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特開2023-133200プライマー組成物及び外装材の補修方法
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  • 特開-プライマー組成物及び外装材の補修方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133200
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】プライマー組成物及び外装材の補修方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 123/26 20060101AFI20230914BHJP
   E04D 5/06 20060101ALI20230914BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20230914BHJP
   C08L 27/04 20060101ALI20230914BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20230914BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230914BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C09D123/26
E04D5/06 B
C08L23/26
C08L27/04
C08L23/28
C09D5/00 D
E04G23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033535
(22)【出願日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2022037319
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和也
(72)【発明者】
【氏名】丸子 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中澤 歩三男
【テーマコード(参考)】
2E176
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
2E176BB04
4J002BB091
4J002BB111
4J002BB201
4J002BB242
4J002BD182
4J002GC00
4J002GJ00
4J002GL00
4J038CB171
4J038CB181
4J038MA07
4J038NA12
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】屋外暴露によって表面の劣化が進行したポリオレフィン材に対する接着性能を十分に高める。
【解決手段】表面が屋外暴露されたポリオレフィン材4に塗布されて当該ポリオレフィン材4の表面にプライマー層10を形成するプライマー組成物は、酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンを含有している。酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が屋外暴露されたポリオレフィン材に塗布されて当該ポリオレフィン材の表面にプライマー層を形成するプライマー組成物であって、
酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンを含有し、
前記酸変性ポリオレフィンと前記塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内であることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のプライマー組成物において、
前記酸変性ポリオレフィンが無水マレイン酸で変性していることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項3】
表面が屋外暴露されたポリオレフィン材からなる外装材の補修方法であって、
酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンを含有し、前記酸変性ポリオレフィンと前記塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内とされたプライマー組成物を前記外装材の表面に塗布してプライマー層を形成した後、
前記プライマー層に接着剤を介して別の新たな外装材を貼り合わせることを特徴とする外装材の補修方法。
【請求項4】
表面が屋外暴露されたポリオレフィン材からなる外装材の補修方法であって、
酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンを含有し、前記酸変性ポリオレフィンと前記塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内とされたプライマー組成物を前記外装材の表面に塗布してプライマー層を形成した後、
前記プライマー層に塗料を塗布することにより、別の新たな外装材を形成することを特徴とする外装材の補修方法。
【請求項5】
表面が屋外暴露されたポリオレフィン材からなる外装材の補修方法であって、
表層がポリオレフィン材からなる断熱材を設置し、
酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンを含有し、前記酸変性ポリオレフィンと前記塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内とされたプライマー組成物を前記断熱材の表面に塗布してプライマー層を形成した後、
前記プライマー層に接着剤を介して別の新たな外装材を貼り合わせることを特徴とする外装材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリオレフィン材に用いられるプライマー組成物及びプライマー組成物を用いた外装材の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ポリオレフィン樹脂塗装用プライマーとして、プロピレンとエチレンあるいは所定の炭素数のα-オレフィンとの共重合体を極性基含有不飽和化合物で変性した変性ポリマーを含むものが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、酸変性ポリオレフィンを含有するプライマー組成物から形成されたプライマーコート層を有する積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4974484号公報
【特許文献2】特許第6465038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オレフィン系エラストマーは、一般的にポリプロピレンの中に、エチレン-プロピレンゴムを微分散させた熱可塑性エラストマーであり、耐熱性や耐寒性に優れていることから、建築分野では防水シートを含む建築部品等に広く用いられている。防水シートにおいては、長期間屋外曝露された場合、表面の劣化が進行してしまうことで漏水に至るケースがあり、補修が必要になる。
【0006】
しかし、オレフィン系エラストマーは無極性であることから、極性の高い材料との親和性がほとんどない。そのため、オレフィン系エラストマーからなる防水シートを塗装やシーリング材で補修することは困難であった。
【0007】
例えば、オレフィン系エラストマーからなる防水シートが屋外暴露で劣化した場合に、塗膜防水による補修工法を適用することが考えられる。塗膜防水による補修工法では、一般的にウレタン防水が行われるが、下地であるオレフィン系エラストマーが上述したように無極性であるため、プライマーの使用が必須である。しかしながら、長期間屋外曝露されたオレフィン系エラストマーからなる防水シートは表面の組成が変化しており、また施工現場による表面劣化のバラつきが大きいため、市販されているオレフィン用プライマーを使用したとしても十分な接着性能が得られるか否か不明であった。
【0008】
また、例えば上記特許文献に開示されているように、オレフィン系エラストマーに対する接着性を高めるプライマーとしてマレイン酸やその他の化合物で変性したポリオレフィンを用いることが可能であるが、上記のような長期間の屋外曝露によって表面組成が変化し、且つ劣化度合いが施工現場ごとに異なる防水シートに対して用いる場合に実用的な接着性能が得られるか否か不明であった。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、屋外暴露によって表面の劣化が進行したポリオレフィン材に対する接着性能を十分に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、表面が屋外暴露されたポリオレフィン材に塗布されて当該ポリオレフィン材の表面にプライマー層を形成するプライマー組成物を前提とすることができる。このプライマー組成物は、酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンを含有している。酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンの配合比を95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内で設定できる。酸変性ポリオレフィンは無水マレイン酸で変性していてもよい。
【0011】
すなわち、屋外暴露によって表面の劣化が進み、施工現場ごとに様々な劣化度合いになっているポリオレフィン材であっても、上記プライマー層を当該ポリオレフィン材の表面に形成することで、例えばニトリルゴム系接着剤若しくはウレタンコーキング材等の上塗り剤を用いて被接着物を十分な強度で接着することが可能になる。
【0012】
また、表面が屋外暴露されたポリオレフィン材からなる外装材の補修方法を前提とすることもできる。この場合、前記プライマー組成物を外装材の表面に塗布してプライマー層を形成した後、プライマー層に接着剤を介して別の新たな外装材を貼り合わせてもよいし、プライマー層に塗料を塗布することにより、別の新たな外装材を形成してもよい。
【0013】
すなわち、例えば外装材が屋上防水シートであったと仮定した場合、屋上防水シートが劣化すると、ビスによる機械的固定工法を用いた補修や、塗膜防水による補修工法等を適用することが考えられる。機械的固定工法では固定ディスク等を用いて屋上防水シートを屋根下地に固定することになるが、この固定ディスクをビスで固定する際、金属下地の乾式屋根のように、屋根直下に天井板が設置されていない建物を対象とする場合、ビスをねじ込んだときに生じる切粉が屋内に落下するため、機械固定工法による補修が困難なことがある。
【0014】
これに対し、本構成によれば、プライマー層に接着剤を介して別の新たな外装材を貼り合わせることや、プライマー層に塗料を塗布することにより別の新たな外装材を形成することによって新たな防水層を設けることができるので、機械固定工法を用いることなく、防水層の補修を行うことができる。尚、外装材は、上記屋上防水シートに限られるものではなく、各種建築物の外側に設置される部材であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、屋外暴露によって表面の劣化が進行した様々なポリオレフィン材に対する接着性能を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に係る外装材の補修方法を使用して補修した屋根の断面斜視図である。
図2】実施形態1の変形例に係る外装材の補修方法を使用して補修した屋根の断面斜視図である。
図3】実施形態2に係る外装材の補修方法を使用して補修した屋根の断面斜視図である。
図4】実施形態2の変形例に係る外装材の補修方法を使用して補修した屋根の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る外装材の補修方法を使用して補修した屋根1の断面を示すものである。補修前の屋根1は、屋根下地2と、屋根下地2の上に設置されるパネル材3と、屋上防水シート4とを備えている。屋根下地2は、例えば金属板を折り曲げ成形してなる金属下地、コンクリート製の下地、木造の下地等、どのような素材、構造であってもよい。本例では、屋根下地2の周囲に立ち上がり部2aが形成されているが、この立ち上がり部2aは省略してもよい。立ち上がり部2aが形成されている場合、立ち上がり部2aの内側にもパネル材3を設置することができる。パネル材3は、例えば断熱材等を挙げることができる。
【0019】
屋上防水シート4は外装材に相当する部材であり、ポリオレフィン材からなる。屋上防水シート4はパネル材3の全面を被覆するように設けられている。屋上防水シート4によって既存の防水層が形成されている。屋上防水シート4を構成しているポリオレフィン材は、ポリプロピレンの中に、エチレン-プロピレンゴムを微分散させた熱可塑性エラストマーである。
【0020】
屋上防水シート4は長期間継続して屋外に暴露されるので、紫外線等によって表面の劣化が進行する。例えば、施工後、10年またはそれ以上屋外暴露されることで、漏水に至る程度まで屋上防水シート4の表面の劣化が進行することがある。そこで、漏水に至るまでに、屋上防水シート4の補修を行う必要があるが、塗膜防水による補修工法を適用する場合、従来の市販されているプライマーを用いても実用的な接着性能が得られるか否か不明であった。すなわち、屋上防水シート4の表面の劣化度合いは建物ごとに大きく異なるとともに、同一の建物であっても部位ごとに異なっている。また、建物の場所、地域、周辺環境等によっても、屋上防水シート4の表面の劣化度合いは異なっている。このように表面の劣化度合いは様々な要因によって異なり、バラつきが大きいため、従来の市販されているプライマー組成物による接着効果は大きくバラついてしまうおそれがある。
【0021】
本実施形態1では、表面が屋外暴露されたポリオレフィン材である屋上防水シート4の表面に塗布されて屋上防水シート4の表面にプライマー層を形成するプライマー組成物が、酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンを含有している。酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸で変性しているものを用いることができる。そして、酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内に設定されている。つまり、酸変性ポリオレフィンの含有量は、95重量部以上80重量部以下の範囲内で設定され、塩素化ポリオレフィンの含有量は、5重量部以上20重量部以下の範囲内で設定されている。
【0022】
酸変性ポリオレフィンは、例えば日本製紙社製の「アウローレン200S」等を用いることができるが、これに限られるものではない。塩素化ポリオレフィンは、例えば日本製紙社製の「スーパークロン803MWS」等を用いることができるが、これに限られるものではない。酸変性ポリオレフィン及び塩素化ポリオレフィンを溶剤によって溶解させることでプライマー組成物を得ることができる。溶剤としては、芳香族炭化水素類として、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を挙げることができ、またケトン系として、例えばメチルエチルケトン等を挙げることができる。また、プライマー組成物には、例えば粘着付与剤、劣化防止剤等が含まれていてもよい。
【0023】
酸変性ポリオレフィンとしては、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性塩素化ポリエチレン等の中から任意の1種または任意の2種以上を組合わせたものを挙げることができる。日本製紙社製の「アウローレン200S」の他、「アウローレン150S」、「アウローレン350S」、「アウローレン353S」、「ハードレンCY-9122P」、「ハードレンCY-9124P」、「ハードレンHM-21P」、「ハードレンM-28P」、「ハードレンF-2P」、「ハードレンF-6P」等を酸変性ポリオレフィンとして使用できる。
【0024】
塩素化ポリオレフィンとしては、例えば塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン酢酸ビニル、酸変性塩素化ポリエチレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレン等の中から任意の1種または任意の2種以上を組合わせたものを挙げることができる。日本製紙社製の「スーパークロン803MWS」の他、「スーパークロンC」、「スーパークロンL-206」、「スーパークロン813A」、「スーパークロン803M」、「スーパークロン1026」、「スーパークロン803L」、「スーパークロン814HS」、「スーパークロン390S」、「スーパークロンB」、「スーパークロンBX」、「ハードレン13-LP」、「ハードレン13-LLP」、「ハードレン14-LWP」、「ハードレン15-LP」、「ハードレン15-LLP」、「ハードレン16-LP」、「ハードレンDX-526P」等を塩素化ポリオレフィンとして使用できる。
【0025】
補修の際には、図1に示すように、上記プライマー組成物を屋上防水シート4の表面に塗布してプライマー層10を形成した後、プライマー層10に接着剤11(図1に斜線で示す)を介して別の新たな外装材12を貼り合わせる。新たな外装材12は、屋上防水シート4と同様なポリオレフィン材からなる外装材であってもよいし、屋上防水シート4とは異なる材料からなる外装材であってもよい。接着剤11としては、例えばニトリルゴム系接着剤等を挙げることができる。接着剤11は、プライマー層10に塗布してもよいし、新たな外装材12の裏面に塗布してもよい。接着剤11の例として、ニトリル系接着剤、CR系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等を挙げることができる。外装材12の例として、塩化ビニル製シート、加硫ゴム性シート、オレフィン系シート(但しシート裏面にもプライマー塗布を要する)等を挙げることができる。
【0026】
また、図2に示す変形例のように、上記プライマー組成物を屋上防水シート4の表面に塗布してプライマー層10を形成した後、プライマー層10に塗料を塗布することにより、別の新たな外装材13(図2に斜線で示す)を形成してもよい。この場合、プライマー層10に塗布した塗料が硬化することで新たな外装材13となる。塗料の例として、例えばウレタン系、アクリル系、アクリルウレタン系の塗料を用いることができる。
【0027】
(実施形態2)
図3及び図4は、本発明の実施形態2に係る屋根1を示すものである。実施形態2では、断熱材30が新規に施工されており、新規に施工された断熱材30にプライマー層10を形成した後、新たな外装材12を形成する点で実施形態1とは異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0028】
断熱材30は、屋根下地2の上に直接、もしくは図1に示す屋上防水シート4(図3及び図4では省略している)に対して円盤状の固定金具20を用い、ビス又はアンカー21によって屋根下地2に固定されている。
【0029】
上記プライマー組成物を上記断熱材30の表面に塗布してプライマー層10を形成した後、プライマー層10に接着剤11(図3に斜線で示す)を介して別の新たな外装材12を貼り合わせる。新たな外装材12は、屋上防水シート4と同様なポリオレフィン材からなる外装材であってもよいし、屋上防水シート4とは異なる材料からなる外装材であってもよい。接着剤11としては、例えばニトリルゴム系接着剤等を挙げることができる。接着剤11は、プライマー層10に塗布してもよいし、新たな外装材12の裏面に塗布してもよい。接着剤11の例として、例えばニトリル系接着剤、CR系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等を挙げることができる。外装材12の例として、例えば、塩化ビニル製シート、加硫ゴム性シート、オレフィン系シート(但しシート裏面にもプライマー塗布を要する)等を挙げることができる。
【0030】
上記断熱材30は図4に示すように表層30aとして、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン材からなる層が設けられている。ポリオレフィン材からなる表層30aは当該ポリオレフィン材を発泡させたものでもよいし、未発泡のものでもよい。発泡させたものにすることで、重量が軽くなるので運搬や取り扱いがしやすく、また、施工する際に発生する切断等の作業が容易となる。一方、未発泡のものにすることで、発泡させたものと比べると上述したような作業性は劣るが、未発泡の層は硬いので、外装材12の施工後に歩行したりする用途に適している。
【0031】
上記ポリオレフィン材からなる表層30aの下層となる断熱層30bは、断熱性能を鑑みて、例えばポリスチレンフォームやポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム等が望ましい。また、ポリオレフィン層材からなる層30aと断熱層30bは接着剤で接着、または熱により融着されて一体化されている。
【実施例0032】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
酸変性ポリプロピレン(商品名「アウローレン200S」日本製紙社製)95重量部と、塩素化ポリオレフィン(商品名「スーパークロン803MWS」日本製紙社製)5重量部とを固形分5%になるようトルエンにて溶解して得られたプライマー組成物を実施例1とする。
【0034】
(実施例2)
酸変性ポリプロピレン(商品名「アウローレン200S」日本製紙社製)90重量部と、塩素化ポリオレフィン(商品名「スーパークロン803MWS」日本製紙社製)10重量部とを固形分5%になるようトルエンにて溶解して得られたプライマー組成物を実施例2とする。
【0035】
(実施例3)
酸変性ポリプロピレン(商品名「アウローレン200S」日本製紙社製)85重量部と、塩素化ポリオレフィン(商品名「スーパークロン803MWS」日本製紙社製)15重量部とを固形分5%になるようトルエンにて溶解して得られたプライマー組成物を実施例3とする。
【0036】
(実施例4)
酸変性ポリプロピレン(商品名「アウローレン200S」日本製紙社製)80重量部と、塩素化ポリオレフィン(商品名「スーパークロン803MWS」日本製紙社製)20重量部とを固形分5%になるようトルエンにて溶解して得られたプライマー組成物を実施例4とする。
【0037】
実施例1~4以外にも、酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内となるように調整して他の実施例を構成することができる。他の実施例も実施例1~4と同様な作用効果を発揮する。
【0038】
(比較例1)
酸変性ポリプロピレン(商品名「アウローレン200S」日本製紙社製)100重量部を固形分5%になるようトルエンにて溶解して得られたプライマー組成物を比較例1とする。「アウローレン200S」は、無水マレイン酸で変性している。
【0039】
(比較例2)
塩素化ポリオレフィン(商品名「スーパークロン803MWS」日本製紙社製)100重量部を固形分5%になるようトルエンにて溶解して得られたプライマー組成物を比較例2とする。
【0040】
(比較例3)
酸変性ポリプロピレン(商品名「アウローレン200S」日本製紙社製)70重量部と、塩素化ポリオレフィン(商品名「スーパークロン803MWS」日本製紙社製)30重量部とを固形分5%になるようトルエンにて溶解して得られたプライマー組成物を比較例3とする。
【0041】
(比較例4)
酸変性ポリプロピレン(商品名「アウローレン200S」日本製紙社製)60重量部と、塩素化ポリオレフィン(商品名「スーパークロン803MWS」日本製紙社製)40重量部とを固形分5%になるようトルエンにて溶解して得られたプライマー組成物を比較例4とする。
【0042】
(接着性試験)
接着性試験の前段階として、紫外線照射処理を施していないポリプロピレン樹脂板と、熱可塑性ポリオレフィンシート(商品名「ハイタフシートEG」 三晃金属社製)からなる下地材料(外装材に相当)と、紫外線照射機(「メタルウェザー」ダイプラ・ウィンテス社製)による紫外線照射処理を施したポリプロピレン樹脂板及び下地材料とを準備した。
【0043】
その後、紫外線照射機からポリプロピレン樹脂板の表面及び下地材料の表面に対して紫外線を照射してポリプロピレン樹脂板の表面及び下地材料の表面を劣化させた。これは屋外暴露された表面を再現するためであり、例えば10年程度屋外暴露された場合の標準的な劣化度合いを再現できる。劣化したポリプロピレン樹脂板の表面及び下地材料の表面に対し、それぞれ、実施例1~4のプライマー組成物を刷毛塗りにより薄く塗布し、乾燥させてプライマー層を形成し、接着性試験用の試験体とした。また、劣化していないポリプロピレン樹脂板及び下地材料も用意し、劣化していないポリプロピレン樹脂板の表面及び下地材料の表面に対しても同様に実施例1~4のプライマー層を形成し、接着性試験用の試験体とした。
【0044】
また、同様に、劣化したポリプロピレン樹脂板の表面及び下地材料の表面に対し、比較例1~4のプライマー組成物を刷毛塗りにより薄く塗布し、乾燥させてプライマー層を形成し、接着性試験用の試験体とした。また、劣化していないポリプロピレン樹脂板の表面及び下地材料の表面に対しても同様に比較例1~4のプライマー層を形成し、接着性試験用の試験体とした。
【0045】
接着性試験1では、上記のようにしてプライマー層を形成したポリプロピレン樹脂板(実施例1~4の4枚と、比較例1~4の4枚の計8枚)に対して、それぞれ、碁盤目接着性試験により接着性を評価した。接着性試験1の試験結果を表1及び表2に示す。碁盤目接着性試験はJIS K5600に準拠し、試験体をカッターの刃で1mm間隔の縦横6本ずつ切れ目を入れて25個の碁盤目を作り、粘着テープ(商品名「ポリエステル粘着テープNo.31B」日東電工社製)をよく密着させた後、60°に近い角度で手前方向に急激に剥がし、剥離せずに残存したマス目数(X)をX/25で表示し、試験体の状態を分類で表示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1、2中、「未劣化PP」は劣化していないポリプロピレン樹脂板を試験体として用いた場合であり、「劣化PP」は紫外線の照射によって劣化させたポリプロピレン樹脂板を試験体として用いた場合である。また、「未劣化下地」は劣化していない熱可塑性ポリオレフィンシートを試験体として用いた場合であり、「劣化下地」は紫外線の照射によって劣化させた熱可塑性ポリオレフィンシートを試験体として用いた場合である。また、比較例3、4は塗膜を形成できなかった。
【0049】
接着性試験2では、熱可塑性ポリオレフィンシートの未劣化のものと、熱可塑性ポリオレフィンシートの劣化のものに対して、ウレタンコーキング材(商品名「オートン超耐シーラー TF2000」オート化学工業社製)を用いて接着性を評価した。接着性試験2の試験結果を上記表1及び表2に示す。各ポリプロピレン樹脂板が有するプライマー層にウレタンコーキング材を塗布し、その後、ウレタンコーキング材が十分に硬化したことを確認した後、ウレタンコーキング材を熱可塑性ポリオレフィンシートから剥離させた際の接着状態を観察した。ウレタンコーキング材の材料破壊を「○」、ウレタンコーキング材の一部材料破壊を「△」、完全な界面剥離を「×」とする。
【0050】
表1に示されるように、実施例1~4の場合(酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内にある場合)、下地材料の劣化有無に関わらず接着性が良好である。すなわち、碁盤目接着性試験でのマスの剥離が全く無く、またウレタンコーキング材は下地材料との界面剥離が全く生じることが無い。
【0051】
また、表2に示されるように、比較例1~4の場合、下地材料の種類及び下地材料の劣化度合いの影響を受け易いことが分かる。特に無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含有していない、若しくは配合割合が70重量部以下になると、接着性の低下が顕著に現れる。
【0052】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、表面が屋外暴露されたポリオレフィン材に塗布されて当該ポリオレフィン材の表面にプライマー層を形成するプライマー組成物として、酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンとを含有しており、酸変性ポリオレフィンと塩素化ポリオレフィンの配合比が、95重量部:5重量部~80重量部:20重量部の範囲内であるので、屋外暴露によって表面の劣化が進行した様々なポリオレフィン材に対する接着性能を十分に高めることができる。また、ポリオレフィン材に対する接着性能だけでなく、ポリプロピレンに対する接着性能も十分に高めることができる点で汎用性が極めて広い。
【0053】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明は、例えば表面が屋外暴露されたポリオレフィン材にプライマー層を形成する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 屋根
2 屋根下地
3 パネル材
4 屋上防水シート
10 プライマー層
11 接着剤
12 外装材
図1
図2
図3
図4