(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133219
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両制動方法、車両、データ処理システム及び媒体
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20230914BHJP
B60T 8/96 20060101ALI20230914BHJP
B60T 17/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B60T7/12 D
B60T8/96
B60T17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035112
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】202210226543.X
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521254764
【氏名又は名称】北京図森智途科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】李賢斌
(72)【発明者】
【氏名】王楽天
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049BB01
3D049CC01
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両制動方法、車両、データ処理システム及び媒体を開示する。
【解決手段】車両は、主制動システム、駐車ブレーキ、補助高圧ガス貯蔵タンク及びリターダを含み、方法は、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断することと、現在気圧値が予め設定された気圧値に達していないことに応答して、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を加圧するように制御することと、主制動システムが故障し、且つ現在気圧値が予め設定された気圧値に達することに応答して、車両の減速度信号に基づいて駐車ブレーキとリターダのブレーキトルクをそれぞれ制御し、車両を制動制御することと、を含む。本実施例は、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を予備加圧し、リターダの応答時間を効果的に短縮し、リターダと駐車ブレーキの複合減速によって、急ブレーキによる不安定性を効果的に低下させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制動方法であって、前記車両は、主制動システム、駐車ブレーキ、補助高圧ガス貯蔵タンク及びリターダを含み、前記方法は、
前記補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断することと、
前記現在気圧値が予め設定された気圧値に達していないことに応答して、前記補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を加圧するように制御することと、
前記主制動システムが故障し、且つ前記現在気圧値が予め設定された気圧値に達することに応答して、車両の減速度信号に基づいて前記駐車ブレーキの第1ブレーキトルクと前記リターダの第2ブレーキトルクをそれぞれ制御し、前記車両を制動制御することと、を含む、
車両制動方法。
【請求項2】
前記主制動システムは主コントローラを含み、前記補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断することは、具体的には、
前記主コントローラの減速度信号に応答して、前記現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両はセンサシステムを更に含み、前記方法は、
前記センサシステムによって収集された車両動作パラメータを取得することと、
前記減速度信号と車両動作パラメータに基づいて、前記主制動システムが故障したか否かを判断することと、を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の前記減速度信号と車両動作パラメータに基づいて、前記主制動システムが故障したか否かを判断することは、
前記減速度信号に基づいて減速度期待値を決定することと、
前記車両動作パラメータに基づいて現在減速度値を決定することと、
前記減速度期待値と前記現在減速度値との差分を決定することと、
前記差分の絶対値が予め設定された差分の閾値より大きい場合、前記車両の主制動システムが故障したことを決定することと、を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記車両の減速度信号に基づいて前記駐車ブレーキの第1ブレーキトルクとリターダの第2ブレーキトルクをそれぞれ制御することは、
前記減速度信号に基づいて減速度期待値を決定することと、
前記減速度期待値に基づいて前記第1ブレーキトルクと第2ブレーキトルクをそれぞれ制御することと、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リターダは流体式リターダであり、前記の前記減速度期待値に基づいて前記第1ブレーキトルクと第2ブレーキトルクをそれぞれ制御することは、
前記流体式リターダの作動状態を確立するために前記補助高圧ガス貯蔵タンクを制御し、前記第2ブレーキトルクを制御することを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の前記減速度期待値に基づいて前記第1ブレーキトルクと第2ブレーキトルクをそれぞれ制御することは、
前記減速度期待値に基づいて、前記補助高圧ガス貯蔵タンクと前記駐車ブレーキの駐車ガス貯蔵タンクが前記第1ブレーキトルクを交互に調整するように制御することを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記の前記減速度期待値に基づいて前記第1ブレーキトルクと第2ブレーキトルクをそれぞれ制御することは、
前記第2ブレーキトルクと前記第1ブレーキトルクの和が前記減速度期待値に対応する第3ブレーキトルクに達すると共に、前記第2ブレーキトルクが前記リターダが提供できる最大ブレーキトルクに達していないことに応答して、前記第2ブレーキトルクの増加及び前記第1ブレーキトルクの減少を制御し、前記第2ブレーキトルクと前記第1ブレーキトルクの和を一定に保持することを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記リターダは流体式リターダであり、前記の前記減速度期待値に基づいて前記第1ブレーキトルクと第2ブレーキトルクをそれぞれ制御することは、
前記流体式リターダの作動状態を確立するために前記補助高圧ガス貯蔵タンクを制御し、前記第2ブレーキトルクを調整することと、
前記減速度期待値に基づいて、前記補助高圧ガス貯蔵タンクが前記第1ブレーキトルクを調整するように制御することと、
前記第2ブレーキトルクと前記第1ブレーキトルクの和が前記減速度期待値に対応する第3ブレーキトルクに達すると共に、前記第2ブレーキトルクが前記流体式リターダが提供できる最大ブレーキトルクに達していないことに応答して、前記第2ブレーキトルクの増加及び前記第1ブレーキトルクの減少を制御し、前記第2ブレーキトルクと前記第1ブレーキトルクの和を一定に保持することと、を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項10】
主制動システム、冗長コントローラ、駐車ブレーキ、リターダ及び補助高圧ガス貯蔵タンクを含む車両であって、
前記冗長コントローラは、前記主制動システム、前記駐車ブレーキ、前記リターダ及び前記補助高圧ガス貯蔵タンクにそれぞれ接続され、前記補助高圧ガス貯蔵タンクは前記駐車ブレーキに接続される、
車両。
【請求項11】
前記駐車ブレーキは、補助高圧ガス貯蔵タンク、駐車ガス貯蔵タンクにそれぞれ接続されたエアポンプと、駐車ガス貯蔵タンクとを含む、
請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記リターダは流体式リターダであり、前記流体式リターダは、前記冗長コントローラの命令を受信し、前記命令に基づいて前記流体式リターダの作動状態を確立するための前記補助高圧ガス貯蔵タンクに接続される、
請求項10に記載の車両。
【請求項13】
前記冗長コントローラは、請求項1~9の何れか1項に記載の車両制動方法を実行するために用いられる、
請求項10に記載の車両。
【請求項14】
データ処理システムであって、
前記システムはプロセッサとメモリとを含み、
前記メモリは、1つ又は複数のプログラムを記憶するために用いられ、前記1つ又は複数のプログラムは前記プロセッサにより実行され、請求項1~9の何れか1項に記載の車両制動方法を実現する、
データ処理システム。
【請求項15】
コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、当該プログラムがプロセッサにより実行される時に、請求項1~9の何れか1項に記載の車両制動方法を実現する、
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施例は、車両制御分野に関し、特に車両制動方法、車両、データ処理システム及び媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベルの自動運転システムは、人間の運転者への依存性を減らし、能動的に車両自体と外部の突発的な安全状況に効果的に対応することができる。バイワイヤシステム(X by wire)に基づいて、自動運転車両が完全な制御リンクを形成するため、車両のコントローラは、車両データバスによってアクセル、ステアリング及びブレーキなどを制御することができる。従来の機械的制御又は有人運転のバイワイヤシステムと比べ、機能的安全性では、設計者が自動運転車両の特徴についてバイワイヤシステムを冗長設計することが求められ、それにより、主制動システムが故障した場合でも、車両は依然として冗長制動システムによって安全な走行又は安全な駐車を保証することができる。従って、制動システムの信頼性と安全性を向上させるために、車両のブレーキシステムに如何に冗長設計を提供するかは、緊急の問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらを鑑み、本開示は、リターダの応答時間を短縮すると共に、急ブレーキによる不安定性を効果的に減少させる車両制動方法、車両、データ処理システム及び媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、車両制動方法を提供し、車両は、主制動システム、駐車ブレーキ、補助高圧ガス貯蔵タンク及びリターダを含み、当該車両制動方法は、
補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断することと、
現在気圧値が予め設定された気圧値に達していないことに応答して、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を加圧するように制御することと、
主制動システムが故障し、且つ現在気圧値が予め設定された気圧値に達することに応答して、車両の減速度信号に基づいて駐車ブレーキとリターダのブレーキトルクをそれぞれ制御し、車両を制動制御することと、を含む。
【0005】
本開示の別の態様によれば、主制動システム、冗長コントローラ、駐車ブレーキ、リターダ及び補助高圧ガス貯蔵タンクを含む車両を提供し、冗長コントローラは、主制動システム、駐車ブレーキ、リターダ及び補助高圧ガス貯蔵タンクにそれぞれ接続され、補助高圧ガス貯蔵タンクは駐車ブレーキに接続される。
【0006】
本開示の別の態様によれば、プロセッサとメモリとを含むデータ処理システムを提供し、
メモリは、1つ又は複数のプログラムを記憶するために用いられ、1つ又は複数のプログラムはプロセッサにより実行され、上記の何れか1つの実施例に係る車両制動方法を実現する。
【0007】
本開示の別の態様によれば、コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供し、当該プログラムがプロセッサにより実行される時に、上記の何れか1つの実施例に係る車両制動方法を実現する。
【0008】
本開示の実施例は、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達していない場合、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を加圧することによって、リターダの応答時間を短縮し、また、主制動システムが故障し、且つ現在気圧値が予め設定された気圧値に達する場合、リターダと駐車ブレーキの複合減速によって、車両に合理的で漸進的なブレーキトルクを提供し、急ブレーキによる不安定性を効果的に減少させる。
【0009】
この部分で説明される内容は、本開示の実施例に係る肝心又は重要な特徴を特定することを意図するものではなく、本開示の範囲を限定するものでもないことが理解されるべきである。本開示の他の特徴は、以下の明細書から容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の実施例における技術案をより明らかに説明するために、以下、実施例の説明に使用される図面を簡単に紹介するが、無論、以下の説明における図面は本開示の幾つかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的労働を行うことなく、これらの図面に基づいて他の図面を更に得ることができる。
【
図1】本開示の実施例により提供される車両制動方法のフローチャートである。
【
図2】本開示の別の実施例により提供される車両制動方法のフローチャートである。
【
図3】本開示の一実施例により提供される各段階のブレーキトルクの構成模式図である。
【
図4】本開示の一実施例により提供される車両の構造模式図である。
【
図5】本開示の別の実施例により提供される車両の構造模式図である。
【
図6】本開示の更なる実施例により提供される車両的構造模式図である。
【
図7】本開示の一実施例により提供されるデータ処理システムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
当業者が本開示の技術案をより良く理解できるように、以下、本開示の実施例における図面を参照しながら、本開示の実施例の技術案を明らか且つ全面的に説明するが、説明される実施例は、本開示の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことが明らかである。当業者が本開示の実施例に基づいて創造的な労働をせずに得られた他の全ての実施例は、何れも本開示により保護される範囲に属する。
【0012】
なお、本開示の明細書、特許請求の範囲及び上記図面における「第1」、「第2」などの用語は、類似する対象を区別するために使用され、必ず特定の順序又は優先順位を説明するために使用されるわけではない。このように使用されるデータは、ここで説明される本開示の実施例が、ここで図示又は説明されたもの以外の順序で実施できるように、適当な場合に互いに交換してもよいと理解すべきである。なお、「含む」と「有する」という用語及びそれらの任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図し、例えば、一連のステップやユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は機器は、必ずしも明らかに挙げられたステップやユニットに限定されず、明らかに挙げられていない、又は、これらのプロセス、方法、製品や機器に固有の他のステップやユニットを含むことができる。
【0013】
実施例1
一実施例において、
図1は、本開示の実施例により提供される車両制動方法のフローチャートであり、本実施例は、車両の主制動システムが故障する場合に適用することができ、そのうち、車両には、主制動システム、冗長コントローラ、駐車ブレーキ、補助高圧ガス貯蔵タンク及びリターダが含まれ、冗長コントローラは当該車両制動方法の実現に用いられる。
図1に示すように、本実施例における車両制動方法は、ステップS110~S130を含んでもよい。
【0014】
S110、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断する。
【0015】
そのうち、補助高圧ガス貯蔵タンクは、駐車ブレーキの制御を補助すると共に、液圧リターダの作動状態の確立を補助するために使用することができる。現在気圧値は、現在時刻で補助高圧ガス貯蔵タンクに含まれるガスの圧力値を指し、予め設定された気圧値は、補助高圧ガス貯蔵タンクが正常に作動するために対応して設定された圧力値を指す。補助高圧ガス貯蔵タンクを正常に使用するために、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値は予め設定された気圧値に達する必要があることとして理解される。
【0016】
S120、現在気圧値が予め設定された気圧値に達していないことに応答して、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を加圧するように制御する。
【0017】
そのうち、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を加圧するプロセスは、補助高圧ガス貯蔵タンクのガス充填を調整するプロセスとして理解できる。実施例において、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値より小さいと決定する場合、冗長コントローラは、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達するように、エアポンプが補助高圧ガス貯蔵タンクにガスを充填するように制御し、それにより主制動が故障した時に、リターダ又は駐車ブレーキに対する補助制御をタイムリーに実現することができる。
【0018】
S130、主制動システムが故障し、且つ現在気圧値が予め設定された気圧値に達することに応答して、車両の減速度信号に基づいて駐車ブレーキとリターダのブレーキトルクをそれぞれ制御し、車両を制動制御する。
【0019】
そのうち、主制動システムは、主コントローラと主制動実行機構を含む。主制動システムの故障は、主コントローラの故障及び主制動実行機構の故障を含み、この時、主制動システムは、予期される制動制御を完成することができず、冗長コントローラは、車両の減速度信号に基づいて減速度期待値を決定した後、減速度期待値に従って駐車ブレーキとリターダのブレーキトルクを制御し、車両制動を実現する。
【0020】
本実施例の方法は、駐車ブレーキ、リターダ及び補助高圧ガス貯蔵タンクによって、冗長制動システムを構築し、車両の主制動が故障する場合、一方では、補助高圧ガス貯蔵タンクの補助下で、流体式リターダは、車両制動プロセスに介入するために、作動状態を迅速に確立し、ブレーキトルクをタイムリーに提供することができ、他方では、補助高圧ガス貯蔵タンクと駐車ブレーキの駐車ガス貯蔵タンクを組み合わせて使用することによって、駐車ブレーキに対する柔軟な制御を実現し、後輪のロックを防止することができ、また、リターダと駐車ブレーキを組み合わせてブレーキトルクを提供することによって、駐車ブレーキの過度の摩耗や熱による故障を防ぐことができる。
【0021】
実施例2
当該方法が実際にどのように適用されるかを詳細に解釈するために、以下の実施例を通じて方法のステップを更に説明する。
【0022】
図2に示すように、本開示の別の実施例により提供される車両制動方法のフローチャートである。本実施例は、リターダが流体式リターダであることを例にし、車両制動プロセスを説明する。本実施例における車両制動方法は、ステップS210~S250を含む。
【0023】
S210、減速度信号と車両動作パラメータを取得する。
【0024】
一実施例において、冗長コントローラは、主コントローラと通信するように接続され、主コントローラの減速度信号をリアルタイムで又は周期的に取得する。同様に、冗長コントローラは、自動運転システム(即ち、ホストコンピュータ)との通信接続を直接確立することによって、自動運転システムから車両の減速度信号をリアルタイムで又は周期的に取得することもできる。
【0025】
一実施例において、冗長コントローラは、車両のセンサシステムと通信するように接続され、冗長コントローラは、センサシステムによって車両動作パラメータをリアルタイムで又は周期的に取得する。そのうち、車両動作パラメータは、車両の現在減速度値、現在の車速及びその他の関連パラメータ情報を含む。
【0026】
S220、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断する。現在気圧値が予め設定された気圧値に達していないと判断する場合、ステップS230に進み、予め設定された気圧値に達する場合、ステップ240に進む。
【0027】
実施例において、補助高圧ガス貯蔵タンクが位置する主経路に圧力センサを取り付けることができ、冗長コントローラは、圧力センサとの通信接続によって、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値を取得する。
【0028】
一実施例において、冗長コントローラは、減速度信号に応答して、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値を取得し、現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断する。具体的には、減速度信号は、車両が減速状態に入る直前/減速状態に入ったことを示し、この時、冗長コントローラは、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値を取得し、現在気圧値と予め設定された気圧値とを比較して分析し、現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを決定することで、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧値が作動状態に必要な予め設定された気圧値より低い時、ガス充填の調整をタイムリーに制御することができ、それにより、主制動システムが故障した時、補助高圧ガス貯蔵タンクは、流体式リターダの作動状態の確立及び補助駐車ブレーキの制御を補助するために作動状態に迅速に入ることができる。
【0029】
また、冗長コントローラの性能構成が高い場合、実際の必要に応じて、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かをリアルタイムで判断し、現在気圧値が予め設定された気圧値に達していない時に作動気圧を常に維持できるためにその加圧を制御するように、冗長コントローラを構成することもできる。
【0030】
具体的に適用される時、補助高圧ガス貯蔵タンクは、主制動システムが故障した時に流体式リターダの応答時間を短縮し、ブレーキトルクをタイムリーに提供するために、流体式リターダの作動油が作動室に入るプロセスを加速することに使用することができる。同時に、駐車ブレーキが作動を開始した後、補助高圧ガス貯蔵タンクは、駐車ブレーキの制御ばねに十分な圧力を加え、駐車ブレーキを速やかに解除することを助けるために、駐車ブレーキのガス通路に更に接続されてもよい。ブレーキプロセスにおいて、補助高圧ガス貯蔵タンクは、切換弁によって駐車ブレーキのガスタンクと組み合わせて使用することで、駐車ブレーキを交互に制御し、制動プロセスにおける車輪のロックを防止することができる。
【0031】
更に、車両に使用されるリターダは、渦電流リターダ(電磁リターダ)などの他のタイプのリターダであってもよい。リターダが渦電流リターダの場合、補助高圧ガス貯蔵タンクは主に、制動中に車輪がロックする可能性を低減するために、駐車ブレーキの制御を補助するために用いられる。
【0032】
S230、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値を予め設定された気圧値に加圧するように制御する。
【0033】
実施例において、冗長コントローラは、エアポンプによって高圧ガス貯蔵タンクの気圧を調整する。更に、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を加圧するプロセスにおいて、ガスの一方向の流れを確保するために、冗長コントローラは、エアポンプが一方向弁を介して補助高圧ガス貯蔵タンクにガスを充填するように制御し、補助高圧ガス貯蔵タンクの内部の圧力を安全な範囲に維持するために、圧力逃がし弁を設定し、必要な時に補助高圧ガス貯蔵タンクの排気を調整することもできる。
【0034】
S240、車両動作パラメータと減速度信号に基づいて主制動システムが故障したか否かを判断する。主制動システムが故障していないと判断する場合、ステップS210に戻し、主制動システムが故障したと判断する場合、ステップS250に進む。
【0035】
一実施例において、冗長コントローラは、車両の減速度信号に基づいて車両の減速度期待値を決定し、車両動作パラメータに基づいて車両の現在減速度値を決定し、車両の減速度期待値と現在減速度値との間の差分が予め設定された差分の閾値を超えるか否かを比較することによって、車両の主制動システムが故障したか否かを判断する。
【0036】
そのうち、減速度期待値は、車両が達することが期待される減速度値を指す。減速度期待値は、減速度が達成することが期待される理論値を指し、現在減速度値は、センサによって測定された車両の実際の減速度値を指すこととして理解される。実施例において、現在減速度値と減速度期待値を比較して分析し、現在減速度値が減速度期待値に達していない場合、車両の制動力が不足することを示し、両者の差分が大きい場合、主制動システムが既に故障した可能性がある。具体的には、予め設定された差分の閾値を構成し、現在減速度値と減速度期待値との間の差分を計算し、当該差分が予め設定された差分の閾値より大きい場合、車両の主制動システムが故障したことを判定する。当該予め設定された差分の閾値は、異なる車両の性能特性又は経験値に基づいて設定されてもよく、又は実際の必要に応じて調整されてもよく、ここで限定されない。
【0037】
説明すべきことは、実際の操作プロセスにおいて、主制動システムは、主コントローラと主制動実行機構を含んでもよい。対応的に、主制動システムの故障は主ブレーキの故障であってもよく、主制動実行機構の故障であってもよく、主制動システムのデータ路線の故障であってもよい。例えば、主コントローラが故障する場合、主コントローラは、主制動実行機構に制御命令を正確に送信することができず、そのため、ホストコンピュータから送信された減速度信号は、主コントローラによって主制動実行機構に正確に転送することができず、車両制動を効果的に制御することができない。或いは、主制動実行機構が故障する場合、主コントローラは、主制動実行機構に減速度信号を正確に転送することができるが、主制動実行機構は、減速度信号に基づいて対応する制動操作を実行することができない。或いは、データリンクが故障する場合、主コントローラと主制動実行機構の両方は、正常に作動することができるが、主実行機構は、主コントローラから送信された減速度信号を受信することができない。主制動システムに上記の何れの故障が発生したとしても、車両は、何れも主制動システムによって予期される車両制動制御を実現することができず、予期される減速度値を実現することができず、この時に冗長コントローラの介入を必要とする。
【0038】
S250、減速度信号に基づいて駐車ブレーキと流体式リターダのブレーキトルクをそれぞれ制御する。
【0039】
実施例において、冗長コントローラは、受信した減速度信号に基づいて車両の減速度期待値を確認し、動力学式によって当該減速度期待値に対応するブレーキトルクを計算し、駐車ブレーキと流体式リターダが対応するブレーキトルクを提供するようにそれぞれ制御し、車両制動を実現する。
【0040】
一実施例において、ステップS250は、S251~S253を更に含んでもよい。
【0041】
S251、流体式リターダの作動状態を確立するために補助高圧ガス貯蔵タンクを制御し、流体式リターダのブレーキトルクを制御する。
【0042】
実施例において、リターダが流体式リターダを使用する場合、流体式リターダは、作動状態を迅速に確立するために、補助高圧ガス貯蔵タンクの補助下でブレーキトルクを生成するための作動油を作動室に押圧し、それにより伝動軸にブレーキトルクを加え、車両を減速させることができる。また、リターダが渦電流リターダである場合、冗長コントローラは、伝動軸に対するブレーキトルクを生成するために、渦電流リターダが電流を入力するように制御し、作動状態に入ることができる。
【0043】
この時、リターダは、迅速に応答し、車両を制動するためのブレーキトルクをタイムリーに提供することができ、駐車ブレーキを直接使用することに起因するブレーキの熱による故障の問題を回避し、一定の程度でシステムの安定性を向上させる。
【0044】
S252、減速度期待値に基づいて、補助高圧ガス貯蔵タンクと駐車ブレーキの駐車ガス貯蔵タンクが駐車ブレーキのブレーキトルクを交互に調整するように制御する。
【0045】
実施例において、冗長コントローラの制御により、補助高圧ガス貯蔵タンクと駐車ブレーキの駐車ガス貯蔵タンクは、駐車ブレーキに対する共同制動制御を実現し、具体的には、補助高圧ガス貯蔵タンクと駐車ブレーキの駐車ガス貯蔵タンクのガスを交互に充填・排出し、電磁切換弁を利用して駐車ブレーキを速やかに切り替えることでガス通路と補助高圧ガス貯蔵タンク又は駐車ブレーキの駐車ガス貯蔵タンクとの接続を迅速に制御することによって、駐車ブレーキの制動ばねに対する迅速な制御を実現し、駐車ブレーキのブレーキトルクを制御することができる。このような制御方法は、駐車ブレーキの制動の柔軟性を向上させ、車輪のロックによって引き起こされる可能性のある危険なシナリオを防止し、システムの安定性を更に向上させることができる。
【0046】
S253、リターダのブレーキトルクと駐車ブレーキのブレーキトルクの和が減速度期待値に対応するブレーキトルクに達し、及びリターダのブレーキトルクがリターダが提供できる最大ブレーキトルクに達していないことに応答して、リターダのブレーキトルクの増加及び駐車ブレーキのブレーキトルクの減少を制御し、リターダのブレーキトルクと駐車ブレーキのブレーキトルクの和を一定に保持する。
【0047】
実施例において、冗長コントローラは、減速度期待値に対応するブレーキトルクを決定した後、リターダと駐車ブレーキの複合制動によって車両が期待される減速度値に達するために、減速度期待値に対応するブレーキトルクに基づいてリターダと駐車ブレーキのブレーキトルクを制御する。リターダのブレーキトルクと駐車ブレーキのブレーキトルクの和が減速度期待値に対応するブレーキトルクに達する場合、この時にリターダのブレーキトルクが提供できる最大ブレーキトルクに達していないと、リターダのブレーキトルクと駐車ブレーキのブレーキトルクの和を一定に保持するまま、駐車ブレーキにより提供されるブレーキトルクを減少させ、リターダにより提供されるブレーキトルクを増加させることができる。
【0048】
実際の操作プロセスにおいて、駐車ブレーキとリターダにより提供されるブレーキトルクは、同じであってもよく、異なってもよいが、駐車ブレーキを使用して車両を制動するため、ロックや熱による故障の問題が発生しやすく、本実施例は、できる限りリターダによってブレーキトルクを提供する。上記調整により、リターダを十分に利用してブレーキトルクを提供し、駐車ブレーキの過熱に起因する熱による故障の可能性を減らし、駐車ブレーキの使用寿命を延長し、システムの安定性を更に向上させることができる。
【0049】
本実施例の技術案は、補助高圧ガス貯蔵タンクの現在気圧値が予め設定された気圧値に達していない場合、補助高圧ガス貯蔵タンクの気圧を加圧することによって、流体式リターダの応答時間を短縮し、また、主制動システムが故障した時、リターダと駐車ブレーキの複合制動によって、車両に合理的で漸進的なブレーキトルクを提供し、車両制動システムの安定性を効果的に向上させ、なお、リターダと駐車ブレーキの組み合わせによって、リターダを十分に利用して車両に必要なブレーキトルクを提供し、駐車ブレーキに発生する可能性がある熱による故障の問題も減らし、車両走行の安全性を更に保証する。
【0050】
実施例3
図3は、本開示の一実施例により提供される各段階のブレーキトルクの構成模式図である。以下、駐車ブレーキと流体式リターダを組み合わせて減速することを例にし、車両制動に対する冗長コントローラの介入プロセスを更に説明する。そのうち、車両に対する冗長コントローラの制動制御は、具体的には、冗長ブレーキ介入段階(t1と記す)、ブレーキトルク確立段階(t2と記す)及びブレーキトルク保持段階(t3と記す)といった3つの段階に分けることができる。
【0051】
第1段階は、冗長ブレーキ介入段階である。
【0052】
この段階では、現在車速、後輪速度、減速度期待値に基づき、冗長コントローラは、駐車ブレーキが車輪に漸進的にブレーキトルクを加えるように、駐車ブレーキの元のガス制御経路上の比例電磁弁の開度を制御し、それと同時に、車両に搭載されるリターダが流体式リターダの場合に、流体式リターダは、補助高圧ガス貯蔵タンクの補助下でブレーキトルクを生成するための作動油を作動室に押圧し、作動状態を迅速に確立し、更に伝動軸にブレーキトルクを加えることで、車両減速の目的を達成する。車両に用いたリターダが渦電流リターダである場合、冗長コントローラは、伝動軸に対するブレーキトルクを生成するために、渦電流リターダが電流を入力するように制御する。
【0053】
第2段階は、ブレーキトルク確立段階である。
【0054】
上記冗長ブレーキ介入段階が完了した後、駐車ブレーキとリターダは、後輪軸と伝動軸に経時的に増加するブレーキトルクをそれぞれ加える。現在の段階では、冗長コントローラは、補助高圧ガス貯蔵タンク、切換弁及び駐車ガス貯蔵タンクによって駐車ブレーキを制御し、補助高圧ガス貯蔵タンクと駐車ガス貯蔵タンクのガスを交互に充填・排出し、電磁切換弁を利用して駐車ブレーキを切り替えることでガス通路と補助高圧ガス貯蔵タンク又は駐車ガス貯蔵タンクとの接続を制御することによって、駐車ブレーキの制御ばねに対する柔軟な制御を実現し、更に駐車ブレーキのブレーキトルクを制御する。このような制御方法は、車輪のロックによって引き起こされる可能性のある危険なシナリオを防止し、駐車ブレーキの制動制御効果を最適化することができる。通常の場合、当該段階の終了は、駐車ブレーキとリターダによって生成されるブレーキトルクの和が減速度期待値に対応するブレーキトルクに達することとして識別される。
【0055】
第3段階は、ブレーキトルク保持段階である。
【0056】
上記のようにリターダと駐車ブレーキのブレーキトルクを調整した後、駐車ブレーキとリターダによって生成されるブレーキトルクの和が減速度期待値に対応するブレーキトルクに達し、且つこの時にリターダにより提供されるブレーキトルクが提供できるブレーキトルクの最大値に達していない場合、リターダのブレーキトルクと駐車ブレーキのブレーキトルクの和を一定に保持するまま、駐車ブレーキにより提供されるブレーキトルクを減少させると共に、リターダにより提供されるブレーキトルクを対応的に増加させ、減速度期待値に対応するブレーキトルクを保持すると同時に、駐車ブレーキの熱による故障を防止することができる。
【0057】
駐車ブレーキとリターダによって生成されるブレーキトルクの和が減速度期待値に対応するブレーキトルクに達し、且つこの時にリターダにより提供されるブレーキトルクが提供できるブレーキトルクの最大値に達する場合、現在のブレーキトルクを保持する。
【0058】
減速度期待値に対応するブレーキトルクが駐車ブレーキとリターダが提供できるブレーキトルクの和より大きい場合、冗長コントローラは、車両の制動を実現するために、駐車ブレーキとリターダがそれぞれの最大ブレーキトルクを提供し、最大ブレーキトルクを保持するように制御する。
【0059】
本願において、冗長コントローラは、駐車ブレーキとリターダの複合制動によって、主制動システムが故障した時に迅速に応答でき、それと同時に、補助高圧ガス貯蔵タンクと駐車ガス貯蔵タンクによって駐車ブレーキを交互に制御することで、駐車ブレーキに対する柔軟な制御を実現し、車輪がロックする可能性を減少させることができ、リターダにより提供されるブレーキトルクにより、駐車ブレーキのみの使用に起因する熱による故障の現象を避けることができ、駐車ブレーキの使用寿命を延長し、更に車両の使用コストを削減する。
【0060】
実施例4
一実施例において、
図4は、本開示の一実施例により提供される車両の構造模式図である。本実施例における車両は、主制動システム410、冗長コントローラ420、駐車ブレーキ430、リターダ440及び補助高圧ガス貯蔵タンク450を含み、冗長コントローラ420は、主制動システム410、駐車ブレーキ430、リターダ440及び補助高圧ガス貯蔵タンク450にそれぞれ接続され、補助高圧ガス貯蔵タンク450は、駐車ブレーキ430に接続される。
【0061】
実施例において、冗長コントローラ420は、冗長制動システムのCANデータバスを介して主制動システム410、駐車ブレーキ430、リターダ440及び補助高圧ガス貯蔵タンク450にそれぞれ接続され、補助高圧ガス貯蔵タンク450は、ガス制御経路を介して駐車ブレーキ430に接続される。実施例において、冗長コントローラ420は、補助高圧ガス貯蔵タンク450の主経路に取り付けられた圧力センサによって補助高圧ガス貯蔵タンク450の内部の現在気圧値を取得し、現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断し、現在気圧値が予め設定された気圧値に達していない場合、冗長コントローラ420は、エアポンプが補助高圧ガス貯蔵タンク450にガスを充填するように制御し、それによりリターダ440の作動油を作動室に押圧するプロセスを加速し、リターダ440の応答時間を短縮することができる。同時に、主制動システム410が故障し、且つ補助高圧ガス貯蔵タンク450の現在気圧値が予め設定された気圧値に達する場合、冗長コントローラ420は、駐車ブレーキ430とリターダ440が伝動軸と後輪軸に対応するブレーキトルクを加えるために、減速度信号に対応する減速度期待値に基づいて駐車ブレーキ430とリターダ440のブレーキトルクを制御することで、車両減速の目的を達成する。
【0062】
実施例5
一実施例において、
図5は、本開示の別の実施例により提供される車両の構造模式図である。
図5の車両と
図4の車両の違いは、駐車ブレーキがエアポンプと駐車ガス貯蔵タンクを含み、且つ車両が冗長給電システムを更に含むことである。不必要な繰り返しを避けるために、上記実施例の車両と同じである本実施例の車両の部分に対する説明を省略し、上記実施例と異なる本実施例の部分を詳しく説明する。
【0063】
図5に示すように、本実施例の車両は、冗長コントローラ420に給電するために、冗長コントローラ420に接続される冗長給電システム460を更に含む。また、駐車ブレーキ430は、補助高圧ガス貯蔵タンク4302、駐車ガス貯蔵タンク4304にそれぞれ接続されるエアポンプ4301と、駐車ガス貯蔵タンク4302を含む。
【0064】
実施例において、冗長給電システム460は、冗長コントローラ420が通常に動作することを保証するために、冗長コントローラ420に電気的に接続され、冗長給電システム460によって冗長コントローラ420に給電する。実施例において、駐車ブレーキ430が冗長コントローラ420又は主制動システム410から送信された制動制御命令を受信した時、駐車ブレーキ430は、制動制御命令に基づいて駐車ブレーキの制動ばねの制御を調整し、更に駐車ブレーキ430自体のブレーキトルクを制御することができ、駐車ブレーキ430に駐車ガス貯蔵タンク4302が含まれてもよく、それにより、駐車ガス貯蔵タンク4302の内部のガス充填・排出操作により、駐車ブレーキ430のブレーキトルクに対する制御を実現することができる。当然ながら、エアポンプ4302が駐車ガス貯蔵タンク4302にガスを充填・排出するように制御するために、駐車ブレーキ430にはエアポンプ4302が更に含まれる。
【0065】
一実施例において、リターダ440は流体式リターダであり、流体式リターダは補助高圧ガス貯蔵タンク4302に接続され、補助高圧ガス貯蔵タンク450は、冗長コントローラ420の命令を受信し、命令に基づいて流体式リターダの作動状態を確立するために用いられる。実施例において、リターダ440が流体式リターダを使用する場合、冗長コントローラ420は、補助高圧ガス貯蔵タンク450に制動制御命令を送信し、補助高圧ガス貯蔵タンク450の現在気圧値が予め設定された気圧値に達するか否かを判断し、現在気圧値が予め設定された気圧値に達していない場合、エアポンプが補助高圧ガス貯蔵タンク450にガスを充填するように制御する。予備加圧後の補助高圧ガス貯蔵タンク450の内部の高圧気圧は、流体式リターダの作動油がその作動室に入るプロセスを加速し、流体式リターダの応答時間を短縮するために使用することができる。
【0066】
一実施例において、冗長コントローラ420は、上記の何れか1つの実施例に係る車両制動方法を実行するために使用される。実施例において、車両内の冗長コントローラ420によって上記の何れか1つの実施例に係る車両制動方法を実行することができる。
【0067】
実施例6
一実施例において、
図6は、本開示の更なる実施例により提供される車両の構造模式図である。
図6に示すように、本実施例の車両は、車両主体100、トレーラー101、車輪102、車両とトレーラーとのインタフェース103、車輪軸104、車両伝動軸105、主給電システム110、主コントローラ111、センサシステム112、冗長給電システム120、冗長コントローラ121、流体式リターダ122、駐車ブレーキ123、補助高圧ガス貯蔵タンク124、車両エンジン125、主CANデータバス130、冗長制動システムのCANデータバス131及びガス制御経路140を含む。
【0068】
そのうち、駐車ブレーキ123は、エアポンプと駐車ガス貯蔵タンクを含む。ガス制御経路140は、補助高圧ガス貯蔵タンク124、流体式リターダ122及び駐車ブレーキ123の内部の駐車ガス貯蔵タンクの間のガス制御経路である。
【0069】
説明すべきことは、流体式リターダ122は、渦電流リターダ(電磁リターダ)で代替してもよい。2つの異なるタイプのリターダの制御方法が異なるため、渦電流リターダは、応答時間を速めるために補助高圧ガス貯蔵タンク124を使用する必要がない。これに対応して、渦電流リターダを使用する場合、補助高圧ガス貯蔵タンク124とリターダ122とは、ガス制御通路140を介して接続する必要がない。
【0070】
実施例7
一実施例において、
図7は、本開示の一実施例により提供されるデータ処理システムの構造模式図である。
図7に示すように、本実施例に係るデータ処理システムは、プロセッサ710とメモリ720を含み、
メモリ720は、1つ又は複数のプログラムを記憶するために用いられ、1つ又は複数のプログラムはプロセッサ710により実行され、上記の何れか1つの実施例に係る車両制動方法を実現する。
【0071】
実施例において、独立したデータ処理システムによって車両制動方法を実行することができ、即ち、データ処理システムは、データ処理システムが上記実施例に係る車両制動方法を実行し、車両内の各モジュールの実行操作を制御するように、車両との通信接続を確立する。
【0072】
一実施例において、本開示の実施例は、プログラム命令が記憶されているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を更に提供し、当該プログラム命令がプロセッサにより実行される時に、本開示の上記任意の実施例に係る車両制動方法を実現する。
【0073】
本開示の実施例において、自動運転車両の車載センサが豊富であり、データ処理能力が高いという特性に基づいて、冗長制動システムは、車両動作パラメータをリアルタイムで取得することができ、車両の現在減速度値と減速度期待値とを比較することによって、主制動システムの故障をタイムリーに検出する。
【0074】
本開示の実施例は、補助高圧ガス貯蔵タンクを別に設置し、補助高圧ガス貯蔵タンクが事前に作動気圧を維持するようにすることによって、主制動が故障した時に冗長制動システムの液圧リターダが作動状態を迅速に確立するために使用することができ、冗長制動システムの応答時間を短縮し、ブレーキトルクをタイムリーに補充し、冗長制動システムの応答効率を向上させ、最終的にブレーキ距離を短縮するという目的を達成する。
【0075】
本開示の実施例に設置された補助高圧ガス貯蔵タンクは、冗長制動システム内の駐車ブレーキに対する制御に更に用いられてもよく、駐車ガス貯蔵タンクと組み合わせて使用することで、駐車ブレーキを交互に制御することができ、長時間にわたる気圧の確立による駐車ブレーキに対する制御の遅延を減らし、駐車ブレーキに対する制御の頻度を向上させ、そのため、冗長制動システムは、車輪の滑り率をより好適に制御することができ、車輪のロックを回避し、車両ブレーキ時の車両安定性を向上させる。
【0076】
本開示の実施例は、リターダと駐車ブレーキの複合制動方法を使用するため、長い距離及び高い速度の制動下での単純な駐車ブレーキの制動によって引き起こされるブレーキの熱による故障の問題が制御され、システムの信頼性を向上させる。
【0077】
なお、上記は本開示の好ましい実施例及び適用される技術原理に過ぎない。当業者であれば理解できることとして、本開示は本明細書の特定の実施例に限定されず、当業者にとって、本開示の請求範囲から逸脱することなく、各種の明らかな変更、再調整及び置換を行うことができる。従って、上記実施例によって本開示を詳しく説明したが、本開示は上記実施例に限定されず、本開示の思想から逸脱することなく、より多くの他の同等の実施例を含んでもよい。本開示の範囲は、添付された特許請求の範囲によって決定される。