(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133054
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079372
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2022037368
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 明輝
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS01
5H730BB26
5H730BB66
5H730BB70
5H730BB83
5H730BB89
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE06
5H730EE07
5H730EE13
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】相補ゲートドライブ信号を増やすことなく、共振回路を並列化して大電力化を実現できるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】回路要素10aは、共振回路が並列化されている。並列化されたq番目の共振回路の共振コンデンサCrk
qは、一端が共振リアクトルLr
q、トランスTr
qの1次巻線N1
qに直列に接続されている。並列化されたq番目の共振回路の共振コンデンサCrk
qは、他端がPk個の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10aにおける並列化されたq番目の前記共振回路の共振コンデンサCrk
qに接続されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の両端に直列に接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との接続点に一端が接続された共振リアクトル、トランスの1次巻線、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ~第n次共振コンデンサ、をそれぞれが含む、並列化されたm個(mは2以上の自然数)の共振回路と、を有するハーフブリッジLLCコンバータを回路要素として複数個備え、
並列化されたq番目(qは1~mの自然数)の前記共振回路の第k次共振コンデンサ(kは1~nの自然数)は、一端が前記共振リアクトル、前記トランスの1次巻線に直列に接続されて、他端がPk個(Pkは任意の自然数)の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素における並列化されたq番目の前記共振回路の第k次共振コンデンサに接続されているスイッチング電源装置。
【請求項2】
直流電源の両端に直列に接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子と、
前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との接続点に一端が接続された共振リアクトルと、
前記共振リアクトルの他端に接続された、トランスの1次巻線、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ~第n次共振コンデンサ、をそれぞれが含む、並列化されたm個(mは2以上の自然数)の共振回路と、を有するハーフブリッジLLCコンバータを回路要素として複数個備え、
並列化されたq番目(qは1~mの自然数)の前記共振回路の第k次共振コンデンサ(kは1~nの自然数)は、一端が前記共振リアクトル、前記トランスの1次巻線に直列に接続されて、他端がPk個(Pkは任意の自然数)の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素における並列化されたq番目の前記共振回路の第k次共振コンデンサに接続されているスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記回路要素の総数は、各次元に含まれる相数の積である請求項1又は請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記共振回路の総数は、各次元に含まれる相数の積と、並列数m(mは2以上の自然数)との積である請求項3記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列接続された複数のLLCコンバータを用いて入力電圧を出力電圧に変換するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、出力負荷の増大に伴って大電流化や低リップル化を実現するために、動作フェーズ数(相数)を複数にし、位相をずらして各動作フェーズを駆動するマルチフェーズ型のスイッチング電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、相数が増えるほど、用意する相補スイッチの相補ゲートドライブ信号も増加する。従って、相数の増加に伴う制御も複雑となり、制御に関わる回路が大規模化するなど、多相化による電力拡張は容易にできなかった。
【0005】
本発明の一態様は、相補ゲートドライブ信号を増やすことなく、共振回路を並列化して大電力化を実現できるスイッチング電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るスイッチング電源装置は、共振回路が並列化されているハーフブリッジLLCコンバータを回路要素として複数個備える。回路要素は、直流電源の両端に直列に接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子と、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との接続点に一端が接続された共振リアクトル、トランスの1次巻線、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ~第n次共振コンデンサ、をそれぞれが含む、並列化されたm個(mは2以上の自然数)の共振回路と、を有する。並列化されたq番目(qは1~mの自然数)の前記共振回路の第k次共振コンデンサ(kは1~nの自然数)は、一端が前記共振リアクトル、前記トランスの1次巻線に直列に接続されて、他端がPk個(Pkは任意の自然数)の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素における並列化されたq番目の前記共振回路の第k次共振コンデンサに接続されている。
また、本発明の一態様に係るスイッチング電源装置は、共振回路(共振リアクトルを除く回路部分)が並列化されているハーフブリッジLLCコンバータを回路要素として複数個備える。回路要素は、直流電源の両端に直列に接続された第1スイッチ素子及び第2スイッチ素子と、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との接続点に一端が接続された共振リアクトルと、前記共振リアクトルの他端に接続された、トランスの1次巻線、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ~第n次共振コンデンサ、をそれぞれが含む、並列化されたm個(mは2以上の自然数)の共振回路と、を有する。並列化されたq番目(qは1~mの自然数)の前記共振回路の第k次共振コンデンサ(kは1~nの自然数)は、一端が前記共振リアクトル、前記トランスの1次巻線に直列に接続されて、他端がPk個(Pkは任意の自然数)の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素における並列化されたq番目の前記共振回路の第k次共振コンデンサに接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、相補ゲートドライブ信号を回路要素の総数よりも少なくでき、相補ゲートドライブ信号を増やすことなく、共振回路を並列化して大電力化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】スイッチング電源装置の実施の形態の回路構成を示す図である。
【
図2】
図1に示すスイッチング電源装置の動作を制御する回路を説明する図である。
【
図3】スイッチング電源装置の多次元化(1~3次元)を説明する図である。
【
図4】スイッチング電源装置の多次元化(4~6次元)を説明する図である。
【
図5】スイッチング電源装置のさらなる多次元化を説明する図である。
【
図10】スイッチング電源装置の並列・多次元化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0010】
本実施の形態のスイッチング電源装置1は、
図1を参照すると、複数(Σ)個のハーフブリッジLLCコンバータ(以下、回路要素10と称す)を備える。スイッチング電源装置1は、1~n次元のそれぞれがマルチフェーズLLCコンバータとして構成されている。すなわち、スイッチング電源装置1は、多相多重LLCコンバータである。ここで、nは、2以上の自然数であり、2次元以上のマルチフェーズLLCコンバータから構成されるスイッチング電源装置1を以下説明する。
【0011】
回路要素10は、直流電源Vinの正極に接続される高電位入力端子Tin
+と、直流電源Vinの負極に接続される低電位入力端子Tin
-との間に直列に接続された第1スイッチ素子QH及び第2スイッチ素子QLを備える。
回路要素10は、第1スイッチ素子QHと第2スイッチ素子QLとの接続点に一端が接続された共振リアクトルLr、トランスTrの1次巻線N1、及び、n+1個の共振コンデンサCr0~Crnを含む、共振回路を備える。
回路要素10は、トランスTrの2次巻線N2の電圧を整流平滑する同期整流素子SR1、SR2、及び、出力コンデンサCoutを含む、整流平滑回路を備える。
図1では、実線枠内(モジュールに相当)に、回路要素10の主回路のみを記している。整流平滑回路は、センタータップ整流、ブリッジ整流、倍電圧整流、コックウォルトン整流などの整流方式を採用できる。
【0012】
高電位入力端子Tin+と低電位入力端子Tin-との間には、入力コンデンサCinが接続され、出力コンデンサCoutの両端が高電位出力端子Vout+と低電位出力端子Vout-に接続されている。
【0013】
共振コンデンサCr0は、一端が共振リアクトルLr、トランスTrの1次巻線N1に直列に接続され、他端が低電位入力端子Tin-に接続されている。
【0014】
共振コンデンサCr1~Crnは、一端がいずれも共振リアクトルLr、トランスTrの1次巻線N1に直列に接続され、他端がそれぞれバイパス端子T1~Tnに接続されている。k番目(kは1~nの自然数)の共振コンデンサCrkの他端(バイパス端子Tk)は、Pk個(Pkは任意の自然数)の回路要素10により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10のk番目の共振コンデンサCrkの他端(バイパス端子Tk)に接続されている。本明細書では、次元の直交性は問わずに、バイパス端子T1~Tnのn個の相互接続点をそれぞれk次元と称している。
【0015】
回路要素10の総数Σは、k次元のそれぞれの相数であるPkを用いて、以下の式(1)で表される。
【0016】
【0017】
スイッチング電源装置1は、
図2(a)を参照すると、制御回路20と、選択信号生成回路30とを備えている。制御回路20は、Σ個の回路要素10の第1スイッチ素子QH及び第2スイッチ素子QLを、相補ゲートドライブ信号Gk
Pk(k=1~n)によって交互にオンオフさせる。選択信号生成回路30は、次元選択信号Ykによって次元選択回路42を制御して回路要素10の動作/停止を次元毎に選択すると共に、相選択信号Xk
Pk(k=1~n)によって相選択回路41を制御してΣ個の回路要素10の動作/停止を次元毎・相毎に選択する。
【0018】
1~n次元のそれぞれの相数P1~Pnは、異なっていてもよいが、全て同一にすることで、各次元で同じ相補ゲートドライブ信号GPkを使用することができる。同じ相補ゲートドライブ信号GPkの使用により、制御に関わる回路が大規模化することなく、多相化によって電力拡張を容易に行うことができる。相数Pkは、2や他の相数Pkの約数であっても、同様に他の次元の相補ゲートドライブ信号GPk(1~n)を使用できる。
【0019】
例えば、1~n次元のそれぞれの相数P1~Pnを全て3にした場合、
図2(b)に示すように、制御回路20が生成する相補ゲートドライブ信号は、G
1、G
2、G
3の3個、選択信号生成回路30が生成する相選択信号もX
1、X
2、X
3の3個である。
【0020】
共振コンデンサCr1のみを有する3個の回路要素10で構成する1次元三相LLCコンバータは、各回路要素10において360°/3ずつ位相が異なる。
図3(a)は、それら回路要素10を三種類の濃度の異なるキューブ(Cube)で表現し、共振コンデンサCr1の他端(バイパス端子T1)を相互接続する接続点を三つのキューブを貫通する1本の線で表現している。
【0021】
2次元方向への拡張のためには、二つの共振コンデンサCr1、Cr2を有する回路要素10の一つの共振コンデンサCr1を1次元方向に、もう一つの共振コンデンサCr2を2次元方向に、接続点で位相が重ならないようにそれぞれ接続する。これにより、
図3(b)に示すように、2次元方向に三つの接続点が加わり、6つの相互接続点を有する9個の回路要素10で、2次元三相三重LLCコンバータが構成される。
図3(b)には、2次元方向の接続点のみが示されている。
【0022】
さらに、3次元方向への拡張のためには、三つの共振コンデンサCr1、Cr2、Cr3を持つ回路要素10の二つの共振コンデンサCr1、Cr2をそれぞれ1次元方向、2次元方向に接続し、三つ目の共振コンデンサCr3を3次元方向に、接続点で位相が重ならないように相互接続する。これにより、
図3(c)に示すように、3次元方向に9つの相互接続点が加わり、27個の相互接続点を有する27個の回路要素10で、3次元三相九重LLCコンバータが構成される。
図3(c)には、3次元方向の接続点のみが示されている。
【0023】
このように、スイッチング電源装置1は、ある一つの接続点では多相LLCコンバータになっており、接続点同志で比較すると、多相LLCコンバータが重なって多重LLCコンバータになっている。従って、本実施の形態のスイッチング電源装置は、多相多重LLCコンバータと称することができる。
【0024】
さらに、
図3(b)に示す3次元三相九重LLCコンバータを一つのキューブとして表現すれば、
図4(a)に示すように、4次元を1次元同様に認識することができる。4次元方向への拡張のためには、4つの共振コンデンサCr1、Cr2、Cr3、Cr4を有する回路要素10の三つの共振コンデンサCr1、Cr2、Cr3は、前述のように3次元で接続し、四つ目の共振コンデンサCr4は、4次元方向に接続する。これにより、3次元三相九重LLCコンバータを構成するキューブが三つ、合計81個の回路要素10で、4次元三相二十七重LLCコンバータが構成される。4次元三相二十七重LLCコンバータの接続点は、3次元三相九重LLCコンバータのキューブですでに27個の接続点を内包し、三つあるので81個、さらに4次元方向に27個加わり、合計108個の接続点を有する。
図4(a)には、4次元方向の接続点の一つが示されている。
【0025】
5次元方向に拡張すると、
図4(b)に示すように、405個の相互接続点を有する243個の回路要素10で、5次元三相八十一重LLCコンバータが構成される。
図4(b)には、5次元方向の接続点の一つが示されている。
【0026】
さらに、6次元方向に拡張すると、
図4(c)に示すように、1458個の相互接続点を有する729個の回路要素10で、6次元三相二百四十三重LLCコンバータが構成される。
図4(c)には、6次元方向の接続点の一つが示されている。
【0027】
同様に、6次元に拡張された6次元三相二百四十三重LLCコンバータを一つのキューブで表現して、
図5に示すように、7次元、8次元、9次元として回路数を増やしていくことができる。さらなる高次元化は、3N(Nは自然数)次元で構成される多次元多重LLCコンバータを一つのキューブとして次元軸を加えていくことで実現される。従って、三相LLCコンバータをn次元化すると、n次元三相3
n-1重LLCコンバータとなる。このように、相補ゲートドライブ信号を3相から増やすことなく、大電力化を実現できる。
【0028】
このようにスイッチング電源装置1は、3次元直交軸を重ねて得られる多次元で、フラクタル構造を持つ。3次元以上に拡張しても、回路要素10の総数Σに応じて、従来のマルチフェーズ方式のように位相差を360°/Σとする必要はない。Σ個の位相差を作る相補ゲートドライブ信号生成回路を用意する必要はないため、制御に関わる回路の大規模化が抑止される。特に、各次元の相数Pkを同一にした場合、ある接続点に対して位相差360°/Pkを持つマルチフェーズLLCコンバータを構成することで、Pk個の相補ゲートドライブ信号を生成する回路を用い、電流バランスを行いつつ回路数を増やして電力を増やすことができる。
本実施の形態のスイッチング電源装置1は、限られたサイズのパッケージに半導体と磁気部品がミックスされた集積回路として(例えば、電源IC、又はシステム・オン・チップ(SoC)として)構成することができる。簡略化された例として、出力電力1kW(キロワット)のスイッチング電源装置1を、100Wの電力を出力する10個の回路要素10をつないで実現できる。Micro Electro Mechanical System(MEMS)に、集積回路で構成された多相多重コンバータを適用してもよい。
【0029】
スイッチング電源装置1の回路要素10は、他端が低電位入力端子Tin-に接続された共振コンデンサCr0以外に、n個に分割された共振コンデンサCr1~Crnを有する。k番目(1~n)の共振コンデンサCrkの他端(バイパス端子Tk)は、Pk個の回路要素10により位相差360°/PkであるマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10のk番目の共振コンデンサCrkの他端(バイパス端子Tk)に接続されている。この場合、スイッチング電源装置1を構成する回路要素10の総数Σは、上記の式(1)で表され、共振コンデンサCr1~Crnによる相互接続点の総数Σcは、以下の式(2)で表される。
【0030】
【0031】
スイッチング電源装置1のΣ個の回路要素10の全てが動作するときの共振周波数ωrは、以下の
式(3)で表される。
【0032】
【0033】
共振コンデンサCr0~Crnの容量が等しい場合の共振周波数ωrは、以下の
式(4)で表される。
【0034】
【0035】
回路要素10の総数Σと相互接続点が一致するのは、式(1),(2)より以下の式(5)で示す条件となる。
【0036】
【0037】
特に、回路要素10を
図1に示すようにモジュール化する際に、回路要素10の総数Σと接続点を1:1に限定できる。
【0038】
回路要素10は、共振コンデンサCr0があることで、軽負荷時(出力電力が小さい時)に単相動作させることができる。しかし、単相動作の必要がない場合、共振コンデンサCr0は、省略してもよい。共振コンデンサCr0を省略することで、離れて設置されたLLCコンバータのグランド電位が異なっていても、各LLCコンバータ間の電流バランスが取りやすくなる。
【0039】
共振コンデンサCr0を省略した場合、スイッチング電源装置1のΣ個の回路要素10の全てが動作するときの共振周波数ωrは、以下の式(6)で表される。
【0040】
【0041】
また、共振コンデンサCr1~Crnの容量が等しい場合の共振周波数ωrは、以下の式(7)で表される。
【0042】
【0043】
図6は、第1スイッチ素子QH及び第2スイッチ素子QL以外の構成をm個並列化してモジュール化した回路要素10aである。
図6では、実線枠内(モジュールに相当)に、回路要素10aの主回路のみを記している。
【0044】
回路要素10aは、第1スイッチ素子QHと第2スイッチ素子QLとの接続点に一端が接続された共振リアクトルLr1~Lrmを備える。ここで、mは、2以上の自然数である。
回路要素10aは、共振リアクトルLrq(qは1~mの自然数)、トランスTrqの1次巻線N1q、及び、n+1個の共振コンデンサCr0q~Crnqを含む、m個の共振回路を備える。
回路要素10aは、トランスTrqの2次巻線N2qの電圧を整流平滑する同期整流素子SR1q、SR2q、及び、出力コンデンサCoutqを含む、m個の整流平滑回路を備える。整流平滑回路は、センタータップ整流、ブリッジ整流、倍電圧整流、コックウォルトン整流などの整流方式を採用できる。
【0045】
共振コンデンサCr0qは、一端が共振リアクトルLrq、トランスTrqの1次巻線N1qに直列に接続され、他端が低電位入力端子Tin-に接続されている。
【0046】
共振コンデンサCr1q~Crnqは、一端がいずれも共振リアクトルLrq、トランスTrqの1次巻線N1qに直列に接続され、他端がそれぞれバイパス端子T1q~Tnqに接続されている。k番目(kは1~nの自然数)の共振コンデンサCrkqの他端(バイパス端子Tkq)は、Pk個(Pkは任意の自然数)の回路要素10aにより位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10のk番目の共振コンデンサCrkqの他端(バイパス端子Tkq)に接続される。
【0047】
単相動作の必要がない場合、回路要素10aの共振コンデンサCr0
1~Cr0
mは、省略してもよい。
図7は、回路要素10aから共振コンデンサCr0
1~Cr0
mを省略した回路要素10bである。
【0048】
回路要素10a、10bは、m個の共振回路によって、電力拡大されることになる。ここで、共振リアクトルLr1~Lrmを同一容量Lrとし、流れる電流をiとすると、共振リアクトルLrqの磁束Φは、以下の式(8)で表される。
【0049】
【0050】
図8及び
図9は、共振リアクトルLr
1~Lr
mを、参照符号“Lr/m”で表される1個の共振リアクトルにまとめた回路要素10c及び回路要素10dである。共振リアクトルLr
1~Lr
mを同一容量Lrとしたとき、共振リアクトル“Lr/m”の容量は、前述のLrの1/mである。回路要素10cは、
図6に示す回路要素10aの共振リアクトルLr
1~Lr
mを1個の共振リアクトル“Lr/m”にまとめている。回路要素10dは、
図7に示す回路要素10bの共振リアクトルLr
1~Lr
mを共振リアクトル“Lr/m”にまとめている。
【0051】
共振リアクトル“Lr/m”を流れる電流は、共振リアクトルLr1~Lrmを流れる電流iの合計であるため、miである。従って、共振リアクトル“Lr/m”の共振リアクトルの磁束Φは、以下の式(9)で表され、式(8)で求められる磁束Φと同じとなる。
【0052】
【0053】
すなわち、回路要素10c及び回路要素10dの単位での共振リアクトルは、回路要素10の共振リアクトルLrと同じである。従って、回路要素10cで構成したスイッチング電源装置1において、Σ個の回路要素10cの全てが動作するときの共振周波数ωrは、上記の式(3)、(4)と同じである。回路要素10dで構成したスイッチング電源装置1において、Σ個の回路要素10dの全てが動作するときの共振周波数ωrは、上記の式(6)、(7)と同じである。
【0054】
このように、回路要素10a、10bのm個の共振リアクトルLr1~Lrmは、共振コンデンサCr01~Cr0mの有無に拘わらず、回路要素10c、10dのように、1個の共振リアクトル“Lr/m”に集約できる。回路要素10c、10dの共振リアクトル“Lr/m”の容量は、回路要素10の共振リアクトルLrの容量の1/mでよい。従って、回路要素10c、10dで構成したスイッチング電源装置1は、回路要素10で構成した同一次元数のスイッチング電源装置1に対して、共振リアクトルの合計サイズを1/mにでき、合計重量も1/mにできる。すなわち、電力拡大にあたり、スイッチング電源装置1は、並列化するほど共振リアクトルLrを小さくでき、多次元化するほど共振コンデンサCrを小さくできる。電力が規定されている場合、スイッチング電源装置1は、並列化するほどトランスTr1~Tmを小さくでき、集積化に適し、部品サイズを小さくできる。
【0055】
図10は、回路要素10a~10dの各共振回路をキューブで表現し、位相の異なるキューブを三種類の異なる濃度で表した、並列化の個数がmである2次元三相三重LLCコンバータである。
図10を参照すると、回路要素10a~10dにおける共振回路の並列化は、次元数を1つ増やすことと同義であることが分かる。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態は、共振回路が並列化されているハーフブリッジLLCコンバータを回路要素10a、10bとして複数個(Σ個)備えている。回路要素10a、10bは、直流電源Vinの正極と負極との間に直列に接続された第1スイッチ素子QH及び第2スイッチ素子QLと、第1スイッチ素子QHと前記第2スイッチ素子QLとの接続点に一端が接続された共振リアクトルLr、トランスTrの1次巻線N1、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ(共振コンデンサCr1)~第n次共振コンデンサ(共振コンデンサCrn)、をそれぞれが含む、並列化されたm個(mは2以上の自然数)の共振回路と、を有する。並列化されたq番目(qは1~mの自然数)の共振回路の共振コンデンサCrkq(kは1~nの自然数)は、一端が共振リアクトルLrq、トランスTrqの1次巻線N1qに直列に接続されている。並列化されたq番目の共振回路の共振コンデンサCrkqは、他端がPk個(Pkは任意の自然数)の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10a、10bにおける並列化されたq番目の前記共振回路の共振コンデンサCrkqに接続されている。
この構成により、本実施の形態は、相補ゲートドライブ信号を回路要素10a、10bの総数Σよりも少なくでき、相補ゲートドライブ信号を増やすことがない。本実施の形態は、共振回路を並列化することで、回路要素10a、10bの大電力化を実現できる。本実施の形態は、回路要素10の総数Σを増やし、各回路要素10間の電流バランスを取って大電力化を実現できる。
【0057】
また、本実施の形態の回路要素10c、10dは、共振回路(共振リアクトル“Lr/m”を除く回路部分)が並列化されているハーフブリッジLLCコンバータを回路要素10a、10bとして複数個(Σ個)備えている。回路要素10c、10dは、直流電源Vinの正極と負極との間に直列に接続された第1スイッチ素子QH及び第2スイッチ素子QLと、第1スイッチ素子QHと前記第2スイッチ素子QLとの接続点に一端が接続された共振リアクトル“Lr/m”と、共振リアクトル“Lr/m”の他端に接続された、トランスTrの1次巻線N1、及び、n個(nは2以上の自然数)の第1次共振コンデンサ(共振コンデンサCr1)~第n次共振コンデンサ(共振コンデンサCrn)、をそれぞれが含む、並列化されたm個(mは2以上の自然数)の共振回路と、を有する。並列化されたq番目(qは1~mの自然数)の共振回路の共振コンデンサCrkq(kは1~nの自然数)は、一端が共振リアクトルLrq、トランスTrqの1次巻線N1qに直列に接続されている。並列化されたq番目の共振回路の共振コンデンサCrkqは、他端がPk個(Pkは任意の自然数)の回路要素により位相差360°/Pkであるk次元のマルチフェーズLLCコンバータを構成するように他の回路要素10a、10bにおける並列化されたq番目の前記共振回路の共振コンデンサCrkqに接続されている。
この構成により、回路要素10c、10dで構成したスイッチング電源装置1は、回路要素10で構成した同一次元数のスイッチング電源装置1に対して、共振リアクトルの合計サイズを1/mにでき、合計重量も1/mにできる。すなわち、電力拡大にあたり、スイッチング電源装置1は、並列化するほど共振リアクトルLrを小さくでき、多次元化するほど共振コンデンサCrを小さくできる。
【0058】
さらに、本実施の形態によれば、回路要素10a~10dの総数Σは、各次元に含まれる相数の積(Σ=P1×P2×・・・×Pn)である。
この構成により、次元を増加させて回路要素0a~10dの総数Σを指数的に増加させることができ、大電力化に対応することができる。
【0059】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
上記実施形態では、各回路要素10に共振リアクトルLrを物理的に設けたが、代替的に共振リアクトルLrは、トランスの漏れインダクタンスを利用したものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 スイッチング電源装置
10、10a、10b、10c、10d 回路要素(ハーフブリッジLLCコンバータ)
20 制御回路
30 選択信号生成回路
41 相選択回路
42 次元選択回路
Cin 入力コンデンサ
Cout 出力コンデンサ
Cr0~Crn 共振コンデンサ
Lr 共振リアクトル
N1 1次巻線
N2 2次巻線
QH 第1スイッチ素子
QL 第2スイッチ素子
SR1、SR2 同期整流素子
Tr トランス
T1~Tn バイパス端子
Tin+ 高電位入力端子
Tin- 低電位入力端子
Vout+ 高電位出力端子
Vout- 低電位出力端子
Vin 直流電源