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特開2023-133250X線制御方法、X線イメージング装置及び非一時的コンピュータ可読媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133250
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】X線制御方法、X線イメージング装置及び非一時的コンピュータ可読媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A61B6/03 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036920
(22)【出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】17/692,697
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティン シア
(72)【発明者】
【氏名】リヤン ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ジエン ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ユウ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA34
4C093FA15
4C093FA60
4C093FD03
(57)【要約】
【課題】線量を最適化しつつ画像品質を改善すること。
【解決手段】実施形態のX線制御方法は、被検体の3次元領域の第1の3次元X線スキャンで得られる投影データを取得し、前記第1の3次元X線スキャンの長手方向で分散される、前記投影データの空間分散特性を取得し、前記空間分散特性に基づいて、第2の3次元X線スキャン中に前記3次元領域のX線放射を制御することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の3次元領域の第1の3次元X線スキャンで得られる投影データを取得し、
前記第1の3次元X線スキャンの長手方向で分散される、前記投影データの空間分散特性を取得し、
前記空間分散特性に基づいて、第2の3次元X線スキャン中に前記3次元領域のX線放射を制御する
ことを含む、X線制御方法。
【請求項2】
前記空間分散特性は、前記投影データから取得される、前記長手方向で空間的に分散された空間分散ノイズ特性を含む、請求項1に記載のX線制御方法。
【請求項3】
前記空間分散特性は、前記投影データから取得される、前記長手方向で空間的に分散された組織固有空間分散ノイズ特性を含む、請求項1に記載のX線制御方法。
【請求項4】
前記空間分散特性は、前記投影データから取得される、前記長手方向で空間的に分散された軟組織固有空間分散ノイズ特性を含む、請求項1に記載のX線制御方法。
【請求項5】
前記軟組織固有空間分散ノイズ特性の取得は、
前記投影データの複数のビューの第1セットに基づいて第1ハーフスキャン再構成を実施して第1再構成済み画像を作成することと、
前記投影データの複数のビューの第2セットに基づいて第2ハーフスキャン再構成を実施して第2再構成済み画像を作成することとを含み、
前記第1セットと前記第2セットとは、異なるものであるが、前記長手方向において同じ位置に対応するものである、請求項4に記載のX線制御方法。
【請求項6】
前記空間分散特性の取得は、第1位置に対応する前記投影データの第1サブセットから再構成された第1画像と、前記第1位置に対応する前記投影データの第2サブセットから再構成された第2画像との間の差分から、前記長手方向の前記第1位置の第1ノイズ特性を取得することを含む、請求項1に記載のX線制御方法。
【請求項7】
前記空間分散特性の取得は、更に、前記第1位置とは異なる第2位置に対応する前記投影データの第3サブセットから再構成された第3画像と、前記第2位置に対応する前記投影データの第4サブセットから再構成された第4画像との間の差分から、前記長手方向の前記第2位置の第2ノイズ特性を取得することを含む、請求項6に記載のX線制御方法。
【請求項8】
前記空間分散特性の取得は、前記投影データをニューラルネットワークに適用することによって、前記長手方向で空間的に分散された前記空間分散ノイズ特性を取得することを含む、請求項2に記載のX線制御方法。
【請求項9】
前記空間分散特性の取得は、前記投影データから、前記長手方向で空間的に分散された空間分散臓器感度特性を取得することを含む、請求項1に記載のX線制御方法。
【請求項10】
前記空間分散特性の取得は、前記投影データから、前記長手方向で空間的に分散し、かつX線発信器の角度によって変化する空間分散特性および回転的固有臓器感度特性を取得することを含む、請求項9に記載のX線制御方法。
【請求項11】
前記空間分散臓器感度特性の取得は、前記投影データをニューラルネットワークに適用することによって、前記長手方向で空間的に分散された前記空間分散臓器感度特性を生成することを含む、請求項9に記載のX線制御方法。
【請求項12】
被検体の3次元領域の第1の3次元X線スキャンで得られる投影データを取得し、
前記第1の3次元X線スキャンの長手方向で分散される、前記投影データの空間分散特性を取得し、
前記空間分散特性に基づいて、第2の3次元X線スキャン中に前記3次元領域のX線放射を制御する処理回路を備える、X線イメージング装置。
【請求項13】
3次元X線イメージング中にX線放射を制御するX線制御方法をコンピュータに実施させるコンピュータ実行可能命令を記憶するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、
前記X線制御方法は、
被検体の3次元領域の第1の3次元X線スキャンで得られる投影データを取得し、
前記第1の3次元X線スキャンの長手方向で分散される、前記投影データの空間分散特性を取得し、
前記空間分散特性に基づいて、第2の3次元X線スキャン中に前記3次元領域のX線放射を制御する
ことを含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線制御方法、X線イメージング装置及び非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)イメージングのイメージングプロトコルは、多くのCTスキャンにおいて、画像品質および放射線量に影響を与える。イメージングプロトコルとしては、種々のイメージングパラメータ(ガントリ回転時間、管電流、管電圧、ピッチ、画像視野、造影剤タイミングといったスキャン取得パラメータ等)、画像再構成パラメータ(再構成カーネル、再構成アルゴリズム、行列サイズ(例えば、512、1024)、スライス厚さ等)、及び、患者サイズ依存パラメータが挙げられ、これらは、最終的に得られる画像品質に影響を与える。修正される可能性のあるパラメータの幅を考えると、実用的なタスクを行なうために、実装される各パラメータのある種の広範な適用可能値が、通常の診療において要求される。例えば、利用する画像プロトコルに応じて、患者の身体の異なる部位に異なる照射線量が設定される場合がある。
【0003】
X線等の電離放射線を使用する医用イメージングは、電離放射線の照射線量が増えるほど、癌のリスクが高まることが知られている。放射線撮影、マンモグラフィ、コンピュータ断層撮影(CT)、核医学及び分子イメージングの他の形態を含む、いくつかの診断医用イメージングモダリティ及び用途は、電離放射線を利用している。診断用途に加えて、電離放射線は、様々な形態のがん患者の治療向けに治療放射線医学で使用されることがある。全体的に、これらの診断および医療用途は、リスクを伴い、有用な医用有効性を立証する危険度-有益性分析を通して容認される必要がある
【0004】
従って、放射線の安全性と医用イメージング品質とは切り離されて考察される場合があるが、現実には、それらは、互いに直接関連していることが多い。所定の医用イメージング操作(例えば、腹部CT検査)は、定量化可能な量の電離放射線に関連する場合があり、それは、選択されるスキャン取得パラメータ、利用される技術、及び、検査を行うことになる患者の多様な特性に左右されるものである。放射線量を減らすためにスキャン取得パラメータを調節しようとする場合、主には、ピクセルノイズや量子雑音の増加が原因で、全体的な画像品質は同時に影響を被ることになる。そのため、結果として生じる画像品質への影響を判断することなく、放射線量を修正する試み(すなわち、放射線の安全性を向上させること)は、適切でない可能性がある。放射線量と画像品質とは、分けて考えることができないほど互いに関連しているので、組み合わせて考慮される必要がある。
【0005】
このような放射線量と画像品質とのバランスを考慮することは難しい。このバランスは、患者ごとの地域差、及び、タスク固有ニーズを考慮して処理される可能性のあるイメージングボリュームごとのばらつきによって複雑化する場合がある。例えば、腹部CT検査は、種々な機能を果たす種々の組織を特徴付けることはできるが、イメージングに関連して、これらの種々の組織は、光子を別々に減衰及び散乱させるので、同じイメージングボリュームであっても別々に考慮する必要がある。患者間の既知の相違だけではなく、イメージングプロトコル最適化も、重大な課題であることが理解されよう。
【0006】
さらに現在利用可能ないくつかのイメージングプロトコルは、広範な母集団に対して一般化されているために、患者固有にカスタマイズされた機能性、及び、用途に合わせた機能性を提供していない。アーチファクト、空間分解能、コントラスト、ノイズなどの多様な品質関連因子の医用画像品質を、医師が日常的にチェックしており、最適化の各ステップで臨床医の介入を必要としながら、個々の患者、疾患及び関心の臓器に合わせて調整されたイメージングプロトコルを作製することがより困難になることが理解されるであろう。さらに、臨床的に許容可能なレベルに画像品質を保ちながら低い線量で患者をスキャンすることは常に望まれることである。しかし、線量を低くすると、信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)が低くなり、これにより特定の構造/病変の検出感度に影響を及ぼす可能性がある。自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)は、CTスキャン照射線量を自動的に最適化して、患者に照射される放射線量を低減するのと同時に、均一な画像品質を維持し、放射線科医の作業の流れを単純化することを目的としている。既存の技術では、AECを正確に判断できないため、患者への線量が不正確になったり、画質が最適化されない場合がある。
【0007】
CTスキャン中に、的確な線量を提供し、かつ患者への長時間の放射線照射を避けるために、適切な放射線量を患者に送るための自動露出制御(AEC)が精密に調整され、かつ対応する画像品質が、所与の臨床のタスクに対してより効率的に予測され得る。結果として最適以下の画質になる要因としては、特定のタイプの組織(例えば、軟組織)におけるノイズが身体の異なる領域で均一でない可能性があるということを考慮に入れずに、的確でない線量が決定されることが挙げられる。別の要因としては、特定のタスクに対して、一部の臓器が必要以上の放射線量を受ける可能性がある一方で、他の臓器は低画像品質につながる低線量しか受けない可能性があることを考慮に入れずに、的確でない線量が決定されることが挙げられる。さらに別の要因としては、患者のサイズやスキャナ内の位置、目的の解剖学的ターゲットなど、CTスキャンの前に入手可能な情報に限度があり、患者固有の構成の使用が妨げられることが挙げられる。
【0008】
上記の説明は、背景技術を全般的に示すためのものである。この背景技術の章において説明される仕事の範囲、および出願時には先行技術として認められていない本明細書の態様に対する本願発明者の仕事を、本開示に対する先行技術であるとは、明示的にも黙示的にも認めていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Jia X, Yan H, Gu X, Jiang SB. Fast Monte Carlo simulation for patient-specific CT/CBCT imaging dose calculation. Physics in Medicine & Biology. 2012 Jan 6;57(3):577
【非特許文献2】J. Maier, E. Eulig, S. Dorn, S. Sawall, M. Kachelries, in Proceedings of the IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (2018)
【非特許文献3】Sigal Trattner et al., Standardization and Optimization of Computed Tomography Protocols to Achieve Low-Dose, Journal of the American College of Radiology. 2014 Mar; 11(3): 271-278
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、線量を最適化しつつ画像品質を改善することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のX線制御方法は、被検体の3次元領域の第1の3次元X線スキャンで得られる投影データを取得し、前記第1の3次元X線スキャンの長手方向で分散される、前記投影データの空間分散特性を取得し、前記空間分散特性に基づいて、第2の3次元X線スキャン中に前記3次元領域のX線放射を制御することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態による、自動露出制御(AEC)の一部として線量/照射線量最適化に基づいて画像品質を改善するための方法のフロー図である。
図2図2は、自動露出制御を実施するために使用することができるデータの論理ブロックに分割されたサイノグラムデータを含む、図1のプレスキャン(スカウトスキャン)の一部として得られたサイノグラムデータのセットを示す図である。
図3図3は、同じ位置に対応する異なる2つのスライス画像を作成するためにハーフスキャン再構成で再構成される図2の一連のブロックを示す図である。
図4図4は、図1のプレスキャンに基づいてAEC補正値を生成するためのいくつかの変換ステップのデータを示すデータフロー図である。
図5図5は、図1のAEC補正の一部として適用されるノイズに基づく補正値を表した曲線のセットを示す図である。
図6図6は、図4で計算されたノイズデータに基づいて生成されるAEC補正値の例示的曲線を示す図である。
図7A図7Aは、再構成済み画像データを使用してノイズデータが計算される、図1のAEC補正値計算の一部として図4に示したようなノイズデータ計算方法の第1の実施形態のブロック図である。
図7B図7Bは、ニューラルネットワークに供給されたサイノグラム画像データを使用してノイズデータが計算される、図1のAEC補正値計算の一部として図4に示したようなノイズデータ計算方法の第2の実施形態のブロック図である。
図7C図7Cは、組織固有エリアにセグメント化された再構成済み画像データを使用してノイズデータが計算される、図1のAEC補正値計算の一部として図4に示したようなノイズデータ計算方法の第3の実施形態のブロック図である。
図8図8は、組織固有ノイズデータを生成する際にマスクとして使用するために、再構成済み画像を少なくとも1つの組織の領域にセグメント化する処理のブロック図である。
図9図9は、本開示の例示的な実施形態による、臓器指向性マスクの図である。
図10図10は、図1のプレスキャンで得られたサイノグラムデータのブロックに基づく臓器マスクの生成を示すブロック図である。
図11図11は、臓器マスクから臓器固有AEC補正値への変換を示すブロック図である。
図12A図12Aは、臓器固有AEC補正を実施するために使用される臓器マップを生成するための第1の実施形態を示すブロック図である。
図12B図12Bは、臓器固有AEC補正を実施するために使用される臓器マップを生成するための第2の実施形態を示すブロック図である。
図13図13は、ノイズ補償AEC補正値に臓器マスクを適用して、臓器固有ノイズ補償AEC補正値を作成する処理を示す図である。
図14図14は、本開示の例示的実施形態による、CTスキャナの実装形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、X線制御方法、X線イメージング装置及び非一時的コンピュータ可読媒体の実施形態について説明する。例えば、実施形態では、AECの決定中のノイズおよび線量最適化に基づいて画像品質を改善するためのX線制御方法、X線イメージング装置及び非一時的コンピュータ可読媒体について記載する。
る。
【0014】
臨床タスク固有である初期放射線量(初期照射線量とも称される)を含む臨床のタスクごとに、方法は、AECシステムおよび/または方法を使用して初期放射線量を調整するために使用すべき少なくとも1つの因子を、プレスキャンを使用して取得することを含む。例えば、ある因子は、一般的なタイプの組織、または特定のタイプの組織での画像ノイズの位置固有の量である場合がある。照射エリア内に感受性の高い臓器が存在するかどうかも別の因子となる場合がある。2つ以上の因子が、因子ベースの調整された照射線量を生成するために組み合わされる場合がある。
【0015】
以下で説明する実施形態において、単数形は、1つまたは複数であると定義するものとする。本明細書で使用する場合、複数形は、2つまたはそれ以上であると定義するものとする。本明細書で使用する場合、用語「別の」は、少なくとも2つ目のもの、またはそれ以外のものであると定義するものとする。本明細書で使用する場合、用語「含む」や「有する」は、「備える」と同様であると定義する(即ち、オープンランゲージである)。本明細書全体における「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「実施形態」または「実装形態」、「例」、または類似の用語に対する言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特性、構造、または特徴が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通して様々な箇所で出現する上記フレーズが、必ずしも同じ実施形態を全て指しているというわけではない。更に、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で、特定の特性、構造、または特徴は限定されることなく、組み合わされる場合がある。
【0016】
本開示にて、メインイメージングスキャン(例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、断層合成スキャン及びX線ボリュームCT(Volume CT:VCT)スキャン)において、メインCTスキャン前のプレスキャン(スカウトスキャンとも記載する)の投影データからの空間分散特性に基づいて、自動露出制御(AEC)によって、画像品質を改善したり患者への照射線量のリスクを低減したりするための方法について記載する。なお、投影データは、例えばサイノグラムである。空間分散特性の例としては、(1)プレスキャンの空間分散ノイズ特性や、(2)照射高感受性組織タイプの空間分散識別が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
図1は、AECに基づいて画像品質を改善するための方法のフロー図である。図1のフロー図は、方法100を説明するものである。ステップ102で、実施対象のイメージングタスク(例えば、肺のイメージング)に関するイメージングオーダーが受け取られる。受け取ったイメージングオーダーに基づいて、方法を実施する処理回路は、イメージングされるエリアに対して加えられる初期照射線量(初期線量とも記載する)を表す曲線を、データベース等から受け取るか、またはそれを自ら生成し、ステップ104でその曲線を初期照射線量として設定する。この初期照射線量は、イメージングされる全エリアに対して一定であってもよく、または受け取ったオーダーに応じて変更されてもよい。一般に、患者がフルCTスキャン(すなわち、フル放射線量)を受ける前に、かつ例えば、イメージングエリアに対する患者の位置や全体的なサイズを確認するために、既知のシステムは、低線量プレスキャンを利用して(例えば、2つの直交ビューのみを使用して)、患者に関する限定したディテールを提供する。しかし、方法100の一部として、ステップ106がシステムによって実施され、これにより様々な内部組織や空間分散特性情報を弁別するのに十分な量のディテールを含む3Dプレスキャン(3Dスカウトスキャンとも呼ばれる)が生成される。3Dスカウトスキャン106の結果物は、次にステップ108に示すように初期照射線量を修正するのに使用される。3Dプレスキャンが実施されたばかりのイメージングテーブル上に患者がまだいる状態で、修正された線量に基づいて、オーダーされたスキャンは、AEC補正済み照射線量(AEC補正済み放射線量)を使用して、例えばX線管電流量を変更することによって、実施され得る。このように、1回の検査で、3Dプレスキャンおよびメインスキャンが順次実施される。
【0018】
上記の方法100のステップ106では、プレスキャン操作が実施されて、プレスキャンエリアまたは領域に対応するいくつかのビューからサイノグラムデータ(投影データとも記載する)のセットが取得される。図2に示すように、プレスキャンサイノグラム/投影データは、イメージングされた領域を横断する一連のブロックに論理的に分割される場合がある。図2には、逐次的サイノグラムデータの4セットが(バンドで)示されており、これらは、同じ角度範囲内のビューのサブセットに対応するようにグループ化されている。例えば、第1のπラジアンの範囲内で得られるビューはグループBと見なされ、また、グループBと比較して補完的なビューに対応するので、第2のπラジアンの範囲内で得られるビューはグループB’と見なされる。図2に示すように、またいくつかのその後の図で使用されるように、グループB’に対応するビューは、グループBと比較して、グループB’が反対側から撮影したビューに対応することを強調するために、グループBと比較して反転しているように図示される場合がある。しかし、図3に見られるように、ハーフスキャン再構成後、グループB’からのスライスの結果として生じる画像は、さらなる処理のためにグループBのハーフスキャン再構成からの結果として生じるスライスと同じ方向に見られるように反転される場合がある。そのような構成では、2πラジアンをカバーするビューのセット内の例示的ビュー1から16が(1)ビュー1から8、および(2)ビュー9から16の2つのグループに分割可能であると想定される場合がある。あるいは、グループBおよびB’は、代わりに、本開示の範囲から逸脱することなく、ビューの偶数のセットおよび奇数のセットに従って設定することができる。例えば、16個のビューは、(1)ビュー1、3、5、7、9、11、13、および15と、(2)ビュー2、4、6、8、10、12、14、および16とに、分割することができる。概して、ビューの異なるグループ(図3に例示されているBからF’)の全てからのサイノグラムデータを使用する処理は、画像品質の改善をもたらすAEC補正値のセットを作成することができる。
【0019】
別の実施形態では、任意の数のハーフスキャン投影も含まれてよく、その場合、重複データをハーフスキャン投影が含まないように3Dスカウトサイノグラム再構成済み画像のフルCTスキャンから投影の半分を選択することによって、ハーフスキャン投影が無作為に取得されてよい。例えば、2つのビューの逐次的なセットのそれぞれから1つのビューを無作為に選択して、それを第1グループに割り当て、かつ別のビューを第2グループに割り当てることによって、2つの例示的なグループは、(1)ビュー1、10、11、4、13、6、7、および16、ならびに(2)ビュー9、2、3、12、5、14、15、および8、とすることができる。一部のタイプのイメージング処理では、2つのグループの間で少数のビューの2つが重複することが許容されることも起こり得る。一実施形態において、ビューの「実質的に重複しない」セットには、ビューとビューの間で多くても10%の重複がある。別の実施形態では、ビューの「ほぼ完全に重複しない」セットは、ビューとビューの間で多くても5%の重複がある。当業者によって理解されるように、別々に、かつ順次処理されるビューが別々のグループとして図示されているが、ビューの「グループ」は、実際には、スカウトスキャンに対応するz方向に沿った位置で、ビュー固有ノイズ補正係数を処理(例えば、再構成)するのに必要なデータの量を表しているサイノグラムデータのスライディングウインドウである。
【0020】
方法100のステップ108で、第1の実施形態において、AEC補正値は、プレスキャンのビューのそれぞれに対応する位置でz軸に沿って(図14に示されている放射線撮影ガントリ1150の開口(ボア)の「紙面を貫く」方向で)計算される。本明細書で使用する場合、語句「長手方向」は、放射線撮影ガントリ1150の開口を貫く「z」方向を指し、これは、図14に示されているシステムの「紙面を貫く」方向である。代替的実施形態では、AEC補正値を取得するために、全てのビューよりも少ないビューが使用される場合があり、かつ補間が、計算された補正値間で使用される場合がある。例えば、処理時間を減らすために、補正係数を1つ置きのビューに対して計算して、その間で足りない補正係数がある場合、2つの近接するビューの補正係数の平均を使用する。
【0021】
図4に示すように、サイノグラムデータは、サイノグラムデータ内のノイズに基づいてビュー固有不確実性マップを作成するために使用することができ、この際、不確実性マップは、3次元でスキャンされたイメージングされた領域内の画像ノイズの空間分散を提供する。次に、不確実性マップは、長手(z)方向で変化する不確実性マップに対応するAEC補正値を生成するために使用することができる。
【0022】
AEC補正値は、ビュー内のノイズに対する照射線量補正値と相互に関連している事前に計算されたデータのセットを参照することによって取得することができる。一連の例示的な曲線を図5に示す。図5に示すように、照射線量の初期量は、ビュー内の測定されたノイズの量に応じて、初期線量の100%(すなわち、右側は変更なし)から0%(左側は完全に遮断)の間で変更してもよい。図5に示すように、方法は、以下にてさらに詳細に記載するように、異なるイメージング条件に対応するために2つ以上の曲線を使用する場合がある。
【0023】
図6は、図4および5に関して例証として計算され得る、計算されたノイズ補償AEC補正値に対応する例示的グラフ(例証の目的のためのみ)を示す。図から分かるように、プレスキャン全体の異なるビューに関して計算されたノイズの空間分散に基づいて、メインスキャン中に提供されるべき照射線量の量は、(メインスキャン全体を通して特定のレベルでノイズを維持するように)変更することができる。
【0024】
図7Aは、再構成済み画像データを使用してノイズデータが計算される、図1のAEC補正値計算の一部として図4に示したようなノイズデータ計算方法(例えば、方法を実施するための処理回路によって実施される)の第1の実施形態のブロック図である。図内に示されているように、グループBからのビューおよびグループB’からのビューは、グループBのビューには再構成を使用して、かつグループB’からのビューには再構成と反転を使用して、同じスライスに対応する画像を再構成するために使用される場合がある。2つの再構成済み画像(ラベル付けされたBimage、およびラベル付けされたB’image)は、次に、減算されて(その間に記号「-」で表されているように)(ただし、場合により、2で除算するなど、スカラーで変更することもできる)、差分画像BΔimageが作成される。次に、差分画像BΔimageは、再構成済み画像の中のノイズ分散を表すノイズヒートマップに変換され得る。続いて、ビューのヒートマップはスカラー値に変換され得(例えば、ヒートマップ全体のピクセルごとにヒートマップ値の大きさを加算することによって)、それにより、再構成済み画像Bimageに対応する位置での不確実性が表される。グループBの各ビューの全てのビューの不確実性は、まとめてグループ化され、グループBの各ビューに対する不確実性マップBU-mapが作成され得る。次に、不確実性マップBU-mapは、線量比曲線(例えば、図5に示すような)と共に使用されて、ノイズ補償AEC補正値の(z方向の)空間分散セットが作成され得る。
【0025】
図7Bは、ニューラルネットワークに供給されたサイノグラム画像データを使用してノイズデータが計算される、図1のAEC補正値計算の一部として図4に示したようなノイズデータ計算方法の第2の実施形態のブロック図である。示すように、ニューラルネットワークは、いくつかの異なるビューに適用することができる。第1の実施形態では、ハーフスキャン再構成を実施するのに十分なサイノグラム画像データが使用されるが、代替えとして、フルスキャン再構成または2つのハーフスキャン再構成のサイノグラム画像データが使用されてもよい。第2の実施形態では、サイノグラムデータに基づいて画像再構成が実施される代わりに、サイノグラムデータは、訓練済みニューラルネットワークを使用して直接処理され、それによりサイノグラムデータのセットから不確実性マップ値が生成される。異なるサイノグラムデータの全てを訓練済みニューラルネットワークに繰り返し適用することによって、不確実性マップは、長手方向での対応するグループのビューの全てに対して生成され得る。図7Bは、グループBのビューに対応するサイノグラムデータの処理を示すが、この処理は、プレスキャンの完全な不確実性マップを作成するために他の全てのグループに対して(連続的に、または並行して)繰り返されてよい。
【0026】
図7Bのシステムの一実施形態では、ニューラルネットワークは、図7Aに示されているシステムから取得された不確実性値を使用して訓練される。すなわち、入力として(すなわち、基準データセットとして)訓練サイノグラムデータを使用して、かつ目標値として図7Aの再構成済み画像に関して前述した処理を通して得られた不確実性値を使用して、ネットワークは、不確実性マップ値をサイノグラムデータから直接作成するように訓練され、それにより、プレスキャンのサイノグラムデータからのスライスの再構成を必要とする処理を省略することができる。
【0027】
図7Cは、組織固有エリアにセグメント化された再構成済み画像データを使用してノイズデータが計算される、図1のAEC補正値計算の一部として図4に示したようなノイズデータ計算方法の第3の実施形態のブロック図である。このような構成は、図7Aの構成と類似するが、BimageおよびB’imageのうち少なくとも1つの画像セグメント化がさらに加えられる。当業者には理解されるように、画像B’imageが、セグメント化されるように描かれているが、その代わりに、Bimageも、本開示の教示を逸脱することなくセグメント化されてよい。図7Cに示すように、画像セグメント化が実施されて、セグメント化された画像B’segが作成される。セグメント化技法としては、HU値範囲に基づいて軟組織領域をセグメント化して、骨、空気などの他の解剖学的組織を取り除くように操作するHUベースの閾値処理が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本明細書で述べるように、他のセグメント化方法も可能である。
【0028】
図8は、組織固有ノイズデータを生成する際にマスクとして使用するために、再構成済み画像800を少なくとも1つの組織の領域にセグメント化する処理のブロック図である。セグメント化された画像B’segは、画像のピクセルと、そのピクセルがどの組織タイプに属するかのマップに相当する。例えば、図8に示す再構成済み画像に画像処理を加えて、様々な組織タイプ、および組織が存在しないことを示す「空気」を検出することができる。セグメント化された画像805で図示されているように組織の少なくとも3つのタイプ、軟組織=TST、肺組織=T、および骨=Tが、識別されている。しかし、乳房、眼、生殖器、腎臓、心臓、肝臓、膵臓、および胃などの他の臓器タイプを含む、他のタイプの組織(例えば、脂肪)も同様に識別される場合がある。続いて、ノイズが分離されるべき組織のタイプに応じて、セグメント化された画像は、マスクとしてノイズヒートマップ810の対応する部分に適用されて、組織固有ヒートマップ815が作成される。組織固有ヒートマップ815から分かるように、軟組織固有ノイズ補正値が決定されると、軟組織に対応するノイズのみが残される。次に、残ったノイズ(例えば、N12、N13…)が、(例えば、それらの大きさを加算することによって)集約されて、軟組織固有不確実性マップ(図7CでBST U-mapと示されている)に加えるべき再構成済み画像800の対応するスカラー値が作成され得る。続いて、この不確実性マップが使用されて、前述のAEC補正が行われ、結果としてメインスキャン全体の軟組織のノイズレベルを同じにする。当業者であれば理解できるように、代わりに他のタイプの組織をターゲットにして、その組織全体のノイズを同じにすることもできる。
【0029】
上述したノイズに基づく補正値に加えて、またはその代わりに、プレスキャン106を使用して、最終スキャンで目標とされるノイズレベルと比較して独立して制御可能な臓器固有補正値を生成することができる。第1の実施形態では、臓器固有補正情報は、イメージングされる患者に依存しないものである。このような構成では、特定の位置に特定の臓器が存在する(または存在しない)ことのみが、照射線量調節を制御するのに必要なことである。例えば、乳房、眼、および生殖器の存在下での照射線量レベルは、それらの照射線量を減らす目的で異なる補正係数がそれぞれ割り当てられる。他の臓器(例えば、肝臓および腎臓)は、異なる補正レベルが割り当てられ、つまり、より感受性の高いエリアよりも照射線量が高くなる場合がある。
【0030】
第2の実施形態では、患者別臓器固有補正が使用される場合がある。このような実施形態では、患者固有情報(例えば、臓器の疾患状態および/または臓器への以前の放射線照射量)が、ユーザインタフェースによって手動で、または以前の診察/治療に関する患者情報の自動相互参照によって(例えば、患者に関する記録のデータベースを含むローカルまたはリモート医療記録システムに問い合わせることによって)自動で、入力される場合がある。他の患者情報(例えば、患者の年齢、性別、人種、体重、および/または身長)も、手動で、またはクエリの実行によって、入力することができる。このような情報は、本明細書に記載の臓器固有補正をさらに制御することができる。
【0031】
図9に示すように、処理回路は、再構成済み画像から、再構成済み画像内の臓器を特定する場合がある。1つまたは複数の臓器は、放射線による照射に対して感受性が高い場合があるので、処理回路は、感受性の高い臓器の過剰な照射を可能な限り低減するように、初期放射線量に加えられる変更に対応する臓器マップを作成する場合がある。臓器マップは説明の目的で再構成済み画像の外側に示されているが、臓器マップは、ビューが得られる角度に基づいてビューごとに使用されることが意図される。それにより、処理回路は、長手方向で空間的に分散し、かつX線発信器の角度によって変化する、空間分散特性および回転的固有臓器感度特性を作成する。例えば、臓器マップは、目下のスライスでは、最も感受性の高い(-2)臓器(例えば、乳房組織)が角度45度から135度にあることを示している。いくつかの角度(例えば、180度付近)で感度が低下する(補正係数0になる)。図示されているように、臓器マップは、患者がイメージングされるテーブルの存在も考慮に入れる場合がある。例えば、200度あたりから感度が下がり始めるので、テーブルの存在を打ち消すように放射線を高くする場合がある。例証の目的のために、X線発信器が約270度でテーブルの下にある場合に、臓器マップは最大の補正値を持つ。図9で見られるように、臓器マップは、対称である必要はない。また、当業者であれば理解されるように、患者がテーブルの上でうつ伏せになり、乳房組織に対する補正値の一部がテーブルの存在によって相殺され場合、臓器マップは異なる値を含むことになる。本明細書に記載の補正は、臓器固有である場合があるいくつかの方法で組み合わせることができるが、少なくともいくつかの補正の組み合わせ技術としては、補正の線形組み合わせ、補正の重み付け組み合わせ、および閾値を用いた、および用いない両方の補正の組み合わせが挙げられる(ただし、これらに限定されない)。例えば、放射線レベルがすでに特定のレベルを下回っている場合、画像品質を確保するために「感受性の高い」臓器で照射線量を調整することはない。さらに別の実施形態では、医療専門家は、自動補正を使用しても照射線量レベルを十分に下げることができないという警告を受け、オーバーライドを要求されるか、イメージングを行わないよう勧められる。
【0032】
臓器固有補正のみを実施する実施形態では、後で使用するために、プレスキャンは、メインスキャンとは異なる検査で行われ、臓器マップが保存される場合がある。このような構成では、患者の現在の位置と以前の位置との位置調整が、患者表面のマーカー、またはカメラを使用した患者の外部画像を使用して実施される。あるいは、患者が、イメージングテーブル上のマーカーに位置合わせされてもよい。
【0033】
図4のノイズ補正値と同様に、図10は、AEC補正値の生成を示すブロック図を示しているが、これは、図1のプレスキャンで得られたサイノグラムデータのブロックに基づく臓器マスクによる補正である。また、図11は、臓器マスクから臓器固有AEC補正値への変換をグラフ化形態で示すブロック図である。その図に示されているように、元の一定の線量は、感受性の高い臓器の存在下では(図9に表記の「-2」に対応する乳房領域で生じるS-2と識別される領域で)線量を低下させ、かつ感受性の低い臓器および/またはテーブルの存在下では(図9に表記の「+5」に対応する領域で生じるS+5と識別される領域で)線量を増加させるように補正される。図示されているように、例証の目的のために、「-2」に対応する線量の低下は、「+5」に対応する線量の増加よりも大きい。ただし、プラスとマイナスの目盛りは同一である必要はなく、比例している必要もない。
【0034】
図12Aおよび図12Bは、それぞれ、第1および第2の実施形態による臓器マップの生成の処理を示している。図12Aの第1の実施形態では、少なくとも1つの画像が、ビューのB/B’グループ内のビューから再構成される。再構成は、ハーフスキャン再構成またはフルスキャン再構成である場合がある。再構成済み画像Bimageに対して、セグメント化処理が行われ、図7Cに関して上述したようにセグメント化された画像Bsegが生成される。次に、セグメント化された画像Bseg内の種々の臓器は、例えば、パターンマッチング技法および/または領域成長技法を使用して、かつ、任意で、以前の臓器識別処理の一部で識別された臓器の情報を使用して識別することができる。例えば、隣接するビューの再構成済み画像に臓器(例えば、肝臓)が存在すると、目下のビューにも臓器が存在し、同じ位置にある可能性が高くなる。一実施形態では、臓器識別は、HUベースの閾値処理を使用するネットワークベースの臓器セグメント化の一部として実施される。
【0035】
もう1つの選択肢方法として、図12Bに示すように、ニューラルネットワークが、パターンマッチング/領域成長技法の代わりに使用される場合がある。図12Bの第2の実施形態では、サイノグラムデータに基づいて画像再構成が実施される代わりに、サイノグラムデータは、訓練済みニューラルネットワークを使用して直接処理され、それによりサイノグラムデータのセットから臓器マップ値が生成される。異なるサイノグラムデータの全てを繰り返すことによって、臓器マップが、対応するグループのビューの全てに対して生成され得る。図12Bは、グループBのビューに対応するサイノグラムデータの処理を示すが、この処理は、長手方向でのプレスキャンの完全な臓器マップを作成するために他の全てのグループに対して(連続的に、または並行して)繰り返されてよい。
【0036】
図12Bのシステムの一実施形態では、ニューラルネットワークは、図12Aに示されているシステムから取得された臓器マップ値を使用して訓練される。すなわち、入力として訓練サイノグラムデータを使用して、かつ目標値として図12Aの再構成済み画像に関して前述した処理を通して得られた臓器マップ値を使用して、ニューラルネットワークは、臓器マップ値をサイノグラムデータから直接作成するように訓練され、それにより、プレスキャンのサイノグラムデータからのスライスの再構成を必要とする処理を省略することができる。
【0037】
前述の不確実性マップおよび臓器マップの作成技術は、別々に使用するのではなく、組み合わせて使用することができる。例えば、図13に示すように、ノイズ補償AEC補正値のセットは、臓器マスクを適用することによってさらに補正することができ、その結果、臓器固有ノイズ補償AEC補正値のセットを生成することができる。
【0038】
本開示の実施形態による、患者固有イメージングプロトコルの上述の方法は、CT装置またはスキャナからのデータに適用するように実装することができる。図14は、CT装置またはスキャナに備えられた放射線撮影ガントリの実装形態を示す。図14に示すように、放射線撮影ガントリ1150は、側面から見て描かれており、X線管1151、環状フレーム1152、および多列または2次元アレイ型X線検出器1153をさらに備える。X線管1151およびX線検出器1153は、回転軸RAを中心に回転可能に支持された環状フレーム1152上に被検体OBJを横切って正反対に載置される。回転装置1157は、環状フレーム1152を0.4秒/回転もの高速で回転させ、同時に、被検体OBJは、図示されている面の奥の方向または手前の方向に軸RAに沿って移動される。
【0039】
本開示によるX線CT装置の実施形態について、添付図面を参照しながら以下にて説明する。X線CT装置は、例えば、検査されることになる被検体を中心にしてX線管およびX線検出器が共に回転する回転/回転型装置、および多数の検出器素子が環状または水平状に配列され、かつ検査されることになる被検体を中心にしてX線管のみが回転する固定/回転型装置など、様々なタイプの装置を含むことに留意されたい。本開示は、いずれのタイプにも適用可能である。ここでは、現在の主流である回転/回転型タイプについて例示する。
【0040】
マルチスライスX線CT装置は、さらに、高電圧発生器1159を備え、この高電圧発生器1159は、X線管1151がX線を生成するように、スリップリング1158を通してX線管1151に印加される管電圧を生成する。X線は、その断面エリアが円で表されている被検体OBJに向かって照射される。例えば、X線管1151は、第1スキャン中の平均的なX線エネルギーが、第2スキャン中の平均的なX線エネルギーに比べて小さいといったX線エネルギーを有する。したがって、異なるX線エネルギーに対応する2回以上のスキャンが行われる場合がある。X線検出器1153は、被検体OBJを透過した照射X線を検出するために、被検体OBJを挟んでX線管1151の反対側に配置される。X線検出器1153は、個々の検出器素子または検出器ユニットをさらに備え、また光子計数検出器であってもよい。第4世代幾何学システムでは、X線検出器1153は、360°構造内で被検体OBJを中心にして配置される複数の検出器の1つであってもよい。
【0041】
CT装置は、X線検出器1153からの検出信号を処理するその他のデバイスをさらに備える。データ取得回路またはデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)1154は、チャネルごとのX線検出器1153からの信号出力を電圧信号に変換し、その信号を増幅し、さらにその信号をデジタル信号へと変換する。X線検出器1153およびDAS1154は、1回転あたりの所定全投影数(Total number of Projections Per Rotation:TPPR)を処理するよう構成されている。
【0042】
上述のデータは、非接触データ送信機1155を通して、放射線撮影ガントリ1150外部のコンソール内に収容された前処理デバイス1156に送信される。前処理デバイス1156は、未処理データに感度補正などのある特定の補正を実施する。メモリ1162は、再構成処理直前の段で投影データとも呼ばれる、結果データを記憶する。メモリ1162は、処理回路1164、入力デバイス1165、およびディスプレイ1166と共に、データ/制御バス1161を通して、システムコントローラ1160に接続される。システムコントローラ1160は、CTシステムを駆動させるのに十分なレベルに電流を制限する、電流調整器1163を制御する。一実施形態では、システムコントローラ1160は、最適化されたスキャン取得パラメータを実装する。
【0043】
検出器は、どの世代のCTスキャナシステムであっても、患者に対して回転および/または固定される。一実装形態において、上述のCTシステムは、第3世代幾何学システムと第4世代幾何学システムとが組み合わせられた例である場合がある。第3世代システムでは、X線管1151とX線検出器1153とは、環状フレーム1152上に正反対に載置され、環状フレーム1152が回転軸RAを中心にして回転するときに、被検体OBJを中心にして回転する。第4世代幾何学システムでは、検出器は患者を中心にして固定して配置され、またX線管は患者を中心にして回転する。代替的実施形態において、放射線撮影ガントリ1150は、Cアームおよびスタンドによって支持されている、環状フレーム1152上に配置された多数の検出器を有する。
【0044】
メモリ1162は、X線検出器装置1153でのX線照射量を示す測定値を記憶する場合がある。さらに、メモリ1162は、本明細書に記載の方法を含むCT画像再構成、物質分解、およびPQR推定法を実行する専用プログラムを記憶することができる。
【0045】
処理回路1164は、本明細書に記載の上記の方法を実行することができる。処理回路1164は、1つまたは複数の最適化された画像再構成パラメータに従って、再構成を実行してもよい。さらに、処理回路1164は、必要に応じて、ボリュームレンダリング処理、および画像差分処理などの再構成前処理画像処理を実行できる。
【0046】
前処理デバイス1156によって実施される投影データの再構成前処理は、例えば検出器較正、検出器非線形性、および極性効果を補正することを含む場合がある。
【0047】
処理回路1164によって実施される再構成後処理は、必要に応じて、フィルタの生成および画像の平滑化、ボリュームレンダリング処理、ならびに画像差分処理を含むことができる。画像再構成処理は、上記で導出された、最適な画像再構成パラメータを実装してもよい。画像再構成処理は、フィルタ補正逆投影、繰り返し画像再構成法、または確率的画像再構成法を使用して実施することができる。
【0048】
処理回路1164は、メモリを使用して、例えば、投影データ、順投影訓練データ、訓練画像、未補正画像、較正データおよびパラメータ、ならびにコンピュータプログラムなどを記憶することができる。処理回路1164はまた、軟組織領域内の取得した空間分散に基づいて参照データセットを計算することと、入力データとしての投影データセットおよび教師データとしての参照データセットを用いて機械学習処理の全てまたは一部を実施することによってフィルタを生成することと、を含む、機械学習の処理支援を含んでもよい。人工ニューラルネットワークの適用を含む場合がある機械学習の適用はまた、画像品質を表す1つまたは複数の評価値の生成を可能にする。
【0049】
処理回路1164は、1つのプロセッサに個別に実装されるか、またはプロセッサのネットワークもしくはクラウド構成内に実装されてよい。処理回路1164は、個別論理ゲート、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)として実装されることがあるCPU(処理回路)を備える場合がある。FPGAまたはCPLDの実装形態は、VDHL、Verilog、または任意のその他のハードウェア記述言語でコード化されてもよく、かつ、そのコードは、FPGAまたはCPLD内の電子メモリ内に直接記憶されるか、または別個の電子メモリとして記憶されてよい。さらに、メモリ1162は、ROM、EPROM、EEPROMまたはFLASH(登録商標)メモリのような不揮発性メモリであってもよい。メモリ1162は、静的または動的RAMなどの揮発性メモリとすることができ、電子メモリおよびFPGAまたはCPLDとメモリとの相互動作を管理するために、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサが設けられてもよい。一実施形態において、処理回路1164は、再構成済み画像を処理および生成する、CPUおよびグラフィックス処理ユニット(Graphics Processing Unit:GPU)を備える場合がある。GPUは、CPUとリソースを共有する専用グラフィックカードまたは統合グラフィックカードであってもよく、また、NVIDIA TeslaおよびAMD FireStreamを含む、GPUの様々な人工知能に焦点を当てたタイプのうちの1つであってもよい。
【0050】
あるいは、処理回路1164のCPUは、本明細書に記載の機能を実施するコンピュータ可読命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行することができ、このプログラムは、上述の非一時的電子メモリおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、FLASH(登録商標)ドライブまたは任意のその他の既知の記憶媒体のいずれかに記憶される。さらに、このコンピュータ可読命令は、実用アプリケーション、バックグラウンドデーモン、またはオペレーティングシステムのコンポーネント、あるいはそれらの組み合わせとして提供されてもよく、米国Intel(登録商標)社のXEON(登録商標)プロセッサ、または米国AMD社のOPTERON(商標)プロセッサなどのプロセッサ、およびMicrosoft(登録商標)10、UNIX(登録商標)、SOLARIS(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple MAC-OS(登録商標)などのオペレーティングシステム、ならびに当業者に既知のその他のオペレーティングシステムと連携して実行される。さらに、処理回路1164内のCPUは、命令を実施するために並行して協動する複数のプロセッサとして実装されることがある。
【0051】
一実装形態において、再構成済み画像は、ディスプレイ1166で表示される場合がある。ディスプレイ1166は、LCDディスプレイ、CRTディスプレイ、プラズマディスプレイ、OLED、LEDまたは当該技術分野において既知の任意の他のディスプレイとすることができる。
【0052】
メモリ1162は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、FLASH(登録商標)ドライブ、RAM、ROMまたは当該技術分野において既知の任意のその他の電子記憶装置とすることができる。
【0053】
非常に多くの変更および変形形態が、上記の教示に照らし可能であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、具体的に本明細書に記載されているのとは別の方法で、本開示が実践されてもよいことを理解されよう。
【0054】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、X線スキャナシステムにおける較正方法を効率化することができる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1150:放射線撮影ガントリ
1164:処理回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14