(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133192
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ポリオキシエチレン誘導体の製造方法、ポリオキシエチレン化合物の定量方法及び分析用ラベル化試薬
(51)【国際特許分類】
C08G 65/329 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
C08G65/329
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033321
(22)【出願日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2022035886
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】羽村 健
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌樹
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005AA12
4J005BD01
4J005BD05
4J005BD06
(57)【要約】
【課題】ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物を原料としてヒドロキシ基を誘導体化し、高分子量ポリオキシエチレン誘導体を製造する際に、未反応のヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物を迅速かつ高精度で定量可能とすることである。
【解決手段】未反応のヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物を重溶媒中でラベル化試薬を用いてラベル化し、ラベル化後の溶液を用いて事前飽和法と逆ゲート付きデカップリングを用いたプロトン核磁気共鳴分光法で定量する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物の前記ヒドロキシ基を誘導体化することによって、前記ヒドロキシ基が誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体を生成させるのに際して、
未反応の前記ヒドロキシ基を有する前記高分子量ポリオキシエチレン化合物を重溶媒中でラベル化試薬を用いてラベル化し、ラベル化後の溶液を用いて事前飽和法と逆ゲート付きデカップリングを用いたプロトン核磁気共鳴分光法で定量することを特徴とする、ヒドロキシ基が誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシ基を有する前記高分子量ポリオキシエチレン化合物が下式(1)で表されることを特徴とする、請求項1記載のヒドロキシ基が誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体の製造方法。
【化1】
(式(1)中、
OA
1およびOA
2はオキシエチレン基であり、
aおよびbは、独立してそれぞれ、0~2,500であり、かつa+bは200以上であり、
L
1およびL
2は、独立してそれぞれ、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合、エーテル結合およびチオエーテル結合から選択される結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基であり、アルキレン基は一分子中で互いに同一又は異なっていてもよく、
pおよびqは、独立してそれぞれ0または1であり、
sおよびtは、独立してそれぞれ0~8であり、かつ2≦s+t≦8であり、
X
1は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アジド基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基、オキシカルバモイル基、シアノ基、シリル基、アシルオキシ基、スルホニル基またはイミド基であり、かつtが0の場合にはX
1はヒドロキシ基であり、
X
2はヒドロキシ基であり、
Zは、2~8個のヒドロキシ基を有しかつ2~21個の炭素原子を有する化合物からすべての前記ヒドロキシ基を除いた残基である。)
【請求項3】
前記ヒドロキシ基が誘導体化された前記高分子量ポリオキシエチレン誘導体が下式(2)で表されることを特徴とする、請求項1または2記載のヒドロキシ基が誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体の製造方法。
【化2】
(式(2)中、
OA
1およびOA
2はオキシエチレン基であり、
aおよびbは、独立してそれぞれ0~2,500であってかつa+bは200以上であり、
L
1およびL
2は、独立してそれぞれ、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合、エーテル結合およびチオエーテル結合から選択される結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基であり、前記アルキレン基は一分子中で互いに同一又は異なっていてもよく、
pおよびqは、独立してそれぞれ、0または1であり、
sおよびtは、独立してそれぞれ0~8であり、かつ2≦s+t≦8であり、
X
3およびX
4は、独立してそれぞれ、アルコキシ基、アジド基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基、オキシカルバモイル基、シアノ基、シリル基、アシルオキシ基、スルホニル基またはイミド基であり、
Zは、2~8個のヒドロキシ基を有しかつ2~21個の炭素原子を有する化合物からすべての前記ヒドロキシ基を除いた残基である。)
【請求項4】
前記ラベル化試薬が、下式(3)で表されるイソシアネート試薬であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のヒドロキシ基が誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体の製造方法。
【化3】
(式(3)中、Rは電子求引性基を有する有機基を示す。)
【請求項5】
式(3)で表されることを特徴とする、ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物の分析用ラベル化試薬。
【化3】
(式(3)中、Rは電子求引性基を有する有機基を示す。)
【請求項6】
高分子量ポリオキシエチレン誘導体に含まれる、ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物を定量する方法であって、
ヒドロキシ基を有する前記高分子量ポリオキシエチレン化合物を重溶媒中でラベル化試薬を用いてラベル化し、ラベル化後の溶液を用いて事前飽和法と逆ゲート付きデカップリングを用いたプロトン核磁気共鳴分光法で定量することを特徴とする、ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物の定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシエチレン誘導体の製造方法、ポリオキシエチレン化合物の定量方法及び分析用ラベル化試薬に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ホルモンやサイトカイン、酵素などの生体関連物質などを用いた医薬品は、通常生体内へ投与されると、腎臓における糸球体濾過や肝臓や脾臓などにおけるマクロファージによる取り込みによって、生体内から速やかに排出されてしまう。そのため血中半減期が短く、十分な薬理効果を得ることが困難であることが多い。この問題を解決するため、生体関連物質にポリオキシエチレン(PEG)などの水溶性ポリマーによって化学修飾する試みが行われている。その結果、分子量の増大や水和層の形成などにより生体関連物質などの血中半減期を延長することが可能となる。また、これらの修飾により、生体関連物質などの毒性や抗原性の低下、凝集性の改善などの効果が得られることも良く知られている。
【0003】
PEG誘導体の構造は、通常、修飾するタンパク質などの表面に存在するアミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、不飽和結合などの官能基と化学的に結合する活性基をポリオキシエチレン末端に有する。例えば、アミノ基に対して修飾させる場合はホルミル基、エポキシ基、p-ニトロフェニルエステル基、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル基などの活性基、メルカプト基に対してはメルカプト基、マレイミジル基、置換マレイミジル基、アリル基、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル基などの活性基、カルボキシル基に対しては、メルカプト基、アミノ基などの活性基、不飽和結合に対してはメルカプト基などの活性基をPEG末端に有する。
【0004】
しかし、特に低分子薬剤やペプチドを修飾する場合には、PEG誘導体と結合させる反応性官能基が少ないため、溶解性の向上などの効果が得られにくいという問題点がある。また、数多くのPEG誘導体で修飾すると薬剤やペプチドの活性点を封鎖してしまい、それ自身が持つ機能、薬効を十分に発現できなくなるという問題点がある。そこで、近年は、生理活性物質の機能や薬効を低下させずに、最小限の修飾数でも効率的にその効果を得るため、より高分子量のPEG誘導体が用いられるようになっている。
【0005】
これらの医薬用途を目的とした活性基を有するPEG誘導体(活性化PEG誘導体)は、これを修飾して生産される薬剤の性能や安全性の観点から、不純物が少なく、さらに、生産過程で副生した不純物や残存した原料および中間体について適切な管理が求められている。例えば、バッチ製造が主流である医薬品産業においては、残存した原料や副生した不純物量等について生産の任意の工程で試験を実施し、試験中はその工程で一時待機し、試験の合格を確認した上で次の工程に進むケースがある。
【0006】
現在、直鎖型や分岐型などの様々な骨格を有する活性化PEG誘導体が開発されており、その製造方法により副生する不純物は様々であるが、一般的に活性化PEG誘導体は、ヒドロキシ基を有したPEG化合物(PEG-OH)を原料もしくは中間体として、ヒドロキシ基を改変または活性基を結合するなどの誘導体化工程を経て生産されている。このため、生産過程で得られるヒドロキシ基が誘導体化されたPEG誘導体や最終生成物である活性化PEG誘導体には、ヒドロキシ基の誘導体化が不十分な場合にPEG-OHが微量成分として残存する。
また、微量成分として残存したPEG-OHは、活性化PEG誘導体の生産工程において目的とする化合物以外の不純物となり、純度低下につながるケースがある。
【0007】
このことから、誘導体化したPEG誘導体中に微量に残存した未反応のPEG-OH量を、ヒドロキシ基の誘導体化工程において、高感度に定量し、適切に管理可能な製造方法が求められている。
特に、高分子量PEG誘導体は近年需要が高まっていることから、高分子量PEG-OHのヒドロキシ基を誘導体化する工程において、誘導体化した高分子量PEG誘導体中に微量に残存した高分子量PEG-OH量を高感度に定量し、適切に管理する製造方法は、高分子量PEG誘導体の純度向上のために重要である。
【0008】
また、ここでいう適切な管理とは、微量に残存した高分子量PEG-OH量を誘導体化工程内で高感度に定量し、分析結果を基に誘導体化された高分子量PEG誘導体の活性基の導入率などの品質特性に影響を与えない範囲であることを確認し、反応や精製工程などの所定の工程を完了させ、次の工程に移行することであり、品質特性に影響を与える範囲である場合には、反応時間を延長する、または精製工程を追加するなどの適切な処置を行うことである。
【0009】
さらに、微量に残存した高分子量PEG-OH量を適切に管理する場合には、製品の安定性や生産性の観点から所定の工程を速やかに完了させ、次の工程に移行する必要があるため、使用する高感度な定量法に簡便さや迅速性も求められる。例えば、高分子量PEG-OHの定量に時間を要した場合、所定の工程を完了できず、生産時間が増大し、また、工程途中で製品の劣化につながるケースがある。
【0010】
PEG-OHの定量法としては、中和滴定法、電位差滴定法およびピリジン-塩化アセチル法などの滴定法があるが、これらの定量法は一般的にPEG-OHが主成分である場合の分析手法である。また、分析誤差が大きく、さらに分析試料の分子量が大きいほど、その誤差の影響は大きくなることから、誘導体化された高分子量PEG誘導体に含まれる微量の未反応の高分子量PEG-OHの高感度な定量法として適していない。
【0011】
また、高分子量PEG誘導体に含まれる高分子量PEG-OHを高感度に定量する分析手段として核磁気共鳴分光法(NMR法)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
より簡便なNMR法としては、トリクロロアセチルイソシアネートなどのイソシアネート試薬などをラベル化試薬としてPEG-OHを非プロトン性の重溶媒中でラベル化させた後、1H-NMR測定で求める方法がある(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】“ A simple method for determining protic end-groups of synthetic polymers by 1H NMR spectroscopy”, Almar Postma et. al., “Polymer” 47 (2006) pages 1899-1911
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、特許文献1では、ラベル化試薬として塩化メタンスルホニルを用いており、微量に残存した未反応の高分子量PEG-OHをラベル化し、1H-NMR分析で定量することが可能である。しかし、特許文献1の構成では、ラベル化後に精製操作が必要となり、工程内管理に必要な簡便さや迅速性が欠如する課題がある。
【0015】
また、非特許文献1記載のNMR法では、PEG-OHが主成分である場合には定量することが可能である。しかし、ヒドロキシ基が誘導体化された高分子量PEG誘導体に含まれる微量成分として存在する未反応のPEG-OHを定量する場合には、PEG鎖中のプロトンピークのマルチプレットが大きくなり、ノイズの増大やベースラインのゆがみなどに影響が生じ、ラベル化されたPEG-OH由来のピークのS/N比が小さくなり、測定誤差が大きくなり、定量性に課題がある。
【0016】
この点、NMR法において目的ピークのS/N比を改善する手法としては、一般的に試料濃度を上げることやNMR測定時に積算回数を大きくするまたは事前飽和法などを目的のピーク以外の巨大ピークに適用する方法が知られている。
【0017】
しかし、高分子量PEG誘導体の試料濃度を上げた場合には、サンプル溶液の粘度が増大し、目的のピークのスペクトル幅が大きくなり、測定誤差が大きくなることが知られている。また、事前飽和法は適用する巨大ピーク周辺のピーク強度に影響を与えることが知られており、定量性に影響を与えるケースがある。
【0018】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、高分子量PEG-OHのヒドロキシ基を誘導体化する工程において、誘導体化された高分子量PEG誘導体に含まれる未反応の高分子量PEG-OH量を簡易かつ迅速で高感度に定量することで、生産時間を短縮し、高分子量PEG-OHを適切に管理可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述したように、特許文献1では、ラベル化試薬由来のプロトンピークがラベル化された高分子量PEG-OH由来のプロトンピークと重複し、ピーク分離が不十分であることから、ラベル化後に精製操作が必要となり、工程内管理に必要な迅速性が欠如する課題があった。この点、非特許文献1の手法では、ラベル化試薬由来およびラベル化されたPEG-OH由来のプロトンピークのピーク分離が可能である。しかし、高分子量PEG誘導体中に含まれる高分子量PEG-OHを定量する手法としては、定量性に課題があった。
【0020】
さらに、高分子量PEG誘導体に含まれる微量の高分子量PEG-OHの定量は、従来の1H-NMR法では課題があり、未反応の微量な高分子量PEG-OH量を1H-NMR法で工程内管理できる高分子量PEG誘導体の製造方法は提供されていない。
【0021】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ヒドロキシ基を誘導体化した高分子量PEG誘導体に含まれる微量に残存した未反応の高分子量PEG-OHを重溶媒中でラベル化試薬を用いてラベル化し、ラベル化後の溶液を用いて事前飽和法と逆ゲート付きデカップリング用いた1H-NMR法で迅速かつ高感度に定量し、ヒドロキシ基を誘導体化する工程においてPEG-OH量を適切に管理可能な、迅速性と定量性を兼ね備えた分析法により、生産時間を短縮可能な高分子量PEG誘導体の製造方法ならびに高分子量PEG-OHのラベル化試薬を見出した。
【0022】
すなわち本発明は以下の[1]~[6]に関する。
[1] ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物の前記ヒドロキシ基を誘導体化することによって、ヒドロキシ基が誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体を生成させるのに際して、
未反応の前記ヒドロキシ基を有する前記高分子量ポリオキシエチレン化合物を重溶媒中でラベル化試薬を用いてラベル化し、ラベル化後の溶液を用いて事前飽和法と逆ゲート付きデカップリングを用いたプロトン核磁気共鳴分光法で定量することを特徴とする、ヒドロキシ基が誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体の製造方法。
[2] 前記ヒドロキシ基を有する前記高分子量ポリオキシエチレン化合物が下式(1)で表されることを特徴とする、[1]の方法。
【化1】
(式(1)中、
OA
1およびOA
2はオキシエチレン基であり、
aおよびbは、独立してそれぞれ、0~2,500であり、かつa+bは200以上であり、
L
1およびL
2は、独立してそれぞれ、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合、エーテル結合およびチオエーテル結合から選択される結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基であり、アルキレン基は一分子中で互いに同一又は異なっていてもよく、
pおよびqは、独立してそれぞれ0または1であり、
sおよびtは、独立してそれぞれ0~8であり、かつ2≦s+t≦8であり、
X
1は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アジド基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基、オキシカルバモイル基、シアノ基、シリル基、アシルオキシ基、スルホニル基またはイミド基であり、かつtが0の場合にはX
1はヒドロキシ基であり、
X
2はヒドロキシ基であり、
Zは2~8個のヒドロキシ基を有しかつ2~21個の炭素原子を有する化合物からすべての前記ヒドロキシ基を除いた残基である。)
[3] 前記ヒドロキシ基が誘導体化された前記高分子量ポリオキシエチレン誘導体が下式(2)で表されることを特徴とする、[1]または[2]の方法。
【化2】
(式(2)中、
OA
1およびOA
2はオキシエチレン基であり、
aおよびbは、独立してそれぞれ0~2,500であってかつa+bは200以上であり、
L
1およびL
2は、独立してそれぞれ、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合、エーテル結合およびチオエーテル結合から選択される結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基であり、前記アルキレン基は一分子中で互いに同一又は異なっていてもよく、
pおよびqは、独立してそれぞれ、0または1であり、
sおよびtは、独立してそれぞれ0~8であり、かつ2≦s+t≦8であり、
X
3およびX
4は、独立してそれぞれ、アルコキシ基、アジド基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基、オキシカルバモイル基、シアノ基、シリル基、アシルオキシ基、スルホニル基またはイミド基であり、
Zは、2~8個のヒドロキシ基を有しかつ2~21個の炭素原子を有する化合物からすべての前記ヒドロキシ基を除いた残基である。)
[4] 前記ラベル化試薬が、下式(3)で表されるイソシアネート試薬であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一つの方法。
【化3】
(式(3)中、Rは電子求引性基を有する有機基を示す。)
[5] 式(3)で表されることを特徴とする、ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物の分析用ラベル化試薬。
【化3】
(式(3)中、Rは電子求引性基を有する有機基を示す。)
[6] 高分子量ポリオキシエチレン誘導体に含まれる、ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物を定量する方法であって、
ヒドロキシ基を有する前記高分子量ポリオキシエチレン化合物を重溶媒中でラベル化試薬を用いてラベル化し、ラベル化後の溶液を用いて事前飽和法と逆ゲート付きデカップリングを用いたプロトン核磁気共鳴分光法で定量することを特徴とする、ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物の定量方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ヒドロキシ基を有する高分子量PEG化合物を誘導体化する工程において、微量に残存した未反応の高分子量PEG-OH量を1H-NMR法で迅速かつ高感度に定量することで、生産過程において適切に管理でき、生産に係る時間を短縮し、高純度の高分子量の末端活性化PEG誘導体の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のヒドロキシ基が誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体の製造方法、ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物の定量方法及びヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物の分析用ラベル化試薬について詳細に説明する。
ヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物(本明細書では「高分子量PEG-OH」と略称することがある)のヒドロキシ基を誘導体化する工程(高分子量ポリオキシエチレン誘導体を生成させるのに際して、)とは、高分子量PEG-OHを原料として、ワンポット合成による多段階の反応を含む反応工程および精製工程からなる目的の誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体(本明細書では「高分子量PEG誘導体」と略称することがある)を得る一連の製造工程のことである。高分子量PEG-OHを原料としていれば、ワンポット合成における反応の段階数に制限は無いが、好ましくは2段階である。
【0025】
高分子量PEG-OHのヒドロキシ基を誘導体化する反応としては、例えばエステル化、エーテル化、メシル化、シアノエチル化、シリル化などである。ワンポット合成の具体的な例としては、例えば以下のものがある。
・ ヒドロキシ基を塩化メタンスルホニルでメシル化した後、同反応系にナトリウムメトキシドを添加し、メトキシ基とする2段階の反応
・ ヒドロキシ基をフタルイミド基に置換した後、ヒドラジンなどで脱保護し、アミノ基とする2段階の反応
・ ヒドロキシ基に塩基性条件下で無水カルボン酸を作用させ、エステル化してカルボン酸体とした後に同反応系にN-ヒドロキシスクシンイミドを加えて活性基を導入する反応
【0026】
本発明において、高分子量PEG誘導体中の未反応の高分子量PEG-OHをラベル化するにあたり、使用する重溶媒としては、非プロトン性の重溶媒であれば制限は特になく、例えば、重ジメチルスルホキシド、重ジメチルホルムアミド、重ジクロロメタン、重アセトン、重クロロホルム、重アセトニトリル、重テトラヒドロフラン、重ベンゼンなどが挙げられ、好ましくは、重ジメチルスルホキシド、重ジメチルホルムアミド、重ジクロロメタン、重アセトン、重クロロホルム、重アセトニトリルを例示できる。より好ましくは重ジメチルスルホキシド、重ジクロロメタン、重クロロホルムであり、さらに好ましくは重クロロホルムである。
【0027】
本発明において、プロトン核磁気共鳴分光法(以下、1H-NMR法と略称することがある)では、基準ピークを定める必要がある。基準ピークとしては、重溶媒に含まれる溶媒ピークや基準物質として添加するテトラメチルシランまたはヘキサメチルジシロキサンに由来するピークなどがあり、好ましくはテトラメチルシランもしくはヘキサメチルジシロキサンであり、より好ましくはテトラメチルシランである。
【0028】
本発明では、事前飽和法は、1H-NMR法においてPEG鎖由来プロトンピークに適用され、そのケミカルシフトは重溶媒により異なるが、例えば、重クロロホルムを重溶媒として用いた場合は、3.56ppmである。
【0029】
また、事前飽和法は、特定周波数のラジオ波を事前に照射することで極大ピークのシグナル強度を低減することができ、ラジオ波の出力により極大ピークのシグナル強度を制御することが可能である。ただし、ラジオ波の出力が大きすぎると極大ピーク周辺のピークのシグナル強度も小さくなり、小さすぎると目的ピークのS/N比は改善できないため、ラジオ波の出力を核磁気共鳴装置の減衰器により減衰量として制御する必要がある。減衰量として好ましくは40~90dB、より好ましくは50~80dB、さらに好ましくは60~70dBである。
【0030】
本発明において、高分子量PEG誘導体中の高分子量PEG-OH量は、所定のケミカルシフトに検出されるピーク積分値を基準(以下、「定量用基準ピーク」と略称することがある)として、ラベル化試薬であるイソシアネート試薬(詳細は後述する)により、高分子量PEG-OHがラベル化後の化合物のウレタン結合の酸素原子横のメチレン基に由来するピーク(以下、「目的物由来ピーク」と略称することがある)の積分値から算出することができる。
【0031】
さらに、高分子量PEG-OH量の定量において、定量用基準ピークを設定する必要があるが、この定量用基準ピークは、事前飽和法の影響が小さい範囲で、かつ目的物由来ピークのケミカルシフトと重複しないケミカルシフトにピークが検出されればよく、PEG鎖由来プロトンのケミカルシフト値から0.5ppm以上離れた周波数に検出されることが好ましく、0.9ppm以上離れていることがより好ましい。定量用基準ピークの好ましい様態としては、例えば基準ピークであるテトラメチルシランに由来するピーク積分値や、高分子量PEG誘導体に由来するピーク積分値などを定量用基準ピークとしてもよく、また、トリフェニルメタンなどの定量用基準物質を添加して、定量用基準物質に由来するピーク積分値を定量用基準ピークとしてもよい。好ましくは高分子量PEG誘導体に由来するピークまたは定量用基準物質に由来するピークである。
【0032】
1H-NMR法では、天然存在比の低い13Cとカップリングしたピークが主信号の両サイドにサテライト信号として検出されることが知られている。例えば、隣接する炭素原子と結合した1Hの1.1%は、1.1%含まれる13Cとのスピン結合により分裂し、主信号の両サイドに0.55%の高さのサテライト信号として検出され、目的物ピークの積分値が小さくなり、定量性に影響が生じる。1H-NMR法での定量は、サテライト信号による定量性への影響を排除するために、13Cとのカップリングによる信号の分裂を発生させない逆ゲート付きデカップリング法を採用した。
【0033】
未反応の高分子量PEG-OHを1H-NMR法で定量する工程としては、ワンポット合成による多段階の反応を含む反応工程中もしくは精製工程中であり、好ましくは反応工程中である。
【0034】
1H-NMR法による未反応の高分子量PEG-OHの定量下限値は、小さければ小さいほど好ましく、本発明によれば、後述するが、0.2重量%まで定量することが可能である。
【0035】
好適な実施形態においては、高分子量PEG-OHが下式(1)で表される。
【化1】
【0036】
以下、式(1)中の基について詳細に説明する。
式(1)中のOA
1およびOA
2は下式(4)で表される2価のオキシエチレン基であり、*がZとの結合位置を示し、**がL
1またはL
2との結合位置を示し、式(4)中のnはオキシエチレン基の付加モル数であり、後述するaまたはbである。
【化4】
【0037】
aおよびbは、独立してそれぞれ、0~2,500であり、かつa+bは200以上である。a、bはそれぞれ、好ましくは0~1,100である。また、a+bは200以上であるが、200~3,500が好ましく、200~2,500が更に好ましい。
なお、「高分子量PEG-OH」および「高分子量PEG誘導体」の「高分子量」とは、各ポリオキシエチレン部分を構成するオキシエチレン基の合計付加モル数が200以上であることを意味するものとする。すなわち、本発明の「高分子量PEG-OH」および「高分子量PEG誘導体」の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーや質量分析法などにより求められる数平均分子量であり、8800以上、220000以下であることが好ましい。
【0038】
L1およびL2は、独立してそれぞれ、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合、エーテル結合およびチオエーテル結合から選択される結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基であり、アルキレン基は一分子中で互いに同一又は異なっていてもよい。これらは、好ましくは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合から選択される結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基であり、より好ましくは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合から選択される結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基である。特に好ましい態様は、下記の群(I)に示される式(z1)、(z2)、(z3)、(z4)、(z5)、(z6)、(z7)、(z8)、(z9)および(z10)からなる群より選ばれた一種以上の2価のスペーサーである。好ましくは、下記の群(I)に示される式(z1)、(z2)、(z3)、(z4)、(z5)、(z6)、(z7)、(z8)、(z9)および(z10)からなる群より選ばれた2種以上、5種以下の2価のスペーサーを組み合わせてもよい。
【0039】
【0040】
群(I)に示される式(z1)、(z2)、(z3)、(z4)、(z5)、(z6)、(z7)、(z8)、(z9)および(z10)において、「*」はOA1またはOA2との結合位置を示し、「**」はX1またはX2との結合位置を示す。
【0041】
式(z1)において、rは1~10の整数を示し、好ましくは1~6の整数を示し、更に好ましくは1~5の整数を示す。
【0042】
式(z2)~式(z10)において、rは独立してそれぞれ、0~10の整数を示し、好ましくは0~6の整数を示し、更に好ましくは0~5の整数を示す。また、式(z2)~式(z10)中のそれぞれのrは同一でも、異なっていてもよい。
【0043】
式(1)中のpまたはqは、X1またはX2と結合するL1またはL2の繰り返し単位を示し、独立してそれぞれ0または1であり、0の場合は単結合を示し、X1およびX2がヒドロキシ基の場合、pおよびqは0が好ましい。
【0044】
sおよびtは、独立してそれぞれ0~8であり、かつ2≦s+t≦8である。
【0045】
X1は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アジド基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基、オキシカルバモイル基、シアノ基、シリル基、アシルオキシ基、スルホニル基またはイミド基であり、かつtが0の場合にはX1はヒドロキシ基である。
X2はヒドロキシ基である。
式(1)中のX1、X2の定義におけるヒドロキシ基とは、(-OH)で表される1価の官能基である。
【0046】
式(1)中のX1の定義におけるアルコキシ基とは、(-OR1)で表される1価の官能基である。R1は置換されていてもよい炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、ベンジル基、トリチル基またはアリル基が好ましい。
R1の炭素数は1~30が好ましく、1~20が更に好ましい。
【0047】
式(1)中のX1の定義におけるアジド基とは(-N3)で表される1価の官能基である。
式(1)中のX1の定義におけるオキシカルボニル基とは、(-COOR2)で表される1価の官能基であり、R2は置換されていてもよい炭化水素基または下式(r1)~(r3)で表される基である。置換されていてもよい炭化水素基としては、例えば炭素数1~6の直鎖状または分岐状の炭化水素基、ペンタフルオロフェニル基、p-ニトリフェニル基などが挙げられ、R2はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、ベンジル基、ペンタフルオロフェニル基、p-ニトリフェニル基または式(r1)が好ましい。
【0048】
【0049】
式(1)中のX1の定義におけるオキシカルボニルオキシ基とは、(-OCOOR3)で表される1価の官能基であり、R3は炭化水素基または下式(r1)(r4)で表される基である。R3の炭素数は1~10が好ましく、1~6が更に好ましい。R3はメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、式(r1)または式(r4)で表される基が好ましく、式(r1)または式(r4)で表される基がより好ましく、さらに好ましくは式(r1)である。
【0050】
【0051】
式(1)中のX1の定義におけるオキシカルバモイル基とは、(-NHCOOR4)で表される1価の官能基であり、R4は置換されていてもよい炭化水素基である。R4の炭素数は1~20が好ましく、1~14が更に好ましい。R4はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、ベンジル基、アリル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-(トリメチルシリル)エチル基または9-フルオレニルメチル基が好ましく、メチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、アリル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-(トリメチルシリル)エチル基または9-フルオレニルメチル基がより好ましい。
【0052】
式(1)中のX1の定義におけるシアノ基とは、(-CN)で表される1価の官能基である。
【0053】
式(1)中のX1の定義におけるシリル基とは、(-Si(R5R6R7))で表される1価の官能基である。R5~R7は炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよく、R5~R7の炭素数は1~10が好ましく、1~7が更に好ましい。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ドデシル基、オクチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基等のアルキル基、フェニル基またはベンジル基であり、シリル基の好ましい様態としては下式(r5)~(r9)で表される基である。
【0054】
【0055】
式(1)中のX1の定義におけるアシルオキシ基とは、(-OCOR8)で表される1価の官能基であり、R8は置換されていてもよい炭化水素基である。R8の炭素数は1~10が好ましく、1~6が更に好ましい。好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基である。
【0056】
式(1)中のX1の定義におけるスルホニル基とは、(-S(=O)2R9)で表される1価の官能基であり、R9はメチル基、ビニル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、p-メチルフェニル基、o-ニトロフェニル基、p-ニトロフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基またはクロロメチル基であり、好ましくはメチル基、ビニル基、トリフルオロメチル基またはp-メチルフェニル基であり、より好ましくはメチル基またはビニル基である。
【0057】
式(1)中のX1の定義におけるイミド基とは、下式(r10)、(r11)、(r12)で表される基であり、好ましくは式(r10)である。
【0058】
【0059】
式(r11)中のR10、R11、R12、R13は独立してそれぞれ水素原子または炭素数1~5の炭化水素基である。R10、R11、R12およびR13が水素原子、または、R11、R12およびR13が水素原子かつR10がメチル基、または、R10、R11およびR12が水素原子かつR13がメチル基、または、R11、R12が水素原子かつR10、R13がメチル基であることが好ましい。
【0060】
式(r11)中のY1はエーテル基、メチレン基、ジメチルビニリデン基のいずれかの基であり、これらの中でもエーテル基(すなわち酸素原子)が好ましい。
【0061】
式(r12)中のY2は水素原子または炭素数1~5の炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1~5の炭化水素基である。炭素数1~5の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0062】
式(1)中のZの定義における2~8個の水酸基を有しかつ2~21個の炭素原子を有する化合物は、Z(OH)s+tと表記される。残基Zは、化合物Z(OH)s+tからすべての(s+t個の)ヒドロキシ基を除いた残基である。
残基Zは、窒素原子および/または酸素原子を有していてよい炭化水素基であることが好ましく、窒素原子および/または酸素原子を有していてよい飽和炭化水素基であることが更に好ましい。また、この炭化水素基の炭素数は2~18であることが好ましく、2~16であることが更に好ましい。具体的には、以下の態様を例示できる。
・炭素原子および水素原子からなる炭素原子数2~21の飽和炭化水素基。
・炭素原子、水素原子および酸素原子からなる炭素原子数2~21の飽和炭化水素基。各酸素原子を介して二つの飽和炭化水素基同士がエーテル結合している。
・炭素原子、水素原子および窒素原子からなる炭素原子数2~21の飽和炭化水素基。各窒素原子を介して三つの飽和炭化水素基同士がN-C結合している。
・炭素原子、水素原子、酸素原子および窒素原子からなる炭素原子数2~21の飽和炭化水素基。各酸素原子を介して二つの飽和炭化水素基同士がエーテル結合しており、各窒素原子を介して三つの飽和炭化水素基同士がN-C結合している。
好適な実施形態においては、残基Zは、例えば群(II)に記載される式(z11)~式(z20)の残基が挙げられる。
群(II)
【0063】
【0064】
本発明の好ましい様態は式(z11)、式(z13)、式(z16)、式(z17)または式(z20)であり、より好ましい様態は式(z11)、式(z13)または式(z17)である。
【0065】
式(1)の高分子量PEG-OHの好適な様態のひとつである以下の式(4)において、式(1)中のZは式(z11)である。
【化11】
(式(4)中、a、b、L
1、L
2、p、q、s、t、X
1およびX
2は前述と同義である。)
【0066】
式(1)の高分子量PEG-OHの好適な様態のひとつである以下の式(5)において、式(1)中のZは式(z13)である。
【化12】
(式(5)中、a、b、L
1、L
2、p、q、s、t、X
1およびX
2は前述と同義である。)
【0067】
式(1)の高分子量PEG-OHの好適な様態のひとつである以下の式(6)において、式(1)中のZは式(z16)である。
【化13】
(式(6)中、a、b、L
1、L
2、p、q、s、t、X
1およびX
2は前述と同義である。)
【0068】
式(1)の高分子量PEG-OHの好適な様態のひとつである以下の式(7)において、式(1)中のZは式(z17)である。
【化14】
(式(7)中、a、b、L
1、L
2、p、q、s、t、X
1およびX
2は前述と同義である。)
【0069】
式(1)の高分子量PEG-OHの好適な様態のひとつである以下の式(8)において、式(1)中のZは式(z20)である。
【化15】
(式(8)中、a、b、L
1、L
2、p、q、s、t、X
1およびX
2は前述と同義である。)
【0070】
本発明に係る誘導体化された高分子量ポリオキシエチレン誘導体は下式(2)で表される。
【化2】
【0071】
(式(2)中、
OA1およびOA2はオキシエチレン基であり、
aおよびbは、独立してそれぞれ0~2,500であってかつa+bは200以上であり、
L1およびL2は、独立してそれぞれ、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合、エーテル結合およびチオエーテル結合から選択される結合をアルキレン鎖中又は末端に有していてもよいアルキレン基であり、前記アルキレン基は一分子中で互いに同一又は異なっていてもよく、
pおよびqは、独立してそれぞれ、0または1であり、
sおよびtは、独立してそれぞれ0~8であり、かつ2≦s+t≦8であり、
X3およびX4は、独立してそれぞれ、アルコキシ基、アジド基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基、オキシカルバモイル基、シアノ基、シリル基、アシルオキシ基、スルホニル基またはイミド基であり、
Zは、2~8個のヒドロキシ基を有しかつ2~21個の炭素原子を有する化合物からすべての前記ヒドロキシ基を除いた残基である。)
【0072】
式(2)で表される本発明の高分子量ポリオキシエチレン誘導体中の説明(詳しくはa、b、L1、L2、p、q、s、t、Z)は上述の通りであり、X3およびX4は、式(1)で表される本発明のヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物中のX1と同義である。
【0073】
本発明で使用するラベル化試薬が下式(3)で表される。
【化3】
【0074】
式(3)中のRは電子求引性基を有する有機基であり、電気求引性基とは水素原子と比較して、結合している原子側から電子を引き付けやすい置換基のことであり、例えば群(III)に記載される式(r13)~式(r49)の有機基が挙げられる。
群(III)
【化16】
【0075】
特に好ましい様態は式(r13)、(r14)、(r17)、(r19)、(r24)、(r27)、(r31)、(r33)、(r34)、(r35)、(r38)、(r40)、(r42)、(r43)、(r44)、(r45)、(r46)、(r47)、(r48)または(r49)であり、より好ましい形態は式(r13)、(r23)、(r44)、(r45)、(r46)、(r47)、(r48)または(r49)であり、さらに好ましい形態は式(r13)である。また、「***」は-(N=C=O)の窒素原子との結合位置を示す。
【0076】
本発明において、式(3)で表されるラベル化試薬は、未反応のヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物を十分にラベル化できるよう過剰量を用いれば特に使用量に制限は無いが、重溶媒中に含まれる高分子量ポリオキシエチレン化合物に対して、1~100当量用いることが好ましく、より好ましくは10~100当量、さらに好ましくは30~100当量である。
【0077】
本発明において高分子量ポリオキシエチレン化合物の分析用ラベル化試薬は式(3)で表され、式(3)の説明は上述の通りであり、1H-NMR分析に限らず、高速液体クロマトグラフィー分析等の他の分析に用いてもよい。
【実施例0078】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。高分子量PEG誘導体に含まれる高分子量PEG-OH量の定量精度を示し、なお、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
1H-NMRは、日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM-ECZ400またはJNM-ECA600)から得た。測定にはφ5mmチュ-ブを用い、重水素化溶媒には、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を含有するCDCl3を用いた。
【0079】
[実施例1:PEGカルボン酸に含まれるPEG-OHの定量性評価]
【化17】
【0080】
式(10)で表されるPEG-OH(分子量 20,000)からPEG-O-(CH2)5-COOH(分子量 20,000)を得るエーテル化反応において、未反応のPEG-OH(分子量 20,000)の定量性を以下記載の要領で添加回収試験により確認した。
【0081】
すなわち、式(10)のPEG-O-(CH2)5-COOHと同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT ME-200HC」(数平均分子量:20,185) 100mgを仕込んだスクリュー管に、式(10)のPEG-OHと同様の構造である日油社製「MEH-20T」(数平均分子量:19,689)を、日油社製「SUNBRIGHT ME-200HC」に対して0.1~1.0重量%となるよう添加し、実験1~実験4の各サンプルを得た。各サンプルに対して、重クロロホルムに溶解したトリフェニルメタン(10μg/μL)を80μL、重クロロホルムを620μLそれぞれ加え、溶解させた。その後、それぞれのサンプルにトリクロロアセチルイソシアネート(TCI品)20μLを加え、転倒混和した。転倒混和後、それぞれのサンプルを核磁気共鳴装置にて事前飽和法をPEG鎖由来プロトンピーク(3.56ppm)に適用し、逆ゲート付きデカップリングを用いた次の条件で測定した。
基準ピーク:TMS
定量用基準ピーク:トリフェニルメタン((C6H5)3-CH、5.55ppm)
目的物ピーク:-(OCH2CH2)n-OCH2
CH
2
-OCONH-COCCl3、4.42ppm
Pulse sequence:single_pulse_irrdec
減衰器:60dB
測定温度:25℃
積算回数:1024
【0082】
定量用基準ピークの積分値を0.6548とした時、下式に従い各サンプルの添加回収率を算出した。
添加回収率(%)=(目的物ピーク積分値/2)×100
添加回収率の許容範囲は±30%として添加回収可能な範囲を確認した。
【0083】
【0084】
表1に記載の通り、式(10)のPEG-O-(CH2)5-COOHに含まれるPEG-OHは、PEG-O-(CH2)5-COOHに対して少なくとも0.4重量%以上の範囲で添加回収可能、すなわち0.4重量%まで定量できることを確認した。
【0085】
[実施例2:(PEG)
2-フタルイミドに含まれる(PEG)
2-OHの定量性評価]
【化18】
【0086】
式(11)で表される(PEG)2-OH(分子量 10,000)から(PEG)2-NH2(分子量 10,000)を得る2段階反応のワンポット合成中、1段階目の(PEG)2-OHから(PEG)2-PIを得るフタルイミド化反応において、未反応の(PEG)2-OH(分子量 10,000)の定量性を、以下記載の要領で添加回収試験により確認した。
【0087】
式(11)の(PEG)2-PIと同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT 2AC-GL2-100EI」(数平均分子量:10,082) 100mgを仕込んだスクリュー管に、式(11)の(PEG)2-OHと同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT 2AC-GL2-100HO」(数平均分子量:9,975)を「SUNBRIGHT 2AC-GL2-100EI」に対して0.25~0.50重量%となるよう添加し、実験5、6の各サンプルを得た。各サンプルに対して、重クロロホルムに溶解したトリフェニルメタン(10μg/μL)を80μL、重クロロホルムを620μLそれぞれ加え、溶解させた。その後、それぞれのサンプルにトリクロロアセチルイソシアネート(TCI品)20μLを加え、転倒混和した。転倒混和後、それぞれのサンプルを核磁気共鳴装置にて事前飽和法をPEG鎖由来プロトンピーク(3.56ppm)に適用し、逆ゲート付きデカップリングを用いた次の条件で測定した。
基準ピーク:TMS
定量用基準ピーク:トリフェニルメタン((C6H5)3-CH、5.55ppm)
目的物ピーク:-CH((-OCH2CH2)n-OCOCH3)-CH
2
-OCONH-COCCl3、4.34ppm
Pulse sequence:single_pulse_irrdec
減衰器:50dB
測定温度:25℃
積算回数:256
定量用基準ピークの積分値を0.3274とした時、下式に従い各サンプルの添加回収率を算出した。
添加回収率(%)=(目的物ピーク積分値/1)×100
添加回収率の許容範囲は±30%として添加回収可能な範囲を確認した。
【0088】
【0089】
表2に記載の通り、(PEG)2-PIに含まれる(PEG)2-OHは、(PEG)2-PIに対して0.25重量%以上の範囲で添加回収可能、すなわち0.25重量%まで定量できることを確認した。
【0090】
[実施例3:PEG-O-CH
2-C
6H
5に含まれるPEG-OHの定量性評価]
【化19】
【0091】
式(12)で表される(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5から(PEG)2-O-CH2-C6H5を得る2段階反応であるワンポット合成中、2段階目の(Ms-PEG)2-O-CH2-C6H5から(PEG)2-O-CH2-C6H5を得るメトキシ化反応において、未反応の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5の定量性を、以下記載の要領で添加回収試験により確認した。
【0092】
式(12)の(PEG)2-O-CH2-C6H5と同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT GL2-200BZ」(数平均分子量:19,451) 100mgを仕込んだスクリュー管に、式(12)の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5と同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT GL2-200BH」(数平均分子量:19,859)を、「SUNBRIGHT GL2-200BZ」に対して0.1~1.0重量%となるよう添加し、実験7~10の各サンプルを得た。各サンプルに対して、重クロロホルムを700μLそれぞれ加えて溶解させた。その後、それぞれのサンプルにトリクロロアセチルイソシアネート(TCI品)20μLを加え、転倒混和した。転倒混和後、それぞれのサンプルを核磁気共鳴装置にて事前飽和法をPEG鎖由来プロトンピーク(3.56ppm)に適用し、逆ゲート付きデカップリングを用いた次の条件で測定した。
基準ピーク:TMS
定量用基準ピーク:-CH2-O-CH
2
-C6H5、4.54ppm
目的物ピーク:-((OCH2CH2)n-OCH2
CH
2
-OCONH-COCCl3)2、4.42ppm
Pulse sequence:single_pulse_irrdec
減衰器:60dB
測定温度:25℃
積算回数:1024
定量用基準ピークの積分値を2.000とした時、下式に従い各サンプルの添加回収率を算出した。
添加回収率(%)=(目的物ピーク積分値/4)×100
添加回収率の許容範囲は±30%として添加回収可能な範囲を確認した。
【0093】
【0094】
表3に記載の通り、式(12)の(PEG)2-O-CH2-C6H5に含まれる(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5は、(PEG)2-O-CH2-C6H5に対して0.2重量%以上の範囲で添加回収可能、すなわち0.2重量%まで定量できることを確認した。
【0095】
[実施例4:4arm PEG-CNに含まれる4arm PEG-OHの定量性評価
【化20】
【0096】
式(13)で表される4arm PEG-OHから4arm PEG-CNを得るシアノエチル化反応において、未反応の4arm PEG-OHの定量性を以下記載の要領で添加回収試験により確認した。
【0097】
式(13)の4arm PEG-CNと同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT PTE-200CN」(数平均分子量:20,086) 100mgを仕込んだスクリュー管に、式(13)の「4arm PEG-OH」と同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT PTE-20000」(数平均分子量:20,568)を、「SUNBRIGHT PTE-200CN」に対して0.1~1.0重量%となるよう添加し、実験11~14の各サンプルを得た。各サンプルに対して、重クロロホルムに溶解したトリフェニルメタン(10μg/μL)を80μL、重クロロホルムを620μLそれぞれ加えて溶解した。その後、それぞれのサンプルにトリクロロアセチルイソシアネート(TCI品)20μLを加え、転倒混和した。転倒混和後、それぞれのサンプルを核磁気共鳴装置にて事前飽和法をPEG鎖由来プロトンピーク(3.56ppm)に適用し、逆ゲート付きデカップリングを用いた次の条件で測定した。
基準ピーク:TMS
定量用基準ピーク:トリフェニルメタン((C6H5)3-CH、5.55ppm)
目的物ピーク:-[(OCH2CH2)n-OCH2
CH
2
-OCONH-COCCl3]4、4.42ppm
Pulse sequence:single_pulse_irrdec
減衰器:60dB
測定温度:25℃
積算回数:1024
定量用基準ピークの積分値を0.6548とした時、下式に従い各サンプルの添加回収率を算出した。
添加回収率(%)=(目的物ピーク積分値/8)×100
添加回収率の許容範囲は±30%として添加回収可能な範囲を確認した。
【0098】
【0099】
表4に記載の通り、4arm PEG-CNに含まれる4arm PEG-OHは、4arm PEG-CNに対して、0.4重量%以上の範囲で添加回収可能、すなわち0.4重量%まで定量できることを確認した。
【0100】
[実施例5:8arm PEG-VSに含まれる8arm PEG-OHの定量性評価]
【化21】
【0101】
式(14)で表される8arm PEG-OHから8arm PEG-VSを得るビニルスルホン化反応において、未反応の8arm PEG-OHの定量性を以下記載の要領で添加回収試験により確認した。
【0102】
式(14)の8arm PEG-VSと同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT HGEO-400VS」(数平均分子量:40,731) 100mgを仕込んだスクリュー管に、式(14)の8arm PEG-OHと同様の構造である日油社製「SUNBRIGHT HGEO-40000」(数平均分子量:43,573)を、「SUNBRIGHT HGEO-400VS」に対して0.1~1.0重量%となるよう添加し、実験15~18の各サンプルを得た。各サンプルに対して、重クロロホルムに溶解したトリフェニルメタン(10μg/μL)を80μL、重クロロホルムを620μLそれぞれ加え、溶解させた。その後、それぞれのサンプルにトリクロロアセチルイソシアネート(TCI品)20μLを加え、転倒混和した。転倒混和後、それぞれのサンプルを核磁気共鳴装置にて事前飽和法をPEG鎖由来プロトンピーク(3.56ppm)に適用し、逆ゲート付きデカップリングを用いた次の条件で測定した。
基準ピーク:TMS
定量用基準ピーク:トリフェニルメタン((C6H5)3-CH、ppm)
目的物ピーク:-[(OCH2CH2)n-OCH2
CH
2
-OCONH-COCCl3]8、ppm
Pulse sequence:single_pulse_irrdec
減衰器:60dB
測定温度:25℃
積算回数:1024
定量用基準ピークの積分値を1.3096とした時、下式に従い各サンプルの添加回収率を算出した。
添加回収率(%)=(目的物ピーク積分値/16)×100
添加回収率の許容範囲は±30%として添加回収可能な範囲を確認した。
【0103】
【0104】
表5に記載の通り、式(14)の8arm PEG-VSに含まれる8arm PEG-OHは、8arm PEG-VSに対して0.2重量%以上の範囲で添加回収可能、すなわち0.2重量%まで定量できることを確認した。
【0105】
[比較例1:(PEG)2-O-CH2-C6H5に含まれる(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5の定量性評価]
実施例3で示した(Ms-PEG)2-O-CH2-C6H5から(PEG)2-O-CH2-C6H5を得る2段階目のメトキシ化工程において、未反応の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5を、特許文献1に記載の方法によって、以下記載の要領で添加回収試験により定量性を確認した。特許文献1記載の方法は、すなわち塩化メタンスルホニルをラベル化試薬とした方法である。
【0106】
(PEG)2-O-CH2-C6H5相当品である日油社製「SUNBRIGHT GL2-200BZ」(数平均分子量:19,451) 100mgを仕込んだスクリュー管に、(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5を塩化メタンスルホニルでラベル化した(Ms-PEG)2-O-CH2-C6H5相当品である日油社製「SUNBRIGHT 2MS-GL2-200BZ」(数平均分子量:19,607)を「SUNBRIGHT GL2-200BZ」に対して0.1~2.0重量%となるよう添加し、実験19~22の各サンプルを得た。各サンプルに対して、重クロロホルムを700μLそれぞれ加えて溶解させた後、それぞれのサンプルを核磁気共鳴装置にて次の条件で測定した。
事前飽和法や逆ゲート付きデカップリングは適用していない。
基準ピーク:TMS
定量用基準ピーク:-CH2-O-CH
2
-C6H5、4.54ppm
目的物ピーク:-((OCH2CH2)n-O-S(=O)2-CH
3
)2、3.00ppm
Pulse sequence:single_pulse
測定温度:25℃
積算回数:128
定量用基準ピークの積分値を2.000とした時、下式に従い各サンプルの添加回収率を算出した。
添加回収率(%)=(目的物ピーク積分値/6)×100
添加回収率の許容範囲は±30%として添加回収可能な範囲を確認した。
【0107】
【0108】
表6に記載の通り、(PEG)2-O-CH2-C6H5に含まれる(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5は、(PEG)2-O-CH2-C6H5に対して0.2重量%まで定量できることを確認できた。すなわち、(PEG)2-O-CH2-C6H5に含まれる未反応の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5は、0.2重量%以上の範囲で添加回収可能、すなわち0.2重量%まで定量できた。これは、実施例3で示した定量性と同等であり、本発明に係る分析法が既報と同等の定量精度であることが示された。
【0109】
[実施例6:本発明における製造時間の評価]
特許文献1に記載の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5から(PEG)2-O-CH2-C6H5を得る2段階反応であるワンポット合成において、反応工程の完了確認のために本発明に係る分析法を用いた場合に要する製造時間について、下記要領にて評価した。
【0110】
すなわち、特許文献1の実施例16-4に従い、(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5(200g)を原料として、9時間かけて2回目のアルキルエーテル化まで実施した後、本発明に係る分析法、すなわち、下記要領で反応工程の完了を確認した。
【0111】
反応溶液を5mLサンプリングして、析出物を吸引ろ過にてろ別除去した。得られたろ液に酢酸エチル100mLを加え、5分間窒素雰囲気下で撹拌した。その後、ヘキサン100mLを加え、10分間撹拌して結晶を析出させた後、吸引ろ過にて結晶を回収した。
【0112】
回収した結晶を1時間減圧乾燥して得られた乾固物のうち100mgを重クロロホルム0.7mLに溶解した。ここにトリクロロアセチルイソシアネート20μLを添加し、転倒混和した。後、実施例3と同じ測定条件の1H-NMR分析にて未反応の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5量を確認し、反応が完了していることを確認した。
【0113】
反応溶液のサンプリングから3時間かけた分析にて、未反応の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5量が0.2%以下であることを確認した後、特許文献1の実施例16-4に従い、6時間かけて水洗、脱水および晶析を行った後、8時間減圧乾燥して、総製造時間26時間で(PEG)2-O-CH2-C6H5を得た。
【0114】
[比較例2:従来法における製造時間の評価]
特許文献1に記載の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5から(PEG)2-O-CH2-C6H5を得る2段階反応であるワンポット合成において、反応工程の完了確認のために塩化メタンスルホニルをラベル化試薬として使用して未反応の場合に、(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5量を確認する製造時間について下記要領にて評価した。
【0115】
特許文献1の実施例16-4に従い、(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5(200g)を原料として、9時間かけて2回目のアルキルエーテル化まで実施した後、特許文献1の実施例27に記載の方法、すなわち下記要領で反応工程の完了を確認した。
【0116】
反応溶液を20mLサンプリングして、析出した塩化物を吸引ろ過にてろ別除去した。得られたろ液に酢酸エチル300mLを加え、5分間窒素雰囲気下で撹拌した。その後、ヘキサン300mLを加え、30分間撹拌して結晶を析出させた後、吸引ろ過にて結晶を回収した。
【0117】
回収した結晶を5時間減圧乾燥して得られた乾固物のうち3.0gを丸底フラスコに仕込んだ後、トルエン100gを加えて1時間加熱還流してトルエン50gと水分を共沸除去した。室温へ冷却後、トリエチルアミン0.095gを加えて40℃に加温、塩化メタンスルホニル0.054gを添加し、40℃で3時間反応させた。反応終了後、析出した塩化物を吸引ろ過にてろ別除去した。得られたろ液に酢酸エチル100mLを加え、5分間窒素雰囲気下で撹拌した。その後、ヘキサン100mLを加え、10分間撹拌して結晶を析出させた後、吸引ろ過にて結晶を回収した。
【0118】
回収した結晶を6時間減圧乾燥して得られた結晶のうち20mgを重クロロホルム0.7mLに溶解し、比較例1と同じ測定条件の1H-NMR分析にて未反応の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5量を確認し、反応が完了していることを確認した。
【0119】
反応溶液のサンプリングから17時間かけた分析にて、未反応の(HO-PEG)2-O-CH2-C6H5量が0.2%以下であることを確認した後、特許文献1の実施例16-4に従い、6時間かけて水洗、脱水および晶析を行った後、8時間減圧乾燥して、総製造時間40時間で(PEG)2-O-CH2-C6H5を得た。
すなわち、実施例6と比較して14時間長い製造時間を要した。
【0120】
以上のことから本発明は、従来法と比較して十分に生産時間を短縮できることが示された。
本発明によればヒドロキシ基を有する高分子量ポリオキシエチレン化合物を原料としてヒドロキシ基を誘導体化して高分子量ポリオキシエチレン誘導体を得る生産において、工程分析にかかる時間を短縮し、総製造時間を短縮することができる。