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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133079
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】転炉用昇熱材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/28 20060101AFI20230914BHJP
   C22B 1/242 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C21C5/28 Z
C22B1/242
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139827
(22)【出願日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2022037509
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 利一
(72)【発明者】
【氏名】関屋 政洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】湯本 淳史
【テーマコード(参考)】
4K001
4K070
【Fターム(参考)】
4K001BA22
4K001CA26
4K001CA29
4K070AB18
4K070AC28
4K070DA01
(57)【要約】
【課題】外形寸法の自由度を高めても歩留まり高く溶湯まで投入することが可能な転炉用昇熱材を提供する。
【解決手段】炭化物粉粒体とバインダーとで成型してなる炭化物成型体の転炉用昇熱材であって、前記炭化物成型体は、(a)密度が、500~1500kg/mであり、かつ、(b)圧潰強度が、490N/個以上であり、さらに、(c)外形が、前記炭化物成型体にかかる重力と前記炭化物成型の外形に応じて転炉排ガスから受ける抗力との釣り合い関係から、前記重力の方が大きくなる代表長さdを有する外形であることを特徴とする、転炉用昇熱材が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化物粉粒体とバインダーとで成型してなる炭化物成型体の転炉用昇熱材であって、
前記炭化物成型体は、
(a) 密度が、500~1500kg/mであり、かつ、
(b) 圧潰強度が、490N/個以上であり、さらに、
(c) 外形が、前記炭化物成型体にかかる重力と前記炭化物成型体の外形に応じて転炉排ガスから受ける抗力との釣り合い関係から、前記重力の方が大きくなる代表長さdを有する外形である
ことを特徴とする、転炉用昇熱材。
【請求項2】
前記炭化物成型体の代表長さdは、式(1)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載の転炉用昇熱材。
【数1】
ここで、
dは、炭化物成型体の代表長さ[m]であり、
ρlumpは、炭化物成型体の密度で、500~1500[kg/m]であり、
ρgasは、転炉排ガス密度で、0.17~0.21[kg/m]であり、
gasは、転炉排ガスの流速で、5~50[m/s]であり、
は、抗力係数で、ペレットで1.0[-]、ブリケットで1.6[-]であり、
gは、重力加速度[m/s]である。
【請求項3】
前記炭化物成型体は、鉄を含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の転炉用昇熱材。
【請求項4】
前記炭化物成型体中の炭化物は、
(d) 最大粒径が前記代表長さdの1/2未満の粒径を有するものであり、
(e) 大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比が、1.5~2.3であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の転炉用昇熱材。
【請求項5】
前記炭化物成型体中の炭化物は、石炭、植物系バイオマス、廃プラスチックの群から選択される少なくとも1つを炭化した炭化物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の転炉用昇熱材。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の転炉用昇熱材の製造方法であって、前記炭化物成型体の成型工程において、押出成型機または圧縮成型機を用いることを特徴とする、転炉用昇熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉用昇熱材およびその製造方法に関し、詳しくは、外形寸法の自由度を高めても歩留まり高く溶湯まで投入できる転炉用昇熱材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工程の転炉は、高炉で出銑された溶銑に高純度の酸素を高速で吹き付けることにより脱炭を行い、溶鋼を製造する主要なプロセスである。同時に、生石灰を主体とする副原料を投入し、溶銑中の不純物(リン等)の除去を行う。
【0003】
一方、転炉の前工程として溶銑予備処理を行い、鉄鋼製品の材料特性面の要求から溶銑中のS、Pなどを除く処理を行う場合もある。この場合、溶銑予備処理により溶銑温度が低下するという問題がある。
【0004】
また近年、環境保護の観点から、製鉄プロセスにおいてはCO排出量の削減が重要課題となっており、製鋼工程においては、使用する鉄源として鉄スクラップ(屑鉄)などの冷鉄源の配合比率を高め、溶銑の配合比率を低減することが試みられている。これは、鉄鋼製品の製造にあたり、高炉での溶銑の製造では、鉄鉱石を還元し且つ溶融するための多大なエネルギーを要すると同時に多量のCOを排出するのに対し、冷鉄源は溶解熱のみを必要としており、製鋼工程で冷鉄源を利用した場合には、鉄鉱石の還元熱分のエネルギー使用量を少なくすることができ、CO発生量を大幅に削減することができるからである。しかしながら、転炉においては、冷鉄源の溶解用熱源は溶銑の有する顕熱、及び溶銑中の炭素及び珪素の酸化熱であり、冷鉄源の溶解量には自ずと限界がある。
【0005】
そこで、溶銑の脱燐処理や脱炭精錬において、溶銑の熱的余裕を高めて冷鉄源の配合比率を拡大するべく、溶銑に追加の炭素源を供給する昇熱材として、石炭、コークス粉、黒鉛、電極粉、SiCなどを塊状に成型した昇熱材が種々提案されている。なお、成型しない天然鉱産物の土状黒鉛も、比較的安価であることから、昇熱材として用いられる場合もある。
【0006】
そのような転炉用の昇熱材については、たとえば、特許文献1では、粒度が1mm以下を30~70%含み、他は粒度が1~8mmの炭素粉(石炭、コークス粉、黒鉛など)とバインダーとを、特定水分率に調湿して混練後、高圧成型、乾燥することにより、炭素粉を十分な強度の固形物(ブリケット)に成型することを可能としている。
【0007】
また、特許文献2では、カーボンニュートラルな植物系バイオマスを炭化した炭化物と、バインダーとで成型した転炉用昇熱材として、石炭、コークス、黒鉛等の化石資源を原料とする従来からの転炉用昇熱材を代替することにより、化石資源消費量を低減し、温室効果ガスであるCOの発生を低減できるようにするととともに、炭化物の粒径を3mm以下とすることにより、転炉用昇熱材として十分な強度である圧潰強度490N/個以上の固形物(ブリケット)にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2-270922号公報
【特許文献2】特許第5846289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された昇熱材の原料の炭素粉は、粒度が1mm以下のものの割合が30~70%と多いため、そのための炭素原料の粉砕処理等、粒度調整のための処理負荷が高いという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に記載された昇熱材の原料の炭素粉は、粒径3mm以下と比較的狭い粒度範囲に整粒する必要があり、特許文献1に記載された発明同様に、そのための炭素原料の粉砕処理等、粒度調整のための処理負荷が高いという問題がある。
【0011】
また、特許文献1および特許文献2で対象とする昇熱材は、いずれも一般的に代表長さが50mm程度のブリケットに適用できることが例示されているのみであり、成型負荷の小さい代表長さが20mm程度のペレットサイズの昇熱材を採用しようとしても、これらの発明を適用した昇熱材が、破砕したり飛散したりすることなく確実に溶湯まで投入できるか否か明らかでないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、密度および圧潰強度を所定範囲とし、転炉排ガスから受ける抗力より重力が勝るようにする代表長さの条件下で外形寸法の自由度を高めても歩留まり高く溶湯まで投入することが可能な転炉用昇熱材およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]炭化物粉粒体とバインダーとで成型してなる炭化物成型体の転炉用昇熱材であって、前記炭化物成型体は、
(a) 密度が、500~1500kg/mであり、かつ、
(b) 圧潰強度が、490N/個以上であり、さらに、
(c) 外形が、前記炭化物成型体にかかる重力と前記炭化物成型体の外形に応じて転炉排ガスから受ける抗力との釣り合い関係から、前記重力の方が大きくなる代表長さdを有する外形であることを特徴とする、転炉用昇熱材。
[2]前記炭化物成型体の代表長さdは、式(1)を満たすことを特徴とする、[1]に記載の転炉用昇熱材。
【0014】
【数1】
ここで、dは、炭化物成型体の代表長さ[m]であり、ρlumpは、炭化物成型体の密度で、500~1500[kg/m]であり、ρgasは、転炉排ガス密度で、0.17~0.21[kg/m]であり、vgasは、転炉排ガスの流速で、5~50[m/s]であり、Cは、抗力係数で、ペレットで1.0[-]、ブリケットで1.6[-]であり、gは、重力加速度[m/s]である。
【0015】
[3]前記炭化物成型体は、鉄を含有することを特徴とする、[1]または[2]に記載の転炉用昇熱材。
【0016】
[4]前記炭化物成型体中の炭化物は、
(d) 最大粒径が前記代表長さdの1/2未満の粒径を有するものであり、
(e) 大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比が、1.5~2.3であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の転炉用昇熱材。
【0017】
[5]前記炭化物成型体中の炭化物は、石炭、植物系バイオマス、廃プラスチックの群から選択される少なくとも1つを炭化した炭化物であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の転炉用昇熱材。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の転炉用昇熱材の製造方法であって、前記炭化物成型体の成型工程において、押出成型機または圧縮成型機を用いることを特徴とする、転炉用昇熱材の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成によれば、炭化物粉粒体とバインダーとで成型してなる炭化物成型体の転炉用昇熱材(以下、単に昇熱材ともいう。)に、密度が500~1500kg/mのものを用い、そのものにかかる重力とそのものの外形に応じて転炉排ガスから受ける抗力との釣り合い関係から、その重力の方が大きくなる外形寸法を有するものを用いることにより、昇熱材が破砕しない限り確実に溶湯まで着湯させることができる。また、昇熱材の圧潰強度が490N/個以上であることから、昇熱材が溶鋼へ着湯するまでに破砕して粉塵となり転炉排ガスとともに飛散してしまうこともないことから、昇熱材を歩留まり高く溶湯まで投入することができる。さらに、昇熱材が破砕することなく確実に落下する代表長さdの選択により、昇熱材サイズとして、ペレットサイズからブリケットサイズまでの広いサイズ範囲のものを使用することができるため、昇熱材の製造に際しても、成型負荷の最適化等のための製造の自由度の確保が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を実施する際に用いる転炉設備の一例の概略断面図であり、併せて、昇熱材が投入された際の昇熱材が受ける作用力を模式的に説明する図である。
図2】本発明に至る予備実験および実施例で用いたロールクラッシャー(カッターミル)により、バイオマス炭を粉砕する様子を概略断面図で示す図である。
図3】本発明の実施例で用いた双ロール式ブリケットマシンにより、バイオマス炭の粉砕物を圧縮成型する様子を概略断面図で示す図である。
図4】本発明に至る予備実験で用いたペレット製造機(ペレタイザー)により、バイオマス炭の粉砕物を押出成型する様子を概略断面図で示す図である。
図5】本発明に至る予備実験で得られた図であって、副原料投入シュートから投入後の転炉用昇熱材の転炉排ガス中での落下と浮上の境界線の理論式とオフライン浮上試験結果とを比較した図である。
図6】本発明に至る予備実験で得られた図であって、鉄を含有させ、またその含有量を調整することで転炉用昇熱材の密度を増大させた場合について、図5と同様のオフライン浮上試験を実施した結果を示す図である。
図7】本発明に至る予備実験で得られた図であって、転炉用昇熱材中の炭化物の大粒径と小粒径の割合と転炉用昇熱材の炭化物成型体の空隙率の関係を、大粒径と小粒径の粒子径比で層別してまとめた図である。
図8】本発明に至る予備実験で得られた図であって、転炉用昇熱材中の炭化物の大粒径と小粒径の粒子径比と転炉用昇熱材の炭化物成型体の最小空隙率の関係をまとめた図である。
図9】本発明の実施例で得られたバイオマス炭材の粉砕物の粒度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明を適用する転炉設備を説明する。図1は、本発明の転炉用昇熱材を用いる転炉設備の一例の概略断面図である。
【0021】
図1において、溶銑8を収容した転炉本体1の内部には、上方から上吹きランス2が挿入され、この上吹きランス2から酸素ガスが溶銑8に吹き付けられると同時に、転炉本体1の底部に配置した複数の底吹き羽口3から攪拌用底吹きガスが吹き込まれて溶銑8とスラグ9とが攪拌されながら、溶銑8の脱炭精錬が行われる。溶銑8の脱炭精錬によって炉内からCOガスを主体とする転炉排ガス10が発生する。
【0022】
転炉本体1の上方には煙道4が設置され、煙道4の後段には、一次集塵機(図示せず)、二次集塵機(図示せず)、誘引送風機(図示せず)が、この順に設置されている。このような転炉排ガス10の処理設備により、脱炭精錬によって転炉本体1の内部で発生する転炉排ガス10を、冷却して除塵し未燃焼のまま、誘引送風機(図示せず)の下流側のガスホルダー(図示せず)に回収されるようになっている。
【0023】
煙道4の転炉本体1の炉口との接続側は、スカート5と呼ばれており、上下移動が可能な構造となっており、排ガスを回収する場合には、スカート5と転炉本体1の炉口とは原則的には密着した状態になる。また、煙道4には、生石灰、焼成ドロマイト、鉄鉱石、ミルスケール、マンガン鉱石、昇熱材(コークス、土壌黒鉛などの炭材)及び合金鉄(Fe-Mn、Fe-Siなど)などの副原料を転炉本体1に投入添加するための、ホッパー6及び投入シュート7などからなる副原料投入装置が設置されている。副原料投入装置から炉内に投入される生石灰、焼成ドロマイト、鉄鉱石、ミルスケール、マンガン鉱石などによってスラグ9が形成される。
【0024】
本発明は、炭化物粉粒体とバインダーとで成型してなる炭化物成型体の転炉用昇熱材であって、前記炭化物成型体は、
(a) 密度が、500~1500kg/mであり、かつ、
(b) 圧潰強度が、490N/個以上であり、さらに、
(c) 外形が、前記炭化物成型体にかかる重力と前記炭化物成型体の外形に応じて転炉排ガスから受ける抗力との釣り合い関係から、前記重力の方が大きくなる代表長さdを有する外形であることを特徴とする。
【0025】
本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)は、炭化物粉粒体を主原料にしてバインダーと水を加え、公知のミキサー(図示せず)で混合、撹拌してから公知の成型装置(図3図4参照)によって成型し、その後、所定の水分量まで乾燥させることにより得られる。主原料の炭化物粉粒体は、まず、原料である石炭、植物系バイオマス、廃プラスチック等を、ロータリーキルン炉、バッチ式炉、シャフト炉等の公知の炭化装置(図示せず)で炭化し、次に、得られた炭化物を、必要に応じて公知のカッターミルを1回または複数回通して種々の粒度に破砕し、さらに篩分け等により粒度調整して製造される。バインダーとしては、無機系のベントナイト、有機系のカルボキシメチルセルロース、コーンスターチ等を用いることができる。
【0026】
公知のカッターミルとして、図2では、ロータリーキルン炉等で乾留された炭材21が、ロールクラッシャー(カッターミル)26のホッパー27からクラッシャーロール28に供給され破砕されて粉砕物22となって、ベルトコンベヤー29で搬出される様子を概略的に示している。炭化物成型体の成型装置としては、圧縮成型機として代表的な公知の双ロール式ブリケットマシンや、押出成型機として代表的なペレット製造機(ペレタイザー)などを用いることができる。図3では、粒度調整された炭材にバインダーと水を加えてミキサーで混練された炭材の混練物23が、双ロール式ブリケットマシン31のホッパー32から成型ロール33に供給され圧縮成型されて成型物24(ブリケット24a)となって、ベルトコンベヤー34で搬出される様子を概略的に示している。また図4では、同様の炭材の混練物23が、ペレット製造機(ペレタイザー)41のホッパー42からスクリューフィーダー43に供給され圧縮されて押出成型され、さらにカッター44で所定長さに切断された成型物24(ペレット24b)となって、ベルトコンベヤー45で搬出される様子を概略的に示している。なお、圧縮成型機と押出成型機との間には、次のような特性上の差異があることから、いずれの成型機を採用するかは、両成型機の特徴を踏まえながら適宜選択すればよい。例えば、圧縮成型機は、造粒用途で適用できる原材料の種類が多く、比較的高い圧壊強度の造粒物を得ることができるという特長を有している。その一方で圧縮成型機では、構造上1台当たりの生産量は比較的少なく、大量生産に対応するには多数台を設置する必要があるという面もある。このような生産能力の点では、圧縮成型機と造粒メカニズムの異なる押出成型機は、比較的高い生産量を確保し易いという特長があり、大量生産に有利である。ただし、押出成型機では、圧縮造粒機ほどには加圧力を高めることはできないため、押出成型機による造粒物の圧壊強度は、圧縮成型機による造粒物より低めとなる面がある。また、押出成型機による造粒では、大粒径の造粒になるほどダイに押し込む圧力が低下していくため、圧壊強度が低下していく点にも留意する必要がある。
【0027】
本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)は、密度が、500~1500kg/mである。昇熱材の密度が500kg/m未満であると、昇熱材としての炭化物の含有量を確保しつつ、昇熱材そのものにかかる重力とそのものの外形に応じて転炉排ガスから受ける抗力との釣り合い関係から、重力の方が大きくなる外形寸法を選択することが困難になるためである。また、昇熱材の密度が1500kg/mを超えるほど大きくなると、昇熱材としての炭化物の含有量を確保することが困難となるためである。
【0028】
ここで、本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)は、鉄を含有するものとすることができる。これにより、たとえば、昇熱材を構成する炭化物の原料に、乾留後の揮発成分が多く密度が低い炭材を用いる場合などに、このような炭化物原料に、製鉄ダストなどの酸化鉄粉末や鉄スクラップ粉粒をバインダーとともに混ぜ合わせて成型することで、昇熱材の密度を高めて昇熱材の重力の方が転炉排ガスから受ける抗力より大きくすることができ好ましい。
【0029】
本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)の圧潰強度は、490N/個以上である。昇熱材の圧潰強度が490N/個未満である場合は、昇熱材が溶鋼へ着湯するまでに破砕して粉塵となり転炉排ガスとともに飛散してしまい、昇熱材を歩留まり高く溶湯まで投入することができないためである。
【0030】
本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)11の外形は、図1に示すとおり、そのものにかかる重力12とそのものの外形に応じて転炉排ガス10から受ける抗力13との釣り合い関係から、重力12の方が大きくなる代表長さdを有する外形である。転炉用昇熱材11の外形から定まる代表長さdが、転炉用昇熱材11そのものの外形に応じて転炉排ガスから受ける抗力13との釣り合い関係から、転炉用昇熱材11の重力12の方が大きくなる代表長さdでない場合は、転炉用昇熱材11が転炉排ガス10とともに浮上してしまうことになり、転炉用昇熱材11を溶湯(溶銑または溶鋼)8まで投入することができないためである。なお、転炉用昇熱材11がペレット形状の場合の代表長さdは、ペレット径で代表させ、転炉用昇熱材がブリケット形状の場合の代表長さdは、最大対角長さで代表させることができる。
【0031】
本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)の代表長さdは、式(1)を満たすのが好ましい。式(1)を満たす代表長さdを有する昇熱材は、転炉排ガスとともに浮上してしまうことなく、確実に溶湯まで投入することができるからである。
【数2】
ここで、
dは、炭化物成型体(昇熱材)の代表長さ[m]であり、
ρlumpは、炭化物成型体(昇熱材)の密度で、500~1500[kg/m]であり、
ρgasは、転炉排ガス密度で、0.17~0.21[kg/m]であり、
gasは、転炉排ガスの流速で、5~50[m/s]であり、
は、抗力係数で、ペレットで1.0[-]、ブリケットで1.6[-]であり、
gは、重力加速度[m/s]である。
なお、上記の転炉排ガス密度ρgas、転炉排ガスの流速vgasの範囲は、通常の転炉精錬での範囲であり、これら範囲の上限側の値を用いることで安全サイドの代表長さdを決定することができる。
【0032】
式(1)の導出過程について、次に説明する。
本発明者らは、式(1)を導出する前に、転炉用昇熱材が転炉排ガスとともに浮上してしまうことなく、確実に溶湯まで投入することができる条件について、図1中の拡大図で示すとおり、転炉用昇熱材11そのものにかかる重力12とそのものの外形に応じて転炉排ガスから受ける抗力13との釣り合い関係を検討した。すなわち、これらの釣り合い関係から、重力の方が大きくなる関係式は、昇熱材の体積をQ[m]、昇熱材の転炉排ガス流に対する投影面積をA[m]とする以外は式(1)と同じ変数を用いて、式(2)のように表される。
【数3】
ここで、Q/Aを昇熱材の代表長さdとし、ρlump>>ρgas、vgas>>vlumpとなることを考慮して、式(2)を変形すると、式(1)が導き出される。
【0033】
なお、式(1)、式(2)の妥当性をオフライン浮上試験で確認した結果を図5図6に示す。図5では、式(1)、式(2)の不等式を等式とみなした曲線を示すとともに、その曲線上に実験値がプロットされている。図6は、図5と同様のオフライン浮上試験結果を表す図であるが、図6では、炭化物原料と、製鉄ダストなどの酸化鉄粉末や鉄スクラップ粉粒とをバインダーとともに混ぜ合わせて昇熱材を成型することで、昇熱材の密度を高めた場合でも、式(1)、式(2)の妥当性が確認できることを示している。
【0034】
本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)中の炭化物は、
(d) 最大粒径が前記代表長さdの1/2未満の粒径を有するものであり、
(e) 大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比が、1.5~2.3であることが好ましい。
ここで、メジアン粒径D50とは、横軸に粒径をとり、縦軸に粒子量の累積値を体積百分率(%)で表した体積基準の積算分布曲線において、その累積値が50%にあたる粒径を読み取って定める。
【0035】
このような炭化物粒径の好ましい範囲についての予備実験結果について次に説明する。
本発明者らは、まず、炭化物粉粒体を成型して得られる炭化物成型体(転炉用昇熱材)の圧潰強度と炭化物粒子の充填率の関係について検討した。一般に、充填率が高いと、粒子間隙の毛管吸引力が高まることや粒子同士が互いの凹凸部に接合するといった機械的接合の効果が作用するため、圧潰強度と充填率(=1-空隙率)は比例することが知られている。
【0036】
充填率に関しては、Horsfieldによる充填モデルが知られており、単一粒径φの真球粒子を六方最密充填とした場合、空隙率は25.9%となる。更に、真球粒子間の残りの空間に先の真球粒子径φに対し、0.414φの真球粒子を充填することで、空隙率は20.7%とすることができる。しかしながら、炭化物を成型する場合、充填構造が六方最密充填にはなっておらず、粒形が真球でもなく、さらに粒径が均一ではなく分布を持つため、Horsfieldによる充填モデルの適用は難しい。
【0037】
そこで、炭化物の充填率を高めて炭化物成型体の圧潰強度を高めるための予備実験として、バイオマス炭化物をペレットに成型する場合について、まず、ペレット径A(A=20mm)の整数分割相当(1/2A、1/3A、1/4A、1/5A、1/6A)の平均粒子径を持つ炭化物群を、原料の炭化物の粉砕、篩い分けにより粒度調整して準備した。これらの炭化物群のうち、大粒子径側の炭化物群としては、1/2A、1/3A、1/4A、1/5Aの4つの群とし、小粒子径側の炭化物群としては、1/3A、1/4A、1/5A、1/6Aの4つの群として、表1に示す10組の組み合わせについて検討することにした。図7は、このような10組の炭化物の組合せのうち、一例としての4種類の粒子径比(1.3、2.0、2.5、3.0)となる組について、各組内の小粒子の体積割合(配合比)を変化させた試料毎の空隙率(=1-充填率)を測定した結果を示すものである。なお、このときの条件毎の各々の試料は、各組内の小粒子の体積割合(配合比)を変化させた炭化物の混合物毎に、バインダーとして炭化物の8質量%のコーンスターチと適当な水を添加して混練し、その後にペレタイザーで成型してペレットの成型品とし、さらに含水率3質量%以内となるように乾燥させて供試材としたものである。また、表1には、図7および図7と同等の図(図7で表示していない粒子径比でのデータを含むもの)から読み取れる最小空隙率も併記した。
【0038】
【表1】
【0039】
図7から大粒子径の炭化物と小粒子径の炭化物との配合比(配合割合)によって空隙率が変化し、小粒子の体積割合が0.3付近で最小値を取ることが分かる。また図7から、空隙率の変化は、粒子径の比で層別して整理できることも分かる。図8は、このように層別して整理できる転炉用昇熱材中の炭化物の大粒径と小粒径の粒子径比を横軸に取り、転炉用昇熱材の炭化物成型体の最小空隙率を縦軸に取って、これらの関係をまとめた図である。この図8から、炭化物の粒子径比(大粒子径/小粒子径)を大きくすることで、最小空隙率を低下させることができることが分かる。このことから、炭化物の粒子径比(大粒子径/小粒子径)を大きくすることで、充填率(=1-空隙率)を高めて、充填率に比例する圧潰強度を向上させることが期待できる。
【0040】
ただし、組No.3、4では、粒子径比が大きく、最小空隙率をそれぞれ、0.32、0.25と大きく低減させることができるものの、図7から分かるとおり炭化物粒子の配合比による空隙率の変化が大きい。そのため、製造の際のばらつきによって、添加水分量が適正値よりも多くなり、成型後、乾燥前の炭化物成型体にラミネーションなどの異常が発生して正常な成型体が得られず製品歩留まりが低下することが懸念される。一方で、組No.1、2、5~10は、空隙率は組No.3、4には劣るものの、空隙率が最小となる配合比の近辺の空隙率の変化率が小さく、空隙率の許容できる範囲に広い幅を持つため、製造の際のばらつきを考慮しても、炭化物成型体の異常が発生せず、高い製品歩留まりが得られることが期待される。このため、空隙率は組No.3、4には劣るものの、大小の粒子を配合しない場合(空隙率0.39)よりも空隙率が2~5%低下し、製造の際のばらつきを考慮しても、炭化物成型体の異常が発生せず、製品歩留り低下の無い、組No.1、2、7、9が適当だと判断した。
【0041】
一方で、大粒子として、1/2Aのように大きな径を持つ粒子を用いた場合、必要なバインダー濃度が増加することが判明した。これは、造粒の際、大粒子間に小粒子が入り込むため密充填されることを期待しているが、場所によっては大粒子間に小粒子が入り込まない部分がどうしても発生してしまうためと考えられる。そこで、このような、場所によって大粒子間に小粒子が入り込まない部分が発生するような、最大粒子径が代表長さdの1/2以上となる粒径を有する場合は好ましくないと判断した。
【0042】
以上のような予備実験結果から、本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)に含まれる炭化物は、まず、炭化物成型体の十分な圧潰強度を確保するために、(d)最大粒径が前記代表長さdの1/2未満の粒径を有するものとし、同時に、好ましい制御範囲を確保するために、(e)大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比が、1.5~2.3であるようにすることが好ましいとした。
【0043】
本発明の炭化物成型体(転炉用昇熱材)は、石炭、植物系バイオマス、廃プラスチックの群から選択される少なくとも1つを炭化した炭化物であるが、特に、植物系バイオマス、廃プラスチック由来の炭化物を用いて炭化物成型体(転炉用昇熱材)を製造する場合は、環境保護の観点から、製鉄プロセスにおいて実質的にCO排出量を削減することになり、望ましい。
【実施例0044】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0045】
(実施例1)
まず、転炉内に投入可能な昇熱材の粒径について算出した。投入する形状をピロー型のブリケットとし、このブリケットの側面側から落下すると仮定すると、日本機械学会1986年発行『機械工学便覧基礎編A5粒体工学』第100頁より、ブリケット形状は立方体に当てはめることができ抗力係数Cdは1.6となり、ブリケットの見かけ密度ρlumpを600kg/m、転炉排ガス密度ρgasを0.17kg/m、ガス流速vを42m/sとすると、ブリケットサイズは式(1)より40mm超と算出される。
【0046】
次に、炭化物原料として、一部に石炭を用いる以外は主に製材端材や林地残材等の木質バイオマス原料を用いることとし、650℃で加熱炭化して、一部の石炭由来のコークスと大半のバイオマス炭材とを被成型物に供することにした。
【0047】
上記のとおり転炉用昇熱材のブリケットサイズが40mm超と算出されたことを受けて、上記の炭材の粉砕物の粒度目標値を8mm以下とすることにし、上記の炭材を図2に示したロールクラッシャー(カッターミル)に1回または複数回通した後、篩分けして得られた種々の平均粒子径の炭材の粉砕物を準備した。さらに、これら種々の平均粒子径の炭材の粉砕物を組み合わせて、大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比が、概ね1.5から2.3の範囲の炭化物粉粒体の混合物を調合した。
【0048】
次に、調合した炭化物粉粒体に、バインダーのコーンスターチを3質量%分と、水24質量%分を加えて混合して、図3に示す双ロール式ブリケットマシンまたは図4に示すペレタイザーで、ブリケットまたはペレットに圧縮成型した。成型後は、5日間常温で静置して、含有水分量が3%程度まで乾燥させて表2に示す転炉用昇熱材とした。
【0049】
以上のようにして試作した表2に示す転炉用昇熱材の転炉への投入試験を、最大容量は360ton/ch、最大出鋼量は340ton/chの実機転炉で実施した。溶銑温度は1350℃にそろえ、転炉用昇熱材の投入量は、1000~3000kg/chとした。なお、過度な昇温を防ぐために、転炉用昇熱材を投入した吹錬では、吹錬末期に鉄鉱石を1000kg投入している。昇熱材を投入しない比較例1の場合を基準にして転炉用昇熱材の昇温効果を表2中にΔT(℃)で示すとおり、発明例1の昇熱材を1000kg投入した場合には、出鋼温度が10℃程度高めにシフトしており、また、発明例2の炭材を2000kg投入した場合には、出鋼温度が約20℃程度高めにシフトしており、さらに、発明例3の炭材を3000kg投入した場合には、出鋼温度が約30℃高めにシフトしていることから、発明例1~3の転炉用昇熱材が確実に着湯していることが確認できる。また、実施例4は、炭化物原料を木質バイオマスから石炭に変更した以外は実施例3に近い条件のものであるが、実施例3の昇熱材より密度と強度が高く出鋼温度がさらに10℃程度高めにシフトしていることから、昇熱材の投入後の破砕等による歩留り落ちを有利に回避できたものと推定できる。さらに、鉄分50mass%をバイオマス炭に混入して密度を高めた発明例5では、鉄分を混入させたため炭材量が減少しているものの昇熱材を投入しない比較例1と比較すると17℃程度温度上昇しており、昇熱材の高密度化は、転炉排ガスの上昇速度が大きい場合等の操業条件に合わせた昇熱材の着湯効率確保に有効であることが確認できる。以上のとおり、本発明例では、転炉内溶湯に確実に着湯して着熱に寄与していることが確認された。
【0050】
一方で、比較例2は、大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比(粒子径比)を3.0として圧潰強度が低下しすぎた場合であり、発明例3と比較して20℃程度出鋼温度が低下している。これは昇温材の圧壊強度が低下したことにより、搬送工程で昇熱材の形状を保つことができず、一部が破砕し飛散したために着湯効率が低下したためと推定される。また、代表長さdが本発明例の5分の1程度の比較例3の場合も、発明例3と比較して出鋼温度が20℃低下している。昇熱材の代表長さdが転炉排ガスの上昇流に抗しきれるだけの大きさでないために、昇熱材のほとんどが飛散して着熱にほとんど寄与しなかったためと考えられる。
【0051】
【表2】
【0052】
図9は、バイオマス炭材の炭化物粉粒体について、大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比(粒子径比)が2.3の発明例1~3の炭化物粉粒体と、同じく3.0の比較例2の炭化物粉粒体のそれぞれの粒度分布を示すものである。このような炭化物粉粒体の粒度分布(粒子径比)の違いにより、転炉用昇熱材の圧潰強度に差異が生じることが表2から分かる。
【0053】
(実施例2)
次に、投入する形状をペレットとする場合の実施例について説明する。
この場合についても、実施例1のブリケットの場合と同様に、まず、転炉内に投入可能な昇熱材の粒径について算出した。ペレットの半径方向から落下すると仮定すると、実施例1で提示した文献に従い抗力係数Cdは1.0となる。また、実施例1でのブリケットの場合と同様に、ペレットの見かけ密度ρlumpを600kg/m、転炉排ガス密度ρgasを0.17kg/mとする。ガス流速vについては、転炉吹錬での脱炭初期で、排ガス量が比較的少ないタイミングでのペレット投入を想定して、37m/sとする。以上の条件で、式(1)により計算すると、ペレット径は19mm超と算出される。
【0054】
上記のとおり転炉用昇熱材のペレットサイズが19mm超と算出されたことを受けて、上記の炭材の粉砕物の粒度目標値を4mm以下とすることにした。この粒度目標値に合わせて、上記の炭材を図2に示したロールクラッシャー(カッターミル)に1回または複数回通した後、篩分けして得られた種々の平均粒子径の炭材の粉砕物を準備した。さらに、大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比が、概ね1.5から2.3の範囲の炭化物粉粒体の混合物を調合した。
【0055】
次に、調合した炭化物粉粒体に、バインダーのコーンスターチを3質量%分と、水24質量%分を加えて混合して、図4に示すペレタイザーで、φ20mmのペレットに圧縮成型した。成型後は、5日間常温で静置して、含有水分量が3%程度まで乾燥させて表3に示す転炉用昇熱材とした。
【0056】
以上のようにして試作した表3に示す転炉用昇熱材の転炉への投入試験を、実施例1と同様に実施した。試験に用いた転炉は、最大容量は360ton/ch、最大出鋼量は340ton/chの実機転炉である。溶銑温度は1350℃にそろえ、転炉用昇熱材の投入量は、1000~3000kg/chとした。なお、過度な昇温を防ぐために、転炉用昇熱材を投入した吹錬で、吹錬末期に鉄鉱石を1000kg投入している。昇熱材を投入しない比較例1の場合を基準にして転炉用昇熱材の昇温効果を表3中にΔT(℃)で示す。
表3に示すとおり、発明例6の炭材を3000kg投入した場合には、出鋼温度が約30℃高めにシフトしており、ブリケット品と同様に転炉用昇熱材が確実に着湯していることが確認できる。一方、比較例4は圧壊強度が低下しすぎた場合であり、発明例6と比較して出鋼温度が15℃低下している。なお、比較例4での圧潰強度の低下原因は、主に次の2つの要因が関係していると考えられる。すなわち、一つ目の要因は、大粒径側が70体積%、小粒径側が30体積%となるように区分したときの、大粒径側の炭化物のメジアン粒径D50と小粒径側の炭化物のメジアン粒径D50の比が、表2の比較例2と同じく3.0と大きいためと推定される。また、二つめの要因としては、実施例2での押出成型機では、実施例1での圧縮造粒機ほどには加圧力を高めることができないためと考えられる。このように比較例4では、表2の比較例2と同様に昇温材の圧壊強度が低下したことにより、搬送工程で昇熱材の形状を保つことができず、一部が破砕し飛散したために着湯効率が低下したためと推定される。なお、表3中の比較例1は、表2で示した、転炉用昇熱材を投入しない基準としての比較例1を転載したものである。
【0057】
【表3】
【符号の説明】
【0058】
1 転炉本体
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 煙道
5 スカート
6 ホッパー
7 投入シュート
8 溶銑(溶湯)
9 スラグ
10 転炉排ガス
11 炭化物成型体(転炉用昇熱材)
12 炭化物成型体(転炉用昇熱材)の重力
13 転炉排ガスの抗力
21 炭材(バイオマス炭材)(乾留物)
22 炭材(バイオマス炭材)粉砕物
23 炭材(バイオマス炭材)混練物
24 炭材(バイオマス炭材)成型物
24a ブリケット
24b ペレット
26 ロールクラッシャー(カッターミル)
27 ホッパー
28 クラッシャーロール
29 ベルトコンベヤー
31 双ロール式ブリケットマシン
32 ホッパー
33 成型ロール
34 ベルトコンベヤー
41 ペレット製造機(ペレタイザー)
42 ホッパー
43 スクリューフィーダー
44 カッター
45 ベルトコンベヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9