(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133073
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】イソフラボンペプチド複合体、調製方法及びその応用、並びにイソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒
(51)【国際特許分類】
C07K 1/02 20060101AFI20230914BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20230914BHJP
C07K 1/12 20060101ALI20230914BHJP
C07K 14/415 20060101ALI20230914BHJP
C12G 3/022 20190101ALI20230914BHJP
【FI】
C07K1/02
A23J3/16
C07K1/12
C07K14/415
C12G3/022
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127568
(22)【出願日】2022-08-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】202210242756.1
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518379337
【氏名又は名称】嶺南師範学院
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】楊娟
(72)【発明者】
【氏名】李叶龍
(72)【発明者】
【氏名】金▲ベイ▼
(72)【発明者】
【氏名】韓志萍
(72)【発明者】
【氏名】劉政
(72)【発明者】
【氏名】陳▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】郭春芬
(72)【発明者】
【氏名】黄偉聡
【テーマコード(参考)】
4B115
4H045
【Fターム(参考)】
4B115AG02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA33
4H045EA01
4H045EA30
4H045FA16
4H045FA71
4H045GA05
4H045GA15
(57)【要約】
【課題】本発明は、イソフラボンペプチド複合体、調製方法及びその応用、並びにイソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒を提供する。
【解決手段】本発明のイソフラボンペプチド複合体、調製方法及びその応用、並びにイソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒は、食品加工の技術分野に属し、既存技術において、大豆イソフラボンの生物学的利用能が低く、客家娘酒の種類が比較的少ないなどの問題を克服した。本発明が提供するイソフラボンペプチド複合体及びさらに調製した客家娘酒は、良好な抗酸化性を有する。発酵過程で配糖体型イソフラボンからアグリコン型イソフラボンへの転化を実現することにより、疲労を緩和させる機能性大豆ペプチドと、活性がより高いアグリコン型イソフラボンとを有し、より高い栄養価値及び健康的効果を有する。本発明で得られた、イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒はDPPHフリーラジカル消去能力及びABTSフリーラジカル消去能力がより高く、さらに客家娘酒の発酵過程により配糖体型イソフラボンはアグリコン型イソフラボンに転化され、人体の吸収により有利である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱脂大豆を水と混合し、pHを7.5~8.5に調節してからイソフラボンを添加し、材料Aを得る工程と、
材料Aを超音波処理又はキャビテーションマイクロジェット処理し、材料Bを得る工程と、
材料Bの1回目の遠心分離を行い、第1の上清液及び第1の沈殿物を得る工程と;
第1の上清液に対して順番に酸沈殿、2回目の遠心分離を行い、第2の沈殿物及び第2の上清液を得る工程と、
第2の沈殿物を水と混合し、pHを7.2~7.8に調節してから凍結乾燥させ、イソフラボンペプチド複合体を得る工程と、
を含むことを特徴とする、イソフラボンペプチド複合体の調製方法。
【請求項2】
前記凍結乾燥の後、酵素分解処理をさらに含み、
前記酵素分解処理がプロテアーゼを使用し、前記プロテアーゼの添加量がイソフラボンペプチド複合体の質量の1~5%であることを特徴とする、請求項1に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法。
【請求項3】
前記酵素分解処理の温度が40~60℃、酵素分解処理のpHが4.0~5.0又は7.0~9.0、酵素分解処理の時間が50~70分であり、酵素分解後、pHを6.5~7.5に調節し、
前記酵素分解後のpH調節は、1.5~2.5mol/LのNaOH水溶液を使用し;
酵素分解の後、酵素不活化の工程をさらに含み、前記酵素不活化は熱湯で4~6分加熱することを特徴とする、請求項2に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法。
【請求項4】
前記脱脂大豆が低温脱脂大豆であり、
前記脱脂大豆及び水を混合する固液比が1:8~12であり、
前記イソフラボンの添加量が脱脂大豆の質量の4~6%であることを特徴とする、請求項3に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法。
【請求項5】
前記超音波処理の合計時間が20~40分であり、前記超音波処理が間欠超音波処理であり、前記間欠超音波処理は超音波動作時間8~12秒、間欠時間2~5秒であり、
前記超音波処理の体積当たりの超音波パワーが30~60W/Lであり、
前記キャビテーションマイクロジェット処理の温度が60~80℃であり、キャビテーションマイクロジェット処理の時間が30~45分であることを特徴とする、請求項4に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法。
【請求項6】
前記1回目の遠心分離の回転速度が4000~8000rpm、1回目の遠心分離の時間が15~25分であり、
前記2回目の遠心分離の回転速度が4000~8000rpm、2回目の遠心分離の時間が10~20分であることを特徴とする、請求項5に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法。
【請求項7】
前記酸沈殿がHCl水溶液で第1の上清液のpHを4.0~5.5に調節してから、20~40分静置し、
前記HCl水溶液の濃度が1~3mol/Lであり、
前記第2の沈殿物及び水を混合する過程で、第2の沈殿物及び水の質量体積比が1g:5~9mLであり、
前記pHの7.2~7.8への調節がNaOH水溶液を使用し、前記NaOH水溶液の濃度が1~3mol/Lであることを特徴とする、請求項6に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法で得られることを特徴とする、イソフラボンペプチド複合体。
【請求項9】
前記イソフラボンペプチド複合体を客家娘酒の調製に用いることを特徴とする、請求項8に記載のイソフラボンペプチド複合体の使用方法。
【請求項10】
(1)糯米を請求項8に記載のイソフラボンペプチド複合体と混合してから蒸し、蒸し糯米を得る工程と、
(2)蒸し糯米を20~50℃に冷却する工程と、
(3)冷却後の蒸し糯米を麹と混合した後、25~30℃で発酵させる工程と、
(4)2~4日間発酵させた後、白酒を添加し、引き続き12~16日以上発酵させると、イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒が得られる工程と、
を含む調製方法で得られ、
前記白酒のアルコール濃度が40~60%volであり、前記白酒及び蒸し糯米の質量体積比が1gの蒸し糯米:0.4~0.6mLの白酒であることを特徴とする、イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品加工の技術分野に関し、特にイソフラボンペプチド複合体、調製方法及びその応用、並びにイソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆イソフラボン(Isoflavone、ISO)は大豆の成長中に形成される二次代謝産物であり、エストロゲン様及び抗エストロゲン様活性を有し、更年期症状の緩和、抗酸化、血中脂質の低下、ヒト動脈の低密度コレステロールの分解などの作用を有する。天然の大豆イソフラボンの多くは結合型の配糖体形式であるため、糖鎖の存在により配糖体型イソフラボンは小腸を通過しにくく、ほとんど人体の胃腸粘膜で吸収されず、生物学的利用能は比較的低い。次第に多くの研究者がタンパク及び小分子物質の相互作用を制御することにより、その生物学的利用能を高めることに傾いており、すなわちタンパクを小分子活性物質の輸送担体とする。上海婦女健康協会は、1997~2000年の毎年、40~70歳の一定の婦女群における大豆食品の消費及び骨折の関係を調査し、大豆食品の消費が更年期の婦女の骨折率を低下させることを示している(J.Nutr.133:2874-2878,2003.)が、研究では単独のイソフラボンの摂取は骨量の損失を阻止することに関与せず、大豆タンパクと結合してこそ効果があることを発見した。しかし、発明者は先日の研究により、天然のタンパク質が有する不溶性及び比較的劣る耐酸性は、タンパク質-イソフラボン複合体の食品分野における応用を同様に制限していることを発見した。従って、既存技術では、耐酸性が優れ、イソフラボンの水溶性及び生物学的利用能を効果的に高めることができる疎水性大豆イソフラボンの理想的な輸送担体が不足している。
【0003】
客家娘酒は客家人が糯米で醸造した米酒であり、黄酒類に属する。特色のある伝統的な名酒として、香りが濃厚、新鮮で甘く口当たりがよい、芳醇で甘い、酒度が程よい、栄養が豊富などの特徴を有し、広東省の伝統的な特産の酒類として、客家地区の最も代表的な特産の1つでもある。経済社会の進歩及び発展に伴い、人々の伝統的製品の開発に対する注目度は日ごとに増しており、品質が明らかに上昇した客家娘酒の開発は、当業者が解決を待っている技術的課題の1つである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Nutr.133:2874-2878,2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、イソフラボンペプチド複合体、調製方法及びその応用、並びにイソフラボンペプチドを含む客家娘酒を提供することであり、既存技術において大豆イソフラボンの生物学的利用能が低く、客家娘酒の種類が比較的少ないなどの問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明の目的を実現するため、本発明は以下の技術案を提供する。
本発明はイソフラボンペプチド複合体の調製方法を提供し、以下の工程を含む。
脱脂大豆を水と混合し、pHを7.5~8.5に調節してからイソフラボンを添加し、材料Aを得る。
材料Aを超音波処理又はキャビテーションマイクロジェット処理し、材料Bを得る。
材料Bの1回目の遠心分離を行い、第1の上清液及び第1の沈殿物を得る。
第1の上清液に対して順番に酸沈殿、2回目の遠心分離を行い、第2の沈殿物及び第2の上清液を得る。
第2の沈殿物を水と混合し、pHを7.2~7.8に調節してから凍結乾燥させ、イソフラボンペプチド複合体を得る。
【0007】
好ましくは、前記凍結乾燥の後、酵素分解処理をさらに含む。
前記酵素分解処理はプロテアーゼを使用し、前記プロテアーゼの添加量はイソフラボンペプチド複合体の質量の1~5%である。
【0008】
好ましくは、前記酵素分解処理の温度は40~60℃、酵素分解処理のpHは4.0~5.0又は7.0~9.0、酵素分解処理の時間は50~70分であり、酵素分解後、pHを6.5~7.5に調節する。
前記酵素分解後のpH調節は、1.5~2.5mol/LのNaOH水溶液を使用する。
酵素分解の後、酵素不活化の工程をさらに含み、前記酵素不活化は熱湯で4~6分加熱する。
【0009】
好ましくは、前記脱脂大豆は低温脱脂大豆である。
前記脱脂大豆及び水を混合する固液比は1:8~12である。
前記イソフラボンの添加量は脱脂大豆の質量の4~6%である。
【0010】
好ましくは、前記超音波処理の合計時間は20~40分であり、前記超音波処理は間欠超音波処理である。前記間欠超音波処理は超音波動作時間8~12秒、間欠時間2~5秒であり;前記超音波処理の体積当たりの超音波パワーは30~60W/Lである。
前記キャビテーションマイクロジェット処理の温度は60~80℃であり、キャビテーションマイクロジェット処理の時間は30~45分である。
【0011】
好ましくは、前記1回目の遠心分離の回転速度は4000~8000rpm、1回目の遠心分離の時間は15~25分である。
前記2回目の遠心分離の回転速度は4000~8000rpm、2回目の遠心分離の時間は10~20分である。
【0012】
好ましくは、前記酸沈殿はHCl水溶液で第1の上清液のpHを4.0~5.5に調節してから、20~40分静置する。
前記HCl水溶液の濃度は1~3mol/Lである。
前記第2の沈殿物及び水を混合する過程で、第2の沈殿物及び水の質量体積比は1g:5~9mLである。
前記pHの7.2~7.8への調節はNaOH水溶液を使用し、前記NaOH水溶液の濃度は1~3mol/Lである。
【0013】
本発明は、請求項1~7のいずれか1項に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法で得られたイソフラボンペプチド複合体をさらに提供する。
【0014】
本発明は、イソフラボンペプチド複合体の応用をさらに提供し、前記イソフラボンペプチド複合体を客家娘酒の調製に用いる。
【0015】
本発明はイソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒をさらに提供し、以下の工程を含む調製方法で得られる。
(1)糯米を請求項8に記載のイソフラボンペプチド複合体と混合してから蒸し、蒸し糯米を得る。
(2)蒸し糯米を20~50℃まで冷却する。
(3)冷却後の蒸し糯米を麹と混合した後、25~30℃で発酵させる。
(4)2~4日間発酵させた後、白酒を添加し、引き続き12~16日以上発酵させると、イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒が得られる。
前記白酒のアルコール濃度は40~60%volであり、前記白酒及び蒸し糯米の質量体積比は1gの蒸し糯米:0.4~0.6mLの白酒である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の技術的効果及び利点は以下の通りである。
本発明が提供するイソフラボンペプチド複合体、及びさらに調製した客家娘酒は、良好な抗酸化性を有する。発酵過程で配糖体型イソフラボンからアグリコン型イソフラボンへの転化を実現することにより、疲労を緩和させる機能性大豆ペプチドと、活性がより高いアグリコン型イソフラボンとを有し、より高い栄養価値及び健康的効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明はイソフラボンペプチド複合体の調製方法を提供し、以下の工程を含む。
脱脂大豆を水と混合し、pHを7.5~8.5に調節してからイソフラボンを添加し、材料Aを得る。
材料Aを超音波処理又はキャビテーションマイクロジェット処理し、材料Bを得る。
材料Bの1回目の遠心分離を行い、第1の上清液及び第1の沈殿物を得る。
第1の上清液に対して順番に酸沈殿、2回目の遠心分離を行い、第2の沈殿物及び第2の上清液を得る。
第2の沈殿物を水と混合し、pHを7.2~7.8に調節してから透析し、イソフラボンペプチド複合体を得る。
【0018】
本発明において、前記脱脂大豆は好ましくは低温脱脂大豆であり、前記水は好ましくは蒸留水である。前記脱脂大豆及び水を混合する固液比は好ましくは1:8~12、さらに好ましくは1:9~11である。前記脱脂大豆及び水を混合してからpHを7.5~8.5、好ましくは7.8~8.2に調節する。前記イソフラボンの添加量は、好ましくは脱脂大豆の質量の4~6%である。
【0019】
本発明において、前記超音波処理の合計時間は好ましくは20~40分、さらに好ましくは23~36分、より好ましくは28~32分である。前記超音波処理は好ましくは間欠超音波処理であり、前記間欠超音波処理は好ましくは超音波動作時間が8~12秒、間欠時間が2~5秒;さらに好ましくは超音波動作時間が9~11秒、間欠時間が3~4秒である。前記超音波処理の体積当たりの超音波パワーは好ましくは30~60W/L、さらに好ましくは40~50W/Lである。
【0020】
本発明において、前記キャビテーションマイクロジェット処理の温度は好ましくは40~80℃、さらに好ましくは50~70℃である。キャビテーションマイクロジェット処理の時間は10~25分、さらに好ましくは15~20分である。
【0021】
本発明において、超音波処理又はキャビテーションマイクロジェット処理の後、1回目の遠心分離を行い、前記1回目の遠心分離の回転速度は好ましくは4000~8000rpm、さらに好ましくは5000~7000rpmであり、前記1回目の遠心分離の時間は好ましくは15~25分、さらに好ましくは18~22分である。1回目の遠心分離で得られた上清液を酸沈殿し、前記酸沈殿は好ましくはHCl水溶液を使用して第1の上清液のpHを4.0~5.5、さらに好ましくは4.5~5.0に調節する。本発明の前記HCl水溶液の濃度は、好ましくは1~3mol/Lである。本発明において、pH値を調節してから静置し、前記静置時間は好ましくは20~40分、さらに好ましくは25~35分である。本発明は前記酸沈殿してから2回目の遠心分離を行い、前記2回目の遠心分離の回転速度は好ましくは4000~8000rpm、さらに好ましくは4500~6500rpmであり、前記2回目の遠心分離の時間は10~20分、さらに好ましくは12~18分である。本発明において、2回目の遠心分離で得た第2の沈殿物を水と混合し、前記水は好ましくは純水であり、前記第2の沈殿物及び水の質量体積比は好ましくは1g:5~9ml、さらに好ましくは1g:6~8mlである。前記第2の沈殿物及び水を混合してからpHを7.2~7.8、さらに好ましくは7.4~7.6に調節し、前記pHの7.2~7.8への調節は好ましくはNaOH水溶液を使用し、前記NaOH水溶液の濃度は好ましくは1~3mol/L、さらに好ましくは1.5~2.5mol/Lである。本発明において、pHを7.2~7.8に調節した後、好ましくは透析することをさらに含み、前記透析の分画分子量は好ましくは12000~14000であり、前記透析の時間は好ましくは24~72時間、さらに好ましくは36~60時間である。本発明におけるイソフラボンペプチド複合体は好ましくは凍結乾燥してから保存して使用に備え、本発明における前記凍結乾燥の時間は好ましくは22~24時間である。前記凍結乾燥の過程において、好ましくは-15~-25℃の条件下で予備凍結することを含み、前記予備凍結の時間は好ましくは10~14時間である。本発明の凍結乾燥過程で予備凍結した後の温度に特殊な要求は無く、設備自体が管理する。
【0022】
本発明において、前記透析の後に好ましくは酵素分解処理をさらに含む。前記酵素分解処理は好ましくはプロテアーゼを使用し、前記プロテアーゼの添加量は好ましくはイソフラボンペプチド複合体の質量の1~5%、さらに好ましくは2~4%である。前記酵素分解処理の温度は好ましくは40~60℃、さらに好ましくは45~55℃である。本発明において、前記プロテアーゼはアルカリ性プロテアーゼ又は酸性プロテアーゼから選択することがでる。前記プロテアーゼが酸性プロテアーゼのとき、前記酵素分解処理のpHは好ましくは4.0~5.0、さらに好ましくは4.3~4.8である。前記プロテアーゼがアルカリ性プロテアーゼのとき、前記酵素分解処理のpHは好ましくは7.0~9.0、さらに好ましくは7.4~8.6である。前記酵素分解処理の時間は好ましくは50~70分、さらに好ましくは55~65分であり、酵素分解後、好ましくはpHを6.5~7.5、さらに好ましくは6.8~7.2に調節することをさらに含む。前記酵素分解後のpH調節はNaOH水溶液を使用し、前記NaOH水溶液の濃度は好ましくは1.5~2.5mol/L、さらに好ましくは1.8~2.2mol/Lである。本発明において、前記酵素分解後、好ましくは酵素不活化工程をさらに含み、前記酵素不活化は好ましくは熱湯で4~6分加熱する。
【0023】
本発明は、上記イソフラボンペプチド複合体の調製方法で得られたイソフラボンペプチド複合体をさらに提供する。
【0024】
本発明はイソフラボンペプチド複合体に基づく応用をさらに提供し、前記イソフラボンペプチド複合体を客家娘酒の調製に用いる。
【0025】
本発明はイソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒をさらに提供し、以下の工程を含む調製方法で得られる。
(1)糯米を上記イソフラボンペプチド複合体と混合してから蒸し、蒸し糯米を得る。
(2)蒸し糯米を20~50℃に冷却する。
(3)冷却後の蒸し糯米を麹と混合した後、25~30℃で発酵させる。
(4)2~4日間発酵させた後、白酒を添加し、引き続き12~16日以上発酵させると、イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒が得られる。
【0026】
本発明において、前記糯米は好ましくは純糯米玄米であり、前記純糯米玄米は好ましくは米粒がふくよかで、心白率が高く、デンプン含量が高く、タンパク質及び脂肪含量が低い純糯米玄米である。本発明の前記糯米は、上記イソフラボンペプチド複合体と混合する前に浸漬工程をさらに含み、前記浸漬は好ましくは糯米が充分に吸水し、容易に手ですりつぶすことができるまで浸漬させる。前記浸漬の目的は、糯米中のデンプンを吸水させることであり、蒸して糊化させるのに便利である。本発明において、得られた蒸し糯米は好ましくは外側が硬くて内側が柔らかく、内部に芯が無く、軟らかいが粥状ではなく、透けているがボロボロではなく、均一な蒸し糯米である。本発明において、蒸し糯米を20~50℃、好ましくは30~40℃まで冷却する。本発明における発酵で使用する容器は好ましくは陶製の甕であり、前記発酵は好ましくは「巣を作る」発酵を採用し、つまりご飯中にくぼみを掘って空気との接触面積を増大させる。前記発酵の温度は25~30℃、好ましくは27~29℃である。本発明は2~4日間発酵させてから白酒を添加し、前記白酒のアルコール濃度は40~60%vol、好ましくは45~55%volであり、前記蒸し糯米及び白酒の質量体積比は1gの蒸し糯米:0.4~0.6mlの白酒である。本発明において、白酒を添加後、引き続き12~16日以上発酵させると、イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒が得られる。前記イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒は発酵完了後、好ましくは酒粕と分離すること、70~80℃条件下で消毒又は煮沸することをさらに含み、消毒又は煮沸後のイソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒は、好ましくは陶製の甕中に密封保存する。密封保存の作用は、客家娘酒の風味を熟成によりさらに芳醇にすることである。
【0027】
以下、実施例を組み合わせて、本発明が提供する技術案について詳細に説明するが、これらは本発明の保護範囲を限定すると理解することはできない。
【0028】
実施例で言及する一部の原料の供給元は以下の通りである。
低温脱脂大豆(タンパク質63.6±0.3%)は、山東禹王実業有限公司から購入した。
プロテアーゼM(Protease M)は、日本の天野エンザイム株式会社から購入した。
アルカリ性プロテアーゼ(Alcalase)は、ノボノルディスク社から購入した。
【実施例0029】
実施例1 イソフラボンペプチド複合体の調製
50gの低温脱脂大豆を秤取し、蒸留水500mLを添加して、pHを8.0に調節し、イソフラボン1.59gを添加する。超音波細胞破砕装置を使用し、超音波動作時間10秒、超音波間欠時間3秒、超音波処理の合計時間30分、体積当たりの超音波パワー60W/Lで超音波処理後、得られた懸濁液を遠心分離する(6000rpm×20分)。2mol/LのHClで上清液のpHを4.5に調節して、30分酸沈殿してから遠心分離し(6000rpm×15分)、タンパク沈殿物を質量体積比1:7の比率で新たに純水中に分散させ、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.5に調節する。タンパク溶液は48時間透析してから酵素分解する。1%のアルカリ性プロテアーゼを添加し、50℃、pH8.0の条件下で撹拌して60分酵素分解してから、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.0に調節し、熱湯で5分加熱して酵素不活化を行う。
【0030】
実施例2 イソフラボンペプチド複合体の調製
50gの低温脱脂大豆を秤取し、蒸留水500mLを添加して、pHを8.0に調節し、イソフラボン1.59gを添加する。超音波細胞破砕装置を使用し、超音波動作時間10秒、超音波間欠時間3秒、超音波処理時間30分、体積当たりの超音波パワー30W/Lで超音波処理後、得られた懸濁液を遠心分離する(6000rpm×20分)。2mol/LのHClで上清液のpHを4.5に調節して、30分酸沈殿してから遠心分離し(6000rpm×15分)、タンパク沈殿物を質量体積比1:7の比率で新たに純水中に分散させ、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.5に調節する。タンパク溶液は48時間透析してから酵素分解する。1%のアルカリ性プロテアーゼを添加し、50℃、pH7.5の条件下で撹拌して60分酵素分解してから、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.0に調節し、熱湯で5分加熱して酵素不活化を行う。
【0031】
実施例3 イソフラボンペプチド複合体の調製
50gの低温脱脂大豆を秤取し、蒸留水500mLを添加して、pHを8.0に調節し、イソフラボン1.59gを添加する。超音波細胞破砕装置を使用し、超音波動作時間10秒、超音波間欠時間3秒、超音波処理時間30分、体積当たりの超音波パワー60W/Lで超音波処理後、得られた懸濁液を遠心分離する(6000rpm×20分)。2mol/LのHClで上清液のpHを4.5に調節して、30分酸沈殿してから遠心分離し(6000rpm×15分)、タンパク沈殿物を質量体積比1:7の比率で新たに純水中に分散させ、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.5に調節する。タンパク溶液を48時間透析してから酵素分解する。4%のプロテアーゼMを添加し、50℃、pH4.5の条件下で撹拌して60分酵素分解してから、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.0に調節し、熱湯で5分加熱して酵素不活化を行う。
【0032】
実施例4 イソフラボンペプチド複合体の調製
50gの低温脱脂大豆を秤取し、蒸留水500mLを添加して、pHを8.0に調節し、イソフラボン1.59gを添加する。超音波細胞破砕装置を使用し、超音波動作時間10秒、超音波間欠時間3秒、超音波処理時間30分、体積当たりの超音波パワー30W/Lで超音波処理後、得られた懸濁液を遠心分離する(6000rpm×20分)。2mol/LのHClで上清液のpHを4.5に調節して、30分酸沈殿してから遠心分離し(6000rpm×15分)、タンパク沈殿物を質量体積比1:7の比率で新たに純水中に分散させ、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.5に調節する。タンパク溶液は48時間透析してから酵素分解する。4%のプロテアーゼMを添加し、50℃、pH4.5の条件下で撹拌して60分酵素分解してから、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.0に調節し、熱湯で5分加熱して酵素不活化を行う。
【0033】
実施例5 イソフラボンペプチド複合体の調製
50gの低温脱脂大豆を秤取し、蒸留水500mLを添加して、イソフラボン1.59gを添加する。キャビテーションマイクロジェット処理(60℃、15分)を行った後、得られた懸濁液を遠心分離する(6000rpm×20分)。2mol/LのHClで上清液のpHを4.5に調節して、30分酸沈殿してから遠心分離し(6000rpm×15分)、タンパク沈殿物を質量体積比1:7の比率で新たに純水中に分散させ、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.5に調節する。タンパク溶液は48時間透析してから凍結乾燥させる。
【0034】
実施例6 イソフラボンペプチド複合体の調製
50gの低温脱脂大豆を秤取し、すぐに蒸留水500mLを添加し、すぐにイソフラボン1.59gを添加し、pHを7.5に調節する。40mg/gの比率でイソフラボンを添加し、キャビテーションマイクロジェット処理(80℃、25分)を行った後、得られた懸濁液を遠心分離する(4000rpm×15分)。2mol/LのHClで上清液のpHを4.5に調節して、30分酸沈殿してから遠心分離し(8000rpm×20分)、タンパク沈殿物を質量体積比1:7の比率で新たに純水中に分散させ、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.8に調節する。タンパク溶液は48時間透析してから凍結乾燥させる。
【0035】
実施例7 イソフラボンペプチド複合体の調製
50gの低温脱脂大豆を秤取し、蒸留水550mLを添加して、pHを8.0に調節し、イソフラボン1.59gを添加する。キャビテーションマイクロジェット処理(70℃、20分)を行った後、得られた懸濁液を遠心分離する(6000rpm×20分)。2mol/LのHClで上清液のpHを4.5に調節して、30分酸沈殿してから遠心分離し(6000rpm×15分)、タンパク沈殿物を質量体積比1:7の比率で新たに純水中に分散させ、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.5に調節する。タンパク溶液を48時間透析してから酵素分解する。1%のアルカリ性プロテアーゼを添加し、60℃、pH8.0の条件下で撹拌して70分酵素分解してから、2mol/LのNaOH溶液でpHを7.0に調節し、熱湯で5分加熱して酵素不活化を行う。
【0036】
実施例8 イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒の調製
米粒がふくよかで、心白率が高く、デンプン含量が高く、タンパク質及び脂肪含量が低い純糯米玄米2500gを選別し、糯米が充分に吸水し、容易に手ですりつぶすことができるまで浸漬させる。糯米玄米の処理後の理化学指標は表1に示す通りである。
【0037】
【0038】
2500gの糯米を浸漬させてから鍋に入れ、さらに実施例1で得たイソフラボンペプチド複合体20gを入れて蒸す。蒸したご飯は外側が硬くて内側が軟らかく、内部に芯が無く、軟らかいが粥状ではなく、透けているがボロボロではなく、均一である。
【0039】
冷却:蒸したご飯を広げて30℃まで冷却する。
麹を混ぜる:広げて30℃まで冷却したご飯に麹を混ぜ入れ、充分均等に混合する。
発酵:麹を混ぜ入れたご飯を陶製の甕に入れ、その後「巣を作り」発酵させ、発酵温度は28℃に設定する。
酒を添加する:3日間発酵させた後、アルコール濃度が50%volの白酒500mLを添加し、雑菌の繁殖を抑制する。発酵に良好な環境を提供し、その後の保存にも有利である。
圧搾、火入れ:発酵させた酒を取り出して酒粕と分離し、80℃で消毒する。
封印:消毒後の客家娘酒を陶製の甕中に封印して保存する。酒の風味は熟成によりさらに芳醇になる。
【0040】
実施例9 イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒の調製
イソフラボンペプチド複合体の代わりに実施例2で得たイソフラボンペプチド複合体を用いたことを除いて、実施例8の過程と同じである。
【0041】
実施例10 イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒の調製
イソフラボンペプチド複合体の代わりに実施例3で得たイソフラボンペプチド複合体を用いたことを除いて、実施例8の過程と同じである。
【0042】
実施例11 イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒の調製
イソフラボンペプチド複合体の代わりに実施例4で得たイソフラボンペプチド複合体を用いたことを除いて、実施例8の過程と同じである。
【0043】
実施例12 イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒の調製
イソフラボンペプチド複合体の代わりに実施例5で得たイソフラボンペプチド複合体を用いたことを除いて、実施例8の過程と同じである。
【0044】
実施例13 イソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒の調製
イソフラボンペプチド複合体の代わりに実施例6で得たイソフラボンペプチド複合体を用いたことを除いて、実施例8の過程と同じである。
【0045】
比較例1
米粒がふくよかで、心白率が高く、デンプン含量が高く、タンパク質及び脂肪含量が低い純糯米玄米2500gを選別し、糯米が充分に吸水し、容易に手ですりつぶすことができるまで浸漬させる。
【0046】
浸漬した糯米を鍋に入れて蒸し、蒸留水20gを添加する。蒸したご飯は外側が硬くて内側が柔らかく、内部に芯が無く、軟らかいが粥状ではなく、透けているがボロボロではなく、均一である。
【0047】
冷却:蒸したご飯を広げて30℃まで冷却する。
麹を混ぜる:広げて30℃まで冷却したご飯に麹を混ぜ入れ、充分均等に混合する。
発酵:麹を混ぜ入れたご飯を陶製の甕に入れ、その後「巣を作り」発酵させ、発酵温度は28℃に設定する。
酒を添加する:3日間発酵させた後、アルコール濃度が50%volの白酒500mLを添加し、雑菌の繁殖を抑制する。発酵に良好な環境を提供し、その後の保存にも有利である。
圧搾、火入れ:発酵させた酒を取り出して酒粕と分離し、80℃で消毒する。
封印:消毒後の客家娘酒を陶製の甕中に封印して保存する。酒の風味は熟成によりさらに芳醇になる。
【0048】
比較例2
米粒がふくよかで、心白率が高く、デンプン含量が高く、タンパク質及び脂肪含量が低い純糯米玄米2500gを選別し、糯米が充分に吸水し、容易に手ですりつぶすことができるまで浸漬させる。
【0049】
浸漬した糯米を鍋に入れ、さらに低温脱脂大豆20gを入れて蒸す。蒸したご飯は外側が硬くて内側が柔らかく、内部に芯が無く、軟らかいが粥状ではなく、透けているがボロボロではなく、均一である。
【0050】
冷却:蒸したご飯を広げて30℃まで冷却する。
麹を混ぜる:広げて30℃まで冷却したご飯に麹を混ぜ入れ、充分均等に混合する。
発酵:麹を混ぜ入れたご飯を陶製の甕に入れ、その後「巣を作り」発酵させ、発酵温度は28℃に設定する。
酒を添加する:3日間発酵させた後、アルコール濃度が50%volの白酒500mLを添加し、雑菌の繁殖を抑制する。発酵に良好な環境を提供し、その後の保存にも有利である。
圧搾、火入れ:発酵した酒を取り出して酒粕と分離し、80℃で消毒する。
封印:消毒後の客家娘酒を陶製の甕中に封印して保存する。酒の風味は熟成によりさらに芳醇になる。
【0051】
実験例1 発酵7日間における関連指標の測定
実施例8~13で得た客家娘酒をそれぞれ実験群1~6とし、比較例1で得た客家娘酒を対照群1とし、比較例2で得た客家娘酒を対照群2とする。
【0052】
発酵開始7日で、酒のアルコール度、全糖、全酸、アルコール収率などの検査方法について、国家標準GB/T13662-2018の黄酒部分に基づいて操作し、イソフラボン単量体のゲニステイン(Genistein)及びゲニスチン(Genistin)含量の検査方法は、GB/T23788-2009の保健食品における大豆イソフラボンの測定方法 高速液体クロマトグラフィを使用する。結果は下表2に示す通りである。
【0053】
【0054】
発酵開始7日目における酒のアントシアニン含量、DPPHフリーラジカル消去率、ABTSフリーラジカル消去率を検査する。10gの前処理したご飯を秤取し、1:5の固液比で68.0%の酸性エタノール溶液を添加し、84℃下、水浴で3回浸出させ、浸出液を合わせる。標準品はシアニジン-3-O-グルコシドであり、分光光度計を利用して測定サンプルのアントシアニン量を検査する。
【0055】
DPPH法による抗酸化活性の測定は、Sharmaらの方法(Sharma O P,Bhat T K.DPPH antioxidant assay revisited[J].Food chemistry,2009,113(4):1202-1205.)を参考にし、やや変更した。0.5mLのサンプルを2.5mLのDPPHエタノール溶液(40mg/L)と充分に混合振動させ、常温下で遮光して30分間保存し、517nm部分の吸光度を測定し、残留するDPPH・フリーラジカル消去活性を測定する。ABTSフリーラジカル消去率の測定方法は、蘇龍らの文献に基づいて行った(蘇龍、呂鳳丹、王雪儒ら、響応面優化楊梅果酒発酵工芸及其抗 化性[J].食品工業科技、2017、38(20):7)。結果は下表3に示す通りである。
【0056】
【0057】
実験例2 発酵2か月における関連指標の測定
発酵開始2か月で、酒のアルコール度、全糖、全酸、アルコール収率、イソフラボン単量体のゲニステイン(Genistein)及びゲニスチン(Genistin)含量を測定する。結果は下表4に示す通りである。
【0058】
【0059】
発酵開始2か月における酒のアントシアニン含量、DPPHフリーラジカル消去率、ABTSフリーラジカル消去率を検査する。結果は下表5に示す通りである。
【0060】
【0061】
上記の実験結果から、本発明で得られたイソフラボンペプチド複合体を含む客家娘酒は、DPPHフリーラジカル消去能力及びABTSフリーラジカル消去能力がより高いことがわかり、さらに娘酒の発酵過程により配糖体型イソフラボンはアグリコン型イソフラボンに転化され、人体の吸収により有利である。
【0062】
実験例3 風味物質の含量測定
発酵開始2か月における、酒のアルコール類風味物質の含量を測定する。測定方法は、測定物をヘッドスペースバイアル中に取り、NaClを添加してから30分平衡化させ、PDMSファイバーをヘッドスペースバイアルに挿入して吸着させる。手動方式でサンプリングし、250℃の条件下で5分間解析して測定する。2.0mL/分のヘリウムガスをキャリアガスとし;昇温過程は50℃(2分)、180℃まで昇温する(速度4℃/分、3分)、230℃まで昇温する(速度6℃/分)、である。注入ポートの温度は250℃に設定し、スプリット比の条件は40:1であり;初期カラム温度を40℃に設定して5分間保持した後、3℃/分の上昇幅で210℃まで昇温する。NISTライブラリを利用して検索、分析及びその同定を行い、含量を計算してさらに分析する。結果は下表6に示す通りである。
【0063】
【0064】
発酵開始2か月における、酒のエステル類風味物質の含量を測定する。結果は下表7に示す通りである。
【0065】
【0066】
上の表から、本発明で得られた客家娘酒におけるアルコール類物質のイソペンチルアルコール、フェニルエタノール及びメチオノール含量が比較的高いことがわかる。この種の高級アルコールは酒中の特定のアミノ酸により形成され、例えばイソペンチルアルコールはイソロイシンの代謝により生成することができる。これらの高級アルコールは客家娘酒における重要な構成部分であり、客家娘酒の風味に対して一定の影響を及ぼす。イソペンチルアルコールはフルーツの香り及び花の香りを形成することができ、フェニルエタノールはバラの花の香りを形成することができる。アルコール類物質以外に、エステル類物質も黄酒の風味に対して大きな働きをしており、酒中のエステル類物質は主にアミノ酸、有機酸及びアルコール類がエステル化反応して生成され、さらに一部は酒中の微生物の代謝作用により生成される。表6から、酒中の測定されたエステル類は主にエチルエステルであり、これらのエステル類は酒の香りに対して積極的に影響を及ぼすことがわかる。オクタン酸エチルは花の香りを形成することができ、デカン酸エチルはナッツの香りを有する。
【0067】
以上の実施例から、本発明が提供する客家娘酒は良好な抗酸化性を有することがわかる。発酵過程で配糖体型イソフラボンからアグリコン型イソフラボンへの転化を実現することにより、疲労を緩和させる機能性大豆ペプチドと、活性がより高いアグリコン型イソフラボンとを有し、より高い栄養価値及び健康的効果を有し、独特な風味を有する。
【0068】
以上の記載は本発明の好ましい実施方式に過ぎない。当業者は、本発明の原理を逸脱しない前提で、いくつかの改善及び潤色を行うこともでき、これらの改善及び潤色も本発明の保護範囲と見なすべきであると指摘しなければならない。
前記酵素分解処理の温度が40~60℃、酵素分解処理のpHが4.0~5.0又は7.0~9.0、酵素分解処理の時間が50~70分であり、酵素分解後、pHを6.5~7.5に調節し、
前記酵素分解後のpH調節は、1.5~2.5mol/LのNaOH水溶液を使用し;
酵素分解の後、酵素不活化の工程をさらに含み、前記酵素不活化は熱湯で4~6分加熱することを特徴とする、請求項2に記載のイソフラボンペプチド複合体の調製方法。