スリットを覆う目隠し部を備えたサイド部材が配置されている、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された車両用シートでは、シートクッションの前部を上下に回動可能になっている。簡単に説明すると、この車両用シートにおけるシートクッションには、その前部にチルトユニットにより上下に回動可能な可動部が設けられると共に、可動部の後方側にクッション本体部が設けられ、更に、可動部及びクッション本体部の左右両側に左右一対のサイドサポート部(クッションサイド部)が設けられている。このような構成では、可動部の上下動により、着座乗員の脚部を上下に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-1319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可動部が上側に回動した場合、サイドサポート部のシート幅方向外側の側面部において表皮に皺が発生してしまうので、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、シートクッションの可動部を上昇させてもクッションサイド部のシート幅方向外側の側面部において表皮に皺が発生するのを防止又は抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両用シートは、シートクッションのシート幅方向中間部を構成して乗員が着座するクッション座部に設けられ、上下に変位可能に構成された可動部と、前記シートクッションにおいて前記クッション座部のシート幅方向両側に配置されたクッションサイド部と、を有し、前記クッションサイド部の表面を構成する表皮のうち前記シートクッションのシート幅方向外側の側面部に配置される外側被覆部には、その下端部にシート骨格側への取付部が設けられると共に、前記可動部が上昇するときに前記外側被覆部に発生する応力を緩和する応力緩和部が形成されている。
【0007】
上記構成によれば、シートクッションのクッション座部に設けられた可動部は上下に変位可能になっている。また、シートクッションにおいてクッション座部のシート幅方向両側にはクッションサイド部が配置されている。ここで、クッションサイド部の表面を構成する表皮のうちシートクッションのシート幅方向外側の側面部に配置される外側被覆部には、その下端部にシート骨格側への取付部が設けられると共に、可動部が上昇するときに外側被覆部に発生する応力を緩和する応力緩和部が形成されている。このため、可動部の上昇時には、クッションサイド部の表皮の外側被覆部における皺の発生が応力緩和部によって防止又は抑制される。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車両用シートは、請求項1記載の構成において、前記外側被覆部には、前記応力緩和部として、スリットが形成されている。
【0009】
上記構成によれば、応力緩和部を容易に形成することができ、可動部が上昇するときには、クッションサイド部の表皮の外側被覆部に発生する応力がスリットによって緩和されることで、皺の発生が防止又は抑制される。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車両用シートは、請求項2記載の構成において、前記スリットは、前記外側被覆部の下部でかつシート側面視で前記取付部に対してシート上方側の位置に形成されている。
【0011】
上記構成によれば、可動部の上昇時には、外側被覆部の上部側で可動部に連動しようとする部分と外側被覆部の下端部で取付部が設けられている部分との間に発生する応力が、外側被覆部の下部のスリットによって効果的に緩和される。
【0012】
請求項4に記載する本発明の車両用シートは、請求項3記載の構成において、前記スリットは、シート前後方向に沿って延在する第一スリット部と、前記第一スリット部の長手方向中間部からシート上方側に延在する第二スリット部と、を備える。
【0013】
上記構成によれば、可動部の上昇時に外側被覆部に作用する応力のうちシート上下方向成分が第一スリット部によって緩和されると共に、前記応力のうちシート前後方向成分が第二スリット部によって緩和される。
【0014】
請求項5に記載する本発明の車両用シートは、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の構成において、前記クッションサイド部に対してシート幅方向外側には、前記スリットを覆う目隠し部を備えたサイド部材が配置されている。
【0015】
上記構成によれば、クッションサイド部の表皮の外側被覆部に形成されたスリットは、サイド部材の目隠し部によって覆われるので、スリットを隠すことができて外観品質が向上する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の車両用シートによれば、シートクッションの可動部を上昇させてもクッションサイド部のシート幅方向外側の側面部において表皮に皺が発生するのを防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る車両用シートを簡略化して示す模式的な側面図である。
図2図1の車両用シートの下部をシート側方斜め上方側から見た状態で示す斜視図である。
図3】可動部が最下位置にある場合のサイドサポート部の一部等の状態を示す図である。図3(A)は外側被覆部のスリット付近をシート側方側から見た状態で示す。図3(B)はサイドサポート部のシート前後方向中間部付近をシート上方斜めシート幅方向内側から見た状態で示す。
図4】可動部が最上位置にある場合のサイドサポート部の一部等の状態を示す図である。図4(A)は外側被覆部のスリット付近をシート側方側から見た状態で示す。図4(B)はサイドサポート部のシート前後方向中間部付近をシート上方斜めシート幅方向内側から見た状態で示す。
図5】第2の実施形態に係る車両用シートの下部をシート側方斜め上方側から見た状態で示す斜視図である。
図6】第3の実施形態に係る車両用シートの下部をシート側方斜め上方側から見た状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
以下、図1図4を用いて、本発明の第1の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FR、矢印UP、矢印LHは、車両用シート10の前方向、上方向、左方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート左右方向(シート幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。また、各図においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。
【0019】
(構成)
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、その下部を構成するシートクッション12と、背もたれであるシートバック14と、を備えている。シートバック14の下端部は、図示しない周知のリクライニング機構を介してシートクッション12の後端部に連結されている。
【0020】
シートクッション12は、そのシート幅方向中間部を構成して乗員が着座するクッション座部12Aを備えている。クッション座部12Aは、シート前後方向に分割されており、着座乗員Pの臀部を支えるシートクッション本体部12Bと、着座乗員Pの大腿部を支えて前端部が上下に変位可能に構成された可動部12Cと、を有する。可動部12Cは、駆動用のチルトユニット16(図1ではブロック化して図示)の作動により、一例として後端部のシート幅方向に沿った軸線回りに回動することで前端部がシート上下方向に移動する(矢印UD参照)。なお、可動部12Cを変位させるための作動はチルト作動と称されることがあり、可動部12Cを上昇させた状態はチルトアップ状態と称されることがある。可動部12Cを変位させるための機構には、公知構成(例えば、特開2019-1319号公報で開示された構成等)を適用できるため、詳細説明を省略する。
【0021】
シートクッション12は、クッションフレーム22(図中では図を見易くするために二点鎖線で図示)と、クッションフレーム22に取り付けられたクッションパッド25、26、27(図2参照)と、クッションパッド25、26、27の表面を覆う表皮28、29、30(図2参照)と、を備えている。
【0022】
クッションフレーム22は、シートクッション12の左右の側部においてシート前後方向に延在する左右一対のサイドフレーム22Sを備えている。また、クッションフレーム22は、左右のサイドフレーム22Sの前端部側における上端部間に架け渡されたパンフレーム22Aと、パンフレーム22Aよりも下方側で左右のサイドフレーム22Sの前端部間に架け渡されたチルトユニット固定用パイプ22Bと、左右のサイドフレーム22Sの後端部間に架け渡されたパイプ状のリヤフレーム22Cと、を備えている。
【0023】
また、左右のサイドフレーム22Sの前端部側における下端部には、ワイヤ24が固定されている。ワイヤ24は、サイドフレーム22Sの下端部からシート下方側かつシート幅方向外側へ突出しており、シート側面視でシート上方側が開放された略U字状を成している。クッションフレーム22及びワイヤ24は、シート骨格20の構成部とされる。
【0024】
さらに、クッションフレーム22には、パンフレーム22Aとリヤフレーム22Cとの間に図示しない複数のクッションスプリング(所謂Sバネ)が架け渡されている。前記クッションスプリングは、その架け渡し方向と直交する水平方向の一方側へ開放された平面視U字状及びその反対向きの平面視U字状に交互に曲げられた波形状部を備え、クッションパッド(図示省略)をシート下方側から弾性的に支持する。
【0025】
図2には、車両用シート10の下部をシート側方斜め上方側から見た状態の斜視図が示されている。なお、図2では、シートクッション12の構成の理解を容易にするために、シートクッション12の表皮28、29、30の一部を切り欠いてクッションパッド25、26、27を示している(後述する図5及び図6も同様)。また、図2に示される車両用シート10は、一例として、車室内の前部左側に配置されるフロントシートとする。車両用シート10のシートクッション12の下方側には、車体に対するシートクッション12の前後位置を調整するための周知のシートスライド機構18等が設けられている。
【0026】
図2に示されるように、シートクッション12においてクッション座部12Aのシート幅方向両側には、クッションサイド部としてのサイドサポート部12Sが配置されている。サイドサポート部12Sは、クッション座部12Aよりもシート上方側に突出している。サイドサポート部12Sの表面を構成する表皮30は、シートクッション12のシート幅方向外側の側面部12Xに配置される外側被覆部30Aと、外側被覆部30Aとは反対側(つまり着座乗員側)に配置される内側被覆部30Bと、外側被覆部30Aと内側被覆部30Bとを繋ぐ中間被覆部30Cと、を備えている。なお、外側被覆部30Aは、サイドマチと称される場合もある。
【0027】
外側被覆部30Aの下端部には、シート骨格20側への取付部としてのJフック32が設けられている。Jフック32は、例えば樹脂によって断面J字状に形成されており、縫製等の手段によって外側被覆部30Aの下端部のシート前後方向中間部に取り付けられている。このJフック32は、シート骨格20のワイヤ24に引っ掛けられている。これにより、外側被覆部30Aの下端部がJフック32及びワイヤ24を用いてシート骨格20側へ取り付けられている。なお、図示を省略するが、内側被覆部30Bの下端部は、クッションパッド25、26、27にホグリング等を用いて、取り付けられている。
【0028】
表皮30の外側被覆部30Aには、可動部12Cが上昇するときに外側被覆部30Aに発生する応力を緩和する応力緩和部としてのスリット34が形成されている。なお、前記応力は、外側被覆部30AにおけるJフック32の取付部分がシート上方斜め前方側(矢印F参照)に引っ張られることにより発生する応力である。スリット34は、外側被覆部30Aの下部でかつシート側面視でJフック32に対してシート上方側の位置に形成されている。スリット34は、シート前後方向に沿って延在する第一スリット部34Aと、第一スリット部34Aの長手方向中間部からシート上方側に延在する第二スリット部34Bと、を備えている。
【0029】
また、本実施形態の車両用シート10においては、シートクッション12に対してシート幅方向外側にマット36及びサイドフィニッシャ38が外装部として設けられている。マット36は、表皮30の外側被覆部30Aの下部のうちスリット34よりもシート前方側の部分を覆うように配置されている。また、サイドフィニッシャ38は、表皮30の外側被覆部30Aのうち下部かつスリット34よりもシート後方側の部分及び上部かつ後端部側の部分等を覆うように配置されている。
【0030】
なお、図2の車両用シート10の下部に対してシート幅方向右側には、図示しないセンターコンソールが配置されており、前記センターコンソールによって、スリット34及びJフック32が隠されるようになっている。また、シートクッション12におけるシート幅方向左側の側面部においては、スリット34(図示省略)を覆い隠すための構成を別途採り得る。
【0031】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
本実施形態では、シートクッション12のクッション座部12Aに設けられた可動部12Cは上下に変位可能になっている。また、シートクッション12においてクッション座部12Aのシート幅方向両側にはサイドサポート部12Sが配置されている。ここで、サイドサポート部12Sの表皮30の外側被覆部30Aには、その下端部にシート骨格20側への取付部であるJフック32が設けられると共に、可動部12Cが上昇するときに外側被覆部30Aに発生する応力を緩和するスリット34が形成されている。このため、可動部12Cの上昇時には、サイドサポート部12Sの表皮30の外側被覆部30Aにおける皺の発生がスリット34によって防止又は抑制される。
【0033】
なお、本実施形態では、外側被覆部30Aに発生する応力を緩和するための応力緩和部がスリット34で構成されているので、前記応力緩和部の形成が容易である、という利点もある。
【0034】
また、本実施形態では、スリット34は、外側被覆部30Aの下部でかつシート側面視でJフック32に対してシート上方側の位置に形成されている。このため、可動部12Cの上昇時には、外側被覆部30Aの上部側で可動部12Cに連動しようとする部分と外側被覆部30Aの下端部におけるJフック32の取付部分との間に発生する応力が、外側被覆部30Aの下部のスリット34によって効果的に緩和される。すなわち、本実施形態では、外側被覆部30Aのうちスリット34よりも上方側の部分に作用する張力が抑えられ、外側被覆部30Aのうちスリット34よりも上方側の部分に分散した形で張力を作用させることができるので、図中の矢印F方向に沿うような皺が発生しにくい。
【0035】
さらに、本実施形態では、スリット34は、シート前後方向に沿って延在する第一スリット部34Aと、第一スリット部34Aの長手方向中間部からシート上方側に延在する第二スリット部34Bと、を備えている。このため、可動部12Cの上昇時に外側被覆部30Aに作用する応力のうちシート上下方向成分が第一スリット部34Aによって緩和されると共に、前記応力のうちシート前後方向成分が第二スリット部34Bによって緩和される。
【0036】
ここで、図3及び図4を参照しながら補足説明する。図3は、可動部12C(図2参照)が最下位置にある場合のサイドサポート部12Sの一部等の状態を示す図であり、図4は、可動部12C(図2参照)が最上位置にある場合のサイドサポート部12Sの一部等の状態を示す図である。また、図3(A)及び図4(A)は外側被覆部30Aのスリット34付近をシート側方側から見た状態で示し、図3(B)及び図4(B)はサイドサポート部12Sのシート前後方向中間部付近(図2のa部付近)をシート上方斜めシート幅方向内側から見た状態で示している。
【0037】
図3(B)に示される状態から可動部12C(図2参照)が上昇して図4(B)に示される状態になると、サイドサポート部12Sの前部側はシートクッション本体部12Bに対するシート上方側の突出量が若干大きくなる。また、図3(A)に示される状態から可動部12C(図2参照)が上昇して図3(B)に示される状態になると、スリット34が開き、これにより、外側被覆部30Aに発生する応力が緩和される。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の図2等に示される車両用シート10によれば、シートクッション12の可動部12Cを上昇させてもサイドサポート部12Sのシート幅方向外側の側面部において表皮30(外側被覆部30A)に皺が発生するのを防止又は抑制することができる。すなわち、本実施形態では、表皮形状による対策だけでは解決できない課題を、部品を追加せずに解決することができる。
【0039】
更に補足説明すると、可動部12Cの上昇時にはサイドサポート部12Sの前部側の上部は高さが変わるので、サイドサポート部12Sの表皮30の下端部の取付相手は、同様に高さが変わる部材であることが好ましい。しかしながら、サイドサポート部12Sの周辺構造より、例えば表皮30の外側被覆部30Aの下端部の取付相手が、本実施形態のように高さが変位しないシート骨格20になる場合がある。このような構成では、仮に本実施形態のようなスリット34を設けない場合には、可動部(12C)の上昇時に外側被覆部(30A)に皺が発生してしまうが、本実施形態では、スリット34を設けることによって外側被覆部30Aにおける皺の発生を防止又は抑制することができる。その結果、表皮30の下端部の取付相手の設定の自由度が上がるので、設計自由度が向上する。
【0040】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用シートについて、図5を用いて説明する。図5には、第2の実施形態に係る車両用シート40の下部をシート側方斜め上方側から見た状態の斜視図が示されている。なお、図5に示される車両用シート40は、一例として、車室内の前部左側に配置されるフロントシートとする。
【0041】
図5に示されるように、車両用シート40は、その下部における左側(センターコンソールと隣り合う側とは反対側)の側部においてマット36(図2参照)に代えてサイド部材としてのマット42を備える点で、第1の実施形態に係る車両用シート10(図2参照)とは異なる。他の構成部は、第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
マット42は、左側のサイドサポート部12Sに対してシート幅方向外側に配置され、第1の実施形態のマット36(図2参照)と概ね同様の位置に配置される前部42Aと、前部42Aからシート後方側に延長された後部42Bと、を備えている。マット42の後部42Bは、スリット34を覆う目隠し部としてのスリット覆い部42Cと、Jフック32及びワイヤ24を覆う取付側覆い部42Dと、を含んで構成されている。
【0043】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られるうえ、車両用シート40の左側においてサイドサポート部12Sの表皮30の外側被覆部30Aに形成されたスリット34がマット42のスリット覆い部42Cによって覆われるので、スリット34を隠すことができて外観品質が向上する。また、Jフック32及びワイヤ24を取付側覆い部42Dによって隠すこともできる。なお、車両用シート40の右側におけるスリット34、Jフック32及びワイヤ24は、図示しないセンターコンソールによって覆い隠されている。
【0044】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る車両用シートについて、図6を用いて説明する。図6には、第3の実施形態に係る車両用シート50の下部をシート側方斜め上方側から見た状態の斜視図が示されている。なお、図6に示される車両用シート50は、一例として、車室内の前部左側に配置されるフロントシートとする。
【0045】
図6に示されるように、車両用シート50は、その下部における左側(センターコンソールと隣り合う側とは反対側)の側部においてサイドフィニッシャ38(図2参照)に代えて、サイド部材としてのサイドフィニッシャ52を備える点で、第1の実施形態に係る車両用シート10(図2参照)とは異なる。他の構成部は、第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
サイドフィニッシャ52は、左側のサイドサポート部12Sに対してシート幅方向外側に配置され、第1の実施形態のサイドフィニッシャ38(図2参照)と概ね同様の位置に配置される本体部52Aと、本体部52Aからシート前方側に延長された延長部52Bと、を備えている。サイドフィニッシャ52の延長部52Bの上部は、スリット34を覆う目隠し部としてのスリット覆い部52Cとなっている。
【0047】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られるうえ、車両用シート50の左側においてサイドサポート部12Sの表皮30の外側被覆部30Aに形成されたスリット34は、サイドフィニッシャ52のスリット覆い部52Cによって覆われるので、スリット34を隠すことができて外観品質が向上する。なお、車両用シート50の右側におけるスリット34、Jフック32及びワイヤ24は、図示しないセンターコンソールによって覆い隠されている。
【0048】
[実施形態の補足説明]
なお、上記第1~第3の実施形態では、スリット34は、外側被覆部30Aの下部でかつシート側面視でJフック32(取付部)に対してシート上方側の位置に形成されており、このような構成が好ましいが、スリットの形成位置は、可動部(12C)が上昇するときに外側被覆部(30A)に発生する応力を緩和することができる位置であればよく、上記実施形態のスリット34の形成位置以外の位置も採り得る。
【0049】
また、上記第1~第3の実施形態では、スリット34は、第一スリット部34Aと第二スリット部34Bとで構成されているが、スリットは、例えば、可動部(12C)が上昇するときに外側被覆部(30A)に発生する応力の作用方向と直交する方向に沿って延在するスリット等のように、上記実施形態のスリット34の構成以外の構成も採り得る。
【0050】
また、上記第1~第3の実施形態では、外側被覆部30Aに応力緩和部としてスリット34が形成されているが、上記第1~第3の実施形態の変形例として、外側被覆部(30A)には、スリット(34)に代えて、シート側面視で所定の面積を有して外側被覆部(30A)における他部位に比べて高い伸縮性を備える(例えばスパンデックス等のストレッチ素材からなる)伸縮容易部等のようなスリット以外の応力緩和部が形成されてもよい。
【0051】
また、上記第1~第3の実施形態では、シートクッション12においてクッション座部12Aのシート幅方向両側に配置されたクッションサイド部がサイドサポート部12Sとされているが、クッションサイド部は、その上面部の高さがクッション座部(12A)の上面部の高さ(可動部(12C)については標準状態の上面部の高さ)と同等に設定されたようなもの(つまりサイドサポート部とはいえないようなもの)でもよい。
【0052】
なお、上記第1~第3実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0053】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 車両用シート
12 シートクッション
12A クッション座部
12C 可動部
12S サイドサポート部(クッションサイド部)
12X シートクッションのシート幅方向外側の側面部
20 シート骨格
30 サイドサポート部の表皮
30A 外側被覆部
32 Jフック(取付部)
34 スリット(応力緩和部)
34A 第一スリット部
34B 第二スリット部
40 車両用シート
42 マット(サイド部材)
42C スリット覆い部(目隠し部)
50 車両用シート
52 サイドフィニッシャ(サイド部材)
52C スリット覆い部(目隠し部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6