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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133109
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】静脈瘤加熱用デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230914BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61M 29/02 20060101ALI20230914BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20230914BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20230914BHJP
   A61B 17/12 20060101ALI20230914BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B18/12
A61M25/00 520
A61M29/02
A61F2/82
A61M25/14 512
A61B17/12
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191949
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2022037907
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金藤 健
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD62
4C160KK70
4C267AA03
4C267AA05
4C267AA06
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB09
4C267BB28
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB42
4C267BB62
4C267CC30
4C267DD10
4C267EE05
(57)【要約】
【課題】容易に用いることができ、且つ治療効果の高い静脈瘤治療用機器を提供する。
【解決手段】長手方向に延在するシャフトであって、前記長手方向に延在し、陰圧により静脈血を吸引する第1内腔を有するシャフトと、収縮状態から拡張する拡張部を有する拡張部材と、を有し、前記拡張部の少なくとも一部は発熱する静脈瘤加熱用デバイス。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延在するシャフトであって、前記長手方向に延在し、陰圧により静脈血を吸引する第1内腔を有するシャフトと、
収縮状態から拡張する拡張部を有する拡張部材と、を有し、
前記拡張部の少なくとも一部は発熱する静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項2】
前記拡張部材は、前記第1内腔に挿入されている請求項1に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項3】
前記拡張部は、バルーン、導電性コイル、導電性バスケット、導電性ステント、またはこれらの組み合わせを有する請求項1または2に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項4】
前記拡張部は、バルーンを有し、前記バルーンの外側面は、導電性チップ、導電性シート、導電性メッシュ、導電性線状体、導電性螺旋体、またはこれらの組み合わせを有している請求項1または2に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項5】
前記シャフトは、前記長手方向に延在し、前記静脈瘤を閉塞させる閉塞物を供給する第2内腔を有している請求項1または2に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項6】
前記第1内腔は遠位部に第1遠位開口を有し、前記シャフトの前記第1遠位開口の近位端よりも近位側の領域における前記長手方向に垂直な断面において、前記第2内腔の断面積は、前記第1内腔の断面積よりも小さい請求項5に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項7】
前記第2内腔は前記第1遠位開口の遠位端よりも遠位側に位置する第2遠位開口を有している請求項6に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項8】
前記シャフトは、前記長手方向に対して傾斜している傾斜面を有し、前記傾斜面は前記第1遠位開口を有しており、前記傾斜面の遠位端は近位端よりも前記第2内腔に近い請求項6に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項9】
前記傾斜面の近位端において、前記第2内腔の前記断面積は、前記第1内腔の前記断面積よりも小さい請求項8に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項10】
前記シャフトは、前記第1内腔を有する第1チューブと、前記第2内腔を有する第2チューブとを有している請求項5に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項11】
前記第1チューブの遠位端は、前記第2チューブの遠位端よりも近位側に位置し、前記第1チューブの近位端は、前記第2チューブの近位端よりも遠位側に位置する請求項10に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項12】
前記第2チューブは、扁平状部を少なくとも遠位端部に有しており、
前記扁平状部の前記長手方向に垂直な断面において、前記第1チューブの中心と前記第2チューブの中心とを通る第1の方向の前記扁平状部の最大長さが、前記第1の方向と垂直な第2の方向の前記扁平状部の最大長さよりも短い請求項10に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項13】
前記第1内腔の近位端には、直接または間接に吸引器が連結されている請求項1または2に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【請求項14】
更に、前記拡張部の少なくとも一部を誘導加熱するための誘導加熱電源、及び/又は前記拡張部の少なくとも一部に電気的に接続されている高周波電源を含む請求項1または2に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈瘤加熱用デバイス、及び静脈瘤の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の下肢静脈等において、静脈が部分的に太くなって瘤状となった静脈瘤が生じることがある。これまでに、静脈瘤を治療するための様々な機器が知られている。例えば、特許文献1には、血管内薬剤を運ぶための装置において、a)基端と、末端と、該基端から該末端まで延びる流体ルーメンとを備えた第1カテーテルチューブと、b)該第1カテーテルチューブの末端に接続され且つ上記流体ルーメンに流通せしめられる膨張可能なバルーンと、c)基端と、末端と、該基端から該末端まで延びるルーメンとを有する第2カテーテルチューブであって、該第2カテーテルチューブのルーメン内に上記第1カテーテルチューブが延在している第2カテーテルチューブと、d)該第2カテーテルチューブの末端に接続される自己拡張バルーンであって、該自己拡張バルーン内に上記第1カテーテルチューブが延在している自己拡張バルーンと、e)基端と、末端と、該基端から該末端まで延びるルーメンとを有する第3カテーテルチューブであって、該第3カテーテルチューブのルーメン内に上記第2カテーテルチューブが延在している第3カテーテルチューブとを具備し、上記第2カテーテルチューブと第3カテーテルチューブとの少なくとも一方が血管内薬剤を受け入れ、該血管内薬剤を上記自己拡張バルーンの位置まで運ぶ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-533893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1の装置を用いて静脈瘤を治療する場合、装置により静脈瘤内に薬剤を注入して、バルーン等により静脈瘤の内壁に薬剤を擦り込んだ後に、患部に圧縮包帯等を巻いて患部を圧迫して静脈瘤から血液を排除し、静脈壁同士を融合させていた。しかし、静脈瘤の内壁に薬剤を擦り込む際の手技や、患部の圧迫等については、施術者によって巧拙の差が大きかった。更に静脈瘤の治療として、長尺状の加熱用デバイスの先端部に高周波電流を流して静脈瘤を内部から焼灼するいわゆるアブレーションが行われる場合があった。この場合、加熱用デバイスの先端に設けられた加熱部の位置を微調節して加熱部を静脈瘤の内壁に接触させる必要があり、これもまた施術者によって巧拙の差が大きかった。本発明は上記の様な問題に着目してなされたものであって、その目的は、容易に用いることができ、且つ治療効果の高い静脈瘤治療用機器を提供することにある。その他の目的は、静脈瘤の新たな治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る静脈瘤加熱用デバイスは、以下の通りである。
[1]長手方向に延在するシャフトであって、前記長手方向に延在し、陰圧により静脈血を吸引する第1内腔を有するシャフトと、
収縮状態から拡張する拡張部を有する拡張部材と、を有し、
前記拡張部の少なくとも一部は発熱する静脈瘤加熱用デバイス。
【0006】
当該拡張部を静脈瘤内で拡張させることにより、拡張部が静脈瘤に接触し易くなるため、拡張部により静脈瘤を容易に加熱することができる。更に当該加熱後に拡張部材を回収することにより静脈瘤を収縮させることができ、更に第1内腔から静脈血を吸引することにより、より一層、静脈瘤を収縮させることができるため、治療効果を向上することができる。実施の形態に係る静脈瘤加熱用デバイスは、下記[2]~[14]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記拡張部材は、前記第1内腔に挿入されている[1]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[3]前記拡張部は、バルーン、導電性コイル、導電性バスケット、導電性ステント、またはこれらの組み合わせを有する[1]または[2]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[4]前記拡張部は、バルーンを有し、前記バルーンの外側面は、導電性チップ、導電性シート、導電性メッシュ、導電性線状体、導電性螺旋体、またはこれらの組み合わせを有している[1]または[2]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[5]前記シャフトは、前記長手方向に延在し、前記静脈瘤を閉塞させる閉塞物を供給する第2内腔を有している[1]~[4]のいずれかに記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[6]前記第1内腔は遠位部に第1遠位開口を有し、前記シャフトの前記第1遠位開口の近位端よりも近位側の領域における前記長手方向に垂直な断面において、前記第2内腔の断面積は、前記第1内腔の断面積よりも小さい[5]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[7]前記第2内腔は前記第1遠位開口の遠位端よりも遠位側に位置する第2遠位開口を有している[6]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[8]前記シャフトは、前記長手方向に対して傾斜している傾斜面を有し、前記傾斜面は前記第1遠位開口を有しており、前記傾斜面の遠位端は近位端よりも前記第2内腔に近い[6]または[7]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[9]前記傾斜面の近位端において、前記第2内腔の前記断面積は、前記第1内腔の前記断面積よりも小さい[8]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[10]前記シャフトは、前記第1内腔を有する第1チューブと、前記第2内腔を有する第2チューブとを有している[5]~[9]のいずれかに記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[11]前記第1チューブの遠位端は、前記第2チューブの遠位端よりも近位側に位置し、前記第1チューブの近位端は、前記第2チューブの近位端よりも遠位側に位置する[10]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[12]前記第2チューブは、扁平状部を少なくとも遠位端部に有しており、
前記扁平状部の前記長手方向に垂直な断面において、前記第1チューブの中心と前記第2チューブの中心とを通る第1の方向の前記扁平状部の最大長さが、前記第1の方向と垂直な第2の方向の前記扁平状部の最大長さよりも短い[10]または[11]に記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[13]前記第1内腔の近位端には、直接または間接に吸引器が連結されている[1]~[12]のいずれかに記載の静脈瘤加熱用デバイス。
[14]更に、前記拡張部の少なくとも一部を誘導加熱するための誘導加熱電源、及び/又は前記拡張部の少なくとも一部に電気的に接続されている高周波電源を含む[1]~[13]のいずれかに記載の静脈瘤加熱用デバイス。
【0007】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る静脈瘤の治療方法は、下記[15]の通りであり、[16]であることが好ましい。
[15]収縮状態から拡張する拡張部を有する拡張部材を静脈に挿入し、前記静脈が有する静脈瘤内で前記拡張部を拡張する工程、
前記拡張部の少なくとも一部を発熱させて静脈瘤を加熱する工程、
前記静脈瘤内の静脈血を吸引する工程、を含む静脈瘤の治療方法。
[16]更に、前記静脈瘤を閉塞させる閉塞物を前記静脈瘤内に配置する工程を含む[15]に記載の静脈瘤の治療方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記構成により、容易に用いることができ、且つ治療効果の高い医療用機器を提供することができる。また本発明によれば、静脈瘤の新たな治療方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る静脈瘤加熱用デバイスの拡張部材の拡張部を静脈瘤内に挿入したときの概略図である。
図2図2は、図1の拡張部を拡張させて静脈瘤内を加熱したときの概略図である。
図3図3は、図2の拡張部材を回収したときの概略図である。
図4図4は、図3のシャフトを用いて静脈血を吸引し、静脈瘤内に閉塞物を供給したときの概略図である。
図5図5は、図1の静脈瘤加熱用デバイスの拡張部材と、拡張部材に接続された高周波電源の側面図である。
図6図6は、拡張部材の拡張部の変形例の側面図である。
図7図7は、拡張部材の拡張部の変形例の側面図である。
図8図8は、拡張部材の拡張部の変形例の側面図である。
図9図9は、実施の形態に係る静脈瘤加熱用デバイスのシャフトの側面図である。
図10図10は、図9のシャフトの一部拡大図である。
図11図11は、図10のシャフトのA-A断面を示す断面図である。
図12図12は、図10のシャフトのB-B断面の変形例を示す断面図である。
図13図13は、図10のシャフトのC-C断面を示す断面図である。
図14図14は、図10のシャフトのC-C断面の変形例を示す断面図である。
図15図15は、拡張部材の拡張部の変形例の側面図である。
図16図16は、図9のシャフトの第2チューブの変形例の遠位端部における軸方向の断面図である。
図17図17は、図9のシャフトの第2チューブの変形例の遠位端部における軸方向の断面図である。
図18図18は、図1の静脈瘤加熱用デバイスの拡張部材と、拡張部材に接続された高周波電源等の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0011】
本発明の実施の形態に係る静脈瘤加熱用デバイスは、長手方向に延在するシャフトであって、長手方向に延在し、陰圧により静脈血を吸引する第1内腔を有するシャフトと、収縮状態から拡張する拡張部を有する拡張部材と、を有し、拡張部の少なくとも一部は発熱するものである。
【0012】
当該拡張部を静脈瘤内で拡張させることにより、拡張部が静脈瘤に接触し易くなるため、拡張部により静脈瘤を容易に加熱することができる。次いで、当該加熱後に拡張部材を回収することにより静脈瘤を収縮させることができ、更に第1内腔から静脈血を吸引することにより、より一層、静脈瘤を収縮させることができるため、治療効果を向上することができる。
【0013】
以下では、図1図8図15図18を参照しながら、実施の形態に係る静脈瘤加熱用デバイスについて説明する。図1は、実施の形態に係る静脈瘤加熱用デバイスの拡張部材の拡張部を静脈瘤内に挿入したときの概略図である。図2は、図1の拡張部を拡張させて静脈瘤内を加熱したときの概略図であり、図3は、図2の拡張部材を回収したときの概略図である。図4は、図3のシャフトを用いて静脈血を吸引し、静脈瘤内に閉塞物を供給したときの概略図である。図5は、図1の静脈瘤加熱用デバイスの拡張部材と、拡張部材に接続された高周波電源の側面図である。図6図8図15は、拡張部材の拡張部の変形例の側面図である。図18は、図1の静脈瘤加熱用デバイスの拡張部材と、拡張部材に接続された高周波電源等の側面図である。
【0014】
図1に示す通り、静脈瘤加熱用デバイス100は、長手方向Xに延在するシャフト10と、拡張部材2とを有している。シャフト10は、長手方向Xに延在し、陰圧により静脈血92を吸引する第1内腔11を有している。更に拡張部材2は、収縮状態から拡張する拡張部3を有し、拡張部3の少なくとも一部は発熱する。
【0015】
図1図2に示す通り、拡張部材2の拡張部3を静脈瘤91内に配置し、拡張部3を収縮状態から拡張させることにより、拡張部3が静脈瘤91の内壁に接することができる。更に、拡張部3を発熱させることにより、静脈瘤91を加熱することができる。次いで、図3に示す通り、拡張部材2を回収することにより、静脈瘤91を収縮させることができ、図4に示す通り、シャフト10の第1内腔11から静脈血92を吸引することにより、より一層、静脈瘤91を収縮させることができる。このように静脈瘤91を収縮させることにより、治療効果を向上することができると共に、図4に示す通り、後述する閉塞物40を使用する場合、低用量で閉塞物40の閉塞効果を向上させることができる。以下では拡張部材2、シャフト10の順に詳述する。
【0016】
図1に示す通り、拡張部材2は、第1内腔11に挿入されていることが好ましい。このようにシャフト10の第1内腔11を介して静脈90内に拡張部材2を挿入することにより、拡張部3を静脈瘤91内に配置し易くすることができる。また、このように静脈血92を吸引する第1内腔11に拡張部材2を挿入することにより、拡張部材2を挿入するための内腔を別途、設ける必要が無くなるため、シャフト10の径を小さくすることができる。
【0017】
図5に示す通り、拡張部材2は、長手方向Dに延在するシャフト4を有し、且つシャフト4の遠位部4bに拡張部3を有することが好ましい。シャフト4は、長手方向Dに延在し、且つ長手方向Dに延在内腔を有する外側シャフト6と、長手方向Dに延在し外側シャフト6の内腔に配置された内側シャフト5と、を有していることが好ましい。
【0018】
本明細書において、拡張部材2のシャフト4の近位側とは、シャフト4の延在方向における使用者の手元側を意味し、シャフト4の遠位側とは、シャフト4の延在方向における近位側とは反対側を意味する。またシャフト4の延在方向を長手方向Dと称する。
【0019】
拡張部3は拡張体を有していることが好ましい。拡張体として、流体が内部に注入されることにより拡張することが可能な流体注入型の拡張体;シャフトの内腔内で収縮状態を維持し、且つシャフトの内腔外に解放されたときに拡張する自己拡張型の拡張体;または遠位端がシャフトの一部に固定され、近位端がスライド可能であり、近位端を遠位端に向かってスライドさせることにより拡張することが可能なスライド型の拡張体;が好ましい。また拡張体は、収縮状態から拡張した後に、更に収縮することが可能なものであることが好ましい。流体注入型の拡張体としては、バルーンが挙げられる。自己拡張型の拡張体としては、後述する導電性コイル、導電性ステントが挙げられる。スライド型の拡張体としては、導電性バスケットが挙げられる。
【0020】
図5に示す通り、拡張部3はバルーン7を有していることが好ましい。バルーン7を有していることにより、拡張部3が静脈瘤91の内壁に接触し易くなるため、拡張部3が静脈瘤91を加熱し易くなる。更に、静脈瘤91を一時的に拡張させることにより、第1内腔11から静脈血92を吸引し易くなるため、結果的に静脈瘤91が全体的に収縮し易くなる。
【0021】
拡張部材2のシャフト4は、バルーン7の内腔7Cに連通する流体供給用内腔4Cを有していることが好ましい。流体供給用内腔4Cから、収縮状態のバルーン7の内腔7Cに流体を供給することによりバルーン7を拡張させることができる。例えば、外側シャフト6の内表面と、内側シャフト5の外表面との間の内腔を流体供給用内腔4Cとすることができる。更に、供給した流体を内腔7Cから回収することによりバルーン7を収縮させることができる。例えば、流体供給用内腔4Cからバルーン7の内腔7C内の流体を回収してもよいし、別途、他の内腔をシャフト4に設けて、他の内腔から流体を回収してもよい。
【0022】
図2に示す通り、バルーン7の拡張時の最大外径は、シャフト10の最大外径より大きいことが好ましい。これにより、バルーン7の外表面が静脈瘤91の内壁に接触し易くなる。バルーン7の拡張時の最大外径は、シャフト10の最大外径の2倍以上であることがより好ましく、10倍以上であることが更に好ましく、20倍以上であることが更により好ましい。一方、バルーン7の拡張時の最大外径は、シャフト10の最大外径の50倍以下であることが好ましく、30倍以下であることがより好ましい。これにより過度な拡張による静脈瘤91の周囲の神経組織の圧迫を低減することができる。なおバルーン7の拡張時の最大外径とは、体外においてバルーン7の拡張したときの最大外径である。
【0023】
バルーン7の内腔7Cに供給される流体は、バルーン7を膨張できるものであればよい。流体は、液体、気体、または液体と気体の混合体が好ましく、液体がより好ましい。液体として、水、塩化ナトリウム水溶液、造影剤等が挙げられる。気体として、空気、窒素、炭酸ガス等が挙げられる。
【0024】
内側シャフト5は長手方向Dに延在する内腔を有していることが好ましい。内側シャフト5の内腔をガイドワイヤ用内腔4Dとしてもよい。ガイドワイヤを用いることにより拡張部材2を静脈90内に挿入し易くすることができる。
【0025】
長手方向Dに垂直な断面において、流体供給用内腔4Cの断面積は、ガイドワイヤ用内腔4Dの断面積よりも小さいことが好ましい。これにより過度な量の流体の供給を防止して、バルーン7の損傷を回避し易くすることができる。またガイドワイヤ用内腔4Dの断面積が相対的に大きいことによりガイドワイヤを挿入し易くすることができる。
【0026】
長手方向Dに垂直な断面において、流体供給用内腔4Cの断面積は、ガイドワイヤ用内腔4Dの断面積の0.8倍以下であることが好ましく、0.6倍以下であることがより好ましく、0.5倍以下であることが更に好ましい。一方、流体供給用内腔4Cの断面積は、ガイドワイヤ用内腔4Dの断面積の0.01倍以上であることが好ましく、0.05倍以上であることがより好ましい。なお当該断面積とは、流体供給用内腔4Cが複数存在する場合には、複数の流体供給用内腔4Cの合計の断面積である。
【0027】
長手方向Dに垂直な断面における流体供給用内腔4Cの断面と、ガイドワイヤ用内腔4Dの断面の形状は、それぞれ、円形、楕円形、多角形、または角丸多角形であることが好ましく、円形または楕円形であることがより好ましい。これにより流体を供給し易くなると共に、ガイドワイヤを挿入し易くなる。また、当該断面における流体供給用内腔4Cとガイドワイヤ用内腔4Dの外縁は、それぞれ、直線、曲線、または直線と曲線を含むことが好ましく、曲線、または直線と曲線を含むことがより好ましく、曲線からなることが更により好ましい。なお流体供給用内腔4Cとガイドワイヤ用内腔4Dの断面形状は同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0028】
図1に示す通り、バルーン7は、近位側から遠位側に向かって拡径する第1テーパ部と、直管部と、近位側から遠位側に向かって縮径する第2テーパ部とを順に有していることが好ましい。第2テーパ部により挿入抵抗を低くすることができる。更に、直管部により、静脈瘤91を均一に圧迫し易くすることができる。更に、第1テーパ部により、処置後にバルーン7を回収する際に、引き戻し易くすることができる。またバルーン7の形状は、球状、長球状、円柱状、楕円柱状、多角柱状、角丸多角柱状、円錐台状、角錐台状、またはこれらの組み合わせ形状であってもよい。これらのうち球状、長球状、円柱状、円錐台状、またはこれらの組み合わせが好ましい。
【0029】
バルーン7の個数は、1個であってもよいが、2個以上であってもよい。バルーン7の個数が2個以上である場合、複数のバルーン7は、図15に示すように、長手方向Dに隣接していることが好ましい。これにより、複雑な形状の静脈瘤の内壁にバルーン7を拡張して接触させ易くすることができる。一方、バルーン7の個数は、10個以下であってもよく、5個以下であってもよい。これにより製造コストを低減することができる。
【0030】
バルーン7は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、またはこれらの混合物が好ましく、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、またはこれらの混合物がより好ましい。また樹脂は、これらのエラストマー樹脂であることが好ましい。バルーン7は、樹脂を用いて二軸延伸ブロー成形、ディップ成形、射出成形、圧縮成形等により製造することができる。
【0031】
図5に示す通り、バルーン7の近位端部7aは、外側シャフト6の遠位端部6bの外側面に固定されていることが好ましい。更にバルーン7の遠位端部7bは、内側シャフト5の遠位端部5bの外側面に固定されていることが好ましい。バルーン7のうち他の部材に固定されていない部分である非固定部により囲まれた空間により、内腔7Cを形成することができる。内側シャフト5の遠位端部5bの形状として円柱状、楕円柱状、多角柱状、角丸多角柱状、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、円柱状、楕円柱状、または角丸多角柱状がより好ましい。これにより、拡張部材2を挿入し易くすることができる。
【0032】
内側シャフト5の遠位端部5bには、先端チップ9が配置されていてもよい。先端チップ9の形状として円柱状、楕円柱状、多角柱状、角丸多角柱状、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、円柱状、楕円柱状、または角丸多角柱状がより好ましい。これにより、拡張部材2を挿入し易くすることができる。また先端チップ9は長手方向Dに延在する内腔を有していることが好ましく、当該内腔に、内側シャフト5の遠位端部5bが配置されていることが好ましい。また先端チップ9は、図15に示すように、湾曲部を有していてもよい。これにより、挿入の際に回転動作が必要な部分に挿入し易くすることができる。
【0033】
先端チップ9は、エラストマー、ゴム、またはこれらの混合物を含んでいることが好ましく、エラストマー、ゴム、またはこれらの混合物からなることがより好ましい。これにより、体内への先端チップ9の挿入時の突き刺さりを防止し易くすることができる。エラストマーとして、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、またはこれらの混合物が挙げられる。ゴムとして、シリコーンゴム、ラテックスゴム、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
図示していないが、内側シャフト5の遠位端部5bには、感圧センサが配置されていてもよい。感圧センサが測定した情報は、有線、または無線により、体外に配置される圧力表示器に送信されることが好ましい。使用者は、圧力表示器に表示される圧力の数値等を確認しながら操作することにより、内側シャフト5の体内への挿入時の突き刺しを防止し易くすることができる。圧力表示器は、液晶ディスプレイを有していることが好ましい。また内側シャフト5の遠位端部5bには、温度センサが配置されていてもよい。また内側シャフト5の遠位端部5bには、上述した先端チップ9が配置されていてもよい。この場合、先端チップ9の内腔に内側シャフト5の遠位端部5bの少なくとも一部が配置されていることが好ましい。
【0035】
内側シャフト5の遠位端5Bは、外側シャフト6の遠位端6Bよりも遠位側に位置することが好ましい。これにより、バルーン7の近位端部7aと、遠位端部7bとを、それぞれ外側シャフト6の遠位端部6bと、内側シャフト5の遠位端部5bとに固定して、バルーン7の内腔7Cを形成することができる。また内側シャフト5の近位端部5aと外側シャフト6の近位端部6aは、後述するハンドル部材4Eに埋め込まれていることが好ましい。
【0036】
内側シャフト5、外側シャフト6は、それぞれ樹脂を含むことが好ましく、樹脂からなることがより好ましい。樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリイミド樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
内側シャフト5、外側シャフト6は、それぞれ内層と外層を有していてもよい。外層は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。内層は、フッ素樹脂、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。内側シャフト5、外側シャフト6は、それぞれ編組体を含んでいてもよい。編組体は、線状体が管状に編まれて形成されたものであることが好ましい。編組体は、金属、樹脂、またはこれらの両方を含むことが好ましく、金属を含むことがより好ましく、金属からなることが更に好ましい。金属として、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、ばね鋼、Co-Cr合金、Ni-Ti合金等が挙げられる。また編組体は、ピアノ線、オイルテンパー線等を含んでいてもよい。
【0038】
拡張部材2のシャフト4は、近位端部4aにハンドル部材4Eを有していることが好ましい。ハンドル部材4Eは、使用者が把持して操作できるものであればよい。
【0039】
図5に示す通り、拡張部3は、導電体3Dを有していることが好ましい。例えば、導電体3Dに高周波電流を流すことにより導電体3Dを発熱させることができる。また外部から導電体3Dに対して誘導加熱することにより導電体3Dを発熱させてもよい。導電体3Dは金属を含むことが好ましく、金属からなることがより好ましい。拡張部3は、少なくとも一部が発熱することが好ましく、拡張部3全体が発熱することがより好ましい。
【0040】
拡張部3は、バルーン、導電性コイル、導電性バスケット、導電性ステント、またはこれらの組み合わせを有することが好ましく、バルーン、導電性コイル、または導電性バスケットを有することがより好ましい。拡張部3がこのような拡張体を有することにより、拡張部3は静脈瘤91の内壁に接触し易くなる。また導電性コイル、導電性バスケット、導電性ステントは導電体でもあるため、高周波電流を流したり、誘導加熱を行うことにより発熱することができる。以下では、導電性コイル、導電性バスケット、導電性ステントについて詳述する。バルーンの詳細については、上述したバルーン7の記載を参照すればよい。
【0041】
導電性コイルは、導電性の金属管をレーザーによって、螺旋状に切り抜いて得たコイル、または導電線材を螺旋状に巻回して得たコイルであることが好ましい。導電性コイルは、例えば図6に示すように、拡張部材2のシャフト4の内腔から内腔外に解放されたときに拡張する導電性コイル3Fであることが好ましい。このような導電性コイルにより静脈瘤91を加熱することにより、静脈瘤91の内壁に長手方向Dに延在する螺旋状の溝を形成することができ、第1内腔11から静脈血92を吸引する際に当該溝が渦巻き状の血流を誘導する結果、静脈血92を吸引し易くすることができる。
【0042】
導電性コイル3Fは、導電線材が螺旋状に巻回されて1次形状が形成された1次形状のコイル、または1次形状のコイル部分を巻回して2次形状が形成された2次形状のコイルであること好ましい。2次形状コイルは、導電性線材が螺旋状に巻回されて形成されて形成した1次形状のコイルをさらに、弧状、波形状、ジグザグ形状、渦巻き形状(2次元の螺旋形状)、ボール形状、ボックス形状、またはループを伴わないランダムな湾曲形状等の2次形状にしたものであることが好ましく、渦巻き形状(2次元の螺旋形状)の2次形状にしたものであることがより好ましい。また図6に示すように、拡張部材2のシャフト4は、外側シャフト6を有さず内側シャフト5のみ有していてもよい。また図示していないが、拡張部材2はシャフト4を有さず、導電性コイル3Fからなるものであってもよい。即ち拡張部材2は拡張部3からなるものであってもよい。この場合、図1等に示す静脈瘤加熱用デバイス100のシャフト10の第1内腔11に直接、導電性コイル3Fを挿入して、遠位部を第1内腔11外に押し出して解放することにより導電性コイル3Fの遠位部を拡張させればよい。
【0043】
導電性バスケットは、各遠位端部が結束された複数の導電線材を有することが好ましい。更に導電線材は、長手方向Dに延在していることが好ましい。このような導電性バスケットにより静脈瘤91を加熱することにより、静脈瘤91の内壁に長手方向Dに延在する溝を形成することができ、第1内腔11から静脈血92を吸引する際に当該溝が直線的な血流を誘導する結果、静脈血92を吸引し易くすることができる。
【0044】
図7に示すように、導電性バスケット3Gは、複数の導電線材3Eの各遠位端部3Ebがそれぞれ結束されている第1結束部3Gcと、第1結束部3Gcよりも近位側において複数の導電線材3Eが結束されている第2結束部3Gdを有することが好ましい。当該構成により、導電性バスケット3Gはシャフト4の内腔から内腔外に解放されたときに拡張し易くなる。第1結束部3Gc、第2結束部3Gdにおいては、熱溶着、銀ロウ付け、接着、かしめ加工等の方法により、複数の導電線材3Eが結束されていることが好ましい。
【0045】
図示していないが、導電性バスケット3Gは、複数の導電線材3Eの遠位端部3Ebが内側シャフト5の遠位端部5bに固定され、且つ複数の導電線材3Eの近位端部が外側シャフト6に固定されて形成されたものであってもよい。この場合、内側シャフト5の位置を保持したままで、内側シャフト5の遠位端部5bに向かって外側シャフト6をスライドさせることにより導電性バスケット3Gを拡張することができる。
【0046】
導電性ステントは、導電性の金属管をレーザーによって切り抜いて加工したステント、導電線材の部材をレーザーによって溶接して組み立てたステント、または複数の導電線材を織って作製したステントであることが好ましい。更に導電性ステントは、長手方向Dに延在していることが好ましい。これにより、静脈瘤91を全体的に加熱し易くすることができる。また拡張部材2のシャフト4の内腔から内腔外に解放されたときに拡張する自己拡張型であることが好ましい。また図示していないが、導電性ステントは、近位端が内側シャフト5の遠位端部に連結された状態で、導電性ステントが外側シャフト6の内腔に収縮状態で配置されていることが好ましい。これにより、外側シャフト6を近位側にスライドさせて導電性ステントを露出させることにより、導電性ステントを拡張させることができる。更に導電性ステントの近位端が内側シャフト5に連結されていることにより、拡張後の導電性ステントを回収することができる。
【0047】
上述の導電性の金属管、導電線材は、それぞれ、金属を含むことが好ましく、金属からなることがより好ましい。金属は弾性を有する金属および/または形状記憶合金であることが好ましい。金属として、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、金、銀、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、アルミニウム、またはこれらの合金が好ましく、Ni-Ti合金および/またはステンレス鋼がより好ましい。各導電線材は、単線の金属線材であってもよく、撚線の金属線材であってもよい。
【0048】
拡張部3は、バルーン7を有し、バルーン7の外側面は、導電性チップ、導電性シート、導電性メッシュ、導電性線状体、導電性螺旋体、またはこれらの組み合わせを有していることが好ましい。拡張部3がバルーン7を有していることにより、拡張部3が静脈瘤91の内壁に接触し易くなるため、拡張部3が静脈瘤91を加熱し易くなる。更に、静脈瘤91を一時的に拡張させることにより、第1内腔11から静脈血92を吸引し易くなるため、結果的に静脈瘤91が全体的に収縮し易くなる。更に拡張部3の収縮、及び回収を行い易くすることができる。
【0049】
導電性チップの形状としては、立方体、三角柱、四角柱、五角柱等の多角柱、三角錐台、四角錐台、五角錐台等の多角錐台、円柱、楕円柱、半円柱、半楕円柱が好ましい。図5に示すように、導電性チップ3Hは、長手方向Dに延在していることが好ましい。このような導電性チップにより静脈瘤91を加熱することにより、静脈瘤91の内壁に長手方向Dに延在する溝を形成することができ、第1内腔11から静脈血92を吸引する際に当該溝が直線的な血流を誘導する結果、静脈血92を吸引し易くすることができる。バルーン7の外側面は、導電性チップ3Hを1つ有していることが好ましく、2つ以上有していることがより好ましい。バルーン7の外側面は、図5に示すように、少なくともバルーン7の直管部の外側面が導電性チップ3Hを有していることが好ましく、バルーン7の直管部、第1テーパ部、及び第2テーパ部の外側面が導電性チップ3Hを有していることがより好ましい。これにより静脈瘤91の内壁を全体的に加熱し易くすることができる。
【0050】
導電性シートの平面視の形状は、三角形、四角形、五角形等の多角形、円、楕円、半円、半楕円が好ましい。導電性シートは、長手方向Dに延在していることが好ましい。このような導電性シートにより静脈瘤91を加熱することにより、静脈瘤91の内壁に長手方向Dに延在する溝を形成することができ、第1内腔11から静脈血92を吸引する際に当該溝が直線的な血流を誘導する結果、静脈血92を吸引し易くすることができる。バルーン7の外側面は、導電性シートを1つ有していることが好ましく、2つ以上有していることがより好ましい。バルーン7の外側面は、少なくともバルーン7の直管部の外側面が導電性シートを有していることが好ましく、バルーン7の直管部、第1テーパ部、及び第2テーパ部の外側面が導電性シートを有していることがより好ましい。これにより静脈瘤91の内壁を全体的に加熱し易くすることができる。
【0051】
導電性メッシュの網目の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、円、楕円、半円、半楕円が好ましく、多角形であることがより好ましい。多角形の網目の方が静脈瘤91の内壁が食い込み易いため、静脈瘤91の内壁を加熱し易くすることができる。バルーン7の外側面は、少なくともバルーン7の最大径を有する部分に導電性メッシュを有していることが好ましく、図8に示すように、バルーン7の直管部の外側面が導電性メッシュ3Iを有していることがより好ましく、バルーン7の直管部、第1テーパ部、及び第2テーパ部の外側面が導電性メッシュ3Iを有していることが更に好ましい。これにより静脈瘤91の内壁を全体的に加熱し易くすることができる。
【0052】
導電性線状体の形状は、直線状、弧状、波形状、ジグザグ形状、またはこれらの組み合わせ形状が好ましく、直線状、ジグザグ形状、またはこれらの組み合わせ形状がより好ましい。導電性線状体は、長手方向Dに延在していることが好ましい。このような導電性シートにより静脈瘤91を加熱することにより、静脈瘤91の内壁に長手方向Dに延在する溝を形成し易くすることができるため、シャフト10の第1内腔11から静脈血92を吸引し易くすることができる。バルーン7の外側面は、導電性線状体を1つ有していることが好ましく、2つ以上有していることがより好ましい。バルーン7の外側面は、少なくともバルーン7の直管部の外側面が導電性線状体を有していることが好ましく、バルーン7の直管部、第1テーパ部、及び第2テーパ部の外側面が導電性線状体を有していることがより好ましい。これにより静脈瘤91の内壁を全体的に加熱し易くすることができる。
【0053】
導電性螺旋体の形状は、導電線材が螺旋状に巻回された1次形状の螺旋体であることが好ましい。導電性螺旋体は、長手方向Dに延在していることが好ましい。このような導電性螺旋体により静脈瘤91を加熱することにより、静脈瘤91の内壁に長手方向Dに延在する螺旋状の溝を形成することができ、第1内腔11から静脈血92を吸引する際に当該溝が渦巻き状の血流を誘導する結果、静脈血92を吸引し易くすることができる。また図示していないが、バルーン7の外側面は、少なくともバルーン7の最大径を有する部分に導電性螺旋体を有していることが好ましく、バルーン7の直管部の外側面が導電性螺旋体を有していることがより好ましく、バルーン7の直管部、第1テーパ部、及び第2テーパ部の外側面が導電性螺旋体を有していることが更に好ましい。これにより静脈瘤91の内壁を全体的に加熱し易くすることができる。
【0054】
導電性チップ、導電性シート、導電性メッシュ、導電性線状体、導電性螺旋体は、それぞれ、金属および/または導電性樹脂を含むことが好ましく、金属からなることがより好ましい。金属としては、ステンレス鋼、白金、金、銀、銅、タングステン、または白金イリジウム合金が好ましい。このような導電体は、バルーン7の外側面の上に直接設けられていてもよいし、バルーン7の外側面の上に基材を設けて、その基材の上に導電体を設けてもよい。基材としては、樹脂フィルム、樹脂シートが挙げられる。
【0055】
静脈瘤加熱用デバイス100は、更に、拡張部3の少なくとも一部を誘導加熱するための誘導加熱電源、及び/又は拡張部3の少なくとも一部に電気的に接続されている高周波電源を含むことが好ましい。これにより拡張部3の導電体3Dを発熱させることができる。
【0056】
図5に示す通り、静脈瘤加熱用デバイス100が高周波電源8を有する場合、高周波電源8は、拡張部材2のシャフト4内を通る導線8cを介して拡張部3の導電体3Dと電気的に接続されていることが好ましい。
【0057】
拡張部3が導電体3Dを2つ以上有している場合、各導電体3Dを静脈瘤91の内壁に接触させた状態で高周波電源8から高周波電流を流すことにより、静脈瘤91を加熱することができる。一方、図示していないが、拡張部3が導電体3Dを1つのみ有している場合、静脈瘤加熱用デバイス100は、更に、高周波電源8に電気的に接続された対極板を有していることが好ましい。この場合、対極板を体外から静脈瘤91近傍の皮膚に接触させて、拡張部3の導電体3Dを静脈瘤91の内壁に接触させた状態で、導線8cを介して高周波電源8から高周波電流を流すことにより静脈瘤91を加熱することができる。
【0058】
図示していないが、誘導加熱電源はコイルを有していることが好ましい。この場合、例えば、拡張部3を静脈瘤91内に配置し、体外において静脈瘤91近傍の皮膚にコイルを近づけた状態で誘導加熱電源からコイルに高周波電流を流すことにより、拡張部3の導電体3Dを発熱させることができる。
【0059】
高周波電流の周波数は、100kHz以上、5MHz以下であることが好ましく、300kHz以上、1MHz以下であることがより好ましい。
【0060】
図18に示す通り、静脈瘤加熱用デバイス100は、温度センサ50を有していてもよい。例えば、拡張部材2は、温度センサ50を有していてもよい。この場合、温度センサ50は、拡張部3の外表面、内表面、または外表面と内表面の間に配置されていることが好ましく、拡張部3の外表面に配置されていることがより好ましい。図18では、温度センサ50として、熱電対の測温接点50pが拡張部3の外表面に配置されている。拡張部3の拡張時において、温度センサ50と導電体3Dの最短距離は、拡張部3の最大径よりも小さいことが好ましく、当該最大径の0.50倍以下であることがより好ましく、0.30倍以下であることが更に好ましく、当該最大径の0.01倍以上であることが好ましく、0.05倍以上であることがより好ましく、0.10倍以上であることが更に好ましい。これにより、加熱された組織の温度を正確に測定し易くなる。温度センサ50として、熱電対、測温抵抗体、バイメタル温度計、放射温度計、サーミスタ測温体等が挙げられる。温度センサ50は、内側シャフト5のうち拡張部3に囲まれた部分に配置されていてもよい。また温度センサ50は、先端チップ9に配置されていてもよい。また温度センサ50は、拡張部材2に配置されている必要は無く、皮膚の表面上に配置されていてもよい。
【0061】
静脈瘤加熱用デバイス100は、高周波電源8からの高周波電流の供給量を制御する温度制御部材51を有していてもよい。温度制御部材51から高周波電源8へは、有線で信号を伝達してもよいし、無線通信で信号を伝達してもよい。有線の場合は、電線、光ファイバーケーブル等を用いれば良く、無線通信の場合には、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi(ワイファイ)等を用いればよい。例えば、温度制御部材51は、温度センサ50が検知した温度が一定の温度を上回ったときに、高周波電源8に信号を伝達して高周波電流の供給を停止させるように構成されていてもよい。これにより過度な加熱に伴う静脈瘤の周辺組織の損傷を回避し易くすることができる。温度制御部材51は体外に配置されることが好ましい。
【0062】
温度制御部材51は、入力部とメモリとプロセッサと出力部を有していることが好ましい。メモリは指示を保存していることが好ましい。プロセッサは、入力部からの信号に従って、メモリに保存された指示を実行して、出力部から各部材へ信号を伝達して、各部材を作動させることができる。プロセッサとしては、CPUが挙げられる。メモリとしては、ROM、RAM、フラッシュメモリが挙げられる。入力部は、タッチパネル、入力ボタン、入力ダイヤル等であってもよい。出力部は、電線、光ファイバーケーブル等に信号を伝達できるものであればよい。また出力部は、無線信号送信機であってもよい。
【0063】
図18に示す通り、静脈瘤加熱用デバイス100は、冷却部材52を有していてもよい。冷却部材52は体外に配置されることが好ましい。冷却部材52を用いて体外から静脈瘤近傍を冷却することにより、これにより過度な温度の上昇に伴う静脈瘤の周辺組織の損傷を回避し易くすることができる。冷却部材52として、ペルチェ素子と冷却板を有する部材が好ましい。冷却部材52は、貼付型の冷却ジェルシート、氷のう等であってもよい。温度制御部材51は、温度センサ50が検知した温度が一定の温度を上回ったときに、冷却部材52に信号を伝達して冷却させるように構成されていてもよい。冷却部材52は、皮膚の表面上に配置されることが好ましい。温度制御部材51からの信号は、有線、または無線により冷却部材52に送信されることが好ましい。
【0064】
図18に示す通り、静脈瘤加熱用デバイス100は、温度表示器53を有していてもよい。温度表示器53は体外に配置されることが好ましい。例えば、温度センサ50で取得した情報は、有線、または無線により、体外に配置される温度表示器53に送信されてもよい。使用者は、温度表示器53に表示される温度を確認し、高周波電源8からの高周波電流の供給量を制御することにより、過度な加熱による静脈瘤の周辺組織の損傷を回避し易くすることができる。また使用者は、温度表示器53に表示される温度を確認し、冷却部材52の温度を低下させること等により、過度な加熱による静脈瘤の周辺組織の損傷を回避し易くすることができる。温度表示器53は、液晶ディスプレイを有していることが好ましい。
【0065】
これらの高周波電源8、温度センサ50、冷却部材52および/または温度表示器53は、温度制御部材51により制御されるように構成されていてもよい。当該制御に係る信号は、有線で伝達されてもよく、無線通信で伝達されてもよい。なおこれらの部材は必ずしも分離している必要は無く、2つ以上が一体に構成されていてもよい。
【0066】
以下では、図9図14図16図17を参照しながら、静脈瘤加熱用デバイス100が有するシャフトについて詳述する。図9は、実施の形態に係る静脈瘤加熱用デバイスのシャフトの側面図である。図10は、図9のシャフトの一部拡大図である。図11は、図10のシャフトのA-A断面、図12はB-B断面の変形例、図13はC-C断面、図14はC-C断面の変形例を示す。図16図17は、図9のシャフトの第2チューブの変形例の遠位端部における軸方向の断面図である。
【0067】
本明細書において、静脈瘤加熱用デバイス100が有するシャフト10の近位側とは、シャフト10の延在方向における使用者の手元側を意味し、シャフト10の遠位側とは、シャフト10の延在方向における近位側とは反対側を意味する。またシャフト10の延在方向を長手方向Xと称する。
【0068】
図9図10に示す通り、シャフト10は、長手方向Xに延在し、陰圧により静脈血92を吸引する第1内腔11を有している。
【0069】
第1内腔11は遠位部に第1遠位開口13を有していることが好ましく、遠位端部に第1遠位開口13を有していることがより好ましい。これにより、図1図2に示すように拡張部材2を、第1内腔11の第1遠位開口13から少なくとも拡張部3が露出するように押し出し、拡張部3を膨張させて加熱することができる。また拡張部材2は、シャフト10に固定されておらず、シャフト10の長手方向Xに移動可能であることが好ましい。
【0070】
シャフト10は、長手方向Xに延在し、静脈瘤91を閉塞させる閉塞物40を供給する第2内腔12を有していることが好ましい。閉塞物40は、静脈瘤91内に供給された後に、静脈瘤91の少なくとも一部を閉塞させることができるものである。閉塞物40は、接着剤または硬化剤であることが好ましく、接着剤であることがより好ましい。
【0071】
接着剤は、シアノアクリレート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ゼラチン系接着剤、フィブリン系接着剤、またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0072】
硬化剤は、静脈瘤91に供給されると、静脈瘤91または静脈瘤91近傍の静脈90の内壁に損傷を引き起こし、血栓閉塞および/または線維化を誘発することにより、静脈瘤91の退縮を促進させることができる。硬化剤は、洗浄性硬化剤、浸透性硬化剤、化学的刺激性硬化剤、またはこれらの混合物を含んでいることが好ましい。これらのうち洗浄性硬化剤は副作用が少ないため、硬化剤は洗浄性硬化剤を含んでいることがより好ましい。洗浄性硬化剤は、内皮細胞の脂質に介入して、内皮細胞障害を惹起することができる。洗浄性硬化剤は、ポリドカノール、オレイン酸エタノールアミン、テトラデシル硫酸ナトリウム、モルイン酸ナトリウム、またはこれらの混合物であることが好ましく、ポリドカノールであることがより好ましい。硬化剤が洗浄性硬化剤を含んでいる場合、エタノール等の溶媒を含んでいることがより好ましい。浸透性硬化剤は、高張浸透圧により、内皮細胞の脱水を惹起し、内皮障害を引き起こすことができる。浸透性硬化剤は、10~25%高張食塩水、またはデキストロースを含む食塩水であることが好ましい。化学的刺激性硬化剤は、内皮細胞に直接作用して不可逆的な障害を与えることができる。化学的刺激性硬化剤は、第2クロム酸グリセリン、多ヨウ化ヨウ素、またはこれらの混合物であることが好ましい。
【0073】
硬化剤は、フォーム硬化剤であることが好ましい。フォーム硬化剤は泡状の硬化剤であり、泡状であることにより硬化剤と静脈瘤91の内壁との接触面積が大きくなり、硬化剤が血流によって流され難くなる。更に使用する硬化剤の量を低減することができる。
【0074】
閉塞物40を第2内腔12から静脈瘤91に供給するに当たっては、例えば閉塞物注入器を用いればよい。閉塞物注入器は、チューブを介して、第2内腔12の近位端に間接的に連結されていることが好ましい。閉塞物注入器として、ピストンとシリンダを備えるピストンシリンダ機構、シリンジ等が挙げられる。
【0075】
図9図11に示す通り、第1内腔11は遠位部に第1遠位開口13を有し、シャフト10の第1遠位開口13の近位端13Aよりも近位側の領域における長手方向Xに垂直な断面において、第2内腔12の断面積は、第1内腔11の断面積よりも小さいことが好ましい。これにより第2内腔12への静脈血92の流入を防止し易くすることができる。また相対的に第1内腔11の断面積が大きいことにより静脈血92を吸引し易くすることができる。
【0076】
図9図11に示す通り、長手方向Xに垂直な方向における第2内腔12の断面積が第1内腔11の断面積よりも小さくなっている領域は、シャフト10の第1遠位開口13の近位端13Aよりも近位側であって、近位端13Aから1cm以内の領域であることが好ましく、近位端13Aから5cm以内の領域であることがより好ましく、近位端13Aから10cm以内の領域であることが更に好ましく、近位端13Aから20cm以内の領域であることが更により好ましい。また当該領域は、シャフト10の第1遠位開口13の近位端13Aよりも近位側であって、シャフト10の近位端10Aに至るまでの領域であることが特に好ましい。即ち当該領域は、シャフト10の第1遠位開口13の近位端13Aよりも近位側の全領域であることが特に好ましい。なおシャフト10がハンドル部材30を有している場合には、シャフト10の近位端10Aは、ハンドル部材30の遠位端に相当するものとする。
【0077】
長手方向Xに垂直な断面において、第2内腔12の断面積は、第1内腔11の断面積の0.8倍以下であることが好ましく、0.6倍以下であることがより好ましく、0.5倍以下であることが更に好ましい。一方、第2内腔12の断面積は、第1内腔11の断面積の0.01倍以上であることが好ましく、0.05倍以上であることがより好ましい。
【0078】
長手方向Xに垂直な断面における第1内腔11と第2内腔12の形状は、それぞれ、円形、楕円形、多角形、または角丸多角形であることが好ましく、円形または楕円形であることがより好ましい。これにより第1内腔11から静脈血92を吸収し易くすることができ、且つ第2内腔12に閉塞物40を注入し易くすることができる。また、当該断面における第1内腔11と第2内腔12の外縁は、それぞれ、直線、曲線、または直線と曲線を含むことが好ましく、曲線、または直線と曲線を含むことがより好ましく、曲線からなることが更により好ましい。なお第1内腔11と第2内腔12の断面形状は同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0079】
第1内腔11から陰圧により静脈血92を吸引するに当たっては、例えば吸引器を用いればよい。これにより、第1内腔11から脱血し易くすることができる。吸引器としては、ポンプと排液貯蓄用容器とを備える吸引機構、シリンジ等が挙げられる。
【0080】
第2内腔12は第1遠位開口13の遠位端13Bよりも遠位側に位置する第2遠位開口14を有していることが好ましい。当該遠位側とは、シャフト10の遠位側のことである。第2遠位開口14が、第1遠位開口13の遠位端13Bよりも遠位側に位置することにより、拡張部材2の拡張部3を静脈瘤91内に挿入し易くすることができる。
【0081】
長手方向Xにおける第1遠位開口13の遠位端13Bから第2遠位開口14までの距離は、第1遠位開口13の近位端13Aにおける第1内腔11の径の1.5倍以上であることが好ましい。これにより、収縮させた静脈瘤91内において、閉塞物40を静脈瘤91の遠位側に供給し易くすることができる。当該倍率は2.0倍以上であることがより好ましく、5.0倍以上であることがより好ましい。一方、当該倍率は50倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。これにより、第1遠位開口13の吸引により狭くなった静脈瘤91内の領域に閉塞物40を注入し易くすることができる。
【0082】
シャフト10は、長手方向Xに対して傾斜している傾斜面19を有し、傾斜面19は第1遠位開口13を有しており、傾斜面19の遠位端19Bは近位端19Aよりも第2内腔12に近いことが好ましい。これにより、図10に示すように静脈血92の吸引の際に静脈瘤91の内壁をシャフト10の遠位端部10bに密着させることができ、静脈瘤91の体積を減少し易くすることができる。また、傾斜面19が第1遠位開口13を有していることにより、第1遠位開口13の面積を大きくすることができるため、静脈血92を効率的に吸引し易くすることができる。
【0083】
図2図9図10に示す通り、傾斜面19は、平面、曲面、または平面と曲面の組み合わせであることが好ましく、平面であることがより好ましい。これにより静脈血92の吸引の際に静脈瘤91の内壁をシャフト10の遠位端部10bに密着させ易くすることができる。
【0084】
傾斜面19の近位端19Aにおいて、第2内腔12の断面積は、第1内腔11の断面積よりも小さいことが好ましい。シャフト10を静脈90内に挿入するに当たって、挿入抵抗に起因する負荷が近位端19A近傍に集中し易いが、面積の大きい第1内腔11により負荷が緩和される結果、面積の小さい第2内腔12が変形し難くなる。なお、これらの断面積は、長手方向Xに垂直な断面における断面積である。
【0085】
傾斜面19の近位端19Aと、シャフト10の近位端10Aとにおける第1内腔11の断面形状は、同じ形状であることが好ましい。また傾斜面19の近位端19Aからシャフト10の近位端10Aに至るまでの第1内腔11の断面形状は一定形状であることがより好ましい。これにより第1内腔11から吸引し易くすることができる。なお当該断面形状は、長手方向Xに垂直な断面における形状である。
【0086】
傾斜面19の近位端19Aと、シャフト10の近位端10Aとにおける第2内腔12の断面形状は、同じ形状であることが好ましい。また傾斜面19の近位端19Aからシャフト10の近位端10Aに至るまでの第2内腔12の断面形状は一定形状であることがより好ましい。これにより、閉塞物40を第2内腔12に注入し易くすることができる。なお当該断面形状は、長手方向Xに垂直な断面における形状である。
【0087】
図9に示す通り、シャフト10は、第1内腔11を有する第1チューブ21と、第2内腔12を有する第2チューブ22とを有していることが好ましい。これにより、第1内腔11と第2内腔12に、それぞれ異なる特性を付与することができる。
【0088】
図9に示す通り、第1チューブ21の遠位端21Bは、第2チューブ22の遠位端22Bよりも近位側に位置し、第1チューブ21の近位端21Aは、第2チューブ22の近位端22Aよりも遠位側に位置することが好ましい。これにより静脈血92の吸引経路を短くすることができるため、静脈血92を効率的に吸引することができる。当該近位側、遠位側は、長手方向Xにおける近位側、遠位側である。
【0089】
第2チューブ22は、近位端22Aから遠位端22Bにわたって、直線状であることが好ましい。これにより閉塞物40を第2チューブ22内に注入し易くすることができる。
【0090】
第1チューブ21の遠位端21Bよりも遠位側における第2チューブ22の外径は、傾斜面19の近位端19Aにおける第1チューブ21の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、吸引の際に静脈瘤91を収縮させ易くすることができる。更に、第2チューブ22の遠位端22Bは、第1チューブ21の遠位端21Bよりも遠位側に位置することがより好ましい。これにより、閉塞物40を静脈瘤91内に注入し易くすることができる。
【0091】
図9図11等に示されている通り、第2チューブ22は管状であるが、第2チューブ22は、扁平状部を少なくとも遠位端部22bに有していることが好ましい。第2チューブ22の少なくとも一部が扁平状であることにより、静脈血92の吸引の際に静脈瘤91の体積を減少し易くすることができる。詳細には、静脈血92を吸引すると、静脈瘤91は略円形を保ったままでは無く扁平状に変形して収縮するため、第2チューブ22の少なくとも遠位端部22bが扁平状であることにより、静脈瘤91は収縮し易くなる。
【0092】
図12に示す通り、第2チューブ22は、扁平状部22dを少なくとも遠位端部22bに有しており、扁平状部22dの長手方向Xに垂直な断面において、第1チューブ21の中心と第2チューブ22の中心とを通る第1の方向D1の扁平状部22dの最大長さL1が、第1の方向D1と垂直な第2の方向D2の扁平状部22dの最大長さL2よりも短いことがより好ましい。これにより、静脈血92の吸引の際に、第1の方向D1に静脈瘤91を収縮させ易くすることができる。第2チューブ22は、全長にわたって扁平状部22dを有していてもよい。
【0093】
長手方向Xに垂直な断面における第2チューブ22の扁平状部22dの外縁の形状としては、楕円形、角丸長方形、または長方形が好ましく、楕円形、または角丸長方形より好ましく、楕円形が更に好ましい。
【0094】
第1チューブ21と第2チューブ22は、直接固定されていてもよいし、直接固定されていなくともよい。例えば第1チューブ21と第2チューブ22は接着剤や溶着等により直接固定されていてもよい。
【0095】
図9図10図13に示すように、シャフト10は、長手方向Xに延在する内腔を有する第3チューブ23を有していてもよい。第3チューブ23の内腔に第1チューブ21と第2チューブ22とを配置することにより、第3チューブ23が第1チューブ21と第2チューブ22を包み込む形で、第1チューブ21と第2チューブ22とを固定すること
ができる。第3チューブ23は熱収縮チューブであることが好ましい。第3チューブ23は、フッ素樹脂、および/またはポリ塩化ビニル樹脂を含んでいることが好ましく、フッ素樹脂、および/またはポリ塩化ビニル樹脂からなることがより好ましい。
【0096】
第1チューブ21と第2チューブ22は、それぞれ樹脂を含むことが好ましく、樹脂からなることがより好ましい。樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリイミド樹脂、またはこれらの混合物が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
第1チューブ21と第2チューブ22は、それぞれ内層と外層を有していてもよい。外層は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。内層は、フッ素樹脂、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、またはこれらの混合物を含むことが好ましい。
【0098】
第1チューブ21と第2チューブ22は、それぞれ編組体を含んでいてもよい。編組体は、線状体が管状に編まれて形成されたものであることが好ましい。編組体は、金属、樹脂、またはこれらの両方を含むことが好ましく、金属を含むことがより好ましく、金属からなることが更に好ましい。金属として、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、ばね鋼、Co-Cr合金、Ni-Ti合金等が挙げられる。また編組体は、ピアノ線、オイルテンパー線等を含んでいてもよい。
【0099】
図16に示す通り、第2チューブ22は、遠位端部22bにおいて、第2内腔12側に弁22vを有していてもよい。弁22vは、遠位側から近位側に向って延在していることが好ましい。このような弁22vによれば、例えば吸引しながら静脈瘤91内に閉塞物40を供給する場合に、陰圧に伴う閉塞物40の過剰量の供給を防止し易くなる。またこのような弁22vにより、所定量の閉塞物40を供給した後の第2内腔12に残存した閉塞物40の体内への流出を低減することができる。また図17に示す通り、弁22vは、近位側から遠位側に向って延在していてもよい。このような弁22vによれば、第2内腔12から静脈瘤91内に供給した閉塞物40の第2内腔12への逆流を防止し易くすることができる。弁22vは、エラストマー、ゴム、またはこれらの混合物を含んでいることが好ましく、エラストマー、ゴム、またはこれらの混合物からなることがより好ましい。これにより弾性変形し易くなるため、弁22vは破損し難くなる。エラストマーとして、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、またはこれらの混合物が挙げられる。ゴムとして、シリコーンゴム、ラテックスゴム、またはこれらの混合物が挙げられる。なお弁22vは、第2チューブ22と同じ素材により構成されていてもよく、第2チューブ22と一体に形成されていてもよい。弁22vの個数は1個以上、10個以下であることが好ましく。2個以上、4個以下であることがより好ましい。
【0100】
図14に示すように、シャフト10は、必ずしも第1チューブ21と第2チューブ22とを有している必要は無く、第1内腔11と第2内腔12とを有する長尺体であってもよい。長尺体の形状として円柱状、楕円柱状、多角柱状、角丸多角柱状が挙げられる。長尺体は、第1チューブ21と第2チューブ22の説明で挙げた樹脂を含んでいることが好ましく、当該樹脂からなることがより好ましい。
【0101】
シャフト10は、バルーンを有していないことが好ましい。これにより、シャフト10の径を低減することができ、静脈瘤91内にシャフト10を挿入し易くすることができる。またシャフト10は、外側面に電極を有していないことが好ましい。これにより、拡張部材2の拡張部3により、所望の部分だけ焼灼することができる。またシャフト10は、第1内腔11と第2内腔12以外の長手方向Xに延在する内腔を有していてもよい。
【0102】
シャフト10の最大外径は、1mm以上、12mm以下であることが好ましく、3mm以上、8mm以下であることがより好ましい。これによりシャフト10を下肢静脈瘤内に挿入し易くすることができる。第1内腔11の最大径は、0.5mm以上、5.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上、4.0mm以下であることがより好ましい。一方、第2内腔12の最大径は、0.4mm以上、4.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以上、3.5mm以下であることがより好ましい。また第2内腔12の最大径は、第1内腔11の最大径よりも小さいことが好ましい。
【0103】
シャフト10は、多重管構造であるコアキシャル構造を有していてもよいが、図11等に示すように、異なる中心軸を有する複数の内腔を備える構造であるマルチルーメン構造を有していることが好ましい。マルチルーメン構造により、第1内腔11の空間を大きくすることができ、静脈血92を吸引し易くすることができる。また第1内腔11と第2内腔12は互いに連通していないことが好ましい。これにより、第1内腔11による吸引と第2内腔12への閉塞物40の注入を行い易くすることができる。
【0104】
第1内腔11の近位端11Aには、直接または間接に吸引器が連結されていることがこのましい。また図9に示す通り、シャフト10は、近位端部にハンドル部材30を有していることが好ましい。ハンドル部材30は、第1チューブ21が埋め込まれており、第1チューブ21の内腔に連通する内腔31を有することが好ましい。内腔31に吸引器を直接または間接に連結することにより、第1チューブ21の内腔に陰圧をかけて静脈血92を吸引することができる。吸引器としては、ポンプと排液貯蓄用容器とを備える吸引機構、シリンジ等が挙げられる。吸引器はチューブを介して、第1内腔11の近位端11Aに間接的に連結されていてもよい。ハンドル部材30の内腔31の形状はテーパ状であることが好ましい。更にハンドル部材30は、第2チューブ22が埋め込まれており、第2チューブ22の内腔に連通する内腔32を有することが好ましい。これにより、内腔32から第2チューブ22の内腔に向けて閉塞物40を注入することができる。内腔32の形状はテーパ状であることが好ましい。ハンドル部材30は樹脂を含むことが好ましく、樹脂からなることが好ましい。
【0105】
以下では、本発明の実施の形態に係る静脈瘤の治療方法について説明する。図1図4に示す通り、実施の形態に係る静脈瘤の治療方法は、収縮状態から拡張する拡張部3を有する拡張部材2を静脈90に挿入し、静脈90が有する静脈瘤91内で拡張部3を拡張する工程、拡張部3の少なくとも一部を発熱させて静脈瘤91を加熱する工程、静脈瘤91内の静脈血92を吸引する工程、を含む。
【0106】
静脈瘤91は静脈90の一部であり、静脈瘤91以外の正常な部分の静脈90から静脈瘤91内へ拡張部材2を挿入することが好ましいが、静脈瘤91に直接拡張部材2を挿入してもよい。
【0107】
静脈瘤91内で拡張部3を拡張する工程により、拡張部3を静脈瘤91の内壁に接触させ易くすることができる。その結果、拡張部3により静脈瘤91を加熱し易くすることができる。更に、静脈瘤91を一時的に拡張させることにより、第1内腔11から静脈血92を吸引し易くなるため、結果的に静脈瘤91が全体的に収縮し易くなる。
【0108】
静脈瘤91を加熱する工程により、静脈瘤91を加熱して、静脈瘤91を熱収縮させることができる。拡張部3は、少なくとも一部が発熱すればよく、全体が発熱することが好ましい。当該加熱後に拡張部3を収縮させて、拡張部材2を回収することが好ましい。これにより加熱後の静脈瘤91を収縮させることができる。当該加熱は高周波電流を用いて加熱することが好ましい。
【0109】
静脈血92を吸引する工程により、静脈瘤91を一層、収縮させることができる。これにより静脈瘤91の治療効果を向上させることができる。更にこれにより、閉塞物40を使用する場合に、閉塞物40の使用量を低減することができる。当該吸引は、拡張部材2を回収した後に行うことが好ましい。これにより、拡張部3がバルーンを含む場合に、意図しない膨張を防止することができる。また当該吸引の前に拡張部3を収縮させて回収しておくことが好ましい。
【0110】
実施の形態に係る静脈瘤の治療方法は、更に、静脈瘤91を閉塞させる閉塞物40を静脈瘤91内に配置する工程を含むことが好ましい。閉塞物40により、静脈瘤91の少なくとも一部が閉塞するため、静脈瘤91の退縮を促進させることができる。閉塞物40は、例えばシャフト10の第2内腔12から静脈瘤91内に供給することができる。また、拡張部材2を静脈瘤91の遠位部から近位部に向かって移動させながら静脈瘤91内に閉塞物40を注入することが好ましい。これにより、第1内腔11への閉塞物40の流入を防止し易くすることができる。また閉塞物40を供給するに当たっては、注射器を用いて静脈瘤91内に閉塞物40を供給してもよい。なお静脈瘤91の近位部とは静脈瘤91のうち心臓から遠い側であり、静脈瘤91の遠位部とは静脈瘤91のうち心臓に近い側である。
【0111】
図示していないが、実施の形態に係る静脈瘤の治療方法は、更に冷却部材により、皮膚を冷却する工程を含むことが好ましい。例えば静脈瘤91近傍の皮膚を体外から冷却部材により加熱することにより、過度な加熱に伴う静脈瘤91の周辺組織の損傷を回避し易くすることができる。そのため、当該冷却は加熱後に行うことが好ましいが、加熱前から冷却してもよい。
【0112】
実施の形態に係る静脈瘤の治療方法においては、上述した拡張部材2、静脈瘤加熱用デバイス100等を用いることが好ましい。詳細は、拡張部材2、静脈瘤加熱用デバイス100等の説明を参照すればよい。
【符号の説明】
【0113】
2 拡張部材
3 拡張部
3D 導電体
3E 導電線材
3Eb 遠位端部
3F 導電性コイル
3G 導電性バスケット
3Gc 第1結束部
3Gd 第2結束部
3H 導電性チップ
3I 導電性メッシュ
4 シャフト
D 長手方向
4a 近位端部
4b 遠位部
4C 流体供給用内腔
4D ガイドワイヤ用内腔
4E ハンドル部材
5 内側シャフト
5a 近位端部
5b 遠位端部
5B 遠位端
6 外側シャフト
6a 近位端部
6b 遠位端部
6B 遠位端
7 バルーン
7a 近位端部
7b 遠位端部
7C 内腔
8 高周波電源
8c 導線
9 先端チップ
10 シャフト
10A 近位端
10b 遠位端部
X 長手方向
11 第1内腔
11A 近位端
12 第2内腔
13 第1遠位開口
13A 近位端
13B 遠位端
14 第2遠位開口
19 傾斜面
19A 近位端
19B 遠位端
21 第1チューブ
21A 近位端
21B 遠位端
22 第2チューブ
22A 近位端
22B 遠位端
22b 遠位端部
22d 扁平状部
22v 弁
23 第3チューブ
D1 第1の方向
D2 第2の方向
30 ハンドル部材
31、32 内腔
40 閉塞物
50 温度センサ
50p 測温接点
51 温度制御部材
52 冷却部材
53 温度表示器
90 静脈
91 静脈瘤
92 静脈血
100 静脈瘤加熱用デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18