(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133021
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】マグネシウム空気電池のセル構造
(51)【国際特許分類】
H01M 12/06 20060101AFI20230914BHJP
H01M 4/46 20060101ALI20230914BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20230914BHJP
H01M 50/202 20210101ALI20230914BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20230914BHJP
H01M 50/247 20210101ALN20230914BHJP
【FI】
H01M12/06 J
H01M4/46
H01M4/06 Q
H01M12/06 A
H01M12/06 D
H01M12/06 F
H01M50/202 301
H01M50/284
H01M50/247
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038681
(22)【出願日】2022-03-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】515203860
【氏名又は名称】株式会社ドリームエンジン
(74)【代理人】
【識別番号】100147326
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 純一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 茂幸
【テーマコード(参考)】
5H032
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H032AA02
5H032AS02
5H032BB01
5H032CC12
5H032CC13
5H032EE01
5H032EE04
5H040AA01
5H040AS12
5H040DD14
5H040DD22
5H040JJ03
5H040NN03
5H050AA02
5H050BA02
5H050CA12
5H050CB11
5H050FA10
5H050GA04
5H050GA07
(57)【要約】
【課題】
マグネシウム空気電池は発電すると内部に電池反応生成物が堆積して発電効率が落ちる。これを解消して発電効率が良く小型で軽量なパーソナル非常用携帯充電器を提供する。
【解決手段】
板状の負極板を中央に配置し負極板両面の上部は水に漬けない反応エリア部を設け、負極板の両面下部には水に漬ける給水エリアを設け、該給水エリア部には発電による反応物落下物集積用開口穴を設けると共に電池セルを両側から締結する
正極支持枠を樹脂リベットで電池セルを締結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム又はマグネシウム合金を含む板状の負極板を中央に配置し、
該負極板の上部には負極板に接続された負極端子を有しており、
該負極板の両面の上部は水に直接漬けない反応エリア部を設け負極板の両面の下部には水に漬ける給水エリア部を設け、
該負極板の給水エリア部には負極板の板厚を貫通する反応物落下開口穴が穿たれており、
該負極板の反応エリア部、給水エリア部に当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置し、
該セパレータの両外側面の反応エリア部にカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートまたは導電性メッシュからなる正極シートを夫々当接し、
該正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを構成し、
該マグネシウム空気電池セルの両側端部を複数の樹脂リベット、樹脂ネジ等の係止手段にて締結一体化したことを特徴とするマグネシウム空気電池のセル構造。
【請求項2】
前記正極シートの両外側面から正極シートに当接される正極支持枠の形状は四本鍬のような形状を有して反応エリア部の上端縁部支持片と両側端部支持片を有し、
該上端縁部支持片の中央部には前記上端縁部支持片から下部に向かって延伸する少なくとも一本以上のサポート支持片を有し、
前記上端縁部支持片は負極板、両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持して二本の樹脂リベット、樹脂ネジ等の係止手段で締結され、
前記両端部支持片は両端部支持片の下部において負極板、両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持して二本の樹脂リベット、樹脂ネジ等の係止手段で締結され、
前記サポート支持片は両面の上端縁部支持片から下部に向かって延伸する片持ち支持形状で負極板、両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持して
いることを特徴とする請求項1に記載されたマグネシウム空気電池のセル構造。
【請求項3】
前記負極板の上部両面には水に直接つけない反応エリア部を設け、
該負極板の両面下部には給水槽に浸して直接水に漬ける給水エリア部を設け、
該負極板の反応エリア部、給水エリア部に当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置し、
該負極板反応エリア部の全面にセパレータを介してカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートまたは導電性メッシュからなる正極シートを夫々当接し、
該正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを構成し、
該マグネシウム空気電池セルの両側端部を複数の樹脂リベット、樹脂ネジ等係止手段にて締結一体化したことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載されたマグネシウム空気電池のセル構造。
【請求項4】
前記負極板の上部両面には水に直接つけない反応エリア部を設け、
該負極板の両面下部には給水槽に浸して直接水に漬ける給水エリア部を設け、
該負極板の反応エリア部、給水エリア部に当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置し、
該負極板反応エリア部全面にセパレータを介してカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートまたは導電性メッシュからなる正極シートを夫々当接し、
該正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを構成し、
該マグネシウム空気電池セルの発電容量を増やす際にはマグネシウム空気電池セルの横幅全体を大きくすることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載されたマグネシウム空気電池のセル構造。
【請求項5】
前記負極端子と正極端子を上部に突出して設けたマグネシウム空気電池セルは電池ケースに配置する際に配線基板上に配置したピンコネクタに挿着して上部を支承し、
該マグネシウム空気電池セルの下端に位置する負極板とセパレータからなる給水エリア部では電池ケースの底辺部にスリット形状の差し込み穴を設けて挿着して前記マグネシウム空気電池セルを支承していること特徴とする請求項1乃至請求項4に記載されたマグネシウム空気電池のセル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池として実用的に利用が可能な発電構造を有し、その発電構造は小型で軽量化することができると共に、実用的に耐え得る利用目的で長時間にわたって電流の取り出しが可能なマグネシウム空気電池のセル構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム空気電池を実用的に利用し、活用する流れは、例えば、特許第6587306号、特許公報(以下、特許文献1と称する)に開示されている。特許文献1において開示されたマグネシウム空気電池の実用的な利用、活用に関する展開例としは、災害時の大容量非常用電源としてのマグネシウム空気電池の開発があり、家庭ではテレビや冷蔵庫、そして電磁調理器や炊飯器などの例をあげ、これらの家電用に100Wから1kWの電源が必要であり、また電気自動車への実用化として、100kWhの二次電池を搭載した自動車の場合を想定して、30分で充電を完了するには200kWの電源が必要となるとしてマグネシウム空気電池の開発を行っている。然しながら、大容量の電池出力等を求める引用文献1の発明では、複数枚の空気電池セルを内蔵したマグネシウム空気電池ボックスを幾つも連結した構造や、空気電池ボックスを数段にも重ね合わせた構造にする必要があり、体積が大きくて、大重量のマグネシウム空気電池構造となってしまう欠点が生じ、なかなか災害時用の空気電池ボックスとして、保管や輸送、そして設置場所等を考えた場合に、実用化に供する発電量を確保して、大きさ及び重量を最適化するマグネシウム空気電池とは成り得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のマグネシウム空気電池のセル構造は、モバイルバッテリー用の充電器に用途を限定して実用化することにより非常用電源として薄型で軽量化の要望を満たして、実用的に利用できて、活用可能なマグネシウム空気電池セルを提供するものである。本発明において、マグネシウム空気電池を構成する空気電池セルは、モバイルバッテリー用の充電器として少量の水(食塩水)があればどこでも発電することが可能であり、また、本発明のマグネシウム空気電池セルの集合体は、非常時等のモバイルバッテリー用の充電器として小型で軽量ながら長時間にわたり安定した電流をモバイルバッテリーに供給可能でより実用的な非常用のマグネシウム空気電池セルを提供することができる。
【0005】
而して、従来のマグネシウム空気電池として非常時に重要となるスマートフォンの充電に適した代表的な商品例を日本マグネシウム協会のホームページより一部抜粋させていただいた。この資料において商品化されているマグネシウム発電機の特徴は、
商品A
出力電圧 5V
出力電流 5.0A(合計)
最大電気量 280Wh
発電時間 最大約2日
出力端子 USB5ポート
サイズ(mm)W212×D147×H213
本体質量 2.0kg
用途、特徴 スマホなどUSBタイプの充電向け、持ち運び可で救援物質にも使えるコンパクトタイプ
商品B
出力電圧 5V
出力電流 1.2A(合計)
最大電気量 300Wh
発電時間 最大約5日
出力端子 USB2ポート
サイズ(mm)W233×D226×H226
本体質量 1.6kg
用途、特徴 スマホなどUSBタイプの充電向け、持ち運び可で救援物質にも使えるコンパクトタイプ
というものである。
【0006】
してみると、従来の商品化されたマグネシウム空気電池は、実用的で活用可能な商品となってはきているものの、開示された商品A、商品Bの本体重量は2.0kg、1.6kgと携帯用非常電源としては、大変重いものである。本発明は、この重量を350g程の本体重量として設計、製作可能にすることで、パーソナルな非常用のモバイルバッテリー充電器用とする。また、上記従来の商品Aのサイズは、幅212mm×奥行147mm×高さ213mm、また、商品Bのサイズでは、幅233mm×奥行226mm×高さ226mmと非常に大きなものであったので、本発明では、これを、約半分の大きさ、即ち、幅100mm×奥行70mm×高さ85mm程度までに縮小することで、個人が携帯用として持ち運びも可能なパーソナル非常用充電器とするものである。そして、本発明の改良されたマグネシウム空気電池セルは、電池筐体内に複数枚内蔵され、このセルを直列に接続することにより、小型で軽量なマグネシウム空気電池として提供するもので、この電池は、15年から20年の長期間にわたり発電をすることなく保管が可能であり、非常時等、必要時には水のみの補給で利用可能な出力電圧と、長く安定した電流をモバイルバッテリーに供給可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマグネシウム空気電池のセル構造は、
マグネシウム又はマグネシウム合金を含む板状の負極板を中央に配置し、
該負極板の上部には負極板に接続された負極端子を有しており、
該負極板の両面の上部は水に直接漬けない反応エリア部を設け負極板の両面の下部には水に漬ける給水エリア部を設け、
該負極板の給水エリア部には負極板の板厚を貫通する反応物落下開口穴が穿たれており、
該負極板の反応エリア部、給水エリア部に当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置し、
該セパレータの両外側面の反応エリア部にカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートまたは導電性メッシュからなる正極シートを夫々当接し、
該正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを構成し、
該マグネシウム空気電池セルの両側端部を複数の樹脂リベット、樹脂ネジ等の係止手段にて締結一体化したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明のマグネシウム空気電池のセル構造において、
前記正極シートの両外側面から正極シートに当接される正極支持枠の形状は、四本鍬のような形状を有して反応エリア部の上端縁部支持片と両側端部支持片を有し、
該上端縁部支持片の中央部には前記上端縁部支持片から下部に向かって延伸する少なくとも一本以上のサポート支持片を有し、
前記上端縁部支持片は負極板、両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持して二本の樹脂リベット、樹脂ネジ等の係止手段で締結され、
前記両端部支持片は両端部支持片の下部において負極板、両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持して二本の樹脂リベット、樹脂ネジ等の係止手段で締結され、
前記サポート支持片は両面の上端縁部支持片から下部に向かって延伸する片持ち支持形状で負極板、両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明のマグネシウム空気電池のセル構造において、
前記負極板の上部両面には、水に直接つけない反応エリア部を設け、
該負極板の両面下部には給水槽に浸して直接水に漬ける給水エリア部を設け、
該負極板の反応エリア部、給水エリア部に当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置し、
該負極板反応エリア部の全面にセパレータを介してカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートまたは導電性メッシュからなる正極シートを夫々当接し、
該正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを構成し、
該マグネシウム空気電池セルの両側端部を複数の樹脂リベット、樹脂ネジ等係止手段にて締結一体化したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のマグネシウム空気電池のセル構造において、
前記負極板の上部両面には、水に直接つけない反応エリア部を設け、
該負極板の両面下部には給水槽に浸して直接水に漬ける給水エリア部を設け、
該負極板の反応エリア部、給水エリア部に当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置し、
該負極板反応エリア部前面にのみにセパレータを介してカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートまたは導電性メッシュからなる正極シートを夫々当接し、
該正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを構成し、
該マグネシウム空気電池セルの発電容量を増やす際にはマグネシウム空気電池セルの横幅全体を大きくすることを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明のマグネシウム空気電池のセル構造において、
前記負極端子と正極端子を上部に突出して設けたマグネシウム空気電池セルは電池ケースに配置する際に配線基板上に配置したピンコネクタに挿着して上部を支承し、
該マグネシウム空気電池セルの下端に位置する負極板とセパレータからなる給水エリア部では電池ケースの底辺部にスリット形状の差し込み穴を設けて挿着して前記マグネシウム空気電池セルを支承していること特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
斯くして、本発明のマグネシウム空気電池のセル構造は、負極板の下部に設けられた給水エリア部を給水槽の水に浸し、給水エリア部を覆っているセパレータが給水槽の水を毛細管現象で反応エリア部まで運びあげて電極の反応エリア部を湿らし、その反応エリア部に正極活性物質である酸素を取り入れて反応エリア部で電気化学反応を起こし発電される仕組みであるが、発電が始まると負極反応エリア面とセパレータ内部側に大量の電池反応生成物が発生する。従って、電池反応生成物を放置すると発電効率を減少するだけでなく発電不可の状態に陥ることもあるため、本発明では、発電によりマグネシウム空気電池セル内部で発生する電池反応生成物を取り除くために前記負極板下部の給水エリア部に反応物落下開口穴を設けており、この反応物落下開口穴に電池反応生成物を落とすことにより、上記反応エリア部内での電池反応生成物の滞留、堆積を防ぎ発電効率を減少させることもなく、長い時間安定した電流を供給可能となる他、負極板に大きな反応物落下穴を穿つことにより負極板の重量を約40パーセント落とすことができ、電池セルの軽量化を促進することができた。
【0013】
そして、本発明の負極板の構造は、負極板の両面上下に反応エリア部と給水エリア部に区分けした構成を有し負極板の反応エリア部は、水に直接浸からないので、吸気口からの正極活性酸素をよく通して電気化学反応が活発に行われるので発電効率が良いマグネシウム空気電池のセル構造を提供することができた。
【0014】
また、本発明における正極シートを構成する金属箔メッシュシートは、開口部の比率が大きくなると金属箔の連通部分が細くなるため、電流が大きくなると電気抵抗が大きくなる。また正極端子が一箇所だけの場合、その付近の金属箔連通部分に正極シート全体の電流が集中するため、集中抵抗も発生する。しかしながら、本発明の正極支持枠は、広い範囲で正極シートの金属箔メッシュシートと接触しているため、金属箔メッシュシートを流れる電流は、直近の正極支持枠の一部を経由して直接、正極端子に流れることができるので、金属箔メッシュシートの導体抵抗や集中抵抗の影響を回避することができ、電池の発電効率を高めることができた。
【0015】
而して、本発明のもう一つの構造的な特徴は、正極シートの両外側面から正極シートに当接される正極支持枠の形状であり、それは、四本鍬のような形状を有して反応エリア部の上端縁部支持片と両側端部支持片を有し、該上端縁部支持片の中央部には前記上端縁部支持片から下部に向かって延伸する少なくても一本以上のサポート支持片を有しているものである。この構成により負極板の反応エリア面とセパレータ内部側に生成される電池反応生成物は、生成の方向が規制されると共に重力により負極板の下部に設けられた反応物落下開口穴に落下し、収集されるので、負極の反応エリア部には電池反応生成物を大量に堆積させず、反応エリア部の膨満化を防ぎ発電出力の低下を招くことなく長い時間安定した電流を供給可能にすることができた。
【0016】
本発明におけるセパレータで覆われた負極板上部の構成は、セパレータの両外側面の反応エリア部全面にセパレータを介してカーボンゴムシートと金属箔メッシュシート等の導電性メッシュからなる正極シートを夫々当接すると共に、前記正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを組み立て、そのマグネシウム空気電池セルの両側端部と上端部を複数の樹脂リベット等の係止構造用いて締結し一体化する構成としている。従って、従来例の如く正極シートやカーボンゴムシート、そして、金属メッシュ等の一体化に接着材を用いて全面接着する方法を使用せず、樹脂リベットによる部分締結を採用して、接着材等の持つ電気抵抗の影響がなく、効率の良い発電が可能となる他、圧縮して挟持することが可能となり薄型のマグネシウム空気電池セルを提供することができた。
【0017】
また、本発明における構成では、負極板の上部両面には水に直接つけない反応エリア部を設け、該負極板の両面下部には給水槽に浸して直接水に漬ける給水エリア部を設け、該負極板の反応エリア部、給水エリア部に当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置し、該負極板反応エリア部前面にのみにセパレータを介してカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートからなる正極シートを夫々当接し、該正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを構成しており、マグネシウム空気電池セルの発電容量を増やす際には、高さを従来通りに規制し、マグネシウム空気電池セルの横幅全体を大きくすることでセパレータの給水高さを向上させることなく発電効率を上げることができ、この構成はマグネシウム空気電池セルを収納する筐体の高さ、奥行寸法を変えることなく、筐体の長さのみの延長で可能であり、この筐体電池の長さのみの延長は電池セルの軽量化に重要な問題を提起しない。
【0018】
そして、本発明における前記セパレータは、不織布等の剛性の低い材料からなるため、単独では変形しやすいが、本発明では、負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆う構造であるため、負極板に支えられており、曲がりや折れのような変形をすることなく、給水槽の底部に向けて延在する姿勢を保つことができ、電池を薄型にするため、給水槽が深くなっても、給水槽の底部まで水を安定して運び上げることができる。
【0019】
更に、本発明のマグネシウム空気電池セルの電池筐体への設置構造は、上部に突出して設けている夫々の電極を電池筐体に配置する際にプリント基板上に配置したコネクタピンに挿着して上部を弾力的に支承しており、該マグネシウム空気電池セルの下端に位置する負極板とセパレータからなる給水エリア部では電池ケースの底辺部にスリット形状の差し込み穴を設けて挿着して前記マグネシウム空気電池セルを支承している。従って、上記負極板とセパレータからなる反応エリア部においては、発電に伴い負極板反応エリア部面とセパレータ内部側が発電に伴う電池反応生成物にて膨満し正極端子の支承位置が動くので、これをプリント基板上に配置したコネクタピン部で許容して支承し、電池ケースの差し込み穴でも下部にてマグネシウム空気電池セルを支持する構造で電極の動きによる接触不良を防止している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のマグネシウム空気電池セルを示す左側断面図である。
【
図3】本発明のマグネシウム空気電池セルを示す正面図である。
【
図4】本発明のマグネシウム空気電池セルと電池ケースの関係を説明するブロック図である。
【
図5】本発明の他の実施例を説明する正面図である。
【
図6】本発明の利用概要を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
斯くして、本発明は、マグネシウム又はマグネシウム合金を含む板状の負極板を中央に配置し、この負極板の上部には負極板に接続された負極端子を有しており、前記負極板の両面の上部は水に直接漬けない反応エリア部と、負極板の両面下部には水に漬ける給水エリア部を設けている。そして、前記負極板の両面下部に設けた給水エリア部には負極板の板厚を貫通する形状の反応物落下開口穴が穿たれている。また、前記負極板の反応エリア部、給水エリア部には、当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置しており、そのセパレータの働きにより負極板の両面の上部は、電池筐体下部の給水槽に給水して発電を始める時において水に直接漬からない反応エリア部となり、負極板の両面下部は給水槽の水に直接漬ける給水エリア部を形成している。そして、前記負極板の全面を覆うセパレータは、高分子ポリマータイプの不織布でNaCl(塩)を水溶液で溶解して含侵させた後に乾燥させたもので、乾燥状態では、正極や正極シートが負極板両面に当接又は圧接されていても電気化学反応をおこさないが、給水槽に給水して発電を始めると水はセパレータを介して前記反応エリア部まで浸透される。
【0022】
前記セパレータで覆われた負極板上部の構成は、セパレータの両外側面の反応エリア部全面にセパレータを介してカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートからなる正極シートを夫々当接すると共に、前記正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを組み立て、そのマグネシウム空気電池セルの両側端部と上端部を複数の樹脂リベットにて締結し一体化することにより負極、正極の接合に従来例の如く接着材等を全面使用せず樹脂リベットによる部分、部分の点の接合を採用して、電極間の接合部分での電気抵抗が低減でき効率の良い発電が可能となる他、圧縮して挟持することが可能となり薄型のマグネシウム空気電池セルを提供している。
【0023】
本発明のマグネシウム空気電池セルの構造は、負極板の下部に設けられた給水エリア部を給水槽の水に浸し、給水エリア部を覆っているセパレータが給水槽の水を毛細管現象で反応エリア部まで運びあげて電極の反応エリア部を湿らす構成であり、前記セパレータは不織布等の剛性の低い材料からなるため、単独では変形しやすいが、本発明では、負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆う構造であるため、負極板に支えられており、曲がりや折れのような変形をすることなく、給水槽の底部に向けて延在する姿勢を保つことができ、電池を薄型にするため、給水槽が深くなっても、給水槽の底部まで水を安定して運び上げることができる。そして、前記セパレータに含侵されたNaClは、給水された水にて溶解して負極板上部に設けられた反応エリア部に浸透し、その反応エリア部において、正極の活性物質である外気からの酸素を取り入れて反応エリア部で電気化学反応を起こし発電を起こす仕組みであるが、発電が始まると負極反応エリア面とセパレータ内部間には電池反応生成物が発生する。而して、電池反応生成物は放置すると堆積し続け、その高さも不均一であるため、負極反応エリア面とセパレータの間に隙間が生じる部分が発生し、その部分の反応は中断されるため、発電効率を減少させる。また反応物の堆積は、酸素の供給も阻害するため、発電効率を減少させるだけでなく発電不可の状態に陥ることもあるため、本発明では、発電によりマグネシウム空気電池内部で発生する電池反応生成物を取り除くために前記負極下部の給水エリア部に設けた反応物落下開口穴に電池反応生成物を落下させて反応エリア部を活性化しながら電気化学反応を促進し、継続している。
【0024】
また、本発明のもう一つの構造的な特徴は、正極シートの両外側面から正極シートに当接され正極シートを押圧支持する正極支持枠の形状であり、それは、四本鍬のような形状を有して反応エリア部の上端縁部支持片と両側端部支持片を有し、該上端縁部支持片の中央部には前記上端縁部支持片から下部に向かって延伸する一本以上のサポート支持片を有していることである。
【0025】
前記正極支持枠の形状において、上端縁部支持片は、内部側より負極板、負極板の両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持して前記二本の樹脂リベットで締結されており、この上端縁部支持片と一体的に構成された両端部支持片は、両端部支持片の下端部において負極板、両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持して前記二本の樹脂リベットで締結されている。また正極シート中央部に位置する前記サポート支持片は、両面の上端縁部支持片から下部に向かって延伸する片持ち支持形状で負極板とその負極板の両面に存在するセパレータ及び正極シートを挟持して前記負極板両面に設けられた反応エリア部を上端及び両端の三方向で挟持している構造を有している。
【0026】
従って、発電に伴う電気化学反応により負極反応エリア面とセパレータ内部側に生成される電池反応生成物は、前記上端縁部支持片、両端部支持片、サポート支持片の挟持、締結により生成の方向が規制されると共に、重力により負極板下部に設けられた反応物落下開口穴に落下するので、負極板の反応エリア部では電池反応生成物の堆積を防ぎ、反応エリア部の膨満化を防ぎ発電出力の低下を招くことなく長い時間安定した電流を供給可能としている。
【0027】
また、正極シートを構成する金属箔メッシュシートは、開口部の比率が大きくなると金属箔の連通部分が細くなるため、電流が大きくなると電気抵抗が大きくなる。また正極端子が1箇所だけの場合、その付近の金属箔連通部分に正極シート全体の電流が集中するため、集中抵抗も発生する。しかしながら、本発明の正極支持枠は、広い範囲で正極シートの金属箔メッシュシートと接触しているため、金属箔メッシュシートを流れる電流は、直近の正極支持枠の一部を経由して直接、正極端子に流れることができるので、金属箔メッシュシートの導体抵抗や集中抵抗の影響を回避することができ、電池の発電効率を高めることができる。
【0028】
更に、本発明は、負極板の上部両面には水に直接つけない反応エリア部を設け、該負極板の両面下部には給水槽に浸して直接水に漬ける給水エリア部を設け、該負極板の反応エリア部、給水エリア部に当接して負極板の両面を包み込み負極板の下端においてU字型に折り返して負極板の全面を覆うセパレータを設置し、該負極板反応エリア部全面にセパレータを介してカーボンゴムシートと金属箔メッシュシートからなる正極シートを夫々当接し、該正極シートの両外側面に夫々正極端子を有した正極支持枠と短絡防止シートを夫々当接してマグネシウム空気電池セルを構成しており、マグネシウム空気電池セルの発電容量を増やす際には、高さを従来通りに規制し、マグネシウム空気電池セルの横幅全体を大きくすることでセパレータの給水高さを向上させることなく発電効率を上げることができ、この構成はマグネシウム空気電池セルを収納する筐体の高さ、奥行寸法を変えることなく、筐体の長さのみを延長すれば出力の向上に繋がるので電池の軽量化に対して重要な問題を提起しない。
【0029】
本発明のマグネシウム空気電池セルの構造は、負極端子と正極端子を上部に突出して設けたマグネシウム空気電池セルは電池ケースに配置する際にプリント基板上に配置したピンコネクタに挿着して上部を弾力的に支承され、該マグネシウム空気電池セルの下端に位置する負極板とセパレータからなる給水エリア部では電池ケースの底辺部にスリット形状の差し込み穴(スリット孔)を設けて挿着して前記マグネシウム空気電池セルを支承している。
【0030】
従って、上記負極板とセパレータからなる反応エリア部においては、発電に伴い負極板反応エリア部面とセパレータ内部側が膨満し負極端子と正極端子の位置が動くので、これをプリント基板上に配置したピンコネクタで許容して支承し、電池ケースの差し込み穴でも下部を支持して、負極端子と正極端子の動きを固定した支持構造で支え電極の動きによる接触不良の発生を防止している。
【実施例0031】
図1乃至
図3は本発明のマグネシウム空気電池セル構造の説明図であり、
図4は本発明のマグネシウム空気電池セルと電池ケースの関係を説明するブロック図、
図5は他の実施例を示すセル正面図、
図6は本発明の利用概要を説明するブロック図を示している。
図1乃至
図6において、同一記号は同一構成要素を示しており、1はマグネシウム空気電池セル、2はマグネシウム又はマグネシウム合金からなる負極板であり、負極板2の上部には負極板2に接続された負極端子3が設けられている。この負極板2の垂直方向上部両面には反応エリア部4が下部両面には給水エリア部5が設けられており、前記給水エリア5には負極板2の板厚を貫通する形で反応物落下開口穴6が穿たれている。また、反応エリア部4と給水エリア部5を有する負極板2には、反応エリア部4、給水エリア部5に当接して負極板2の両面を包み込み負極板2の下端においてU字型に折り返して負極板2の全面を覆うセパレータ7を設置している。尚、反応物落下開口穴6を大きく穿つことにより電池セルの負極板の重量は40パーセント程落とすことができ電池セルの軽量化に貢献している。
【0032】
而して、上記セパレータ7は、通常、給水力が高い高分子タイプの不織布が用いられており、このセパレータ7の両外側面に通気性のあるカーボンゴムシート8(
図2に示す)と金属箔メッシュシート9(
図2、3に示す)から構成された正極シート10を夫々当接して、その正極シート10の両外側面に夫々、正極及び正極端子11を有した正極支持枠12と耐油紙から成る短絡防止シート13を当接して、これらのマグネシウム空気電池のセル1を前記正極支持枠12部分で4本の樹脂リベット14a、14b、14c、14dにて締結している。また、正極支持枠12は、その形状に特徴があり、
図3に示す如く四本鍬形状を有しており、正極支持枠12は、上端縁部支持片15と両側端部支持片16a、16bを有し、該上端縁部支持片15の中央部には前記上端縁部支持片15から下部に向かって延伸する二本のサポート支持片17a、17bを有していることである。
尚、サポート支持片の数量は、反応エリア部4の幅に応じて適宜、増減しても良い。
【0033】
また、
図4は、マグネシウム空気電池セル1を電池筐体18内に装着し、下部の給水槽19に水20を給水して発電状態を説明するブロック図であり、電池筐体18の外壁部には電池内に酸素を送り込むための給気口21a、21b、21c・・・が複数開けられおり、電池筐体18の上部には電流取り出し用の配線基板22が設置されており、負極板2及び正極端子11が夫々のピンコネクタ23a、23b、23cに挿着されて電気的に接続されている。本発明のマグネシウム空気電池セル1は、上部をピンコネクタ23a、23bb、23cにより弾力的に支承され、下部において電池筐体18と給水槽19間に穿たれたスリット孔24に嵌着され電池筐体18内に収納されている。
【0034】
而して、本発明の実施例1を
図1乃至
図4にて説明する。
図1乃至
図4において、マグネシウム又はマグネシウム合金を含む板状の負極板2は中央に配置され、この負極板2の上部には負極板2に接続された負極端子3を有しており、前記負極板2の両面の上部は水に直接漬けない反応エリア部4と、負極板2の両面下部には水に漬ける給水エリア部5を設けている。そして、前記負極板2の給水エリア部4には負極板2の板厚を貫通する反応物落下開口穴6が穿たれている。
【0035】
前記負極板2の反応エリア部4、給水エリア部5には、当接して負極板2の両面を包み込み負極板2の下端においてU字型に折り返して負極板2の全面を覆うセパレータ7を設置しており、そのセパレータ7の働きにより負極板2の両面の上部は、発電時においても水に直接漬からない反応エリア部4となり、負極板2の両面下部は給水槽19の水に直接漬ける給水エリア部5を形成している(
図4に示す)。そして、前記負極板2の全面を覆うセパレータ7は、高分子ポリマータイプの不織布でNaCl(塩)を水溶液で溶解して含侵させた後に乾燥させたもので、乾燥状態では、セパレータ7が負極板2両面に当接又は圧接されていても電気化学反応をおこさないので、長期間にわたりマグネシウム空気電池セル1を保存できる。また、前記セパレータ7は不織布等の剛性の低い材料からなるため、単独では変形しやすいが、本発明では、負極板2の両面を包み込み負極板2の下端においてU字型に折り返して負極板2の全面を覆う構造であるため、負極板2に支えられており、曲がりや折れのような変形をすることなく、給水槽19の底部に向けて延在する姿勢を保つことができ、電池を薄型にするため、給水槽19が深くなっても、給水槽の底部まで水を安定して運び上げることができる。
【0036】
また、セパレータ7で覆われた負極板2上部の構成は、セパレータ7の両外側面の反応エリア部4前面にセパレータ7を介してカーボンゴムシート8と金属箔メッシュシート9からなる正極シート10を夫々当接すると共に、前記正極シート10の両外側面に夫々正極及び正極端子11を有した正極支持枠12と短絡防止シート13を夫々当接してマグネシウム空気電池セル1を組み立て、そのマグネシウム空気電池セル1の両側端部と上端部を複数の樹脂リベット14a、14b、14c、14dにて締結し一体化することにより負極、正極の接合に従来例の如く接着材等を使用せず樹脂リベット14a、14b、14c、14dによる部分、部分の点の接合を採用することで電極間の接合部分での電気抵抗が低減でき効率の良い発電が可能となる他、負極板2,セパレータ7,正極シート10,正極支持枠12を密着させることができ、電池として反応が効率よく薄型のマグネシウム空気電池セルを提供できる。
而して、本発明のもう一つの構造的な特徴は、正極シート10の両外側面から正極シート10に当接される正極支持枠12の形状であり、それは、四本鋤のような形状を有して反応エリア部4の上端縁部支持片15と両側端部支持片16a、16bを有し、該上端縁部支持片15の中央部には前記上端縁部支持片15から下部に向かって延伸する二本のサポート支持片17a、17bを有していることである。
前記上端縁部支持片15は、内部側より負極板2、負極板2の両面に存在するセパレータ7及び正極シート10を挟持して前記二本の樹脂リベット14a、14cで締結されており、この上端縁部支持片15と一体的に構成された両端部支持片16a、16bは、両端部支持片16a、16bの下端部において負極板2、両面に存在するセパレータ7及び正極シート10を挟持して二本の樹脂リベット14b、14dで締結されている。また正極シート10中央部に位置する前記二本のサポート支持片17a、17bは、両面の上端縁部支持片15から下部に向かって延伸する片持ち支持形状で負極板2とその負極板2の両面に存在するセパレータ7及び正極シート10を挟持している構造を有している。
また、正極シート10を構成する金属箔メッシュシート9は、開口部の比率が大きくなると金属箔の連通部分が細くなるため、電流が大きくなると電気抵抗が大きくなる。また正極端子が1箇所だけの場合、その付近の金属箔連通部分に正極シート全体の電流が集中するため、集中抵抗も発生する。しかしながら、本発明の正極支持枠12は、広い範囲で正極シート10の金属箔メッシュシート9と接触しているため、金属箔メッシュシート9を流れる電流は、直近の正極支持枠12の一部を経由して直接、正極端子11に流れることができるので、金属箔メッシュシート9の導体抵抗や集中抵抗の影響を回避することができ、電池の発電効率を高めることができる。