(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133108
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】カテーテル、及び静脈瘤硬化用デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3205 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A61B17/3205
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191947
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2022036696
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金藤 健
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE21
4C160EE30
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】容易に用いることができる静脈瘤治療用機器を提供する。
【解決手段】長手方向に延在するシャフトを有し、前記シャフトは、前記長手方向に延在し、陰圧により静脈血を吸引する第1内腔と、前記長手方向に延在し、静脈瘤を硬化させる硬化剤を供給する第2内腔と、を有し、前記第1内腔は遠位部に第1遠位開口を有し、前記シャフトの前記第1遠位開口の近位端よりも近位側の領域における前記長手方向に垂直な断面において、前記第2内腔の断面積は、前記第1内腔の断面積よりも小さいカテーテル。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在するシャフトを有し、
前記シャフトは、
前記長手方向に延在し、陰圧により静脈血を吸引する第1内腔と、
前記長手方向に延在し、静脈瘤を硬化させる硬化剤を供給する第2内腔と、を有し、
前記第1内腔は遠位部に第1遠位開口を有し、
前記シャフトの前記第1遠位開口の近位端よりも近位側の領域における前記長手方向に垂直な断面において、前記第2内腔の断面積は、前記第1内腔の断面積よりも小さいカテーテル。
【請求項2】
前記第2内腔は前記第1遠位開口の遠位端よりも遠位側に位置する第2遠位開口を有している請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記シャフトは、前記長手方向に対して傾斜している傾斜面を有し、前記傾斜面は前記第1遠位開口を有しており、前記傾斜面の遠位端は近位端よりも前記第2内腔に近い請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記傾斜面の近位端において、前記第2内腔の前記断面積は、前記第1内腔の前記断面積よりも小さい請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記シャフトは、前記第1内腔を有する第1チューブと、前記第2内腔を有する第2チューブとを有している請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第1チューブの遠位端は、前記第2チューブの遠位端よりも近位側に位置し、前記第1チューブの近位端は、前記第2チューブの近位端よりも遠位側に位置する請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第2チューブは、扁平状部を少なくとも遠位端部に有しており、
前記扁平状部の前記長手方向に垂直な断面において、前記第1チューブの中心と前記第2チューブの中心とを通る第1の方向の前記扁平状部の最大長さが、前記第1の方向と垂直な第2の方向の前記扁平状部の最大長さよりも短い請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記シャフトは、バルーンを有していない請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のカテーテルと、
前記第1内腔の近位端に直接または間接に連結された吸引器、および/または前記第2内腔の近位端に直接または間接に連結された硬化剤注入器を有する静脈瘤硬化用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル、静脈瘤硬化用デバイス、及び静脈瘤の硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の下肢静脈等において、静脈が部分的に太くなって瘤状となった静脈瘤が生じることがある。これまでに、静脈瘤を治療するための様々な機器が知られている。例えば、特許文献1には、血管内薬剤を運ぶための装置において、a)基端と、末端と、該基端から該末端まで延びる流体ルーメンとを備えた第1カテーテルチューブと、b)該第1カテーテルチューブの末端に接続され且つ上記流体ルーメンに流通せしめられる膨張可能なバルーンと、c)基端と、末端と、該基端から該末端まで延びるルーメンとを有する第2カテーテルチューブであって、該第2カテーテルチューブのルーメン内に上記第1カテーテルチューブが延在している第2カテーテルチューブと、d)該第2カテーテルチューブの末端に接続される自己拡張バルーンであって、該自己拡張バルーン内に上記第1カテーテルチューブが延在している自己拡張バルーンと、e)基端と、末端と、該基端から該末端まで延びるルーメンとを有する第3カテーテルチューブであって、該第3カテーテルチューブのルーメン内に上記第2カテーテルチューブが延在している第3カテーテルチューブとを具備し、上記第2カテーテルチューブと第3カテーテルチューブとの少なくとも一方が血管内薬剤を受け入れ、該血管内薬剤を上記自己拡張バルーンの位置まで運ぶ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1の装置を用いて静脈瘤を治療する場合、装置により静脈瘤内に薬剤を注入して、バルーン等により静脈瘤の内壁に薬剤を擦り込んだ後に、患部に圧縮包帯等を巻いて患部を圧迫して静脈瘤から血液を排除し、静脈壁同士を融合させていた。しかし、静脈瘤の内壁に薬剤を擦り込む際の手技や、患部の圧迫等については、施術者によって巧拙の差が大きかった。そのため、近年では容易に用いることができる静脈瘤治療用機器の開発が求められている。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、容易に用いることができる静脈瘤治療用機器を提供することにある。その他の目的は、静脈瘤の新たな治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係るカテーテルは、以下の通りである。
[1]長手方向に延在するシャフトを有し、
前記シャフトは、
前記長手方向に延在し、陰圧により静脈血を吸引する第1内腔と、
前記長手方向に延在し、静脈瘤を硬化させる硬化剤を供給する第2内腔と、を有し、
前記第1内腔は遠位部に第1遠位開口を有し、
前記シャフトの前記第1遠位開口の近位端よりも近位側の領域における前記長手方向に垂直な断面において、前記第2内腔の断面積は、前記第1内腔の断面積よりも小さいカテーテル。
【0006】
当該カテーテルを用いて、第1内腔から静脈血を吸引することにより静脈瘤を収縮させることができ、更に第2内腔から静脈瘤内に硬化剤を供給することにより、静脈瘤を収縮させた状態で硬化させることができる。このような容易な操作により静脈瘤を治療することができる。実施の形態に係るカテーテルは、下記[2]~[8]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記第2内腔は前記第1遠位開口の遠位端よりも遠位側に位置する第2遠位開口を有している[1]に記載のカテーテル。
[3]前記シャフトは、前記長手方向に対して傾斜している傾斜面を有し、前記傾斜面は前記第1遠位開口を有しており、前記傾斜面の遠位端は近位端よりも前記第2内腔に近い[1]または[2]に記載のカテーテル。
[4]前記傾斜面の近位端において、前記第2内腔の前記断面積は、前記第1内腔の前記断面積よりも小さい[3]に記載のカテーテル。
[5]前記シャフトは、前記第1内腔を有する第1チューブと、前記第2内腔を有する第2チューブとを有している[1]~[4]のいずれかに記載のカテーテル。
[6]前記第1チューブの遠位端は、前記第2チューブの遠位端よりも近位側に位置し、前記第1チューブの近位端は、前記第2チューブの近位端よりも遠位側に位置する[5]に記載のカテーテル。
[7]前記第2チューブは、扁平状部を少なくとも遠位端部に有しており、
前記扁平状部の前記長手方向に垂直な断面において、前記第1チューブの中心と前記第2チューブの中心とを通る第1の方向の前記扁平状部の最大長さが、前記第1の方向と垂直な第2の方向の前記扁平状部の最大長さよりも短い[5]または[6]に記載のカテーテル。
[8]前記シャフトは、バルーンを有していない[1]~[7]のいずれかに記載のカテーテル。
【0007】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る静脈瘤硬化用デバイスは、下記[9]の通りである。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のカテーテルと、
前記第1内腔の近位端に直接または間接に連結された吸引器、および/または前記第2内腔の近位端に直接または間接に連結された硬化剤注入器を有する静脈瘤硬化用デバイス。
【0008】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法は、下記[10]の通りである。これにより静脈瘤の新たな治療方法を提供することができる。更に実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法は下記[11]または[12]であることが好ましい。
[10]静脈瘤内の静脈血を吸引する工程、及び
前記静脈瘤を硬化させる硬化剤を注入する工程とを含む静脈瘤の硬化方法。
[11]前記静脈瘤の遠位端部または前記静脈瘤よりも遠位側の静脈に第1の接着剤を注入する工程を含む[10]に記載の静脈瘤の硬化方法。
[12]前記硬化剤を注入した箇所よりも近位側に第2の接着剤を注入する工程とを含む[10]または[11]に記載の静脈瘤の硬化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成により、容易に用いることができる静脈瘤治療用機器を提供することができる。また本発明によれば、静脈瘤の新たな治療方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態に係るカテーテルの側面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係るカテーテルを静脈瘤内に挿入したときのカテーテルの概略図である。
【
図4】
図4は、
図3のカテーテルにより静脈瘤内の静脈血を吸引して、硬化剤を静脈瘤内に供給したときのカテーテルの概略図である。
【
図5】
図5は、
図2のカテーテルのA-A断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2のカテーテルのB-B断面の変形例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図2のカテーテルのC-C断面を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図2のカテーテルのC-C断面の変形例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る静脈瘤硬化用デバイスの側面図である。
【
図10】
図10は、
図9のカテーテルを静脈瘤内に挿入し、静脈瘤内の静脈血を吸引し、注射器で第1の接着剤を注入したときのカテーテルの概略図である。
【
図11】
図11は、
図10のカテーテルにより硬化剤を静脈瘤内に供給したときのカテーテルの概略図である。
【
図12】
図12は、
図11の静脈瘤内に注射器で第2の接着剤を注入したときの静脈瘤の概略図である。
【
図13】
図13は、
図1のカテーテルの第2チューブの変形例の遠位端部における軸方向の断面図である。
【
図14】
図14は、
図1のカテーテルの第2チューブの変形例の遠位端部における軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の実施の形態に係るカテーテルは、長手方向に延在するシャフトを有し、シャフトは、長手方向に延在し、陰圧により静脈血を吸引する第1内腔と、長手方向に延在し、静脈瘤を硬化させる硬化剤を供給する第2内腔と、を有し、第1内腔は遠位部に第1遠位開口を有し、シャフトの第1遠位開口の近位端よりも近位側の領域における長手方向に垂直な断面において、第2内腔の断面積は、第1内腔の断面積よりも小さい。
【0013】
当該カテーテルを用いて、第1内腔から静脈血を吸引することにより静脈瘤を収縮させることができ、更に第2内腔から静脈瘤内に硬化剤を供給することにより、静脈瘤を収縮させた状態で硬化させることができる。このような容易な操作により静脈瘤を治療することができる。
【0014】
以下では、
図1~8、
図13、
図14を参照しながら、実施の形態に係るカテーテルについて説明する。
図1は、実施の形態に係るカテーテルの側面図であり、
図2は、その一部拡大図である。
図3は、実施の形態に係るカテーテルを静脈瘤内に挿入したときのカテーテルの概略図であり、
図4は、静脈血を吸引して、硬化剤を静脈瘤内に供給したときのカテーテルの概略図である。
図5は、
図2のA-A断面を示し、
図6は、
図2のB-B断面の変形例を示し、
図7は、
図2のカテーテルのC-C断面を示し、
図8は、
図2のカテーテルのC-C断面の変形例を示す。
図13、
図14は、
図1のカテーテルの第2チューブの変形例の遠位端部における軸方向の断面図である。
【0015】
図1、
図2、
図3、
図4に示す通り、実施の形態に係るカテーテル1は、長手方向Xに延在するシャフト10を有し、シャフト10は、長手方向Xに延在し、陰圧により静脈血92を吸引する第1内腔11と、長手方向Xに延在し、静脈瘤91を硬化させる硬化剤4を供給する第2内腔12と、を有し、第1内腔11は遠位部に第1遠位開口13を有している。
【0016】
図3、
図4に示す通り、第1内腔11の第1遠位開口13から静脈瘤91内の静脈血92を吸引して、静脈瘤91を収縮させることができる。また第2内腔12から静脈瘤91に硬化剤4を供給することにより、静脈瘤91を硬化させることができる。収縮させた静脈瘤91に硬化剤4を供給することにより、硬化剤4を静脈瘤91の内壁に作用させ易くすることができる。更にこれにより、使用する硬化剤4の量を低減することができるため、硬化剤4による副作用を低減することもできる。なお第1内腔11は遠位部に第1遠位開口13を有していればよく、遠位端部に第1遠位開口13を有していることが好ましい。
【0017】
本明細書において、シャフト10の近位側とは、シャフト10の延在方向における使用者の手元側を意味し、シャフト10の遠位側とは、シャフト10の延在方向における近位側とは反対側を意味する。またシャフト10の延在方向を長手方向Xと称する。
【0018】
図1、
図2、
図5に示す通り、シャフト10の第1遠位開口13の近位端13Aよりも近位側の領域における長手方向Xに垂直な断面において、第2内腔12の断面積は、第1内腔11の断面積よりも小さい。これにより第2内腔12への静脈血92の流入を防止し易くすることができる。また相対的に第1内腔11の断面積が大きいことにより、第1内腔11の吸引力を向上することができる。更に、高い吸引力で吸引しながらシャフト10を移動させると、シャフト10と静脈瘤91の摩擦が生じ易くなるため、適度な損傷を静脈瘤91内に付与して血栓閉塞を生じ易くすることができる。
【0019】
図1に示す通り、長手方向Xに垂直な方向における第2内腔12の断面積が第1内腔11の断面積よりも小さくなっている領域は、シャフト10の第1遠位開口13の近位端13Aよりも近位側であって、近位端13Aから1cm以内の領域であることが好ましく、近位端13Aから5cm以内の領域であることがより好ましく、近位端13Aから10cm以内の領域であることが更に好ましく、近位端13Aから20cm以内の領域であることが更により好ましい。また当該領域は、シャフト10の第1遠位開口13の近位端13Aよりも近位側であって、シャフト10の近位端10Aに至るまでの領域であることが特に好ましい。即ち当該領域は、シャフト10の第1遠位開口13の近位端13Aよりも近位側の全領域であることが特に好ましい。なおカテーテル1がハンドル部材30を有している場合には、シャフト10の近位端10Aは、ハンドル部材30の遠位端に相当するものとする。
【0020】
長手方向Xに垂直な断面において、第2内腔12の断面積は、第1内腔11の断面積の0.8倍以下であることが好ましく、0.6倍以下であることがより好ましく、0.5倍以下であることが更に好ましい。一方、第2内腔12の断面積は、第1内腔11の断面積の0.01倍以上であることが好ましく、0.05倍以上であることがより好ましい。
【0021】
長手方向Xに垂直な断面における第1内腔11と第2内腔12の形状は、それぞれ、円形、楕円形、多角形、または角丸多角形であることが好ましく、円形または楕円形であることがより好ましい。これにより第1内腔11から静脈血92を吸収し易くすることができ、且つ第2内腔12で硬化剤4を通過させ易くすることができる。また、当該断面における第1内腔11と第2内腔12の外縁は、それぞれ、直線、曲線、または直線と曲線を含むことが好ましく、曲線、または直線と曲線を含むことがより好ましく、曲線からなることが更により好ましい。なお第1内腔11と第2内腔12の断面形状は同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0022】
第1内腔11から陰圧により静脈血92を吸引するに当たっては、例えば吸引器を用いればよい。これにより、第1内腔11から脱血し易くすることができる。吸引器の詳細については、後述する静脈硬化用デバイス100の吸引器2の説明を参照すればよい。
【0023】
第2内腔12から供給される硬化剤4は、静脈瘤91に供給されると、静脈瘤91の内壁に損傷を引き起こし、血栓閉塞および/または線維化を誘発することにより、静脈瘤91を退縮または消失させることができる。これにより、接着剤を用いて静脈瘤91の全体を閉塞させる場合に比べて、処置後のつっぱり感等の違和感を低減することができる。また第2内腔12から接着剤を注入する場合よりも、第2内腔12から硬化剤4を注入する場合の方が、第2内腔12内が詰まり難い。
【0024】
硬化剤4を第2内腔12から静脈瘤91に供給するに当たっては、例えば硬化剤注入器を用いればよい。硬化剤注入器の詳細については、後述する静脈硬化用デバイス100の硬化剤注入器3の説明を参照すればよい。
【0025】
硬化剤は、洗浄性硬化剤、浸透性硬化剤、化学的刺激性硬化剤、またはこれらの混合物を含んでいることが好ましい。これらのうち洗浄性硬化剤は副作用が少ないため、硬化剤は洗浄性硬化剤を含んでいることがより好ましい。
【0026】
洗浄性硬化剤は、内皮細胞の脂質に介入して、内皮細胞障害を惹起することができる。洗浄性硬化剤は、ポリドカノール、オレイン酸エタノールアミン、テトラデシル硫酸ナトリウム、モルイン酸ナトリウム、またはこれらの混合物であることが好ましく、ポリドカノールであることがより好ましい。硬化剤が洗浄性硬化剤を含んでいる場合、エタノール等の溶媒を含んでいることがより好ましい。
【0027】
浸透性硬化剤は、高張浸透圧により、内皮細胞の脱水を惹起し、内皮障害を引き起こすことができる。浸透性硬化剤は、10~25%高張食塩水、またはデキストロースを含む食塩水であることが好ましい。
【0028】
化学的刺激性硬化剤は、内皮細胞に直接作用して不可逆的な障害を与えることができる。化学的刺激性硬化剤は、第2クロム酸グリセリン、多ヨウ化ヨウ素、またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0029】
硬化剤4は、フォーム硬化剤であることが好ましい。フォーム硬化剤は泡状の硬化剤であり、泡状であることにより硬化剤4と静脈瘤91の内壁との接触面積が大きくなり、硬化剤4が血流によって流され難くなる。更に使用する硬化剤4の量を低減することができる。
【0030】
図2、
図3に示す通り、第2内腔12は第1遠位開口13の遠位端13Bよりも遠位側に位置する第2遠位開口14を有していることが好ましい。
図4に示す通り、当該構成により、収縮させた静脈瘤91内において、硬化剤4を静脈瘤91の遠位側に供給し易くすることができる。
【0031】
長手方向Xにおける第1遠位開口13の遠位端13Bから第2遠位開口14までの距離は、第1遠位開口13の近位端13Aにおける第1内腔11の径の1.5倍以上であることが好ましい。これにより、収縮させた静脈瘤91内において、硬化剤4を静脈瘤91の遠位側に供給し易くすることができる。当該倍率は2.0倍以上であることがより好ましく、5.0倍以上であることがより好ましい。一方、当該倍率は50倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。これにより、第1遠位開口13の吸引により狭くなった静脈瘤91内の領域に硬化剤4を注入し易くすることができる。
【0032】
図1、
図2に示す通り、シャフト10は、長手方向Xに対して傾斜している傾斜面19を有し、傾斜面19は第1遠位開口13を有しており、傾斜面19の遠位端19Bは近位端19Aよりも第2内腔12に近いことが好ましい。これにより、
図4に示すように静脈血92の吸引の際に静脈瘤91の内壁をシャフト10の遠位端部10bに密着させることができ、静脈瘤91の体積を減少し易くすることができる。また、傾斜面19が第1遠位開口13を有していることにより、第1遠位開口13の面積を大きくすることができるため、静脈血92を効率的に吸引し易くすることができる。
【0033】
傾斜面19は、平面、曲面、または平面と曲面の組み合わせであることが好ましく、平面であることがより好ましい。これにより静脈血92の吸引の際に静脈瘤91の内壁をシャフト10の遠位端部10bに密着させ易くすることができる。
【0034】
傾斜面19の近位端19Aにおいて、第2内腔12の断面積は、第1内腔11の断面積よりも小さいことが好ましい。シャフト10を静脈90内に挿入するに当たって、挿入抵抗に起因する負荷が近位端19A近傍に集中し易いが、面積の大きい第1内腔11により負荷が緩和される結果、面積の小さい第2内腔12が変形し難くなる。なお、これらの断面積は、長手方向Xに垂直な断面における断面積である。
【0035】
傾斜面19の近位端19Aと、シャフト10の近位端10Aとにおける第1内腔11の断面形状は、同じ形状であることが好ましい。また傾斜面19の近位端19Aからシャフト10の近位端10Aに至るまでの第1内腔11の断面形状は一定形状であることがより好ましい。これにより第1内腔11から吸引し易くすることができる。なお当該断面形状は、長手方向Xに垂直な断面における形状である。
【0036】
傾斜面19の近位端19Aと、シャフト10の近位端10Aとにおける第2内腔12の断面形状は、同じ形状であることが好ましい。また傾斜面19の近位端19Aからシャフト10の近位端10Aに至るまでの第2内腔12の断面形状は一定形状であることがより好ましい。これにより第2内腔12で硬化剤4を通過させ易くすることができる。なお当該断面形状は、長手方向Xに垂直な断面における形状である。
【0037】
図1、
図2に示す通り、シャフト10は、第1内腔11を有する第1チューブ21と、第2内腔12を有する第2チューブ22とを有していることが好ましい。これにより、第1内腔11と第2内腔12に、それぞれ異なる特性を付与することができる。
【0038】
図1に示す通り、第1チューブ21の遠位端21Bは、第2チューブ22の遠位端22Bよりも近位側に位置し、第1チューブ21の近位端21Aは、第2チューブ22の近位端22Aよりも遠位側に位置することが好ましい。これにより静脈血92の吸引経路を短くすることができるため、静脈血92を効率的に吸引することができる。当該近位側、遠位側は、長手方向Xにおける近位側、遠位側である。
【0039】
第2チューブ22は、近位端22Aから遠位端22Bにわたって、直線状であることが好ましい。これにより、第2チューブ22の内腔で硬化剤4を通過させ易くすることができる。また第2のチューブの遠位部は、第2遠位開口14以外に、第2チューブ22の内腔に連通する開口を有していてもよい。複数の開口を第2チューブ22の遠位端部に設けることにより、硬化剤4を多方向に作用させ易くすることができる。これらの開口は、第1遠位開口13の遠位端13Bよりも遠位側に位置することが好ましい。
【0040】
第1チューブ21の遠位端21Bよりも遠位側における第2チューブ22の外径は、傾斜面19の近位端19Aにおける第1チューブ21の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、第2チューブ22への静脈血92の流入を防止し易くすることができる。更に、第2チューブ22の遠位端22Bは、第1チューブ21の遠位端21Bよりも遠位側に位置することがより好ましい。これにより、第1チューブ21による吸引の際に、第1チューブ21よりも遠位側の部分における静脈瘤91を収縮させ易くすることができる。
【0041】
図1、
図2、
図5等に示されている通り、第2チューブ22は管状であるが、第2チューブ22は、扁平状部を少なくとも遠位端部22bに有していることが好ましい。第2チューブ22の少なくとも一部が扁平状であることにより、静脈血92の吸引の際に静脈瘤91の体積を減少し易くすることができる。
【0042】
図6に示す通り、第2チューブ22は、扁平状部22dを少なくとも遠位端部22bに有しており、扁平状部22dの長手方向Xに垂直な断面において、第1チューブ21の中心と第2チューブ22の中心とを通る第1の方向D1の扁平状部22dの最大長さL1が、第1の方向D1と垂直な第2の方向D2の扁平状部22dの最大長さL2よりも短いことがより好ましい。これにより、静脈血92の吸引の際に、第1の方向D1に静脈瘤91を収縮させ易くすることができる。第2チューブ22は、全長にわたって扁平状部22dを有していてもよい。
【0043】
長手方向Xに垂直な断面における第2チューブ22の扁平状部22dの外縁の形状としては、楕円形、角丸長方形、または長方形が好ましく、楕円形、または角丸長方形より好ましく、楕円形が更に好ましい。
【0044】
第1チューブ21と第2チューブ22は、直接固定されていてもよいし、直接固定されていなくともよい。例えば第1チューブ21と第2チューブ22は接着剤や溶着等により直接固定されていてもよい。
【0045】
図2、
図7に示すように、シャフト10は、長手方向Xに延在する内腔を有する第3チューブ23を有していてもよい。第3チューブ23の内腔に第1チューブ21と第2チューブ22とを配置することにより、第3チューブ23が第1チューブ21と第2チューブ22を包み込む形で、第1チューブ21と第2チューブ22とを固定することができる。第3チューブ23は熱収縮チューブであることが好ましい。第3チューブ23は、フッ素樹脂、および/またはポリ塩化ビニル樹脂を含んでいることが好ましく、フッ素樹脂、および/またはポリ塩化ビニル樹脂からなることがより好ましい。
【0046】
第1チューブ21、第2チューブ22は、それぞれ樹脂を含むことが好ましく、樹脂からなることがより好ましい。樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
第1チューブ21と第2チューブ22は、それぞれ内層と外層を有していてもよい。外層は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。内層は、フッ素樹脂、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。
【0048】
第1チューブ21と第2チューブ22は、それぞれ編組体を含んでいてもよい。編組体は、線状体が管状に編まれて形成されたものであることが好ましい。編組体は、金属、樹脂、またはこれらの両方を含むことが好ましく、金属を含むことがより好ましく、金属からなることが更に好ましい。金属として、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、ばね鋼、Co-Cr合金、Ni-Ti合金等が挙げられる。また編組体は、ピアノ線、オイルテンパー線等を含んでいてもよい。
【0049】
図13に示す通り、第2チューブ22は、遠位端部22bにおいて、第2内腔12側に弁22vを有していてもよい。弁22vは、遠位側から近位側に向って延在していることが好ましい。このような弁22vによれば、例えば第1内腔11から吸引しながら静脈瘤91内に第2内腔12から硬化剤4を供給する場合に、陰圧に伴う硬化剤4の過剰量の供給を防止し易くなる。またこのような弁22vにより、所定量の硬化剤4を供給した後の第2内腔12に残存した硬化剤4の体内への流出を低減することができる。また
図14に示す通り、弁22vは、近位側から遠位側に向って延在していてもよい。このような弁22vによれば、第2内腔12から静脈瘤91内に供給した硬化剤4の第2内腔12への逆流を防止し易くすることができる。弁22vは、エラストマー、ゴム、またはこれらの混合物を含んでいることが好ましく、エラストマー、ゴム、またはこれらの混合物からなることがより好ましい。これにより弾性変形し易くなるため、弁22vは破損し難くなる。エラストマーとして、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、またはこれらの混合物が挙げられる。ゴムとして、シリコーンゴム、ラテックスゴム、またはこれらの混合物が挙げられる。なお弁22vは、第2チューブ22と同じ素材により構成されていてもよく、第2チューブ22と一体に形成されていてもよい。弁22vの個数は1個以上、10個以下であることが好ましく。2個以上、4個以下であることがより好ましい。
【0050】
図8に示すように、シャフト10は、必ずしも第1チューブ21と第2チューブ22とを有している必要は無く、第1内腔11と第2内腔12とを有する長尺体であってもよい。長尺体の形状として円柱状、楕円柱状、多角柱状、角丸多角柱状が挙げられる。長尺体は、第1チューブ21と第2チューブ22の説明で挙げた樹脂を含んでいることが好ましく、当該樹脂からなることがより好ましい。
【0051】
シャフト10は、バルーンを有していないことが好ましい。これにより、シャフト10の径を低減することができ、静脈瘤91内にシャフト10を挿入し易くすることができる。またシャフト10は、第1内腔11と第2内腔12以外の長手方向Xに延在する内腔を有していてもよい。
【0052】
シャフト10の最大外径は、1mm以上、12mm以下であることが好ましく、3mm以上、8mm以下であることがより好ましい。これによりシャフト10を下肢静脈瘤内に挿入し易くすることができる。第1内腔11の最大径は、0.5mm以上、5.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上、4.0mm以下であることがより好ましい。一方、第2内腔12の最大径は、0.4mm以上、4.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以上、3.5mm以下であることがより好ましい。また第2内腔12の最大径は、第1内腔11の最大径よりも小さいことが好ましい。
【0053】
シャフト10は、多重管構造であるコアキシャル構造を有していてもよいが、
図5等に示すように、異なる中心軸を有する複数の内腔を備える構造であるマルチルーメン構造を有していることが好ましい。マルチルーメン構造により、第1内腔11の空間を大きくすることができ、静脈血92を吸引し易くすることができる。また第1内腔11と第2内腔12は互いに連通していないことが好ましい。これにより、第1内腔11による吸引と、第2内腔12による硬化剤4の供給を行い易くすることができる。
【0054】
図1に示す通り、カテーテル1は、近位端部にハンドル部材30を有していることが好ましい。ハンドル部材30は、第1チューブ21が埋め込まれており、第1チューブ21の内腔に連通する内腔31を有することが好ましい。内腔31に後述する吸引器2を直接または間接に連結することにより、第1チューブ21の内腔に陰圧をかけて静脈血92を吸引することができる。内腔31の形状はテーパ状であることが好ましい。更にハンドル部材30は、第2チューブ22が埋め込まれており、第2チューブ22の内腔に連通する内腔32を有することが好ましい。内腔32に後述する硬化剤注入器3を直接または間接に連結することにより、第2チューブ22の内腔に硬化剤4を注入することができる。内腔32の形状はテーパ状であることが好ましい。ハンドル部材30は樹脂を含むことが好ましく、樹脂からなることが好ましい。
【0055】
以下では、
図9、
図15、
図16を参照しながら、実施の形態に係る静脈硬化用デバイスについて説明する。
図9は、実施の形態に係る静脈瘤硬化用デバイスの側面図である。
図15、
図16は、
図9の静脈瘤硬化用デバイスの変形例の側面図である。
【0056】
図9に示す通り、実施の形態に係る静脈硬化用デバイス100は、上述したカテーテル1と、第1内腔11の近位端11Aに直接または間接に連結された吸引器2、および/または第2内腔12の近位端12Aに直接または間接に連結された硬化剤注入器3を有する。カテーテル1の第1内腔11に陰圧をかけて静脈血92を吸引することにより、静脈瘤91を収縮させることができ、更にカテーテル1の第2内腔12から硬化剤4を供給することにより、静脈瘤を収縮させた状態で硬化させることができる。このような容易な操作により静脈瘤91を治療することができる。
【0057】
図9に示す通り、吸引器2は、例えばチューブ2aを介して、第1内腔11の近位端11Aに間接的に連結されていることが好ましい。吸引器2としては、ポンプと排液貯蓄用容器とを備える吸引機構、シリンジ等が挙げられる。また吸引器2は、後述する制御部材40等からの信号に基づいてポンプ等を動かすことが可能な作動機構を有していてもよい。
【0058】
図9に示す通り、硬化剤注入器3は、チューブ3aを介して、第2内腔12の近位端12Aに間接的に連結されていることが好ましい。硬化剤注入器3として、ピストンとシリンダを備えるピストンシリンダ機構、シリンジ等が挙げられる。また硬化剤注入器3は、後述する制御部材40等からの信号に基づいてピストン等を動かすことが可能な作動機構を有していてもよい。
【0059】
静脈硬化用デバイス100は、吸引器2の吸引速度、吸引量を制御するか、および/または硬化剤注入器3からの硬化剤4の注入量、注入速度を制御する制御部材40を有していてもよい。制御部材40から吸引器2および/または硬化剤注入器3へは、有線で信号を伝達してもよいし、無線通信で信号を伝達してもよい。有線の場合は、電線、光ファイバーケーブル等を用いれば良く、無線通信の場合には、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi(ワイファイ)等を用いればよい。
【0060】
制御部材40は、入力部とメモリとプロセッサと出力部を有していることが好ましい。メモリは指示を保存していることが好ましい。プロセッサは、入力部からの信号に従って、メモリに保存された指示を実行して、出力部から吸引器2および/または硬化剤注入器3へ信号を伝達して、各部材を作動させることができる。プロセッサとしては、CPUが挙げられる。メモリとしては、ROM、RAM、フラッシュメモリが挙げられる。入力部は、タッチパネル、入力ボタン、入力ダイヤル等であってもよい。出力部は、電線、光ファイバーケーブル等に信号を伝達できるものであればよい。また出力部は、無線信号送信機であってもよい。
【0061】
図15に示す通り、静脈硬化用デバイス100は、加熱部材41を有していてもよい。加熱部材41は体外に配置されることが好ましい。加熱部材41を用いて体外から静脈瘤91近傍を加熱することにより、硬化剤4の反応速度が速くなり、静脈瘤91を治療し易くすることができる。この場合、加熱部材41として、温風を出して加熱するファン式ヒーター、赤外線が放射する赤外線式ヒーター、風を出さずに発熱により加熱する放熱式ヒーターが挙げられる。このうち放熱式ヒーターであることが好ましい。
図15に示す通り、放熱式ヒーターは、シート状のヒーターが好ましい。シート状のヒーターとして、ラバーヒーター、フィルムヒーター等が挙げられる。図示していないが、加熱部材41は、硬化剤注入器3を加熱するものであってもよい。この場合、加熱部材41は、ファン式ヒーター、赤外線式ヒーター、放熱式ヒーター、湯により加熱する湯煎式ヒーター等であってもよい。
【0062】
図16に示す通り、静脈硬化用デバイス100は、冷却部材42を有していてもよい。冷却部材42は体外に配置されることが好ましい。冷却部材42を用いて体外から静脈瘤91近傍を冷却することにより、静脈瘤91内における硬化剤4の滞留性が向上するため、硬化剤4による副作用が生じる範囲を小さくすることができる。冷却部材42として、ペルチェ素子と冷却板を有する部材が好ましい。冷却部材42は、貼付型の冷却ジェルシート、氷のう等であってもよい。
【0063】
図15、
図16に示す通り、静脈硬化用デバイス100は、温度センサ43を有していてもよい。例えば、シャフト10は、遠位端部に温度センサ43を有していてもよい。また、第2チューブ22は、遠位端部22bに温度センサ43を有していてもよい。温度センサ43として、熱電対、測温抵抗体、バイメタル温度計、放射温度計、サーミスタ測温体等が挙げられる。
図15、
図16では、温度センサ43として、熱電対が第2チューブ22の内腔に配置されており、熱電対の測温接点43pが当該内腔の遠位端に配置されている。温度センサ43は、第2チューブ22の第2内腔12に配置されていてもよいが、他の内腔に配置されていることが好ましい。また温度センサ43は、シャフト10に配置されている必要は無く、皮膚の表面上に配置されていてもよい。
【0064】
図15、
図16に示す通り、静脈硬化用デバイス100は、温度表示器44を有していてもよい。温度表示器44は体外に配置されることが好ましい。例えば、温度センサ43で取得した情報は、有線、または無線により、体外に配置される温度表示器44に送信されてもよい。使用者は、温度表示器44に表示される温度を確認し、加熱部材41の発熱量を調整することにより、加熱部材41の過度な加熱による静脈瘤の周辺組織の損傷を回避し易くすることができる。また使用者は、温度表示器44に表示される温度を確認し、冷却部材42の温度を調整したり、冷却部材42を皮膚から離すこと等により、冷却部材42の過度な冷却による静脈瘤の周辺組織の損傷を回避し易くすることができる。温度表示器44は、液晶ディスプレイを有していることが好ましい。
【0065】
これらの加熱部材41、冷却部材42、温度センサ43、および/または温度表示器44は、上述した制御部材40により制御されるように構成されていてもよい。当該制御に係る信号は、有線で伝達されてもよく、無線通信で伝達されてもよい。なおこれらの部材は必ずしも分離している必要は無く、2つ以上が一体に構成されていてもよい。
【0066】
以下では、上述した
図3、4に加えて、
図10~
図12を参照しながら、本発明の実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法について説明する。
図10は、
図9のカテーテルを静脈瘤内に挿入し、静脈瘤内の静脈血を吸引し、注射器で第1の接着剤を注入したときのカテーテルの概略図である。
図11は、
図10のカテーテルにより硬化剤を静脈瘤内に供給したときのカテーテルの概略図である。
図12は、
図11の静脈瘤内に注射器で第2の接着剤を注入したときの静脈瘤の概略図である。
【0067】
実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法は、
図3、
図4に示すように、静脈瘤91内の静脈血92を吸引する工程、及び静脈瘤91を硬化させる硬化剤4を注入する工程とを含む。吸引により、静脈瘤91を収縮させることができる。更に、硬化剤4を注入することにより、静脈瘤91を硬化させることができる。当該静脈血92の吸引は、硬化剤4を静脈瘤91に注入する前に実施することが好ましい。これにより、使用する硬化剤4の量を低減できると共に、静脈瘤91の内壁と硬化剤4の接触面積を大きくすることができる。また、静脈血92を吸引しながら硬化剤4を注入してもよい。これにより、上述した静脈瘤硬化用のカテーテル1等を用いる場合、第1内腔11による陰圧の作用により、第2内腔12から硬化剤4が静脈瘤91内に供給され易くなる。また、静脈血92を吸引しながらシャフト10を移動させてもよい。これにより、シャフト10と静脈瘤91の摩擦が生じ易くなって、適度な損傷を静脈瘤91内に付与して、血栓閉塞を生じ易くすることができる。また、カテーテル1を挿入するに当たっては、静脈90に含まれる静脈瘤91、または静脈90にカテーテル1を挿入することができる。またカテーテル1を静脈瘤91の遠位部から近位部に向かって移動させながら硬化剤4を注入することが好ましい。これにより、第1内腔11への硬化剤4の流入を防止し易くすることができる。
【0068】
図示していないが、実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法は、更に加熱部材により、皮膚を加熱する工程を含むことが好ましい。例えば静脈瘤91近傍の皮膚を体外から加熱部材により加熱することにより、硬化剤4の反応速度が速くなり、静脈瘤91を治療し易くすることができる。そのため、当該加熱は硬化剤4の注入よりも前に行うことが好ましいが、硬化剤4の注入後に加熱してもよい。
【0069】
図示していないが、実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法は、更に冷却部材により、皮膚を冷却する工程を含むことが好ましい。例えば静脈瘤91近傍の皮膚を体外から冷却部材により冷却することにより、静脈瘤91内における硬化剤4の滞留性が向上するため、硬化剤4による副作用が生じる範囲を小さくすることができる。そのため、当該冷却は硬化剤4の注入よりも前に行うことが好ましいが、硬化剤4の注入後に加熱してもよい。また当該冷却の後に上記加熱を行ってもよいし、当該冷却よりも前に上記加熱を行ってもよい。
【0070】
図10に示すように、実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法は、静脈瘤91の遠位端部または静脈瘤91よりも遠位側の静脈90に第1の接着剤5aを注入する工程を含むことが好ましい。第1の接着剤5aを静脈90に注入することにより、静脈血92の流動を低減することができる。これにより、硬化剤4が静脈瘤91内に留まり易くなるため、静脈瘤91を効率的に硬化させることができる。
【0071】
静脈瘤91における遠位側とは静脈瘤91のうち心臓に近い側であり、静脈瘤91における近位側とは静脈瘤91のうち心臓から遠い側である。
【0072】
第1の接着剤5aの注入は、静脈血92の吸引後であることが好ましい。これにより、効率的に静脈瘤91の内壁を接着させることができる。静脈血92を吸引しながら第1の接着剤5aを注入してもよい。第1の接着剤5aを注入するに当たっては、注射器を用いることが好ましい。注射器の注射針6を皮膚から静脈90に向かって穿刺し、その後、第1の接着剤5aを注入すればよい。なお静脈90に含まれる静脈瘤91に注射針6を穿刺して静脈瘤91内に第1の接着剤5aを注入してもよい。
【0073】
図11に示すように、第1の接着剤5aの注入後に、硬化剤4の注入を行うことが好ましい。これにより硬化剤4を静脈瘤91内に留め易くすることができる。また第1の接着剤5aを注入した箇所よりも近位側に硬化剤4を注入することが好ましい。
【0074】
実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法は、硬化剤4を注入した箇所よりも近位側に第2の接着剤5bを注入する工程とを含むことが好ましい。これにより、静脈瘤91内に注入した硬化剤4の流出を低減することができる。第2の接着剤5bを注入するに当たっては、注射器を用いることが好ましい。注射器の注射針6を皮膚から静脈90に向かって穿刺し、その後、第2の接着剤5bを注入すればよい。なお静脈瘤91は、静脈90に含まれるものであり、静脈瘤91に注射針6を穿刺して第2の接着剤5bを注入してもよい。
【0075】
第1の接着剤5a、第2の接着剤5bとしては、シアノアクリレート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ゼラチン系接着剤、フィブリン系接着剤、またはこれらの混合物が挙げられる。第1の接着剤5a、第2の接着剤5bは、同じ接着剤であってもよいし、異なる接着剤であってもよい。
【0076】
実施の形態に係る静脈瘤の硬化方法においては、上述した静脈瘤硬化用のカテーテル1および/または静脈瘤硬化用デバイス100を用いることが好ましい。詳細は、静脈瘤硬化用カテーテル1、静脈瘤硬化用デバイス100の説明を参照すればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 カテーテル
2 吸引器
2a チューブ
3 硬化剤注入器
3a チューブ
4 硬化剤
5a 第1の接着剤
5b 第2の接着剤
6 注射針
10 シャフト
10A 近位端
10b 遠位端部
X 長手方向
11 第1内腔
11A 近位端
12 第2内腔
12A 近位端
13 第1遠位開口
13A 近位端
13B 遠位端
14 第2遠位開口
19 傾斜面
19A 近位端
19B 遠位端
21 第1チューブ
21A 近位端
21B 遠位端
22 第2チューブ
22A 近位端
22B 遠位端
22b 遠位端部
22d 扁平状部
22v 弁
23 第3チューブ
D1 第1の方向
D2 第2の方向
30 ハンドル部材
31、32 内腔
40 制御部材
41 加熱部材
42 冷却部材
43 温度センサ
43p 測温接点
44 温度表示器
90 静脈
91 静脈瘤
92 静脈血
100 静脈瘤硬化用デバイス