(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133278
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20230914BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20230914BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61M5/20
A61M5/172 500
A61M5/315 550J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023038598
(22)【出願日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】2202161
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】520023949
【氏名又は名称】ダイアベループ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュネル・ドゥジール
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・ラシャル
(72)【発明者】
【氏名】ヨースラ・トゥルキ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066DD12
4C066EE06
4C066EE14
4C066FF05
4C066HH02
4C066HH12
4C066JJ08
4C066QQ22
4C066QQ32
4C066QQ41
4C066QQ51
4C066QQ61
4C066QQ82
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステムを提供する。
【解決手段】コンピュータ化されたシステムは、時間ベースのユーザ代謝物データを含むデータを記憶するメモリ22と、プロセッサ23とを備える。プロセッサは、前記データに基づいて、可能な薬剤投薬量を決定するように適合されたドーズ決定モジュール24と、前記データまたは可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から障害しきい値をトリガするかどうかを判断するように適合された障害モジュール25と、障害しきい値がトリガされると障害モジュールが判断するとき、または障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合された通知モジュール26であって、ユーザ通知は、ユーザに発行され、可能な薬剤投薬量を含む、通知モジュールとを備える。複数の障害しきい値は、ボーラスしきい値と、薬剤しきい値と、時間しきい値とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム(1)であって、前記コンピュータ化されたシステム(1)は、
少なくとも、時間ベースのユーザ代謝物データを含むデータを記憶するメモリ(22)と、
プロセッサ(23)であり、
- 前記データに基づいて、可能な薬剤投薬量を決定するように適合されたドーズ決定モジュール(24)と、
- 前記データまたは前記可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から少なくとも1つの障害しきい値をトリガするかどうかを判断するように適合された障害モジュール(25)と、
- 前記少なくとも1つの障害しきい値がトリガされると前記障害モジュール(25)が判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合された通知モジュール(26)であり、前記ユーザ通知が、前記ユーザに発行され、前記可能な薬剤投薬量を含む、通知モジュール(26)と
を備える、プロセッサと
を備え、
前記複数の障害しきい値は、
以下BTと呼ばれるボーラスしきい値であり、前記BTは、最小の可能な薬剤投薬量に対応する、ボーラスしきい値と、
以下ITと呼ばれる薬剤しきい値であり、前記ITは、最小の可能な薬剤投薬量に対応する、薬剤しきい値と、
以下TTと呼ばれる時間しきい値であり、前記TTは、先のユーザ通知が前記ユーザに対して発行されてから、または先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する、時間しきい値と
を含む、コンピュータ化されたシステム(1)。
【請求項2】
前記通知モジュール(26)は、少なくとも前記BTおよび前記TTがトリガされると前記障害モジュール(25)が判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合される、請求項1に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム(1)。
【請求項3】
前記通知モジュール(26)は、少なくとも前記BT、前記ITおよび前記TTがトリガされると前記障害モジュール(25)が判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合される、請求項2に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム(1)。
【請求項4】
前記ITは、修正すべき最小血糖および補償係数に依存する、請求項1から3のいずれか一項に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム(1)。
【請求項5】
前記BTは、前記先のユーザ通知が前記ユーザに発行されてから、または前記先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少する、請求項1から4のいずれか一項に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム(1)。
【請求項6】
前記BTは、前記先のユーザ通知が前記ユーザに発行されてから、または先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてからある一定の長さの時間が経過した後の最小インスリン値を有する、請求項5に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム(1)。
【請求項7】
障害バイパスは、緊急バイパスであり、前記緊急バイパスは、前記ユーザにとってのリスクが前記データから確認されるときにトリガされる、請求項1から6のいずれか一項に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム(1)。
【請求項8】
ユーザへ治療情報を伝達するための方法であって、前記方法は、コンピュータ化されたシステムにより実施され、
- 少なくとも時間ベースのユーザ代謝物データを含むデータを受信することから構成される、データ受信(30)のステップと、
- 前記データに基づいて、可能な薬剤投薬量を決定することから構成される、薬剤投薬量決定(40)のステップと、
- 前記データまたは前記可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から少なくとも1つの障害しきい値をトリガするかどうかを判断することから構成される、トリガ判断(50)のステップと、
- 前記トリガ判断(50)のステップ中に、前記複数の障害しきい値から少なくとも1つのしきい値がトリガされると判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、前記ユーザにユーザ通知を発行することから構成される、通知発行(60)のステップであって、前記ユーザ通知が、前記可能な薬剤投薬量を含む、ステップと
を含み、
前記複数の障害しきい値は、
以下BTと呼ばれるボーラスしきい値であって、前記BTは、最小ボーラスドーズに対応する、ボーラスしきい値と、
以下ITと呼ばれる薬剤しきい値であって、前記ITは、インスリンの最小ドーズに対応する、薬剤しきい値と、
以下TTと呼ばれる時間しきい値であって、前記TTは、先のユーザ通知が前記ユーザに対して発行されてから、または先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する、時間しきい値と
を含む、ユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項9】
前記通知発行(60)のステップは、前記トリガ判断(50)のステップ中に、少なくとも前記BTおよび前記TTがトリガされると判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、前記ユーザにユーザ通知を発行することから構成される、請求項8に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項10】
前記通知発行(60)のステップは、前記トリガ判断(50)のステップ中に、少なくとも前記BT、前記ITおよび前記TTがトリガされると判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、前記ユーザにユーザ通知を発行することから構成される、請求項9に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項11】
前記ITが、修正すべき最小血糖および補償係数に依存する、請求項8から10のいずれか一項に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項12】
前記BTは、前記先のユーザ通知が前記ユーザに発行されてから、または前記先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少する、請求項8から11のいずれか一項に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項13】
前記BTは、前記先のユーザ通知が前記ユーザに発行されてから、または前記先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてからある一定の長さの時間が経過した後の最小値である、請求項12に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項14】
障害バイパスは、緊急バイパスであり、前記緊急バイパスは、前記ユーザにとってのリスクが前記データから確認されるときにトリガされる、請求項8から13のいずれか一項に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項15】
命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記命令は、前記プログラムがコンピュータにより実行されるときに、請求項8から14のいずれか一項に記載の前記方法の前記ステップを前記コンピュータに行わせる、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
より具体的には、本発明は、ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステムおよび関連する方法に関する。
【0003】
米国特許第7713229(B2)号という文書に記載されているように、薬剤注入装置および生理液特性モニタ装置が、医療分野では知られている。このような装置の1つの非常に一般的な用途は、糖尿病患者へのインスリンの投薬および血糖値のモニタリングである。このような装置の携帯性の向上および使用の容易さは、糖尿病患者が自己調整型医療制度を投与する(administer)ことを可能にし、これは、ひいては患者自律性およびプライバシーのレベルの向上をもたらす。このことは、糖尿病患者のブドウ糖値が一日の間に頻繁に変わることがあるので、特に有利である。
【0004】
したがって、患者にスマートな方式で情報を提供することが重要である。米国特許第9439602(B2)号という文書は、主にブドウ糖値に依存するが、ブドウ糖の傾向およびおそらく患者の体内に存在するインスリンの量などの他の要因によっても影響され得る、具体的な血糖状態の深刻さの尺度として、臨床的なリスクに基づいて、ユーザに警告するブドウ糖モニタシステムを記載している。特に、患者が曝される「臨床的なリスク」を評価するときには、血糖値だけでなく、その傾向も考慮すべきである。とりわけ、ブドウ糖センサ情報および危機的なリスクに基づいて警報を鳴らす装置は、小型PDAプラットフォームに組み込み可能な技術を利用すべきでる。
【0005】
しかしながら、米国特許第9439602(B2)号という文書は、システムにより示唆される精神的負担を考慮に入れておらず、任意の臨床的なリスクを考慮に入れるだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7713229(B2)号
【特許文献2】米国特許第9439602(B2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステムと、前記精神的負担を軽減させながら、ユーザに通知を発行することができる関連する方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステムに関し、上記コンピュータ化されたシステムが、
少なくとも、時間ベースのユーザ代謝物データを含むデータを記憶するメモリと、
プロセッサであって、
- 前記データに基づいて、可能な薬剤投薬量を決定するように適合されたドーズ決定モジュールと、
- 前記データまたは上記可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から少なくとも1つの障害しきい値をトリガするかどうかを判断するように適合された障害モジュールと、
- 上記少なくとも1つの障害しきい値がトリガされると上記障害モジュールが判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合された通知モジュールであり、上記ユーザ通知は、上記ユーザに発行され、上記可能な薬剤投薬量を含む、通知モジュールと
を備える、プロセッサと
を備え、
上記複数の障害しきい値は、
以下BTと呼ばれるボーラスしきい値であり、上記BTは、最小の可能な薬剤投薬量に対応する、ボーラスしきい値と、
以下ITと呼ばれる薬剤しきい値であり、上記ITは、最小の可能な薬剤投薬量に対応する、薬剤しきい値と、
以下TTと呼ばれる時間しきい値であり、上記TTは、先のユーザ通知がユーザに発行されてから、または先のボーラスが上記ユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する、時間しきい値と
を含む。
【0009】
本発明によれば、障害バイパスは、ユーザが可能な限り早く治療情報を受け取らなければならず、それゆえに少なくとも1つの障害しきい値がトリガされるのを待てない状況である。障害バイパスは、ユーザが、例えばひどい高血糖症に面している状況であってもよい。
【0010】
本発明によれば、薬剤投薬量は、インスリン投薬量推奨値に対応する。
【0011】
本発明によれば、ユーザ通知を発行することは、ユーザへ通知を送ることを意味する。前記ユーザ通知は、音、光、または振動のうちのいずれかのタイプなどの通知要素をともなってもよい。一実施形態によれば、ユーザ通知が重要であるほど、より多くの通知要素をともなうだろう。
【0012】
一実施形態によれば、時間ベースのユーザ代謝物データは、連続ブドウ糖モニタセンサにより与えられる。
【0013】
一実施形態によれば、ドーズ決定モジュールにより決定される可能な薬剤投薬量は、ユーザによりいつでも見られる。
【0014】
本発明によれば、薬剤しきい値は、インスリンしきい値である。
【0015】
少なくとも1つの障害バイパスがあることは、異なる状況においてユーザにユーザ通知を発行することを可能にし、それゆえに、ユーザのセキュリティを向上させることを可能にする。
【0016】
BTがあることは、ユーザ通知を発行することを可能にし、それゆえに決定される可能な薬剤投薬量がユーザの好みの投与方法および装置を使用するインスリンの最小の投与可能な量よりも多い場合にだけユーザを妨げることを可能にする。実際に、いくつかの装置は、インスリンの単一単位を投与することを可能にするだけであり、それゆえに、ユーザ通知を発行することおよび前記ユーザに対しては投与できない決定された可能な薬剤投薬量に対してユーザを妨げることに関係しない。
【0017】
システムがスマートインスリンペンなどの分注装置に接続される実施形態によれば、BTは、投与方法および分注装置を使用するインスリンの最小の投与可能な量に対応する予め定められた値である。
【0018】
ITがあることは、ユーザ通知を発行することを可能にし、それゆえに血糖症を顕著に修正するためにだけユーザを妨げることを可能にする。例えば、ユーザがインスリン欠乏である場合に、ITは、ユーザの血糖を3mg/dlだけ下げる効果を有するインスリンの量に等しくなり得る。それゆえに、可能な薬剤投薬量が3mg/dlを下回る値の血糖を修正するように計算される場合、ITはトリガされず、したがってユーザ通知が発行されず、ユーザは妨げられないことになる。
【0019】
一実施形態によれば、ITは、ユーザの選択に対応する予め定められた値である。
【0020】
TTがあることは、ユーザ通知を発行することを可能にし、それゆえに最後に発行されたユーザ通知からおよび/または最後のボーラスがユーザにより受け取られてからある一定の長さの時間が経過した後にだけユーザを妨げることを可能にし、それゆえにシステムの全体的な障害を減少させる。
【0021】
本発明によれば、受け取られたボーラスは、ユーザの体に注射された/投与されたインスリンのある一定のドーズに対応する。
【0022】
好ましい実施形態によれば、TTは、先のボーラスがユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する。
【0023】
一実施形態によれば、通知モジュールは、少なくともBTおよびTTがトリガされると障害モジュールが判断するときにまたは少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合される。
【0024】
このような構成は、BTおよびITの両方にしたがって発行されるユーザ通知の数を潜在的に減少させるので、システムの全体的な障害を潜在的に最小化することを可能にする。
【0025】
一実施形態によれば、通知モジュールは、少なくともBT、ITおよびTTがトリガされると障害モジュールが判断するときにまたは少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合される。
【0026】
このような構成は、BT、ITおよびTTにしたがって発行されるユーザ通知の数を潜在的に減少させるので、システムの全体的な障害を潜在的に最小化することを可能にする。
【0027】
一実施形態によれば、ITは、修正すべき最小血糖および補償係数に依存する。
【0028】
一実施形態によれば、ITは次式の通りである:
【0029】
【0030】
ここでは、
ΔGminは、修正すべき最小血糖を表し、
CFが補償係数[U/g/L]を表す。
【0031】
このような構成は、ITを正確に決定することを可能にする。
【0032】
一実施形態によれば、補償係数は、ユーザのインスリンの1日総ドーズ、以降TDDと呼ばれる、から導き出され、
【0033】
【0034】
をともなう。このような構成は、補償係数を正確に決定することを可能にする。
【0035】
一実施形態によれば、BTは、先のユーザ通知がユーザに発行されてからまたは先のボーラスがユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少する。
【0036】
好ましい実施形態によれば、BTは、先のボーラスがユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少する。
【0037】
このような構成は、ユーザセキュリティとユーザ障害との間の良いバランスを維持することを可能にする。実際に、先のボーラスがユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少するBTがあることは、可能な薬剤投薬量がITよりもはるかに大きい場合にまたはユーザ血糖が例えば将来に容認できる範囲外であり得る場合に、先のユーザ通知が発行されてからまたは先のボーラスが投与されてから短時間しか経過していない場合でさえユーザにユーザ通知を発行することを可能にする。
【0038】
一実施形態によれば、BTは、最大インスリン値から減少し、前記最大インスリン値はユーザへの1単位のインスリンの生理的影響に依存する。このような構成は、システムがユーザに適応することを可能にする。一実施形態によれば、BTは、最大値から減少し、前記最大インスリン値は[数式3]min(xU,xCF)に等しい。ここで、xUは、インスリン単位の最大量に対応し、xCFは、ユーザのインスリン必要量を考慮するために定数を乗算した補償係数である。
【0039】
一実施形態によれば、xUは、インスリンの2単位と8単位との間を含む事前に登録された値である。
【0040】
一実施形態によれば、BTは、先のユーザ通知がユーザへ発行されてからまたは先のボーラスがユーザに対して投与されてからある一定の長さの時間が経過した後の最小インスリン値である。
【0041】
好ましい実施形態によれば、BTは、最小インスリン値よりもさらに減少できない。BTは、先のボーラスがユーザに対して投与されてからある一定の長さの時間が経過した後の前記最小インスリン値に等しい。
【0042】
このような構成は、ユーザセキュリティとユーザ障害との間の良いバランスを維持することを可能にする。実際に、ある一定の長さの時間の後に最小値があることは、最後のユーザ通知が発行されてからまたはボーラスが投与されてから経過した時間がTTよりもはるかに大きい場合でさえ、妥当であるには低すぎる薬剤投薬量を含むユーザ通知を発行しないことを可能にする。
【0043】
一実施形態によれば、BTには、最小インスリン値があり、前記最小インスリン値は、ユーザに対する1単位のインスリンの生理学的影響およびユーザの好みに依存する。このような構成は、システムがユーザに適応することを可能にする。
【0044】
一実施形態によれば、BTには、最小インスリン値があり、前記最小インスリン値は、[数式4]max(yU,pU,yCF)に等しい。ここで、yUは、特定の実施形態では、お気に入りの投与方法およびユーザの装置に関係することがある最小量のインスリン単位に対応し、pUは、ユーザの好みにしたがったインスリン単位のある量に対応し、yCFは、ユーザのインスリン必要量を考慮に入れるために定数を乗算した補償係数である。
【0045】
一実施形態によれば、yUは、1/2単位のインスリンと2単位のインスリンとの間を含む事前登録された値である。
【0046】
一実施形態によれば、BTは、最大インスリン値、修正すべき最大血糖、最小インスリン値、補償係数を考慮したインスリン値および補償係数に等しくてもよい二次補償係数に依存する。補償係数に等しくてもよい二次補償係数は、システムがユーザにさらに適応することを可能にする。
【0047】
このような好ましい実施形態は、ユーザセキュリティとユーザ障害との間のより良いバランスを維持することを可能にする。
【0048】
一実施形態によれば、障害バイパスは、緊急バイパスであり、前記緊急バイパスは、ユーザにとってのリスクがデータから確認される場合にトリガされる。
【0049】
このような構成は、いずれかのしきい値のトリガおよびそれゆえにユーザのセキュリティをバイパスすることを可能にする。
【0050】
一実施形態によれば、緊急は、ユーザの用意する(on board)決定されたおよび/または見積もられた現在のインスリンがある一定の値より低いときであり得る。それゆえに、通知モジュールは、ユーザの用意する現在のインスリンがある一定の値より低いときに可能な薬剤投薬量を含むユーザ通知を発行するように適合される。一実施形態によれば、用意するインスリンは、ユーザに以前に注射したインスリン、経時的なおよびその時点のインスリンの消費量に基づいて決定されるおよび/または見積もられる。
【0051】
一実施形態によれば、用意するインスリンは、少なくとも、ユーザに以前に注射したインスリン、経時的なおよびその時点のインスリンの消費量に基づいて経時的に用意されるインスリンの推移を表す数学的モデルを使用して決定される。
【0052】
本発明はまた、ユーザへ治療情報を伝達するための方法にも関し、上記方法は、コンピュータ化されたシステムにより実施され、下記のステップを含む:
-データ受信、データ受信の上記ステップは少なくとも時間ベースのユーザ代謝物データを含むデータを受信することから構成され、
-薬剤投薬量決定、薬剤投薬量決定の上記ステップは前記データに基づいて可能な薬剤投薬量を決定することから構成され、
-トリガ判断、トリガ判断の上記ステップは前記データまたは上記可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から少なくとも1つの障害しきい値をトリガするかどうかを判断することから構成され、
-通知発行、通知発行の上記ステップは、トリガ判断の上記ステップ中に、上記複数の障害しきい値からの少なくとも1つのしきい値がトリガされることが判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザにユーザ通知を発行することから構成され、上記ユーザ通知が上記可能な薬剤投薬量を含み、
上記複数の障害しきい値は:
ボーラスしきい値、以降BTと呼ばれる、であって、上記BTが最小ボーラスドーズに対応する、ボーラスしきい値と、
薬剤しきい値、以降ITと呼ばれる、であって、上記ITがインスリンの最小ドーズに対応する、薬剤しきい値と、
時間しきい値、以降TTと呼ばれる、であって、上記TTは先のユーザ通知がユーザに発行されてからまたは先のボーラスが上記ユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する、時間しきい値と
を含む。
【0053】
一実施形態によれば、コンピュータ化されたシステムに適用可能なすべての先に説明した特性および利点もまた、方法に適用可能である。
【0054】
一実施形態によれば、方法は、先に説明したユーザへ治療情報を伝達するためのシステムにより実施される。
【0055】
一実施形態によれば、通知発行の上記ステップは、トリガ判断の上記ステップ中に、少なくとも上記BTおよび上記TTがトリガされることが判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザにユーザ通知を発行することから構成される。
【0056】
一実施形態によれば、通知発行の上記ステップは、トリガ判断の上記ステップ中に、少なくとも上記BT、上記ITおよび上記TTがトリガされることが判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザにユーザ通知を発行することから構成される。
【0057】
一実施形態によれば、上記ITは、修正すべき最小血糖および補償係数に依存する。
【0058】
一実施形態によれば、上記BTは、先のユーザ通知がユーザに発行されてからまたは先のボーラスが上記ユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少する。
【0059】
一実施形態によれば、上記BTには、先のユーザ通知がユーザに発行されてからまたは先のボーラスが上記ユーザに対して投与されてからある一定の長さの時間が経過した後に最小値がある。
【0060】
一実施形態によれば、障害バイパスは、緊急バイパスであり、前記緊急バイパスは、上記ユーザにとってのリスクが上記データから確認されるときにトリガされる。
【0061】
本発明はまた、プログラムがコンピュータにより実行されるときに、上に説明した方法の上記ステップを上記コンピュータに行わせる命令を含むコンピュータプログラム製品にも関係する。
【0062】
本発明によれば、「インスリン」という用語は、任意のタイプの薬剤であると理解されてもよい。
【0063】
発明の実施形態は、下記に簡単に説明される図面を参照して下記に説明されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】本発明による、ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステムの模式図である。
【
図2】本発明による、ユーザへ治療情報を伝達するための方法のステップを表す図である。
【
図3】本発明による、薬剤投薬システムを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図3は、薬剤投薬システム1の例を示す。薬剤投薬システム1が、糖尿病に対する適用に関して説明されるだろう。しかしながら、発明の他の応用が可能である。薬剤投薬システム1は、時間ベースのユーザ代謝物データなどのユーザのパラメータを測定するように適合された検知ユニット2を備え、本例では、検知ユニット2は、連続ブドウ糖モニタセンサである。特に、検知ユニット2は、ユーザにより装着されるウェアラブル機器を備えてもよい。加えて、検知ユニット2は、ユーザのパラメータの測定を繰り返し行うように適応する。検知ユニット2は、時間データが測定データと関係付けられるようにクロックを備えてもよい。このような検知ユニットは、連続検知ユニットと呼ばれることがある。検知ユニット2は、生体内測定を行うように適応していてもよい。これゆえ、測定されるパラメータは、例えば、ブドウ糖などの代謝物の濃度であってもよい。
【0066】
検知ユニット2は、リモートシステムへデータを通信するように適合されたデータ通信装置を備える。データ通信装置は、例えば、本特許出願の優先日におけるブルートゥース(登録商標)規格またはBLE規格に対応する短距離無線通信を使用して、ワイヤレスで通信するように適合され得る。
【0067】
薬剤投薬システム1は、端末3をさらに備える。端末3は、ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム1を備える。前記コンピュータ化されたシステム1は、
図1に示したように、プロセッサ23およびメモリ22を備える。端末3は、リモートシステムへデータを通信するように適合されたデータ通信モジュール27を備える。データ通信モジュール27は、例えば、本特許出願の優先日におけるブルートゥース(登録商標)規格に対応する短距離無線通信を使用して、ワイヤレスで通信し得る。例えば、端末3のデータ通信モジュール27および検知ユニット2のデータ通信装置は、互いに互換性があり、端末3および検知ユニット2が互いに通信する通信システムを形成する。特に、測定データ、および場合によって時間ベースのユーザ代謝物データが、検知ユニット2から端末3へ通信され、メモリ22に記憶される。
【0068】
図3に説明したように、薬剤投薬システム1は、薬剤分注装置4をさらに備える。薬剤分注装置4は、薬剤を収容するように構成された容器5を備える。典型的には、容器5は、複数回使用されるように薬剤の2回以上のドーズを含む。薬剤分注装置4は、ユーザに薬剤を分注するように適合された分注ユニット6をさらに備える。これは、例えば、ユーザの身体へと挿入される針、および容器5から針を通ってユーザの身体へと薬剤を吐出するために押されることが可能なプランジャ8を備える。薬剤分注装置4は、設定ユニット7をさらに備える。設定ユニット7は、薬剤分注装置4を使用して1回に注射され得る薬剤の量を制御するためにユーザにより設定されることが可能である。例えば、設定ユニット7は、例えば、2単位の量でユーザにより設定されてもよく、分注装置システムは、薬剤を分注装置するために作動され、2単位が注射されたときに動作を止められる。例えば、プランジャ8用の設定可能な機械式停止具が使用されてもよい。他の実施形態が可能である。
【0069】
しかしながら、設定ユニット7が1単位に満たない薬剤の量を設定することが可能でない場合には、ユーザは、1単位未満を注射できない。
【0070】
図1は、ユーザへ可能な薬剤投薬量などの治療情報を伝達するように構成されたコンピュータ化された通信治療情報の例を示す。より具体的に、薬剤投薬量は、インスリン投薬量推奨値に対応する。コンピュータ化されたシステム1は、少なくとも、時間ベースのユーザ代謝物データを含み検知ユニット2により送られたデータを記憶するように構成されたメモリ22、およびプロセッサ23を備える。プロセッサ23は、前記データに基づいて可能な薬剤投薬量を決定するように適合されたドーズ決定モジュール24と、前記データまたは可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から少なくとも1つの障害しきい値をトリガするかどうかを判断するように適合された障害モジュール25と、少なくとも1つの障害しきい値がトリガされると障害モジュール25が判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合された通知モジュール26とを備え、上記ユーザ通知は、ユーザに対して発行され、可能な薬剤投薬量を含む。本発明によれば、障害バイパスは、ユーザができるだけ早く治療情報を受信しなければならず、それゆえに少なくとも1つの障害しきい値がトリガされることを待てない状況である。少なくとも1つの障害バイパスがあることは、異なる状況においてユーザにユーザ通知を発行することを可能にし、それゆえにユーザのセキュリティを向上させることを可能にする。
【0071】
「ユーザ通知を発行する」という用語は、「ユーザへ通知を送ること」を具体的に意味する。前記ユーザ通知は、任意のタイプの音、光、または振動などの通知要素をともなうことがある。一実施形態によれば、ユーザ通知が重要であるほど、より多くの通知要素をともなうだろう。しかしながら、障害しきい値がなく障害バイパスもないときに、ドーズ決定モジュール24により決定される可能な薬剤投薬量は、ユーザにより端末3上でいつでも見られる。
【0072】
障害バイパスは、ユーザが、例えばひどい高血糖症に面している状況であってもよい。障害バイパスは緊急バイパスであり、前記緊急バイパスは、ユーザにとってのリスクがデータから確認される場合にトリガされる。このような構成は、いずれかのしきい値のトリガそれゆえにユーザのセキュリティをバイパスすることを可能にする。一実施形態によれば、緊急事態は、ユーザに用意される決定されたおよび/または見積もられた現在のインスリンがある一定の値の下であるときであるかもしれない。それゆえに、通知モジュール26は、ユーザの用意する現在のインスリンがある一定の値の下であるときに可能な薬剤投薬量を含むユーザ通知を発行するように適合される。一実施形態によれば、用意するインスリンは、ユーザに以前に注射したインスリン、経時的なおよびその時点のインスリンの消費量に基づいて決定されるおよび/または見積もられる。一実施形態によれば、用意されるインスリンは、少なくとも、ユーザに以前に注射したインスリン、経時的およびその時点のインスリンの消費量に基づいて経時的に用意されるインスリンの推移を表す数学的モデルを使用して決定される。
【0073】
複数の障害しきい値は、ボーラスしきい値、以降BTと呼ばれる、を含み、BTは最小ボーラスドーズに対応する。BTがあることは、ユーザ通知を発行することを可能にし、それゆえに、決定される可能な薬剤投薬量がユーザのお気に入りの投与方法および装置を使用するインスリンの最小の投与可能な量よりも多い場合にだけユーザを妨げる。実際に、先に述べたように、いくつかの装置は、インスリンの単一単位を投与することを可能にするだけであり、それゆえに、ユーザ通知を発行することおよび前記ユーザに対して投与できない決定された可能な薬剤投薬量に対してユーザを妨げることに関係しない。システムがスマートインスリンペンなどの分注装置4に接続される実施形態によれば、BTは、投与方法および分注装置4を使用してインスリンの最小の投与可能な量に対応する予め定められた値である。
【0074】
好ましい実施形態によれば、BTは、先のボーラスがユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少する。このような構成は、ユーザセキュリティとユーザ障害との間の良いバランスを維持することを可能にする。実際に、先のボーラスがユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少するBTがあることは、可能な薬剤投薬量がITよりもはるかに大きい場合にまたはユーザ血糖が例えば将来に容認できる範囲外であり得る場合に、先のユーザ通知が発行されてからまたは先のボーラスが投与されてから短時間しか経過していない場合でさえユーザにユーザ通知を発行することを可能にする。BTは、最大インスリン値から減少し、前記最大インスリン値はユーザへの1単位のインスリンの生理的影響に依存し、[数式5]min(xU,xCF)に等しい。ここで、xUはインスリン単位の最大量に対応し、xUは、インスリンの2単位と8単位との間を含む事前登録した値であり、xCFは、ユーザのインスリン必要量を考慮するために定数を乗算した補償係数である。このような構成は、システムがユーザに的確に適応することを可能にする。
【0075】
複数の障害しきい値はまた、薬剤しきい値、より具体的にインスリンしきい値、以降ITと呼ばれる、も含み、ITはインスリンの最小ドーズに対応する。ITがあることは、ユーザ通知を発行することを可能にし、これゆえに相当大量のインスリンの量に対してだけユーザを妨げることを可能にする。相当大量のインスリンの量は、血糖を実質的に下げる効果を有するインスリンの量である。例えば、ユーザがインスリン欠乏である場合に、ITは、ユーザ血糖を3mg/dlだけ下げる効果を有するインスリンの量に等しくなり得る。それゆえに、可能な薬剤投薬量が3mg/dlを下回る値の血糖を修正するように計算される場合、ITはトリガされるべきではなく、したがってユーザ通知が発行されず、ユーザは妨げられないことになる。一実施形態によれば、ITは、ユーザの選択および/または好みに対応する予め定められた値である。
【0076】
好ましい実施形態によれば、ITは、修正すべき最小血糖および補償係数に依存する。それゆえに、ITは次式の通りである:
【0077】
【0078】
ここでは、
ΔGminは、修正すべき最小血糖を表し、
CFが補償係数[U/g/L]を表す。
【0079】
このような構成は、ITを正確に決定することを可能にする。一実施形態によれば、補償係数は、ユーザのインスリンの1日総ドーズ、以降TDDと呼ばれる、から導き出され、
【0080】
【0081】
をともなう。このような構成は、補償係数を正確に決定することを可能にする。
【0082】
BTは、先のボーラスがユーザに対して投与されてからある一定の長さの時間が経過した後の最小インスリン値である。しかしながら、BTは、最小インスリン値よりもさらに減少できない。このような構成は、ユーザセキュリティとユーザ障害との間の良いバランスを維持することを可能にする。実際に、ある一定の長さの時間の後に最小値があることは、最後のユーザ通知が発行されてからまたはボーラスが投与されてから経過した時間が、TTよりもはるかに大きい場合でさえ、妥当であるには低すぎる薬剤投薬量を含むユーザ通知を発行しないことを可能にする。
【0083】
一実施形態によれば、BTには、最小インスリン値があり、前記最小インスリン値は、ユーザに対する1単位のインスリンの生理学的影響およびユーザの好みに依存する。このような構成は、システムがユーザに適応することを可能にする。
【0084】
好ましい実施形態によれば、BTには、最小インスリン値があり、前記最小インスリン値は、[数式8]max(yU,pU,yCF)に等しい。ここで、yUは、分注装置4を使用して分注装置され得る最小量のインスリン単位に対応し、1/2単位のインスリンと2単位のインスリンとの間を含む事前登録された値であり、pUはユーザの好みにしたがったある量のインスリン単位に対応し、yCFは、ユーザのインスリン必要量を考慮するために定数を乗算した補償係数である。このような構成は、ユーザセキュリティとユーザ障害との間のより良いバランスを維持しながら、システムがユーザに適応することを可能にする。
【0085】
複数の障害しきい値は、時間しきい値、以降TTと呼ばれる、を含み、TTは、先のユーザ通知がユーザに発行されてからまたは先のボーラスがユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する。TTがあることは、ユーザ通知を発行することを可能にし、それゆえに、最後のボーラスがユーザにより受け取られてからある一定の長さの時間が経過した後にだけユーザを妨げることを可能にし、それゆえに、システムの全体的な障害を減少させる。本発明によれば、受け取られたボーラスは、ユーザの体に対して注射された/投与されたインスリンのある一定のドーズに対応する。
【0086】
一実施形態によれば、通知モジュール26は、少なくともBTおよびTTがトリガされると障害モジュール25が判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合される。このような構成は、BTおよびITの両方にしたがって発行されるユーザ通知の数を潜在的に減少させるので、システムの全体的な障害を潜在的に最小化することを可能にする。
【0087】
好ましい実施形態によれば、通知モジュール26は、少なくともBT、ITおよびTTがトリガされると障害モジュール25が判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合される。このような構成は、BT、ITおよびTTにしたがって発行されるユーザ通知の数を潜在的に減少させるので、システムの全体的な障害を潜在的に最小化することを可能にする。
【0088】
本発明はまた、ユーザへ治療情報を伝達するための方法にも関し、
図3によれば、方法は、これまでに説明したユーザへ治療情報を伝達するためのシステムにより実施され、
- 少なくとも時間ベースのユーザ代謝物データを含むデータを受信することから構成されるデータ受信30のステップと、
- 前記データに基づいて可能な薬剤投薬量を決定することから構成される薬剤投薬量決定40のステップと、
- 前記データまたは可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から少なくとも1つの障害しきい値をトリガするかどうかを判断することから構成されるトリガ判断50のステップと、
- トリガ判断50のステップ中に、複数の障害しきい値から少なくとも1つのしきい値がトリガされることが判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときにユーザにユーザ通知を発行することから構成される、通知発行60のステップであって、ユーザ通知は、可能な薬剤投薬量を含む、ステップと
を含み、
複数の障害しきい値は、
- 以下BTと呼ばれるボーラスしきい値であり、BTは、最小ボーラスドーズに対応する、ボーラスしきい値と、
- 以下ITと呼ばれる薬剤しきい値であり、ITは、インスリンの最小ドーズに対応する、薬剤しきい値と、
- 以下TTと呼ばれる時間しきい値であり、TTは、先のユーザ通知がユーザに発行されてからまたは先のボーラスがユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する、時間しきい値と
を含む。
【0089】
一実施形態によれば、例えば、特定の障害しきい値特性などのコンピュータ化されたシステムに適用可能なすべての先に説明した特性および利点もまた、方法に適用可能である。
【0090】
一実施形態によれば、通知発行60のステップは、トリガ判断50のステップ中に、少なくともBTおよびTTがトリガされることが判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときにユーザにユーザ通知を発行することから構成される。
【0091】
好ましい実施形態によれば、通知発行60のステップは、トリガ判断50のステップ中に、少なくともBT、ITおよびTTがトリガされることが判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときにユーザにユーザ通知を発行することから構成される。
【0092】
本発明はまた、プログラムがコンピュータにより実行されるときに、先に説明したようにユーザへ治療情報を伝達するための方法のステップをコンピュータに行わせる命令を含むコンピュータプログラム製品にも関する。
【0093】
一実施形態によれば、例えば、特定の障害しきい値特性などの、コンピュータプログラム製品に適用可能なすべての先に説明した特性および利点もまた、方法に適用可能である。
【0094】
発明の例示的な実施形態が2つの主要な実施形態を参照して説明されてきている一方で、様々な変更、省略および/または追加が行われてもよいこと、および均等物が発明の思想および範囲から逸脱せずに実施形態の要素を置き換えられてもよいことが当業者には理解されるだろう。加えて、多くの修正が、発明の範囲から逸脱せずに発明の教示に対するある特定の状況または材料を適応させるために行われてもよい。これゆえに、発明は、この発明を実行するために考えられる最良の態様として開示された特定の実施形態に限定されないだけでなく、発明は別記の特許請求の範囲の範囲内になるすべての実施形態を含むだろうことが意図される。その上に、具体的に述べない限り、第1の、第2の、等という用語のいずれかの使用が、何らかの順序または重要性を意味せずに、むしろ第1の、第2の、等という用語は、1つの要素をもう1つとは区別するために使用される。
【符号の説明】
【0095】
1 薬剤投薬システム、コンピュータ化されたシステム
2 検知ユニット
3 端末
4 薬剤分注装置
5 容器
6 分注装置ユニット
7 設定ユニット
8 プランジャ
22 メモリ
23 プロセッサ
24 ドーズ決定モジュール
25 障害モジュール
26 通知モジュール
27 データ通信モジュール
【手続補正書】
【提出日】2023-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステムであって、前記コンピュータ化されたシステムは、
少なくとも、時間ベースのユーザ代謝物データを含むデータを記憶するメモリと、
プロセッサであり、
- 前記データに基づいて、可能な薬剤投薬量を決定するように適合されたドーズ決定モジュールと、
- 前記データまたは前記可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から少なくとも1つの障害しきい値をトリガするかどうかを判断するように適合された障害モジュールと、
- 前記少なくとも1つの障害しきい値がトリガされると前記障害モジュールが判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合された通知モジュールであり、前記ユーザ通知が、前記ユーザに発行され、前記可能な薬剤投薬量を含む、通知モジュールと
を備える、プロセッサと
を備え、
前記複数の障害しきい値は、
以下BTと呼ばれるボーラスしきい値であり、前記BTは、最小の可能な薬剤投薬量に対応する、ボーラスしきい値と、
以下ITと呼ばれる薬剤しきい値であり、前記ITは、最小の可能な薬剤投薬量に対応する、薬剤しきい値と、
以下TTと呼ばれる時間しきい値であり、前記TTは、先のユーザ通知が前記ユーザに対して発行されてから、または先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する、時間しきい値と
を含む、コンピュータ化されたシステム。
【請求項2】
前記通知モジュールは、少なくとも前記BTおよび前記TTがトリガされると前記障害モジュールが判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合される、請求項1に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム。
【請求項3】
前記通知モジュールは、少なくとも前記BT、前記ITおよび前記TTがトリガされると前記障害モジュールが判断するとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、ユーザ通知を発行するように適合される、請求項2に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム。
【請求項4】
前記ITは、修正すべき最小血糖および補償係数に依存する、請求項1に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム。
【請求項5】
前記BTは、前記先のユーザ通知が前記ユーザに発行されてから、または前記先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少する、請求項1に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム。
【請求項6】
前記BTは、前記先のユーザ通知が前記ユーザに発行されてから、または先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてからある一定の長さの時間が経過した後の最小インスリン値を有する、請求項5に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム。
【請求項7】
障害バイパスは、緊急バイパスであり、前記緊急バイパスは、前記ユーザにとってのリスクが前記データから確認されるときにトリガされる、請求項1に記載のユーザへ治療情報を伝達するためのコンピュータ化されたシステム。
【請求項8】
ユーザへ治療情報を伝達するための方法であって、前記方法は、コンピュータ化されたシステムにより実施され、
- 少なくとも時間ベースのユーザ代謝物データを含むデータを受信することから構成される、データ受信のステップと、
- 前記データに基づいて、可能な薬剤投薬量を決定することから構成される、薬剤投薬量決定のステップと、
- 前記データまたは前記可能な薬剤投薬量が複数の障害しきい値から少なくとも1つの障害しきい値をトリガするかどうかを判断することから構成される、トリガ判断のステップと、
- 前記トリガ判断のステップ中に、前記複数の障害しきい値から少なくとも1つのしきい値がトリガされると判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、前記ユーザにユーザ通知を発行することから構成される、通知発行のステップであって、前記ユーザ通知が、前記可能な薬剤投薬量を含む、ステップと
を含み、
前記複数の障害しきい値は、
以下BTと呼ばれるボーラスしきい値であって、前記BTは、最小ボーラスドーズに対応する、ボーラスしきい値と、
以下ITと呼ばれる薬剤しきい値であって、前記ITは、インスリンの最小ドーズに対応する、薬剤しきい値と、
以下TTと呼ばれる時間しきい値であって、前記TTは、先のユーザ通知が前記ユーザに対して発行されてから、または先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてから経過した時間の最短の長さに対応する、時間しきい値と
を含む、ユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項9】
前記通知発行のステップは、前記トリガ判断のステップ中に、少なくとも前記BTおよび前記TTがトリガされると判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、前記ユーザにユーザ通知を発行することから構成される、請求項8に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項10】
前記通知発行のステップは、前記トリガ判断のステップ中に、少なくとも前記BT、前記ITおよび前記TTがトリガされると判断されるとき、または少なくとも1つの障害バイパスがトリガされるときに、前記ユーザにユーザ通知を発行することから構成される、請求項9に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項11】
前記ITが、修正すべき最小血糖および補償係数に依存する、請求項8に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項12】
前記BTは、前記先のユーザ通知が前記ユーザに発行されてから、または前記先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてから経過した時間の長さに応じて減少する、請求項8に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項13】
前記BTは、前記先のユーザ通知が前記ユーザに発行されてから、または前記先のボーラスが前記ユーザに対して投与されてからある一定の長さの時間が経過した後の最小値である、請求項12に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項14】
障害バイパスは、緊急バイパスであり、前記緊急バイパスは、前記ユーザにとってのリスクが前記データから確認されるときにトリガされる、請求項8に記載のユーザへ治療情報を伝達するための方法。
【請求項15】
命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記命令は、前記プログラムがコンピュータにより実行されるときに、請求項8に記載の前記方法の前記ステップを前記コンピュータに行わせる、コンピュータプログラム製品。
【外国語明細書】