(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133177
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】湾曲したコンバータを伴う制動放射による放射性同位体の生成のためのシステム
(51)【国際特許分類】
G21G 1/10 20060101AFI20230914BHJP
H01J 35/08 20060101ALI20230914BHJP
H01J 35/12 20060101ALI20230914BHJP
H01J 35/14 20060101ALI20230914BHJP
G21H 5/02 20060101ALI20230914BHJP
G21K 5/08 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G21G1/10
H01J35/08 C
H01J35/12
H01J35/14
H01J35/08 B
G21H5/02 C
G21K5/08 R
G21K5/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023030823
(22)【出願日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】22161257.5
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】318004198
【氏名又は名称】イオン ビーム アプリケーションズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ion Beam Applications S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】523074548
【氏名又は名称】エスシーケイ セン ソン
【氏名又は名称原語表記】SCK CEN SON
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ギーツ ジャン-ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】スタイシュルボート フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ド ヌーター セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アビス ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】ベルトランド サミー
(72)【発明者】
【氏名】ライセン ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ポペスク ルシア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】湾曲したコンバータを伴う制動放射による放射性同位体の生成のためのシステムを提供する。
【解決手段】電子ビームを光子に変換するシステムに関し、・照射軸Zに沿って、加速された電子の電子ビーム10を生成するように構成された電子加速器1と、・走査ユニット2と、・第1合焦ポイントに向かって収束する合焦ビーム10fを形成するための合焦ユニット3と、・合焦ビームを光子ビーム11xに変換するように構成された、合焦ユニット3と第1合焦ポイントとの間に配置され制動放射コンバータ4.1-4.nを有する変換ユニット4と、・ターゲット5を保持するターゲットホルダ5hと、を有し、制動放射コンバータは、合焦ビームが、すべてのポイントにおいて65°~115°、好ましくは、すべてのポイントにおいて75°~105°である交差角度αによって制動放射コンバータのそれぞれと交差するように、湾曲することを特徴とする。
【選択図】
図1a-1c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体の生成のためのシステムであって、
・照射軸(Z)に沿って加速された電子の電子ビーム(10)を生成するように構成された電子加速器(1)と、
・走査ビーム(10s)を形成するために、予め定義された走査パターンに沿って前記電子ビーム(10)を偏向させるように構成された走査ユニット(2)と、
・合焦ビーム(10f)を形成するために、前記照射軸(Z)上に配置された第1合焦ポイント(Fx)に向かって第1照射プレーン(X,Z)上に前記走査ビーム(10s)を合焦するように構成された、1つ又は複数の磁石を有する合焦ユニット(3)であって、前記第1照射プレーン(X,Z)は、前記照射軸(Z)及び第1横断軸(X)によって定義され、X⊥Zである、合焦ユニット(3)と、
・前記合焦ビーム(10f)を光子ビーム(11x)に変換するように構成された、前記合焦ユニット(3)と前記第1合焦ポイント(Fx)との間に配置され1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)を有する変換ユニット(4)と、
・前記1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)を冷却するように構成されたコンバータ冷却システム(4c)と、
・ターゲット(5)を保持するように構成されたターゲットホルダ(5h)と、
を有し、
前記電子加速器(1)、前記走査ユニット(2)、前記合焦ユニット(3)、前記変換ユニット(4)、及び前記ターゲットホルダ(5h)は、いずれも、前記照射軸(Z)に沿ってアライメントされ、この順序で互いの下流に配置されており、「下流」は前記電子ビーム方向との関係において定義されている、システムにおいて、
前記1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)は、すべてのポイントにおいて65°~115°、好ましくはすべてのポイントにおいて75°~105°である交差角度(α)により前記1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)のそれぞれと交差するように、前記合焦ビーム(10f)が湾曲することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
・前記走査ユニット(2)が、前記第1横断軸(X)及び第2横断軸(Y)に沿って延在する前記予め定義された走査パターンに沿って前記電子ビーム(10)を偏向させるように構成され、X⊥Y⊥Zであり、
・前記合焦ユニット(3)が、前記照射軸(Z)上に配置された第2合焦ポイント(Fy)に向かって、第2照射プレーン(Y,Z)上にも前記走査ビーム(10s)を合焦するように構成され、前記第2合焦ポイント(Fy)は、前記第1合焦ポイント(Fx)と同一であることもでき、又は、異なることもでき、
・前記1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)が、前記第1照射プレーン(X,Z)内の第1湾曲断面によって及び前記第2放射プレーン(Y,Z)内の第2湾曲断面によって定義された卵形キャップ、好ましくは球形キャップの形状を有することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
・前記走査ユニット(2)が、前記第1横断軸(X)のみに沿って延在する前記予め定義された走査パターンに沿って前記電子ビーム(10)を偏向させるように構成され、
・前記1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)が、前記第1横断プレーン(X,Z)内の湾曲した断面及び第2横断軸(Y)に沿って延在する母線によって定義された円筒体のセクションの形状を有し、X⊥Y⊥Zであることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記合焦ユニット(3)が、前記合焦ビーム(10f)を形成するように構成され、前記第1照射プレーン(X,Z)上の前記照射軸(Z)との前記第1合焦ポイント(Fx)において形成される合焦半角(β)は、20~55°、好ましくは30~45°を含むことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記1つ又は複数の制動放射コントローラ(4.1-4.n)のそれぞれが、前記第1合焦ポイント(Fx)上にセンタリングされた半径(d1-dn)の実質的な円弧によって定義された、前記第1照射プレーン(X,Z)内の第1湾曲断面を有し、「実質的な円弧」は、前記湾曲した断面の長さにわたって10%以下だけ変化する曲率半径を有する湾曲したセグメントとして定義されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムにおいて、
前記1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)のそれぞれが、前記第2合焦ポイント(Fy)上にセンタリングされた半径(d1-dn)の実質的な円弧によって定義された、前記第2照射プレーン(Y,Z)内の第2湾曲断面を有し、前記第2合焦ポイント(Fy)が、好ましくは、前記第1合焦ポイント(Fx)と同一である(即ち、Fx=Fy)ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)のそれぞれが、3mm以下の曲率半径に沿って計測された厚さ(L90)を有し、好ましくは、前記厚さ(L90)が、0.2~2.5mm、より好ましくは0.5~1.5mmであることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記ターゲットホルダ(5h)に最も近接して配置されるn番目の制動放射コンバータ(4.n)は、前記合焦ユニット(3)に最も近接して配置される第1制動放射コンバータ(4.1)よりも大きな厚さ(L90)を有することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記変換ユニット(4)が、冷却チャネルによって互いに分離された1~n個の制動放射コンバータ(4.1-4.n)を有し、nは、2~8、好ましくは3~5を含むことを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記コンバータ冷却システム(4c)は、ガス又は液体強制冷却を有することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)が、タンタル(Ta)、タングステン(W)又はチタン(Ti)から製造されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
ターゲットのX線照射によって放射性同位体を生成するプロセスにおいて、
・請求項1乃至11のいずれか1項に記載のシステムを提供するステップと、
・前記ターゲットホルダ(5h)上にターゲットを装填するステップと、
・X線を生成するために、加速された電子ビームを前記変換ユニット(4)上に走査して合焦するステップと、
・前記このようにして生成されたX線によって前記ターゲットを照射するステップと、
を有することを特徴とするプロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスにおいて、
前記ターゲット(5)が、225Acを生成するための226Ra、99mTcを形成するための100Mo、187Reを生成するための186W、131Iを形成するための134Xe、又は67Cuを生成するための68Znのうち1つから選択されることを特徴とするプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー電子ビームにコンバータを向けると制動放射によって形成されるX線によってターゲットを照射することによる放射性同位体の生成のための装置に関する。詳細には、本発明は、電子ビームによって生成される熱を低減する、及び受け入れ可能な境界内においてコンバータの温度を維持するために従来の冷却システムが使用されることを可能にする、コンバータの特定の形状に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体は、帯電粒子を使用して、或いは光核反応(例えば、X線)を使用して、様々な反応によって生成することができる。例えば、225Acは、226RaターゲットのX線による照射によって生じる光核反応によって形成される225Raの崩壊によって調製することができる。望ましい同位体を形成するには、電子ビームのエネルギーに直接的に依存するX線のエネルギーを正確に制御しなければならない。例えば、226Raターゲットを照射することにより、光照射のエネルギーに応じて、223Ra、224Ra、及び225Raを得ることができる。医療用途において一般的に使用されている放射性同位体のその他の例は、99mTcを含む。
【0003】
X線は、高エネルギー電子ビームによりコンバータを照射することによって生成することができる。コンバータは、ロードトロン又は線形加速器などの電子加速器を含む高エネルギー電子ビームのソースとターゲット(この例においては、226Ra)との間に位置決めされる。コンバータは、Ti又はTaなどの高Z金属のフォイルによって形成される。コンバータが電子ビームによって照射されるのに伴って電子ビームが減速し、放出されたエネルギーはX線放射に変換され、このX線放射が、望ましい放射性同位体を形成するためにターゲットに到達する。このメカニズムは「制動放射」と呼ばれる。
【0004】
制動放射においては、電子ビームのエネルギーの一部分のみが変換され、残りの部分が熱に変換されるので、コンバータの熱劣化が深刻な問題である。この理由のため、コンバータを冷却しなければならない。従来のクーラーでは、Heなどのガス又は水などの液体が使用される。
【0005】
コンバータの冷却を改善するために、及び/又はコンバータによる結果的に得られた光子ビームのより幅広い幾何学的広がりを可能にするために、(特許文献1)は、磁気走査コイルを使用することにより、コンバータの走査エリアにわたって電子ビームを走査することを提案している。(特許文献2)は、コンバータによって生成される制動放射のフル強度にターゲットが継続的に曝露されるように、電子ビームの走査を電子ビームの走査に同期したターゲットの平行運動と組み合わせている。
【0006】
(特許文献3)は、電子ビームをコリメート又は合焦するために使用される合焦レンズについて記述している。電子ビームのコリメーションは、発散する電子ビームが生成される光子の発散を増大させるので、有用である。その代わりにこれは、光子を収集するために、より大きいターゲットを必要とすることになろう。合焦レンズは磁石から形成することができ、四重極、六重極、八重極レンズなどの多重極レンズであってよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開第1999052587号
【特許文献2】米国特許出願公開第20120025105号
【特許文献3】国際特許出願公開第2017076961号
【特許文献4】国際特許出願公開第2012022491号
【0008】
上述の改善にもかかわらず、コンバータが熱によって早期に劣化することを防止するために従来の冷却システムによりコンバータを十分に冷却することは、依然として問題のままである。本発明は、合焦された高強度電子ビームと、従って、高度に合焦されたX線放射と、を同時に維持しつつ、従来の冷却手段を使用してコンバータの早期の熱劣化を防止する、という二重の問題を解決する。以下、この二重の目的を実現するために本発明によって提案されている解決策について説明する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、添付の独立請求項に定義される。好適な実施形態は、従属請求項に定義される。詳細には、本発明は、放射性同位体の生成のためのシステムに関し、これは、
・照射軸(Z)に沿って加速された電子の電子ビームを生成するように構成された電子加速器と、
・走査ビームを形成するために、予め定義された走査パターンに沿って電子ビームを偏向させるように構成された走査ユニットと、
・合焦ビームを形成するために、照射軸(Z)上に配置された第1合焦ポイント(Fx)に向かって第1照射プレーン(X,Z)上に走査ビームを合焦するように構成された、1つ又は複数の磁石を有する合焦ユニットであって、第1照射プレーン(X,Z)は、照射軸(Z)及び第1横断軸(X)によって定義され、X⊥Zである、合焦ユニットと、
・合焦ビームを光子ビームに変換するように構成された、合焦ユニット(3)と第1合焦ポイント(Fx)との間に配置され1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)を有する変換ユニットと、
・1つ又は複数の制動放射コンバータを冷却するように構成されたコンバータ冷却システムと、
・ターゲットを保持するように構成されたターゲットホルダと、
を有する。
【0010】
電子加速器、走査ユニット、合焦ユニット、変換ユニット、及びターゲットホルダはいずれも照射軸(Z)に沿ってアライメントされ、この順序で互いの下流に配置されており、「下流」は、電子ビーム方向との関係において定義されている。本システムは、合焦ビームが、すべてのポイントにおいて65°~115°、好ましくはすべてのポイントにおいて75°~105°である交差角度(α)により1つ又は複数の制動放射コンバータのそれぞれと交差するように、1つ又は複数の制動放射コンバータが湾曲する、という点において従来技術のシステムとは区別される。
【0011】
第1実施形態において、走査ユニットは、第1横断軸(X)及び第2横断軸(Y)に沿って延在する予め定義された走査パターンに沿って電子ビームを偏向させるように構成され、X⊥Y⊥Zである。合焦ユニットはまた、照射軸(Z)上に配置された第2合焦ポイント(Fy)に向かって第2照射プレーン(Y,Z)上にも走査ビームを合焦するように構成されている。第2合焦ポイント(Fy)は、第1合焦ポイント(Fx)と同一であることもでき、或いは、異なることもできる。1つ又は複数の制動放射コンバータは、第1照射プレーン(X,Z)内の第1湾曲断面によって及び第2照射プレーン(Y,Z)内の第2湾曲断面によって定義された卵形キャップ、好ましくは球形キャップの形状を有する。
【0012】
1つ又は複数の制動放射コンバータのそれぞれは、好ましくは、第1合焦ポイント(Fx)上にセンタリングされた半径(d1-dn)の実質的な円弧によって定義された、第1照射プレーン(X,Z)内の第1湾曲断面を有する。「実質的な円弧」は、本明細書においては、湾曲した断面の長さにわたって10%以下だけ変化する曲率半径を有する湾曲セグメントとして定義されている。或いは、この代わりに、又はこれに加えて、1つ又は複数の制動放射コンバータのそれぞれは、好ましくは第2合焦ポイント(Fy)上にセンタリングされた半径(d1-dn)の実質的な円弧によって定義された、第2照射プレーン(Y,Z)内の第2湾曲断面を有する。第2合焦ポイント(Fy)は、第1合焦ポイント(Fx)と同一である(即ち、Fx=Fy)ことが好ましい。
【0013】
第2実施形態において、走査ユニットは、第1横断軸(X)のみに沿って延在する予め定義された走査パターンに沿って電子ビームを偏向させるように構成されている。1つ又は複数の制動放射コンバータは、第1横断プレーン(X,Z)内の湾曲断面及び第2横断軸(Y)に沿って延在する母線によって定義された円筒体のセクションの形状を有し、X⊥Y⊥Zである。1つ又は複数の制動放射コンバータのそれぞれは、好ましくは第1合焦ポイント(Fx)上にセンタリングされた半径(d1-dn)の実質的な円弧によって定義された第1照射プレーン(X,Z)内の第1湾曲断面を有する。
【0014】
合焦ユニットは、20~55°、好ましくは、30~45°を含む、第1照射プレーン(X,Z)上の照射軸(Z)との第1合焦ポイント(Fx)において形成される合焦半角(β)を有する合焦ビームを形成するように構成することができる。
【0015】
1つ又は複数の制動放射コンバータは、タンタル(Ta)又はタングステン(W)又はチタン(Ti)から製造することができる。1つ又は複数の制動放射コンバータのそれぞれは、好ましくは3mm以下である曲率半径に沿って計測された厚さ(L90)を有し、好ましくは、厚さ(L90)は、0.2~2.5mm、更に好ましくは0.5~1.5mmを含む。ターゲットホルダに最も近接して配置されるn番目の制動放射コンバータは、合焦ユニットに最も近接して配置される第1制動放射コンバータよりも大きな厚さ(L90)を有することが更に好ましい。
【0016】
変換ユニットは、冷却チャネルによって互いに分離された1~n個の制動放射コンバータを備えることができ、nは2~8、好ましくは3~5を含む。コンバータ冷却システムは、チャネルを通じたガス又は液体の強制された冷却流れを有することができる。
【0017】
また、本発明は、ターゲットのX線照射によって放射性同位体を生成するプロセスにも関し、これは、
・上記に定義されているシステムを提供するステップと、
・ターゲットをターゲットホルダ上に装填するステップと、
・X線を生成するために変換ユニット上に加速された電子ビームを走査及び合焦するステップと、
・このようにして生成されたX線によってターゲットを照射するステップと、
を有する。
【0018】
ターゲットは、225Acを生成するための226Ra、99mTcを形成するための100Mo、187Reを生成するための186W、131Iを形成するための134Xe、又は67Cuを生成するための68Znのうち1つから選択することができる。
【0019】
本発明の特性の十分な理解のために、添付図面に関連して提供される、下記の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1a】
図1(a)は、本発明によるシステムの側面図を示す。
【
図1b】
図1(b)は、本発明によるシステムの第1実施形態の斜視図を示す。
【
図1c】
図1(c)は、本発明によるシステムの第2実施形態の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、本発明による走査及び合焦ユニットの図を示す。
【
図3】
図3は、本発明による変換ユニットの一例を示す。
【
図4a】
図4(a)は、従来技術による制動放射コンバータのまっすぐなシートに跨って電子ビームによって横断される最大距離(Lα)を示し、ここで、α=β+90°である。
【
図4b】
図4(b)は、本発明による制動放射コンバータの湾曲したシートに跨って電子ビームによって横断される最大距離(Lα)を示し、ここで、65°≦α≦115°である。
【
図4c】
図4(c)は、本発明の好適な実施形態による制動放射コンバータの湾曲したシートに跨って電子ビームによって横断される最大距離(L90)を示し、ここで、α=90°である。
【
図4d】
図4(d)は、角度αの関数として、本発明による制動放射コンバータの湾曲したシートに跨って電子ビームによって横断される正規化された最大距離(Lα/L90)をプロットしており、Lαの最低値は、α=90°においてL90である。
【
図5a】
図5(a)は、走査ビームによって横断される、従来技術によるまっすぐな制動放射コンバータの走査エリアを表す高さ(hi)を示す。
【
図5b】
図5(b)は、走査ビームによって横断される、本発明による湾曲した制動放射コンバータの走査エリアを表す高さ(ci)を示す。
【
図5c】
図5(c)は、従来技術による走査ビームによって横断される制動放射コンバータの高さ(hi、ci)を本発明と比較している。
【
図5d】
図5(d)は、合焦半角(β)の関数として、走査ビームによって横断される制動放射コンバータの高さ比率(c1/h1)をプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、電子ビームの光子ビームへの変換及びこれによるターゲット(5)の照射によって放射性同位体を生成するシステムに関する。システムは、照射軸(Z)に沿って加速された電子の電子ビーム(10)を生成するように構成された電子加速器(1)を有する。走査ユニット(2)は、照射軸(Z)に沿って、電子加速器の下流に挿入されている。走査ユニット(2)は、走査ビーム(10s)を形成するために、予め定義された走査パターンに沿って電子ビーム(10)を偏向させるように構成されている。合焦ユニット(3)は、照射軸(Z)に沿って、走査ユニットの下流に挿入されている。合焦ユニットは、合焦されたビーム(10f)を形成するために、照射軸(Z)上に配置された第1合焦ポイント(Fx)に向かって第1照射プレーン(X,Z)上に走査ビーム(10s)を合焦するように構成された、1つ又は複数の磁石(3m)を有し、第1照射プレーン(X,Z)は、照射軸(Z)及び第1横断軸(X)によって定義され、ここで、X⊥Zである。
【0022】
変換ユニット(4)は、合焦ユニット(3)と第1合焦ポイント(Fx)との間に配置されている。変換ユニットは、合焦されたビーム(10f)を光子ビーム(11x)に変換するように構成された1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)を有する。変換ユニットは、1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)を冷却するように構成されたコンバータ冷却システム(4c)を装備する。
【0023】
ターゲットホルダ(5h)は、第1合焦ポイント(Fx)において曝露された状態においてターゲット(5)を保持するように構成されている。ターゲットホルダは、ターゲットホルダ(5h)内において保持される際にターゲット(5)を冷却するように構成されたターゲット冷却ユニット(5c)を装備する。
【0024】
電子加速器(1)、走査ユニット(2)、合焦ユニット(3)、変換ユニット(4)、及びターゲットホルダ(5h)は、いずれも、照射軸(Z)に沿ってアライメントされ、この順序で互いの下流に配置されており、「下流」は、電子ビーム方向との関係において定義されている。
【0025】
本発明の要旨は、合焦されたビーム(10f)が、すべての点において65°~115°、好ましくはすべてのポイントにおいて75°~105°を含む交差角度(α)により、1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)のそれぞれと交差するように、1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)が湾曲しており、更に好ましくは、交差角度(α)は90°±5°に等しい、という点にある。
【0026】
電子加速器(1)
電子加速器は、当技術分野において周知である。本発明は、10~40MeV、好ましくは15~30MeV、好ましくは20~25MeV、のエネルギーの電子ビーム(10)を生成する能力を有する限り、任意の特定のタイプの電子加速器に限定されるものではない。電子ビーム(10)の直径は、10mm未満であってよい。電子加速器は、例えば、線形粒子加速器(例えば、リニアック)又は花弁様加速器(例えば、ロードトロン)であってよい。
【0027】
走査ユニット(2)
走査ユニットについては、当技術分野において周知である。本発明は、走査ビーム(10s)を形成するために予め定義された走査パターンに沿って電子ビーム(10)を走査する能力を有する限り、任意の特定のタイプの走査ユニットに限定されるものではない。制動放射コンバータに当てる際には、電子ビームのエネルギーの一部分のみがX線エネルギーに変換される。残りは、熱として放散される。コンバータ上における電子ビームの走査は、コンバータの全体表面にわたるフラットなビーム分布をもたらし、コンバータの小さな走査エリア内におけるビームパワーの濃縮及び加熱を低減する。
【0028】
走査ユニット(2)は、電子ビーム(10)の横方向において走査磁気コイル(2m)を装備することができる。走査磁気コイルは、
図1(c)に示されているように、第1横断方向(X)に沿って線形で電子ビームを走査するように構成されることができる。或いは、この代わりに、走査磁気コイルは、
図1(b)に示されているように、第1及び第2横断方向(X、Y)に沿って走査エリア上に電子ビームを走査するように構成されることもできる。
【0029】
第1実施形態において、走査ユニット(2)は、第1横断軸(X)のみに沿って延在する予め定義された走査パターンに沿って電子ビーム(10)を偏向させるように構成されている。或いはこの代わりに、第2実施形態において、走査ユニット(2)は、第1横断軸(X)及び第2横断軸(Y)に沿って延在する予め定義された走査パターンに沿って電子ビーム(10)を偏向させるように構成され、ここで、X⊥Y⊥Zである。
【0030】
以上に記述されているように、コンバータ上への第1横断方向及び任意選択により第2横断方向における電子ビームの走査は、コンバータの冷却を促進する。但し、これは、このようにして形成された光子ビームのより幅広い幾何学的広がりをもたらす。いくつかの場合において、大きなターゲットが利用可能であるときは、これは利点となり得る。但し、ターゲット材料が十分なものではなく、226Raなどのように小さな寸法のターゲットが使用されている際には、X線の幅広の幾何学的広がりは不都合なものとなり得る。これを理由として、当技術分野においては、合焦磁気コイル(3m)を介してコンバータ上にビームを合焦するように走査ビーム(10s)を収束させるために合焦ユニットを使用することが提案されている。
【0031】
合焦ユニット(3)
従って、より小さな寸法のターゲットにおいては走査ビーム(10s)を効率的に使用することができず、その理由は、変換ユニット(4)との間に走査電子ビームの相互作用によって形成される光子ビーム(11x)も広がるからである。小さな寸法のターゲットのためには、走査ビーム(10s)又は光子ビーム(11x)の再合焦が必要とされる。光子ビーム(11x)の合焦は、例えば(特許文献4)に記述されている。本発明においては、システムは、合焦ビーム(10f)を形成するために走査ビーム(10s)を合焦するように、変換ユニット(4)の上流に配置された合焦ユニット(3)を有する。
【0032】
合焦ユニット(3)は、合焦ビーム(10f)を形成するために、照射軸(Z)上に配置された第1合焦ポイント(Fx)に向かって第1照射プレーン(X,Z)上に走査ビーム(10s)を合焦するように構成されている。第1照射プレーン(X,Z)は、照射軸(Z)及び第1横断軸(X)によって定義され、X⊥Zである。このタイプの合焦ユニットは、当技術分野において周知である。本発明は、合焦ビーム(10f)を形成するために走査されるのに伴って第1合焦ポイント(Fx)に向かって走査ビーム(10s)を合焦する能力を有する限り、任意の特定のタイプの合焦ユニット(3)に限定されるものではない。より小さな寸法のターゲットにおいては、対応した方式で、より小さな寸法の合焦ポイント(Fx)が必要とされる。
【0033】
図2に示されているように、走査ビーム(10s)の合焦ユニット(3)は、例えば、四重極、六重極、又は八重極レンズなどの多重極レンズを形成する合焦磁気コイル(3m)から形成されるレンズを有することができる。このようにして形成された合焦ビーム(10f)は、依然として、第1横断方向及び任意選択により第2横断方向(X、Y)に走査するが、
図5(b)に示されているように、合焦ビームは、走査パターンのすべてのポイントから第1合焦ポイント(Fx)に向かって収束する。コンバータが合焦ユニット(3)と第1合焦ポイント(Fx)との間に位置決めされていることから、合焦ビーム(10f)は変換ユニット(4)の走査エリア上に走査し、これにより、より大きな走査エリアにわたって合焦ビームのエネルギーを分散させている。
【0034】
また、走査ユニット(2)が第1横断軸(X)及び第2横断軸(Y)に沿って延在する予め定義された走査パターンに沿って電子ビーム(10)を偏向させるように構成されている実施形態では、合焦ユニット(3)は、照射軸(Z)上に配置された第2合焦ポイント(Fy)に向かって第2放射プレーン(Y,Z)上に走査ビーム(10s)を合焦するように構成されることもできる。第2合焦ポイント(Fy)は、第1合焦ポイント(Fx)と同一であることもでき、又はこれと異なることもできる。
【0035】
図3、
図4(a)~
図4(c)、及び
図5(a)~
図5(c)に示され、照射軸(Z)と合焦された電子ビームの外側エンベロープとの間の第1合焦ポイント(Fx)に形成される合焦半角(β)は、20~55°、好ましくは30~45°を含み得る。走査ビーム(10s)が第1横断方向及び第2横断方向(X、Y)の両方にわたって走査される場合、第2合焦ポイント(Fy)において形成される合焦半角(β)は、第1合焦ポイント(Fx)と異なるならば、上記に定義されているものと同一の範囲内のものであってよい。
【0036】
変換ユニット(4)
図5(a)に示されているように、変換ユニットは、従来、照射軸(Z)に沿って互いの背後にアライメントされた高Z数の金属のフラットなシートの形態を有し冷却チャネルによって互いに分離された、いくつかの制動放射コンバータ(4.1-4.n)によって形成されている。合焦ユニット(3)の下流にこのような変換ユニットを配置することに伴う、2つの主要な問題点が存在する。
【0037】
第1に、
図4(a)において表されているように、合焦ビーム(10f)内の最も外側に配置されている電子は、90°超の交差角度(α)によって制動放射コンバータシート(4.1)と交差する一方で、照射軸(Z)に沿って運動する電子は、90°の交差角度(α)によって制動放射コンバータシート(4.1)と交差することがわかる。
図4(a)において明瞭に可視状態にあるように、且つ、
図4(d)においてプロットされているように、電子によって横断される制動放射材料の長さ(Lα)は、交差角度(α)に強力に依存しており、最小距離(L90)は、α=90°である交差角度の角度に位置する(
図4(d)を参照されたい)。これは、制動放射材料に跨ってより長い経路(Lα)を運動する最も外側の電子は、L90に近接した又はこの経路長を有する照射軸(Z)に近接して運動する電子よりも大きなエネルギーを、従ってより大きな熱を放出することを意味する。これは問題であり、その理由は、制動放射コンバータの走査エリアにわたって温度の勾配が存在するからであり、及び、第1制動放射シートにおいてより大きなエネルギーを放出した最も外側の電子が、照射軸(Z)により近接して運動する最も内側の電子よりも、後続のシートにおいてより小さなエネルギーを有するからである。
【0038】
第2に、
図5(a)、
図5(c)、及び
図5(d)に示されているように、合焦ビーム(10f)によって横断されるそれぞれの制動放射シートの走査エリアは、制動放射シートがフラットである際には、湾曲する際よりも小さい。
図5は、プレーン(X,Z)上における側面図又は投影を示しており、且つ、
図5の2D投影においては、3D系内の2次元エリアが1次元の長さ(hi、ci、ここで、i=1~nである)に低減されている。従って、長さhi又はciを参照する際には、「エリア」という用語が使用されており、これにより、読者は[m
2]を単位とした大きさを得るために、第2横断方向(Y)における対応する長さによって長さhi及びciを頭の中で乗算することが可能になる。
【0039】
図5(a)には、合焦電子ビーム(10f)が交差する制動放射シートの走査エリアが長さ(hi、ここで、i=1~nである)によって表されている。
図5(c)を参照すると、長さhiは、合焦半角(β)の関数としてhi=di×sinβとして算出することができ、diは、(照射軸(Z)に沿って計測された)第1合焦ポイント(Fx)からi番目の制動放射コンバータ(4.i)を分離する距離である。合焦ビーム(10f)が交差する制動放射の走査エリアを増大させることにより、それぞれのシートの後において走査エリアが減少し、これにより、より小さな走査エリア上へのビームエネルギーの濃縮が増大することから、特に多数(n)の制動放射シートが使用されている場合は有利であろう。
【0040】
本発明は、合焦ビーム(10f)が、すべてのポイントにおいて65°~115°、好ましくはすべてのポイントにおいて75°~105°を含む交差角度(α)によって1つ又は複数の制動放射コンバータのそれぞれと交差するように湾曲したシートの形態における、湾曲した制動放射コンバータ(4.1-4.n)により、当技術分野においてこれまで使用されているフラットシートの形態における制動放射コンバータを置換することを提案する。好ましくは、交差角度は90°である。変換ユニット(4)のすべてのポイントにおける90°の交差角度は、第1の合焦ポイント及び任意選択により第2合焦ポイント(Fx、Fy)から湾曲したシートを分離する距離として定義される単一の曲率半径又は任意選択により二重の曲率半径(di)を有するシートの形態における制動放射コンバータにより得ることができる。第1及び第2合焦ポイントが同一である場合は、制動放射シートは半径(di)の球形キャップの形状を有する。この単純な解決策は、
・合焦ビーム(10f)が交差する制動放射シートの走査エリアに跨るより均一な熱分布、及び、
・合焦ビーム(10f)が交差する制動放射シートの、より大きな走査エリア、
をもたらすことにより、上述の2つの問題を解決する。
【0041】
より均一な熱分布
図4(b)及び
図4(c)に示されているように、交差角度(α)は、角度γだけ、照射軸(Z)に平行な照射方向との関係において制動放射シートを局所的に傾斜させることにより、90°により近接するように又はこれに等しくなるようにすることができる。十分に湾曲した制動放射シートの場合は、交差角度(α)は、すべてのポイントにおいて65°~115°、好ましくはすべてのポイントにおいて75°~105°に低減することができる。
図4(d)を参照すると、薄く網かけされたエリアによって表されているすべてのポイントにおいて65°~115°である交差角度(α)の範囲において、合焦ビーム(10f)の2つの電子によって横断される制動放射材料の正規化された厚さ(Lα/L90=1/sinα)が最大で約10%だけ変化することができる(Lα/L90≒1.1)ことがわかる。交差角度(α)の範囲が、
図4(d)において濃く網かけされたエリアによって表されている75~105°に低減されると、正規化された厚さ(Lα/L90)は、合焦ビーム(10f)の任意の2つの電子について4%未満だけ変化する(Lα/L90=1.04)。すべてのポイントにおいて交差角度α=90°である場合は、正規化された厚さ(Lα/L90=1)は合焦ビームのすべての電子について一定であり、制動放射コンバータ(4.1-4.i)に伝達される熱エネルギーは、より高い温度の局所的エリアを伴うことなしに、合焦ビーム(10f)によって横断される変換ユニット(4)の走査エリア全体にわたって均一に分散される。
【0042】
対照的に、合焦ビーム(10f)が、例えば、合焦半角β=α-90°=45°に対応するα=135°の交差角度により、
図4(a)に示されているように制動放射フラットシートを横断する場合は、合焦ビームによって横断されるフラットシートの正規化された厚さは40%にわたって変化し(
図4(d)においては、Lα/L90=1.4である)、これにより、合焦ビーム(10f)によって横断されるフラットシートの走査エリアに跨って比例的に匹敵する熱勾配がもたらされる。
【0043】
合焦ビーム(10f)が、すべてのポイントにおいて65°~115°を含む交差角度(α)によって1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)のそれぞれと交差するように湾曲した制動放射コンバータ(4.1-4.n)を使用することは、合焦ビームとのやり取りによって生成される熱を制動放射コンバータの走査エリア上に均一化することに明瞭に寄与する。これは、変換ユニットの冷却をフラットシートの場合よりも容易にしており、従って、従来の冷却システム(4c)を成功裡に使用することができる。
【0044】
より大きな走査エリア
図5(a)及び
図5(c)を参照すると、フラットシートによって形成された変換ユニットの高さ(hi)によって表されている走査エリアは、値hi:=di×sinβによって特徴付けられ得る一方で、半径(di)の湾曲したシートによって形成された変換ユニットの湾曲した高さ(ci)によって表されている走査エリアは、値ci:=di×βによって特徴付けられ得ることがわかる。従来技術による高さ(hi)に対する本発明による湾曲した高さ(ci)の高さ比率(ci/hi)は、ci/hi=β/sinβとして表現することができる。
図5(d)には、高さ比率(ci/hi)が合焦半角(β)の関数としてプロットされている。例えば、β=45°の合焦半角のときは、湾曲した制動放射コンバータは、フラットシートよりも10%だけ大きな走査エリア(ci)を有することがわかる。β=50°の合焦半角のときは、走査エリアは、約15%だけ大きい。湾曲した制動放射コンバータによれば、この走査エリアの増大が、フラットなものよりも、より大きな走査エリアにわたって合焦ビームエネルギーを分散させることを可能にする。従って、合焦ビームと変換ユニットの走査エリアの相互作用によって生成される熱が相応して低減され、これにより、変換ユニット(4)の冷却が更に促進される。
【0045】
制動放射コンバータ(4.1-4.n)の形状
1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)は、第1横断プレーン(X,Z)内の湾曲した断面及び第2横断軸(Y)に沿って延在する母線によって定義された円筒体のセクションの形状を有することが可能であり、X⊥Y⊥Zである。この形状は、走査ユニット(2)が、第1横断軸(X)のみに沿って延在する予め定義された走査パターンに沿って電子ビーム(10)を偏向させるように構成されている場合には好ましい。また、これは、ターゲット(5)が細長い形状を定義する長さを有し走査ビームが細長いターゲットの長さを含むプレーン上で合焦される必要がない場合にも好ましいものであり得るであろう。
図1(c)には、このタイプの変換ユニット(4)が示されている。
【0046】
一代替実施形態においては、1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)は、第1照射プレーン(X,Z)内の第1湾曲断面によって及び第2照射プレーン(Y,Z)内の第2湾曲断面によって定義された卵形キャップ、好ましくは球形キャップの形態を有する。このタイプの変換ユニットは、
図1(b)において示されており、走査ユニット(2)が第1横断軸(X)及び第2横断軸(Y)に沿って延在する予め定義された走査パターンに沿って電子ビーム(10)を偏向させるように構成されている場合に特に適合されており、X⊥Y⊥Zであり、更には、合焦ユニット(3)は、照射軸(Z)上に配置された第2合焦ポイント(Fy)に向かって、第2照射プレーン(Y,Z)上に走査ビーム(10s)を合焦するように構成されており、第2合焦ポイント(Fy)は、第1合焦ポイント(Fx)と同一であることもでき、又は異なっていることもできる。好適な一実施形態においては、第1合焦ポイント及び第2合焦ポイント(Fx、Fy)は、同一の合焦ポイントである(即ち、Fx=Fy)。
【0047】
両方の実施形態(即ち、単一曲率又は二重曲率)において、湾曲したセクションの曲率半径は、それぞれ一定である、即ち、円弧又は球形カップを定義することが好ましい。曲率は、好ましくは、第1合焦ポイント(Fx)に対して制動放射コンバータ(4.1-4.n)を分離する距離(di)に近接する。
【0048】
好適な一実施形態においては、1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)のそれぞれは、第1合焦ポイント(Fx)上にセンタリングされた半径(d1-dn)の実質的な円弧によって定義された第1照射プレーン(X,Z)内の第1湾曲断面を有する。「実質的な円弧」は、本明細書においては、湾曲した弧の長さにわたって10%以下だけ変化する曲率半径を有する湾曲したセグメントとして定義されている。この形状によれば、合焦ビーム(10f)は、交差角度=90°により、第1照射プレーン(X,Z)に沿って制動放射コンバータに到達する。
【0049】
更なる好適な一実施形態においては、1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)のそれぞれは、第2合焦ポイント(Fy)上にセンタリングされた半径(d1-dn)の実質的な円弧によって定義された第2照射プレーン(Y,Z)内の第2湾曲断面を有する。第2合焦ポイント(Fy)が第1合焦ポイント(Fx)と同一であり(即ち、Fx=Fy)、これにより、単一の合焦ポイント(Fx=Fy)上にセンタリングされた球形キャップの形状を定義することが好ましい。
【0050】
図3に示されているように、変換ユニット(4)は、冷却チャネルによって互いに分離された1~n個の制動放射コンバータ(4.1-4.n)を有し、ここでnは2~8、好ましくは3~5を含む。コンバータ冷却システム(4c)は、合焦ビーム(10f)との相互作用によって生成される熱を制動放射コンバータから引き出すために冷却流体が冷却チャネルを通じて流れる、ガス又は液体の強制冷却を含むことができる。この構成は、当業者には周知である本明細書において「従来の冷却システム」と呼称されているものを定義する。
【0051】
1つ又は複数の制動放射コンバータ(4.1-4.n)のそれぞれは、3mm以下の曲率半径に沿って計測された厚さ(L90)を有し、好ましくは、厚さ(L90)は、0.2~2.5mm、更に好ましくは0.5~1.5mm、である。制動放射コンバータの1つのポイントにおける曲率半径は、そのポイントにおいて制動放射コンバータに接触する、及びそのポイントにおいて同一の接線及び曲率を有する円の半径として定義されている。従って、曲率半径は、そのポイントにおける制動放射コンバータの接線に対して垂直である。これは、L90によって示されているように、
図4(a)~
図4(c)において示されている。また、厚さ(L90)は、1つの表面から反対側の表面までの制動放射コンバータと交差する最短の直線である。
【0052】
好適な一実施形態において、ターゲットホルダ(5h)に最も近接して配置されているn個の制動放射コンバータのシーケンス内のn番目の制動放射コンバータ(4.n)は、合焦ユニット(3)に最も近接して配置されている第1制動放射コンバータ(4.1)よりも大きな厚さ(L90)を有する。好ましくは、シーケンス内のそれぞれの制動放射コンバータ(4.i)は、上流に配置されている隣接する制動放射コンバータ(4.(i-1))よりも厚い(即ち、L90(4.i)>L90(4.(i-1))。制動放射コンバータの走査エリアは、制動放射コンバータが第1合焦ポイント(Fx)により近接するのに伴って減少することから、シーケンス内の下流に配置されている制動放射コンバータの厚さを増大させることにより、合焦ビーム(10f)と相互作用する制動放射コンバータ材料の容積の均質化が可能になる。この結果、すべての制動放射コンバータがX線の生成に等しく寄与することになる。また、排出しなければならない相互作用によって生成される加熱も、変換ユニット(4)の様々な制動放射コンバータの間により均等に分散され、これにより、その冷却が促進される。
【0053】
1~n個の制動放射コンバータ(4.1-4.n)は、タンタル(Ta)、タングステン(W)又はチタン(Ti)から製造することができる。
【0054】
ターゲット(5)及びターゲットホルダ(5h)
合焦ユニットの使用に起因して、本発明のシステムは、小さな寸法のターゲット(5)の場合に特に適する。ターゲット(5)は、診断撮像のために一般に使用されている225Acを生成するためには、226Raであってよい。診断撮像同位体を形成するために本発明のシステムと共に使用され得るターゲットのその他の例は、99mTcを形成するための100Moターゲット、187Reを生成するための186Wターゲット、131Iを形成するための134Xe、又は67Cuを生成するための68Zn及びこれらに類似するものを含む。
【0055】
ターゲットとの間のX線(11x)の相互作用によって生成される変換反応が熱を生成するのに伴って、ターゲットホルダ(5h)内において保持されている際にターゲット(5)を冷却するように構成されたターゲット冷却システム(5c)が提供されている。以上に記述されているコンバータ冷却システム(4c)と同様に、ターゲット冷却システム(5c)は、冷却流体がターゲット(5)との熱的接触状態において冷却チャネルを通じて流れるガス又は液体強制冷却を備えることができる。当然のことながら、ターゲット(5)の温度を劣化温度未満に維持することが重要である。
【0056】
第1及び第2合焦ポイントが同一であり(即ち、Fx=Fy)、且つ、このようにして変換ユニット(4)によって生成されたX線が合焦ポイント(Fx)の周りの小さな収束エリアに向かって収束するときは、サンプルホルダは、ターゲットのより大きなエリアが(静止する)合焦ポイントによって走査されるように、ターゲット(5)を移動させるように構成することができる。これは、静止状態に留まっている場合よりもターゲットの大きなエリア/容積にわたって変換が発生するように、その露出エリアがX線の収束エリアよりも大きい、より大きな寸法のターゲットの場合に、特に興味深い。
【0057】
放射性同位体を生成するプロセス
本発明のシステムは、ターゲットのX線照射によって放射性同位体を生成するプロセスにおいて使用することができる。プロセスは、以上に記述されているシステムを提供するステップを有する。ターゲット(5)をターゲットホルダ(5h)上に装填した後に、このようにして生成されたX線によってターゲットを照射するようにX線を生成するために、加速された電子ビームを変換ユニット(4)上に走査及び合焦する。
【0058】
ターゲットは、例えば、225Acを生成するための226Ra、99mTcを形成するための100Moターゲット、187Reを生成するための186Wターゲット、131Iを形成するための134Xe、又は67Cuを生成するための68Zn及びこれらに類似したものであってよい。
【符号の説明】
【0059】
1 電子加速器
2 走査ユニット
2m 走査磁気コイル
3 合焦ユニット
3m 合焦磁気コイル
4 変換ユニット
4.1~4.n 制動放射コンバータ
4c コンバータ冷却システム
5 ターゲット
5c ターゲット冷却システム
5h ターゲットホルダ
10 電子ビーム
10f 合焦ビーム
10s 走査ビーム
11x 光子ビーム
c1~cn 合焦ビームによって照射される湾曲した制動放射コンバータの断面の長さ
d1~dn i番目の制動放射コンバータと第1合焦ポイントの間の距離
Fx、Fy 第1及び第2照射プレーン(X,Z)及び(Y,Z)に沿った合焦ビームの合焦ポイント
h1~hn 合焦ビームによって照射されるまっすぐな制動放射コンバータの断面の長さ
L90 その表面に対して垂直において計測される制動放射コンバータの厚さ
Lα その表面との間における角度αに沿って計測される制動放射コンバータの厚さ
X 第1横断軸
Y 第2横断軸
Z 照射軸
α 合焦ビームと制動放射コンバータ表面の間の角度
β 合焦ポイントにおける照射軸(Z)との間の合焦ビームの合焦半角
γ 制動放射コンバータの表面と照射軸(Z)の間の角度
【外国語明細書】