(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013324
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230119BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E04B1/58 505P
E04B1/30 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117412
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】掛 悟史
(72)【発明者】
【氏名】ウサレム ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】高津 比呂人
(72)【発明者】
【氏名】前田 達彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 寛之
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AA46
2E125AB01
2E125AB03
2E125AC04
2E125AC07
2E125BA41
(57)【要約】
【課題】鉄骨柱と交差する梁の梁幅を広げることで鉄骨柱によって分断された梁主筋と同等量の鉄筋を広げた部分に配置する場合と比して、梁幅を広げることなく、梁に負荷される荷重を鉄骨柱の下方に配置される躯体へ伝達することができる接合構造を得る。
【解決手段】接合構造は、柱部材と、鉄筋コンクリート製の柱梁仕口部と、柱梁仕口部を構成する鉄骨柱のウエブ部の手前まで延びている梁主筋と、梁主筋の端部に設けられ定着部とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱を含んで構成されている柱部材と、
鉄筋コンクリート製の柱梁仕口部と、
前記柱梁仕口部を構成する前記鉄骨柱のウエブ部の手前まで延びている梁主筋を有する梁部材と、
前記梁主筋の端部に設けられた定着部と、
を備える接合構造。
【請求項2】
前記鉄骨柱は、十字状とされた前記ウエブ部と、前記ウエブ部の端部に取り付けられたフランジ部と部を有し、
前記梁主筋の上方及び下方の少なくとも一方には、隣り合う前記フランジ部の端部を連結する連結部材が備えられている、
請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記柱梁仕口部は、繊維補強コンクリートで形成されている、
請求項1又は2に記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱を含んで構成された柱部材と、梁部材との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄筋コンクリート製の柱と、基礎梁との接合構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄骨柱を含んで構成された柱部材と、鉄骨柱と交差する梁部材との接合構造では、梁部材を構成する梁主筋が、鉄骨柱を横断することが出来ず分断されてしまう。梁主筋の分断によって梁主筋とコンクリート部との定着力の低下することで、梁部材に負荷される荷重を鉄骨柱の下方に配置されている躯体へ伝達する効率が低下してしまう。
【0005】
従来、分断によって生じた梁主筋とコンクリート部との定着力の低下を抑制するため、分断された梁主筋と同等量の鉄筋で鉄骨柱を両側から挟んでいた。このような構成では、柱部材の周りの梁幅が広くなっていた。
【0006】
本発明の課題は、鉄骨柱と交差する梁部材の梁幅を広げることで鉄骨柱によって分断された梁主筋と同等量の鉄筋を配置する場合と比して、梁幅を広げることなく、梁部材に負荷される荷重を鉄骨柱の下方に配置されている躯体へ伝達することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に記載の接合構造は、鉄骨柱を含んで構成されている柱部材と、鉄筋コンクリート製の柱梁仕口部と、前記柱梁仕口部を構成する前記鉄骨柱のウエブ部の手前まで延びている梁主筋を有する梁部材と、前記梁主筋の端部に設けられた定着部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
第1態様に係る構成によれば、梁部材に負荷される荷重は、梁主筋の端部に設けられた定着部を介して柱梁仕口部のコンクリート部へ伝達される。さらに、柱梁仕口部のコンクリート部へ伝達された荷重は、鉄骨柱の下方に配置されている躯体へ伝達される。
【0009】
これにより、鉄骨柱と交差する梁部材の梁幅を広げることで鉄骨柱によって分断された梁主筋と同等量の鉄筋を広げた部分に配置する場合と比して、梁幅を広げることなく、梁部材に負荷される荷重を鉄骨柱の下方に配置されている躯体へ伝達することができる。
【0010】
第2態様に記載の接合構造は、第1態様に記載の接合構造において、前記鉄骨柱は、十字状とされた前記ウエブ部と、前記ウエブ部の端部に取り付けられたフランジ部と部を有し、前記梁主筋の上方及び下方の少なくとも一方には、隣り合う前記フランジ部の端部を連結する連結部材が備えられていることを特徴とする。
【0011】
第2態様に係る構成によれば、梁主筋の上方及び下方の少なくとも一方には、隣り合うフランジ部の端部を連結する連結部材が備えられている。これにより、定着部を起点としたコンクリート部の掻き出し破壊の発生を抑制することができる。
【0012】
第3態様に記載の接合構造は、第1又は第2態様に記載の接合構造において、前記柱梁仕口部は、繊維補強コンクリートで形成されていることを特徴とする。
【0013】
第3態様に係る構成によれば、柱梁仕口部は、繊維補強コンクリートで形成されている。これにより、定着部を起点としたコンクリート部の掻き出し破壊の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鉄骨柱と交差する梁部材の梁幅を広げることで鉄骨柱によって分断された梁主筋と同等量の鉄筋を配置する場合と比して、梁幅を広げることなく、梁部材に負荷される荷重を鉄骨柱の下方に配置されている躯体へ伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る接合構造が採用された建築物を示した模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る接合構造を示した斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る接合構造を示した平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る接合構造を示した側面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る接合構造に用いられた定着部を示した斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る接合構造を示した平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る接合構造を示した側面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る接合構造を示した側面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態に係る接合構造を示した拡大平面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る接合構造を示した拡大斜視図である。
【
図11】本発明の第5実施形態に係る接合構造を示した拡大平面図である。
【
図12】本発明の第6実施形態に係る接合構造を示した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る柱部材と梁部材との接合構造について
図1~
図5に従って説明する。なお、図中に示す矢印Zは、鉛直方向であって建物高さ方向を示し、矢印Xは、水平方向であって、建物幅方向示し、矢印Yは、水平方向であって、建物奥行き方向を示す。なお、矢印Xと矢印Yとは、互いに直交する。先ず、本第1実施形態の接合構造が採用された建築物について説明する。
【0017】
(建築物80)
建築物80は、逆打ち工法によって構築された建物であって、
図1に示されるように、鉛直方向に延びている構真柱20によって構成される柱部材50と、基礎梁30と、フーチング部12(
図2参照)と、杭70と、基礎梁30によって支持された床部材82と、を備えている。そして、
図2に示されるように、構真柱20と、基礎梁30と、フーチング部12と、後述する定着部60(
図5参照)とを含んで、柱部材50と基礎梁30とを接合する接合構造10が構成されている。
【0018】
構真柱20は、鉄骨柱の一例であって、フーチング部12は、柱梁仕口部の一例であって、基礎梁30は、梁部材の一例である。
【0019】
〔構真柱20、杭70〕
構真柱20は、
図2に示されるように、H鋼をクロスさせた形状であり、十字状のウエブ部22と、ウエブ部22の端部に取り付けられたフランジ部24とを有している。
【0020】
また、杭70は、所謂場所打ちコンクリート杭であって、構真柱20の下方部分に配置されている。そして、杭70の上端部分には、構真柱20の下端部分が埋め込まれている。さらに、杭70は、
図3に示されるように、鉛直方向に延びると共に円状に並べられた杭主筋72を有している。そして、この杭主筋72の先端部分は、フーチング部12に入り込んでいる。杭70は、構真柱20の下方に配置されている躯体の一例である。
【0021】
〔フーチング部12、基礎梁30〕
フーチング部12は、鉄筋コンクリート製で、基礎梁30と構真柱20とを接合する部分であって、
図2に示されるように、杭70の上方に配置されている。本実施形態では、フーチング部12は、建築物80(
図1参照)の基礎梁30に負荷される荷重を分散して杭70へ伝達するために、基礎梁30の一般部の梁幅と比して広くされている。
【0022】
基礎梁30は、フーチング部12の一部を構成しており、
図2に示されるように、一対設けられている。そして、一方の基礎梁30(以下「基礎梁30a」)は、構真柱20とフーチング部12で交差して建物幅方向に延びており、他方の基礎梁30(以下「基礎梁30b」)は、構真柱20とフーチング部12で交差して建物奥行き方向に延びている。なお、以下の説明では、基礎梁30aと基礎梁30bとを特に区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略することがある。
【0023】
-基礎梁30a、定着部60-
基礎梁30aは、
図3に示されるように、建物幅方向に延びると共に建物奥行き方向に並んだ複数の梁主筋34aを有しており、複数の梁主筋34aは、
図4に示されるように、建物高さ方向において上方側と下方側とに配置されて2列に並んでいる。そして、複数の梁主筋34aは、
図3に示されるように、構真柱20を間に挟んで分断されている。
【0024】
複数の梁主筋34aの中で構真柱20のウエブ部22の板面に向かって延びている梁主筋34aは、ウエブ部22の手前まで延びている。そして、梁主筋34aの端部には、定着部60が取り付けられている。換言すれば、梁主筋34aの端部には、定着部60が設けられている。
【0025】
定着部60は、
図5に示されるように、所謂機械式定着部であって、拡径された円盤部60aと、内部に梁主筋34aの先端部が挿入されることで梁主筋34aに接合された円筒状の接合部60bとを備えている。これにより、フーチング部12を構成するコンクリート部に対する梁主筋34aの定着力が向上するようになっている。
【0026】
ここで、梁主筋34aがウエブ部22の手前まで延びているとは、
図3に示されるように、梁主筋34aの端部に取り付けられた定着部60が、建物幅方向において、板面が建物幅方向を向いたフランジ部24からウエブ部22までの領域(図中R1)に位置していることである。
【0027】
また、複数の梁主筋34aの中で構真柱20のフランジ部24の端面に向かって延びている梁主筋34aは、フランジ部24の手前まで延びている。
【0028】
-基礎梁30b-
基礎梁30bは、
図3に示されるように、建物奥行き方向に延びると共に建物幅方向に並んだ複数の梁主筋34bを有しており、複数の梁主筋34bは、
図4に示されるように、建物高さ方向において上方側と下方側とに配置されて2列に並んでいる。また、上方側に配置された梁主筋34bは、上方側に配置された梁主筋34aの下方に配置されており、下方側に配置された梁主筋34bは、下方側に配置された梁主筋34aの下方に配置されている。そして、複数の梁主筋34bは、
図3に示されるように、構真柱20を間に挟んで分断されている。
【0029】
複数の梁主筋34bの中で構真柱20のウエブ部22の板面に向かって延びている梁主筋34bは、ウエブ部22の手前まで延びている。
【0030】
ここで、梁主筋34bがウエブ部22の手前まで延びているとは、梁主筋34bの先端部に取り付けられた定着部60が、建物奥行き方向において、板面が建物奥行き方向を向いたフランジ部24からウエブ部22までの領域(図中R2)に位置していることである。
【0031】
また、複数の梁主筋34bの中で構真柱20のフランジ部24の端面に向かって延びている梁主筋34bは、フランジ部24の手前まで延びている。なお、以下の説明では、梁主筋34aと梁主筋34bとを特に区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略することがある。
【0032】
(作用)
次に、接合構造10の作用について説明する。
図4に示されるように、地震等によって基礎梁30に曲げモーメント荷重Mが負荷されると、構真柱20を挟んで対向する梁主筋34には、互いに近接離間する方向に荷重が作用し、梁主筋34とコンクリート部との剥離が考えられる。しかし、梁主筋34の端部には、定着部60が取り付けられている。これにより、梁主筋34とコンクリート部との定着力が定着部を有しない場合と比して強くなっていることで梁主筋34とコンクリート部との剥離が抑制されて、基礎梁30に負荷される荷重が構真柱20の下方に配置されている杭70へ伝達される。
【0033】
(まとめ)
以上説明したように、接合構造10においては、構真柱と交差する基礎梁の梁幅を広げることで構真柱によって分断された梁主筋と同等量の鉄筋を広げた部分に配置する場合と比して、梁幅を広げることなく、基礎梁30に負荷される荷重を構真柱20の下方に配置されている杭70へ伝達することができる。
【0034】
また、接合構造10においては、構真柱と交差する基礎梁の梁幅を広げることで構真柱によって分断された梁主筋と同等量の鉄筋を広げた部分に配置する工程が無くなることで、この工数を削減することができる。
【0035】
また、接合構造10においては、構真柱と交差する基礎梁の梁幅を広げることで構真柱によって分断された梁主筋と同等量の鉄筋を広げた部分に配置することが無いため、地下に設けたピットが狭くなるのを抑制することができる。
【0036】
また、接合構造10においては、ピットが狭くなるのを抑制することで、エレベーター等の設備のピットへの配置が容易となる。
【0037】
また、接合構造10においては、梁主筋34は構真柱20によって分断されているため,杭主筋72の上端部分と梁主筋34との干渉を避けるように梁主筋34の平面的な位置調整が可能となる。
【0038】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る接合構造について
図6、
図7に従って説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態に対して異なる部分を主に説明する。
【0039】
(構成)
第2実施形態に係る接合構造110は、
図6に示されるように、隣り合うフランジ部24の端部を連結する補強バンド120を備えている。補強バンド120は、連結部材の一例である。
【0040】
補強バンド120は、矩形状の板金部材であって、補強バンド120の一端が、一のフランジ部24の端部に溶接され、補強バンド120の他端が、一のフランジ部24に隣り合う他のフランジ部24の端部に溶接されている。このようにして、補強バンド120は、隣り合うフランジ部24の端部を連結している。
【0041】
さらに、補強バンド120は、
図7に示されるように、建物高さ方向において、梁主筋34の上方及び下方に配置されている。具体的には、側方から見て、補強バンド120の少なくとも一部が、ウエブ部22の手前まで延びている梁主筋34に取り付けられた定着部60を起点として水平方向に対して45度傾斜した破壊面J(詳細は後述)と重なっている。
【0042】
換言すれば、補強バンド120が梁主筋34の上方及び下方に配置されているとは、補強バンド120の少なくとも一部が、定着部60を起点として水平方向に対して45度傾斜した破壊面Jと重なっていることである。
【0043】
(作用)
次に、接合構造110の作用について説明する。
図7に示されるように、地震等によって基礎梁30に曲げモーメント荷重Mが負荷されると、構真柱20を挟んで対向する梁主筋34には、互いに近接離間する方向に荷重が作用し、梁主筋34とコンクリート部との剥離が考えられる。
【0044】
このような荷重が梁主筋34に作用すると、定着部60を起点とした掻き出し破壊が発生する場合がある。具体的には、図中の破壊面Jで破壊して、梁主筋34の端部が、コンクリートに対して剥離することが考えられる。この破壊面Jは、側方から見て、定着部60を起点として水平方向に対して45度傾斜した面である。
【0045】
しかし、補強バンド120が破壊に対して抵抗することで、定着部60を起点とした掻き出し破壊の発生が抑制される。
他の作用については、第1実施形態の作用と同様である。
【0046】
(まとめ)
以上説明したように、接合構造110においては、補強バンド120の少なくとも一部が定着部60を起点として水平方向に対して45度傾斜した破壊面Jと重なっている。このため、定着部60を起点とした掻き出し破壊の発生を抑制することができる。
【0047】
また、接合構造110においては、定着部60を起点とした掻き出し破壊の発生を抑制することで、コンクリート部の耐力が強くなり、梁主筋34の本数(定着本数)を増やすことができる。
【0048】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る接合構造について
図8に従って説明する。なお、第3実施形態については、第1実施形態に対して異なる部分を主に説明する。
【0049】
図8に示す接合構造210のフーチング部212は、鋼繊維補強コンクリートで形成されている。このため、普通コンクリートで形成される場合と比して、定着部60を起点とした掻き出し破壊の発生を抑制することができる。フーチング部212は、柱梁仕口部の一例である。
【0050】
また、接合構造210においては、定着部60を起点とした掻き出し破壊の発生を抑制することで、コンクリート部の耐力が強くなり、梁主筋34の本数(定着本数)を増やすことができる。
他の作用については、第1実施形態の作用と同様である。
【0051】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態に係る接合構造について
図9、
図10に従って説明する。なお、第4実施形態については、第1実施形態に対して異なる部分を主に説明する。
【0052】
(構成)
第4実施形態に係る接合構造310は、
図9に示されるように、構真柱320によって構成される柱部材350と、梁主筋334を有した基礎梁330とを備えている。構真柱320は、鉄骨柱の一例であって、基礎梁330は、梁部材の一例である。
【0053】
〔構真柱320〕
構真柱320は、
図9に示されるように、H鋼であり、ウエブ部322と、ウエブ部322の端部に取り付けられたフランジ部324と、フランジ部324に取り付けられた板状のブラケット部326とを有している。
【0054】
ブラケット部326は、
図10に示されるように、板面が上下方向を向くように配置され、上方から見て矩形状とされている。そして、ブラケット部326は、夫々のフランジ部324に建物高さ方向に離間して2個ずつ取り付けられている。
【0055】
〔基礎梁330〕
基礎梁330は、フーチング部12の一部を構成しており、
図9に示されるように、一対設けられている。そして、一方の基礎梁330(以下「基礎梁330a」)は、建物幅方向に延びており、他方の基礎梁330(以下「基礎梁330b」)は、建物奥行き方向に延びている。なお、以下の説明では、基礎梁330aと基礎梁330bとを特に区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略することがある。
【0056】
-基礎梁330a-
基礎梁330aは、
図9、
図10に示されるように、建物幅方向に延びると共に建物奥行き方向に並んだ複数の梁主筋334aを有しており、複数の梁主筋334aは、建物高さ方向において上方側と下方側とに配置されて2列に並んでいる。そして、複数の梁主筋334aは、構真柱320を間に挟んで分断されている。
【0057】
梁主筋334aは、構真柱320のウエブ部322の板面に向かっており、ウエブ部322の手前まで延びている。そして、梁主筋334aの端部には、定着部60が取り付けられている。
【0058】
ここで、梁主筋334aがウエブ部322の手前まで延びているとは、梁主筋334aの端部に取り付けられた定着部60が、建物幅方向において、フランジ部324の端部からウエブ部322までの領域(図中R3)に位置していることである。
【0059】
-基礎梁330b-
基礎梁330bは、
図9、
図10に示されるように、建物奥行き方向に延びると共に建物幅方向に並んだ複数の梁主筋334bを有しており、複数の梁主筋334bは、建物高さ方向において上方側と下方側とに配置されて2列に並んでいる。そして、複数の梁主筋334bは、構真柱320を間に挟んで分断されている。
【0060】
梁主筋334bの端部は、ブラケット部326の板面に載せられており、溶接によってブラケット部326に取り付けられている。
【0061】
(作用)
以上の構成により、梁主筋334aとコンクリート部との定着力が定着部60を有しない場合と比して強くなっていることで梁主筋334とコンクリート部との剥離が抑制されて、基礎梁330aに負荷される荷重が構真柱320の下方に配置されている杭70へ伝達される。
他の作用については、第1実施形態の作用と同様である。
【0062】
<第5実施形態>
本発明の第5実施形態に係る接合構造について
図11に従って説明する。なお、第5実施形態については、第1実施形態に対して異なる部分を主に説明する。
【0063】
(構成)
第5実施形態に係る接合構造410は、
図11に示されるように、構真柱420によって構成される柱部材450と、梁主筋434を有した基礎梁430とを備えている。構真柱420は、鉄骨柱の一例であって、基礎梁430は、梁部材の一例である。
【0064】
〔構真柱420〕
構真柱420は、
図11に示されるように、H鋼とT字状のT鋼とを組み合わせて形成されている。具体的には、構真柱420は、板面が建物奥行き方向を向いたウエブ部422と、ウエブ部の両端に夫々取り付けられたフランジ部424とを有している。さらに、構真柱420は、板面が建物幅方向を向いて一端部がウエブ部422に取り付けられたウエブ部426と、ウエブ部426の他端部に取り付けられたフランジ部428とを有している。
【0065】
〔基礎梁430〕
基礎梁430は、フーチング部12の一部を構成しており、
図11に示されるように、一対設けられている。そして、一方の基礎梁430(以下「基礎梁430a」)は、建物幅方向に延びており、他方の基礎梁430(以下「基礎梁430b」)は、建物奥行き方向に延びている。なお、以下の説明では、基礎梁430aと基礎梁430bとを特に区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略することがある。
【0066】
-基礎梁430a-
基礎梁430aは、
図11に示されるように、建物幅方向に延びると共に建物奥行き方向に並んだ複数の梁主筋434aを有しており、複数の梁主筋434aは、建物高さ方向において上方側と下方側とに配置されて2列に並んでいる。そして、複数の梁主筋434aは、構真柱420を間に挟んで分断されている。
【0067】
複数の梁主筋434aの中で構真柱420のウエブ部426の板面に向かって延びている梁主筋434aは、ウエブ部426の手前まで延びている。そして、梁主筋434aの端部には、定着部60が取り付けられている。
【0068】
ここで、梁主筋434aがウエブ部426の手前まで延びているとは、梁主筋434aの端部に取り付けられた定着部60が、建物幅方向において、板面が建物幅方向を向いたフランジ部424からウエブ部426までの領域(図中R4)に位置していることである。
【0069】
また、複数の梁主筋434aの中でフランジ部428の端面に向かって延びている梁主筋434aは、フランジ部428の手前まで延びている。
【0070】
-基礎梁430b-
基礎梁430bは、
図11に示されるように、建物奥行き方向に延びると共に建物幅方向に並んだ複数の梁主筋434bを有しており、複数の梁主筋434bは、建物高さ方向において上方側と下方側とに配置されて2列に並んでいる。そして、複数の梁主筋434bは、構真柱420を間に挟んで分断されている。
【0071】
複数の梁主筋434bの中で建物奥行き方向の奥側から手前側(図中上側から下側)へ、ウエブ部422の板面に向かって延びている梁主筋434bは、ウエブ部422の手前まで延びている。そして、梁主筋434bの端部には、定着部60が取り付けられている。
【0072】
ここで、建物奥行き方向の奥側から手前側へ延びる梁主筋434bがウエブ部422の手前まで延びているとは、梁主筋434bの端部に取り付けられた定着部60が、建物奥行き方向において、板面が建物奥行き方向を向いたフランジ部428からウエブ部422までの領域(図中R5)に位置していることである。
【0073】
さらに、複数の梁主筋434bの中で建物奥行き方向の手前側から奥側(図中下側から上側)へ、ウエブ部422の板面に向かって延びている梁主筋434bは、ウエブ部422の手前まで延びている。そして、梁主筋434bの端部には、定着部60が取り付けられている。
【0074】
ここで、建物奥行き方向の手前側から奥側へ延びる梁主筋434bがウエブ部422の手前まで延びているとは、梁主筋434bの端部に取り付けられた定着部60が、建物奥行き方向において、フランジ部424の端部からウエブ部422までの領域(図中R6)に位置していることである。
【0075】
(作用)
以上の構成により、梁主筋434とコンクリート部との定着力が定着部60を有しない場合と比して強くなっていることで梁主筋434とコンクリート部との剥離が抑制されて、基礎梁430に負荷される荷重が構真柱420の下方に配置されている杭70へ伝達される。
他の作用については、第1実施形態の作用と同様である。
【0076】
<第6実施形態>
本発明の第6実施形態に係る接合構造について
図12に従って説明する。なお、第6実施形態については、第1実施形態に対して異なる部分を主に説明する。
【0077】
(構成)
第6実施形態に係る接合構造510は、建築物80のコーナー部に位置し、
図12に示されるように、構真柱20と、梁主筋534を有した基礎梁530とを備えている。基礎梁530は、梁部材の一例である。
【0078】
〔基礎梁530〕
基礎梁530は、フーチング部12の一部を構成しており、
図12に示されるように、一対設けられている。そして、一方の基礎梁530(以下「基礎梁530a」)は、建物幅方向に延びており、他方の基礎梁530(以下「基礎梁530b」)は、建物奥行き方向に延びている。なお、以下の説明では、基礎梁530aと基礎梁530bとを特に区別しない場合は、末尾のアルファベットを省略することがある。
【0079】
-基礎梁530a-
基礎梁530aは、
図12に示されるように、建物幅方向に延びると共に建物奥行き方向に並んだ複数の梁主筋534aを有しており、複数の梁主筋534aは、建物高さ方向において上方側と下方側とに配置されて2列に並んでいる。
【0080】
建物幅方向の一方側から他方側(図中左側から右側)に延びる複数の梁主筋534aの中で構真柱20のウエブ部22の板面に向かって延びている梁主筋534aは、ウエブ部22の手前まで延びている。そして、梁主筋534aの端部には、定着部60が取り付けられている。
【0081】
また、複数の梁主筋534aの中で構真柱20のフランジ部24の端面に向かって延びている梁主筋534aは、フランジ部24の手前まで延びている。
【0082】
-基礎梁530b-
基礎梁530bは、
図12に示されるように、建物奥行き方向に延びると共に建物幅方向に並んだ複数の梁主筋534bを有しており、複数の梁主筋534bは、建物高さ方向において上方側と下方側とに配置されて2列に並んでいる。
【0083】
建物奥行き方向の奥側から手前側(図中上側から下側)に延びる複数の梁主筋534bの中で構真柱20のウエブ部22の板面に向かって延びている梁主筋534bは、ウエブ部22の手前まで延びている。そして、梁主筋534bの端部には、定着部60が取り付けられている。
【0084】
また、複数の梁主筋534bの中で構真柱20のフランジ部24の端面に向かって延びている梁主筋534bは、フランジ部24の手前まで延びている。
【0085】
(作用)
以上の構成により、梁主筋534とコンクリート部との定着力が定着部60を有しない場合と比して強くなっていることで梁主筋534とコンクリート部との剥離が抑制されて、基礎梁530に負荷される荷重が構真柱20の下方に配置されている杭70へ伝達される。
他の作用については、第1実施形態の作用と同様である。
【0086】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、柱部材として構真柱20、320、420を含んで構成された柱部材50、350、450を用いて説明したが、柱部材は、鉄骨柱を含んで構成されていればよく、例えば、鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)の柱部材でもよく、鉄骨コンクリート造(SC造)の柱部材でもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、梁部材として、基礎梁30、330、430、530を用いて説明したが、基礎梁に限定されることなく、他の梁であってもよく、柱部材と交差していればよい。
【0088】
また、上記実施形態では、定着部60として、機械式定着部を用いて説明したが、梁主筋のコンクリート部に対する定着力が強くなればよく、例えば、梁主筋の端部を押しつぶして拡径させてもよく、梁主筋の端部を曲げて定着長を長くしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では特に説明しなかったが、柱部材が、鉄筋鉄骨コンクリート造の場合には、柱部材のフープ筋を柱梁仕口部にも配置することで、柱梁仕口部のコンクリート部の耐力を向上させてもよい。
【0090】
また、上記第2実施形態では、梁主筋34の上方及び下方に補強バンド120が備えられたが、梁主筋34の上方及び下方の少なくとも一方に補強バンド120が備えられればよい。
【0091】
また、上記第3実施形態では、フーチング部212は、鋼繊維補強コンクリートで形成されたが、繊維で補強されたコンクリートであればよく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維等で補強されていてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、本願の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態の構成を組合せてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 接合構造
12 フーチング部(柱梁仕口部の一例)
20 構真柱(鉄骨柱の一例)
22 ウエブ部
24 フランジ部
30 基礎梁(梁部材の一例)
34 梁主筋
50 柱部材
60 定着部
110 接合構造
120 補強バンド(連結部材の一例)
210 接合構造
212 フーチング部(柱梁仕口部の一例)
310 接合構造
320 構真柱(鉄骨柱の一例)
322 ウエブ部
324 フランジ部
330 基礎梁(梁部材の一例)
334 梁主筋
350 柱部材
410 接合構造
420 構真柱(鉄骨柱の一例)
422 ウエブ部
424 フランジ部
426 ウエブ部
428 フランジ部
430 基礎梁(梁部材の一例)
434 梁主筋
450 柱部材
510 接合構造
530 基礎梁(梁部材の一例)
534 梁主筋