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特開2023-132994訪問診療支援装置、訪問診療支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132994
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】訪問診療支援装置、訪問診療支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/20 20180101AFI20230914BHJP
【FI】
G16H40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038631
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 勇人
(72)【発明者】
【氏名】山守 恭平
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】患者のリスクや訪問診療の状況に基づいて、適切な訪問順序を決定することである。
【解決手段】実施形態の訪問診療支援装置は、リスク情報収集部と、訪問診療情報収集部と、訪問順序決定部と、訪問順序提供部と、を持つ。リスク情報収集部は、訪問診療の対象となる複数の患者の状態に関する情報を含むリスク情報を収集する。訪問診療情報収集部は、前記患者を訪問する医療従事者に関する情報を含む訪問診療情報を収集する。訪問順序決定部は、前記リスク情報および前記訪問診療情報に基づいて、前記医療従事者が前記患者を訪問する訪問順序を決定する。訪問順序提供部は、前記訪問順序を表す情報を、前記医療従事者を少なくとも含む医療関係者に提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
訪問診療の対象となる複数の患者の状態に関する情報を含むリスク情報を収集するリスク情報収集部と、
前記患者を訪問する医療従事者に関する情報を含む訪問診療情報を収集する訪問診療情報収集部と、
前記リスク情報および前記訪問診療情報に基づいて、前記医療従事者が前記患者を訪問する訪問順序を決定する訪問順序決定部と、
前記訪問順序を表す情報を、前記医療従事者を少なくとも含む医療関係者に提供する訪問順序提供部と、
を備える訪問診療支援装置。
【請求項2】
前記訪問順序決定部は、いずれかの前記患者に対応する前記訪問順序の更新が要求された場合、前記要求後に前記リスク情報収集部により収集された最新の前記リスク情報、および前記要求後に前記訪問診療情報収集部により収集された最新の前記訪問診療情報に基づいて、前記訪問順序を更新し、
前記訪問順序提供部は、更新された前記訪問順序を表す情報を前記医療関係者に提供する、
請求項1に記載の訪問診療支援装置。
【請求項3】
前記訪問順序決定部は、前記患者のリスクが高くなるほど優先して訪問するように、前記訪問順序を決定する、
請求項1または請求項2に記載の訪問診療支援装置。
【請求項4】
前記訪問順序決定部は、前記患者を訪問する際の効率が高くなるように、前記訪問順序を決定する、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の訪問診療支援装置。
【請求項5】
前記患者の訪問に影響を及ぼし得る補足情報を収集する補足情報収集部、をさらに備え、
前記訪問順序決定部は、さらに、最新の前記補足情報に基づいて、前記訪問順序を決定する、
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の訪問診療支援装置。
【請求項6】
過去の訪問順序の履歴情報を、当該訪問順序を決定したときの前記リスク情報および前記訪問診療情報と関連付けて保存する履歴情報保存部、をさらに備え、
前記訪問順序決定部は、さらに、前記履歴情報に基づいて、前記訪問順序を決定する、
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の訪問診療支援装置。
【請求項7】
前記医療従事者は、複数おり、
前記訪問順序決定部は、前記リスク情報と、複数の前記医療従事者の各々の前記訪問診療情報とに基づいて、前記医療従事者の各々の前記訪問順序を決定し、
前記訪問順序提供部は、前記訪問順序に含まれる前記医療従事者ごとに、関連する前記訪問順序を表す情報を提供する、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の訪問診療支援装置。
【請求項8】
前記訪問診療情報は、前記医療従事者が前記訪問診療を行う期間に対応する情報を含み、
前記訪問順序決定部は、前記期間における前記訪問順序を決定する、
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の訪問診療支援装置。
【請求項9】
前記期間は、半日、一日、あるいは一週間であり、
前記訪問順序決定部は、指定された、あるいは現在の時間に基づいて決定した前記期間における前記訪問順序を決定する、
請求項8に記載の訪問診療支援装置。
【請求項10】
コンピュータが、
訪問診療の対象となる複数の患者の状態に関する情報を含むリスク情報を収集し、
前記患者を訪問する医療従事者に関する情報を含む訪問診療情報を収集し、
前記リスク情報および前記訪問診療情報に基づいて、前記医療従事者が前記患者を訪問する訪問順序を決定し、
前記訪問順序を表す情報を、前記医療従事者を少なくとも含む医療関係者に提供する、
訪問診療支援方法。
【請求項11】
コンピュータに、
訪問診療の対象となる複数の患者の状態に関する情報を含むリスク情報を収集させ、
前記患者を訪問する医療従事者に関する情報を含む訪問診療情報を収集させ、
前記リスク情報および前記訪問診療情報に基づいて、前記医療従事者が前記患者を訪問する訪問順序を決定させ、
前記訪問順序を表す情報を、前記医療従事者を少なくとも含む医療関係者に提供させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、訪問診療支援装置、訪問診療支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、在宅で治療を受けている患者の自宅などを訪問する訪問診療の機会が増加している。訪問診療の場合、患者の症状やその進行状況や、今後の容体変化などのリスクに対する判断が重要になる。このため、例えば、患者からの要求に応じて、最短時間で訪問可能な医療従事者を選出する技術に関する提案がされている。さらに、例えば、患者から発信されるアラーム情報から緊急度を判定して最適な医療従事者を選出する技術に関する提案がされている。
【0003】
しかしながら、訪問診療の対象である患者の数が多く、訪問診療を行う医療従事者が不足している状況である場合、患者のリスクを考慮した適切な訪問診療を行うことは困難である。特に、急変が起こりやすいリスクを抱えた疾病を患っている患者への訪問は、予め定めた順番や時間で計画的に行うことができず、訪問計画の急な変更が発生することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-016189号公報
【特許文献2】特開2014-010534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、患者のリスクや訪問診療の状況に基づいて、適切な訪問順序を決定することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の訪問診療支援装置は、リスク情報収集部と、訪問診療情報収集部と、訪問順序決定部と、訪問順序提供部と、を持つ。リスク情報収集部は、訪問診療の対象となる複数の患者の状態に関する情報を含むリスク情報を収集する。訪問診療情報収集部は、前記患者を訪問する医療従事者に関する情報を含む訪問診療情報を収集する。訪問順序決定部は、前記リスク情報および前記訪問診療情報に基づいて、前記医療従事者が前記患者を訪問する訪問順序を決定する。訪問順序提供部は、前記訪問順序を表す情報を、前記医療従事者を少なくとも含む医療関係者に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る訪問診療支援装置の機能構成および使用環境の一例を示す図。
図2】実施形態に係る訪問診療支援装置における処理の流れの一例を示すフローチャート。
図3】実施形態に係る訪問診療支援装置が収集するリスク情報の一例を示す図。
図4】実施形態に係る訪問診療支援装置が収集する訪問診療情報の一例を示す図。
図5】実施形態に係る訪問診療支援装置が収集する補足情報の一例を示す図。
図6】実施形態に係る訪問診療支援装置により決定された訪問順序の一例を示す図。
図7】実施形態に係る訪問診療支援装置における別の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の訪問診療支援装置、訪問診療支援方法、およびプログラムについて説明する。訪問診療支援装置は、例えば、地域の医療関係者が連携して患者の治療を行う地域連携システムなどの中に組み込まれ、訪問診療を行う医療関係者を支援するための装置である。医療関係者とは、例えば、訪問診療を行う医師や看護師(病院に所属し、主に病院での外来診療を行うが、訪問診療も可能である医師や看護師も含む)などの医療従事者や、医師や看護師を同乗させて共に移動する車両のドライバーなど、医師や看護師と行動を共にする者などである。医療関係者や医療従事者は、複数であってもよい。
【0009】
図1は、実施形態に係る訪問診療支援装置の機能構成および使用環境の一例を示す図である。訪問診療支援装置100は、例えば、クラウドコンピューティングシステムに組み込まれたサーバー装置や記憶装置など、訪問診療に関連する種々の情報を記憶した装置と、ネットワークを介して通信する。ネットワークは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、プロバイダ装置、無線基地局などを含む。訪問診療支援装置100は、ネットワーク上のサーバー装置などによって実現されてもよい。
【0010】
訪問診療に関連する情報は、例えば、リスク情報10、訪問診療情報20、補足情報30などが含まれる。リスク情報10は、訪問診療の対象となる複数の患者の状態に関する情報が含まれるものである。図1には、リスク情報10として、例えば、患者モニタリング情報12、患者基本情報14、類似症例情報16が含まれている場合の一例を示している。訪問診療情報20は、訪問診療を行うために患者を訪問する医療従事者に関する情報が含まれるものである。図1には、訪問診療情報20として、例えば、医療従事者情報22、訪問情報24、医療行為情報26が含まれている場合の一例を示している。補足情報30は、医療従事者における患者の訪問に影響を及ぼし得る情報が含まれるものである。図1には、補足情報30として、例えば、交通情報32、天候・地域情報34、受入病院情報36が含まれている場合の一例を示している。
【0011】
患者モニタリング情報12は、患者の状態をモニタリングすることによって得られる、現在の健康状態に関する情報である。患者モニタリング情報12には、例えば、体温や、血中酸素飽和度(SpO)、血圧、脈拍数などが、数値の情報として含まれる。患者モニタリング情報12には、例えば、肺の聴診音などが、音声の情報として含まれる。患者モニタリング情報12には、例えば、患者の自宅内に設置されたカメラによって撮影された患者の動態などが、動画や画像の情報として含まれる。患者基本情報14は、患者自身に関する情報である。患者基本情報14には、例えば、年齢、家族構成、既往歴、服薬状況、ワクチン接種の有無、勤務先などの情報が含まれる。類似症例情報16は、患者の症状と同じあるいは類似する症状がある他の患者に関する情報である。類似症例情報16には、例えば、対応時期、リスク情報、処置内容などの情報が含まれる。
【0012】
リスク情報10には、上述した患者モニタリング情報12や、患者基本情報14、類似症例情報16に加えて、例えば、患者から発信された情報(主訴や、症状の変化、発信頻度など)や、患者の家族から発信された情報(患者の症状の変化や、家族の行動に関する情報(例えば、勤務時間や外出時間など)、発信の頻度など)、患者の緊急度を表す情報(上述した情報に基づいて総合的に判断した指標など)が含まれてもよい。
【0013】
医療従事者情報22は、訪問診療を行う医療従事者に関する情報である。医療従事者情報22には、例えば、医療従事者の人数や、それぞれの医療従事者の氏名、経験値、対応可能(訪問可能)な範囲、現在の状況などの情報が含まれる。訪問情報24は、訪問診療を受ける患者に関する情報である。訪問情報24には、例えば、直近で訪問する患者の住所、往診予定(時間など)、他の患者を含めた訪問診療の予約状況、訪問順序、訪問優先度などの情報が含まれる。訪問情報24に含まれるそれぞれの情報は、所定の期間における情報が含まれてもよい。例えば、訪問順序には、半日ごと、一日ごと、一週間ごとなど、所定の期間において医療関係者が患者を訪問する順序の情報が含まれてもよい。医療行為情報26は、患者を診療する際の医療行為に関する情報である。医療行為情報26には、医療行為の内容、医療行為に要した時間、医療行為に必要な医療器具や薬剤などの情報が含まれる。
【0014】
交通情報32は、訪問診療を行う患者の自宅に向かう際の移動に関する情報である。交通情報32には、例えば、道路の込み具合や、交通手段などの情報が含まれる。天候・地域情報34は、訪問診療を行う患者の自宅の天候や地域に関する情報である。天候・地域情報34には、例えば、現在のあるいは訪問時間の天候の情報などが、天候情報として含まれる。天候・地域情報34には、例えば、患者の自宅の周辺地域で発生して特定のウイルスの蔓延状況などが、地域情報として含まれる。受入病院情報36は、例えば、診療結果として病院への入院が必要で合った場合に、患者を受け入れることができる病院に関する情報である。受入病院情報36には、例えば、患者の受け入れが可能な病院の名称、所在場所、受け入れ可能な患者の人数、受け入れ可能な患者の症状、受け入れ可能な時間、予定される担当医の情報などが含まれる。
【0015】
[訪問診療支援装置の構成]
訪問診療支援装置100は、リスク情報10、訪問診療情報20、補足情報30を取得し、取得したそれぞれの情報に基づいて、医療関係者が患者を訪問する順序を決定することにより、医療従事者による訪問診療を支援する。訪問診療支援装置100は、例えば、リスク情報収集機能110、訪問診療情報収集機能120、補足情報収集機能130、訪問順序決定機能140、訪問順序提供機能150、履歴情報保存機能160などの処理を実行する。訪問診療支援装置100は、例えば、ハードウェアプロセッサが不図示のメモリ(記憶部)に記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0016】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。不図示のメモリにプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つの専用のLSIに組み込んで各機能を実現するようにしてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROMやRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブなどの記憶装置を構成する記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が訪問診療支援装置100に備えるドライブ装置に装着されることで、訪問診療支援装置100に備える記憶装置にインストールされてもよい。プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワークを介して予めダウンロードされて、訪問診療支援装置100に備える記憶装置にインストールされてもよい。訪問診療支援装置100に備える記憶装置にインストールされたプログラム(ソフトウェア)は、訪問診療支援装置100が備える処理回路に転送されて実行されてもよい。
【0017】
リスク情報収集機能110は、ネットワークを介してリスク情報10(図1では、患者モニタリング情報12、患者基本情報14、類似症例情報16)を取得して収集する。リスク情報収集機能110は、例えば、不図示の通信部を制御して、それぞれの情報を取得する。リスク情報収集機能110は、取得したそれぞれの情報を不図示の記憶部の記憶させることによりリスク情報10を収集する。不図示の記憶部は、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、光ディスクなどにより実現される。リスク情報収集機能110は、「リスク情報収集部」の一例である。
【0018】
訪問診療情報収集機能120は、ネットワークを介して訪問診療情報20(図1では、医療従事者情報22、訪問情報24、医療行為情報26)を取得して収集する。訪問診療情報収集機能120は、例えば、不図示の通信部を制御して、それぞれの情報を取得する。訪問診療情報収集機能120は、取得したそれぞれの情報を不図示の記憶部の記憶させることにより訪問診療情報20を収集する。訪問診療情報収集機能120が訪問診療情報20を収集する不図示の記憶部は、リスク情報収集機能110がリスク情報10を収集する不図示の記憶部と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。訪問診療情報収集機能120は、「訪問診療情報収集部」の一例である。
【0019】
補足情報収集機能130は、ネットワークを介して補足情報30(図1では、交通情報32、天候・地域情報34、受入病院情報36)を取得して収集する。補足情報収集機能130は、例えば、不図示の通信部を制御して、それぞれの情報を取得する。補足情報収集機能130は、取得したそれぞれの情報を不図示の記憶部の記憶させることにより補足情報30を収集する。補足情報収集機能130が補足情報30を収集する不図示の記憶部は、リスク情報収集機能110がリスク情報10を収集する不図示の記憶部や、訪問診療情報収集機能120が訪問診療情報20を収集する不図示の記憶部と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。補足情報収集機能130は、「補足情報収集部」の一例である。
【0020】
訪問順序決定機能140は、リスク情報収集機能110が収集したリスク情報10、および訪問診療情報収集機能120が収集した訪問診療情報20それぞれの情報に基づいて、医療従事者が患者を訪問する訪問順序を決定する。訪問順序決定機能140は、補足情報収集機能130が収集した補足情報30を含めて、訪問順序を決定してもよい。訪問順序決定機能140は、訪問順序を決定する際に、履歴情報保存機能160に保存されている訪問順序の履歴情報を参照してもよい。このとき、訪問順序決定機能140は、例えば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による機能を用いて学習した類似する訪問順序の検索機能を用いてもよい。
【0021】
訪問順序決定機能140は、手動あるいは自動で訪問順序を決定する処理を開始して、訪問順序を決定あるいは更新する。より具体的には、訪問順序決定機能140は、例えば、これから訪問診療を開始する医療関係者から訪問順序の提供が要求されたときや、訪問診療支援装置100を含む訪問診療支援システムの運営、管理をする運営会社の担当者から訪問順序の更新が要求されたときなど、手動による要求がされた場合に、訪問順序を決定する処理を開始して訪問順序を決定(更新)する。訪問順序決定機能140は、例えば、リスク情報収集機能110が収集している患者モニタリング情報12から患者の容態が急変したことが確認されたときなど、患者に対する診療の緊急度が高くなったり、訪問の優先順位が高くなったりして、訪問順序の更新が必要であると判定した場合には、自動で訪問順序を決定する処理を開始して訪問順序を決定(更新)する。訪問順序決定機能140は、最新のリスク情報10および訪問診療情報20(最新の補足情報30を含めてもよい)に基づいて、訪問順序を決定(更新)する。
【0022】
訪問順序決定機能140は、決定(更新)した訪問順序を表す情報(以下、「訪問順序情報」という)を訪問順序提供機能150に出力する。さらに、訪問順序決定機能140は、訪問順序情報を履歴情報保存機能160に出力する。訪問順序決定機能140は、訪問順序情報を不図示の記憶部に記憶させ、このことを訪問順序提供機能150や履歴情報保存機能160に通知してもよい。訪問順序決定機能140が訪問順序情報を記憶する不図示の記憶部は、リスク情報収集機能110がリスク情報10を収集する不図示の記憶部や、訪問診療情報収集機能120が訪問診療情報20を収集する不図示の記憶部、補足情報収集機能130が補足情報30を収集する不図示の記憶部と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。訪問順序決定機能140は、「訪問順序決定部」の一例である。
【0023】
訪問順序提供機能150は、訪問順序決定機能140により出力された訪問順序情報を、医療従事者を少なくとも含む医療関係者に提供する。訪問順序提供機能150は、例えば、不図示の通信部を制御し、ネットワークを介して訪問順序情報を医療関係者(医療従事者であってもよい)に提供する。ここで、訪問順序提供機能150が制御する不図示の通信部は、リスク情報収集機能110や、訪問診療情報収集機能120、補足情報収集機能130が制御する不図示の通信部と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。これにより、例えば、医師や看護師を同乗させて共に移動する車両のドライバーや、訪問診療を行う医師や看護師は、訪問順序情報から、訪問診療を行う順序を確認することができる。訪問順序提供機能150がネットワークを介して訪問順序情報を提供する装置としては、例えば、医療関係者や医療従事者が訪問診療支援装置100を利用するために携帯している携帯端末装置や、車両に設置されたナビゲーション装置などが考えられる。携帯端末装置は、例えば、既存の移動体通信網を利用した携帯電話の機能と、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)の機能とを融合させた携帯端末、いわゆる、スマートフォンやタブレット端末などである。携帯端末装置やナビゲーション装置は、訪問診療支援装置100により訪問順序情報が提供された場合、例えば、それぞれの装置が備える表示装置に提供された訪問順序情報を表示させることにより、訪問順序情報が表す訪問順序を提示する。このとき、携帯端末装置やナビゲーション装置は、自身が持っている地図情報に訪問順序情報が表す訪問順序を重畳させて表示装置に表示させることにより、訪問順序情報が表す訪問順序を提示してもよい。訪問順序提供機能150は、例えば、訪問順序決定機能140が、医療関係者からの手動による要求に応じて訪問順序を更新した場合、訪問順序の更新を要求した医療関係者が携帯している携帯端末装置や、乗車している車両のナビゲーション装置に、更新された最新の訪問順序情報を提供する。訪問順序提供機能150は、例えば、他の医療関係者からの要求に応じて、最新の訪問順序情報を提供してもよい。訪問順序提供機能150は、「訪問順序提供部」の一例である。
【0024】
履歴情報保存機能160は、訪問順序決定機能140により出力された訪問順序情報を保存する。履歴情報保存機能160は、訪問順序情報における過去の履歴の情報(以下、「履歴情報」という)を、訪問順序を決定する際に参照される情報として(いわゆる、ノウハウとして)保存(蓄積)する。履歴情報保存機能160は、訪問順序決定機能140により訪問順序情報が出力された際に、この訪問順序情報に表された訪問順序の決定に用いられたリスク情報10および訪問診療情報20を関連付けて保存する。履歴情報保存機能160は、訪問順序決定機能140が補足情報30を含めて訪問順序を決定した場合には、補足情報30も関連付けて保存する。このとき、履歴情報保存機能160は、例えば、AIによる機能を用いて学習した、患者の容態が急変する可能性などの情報も含めて保存(蓄積)してもよい。図1には、履歴情報保存機能160が履歴情報を保存(蓄積)するための記憶部を模式的に示している。この記憶部は、リスク情報収集機能110がリスク情報10を収集する不図示の記憶部や、訪問診療情報収集機能120が訪問診療情報20を収集する不図示の記憶部、補足情報収集機能130が補足情報30を収集する不図示の記憶部、訪問順序決定機能140が訪問順序情報を記憶する不図示の記憶部と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。履歴情報保存機能160は、「履歴情報保存部」の一例である。
【0025】
[訪問診療支援装置の処理]
次に、訪問診療支援装置100の使用環境における動作について説明する。図2は、実施形態に係る訪問診療支援装置100における処理の流れの一例を示すフローチャートである。図2には、訪問診療支援装置100が、特定の医療従事者(以下、「医療従事者A」という)の訪問順序を決定する場合の一例を示している。以下の説明においては、ある一日において医療従事者Aが患者を訪問する訪問順序を決定するものとする。図2に示したフローチャートは、訪問診療支援装置100が、医療従事者Aによる手動の要求に応じて訪問順序を決定(更新)する場合の一例である。
【0026】
訪問診療支援装置100における訪問順序の決定処理では、予め訪問順序決定の制御ルールを決めておく(ステップS100)。制御ルールには、例えば、訪問診療を受ける患者のリスクや、医療従事者が患者を訪問する経路、患者が患っている疾病の種類、訪問する患者の人数などに関する条件が定義されている。訪問診療を受ける患者のリスクに関しては、例えば、容態が急変したなど、リスクが高くなった患者を優先して訪問診療を行うようにするための条件が定義されている。医療従事者が患者を訪問する経路に関しては、例えば、医療従事者が複数の患者を訪問する際に同じ経路を戻ったり、離れた位置に存在する複数の患者を訪問したりしないように、移動距離が短くなるような効率的な経路、つまり、患者を訪問する際の効率が高くなるような経路を決定するための条件が定義されている。医療従事者が患者を訪問する経路に関しては、例えば、訪問診療が完了した直後は患者の容態が急変する可能性が高くなることを考慮して、前の訪問先に戻る(再訪問する)ことが容易な経路を決定するための条件が定義されていてもよい。患者が患っている疾病の種類に関しては、例えば、医療従事者が異なる疾病を患っている患者を訪問するために多くの医療器具や薬剤を所持しておくことがないように、類似の疾病の患者や、同様の医療器具や薬剤を使用して診療できる疾病の患者を同じ医療従事者が訪問するように、効率的な経路を決定するための条件が定義されている。訪問する患者の人数に関しては、例えば、患者が患っている疾病の種類によって診療に要する時間や、医療従事者の移動時間なども考慮して、医療従事者における一日の訪問限界数を超えないように、効率的な経路を決定するための条件が定義されている。
【0027】
次に、訪問診療支援装置100は、訪問順序提供機能150によって、医療従事者Aの現在の訪問順序を一覧表示する(ステップS102)。この現在の訪問順序は、制御ルールに基づいて事前に決定し、医療従事者Aが本日訪問することが予定されている患者の訪問順序である。ここで、訪問診療支援装置100は、医療従事者Aによる手動の訪問順序の更新要求を受け付ける(ステップS104)。このとき、訪問診療支援装置100は、医療従事者Aから、訪問順序を更新する期間(例えば、半日、一日、一週間など)の指定を受けてもよいし、現在の時間に基づいて更新する期間を決定してもよい。ここでは、ある一日における医療従事者Aの訪問順序を決定するため、訪問診療支援装置100は、例えば、現在の時間が午前である場合には、訪問順序を更新する期間を一日として決定し、現在の時間が午後である、あるいは午前であっても昼に近い時間である場合には、訪問順序を更新する期間を午後の分(つまり、半日分)として決定してもよい。ここでは、訪問順序を更新する期間が一日であるものとする。
【0028】
訪問診療支援装置100は、受け付けた訪問順序の更新要求に応じて、リスク情報収集機能110によって、医療従事者Aが本日訪問する予定となっている訪問予定の患者に関する最新のリスク情報10を収集する(ステップS106)。さらに、訪問診療支援装置100は、リスク情報収集機能110によって、医療従事者Aが本日訪問する予定となっていない訪問予定外の患者に関する最新のリスク情報10を収集する(ステップS108)。ここで、一日分の訪問順序を更新する場合、例えば、明日や明後日など、別の日に訪問する予定となっている患者を本日訪問する必要があることも考えられる。このため、訪問診療支援装置100は、ステップS106の処理およびステップS108の処理において、本日以降で所定の日数分(例えば、三日分)のリスク情報10を収集するようにしてもよい。そして、訪問診療支援装置100では、訪問順序決定機能140が、収集されたそれぞれのリスク情報10を取得する。
【0029】
図3は、実施形態に係る訪問診療支援装置100が収集するリスク情報10の一例を示す図である。図3には、訪問診療支援装置100におけるステップS106の処理およびステップS108の処理によって収集し、訪問順序決定機能140が取得してまとめた医療従事者Aが担当する患者のリスク情報10の一覧(以下、「リスク情報一覧」という)を示している。リスク情報一覧は、例えば、医療従事者Aが担当する患者の患者名に対して、年齢と、家族構成と、ワクチン接種有無と、モニタリング情報と、患者緊急度とが対応付けられた情報である。患者名には、医療従事者Aが本日訪問する予定であるか否かを表す訪問フラグ情報が含まれている。訪問フラグ情報は、医療従事者Aが本日訪問する場合に、「TODAY」が示される。年齢は、患者の年齢の実値と、その年齢に応じた指標(リスク)とを表す情報である。年齢のリスクは、数値が高いほどリスクが高いことを表している。家族構成は、患者と同居する家族の情報と、その家族構成に応じたリスクとを表す情報である。家族構成のリスクも、数値が高いほどリスクが高いことを表している。ワクチン接種有無は、ワクチンを摂取した回数とワクチン接種回数に応じたリスクとを表す情報である。ワクチン接種有無のリスクも、数値が高いほどリスクが高いことを表している。モニタリング情報は、患者モニタリング情報12に含まれる情報の実値と、その情報に基づくリスクとを表す情報である。図3には、実値として、患者モニタリング情報12に含まれる体温、血中酸素飽和度(SpO)、および患者の動態の情報を示している。さらに、図3には、患者の動態に問題がある可能性がある場合の一例として、例えば、患者モニタリング情報12に含まれる、患者の自宅内に設置されたカメラによって撮影された動画や画像へのリンクが関連付けられている場合を示している。患者の自宅内が撮影された動画や画像に基づいた患者の動態に問題があるか否か判定は、例えば、動画や画像に対して画像処理技術を適用することによって行ってもよい。医療従事者は、リンクによって関連付けられた動画や画像を確認することによって、患者の動態に問題があるか否かを判断することができる。モニタリング情報のリスクも、数値が高いほどリスクが高いことを表している。モニタリング情報の実値やリスクは、リスク情報収集機能110が患者モニタリング情報12を収集するごとに逐次更新される。患者緊急度は、リスク情報一覧に含まれる情報を総合的に判定した結果に基づく情報である。患者緊急度は、例えば、患者の症状と同じあるいは類似する症状がある他の患者のリスク情報10を参照して、24時間後~48時間後くらいまでの間の変化を事前に想定し、想定した変化も含めて判定した結果に基づく情報であってもよい。患者緊急度も、数値が高いほど、優先して訪問診療する必要があるなど、緊急度が高いことを表している。患者緊急度は、モニタリング情報が更新されるごとに逐次更新される。患者緊急度は、訪問診療が完了した直後は容態が急変する可能性が高くなることを考慮して、所定の期間の間は高めの値になるようにしておいてもよい。
【0030】
リスク情報一覧には、図3に示すものに限らず、患者モニタリング情報12、患者基本情報14、類似症例情報16などに基づく種々の情報が含まれてもよい。さらに、リスク情報一覧には、例えば、補足情報30に含まれる受入病院情報36に基づいて、患者を受け入れることができる病院を事前に紹介するための情報が含まれてもよい。この情報を参考にすることによって、医療従事者は、一日の訪問限界数を超えないように事前に対応する、つまり、訪問診療の負荷を軽減することが可能となる。
【0031】
図2に戻り、訪問診療支援装置100は、訪問診療情報収集機能120によって、今回訪問順序を決定する対象の医療従事者Aに関する最新の訪問診療情報20を収集する(ステップS110)。さらに、訪問診療支援装置100は、訪問診療情報収集機能120によって、対象外の医療従事者(つまり、医療従事者A以外の医療従事者)に関する最新の訪問診療情報20を収集する(ステップS112)。そして、訪問診療支援装置100では、訪問順序決定機能140が、収集されたそれぞれの訪問診療情報20を取得する。
【0032】
図4は、実施形態に係る訪問診療支援装置100が収集する訪問診療情報20の一例を示す図である。図4には、訪問診療支援装置100におけるステップS110の処理およびステップS112の処理によって収集し、訪問順序決定機能140が取得してまとめた医療従事者の訪問診療情報20の一覧(以下、「訪問診療情報一覧」という)を示している。訪問診療情報一覧は、例えば、医療従事者名に対して、メンバと、担当患者と、本日訪問予定と、対応度とが対応付けられた情報である。医療従事者名には、医療従事者の名前と、現在の訪問診療の状況を表すステータス情報と、現在の状況が変化する予定時間と、が含まれている。ステータス情報は、医療従事者が訪問先で診療を行っている場合に「往診中」が示され、訪問診療のために移動している場合に「巡回中」が示され、医療従事者が休み日である場合に「非番」が示される。メンバは、医療従事者(本人)と、訪問診療において行動を共にする看護師やドライバーなどの他の医療関係者を表す情報である。担当患者は、医療従事者が担当する全ての患者(患者名)を表す情報である。本日訪問予定は、医療従事者が担当する患者のうち、本日訪問する予定の患者(患者名)と、訪問する予定の時間とを表す情報である。本日訪問予定には、医療従事者が現在診療を行っている場合には、往診中と表される。本日訪問予定は、診療の進捗に応じて、逐次更新される。本日訪問予定は、例えば、現在の訪問診療が完了したときに、次の患者を訪問する予定の時間が更新される。対応度は、現在の訪問診療の予定が変更された場合に、その変更に対して対応が可能であるかを判定した結果に基づく情報である。対応度は、例えば、変更された予定に対応可能であるか否かを表す柔軟性を表す情報である。対応度は、例えば、医療従事者の経験値や、現在の訪問診療のために所持しているあるいは所持していることが想定される医療器具や薬剤などが考慮されて判定される。対応度は、数値が高いほど変更された予定に対応することができる可能性が高い(柔軟性が高い)ことを表している。対応度は、現在の訪問診療が完了したときに、次の患者を訪問する予定の時間が考慮されて(例えば、訪問予定時間の差分などに基づいて)、更新される。対応度は、例えば、医療従事者(本人)やメンバの体調や、訪問する患者が患っている疾病の種類(例えば、伝染する疾病であるか否か)、図3に示したリスク情報一覧に含まれるリスクの情報(例えば、ワクチン接種有無のリスク)など、患者を訪問したことによりリスクやその傾向を考慮して判定がされてもよい。
【0033】
訪問診療情報一覧には、図4に示すものに限らず、医療従事者情報22、訪問情報24、医療行為情報26などに基づく種々の情報が含まれてもよい。例えば、訪問診療情報一覧に、主に訪問診療を専門として従事する医療従事者と、例えば、病院などにおいて主に外来診療を行っているが、緊急の場合には訪問診療が可能であることを登録している医療従事者(以下、「副医療従事者」という)とを分類する情報が含まれてもよい。この情報が含まれている場合、例えば、特定の医療従事者が訪問限界数に近づいてきていたり、担当の医療従事者の訪問診療が何らかの理由で想定以上の時間を要していたり、容態が急変した患者が現れたりした場合に、副医療従事者に訪問診療を行わせるように連絡をすることができるようになる。
【0034】
図2に戻り、訪問診療支援装置100は、補足情報収集機能130によって、今回の訪問予定に関連する最新の補足情報30を収集する(ステップS114)。そして、訪問診療支援装置100では、訪問順序決定機能140が、収集された補足情報30を取得する。さらに、訪問診療支援装置100は、訪問順序決定機能140が、履歴情報保存機能160から、過去の訪問順序の履歴(履歴情報)を取得する(ステップS116)。訪問診療支援装置100は、例えば、関連する過去の訪問順序の履歴情報が存在しなかったり、訪問診療を行う患者が新たに追加された患者であったりした場合には、ステップS116の処理を省略してもよい。
【0035】
図5は、実施形態に係る訪問診療支援装置100が収集する補足情報30の一例を示す図である。図5には、訪問診療支援装置100におけるステップS114の処理によって収集した補足情報30と、ステップS116の処理によって取得した履歴情報とを、訪問順序決定機能140がまとめた今回の訪問診療に関連する補足情報30の一覧(以下、「補足情報一覧」という)を示している。補足情報一覧は、例えば、分類と、補足情報と、リスク加算係数とが対応付けられた情報である。分類は、補足情報30が表す情報の分類を表す情報である。分類には、補足情報一覧に表される情報が交通情報32に基づく情報である場合に「交通情報」が示され、天候・地域情報34に基づく情報である場合に「天候情報」あるいは「地域情報」が示され、受入病院情報36に基づく情報である場合に「受入病院情報」が示される。補足情報は、補足情報30に含まれる情報の内容である。図5には、「交通情報」において、医療従事者Aの訪問診療に影響を及ぼす可能性がある場合の一例として、交通リスクがあることを示し、例えば、交通リスクを確認するための地図情報へのリンクが関連付けられている場合を示している。補足情報一覧に含まれる補足情報30に関連する情報は、補足情報30の更新に伴って逐次更新される。リスク加算係数は、図3に示したリスク情報一覧に含まれるそれぞれのリスクを求める際に加算する係数を表す情報である。リスク加算係数は、取得した履歴情報に基づいて求められた係数である。リスク加算係数は、患者の状態や、医療従事者の訪問診療の状況に応じて、逐次更新されてもよい。
【0036】
補足情報一覧には、図5に示すものに限らず、交通情報32、天候・地域情報34、受入病院情報36や、過去の訪問順序の履歴情報などに基づく種々の情報が含まれてもよい。
【0037】
図2に戻り、訪問診療支援装置100は、訪問順序決定機能140が、それぞれの情報(それぞれの一覧に示された情報)と、制御ルールとに基づいて、訪問順序を決定(更新)する(ステップS118)。
【0038】
図6は、実施形態に係る訪問診療支援装置100により決定された訪問順序の一例を示す図である。図6には、訪問診療支援装置100におけるステップS118の処理において訪問順序決定機能140が決定(更新)した訪問順序情報142をまとめた一覧(以下、「訪問順序一覧」という)として示している。訪問順序一覧は、例えば、訪問診療を受ける患者の患者名に対して、患者緊急度と、訪問医療従事者と、訪問ルートとが対応付けられた情報である。患者名には、新たに訪問診療を受ける患者である、つまり、新たに追加された患者であるか否かを表すフラグ情報が含まれている。フラグ情報は、新たに訪問診療を受けることになった患者である場合に「NEW」が示される。図6には、患者名が「患者B」である患者が、新たに訪問診療を受ける(氏名が「医従C」の医療従事者Cの訪問診療を受ける)ことになった患者であることを表す「NEW」のフラグ情報が示されている場合を示している。ここで、「NEW」のフラグ情報が示された新たに訪問診療を受けることになった患者(患者名=患者B)は、図4に示した訪問診療情報一覧において、医療従事者C(氏名=医従C)が担当する担当患者に含まれてはいるものの、本日訪問予定には含まれていない患者である。つまり、新たに訪問診療を受けることになった患者(患者名=患者B)は、本来であれば医療従事者Cが別の日に訪問する予定であったが、何らかの理由で患者緊急度が高くなったため、本日訪問することが必要となった患者である。患者緊急度は、図3に示したリスク情報一覧に含まれる患者緊急度と同様の内容を表す情報である。訪問医療従事者は、対象の患者を訪問する医療従事者(医療従事者名)と、訪問する予定日時と、訪問予定の医療従事者以外の医療従事者における対応度とを表す情報である。予定日時には、医療従事者が訪問先で診療を行っている場合に「往診中」と示され、予定日時が変更になった場合に、変更前の日時と変更後の日時とのそれぞれが示される。図6には、氏名が「医従A」の医療従事者Aが患者Hを診療中であり、医療従事者C(氏名=医従C)における訪問予定時間が変更されている場合を示している。訪問予定時間が変更された場合、この変更がされた患者に連絡や通知がされるようにしてもよい。患者への連絡や通知は、例えば、患者が携帯している携帯端末装置に訪問予定時間が変更されたことを表す情報を送信することによって行ってもよい。対応度は、図4に示した訪問診療情報一覧に含まれる対応度と同様の内容を、対象の患者に対して対応が可能である医療従事者についてまとめた情報である。対応度は、対象の患者に対応可能な全ての医療従事者をまとめて示すようにしてもよいし、優先する医療従事者と、バックアップ要員とする医療従事者とを分けて示すようにしてもよい。図6には、新たに訪問診療を受けることになった患者(患者名=患者B)に対して、医療従事者A(氏名=医従A)と医療従事者C(氏名=医従C)とのそれぞれが対応可能である場合を示している。図6では、医療従事者Cの対応度が高いため、医療従事者Cが患者Bを訪問する医療従事者として選択されて、訪問予定の医療従事者として医療従事者名が示されている。医療従事者Cは、訪問診療支援装置100により訪問順序情報が提供された後、何らかの理由で患者Bを訪問することが不可能になった場合、自ら対応度を変更して、訪問予定の医療従事者ではなくなるようにすることができる。医療従事者Cが自ら対応度を変更した場合、この変更によって影響が及ぶ医療従事者(図6では、医療従事者A(氏名=医従A))に通知がされるようにしてもよい。訪問ルートは、医療従事者が現在の位置から対象の患者を訪問する際の経路(ルート)を表す情報である。図6には、訪問ルートを確認するための地図情報へのリンクが関連付けられている場合を示している。
【0039】
訪問順序一覧には、図6に示すものに限らず、図3に示したリスク情報一覧、図4に示した訪問診療情報一覧、図5に示した補足情報一覧などに基づいた、訪問診療を受ける患者や、医療従事者に関する種々の情報が含まれてもよい。
【0040】
図2に戻り、訪問診療支援装置100は、訪問順序提供機能150によって、手動の訪問順序の更新要求を受け付けた医療従事者Aに、決定(更新)した訪問順序を一覧表示する(ステップS120)。このとき、訪問診療支援装置100は、図6に示した訪問順序一覧の中から、医療従事者Aに関連する訪問順序情報を抽出し、抽出した訪問順序情報を医療従事者Aに提供するようにする。このとき、訪問診療支援装置100は、医療従事者Aにより指定された期間、あるいは現在の時間に基づいて決定した期間の訪問順序情報を医療従事者Aに提供するようにしてもよい。訪問診療支援装置100は、更新する前の訪問順序、つまり、ステップS102の処理において表示した訪問順序の一覧と、ステップS118の処理において更新した訪問順序の一覧とを併せて表示して、医療従事者Aが訪問順序における変更箇所を確認することができるようにしてもよい。
【0041】
次に、訪問診療支援装置100は、ステップS118の処理において更新した訪問順序(新たな訪問順序情報)を履歴情報として、履歴情報保存機能160によって保存する(ステップS122)。その後、訪問診療支援装置100は、新たな履歴情報が保存されたことを、地域連携システムや、他の訪問診療支援装置100を含む他の訪問診療支援システムなどの関連システムに通知して、新たな履歴情報の共有やフィードバックをするようにしてもよい。
【0042】
このようにして、訪問診療支援装置100は、医療従事者Aによる手動の要求に応じて、最新のリスク情報10、訪問診療情報20、および補足情報30を収集し、必要に応じて過去の訪問順序の履歴情報を取得して、医療従事者Aの訪問順序を決定(更新)する。そして、訪問診療支援装置100は、決定(更新)した訪問順序(訪問順序情報)を医療従事者Aに提供する。これにより、医療従事者Aは、決定(更新)された訪問順序を確認して、訪問診療を行うことができる。
【0043】
[訪問診療支援装置の別の処理]
図2に示したフローチャートでは、訪問診療支援装置100が、医療従事者Aによる手動の要求に応じて訪問順序を決定(更新)する場合の一例について説明した。しかし、訪問診療支援装置100は、自動で訪問順序を決定する処理を開始してもよい。図7は、実施形態に係る訪問診療支援装置100における別の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図7には、訪問診療支援装置100が、図2に示したフローチャートと同様に、特定の医療従事者(医療従事者A)の訪問順序を、自動で決定(更新)する場合の一例を示している。以下の説明においても、図2に示したフローチャートと同様に、ある一日において医療従事者Aが患者を訪問する訪問順序を決定するものとする。図7に示したフローチャートでは、図2に示したフローチャートにおけるステップS104の処理が、ステップS204の処理に代わっている。つまり、図7に示したフローチャートにおいて、ステップS100およびステップS102の処理と、ステップS106~ステップS122までの処理とは、図2に示したフローチャートにおける対応する処理と同様である。従って、以下の説明においては、図2に示したフローチャートと同様の処理の再度の説明は省略する。
【0044】
訪問診療支援装置100は、ステップS102の処理において医療従事者Aの現在の訪問順序を一覧表示した後、訪問順序決定機能140によって患者緊急度が高くなったことを確認した場合(例えば、図2に示したフローチャートと同様に、患者(患者名=患者B)の患者緊急度が高くなった場合)、訪問順序の更新が必要であると判定する(ステップS204)。この場合、訪問診療支援装置100は、訪問順序の更新要求を受け付けたものとする。例えば、訪問診療支援装置100は、図2に示したフローチャートと同様に、医療従事者Aによる手動の訪問順序の更新要求を受け付けたものとする。そして、訪問診療支援装置100は、受け付けた訪問順序の更新要求に応じて、ステップS106~ステップS122の処理を行う。ここで、訪問診療支援装置100は、ステップS120において決定(更新)した訪問順序を一覧表示する際に、医療従事者Aに対して訪問順序が更新されたことを通知するようにしてよい。これは、訪問順序の更新要求を手動で行った場合には、医療従事者Aは訪問順序が更新されることを認識しているのに対して、訪問順序が自動で更新されることは、医療従事者Aは事前に認識していないためである。
【0045】
このようにして、訪問診療支援装置100は、訪問順序の更新が必要であると判定した場合、訪問順序の更新要求を受け付けたものとして、最新のリスク情報10、訪問診療情報20、および補足情報30を収集し、必要に応じて過去の訪問順序の履歴情報を取得して、医療従事者Aの訪問順序を決定(更新)する。そして、訪問診療支援装置100は、決定(更新)した訪問順序(訪問順序情報)を医療従事者Aに提供する。これにより、医療従事者Aは、決定(更新)された訪問順序から、患者の容態が急変したことを確認し、診療を行うために患者を訪問する行動をとることができる。
【0046】
上記に述べたとおり、各実施形態の訪問診療支援装置では、収集したリスク情報10と、訪問診療情報20と、補足情報30とに基づいて、必要に応じて過去の訪問順序の履歴の情報を含めて、医療従事者(医療関係者を含む)の訪問順序を決定(更新)する。つまり、各実施形態の訪問診療支援装置では、患者のリスクや訪問診療の状況に基づいた適切な訪問順序を決定(更新)することができる。そして、各実施形態の訪問診療支援装置は、決定(更新)した訪問順序を表す訪問順序情報を、訪問診療を行う医療従事者(医療関係者を含む)に提供(通知)する。これにより、各実施形態の訪問診療支援装置では、医療従事者(医療関係者を含む)が、効率的に訪問診療を行えるように支援することができる。つまり、各実施形態の訪問診療支援装置を利用する医療従事者(医療関係者を含む)は、決定(更新)された訪問順序を確認して、効率的に訪問診療を行うことができる。このようにして、各実施形態の訪問診療支援装置は、訪問診療を支援する。
【0047】
上述した各実施形態では、訪問診療支援装置が、ある一日において医療従事者(医療関係者を含む)が患者を訪問する訪問順序を決定する場合について説明した。しかし、上述したように、訪問順序には、半日ごと、一日ごと、一週間ごとなど、所定の期間における情報が含まれてもよい。このため、訪問診療支援装置は、所定の期間において医療従事者(医療関係者を含む)が患者を訪問する訪問順序を決定してもよい。この場合における訪問診療支援装置の動作や処理は、上述した各実施形態の訪問診療支援装置の動作や処理と等価なものになるようにすればよい。従って、この場合における訪問診療支援装置の動作や処理に関する詳細な説明は省略する。
【0048】
上述した各実施形態では、訪問診療支援装置が、ネットワーク上のサーバー装置において実現される場合を例に挙げて説明したが、これはあくまで一例であり、訪問診療支援装置、あるいは訪問診療支援装置が実現する機能は、例えば、病院が備える医療管理システムや、訪問診療支援システムの運営、管理をする運営会社が備える装置あるいは機能として実現されてもよい。この場合における訪問診療支援装置の機能構成や、動作、処理は、上述した各実施形態の訪問診療支援装置の機能構成や、動作、処理と等価なものになるようにすればよい。従って、この場合における訪問診療支援装置あるいはその機能が実現される機能構成や、動作、処理に関する詳細な説明は省略する。
【0049】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
処理回路(processing circuitry)を備え、
前記処理回路は、
訪問診療の対象となる複数の患者の状態に関する情報を含むリスク情報を収集し、
前記患者を訪問する医療従事者に関する情報を含む訪問診療情報を収集し、
前記リスク情報および前記訪問診療情報に基づいて、前記医療従事者が前記患者を訪問する訪問順序を決定し、
前記訪問順序を表す情報を、前記医療従事者を少なくとも含む医療関係者に提供する、
訪問診療支援装置。
【0050】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、訪問診療の対象となる複数の患者の状態に関する情報を含むリスク情報(10)を収集するリスク情報収集部(110)と、前記患者を訪問する医療従事者に関する情報を含む訪問診療情報(20)を収集する訪問診療情報収集部(120)と、前記リスク情報(10)および前記訪問診療情報(20)に基づいて、前記医療従事者が前記患者を訪問する訪問順序を決定する訪問順序決定部(140)と、前記訪問順序を表す情報を、前記医療従事者を少なくとも含む医療関係者に提供する訪問順序提供部(150)と、を持つことにより、患者のリスクや訪問診療の状況に基づいて、適切な訪問順序を決定することができる訪問診療支援装置を実現することができる。
【0051】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
100・・・訪問診療支援装置、110・・・リスク情報収集機能、120・・・訪問診療情報収集機能、130・・・補足情報収集機能、140・・・訪問順序決定機能、142・・訪問順序情報、150・・・訪問順序提供機能、160・・・履歴情報保存機能、10・・・リスク情報、12・・・患者モニタリング情報、14・・・患者基本情報、16・・・類似症例情報、20・・・訪問診療情報、22・・・医療従事者情報、24・・・訪問情報、26・・・医療行為情報、30・・・補足情報、32・・・交通情報、34・・・天候・地域情報、36・・・受入病院情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7