(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133182
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電力管理装置、電力管理方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20230914BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230914BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230914BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 130
H02J3/32
H02J13/00 311R
H02J7/35 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031933
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2022036503
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】植嶋 美喜
(72)【発明者】
【氏名】湯▲浅▼ 一史
(72)【発明者】
【氏名】馬場▲崎▼ 忠利
(72)【発明者】
【氏名】竹内 義晴
(72)【発明者】
【氏名】笹子 孝俊
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AC06
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G066AA02
5G066AA03
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066KA06
5G503AA01
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA04
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】需要家での電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制する。
【解決手段】本開示の電力管理装置は、予測発電量演算部と、補正部と、監視部と、シミュレーション部と、を備える。監視部は、二次電池に蓄電されている電力のうち、特定種類の電力に対応する放電可能電力量を監視する。特定種類の電力は、CO2排出量が予め定められた排出上限値よりも小さい第1発電方法で発電された第1発電電力と、発電コストが予め定められたコスト上限値よりも小さい第2発電方法で発電された第2発電電力と、を含む。シミュレーション部は、予測期間における前記補正予測発電量と、計画作成時の前記放電可能電力量と、に基づいて、電力需給計画を作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値の予測値に対応する予測数値を演算するように構成された予測数値演算部と、
前記数値の実績値に対応する実績数値と、前記予測数値と、の差分値に基づいて、前記予測数値を補正し、補正後の予測数値に対応する補正予測数値を演算するように構成された補正部と、
充電および放電が可能な二次電池に蓄電されている電力のうち特定種類の電力に対応する放電可能電力量を監視するように構成された監視部と、
予測期間における前記補正予測数値と、計画作成時の前記放電可能電力量と、に基づいて、前記需要家における電力の需要・供給の計画に対応する電力需給計画を作成するように構成されたシミュレーション部と、
を備え、
前記特定種類の電力は、CO2排出量が予め定められた排出上限値よりも小さい第1発電方法で発電された第1発電電力と、発電コストが予め定められたコスト上限値よりも小さい第2発電方法で発電された第2発電電力と、を含む、
電力管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力管理装置であって、
前記予測数値演算部は、気象実績、気象予測、発電実績のうち少なくとも1つに基づいて、前記予測数値を演算するように構成されている、
電力管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力管理装置であって、
前記補正部は、過去の前記差分値に基づいて特定した前記差分値の分布関数を用いて、前記補正予測数値を演算するように構成されている、
電力管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力管理装置であって、
前記第1発電方法は、再生可能エネルギーを用いた発電方法である、
電力管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力管理装置であって、
前記数値は、前記発電装置における発電量を含み、
前記予測数値演算部は、予測発電量演算部を含み、
前記予測発電量演算部は、前記発電量の予測値に対応する予測発電量を演算するように構成され、
前記補正部は、発電量補正部を含み、
前記発電量補正部は、前記発電装置で発電された発電量の実績値に対応する実績発電量と、前記予測発電量と、の差分値に基づいて、前記予測発電量を補正し、補正後の予測発電量に対応する補正予測発電量を演算するように構成されている、
電力管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力管理装置であって、
前記数値は、前記需要家における需要量を含み、
前記予測数値演算部は、予測需要量演算部を含み、
前記予測需要量演算部は、前記需要量の予測値に対応する予測需要量を演算するように構成され、
前記補正部は、需要量補正部を含み、
前記需要量補正部は、前記需要家で消費された電力量の実績値に対応する実績需要量と、前記予測需要量と、の差分値に基づいて、前記予測需要量を補正し、補正後の予測需要量に対応する補正予測需要量を演算するように構成されている、
電力管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力管理装置であって、
過去の所定時期における前記実績数値と、前記所定時期の予測値に対応する前記予測数値と、の比較結果に基づいて、前記予測数値演算部による前記予測数値の予測精度を判定するように構成された精度判定部と、
前記予測精度が予め定められた許容範囲を逸脱した場合に、前記予測数値が前記実績数値に近づくように、前記予測数値演算部による予測方法を改善するように構成された予測改善部と、
を備える、電力管理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力管理装置であって、
前記予測改善部は、前記予測数値演算部が前記予測数値の演算に用いる演算情報を変更するように構成されている、
電力管理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電力管理装置であって、
前記予測改善部は、前記予測数値演算部の前記予測精度が前記許容範囲を逸脱していることを報知するように構成されている、
電力管理装置。
【請求項10】
請求項7に記載の電力管理装置であって、
前記補正部は、過去の第1特定時期の前記差分値に基づいて特定された第1補正情報を用いて、前記補正予測数値を演算するように構成され、
前記電力管理装置は、
前記第1特定時期よりも後の第2特定時期の前記差分値に基づいて特定された第2補正情報と、前記第1補正情報と、が互いに適合しているか否かを検定するように構成された適合度検定部と、
前記第2補正情報と前記第1補正情報とが互いに適合していない場合には、前記第1補正情報を変更し、前記第2補正情報と前記第1補正情報とが互いに適合している場合には、前記第1補正情報を維持するように構成された補正情報変更部と、
を備える、電力管理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電力管理装置であって、
前記補正情報変更部は、前記第2補正情報と前記第1補正情報とが互いに適合していない場合には、前記第1補正情報が前記第2補正情報に近づくように前記第1補正情報を変更するように構成されている、
電力管理装置。
【請求項12】
請求項10に記載の電力管理装置であって、
前記補正情報変更部は、前記第2補正情報と前記第1補正情報とが互いに適合していない場合には、前記第2補正情報と前記第1補正情報とが互いに適合していないことを報知するように構成されている、
電力管理装置。
【請求項13】
発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値の予測値に対応する予測数値を演算する予測数値演算処理と、
前記数値の実績値に対応する実績数値と、前記予測数値と、の差分値に基づいて、前記予測数値を補正し、補正後の予測数値に対応する補正予測数値を演算する補正処理と、
充電および放電が可能な二次電池に蓄電されている電力のうち特定種類の電力に対応する放電可能電力量を監視する監視処理と、
予測期間における前記補正予測数値と、計画作成時の前記放電可能電力量と、に基づいて、前記需要家における電力の需要・供給の計画に対応する電力需給計画を作成するシミュレーション処理と、
を備え、
前記特定種類の電力は、CO2排出量が予め定められた排出上限値よりも小さい第1発電方法で発電された第1発電電力と、発電コストが予め定められたコスト上限値よりも小さい第2発電方法で発電された第2発電電力と、を含む、
電力管理方法。
【請求項14】
コンピュータに、
発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値の予測値に対応する予測数値を演算する予測数値演算機能と、
前記数値の実績値に対応する実績数値と、前記予測数値と、の差分値に基づいて、前記予測数値を補正し、補正後の予測数値に対応する補正予測数値を演算する補正機能と、
充電および放電が可能な二次電池に蓄電されている電力のうち特定種類の電力に対応する放電可能電力量を監視する監視機能と、
予測期間における前記補正予測数値と、計画作成時の前記放電可能電力量と、に基づいて、前記需要家における電力の需要・供給の計画に対応する電力需給計画を作成するシミュレーション機能と、
を実現させるプログラムであって、
前記特定種類の電力は、CO2排出量が予め定められた排出上限値よりも小さい第1発電方法で発電された第1発電電力と、発電コストが予め定められたコスト上限値よりも小さい第2発電方法で発電された第2発電電力と、を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力管理装置、電力管理方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
需要家への電力供給に関する電力供給コストを管理するための電力管理装置がある。
電力管理装置は、例えば、二次電池(蓄電設備)の放電電力単価に基づいて二次電池の充放電計画を作成することで、電力供給コストを低減できる(特許文献1)。
【0003】
また、電力管理装置は、所定期間の計画発電量および負荷の需要電力量に基づいて、二次電池(蓄電部)のバックアップ用容量を制御することで、電力供給コストを低減できる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-161843号公報
【特許文献2】特開2019-075849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の電力管理装置においては、電力供給コストを低減できる一方で、需要家での電力消費におけるエネルギー起源CO2の排出量が増加する可能性がある。
そこで、本開示は、需要家での電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制する電力管理装置、電力管理方法、および、プログラムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面における電力管理装置は、予測数値演算部と、補正部と、監視部と、シミュレーション部と、を備える。
予測数値演算部は、予測数値を演算する。予測数値は、発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値の予測値に対応する。補正部は、実績数値と予測数値との差分値に基づいて、予測数値を補正し、補正後の予測数値に対応する補正予測数値を演算する。実績数値は、前記数値(換言すれば、発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値)の実績値に対応する。
【0007】
監視部は、充電および放電が可能な二次電池に蓄電されている電力のうち、放電可能電力量を監視する。放電可能電力量は、特定種類の電力に対応する。二次電池は、充電および放電が可能である。
【0008】
シミュレーション部は、予測期間における前記補正予測数値と、計画作成時の前記放電可能電力量と、に基づいて、電力需給計画を作成する。電力需給計画は、前記需要家における電力の需要・供給の計画に対応する。
【0009】
特定種類の電力は、第1発電電力と、第2発電電力と、を含む。第1発電電力は、CO2排出量が予め定められた排出上限値よりも小さい第1発電方法で発電された電力である。第2発電電力は、発電コストが予め定められたコスト上限値よりも小さい第2発電方法で発電された電力である。
【0010】
この電力管理装置は、需要家への電力供給において、電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制できる。
次に、上述の予測数値演算部は、気象実績、気象予測、発電実績のうち少なくとも1つに基づいて、予測数値を演算してもよい。この予測数値演算部は、気象実績、気象予測、発電実績のうち少なくとも1つが反映された予測数値を得ることができる。これにより、電力管理装置は、予測数値の予測精度を向上でき、電力供給コストの低減およびCO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0011】
次に、上述の補正部は、過去の差分値に基づいて特定した差分値の分布関数を用いて、補正予測数値を演算してもよい。この補正部は、過去の事実に基づいて、補正予測数値を精度良く演算できる。これにより、電力管理装置は、補正予測数値の補正精度を向上でき、電力供給コストの低減およびCO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0012】
次に、上述の第1発電方法は、再生可能エネルギーを用いた発電方法であってもよい。この場合、第1発電電力のCO2排出量を低減できる。これにより、電力管理装置は、CO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。なお、再生可能エネルギーを用いた発電方法は、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電を含んでもよい。
【0013】
次に、前記数値(換言すれば、発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値)は、発電装置における発電量を含んでもよい。予測数値演算部は、予測発電量演算部を含んでもよい。予測発電量演算部は、発電量の予測値に対応する予測発電量を演算してもよい。補正部は、発電量補正部を含んでもよい。発電量補正部は、実績発電量と予測発電量との差分値に基づいて、予測発電量を補正し、補正後の予測発電量に対応する補正予測発電量を演算してもよい。実績発電量は、発電装置で発電された発電量の実績値に対応してもよい。
【0014】
このような電力管理装置は、需要家への電力供給において、電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制できる。
次に、前記数値(換言すれば、発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値)は、需要家における需要量を含んでもよい。予測数値演算部は、予測需要量演算部を含んでもよい。予測需要量演算部は、需要量の予測値に対応する予測需要量を演算してもよい。補正部は、需要量補正部を含んでもよい。需要量補正部は、実績需要量と予測需要量との差分値に基づいて、予測需要量を補正し、補正後の予測需要量に対応する補正予測需要量を演算してもよい。実績需要量は、需要家で消費された電力量の実績値に対応してもよい。
【0015】
このような電力管理装置は、需要家への電力供給において、電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制できる。
次に、上述の電力管理装置は、精度判定部と、予測改善部と、を備えてもよい。精度判定部は、過去の所定時期における実績数値と、前記所定時期の予測値に対応する前記予測数値と、の比較結果に基づいて、予測数値演算部による予測数値の予測精度を判定してもよい。予測改善部は、予測精度が予め定められた許容範囲を逸脱した場合に、予測数値が実績数値に近づくように、予測数値演算部による予測方法を改善してもよい。
【0016】
このような電力管理装置は、何らかの要因により、予測数値演算部の予測精度が悪化した場合に、予測数値演算部による予測方法を改善できる。よって、この電力管理装置は、予測数値演算部による予測数値の予測精度が悪化し続けることを抑制できる。
【0017】
次に、上述の予測改善部は、予測数値演算部が予測数値の演算に用いる演算情報を変更するように構成されてもよい。これにより、予測数値演算部による予測方法を改善でき、予測数値演算部による予測数値の予測精度が悪化し続けることを抑制できる。
【0018】
次に、上述の予測改善部は、予測数値演算部の予測精度が許容範囲を逸脱していることを報知してもよい。これにより、電力管理装置の使用者に対して、予測数値演算部による予測数値の予測精度が悪化していることを知らせることができる。使用者が、予測数値演算部による予測方法を改善することで、予測数値の予測精度が悪化し続けることを抑制できる。
【0019】
なお、報知の形態は、音、光、映像表示、電子通知などを利用した報知形態であってもよい。電子通知とは、通信回線を用いて、離れた機器どうしの間で送信・受信される情報である。電子通知は、例えば、電子メールや電子メッセージなどの文字情報や図形情報などである。電子通知を用いることで、電力管理装置から離れた場所の使用者に報知することができる。音、光、映像表示、電子通知などのいずれか1つを用いた報知形態に限らず、これらを組み合わせた報知形態であってもよい。
【0020】
次に、上述の補正部は、第1補正情報を用いて補正予測数値を演算してもよい。第1補正情報は、過去の第1特定時期の前記差分値に基づいて特定された情報であってもよい。さらに、上述の電力管理装置は、適合度検定部と、補正情報変更部と、を備えてもよい。適合度検定部は、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合しているか否かを検定してもよい。第2補正情報は、第1特定時期よりも後の第2特定時期の前記差分値に基づいて特定された情報であってもよい。補正情報変更部は、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合していない場合には、第1補正情報を変更してもよい。補正情報変更部は、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合している場合には、第1補正情報を維持してもよい。
【0021】
このような電力管理装置は、何らかの要因により、補正部による予測数値の補正精度が悪化した場合に、補正部で用いられる第1補正情報を変更できる。よって、この電力管理装置は、補正部による予測数値の補正精度が悪化し続けることを抑制できる。なお、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合していない状態は、補正部による予測数値の補正精度が悪化した状態に対応する。第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合している状態は、補正部による予測数値の補正精度が悪化していない状態に対応する。
【0022】
次に、補正情報変更部は、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合していない場合には、第1補正情報が第2補正情報に近づくように第1補正情報を変更してもよい。これにより、補正情報変更部は、補正部による予測数値の補正方法を変更できる。よって、この電力管理装置は、補正部による予測数値の補正精度を改善できる。
【0023】
次に、補正情報変更部は、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合していない場合には、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合していないことを報知してもよい。これにより、電力管理装置の使用者に対して、補正部による予測数値の補正精度が悪化していることを知らせることができる。使用者が、補正部による補正方法を改善することで、予測数値の補正精度が悪化した状態が継続することを抑制できる。
【0024】
なお、報知の形態は、音、光、映像表示、電子通知などを利用した報知形態であってもよい。電子通知とは、通信回線を用いて、離れた機器どうしの間で送信・受信される情報である。電子通知は、例えば、電子メールや電子メッセージなどの文字情報や図形情報などである。電子通知を用いることで、電力管理装置から離れた場所の使用者に報知することができる。音、光、映像表示、電子通知などのいずれか1つを用いた報知形態に限らず、これらを組み合わせた報知形態であってもよい。
【0025】
本開示の他の局面における電力管理方法は、予測数値演算処理と、補正処理と、監視処理と、シミュレーション処理と、を備える。
予測数値演算処理は、発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値の予測値に対応する予測数値を演算する。補正処理は、実績数値と予測数値との差分値に基づいて、予測数値を補正し、補正後の予測数値に対応する補正予測数値を演算する。実績数値は、前記数値(換言すれば、発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値)の実績値に対応する。
【0026】
監視処理は、充電および放電が可能な二次電池に蓄電されている電力のうち、放電可能電力量を監視する。放電可能電力量は、特定種類の電力に対応する。二次電池は、充電および放電が可能である。
【0027】
シミュレーション処理は、予測期間における前記補正予測数値と、計画作成時の前記放電可能電力量と、に基づいて、電力需給計画を作成する。電力需給計画は、前記需要家における電力の需要・供給の計画に対応する。
【0028】
特定種類の電力は、第1発電電力と、第2発電電力と、を含む。第1発電電力は、CO2排出量が予め定められた排出上限値よりも小さい第1発電方法で発電された電力である。第2発電電力は、発電コストが予め定められたコスト上限値よりも小さい第2発電方法で発電された電力である。
【0029】
この電力管理方法は、上述の電力管理装置と同様に、需要家への電力供給において、電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制できる。
本開示のさらに他の局面におけるプログラムは、コンピュータに、予測数値演算機能と、補正機能と、監視機能と、シミュレーション機能と、を実現させる。
【0030】
予測数値演算機能は、発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値の予測値に対応する予測数値を演算する。補正機能は、実績数値と予測数値との差分値に基づいて、予測数値を補正し、補正後の予測数値に対応する補正予測数値を演算する。実績数値は、前記数値(換言すれば、発電装置と需要家との間で送電される電力に関する数値)の実績値に対応する。
【0031】
監視機能は、充電および放電が可能な二次電池に蓄電されている電力のうち、放電可能電力量を監視する。放電可能電力量は、特定種類の電力に対応する。二次電池は、充電および放電が可能である。
【0032】
シミュレーション機能は、予測期間における前記補正予測数値と、計画作成時の前記放電可能電力量と、に基づいて、電力需給計画を作成する。電力需給計画は、前記需要家における電力の需要・供給の計画に対応する。
【0033】
特定種類の電力は、第1発電電力と、第2発電電力と、を含む。第1発電電力は、CO2排出量が予め定められた排出上限値よりも小さい第1発電方法で発電された電力である。第2発電電力は、発電コストが予め定められたコスト上限値よりも小さい第2発電方法で発電された電力である。
【0034】
このプログラムは、上述の電力管理装置と同様に、需要家への電力供給において、電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】電力管理装置を備える電力制御システムの全体構成を表したシステム構成図である。
【
図2】電力需給システムの構成を表したシステム構成図である。
【
図3】予測発電量および二次電池の充電率(SOC)のそれぞれの波形を表した説明図である。
【
図4】発電予測誤差の分布関数(推定)の一例を表した説明図である。
【
図5】電力需給計画における受電需要量PWcpと放電可能量Waとの概要を模式的に表した説明図である。
【
図6】電力制御システムにおいて電力需給計画PDを作成するための一連の処理を表したシーケンス図である。
【
図7】電力管理装置を備える第2電力制御システムの全体構成を表したシステム構成図である。
【
図8】第2電力制御システムにおいて電力需給計画PDを作成するための一連の処理を表したシーケンス図である。
【
図9】時間経過に伴う予測精度(換言すれば、誤差E1)の変化状態の一例を表した説明図である。
【
図10】第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとの対比状態を表した説明図である。
【
図11】精度判定処理の処理内容を表したシーケンス図である。
【
図12】適合度検定処理の処理内容を表したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0037】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
図1に示すように、電力制御システム1は、電力需給システム11と、電力管理装置31と、データ収集装置51と、気象予報システム53と、を備える。
【0038】
電力需給システム11は、第1電力需給システム11aと、第2電力需給システム11bと、を備える。第1電力需給システム11aは、第2電力需給システム11bとは別に備えられている。第1電力需給システム11aおよび第2電力需給システム11bは、それぞれ同様の構成要素を備える。そこで、第1電力需給システム11aについて説明し、第2電力需給システム11bの説明は省略する。
【0039】
図2に示すように、第1電力需給システム11aは、再生可能エネルギー発電部13と、パワーコンディショナー15と、二次電池17と、双方向電力変換装置19と、系統電力網21と、負荷設備23と、第1電力系統25と、第2電力系統27と、を備える。
【0040】
第1電力系統25は、交流電力を送電するように構成されている。第1電力系統25は、双方向電力変換装置19、系統電力網21,負荷設備23と接続されている。第2電力系統27は、直流電力を送電するように構成されている。第2電力系統27は、双方向電力変換装置19、パワーコンディショナー15,二次電池17と接続されている。
【0041】
再生可能エネルギー発電部13は、再生可能エネルギーを用いて発電するように構成された発電設備を備える。再生可能エネルギー発電部13は、直流電圧の電力である第1発電電力PW1を発電する。発電設備の例としては、太陽光発電設備、風力発電設部、水力発電設備、地熱発電設備などが挙げられる。
【0042】
パワーコンディショナー15は、再生可能エネルギー発電部13に接続されている。パワーコンディショナー15は、第1発電電力PW1の電圧値を、二次電池17の充電に利用可能な電圧値に変換する電圧装置を備えている。電力需給システム11では、パワーコンディショナー15による電圧変換によって、二次電池17に対して電圧値の変動が小さい安定した電力を供給できる。
【0043】
二次電池17は、充電および放電が可能に構成された電池を備えている。二次電池17は、外部から供給される電力により充電されることで、所定量の電力を蓄電する。二次電池17は、例えば、再生可能エネルギー発電部13で発電された第1発電電力PW1、系統電力網21から供給される系統電力PWaを電力源として、電力を蓄電することができる。二次電池17は、蓄電した電力を放電することで、他の機器に電力を供給することができる。二次電池17は、例えば、双方向電力変換装置19を経由して負荷設備23に電力を供給できる。
【0044】
双方向電力変換装置19は、直流電力と交流電力とを相互に変換するように構成されている。双方向電力変換装置19は、第1電力系統25および第2電力系統27のそれぞれに接続されている。
【0045】
双方向電力変換装置19は、第1電力系統25から供給される交流電力を直流電力に変換して、その直流電力を第2電力系統27に供給することができる。例えば、系統電力網21が供給する交流電力は、双方向電力変換装置19で直流電力に変換されることで、二次電池17の充電に利用できる。双方向電力変換装置19は、第2電力系統27から供給される直流電力を交流電力に変換して、その交流電力を第1電力系統25に供給することができる。例えば、二次電池17が供給する直流電力は、双方向電力変換装置19で交流電力に変換されることで、負荷設備23の稼働に利用できる。
【0046】
系統電力網21は、交流電力を供給するように構成されている。系統電力網21は、例えば、火力発電所、水力発電所、原子力発電所などを備えている。系統電力網21は、例えば、交流100Vを供給してもよい。
【0047】
負荷設備23は、電力が供給されて稼働する機器を備えている。負荷設備23は、第1電力系統25から電力を受ける。負荷設備23は、例えば、空調機器、照明機器等を備えてもよい。
【0048】
図1に示すように、電力管理装置31は、電力需給システム11における電力需給計画PDを作成するように構成されている。電力管理装置31の詳細については、後述する。
データ収集装置51は、電力需給システム11における各種のデータ(以下、電力データDEともいう)を収集して記憶するように構成されている。電力データDEは、過去の発電実績に関する情報(以下、発電実績情報DFともいう)、過去の電力需要実績に関する情報(以下、電力需要情報DMともいう)などを含む。データ収集装置51は、データを記憶するための不揮発性の記憶媒体(ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)など)を備えている。データ収集装置51は、外部機器からのリクエストに応じて、リクエストに対応したデータを記憶媒体から読み出し、読み出したデータを外部機器に送信するように構成されている。
【0049】
気象予報システム53は、気象に関する情報(以下、気象情報DWともいう)を保持するように構成されている。気象予報システム53は、外部機器からのリクエストに応じて、リクエストに対応した気象情報DWを送信するように構成されている。気象情報DWは、天候情報(晴れ、曇り、雨、雪など)、日照時間、気温情報、風速情報等を含む。気象情報DWは、未来の気象情報DW(以下、気象予報情報DW1ともいう)と、過去および現在における実際の気象情報DW(以下、気象実績情報DW2ともいう)と、を含む。気象予報システム53は、公知の予測手法に基づいて気象予報情報DW1を予測する機能を有している。
【0050】
[1-2.電力管理装置]
図1に示すように、電力管理装置31は、データ収集機能群33と、充放電制御機能群35と、を備える。
【0051】
データ収集機能群33は、表示部33aと、収集部33bと、データベース記憶部33cと、を備える。
表示部33aは、電力制御システム1の使用者からの指令に応じて、データを表示するように構成されている。表示部33aは、使用者から操作部(図示省略)を介してデータ表示要求指令が入力されると、データ表示要求指令に応じたデータを表示する。表示部33aは、使用者からの指令ではなく、予め定められたスケジュール指令に応じて、データを表示してもよい。スケジュール指令は、設定時刻とデータとの対応関係に関する情報を含んでもよい。表示部33aは、設定時刻になることに応じて、対応するデータを表示してもよい。表示部33aは、液晶表示器、有機EL表示器、ブラウン管表示器などを備えてもよい。
【0052】
収集部33bは、データ収集装置51から各種の電力データDEを取得するように構成されている。収集部33bは、例えば、過去の特定期間を表す期間指令をデータ収集装置51に送信し、特定期間に対応する電力データDE(発電実績情報DF、電力需要情報DM)を取得することができる。
【0053】
データベース記憶部33cは、各種情報を記憶するように構成されている。各種情報は、データ収集装置51から取得した電力データDEを含む。データベース記憶部33cは、各種情報を記憶するための不揮発性の記憶媒体(ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)など)を備えている。データベース記憶部33cは、収集部33bからの指令に応じて、データ収集装置51から取得した電力データDEを記憶媒体に記憶するように構成されている。データベース記憶部33cは、収集部33bからのリクエストに応じて、リクエストに対応した電力データDEを記憶媒体から読み出し、読み出した電力データDEを収集部33bに送信するように構成されている。
【0054】
充放電制御機能群35は、気象情報取得部37と、予測部39と、シミュレーション部41と、制御部43と、監視部45と、を備える。
気象情報取得部37は、気象予報システム53から気象情報DWを受け取るように構成されている。気象情報取得部37は、予測期間を指定して気象予報システム53に気象情報DW(気象予報情報DW1)をリクエストすることで、予測期間に対応する気象情報DW(気象予報情報DW1)を気象予報システム53から受け取る。予測期間は、例えば、現在時刻から24時間経過するまでの期間、現在時刻から48時間が経過するまでの期間、現在時刻から60時間経過するまでの期間、現在時刻からその当日の24時までの期間など、任意の期間が設定されてもよい。
【0055】
予測部39は、発電予測部39aと、需要予測部39bと、を備える。
発電予測部39aは、予測発電量演算部39a1と、補正部39a2と、を備える。
予測発電量演算部39a1は、気象予報情報DW1、気象実績情報DW2、発電実績情報DFに基づいて、予測期間における再生可能エネルギー発電部13の発電量の予測値(以下、予測発電量WD1ともいう)を演算する。まず、予測発電量演算部39a1は、気象情報取得部37を介して気象予報システム53から、気象予報情報DW1と、気象実績情報DW2と、を受け取る。予測発電量演算部39a1は、データ収集機能群33(詳細には、データベース記憶部33c)から、発電実績情報DFを受け取る。そして、予測発電量演算部39a1は、公知の予測手法を用いて、気象予報情報DW1、気象実績情報DW2、発電実績情報DFに基づいて、予測期間における予測発電量WD1を予測するための演算処理を実行する。
【0056】
例えば、再生可能エネルギー発電部13が太陽光発電設備である場合には、予測発電量演算部39a1は、気象予報情報DW1に含まれる天候情報の予測情報および日照時間の予測情報に基づいて、予測期間における太陽光発電設備の発電量を予測してもよい。再生可能エネルギー発電部13が風力発電設備である場合には、予測発電量演算部39a1は、気象予報情報DW1に含まれる風向きの予測情報に基づいて、予測期間における風力発電設備の発電量を予測してもよい。
【0057】
予測発電量演算部39a1は、予測期間を複数の個別期間に分割して、個別期間ごとに個別予測発電量WGiを算出して、全ての個別予測発電量WGi(iは1以上の整数)の合計値を予測発電量WD1として演算してもよい。n個の個別期間を合計した予測発電量WD1は、個別予測発電量WGiを用いて、数(1)のように表すことができる。
【0058】
【0059】
個別期間に関しては、例えば、
図3の上側領域に示すように、予測発電量WD1の演算実施時刻tを基点として、演算実施時刻tより後の正時を開始点とする1時間ごとの複数の期間をそれぞれ個別期間に設定してもよい。
図3では、演算実施時刻tから当日の24時までの期間が予測期間である。予測発電量演算部39a1は、複数の個別期間のそれぞれにおいて個別予測発電量WGiを算出して、全ての個別予測発電量WGiの合計値を予測発電量WD1として演算してもよい。なお、
図3では、複数の個別予測発電量WGiのうち、発電量が0を超えているのは、個別予測発電量WG1から個別予測発電量WG6までである。よって、予測発電量WD1は、個別予測発電量WG1から個別予測発電量WG6までの合計値(=WG1+WG2+WG3+WG4+WG5+WG6)である。
【0060】
補正部39a2は、予測発電量WD1を補正して、補正後の予測発電量WD1(以下、補正予測発電量WD11)を算出する。
補正部39a2は、まず、過去に予測した予測発電量WD1(以下、過去予測発電量WD12ともいう)と、同日同時刻の実績発電量PWdと、の差分値DP(=WD12-PWd)を算出する。この差分値DPは、過去予測発電量WD12と実績発電量PWdとの誤差(以下、発電予測誤差ERともいう)に相当する。
【0061】
補正部39a2は、データ収集機能群33から受け取った発電実績情報DFを用いて、差分値DP(換言すれば、発電予測誤差ER)の分布関数を推定する処理を実行する。この結果、例えば、
図4に示すような分布関数が得られる。
図4では、横軸を差分値DPとし、縦軸を確率密度とする座標平面において、誤差分布を表している。分布関数の推定に用いる方法は、公知の方法を利用することができ、例えば、カーネル密度推定などであってもよい。補正部39a2は、得られた分布関数から、所望の誤差率ER1を決定する。所望の誤差率ER1は、例えば標準偏差3σに相当する下側確率など、ユーザが期待する品質水準を用いて決定する。分布関数、誤差分布、誤差率ER1などの情報は、データ収集機能群33に格納(記憶)される。
【0062】
次に、補正部39a2は、今回予測する予測期間における予測発電量WD1と、決定した誤差率ER1と、を用いて、補正予測発電量WD11を算出する処理を実行する。例えば、予測発電量WD1に誤差率ER1を掛け算して得られる値を誤差値ER2とし、予測発電量WD1から誤差値ER2を減算した値を補正予測発電量WD11(=WD1-ER2)として算出してもよい。
【0063】
このようにして、発電予測部39aは、予測期間における補正予測発電量WD11を算出するように構成されている。
需要予測部39bは、電力需要情報DMに基づいて、予測期間における電力需要量PWcを予測する。需要予測部39bは、データ収集機能群33(詳細には、データベース記憶部33c)から、過去の電力需要情報DMを受け取る。需要予測部39bは、公知の予測手法を用いて、過去の電力需要情報DMに基づいて、予測期間における電力需要量PWcを予測するための演算処理を実行する。需要予測部39bは、例えば、過去の電力需要情報DMの中から、予測期間と同日同時間帯の電力需要量を複数年にわたり取得し、それらの平均値を電力需要量PWcとして演算してもよい。
【0064】
需要予測部39bは、予測期間における電力需要量PWcとして、少なくとも、受電需要量PWcp、第1需要量PWc1、第2需要量PWc2を予測する。受電需要量PWcpは、系統電力網21から第1電力需給システム11aおよび第2電力需給システム11bに供給される電力需要量PWcに相当する。第1需要量PWc1は、第1電力需給システム11aの負荷設備23で必要となる電力需要量PWcに相当する。第2需要量PWc2は、第2電力需給システム11bの負荷設備23で必要となる電力需要量PWcに相当する。
【0065】
需要予測部39bは、受電需要量PWcpとして、少なくとも、第1電力需給システム11aの受電需要量PWcp(以下、第1受電需要量PWcp1ともいう)と、第2電力需給システム11bの受電需要量PWcp(以下、第2受電需要量PWcp2ともいう)と、をそれぞれ予測する。
【0066】
監視部45は、二次電池17に蓄電されている電力量のうち放電可能電力量PA1を特定する処理を実行する。放電可能電力量PA1は、二次電池17に蓄電されている電力のうち特定種類の電力に対応する電力量である。特定種類の電力は、第1発電電力と、第2発電電力と、を含む。第1発電電力は、第1発電方法で発電された電力に対応する。第1発電方法は、CO2排出量が予め定められた排出上限値よりも小さい発電方法である。第1発電方法は、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電などが挙げられる。第2発電電力は、第2発電方法で発電された電力に対応する。第2発電方法は、発電コストが予め定められたコスト上限値よりも小さい発電方法である。各発電方法における発電コストは、毎月の定められた日付の発電コストであってもよいし、監視部45による放電可能電力量PA1の演算時点での発電コストであってもよい。コスト上限値は、固定値であってもよいし、使用者が任意に設定した値であってもよい。
【0067】
放電可能電力量PA1は、例えば、
図3の下側領域に示すように、二次電池17の充電率(SOC)の変化に応じて、変動する。
図3では、特定種類の電力をWen(以下、特定電力Wenともいう)で表し、特定種類ではない電力をWdi(以下、特定外電力Wdiともいう)で表している。二次電池17の定格容量をWcとし、演算実施時刻tでの充電率をSOCとした場合には、放電可能電力量PA1は、数(2)を用いて算出される。
【0068】
【0069】
なお、監視部45は、二次電池17の充電・放電状況を監視して、特定電力Wenと、特定外電力Wdiとを、時間経過と共に記録する。さらに、監視部45は、二次電池17の充電率SOCを記録している。監視部45は、特定電力Wen、特定外電力Wdi、充電率SOC、定格容量Wcを用いて、数(2)に基づき、放電可能電力量PA1を算出することができる。監視部45は、時間経過と共に放電可能電力量PA1を繰り返し算出して記録することで、放電可能電力量PA1の時系列データを記録する。よって、監視部45は、演算実施時刻tでの放電可能電力量PA1を特定することができる。
【0070】
放電可能電力量PA1は、CO2排出量が排出上限値よりも小さい発電方法による電力量、または、発電コストがコスト上限値よりも小さい発電方法による電力量である。このため、需要家が、電力消費コストの低減、および/または、エネルギー起源CO2の排出量の増加抑制を要望する場合には、放電可能電力量PA1を利用することで、需要家の要望に応えることができる。
【0071】
シミュレーション部41は、予測期間における電力需給計画PDを作成するように構成されている。電力需給計画PDは、電力需給システム11における電力の需要・供給の計画に対応する。まず、シミュレーション部41は、予測部39から補正予測発電量WD11と受電需要量PWcpとを受け取り、監視部45から放電可能電力量PA1を受け取る。
【0072】
シミュレーション部41は、予測期間における補正予測発電量WD11と、計画作成時(換言すれば、演算実施時刻t)の放電可能電力量PA1と、に基づいて、放電可能量Waを算出する。放電可能量Waは、数(3)を用いて算出できる。放電可能量Waは、予測期間において再生可能エネルギー発電部13および二次電池17が供給可能な電力量であって、第1発電方法または第2発電方法で発電された電力である。
【0073】
【0074】
シミュレーション部41は、予測期間における放電可能量Waと、予測期間における受電需要量PWcpと、に基づいて、電気使用料金を低減するように、電力需給計画PDを作成する。
【0075】
例えば、
図5に示すように、受電需要量PWcpの予測波形において、受電需要量PWcpのピーク値が料金境界値Th1を越えるのを抑制することで、料金境界値Th1の超過による電気使用料金の増加を抑制できる。そこで、シミュレーション部41は、受電需要量PWcpが料金境界値Th1を越えると予測された時間帯には、放電可能量Waを活用するように、電力需給計画PDを作成する。このような電力需給計画PDによれば、受電需要量PWcpが料金境界値Th1を越えるのを抑制でき、電気使用料金の増加を抑制できる。シミュレーション部41は、公知のピークシェービングを用いて,電力需給計画PDを作成してもよい。
【0076】
図5では、補正部39a2で算出された補正予測発電量WD11と、監視部45で算出された放電可能電力量PA1と、の合計値である放電可能量Waの波形を、「Wa(補正後)」として図示している。さらに、予測発電量演算部39a1で算出された予測発電量WD1と、監視部45で算出された放電可能電力量PA1と、の合計値の波形を、「Wa(補正前)」として図示している。つまり、「Wa(補正前)」の波形は、放電可能量Waから、補正部39a2による補正の効果を除いた波形に相当する。
図5では、補正部39a2による補正前の放電可能量Waに比べて、補正後の放電可能量Waは、電力量が低減している例を示している。
【0077】
制御部43は、電力管理装置31における各種処理を実行するコンピュータシステムである。各種処理は、電力管理装置31に備えられる各部を動作させることで実行される。制御部43は、中央演算処理ユニット(CPU)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェースなどを有するコンピュータシステムである。CPU、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェースは、図示を省略する。
【0078】
ROMなどに記憶されている制御プログラムは、CPUを各種情報の演算を行うための指示部として少なくとも機能させるものであり、入出力インタフェースなどを取得部および出力部として機能させるものであり、ハードディスクなどを外部から入力された各種情報が記憶される記憶部として機能させるものである。さらに、上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースなどを協働させて、予測発電量演算部39a1、補正部39a2、監視部45、および、シミュレーション部41として機能させるものである。
【0079】
[1-3.電力制御システムで実行される処理]
次に、電力制御システム1において電力需給計画PDを作成するための一連の処理について説明する。
【0080】
図6に示すように、まず、データ収集装置51において、S110、S120、S130の処理がそれぞれ実行される。データ収集装置51は、図示しないデータ取得部および制御部を備えて、各種の処理を実行するように構成されている。
【0081】
データ収集装置51は、S110において、電力需給システム11から電力需給システム情報を取得する処理を実行する。電力需給システム情報は、上述の電力データDEに相当する。
【0082】
データ収集装置51は、S120において、マルチメータ(図示省略)からマルチメータ情報を取得する処理を実行する。マルチメータは、電力需給システム11の各部に設置されて、設置箇所における、電流値、電圧値、有効電力、無効電力、周波数、力率、デマンド電力、デマンド電流などを計測するように構成されている。マルチメータ情報は、マルチメータが計測した各種情報(以下、マルチメータ情報ともいう)を含む。
【0083】
データ収集装置51は、S130において、気象予報システム53から気象情報DWを取得する処理を実行する。データ収集装置51は、電力管理装置31を介して、気象予報システム53から気象情報DWを取得するように構成されている。データ収集装置51は、電力管理装置31を介さずに、直接、気象予報システム53に接続されて、気象情報DWを取得してもよい。
【0084】
電力管理装置31において、データ収集機能群33のデータベース記憶部33cは、S140において、データ収集装置51が取得した各種情報を格納(記憶)する処理を実行する。また、データ収集機能群33は、S140において、記憶した各種情報を読み出して、予測部39などに送信する処理を実行する。
【0085】
予測部39の需要予測部39bは、S150において、予測期間における受電需要量PWcp、予測期間における第1受電需要量PWcp1、予測期間における第2受電需要量PWcp2を、それぞれ予測する処理を実行する。
【0086】
需要予測部39bは、S160において、予測期間における第1需要量PWc1を予測する処理を実行する。
予測部39の発電予測部39aは、S170において、予測期間における補正予測発電量WD11のうち、第1電力需給システム11aの補正予測発電量WD11(以下、第1補正発電量WD111ともいう)を算出する処理を実行する。
【0087】
需要予測部39bは、S180において、予測期間における第2需要量PWc2を予測する処理を実行する。
予測部39の発電予測部39aは、S190において、予測期間における補正予測発電量WD11のうち、第2電力需給システム11bの補正予測発電量WD11(以下、第2補正発電量WD112ともいう)を算出する処理を実行する。
【0088】
シミュレーション部41は、S200において、第1電力需給システム11aの予測期間における電力需給計画PD(以下、第1電力需給計画PD1ともいう)を作成する処理を実行する。シミュレーション部41は、まず、上述した手順に従って、第1電力需給システム11aの放電可能量Wa(以下、第1放電可能量Wa1ともいう)を算出する。シミュレーション部41は、第1受電需要量PWcp1および第1放電可能量Wa1を用いて、電気使用料金を低減するように、第1電力需給計画PD1を作成する。
【0089】
シミュレーション部41は、S210において、第2電力需給システム11bの予測期間における電力需給計画(以下、第2電力需給計画PD2ともいう)を作成する処理を実行する。シミュレーション部41は、まず、上述した手順に従って、第2電力需給システム11bの放電可能量Wa(以下、第2放電可能量Wa2ともいう)を算出する。
【0090】
さらに、シミュレーション部41は、S200での第1電力需給計画PD1の作成前と作成後における第1受電需要量PWcp1の変化量CFを算出する。変化量CFがプラス値である場合には、第1電力需給システム11aでの消費を予定していた第1受電需要量PWcp1のうち変化量CFに相当する電力量は、余剰分となる。この余剰分の電力量は、第2電力需給システム11bで利用できる。変化量CFがマイナス値である場合には、第1電力需給システム11aでの消費を予定していた第1受電需要量PWcp1に対する変化量CFに相当する電力量は、不足分となる。この不足分の電力量に関しては、第2電力需給システム11bの第2受電需要量PWcp2の一部を充当することも考慮することが望ましい。
【0091】
シミュレーション部41は、第2受電需要量PWcp2、第2放電可能量Wa2、変化量CFを用いて、電気使用料金を低減するように、第2電力需給計画PD2を作成する。
データ収集機能群33のデータベース記憶部33cは、S220において、S160で予測された第1需要量PWc1と、S180で予測された第2需要量PWc2と、S200で作成された第1電力需給計画PD1と、S210で作成された第2電力需給計画PD2と、を格納(記憶)する処理を実行する。また、データ収集機能群33は、S220において、記憶した各種情報を読み出して、各種情報をデータ収集装置51に送信する処理を実行する。
【0092】
データ収集装置51は、S230において、第1電力需給システム11aに関する各種設定を変更する処理を実行する。データ収集装置51は、まず、データ収集機能群33から、第1電力需給システム11aに関連する各種情報を取得する処理を実行する。ここでの各種情報は、第1需要量PWc1および第1電力需給計画PD1を含む。データ収集装置51は、各種情報を用いて、第1電力需給システム11aに関する電力需給計画などの各種設定を変更する。
【0093】
この結果、第1電力需給システム11aは、設定された内容に基づいて、電力需給計画を実行する。
データ収集装置51は、S240において、第2電力需給システム11bに関する各種設定を変更する処理を実行する。データ収集装置51は、まず、データ収集機能群33から、第2電力需給システム11bに関連する各種情報を取得する処理を実行する。ここでの各種情報は、第2需要量PWc2および第2電力需給計画PD2を含む。データ収集装置51は、各種情報を用いて、第2電力需給システム11bに関する電力需給計画などの各種設定を変更する。この結果、第2電力需給システム11bは、設定された内容に基づいて、電力需給計画を実行する。
【0094】
[1-4.効果]
以上説明したように、本実施形態の電力管理装置31は、第1電力需給システム11aおよび第2電力需給システム11bのそれぞれへの電力供給において、電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制できる。
【0095】
予測発電量演算部39a1は、気象予報情報DW1、気象実績情報DW2、発電実績情報DFが反映された予測発電量WD1を得ることができる。これにより、電力管理装置31は、予測発電量WD1の予測精度を向上でき、電力供給コストの低減およびCO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0096】
補正部39a2は、過去の差分値DPに基づいて特定した差分値の分布関数を用いて、補正予測発電量WD11を演算している。つまり、補正部39a2は、過去の事実に基づいて、補正予測発電量WD11を精度良く演算できる。これにより、電力管理装置31は、補正予測発電量WD11の補正精度を向上でき、電力供給コストの低減およびCO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0097】
上述の第1発電方法が再生可能エネルギーを用いた発電方法であることで、第1発電電力のCO2排出量を低減できる。これにより、電力管理装置31は、CO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0098】
[1-5.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
第1電力需給システム11aおよび第2電力需給システム11bが需要家の一例に相当している。予測発電量演算部39a1が予測数値演算部の一例に相当している。
【0099】
[2.第2実施形態]
[2-1.全体構成]
第2実施形態として、第2電力制御システム101について説明する。
【0100】
図7に示すように、第2電力制御システム101は、電力需給システム11と、第2電力管理装置131と、データ収集装置51と、気象予報システム53と、を備える。
第2電力制御システム101は、電力制御システム1と比べると、電力管理装置31に代えて第2電力管理装置131を備える点が異なっている。
【0101】
以下の説明では、第2電力制御システム101のうち、電力制御システム1との相違点を中心に説明し、共通点は説明を省略する。
第2電力管理装置131は、電力管理装置31と同様に、電力需給システム11における電力需給計画PDを作成するように構成されている。
【0102】
[2-2.第2電力管理装置]
図7に示すように、第2電力管理装置131は、データ収集機能群33と、第2充放電制御機能群135と、を備える。
【0103】
第2電力管理装置131は、電力管理装置31と比べると、少なくとも、充放電制御機能群35に代えて、第2充放電制御機能群135を備える点が異なっている。
第2充放電制御機能群135は、気象情報取得部37と、第2予測部139と、シミュレーション部41と、制御部43と、監視部45と、精度監視部47と、を備える。第2充放電制御機能群135は、充放電制御機能群35と比べると、少なくとも、予測部39に代えて第2予測部139を備える点が異なっている。また、第2充放電制御機能群135は、充放電制御機能群35と比べると、精度監視部47を備える点が異なっている。さらに、第2充放電制御機能群135は、充放電制御機能群35と比べると、シミュレーション部41での処理内容が一部異なっている。
【0104】
第2予測部139は、発電予測部39aと、第2需要予測部139bと、を備える。第2予測部139は、予測部39と比べると、需要予測部39bに代えて第2需要予測部139bを備える点が異なっている。
【0105】
第2需要予測部139bは、予測需要量演算部139b1と、需要量補正部139b2と、を備える。
予測需要量演算部139b1は、電力需要情報DMに基づいて、予測期間における電力需要量PWcの予測値(以下、予測需要量PWgともいう)を演算する。つまり、まず、予測需要量演算部139b1は、データ収集機能群33(詳細には、データベース記憶部33c)から、過去の電力需要情報DMを受け取る。予測需要量演算部139b1は、公知の予測手法を用いて、過去の電力需要情報DMに基づいて、予測期間における予測需要量PWgを予測するための演算処理を実行する。予測需要量演算部139b1は、例えば、過去の電力需要情報DMの中から、予測期間と同日同時間帯の電力需要量を複数年にわたり取得し、それらの平均値を予測需要量PWgとして演算してもよい。
【0106】
予測需要量演算部139b1は、予測期間における予測需要量PWgとして、少なくとも、受電需要量PWcpの予測値(以下、予測受電需要量PWgpともいう)、第1需要量PWc1の予測値(以下、予測第1需要量PWg1ともいう)、第2需要量PWc2の予測値(以下、予測第2需要量PWg2ともいう)を演算する。
【0107】
予測需要量演算部139b1は、予測受電需要量PWgpとして、少なくとも、第1電力需給システム11aの受電需要量PWcp(換言すれば、第1受電需要量PWcp1)の予測値(以下、予測第1受電需要量PWgp1ともいう)を演算する。また、予測需要量演算部139b1は、予測受電需要量PWgpとして、少なくとも、第2電力需給システム11bの受電需要量PWcp(換言すれば、第2受電需要量PWcp2)の予測値(以下、予測第2受電需要量PWgp2ともいう)を演算する。
【0108】
需要量補正部139b2は、予測需要量PWgを補正して、補正後の予測需要量PWg(以下、補正予測需要量PWeともいう)を算出する。
需要量補正部139b2は、予測期間における補正予測需要量PWeを算出するにあたり、少なくとも、予測受電需要量PWgp、予測第1需要量PWg1、予測第2需要量PWg2をそれぞれ補正する。つまり、需要量補正部139b2は、補正後の予測受電需要量PWgp(以下、補正予測受電需要量PWepともいう)、補正後の予測第1需要量PWg1(以下、補正第1需要量PWe1ともいう)、補正後の予測第2需要量PWg2(以下、補正第2需要量PWe2ともいう)を算出する。
【0109】
さらに、需要量補正部139b2は、予測第1受電需要量PWgp1を補正して、補正後の予測第1受電需要量PWgp1(以下、補正第1受電需要量PWep1ともいう)を算出する。需要量補正部139b2は、予測第2受電需要量PWgp2を補正して、補正後の予測第2受電需要量PWgp2(以下、補正第2受電需要量PWep2ともいう)を算出する。
【0110】
需要量補正部139b2は、まず、過去に予測した予測需要量PWg(以下、過去予測需要量PWgcともいう)と、その予測期間と同日同時間帯の実際の電力需要量PWc(以下、実績電力需要量PWcrともいう)と、の差分値である需要量差分値DC(=PWgc-PWcr)を算出する。この需要量差分値DCは、過去予測需要量PWgcと実績電力需要量PWcrとの誤差(以下、需要予測誤差ERcともいう)に相当する。
【0111】
需要量補正部139b2は、データ収集機能群33から受け取った電力需要情報DMを用いて、需要量差分値DC(換言すれば、需要予測誤差ERc)の分布関数を推定する処理を実行する。この結果、例えば、横軸を需要量差分値DCとし、縦軸を確率密度とする座標平面において、分布関数に対応した誤差分布が得られる。需要予測誤差ERcの分布関数は、図示は省略するが、例えば、
図4に示す分布関数に近似したものである。分布関数の推定に用いる方法は、公知の方法を利用することができ、例えば、カーネル密度推定などであってもよい。需要量補正部139b2は、得られた分布関数から、所望の需要量誤差率ERc1を決定する。所望の需要量誤差率ERc1は、例えば標準偏差3σに相当する下側確率など、ユーザが期待する品質水準を用いて決定する。分布関数、誤差分布、需要量誤差率ERc1などの情報は、データ収集機能群33に格納(記憶)される。
【0112】
次に、需要量補正部139b2は、今回予測する予測期間における予測需要量PWgと、決定した需要量誤差率ERc1と、を用いて、補正予測需要量PWeを算出する処理を実行する。例えば、予測需要量PWgに需要量誤差率ERc1を掛け算して得られる値を需要量誤差値ERv(=PWg×ERc1)とし、予測需要量PWgから需要量誤差値ERvを減算した値を、補正予測需要量PWe(=PWg-ERv)として算出してもよい。
【0113】
需要量補正部139b2は、上述のような補正予測需要量PWeの算出方法と同様の手法を用いて、補正予測受電需要量PWep、補正第1需要量PWe1、補正第2需要量PWe2、補正第1受電需要量PWep1、補正第2受電需要量PWep2を、それぞれ算出する。
【0114】
このようにして、第2需要予測部139bは、予測期間における補正予測需要量PWeとして、補正予測受電需要量PWep、補正第1需要量PWe1、補正第2需要量PWe2、補正第1受電需要量PWep1、補正第2受電需要量PWep2を、それぞれ算出するように構成されている。
【0115】
つまり、第2需要予測部139bは、需要予測部39bと比べて、予測期間における電力需要量PWcの予測値(換言すれば、予測需要量PWg)を、補正する点で異なる。そして、第2需要予測部139bは、予測期間における電力需要量PWcの予測値として、補正した予測値(例えば、補正予測受電需要量PWep、補正第1需要量PWe1、補正第2需要量PWe2、補正第1受電需要量PWep1、補正第2受電需要量PWep2)をシミュレーション部41などに送信するように構成されている。
【0116】
第2実施形態において、シミュレーション部41は、第1実施形態と同様に、予測期間における電力需給計画PDを作成するように構成されている。なお、第2実施形態では、シミュレーション部41は、第2予測部139から補正予測発電量WD11と補正予測受電需要量PWepと補正第1需要量PWe1と補正第2需要量PWe2とを受け取り、監視部45から放電可能電力量PA1を受け取る。つまり、第2実施形態のシミュレーション部41は、第1実施形態と比べて、受電需要量PWcpに代えて補正予測受電需要量PWepを受け取る点が異なる。また、第2実施形態のシミュレーション部41は、第1実施形態と比べて、補正第1需要量PWe1と補正第2需要量PWe2とを受け取る点が異なる。
【0117】
第2実施形態のシミュレーション部41は、第1実施形態と同様に、予測期間における補正予測発電量WD11と、計画作成時(換言すれば、演算実施時刻t)の放電可能電力量PA1と、に基づいて、放電可能量Waを算出する。
【0118】
第2実施形態のシミュレーション部41は、予測期間における放電可能量Waと、予測期間における補正予測受電需要量PWepと、に基づいて、電気使用料金を低減するように、電力需給計画PDを作成する。第2実施形態のシミュレーション部41は、第1実施形態と比べて、電力需給計画PDを作成するにあたり、受電需要量PWcpに代えて補正予測受電需要量PWepを用いる点で異なる。
【0119】
なお、第2実施形態における補正予測受電需要量PWepの予測波形は、第1実施形態において
図5に示す受電需要量PWcpの予測波形に対応する。補正予測受電需要量PWepのピーク値が料金境界値Th1を越えるのを抑制することで、料金境界値Th1の超過による電気使用料金の増加を抑制できる。第2実施形態のシミュレーション部41は、補正予測受電需要量PWepが料金境界値Th1を越えると予測された時間帯には、放電可能量Waを活用するように、電力需給計画PDを作成する。このような電力需給計画PDによれば、補正予測受電需要量PWepが料金境界値Th1を越えるのを抑制でき、電気使用料金の増加を抑制できる。シミュレーション部41は、第1実施形態と同様に、公知のピークシェービングを用いて,電力需給計画PDを作成してもよい。
【0120】
シミュレーション部41は、第1実施形態と同様に、電力需給計画PDとして、第1電力需給計画PD1と第2電力需給計画PD2とを作製する。シミュレーション部41は、補正第1受電需要量PWep1および第1放電可能量Wa1を用いて、第1電力需給計画PD1を作製する。シミュレーション部41は、補正第2受電需要量PWep2および第1放電可能量Wa1を用いて、第2電力需給計画PD2を作製する。
【0121】
次に、精度監視部47は、精度判定処理と、適合度検定処理と、を実行するように構成されている。
精度判定処理は、第2予測部139による発電量(または需要量)の予測精度を判定するための処理である。第2予測部139による発電量の予測精度は、詳細には、発電予測部39aの予測発電量演算部39a1による予測発電量WD1の予測精度である。第2予測部139による需要量の予測精度は、詳細には、第2需要予測部139bの予測需要量演算部139b1による予測需要量PWgの予測精度である。
【0122】
精度監視部47は、精度判定処理の実行時には、まず、データ収集機能群33から、過去の予め定められた精度判定期間TEにおける実績発電量PWdと予測発電量WD1とを受け取る。実績発電量PWdおよび予測発電量WD1の履歴データは、発電実績情報DFおよび発電予測情報Dpwとして、データ収集機能群33に記憶されている。精度判定期間TEは、例えば、1ヶ月を設定してもよいし、2ヶ月、3ヶ月、半年、1年を設定してもよい。
【0123】
次に、精度監視部47は、精度判定期間TEにおける実績発電量PWdと予測発電量WD1との比較結果に基づいて、予測発電量演算部39a1による予測発電量WD1の予測精度を判定する。
【0124】
このとき、精度監視部47は、実績発電量PWdと予測発電量WD1とを、公知の評価関数を用いて比較する。評価関数としては、例えば、平均絶対パーセント誤差(MAPE)、二乗平均平方根誤差(RMSE)などがある。平均絶対パーセント誤差を用いる場合には、数(4)を用いて誤差E1を算出する。誤差E1は、予測発電量演算部39a1による予測発電量WD1の予測精度に相当する。
【0125】
【0126】
なお、数(4)において、Atは時刻tでの実績値であり、Ftは時刻tでの予測値であり、nは精度判定期間TEの全データ数である。誤差E1が小さいほど第2予測部139による発電量の予測精度が高いことを表し、誤差E1が大きいほど第2予測部139による発電量の予測精度が低いことを表す。
【0127】
精度監視部47は、誤差E1が予め定められた許容範囲Raを逸脱したか否かを判定する。精度監視部47は、誤差E1が許容範囲Raを逸脱したと判定した場合には、予測発電量演算部39a1による予測方法を改善するための処理を実行する。許容範囲Raは、例えば、許容上限値Rauと許容下限値Rabとで定められる範囲として設定される。許容範囲Raは、例えば、許容上限値Rauを5.0%とし、許容下限値Rabを0%とする範囲に設定してもよい。
【0128】
時間経過に伴う予測精度(換言すれば、誤差E1)の変化状態の一例を、
図9に示す。この例では、時刻t1から時刻t5までは、誤差E1が許容範囲Raに収まり(Rab≦E1≦Rau)、時刻t6で誤差E1が許容範囲Raを逸脱している状態(換言すれば、誤差E1が許容上限値Rauを超えている状態)を表している。この例では、許容下限値Rabが0である場合を表している。
【0129】
なお、精度監視部47は、精度判定処理の実行時には、上述した発電量の予測精度の判定と同様の手法によって、第2予測部139による需要量(予測需要量PWg)の予測精度を判定する。
【0130】
次に、適合度検定処理は、第2予測部139による発電量(または需要量)の補正精度を検定するための処理である。第2予測部139による発電量の補正精度は、詳細には、発電予測部39aの補正部39a2による予測発電量WD1の補正精度である。第2予測部139による需要量の補正精度は、詳細には、第2需要予測部139bの需要量補正部139b2による予測需要量PWgの補正精度である。
【0131】
精度監視部47は、適合度検定処理の実行時には、まず、補正部39a2での予測発電量WD1の補正に用いられている誤差分布の情報(以下、第1誤差分布情報Baともいう)を、データ収集機能群33(詳細には、データベース記憶部33c)から取得する。第1誤差分布情報Baは、例えば、
図10の左上領域に示すような波形として表すことができる。第1誤差分布情報Baは、
図4における誤差分布の波形を表す関数(換言すれば、分布関数)に相当する。
【0132】
次に、精度監視部47は、データ収集機能群33から、予め定められた対比期間Tcの発電実績情報DFを取得し、その発電実績情報DFを用いて、対比期間Tcにおける差分値DP(換言すれば、発電予測誤差ER)の分布情報(以下、第2誤差分布情報Bbともいう)を算出する処理を実行する。第2誤差分布情報Bbは、例えば、
図10の左下領域に示すような棒グラフとして表すことができる。
【0133】
なお、対比期間Tcは、第1誤差分布情報Baの算出に用いられた発電実績情報DFが収集された期間よりも後の期間が設定されている。
次に、精度監視部47は、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとが互いに適合しているか否かを検定する。換言すれば、精度監視部47は、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとの互いの適合度合いを示す指標(以下、適合度ともいう)を算出する。適合度は、例えば、所定の検定方法を用いて算出される検定統計量STであってもよい。検定方法としては、例えば、カイ二乗検定、コルモゴロフ-スミノフ検定など、公知の手法を用いることができる。検定方法としてカイ二乗検定を用いる場合には、検定によって算出されるカイ二乗値が検定統計量STに対応する。検定統計量STは、公知の数値を用いることができ、例えば、p値を用いてもよい。
【0134】
適合しているか否かは、算出された検定統計量STと、予め定められた適合度許容範囲Rbと、の比較結果に基づいて判断してもよい。例えば、適合度許容範囲Rbは、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとが互いに適合している場合に検定統計量STが採りうる数値範囲が設定されてもよい。適合度許容範囲Rbは、予め定められた有意水準Lsに基づいて定めてもよく、例えば、有意水準Lsよりも大きい数値範囲を、適合度許容範囲Rbとして設定してもよい。
【0135】
ここで、第1誤差分布情報Baが
図10の左上領域に示すような波形であり、第2誤差分布情報Bbが
図10の左下領域に示すような棒グラフである場合には、両者を重ね合わせると、
図10の右側領域に示すようになる。この例では、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとを対比した場合、確率密度がピークとなるときの予測誤差(換言すれば、差分値DP(発電予測誤差DR))が互いに異なると共に、予測誤差(横軸)に対する確率密度(縦軸)の変化傾向(波形)が互いに異なる。つまり、
図10では、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとで互いに適合していない例を表している。
【0136】
精度監視部47は、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとが互いに適合していないと判定した場合には、補正部39a2による補正方法を改善するための処理を実行する。例えば、補正部39a2の第1誤差分布情報Baを、第2誤差分布情報Bbを用いて更新することで、補正部39a2による補正方法を改善してもよい。詳細には、カーネル密度推定などの公知の方法により、第2誤差分布情報Bbに基づく分布関数を推定し、得られた分布関数から、所望の修正誤差率ERaを決定する。修正誤差率ERaは、例えば標準偏差3σに相当する下側確下側確率など、ユーザが期待する品質水準を用いて決定する。精度監視部47は、補正部39a2における誤差率ER1を、修正誤差率ERaで上書きすることで、補正部39a2による補正方法を改善できる。
【0137】
なお、精度監視部47は、適合度検定処理の実行時には、発電量の補正精度の検定と同様の手法によって、第2予測部139による需要量(予測需要量PWg)の補正精度を検知する。
【0138】
[2-3.電力需給計画の作製処理]
次に、第2電力制御システム101において電力需給計画PDを作成するための一連の処理について説明する。
【0139】
なお、
図8に示すように、第2電力制御システム101における一連の処理は、第1実施形態の電力制御システム1における一連の処理と共通する部分を含むと共に、S150,S160,S180,S200,S210などの一部の処理が異なる。そこで、異なる処理を中心に説明する。
【0140】
S150では、第2需要予測部139bは、予測期間における受電需要量PWcp、第1受電需要量PWcp1、第2受電需要量PWcp2を、それぞれ補正して、予測期間における補正予測受電需要量PWep、補正第1受電需要量PWep1、補正第2受電需要量PWep2を、それぞれ算出する。
【0141】
S160では、第2需要予測部139bは、予測第1需要量PWg1を補正して補正第1需要量PWe1を算出する。そして、第2需要予測部139bは、補正第1需要量PWe1を、データベース記憶部33cではなくシミュレーション部41に送信する。
【0142】
S180では、第2需要予測部139bは、予測第2需要量PWg2を補正して補正第2需要量PWe2を算出する。そして、第2需要予測部139bは、補正第2需要量PWe2を、データベース記憶部33cではなくシミュレーション部41に送信する。
【0143】
S200では、シミュレーション部41は、第1電力需給システム11aの予測期間における電力需給計画PD(換言すれば、第1電力需給計画PD1)を作成する処理を実行する。シミュレーション部41は、まず、第1実施形態と同様に、第1電力需給システム11aの放電可能量Wa(換言すれば、第1放電可能量Wa1)を算出する。シミュレーション部41は、補正第1受電需要量PWep1および第1放電可能量Wa1を用いて、電気使用料金を低減するように、第1電力需給計画PD1を作成する。
【0144】
S210では、シミュレーション部41は、第2電力需給システム11bの予測期間における電力需給計画PD(換言すれば、第2電力需給計画PD2)を作成する処理を実行する。シミュレーション部41は、まず、第1実施形態と同様に、第2電力需給システム11bの放電可能量Wa(換言すれば、第2放電可能量Wa2)を算出する。
【0145】
さらに、シミュレーション部41は、S200での第1電力需給計画PD1の作成前と作成後における補正第1受電需要量PWep1の変化量CFを算出する。変化量CFがプラス値である場合には、第1電力需給システム11aでの消費を予定していた補正第1受電需要量PWep1のうち変化量CFに相当する電力量は、余剰分となる。この余剰分の電力量は、第2電力需給システム11bで利用できる。変化量CFがマイナス値である場合には、第1電力需給システム11aでの消費を予定していた補正第1受電需要量PWep1に対する変化量CFに相当する電力量は、不足分となる。この不足分の電力量に関しては、第2電力需給システム11bの補正第2受電需要量PWep2の一部を充当することも考慮することが望ましい。
【0146】
シミュレーション部41は、補正第2受電需要量PWep2、第2放電可能量Wa2、変化量CFを用いて、電気使用料金を低減するように、第2電力需給計画PD2を作成する。
【0147】
データ収集機能群33のデータベース記憶部33cは、S220において、S200で作成された第1電力需給計画PD1と、S210で作成された第2電力需給計画PD2と、を格納(記憶)する処理を実行する。また、データ収集機能群33は、S220において、記憶した各種情報を読み出して、各種情報をデータ収集装置51に送信する処理を実行する。
【0148】
なお、データ収集機能群33のデータベース記憶部33cは、S160で算出された補正第1需要量PWe1、S170で算出された第1補正発電量WD111、S180で算出された補正第2需要量PWe2、S190で算出された第2補正発電量WD112などを記憶してもよい。
【0149】
第2実施形態において、データ収集装置51は、第1実施形態と同様に、S230において、第1電力需給システム11aに関する各種設定を変更する処理を実行する。なお、第2実施形態では、第1実施形態との相違点として、データ収集装置51は、第1電力需給システム11aに関連する各種情報として、第1需要量PWc1に代えて補正第1需要量PWe1を、データ収集機能群33から取得する処理を実行する。
【0150】
第2実施形態において、データ収集装置51は、第1実施形態と同様に、S240において、第2電力需給システム11bに関する各種設定を変更する処理を実行する。なお、第2実施形態では、第1実施形態との相違点として、データ収集装置51は、第2電力需給システム11bに関連する各種情報として、第2需要量PWc2に代えて補正第2需要量PWe2を、データ収集機能群33から取得する処理を実行する。
【0151】
[2-4.精度判定処理]
次に、第2電力制御システム101で実行される精度判定処理について説明する。
精度判定処理は、上述したように、第2予測部139による発電量(または需要量)の予測精度を判定するための処理である。第2電力制御システム101において、精度判定処理は、主に、精度監視部47で実行される。
【0152】
精度判定処理は、予め定められた判定周期Tjごとに実行される。判定周期Tjは、例えば、1ヶ月を設定してもよいし、2ヶ月、3ヶ月、半年、1年を設定してもよい。
精度判定処理のうち、発電量の予測精度を判定するための処理について説明する。
【0153】
図11に示すように、発電量の予測精度を判定するために、精度判定処理が開始されると、まず、S410では、データ収集機能群33のデータベース記憶部33cは、記憶した各種情報を読み出して、精度監視部47などに送信する処理を実行する。これにより、精度監視部47は、データ収集機能群33から、過去の予め定められた精度判定期間TEにおける実績発電量PWdと予測発電量WD1とを受け取る。
【0154】
S420では、精度監視部47は、精度判定期間TEにおける実績発電量PWdと予測発電量WD1との比較結果に基づいて、予測発電量演算部39a1による予測発電量WD1の予測精度(換言すれば、誤差E1)を算出する。上述したように、精度監視部47は、実績発電量PWdと予測発電量WD1とを、公知の評価関数を用いて比較して、誤差E1を算出する。
【0155】
S430では、精度監視部47は、誤差E1が予め定められた許容範囲Raを逸脱したか否かを判定し、誤差E1が許容範囲Raを逸脱したと判定(YES)した場合にはS440に移行し、誤差E1が許容範囲Raを逸脱していないと判定(NO)した場合には、S460に移行する。
【0156】
S430でYES判定すると、精度監視部47は、第2予測部139に対して、予測方法を改善するため指令を送信する。
S440では、第2予測部139は、精度監視部47からの指令に基づいて、予測発電量演算部39a1による予測方法を改善するための処理を実行する。例えば、第2予測部139は、予測発電量演算部39a1による予測モデルを再構築する処理を実行する。このとき、第2予測部139は、誤差E1が許容範囲Raに収まるように、予測モデルを再構築する。つまり、第2予測部139は、予測精度(換言すれば、誤差E1)が改善して予測数値が実績数値に近づくように、予測発電量演算部39a1による予測方法を改善する。
【0157】
S450では、精度監視部47は、S440での改善後の予測発電量演算部39a1による予測発電量WD1の予測精度を算出する。上述したS420と同様の処理によって、精度監視部47は、実績発電量PWdと予測発電量WD1とを、公知の評価関数を用いて比較して、誤差E1を算出する。
【0158】
S460では、データ収集機能群33のデータベース記憶部33cは、S430で否定判定(NO)された場合にはS420で算出された誤差E1を格納(記憶)し、S430で肯定判定(YES)された場合にはS450で算出された誤差E1を格納(記憶)する処理を実行する。
【0159】
なお、精度判定処理では、発電量の予測精度の判定と同様に、需要量の予測精度を判定するための処理を実行する。需要量の予測精度を判定する場合には、精度判定処理における上述の各処理において、発電量に関する各種数値を、需要量に関する各種数値に置き換えて、各処理を実行する。
【0160】
このように、精度判定処理を実行することで、第2電力制御システム101は、第2予測部139による発電量(または需要量)の予測精度が許容範囲を逸脱した場合には、予測方法を改善する。これにより、第2電力制御システム101は、発電量(または需要量)の予測精度を向上でき、電力供給コストの低減およびCO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0161】
[2-5.適合度検定処理]
次に、第2電力制御システム101で実行される適合度検定処理について説明する。
適合度検定処理は、上述したように、第2予測部139による発電量(または需要量)の補正精度を検定するための処理である。第2電力制御システム101において、適合度検定処理は、主に、精度監視部47で実行される。
【0162】
適合度検定処理は、予め定められた検定周期Tsごとに実行される。検定周期Tsは、例えば、半年を設定してもよいし、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、1年を設定してもよい。
適合度検定処理のうち、発電量の補正精度を検定するための処理について説明する。
【0163】
図12に示すように、発電量の補正精度を検定するために、適合度検定処理が開始されると、まず、S510では、データ収集機能群33のデータベース記憶部33cは、記憶した各種情報を読み出して、精度監視部47などに送信する処理を実行する。これにより、精度監視部47は、データ収集機能群33から、第1誤差分布情報Baと対比期間Tcの発電実績情報DFとを受け取る。
【0164】
S520では、精度監視部47は、まず、対比期間Tcの発電実績情報DFを用いて第2誤差分布情報Bbを算出する処理を、補正部39a2に実行させる。精度監視部47は、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとが互いに適合しているか否かを検定するために、検定統計量STを算出する。上述したように、適合しているか否かの検定方法としては、例えば、カイ二乗検定、コルモゴロフ-スミノフ検定など、公知の手法で適合度を検定する。
【0165】
S530では、精度監視部47は、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとが互いに適合しているか否かの検定結果に応じて、適合していると判定(YES)した場合にはS560に移行し、適合していないと判定(NO)した場合には、S540に移行する。
【0166】
S540では、第2予測部139は、精度監視部47からの指令に基づいて、補正部39a2による補正方法を改善するための処理を実行する。第2予測部139は、上述したように、例えば、補正部39a2の第1誤差分布情報Baを、第2誤差分布情報Bbを用いて更新することで、補正部39a2による補正方法を改善してもよい。換言すれば、第2予測部139は、補正数値が実績数値に近づくように、補正部39a2による補正方法を改善するための処理を実行する。
【0167】
S550では、精度監視部47は、精度監視部47は、対比期間Tcの発電実績情報DFを用いて第2誤差分布情報Bbを算出する処理を、S540での改善後の補正部39a2に実行させる。精度監視部47は、改善後の第2誤差分布情報Bbと第1誤差分布情報Baとが互いに適合しているか否かを検定する。このとき、S520での処理と同様に、公知の手法で適合度を検定する。さらに、精度監視部47は、改善後の第2誤差分布情報Bbから所望の誤差率ER1を決定する処理を、改善後の補正部39a2に実行させる。
【0168】
S560では、データ収集機能群33のデータベース記憶部33cは、S530で否定判定(NO)された場合にはS550で算出された適合度および誤差率ER1を格納(記憶)し、S530で肯定判定(YES)された場合にはS520で算出された適合度を格納(記憶)する処理を実行する。
【0169】
なお、適合度検定処理では、発電量の補正精度の検定と同様に、需要量の補正精度を検定するための処理を実行する。需要量の補正精度を検定する場合には、適合度検定処理における上述の各処理において、発電量に関する各種数値を、需要量に関する各種数値に置き換えて、各処理を実行する。
【0170】
このように、適合度検定処理を実行することで、第2電力制御システム101は、第2予測部139による発電量(または需要量)の補正精度が低下した場合には、補正方法を改善する。これにより、第2電力制御システム101は、発電量(または需要量)の補正精度を向上でき、電力供給コストの低減およびCO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0171】
[2-6.効果]
以上説明したように、第2実施形態の第2電力管理装置131は、発電量および需要量のそれぞれについて予測および補正を行い、予測および補正された発電量および需要量を用いて電力需給計画PDを作成する。
【0172】
このため、第2電力管理装置131は、第1電力需給システム11aおよび第2電力需給システム11bのそれぞれへの電力供給において、電力供給コストを低減しつつ、エネルギー起源CO2の排出量の増加を抑制できる。
【0173】
予測需要量演算部139b1は、過去の電力需要情報DMに基づいて予測需要量PWgを演算することができる。これにより、第2電力管理装置131は、予測需要量PWgの予測精度を向上でき、電力供給コストの低減およびCO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0174】
需要量補正部139b2は、過去の需要量差分値DCに基づいて特定した需要量差分値DC(換言すれば、需要予測誤差ERc)の分布関数を用いて、補正予測需要量PWeを演算している。つまり、需要量補正部139b2は、過去の事実に基づいて、補正予測需要量PWeを精度良く演算できる。これにより、第2電力管理装置131は、補正予測需要量PWeの補正精度を向上でき、電力供給コストの低減およびCO2排出量の増加抑制を、より精度良く実現できる。
【0175】
次に、第2電力管理装置131では、精度判定処理を実行することで、精度監視部47が、精度判定期間TEにおける実績発電量PWdと予測発電量WD1との比較結果に基づいて、予測発電量演算部39a1による予測発電量WD1の予測精度(換言すれば、誤差E1)を算出する(S420)。精度監視部47は、誤差E1が予め定められた許容範囲Raを逸脱したか否かを判定する(S430)。精度監視部47は、誤差E1が許容範囲Raを逸脱した場合(S430でYES判定)、第2予測部139に対して予測方法を改善するため指令を送信する。第2予測部139は、精度監視部47からの指令に基づいて、予測精度(換言すれば、誤差E1)が改善して予測数値が実績数値に近づくように、予測発電量演算部39a1による予測方法を改善するための処理を実行する(S440)。
【0176】
また、第2電力管理装置131は、予測需要量演算部139b1による予測需要量PWgの予測精度についても、同様に、予測数値が実績数値に近づくように、予測需要量演算部139b1による予測方法を改善するための処理を実行する。
【0177】
このような第2電力管理装置131は、何らかの要因により、予測発電量演算部39a1(または、予測需要量演算部139b1)の予測精度が悪化した場合に、予測発電量演算部39a1(または、予測需要量演算部139b1)による予測方法を改善できる。よって、第2電力管理装置131は、予測発電量演算部39a1(または、予測需要量演算部139b1)による予測数値の予測精度が悪化し続けることを抑制できる。
【0178】
次に、第2電力管理装置131では、適合度検定処理を実行することで、精度監視部47は、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとが互いに適合しているか否かを検定するために、検定統計量STを算出する(S520)。精度監視部47は、検定統計量STを用いて、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとが互いに適合しているか否かの検定を行う(S530)。精度監視部47は、第1誤差分布情報Baと第2誤差分布情報Bbとが互いに適合していないと判定した場合(S530でNO判定)には、第2予測部139に対して補正方法を改善するため指令を送信する。第2予測部139は、精度監視部47からの指令に基づいて、補正数値が実績数値に近づくように、補正部39a2による補正方法を改善するための処理を実行する(S540)。
【0179】
また、第2電力管理装置131は、需要量補正部139b2による補正予測需要量PWeの補正精度についても、同様に、補正数値が実績数値に近づくように、需要量補正部139b2による補正方法を改善するための処理を実行する。
【0180】
このような第2電力管理装置131は、何らかの要因により、補正部39a2(または、需要量補正部139b2)の補正精度が悪化した場合に、補正部39a2(または、需要量補正部139b2)による補正方法を改善できる。よって、第2電力管理装置131は、補正部39a2(または、需要量補正部139b2)による予測数値の補正精度が悪化し続けることを抑制できる。
【0181】
[2-7.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
予測発電量演算部39a1および予測需要量演算部139b1が予測数値演算部の一例に相当している。補正部39a2および需要量補正部139b2が補正部の一例に相当している。補正部39a2は、発電量補正部の一例に相当している。
【0182】
S420およびS430を実行する精度監視部47が精度判定部の一例に相当し、S440を実行する第2予測部139が予測改善部の一例に相当している。S520およびS530を実行する精度監視部47が適合度検定部の一例に相当し、S440を実行する第2予測部139が補正情報変更部の一例に相当している。
【0183】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0184】
(a)上記実施形態では、予測発電量演算部39a1は、気象予報情報DW1、気象実績情報DW2、発電実績情報DFを全て用いて予測発電量WD1を演算する形態であるが、本開示の予測発電量演算部は、このような形態に限られることはない。例えば、予測発電量演算部39a1は、気象予報情報DW1、気象実績情報DW2、発電実績情報DFのうち少なくとも1つに基づいて、予測発電量WD1を演算してもよい。
【0185】
(b)上記実施形態では、電力制御システム1が、2つの電力需給システムを備える形態について説明したが、電力制御システムに備えられる電力需給システムは2つに限られることはない。例えば、本開示の電力制御システムは、1つの電力需給システムを備える形態であってもよいし、3つ以上の電力需給システムを備える形態であってもよい。このような場合、電力管理装置31は、電力需給システムのそれぞれについて、電力需給計画PDを作成してもよい。
【0186】
(c)第1実施形態では、発電量を予測して、予測した発電量を補正する形態について説明し、第2実施形態では、発電量および需要量をそれぞれ予測して、予測した発電量および需要量をそれぞれ補正する形態について説明したが、本開示は、このような形態に限られることはない。例えば、需要量を予測して、予測した需要量を補正する形態であってもよい。あるいは、発電量および需要量に加えて、他の数値(換言すれば、電力に関する数値)を予測して、予測したほかの数値を補正する形態であってもよい。
【0187】
(d)第1実施形態では、補正部が予測発電量を補正する形態について説明し、第2実施形態では、補正部が予測発電量および予測需要量をそれぞれ補正する形態について説明したが、本開示は、このような形態に限られることはない。例えば、補正部が予測需要量を補正する形態であってもよい。あるいは、補正部が、発電量および需要量に加えて、他の数値(換言すれば、電力に関する数値)の予測値を補正する形態であってもよい。
【0188】
(e)第2実施形態では、予測数値演算部による予測方法を改善するための処理(S440)として、電力管理装置(詳細には、予測改善部としての第2予測部139)が、予測数値演算部での予測数値の演算に用いる演算情報を変更する形態について説明したが、本開示は、このような形態に限られることはない。例えば、予測改善部は、予測数値演算部の予測精度が許容範囲を逸脱していることを報知する形態であってもよい。
【0189】
これにより、電力管理装置の使用者に対して、予測数値演算部による予測数値の予測精度の悪化を知らせることができる。この報知を受けた使用者が、予測数値演算部による予測方法を改善することで、予測数値の予測精度が悪化し続けることを抑制できる。
【0190】
なお、報知の形態は、例えば、表示部33aを用いた映像表示やメッセージ表示による形態であってもよい。あるいは、スピーカを用いた音による報知形態や、発光部を用いた光による報知形態などであってもよい。また、電子通知を用いた報知の形態であってもよい。電子通知とは、通信回線を用いて、離れた機器どうしの間で送信・受信される情報である。電子通知は、例えば、電子メールや電子メッセージなどの文字情報や図形情報などである。電子通知を用いることで、電力管理装置から離れた場所の使用者に報知することができる。さらに、報知形態は、音、光、映像表示、電子通知などのいずれか1つを用いた形態に限られることはなく、複数の手段を組み合わせた報知形態であってもよい。
【0191】
(f)第2実施形態では、補正部による補正方法を改善するための処理(S540)として、電力管理装置(詳細には、補正情報変更部としての第2予測部139)が、第1補正情報を変更する形態について説明したが、本開示は、このような形態に限られることはない。例えば、補正情報変更部は、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合していない場合には、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合していないことを報知する形態であってもよい。
【0192】
これにより、電力管理装置の使用者に対して、第2補正情報と第1補正情報とが互いに適合していないこと(換言すれば、補正部による補正精度の悪化)を知らせることができる。この報知を受けた使用者が、補正部による補正方法を改善することで、補正精度が悪化し続けることを抑制できる。なお、補正部による補正方法を改善する方法としては、第1補正情報を変更することが挙げられる。
【0193】
なお、報知の形態は、上記の(e)に記載したとおり、映像表示、メッセージ表示、音、光、電子通知などによる報知形態であってもよい。さらに、報知形態は、音、光、映像表示、電子通知などのいずれか1つを用いた形態に限られることはなく、複数の手段を組み合わせた報知形態であってもよい。
【0194】
(g)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を、省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0195】
(h)上述したコンピュータシステムの他、当該コンピュータシステムを構成要素とする上位システム、当該コンピュータシステムとしてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、濃度算出方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0196】
1…電力制御システム、11…電力需給システム、11a…第1電力需給システム、11b…第2電力需給システム、13…再生可能エネルギー発電部、15…パワーコンディショナー、17…二次電池、21…系統電力網、23…負荷設備、31…電力管理装置、33…データ収集機能群、33a…表示部、33b…収集部、33c…データベース記憶部、35…充放電制御機能群、37…気象情報取得部、39…予測部、39a…発電予測部、39a1…予測発電量演算部、39a2…補正部、39b…需要予測部、41…シミュレーション部、43…制御部、45…監視部、47…精度監視部、51…データ収集装置、53…気象予報システム、101…第2電力制御システム、131…第2電力管理装置、135…第2充放電制御機能群、139…第2予測部、139b…第2需要予測部、139b1…予測需要量演算部、139b2…需要量補正部。