(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133181
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】組換え大腸菌および高純度ウルソデオキシコール酸の調製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20230914BHJP
C12P 7/42 20060101ALI20230914BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20230914BHJP
C12N 15/70 20060101ALN20230914BHJP
C12N 9/04 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12P7/42
C12N15/53
C12N15/70 Z
C12N9/04 D
C12N9/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023031884
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】202210285129.6
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523076955
【氏名又は名称】シーアン・ユェダ・バイオテクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XI’AN YUEDA BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】ROOM 501, BUILDING F, NO. 1 OF ZONE C, GAZELLE VALLEY, NO. 69 JINYE ROAD, XI’AN HI TECH ZONE, XI’AN, 710076 SHAANXI, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ティエン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】トン・シュー
(72)【発明者】
【氏名】リュイ・ジュー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD07
4B064CA19
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB03
4B065BB10
4B065BB29
4B065BC01
4B065BC31
4B065CA05
4B065CA10
4B065CA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、生物工学技術分野に属し、特に、組換え大腸菌(E.coli)および高純度ウルソデオキシコール酸(UDCA)の調製方法の提供。
【解決手段】本発明は、新規の二重酵素共発現遺伝子操作細菌、すなわち組換え大腸菌を構築する。細菌は、7β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7β-HSDH)とグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)とを同時に発現する。細菌は、高純度UDCAの調製に適用可能である。7β-HSDHとGDHとを併用して発現および適用することにより、標的調製物の収量が増加する。高純度UDCAの調製方法は、簡便であり、調製プロセスにおける不純物の発生が少なく、環境保護要件を満たす環境に優しいプロセスであり、重要な産業応用価値を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え大腸菌であって、前記組換え大腸菌が、7β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7β-HSDH)およびグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を同時に発現し、
前記7β-HSDHおよび前記GDHが、ベクターpETDuet1によって共発現され、かつ
前記組換え大腸菌の宿主細菌が、大腸菌BL21(DE3)である、組換え大腸菌。
【請求項2】
前記組換え大腸菌が、以下の方法、
前記7β-HSDHの遺伝子および前記GDHの遺伝子に対してそれぞれコドン最適化を行い、全遺伝子合成を行うステップ、
合成された前記7β-HSDHの遺伝子を、ベクターpETDuet1に最初に連結し、組換えプラスミドpETDuet1-7β-HSDHを得、次いで、前記GDHの遺伝子を前記プラスミドpETDuet1-7β-HSDHに連結し、前記7β-HSDHと前記GDHとを共発現する組換えプラスミドpETDuet1-GDH-7β-HSDHを得るステップ、
前記pETDuet1-GDH-7β-HSDHを大腸菌BL21(DE3)コンピテントセルに移入し、前記組換えプラスミドを担持する大腸菌BL21(DE3)-pETDuet1-GDH-7β-HSDHを得るステップ、および、
前記大腸菌BL21(DE3)-pETDuet1-GDH-7β-HSDHを培養し、前記組換え大腸菌を得るステップ、により構築される、請求項1に記載の組換え大腸菌。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記7β-HSDHの遺伝子のヌクレオチド配列および前記GDHの遺伝子のヌクレオチド配列が、それぞれ配列番号1および配列番号2に示されるように、コードされ、コドン最適化が行われ、
ステップ(4)において、大腸菌の前記培養が、以下のステップ、
前記大腸菌BL21(DE3)-pETDuet1-GDH-7β-HSDHを、活性化および培養のためにLB固体プレート培地に接種し、前記LB固体プレート培地からシングルコロニーを採取し、前記シングルコロニーを、100mg/Lのアンピシリン(Amp+)を含むLB液体培地を入れたエルレンマイヤーフラスコ、に接種し、振とう培養するステップ、
ステップ(1)における培養物を、100mg/Lのアンピシリン(Amp+)を含むTB液体培地に移し、ある一定時間振とう培養し、0.4mMのイソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、培養を継続するステップ;および
誘導発現終了後、遠心分離して細胞を回収し、操作された細菌として前記組換え大腸菌を得るステップ、を含む、請求項2に記載の組換え大腸菌。
【請求項4】
前記LB固体プレート培地が、以下の成分:トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L、および寒天15.0g/L、を含み、
前記LB液体培地が、以下の成分:トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、および塩化ナトリウム10g/L、を含み、かつ、
前記TB液体培地が、以下の成分:トリプトン12g/L、酵母エキス24g/L、グリセロール5g/L、リン酸二カリウム9.4g/L、およびリン酸一カリウム2.2g/L、を含む、請求項3に記載の組換え大腸菌。
【請求項5】
調製が、請求項1から4のいずれか一項に記載の組換え大腸菌を用いて実施される、高純度ウルソデオキシコール酸(UDCA)の調製方法。
【請求項6】
前記調製方法が、完全細胞変換調製を行うことであり、前記完全細胞変換調製の系が、湿重量が1g/L~100g/Lの細胞と、濃度が1g/L~200g/Lの7-オキソ-リトコール酸と、濃度が1g/L~100g/Lのグルコースとを含み、前記系のpHが7.0~9.0であり、反応が、1℃~30℃、1時間~48時間の条件で行われる、請求項5に記載の高純度UDCAの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物工学技術分野に属し、特に、組換え大腸菌(E.coli)および高純度ウルソデオキシコール酸(UDCA)の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な漢方薬の有効成分として、UDCA(3α,7β-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸)は、非常に広い臨床応用が認められており、優れた薬学的価値を有している。UDCAは、胆石症、肝移植促進、胆汁逆流性胃炎、アルコール性肝臓疾患、胆汁性肝硬変、および薬剤性肝炎の治療において優れた治療効果を発揮し、よって市場における高い需要がある。
【0003】
現在、UDCAは主に天然由来と合成とにより調製されている。天然の供給源は、動物愛護法で保護されている生きたクマの胆嚢や胆汁から抽出したもので、抽出源が限られているため、天然のクマの胆嚢の供給源は徐々に減少している。合成法では、入手が容易な牛やガチョウの胆汁から抽出したケノデオキシコール酸(CDCA)を用いてUDCAを化学合成し、酸化還元法を用いて7-OHを構造変化させる方法がとられている。しかし、複雑な反応プロセス、低い選択性、厳しい反応条件、高いエネルギー消費、深刻な汚染など、一連の問題がある。特に、保護および脱保護の際に毒性および危険性を有する試薬が必要であり、よって化学的方法の工業的応用は大きく制限される。現在、化学的方法を用いて調製されたUDCAは約30%の市場シェアを占め、純度も約80%と比較的低く、市場におけるUDCAの用途や品質に対する要求を満たすには程遠い。
【0004】
化学的なエピマー化と比較して、UDCAの生物学的合成は効率的であり、比較的環境に優しい。微生物による変換または生物学的酵素触媒は、主に、7α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7α-HSDH)および7β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7β-HSDH)の展開を伴い、CDCAからUDCAへの生物学的変換を実施するためには、7α-HSDHと7β-HSDHとを生成するクロストリジウム・リモサム(Clostridium limosum)、クロストリジウム・アブソナム(clostridium absonum)、クロストリジウム・パストゥリアヌム(clostridium pasteurianum)、およびキサントモナス・マルトフィリア(xanthomonas maltophilia)が、使用されている。しかし、高濃度のCDCAは細胞バイオマスの蓄積を阻害するため、生成物のリサイクルや精製が困難になる。また、これまでの研究では、培養時間の経過とともに中間体の収量が増加し、UDCAが減少するため、工業的な調製を実施することは不可能であることが示されている。近年、7α-HSDHと7β-HSDHとを併用して、CDCAを基質とするUDCAを2工程法で調製する研究が注目されている。現在、研究されている総合的な変換率は90%を超えている。しかし、反応量はミリリットルレベルであり、工業化には程遠いのが現状である。主な制限的なボトルネックは、以下の通りである。
1)CDCAを基質とする2工程法の主要な酵素7β-HSDHは極めて不安定である。酵素の活性は十分であるが、触媒反応系ではすぐに不活性になる。
2)2工程法における反応系は、基質量が過度に少なく(体積比1%)、前記系が不安定である。
3)2工程法における2つの主要な酵素は、工業的応用において大規模な供給源の問題に直面する。
4)酵素タンパク質の分離・精製にかかるコストが高すぎる。
【0005】
(概要)
本発明は、従来技術の問題点を解決するために、高純度UDCAの調製方法を提供し、複数の酵素を共発現する操作された細菌を構築し、UDCAの効率的な調製を実施する。本発明は、UDCAを低コストで調製できる組換え操作された細菌を提供する。また、本発明は、菌株の構築および応用に関する技術的課題を解決することを目的とする。
【0006】
前記目的を達成するために、本発明では以下の技術的解決法が採用される。
【0007】
本発明の第1の目的は、低コストでUDCAを調製することができる組換え大腸菌を提供することである。前記組換え大腸菌は、7β-HSDHおよびグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である2つの酵素、をそれぞれ同時に発現し得る。前記組換え大腸菌は、2021年12月27日にChina Center for Type Culture Collectionに寄託されている。その寄託番号は、CCTCC NO:M20211644である。
【0008】
好ましくは、前記7β-HSDHはクロストリジウム・アブソナム(clostridium absonum)に由来し、そのGenBankログインナンバーはJN191345.1である。
【0009】
好ましくは、前記GDHは枯草菌(Bacillus subtilis)に由来し、そのGenBankログインナンバーはNC-000964である。
【0010】
好ましくは、前記7β-HSDHおよび前記GDHの遺伝子に対してそれぞれコドン最適化が行われ、前記7β-HSDHの遺伝子のヌクレオチド配列、および前記GDHの遺伝子のヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2に示されるように、コードされる。
【0011】
好ましくは、組換え細菌の場合、前記7β-HSDHをコードする遺伝子と前記GDHをコードする遺伝子をともにプラスミドに連結して二遺伝子共発現組換えプラスミドを構築し、前記組換えプラスミドを、対応する菌株に形質転換して、組換え操作された細菌が得られる。
【0012】
好ましくは、前記組換え大腸菌は、具体的には、以下の方法:
(1)前記7β-HSDHの遺伝子および前記GDHの遺伝子に対してそれぞれコドン最適化を行い、全遺伝子合成を行うステップ;
(2)合成された前記7β-HSDHの遺伝子をベクターpETDuet1に連結し、組換えプラスミドpETDuet1-7β-HSDHを得るステップ;
(3)前記pETDuet1-7β-HSDHを大腸菌DH5αコンピテントセルに移入し、前記組換えプラスミドを担持する大腸菌DH5α-pETDuet1-7β-HSDHを得るステップ;
(4)前記大腸菌DH5α-pETDuet1-7β-HSDHを抗生物質固体プレートに塗布し、スクリーニングを行って陽性形質転換体を得るステップ(ステップ3およびステップ4の目的は、プラスミドに担持されている耐性遺伝子を用いてスクリーニングを行い、連結に成功した組換えプラスミドを得ることである);
(5)合成された前記GDHの遺伝子をベクターpETDuet1-7β-HSDHに連結し、組換えプラスミドpETDuet1-GDH-7β-HSDHを得るステップ;
(6)前記pETDuet1-GDH-7β-HSDHを大腸菌BL21(DE3)コンピテントセルに移入し、前記組換えプラスミドを担持する大腸菌BL21(DE3)-pETDuet1-GDH-7β-HSDHを得るステップ;および
(7)前記大腸菌BL21(DE3)-pETDuet1-GDH-7β-HSDHを抗生物質固体プレートに塗布し、スクリーニングを行って陽性形質転換体を得、前記組換え大腸菌を得るステップ、により構築される。
【0013】
好ましくは、前記組換え大腸菌は、大腸菌BL21(DE3)を宿主として構築される。
【0014】
本発明の第2の目的は、UDCAの調製方法を提供することである。当該方法において、調製は、本発明の任意の前記組換え大腸菌を用いることにより行われる。
【0015】
好ましくは、UDCAの前記調製方法は、完全細胞変換調製(Complete cell transformation production)を行うことである。
【0016】
好ましくは、完全細胞変換調製の系は、湿重量が1g/L~100g/Lの細胞と、濃度が1g/L~200g/Lの7-オキソ-リトコール酸と、濃度が1g/L~100g/Lのグルコースとを含み、pHは7.0~9.0であり、反応は1℃~30℃で1時間~48時間行われる。
【0017】
(有益な効果)
本発明は、高純度UDCAの調製方法を開示する。本発明は、新規の二重酵素共発現遺伝子操作細菌を構築する。当該細菌は、高純度UDCAの調製に適用可能である。7β-HSDHとGDHとを併用して発現および適用することにより、標的調製物の収量が増加する。本発明の方法は、簡便であり、プロセスにおける不純物の発生が少なく、環境保護要件を満たす環境に優しいプロセスであり、重要な産業応用価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】組換えプラスミドpETDuet1-GDH-7β-HSDHのプロファイルである。
【
図2】UDCA用の遺伝子操作細菌の触媒下で7-オキソ-リトコール酸を用いてUDCAを調製する反応の液相検出結果のプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態の説明)
以下、本発明を詳細に説明する。その説明にあたり、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される用語は、通常の意味および辞書的意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者が最適な解釈をするために用語を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的側面に対応する意味および概念に従って解釈されることが理解されるべきである。したがって、本明細書に示した説明は、説明のための好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の同等の方法または改良がそこから得ることができることを理解されたい。
【0020】
以下の実施形態は、本発明の実施形態の例として列挙されているに過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の要旨および着想を逸脱しない範囲での変更が本発明の保護範囲に属することは、当業者には理解される。なお、以下の実施形態で使用する試薬および器具は、特に規定がなければ、すべて市販品である。
【0021】
本発明における遺伝子操作された細菌の機能的核心は、7β-HSDHとGDHという2つの酵素を同時に発現させることができることである。操作された細菌の原理は、遺伝子操作された細菌の完全細胞において、NADPを補酵素とするGDHを用いてグルコースを脱水素し、グルコン酸およびNADPHを生成することである。前記7β-HSDHは、グルコースを脱水素するプロセスで生成したNADPHを用いて7-オキソ-リトコール酸をUDCAにすると同時に、補酵素NADPの再生を行う。
【0022】
1.本発明で使用する菌株とプラスミド
7β-HSDHおよびGDHの遺伝子について、Sangon Biotech(Shanghai)Co.,Ltd.が大腸菌のコドンバイアスに従って遺伝子配列のコドン最適化および全遺伝子合成を行う。大腸菌BL21(DE3)株は、Sangon Biotech(Shanghai)Co.,Ltd.から購入する。プラスミドpETDuet1は、Shanghai Linyuan Biotechnology Co.,Ltd.から購入する。
【0023】
2.前記7β-HSDHと前記GDHとを共発現する大腸菌は、以下の方法:
(1)前記7β-HSDHの遺伝子および前記GDHの遺伝子に対してそれぞれコドン最適化を行い、全遺伝子合成を行い、そして7β-HSDHおよびGDHの遺伝子のヌクレオチド配列を、それぞれ配列番号1および配列番号2に示されるように、コードされるステップ;
(2)合成された2つの遺伝子をそれぞれベクターpETDuet1に順次連結し、前記7β-HSDHと前記GDHとを共発現する組換えプラスミドpETDuet1-GDH-7β-HSDHを得るステップ;
(3)前記pETDuet1-GDH-7β-HSDHを大腸菌BL21(DE3)コンピテントセルに移入し、前記組換えプラスミドを担持する、操作された細菌BL21(DE3)-pETDuet1-GDH-7β-HSDHを得るステップ;および
(4)前記操作された細菌を培養するステップ、すなわち、前記操作された細菌をLB液体培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L)に接種して培養を行い、前記7β-HSDHと前記GDHとを共発現する大腸菌を得るステップ、を用いて構築される。
【0024】
3.前記操作された細菌の培養は、以下のステップ:
(1)前記操作された細菌を、活性化のためにLB固体プレート培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L、および寒天15.0g/L)に接種し、37℃で16時間~20時間培養し、前記LB固体プレート培地からシングルコロニーを採取し、前記シングルコロニーを、100mg/Lのアンピシリン(Amp+)を含むLB液体培地を入れたエルレンマイヤーフラスコに接種し、200rpm/分、37℃で16時間~20時間の振とう培養するステップ;
(2)ステップ(1)における培養物を、100mg/Lのアンピシリン(Amp+)を1:100の割合で含むTB液体培地(トリプトン12g/L、酵母エキス24g/L、グリセロール5g/L、リン酸二カリウム9.4g/L、およびリン酸一カリウム2.2g/L)に接種し、4時間から6時間、200rpm/分、37℃の条件で振とう培養し、0.4mMのイソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し、25℃で10時間~16時間培養を継続し、7β-HSDHおよびGDHを共発現する大腸菌である操作された細菌を得るステップ;および
(3)誘導発現の終了後、4℃、8000rpmで10分間遠心分離して細胞を回収するステップ、を含む。
【0025】
4.完全細胞変換によるUDCAの調製
完全細胞変換調製の系は、湿重量が1g/L~100g/Lの細胞と、濃度が1g/L~200g/Lの7-オキソ-リトコール酸と、濃度が1g/L~100g/Lのグルコースとを含み、pHは7.0~9.0であり、反応は1℃~30℃で1時間~48時間行われる。変換の終了後、液体クロマトグラフィーを用いてUDCAの収量とコンフォメーションとを測定する。
【0026】
5.サンプルの検出および分析
クロマトグラフィー条件は、RID検出器を使用すること、移動相がアセトニトリル(50)-水(0.0125%リン酸)(50)、流速が1mL/分、カラム温度が35℃、かつ、サンプルサイズが10μL、である。
【0027】
本発明によって解決される技術的問題、技術的解決法、および有益な効果をより明確に理解するために、本発明は、実施形態と関連して以下に詳細に説明される。なお、本明細書に記載された特定の実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定することを意図するものではないことに留意されたい。
【0028】
実施例1
【0029】
操作された細菌の構築
1.プラスミドPUC57-7β-HSDHを含む大腸菌と、ベクターpETDuet1を含む大腸菌との培養物を増殖させた。サンプルを10μl採取し、LB(Amp+)培地5mLに添加した。培養は37℃のシェーカーで12時間から16時間行い、シェーカーの回転数は200rpm/分であった。
【0030】
2.培養したプラスミド大腸菌は、Sangon Biotech(Shanghai)Co.,Ltd.から購入したカラムプラスミドミニプレップキット(column plasmid mini-preps kit)を用いて抽出した。操作は、キットの操作説明書に従って行った。
【0031】
3.プラスミドPUC57-7β-HSDHとベクターpETDuet1とをそれぞれEcoRVとXhoIで二重消化(double digestion)し、抽出した。消化系を下記表1に示す:
【表1】
【0032】
消化は37℃で3時間~6時間行った。Sangon Biotech(Shanghai)Co,Ltd.から購入したカラムDNAゲル抽出キットを用いて、標的セグメントと線形ベクターとをリサイクルし、精製した。
【0033】
4.リサイクルされた標的遺伝子セグメント7β-HSDHと線形ベクターpETDuet1とを、T4 DNAリガーゼを用いて連結した。その系を下記表2に示す:
【表2】
【0034】
連結は22℃で30分~60分行った。
【0035】
5.連結系により大腸菌DH5αコンピテントセルの形質転換を行う。
スーパークリーンベンチ(super-clean bench)上で、10μLの系を、標準液に従って調製した化学的コンピテント大腸菌DH5αに、移入した。混合物を軽く均一に混合し、氷上に30分間静置した。
【0036】
42℃、60秒のヒートショックを行い、前記混合物を氷上に2分間静置した。前記スーパークリーンベンチ上で滅菌済みLB培地を700μL添加した。
【0037】
前記混合物を37℃、200rpmのシェーカーに入れ、40分~60分間活性化し、LB(Amp+)固体プレート培地に塗布した。
【0038】
塗布したプレートを37℃のインキュベーター中に置いた。倒置培養(Inverted culture)を12時間~16時間行った。
【0039】
6.陽性クローンのコロニーPCR検出
7β-HSDHを増幅するためのフォワードプライマーおよびリバースプライマーは、それぞれDuetUP2とT7tである。
【0040】
【0041】
滅菌した接種リングを用いてスーパークリーンベンチ上で優占のコロニーを採取し、鋳型として使用するためにPCRチューブ中で浸漬した。
【0042】
PCR増幅条件は以下の通りである:94℃3分、(94℃30秒、60℃30秒、72℃1分)×32サイクル、72℃10分、および4℃で保存。
【0043】
7.電気泳動によりPCR産物を検出した。標的セグメントを担持する陽性コロニーDH5a-pETDuet1-7β-HSDHを選択した。
【0044】
前記陽性コロニーをスーパークリーンベンチ上で採取した。LB(Amp+)液体培地5mLを添加した。混合物をシェーカーにて、37℃、200rpmで振とうした。培養を12時間~16時間行った。
【0045】
8.プラスミドPUC57-GDHを含む大腸菌の培養物を同時に増殖させた。10μLのサンプルを採取した。LB(Amp+)培地5mLを加えた。この混合物を、シェーカー中で37℃にて12時間~16時間培養した。シェーカーの速度は200rpm/分であった。
【0046】
培養された陽性菌プラスミドおよびプラスミドPUC57-GDHを、Sangon Biotech(Shanghai)Co.,Ltd.のカラムプラスミドミニプレップキットを用いて抽出し、プラスミドPUC57-GDHおよびベクターpETDuet1-7β-HSDHは、EcoR1およびHindIIIによる二重消化を用いて抽出した。消化系は前記3.の項目と同様であった。標的遺伝子セグメントおよび線形ベクターに対して、ゲルリサイクリングを行った。
【0047】
9.リサイクルされたGDH標的遺伝子および線形ベクターpETDuet1-7β-HSDHを、連結した。連結系は、前記4.の項目と同様であった。
【0048】
10.前記連結系を、大腸菌DH5αコンピテントセルに形質転換した。操作は前記5.の項目と同様であった。
【0049】
11.陽性クローンのコロニーPCR検出:フォワードプライマーおよびリバースプライマーであるpET UpstreamおよびDuetDOWN1を用いて、GDHを増幅した。電気泳動によりPCR産物を検出した。スクリーニングを通して、標的セグメントを担持する陽性コロニーpETDuet1-GDH-7β-HSDHが、得られた。PCR反応系の条件およびサイクルの条件は、前記6.の項目と同様であった。
【0050】
12.陽性クローン細菌を採取した。LB(Amp
+)液体培地5mLを添加した。混合物をシェーカーにて、37℃、200rpmで振とうした。培養を12時間~16時間行った、プラスミドを抽出した。消化と検証を行い、ベクターが正しく構築されたことを確認した。ベクターのプロファイルを、
図1に示す。
【0051】
13.組換えプラスミドを大腸菌BL21(DE3)発現株に移入し、操作された細菌BL21(DE3)-pETDuet1-GDH-7β-HSDHを得た。
【0052】
14.操作された細菌の培養
前記遺伝子操作された細菌を、活性化のためにLB固体プレート培地に接種した。活性化および培養は、37℃で16時間~20時間行った。LB固体プレート培地からシングルコロニーを採取し、アンピシリン(Amp+)100mg/Lを含むLB液体培地を入れたエルレンマイヤーフラスコに接種し、200rpm/分、37℃で16時間~20時間の振とう培養を行った。
【0053】
この培養物を、100mg/Lのアンピシリン(Amp+)を1:100の割合で含むTB液体培地に移した。振盪培養を、200rpm/分、37℃で4時間~6時間行った。0.4mMのIPTGを添加した。培養を25℃で10時間から16時間継続した。得られた調製物を、今後の使用のために、操作された細菌として保存した。
【0054】
前記LB固体培地は、以下の成分:トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム(NaCl)10g/L、および寒天15.0g/L、を含む。
【0055】
前記LB液体培地は、以下の成分:トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、および塩化ナトリウム(NaCl)10g/L、を含む。
【0056】
前記TB液体培地は、以下の成分:トリプトン12g/L、酵母エキス24g/L、グリセロール5g/L、リン酸二カリウム(K2HPO4)9.4g/L、およびリン酸一カリウム(KH2PO4)2.2g/L、を含む。
【0057】
実施例2
【0058】
実施例1の誘導発現法に従い、誘導発現が終了した後、菌体を回収した。100mLの反応系において、細胞の湿重量は3g/L、グルコースは4g/L、7-オキソ-リトコール酸は7g/L、pH=8.0、温度10℃であった。形質転換は10時間行い、その間、1M NaOHを用いてpHを8.0±0.2にコントロールした。
【0059】
図2は、UDCA用に遺伝子操作された細菌の触媒下、7-オキソ-リトコール酸を用いてUDCAを調製する反応の液相検出結果のプロファイルである。液体クロマトグラフィー検出率99%超で7-オキソ-リトコール酸を変換してUDCAを調製した。
【0060】
前述の酵素、および酵素を共発現する遺伝子操作された細菌の形質転換および構築、菌体の培地成分および培養方法、ならびに完全細胞の生物学的変換は、本発明の好ましい例にすぎず、本発明を限定するために用いられるものではない。理論的には、他の細菌、糸状菌、放線菌、動物細胞はすべてゲノム形質変換を受ける可能性があり、複数遺伝子共発現の完全細胞の触媒に使用される。本発明の原理および趣旨の範囲内で、任意の修正および同等の置換を行うことができる。
【配列表】
【外国語明細書】