(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132991
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】シートパッド及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A47C27/15 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038627
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】外木 武
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幸信
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AD04
(57)【要約】
【課題】外観意匠性及び着座乗員の快適性が損なわれることを抑制する。
【解決手段】シートクッションパッド20は、定められた厚みのシート状に形成されていると共に、その内部を空気が通過することが可能とされた通風部材28を備えている。また、シートクッションパッド20は、パッド本体26を備えている。パッド本体26には、着座乗員側が開放された凹状に形成されかつ通風部材28が内部に配置される通風部材配置凹部34が形成されている。また、通風部材配置凹部34の底には、凹状の溝部38が形成されている。溝部38は、通風部材配置凹部34の内周面34Bに沿って形成されている。溝部38の寸法は、通風部材28の端部を押し込むことが可能な寸法に設定されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定められた厚みのシート状に形成されていると共に、その内部を空気が通過することが可能とされた通風部材と、
着座乗員側が開放された凹状に形成されかつ前記通風部材が内部に配置される通風部材配置凹部と、前記通風部材配置凹部の底における前記通風部材配置凹部の内周面に沿って形成されかつ前記通風部材の端部を押し込むことが可能な寸法に設定された凹状の溝部と、を有するパッド本体と、
を備えたシートパッド。
【請求項2】
前記通風部材の端部側が前記溝部側へ向けて屈曲された状態で、前記通風部材の端部が前記溝部内に配置されている請求項1に記載のシートパッド。
【請求項3】
前記通風部材の端部が前記溝部の内部に配置されていない状態において、前記通風部材の端部が前記通風部材配置凹部の内周面と離間している又は当接している請求項1に記載のシートパッド。
【請求項4】
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方の一部を構成する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のシートパッドと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッド及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着座乗員の快適性を向上するため、内部にブロワ等の送風手段が配設されたシートが開発されている。例えば、下記特許文献1には、シートバック及びシートクッションの裏面に送風手段が配設された空調シートが開示されている。このシートバック及びシートクッションにおいて、クッション材となるシートパッドは、着座乗員の身体が収まる着座部と、着座部のシート幅方向外側に設けられ着座部よりもシート表面側に膨出するサイドサポート部とを備えている。このシートパッドにおいて、着座部とサイドサポート部との境界には、断面視でシート表面側に開放された略U字状の吊り込み溝が形成されている。この吊り込み溝には、吊りワイヤが設けられている。
【0003】
一方、シートバック及びシートクッションを覆うシートカバーの裏面には、係止具が係止されている。このシートカバーは、係止具がシートパッドの吊りワイヤに係止されることで吊り込み溝に引き込まれ、シートパッドの形状に追従した状態で固定される。
【0004】
ここで、このシートパッドとシートカバーとの間には、一定の弾性を有すると共に通気性を有する繊維材による3次元的な立体構造の網状クッション体(通風部材)が配設されている。この通風部材は、着座部及びサイドサポート部にそれぞれ設けられている。具体的には、シートパッドの着座部には、着座部と略同一の大きさの通風部材が重ねて配置されている。一方、シートパッドのサイドサポート部に配設された通風部材は、その一端面が吊り込み溝に入り込む形で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の吊り込み溝には、吊りワイヤが配設されかつシートカバーと共にサイドサポート側の通風部材が引き込まれて配設される。このため、吊り込み溝の幅及び深さを大きく形成する必要がある。この場合、シートの外観意匠性を損なうと共に、吊り込み溝におけるクッション性が低下し、着座乗員の座り心地を損なう虞がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、外観意匠性及び着座乗員の快適性が損なわれることを抑制することができるシートパッド及び車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様のシートパッドは、定められた厚みのシート状に形成されていると共に、その内部を空気が通過することが可能とされた通風部材と、着座乗員側が開放された凹状に形成されかつ前記通風部材が内部に配置される通風部材配置凹部と、前記通風部材配置凹部の底における前記通風部材配置凹部の内周面に沿って形成されかつ前記通風部材の端部を押し込むことが可能な寸法に設定された凹状の溝部と、を有するパッド本体と、を備えている。
【0009】
第1の態様のシートパッドでは、通風部材が、パッド本体の通風部材配置凹部内に配置される。ここで、通風部材配置凹部の底には、当該通風部材配置凹部の内周面に沿って溝部が形成されている。そのため、通風部材のサイズが通風部材配置凹部のサイズに対して大きい寸法となっている場合に、通風部材の端部を溝部内に押し込むことができる。これにより、通風部材の端部が通風部材配置凹部から突出することを抑制することができる。その結果、外観意匠性及び着座乗員の快適性が損なわれることを抑制することができる。
【0010】
第2の態様のシートパッドは、第1の態様のシートパッドにおいて、前記通風部材の端部側が前記溝部側へ向けて屈曲された状態で、前記通風部材の端部が前記溝部内に配置されている。
【0011】
第2の態様のシートパッドでは、通風部材のサイズが通風部材配置凹部のサイズに対して大きい寸法となっている場合であっても、通風部材を通風部材配置凹部内に収めることができる。
【0012】
第3の態様のシートパッドは、第1の態様のシートパッドにおいて、前記通風部材の端部が前記溝部の内部に配置されていない状態において、前記通風部材の端部が前記通風部材配置凹部の内周面と離間している又は当接している。
【0013】
第3の態様のシートパッドでは、通風部材のサイズが通風部材配置凹部のサイズと同じか小さい寸法となっている場合であっても、通風部材を通風部材配置凹部内に収めることができる。
【0014】
第4の態様の車両用シートは、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、前記シートクッション及び前記シートバックの少なくとも一方の一部を構成する第1の態様~第3の態様のいずれか1つの態様のシートパッドと、を備えている。
【0015】
第4の態様の車両用シートでは、第1の態様~第3の態様のいずれか1つの態様のシートパッドを備えていることにより、外観意匠性及び着座乗員の快適性が損なわれることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のシートパッド及び車両用シートによれば、シートの外観意匠性及び着座乗員の快適性を向上することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】シートクッションパッドを示す斜視図である。
【
図4】
図2に示された4-4線に沿って切断したシートクッションパッドの断面を示す断面図である。
【
図5】シートクッションパッドを模式的に示す断面図であり、通風部材のサイズが通風部材配置凹部のサイズよりも小さい寸法となっている場合を示している。
【
図6】シートクッションパッドを模式的に示す断面図であり、通風部材のサイズが通風部材配置凹部のサイズよりも大きな寸法となっている場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~
図4を用いて、本実施形態の車両用シート10について説明する。
【0019】
図1には、本実施形態の車両用シート10をシート左前方側から見た斜視図が示されている。なお、図中における矢印FRはシート前方側、矢印UPはシート上方側、矢印RHはシート幅方向右側、矢印LHはシート幅方向左側をそれぞれ示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート幅方向の左右を示すものとする。
【0020】
図1に示されるように、車両用シート10は、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバック14と、着座乗員の頭部をシート後方側から支持するヘッドレスト16と、を備えている。
【0021】
シートクッション12は、表皮材18に覆われたシートパッドとしてのシートクッションパッド20が図示しないシートクッションフレームに取付けられること等により構成されている。また、シートバック14は、表皮材22に覆われたシートパッドとしてのシートバックパッド24が図示しないシートバックフレームに取付けられること等により構成されている。
【0022】
図2に示されるように、シートクッションパッド20は、パッド本体26と、パッド本体26に取付けられた通風部材28と、を含んで構成されている。
【0023】
図3及び
図4に示されるように、パッド本体26は、当該パッド本体26の左右方向の中央部分を構成するメイン部30を備えている。また、パッド本体26は、当該パッド本体26の左右方向の両側部分を構成する左右一対のサイドサポート部32を備えている。左右一対のサイドサポート部32は、メイン部30に対して上方側へ突出している。
【0024】
パッド本体26のメイン部30には、着座乗員側が開放された凹状の通風部材配置凹部34が形成されている、この通風部材配置凹部34を着座乗員側(上方側)から見た形状は、矩形状となっている。通風部材配置凹部34の底において後述する溝部38によって囲まれている領域は、通風部材28が載置される載置面34Aとなっている。なお、メイン部30において載置面34Aと対応する領域の一部分には、通風部材28内を通過する空気を供給する又は排出するための凹状の空気通過部36が形成されている。載置面34Aからメイン部30の上面30Aまでの寸法Dは、通風部材28の厚み寸法Tとほぼ同じ寸法に設定されている。
【0025】
また、通風部材配置凹部34の底における当該通風部材配置凹部34の内周面34B側には、着座乗員側が開放された凹状の溝部38が形成されている。この溝部38は、通風部材配置凹部34の内周面34Bに沿って形成されている。これにより、溝部38を着座乗員側から見た形状は、載置面34Aのまわりを囲む矩形状となっている。また、
図4に示されるように、溝部38の溝幅Wは、通風部材28の端部28Aを押し込むことが可能な寸法に設定されている。ここで、溝部38の溝幅Wは、通風部材28の厚み寸法Tよりも若干大きな寸法又は同じ寸法に設定されていてもよい。この場合、通風部材28の端部28Aを溝部38に容易に押し込むことができる。また、溝部38の溝幅Wは、通風部材28の厚み寸法Tよりも若干小さな寸法に設定されていてもよい。この場合、通風部材28の端部28Aによって溝部38を押し広げながら、通風部材28の端部28Aを溝部38に押し込むことができる。
【0026】
図2及び
図4に示されるように、通風部材28は、定められた厚み寸法Tのシート状に形成されており、着座乗員側から見て矩形状に形成されている。この通風部材28は、一例として糸状のポリエステル樹脂が編み込まれることによって形成されている。これにより、通風部材28は、その内部を空気が通過することが可能な構成となっている。ここで、通風部材28の左右方向への寸法A1及び前後方向への寸法A2は、通風部材配置凹部34の左右方向への寸法及び前後方向への寸法と対応する寸法に設定されている。なお、
図4に示された例では、通風部材28の左右方向への寸法A1が、通風部材配置凹部34の左右方向への寸法と同じ寸法となっている。そのため、通風部材28が通風部材配置凹部34内に配置されていると共に載置面34Aに沿って載置されている状態では、通風部材28の左右方向の両端部28Aが通風部材配置凹部34の内周面34Bに当接している。
【0027】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0028】
図1、
図2及び
図4に示されるように、以上説明した本実施形態の車両用シート10では、図示しない空気供給装置から供給される空気を通風部材28に沿って流すことができる。これにより、着座乗員とシートクッション12との境界部分において湿度が高まることを抑制することができる。
【0029】
ところで、通風部材28の製造上のばらつきや等によって、通風部材28の左右方向への寸法A1及び前後方向への寸法A2が、通風部材配置凹部34の左右方向への寸法及び前後方向への寸法よりも大きくなる場合がある。
図5において模式的に示された例では、通風部材28の左右方向への寸法A1が、通風部材配置凹部34の左右方向への寸法よりも大きくなっている。この場合、通風部材28の左右方向の両端部28Aを左右の溝部38内に押し込むことができる。ここで、通風部材28の左右方向の両端部28Aが左右の溝部38内に押し込まれた状態では、通風部材28の左右方向の両端部28A側が溝部38側へ向けて屈曲された状態で、通風部材28の左右方向の両端部28Aが溝部38内に配置されている。これにより、通風部材28の左右方向の両端部28Aが通風部材配置凹部34から着座乗員側へ突出することを抑制することができる。その結果、シートクッション12の外観意匠性及び着座乗員の快適性が損なわれることを抑制することができる。
【0030】
なお、図示は省略するが、通風部材28の前後方向への寸法A2が、通風部材配置凹部34の前後方向への寸法よりも大きくなっている場合においても、通風部材28の前後方向の両端部28Aを前後の溝部38内に押し込むことができる。これにより、シートクッション12の外観意匠性及び着座乗員の快適性が損なわれることを抑制することができる。
【0031】
また、
図6において模式的に示された例では、通風部材28の左右方向への寸法A1が、通風部材配置凹部34の左右方向への寸法よりも小さくなっている。この場合、通風部材28が通風部材配置凹部34内に配置されていると共に載置面34Aに沿って載置されている状態では、通風部材28の左右方向の両端部28Aが通風部材配置凹部34の内周面34Bと離間している。すなわち、通風部材28の左右方向の両端部28Aと通風部材配置凹部34の内周面34Bとの間には、隙間40が形成されている。
【0032】
ところで、通風部材28の左右方向への寸法A1及び前後方向への寸法A2が、通風部材配置凹部34の左右方向への寸法及び前後方向への寸法よりも大きくなった場合であっても、上記のように通風部材28の端部28Aを溝部38内に押し込むことができる。そのため、通風部材28の左右方向への寸法A1及び前後方向への寸法A2を、通風部材配置凹部34の左右方向への寸法及び前後方向への寸法と近しい寸法に設定することができる。これにより、通風部材28の端部28Aと通風部材配置凹部34の内周面34Bとの間の隙間40が小さくなり、通風部材28の通風部材配置凹部34内における左右方向及び前後方向のズレを抑制することができる。
【0033】
なお、以上説明した例では、本発明の構成をシートクッションパッド20に適用したが、本発明の構成はシートバックパッド24にも適用することができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
26 パッド本体
20 シートクッションパッド(シートパッド)
24 シートバックパッド(シートパッド)
28 通風部材
28A 通風部材の端部
34 通風部材配置凹部
34B 内周面
38 溝部