(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013317
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】結束機
(51)【国際特許分類】
B65B 13/34 20060101AFI20230119BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20230119BHJP
【FI】
B65B13/34
A01G9/02 101R
A01G9/02 101W
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117401
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 達
【テーマコード(参考)】
2B327
3E052
【Fターム(参考)】
2B327ND01
2B327VA07
3E052AA41
3E052AA42
3E052AA47
3E052BA20
3E052CA18
3E052HA14
3E052LA09
(57)【要約】
【課題】外れにくい結束を可能とする結束機及び結束方法を提供すること。
【解決手段】本出願は、第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部を含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束機を開示する。この結束機は、前記第1対象物と係合可能に前記第1脚部を変位させる第1変位部と、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と係合可能に前記第2脚部を変位させる第2変位部とを備える。前記第2変位部は、上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を変位可能に構成されてもよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部を含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束機であって、
前記第1対象物と係合可能に前記第1脚部を変位させる第1変位部と、
前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と係合可能に前記第2脚部を変位させる第2変位部と
を備える結束機。
【請求項2】
前記第2変位部は、上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を変位可能に構成される
請求項1に記載の結束機。
【請求項3】
前記第1対象物が挿入される第1挿入部と、
前記第2対象物が挿入される第2挿入部と
を備え、
前記第1変位部は、前記第1挿入部に挿入された前記第1対象物と係合するように前記第1脚部の先端部を変位させ、
前記第2変位部は、前記第2挿入部に挿入された前記第2対象物を囲むように前記第2脚部を変位させる
請求項1又は2に記載の結束機。
【請求項4】
前記ステープルを前記ステープルの開口方向に移動させる移動部を備え、
前記第2変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に変位させる
請求項1乃至3の何れか一項に記載の結束機。
【請求項5】
前記第2変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に湾曲させる
請求項4に記載の結束機。
【請求項6】
前記第2変位部は、前記第2脚部の外側に設けられ、前記移動部により前記開口方向に移動する前記ステープルの前記第2脚部が当接して前記第2脚部を湾曲させるガイド壁を含む
請求項4又は5に記載の結束機。
【請求項7】
前記ガイド壁は、前記ステープルの外方に窪む凹部を含む
請求項6に記載の結束機。
【請求項8】
前記第1変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより前記第1対象物と係合する
請求項4乃至7の何れか一項に記載の結束機。
【請求項9】
前記第1変位部は、前記第1対象物及び前記第1脚部が挿入される第1挿入部を備え、
前記第1挿入部は、挿入された前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより挿入された前記第1対象物と係合する内壁を含む
請求項8に記載の結束機。
【請求項10】
前記ガイド壁よりも前方に設けられ後方を向いて形成される第2ガイド壁とを含む、
請求項6又は7に記載の結束機。
【請求項11】
前記第2ガイド壁は後方に突出する凸部を含む、
請求項10に記載の結束機。
【請求項12】
前記ステープルの前記本体部は湾曲する部分を含み、前記第1脚部は屈曲して外方に延びる第1部と、前記第1部から屈曲して前記ステープルの開口方向に延びる第2部とを含み、
前記移動部は、前記本体部に当接する湾曲部と、前記第1部に当接する肩部とを含む、
請求項4乃至11の何れか一項に記載の結束機。
【請求項13】
第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部とを含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束方法であって、
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させ、
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させる
結束方法。
【請求項14】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部を貫通する平面から離間する上方又は下方のいずれか一方に前記第1脚部の先端を進行させることを含み、
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、前記平面から離間する上方又は下方のいずれか他方に前記第2脚部の先端を進行させることを含む
請求項13に記載の結束方法。
【請求項15】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部の前記先端から、第1距離以下の部分を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることを含み、
前記第2脚部を変位させて前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、前記第2脚部の前記先端から、前記第1距離より大きい第2距離以下の部分を変位させて前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることを含む
請求項13又は14に記載の結束方法。
【請求項16】
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、
上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を第1回転方向に変位させて、前記第2脚部の先端部に前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過させることと、
前記第2脚部を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に変位させて、前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過した前記第2脚部の先端部を前記第1対象物に係合させることを含む
請求項13乃至15の何れか一項に記載の結束方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束機及び結束方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステープル等の結束具を用いて、ワイヤ等に植物等を結束することが知られている。
【0003】
特許文献1には、このようなステープルの一例が記載されている。このステープルは、左右一対のアームと、アーム間に設けられた凸状突起とを備えている。
【0004】
特許文献2には、マウントシェルに着脱可能に接続される充電式電源を備える電気的なバインディング用のマシンが記載されている。特許文献2記載のバインディング用のマシンは、特許文献1記載のステープルを用いて結束することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1839482号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第CN111903423号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるステープル等は、第1対象物と第2対象物という2つの対象物の相対的移動を拘束するものであるから、第1対象物と第2対象物を結束する結束具(ステープル)に相当する。
【0007】
特許文献2は、特許文献1に記載のステープルを用いる結束機を開示するが、対象物から外れにくい結束方法を開示していない。植物等の成長する対象物を結束するためには、成長前の状態においても、成長後の状態においても外れにくいように2つの対象物を結束しなければならない。成長前の状態において2つの対象物をきつく結束すると対象物の成長が阻害される。一方で2つの対象物をゆるく結束すると対象物である茎等が太く成長したり、果実等の重量が増加したときに、結束具の両端が開いて結束具が外れやすい。
【0008】
そこで本発明は、外れにくい結束を可能とする結束機及び結束方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部を含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束機を開示する。この結束機は、前記第1対象物と係合可能に前記第1脚部を変位させる第1変位部と、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と係合可能に前記第2脚部を変位させる第2変位部とを備える。
【0010】
前記第2変位部は、上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を変位可能に構成されてもよい。
【0011】
前記結束機は、第1対象物が挿入される第1挿入部と、前記第2対象物が挿入される第2挿入部とを備えてもよい。更に前記第1変位部は、前記第1挿入部に挿入された前記第1対象物と係合するように前記第1脚部の先端部を変位させ、前記第2変位部は、前記第2挿入部に挿入された前記第2対象物を囲むように前記第2脚部を変位させてもよい。
【0012】
前記結束機は、前記ステープルを前記ステープルの開口方向に移動させる移動部を備えてもよい。更に前記第2変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に変位させてもよい。
【0013】
移動部は、前記開口方向に移動可能なドライブドライバを含んでもよい。
【0014】
前記第2変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に湾曲させるように構成されてもよい。
【0015】
前記第2変位部は、前記第2脚部の外側に設けられ、前記移動部により前記開口方向に移動する前記ステープルの前記第2脚部が当接して前記第2脚部を湾曲させるガイド壁を含んでもよい。
【0016】
前記ガイド壁は、前記ステープルの外方に窪む凹部を含んでもよい。
【0017】
前記第2変位部は、前記移動部のスライダが前記開口方向に移動するにつれて、前記第2脚部を前記ステープルの内方に屈曲させるように構成されてもよい。
【0018】
前記第1変位部は、前記移動部が前記開口方向に移動するにつれて前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより前記第1対象物と係合するように構成されてもよい。
【0019】
前記第1変位部は、前記第1対象物及び前記第1脚部が挿入される第1挿入部を含んでもよい。
【0020】
前記第1挿入部は、挿入された前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより挿入された前記第1対象物と係合する内壁を含んでもよい。
【0021】
前記第1変位部は、前記第1対象物を挟むように前記第1脚部の先端部を折り返すように構成されてもよい。
【0022】
本出願は、結束方法を開示する。この結束方法は、第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部とを含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束方法である。前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させ、前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させる。
【0023】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部を貫通する平面から離間する上方又は下方に前記第1脚部の前記先端を進行させることを含んでもよい。
【0024】
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、前記平面から離間する上方に前記第2脚部の前記先端を進行させることを含んでもよい。
【0025】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部の前記先端から、第1距離以下の部分を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることを含んでもよい。
【0026】
前記第2脚部を変位させて前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、前記第2脚部の前記先端から、前記第1距離より大きい第2距離以下の部分を変位させて前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることを含んでもよい。
【0027】
前記第2脚部を変位させて、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と前記第2脚部を係合させることは、上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を第1回転方向に変位させて、前記第2脚部の先端部に前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過させることと、前記第2脚部を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に変位させて、前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過した前記第2脚部の先端部を前記第1対象物に係合させることを含んでもよい。
【0028】
上面視において、前記第1脚部と交差する位置まで前記第2脚部を第1回転方向に変位させて、前記第2脚部の先端部に前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過させることは、前記第2脚部を第1回転方向に曲げながら、前記第2脚部の先端部を前記第1回転方向と反対の第2回転方向に曲げることを含んでもよい。
【0029】
前記第1脚部を変位させて前記第1対象物と前記第1脚部を係合させることは、前記第1脚部の先端部を前記第1回転方向に曲げて前記第1対象物と前記第1脚部の先端部を係合させることを含んでもよい。
【0030】
なお上面視とは、結束前の前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部を貫通する平面に垂直な方向から見る視点のことをいい、平面視と呼んでもよい。
【0031】
本発明において、「第1対象物と第2対象物とを結束する」とは第1対象物に対する第2対象物の移動を制限することをいう。ここで結束に用いるステープルは、必ずしも、第1対象物又は第2対象物と当接することを要しない。例えば、ステープルが第2対象物と当接しない場合であっても、ステープルが第2対象物を包囲した状態で第1対象物と係合することにより、第1対象物に対する第2対象物の移動を制限することが可能となるから、「第1対象物と第2対象物とを結束する」は、このような状態を含む。
【0032】
本発明において、「屈曲する」又は「折り曲げる」とは局所的に曲げられることをいう。そのため屈曲されたとき、局所的に曲げられた部分以外の部分は、元の形状を実質的に維持する。例えば、直線的に延伸する部材を屈曲するとき局所的に曲げられた部分以外の部分は、直線的に延伸した形状を実質的に維持する。
【0033】
本発明において、「湾曲する」とは所定範囲にわたり弓なりに曲げられることをいう。そのため湾曲されたとき、湾曲された部材は、所定範囲にわたり滑らかに変形する。
【0034】
本発明において、「曲げる」とは屈曲及び湾曲を含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】
図1Aは、上面視における結束前のステープルの一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、上面視における結束後のステープルの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態にかかる結束機の右側面視である。
【
図3】
図3は、一実施形態にかかる結束機の上面視における断面図である。
【
図4A】
図4Aは、一実施形態にかかるクランク保持機構の斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、正面視における一実施形態にかかるクランク保持機構の第2保持機構を貫通する垂直断面図である。
【
図5B】
図5Bは、一実施形態において、誘導突起が孔部に挿入されている様子を示す垂直断面図である。
【
図5C】
図5Cは、一実施形態において、誘導突起が孔部に挿入されている様子を示す垂直断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態において、ドライバの移動動作と蓋部の上下動を連動させる構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、一実施形態において、ドライバの移動動作と蓋部の上下動を連動させる構成を示す模式図である。
【
図8】
図8は、一実施形態にかかるガイド保持機構の斜視図である。
【
図9】
図9は、一実施形態において結束機を用いてステープルを第1対象物に係合させるプロセスを示す上面視における断面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態において結束機を用いてステープルを第1対象物に係合させるプロセスを示す上面視における断面図である。
【
図11】
図11は、一実施形態においてステープルが第1対象物に係合している様子を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、一実施形態にかかる結束機の誘導壁部を示す部分拡大斜視図である。
【
図13A】
図13Aは、一実施形態にかかる結束機の内側支点部材を示す拡大斜視図である。
【
図13B】
図13Bは、一実施形態にかかる結束機の内側支点部材を含む部分の上面視における断面図である。
【
図14】
図14は、一実施形態にかかる結束機の押出部材を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。
【0037】
[ステープルの構成]
まず本実施形態に係るステープルS0の構成について説明する。ステープルS0は、塑性変形可能な可塑性を有する線材から構成される。ステープルS0は、ワイヤ又はクリップと呼ばれる場合がある。ステープルS0は、例えば、金属製の線材又は針金(表面がめっき処理又は樹脂等でコーティングされたものを含む。)を含む。
【0038】
ステープルS0は、第1脚部S10と、第2脚部S20と、第1脚部S10と第2脚部S20とを接続する本体部S30を含む。結束前の状態において、ステープルS0の第1脚部S10と第2脚部S20は離間して設けられるため、第1脚部S10と第2脚部S20との間には開口が設けられる。
【0039】
更に本体部S30における閉塞している部分(第1脚部S10と第2脚部S20を接続するために第1脚部S10及び第2脚部S20の延伸方向と交差する方向に延在する部分)から開口に向かう方向を開口方向D1と呼ぶ。結束機100にセットされるときステープルS0の開口方向D1は、前方X1と一致し、かつ、ステープルS0の移動方向と一致する。
【0040】
本体部S30は、第1脚部S10と第2脚部S20を接続し、茎等の第2対象物Pを囲む部分である。
図1Bに示されるように結束状態において、第1脚部S10と第2脚部S20は、同一のガイド要素である第1対象物Gに係合するため、本体部S30、第1脚部S10及び第2脚部S20で囲まれる領域に、第2対象物Pを配置することが可能となる。
【0041】
第2対象物Pを内部に配置させるための開口が設けられている限りにおいて、本体部S30は、第2対象物Pの形状に合わせて、矩形や平行四辺形等の様々な形状に形成されることが可能である。本実施形態における本体部S30は、
図1Aに示されるように、紙面左方向に開口するようにC字状乃至円弧状に湾曲して形成される。
【0042】
第1脚部S10及び第2脚部S20は、第1対象物Gに係合するための部分である。
図1Aに示されるように、第1脚部S10は、本体部S30の一方の端部に接続し、屈曲して外側に延びる第1部S101と、第1部S101から更に屈曲して開口方向D1に延びる第2部S102を備える。本体部S30と第2部S102とを接続する第1部S101はクランク部と呼ばれる場合がある。
【0043】
第2脚部S20は、本体部S30の他方の端部に接続し、開口方向D1に延伸する第3部S203と、第3部S203の先端部から外側に曲げられる第4部S204を備える。第4部S204はフック部乃至先端部と呼ばれる場合がある。
【0044】
図1Bに示されるように、第3部S203は、曲げられることにより本体部S30により形成される開口を閉塞する部分である。曲げられる前の状態において、第3部S203は、開口方向D1に延びるように、即ち、第2部S102と略平行に延伸する。従って、第3部S203は、本体部により形成される開口の幅、即ち、本体部S30の一方の端部と他方の端部との距離よりも長く形成され、かつ、第2部S102より長く形成されることが好ましい。但し第1対象物Gの外径が大きい場合及び第1脚部S10の先端部を螺旋状に湾曲させるとき(後述)の巻き数を多くしたい場合、第2部S102は、第3部S203より長く形成されてもよい。
【0045】
第4部S204は、ガイド要素である第1対象物Gに係合する部分である。第4部S204は、第3部S203の先端から外方に曲げられている。第3部S203は、閉塞された開口を広げ元の位置に戻る方向に弾性を有するので、第4部S204は、開口を広げる方向、即ち、第1脚部から離れる方向に、第1対象物Gに張力を加えることが可能となる。従って、第1対象物Gが撓んでステープルS0が脱落等することを抑制することが可能になる。
【0046】
図1Bに示されるように、第1脚部S10のうち第1対象物Gに係合するために変位する部分は、本体部S30に内接する最大円の半径(同図における第2対象物Pの半径に相当)を基準として、例えば、第1脚部S10の先端からこの半径の距離(「第1距離」の一例)以下の部分であってよい。第2脚部S20のうち第1対象物Gに係合するために変位する部分は、本体部S30に内接する最大円の半径を基準として、例えば、第2脚部S20の先端からこの半径の2倍の距離(「第2距離」の一例)以下の部分であってよい。このように構成することによって、第2脚部S20を用いて開口を閉塞することが可能となる。
【0047】
なおステープルS0の形状は、
図1Aに示されるものに限られない。例えば、第1脚部S10と第2脚部S20とは、必ずしも平行でなくてもよく、例えば、先端に進行するほど開口幅が狭くなっても、あるいは、先端に進行するほど開口幅が広くなっても、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されるようにステープルS0を曲げることが可能であることは当業者に理解される。また、第1脚部S10と第2脚部S20が同じ長さであっても、第1脚部S10の先端が余剰するものの、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されるようにステープルS0を曲げることが可能であることは当業者に理解される。
【0048】
更に第2脚部S20の先端部は、第4部S204のように予め曲げられなくてもよい。第2脚部S20の先端部が予め曲げられなくても、第2変位部300により第2脚部S20を第1対象物Gに係合可能に変位させることが可能であるから、上述した技術的効果の少なくとも一部は発揮されることは当業者に理解される。
【0049】
以下では、
図1Aに示されるステープルS0を
図1Bに示されるように曲げるための結束機100の構成の一例を説明する。
【0050】
[結束機の構成]
以下、第1実施形態に係る結束機100について説明する。
【0051】
なお相対的な方向の関係を説明するために、便宜的に、
図2における紙面左方向を前方X1と呼び、紙面右方向を後方X2と呼び、紙面上方向を上方Z1と呼び、紙面下方向を下方Z2と呼び、紙面垂直の手前方向を右方Y1と呼び、紙面垂直の奥行方向を左方Y2と呼ぶ場合がある。上面視は結束機100等を上方Z1の位置から下方Z2を向いて見たときの視点をいい、正面視は結束機100等を前方X1の位置から後方X2を向いて見たときの視点をいい、側面視は結束機100等を右方Y1又は左方Y2を向いて見たときの視点をいう。
【0052】
またステープルS0を結束機100にセットしたときに、ステープルSを基準として、ステープルS0で囲まれる領域(後述する第2対象物Pが挿入される領域)からステープルS0の外側に向かう方向を外方と呼び、ステープルS0の外側からステープルS0で囲まれる領域に向かう方向を内方と呼ぶ場合がある。
【0053】
図2は、右側面視における結束機100の断面図である。
図3は、初期状態(待機状態)における結束機100の上面視における断面図(平面図)である(但し便宜上、図を90度回転させている。以下便宜上の理由により同様に図を回転させている場合がある。なお以下の図において説明をわかりやすくするために、一部構成を省略する場合がある)。
【0054】
[結束機100の構成概要]
結束機100は、開口が形成されているステープルS0を用いて第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。
【0055】
第1対象物Gは、例えば、ワイヤ、梁、紐、棒、パイプ、樹木の枝等である。第1対象物Gは、ガイド要素と呼ばれる場合がある。第2対象物Pは、例えば、草木や樹木等の茎、蔓、枝、果物等である。第2対象物Pは、成長する場合や変形するものを含む。結束機100は、ステープルSの第1脚部S10を第1対象物Gと係合するように変位させるとともに、第2対象物PをステープルS0が囲むように第2脚部S2を第1対象物Gと係合するように変位させることにより、第1対象物Gに対する第2対象物Pの移動を制限し、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束する。
【0056】
結束機100は、第1対象物Gと係合可能にステープルS0の第1脚部S10を変位させる第1変位部200と、第1対象物Gと係合可能にステープルS0の第2脚部S20を変位させる第2変位部300とを備える。第2変位部300は、第2対象物PをステープルS0の第1脚部S10、第2脚部S20及び本体部S30で囲んだ状態で第2脚部S20の先端部S204を第1対象物Gと係合することにより、第1対象物Gと第2対象物Pとを結束可能に構成される。
【0057】
より具体的には、結束機100は、使用者によって把持されるように上下方向に延在し、結束機100を駆動するためのスイッチが設けられたグリップ12と、上下方向に積層された複数のステープルSを収容可能に構成されるマガジン14(
図2)と、マガジン14に収容される複数のステープルS0を上方Z1に付勢するプッシャ16と、上端に位置するステープルS0を開口方向D1と一致する前方X1に押すことにより上端に位置するステープルS0を他のステープルS0と分離させて、前方X1に移動させるドライバ420(
図3)と、ドライバ420を移動させるための移動機構と、ステープルS0の第1脚部S10を湾曲又は屈曲させることにより変位させるための第1変位部200(
図3。クリンチャ部と呼ばれる場合がある。)と、ステープルS0の第2脚部S20を湾曲又は屈曲させることにより変位させるための第2変位部300(
図3)と、
ドライバ420の前進及び後退に応じて上下動することにより第1変位部200による第1脚部S10の塑性変形を補助する蓋部170とを備える。
【0058】
[ドライバ及びドライバの移動機構]
結束機100のドライバ420は、前方X1に移動することにより、ステープルS0を前方に移動させる機能を有する。ドライバ420は、他のステープルS0と連結された上端のステープルS0を前方に移動させることにより、他のステープルS0と分離可能に構成される。ドライバ420は、分離されたステープルS0を更に前方X1に移動させて第1脚部S10を第1変位部200に当接させることにより第1脚部S10を塑性変形させ、第2脚部S20を第2変位部300が含む第1ガイド壁312及び第2ガイド壁320(
図9)に当接させることにより第2脚部S20を塑性変形させるように構成されている。
【0059】
結束機100のナット部品52(
図3)は、ドライバ420を前方X1及び後方X2に移動させる機能を有する。本実施形態に係るナット部品52には、ボールねじ50の雄ねじと不図示のボール部材を介して螺合する雌ねじが形成されている。このためボールねじ50が順方向に回転することによりナット部品52は前方X1に移動し、ボールねじ50が逆方向に回転することによりナット部品52は後方X2に移動する。ナット部品52は、ドライバ420と固定されている。
【0060】
ナット部品52及びドライバ420は、前方X1及び後方X2に移動可能に構成されているため、移動部と呼ばれる場合がある。
【0061】
モータ54(
図3)はボールねじ50を回転させる。モータ54は、結束機100の後端部に設けられる。なお結束機100は着脱自在に設けられるバッテリを備え、モータ54はバッテリの電源によって回転駆動可能に構成されてもよい。本実施形態にかかる結束機100は更にモータ54の出力軸に係合する減速機55を備えており、モータ54は減速機55によりトルクを増加させてボールねじ50を回転させる。更に結束機100の後端部には、モータ54を制御するための制御装置に相当するCPUが搭載されているプリント配線基板が搭載されている。
【0062】
ボールねじ50(
図3)は、結束機100の略中心を前後方向に延伸して設けられる。上述したようにボールねじ50には、ナット部品52の雌ねじと不図示のボール部材を介して螺合する雄ねじが形成されている。
【0063】
ベースは、ドライバ420を支持する。ベースは、ドライバ420の底面に当接乃至対向することによりドライバ420を下方Z2から支持する支持面と、ドライバ420の左端の側面に当接乃至対向することによりドライバ420を左方Y2から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。更にベース46は、ドライバ420の右端に当接乃至対向することによりドライバ420を右方Y1から支持するために、前後方向に延在する壁部を有する。このような構成により、ベース46は、前後方向に移動するようにドライバ420をガイドする。
【0064】
分離ブロック18(
図3)は、上端のステープルSを下方Z2に位置するステープルSから分離させる。分離ブロック18は、下方Z2に位置するステープルSの内側に設けられることにより、下方Z2のステープルSの前方X1への移動を禁止するように構成されている。分離ブロック18の前端面には、第2対象物Pを挿入するための凹部が形成されている。このため分離ブロック18は、第2対象物Pが挿入される第2挿入部としても機能する。
【0065】
以上のような構成によれば、モータ54がボールねじ50を順方向に回転させると、ナット部品52及びナット部品52に固定されるドライバ420は前方X1に移動し、モータ54がボールねじ50を逆方向に回転させると、ナット部品52及びナット部品52に固定されるドライバ420は後方X2に移動する。
【0066】
なお結束機100は、ドライバ420の移動量を制御するために、モータ54の回転量を取得するためのホールセンサその他のセンサを更に備えてもよく、更に結束機100は、ナット部品52の前後方向の位置を検出し、制御するためにナット部品52に取り付けられる磁石と、ナット部品52に取り付けられた磁石の位置を取得するためのホールセンサその他のセンサを更に備えてもよく、制御装置はこれらセンサから取得された情報に基づいてモータ54を制御可能に構成されている。
【0067】
ドライバ420(
図3)は、板状に形成されており、ステープルS0の本体部S30に当接する前端面を有する前端部を含む。
【0068】
ドライバ420の前端面は、ステープルS0のクランク部S101の形状に従って上面視において左右方向に延在する平坦面と、平坦面に接続しステープルS0の本体部S30の形状にあわせて上面視において後方に窪むように湾曲する湾曲面と、ステープルS0の本体部S30及びクランク部S101の上面を覆う天井面を含む。ドライバ420が前進するとき湾曲面が本体部S30に当接するのみならず、平坦面がクランク部S101に当接することによりクランク部S101が曲がってしまうことを抑制することができる。クランク部S101に当接する平坦面が設けられている部分は、ドライバ420の肩部と呼ばれ、本体部S30に当接する湾曲面が設けられている部分は、ドライバ420の湾曲部と呼ばれる場合がある。
【0069】
結束機100は、上述したようにモータ54、モータ54を制御するための制御装置、モータ54のトルクを増加させるための減速機55、減速機55に接続されるボールねじ50、ボールねじ50が順回転又は逆回転することによりボールねじ50の中心軸方向である前後方向に移動可能に構成されたナット部品52を備え、ドライバ420はナット部品52と例えばボルト固定等の手段により固定される。このためドライバ420はナット部品52と一体的に前後方向に移動可能に構成されている。
【0070】
[クランク保持機構]
結束機100は、ステープルS0のクランク部S101が曲がってしまうことを抑制するためのクランク保持機構180を更に備えてもよい。
図4Aは、クランク保持機構180の斜視図であり、
図4Bは、正面視におけるクランク保持機構180の第2保持部184を貫通する垂直断面図である。
【0071】
クランク保持機構180は、ステープルS0のクランク部S101をステープルS0の内方(前方X1)から支持する第1保持部182と、クランク部S101に接続する本体部S30をステープルS0の内方(右方Y1)から支持する第2保持部184とを備える。第1保持部182の後方を向いた面は、クランク部S101の前面に当接してクランク部S101を支持する。クランク部S101の後面はドライバ420の前方を向いた平坦面に当接するから、ステープルS0のクランク部S101を、ステープルS0の外側及び内側から(前後方向から)挟んで支持することが可能となる。
【0072】
一方で第2保持部184の外方(左方Y2)を向いた面は、ステープルS0の本体部S30の内側面に当接して本体部S30を支持する。本体部S30の外側面はドライバ420の湾曲面に当接するから、本体部S30を、ステープルS0の外側及び内側から挟んで支持することが可能となる。以上のような構成に加え、ドライバ420の天井面並びに分離ブロック18の上面によりステープルS0を上下方向からも支持することが可能となる。従ってステープルS0を上下左右の4方向から支持することが可能となる。このため湾曲する本体部S30や、屈曲により曲がりやすいクランク部S101の形状を維持してステープルS0を前進させることが可能となる。
【0073】
なおクランク保持機構180は、全体又は少なくとも一部を付勢部材から構成されてもよい。例えば、クランク保持機構180を弾性部材から構成し後方に付勢された状態とすることにより、第1保持部182をクランク部S101の前面に押し付けて支持することが可能となる。
【0074】
更に結束機100は、結束後にクランク保持機構180を移動させるための機構を備えてもよい。例えばクランク保持機構180を後方に付勢された状態にすると共にクランク保持機構180の底面が当接する分離ブロック18の上面を上方に傾斜させ、前進するクランク保持機構180が傾斜面に従って上方に移動することによりステープルS0のクランク部S101との係合が自動的に解除されるような機構を備えてもよい。
【0075】
なおクランク保持機構180は、第1保持部182及び第2保持部184のいずれか一方のみを備えてもよい。
【0076】
[第1変位部]
第1変位部200は、第1対象物Gと係合可能に第1脚部S10を変位させる機能を有する。
【0077】
本実施形態に係る第1変位部200は、ドライバ420によって前進するにつれてステープルS0の第1脚部S10の第2部S102の先端が挿入されることにより第1脚部S10の先端部を円弧状又は螺旋状に湾曲させながら下方に進行させる円筒状の内壁面が形成された孔部210と、第1脚部S10の先端部を孔部210に誘導する溝部211とを含む。孔部210は第1脚部S10の前方X1に設けられているため、ステープルS0の前進によって第2部S102の先端を孔部210の内壁面に当接させ、内壁面の形状に従って第2部S102の先端を変位させることが可能となる。
【0078】
図5Aは、孔部210の斜視図であり、
図5B及び
図5Cは、誘導突起172が孔部210に挿入され進行している様子を示す垂直断面図である。孔部210は、第1脚部S10の進行経路である溝部211が形成されているベースを上下方向に貫通するように設けられる。なおステープルS0の形状をわかりやすくするため第1対象物Gは、
図5A等から省略されている。
【0079】
ドライバ420で前方に押されることによって前進する第1脚部S10の第2部S102の先端を溝部211からスムーズに孔部210の円筒状の内壁面に当接させるために、ベースの表面には、第1脚部S10が進行するために前後方向に延伸する溝部211が形成され、かつ、溝部211の外側面が円筒状の内壁面と滑らかに接続するように(上面視において内壁面と溝との接続点における内壁面の接線と溝の外側面とが一致するように)孔部210は形成されている。
【0080】
図5Aに示されるように、ベースには、ベースを上下方向に貫通し、孔部210に上端から下端に亘って連通するガイド導入部190が形成される。このガイド導入部190からガイド要素となる第1対象物G(
図11等)である例えばガイド紐を孔部210の中心軸に沿って配置した状態で、第1脚部S10の第2部S102の先端を孔部210に挿入させることにより、第2部S102の先端が第1対象物Gを囲むように螺旋状に進行する。このため第1脚部S10を第1対象物Gに係合させることが可能となる。なお孔部210には第1対象物Gが挿入されるため、孔部210は、第1挿入部としても機能する。
本出願の発明者らは、第1脚部S10の先端の下方Z2への進行を誘導するための誘導突起172を孔部210に挿入することにより、第2部S102の下方Z2への進行を促進できる点に着目した。
【0081】
誘導突起172は、第1脚部S10の先端が当接するように第1対象物Gに隣接して孔部210に挿入される。
図5B及び
図5Cに示されるように、誘導突起172は、第2部S102の先端の回転方向(
図5Aにおいて反時計回りの方向)に進行するほど下方に突出するように傾斜する傾斜面を備えている。このような構成を備えることにより、第2部S102の先端は、誘導突起172の傾斜面に当接して下方への進行を誘導される。
【0082】
第1対象物Gと第1脚部S10との係合を強めるために、孔部210の内壁面の内径は、ステープルS0の線径の2倍と第1対象物Gの外径の合計値未満であることが好ましい。このように内径を設定することにより、第1対象物G又はステープルS0の一部が押しつぶされるため、ステープルS0と第1対象物Gとの係合を強めることが可能となる。
【0083】
なお孔部210に形成される内壁面は、円筒面でなくてもよい。例えば、下方Z2に進行するほど小径となる円断面を有するように孔部210の内壁面を形成することにより、孔部210の下方Z2において第1対象物Gと第1脚部S10との係合が強まるように孔部210を構成してもよい。又は孔部210に形成される内壁面は、第1脚部S10を円弧状に変位させるための円弧状に設けられた溝に形成される湾曲した面であってもよい。
【0084】
更に
図5Cに示されるように第2部S102の先端が少なくとも2周(720度以上)にわたり第1対象物Gの周りを囲むようにドライバ420の移動量及び孔部210の形成位置を調整することが好ましい。第2部S102の先端が少なくとも2周(720度以上)にわたり第1対象物Gの周りを囲むことによって第1対象物Gと第1脚部S10との係合を強めることが可能となる。
【0085】
[蓋部の移動機構]
本出願の発明者らは、更に、蓋部170(
図6)によって孔部210を上から閉塞することにより、第1脚部S10が受ける反力に抗して第1脚部S10の先端を下方Z2に螺旋状に進行させることを促進できる点に着目した。
【0086】
そこで本出願の発明者らは、蓋部170に誘導突起172を設ける構成を着想し、更にドライバ420の移動動作と蓋部170の上下動を連動させることにより、結束動作中は蓋部170によって孔部210を閉塞し、結束後は蓋部170が上昇して孔部210が開放される構成を着想した。蓋部170には、孔部210が含む円筒面の中心軸に垂直で孔部210に対向する下面(底面)が形成され、この下面を孔部210に接近させることにより蓋部170は孔部210を閉塞し、この下面を孔部210から離間させることにより蓋部170は孔部210を開放する。
【0087】
なお閉塞とは、第1脚部S10が上方Z2に移動することを抑制するために孔部210の開口の一部を覆うことを含む。また蓋部170は孔部210の上方Z1に設けられるため、孔部210に挿入される第1対象物Gを挿通させるための上下方向に延伸する貫通孔が形成される。
【0088】
以下、
図6の(A)乃至(D)及び
図7の(A)乃至(B)を用いて、ドライバ420の移動動作と蓋部170の上下動を連動させる構成について説明する。
【0089】
図6(A)は、結束機100の左側面視における断面図である。
【0090】
同図に示されるように結束機100は蓋部170の移動機構として、ドライバ420に連動して前後に移動する前後移動部品174を有する。前後移動部品174には、経路が形成される。経路は、前方に延伸する第1経路R1と、第1経路R1の前端に接続し下方及び後方に傾斜する方向に延伸する第2経路R2、第2経路R2の後端に接続し後方に延伸する第3経路R3及び第3経路R3の後端に接続し上方及び前方に傾斜する方向に延伸して第1経路R1の後端に接続する第4経路R4とを有する。各経路は、例えば、左方Y2に突出する平行四辺形状に形成された壁部の4つの壁面によって画定される。
【0091】
但しこの4つの経路は、対向する二つの経路が必ずしも平行に形成されていなくてもよく、又は、曲線から形成されてもよい。特に第2経路R2と第4経路R4は平行でなくてもよい。第2経路R2及び第4経路R4の傾斜角度を変更することにより、第2経路R2及び第4経路R4の経路長を変更することが可能となる。従って、第2経路R2及び第4経路R4の角度を変更することにより、蓋部170を上下させるタイミングを変更することが可能になる。
【0092】
蓋部170は、第1脚部S10の先端が孔部210に到達した時又はその直前に、孔部210を閉塞するように下方に移動することが好ましい。
【0093】
またクランク保持機構180は、後述する押出部材250が上方Z1に移動する前にクランク部S101との係合が自動的に解除されることが好ましい。
【0094】
本実施形態では、第1脚部S10の先端が孔部210に到達した時点において、蓋部170が孔部210を閉塞する動作が実行完了し、かつ、クランク部S101との係合が自動的に解除された後に、後述する押出部材250が上方Z1に移動して螺旋部を排出させることが可能となるように、第2経路R2及び第4経路R4の傾斜角度を互いに異ならせて構成されている。
【0095】
更に移動機構は、経路に沿って進行するピン176とピン176に固定されたリンク178と、リンク178の前後方向への移動を規制する2本の軸部を有する。
【0096】
ピン176は、例えば、左方Y2に突出する円柱状に形成されており、平行四辺形状に形成された壁部の4つの壁面に沿って進行するように構成されている。
【0097】
リンク178は前後方向に延伸して設けられ、前端部において一方の第1軸部186に係合し、後端部において他方の第2軸部188に係合する。各軸部は上下方向に延伸して結束機100本体に固定されているためリンク178は2本の軸部によって前後方向への移動を規制されている。
【0098】
更に移動機構は、2本の軸部に係合する上下移動部品192と、上下移動部品192とリンク178との間に挿入される複数の弾性部材を有する。移動機構は、ピン176が上下に移動することに伴ってリンク178が上下するとリンク178に押される弾性部材により生じる弾性力を変動させることに基づいて上下移動部品192を上下させるように構成されている。上下移動部品192には蓋部170が連結されているため、ピン176の上下動と蓋部170の上下動を連動させることが可能となる。更にピン176の上下動はドライバ420に連動して移動する前後移動部品174に連動している。このためドライバ420の移動と蓋部170の上下動を連動させることが可能となる。
【0099】
図6(A)は、初期状態におけるピン176の位置を示している。初期状態においてピン176は、第2経路R2上に位置する。このとき蓋部170は孔部210を閉塞させている。
【0100】
図6(B)は、初期状態後にドライバ420が前進中におけるピン176の位置を示している。ドライバ420と前後移動部品174は連動して動くように構成されており、より詳細にはドライバ420が前方に動くことに伴って前後移動部品174が時差を伴って遅れて前方に移動し、ドライバ420が後方に動くことに伴って前後移動部品174が遅れて後方に移動する。
【0101】
ドライバ420が前進することに伴って前後移動部品174が前進すると、傾斜して形成される第2経路R2に位置するピン176は、第2経路R2に従って下方Z2に移動する。ピン176が下方に移動するとリンク178も下方に移動する。
【0102】
第1軸部186は、リンク178及びリンク178の下方において上下移動部品192と係合している。また、リンク178と上下移動部品192の間には弾性部材である皿ばね194が、第1軸部186が貫通するように挿入されている。
【0103】
このため
図6(B)に示されるようにリンク178が下降すると皿ばね194が圧縮された結果、上下移動部品192を下方Z2に押し下げる力が強まる。従って上下移動部品192に連結する蓋部170は、孔部210を閉塞するように強い力で下方Z2に向かって孔部210を押圧する。孔部210にはステープルS0の第1脚部S10の先端が挿入されているため(又は挿入されようとしているため)、蓋部170は、第1脚部S10の先端が下方Z2に進行することを誘導する。
【0104】
以上のような構成によりドライバ420が前進すると蓋部170を下方Z2に押し下げることが可能となる。よってピン176が第2経路R2上を下降している間に、蓋部170は下降して、孔部210を強い力で閉塞することが可能となる。
【0105】
図6(B)から
図6(C)に示されるように更にドライバ420及び前後移動部品174が前進している間、ピン176は第3経路R3上を進行する。このためピン176は下方の位置に維持されている。従って結束動作を実行中にピン176が第3経路R3上に存在するように構成することにより、結束動作中において、孔部210を閉塞するように蓋部170による下方Z2への孔部210の押圧を継続する機構を実現することが可能となる。
【0106】
図6(C)に示されるようにドライバ420及び前後移動部品174が最も前進したとき、ピン176は第3経路R3から第4経路R4に移行する。第4経路R4は上方Z1及び前方X1に傾斜する方向に延伸しているから、皿ばね194の弾性力によってリンク178及びピン176は上方に移動する。なお皿ばね194と同様に第2軸部188にも、上方のリンク178と下方の上下移動部品192との間に弾性部材を挿入することによって蓋部170をバランスよく上下移動させることが可能となる。
【0107】
図6(D)は、ドライバ420が前進を完了した時点の状態を示し、
図7(A)は、ドライバ420が後退中の状態を示している。これら図面に示されるように、ドライバ420が前進を完了し、後方への移動を開始するとピン176は第4経路R4に従って上方Z1への移動を開始する。ピン176の第4経路R4への移動に伴って皿ばね194の圧縮による弾性力は弱まる。このため
図7(A)に示されるようにピン176が上方Z1へ移動すると上下移動部品192及び蓋部170は上方Z1へ移動する。このため蓋部170による孔部210の閉塞は解除され、孔部210は開放される。従って第1脚部S10が係合した第1対象物Gを結束機100から外すことが可能となる。なお、上下移動部品192の上方Z1への移動を促すために、第1軸部186及び第2軸部188には、上下移動部品192を上方Z1に押し上げるための弾性部材がそれぞれ挿入されることが好ましい。このような構成により、皿ばね194の圧縮による弾性力が弱まったときに上下移動部品192を上方Z1にスムーズに押し上げることが可能となる。更に上下移動部品192の第1軸部186及び第2軸部188以外の部分に上方Z1に押し上げるための弾性部材を設けてもよい。
【0108】
図7(B)は、ドライバ420の後退の完了直前の状態を示している。
図7(A)から
図7(B)に示されるようにドライバ420及び前後移動部品174が後方に移動している間、ピン176は第1経路R1が設けられる上方の位置に維持されている。従って結束後の初期状態にドライバ420が復帰している間、蓋部170が上方Z1に持ち上げられる機構を実現することが可能となる。
【0109】
その後、ピン176が第1経路R1から第2経路R2に移行すると蓋部170は下降し弱い力で孔部210を閉塞する。
【0110】
以上のような構成により、結束動作中は下降することによりステープルS0の第1脚部S10が下方Z2へ変位し第1対象物Gに係合することを誘導し、結束完了後は上昇することによりステープルS0の第1脚部S10が係合した第1対象物Gの取り出しを可能とする蓋部170の構成を実現することが可能となる。
【0111】
[第1対象物の保持機構]
以下、第1対象物Gを孔部210に挿入した状態で保持するためのガイド保持機構230について説明する。なお孔部210は第1対象物Gが挿入されることから、挿入部と呼ばれる場合がある。
図8は、ガイド保持機構230の斜視図である。同図に示されるようにガイド保持機構230は板状に形成されており、ガイド保持機構230には、ガイド保持機構230を上下に貫通する貫通孔と、この貫通孔とガイド保持機構230の外周を連通する切欠きを有する。貫通孔は、第1対象物Gを好適に保持するために第1対象物Gの外径と同一又は第1対象物Gの外径より小さい内径を有する。また、貫通孔の中心軸と、孔部210の中心軸とが上面視において略一致するように設けられることが好ましい。このような構成によりガイド保持機構230に第1対象物Gを保持させたとき、第1対象物Gを孔部210の中心軸に配置させることが容易に可能となる。ガイド保持機構230は、孔部210の上下にそれぞれ設けられてもよいし、一方にのみ設けられてもよい。
【0112】
更にガイド保持機構230は、蓋部170の一部として設けられてもよい。ガイド保持機構230を蓋部170の一部として設けることにより、ドライバ420の移動に連動してガイド保持機構230を上下させることが可能になる。また、ガイド保持機構230の貫通孔の内径を孔部210の内径よりも小さく形成することによりガイド保持機構230によって孔部210の中心を除く領域の一部を閉塞することが可能となる。孔部210の中心には第1対象物Gが配置され第2脚部S20は第1対象物Gの外周を進行するため、ガイド保持機構230によって孔部210の中心を除く領域の一部を閉塞することにより、第1脚部S10が受ける反力に抗して第1脚部S10を下方に押し付け、第1脚部S10の先端を螺旋状に進行させることが可能となる。
【0113】
更にガイド保持機構230の下面側に誘導突起172を設けることにより、第1脚部S10の先端の下方への進行を誘導することが可能となる。
【0114】
[第2変位部]
第2変位部300は、第1対象物Gと係合可能に第2脚部S20を変位させる機能を有する。
【0115】
第2変位部300は、ドライバ420が開口方向に移動するにつれて、第2脚部S20をステープルS0の内方に変位可能に構成され、より具体的には、第2脚部S20をステープルS0の内方に円弧状に湾曲させるように塑性変形可能に構成されている。
【0116】
具体的には後述する
図9(A)に示されるように第2変位部は、第2脚部S20の外側に設けられ、開口方向D1(前方X1と一致するため、開口方向D1は前方X1と呼ばれてもよい。以下同じ)に移動するステープルS0の第2脚部S20が当接して第2脚部S20を湾曲させる第1ガイド壁312を含んでいる。この第1ガイド壁312は、ステープルS0の外方(右方Y1)に窪む凹部312Aを含んでいる。従って、この凹部312Aは、初期状態において第2脚部S20の外方に設けられ、第2脚部S20との距離が前方に移動するほど大きくなる壁面を有する第1凹部領域と、第1凹部領域に接続し第2脚部S20との距離が前方に移動するほど小さくなる壁面を有する第2凹部領域とを有する。
【0117】
更に第2変位部300(
図9(A)等)は、変位開始前の初期状態において第2脚部S20の前方X1に設けられ、開口方向D1に移動するステープルS0の第2脚部S20が当接して第2脚部S20を湾曲させる第2ガイド壁320を含んでいる。この第2ガイド壁320は、後方X2を向いた壁面を有して設けられる。この第2ガイド壁320は、後方X2に突出する凸部320Aを含んでいる。この凸部320Aは、初期状態において、前後方向において第2脚部S20の前方に設けられ、左右方向において第2脚部S20の内方に設けられ、左方Y2(ステープルS0にとっての内方)に進むほど、後方X2への突出量が大きくなるように、即ち、上面視における第2ガイド壁320からの高さが大きくなる凸部320Aを有する。
【0118】
本出願の発明者らは、この凸部320Aを設けない場合と比較して、凸部320Aを設けることにより第1脚部S10に向かって進行するように第2脚部S20を滑らかに湾曲させることが可能となる点に着目した。
【0119】
[結束機を用いた結束方法]
以下、結束機100を用いた結束方法について説明する。なお孔部210内に挿入される第1対象物G及び分離ブロック18に形成された凹部(第2挿入部)内に挿入される第2対象物Pは説明の便宜のため図から省略されている。また説明の便宜上一部構成が図から省略される場合がある。
【0120】
図9(A)乃至(C)及び
図10(A)乃至(D)は、結束機100を用いてステープルS0を第1対象物Gに係合させるプロセスを示す上面視における断面図である。
【0121】
図9(A)に示されるように、ドライバ420が前方へ移動することによりドライバ420によって前方に押されるステープルS0は前方へ移動する。このときクランク保持機構180は、ステープルS0のクランク部S101を支持することにより、クランク部S101が曲がってしまうことを抑制する。
【0122】
図9(B)に示されるように第2脚部S20の前方X1には第2ガイド壁320が設けられていることから第2脚部S20のフック部S204は、第2ガイド壁320の後方X2を向いた壁面に当接し第2ガイド壁320の壁面320Bに沿って進行する。
【0123】
第2ガイド壁320の壁面320Bは後方X2を向いて概ね左右方向に平行に形成されている部分を有するため、フック部S204は前方X1に進行することができない(又はフック部240の前方X1への移動量は、ステープルS0の本体部S30の前方X1への移動量より小さい)。このため前方X1に移動しようとする第3部S203は湾曲する。
【0124】
一方で第1ガイド壁312は、第2脚部S20の外方(右方Y1)に配設されている。第1ガイド壁312は、ステープルS0の内方を向いて外方(右方Y1)に窪むように形成された凹面312A1を含む凹部312Aを有している。
【0125】
このため
図9(C)に示されるように、第3部S203は凹部312Aの凹面312A1の少なくとも一部に当接して外方に膨らむように湾曲する。
【0126】
またドライバ420の前進中、ピン176は第3経路R3上を進行するため、蓋部170は相対的に強い力で下方Z2に向かって孔部210を閉塞する。
【0127】
図9(A)に示されるように第2ガイド壁320は、内方(左方Y2)に進行するほど後方X2への突出量を大きくする凸部320Aを含んでいる。このためフック部S204は、
図9(B)及び(C)に示されるように凸部320Aに当接しながら後方X2に進行するように誘導される。このとき、ドライバ420は更に前進しているため第3部S203は更に撓み凹部312Aの凹面312A1に当接して凹面312A1の形状に従って外方に大きく膨らむように湾曲する。
【0128】
図10(A)及び(B)に示されるようにフック部S204が第2ガイド壁320を乗り越えるとき、第2脚部S2の弾性によりフック部S204は前方X1に進行し、第2脚部S2の第3部S203が凸部320Aに当接する。
【0129】
以上のようなプロセスにより第2脚部S2は、概ね、紙面時計回り方向に相当する第1回転方向R1に湾曲するように変位される。
【0130】
第2ガイド壁320を設けたことにより、前方X1に移動するステープルS0のフック部S204がステープルS0の内方に向かう方向に移動させることが可能となる。加えて第1ガイド壁312に外方に窪む凹面312A1を有する凹部312Aを設けたことにより第2脚部S20の湾曲を促進することが可能となる。
【0131】
更に凸部320Aを設けフック部S204及び第3部S203を当接させたことにより、凸部320Aを設けない場合と比較してフック部S204を第1対象物Gに向かう方向にコントロールして変位させることが可能となった。
【0132】
フック部S204が第2ガイド壁320を乗り越えた後に、第1脚部S10の先端は、第1変位部200の孔部210への進入を開始する。このように第2変位部300による第2脚部S20の変位に伴う最大の負荷がかかった後に、第1変位部200による第1脚部S10の変位に伴う最大の負荷がかかるように構成することにより、同時に結束機100に大きな負荷がかかることを抑制することが可能となる。
【0133】
上述したように第1変位部200は、例えば、ステープルS0を開口方向D1に移動させた際に、ステープルS0の第1脚部S10の先端部がガイド要素である第1対象物Gの外周を囲むように、又は、第1対象物Gの外周を螺旋を描いて進行するように形成された孔部210から構成することが可能である。ステープルS0は可撓性及び可塑性を有するため、ステープルS0が開口方向D1に移動したときに、第1脚部S10の先端は螺旋を描いて湾曲しながら孔部210の内壁に沿って進行する。従って、螺旋の軸上に第1対象物Gを配置した状態でステープルS0を前方に移動させることにより、第1対象物Gを軸として第1対象物Gの外周を囲む螺旋状にステープルS0の第1脚部S10の先端部を係合させることが可能となる。
【0134】
このときピン176は第3経路R3を進行しているため蓋部170に設けられ下方に突出する誘導突起172は、蓋部170の下降により孔部210の内部に侵入し第1脚部S10の下方への進行を誘導する。蓋部170は第1脚部S10を下方に押し付けているため、第1脚部S10が受ける反力に抗して第1脚部S10の先端を螺旋状に進行させることが可能となる。
【0135】
更にドライバ420がステープルS0を前進させると、フック部S204は、後述する誘導壁部232の傾斜面232Aに当接して上方Z1に移動する。その後
図10(C)に示されるようにフック部S204は、孔部210内に挿入される第1対象物Gと分離ブロック18の凹部内に挿入される第2対象物Pとの間の領域を通過して、上面視において、第1脚部S10と交差する位置まで進行する。フック部S204を含む第2脚部S20は傾斜面232Aに当接することにより上方Z1に移動しているため、同図に示されるように第2脚部S20又は本体部S30は、第2ガイド壁320の上方Z1に変位する。
【0136】
図10(D)は、結束後にドライバ420が後退している状態を示している。ドライバ420の後退に伴ってステープルS0は復元するように弾性力を発揮するため、第2脚部S20は、第1回転方向R1の反対方向である第2回転方向R2に変位し第1対象物Gに接近して第1対象物Gに係合する。このときフック部S204が上方Z1に移動することを促進するために第1ガイド壁312及び第2ガイド壁320の壁面を形成してもよい。
【0137】
以上のような結束方法により第2対象物Pを第1脚部S10、第2脚部S20及び本体部S30で囲むように、第1対象物Gに第1脚部S10と第2脚部S20を係合させることが可能となる。
図11は、ステープルS0が第1対象物Gに係合している様子を示す斜視図である。
【0138】
ステープルS0の第2脚部S20は、
図9及び
図10において概ね時計回りである第1回転方向R1に曲げられて上面視において、第2対象物PをステープルS0で囲んだ状態でステープルS0の開口を閉塞するように第1脚部S10と交差した後、第2対象物Pが設けられている側から第1対象物Gに係合する。一方で第1脚部S10は第2回転方向R2に湾曲して外側から第1対象物Gに係合する。このため、第1脚部S10と第2脚部S20とで挟み込むように第1対象物Gに係合することが可能となる。更に第2対象物Pが成長して第2脚部S20に当接して第2脚部S20が曲がっても、第1対象物Gへの係合が強まるから、第2対象物Pの成長に伴って第1対象物GとステープルSの係合が容易に外れることも抑制される。
【0139】
更に第1脚部S10の先端は、結束前の第1脚部S10、第2脚部S20及び本体部S30を貫通する平面から離間する下方Z2に先端が進行するように曲げられて第1対象物Gに係合する。一方で第2脚部S20の先端は、結束前の第1脚部S10、第2脚部S20及び本体部S30を貫通する平面から離間する上方Z1に先端が進行するように曲げられて第1対象物Gに係合する。このため、第1対象物Gの異なる位置で、ステープルS0の両端部を係合させることが可能となる。このため第1対象物Gの第1脚部S10との係合位置から、第2脚部S20との係合位置までの領域に張力を発生させやすくすることが可能となる。従って、第1対象物Gが撓んでステープルSが脱落等することを抑制することが可能になる。
【0140】
以上のとおりであるから、本発明によれば外れにくい結束を可能とする結束機100及び結束方法を提供することが可能となる。
【0141】
以下、結束機100が更に備える構成について説明する。
【0142】
[誘導壁部]
結束機100は、ステープルSを第1対象物Gに係合させるためにステープルS0を誘導乃至ガイドするための誘導壁部232を備えてもよい。
図12は、誘導壁部232を含む部分の結束機100の部分拡大斜視図である。
【0143】
同図に示されるように本実施形態にかかる誘導壁部232は、傾斜面232A、第1誘導壁面232B及び第2誘導壁面232Cを含む。誘導壁部232は、ステープルS0をこれら3つの面に当接させることによって、第1対象物Gにフック部S204を安定して係合させる。
【0144】
傾斜面232Aは、ステープルS0のフック部S204を上方Z1に移動させるための面である。傾斜面232Aは、第1脚部S10に向かって進行するほどフック部S204を上方Zに変位させるために、第1対象物Gよりも後方X2の位置においてフック部S204が当接する高さに設けられ、かつ、第1変位部200が設けられている左方Y2に進行するほど上方Z1に進行する傾斜面を含む。
【0145】
このような傾斜面232Aにより、フック部S204を第1脚部S10の第2部S102の上方Z1において第1対象物Gに係合させることが可能となる。
【0146】
第1誘導壁面232Bは、ステープルS0のフック部S204の先端の移動方向をコントロールすることにより、ステープルS0のフック部S204を第1対象物Gに係合させるための面である。第1誘導壁面232Bは、傾斜面232Aから立設した壁面であり、第1対象物Gよりも後方X2の位置において後方X2かつやや内方を向いて傾斜して形成されている。更に第1誘導壁面232Bは、上面視において、第1対象物Gから後方X2に進行した位置の少なくとも近傍まで左方Y2に延在して設けられる。
【0147】
このような第1誘導壁面232Bにより、フック部S204の先端を、第1対象物Gを超えた位置まで確実に移動させることが可能になる。
【0148】
なお同図に示されるように第1誘導壁面232Bをガイド保持機構230の外周面に設けてもよい。このような構成により第1対象物Gに対する誘導壁部232の位置決め精度を高めることが可能となる。
【0149】
第2誘導壁面232Cは、ステープルS0のフック部S204の先端の移動方向をコントロールすることにより、ステープルS0のフック部S204を第1対象物Gに係合させるための面である。第2誘導壁面232Cは、第1誘導壁面232Bに連続して設けられ、第1対象物Gよりも後方X2の位置において後方X2かつ外方を向いて傾斜して形成されている。更に第2誘導壁面232Cは、上面視において、第1対象物Gから左方Y2に進行した位置の少なくとも近傍まで延在して設けられる。
【0150】
このような第2誘導壁面232Cにより、フック部S204の先端を、第1対象物Gの外側に離れた位置から回り込むように変位させて、フック部S204を第1対象物Gに係合させることが可能となる。
【0151】
以上のような誘導壁部232の少なくとも一部の構成は、合理的な範囲で、本実施形態に係る結束機に適用してもよい。
【0152】
[内側支点部材]
結束機100の第2変位部300は、第2脚部S20をステープルS0の内方に曲げるときに、曲げの支点を提供するための内側支点部材340を備えてもよい。
図13Aは、内側支点部材340を含む部分の結束機100の部分拡大斜視図であり、
図13Bは、第2脚部S20をステープルS0の内方に曲げるときの上面視における断面図である。
【0153】
内側支点部材340は、第2脚部S20の第3部S203の内側面を支持する支持壁部340Bと、支持壁部340Bの前方X1端部に相当し、第3部S203の曲げの支点を提供する支点部340Aを含む。
図13Bに示されるように、フック部S204の前端付近が凸部320Aに当接するとき、第3部S203は支点部340Aに当接する。このため、第3部S203の前後方向の位置を調整することにより、曲げられた第3部S203を近似する円弧の半径を調整することが可能となる。
【0154】
内側支点部材340は前後方向に移動可能に設けられてもよい。更に結束機100は、結束後に内側支点部材340を移動させるための機構を備えてもよい。例えば内側支点部材340を板ばね又は圧縮ばね等の弾性部材を含むように構成し、ドライバ420が前進して結束動作が完了すると内側支点部材340の前方X1端部が後方X2端部を支点として上方Z1に移動し、ドライバ420が後退すると初期状態時の位置に戻るように、内側支点部材340をドライバ420と連動させて構成してもよい。
【0155】
[押出部材]
結束機100の第1変位部200は、第1対象物Gの外周を囲んで螺旋状に係合している第1脚部S10の先端部(以下、「螺旋部」と呼ぶ場合がある。)の排出を助ける押出部材250を備えてもよい。
図14は、押出部材250を含む部分の結束機100の部分拡大斜視図である。
【0156】
同図に示されるように、押出部材250は、ガイド保持機構230を上下方向に貫通する孔部210に下方Z2から挿入されることにより、螺旋状に第1対象物Gに係合する第1脚部S10の第2部102を下方Z2から押し上げて排出を助ける。
【0157】
押出部材250は例えば第1対象物Gに対して後方X2又は右方Y1(内方)であって、上面視において孔部210と重複する位置に上下に移動可能に構成されている。押出部材250の上端部には、第1対象物G及び螺旋部を傷つけないように、円弧や斜面を形成することが好ましい。
【0158】
押出部材250を上下に移動可能に構成するために、例えば上下移動部品192又は蓋部170と連結させることが好ましい。このように構成することにより、蓋部170が上方Z1に移動して蓋部170が開いたときに、螺旋部を下方Z2から押し上げて排出させることが可能となる。
【0159】
以上のとおりであるから、本発明によれば、外れにくい結束を可能とする結束機及び結束方法を提供することが可能となる。
【0160】
また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【0161】
例えば、第1変位部は、第1脚部S10を第1回転方向R1に湾曲させることにより第1脚部S10を第1対象物Gに係合させてもよい。
【0162】
又、第1変位部は、第1脚部S10を屈曲させることにより第1脚部S10を第1対象物Gに係合させてもよい。例えば第1脚部S10を屈曲させて第1脚部S10で第1対象物Gを挟み込むことにより、第1脚部S10を第1対象物Gに係合させてもよい。
【0163】
更に、ステープルの第2脚部S20を直進的に延伸する構成としてもよい。この場合、第2脚部を第1回転方向に変位させる際に、第2脚部S20の先端部が当接しながら通過するような壁面を結束機に搭載することにより、第2脚部S20を第1回転方向に曲げながら、その先端部を反対の第2回転方向に曲げて、フック部S204に相当する構成を設けるようにしてもよい。
【0164】
同様に当業者の通常の創作能力の発揮により本出願に開示された各構成要素を合理的に組み合わせることが可能である。
【0165】
本出願に係る発明は、上記した実施の形態を含む発明の他、以下の付記として記載される結束機又は結束方法として実施することが可能である。
【0166】
即ち本出願は、以下に示される結束機を更に開示する。
【0167】
(付記1)
第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部とを含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束機であって、
前方に移動することにより前記ステープルを前方に移動可能に構成されるドライバを含む移動部と、
前記ドライバにより前記ステープルを前方に移動させることにより、前記第1対象物と係合可能に前記第1脚部を変位させる第1変位部と、
前記ドライバにより前記ステープルを前方に移動させることにより、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と係合可能に前記第2脚部を変位させる第2変位部と、
を備える結束機。
【0168】
(付記1A)
前記第1変位部は、前記第1対象物及び前記第1脚部が挿入される第1挿入部を備え、
前記第1挿入部は、挿入された前記第1脚部の先端部を円弧状に湾曲させることにより挿入された前記第1対象物と係合する内壁を含む
付記1に記載の結束機を含む、本出願に記載され本構成が適用可能な何れかの結束機。
【0169】
(付記1A1)
前記ステープルを下方に誘導する蓋部を備え、
前記蓋部は、前記第1挿入部に挿入された前記第1脚部の先端部を下方に誘導する誘導突起を含む、
付記1Aに記載の結束機を含む、本出願に記載され本構成が適用可能な何れかの結束機。
【0170】
(付記1A2)
前記内壁は、円筒面を含み、
前記蓋部は、前記円筒面の中心軸に垂直で前記第1挿入部に対向する下面を含む、
付記1A1に記載の結束機を含む、本出願に記載され本構成が適用可能な何れかの結束機。
【0171】
(付記1B)
前記ステープルの前記本体部は湾曲する部分を含み、前記第1脚部は屈曲して外方に延びる第1部と、前記第1部から屈曲して前記ステープルの開口方向に延びる第2部とを含み、
前記ドライバは、前記本体部に当接する湾曲部と、前記第1部に当接する肩部とを含む、
付記1又は付記1A1の何れか一項に記載の結束機を含む、本出願に記載され本構成が適用可能な何れかの結束機。
【0172】
(付記1C)
前記第2変位部は、前記ドライバにより前記ステープルを前方に移動させることにより、前方に移動する前記ステープルの前記第2脚部が当接して湾曲するように、前記第2脚部の外側に前記ステープルの内方を向いて形成される第1ガイド壁と、前記第1ガイド壁よりも前方に設けられ後方を向いて形成される第2ガイド壁とを含む、
付記1乃至1Bの何れか一項に記載の結束機を含む、本出願に記載され本構成が適用可能な何れかの結束機。
【0173】
(付記1C1)
前記第1ガイド壁は外方に窪む凹部を含む、
付記1Cに記載の結束機を含む、本出願に記載され本構成が適用可能な何れかの結束機。
【0174】
(付記1C2)
前記第2ガイド壁は後方に突出する凸部を含む、
付記1C又は付記1C1に記載の結束機を含む、本出願に記載され本構成が適用可能な何れかの結束機。
【0175】
(付記2)
第1脚部と、第2脚部と、前記第1脚部と前記第2脚部とを接続する本体部とを含み、前記第1脚部と前記第2脚部との間に開口が形成されるステープルを用いて第1対象物と第2対象物とを結束する結束機であって、
前方に移動可能に構成される移動部と、
前記第1脚部の前方に配設される壁面を含み、前記移動部により前方に移動する前記ステープルの前記第1脚部を当接させて変位させることにより、前記第1脚部を前記第1対象物と係合させる第1変位部と、
前記第2脚部の前方に配設され後方を向いた壁面を含み、前記移動部により前方に移動する前記ステープルの前記第2脚部を当接させる第2ガイド壁と、前記第2脚部の外側に配設され前記ステープルの内方を向いて外方に窪む凹面を含み、前記第2ガイド壁の前記壁面に当接した前記第2脚部を曲げる第1ガイド壁とを有することにより、前記第2対象物を前記第1脚部、前記第2脚部及び前記本体部で囲んで前記第1対象物と係合可能に前記第2脚部を変位させる第2変位部と、
を備える結束機。
【0176】
(付記2A)
【0177】
前記第2変位部は、上面視において、前記第2脚部の先端部に前記第1対象物と前記第2対象物との間隙を通過させるように構成される、
付記2Aに記載の結束機を含む、本出願に記載され本構成が適用可能な何れかの結束機。
【符号の説明】
【0178】
12 グリップ
14 マガジン
16 プッシャ
18 分離ブロック
50 ボールねじ
52 ナット部品
54 モータ
100 結束機
170 蓋部
174 前後移動部品
176 ピン
178 リンク
186 第1軸部
188 第2軸部
192 上下移動部品
194 皿ばね
200 第1変位部
210 孔部
230 ガイド保持機構
250 押出部材
300 第2変位部
312 第1ガイド壁
320 第2ガイド壁
420 ドライバ
S0 ステープル
S10 第1脚部
S20 第2脚部
S30 本体部
G 第1対象物
P 第2対象物
X1 前方
X2 後方
Y1 右方
Y2 左方
Z1 上方
Z2 下方
D1 開口方向