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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133248
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】住宅設備機器
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20230914BHJP
   B05B 1/08 20060101ALI20230914BHJP
   B05B 1/12 20060101ALI20230914BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20230914BHJP
   A47K 10/48 20060101ALI20230914BHJP
   F15C 1/22 20060101ALI20230914BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A47K3/28
B05B1/08
B05B1/12
B05B1/14 Z
A47K10/48 A
F15C1/22
F24F13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036743
(22)【出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2022037196
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022037198
(32)【優先日】2022-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】五味田 愼一
(72)【発明者】
【氏名】灰田 周平
【テーマコード(参考)】
2D132
3L080
4F033
【Fターム(参考)】
2D132FA01
2D132FA03
2D132FB02
2D132FB03
2D132FJ11
2D132FJ17
2D132FJ23
3L080AA02
3L080AA03
4F033AA04
4F033AA05
4F033AA06
4F033AA07
4F033AA08
4F033AA09
4F033AA11
4F033BA01
4F033BA03
4F033CA11
4F033DA05
4F033EA01
4F033GA04
4F033GA11
4F033JA01
4F033LA05
4F033LA06
4F033LA09
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】小型化に有利で、複数の出口から互いに異なる位相の脈動流を吐出できる住宅設備機器を提供することにある。
【解決手段】ある態様の住宅設備機器100は、流体発振素子10と、流体発振素子10の吐出口2に接続され、複数の分岐出口61、62を有する分岐流路6と、複数の分岐出口61、62にそれぞれ接続され、各分岐出口からの流体を開放空間に吐出する複数の流路出口271、272と、を備える。流路出口271、272は、脈動流を吐出し、流体発振素子10の吐出口2より下流に位置する各流体通路の最も狭窄した部分の断面積の総和が流体発振素子10の吐出口2の断面積以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体発振素子と、
前記流体発振素子の吐出口に接続され、複数の分岐出口を有する分岐流路と、
を備え、
前記複数の分岐出口から脈動流を吐出し、
前記流体発振素子の吐出口より下流に位置する各流体通路の最も狭窄した部分の断面積の総和が流体発振素子の吐出口の断面積以上である、
住宅設備機器。
【請求項2】
前記分岐出口の断面積の総和は、前記流体発振素子の吐出口の断面積以上である、請求項1に記載の住宅設備機器。
【請求項3】
前記複数の分岐出口にそれぞれ接続され、前記分岐出口からの流体を開放空間に吐出する複数の流路出口を更に備える、請求項1に記載の住宅設備機器。
【請求項4】
前記流路出口の断面積の総和は、前記流体発振素子の吐出口の断面積以上である、請求項3に記載の住宅設備機器。
【請求項5】
前記複数の分岐出口にそれぞれ接続され、前記分岐出口からの流体を前記流路出口に伝達する複数の伝達流路を備え、
前記複数の伝達流路の断面積の総和は、前記流体発振素子の吐出口の断面積以上である、請求項3に記載の住宅設備機器。
【請求項6】
前記流体発振素子の吐出口よりも下流に開放空間から流体を吸入可能な吸入開口を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の住宅設備機器。
【請求項7】
前記吸入開口の上流側近傍に、流体通路に突出する突起部を有する、請求項6に記載の住宅設備機器。
【請求項8】
前記流体発振素子は、流入口及び単一の出口を有する流路を含み、当該出口は前記吐出口であり、
前記吐出口から直進流を吐出する第1吐出形態と、前記吐出口から波状流を吐出する第2吐出形態とに切替えるための吐出形態切替部を有し、
前記吐出形態切替部は、前記流路の側壁の一部であって、流路本体に対して回転することにより前記第1吐出形態と前記第2吐出形態とを切替え可能な切替部材を含む、請求項1に記載の住宅設備機器。
【請求項9】
前記切替部材の回転軸線を囲む周面のうち前記流路本体と接する面は、部分円錐状の凸面及び部分円筒状の凸面の少なくとも一方を有し、
前記流路本体の前記切替部材と接する面は、部分円錐状の凹面及び部分円筒状の凹面の少なくとも一方を有する、請求項8に記載の住宅設備機器。
【請求項10】
前記吐出口に接続され、複数の分岐出口を有する分岐流路と、前記分岐出口に接続され、開放空間につながる複数の噴出口を有する伝達流路と、をさらに備え、
前記伝達流路は、前記第1吐出形態では前記複数の噴出口から直進流を噴出し、前記第2吐出形態では前記複数の噴出口から、流量と進行方向の少なくとも一方が時間的に変化する噴流を流下する、請求項8から9のいずれか1項に記載の住宅設備機器。
【請求項11】
流体発振素子と、
前記流体発振素子の吐出口に接続され、複数の分岐出口を有する分岐流路と、
を備え、
前記分岐出口に流体の流れを整流する整流部材を設け、前記複数の分岐出口から脈動流を吐出する、
住宅設備機器。
【請求項12】
前記整流部材は、メッシュ状に形成された複数の通流孔を有する、請求項11に記載の住宅設備機器。
【請求項13】
前記整流部材は、外側から見て凹部および凸部が周方向に連続して形成されている、請求項11に記載の住宅設備機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1開示は、住宅設備機器に関する。
【背景技術】
【0002】
第1開示の背景を説明する。例えば、特許文献1には、加圧した流体に作用して流体液滴の発振する噴霧の形態にて排出流れを発生させる流体発振装置が記載されている。この装置は、流体の入口と、一対のパワーノズルと、入口とパワーノズルとの間にて1対の側壁を有する境界面を備える経路と、ノズルからの流れを受け取る相互作用室と、パワーノズルからの流れの不安定性を増大させる手段とを備える。この装置は、広範囲の作動温度に亙って空間的に均一な液滴の分布状態にて発振する流体ジェットを発生させることを目的に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-517762号公報
【特許文献2】特開2008-274634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、複数の出口から脈動流を吐出するための機構を検討し、次の新たな認識を得た。特許文献1に記載の流体発振装置は、発振する単一の流体ジェットを発生させることはできるが、複数の流体ジェットを発生させることはできない。この装置を用いて複数の流体ジェットを発生させるためには、複数の流体発振装置を備える必要があるため、この装置は小型化に不利である。
【0005】
第1開示の目的の1つは、小型化に有利で、複数の出口から脈動流を吐出できる住宅設備機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、第1開示のある態様は住宅設備機器である。ある態様の、住宅設備機器は、流体発振素子と、流体発振素子の吐出口に接続され、複数の分岐出口を有する分岐流路と、複数の分岐出口にそれぞれ接続され、各分岐出口からの流体を開放空間に吐出する複数の流路出口と、を備える。流路出口は、脈動流を吐出し、流体発振素子の吐出口より下流に位置する各流体通路の最も狭窄した部分の断面積の総和が流体発振素子の吐出口の断面積以上である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の住宅設備機器の斜視図である。
図2】第1実施形態の住宅設備機器の一例を示す平面図である。
図3】流体発振素子の発振の過程を説明する第1の図である。
図4】流体発振素子の発振の過程を説明する第2の図である。
図5】流体発振素子の発振の過程を説明する第3の図である。
図6】流体発振素子の発振の過程を説明する第4の図である。
図7】第1実施形態の住宅設備機器の伝達流路の内部空間を示す平面図である。
図8】第1実施形態の住宅設備機器の流体の流れを示す第1の図である。
図9】第1実施形態の住宅設備機器の流体の流れを示す第2の図である。
図10】第1実施形態の住宅設備機器の流体の流れを示す第3の図である。
図11】第1脈動流と第2脈動流の流量変化を示す図である。
図12図1のA-A線に沿った縦断面を示す図である。
図13図1の住宅設備機器のB-B線に沿った横断面を示す図である。
図14図1の住宅設備機器のC-C線に沿った縦断面を示す図である。
図15図1の住宅設備機器のD-D線に沿った横断面を示す図である。
図16】第1実施形態の住宅設備機器の吸入開口の一例を示す図である。
図17】第1実施形態の住宅設備機器の突起部の一例を示す図である。
図18】第2実施形態の住宅設備機器の斜視図である。
図19】第2実施形態の住宅設備機器の一例を示す平面図である。
図20】第2実施形態の住宅設備機器の第1吐出形態を示す平面図である。
図21】第2実施形態の住宅設備機器の第2吐出形態を示す平面図である。
図22】第2実施形態の住宅設備機器の2つの側壁を回転させた状態を示す平面図である。
図23】第2実施形態の住宅設備機器の別例の第1吐出形態を示す平面図である。
図24】第2実施形態の住宅設備機器の別例の第2吐出形態を示す平面図である。
図25】第3実施形態の住宅設備機器の斜視図である。
図26】流体発振素子および分岐流路の内部を示す断面図である。
図27図25の住宅設備機器のE-E線に沿った縦断面を示す図である。
図28】第4実施形態の住宅設備機器の斜視図である。
図29図28の住宅設備機器のF-F線に沿った横断面を示す図である。
図30図28の住宅設備機器のG-G線に沿った縦断面を示す図である。
図31】整流部材の斜視図である。
図32】整流部材の側面図である。
図33】整流部材の縦断面図である。
図34】別の整流部材の斜視図である。
図35図30のH方向から見た分岐出口付近を示す矢視図である。
図36図30のH方向から見た分岐出口付近の別の例を示す矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、第1開示及び第2開示に関する実施形態を説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素の一部を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書で言及する構造及び形状に言及している内容に厳密に一致する構造及び形状のみでなく、寸法誤差、製造誤差等の誤差の分だけずれた構造及び形状も含む。各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0009】
第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられる。この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって第1開示及び第2開示の構成が限定されるものではない。以下の各実施形態は、第1開示及び第2開示の内容理解を助けるために例示するものであり、第1開示及び第2開示の構成を限定するものではない。
【0010】
第1開示及び第2開示の技術は、流体を吐出する吐出装置を備える各種の住宅設備機器に適用できる。この流体に限定はなく、気体であってもよいし、液体であってもよいし、混相流体であってもよい。一例として第1開示及び第2開示の住宅設備機器は、液体を吐出する装置に適用できる。このような装置としてはシャワー、水栓、散水装置、薬液散布装置等が挙げられる。一例として第1開示及び第2開示の住宅設備機器は、気体を吐出する装置に適用できる。このような装置としては乾燥機、ヘアドライヤ、ハンドドライヤ、冷暖房機器等が挙げられる。一例として第1開示及び第2開示の住宅設備機器は、混相流体を吐出する装置に適用できる。このような装置としては気泡を含んだ浴室シャワー、手洗い水栓装置等が挙げられる。
【0011】
[第1実施形態]
ユーザビリティ、デザイン性の観点から、住宅設備機器は小型化されることが望ましく、小型化されることによって適用可能な範囲を広げることもできる。特許文献1に記載の装置のように、単一の流体ジェットを発生させる装置では、複数の流体ジェットを発生させるために、複数の流体発振装置を備える必要があり小型化に不利である。
【0012】
複数の出口から脈動流を吐出するために、インペラ、歯車等の可動部品を付加する構成も考えられるが、この場合、可動部品の摩耗、ゴミ噛み等によって故障することがある。
【0013】
第1開示の住宅設備機器は、これらの知見に基づいてなされたものであり、可動部品を使用しなくても複数の脈動流を実現できる。可動部品がないので摩耗やゴミ噛みによって故障することが殆どない。一例として、洗浄用途に適用すれば、複数の脈動流によって良好な洗浄効果を奏し得る。一例として、人体に吐出する用途に適用すれば複数の脈動流によって良好なマッサージ感を与え得る。以下、第1実施形態を参照して第1開示の技術を説明する。
【0014】
第1実施形態の住宅設備機器100の工夫点を説明する。図1図2を参照する。第1開示の第1実施形態は、湯水を人体に吐出してマッサージ感を与える吐水装置として利用可能な住宅設備機器100である。以下、住宅設備機器100を機器100ということがある。機器100は、流体発振素子10と、流体発振素子10の吐出口2に接続され、複数の分岐出口61、62を有する分岐流路6と、複数の分岐出口61、62それぞれからの流体を開放空間に吐出する複数の流路出口271、272を有する複数の伝達流路7L、7Rと、を備える。複数の伝達流路7L、7Rは、複数の内部空間7P、7Qに形成される流路である。複数の伝達流路7L、7Rは、複数の脈動流を吐出する。複数の伝達流路7L、7Rから吐出される複数の脈動流は、互いに異なる位相で流量が同じ周期で変化してもよい。なお、第1実施形態の説明では、開放空間へ小穴から噴きだす流れを「噴流」といい、揺れ動く噴流を「揺動流」といい、脈打つ噴流を「脈動流」という。噴流は揺動流と脈動流を含んだ概念をいう。
【0015】
第1実施形態の説明において、脈動流の周期は脈動流の流量の時間的な変化の周期をいい、複数の脈動流の位相が異なることは、複数の脈動流の流量極大のタイミングが異なっていることを含む。同じ周期の複数の脈動流の一方が流量極大であるとき、他方が流量極小である場合を逆相という。この周期は一定であってもよいし、変化してもよい。
【0016】
説明の便宜上、図示のように、平面上において、流体発振素子10の吐出方向に沿った平面上の前後方向をX方向といい、平面上で前後方向に直交する左右方向をY方向といい、鉛直な上下方向をZ方向という。X方向で矢印の方向を「後」、「後方」と、矢印と逆方向を「前」、「前方」という。Y方向で矢印の方向を「右」、「右方」と、矢印と逆方向を「左」、「左方」という。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する。これらは厳密に直交している場合に限らず、ほぼ直交している場合も含む。このような方向の表記は機器100の使用姿勢を制限するものではなく、機器100は用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0017】
図3図4図5図6も参照して、本実施形態の流体発振素子10の動作原理を説明する。図3に示すように、主流体Mが第2中間壁部56側に偏って流れている場合、主流体Mは、コアンダ効果によって第2中間壁部56の壁面に沿って流れる(円P)。このとき、第2フィードバック経路12に帰還流体Bが流れ込む(円Q)。
【0018】
図4に示すように、第2フィードバック経路12に流れた帰還流体Bは、上流部131において主流体Mに圧力を加える。主流体Mは、帰還流体Bからの圧力に押され、第2中間壁部56から剥離し、剥離後の空間に渦W1が発生する(円P)。
【0019】
図5に示すように、渦W1は、徐々に成長して大きな渦になり、主流体Mに第1中間壁部55側への圧力を加える。主流体Mが第1中間壁部55に接近すると、主流体Mは、コアンダ効果によって第1中間壁部55の壁面に沿って流れる(円P)。このとき、第1フィードバック経路11に帰還流体Bが流れ込む(円Q)。
【0020】
図6に示すように、第1フィードバック経路11に流れた帰還流体Bは、上流部131において主流体Mに圧力を加える。主流体Mは、帰還流体Bからの圧力に押され、第1中間壁部55から剥離し、剥離後の空間に第2の渦W2が発生し、渦W1は小さくなっていく。このように、主流体Mと第2中間壁部56との間の渦W1と、主流体Mと第1中間壁部55との間の渦W2とが交互に発生、成長、縮小を繰り返すことにより、流体発振素子10は、主流体Mの吐出方向が周期的に変化する発振状態に達する。この結果、流体発振素子10は、吐出口2から波状流Jを吐出する。これらの図に示すように、波状流Jは、進行方向がスイングする流体の流れということができる。
【0021】
図1図2を参照して、分岐流路6を説明する。分岐流路6は、吐出口2に接続される分岐入口63と、複数の分岐出口61、62を有する。分岐入口63は、分岐流路本体68の上流端に設けられ、分岐出口61、62は、分岐流路本体68の下流端に設けられる。図1の例では、分岐入口63から前向きに流入した流体は、分岐流路6で2方向に分岐し、略90°曲がり、分岐出口61、62それぞれから下向きに吐出される。
【0022】
図1図7を参照して、複数の伝達流路7L、7Rを説明する。複数の伝達流路7L、7Rを総称するときは伝達流路7という。図7では、複数の伝達流路7L、7Rの内部空間を露出して示している。伝達流路7は、伝達流路本体70と、分岐出口61、62に接続される伝達入口73、74と、伝達入口73、74それぞれからの流体を開放空間に吐出する流路出口271、272を有する。図1の例では、伝達流路7Lは、伝達入口73と、複数行(この例では20行)、複数列(この例では4列)にマトリックス状に配置された複数(この例では80)の流路出口271を有する。伝達流路7Rは、伝達入口74と、複数行(この例では20行)、複数列(この例では4列)にマトリックス状に配置された複数(この例では80)の流路出口272を有する。
【0023】
伝達流路本体70は、伝達流路7L、7Rを包囲する外殻である。伝達流路本体70は、前後方向に長手方向を有する上下に扁平な箱体であり、平面視で矩形状を示す。伝達流路7Lは、伝達入口73及び流路出口271に連通し、伝達流路7Rは、伝達入口74及び流路出口272に連通する。伝達入口73、74は、伝達流路本体70の天井部から上方に突出するパイプ状の部分であり、内部空間の上側に通じる。伝達入口73、74は、天井部の前後2等分線に沿って左右に並置される。伝達入口73、74は、左右方向に配置される。流路出口271、272は、伝達流路本体70の底部に設けられた開口であり、内部空間の下側に通じる。
【0024】
伝達流路本体70の内部空間は、周囲を周壁部79で囲まれた空間で、底部の左右2等分線に沿って伸びる隔壁77によって左右に仕切られる。伝達流路7Lは隔壁77の左側の空間を含み、伝達流路7Rは隔壁77の右側の空間を含む。
【0025】
図8図9図10図11を参照して、機器100の流体の流れを説明する。図8図9図10は、機器100の流体の流れを模式的に示している。
【0026】
流路出口271から吐出される脈動流を第1脈動流K1といい、流路出口272から吐出される脈動流を第2脈動流K2という。
【0027】
図11は、第1脈動流K1と第2脈動流K2の流量変化を示す図である。脈動流は、流量と流速の少なくとも一方が時間的に変化する流体の流れであってもよい。図11の例では、第1脈動流K1と第2脈動流K2は同じ周期で脈動し、第1脈動流K1が極大になるタイミングT1で、第2脈動流K2は極小になり、第2脈動流K2が極大になるタイミングT3で、第1脈動流K1は極小になる。タイミングT1とタイミングT3の中間で、第1脈動流K1と第2脈動流K2の流量が同じになるタイミングをタイミングT2、T4という。脈動流の極小流量は、ゼロであってもよいし、ゼロよりも大であってもよい。脈動流の極小流量と極大流量の比(極大流量/極小流量)を脈動流のコントラスト比ということがある。
【0028】
図3図4図5図6に示すように、流体発振素子10の吐出口2から吐出された波状流Jは、進行方向が時間的に左右に変化する。以下、波状流Jの進行方向が右向きの場合、左向きの場合、及び直進の場合について、流体の流れを説明する。
【0029】
図8に示すタイミングT1の状態では、吐出口2から吐出された流体Jは、分岐流路6の分岐入口63から斜め右向きに進み、分岐出口61と伝達入口73を通り、伝達流路7Lの内部に流入する。分岐出口61を流れる流体を第1流体J1という。伝達流路7Lに流入した第1流体J1は、複数の流路出口271から開放空間に第1脈動流K1として吐出される。図8の例では、第1脈動流K1は、図中で左方に吐出される。
【0030】
図10に示すタイミングT3の状態では、吐出口2から吐出された流体Jは、分岐流路6の分岐入口63から斜め左向きに進み、分岐出口62と伝達入口74を通り、伝達流路7Rの内部に流入する。分岐出口62を流れる流体Jを第2流体J2という。伝達流路7Rに流入した第2流体J2は、複数の流路出口272から開放空間に第2脈動流K2として吐出される。図10の例では、第2脈動流K2は、図中で左方に吐出される。
【0031】
図9に示すタイミングT2、T4の状態では、吐出口2から吐出された流体Jは、分岐流路6の分岐入口63から直進する。このため、流体Jは、分岐入口63で第1流体J1と第2流体J2とに分岐し、図8図10の各経路を同時に流れる。第1流体J1は、複数の流路出口271から開放空間に第1脈動流K1として吐出され、第2流体J2は、複数の流路出口272から開放空間に第2脈動流K2として吐出される。
【0032】
図12図13図14図15を参照して、各流体通路の流体の流れに垂直な断面の面積(以下、単に「断面積」という)を説明する。図12の符号S2は、A-A線断面における流体発振素子10の吐出口2の断面積を示す。図13の符号S61、S62は、B-B線断面における分岐出口61、62の断面積を示す。図14の符号S7L、S7Rは、C-C線断面における伝達流路7L、7Rの断面積を示す。図15の符号S271、S272は、C-C線断面における流路出口271、272の断面積を示す。
【0033】
本願発明者らが実験を重ねた結果、流体発振素子10の下流にある流体通路の断面積が、流体発振素子10の下流端(吐出口2)の断面積以上である場合に、好ましいコントラスト比を有する脈動流K1、K2を実現しやすいことが示唆された。これは、下流にある流体通路の断面積が狭いと、下流側で流体が滞留しやすくなり、流体が滞留すると、タイミングT1で第2脈動流K2の極小流量がゼロにならず、タイミングT3で第1脈動流K1の極小流量がゼロにならないため、コントラスト比が低くなるためと考えられる。流体通路の断面積は、流体通路が複数の通路に分岐する場合は、分岐した各通路の断面積の総和で考えることができる。なお、流体発振素子10の下流にある流体通路のすべての断面積を流体発振素子10の下流端の断面積以上に構成してもよい。
【0034】
機器100では、分岐出口61、62の断面積S61、S62の総和(S61+S62)は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。断面積S61、S62は、分岐流路6の各流体通路の最小断面積を有する部分の断面積であり得る。機器100では、伝達流路7の内部空間の断面積S7L、S7Rの総和(S7L+S7R)は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。断面積S7L、S7Rは、伝達流路7の伝達流路7L、7Rの最小断面積を有する部分の断面積であり得る。機器100では、複数の流路出口271、272の断面積S271、S272の総和(80×S271+80×S272)は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。断面積S271、S272は、複数の流路出口271、272の各出口の最小断面積を有する部分の断面積であり得る。
【0035】
断面積S61、S62の総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。断面積S7L、S7Rの総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。断面積S271、S272の総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。これらの面積比が1.2倍以上の場合、所望のコントラスト比を有する脈動流K1、K2を実現しやすく、好ましい洗浄効果、好ましいマッサージ効果等を得うる。
【0036】
図16を参照して、機器100の吸入開口91を説明する。複数の流路出口271、272からの吐出量が多いほど強い洗浄力、またはマッサージ感を与えることができる。発明者らは試作検討を重ねた結果、外部からの流体を吸入できる吸入穴を流体発振素子の下流側に設けることで流路出口271、272からの吐出量が増加することを見出した。そこで、第1実施形態の機器100は、流体発振素子10の吐出口2よりも下流に開放空間から流体を吸入可能な吸入開口91を有する。図16の例では、吸入開口91は、分岐流路6の底部67において、分岐入口63の下流であって分岐出口61、62へ分岐する前の位置に設けられた下向きの開口である。吸入開口91の形状、大きさ、位置等は、所望の吐出量に応じて、シミュレーション等により設定できる。
【0037】
図16図17を参照して、機器100の突起部92の一例を説明する。図17は、吸入開口91及び突起部92の中心線CLに沿った縦断面を示している。発明者らは実験を重ねた結果、吸入開口91を設ける場合、流量が多くなるほど、波状流Jが吸入開口91から外部へ逆流しやすいことを見出した。逆流を減らす観点から、流体を吸入開口91から遠ざけることが望ましい。そこで、第1実施形態の機器100は、吸入開口91の上流側近傍に、流体通路に突出する突起部92を有する。
【0038】
図17の例では、突起部92は、底部67において、吸入開口91の上流側近傍に設けられており、平面視で、上流側から下流側に向かって左右幅が徐々に大きくなる略台形形状を有する。この例では、突起部92の上面は、上流側から下流側に向かって底部67からの高さが徐々に大きくなる傾斜面921を含む。突起部92が、略台形形状を有し、傾斜面921を含むことにより、流路抵抗の増加を抑制できる。逆流を減らす観点から、突起部92の下流側から庇のように突き出るオーバーハング部922を吸入開口91の上方に設けてもよい。
【0039】
次に、第1実施形態の住宅設備機器100の特徴を説明する。
【0040】
住宅設備機器100は、流体発振素子10と、流体発振素子10の吐出口2に接続され、複数の分岐出口61、62を有する分岐流路6と、複数の分岐出口61、62にそれぞれ接続され、各分岐出口からの流体を開放空間に吐出する複数の流路出口271、272と、を備える。流路出口271、272は、脈動流K1、K2を吐出し、流体発振素子10の吐出口2より下流に位置する各流体通路の最も狭窄した部分の断面積の総和が流体発振素子10の吐出口2の断面積以上である。
【0041】
この構成によれば、単一の流体発振素子10を用いて複数の脈動流K1、K2を吐出できるので、複数の流体発振装置を備える場合に比べて小型化に有利である。可動部品を備えないので、可動部品の摩耗、ゴミ噛み等によって故障する可能性を低くできる。機器100を洗浄用途に適用した場合、複数の脈動流K1、K2によって、良好な洗浄効果を得ることができる。機器100を人体に吐出する用途に適用した場合、複数の脈動流K1、K2によって、良好なマッサージ感を与えることができる。
【0042】
住宅設備機器100では、分岐出口61、62の断面積の総和は、流体発振素子10の吐出口2の断面積以上である。この場合、好ましいコントラスト比を有する脈動流K1、K2を容易に実現できる。
【0043】
住宅設備機器100では、流路出口271、272の断面積の総和は、流体発振素子10の吐出口2の断面積以上である。この場合、好ましいコントラスト比を有する脈動流K1、K2を容易に実現できる。
【0044】
住宅設備機器100は、複数の分岐出口61、62にそれぞれ接続され、各分岐出口からの流体を流路出口271、272に伝達する複数の伝達流路7L、7Rを備える。複数の伝達流路7L、7Rの断面積の総和は、流体発振素子10の吐出口2の断面積以上である。この場合、好ましいコントラスト比を有する脈動流K1、K2を容易に実現できる。住宅設備機器100は、伝達流路7L、7Rを備えることにより、流路出口271、272と流体発振素子10の間の距離を離すことができ、住宅設備機器100の使いやすさや美観を損なうことなく搭載できる。
【0045】
住宅設備機器100は、流体発振素子10の吐出口2よりも下流に開放空間から流体を吸入可能な吸入開口91を有する。この場合、外部からの流体の吸入によって、複数の流路出口271、272からの吐出量を増やせる。
【0046】
住宅設備機器100は、吸入開口91の上流側近傍に、流体通路に突出する突起部92を有する。この場合、流体を吸入開口91から遠ざけて、吸入開口91からの逆流を減らせる。
【0047】
以上が第1実施形態の説明である。
【0048】
以下、第1実施形態の変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、第1実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略し、第1実施形態と相違する構成を重点的に説明する。
【0049】
第1実施形態の説明では、流路出口271と流路出口272が、対称に配置された同形状の出口を同数有する例を示したが、これに限定されない。これらの出口の配列は非対称であってもよいし、これらの出口は互いに異形状であってもよいし、互いに異なる個数であってもよい。
【0050】
第1実施形態の説明では、分岐流路6で2分岐する例を示したが、これに限定されない。分岐流路は、流体を3以上に分岐させてもよい。この場合、伝達流路の内部空間を分岐数と同数に区分して各分岐流を導入し、3以上の脈動流を吐出できる。
【0051】
第1実施形態の説明では、分岐流路6が90°屈曲する例を示したが、これに限定されない。分岐流路は、屈曲していなくてもよいし、90°とは異なる角度で屈曲してもよい。
【0052】
第1実施形態の説明では、吸入開口91及び突起部92が分岐流路6の底部67に設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、吸入開口及び突起部を、分岐流路の天井部、側壁部等に設けることができる。
【0053】
第1実施形態の説明では、フィードバック経路が、主経路13の下流部132から上流部131に主流体Mの一部をフィードバックする経路である例を示したが、これに限定されない。例えば、フィードバック経路は分岐流路の下流部から吐出口2近傍へ流体の一部をフィードバックする経路であってもよい。吐出口2が波状流を流下する限りフィードバック流路の有無と接続位置は限定されない。流体発振素子としては、流体発振素子10の構成に限定されず、公知の原理に基づいて流体発振素子として機能しうるすべての構成を採用できる。
【0054】
第2開示の背景を説明する。例えば、特許文献2には、湯水の吐水形態の切替えと流量調節が可能な吐水装置が記載されている。この装置は、ボタンを押すことによって吐水される湯水の吐水形態を第1通水孔からの吐水と第2通水孔からの吐水とに交互に切替える切替部材を備えている。この切替部材は、各通水孔から吐水される湯水の流量を調節する流量調節部材を有しており、この流量調節部材をボタンと連繋させることにより、ボタンの操作により湯水の吐水形態の切替えと流量調節を行う。
【0055】
本願発明者は、吐出口から異なる形態の吐出流を切替えて吐出するための機構を検討し、次の新たな認識を得た。特許文献2に記載の装置は、ボタンを押して切替部材を進退させることにより吐水される湯水の噴出形態を切替えるために、切替部材を進退させるための空間を必要とする。この装置は、操作を容易にするために進退状態の保持装置が設けられているため、さらに空間を必要とする。これらの空間が必要なため、この装置は装置全体の小型化に不利である。
【0056】
第2開示の目的の1つは、小型化に有利で、異なる形態の吐出流を切替えて吐出できる住宅設備機器を提供することにある。
【0057】
前述の課題を解決するために、第2開示のある態様の住宅設備機器は、流入口及び単一の吐出口を有する流路と、吐出口から直進流を吐出する第1吐出形態と、吐出口から波状流を吐出する第2吐出形態とに切替えるための吐出形態切替部と、を備える。吐出形態切替部は、流路の側壁の一部であって、流路本体に対して回転することにより第1吐出形態と第2吐出形態とを切替え可能な切替部材を含む。
【0058】
[第2実施形態]
ユーザビリティ、デザイン性の観点から、住宅設備機器は小型化されることが望ましく、小型化されることによって適用可能な範囲を広げることもできる。特許文献1に記載の装置のように、切替部材を進退させるものでは、切替部材の進退空間などの切替部材に関する空間を設けると、その空間に関連して装置が大型化し、小型化に不利である。この装置は、単一の出口から複数形態の流れを切り替えて吐出できず、第1噴出形態用の第1の流路及び通水孔と、第2噴出形態用の第2の流路及び通水孔とを別々に備える。これらから、この装置は、大型化、複雑化する不利な側面を有する。第2開示は、これらの知見に基づいてなされたものであり、以下、第2実施形態を参照して第2開示の技術を説明する。
【0059】
第2実施形態の住宅設備機器200の工夫点を説明する。図18図19を参照する。第2開示の第2実施形態は、湯水を吐出するシャワーとして利用可能な住宅設備機器200である。以下、住宅設備機器200を機器200ということがある。機器200は、流路3と、吐出形態切替部4と、分岐流路6と、伝達流路7とを備える。流路3は、流入口1及び単一の吐出口2を有する流路本体5を含む。吐出形態切替部4は、吐出口2から直進流Fを吐出する第1吐出形態と、吐出口2から波状流Jを放射状に吐出する第2吐出形態とに切替えるための機構である。吐出形態切替部4は、流路3の側壁の一部であって、流路本体5に対して回転することにより第1吐出形態と第2吐出形態とを切替え可能な切替部材42を含む。なお、第2実施形態の説明では、開放空間へ小穴から噴きだす流れを「噴流」といい、揺れ動く噴流を「揺動流」といい、脈打つ噴流を「脈動流」という。噴流は揺動流と脈動流を含んだ概念をいう。
【0060】
説明の便宜上、図示のように、平面上において、流路3の吐出方向に沿った平面上の前後方向をX方向といい、平面上で前後方向に直交する左右方向をY方向といい、鉛直な上下方向をZ方向という。X方向で矢印の方向を「後」、「後方」と、矢印と逆方向を「前」、「前方」という。Y方向で矢印の方向を「右」、「右方」と、矢印と逆方向を「左」、「左方」という。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する。これらは厳密に直交している場合に限らず、ほぼ直交している場合も含む。このような方向の表記は機器200の使用姿勢を制限するものではなく、機器200は用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0061】
流路3の構成を説明する。流路3では、流入口1に外部から供給された流体が流路本体5を流れ、吐出口2から吐出される。流路本体5は、図18図19に示すように、流体の経路となる経路空間18を包囲する箱状の部材である。流路本体5は、経路空間18を挟む天井部51及び底部52と、経路空間18を左右に3分するための中間壁部55、56と、経路空間18を側方から包囲する外壁部57、58とを有する。流入口1は、経路空間18に流体を供給するように、流路本体5の上流端に設けられる。吐出口2は、経路空間18からの流体を吐出するように、流路本体5の下流端に設けられる。中間壁部55、56は、流路3の左右2等分線(以下、中心線CLと表記する)を挟んで対称に設けられる第1中間壁部55と、第2中間壁部56を含む。流入口1及び吐出口2の左右中心は中心線CL上に位置する。
【0062】
流路3は、発振条件を満たすとき流体発振素子10を構成する。以下、流体発振素子としての機能を説明する場合は、流路3を流体発振素子10と表記することがある。流体発振素子10は、発振条件を満たす場合、吐出口2から波状流Jを吐出し、発振条件を満たさない場合、吐出口2から直進流Fを吐出する。波状流Jは、吐出口2からの吐出方向が周期的に変化する。波状流Jは、その吐出形態から運動流、揺動流等と称されることがある。直進流Fは、吐出口2から吐出方向が略一定の流れで、中心線CLに平行な流れ、中心線CLに対して傾斜した流れを含む。直進流Fは、非運動流、非揺動流等と称されることがある。流体発振素子としては、カルマン渦を生成して波状の運動噴流を誘起するもの、コアンダ効果を利用して波状の運動噴流を誘起するもの等、公知の原理に基づく流体発振素子を採用できる。流体発振素子そのものは公知であるから詳細な説明は省略する。
【0063】
図20図21も参照する。本実施形態の流体発振素子10は、主経路13と、第1フィードバック経路11と、第2フィードバック経路12と、を有する。第1フィードバック経路11と第2フィードバック経路12を総称するときはフィードバック経路という。主経路13は、中心線CL上に沿って延びる経路で、第1中間壁部55と第2中間壁部56の間に形成される部分と、外壁部57、58の間に形成される部分とを含む。主経路13には、流入口1から供給される流体が吐出口2に向かって流れる。以下、図20図21に示すように、主経路13を流れる流体を「主流体M」という。
【0064】
第1フィードバック経路11は、主経路13の左方において略X方向に延びる経路である。第1フィードバック経路11は、第1中間壁部55と第1外壁部57の間に形成される。第2フィードバック経路12は、主経路13の右方において略X方向に延びる経路である。第2フィードバック経路12は、第2中間壁部56と第2外壁部58の間に形成される。第1フィードバック経路11と第2フィードバック経路12は、対称に構成できる。フィードバック経路は、主経路13の下流部132から上流部131に主流体Mの一部をフィードバックする経路である。以下、フィードバック経路を流れる流体を「帰還流体B」という。
【0065】
本実施形態の流体発振素子10の構成は、第1実施形態の流体発振素子10と同様であり、重複する説明を省く。本実施形態の流体発振素子10の動作原理は、第1実施形態の流体発振素子10と同様であり、図3図4図5図6及びその説明が適用される。
【0066】
流体発振素子10は、帰還流体Bの流量を閾値よりも小さくすることにより発振を停止させることができる。このために、フィードバック経路を塞いでもよいし、フィードバック経路を狭くしてもよい。流体発振素子10は、主経路13とフィードバック経路の少なくとも一方の対称性を崩すことにより、発振を停止させることができる。図20に示す第1吐出形態では、流体発振素子10は、切替部材42を回転させて、フィードバック経路を狭くして発振を停止させる。図21に示す第2吐出形態では、流体発振素子10は、切替部材42を回転させて、フィードバック経路を広くして発振を誘起する。
【0067】
吐出形態切替部4を説明する。吐出形態切替部4は、第1吐出形態と第2吐出形態とを切替えることができる。図18に示すように、吐出形態切替部4は、開口支持部41と、切替部材42と、接続軸部43と、取付部44と、Oリング45と、操作部46とを含む。開口支持部41は、主経路13の上流部131の上部において、天井部51に形成された円形開口の周囲を囲む円環状の部分である。開口支持部41は、天井部51と一体に形成されてもよいし、天井部51とは別体に形成されてもよい。
【0068】
切替部材42は、切替部材42の回転軸線を囲む周面に、流路本体5と接する面422を有する。図19図20に示すように、流路本体5に対してスムーズに回転するために、面422は、切替部材42の回転軸線と同軸な円弧に沿った面であることが望ましい。この観点から、面422は、部分円錐状の凸面及び部分円筒状の凸面の少なくとも一方を有することができる。面422が部分円錐状の凸面である場合、流路本体5の切替部材42と接する面522は、部分円錐状の凹面であり得る。面422が部分円筒状の凸面である場合、面522は、部分円筒状の凹面であり得る。
【0069】
図19の例では、面422は、部分円筒状の凸面を有し、面522は、部分円筒状の凹面を有する。図19の例では、切替部材42は、略四分円を底面とする柱体である2つの部分円柱部423、424を有する。図19の状態では、2つの部分円柱部423、424は、中心線CLを挟んで対称に配置される。部分円柱部423、424は、略四分円を上下に移動させてできる立体形状を有する。切替部材42は、上下に伸びる回転軸線の周りに回転することにより、主経路13とフィードバック経路の少なくとも一方を狭める機能と、広げる機能とを有する。
【0070】
図18に示すように、接続軸部43は、切替部材42に固定され、切替部材42から上方に延びる部材であり、接続軸部43の外周には、Oリング45が装着される。接続軸部43は、操作部46の下面に設けられた挿入孔に嵌合することにより、操作部46に連結される。取付部44は、スクリュウ等の固定具により開口支持部41に取り付けられ、切替部材42と、接続軸部43と、操作部46とを回転可能に支持する。操作部46は、使用者が切替部材42を回転させるために操作を入力する操作用のつまみである。操作部46は、接続軸部43に接続され、操作部46を回転させることにより、接続軸部43と切替部材42とが一体に回転する。
【0071】
図18図19を参照して、分岐流路6を説明する。分岐流路6は、吐出口2に接続される分岐入口63と、複数の分岐出口61、62を有する。分岐入口63は、分岐流路本体68の上流端に設けられ、分岐出口61、62は、分岐流路本体68の下流端に設けられる。図18の例では、分岐入口63から前向きに流入した流体は、分岐流路6で2方向に分岐し、略90°曲がり、分岐出口61、62それぞれから下向きに吐出される。
【0072】
図18を参照して、伝達流路7を説明する。伝達流路7は、分岐出口61、62に接続される伝達入口73、74と、開放空間につながる複数の噴出口71、72を有する。伝達入口73、74は、伝達流路本体70の天井部から上方に突出するパイプ状の部分であり、前後方向で天井部の中央に設けられる。伝達流路本体70は、前後方向に長手方向を有する上下に扁平な箱体であり、平面視で矩形状を示す。噴出口71、72は、伝達流路本体70の底部に設けられ、前後左右にマトリックス状に配置された複数の孔である。一例として、噴出口71、72は、散水に適する形状と配置を有し、伝達流路7は散水板として使用されてもよい。
【0073】
伝達流路本体70の内部空間は、隔壁(不図示)で左右2つの内部空間7P、7Qに仕切られる。伝達入口73からの流体は、伝達流路本体70の内部空間7Pに流入し、噴出口71から吐出される。伝達入口74からの流体は、伝達流路本体70の内部空間7Qに流入し、噴出口72から吐出される。伝達流路7は、第1吐出形態では複数の噴出口71、72から直進流Fを噴出し、第2吐出形態では複数の噴出口71、72から進行方向が時間的に変化する波状流Jを噴出する。
【0074】
図22も参照して、切替部材42をさらに説明する。図22では、帰還流の記載を省略している。図22の例では、切替部材42は、流路3の互いに対向する2つの側壁のそれぞれの一部を含む。この2つの側壁は、外壁部57、58に例示され、2つの側壁のそれぞれの一部は、外壁部57、58の部分571、581に例示される。即ち、部分571は部分円柱部423であり、部分581は部分円柱部424である。部分571、581は、流入口1から中心線CLに沿って下流側に伸びる経路の下流端の首状の部分である。
【0075】
図22の状態では、2つの部分571、581は、図19の状態よりも時計回りに約30°回転している。この状態では、主経路13は左右の対称性が崩れるため、流体発振素子10は、発振を停止し、吐出口2から直進流Fを吐出する。このように、2つの部分571、581を回転させることによって、第1吐出形態における直進流Fの向きを容易に変化させることができる。分岐流路6が接続された場合、2つの部分571、581を回転させて、直進流Fの向きを変えることにより、分岐出口61、62の一方と他方とに流体を選択的に供給できる。図22に示すように、2つの部分571、581を時計回りに回転させた場合、流体を主に分岐出口61に供給できる。2つの部分571、581を逆方向に回転させた場合、流体を主に分岐出口62に供給できる。部分571、581の形状及び部分571、581の回転位置は、所望の波状流Jと直進流Fとを実現する観点で、実験により設定できる。
【0076】
図23図24を参照して、切替部材42の別例を説明する。図23では、帰還流の記載を省略している。上述の例では、切替部材42が2つの側壁の一部を含む例を示したが、これに限定されない。切替部材42は、図23図24に示すように、流路3の互いに対向する2つの側壁の一方の一部を含み得る。この2つの側壁は、中間壁部55、56に例示され、2つの側壁の一方の一部は中間壁部56の主経路13に面する部分562に例示される。つまり、切替部材42は、中間壁部56の主経路13に面する部分562であり、閉じた円弧を底面とする柱体(閉じた円弧を上下に移動させてできる立体形状)である。
【0077】
以下、図23に示すように、部分562が中間壁部56に対して回転した状態を回転状態といい、図24に示すように、部分562が中間壁部56に対して回転していない状態を非回転状態という。
【0078】
図23図24の流路3を流体発振素子10として説明する。図24に示すように、非回転状態では、主経路13は対称性を有する。このため、流体発振素子10は、図21の例と同じ作用機序で発振し、吐出口2から波状流Jを吐出する。図23に示すように、回転状態では、部分562が非回転状態から約120°時計周りに回転した状態になる。この状態では、主経路13は左右の対称性が崩れるため、流体発振素子10は、発振を停止し、吐出口2から直進流Fを吐出する。この例では、流体を主に分岐出口62に供給できる。部分562を逆方向に回転させた場合、流体を主に分岐出口61に供給できる。部分562の形状及び部分562の回転位置は、所望の波状流Jと直進流Fとを実現する観点で、実験により設定できる。
【0079】
次に、第2実施形態の住宅設備機器200の特徴を説明する。
【0080】
住宅設備機器200は、流入口1及び単一の吐出口2を有する流路3と、吐出口2から直進流Fを吐出する第1吐出形態と、吐出口2から波状流Jを吐出する第2吐出形態とに切替えるための吐出形態切替部4と、を備える。吐出形態切替部4は、流路3の側壁の一部であって、流路本体5に対して回転することにより第1吐出形態と第2吐出形態とを切替え可能な切替部材42を含む。
【0081】
この構成によれば、切替部材42が回転することにより吐出形態を切替できるため、部材の進退用の空間を省け小型化に有利である。単一の吐出口2から複数の吐出形態の流体を吐出できるため、吐出口を複数備えるものよりも小型化に有利である。
【0082】
住宅設備機器200では、切替部材42の回転軸線を囲む周面のうち流路本体5と接する面422は、部分円錐状の凸面及び部分円筒状の凸面の少なくとも一方を有する。流路本体5の切替部材42と接する面522は、部分円錐状の凹面及び部分円筒状の凹面の少なくとも一方を有する。この場合、切替部材42が流路本体5に対してスムーズに回転できる。切替部材42と流路本体5の対向部分の間の隙間を小さくできる。
【0083】
住宅設備機器200は、吐出口2に接続され、複数の分岐出口61、62を有する分岐流路6と、分岐出口61、62に接続され、開放空間につながる複数の噴出口71、72を有する伝達流路7と、をさらに備える。伝達流路7は、第1吐出形態では複数の噴出口71、72から直進流を噴出し、第2吐出形態では複数の噴出口71、72から流量と進行方向の少なくとも一方が時間的に変化する噴流を流下する。この場合、噴出口71、72からの噴出形態を切替えできる。第1吐出形態で吐出する際は、伝達流路7に供給される流量の変化がしないことから、時間的変化のない噴出流を吐出できる。第2吐出形態で吐出する際は、波状流Jによって伝達流路7に供給される流量が変化することから、時間的変化のある噴出流を吐出できる。住宅設備機器200は、伝達流路7を備えることにより、噴出口71、72と流体発振素子10の間の距離を離すことができ、住宅設備機器200の使いやすさや美観を損なうことなく搭載できる。
【0084】
住宅設備機器200では、切替部材42は、流路3の互いに対向する2つの側壁のそれぞれの一部を含む。この場合、第2吐出形態(波状流J)のときに流体発振素子として機能し、その状態から切替部材42を回転させることにより第1吐出形態(直進流F)にできる。対向する2面を回転させることで第1吐出形態における直進流Fの方向を容易に変化させることができる。分岐流路6が接続された場合、分岐出口61、62の一方と他方とに流体を選択的に供給できる。
【0085】
住宅設備機器200では、切替部材42は、流路3の互いに対向する2つの側壁の一方の一部を含む構成であってもよい。この場合、第1吐出形態のときに、吐出口2を通る中心線CLに対して片側が閉塞または拡幅され、流路3を非対称な状態にできる。その結果、直進流Fの吐出方向を中心線CLに対して傾斜させることができる。分岐流路6が接続された場合には、流体を分岐流路6に設けられた分岐出口61、62に選択的に供給できる。
【0086】
以上が第2実施形態の説明である。
【0087】
以下、第2実施形態の変形例を説明する。変形例の図面及び説明では、第2実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第2実施形態と重複する説明を適宜省略し、第2実施形態と相違する構成を重点的に説明する。
【0088】
第2実施形態の説明では、流路3の互いに対向する2つの側壁のそれぞれの一部が、外壁部57、58の部分571、581である例を示したが、これに限定されない。例えば、当該2つの側壁は中間壁部55、56であってもよい。
【0089】
第2実施形態の説明では、切替部材42が主経路13に設けられる例を示したが、これに限定されない。例えば、切替部材は、フィードバック経路に設けられてもよい。この場合、切替部材は、フィードバック経路に面する中間壁部及び外壁部の互いに対向する2つの側壁の少なくとも一方の一部であり得る。
【0090】
第2実施形態の説明では、分岐流路6で2分岐する例を示したが、これに限定されない。分岐流路では、流体を3以上に分岐させてもよい。上述の説明では、分岐流路6が90°屈曲する例を示したが、これに限定されない。分岐流路は、屈曲していなくてもよいし、90°とは異なる角度で屈曲してもよい。
【0091】
第2実施形態の説明では、操作部46を回転させることにより、切替部材42が回転する例を示したが、これに限定されない。操作部がボタンであり、操作部が押し下げられたことにより、切替部材が回転する構成であってもよい。
【0092】
第2実施形態の説明では、フィードバック経路が、主経路13の下流部132から上流部131に主流体Mの一部をフィードバックする経路である例を示したが、これに限定されない。例えば、フィードバック経路は分岐流路の下流部から吐出口2近傍へ流体の一部をフィードバックする経路であってもよい。吐出口2が波状流を流下する限りフィードバック流路の有無と接続位置は限定されない。流体発振素子としては、流体発振素子10の構成に限定されず、公知の原理に基づいて流体発振素子として機能しうるすべての構成を採用できる。
【0093】
第2実施形態の説明では、噴出口71、72が散水に適する形状と配置を有する例を示したが、これに限定されない。例えば、噴出口71、72は合流して噴出するように設けられていてもよい。この場合、住宅設備機器200は第2吐出形態において揺動流を噴出できる。
【0094】
[第3実施形態]
図25図26を参照する。図26では、流体発振素子10および分岐流路本体68をZ方向の厚みの略中央を通る平面で切断し、分岐出口61、62をX方向の略中央で半割りに切断して内部を示す。第3実施形態の住宅設備機器300は、ユーザが手に持って扱うシャワー装置である。以下、住宅設備機器300を機器300ということがある。機器300は、ハンドシャワー装置と呼ばれることがある。機器300は、流体発振素子10と、流体発振素子10の吐出口2に接続され、複数の分岐出口61、62を有する分岐流路6と、複数の分岐出口61、62それぞれからの流体を開放空間に吐出する複数の流路出口271、272を有する複数の伝達流路81、82と、を備える。複数の伝達流路81、82は、カバー31と内側カバー32との間に形成される流路である。複数の伝達流路81、82は、複数の脈動流を吐出する。複数の伝達流路81、82から吐出される複数の脈動流は、互いに異なる位相で流量が同じ周期で変化してもよい。なお、第3実施形態の説明では、開放空間へ小穴から噴きだす流れを「噴流」といい、揺れ動く噴流を「揺動流」といい、脈打つ噴流を「脈動流」という。噴流は揺動流と脈動流を含んだ概念をいう。
【0095】
説明の便宜上、図示のように、平面上において、流体発振素子10の吐出方向に沿った平面上の前後方向をX方向といい、平面上で前後方向に直交する左右方向をY方向といい、鉛直な上下方向をZ方向という。X方向で矢印の方向を「後」、「後方」と、矢印と逆方向を「前」、「前方」という。Y方向で矢印の方向を「右」、「右方」と、矢印と逆方向を「左」、「左方」という。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する。これらは厳密に直交している場合に限らず、ほぼ直交している場合も含む。このような方向の表記は機器300の使用姿勢を制限するものではなく、機器300は用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0096】
流体発振素子10は、第1実施形態と同様に、第1中間壁部55および第2中間壁部56を備える。流体発振素子10の動作原理は、第1実施形態と同等であり、簡潔化のため説明を省略する。流体発振素子10は、図5および図6に示したように、流入口1から供給された流体を通流し、吐出口2から波状流Jとして吐出する。波状流Jは、進行方向がスイングする流体の流れということができる。
【0097】
分岐流路6は、吐出口2に接続される分岐入口63と、複数の分岐出口61、62を有する。分岐入口63は、分岐流路本体68の上流端に設けられ、分岐出口61、62は、分岐流路本体68の下流端に設けられる。図25の例では、分岐入口63から前向きに流入した流体は、分岐流路6で2方向に分岐し、略90°曲がり、分岐出口61、62それぞれから下向きに吐出される。
【0098】
伝達流路81、82は、カバー31および内側カバー32によって形成される。カバー31および内側カバー32は、円形状の浅い皿状に形成されている。内側カバー32は、外縁寄りの同一円周上の位置にパイプ状の伝達入口73、74を有する。伝達入口73、74は、Z方向に内側カバー32を貫通する孔を形成する。分岐出口61、62は、それぞれ伝達入口73、74に接続される。分岐出口61、62から吐出された流体は、伝達入口73、74を通って、カバー31側へ吐出される。
【0099】
カバー31は、外壁部33、内壁部34および隔壁部35を有する。外壁部33、内壁部34および隔壁部35は、カバー31の底部31aから立ち上がり、同心のリング状に形成されている。外壁部33は、カバー31の外縁部付近に形成されている。内壁部34は、外壁部33よりも半径方向の内側に形成されている。隔壁部35は、外壁部33および内壁部34の中間に設けられている。外壁部33、内壁部34および隔壁部35の上端は内側カバー32の底部32aに接触する。
【0100】
伝達流路81は、カバー31の底部31a、外壁部33、隔壁部35および内側カバー32によって囲まれる空間として形成される。伝達流路82は、カバー31の底部31a、隔壁部35、内壁部34および内側カバー32によって囲まれる空間として形成される。
【0101】
隔壁部35は、内側カバー32に設けられた分岐出口61、62に対応する円周上の位置に導入部35a、35bを有する。導入部35aは、カバー31の半径方向の外側に対して凹状に形成され、内側に対して凸状となる半円形状に形成されている。導入部35bは、カバー31の半径方向の内側に対して凹状に形成され、外側に対して凸状となる半円形状に形成されている。導入部35a、35bは、それぞれパイプ状の伝達入口73、74の下端に接続される。
【0102】
伝達入口73は、導入部35aによって伝達流路81へ連通する。伝達入口74は、導入部35bによって伝達流路82へ連通する。伝達入口73からカバー31へ吐出された流体は、伝達流路81へ流れ込み、複数の流路出口271から開放空間へ吐出される。伝達入口74からカバー31へ吐出された流体は、伝達流路82へ流れ込み、複数の流路出口272から開放空間へ吐出される。
【0103】
機器300の流体の流れを説明する。流体発振素子10の吐出口2から吐出された波状流Jは、左右方向に向きがスイングし、分岐流路6を通って分岐出口61、62から吐出される。第1実施形態において図11等を用いて説明したように、機器300の流路出口271から開放空間へ第1脈動流K1が吐出され、流路出口272から開放空間へ第2脈動流K2が吐出される。
【0104】
図27を参照し、流体通路の流体の流れに垂直な断面の面積(以下、単に「断面積」という)を説明する。図27の符号S81、S82は、E-E線断面における伝達流路81、82の断面積を示す。
【0105】
第1実施形態で説明したように、本願発明者らが実験を重ねた結果、流体発振素子10の下流にある流体通路の断面積が、流体発振素子10の下流端(吐出口2)の断面積以上である場合に、好ましいコントラスト比を有する脈動流K1、K2が実現しやすくなる。機器300では、伝達流路81、82の内部空間の断面積S81、S82の総和(S81+S82)は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。
【0106】
第1実施形態と同様に、機器300の分岐出口61、62の断面積S61、S62の総和(S61+S62)は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。第1実施形態と同様に、機器300の複数の流路出口271、272の断面積S271、S272の総和は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。
【0107】
断面積S61、S62の総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。断面積S81、S82の総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。断面積S271、S272の総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。これらの面積比が1.2倍以上の場合、所望のコントラスト比を有する脈動流K1、K2を実現しやすく、好ましい洗浄効果、好ましいマッサージ効果等を得られる。
【0108】
第1実施形態において図16および図17を用いて説明したように、本実施形態の流体発振素子10に、外部からの流体を吸入可能な吸入開口91、吸入開口91から外部への逆流を減らすために流体通路に突出する突起部92を設けてもよい。
【0109】
第2実施形態において説明したように、本実施形態の流体発振素子10に吐出形態切替部4を設けてもよい。機器300は、吐出形態切替部4によって、時間的変化のない噴出流を吐出する第1吐出形態、時間的変化のある噴出流を吐出する第2吐出形態を切替可能であってもよい。
【0110】
[第4実施形態]
図28図29図30を参照する。第4実施形態の住宅設備機器400は、第1実施形態の機器100の分岐出口61、62から開放空間へ流体を吐出する形態を含む。以下、住宅設備機器400を機器400ということがある。機器400は、例えばシャワー装置として用いられる。第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態で説明した各住宅設備機器と同様に、本実施形態の機器400は、脈動流を吐出することから、打たせ湯と呼ばれる吐出形態に適している。
【0111】
機器400は、2系統の流体の吐出経路を有している。機器400は、第1系統の吐出経路の構成として、流体発振素子10と、流体発振素子10の吐出口2に接続され、複数の分岐出口61、62を有する分岐流路6と、複数の分岐出口61、62それぞれからの流体を開放空間に吐出する複数の流路出口271、272を有する複数の伝達流路7L、7Rと、を備える。複数の伝達流路7L、7Rは、伝達流路本体70の内部に形成されている。複数の伝達流路7L、7Rは、複数の脈動流を吐出する。複数の伝達流路7L、7Rから吐出される複数の脈動流は、互いに異なる位相で流量が同じ周期で変化してもよい。なお、第4実施形態の説明では、開放空間へ小穴から噴きだす流れを「噴流」といい、揺れ動く噴流を「揺動流」といい、脈打つ噴流を「脈動流」という。噴流は揺動流と脈動流を含んだ概念をいう。
【0112】
説明の便宜上、図示のように、平面上において、流体発振素子10の吐出方向に沿った平面上の前後方向をX方向といい、平面上で前後方向に直交する左右方向をY方向といい、鉛直な上下方向をZ方向という。X方向で矢印の方向を「後」、「後方」と、矢印と逆方向を「前」、「前方」という。Y方向で矢印の方向を「右」、「右方」と、矢印と逆方向を「左」、「左方」という。X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する。これらは厳密に直交している場合に限らず、ほぼ直交している場合も含む。このような方向の表記は機器400の使用姿勢を制限するものではなく、機器400は用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0113】
第1系統の吐出経路における流体発振素子10および分岐流路6の構成および機能は、第1実施形態と同等であり、簡潔化のため説明を省略する。伝達流路本体70の内部空間は、第1実施形態において図7を用いて説明した伝達流路本体70と同様に、左右2等分線の左側に伝達流路7L、右側に伝達流路7Rを有する。
【0114】
伝達流路7L側に形成された複数の流路出口271は、カバー38に設けられた複数の貫通孔38aのうち、左右2等分線の左側に位置する貫通孔38aに接続される。伝達流路7R側に形成された複数の流路出口272は、カバー38に設けられた複数の貫通孔38aのうち、左右2等分線の右側に位置する貫通孔38aに接続される。
【0115】
機器400の第1系統の吐出経路における流体の流れを説明する。流体発振素子10の吐出口2から吐出された波状流Jは、左右方向に向きがスイングし、分岐流路6を通って分岐出口61、62から吐出される。第1実施形態において図11等を用いて説明したように、機器400の流路出口271から開放空間へ第1脈動流K1が吐出され、流路出口272から開放空間へ第2脈動流K2が吐出される。
【0116】
第1実施形態で説明したように、本願発明者らが実験を重ねた結果、流体発振素子10の下流にある流体通路の断面積が、流体発振素子10の下流端(吐出口2)の断面積以上である場合に、好ましいコントラスト比を有する脈動流K1、K2が実現しやすくなる。第1実施形態と同様に、機器400の分岐出口61、62における断面積S61、S62の総和(S61+S62)は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。機器400の伝達流路7の内部空間における断面積S7L、S7Rの総和(S7L+S7R)は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。機器400の複数の流路出口271、272における断面積S271、S272の総和は、流体発振素子10の吐出口2の断面積S2以上である。
【0117】
断面積S61、S62の総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。断面積S7L、S7Rの総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。断面積S271、S272の総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。これらの面積比が1.2倍以上の場合、所望のコントラスト比を有する脈動流K1、K2を実現しやすく、好ましい洗浄効果、好ましいマッサージ効果等を得られる。
【0118】
第1実施形態において図16および図17を用いて説明したように、本実施形態における第1系統の吐出経路の流体発振素子10に、外部からの流体を吸入可能な吸入開口91、吸入開口91から外部への逆流を減らすために流体通路に突出する突起部92を設けてもよい。
【0119】
第2実施形態において説明したように、本実施形態における第1系統の吐出経路の流体発振素子10に吐出形態切替部4を設けてもよい。機器400は、吐出形態切替部4によって、時間的変化のない噴出流を吐出する第1吐出形態、時間的変化のある噴出流を吐出する第2吐出形態を切替可能であってもよい。
【0120】
機器400は、第2系統の吐出経路の構成として、流体発振素子410と、流体発振素子410の吐出口2に接続され、複数の分岐出口461、462(図30参照)を有する分岐流路406と、を備える。複数の分岐出口461、462は、脈動流を開放空間へ吐出する。複数の分岐出口461、462から吐出される複数の脈動流は、互いに異なる位相で流量が同じ周期で変化してもよい。なお、第4実施形態の説明では、開放空間へ分岐出口461、462から噴きだす流れを「噴流」といい、揺れ動く噴流を「揺動流」といい、脈打つ噴流を「脈動流」という。噴流は揺動流と脈動流を含んだ概念をいう。
【0121】
流体発振素子410の構成および機能は、第1実施形態と同等であり、簡潔化のため説明を省略する。流体発振素子410は、流入口401から供給された流体を通流し、吐出口2から波状流Jとして吐出する。
【0122】
分岐流路406は、流体発振素子410の吐出口2に接続される分岐流路本体430、および流路部材440によって形成されている。吐出口2に接続される分岐入口463は、分岐流路本体430の上流端に設けられている。分岐流路406は、分岐入口463の下流側で第1流路431および第2流路432に分岐している。
【0123】
第1流路431は、流路部材440の接続口441に接続され、流路部材440内において+X方向に伸び、更に下方側へ折り曲げられて、分岐出口461まで伸びる。第2流路432は、流路部材440の接続口442に接続され、流路部材440内において-X方向に伸び、更に下方側へ折り曲げられて、分岐出口462まで伸びる。分岐出口461、462には、整流部材450が設けられている。
【0124】
図31図32図33を参照し、整流部材450について説明する。整流部材450は、扁平の円柱状であり、中央部451を上下に膨らませた形状となっている。整流部材450は、外縁部452を分岐出口461、462の内周面に接触させて、分岐出口461、462に取付けられる。整流部材450は、中央部451から外縁部452に亘って、上下に貫通する複数の通流孔455を有する。
【0125】
整流部材450は、中央部451の下部にスリット456が設けられている。図33に示すように、スリット456の底部457は、下方から見て凹状に形成されている。通流孔455の軸方向の寸法は、外縁部452から中央部451へ向うにつれて、大きくなる。スリット456が形成された直径上では、通流孔455の軸方向の寸法が外縁部452から中央部451にかけて概ね一定となっている。
【0126】
整流部材450は、複数の通流孔455によって第1流路431および第2流路432を流れる流体を整流する。
【0127】
図34を参照し、整流部材450の別の例を説明する。整流部材450は、筒状であり、半径方向の外側から見て複数の凹部453および凸部454が周方向に連続して並ぶプリーツ状の部分が外縁部452に形成されている。第1流路431および第2流路432を流れる流体は、整流部材450を通過することで整流され、分岐出口461、462から吐出される。
【0128】
整流部材450は、中心軸の周囲の中央部451において流量を大きく確保する。分岐出口461、462には、整流部材450が設けられていない構成としてもよい。整流部材450が設けられていない場合、第1流路431および第2流路432を流れる流体は、整流されることなく、分岐出口461、462から吐出される。
【0129】
機器400の第2系統の吐出経路における流体の流れを説明する。流体発振素子410の吐出口2から吐出された波状流Jは、左右方向に向きがスイングし、分岐流路406を通って分岐出口461、462から開放空間へ吐出される。機器400の分岐出口461から開放空間へ第1脈動流K1が吐出され、分岐出口462から開放空間へ第2脈動流K2が吐出される。
【0130】
第1実施形態で説明したように、本願発明者らが実験を重ねた結果、流体発振素子410の下流にある流体通路の断面積が、流体発振素子410の下流端(吐出口2)の断面積以上である場合に、好ましいコントラスト比を有する脈動流K1、K2が実現しやすくなる。
【0131】
図35を参照する。図35では、分岐出口461、462の周縁の部分にハッチングを付している。分岐出口461、462には整流部材450の複数の通流孔455がメッシュ状に形成されている。分岐出口461における複数の通流孔455の総断面積をS461、分岐出口462における複数の通流孔455の総断面積をS462とする。
【0132】
図36を参照する。図36では、分岐出口461、462の周縁の部分にハッチングを付している。分岐出口461、462にはプリーツ状の整流部材450が形成されている。分岐出口461の流路断面において、整流部材450の断面が占める部分を除いた総断面積をS461とする。分岐出口462の流路断面において、整流部材450の断面が占める部分を除いた総断面積をS462とする。
【0133】
図35および図36に示す両方の例において、第1実施形態と同様に、総和(S461+S462)は、流体発振素子410の吐出口2の断面積S2以上である。分岐流路406の分岐出口461、462以外の部分においても、第1流路431および第2流路432の断面積の総和は、流体発振素子410の吐出口2の断面積S2以上である。第1流路431および第2流路432における最も狭窄した部分の断面積の総和は、流体発振素子410の吐出口2の断面積S2以上である。
【0134】
断面積S461、S462の総和は、吐出口2の断面積S2の1.2倍以上が好ましい。面積比が1.2倍以上の場合、所望のコントラスト比を有する脈動流K1、K2を実現しやすく、好ましい洗浄効果、好ましいマッサージ効果等を得られる。
【0135】
第1実施形態において図16および図17を用いて説明したように、本実施形態における第2系統の吐出経路の流体発振素子410に、外部からの流体を吸入可能な吸入開口91、吸入開口91から外部への逆流を減らすために流体通路に突出する突起部92を設けてもよい。
【0136】
第2実施形態において説明したように、本実施形態における第2系統の吐出経路の流体発振素子410に吐出形態切替部4を設けてもよい。機器400は、吐出形態切替部4によって、時間的変化のない噴出流を吐出する第1吐出形態、時間的変化のある噴出流を吐出する第2吐出形態を切替可能であってもよい。
【0137】
本実施形態の第2系統の吐出経路では、分岐出口461、462から脈動流K1、K2を開放空間へ吐出する。機器400は、流体発振素子410等の構成によって、小型化に有利となり、複数の出口から脈動流を吐出することができる。機器400は、流体発振素子410に吐出形態切替部4を設けることによって、小型化に有利で、異なる形態の吐出流を切替えて吐出することができる。
【0138】
以上、第1実施形態、第2実施形態、変形例、第3実施形態および第4実施形態を説明した。第1実施形態、第2実施形態、変形例、第3実施形態および第4実施形態を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は第1実施形態、第2実施形態、変形例、第3実施形態および第4実施形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した第1実施形態、第2実施形態、変形例、第3実施形態および第4実施形態は、いずれも具体例を示したものにすぎず、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。第1、第2、第3および第4実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0139】
第1実施形態、第2実施形態、変形例、第3実施形態および第4実施形態の構成要素の任意の組み合わせも、実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想の態様として有効である。例えば、第1実施形態、第2実施形態、変形例、第3実施形態および第4実施形態のいずれかに対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形例に対して第1実施形態、第2実施形態、他の変形例、第3実施形態および第4実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。例えば、図1の住宅設備機器100に対して、第2実施形態の吐出形態切替部4を組み合わせてもよい。
【0140】
ここまで各実施形態や変形例を説明した。以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。例えば、第1開示の実施形態や変形例に対して、第2開示の実施形態や変形例、第3実施形態、第4実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。同様に、第2開示の実施形態や変形例に対して、第1開示の実施形態や変形例、第3実施形態、第4実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1 流入口、 2 吐出口、 3 流路、 4 吐出形態切替部、 5 流路本体、 6 分岐流路、 7 伝達流路、 10 流体発振素子、 42 切替部材、 61、62 分岐出口、 70 伝達流路本体、 71、72 噴出口、 73、74 伝達入口、 81、82 伝達流路、 91 吸入開口、 92 突起部、 271、272 流路出口、 401 流入口、 406 分岐流路、 410 流体発振素子、 450 整流部材、 453 凹部、 454 凸部、 455 通流孔、 461、462 分岐出口、 100、200、300、400 住宅設備機器。
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