(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133396
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ヒトガンマデルタT細胞を介する腫瘍細胞傷害性の活性化のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20230914BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230914BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230914BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230914BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20230914BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/113 Z
A61K35/76
A61K48/00
A61K31/675
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118187
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2019569226の分割
【原出願日】2018-06-15
(31)【優先権主張番号】62/521,274
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/633,461
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517428713
【氏名又は名称】アメリカン ジーン テクノロジーズ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ デイビッド パウザ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー ラフーゼン
(72)【発明者】
【氏名】ハイシャン リ
(72)【発明者】
【氏名】メイ-リン リオウ
(72)【発明者】
【氏名】リンジ シャオ
(57)【要約】
【課題】ヒトガンマデルタT細胞を介する腫瘍細胞傷害性の活性化のための方法および組成物の提供。
【解決手段】本開示は、一般に、ガンマ-デルタ(GD)T細胞を活性化するための方法および組成物に関する。そのような方法および組成物は、がんを処置するために使用することができる。第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターであって、前記第1のコードされた遺伝子エレメントが、メバロン酸経路に関与する少なくとも1つの酵素の産生を阻害することができる少なくとも1つのスモールRNAを含み、前記第2のコードされた遺伝子エレメントが、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む、ウイルスベクター。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月16日に出願された「Methods and Compositions for the Activation of Tumor Cytotoxicity Via Human Gamma-Delta T-Cells」というタイトルの米国仮特許出願第62/521,274号、および2018年2月21日に出願された「Methods and Compositions for the Activation of Tumor Cytotoxicity Via Human Gamma-Delta T-Cells」というタイトルの米国仮特許出願第62/633,461号に対する優先権を主張し、これらの仮出願は参照することによりそれぞれ本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、一般に、遺伝子療法および免疫療法の分野に関し、具体的には、ガンマデルタ(「GD」)T細胞の増加した活性化およびエフェクター細胞機能に関連する、遺伝子療法および免疫療法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトT細胞は、T細胞受容体の構造に基づいて区別される。CD4+およびCD8+サブセットを含む主な集団は、アルファ鎖およびベータ鎖から構成される受容体を発現する。より小さなサブセットは、ガンマ鎖およびデルタ鎖から作られたT細胞受容体を発現する。ガンマデルタ(「GD」)T細胞は循環リンパ球の3~10%を構成し、Vδ2+サブセットは血液中のGD T細胞の75%を構成する。Vδ2+細胞は非ペプチドエピトープを認識し、主要組織適合複合体(「MHC」)またはヒト白血球抗原(「HLA」)による抗原提示を必要としない。Vδ2+ T細胞の大部分はまたVγ9鎖を発現し、メバロン酸および非メバロン酸ステロール/イソプレノイド合成経路における中間体である5炭素ピロリン酸化合物への曝露により刺激される。イソペンテニルピロリン酸(5炭素)への応答は健常なヒトにおいてほぼ普遍的である。
【0004】
GD T細胞の別のサブセットであるVδ1+は、血液中を循環するT細胞のはるかに小さいパーセンテージを構成するが、Vδ+1細胞は上皮粘膜および皮膚において最も一般的に見られる。小細胞集団は他のVδ鎖を発現し、アレルギー、移植またはウイルス性および細菌性疾患の間の特定の応答と関連付けられ得る。
【0005】
一般に、GD T細胞は、腫瘍細胞および病原体感染細胞の殺滅などのいくつもの機能を有する。それらの特有のT細胞受容体(「TCR」)を通じた刺激は2つの糖タンパク質鎖、γおよびδから構成され、これらの糖タンパク質鎖は、CD3複合体タンパク質と相互作用して機能的なTCRを生成し、細胞傷害性、サイトカイン分泌および他のエフェクター機能のための能力を向上させる。GD T細胞のTCRは特有の特異性を有し、細胞自体が高いクローン頻度で起こるため、腫瘍および病原体に対する迅速な先天性様の応答を可能とする。
【0006】
ビスホスホネート薬物、およびメバロン酸経路におけるイソペンテニルピロリン酸(「IPP」)の下流のファルネシル二リン酸合成酵素(「FDPS」)の他のインヒビター(例えば、
図1を参照)は、がん、具体的には骨転移を伴うがんなどの様々な疾患を処置するために使用されてきた。ビスホスホネート薬物としては、例えば、Zometa(登録商標)(Novartis)、Actonel(登録商標)(Procter & Gamble)、Aredia(登録商標)(Novartis)およびFosamax(登録商標)(Merck)などの商標名が挙げられる。
【0007】
ある特定のビスホスホネートはまた、GD T細胞の刺激について研究されてきた。この理由は、骨髄細胞または腫瘍細胞におけるFDPSの阻害は、IPPのファルネシル二リン酸への変換を遮断してIPPの蓄積を引き起こすのと同時に、通常NLRP3インフラマソーム経路の活性化を抑制するFDPSの下流の生成物であるゲラニルゲラニルピロリン酸(「GGPP」)のレベルを低減させるためであり得る。GGPPの低減はカスパーゼ依存性インフラマソーム経路のインヒビターを除去し、インターロイキン-1ベータおよびインターロイキン-18などのサイトカインの分泌を可能とし、インターロイキン-18はガンマデルタT細胞活性化のために特に重要である。
【0008】
したがって、FDPSが遮断されたときに、増加したIPPおよび減少したGGPPは骨髄細胞または腫瘍細胞を改変し、改変された細胞は、GD T細胞、具体的にはVδ2+サブセットを活性化するための増加した能力を得る。活性化されたVδ2+細胞は急速に増殖し、多数のサイトカインおよびケモカインを発現し、腫瘍細胞または病原体感染細胞を細胞傷害性により破壊するように機能することができる。GD T細胞エフェクター活性としては、マクロファージおよび抗原提示細胞を活性化するIFN-ガンマの分泌、他の自然および獲得免疫機構を活性化する他のサイトカインおよびケモカインの中でもTNF-アルファの分泌、標的細胞を攻撃および破壊するグランザイムBの活性化およびFas+標的細胞における細胞アポトーシスを誘発するFasLの細胞表面発現が挙げられる。
【0009】
伝統的ながん処置に伴う重大な問題は、患者が化学療法処置に対して非感受性となることである。化学療法抵抗性の腫瘍細胞は特に、処置が非常に難しくなる。化学療法抵抗性の患者を処置する代替的な療法として、または化学療法および/もしくは放射線療法の代わりの一次療法として、本出願は、腫瘍部位において遺伝子を発現するための組換えレンチウイルスの使用を提案し、GD T細胞活性に影響するタンパク質の操作は、腫瘍成長を減速させ、がんを認識して殺滅する患者自身の自然免疫応答を活性化し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様では、第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターが開示される。第1のコードされた遺伝子エレメントは、メバロン酸経路に関与する少なくとも1つの酵素の産生を阻害することができる少なくとも1つのスモールRNAを含み、第2のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む。実施形態では、ウイルスベクターはまた、第3のコードされた遺伝子エレメントを含み、第3のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む。実施形態では、ウイルスベクターはまた、第4のコードされた遺伝子エレメントを含み、第4のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む。実施形態では、少なくとも1つの酵素は、ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素1(GGPS1)、イソペンチル二リン酸(disphosphate)デルタイソメラーゼ1(IDI1)、またはファルネシルトランスフェラーゼ(F-Tase)である。実施形態では、第1のコードされた遺伝子エレメントは、マイクロRNAまたはshRNAを含む。
【0011】
実施形態では、マイクロRNAは、
【化1】
と少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性パーセントを有する配列を含む。
【0012】
実施形態では、マイクロRNAは、
【化2】
を含む。
【0013】
実施形態では、shRNAは、
GTCCTGGAGTACAATGCCATTCTCGAGAATGGCATTGTACTCCAGGACTTTTT(配列番号1);
GCAGGATTTCGTTCAGCACTTCTCGAGAAGTGCTGAACGAAATCCTGCTTTTT(配列番号2);
GCCATGTACATGGCAGGAATTCTCGAGAATTCCTGCCATGTACATGGCTTTTT(配列番号3);
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTCTCGAGACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号4)と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも95%または95%より高い同一性パーセントを有する配列を含む。実施形態では、shRNAは、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号70、配列番号71、配列番号72、または配列番号76と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも95%または95%より高い同一性パーセントを有する配列を含む。
【0014】
実施形態では、shRNAは、
GTCCTGGAGTACAATGCCATTCTCGAGAATGGCATTGTACTCCAGGACTTTTT(配列番号1);
GCAGGATTTCGTTCAGCACTTCTCGAGAAGTGCTGAACGAAATCCTGCTTTTT(配列番号2);
GCCATGTACATGGCAGGAATTCTCGAGAATTCCTGCCATGTACATGGCTTTTT(配列番号3);または
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTCTCGAGACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号4)を含む。実施形態では、shRNAは、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号70、配列番号71、配列番号72、または配列番号76を含む。
【0015】
実施形態では、ブチロフィリンファミリーメンバーは、BTN3A3、BTN3A2、またはBTN3A1またはこれらのバリアントを含む。実施形態では、ブチロフィリンファミリーメンバーは、BTN3A3(R381H)を含む。実施形態では、サイトカインは、IL-1、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-33、IL-36、TNF-α、またはインターフェロン-γを含む。実施形態では、ケモカインは、CCケモカイン、CXCケモカイン、CX3Cケモカイン、Cケモカイン、またはXCケモカインを含む。さらなる実施形態では、CCケモカインはRANTESを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0016】
別の態様では、レンチウイルス粒子を発現するためのレンチウイルスベクター系が開示される。系は、本明細書に詳述されるようなレンチウイルスベクター;標的細胞に感染するために最適化されたエンベロープタンパク質を発現するための少なくとも1つのエンベローププラスミド;ならびにgag、pol、およびrev遺伝子を発現するための少なくとも1つのヘルパープラスミドを含み、レンチウイルスベクター、少なくとも1つのエンベローププラスミド、および少なくとも1つのヘルパープラスミドがパッケージング細胞中にトランスフェクトされたときに、レンチウイルス粒子がパッケージング細胞により産生され、レンチウイルス粒子は、標的細胞に感染して標的細胞内でメバロン酸経路に関与する少なくとも1つの酵素を阻害することができる。
【0017】
別の態様では、標的細胞に感染することができるレンチウイルス粒子が開示される。レンチウイルス粒子は、標的細胞に感染するために最適化されたエンベロープタンパク質、および本明細書に詳述されるようなレンチウイルスベクターを含む。実施形態では、標的細胞は、がん細胞である。
【0018】
別の態様では、ガンマデルタ(GD)T細胞を活性化する方法が開示される。方法は、GD T細胞の存在下で、標的細胞をレンチウイルス粒子に感染させるか、または感染させたことを含み、レンチウイルス粒子は、第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターを含み、第1のコードされた遺伝子エレメントは、メバロン酸経路に関与する少なくとも1つの酵素の産生を阻害することができる少なくとも1つのスモールRNAを含み、第2のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含み、少なくとも1つの酵素が標的細胞中で阻害されたときに、標的細胞はGD T細胞を活性化する。実施形態では、標的細胞は、がん細胞である。実施形態では、方法は、標的細胞およびGD T細胞をある量のアミノビスホスホネート薬物と接触させるか、または接触させたことをさらに含む。実施形態では、アミノビスホスホネート薬物は、ゾレドロン酸である。実施形態では、少なくとも1つの酵素は、ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素1(GGPS1)、イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ1(IDI1)、またはファルネシルトランスフェラーゼ(F-Tase)である。
【0019】
別の態様では、被験体においてがんを処置する方法が開示される。方法は、被験体に治療有効量のレンチウイルス粒子を投与するか、または投与したことを含み、レンチウイルス粒子は、第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターを含み、第1のコードされた遺伝子エレメントは、メバロン酸経路に関与する少なくとも1つの酵素の産生を阻害することができる少なくとも1つのスモールRNAを含み、第2のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含み、少なくとも1つの酵素がGD T細胞の存在下でがん細胞において阻害されたときに、標的細胞はGD T細胞を活性化し、それによりがんを処置する。実施形態では、方法は、標的細胞およびGD T細胞をある量のアミノビスホスホネート薬物と接触させるか、または接触させたことをさらに含む。実施形態では、アミノビスホスホネート薬物は、ゾレドロン酸である。実施形態では、ブチロフィリンファミリーメンバーは、BTN3A3(配列番号17)またはBTN3A3(R381H)(配列番号54)を含む。さらなる実施形態では、サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、またはIL-36を含む。
【0020】
別の態様では、ウイルスベクターが開示される。ウイルスベクターは、メバロン酸経路の第1の標的を標的としてメバロン酸経路の第1の生成物を増加させることができる第1のスモールRNA、およびメバロン酸経路の第2の標的を標的としてメバロン酸経路の第2の生成物を減少させることができる第2のスモールRNAを含む。実施形態では、第1の標的はメバロン酸経路の第1の酵素であり、第2の標的はメバロン酸経路の第2の酵素である。実施形態では、第1の酵素および第2の酵素の少なくとも1つは、ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素1(GGPS1)、イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ1(IDI1)、またはファルネシルトランスフェラーゼ(F-Tase)を含む。実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物は、イソペンテニルピロリン酸(IPP)を含む。実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物は、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)を含む。
【0021】
別の態様では、被験体においてがんを処置する方法が開示される。方法は、被験体に治療有効量のレンチウイルス粒子を投与するか、または投与したことを含み、レンチウイルス粒子は、本明細書中に記載するようなウイルスベクターを含む。実施形態では、方法は、被験体に治療有効量のアミノビスホスホネート薬物を投与するか、または投与したことをさらに含む。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターであって、前記第1のコードされた遺伝子エレメントが、メバロン酸経路に関与する少なくとも1つの酵素の産生を阻害することができる少なくとも1つのスモールRNAを含み、前記第2のコードされた遺伝子エレメントが、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む、ウイルスベクター。
(項目2)
第3のコードされた遺伝子エレメントをさらに含み、前記第3のコードされた遺伝子エレメントが、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目3)
第4のコードされた遺伝子エレメントをさらに含み、前記第4のコードされた遺伝子エレメントが、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む、項目2に記載のウイルスベクター。
(項目4)
前記少なくとも1つの酵素が、ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素1(GGPS1)、イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ1(IDI1)、またはファルネシルトランスフェラーゼ(F-Tase)である、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目5)
前記第1のコードされた遺伝子エレメントが、マイクロRNAまたはshRNAを含む、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目6)
前記マイクロRNAが、
a) AAGGTATATTGCTGTTGACAGTGAGCGACACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCGTGAAGCCACAGATGGCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTGCTGCCTACTGCCTCGGACTTCAAGGGGCT(配列番号68);または
b) AAGGTATATTGCTGTTGACAGTGAGCGACACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCGTGAAGCCACAGATGGCAGAAGGGCTGAGAAAGTGCTGCCTACTGCCTCGGACTTCAAGGGGCT(配列番号69)
と少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性パーセントを有する配列を含む、項目5に記載のウイルスベクター。
(項目7)
前記マイクロRNAが、
a) AAGGTATATTGCTGTTGACAGTGAGCGACACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCGTGAAGCCACAGATGGCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTGCTGCCTACTGCCTCGGACTTCAAGGGGCT(配列番号68);または
b) AAGGTATATTGCTGTTGACAGTGAGCGACACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCGTGAAGCCACAGATGGCAGAAGGGCTGAGAAAGTGCTGCCTACTGCCTCGGACTTCAAGGGGCT(配列番号69)
を含む、項目6に記載のウイルスベクター。
(項目8)
前記shRNAが、
a) GTCCTGGAGTACAATGCCATTCTCGAGAATGGCATTGTACTCCAGGACTTTTT(配列番号1);
b) GCAGGATTTCGTTCAGCACTTCTCGAGAAGTGCTGAACGAAATCCTGCTTTTT(配列番号2);
c) GCCATGTACATGGCAGGAATTCTCGAGAATTCCTGCCATGTACATGGCTTTTT(配列番号3);
d) GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTCTCGAGACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号4);
e) ACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCCTCGAGGCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTTTTTT(配列番号64);
f) GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTGAGCTCACTTTCTCAGCCTCCTTCTG(配列番号65);
g) GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTTTACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号66);または
h) GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号67)
と少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性パーセントを有する配列を含む、項目5に記載のウイルスベクター。
(項目9)
前記shRNAが、
a) GTCCTGGAGTACAATGCCATTCTCGAGAATGGCATTGTACTCCAGGACTTTTT(配列番号1);
b) GCAGGATTTCGTTCAGCACTTCTCGAGAAGTGCTGAACGAAATCCTGCTTTTT(配列番号2);
c) GCCATGTACATGGCAGGAATTCTCGAGAATTCCTGCCATGTACATGGCTTTTT(配列番号3);
d) GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTCTCGAGACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号4);
e) ACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCCTCGAGGCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTTTTTT(配列番号64);
f) GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTGAGCTCACTTTCTCAGCCTCCTTCTG(配列番号65);
g) GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTTTACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号66);または
h) GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号67)
を含む、項目8に記載のウイルスベクター。
(項目10)
前記ブチロフィリンファミリーメンバーが、BTN3A3、BTN3A2、またはBTN3A1を含む、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目11)
前記ブチロフィリンファミリーメンバーが、BTN3A3(R381H)を含む、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目12)
前記サイトカインが、IL-1、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-33、IL-36、TNF-α、またはインターフェロン-γを含む、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目13)
前記ケモカインが、CCケモカイン、CXCケモカイン、CX3Cケモカイン、Cケモカイン、またはXCケモカインを含む、項目1に記載のウイルスベクター。
(項目14)
前記CCケモカインが、RANTESを含む、項目13に記載のウイルスベクター。
(項目15)
レンチウイルスベクターである、項目1のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
(項目16)
レンチウイルス粒子を発現するためのレンチウイルスベクター系であって、
項目15に記載のレンチウイルスベクター;
標的細胞に感染するために最適化されたエンベロープタンパク質を発現するための少なくとも1つのエンベローププラスミド;および
gag、pol、およびrev遺伝子を発現するための少なくとも1つのヘルパープラスミド
を含み、
前記レンチウイルスベクター、前記少なくとも1つのエンベローププラスミド、および前記少なくとも1つのヘルパープラスミドがパッケージング細胞中にトランスフェクトされたときに、前記レンチウイルス粒子が前記パッケージング細胞により産生され、前記レンチウイルス粒子が、前記標的細胞に感染することができ、前記標的細胞内でメバロン酸経路に関与する前記少なくとも1つの酵素を阻害することができる、
レンチウイルスベクター系。
(項目17)
標的細胞に感染することができるレンチウイルス粒子であって、前記標的細胞に感染するために最適化されたエンベロープタンパク質、および項目15に記載のレンチウイルスベクターを含む、レンチウイルス粒子。
(項目18)
前記標的細胞が、がん細胞である、項目17に記載のレンチウイルス粒子。
(項目19)
ガンマデルタ(GD)T細胞を活性化する方法であって、
前記GD T細胞の存在下で、標的細胞をレンチウイルス粒子に感染させるか、または感染させたことを含み、
前記レンチウイルス粒子が、第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターを含み、
前記第1のコードされた遺伝子エレメントが、メバロン酸経路に関与する少なくとも1つの酵素の産生を阻害することができる少なくとも1つのスモールRNAを含み、前記第2のコードされた遺伝子エレメントが、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含み、
前記少なくとも1つの酵素が前記標的細胞中で阻害されたときに、前記標的細胞が前記GD T細胞を活性化する、
方法。
(項目20)
前記標的細胞が、がん細胞である、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記標的細胞および前記GD T細胞をある量のアミノビスホスホネート薬物と接触させるか、または接触させたことをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記アミノビスホスホネート薬物が、ゾレドロン酸である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記少なくとも1つの酵素が、ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素1(GGPS1)、イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ1(IDI1)、またはファルネシルトランスフェラーゼ(F-Tase)である、項目19または項目21に記載の方法。
(項目24)
被験体においてがんを処置する方法であって、前記方法が、前記被験体に治療有効量のレンチウイルス粒子を投与するか、または投与したことを含み、前記レンチウイルス粒子が、第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターを含み、前記第1のコードされた遺伝子エレメントが、メバロン酸経路に関与する少なくとも1つの酵素の産生を阻害することができる少なくとも1つのスモールRNAを含み、前記第2のコードされた遺伝子エレメントが、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含み、前記少なくとも1つの酵素がGD T細胞の存在下でがん細胞において阻害されたときに、前記標的細胞が前記GD T細胞を活性化し、それにより前記がんを処置する、方法。
(項目25)
前記被験体に治療有効量のアミノビスホスホネート薬物を投与するか、または投与したことをさらに含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記アミノビスホスホネート薬物が、ゾレドロン酸である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記少なくとも1つの酵素が、ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素1(GGPS1)、イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ1(IDI1)、またはファルネシルトランスフェラーゼ(F-Tase)である、項目24または項目25に記載の方法。
(項目28)
前記ブチロフィリンファミリーメンバーが、BTN3A3またはBTN3A3(R381H)を含む、項目24に記載の方法。
(項目29)
メバロン酸経路の第1の標的を標的としてメバロン酸経路の第1の生成物を増加させることができる第1のスモールRNA;および
メバロン酸経路の第2の標的を標的としてメバロン酸経路の第2の生成物を減少させることができる第2のスモールRNA
を含む、ウイルスベクター。
(項目30)
前記第1の標的がメバロン酸経路の第1の酵素であり、前記第2の標的がメバロン酸経路の第2の酵素である、項目29に記載のウイルスベクター。
(項目31)
前記第1の酵素および前記第2の酵素の少なくとも1つが、ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素1(GGPS1)、イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ1(IDI1)、またはファルネシルトランスフェラーゼ(F-Tase)を含む、項目30に記載のウイルスベクター。
(項目32)
前記メバロン酸経路の前記第1の生成物が、イソペンテニルピロリン酸(IPP)を含む、項目29に記載のウイルスベクター。
(項目33)
前記メバロン酸経路の前記第2の生成物が、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)を含む、項目29に記載のウイルスベクター。
(項目34)
被験体においてがんを処置する方法であって、前記方法が、前記被験体に治療有効量のレンチウイルス粒子を投与するか、または投与したことを含み、前記レンチウイルス粒子が、項目29に記載のウイルスベクターを含む、方法。
(項目35)
前記被験体に治療有効量のアミノビスホスホネート薬物を投与するか、または投与したことをさらに含む、項目34に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、ステロイドおよびイソプレノイドの生合成のためのメバロン酸経路における主なステップの概要を示す。
【0023】
【
図2】
図2は、例示的な環状化形態の3ベクターレンチウイルスベクター系を示す。
【0024】
【
図3】
図3は、例示的な環状化形態の4ベクターレンチウイルスベクター系を示す。
【0025】
【
図4】
図4は、BTN3A3ならびに/またはIL-2、IL-15、およびIL-18と組み合わせてFDPS shRNA標的化配列を発現するレンチウイルスベクターの様々な線形マップを示す。
【0026】
【
図5】
図5は、本明細書中に記載するように、BTN3A3(R381H)またはBTN3A3(WT)を発現するレンチウイルスを用いたPC3前立腺癌細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0027】
【
図6】
図6は、本明細書中に記載するように、BTN3A3(R381H)またはBTN3A3(R381H)およびshRNA #4の両方を発現するレンチウイルスを用いたHepG2細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0028】
【
図7】
図7は、本明細書中に記載するように、BTN3A3(R381H)またはBTN3A3(R381H)およびshRNA #4の両方を発現するレンチウイルスを用いたPC3前立腺癌細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0029】
【
図8】
図8は、本明細書中に記載するように、shFDPS-IL-2を発現するレンチウイルスを用いたHepG2細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0030】
【
図9】
図9は、本明細書中に記載するように、shFDPS-IL-2を発現するレンチウイルスを用いたPC3細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0031】
【
図10】
図10は、本明細書中に記載するように、shFDPS-IL-15を発現するレンチウイルスを用いたPC3細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0032】
【
図11】
図11は、BTN3A3(R381H)またはBTN3A3(R381H)およびshFDPSを発現するレンチウイルスを用いたPC3細胞およびHepG2細胞におけるBTN3A3の細胞外発現を実証するデータを示す。
【0033】
【
図12】
図12は、本明細書中に記載するように、Lv-shFDPSを発現するレンチウイルスを形質導入されたHepG2細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0034】
【
図13】
図13は、本明細書中に記載するように、Lv-shFDPSを発現するレンチウイルスを形質導入されたPC3細胞を注射されたマウスにおける腫瘍の遅延した成長を実証するデータを示す。
【0035】
【
図14】
図14は、Lv-shFDPSを発現するレンチウイルスを注射された後にPBMCおよび/またはゾレドロン酸で処置されたマウスの生存期間を実証するデータを示す。
【0036】
【
図15】
図15は、Lv-shFDPSを発現するレンチウイルスを注射された後にPBMCおよび/またはゾレドロン酸で処置されたマウスの腫瘍体積を実証するデータを示す。
【0037】
【
図16】
図16は、PBMCで処置されたおよび処置されなかったLv-shFDPS PC3異種移植腫瘍の肉眼的外見を示す。
【0038】
【
図17】
図17は、FDPS、GGPS1、またはIDI1を標的とする合成shRNA配列を有するH1プロモーターを含有するレンチウイルスベクター、およびFDPS標的化配列を有する合成マイクロRNAを有する伸長因子1アルファプロモーターを含有するレンチウイルスベクターを示す。
【0039】
【
図18】
図18は、本明細書中に記載するように、shFDPS #1(配列番号1)またはshFDPS #4(配列番号4)を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸ありまたはなしで処理されたHepG2細胞におけるFDPSタンパク質発現の低減を実証するデータを示す。
【0040】
【
図19A】
図19Aは、本明細書中に記載するように、shFDPS-A(配列番号64)、shFDPS-R(配列番号65)、shFDPS-TT(配列番号66)、およびshFDPS-L(配列番号67)を発現するレンチウイルスを形質導入されたPC3細胞におけるFDPS RNA(
図19A)の低減を実証するデータを示す。
【
図19B】
図19Bは、本明細書中に記載するように、shFDPS-A(配列番号64)、shFDPS-R(配列番号65)、shFDPS-TT(配列番号66)、およびshFDPS-L(配列番号67)を発現するレンチウイルスを形質導入されたPC3細胞におけるタンパク質発現(
図19B)の低減を実証するデータを示す。
【0041】
【
図20】
図20は、本明細書中に記載するように、shFDPS-4(配列番号4)、miR30-FDPS-1(配列番号68)およびmiR30-FDPS-3(配列番号69)を発現するレンチウイルスを形質導入されたHepG2細胞におけるFDPSタンパク質発現の低減を示す。
【0042】
【
図21】
図21は、本明細書中に記載するように、miR30-FDPS #1(配列番号68)を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸ありまたはなしで処理されたTHP-1細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0043】
【
図22】
図22は、本明細書中に記載するように、shGGPS1 #1(配列番号70)、shGGPS1 #2(配列番号71)、およびshGGPS1 #3(配列番号73)を発現するレンチウイルスを形質導入されたHeLa細胞におけるGGPS1タンパク質発現の低減を示す。
【0044】
【
図23】
図23は、本明細書中に記載するように、shFDPS配列#4(配列番号4)またはshGGPS1配列#1(配列番号70)を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸ありまたはなしで処理されたPC3細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0045】
【
図24】
図24は、本明細書中に記載するように、shFDPS配列#4(配列番号4)またはshGGPS1配列#1(配列番号70)を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸ありまたはなしで処理されたHepG2細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0046】
【
図25】
図25は、本明細書中に記載するように、shFDPS配列#4(配列番号4)および/またはshGGPS1配列#1(配列番号70)を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸ありまたはなしで処理されたTHP-1細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0047】
【
図26】
図26は、本明細書中に記載するように、shIDI1(配列番号76)を発現するレンチウイルスを形質導入されたPC3細胞におけるIDI1タンパク質発現の低減を示す。
【0048】
【
図27】
図27は、本明細書中に記載するように、shFDPS配列#4(配列番号1)またはshIDI1配列#1(配列番号76)を発現するレンチウイルスを形質導入されたPC3細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0049】
【
図28】
図28は、本明細書中に記載するように、ゾレドロン酸、FTI277、またはザラゴジン酸で処理されたTHP-1細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するデータを示す。
【0050】
【
図29】
図29は、本明細書中に記載するように、shFDPS配列#4(配列番号4)を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸、FTI277、またはザラゴジン酸で処理されたPC3細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【0051】
【
図30】
図30は、本明細書中に記載するように、shFDPS配列#4(配列番号4)を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸、FTI277、またはザラゴジン酸で処理されたHepG2細胞によるVδ2+ T細胞の活性化を実証するFACSデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
開示の概要
本開示は、遺伝子療法用構築物およびその構築物の細胞への送達に関し、送達は、例えば
図1に示すように、イソペンテニルリン酸(IPP)をファルネシル二リン酸(FDP)およびメバロン酸経路の他の下流の生成物に変換するために必要なファルネシル二リン酸合成酵素(「FDPS」)またはメバロン酸経路の他の酵素の抑制をもたらす。実施形態では、FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、またはスクアレン合成酵素のうちの1つまたは複数を標的とし、それによりこれらの酵素の発現レベルを低減させるマイクロRNAまたは短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を有する1つまたは複数のウイルスベクターが提供される。ウイルスベクターとしては、レンチウイルスベクターおよびAAVベクターが挙げられる。FDPSおよびメバロン酸経路の他の酵素の発現をモジュレートすることの帰結は、GD T細胞増殖および分化の刺激因子であるIPPの蓄積を増加させることである。GGPS1およびメバロン酸経路の他の酵素の発現をモジュレートすることの帰結は、GGPPレベルを減少させ、インターロイキン-1ベータおよびインターロイキン-18などのサイトカインの分泌を可能とすることである。したがって、本明細書中に提供する構築物は、GD T細胞を活性化するために使用され、がんおよび感染性疾患を処置するために使用される。
【0053】
定義および解釈
本明細書中で別様に定義しない限り、本開示との関連で使用する科学技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。さらに、文脈上別様に要求されない限り、単数の語は複数を包含し、複数の語は単数を包含する。一般に、本明細書中に記載する細胞および組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションとの関連で使用する学術用語およびそれらの技術は周知であり、当該技術分野において一般に使用されている。本開示の方法および技術は、別段の記載がなければ、当該技術分野において周知の、本明細書全体で引用し議論する様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載される従来の方法にしたがって一般に行われる。例えば、Sambrook J.およびRussell D.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2000年);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in
Molecular Biology、Wiley, John&Sons, Inc.(2002年);HarlowおよびLane、Using Antibodies:
A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1998年);およびColiganら、Short Protocols in Protein Science、Wiley, John&Sons, Inc.(2003年)を参照。あらゆる酵素反応または精製技術は、当該技術分野において一般に遂行されるように、または本明細書中に記載するように、製造業者の仕様にしたがって行われる。本明細書中に記載する分析化学、合成有機化学、医薬品化学、および製薬化学との関連で使用する学術用語、ならびに実験の手順および技術は、当該技術分野において周知であり一般に使用されるものである。
【0054】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は交換可能に使用し、文脈が明確にそうでないと示さない限り、複数形も包含すること、およびそれぞれの意味の範囲内に包含されることを意図する。また、本明細書中で使用する場合、「および/または」は、挙げた項目の1つまたは複数のあらゆる全ての可能な組み合わせ、ならびに、選択肢(「または」)として解釈する場合には組み合わせないことを指し、およびこれらを包含する。
【0055】
例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量といった、範囲などの数値による全ての指定は、0.1の増分で(+)または(-)に変動する近似値である。必ずしも明示的には述べないが、数値による全ての指定には「約」という用語が先行することを理解するべきである。「約」という用語は、「X+0.1」または「X-0.1」などの「X」の小さな増分に加えて、「X」という正確な値も包含する。必ずしも明示的には述べないが、本明細書中に記載する試薬は単に例示的なものであり、そのようなものの同等物が当該技術分野で公知であることも理解するべきである。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「約」という用語は、当業者によって理解され、また、それが使用される文脈に応じてある程度変動する。使用されている文脈を考慮すると当業者に明確でない用語が使用されている場合、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。
【0057】
本明細書中で使用する場合、「投与」または「投与する」という用語は、処置を必要とする被験体に対して活性剤を、治療的に有用な形態かつ治療有効量でその個体の体内に導入できる形態で与えることを示す。
【0058】
本明細書中で使用する場合、「ブチロフィリン3A」という用語は、本明細書中で「BTN3A」とも称され得る。さらに、「ブチロフィリン3A1」は、本明細書中で「BTN3A1」とも称され得、配列番号53のBTN3A1部分を含み得る。ブチロフィリン3A3は、本明細書中で「BTN3A3」(配列番号17)とも称され得る。BTN3A3のバリアントとしては、BTN3A3(R381H)が挙げられるがこれに限定されず、配列番号54または配列番号55または配列番号59のBTN3A3部分を含み得る。「R381H」への言及は、アミノ酸位置381においてヒスチジン(H)アミノ酸により置換されたアルギニン(R)アミノ酸への言及である。アミノ酸置換を定義するためのこの慣習は、本明細書中で他の位置および他のアミノ酸について使用され得る。
【0059】
本明細書中で使用する場合、「CA19-9」という用語は、炭水化物抗原19-9を指す。本明細書中で使用する場合、「CCケモカイン」という用語は、アミノ末端の近くに2つの隣接するシステインを有することにより特徴付けられるケモカインタンパク質のクラスを指す。「CXCケモカイン」という用語は、アミノ末端の近くに1アミノ酸だけ離れた2つのシステインを有することにより特徴付けられるケモカインタンパク質のクラスを指す。「CX3Cケモカイン」という用語は、アミノ末端の近くに3アミノ酸だけ離れた2つのシステインを有することにより特徴付けられるケモカインタンパク質のクラスを指す。「XCケモカイン」という用語は、アミノ末端の近くのアミノ酸に隣接する1つのシステインを有することにより特徴付けられるケモカインタンパク質のクラスを指す。
【0060】
本明細書中で使用する場合、「CD」という用語は、分化抗原群タンパク質(cluster
of differentiation protein)を指す。そのようなタンパク質の例としては、CD4およびCD8が挙げられるがこれらに限定されない。例えばCD4+への言及は、CD4タンパク質の発現が陽性であることを指し示す。
【0061】
本明細書中で使用する場合、「CEA」という用語は、癌胎児性抗原を指す。
【0062】
本明細書中で使用する場合、「ビスホスホネート」および「ビスホスホネート薬物」という用語は、様々な実施形態の治療剤を指し、アミノビスホスホネート、ジホスホネート、重ホスホン酸(biphosphonic acids)、およびジホスホン酸(diphosphonic acid)
のいずれかの他に、これらの薬学的に許容される塩および誘導体を包含する。ビスホスホネートを指す際の特定の命名法の使用は、具体的に指し示されなければ、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0063】
本明細書中で使用する場合、「共投与」または「併用投与」または「併用」または「併用療法」などの用語は、本明細書中で利用されるような、治療ベクターまたはレンチウイルス粒子およびビスホスホネート薬物またはこれらの任意の組み合わせの、それを必要とする単一の被験体(例えば、患者)への投与を指し、薬剤が必ずしも同じ投与経路によりおよび/または同時に投与されない処置レジメンを含むことが意図される。
【0064】
本明細書中で使用する場合、「固定の組み合わせ」という用語は、単一の実体もしくは投与量または組み合わせた実体もしくは投与量の形態で、例えば、1つの錠剤または1つのカプセルまたは組み合わせた錠剤もしくはカプセルまたは組み合わせた液体形態で、基本的に組み合わせて患者に、例えば基本的に同時に投与される、各々の組成物、製剤または薬物形態のいずれかを含む、2つまたはそれより多くの活性成分または活性成分(active ingredient or component)、例えば、治療ベクターまたはレンチウイルス粒子お
よびビスホスホネート薬物またはこれらの任意の組み合わせを指す。
【0065】
本明細書中で使用する場合、「非固定の組み合わせ」という用語は、特定の時間的制限なく同時に、並行してまたは逐次的に、のいずれかで別々の実体として患者に組み合わせて投与され、そのような投与が患者において治療有効レベルの活性成分を提供する、各々の組成物、製剤または薬物形態のいずれかを含む、2つまたはそれより多くの活性成分または活性成分、例えば、治療ベクターまたはレンチウイルス粒子およびビスホスホネート薬物またはこれらの任意の組み合わせを指す。非固定の組み合わせは、互いに独立して、または例えば同時にもしくは異なる時点において異なる固定の組み合わせを使用することにより投与され得る。活性成分は、例えば、併用の可能性に関する表示による指示(label instruction)と共にまたはそれなしで、互いに独立して販売され得る別々の医薬剤形または医薬製剤として投与され得る。そのような指示は、例えば、リーフレットなどのパッケージ用品中、または例えば医師および医療スタッフに提供される他の情報中に提供され得る。非固定の組み合わせ、各々の組成物、製剤または薬物形態のいずれかを含むその各々の活性成分または活性成分、またはこれらの部分は、同時にまたは時系列的にずらして、例えば、異なる時点において投与の任意の部分について等しいもしくは異なる時間間隔で投与され得る。そのような時間間隔は、処置される疾患に対する効果が、組み合わせて処置されるときに、活性成分のいずれか1つのみの使用により得られるよりも効果的であるように選択され得る。
【0066】
本明細書中で使用する場合、「組み合わせ」、「組み合わせて」および「併用療法」という用語は、一般に、上記の「固定の組み合わせ」および「非固定の組み合わせ」の定義および実施形態のいずれかまたは両方を指すことができる。
【0067】
本明細書中で使用する場合、「含む」という移行語は、組成物および方法を定義するために使用する場合、組成物および方法が、記載した要素を含むが、他のものを除外しないことを意味する。本明細書中で使用する場合、「から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用する場合、追加の要素が組成物または方法の基本的で新規の特徴に実質的に影響しない場合にのみ、組成物および方法がそれらの追加の要素を含むことを意味する。本明細書中で使用する場合、「からなる」は、組成物および方法を定義するために使用する場合、組成物および方法が、組成物および実体的な方法ステップのために極微量な他の成分の要素以上を除外することを意味する。これらの移行句のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。例えば、方法および組成物は、追加のステップおよび成分を含み得るか(含む)、あるいは重要でないステップおよび組成物を含むか(から本質的になる)、あるいは記載した方法ステップまたは組成物のみを意図する(からなる)ことが意図される。
【0068】
本明細書中で使用する場合、「発現」、「発現される」、または「コードする」という用語は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写される過程、および/または、転写されたmRNAがその後にペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳される過程をいう。発現は、真核細胞中でのmRNAのスプライシング、または転写後修飾もしくは翻訳後修飾というその他の形態を包含し得る。
【0069】
本明細書中で使用する場合、「ファルネシル二リン酸合成酵素」という用語は、本明細書中でFDPSとも称され得、また、本明細書中でファルネシルピロリン酸合成酵素またはFPPSとも称され得る。
【0070】
本明細書中で使用する場合、「ガンマデルタT細胞」という用語は、本明細書中でγδ
T細胞、Vγ9Vδ2 T細胞、Vガンマ9Vデルタ2 T細胞、Vγ2Vδ2 T細胞、Vガンマ2Vデルタ2 T細胞とも称され得、またはさらにGD T細胞とも称され得る。「ガンマデルタT細胞活性化」という用語は、活性化されているガンマデルタT細胞の代表的な、そのようなT細胞と関連する任意の測定可能な生物学的現象を指す。そのような生物学的現象の非限定的な例としては、サイトカイン産生の増加、細胞表面タンパク質の質的または量的な組成の変化、T細胞増殖の増加、および/または、標的細胞を殺傷するもしくは別のエフェクター細胞が標的細胞を殺傷するのを援助するなどのT細胞エフェクター機能の増加が挙げられる。
【0071】
本明細書中で使用する場合、「F-Tase」という用語は、ファルネシルトランスフェラーゼを指す。
【0072】
本明細書中で使用する場合、「GGPP」という用語は、ゲラニルゲラニルピロリン酸を指し、本明細書中でゲラニルゲラニル二リン酸とも称され得る。
【0073】
本明細書中で使用する場合、「GGDPS」、「GGPPS」、「GGDPS1」、「GGPS1」および「GGPPS1」という用語は、ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素1を指し、本明細書中でゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素またはゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素とも称され得る。
【0074】
本明細書中で使用する場合、「HER-2」という用語は、ヒト上皮成長因子受容体2を指す。
【0075】
本明細書中で使用する場合、「インターロイキン2」などのサイトカインは、「IL-2」、「IL2」などとも称され得る。IL-2はまた、配列番号56への言及を含み得る。関連する方式で、「インターロイキン15」はまた、配列番号57への言及を含み得る。関連する方式で、「インターロイキン18」はまた、配列番号58への言及を含み得る。関連する方式で、「インターロイキン23」はまた、配列番号60への言及を含み得る。関連する方式で、「インターロイキン36」はまた、配列番号61~63のいずれかへの言及を含み得る。一般に、接頭語「IL」は、インターロイキンを指す。
【0076】
本明細書中で使用する場合、「IDI1」という用語は、イソペンテニル二リン酸デルタイソメラーゼ1を指す。
【0077】
本明細書中で使用する場合、「IFN」という用語は、インターフェロンを指し、IFN-ガンマおよびIFN-γという用語は、インターフェロン-ガンマを指す。
【0078】
本明細書中で使用する場合、「個体」、「被験体」および「患者」という用語は、本明細書中で交換可能に使用され、任意の個体哺乳動物被験体、例えば、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、および/またはヒトを指す。
【0079】
本明細書中で使用する場合、「IPP」という用語は、イソペンテニルピロリン酸を指す。
【0080】
本明細書中で使用する場合、「M2-PK」という用語は、ピルビン酸キナーゼアイソエンザイムM2型を指す。
【0081】
本明細書中で使用する場合、「MHC」という用語は、主要組織適合複合体を指す。
【0082】
本明細書中で使用する場合、「miRNA」という用語は、マイクロRNAを指し、本明細書中で「miR」とも称され得る。
【0083】
本明細書中で使用する場合、「NK細胞」または「NK受容体ファミリー」という用語は、それぞれ「ナチュラルキラー細胞」または「ナチュラルキラー細胞受容体ファミリー」を指す。
【0084】
本明細書中で使用する場合、「パッケージング細胞株」という用語は、レンチウイルス粒子を発現するために使用できる任意の細胞株を指す。
【0085】
本明細書中で使用する場合、「PBMC」という用語は、末梢血単核細胞を指す。
【0086】
本明細書中で使用する場合、「相同性」という用語は、同一であるか、または保存的置換を構成するアミノ酸、核酸、またはこれらのアナログの数のパーセンテージを指す。相同性は、GAP(Deveraux et al.,1984, Nucleic Acids Research 12, 387-395)などの配列比較プログラムを使用して決定することができる。この方法では、本明細書中に引用される配列と類似のまたは実質的に異なる長さの配列が、アラインメントへのギャップの挿入により比較されてよく、そのようなギャップは、例えば、GAPにより使用される比較アルゴリズムにより決定される。
【0087】
本明細書中で使用する場合、「配列同一性」という用語は、本明細書中で使用する類似の表現(pharasings)として、所与の配列と「50%同一の配列」および所与の配列と「少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有する」という非限定的な文脈においても見ることができ、比較のウインドウにわたり1ヌクレオチド毎または1アミノ酸毎に配列が同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウインドウにわたり2つの最適にアラインされた配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が両方の配列中で起こっている位置の数を決定して、マッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較のウインドウにおける位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)により割り、結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出され得る。比較ウインドウをアラインするための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズムのコンピュータによる実装(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetic Computer Group、575 Science Drive Madison、Wis.、USA)によりまたは検査および選択された様々な方法のいずれかにより生成された最良のアラインメント(すなわち、比較ウインドウにわたり最も高い相同性パーセンテージをもたらす)により実行され得る。例えばAltschul et al., Nucl. Acids Res. 25: 3389, 1997により開示されるようなBLASTファミリーのプログラムもまた参照され得る。
【0088】
本明細書中で使用する場合、2つまたはそれより多くの核酸またはポリペプチド配列の文脈における、「配列同一性」という用語と交換可能に使用され得る「同一性パーセント」という用語は、以下に記載する配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTPおよびBLASTN、または当業者に利用可能なその他のアルゴリズム)の1つを使用して、または目視検査によって測定されるとおりの、最大の一致のために比較およびアラインされたときの、同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の指定されたパーセンテージを有する2つまたはそれより多くの配列または部分配列を指す。適用に応じて、「同一性パーセント」は、比較されている配列の一領域にわたり(例えば、機能ドメインにわたり)存在し得るか、あるいは比較される2つの配列の全長にわたり存在し得る。配列比較のために、通常は1つの配列が、試験配列がそれに対して比較される参照配列の役目を持つ。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、部分配列座標を指定し、必要であれば配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0089】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math.2巻:482頁(1981年)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol.48巻:443頁(1970年)の相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁(1988年)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA;Wisconsin
Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)、または目視検査(一般には後述のAusubelらを参照)によって実行することができる。
【0090】
配列同一性パーセントを決定するために適切なアルゴリズムとしては、Altschulら、J. Mol. Biol.215巻:403~410頁(1990年)に記載されるBLASTアルゴリズムが挙げられる。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを通じて公開されている。
【0091】
2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにおいて利用可能)中のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70、または80のギャップ重み付け、および1、2、3、4、5、または6の長さ重み付けを使用して決定することができる。また、2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE. MeyersおよびW. Miller(CABIOS、4巻:11~17頁、(1989年))のアルゴリズムを使用し、PAM120重み付け残基表、ギャップ長さペナルティーとして12、およびギャップペナルティーとして4を使用して決定することもできる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにおいて利用可能)中のGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol.(48巻):444~453頁(1970年))のアルゴリズムを使用し、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み付け、および1、2、3、4、5、または6の長さ重み付けを使用して決定することができる。
【0092】
本開示の核酸配列およびタンパク質配列は、例えば関連配列を同定するために、公共データベースに対して検索を行うための「クエリ配列」としてさらに使用することができる。そのような検索は、Altschulら(1990年)、J. Mol. Biol.215巻:403~10頁のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、本開示中に提供される核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラムをスコア=100、ワード長=12で用いて行うことができる。BLASTタンパク質検索は、本開示のタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラムをスコア=50、ワード長=3で用いて行うことができる。比較目的のギャップ付きアラインメントを得るために、Altschulら、Nucleic Acids Res.25巻(17号):3389~3402頁(1997年)に記載されるようにGapped BLASTを利用することができる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメーターを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照。
【0093】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合うように、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題もしくは合併症を起こすことなくヒトおよび動物の組織、臓器、および/または体液との接触に使用するために好適な化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0094】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性の、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などを指す、およびそれらを包含する。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩または塩基付加塩を含み得る(例えば、Bergeら、J Pharm Sci
66巻:1~19頁(1977年)を参照)。
【0095】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することにより親化合物または活性成分が改変された、化合物または他の活性成分の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱物塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩;アルカリ金属、アルカリ性金属(alkaline metal)、アンモニウム、
およびモノ、ジ、トリ、またはテトラ-C1~C30-アルキル置換アンモニウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。様々な実施形態の薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された、化合物または活性成分の従来の非毒性の塩が挙げられる。好適な有機酸は、例えば、カルボン酸またはスルホン酸、例えば、酢酸、コハク酸、フマル酸またはメタンスルホン酸(methansulfonic acid)である。本明細書中の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物または活性成分から合成することができる。一般に、そのような塩は、遊離酸形態または遊離塩基形態のこれらの化合物を、水中または有機溶媒中、またはその2つの混合物中の化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることにより調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p.1418およびJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2(1977)(これらのそ
れぞれは参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0096】
本明細書中で使用する場合、「PSA」という用語は、前立腺特異的抗原を指す。
【0097】
本明細書中で使用する場合、「RANTES」という用語は、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5と同義であり、これはCCL5とも同義である。
【0098】
本明細書中で使用する場合、「配列番号(SEQ ID NO)」という用語は、「配列ID番号(Sequence ID No.)」という用語と同義である。
【0099】
本明細書中で使用する場合、「スモールRNA」とは、一般に約200ヌクレオチドまたはそれ未満の長さの、サイレンシング機能または干渉機能を持つノンコーディングRNAをいう。その実施形態では、スモールRNAは、約175ヌクレオチドまたはそれ未満、約150ヌクレオチドまたはそれ未満、約125ヌクレオチドまたはそれ未満、約100ヌクレオチドまたはそれ未満、あるいは約75ヌクレオチドまたはそれ未満の長さである。そのようなRNAとしては、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられる。実施形態では、「スモールRNA」は、一般に、標的遺伝子のmRNAの破壊を生じさせる経路を通じて、標的遺伝子の遺伝子発現を阻害することまたはノックダウンすることができる。
【0100】
本明細書中で使用する場合、「TCR」という用語は、T細胞受容体を指し、「TCRs」という用語は、その複数形を指す。
【0101】
本明細書中で使用する場合、「治療有効量」という用語は、所与の病気、傷害、疾患、または状態に罹患した患者に見られる症状、進行、または合併症の発症を処置し、または防止するために好適な組成物中および好適な剤形中の本開示の活性剤の十分な量を指す。治療有効量は、患者の状態の状況またはその重篤度、および処置される被験体の年齢、体重などに応じて変化する。治療有効量は、例えば、投与経路、被験体の状態などのいくつかの要因、ならびに当業者によって理解されるその他の要因のいずれかに応じて変化し得る。
【0102】
本明細書中で使用する場合、「治療ベクター」という用語は、例えば本明細書の
図2および
図3に記載するようなレンチウイルスベクター、およびレンチウイルスプラスミドへの言及を含むがこれらに限定されない。
【0103】
本明細書中で使用する場合、「TNF」という用語は、腫瘍壊死因子を指し、TNF-アルファまたはTNF-αへの言及は、腫瘍壊死因子アルファを指す。
【0104】
本明細書中で使用する場合、「処置」および「処置する」という用語は、疾患状態の意図した標的化およびそれとの戦い、すなわち、疾患状態を改善させまたは予防することを指す。具体的な処置は、したがって、標的とされる疾患状態ならびに医薬療法および治療アプローチの現在または将来の状況に依存する。処置は、関連毒性を有し得る。
【0105】
本明細書中で使用する場合、「処置」または「処置すること」という用語は、一般に、処置されている被験体の自然経過を変えようとする介入を指し、予防のため、または臨床病理の経過の間に行われ得る。望ましい効果としては、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結の抑制、減少、または阻害、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後改善の惹起が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書中で使用する場合、「VSVG」または「VSV-G」という用語は、水胞性口内炎ウイルスGエンベロープ糖タンパク質を指す。
【0107】
本開示の態様の説明
本開示の一態様では、第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターが開示される。第1のコードされた遺伝子エレメントは、メバロン酸経路に関与する酵素の産生を阻害することができるスモールRNAを含み、第2のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、第3のコードされた遺伝子エレメントを含み、第3のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、第4のコードされた遺伝子エレメントを含み、第4のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含む。実施形態では、酵素は、ファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)またはこれらの機能的バリアントである。実施形態では、第1のコードされた遺伝子エレメントは、マイクロRNAまたはshRNAを含む。実施形態では、shRNAは、
GTCCTGGAGTACAATGCCATTCTCGAGAATGGCATTGTACTCCAGGACTTTTT(配列番号1);
GCAGGATTTCGTTCAGCACTTCTCGAGAAGTGCTGAACGAAATCCTGCTTTTT(配列番号2);
GCCATGTACATGGCAGGAATTCTCGAGAATTCCTGCCATGTACATGGCTTTTT(配列番号3);または
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTCTCGAGACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号4)と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも95%またはより高い同一性パーセントを有する配列を含む。
【0108】
実施形態では、shRNAは、
GTCCTGGAGTACAATGCCATTCTCGAGAATGGCATTGTACTCCAGGACTTTTT(配列番号1);
GCAGGATTTCGTTCAGCACTTCTCGAGAAGTGCTGAACGAAATCCTGCTTTTT(配列番号2);
GCCATGTACATGGCAGGAATTCTCGAGAATTCCTGCCATGTACATGGCTTTTT(配列番号3);または
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTCTCGAGACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT(配列番号4)を含む。
【0109】
実施形態では、shRNAは、配列番号64、配列番号65、配列番号66、または配列番号67と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。
【0110】
実施形態では、miRNAは、配列番号68または配列番号69と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。
【0111】
実施形態では、酵素は、GGPS1またはその機能的バリアントである。実施形態では、shRNAは、配列番号70、配列番号71、または配列番号72と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。
【0112】
実施形態では、酵素は、IDI1またはその機能的バリアントである。実施形態では、shRNAは、配列番号76と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有する配列を含む。
【0113】
実施形態では、酵素は、F-Tase、またはスクアレン合成酵素、またはこれらの機能的バリアントである。
【0114】
実施形態では、ブチロフィリンファミリーメンバーは、BTN3A3、BTN3A3、またはBTN3A1を含む。実施形態では、ブチロフィリンファミリーメンバーは、BTN3A3(R381H)を含む。実施形態では、ブチロフィリンファミリーメンバーは、ブチロフィリン様分子を含む。実施形態では、ブチロフィリン様分子は、BTNL3またはBTNL8を含む。実施形態では、サイトカインは、IL-1、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-33、IL-36、TNF-α、またはインターフェロン-γを含む。
【0115】
実施形態では、ケモカインは、CCケモカイン、CXCケモカイン、CX3Cケモカイン、Cケモカイン、またはXCケモカインを含む。さらなる実施形態では、CCケモカインは、RANTESを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。さらなる実施形態では、Cケモカインは、XCL1(リンホタクチン)を含む。
【0116】
別の態様では、レンチウイルス粒子を発現するためのレンチウイルスベクター系が開示される。系は、本明細書に詳述されるようなレンチウイルスベクター;標的細胞に感染するために最適化されたエンベロープタンパク質を発現するための少なくとも1つのエンベローププラスミド;ならびにgag、pol、およびrev遺伝子、またはこれらの機能的バリアントを発現するための少なくとも1つのヘルパープラスミドを含み、レンチウイルスベクター、少なくとも1つのエンベローププラスミド、および少なくとも1つのヘルパープラスミドがパッケージング細胞中にトランスフェクトされたときに、レンチウイルス粒子がパッケージング細胞により産生され、レンチウイルス粒子は、標的細胞に感染して、標的細胞内でメバロン酸経路に関与する酵素を阻害することができる。
【0117】
実施形態では、レンチウイルス粒子は、メバロン酸経路の第1の生成物のレベルの増加を引き起こすことができる。実施形態では、第1の生成物は、IPPを含む。実施形態では、レンチウイルス粒子は、メバロン酸経路の第2の生成物のレベルの減少を引き起こすことができる。実施形態では、第2の生成物は、GGPPを含む。実施形態では、レンチウイルスの生成物は、第1の生成物を増加させ、第2の生成物を減少させる。
【0118】
実施形態では、レンチウイルス粒子は、メバロン酸経路の第1の標的を標的化することができるスモールRNAをコードする。実施形態では、レンチウイルス粒子は、メバロン酸経路の第2の標的を標的化することができるスモールRNAをさらにコードする。実施形態では、第1の標的および第2の標的の少なくとも1つは酵素である。実施形態では、第1の標的および第2の標的の少なくとも1つは、FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、またはスクアレン合成酵素である。
【0119】
実施形態では、スモールRNAによる第1の標的の標的化は、メバロン酸経路の第1の生成物の存在、レベル、または濃度の増加を引き起こす。実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物の存在、レベル、または濃度は、第1の生成物の対照に対して最大10%増加し、第1の生成物の対照は、第1の標的がスモールRNAにより標的とされない場合の第1の生成物の存在、レベル、または濃度を意味し得る。実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第1の生成物の対照に対して最大10%から最大20%増加する。実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第1の生成物の対照に対して最大20%から最大30%増加する。実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第1の生成物の対照に対して最大30%から最大40%増加する。実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第1の生成物の対照に対して最大40%から最大50%増加する。実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第1の生成物の対照に対して50%より大きく増加する。実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物は、IPPを含む。
【0120】
実施形態では、スモールRNAによる第2の標的の標的化は、メバロン酸経路の第2の生成物の存在、レベル、または濃度の減少を引き起こす。実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物の存在、レベル、または濃度は、第2の生成物の対照の最大10%減少し、第2の生成物の対照は、第2の標的がスモールRNAにより標的とされない場合の第2の生成物の存在、レベル、または濃度を意味し得る。実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第2の生成物の対照の最大10%から最大20%減少する。実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第2の生成物の対照の最大20%から最大30%減少する。実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第2の生成物の対照の最大30%から最大40%減少する。実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第2の生成物の対照の最大40%から最大50%減少する。実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物の存在、レベル、または濃度は、本明細書中に記載するような第2の生成物の対照の50%より大きく減少する。実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物は、GGPPを含む。
【0121】
実施形態では、メバロン酸経路の第1の生成物の存在、レベル、または濃度の増加は、ガンマデルタ(GD)T細胞活性化の増加を引き起こす。実施形態では、GD T細胞活性化は、第1の活性化の対照に対して最大10%増加し、第1の活性化の対照は、第1の標的がスモールRNAにより標的とされない場合のGD T細胞活性化のレベルを意味し得る。実施形態では、第1の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第1の活性化の対照に対して最大10%から最大20%増加する。実施形態では、第1の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第1の活性化の対照に対して最大20%から最大30%増加する。実施形態では、第1の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第1の活性化の対照に対して最大30%から最大40%増加する。実施形態では、第1の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第1の活性化の対照に対して最大40%から最大50%増加する。実施形態では、第1の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第1の活性化の対照に対して50%またはそれより大きく増加する。
【0122】
実施形態では、メバロン酸経路の第2の生成物の存在、レベル、または濃度の減少は、ガンマデルタ(GD)T細胞活性化の増加を引き起こす。実施形態では、第2の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、第2の活性化の対照に対して最大10%増加し、第2の活性化の対照は、第2の標的がスモールRNAにより標的とされない場合のGD T細胞活性化のレベルを意味し得る。実施形態では、第2の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第2の活性化の対照に対して最大10%から最大20%増加する。実施形態では、第2の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第2の活性化の対照に対して最大20%から最大30%増加する。実施形態では、第2の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第2の活性化の対照に対して最大30%から最大40%増加する。実施形態では、第2の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD
T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第2の活性化の対照に対して最大40%から最大50%増加する。実施形態では、第2の生成物のモジュレーションにより引き起こされるGD T細胞活性化は、本明細書中に記載するような第2の活性化の対照に対して50%またはそれより大きく増加する。
【0123】
別の態様では、標的細胞に感染することができるレンチウイルス粒子が開示される。レンチウイルス粒子は、標的細胞に感染するために最適化されたエンベロープタンパク質、および本明細書に詳述されるようなレンチウイルスベクターを含む。実施形態では、標的細胞は、がん細胞である。
【0124】
別の態様では、ガンマデルタ(GD)T細胞を活性化する方法が開示される。方法は、GD T細胞の存在下で、標的細胞をレンチウイルス粒子に感染させることを含み、レンチウイルス粒子は、第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターを含み、第1のコードされた遺伝子エレメントは、メバロン酸経路に関与する酵素の産生を阻害することができるスモールRNAを含み、第2のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含み、酵素が標的細胞中で阻害されたときに、標的細胞はGD T細胞を活性化する。実施形態では、酵素は、FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、および/またはスクアレン合成酵素、またはこれらの機能的バリアントの少なくとも1つを含む。
【0125】
実施形態では、標的細胞は、がん細胞である。実施形態では、方法は、標的細胞およびGD T細胞をある量のアミノビスホスホネート薬物と接触させることをさらに含む。実施形態では、アミノビスホスホネート薬物は、ゾレドロン酸である。
【0126】
別の態様では、被験体においてがんを処置する方法が開示される。方法は、被験体に治療有効量のレンチウイルス粒子を投与することを含み、レンチウイルス粒子は、第1および第2のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターを含み、第1のコードされた遺伝子エレメントは、メバロン酸経路に関与する酵素の産生を阻害することができるスモールRNAを含み、第2のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバー、サイトカイン、またはケモカインのうちの1つを含み、酵素がGD T細胞の存在下でがん細胞において阻害されたときに、標的細胞はGD T細胞を活性化し、それによりがんを処置する。実施形態では、酵素は、FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、スクアレン合成酵素、および/またはこれらの機能的バリアントの少なくとも1つを含む。
【0127】
実施形態では、方法は、標的細胞およびGD T細胞をある量のアミノビスホスホネート薬物と接触させることをさらに含む。実施形態では、方法は、被験体に治療有効量のレンチウイルス粒子を投与することを含み、レンチウイルス粒子は、第1、第2および第3のコードされた遺伝子エレメントを含むウイルスベクターを含み、第1のコードされた遺伝子エレメントは、メバロン酸経路に関与する1つまたは複数の酵素の産生を阻害することができる1つまたは複数のスモールRNAを含み、第2のコードされた遺伝子エレメントは、ブチロフィリンファミリーメンバーを含み、第3の遺伝子エレメントは、サイトカインまたはケモカインをコードし、酵素がGD T細胞の存在下でがん細胞において阻害されたときに、標的細胞はGD T細胞を活性化し、ブチロフィリンは、GD T細胞を活性化する効率を増加させ、サイトカインは、GD T細胞の活性化および増殖を増加させ、ケモカインは、腫瘍部位におけるGD T細胞の存在を増加させ、それによりがんを処置する。実施形態では、方法は、標的細胞およびGD T細胞をある量のアミノビスホスホネート薬物に曝露することをさらに含む。実施形態では、アミノビスホスホネート薬物は、ゾレドロン酸である。
【0128】
実施形態では、ブチロフィリンファミリーメンバーは、BTN3A3(配列番号17)またはBTN3A3(R381H)(配列番号54)を含む。実施形態では、サイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-23、またはIL-36を含むが、T細胞などの免疫細胞を活性化することが公知である他のサイトカインも含み得る。実施形態では、ケモカインは、CCL5遺伝子によりコードされるケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5、またはGD T細胞受容体により認識されることが公知であり、GD T細胞を腫瘍成長の部位に誘引できることが公知である他のケモカインを含み得る。
【0129】
がん
本明細書中に提供する組成物および方法は、がんを処置するために使用される。細胞、組織、または標的は、がん細胞であり得、がん性組織であり得、がん性組織を有し得、あるいは疾患または状態を発症していると診断されたまたはそのリスクがある被験体または患者であり得る。ある特定の態様では、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、中皮細胞、グリア細胞、間質細胞、または粘膜細胞であり得る。がん細胞集団は、脳細胞、神経細胞、血液細胞、子宮内膜細胞、髄膜細胞、食道細胞、肺細胞、心臓血管細胞、肝細胞、リンパ細胞、乳房細胞、骨細胞、結合組織細胞、脂肪細胞、網膜細胞、甲状腺細胞、腺細胞、副腎細胞、膵臓細胞、胃細胞、腸細胞、腎臓細胞、膀胱細胞、結腸細胞、前立腺細胞、子宮細胞、卵巣細胞、子宮頸部細胞、精巣細胞、脾臓細胞、皮膚細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、または横紋筋細胞を含み得るが、これらに限定されず、前記のいずれかからのがん細胞集団も挙げることができ、癌、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫、混合型または前記の混合物の1つまたは複数と関連付けられ得る。なおさらなる態様では、がんとしては、星状細胞腫、急性骨髄性白血病、未分化大細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、血管肉腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、乳癌、膀胱癌、頭頸部癌、子宮頸癌、慢性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道扁平上皮癌、ユーイング肉腫、線維肉腫、神経膠腫、膠芽腫、ガストリノーマ、胃癌、胚芽腫、肝細胞癌、カポジ肉腫、ホジキンリンパ腫、喉頭扁平上皮癌、喉頭癌、白血病、平滑筋肉腫、脂肪腫、脂肪肉腫、黒色腫、マントル細胞リンパ腫、髄芽腫、中皮腫、粘液線維肉腫、骨髄性白血病、粘膜関連リンパ組織B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、高リスク骨髄異形成症候群、鼻咽腔癌、神経芽腫、神経線維腫、高悪性度非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、食道癌、骨肉腫、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、腎細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺腫瘍、シュワン細胞腫(schwanomma)、小細胞肺がん、頭頸部の扁平上皮癌、精巣腫瘍、甲状腺癌、尿路上皮癌、およびウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
本明細書中に提供する組成物および方法は、NSCLC(非小細胞肺がん)、小児悪性疾患、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって惹起または助長される子宮頸部およびその他の腫瘍、黒色腫、バレット食道(前悪性症候群)、副腎がん、および皮膚がん、ならびに自己免疫疾患、腫瘍性皮膚疾患を処置するためにも使用される。
【0131】
感染性疾患
本明細書中に開示する組成物および方法は、感染性疾患を処置するために使用することができる。「感染性疾患」という用語は、感染性因子により引き起こされる任意の疾患を含む。「感染性因子」としては、細菌、真菌、ウイルス、マイコプラズマ、および寄生虫が挙げられるがこれらに限定されない任意の外因性の病原体が挙げられる。本開示中で提供される組成物を用いて処置され得る感染性因子としては、動物において病理発生を引き起こす任意の当該技術分野で認識される感染性生物が挙げられ、これには、グラム陰性またはグラム陽性の球菌または桿菌である細菌、DNAウイルスおよびRNAウイルス、例えば、以下に限定されないが、パピローマウイルス、パルボウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびワクシニアウイルスなどのDNAウイルス、ならびにアレナウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザウイルス、ピコルナウイルス(picomavirus)、パラミクソウイルス、レオウイルス、レトロウ
イルス、およびラブドウイルスなどのRNAウイルスなどの生物が含まれる。本開示の組成物および方法を用いて処置され得る真菌の例としては、カビとして成長するか、または酵母様の真菌が挙げられ、例えば、白癬、ヒストプラズマ症、ブラストミセス症、アスペルギルス症、クリプトコックス症、スポロトリクム症、コクシジオイデス症、パラコクシジオイデス症、およびカンジダ症などの疾患を引き起こす真菌が挙げられる。本明細書中で提供される組成物および方法は、寄生虫感染症を処置するために利用することができ、寄生虫感染症としては、体条虫(somatic tapeworm)、住血吸虫、組織回虫(tissue roundworm)、アメーバ、ならびにPlasmodium、Trypanosoma、Leishmania、およびToxoplasma種により引き起こされる感染症が挙げられるがこれらに限定されない。
【0132】
GD T細胞の活性化方法
個体においてGD T細胞を活性化するための組成物および方法の他に、腫瘍および感染性疾患を処置する方法が本明細書中に提供される。例えば、実施形態では、本明細書中に提供する組成物および方法は、全ての公知のがんを処置するための方法において使用することができ、その理由は、活性化されたGD T細胞は、腫瘍の免疫サーベイランスのための天然の機構を含むためである(例えば、Pauza et al. Frontiers in Immunol. 5: 687 (2014)を参照)。同様に、実施形態では、本明細書中に提供する組成物方法および方法は、感染性疾患を処置するために使用することができ、感染性疾患としては、フラビウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトレトロウイルス、マイコバクテリア、プラスモジウムおよび様々な他のウイルス、真菌および細菌の感染症が挙げられるがこれらに限定されない。(例えば、Pauza and Cairo, 2015 Cell Immunol. 296(1)を参照)。
【0133】
一般に、FDPSの発現を減少させるため、および他の実施形態では、ケモカインまたはサイトカインの発現を増加させるために、開示する構築物を用いて標的細胞集団をトランスフェクトまたは形質導入するために、ベクター系は個体に投与される。投与およびトランスフェクション/形質導入は、in vivoまたはex vivoで行うことができ、後者の概要では、トランスフェクトされた細胞は後に、被験体内に投与して戻される。
【0134】
被験体の細胞への開示するベクターの投与および開示する構築物のトランスフェクションまたは形質導入は、FDPSの発現の減少、サイトカインまたはケモカインの発現の増加、IPPの蓄積および多くの場合、遺伝子が改変された腫瘍細胞の成長速度の低減をもたらす。これらの特徴の全てが一緒に働いて、GD T細胞を活性化し、それを腫瘍または感染の部位に共局在させる。
【0135】
開示する方法はまた、腫瘍細胞および/または感染細胞を認識して破壊するNK細胞の能力を増加させることができる。GD T細胞とNK細胞との間のクロストークは、免疫応答および炎症応答を調節する重要な態様である。さらに、GD T細胞は、樹状細胞の成熟を誘発し、B細胞およびマクロファージを動員し、インターフェロン-γおよびTNF-αの分泌などの様々な細胞溶解活性に参加することができる。
【0136】
実施形態では、本明細書中に提供する開示する組成物および方法は、腫瘍の部位においてGD T細胞を活性化するための遺伝子療法の形態を含む。一態様では、本明細書中に提供する組成物および方法は、がん細胞を殺滅しまたは感染性疾患を処置することができる細胞溶解活性のために必要とされる特定のサイトカインの産生を促進することによりGD T細胞を活性化し、その増殖、分化、および機能的能力をサポートする。
【0137】
実施形態では、遺伝子療法用配列(例えば、FDPS shRNA、FDPS miRNA、GGPS1 shRNA、IDI1 shRNA、F-TaseスモールRNA、またはスクアレン合成酵素スモールRNA)は、治療ベクターにより担持され、治療ベクターとしては、レンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルスなどのウイルスベクターが挙げられるがこれらに限定されず、他のウイルスベクターもまた好適であり得る。遺伝子療法用構築物はまた、プラスミド形態が挙げられるがこれに限定されないDNAまたはRNAの形態で送達され得る。実施形態では、開示する遺伝子療法用構築物はまた、タンパク質-核酸複合体または脂質核酸複合体およびこれらの製剤の混合物の形態で送達され得る。例えば、タンパク質-核酸複合体は、リジンおよびアルギニンなどの陽イオン性ペプチドとの複合体において目的の核酸を含み得る。脂質-核酸複合体は、脂質エマルション、ミセル、リポソーム、ならびに/またはDOTMA、DOSPA、DOTAP、およびDMRIEなどの中性および陽イオン性脂質の混合物を含み得る。
【0138】
実施形態では、治療ベクターは、単一の構築物または少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、もしくは少なくとも5つの異なる構築物を含み得る。1つより多くの構築物がベクター中に存在する場合、構築物は同一であってもよく、またはそれらは異なっていてもよい。例えば、構築物は、プロモーター、組込みエレメントの存在もしくは非存在、および/または配列に関して異なり得る。
【0139】
実施形態では、治療ベクターは、FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、スクアレン合成酵素、および/またはこれらの機能的バリアントの少なくとも1つの発現をノックダウンさせることができるスモールRNAをコードする少なくとも1つの構築物を含む。実施形態では、治療ベクターはまた、TNF-α、インターフェロン-γ、IL-1、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-33、IL-36、またはRANTESが挙げられるがこれらに限定されない特定のサイトカイン(複数可)および/またはケモカイン(複数可)をコードする。実施形態では、単一の構築物は、FDPSおよびTNF-α、インターフェロン-γ、IL-1、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-33、IL-36、またはRANTESが挙げられるがこれらに限定されない特定のサイトカインまたはケモカインの発現をノックダウンさせることができる両方のスモールRNAをコードし得る。
【0140】
実施形態では、ウイルスベクターは、宿主染色体中に組み込まれる核酸構築物を導入し得る。あるいは、一過性の送達ベクターを使用して、染色体への組込みを防止し、遺伝子療法用構築物の寿命を制限することができる。
【0141】
実施形態では、開示する構築物およびベクターは、FDPS、ゲラニルピロリン酸合成酵素(「GPPS」)、ファルネシルトランスフェラーゼ(「F-Tase」)、IDI1、および/またはスクアレン合成酵素遺伝子の発現を低減させまたはノックダウンさせることができる短鎖ヘアピンRNA(「shRNA」)、マイクロRNA(「miRNA」)、またはsiRNAを含む。ステロイドおよびイソプレノイドの合成を制御するこれらの遺伝子を下方調節することにより、イソペンテニルピロリン酸(「IPP」)レベルが上昇し、および/またはGGPPレベルが減少する。IPPの上昇および蓄積は、GD
T細胞活性化を増加させるための機構である。さらに、これらのピロリン酸合成酵素遺伝子の下方調節は、インフラマソーム機能の重要な負の調節因子を除去し、次いでそれが、GD T細胞活性化およびエフェクター細胞機能のために重要なサイトカインの発現の増加をもたらす。がん細胞表面上のBTN3A3およびIPPのより高い細胞質レベルは、Vガンマ9Vデルタ2 T細胞(本明細書中でVγ9Vδ2 T細胞とも称される)を強力に刺激する。
【0142】
実施形態では、開示する構築物は、インターロイキン-2および/またはインターロイキン-15を産生させてGD T細胞増殖を維持させることができる特定のプロモーターにより調節される。しかしながら、本明細書中に記載するように、IL-18、IL-23、およびIL-36などの他のサイトカインもまた、選択し、使用することができる。加えて、開示する構築物は、GD T細胞分化および全てのエフェクター細胞機能の獲得のために必要とされるインターロイキン-1ベータおよび/またはインターロイキン-18および/またはインターフェロン-ガンマを産生することができる特定のプロモーターにより調節され得る。望ましいエフェクター細胞機能としては、腫瘍および/または感染細胞の直接的な細胞傷害性細胞殺滅、有益なサイトカインおよび/またはケモカインの分泌、がん性のまたは細胞(cancerous or cell)を認識するために必要とされるNK受
容体の発現の増加、ならびにGD T細胞をがん性細胞または感染細胞標的と共局在させるために標的化抗体に結合するために必要とされるFc受容体の発現の増加のための能力が挙げられる。
【0143】
実施形態では、開示する方法は、GD T細胞を活性化して、がん性細胞、腫瘍、または感染細胞を攻撃して破壊するNK細胞の能力を増加させる間接的な効果をもたらす。NK細胞の活性化はGD T細胞を必要とし、GD T細胞は、刺激されて、増殖および分化し、NK細胞上の4-1BB共刺激受容体に結合するために必要とされる4-1BBL共刺激リガンドを発現する。この形態のクロストークは、NK細胞を活性化するための重要な機構として公知であり、本明細書中で開示する方法および組成物の作用を通じて達成される。
【0144】
別の態様では、GD T細胞とNK細胞との間のクロストークは、疾患組織に蓄積する炎症性樹状細胞を除去するための重要な機構である。単独では、GD T細胞およびNK細胞のいずれも、樹状細胞を破壊することができないが、上述のクロストーク相互作用が起こると、NK細胞は変化して、炎症性樹状細胞に対して細胞傷害性となる。この免疫調節機構は、GD T細胞の強い活性化および増殖に依存する。
【0145】
実施形態では、GD T細胞の活性化のための開示する方法は、病的炎症応答を抑制するステップをさらに含み、病的炎症応答としては、アテローム性動脈硬化症に繋がる細胞増殖、腫瘍成長を刺激する慢性免疫活性化、乾癬および表皮における他の提示などの自己免疫疾患、中枢神経系の炎症性疾患、ならびに関節炎および調節されない免疫応答の他の疾患を挙げることができる。
【0146】
実施形態では、治療ベクターは、ガンマデルタT細胞の相乗的な活性化を達成するために、ビスホスホネート薬物と並行して投与される。相乗効果は、ビスホスホネート薬物の交互の、改変されたまたは低下した用量を可能とすることができ、急性炎症応答および慢性疾患などのビスホスホネートへの有害反応を減少させ得る。
【0147】
実施形態では、治療ベクターは、ビスホスホネート薬物と組み合わせて投与される。様々な実施形態では、そのような組み合わせは、ガンマデルタT細胞の相乗的な、正のまたは向上した活性化を達成する。そのような正の活性化は、ビスホスホネートの交互の、改変されたまたは低下した用量を可能とすることができ、急性炎症応答および慢性疾患などのビスホスホネートへの有害反応を減少させ得る。ビスホスホネートとの治療ベクターの組み合わせは、併用のためまたは組み合わせ製品についての指示と共にまたはそれなしで一緒にまたは別々に存在し得る。治療ベクターおよび/またはビスホスホネートは、完全に別々に投与されてもよく、完全に別個の医薬剤形中に製剤化されてもよい。治療ベクターおよび/またはビスホスホネートは、併用の可能性に関する表示による指示と共にまたはそれなしで、互いに独立して販売され得る。そのような指示はまた、例えば、リーフレットなどのパッケージ用品中、または例えば医師および医療スタッフに提供される他の情報(例えば、口頭伝達、書面などでの伝達)中に提供され得る。そのようなラベルまたは他の指示は、1つの投薬単位形態での固定の組み合わせ、または、治療ベクターが、ある時間間隔内でビスホスホネート薬物とは独立して、同時に、もしくは別々に投与され得る併用投与のための部分のキットとしての非固定の組み合わせのいずれかを指すことができる。様々な実施形態では、組み合わせは、協調的効果もしくは共同効果、または処置の毒性もしくは合併症の減少を呈する。一実施形態では、組み合わせの効果は相乗的である。相乗効果は、一緒に使用された活性成分が、化合物を別々に使用することに起因する効果の和より大きい場合に達成される。相乗効果は、活性成分が、(1)一緒に製剤化され、組み合わせての単位投与量製剤において同時に投与もしくは送達された場合;(2)別々の製剤として交互にまたは並行して送達された場合;または(3)いくつかの他のレジメンによる場合に得られ得る。交互療法で送達される場合、相乗効果は、化合物が、例えば、別々のシリンジでの異なる注射により、逐次的に投与または送達される場合に得られ得る。一般に、交互療法の間に、効果的な投与量の各活性成分が逐次的に、すなわち連続的に投与される一方、併用療法では、本明細書に詳述されるように潜在的なタイミングの変動にさらされるとはいえ、効果的な投与量の2つまたはそれより多くの活性成分は一緒に投与される。
【0148】
本明細書における組み合わせは、同じまたは異なる製造者により製造および/または製剤化され得る。活性成分は、(i)医師への組み合わせ製品の出荷前(例えば、本開示の化合物および他の治療剤を含むキットの場合);(ii)投与の直前に治療医により(または医師の指導の下で);(iii)例えば、本明細書に開示する活性成分の逐次的な投与の間に実際の患者において、併用療法にまとめることができる。
【0149】
実施形態では、治療有効量の各組み合わせは、同時にまたは逐次的かつ任意の順序で投与されてよく、成分は一緒にまたは別々に投与されてよい。例えば、本開示による増殖性疾患を処置する方法は、(i)レンチウイルス粒子の部分を形成する治療ベクターなどの第1の薬剤の投与および/または(ii)遊離もしくは薬学的に許容される塩の形態のビスホスホネート薬物などの第2の薬剤の投与を含み得る。薬剤(i)、および/または(ii)の投与は、同時にまたは逐次的な任意の順序で、治療有効量で、好ましくは、協調的な、共同効果のある、および/または相乗効果のある量で、例えば、本明細書中に記載する量に対応する毎日のまたは間欠的な投与量で為され得る。組み合わせは、療法の経過の間の異なる時点において別々にまたは分割されたもしくは単一の薬物形態で並行して投与され得る。さらには、「投与する」という用語はまた、組み合わせパートナーにそれ自体in vivoで変換する組み合わせパートナーのプロドラッグを使用することを包含する。本開示は、したがって、同時のまたは交互の処置の全てのそのようなレジメンを包含するものとして理解されるべきであり、「投与する」という用語はそれにしたがって解釈されるべきである。
【0150】
実施形態では、薬剤(i)および(ii)は、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与、経口投与、直腸投与、眼投与、非経口(静脈内、皮内、筋肉内、皮下、腹腔内)投与、肺投与、腟内投与、局所投与、局部投与、乱切後の局部投与、粘膜投与、エアロゾルを介して、アガロースもしくはゼラチンなどの半固体媒体中で、または頬側もしくは鼻噴霧製剤を介してなど、任意の薬学的に許容される方法を使用して投与され得る。例えば、治療ベクターおよび/またはビスホスホネート薬物は、静脈内に投与され得る。さらに、薬剤(i)および(ii)は、固体剤形、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、液体分散剤、ゲル剤、エアロゾル剤、肺エアロゾル剤、鼻エアロゾル剤、軟膏剤、クリーム剤、半固体剤形、液剤、乳剤、および懸濁剤などの任意の薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。例えば、ビスホスホネート薬物は、錠剤に製剤化されて、経口投与され得る。
【0151】
本開示による併用療法は、それ以外にまたは加えて、化学療法、放射線療法、免疫療法、外科的介入、またはこれらの組み合わせと組み合わせて特にがん療法のために投与することができる。長期療法は、上記するような他の処置戦略の文脈においてアジュバント療法と同じく可能である。他の可能な処置は、腫瘍退縮後に患者の状態を維持するための療法、またはさらには、例えばリスクがある患者における化学的予防療法である。
【0152】
GD T細胞活性化用の構築物
FDPS、GGPS1、IDI1、および/またはこれらの機能的バリアントの阻害は、IPPの蓄積および/またはGGPPレベルの減少をもたらすことがあり、これは、Vデルタ2+ GD T細胞の活性化ならびにインターフェロン-ガンマ、TNF-アルファ、およびIL-18の発現をもたらし、これらもまたGD T細胞の活性化において重要である。ファルネシルトランスフェラーゼおよび/またはスクアレン合成酵素の阻害は、タンパク質のプレニル化の減少をもたらす。開示する構築物は、腫瘍細胞または感染細胞のような特定の標的細胞にトランスフェクトまたは形質導入することができ、そこでそれらは、FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、スクアレン合成酵素、および/またはこれらの機能的バリアントの翻訳を阻害するRNA配列(すなわち、siRNA、shRNAまたはマイクロRNA)を発現できる他に、細胞傷害性サイトカインまたはケモカインをコードし発現することができる。
【0153】
FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、スクアレン合成酵素、および/またはこれらの機能的バリアントの発現を減少させるため、サイトカインの発現を増加させるため、ならびにRANTESなどのケモカインの発現を増加させるための構築物が本明細書中に開示される。例えば、実施形態では、構築物は、インターフェロン-ガンマ、IL-1、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-33、IL-36、またはTNF-αをコードし得る。
【0154】
上記に列記したもののようなサイトカインおよびケモカインの発現は、腫瘍細胞または病原性生物に感染した細胞の局在化した細胞傷害性破壊をもたらす。したがって、腫瘍細胞によるそのような構築物の発現は、腫瘍細胞がそれら自体の破壊を補助し、レンチウイルスベクターにより遺伝子改変されていない他の腫瘍細胞を破壊することができる免疫機構を活性化することをもたらし得る。GD T細胞を活性化する遺伝子改変された細胞の能力は、GD T細胞受容体、ブチロフィリン認識、および一般的なガンマ鎖サイトカインについてのGD T細胞受容体の活性化を伴う。腫瘍細胞の殺滅は、腫瘍細胞を正常細胞から区別して細胞殺滅プロセスの選択性を提供するNK受容体ファミリーのメンバーとして一般に記載されるGD T細胞表面受容体のファミリーに依拠する。結果として、少数の遺伝子改変された腫瘍細胞は、充分な数のGD T細胞を活性化して、同じまたは遠位の腫瘍中の遺伝子改変および非遺伝子改変細胞の両方の殺滅を含む腫瘍の大規模な破壊を達成することができる。したがって、腫瘍細胞または感染細胞によるそのような構築物の発現は、望ましくない細胞がそれ自体の破壊を補助することをもたらす。
【0155】
同様に、開示する構築物が腫瘍細胞または感染細胞において発現される場合、FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、スクアレン合成酵素、および/またはこれらの機能的バリアントの発現の減少は、GD T細胞の活性化および細胞感染の部位の腫瘍部位への動員をもたらし得る。RANTESの発現の増加は、意図する組織位置にGD T細胞をさらに誘引する。GD T細胞は広範な上皮起源の腫瘍の他に多くの白血病およびリンパ腫を殺滅することができ、高レベルの抗腫瘍性サイトカイン、IFNγの産生がさらに可能であるので、腫瘍の部位へのGD T細胞の動員は、抗腫瘍免疫を誘導する特に効果的な手段であり得る。
【0156】
FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、スクアレン合成酵素、および/またはこれらの機能的バリアントの発現の減少は、shRNA、マイクロRNA、siRNA、または当該技術分野において公知の他の手段を介して達成することができる。例えば、開示する構築物および方法において配列番号1、2、3、または4、またはこれらのバリアントによるshRNAを使用することができるが、この例は限定的なものではない。開示する構築物および方法において配列番号64~67、70~72、76、またはこれらのバリアントによるshRNAを使用することができるが、この例は限定的なものではない。開示する構築物および方法において配列番号68または69、またはこれらのバリアントによるmiRNAを使用することができるが、この例は限定的なものではない。FDPS、GGPS1、IDI1、F-Tase、スクアレン合成酵素、および/またはこれらの機能的バリアントの発現を減少させるためのRNAのコーディング領域、ならびにサイトカインおよびケモカインのコーディング領域は、同じ構築物中または異なる構築物上にあってよい。
【0157】
組換えポリペプチドまたはスモールRNAなどの遺伝子調節分子を産生するための古典的なアプローチは、安定発現構築物を使用することである。これらの構築物は、形質導入された発現プラスミド(または少なくともその一部分)の宿主細胞のゲノムへの染色体組込み、短い持続時間のプラスミドトランスフェクション、または限られた半減期を有する非組込み性ウイルスベクターにも基づく。遺伝子組込みの部位は一般にランダムであり、任意の特定の部位に組み込まれる遺伝子の数および比は多くの場合に予測できない。同様に、非組込み性のプラスミドまたはウイルスベクターもまた核内DNAを生成するが、これらの種は通常、DNA複製および連続的な維持のために必要とされる配列を欠いている。したがって、染色体組込みに依拠する構築物は、治療間隔を超えたものであり得る組換え遺伝子の永久的な維持をもたらす。
【0158】
遺伝子発現のための安定発現構築物の代替としては、一過性発現構築物がある。後者の遺伝子発現構築物の発現は非組込み性プラスミドに基づき、それゆえ、発現は、典型的に、細胞が分裂するか、またはプラスミドベクターが内因性ヌクレアーゼにより破壊されると失われる。
【0159】
開示する構築物は、好ましくは、一過的に発現されるエピソーム構築物である。エピソーム構築物は、被験体のゲノムに永久的な変更を加えず、標的細胞の染色体中に組み込まれないように、時間と共に分解または希釈される。エピソーム複製のプロセスは、典型的に、宿主細胞の複製機構およびウイルストランス作用因子の両方を組み込む。
【0160】
染色体組込みの回避は、in vivoでの遺伝子送達に対するある特定の障壁を低減させる。しかしながら、組込み欠陥性構築物であっても、バックグラウンド頻度の組込みを有し得、あらゆるDNA分子は、宿主配列と組換えを起こすための希少な相同性を有し得るが、これらの組込み率は例外的に希少であり、一般に臨床的に有意でない。
【0161】
したがって、実施形態では、開示するベクターは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、または約12週の期間にわたり活動的遺伝子および/またはスモールRNAの送達をサポートする。実施形態では、開示するベクターは、約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはより長い期間にわたり活動的遺伝子および/またはスモールRNAの送達をサポートする。例えば、1ヶ月および1週、または3ヶ月および2週といった、これらの期間の任意の組み合わせもまた本発明の方法において使用することができる。
【0162】
しかしながら、実施形態では、構築物は、レトロウイルスインテグラーゼ遺伝子に依存する組込みエレメントを含み、それにより、構築物は被験体の染色体中に組み込まれる。レトロ転位および転位は、可動性遺伝子エレメントが染色体に組み込まれるかまたは挿入される機構の追加の例である。プラスミドは、組換えにより染色体中に組み込まれてよく、CRISPRおよびTALENなどの遺伝子編集技術は、ガイドRNA配列を利用し、遺伝子欠失または遺伝子変換機構により染色体遺伝子座を変化させる。
【0163】
構築物は、GD T細胞の維持に関与するサイトカイン(すなわち、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、またはIL-36)を発現するための特定のプロモーターを含み得る。例えば、開示する構築物中に組み込まれ得るプロモーターとしては、TATAボックスプロモーター、CpGボックスプロモーター、CCAATボックスプロモーター、TTGACAボックスプロモーター、BREボックスプロモーター、INRボックスプロモーター、ATベースのプロモーター、CGベースのプロモーター、ATCG小型プロモーター、ATCG均衡プロモーター、ATCG中型プロモーター、ATCGレスプロモーター、ATレスプロモーター、CGレスプロモーター、ATスパイクプロモーター、およびCGスパイクプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、Gagniuc and Ionescu-Tirgoviste, Eukaryotic genomes may exhibit up to 10 generic classes of gene promoters, BMC GENOMICS 13: 512 (2012)を参照。
【0164】
治療ベクター
構築物は、以下に限定されないが、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターなどの公知のトランスフェクションベクターおよび/または形質導入ベクター、タンパク質および/または脂質複合体、リポソーム、ミセル、細菌によって産生された小胞、真核生物によって産生された小胞、エキソソームなどを介して送達され得る。
【0165】
ウイルスベクターは、本開示の方法のために有用な細胞種(すなわち、腫瘍細胞または骨髄性細胞またはリンパ球)に優先的に標的化され得る。ウイルスベクターは、ウイルスエンベロープ-宿主細胞受容体の特異的相互作用およびウイルスの遺伝子発現機構によって標的細胞中に遺伝子を形質導入するために使用され得る。結果として、ウイルスベクターは、全胚、受精卵、単離された組織試料、in situの組織標的、および培養細胞株などの多くの異なる細胞種中に遺伝子を導入するためのビヒクルとして使用されている。細胞中に外来遺伝子を導入し、発現させる能力は、遺伝子発現の研究および細胞系列の解明、ならびに遺伝子療法などの治療的介入の可能性の提供、人工多能性幹細胞の体細胞再プログラミング、および様々な種類の免疫療法において有用である。パポーバウイルス科(例えば、ウシパピローマウイルスまたはBPV)、またはヘルペスウイルス科(例えば、エプスタインバーウイルスまたはEBV)、またはヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルスまたはHBV)、またはワクシニアなどのポックスベクターのようなウイルス由来のウイルス構成成分は、本開示のベクターにおいて使用され得る。
【0166】
本開示はレンチウイルスベクターに特に限定されるものではないが、レンチウイルスベクターは、本開示の組成物および方法にとって好ましい種類のベクターである。レンチウイルスは、有意な量のウイルス核酸を宿主細胞中に送達できるウイルスの属である。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染し/それに形質導入する独特の能力を有するものとして特徴付けられ、形質導入後にレンチウイルスはその核酸を宿主細胞の染色体中に組み込む。
【0167】
感染性レンチウイルスは、gag、pol、およびenvという毒性タンパク質をコードする3つの主要遺伝子、ならびにtatおよびrevを含む2つの調節遺伝子を有する。特定の血清型およびウイルスに応じて、ウイルス核酸の調節、合成、および/またはプロセシング、ならびにその他の複製機能に関与するタンパク質をコードする追加のアクセサリー遺伝子が存在し得る。
【0168】
さらには、レンチウイルスは、末端反復配列(LTR)領域を含有し、これは約600ntの長さであり得る。LTRは、U3領域、R領域、およびU5領域に分けられ得る。LTRは、インテグラーゼの作用を介して宿主染色体中へのレトロウイルスDNAの組込みを媒介し得る。あるいは、インテグラーゼの機能なしに、LTRは、ウイルス核酸を環状化するために使用され得る。
【0169】
レンチウイルス複製の初期段階に関与するウイルスタンパク質としては、逆転写酵素およびインテグラーゼが挙げられる。逆転写酵素は、ウイルスにコードされたRNA依存性DNAポリメラーゼである。この酵素は、相補的DNAコピーの合成のための鋳型としてウイルスRNAゲノムを使用する。逆転写酵素は、RNA鋳型の破壊のためにRNaseH活性も有する。インテグラーゼは、逆転写酵素によって生成されたウイルスcDNAおよび宿主DNAの両方に結合する。インテグラーゼは、宿主DNA中にウイルスゲノムを挿入する前にLTRをプロセシングする。Tatは、転写の際に開始および伸長を増進するトランス活性化因子として働く。rev応答エレメントは転写後に働き、mRNAのスプライシングおよび細胞質への輸送を調節する。
【0170】
ウイルスベクターは、一般に糖タンパク質を含み、様々な糖タンパク質は、特異的親和性を提供し得る。例えば、水疱性口内炎ウイルスG(VSVG)ペプチドは、骨髄細胞中へのトランスフェクションを増加させ得る。あるいは、ウイルスベクターは、その殻ペプチドに取り付けられた、抗体などの標的化部分も有し得る。標的化抗体は、例えば、HER-2、PSA、CEA、M2-PK、およびCA19-9のような腫瘍で過剰発現される抗原に特異的であり得る。
【0171】
ウイルスベクターの他の特異性もまた当該技術分野において公知であり、細胞の特定の集団を標的とするために使用することができる。例えば、ポックスウイルスベクターおよびヘルペスウイルスベクターはマクロファージ、樹状細胞および上皮細胞を標的とし、麻疹ウイルスベクターはB細胞を標的とすることができ、狂犬病ウイルスベクターは神経細胞を標的とすることができる。
【0172】
レンチウイルスベクター系
レンチウイルスのビリオン(粒子)は、ビリオン(ウイルス粒子)を産生するために必要なウイルスタンパク質をコードするベクター系によって発現される。プロモーターに作動可能に連結された、逆転写および組込みに必要なレンチウイルスのpolタンパク質をコードする核酸配列を含有する少なくとも1つのベクターがある。別の実施形態では、polタンパク質は、複数のベクターによって発現される。プロモーターに作動可能に連結された、ウイルスカプシドを形成するために必要なレンチウイルスのgagタンパク質をコードする核酸配列を含有するベクターもある。一実施形態では、このgagの核酸配列は、polの核酸配列の少なくとも一部とは別のベクター上にある。別の実施形態では、gagの核酸は、polタンパク質をコードする全てのpolの核酸配列とは別のベクター上にある。
【0173】
野生型復帰変異体を得る機会をさらに最小化するための粒子の作製に使用される多数の改変を、ベクターに対して行うことができる。これらとしては、LTRのU3領域の欠失、tatの欠失、およびマトリックス(MA)の欠失が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
gag、pol、およびenvのベクターは、レンチウイルスパッケージング配列と称される、レンチウイルスRNAをパッケージングするレンチウイルスゲノム由来のヌクレオチドを含有しない。
【0175】
粒子を形成するベクターは、好ましくは、エンベロープタンパク質を発現するレンチウイルスゲノム由来の核酸配列を含有しない。好ましくは、プロモーターに作動可能に連結されたエンベロープタンパク質をコードする核酸配列を含有する別のベクターが使用される。このenvベクターもまた、レンチウイルスパッケージング配列を含有しない。実施形態では、envの核酸配列は、レンチウイルスのエンベロープタンパク質をコードする。
【0176】
別の実施形態では、エンベロープタンパク質は、レンチウイルス由来のものではなく、異なるウイルスに由来する。生じる粒子は、シュードタイプ化粒子と称される。エンベロープの適切な選択により、実質的にあらゆる細胞に「感染」することができる。例えば、エンドサイトーシス区画を標的化するエンベロープタンパク質をコードするenv遺伝子を使用することができ、これらは、インフルエンザウイルス、VSV-G、アルファウイルス(セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス)、アレナウイルス(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)、フラビウイルス(ダニ媒介性脳炎ウイルス、デングウイルス、C型肝炎ウイルス、GBウイルス)、ラブドウイルス(水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス)、パラミクソウイルス(流行性耳下腺炎または麻疹)、およびオルトミクソウイルス(インフルエンザウイルス)などのものである。好ましく使用され得るその他のエンベロープとしては、MLV-E、MLV-A、およびGALVなどのモロニー白血病ウイルス由来のものが挙げられる。これら後者のエンベロープは、宿主細胞が初代細胞である場合に特に好ましい。その他のエンベロープタンパク質は、所望の宿主細胞に応じて選択され得る。例えば、ドーパミン受容体などの特定の受容体の標的化は、脳への送達のために使用され得る。別の標的は、血管内皮であり得る。これらの細胞は、フィロウイルスのエンベロープを使用して標的化され得る。例えば、転写後修飾によってGPとなるエボラのGP、およびGP2糖タンパク質である。別の実施形態では、シュードタイプ化エンベロープを有する異なるレンチウイルスカプシドを使用することができる(例えば、FIVまたはSHIV[米国特許第5,654,195号])。SHIVシュードタイプ化ベクターは、サルなどの動物モデルにおいて容易に使用することができる。
【0177】
本明細書中に詳述するように、レンチウイルスベクター系は、通常、gag遺伝子、pol遺伝子、もしくはrev遺伝子、またはそれらの機能的バリアントのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのヘルパープラスミドを含む。gag遺伝子、pol遺伝子、およびrev遺伝子、またはそれらの機能的バリアントのそれぞれが個々のプラスミド上に提供されてもよいし、あるいは1つまたは複数の遺伝子が一緒に同一のプラスミド上に提供されてもよい。一実施形態では、gag遺伝子、pol遺伝子、およびrev遺伝子は、同一のプラスミド上に提供される(例えば、
図2)。別の実施形態では、gag遺伝子およびpol遺伝子は第1のプラスミド上に提供され、rev遺伝子は第2のプラスミド上に提供される(例えば、
図3)。したがって、3ベクター系および4ベクター系の両方が、本明細書中の実施例セクションおよびその他の箇所に記載するようなレンチウイルスを製造するために使用され得る。治療ベクター、エンベローププラスミド、および少なくとも1つのヘルパープラスミドは、パッケージング細胞株中にトランスフェクトされる。パッケージング細胞株の非限定的な例は、293T/17 HEK細胞株である。治療ベクター、エンベローププラスミド、および少なくとも1つのヘルパープラスミドがパッケージング細胞株中にトランスフェクトされた時に、レンチウイルス粒子が最終的に生産される。
【0178】
別の態様では、レンチウイルス粒子を発現するためのレンチウイルスベクター系が開示される。系は、本明細書中に記載するようなレンチウイルスベクター;細胞に感染するために最適化されたエンベロープタンパク質を発現するためのエンベローププラスミド;ならびにgag、pol、およびrev遺伝子、またはこれらの機能的バリアントを発現するための少なくとも1つのヘルパープラスミドを含み、レンチウイルスベクター、エンベローププラスミド、および少なくとも1つのヘルパープラスミドがパッケージング細胞株にトランスフェクトされたときに、レンチウイルス粒子がパッケージング細胞株により産生され、レンチウイルス粒子は、ケモカイン受容体CCR5の産生を阻害することまたはHIV RNA配列を標的化することができる。
【0179】
別の態様では、および
図2に詳述されるように、本明細書中で治療ベクターと称されるレンチウイルスベクターは、以下のエレメントを含み得る:ハイブリッド5’長鎖末端反復(RSV/5’LTR)(配列番号5~6)、プサイ配列(RNAパッケージング部位)(配列番号7)、RRE(Rev応答エレメント)(配列番号8)、cPPT(ポリプリントラクト)(配列番号9)、H1プロモーター(配列番号10)、shFDPS(配列番号1、2、3、4)、CMV(配列番号19)、BTN3A3(R381H)-T2A-IL-2(まとめて配列番号55)、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号11)、および3’デルタLTR(配列番号12)。別の態様では、置換、欠失、付加、または変異による配列変化(sequence variation)が、本明細書中で言
及する配列を改変するために使用され得る。
【0180】
別の態様では、および本明細書に詳述されるように、ヘルパープラスミドは、以下のエレメントを含むように設計されている:CMV(CAG)エンハンサー(配列番号21);ニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター(配列番号13);ニワトリベータアクチンイントロン(配列番号22);HIV gag(配列番号14);HIV Pol(配列番号15);HIV Int(配列番号16);HIV RRE(配列番号8);HIV Rev(配列番号18);およびウサギベータグロビンポリA(配列番号23)。別の態様では、ヘルパープラスミドは、gag遺伝子およびpol遺伝子を発現するための第1のヘルパープラスミド、ならびにrev遺伝子を発現するための第2の別のプラスミドを含むように改変され得る。別の態様では、置換、欠失、付加、または変異による配列変化が、本明細書中で言及する配列を改変するために使用され得る。
【0181】
別の態様では、本明細書中に詳述するように、エンベローププラスミドは、左から右に以下のエレメントを含むように設計されている:RNAポリメラーゼIIプロモーター(CMV)(配列番号19)および水疱性口内炎ウイルスG糖タンパク質(VSV-G)(配列番号20)。別の態様では、置換、欠失、付加、または変異による配列変化が、本明細書中で言及する配列を改変するために使用され得る。
【0182】
別の態様では、レンチウイルスのパッケージングのために使用されるプラスミドは、類似のエレメントを用いて改変することができ、また、イントロン配列は、ベクター機能を失うことなく取り除くことが可能であり得る。例えば、以下のエレメントは、パッケージング系を構成するプラスミド中の類似のエレメントの代わりとなり得る:伸長因子-1(EF-1)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、およびユビキチンC(UbC)プロモーターは、CMVプロモーターまたはCAGプロモーターの代わりとなり得る。SV40ポリAおよびbGHポリAは、ウサギベータグロビンポリAの代わりとなり得る。ヘルパープラスミド中のHIV配列は、異なるHIVの株またはクレードから構築され得る。VSV-G糖タンパク質は、ネコ内因性ウイルス(RD114)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、狂犬病(FUG)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、A型インフルエンザ家禽ペストウイルス(influenza A fowl plague virus)(FPV)、ロスリバーアルファウイルス(RRV)、マウス白血病ウイルス10A1(MLV)、またはエボラウイルス(EboV)由来の膜糖タンパク質で置換することができる。
【0183】
なお、レンチウイルスパッケージング系は市販のものを入手でき(例えば、Lenti-vpak packaging kit、OriGene Technologies,Inc.、Rockville、MD)、また本明細書中に記載するように設計することもできる。さらに、レンチウイルスパッケージング系の態様を置換または改変して、レンチウイルス粒子の生産効率などのいくつもの関連因子を向上させることは当業者の技術的範囲内である。
【0184】
用量および剤形
本開示のベクターは、目的の遺伝子または配列の短期、中期、または長期の発現、ならびに本開示のベクターのエピソームの維持を可能とする。したがって、投薬レジメンは、処置されている状態および投与方法に基づいて変化し得る。
【0185】
一実施形態では、形質導入ベクターは、必要とする被験体に様々な用量で投与され得る。具体的には、被験体は、約106以上の感染用量(1標的細胞への形質導入に平均で1用量が必要)を投与され得る。より具体的には、被験体は、約107以上、約108以上、約109以上、または約1010以上の感染用量、あるいはこれらの値の間の任意の数の用量を投与され得る。形質導入ベクターの投薬の上限は、各疾患適応症について決定され、各個々の製品および製品ロットの毒性/安全性プロファイルに依存する。
【0186】
さらに、本開示のベクターは、1日に1回または2回、あるいは任意のその他の好適な期間で定期的に投与され得る。例えば、ベクターは、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、1カ月に1回、2カ月毎、3カ月毎、6カ月毎、9カ月毎、1年に1回、18カ月毎、2年毎、30カ月毎、または3年毎に、必要とする被験体に投与され得る。
【0187】
一実施形態では、本開示のベクターは、医薬組成物として投与される。実施形態では、本開示のベクターを含む医薬組成物は、多様な剤形に製剤化され得、これらの剤形としては、臨床適用のための経鼻、経肺、経口、局所、または非経口の剤形が挙げられるが、これらに限定されない。各剤形は、様々な可溶化剤、崩壊剤、界面活性剤、充填剤、増粘剤、結合剤、湿潤剤などの希釈剤、またはその他の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。ベクターを含む医薬組成物は、注射、ガス注入(insufflation)、注入、または皮内曝露用にも製剤化され得る。例えば、注射製剤は、好適なpHおよび張度の水性または非水性の溶液中に本開示のベクターを含み得る。
【0188】
本開示のベクターは、腫瘍部位中へのまたは感染部位における直接の注射を介して被験体に投与され得る。実施形態では、ベクターは、全身投与され得る。実施形態では、ベクターは、腫瘍または感染の部位のすぐ周囲の組織へのガイドされたカニューレ挿入を介して投与され得る。
【0189】
本開示のベクター組成物は、例えば、鼻腔内投与、口腔内投与、舌下投与、経口投与、直腸投与、眼投与、非経口(静脈内、皮内、筋肉内、皮下、腹腔内)投与、経肺投与、腟内投与、局所投与、局部投与、乱切後の局部投与、粘膜投与、エアロゾルを介して、アガロースまたはゼラチンなどの半固体媒体中で、あるいは口腔内または経鼻噴霧製剤を介してなど、任意の薬学的に許容される方法を使用して投与され得る。
【0190】
さらに、本開示のベクター組成物は、例えば、固体剤形、錠剤、丸剤、ロゼンジ、カプセル剤、液体分散物、ゲル剤、エアロゾル剤、肺エアロゾル剤、鼻エアロゾル剤、軟膏剤、クリーム剤、半固体剤形、液剤、乳剤、および懸濁剤などの任意の薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。さらに、組成物は、制御放出製剤、徐放製剤、即時放出性製剤、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。さらに、組成物は、経皮送達システムであり得る。
【0191】
実施形態では、ベクターを含む医薬組成物は、経口投与用の固体剤形として製剤化され得、固体剤形は、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、または丸剤であり得る。実施形態では、固体剤形は、例えば、炭酸カルシウム、デンプン、スクロース、ラクトース、微結晶性セルロース、またはゼラチンなどの1つまたは複数の賦形剤を含み得る。加えて、固体剤形は、賦形剤に加えて、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含み得る。実施形態では、経口剤形は、即時放出形態または調節放出形態であり得る。調節放出剤形としては、制御放出または持続放出、腸管での放出などが挙げられる。調節放出剤形において使用される賦形剤は、当業者に一般に公知である。
【0192】
さらなる実施形態では、ベクターを含む医薬組成物は、舌下剤形または口腔内剤形として製剤化され得る。そのような剤形は、舌下に投与される舌下錠または舌下溶液組成物、および頬と歯茎との間に置かれる口腔錠を含む。
【0193】
実施形態では、ベクターを含む医薬組成物は、経鼻剤形として製剤化され得る。そのような本発明の剤形としては、経鼻送達用の溶液組成物、懸濁物組成物、およびゲル組成物が挙げられる。
【0194】
実施形態では、ベクターを含む医薬組成物は、懸濁剤、乳剤、またはシロップ剤などの経口投与用の液体剤形として製剤化され得る。実施形態では、液体剤形は、水および液体パラフィンなどの一般に使用される単純な希釈剤に加えて、保湿剤、甘味剤、芳香剤、または防腐剤などの様々な賦形剤を含み得る。特定の実施形態では、ベクターを含む組成物は、小児患者への投与のために好適となるように製剤化され得る。
【0195】
実施形態では、医薬組成物は、滅菌水性液剤、懸濁剤、乳剤、非水性液剤、または坐剤などの非経口投与用剤形として製剤化され得る。実施形態では、液剤または懸濁剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用エステルを含み得る。
【0196】
医薬組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、投与の時間および様式、排泄速度、ならびに疾患の重篤度に応じて変化し得る。
【0197】
実施形態では、がんの処置は、針を使用した腫瘍中への本開示のベクター構築物のガイド下の直接注射、または血管内カニューレ挿入によって達成される。実施形態では、本開示のベクターは、静脈もしくは動脈へのカニューレ挿入または注射、皮内送達、筋肉内送達、または疾患部位近くの排液臓器(draining organ)中への注射によって、脳脊髄液、血液、またはリンパ循環中に投与される。
【0198】
以下の実施例は、本発明の実例を挙げるために与えたものである。しかしながら、本発明は、これらの実施例に記載する特定の条件または詳細に限定されないことを理解するべきである。本明細書中で参照する全ての出版物は、参照することにより具体的に組み込まれる。
【実施例0199】
(実施例1:レンチウイルスベクター系の開発)
図2および3に要約するように、レンチウイルスベクター系を開発した(環状形態を示す)。治療ベクター、エンベローププラスミド、およびヘルパープラスミドのトランスフェクション後に、293T/17 HEK細胞(American Type Culture Collection、Manassas、VAより購入)中でレンチウイルス粒子を生産した。293T/17 HEK細胞のトランスフェクションにより、機能的なウイルス粒子が生産された。このトランスフェクションには、プラスミドDNAの取込み効率を増加させるために試薬ポリ(エチレンイミン)(PEI)を用いた。最初に、血清を含まない培養培地中にプラスミドおよびDNAを3:1の比(DNAに対するPEIの質量比)で別々に加えた。2~3日後、細胞培地を回収し、高速遠心分離および/または濾過とその後の陰イオン交換クロマトグラフィーによってレンチウイルス粒子を精製した。レンチウイルス粒子の濃度は、形質導入単位/ml(TU/ml)で表すことができる。TUの決定は、培養液中のHIV p24レベルの測定(p24タンパク質はレンチウイルス粒子中に組み込まれる)、定量PCRによる細胞あたりのウイルスDNAコピー数の測定、または細胞の感染および光の使用(ベクターがルシフェラーゼまたは蛍光タンパク質マーカーをコードする場合)によって達成した。
【0200】
上記の通り、3ベクター系(すなわち、2ベクターのレンチウイルスパッケージング系)をレンチウイルス粒子の生産用に設計した。3ベクター系の概略図を
図2に示す。
図2に関して簡潔に述べれば、一番上のベクターはヘルパープラスミドであり、これはこの場合、Revを含む。
図2の中央に見られるベクターはエンベローププラスミドである。一番下のベクターは、本明細書中に記載する治療ベクターである。
【0201】
より具体的に
図2に関して、ヘルパープラスRevプラスミドは、CMV(CAG)エンハンサー(配列番号21)、ニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター(配列番号13)、ニワトリベータアクチンイントロン(配列番号22)、HIV gag(配列番号14)、HIV Pol(配列番号15)、HIV Int(配列番号16)、HIV RRE(配列番号8)、HIV Rev(配列番号18)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号23)を含む。
【0202】
エンベローププラスミドは、CMVプロモーター(配列番号19)、ベータグロビンイントロン(配列番号24)、VSV-G(配列番号20)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号25)を含む。
【0203】
ヘルパー(プラスRev)プラスミドおよびエンベローププラスミドを含む2ベクターレンチウイルスパッケージング系の合成
【0204】
材料および方法:
ヘルパープラスミドの構築:Gag、Pol、およびインテグラーゼ遺伝子を含有するpNL4-3 HIVプラスミド(NIH Aids Reagent Program)由来のDNA断片の初期PCR増幅によってヘルパープラスミドを構築した。pCDNA3.1プラスミド(Invitrogen)中の同じ部位に挿入するために使用され得るEcoRIおよびNotI制限部位を有する断片を増幅するためのプライマーを設計した。フォワードプライマーは(5’-TAAGCAGAATTC ATGAATTTGCCAGGAAGAT-3’)(配列番号26)であり、リバースプライマーは(5’-CCATACAATGAATGGACACTAGGCGGCCGCACGAAT-3’)(配列番号27)であった。
【0205】
Gag、Pol、インテグラーゼの断片の配列は以下の通りであった:
【化3】
【化4】
【0206】
次に、XbaIおよびXmaI隣接制限部位と共にRev、RRE、およびウサギベータグロビンポリAの配列を含有するDNA断片は、Eurofins Genomicsによって合成された。次いで、XbaIおよびXmaI制限部位においてDNA断片をプラスミドに挿入した。DNA配列は以下の通りであった:
【化5】
【0207】
最後に、pCDNA3.1のCMVプロモーターをCAGエンハンサー/プロモータープラスニワトリベータアクチンイントロン配列で置換した。MluIおよびEcoRI隣接制限部位と共にCAGエンハンサー/プロモーター/イントロン配列を含有するDNA断片は、Eurofins Genomicsによって合成された。次いで、MluIおよびEcoRI制限部位においてDNA断片をプラスミドに挿入した。DNA配列は以下の通りであった:
【化6】
【0208】
VSV-Gエンベローププラスミドの構築:
水疱性口内炎インディアナウイルス糖タンパク質(VSV-G)配列は、隣接EcoRI制限部位を用いてEurofins Genomicsによって合成された。次いで、EcoRI制限部位においてDNA断片をpCDNA3.1プラスミド(Invitrogen)に挿入し、CMV特異的プライマーを使用するシークエンシングによって正しい配向であることを決定した。DNA配列は以下の通りであった:
【化7】
【0209】
本明細書中に記載する方法および材料を使用して、4ベクター系(すなわち、3ベクターレンチウイルスパッケージング系)も設計し、生産した。4ベクター系の概略図を
図3に示す。
図3に関して簡潔に述べれば、一番上のベクターはヘルパープラスミドであり、これはこの場合、Revを含まない。上から2つ目のベクターは別個のRevプラスミドである。下から2つ目のベクターはエンベローププラスミドである。一番下のベクターは、先に記載された治療ベクターである。
【0210】
一部
図3に関して、ヘルパープラスミドは、CMV(CAG)エンハンサー(配列番号21)、ニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター(配列番号13)、ニワトリベータアクチンイントロン(配列番号22)、HIV gag(配列番号14)、HIV Pol(配列番号15)、HIV Int(配列番号16)、HIV RRE(配列番号8)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号23)を含む。
【0211】
Revプラスミドは、RSVプロモーターおよびHIV Rev(配列番号33)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号23)を含む。
【0212】
エンベローププラスミドは、CMVプロモーター(配列番号19)、ベータグロビンイントロン(配列番号24)、VSV-G(配列番号20)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号23)を含む。
【0213】
ヘルパープラスミド、Revプラスミド、およびエンベローププラスミドを含む3ベクターレンチウイルスパッケージング系の合成
材料および方法:
Revを含まないヘルパープラスミドの構築:
RREおよびウサギベータグロビンポリA配列を含有するDNA断片を挿入することによって、Revを含まないヘルパープラスミドを構築した。この配列は、隣接XbaIおよびXmaI制限部位を用いてEurofins Genomicsによって合成された。次いで、XbaIおよびXmaI制限部位においてRRE/ウサギポリAベータグロビン配列をヘルパープラスミドに挿入した。DNA配列は以下の通りである:
【化8】
【化9】
【0214】
Revプラスミドの構築:
RSVプロモーターおよびHIV Rev配列は、隣接MfeIおよびXbaI制限部位を用いて、Eurofins Genomicsによって単一のDNA断片として合成された。次いで、CMVプロモーターがRSVプロモーターで置換されたMfeIおよびXbaI制限部位において、DNA断片をpCDNA3.1プラスミド(Invitrogen)に挿入した。DNA配列は以下の通りであった:
【化10】
【化11】
【0215】
2-ベクターパッケージング系および3-ベクターパッケージング系のためのプラスミドは、類似のエレメントを用いて改変することができ、また、イントロン配列は、ベクター機能を失うことなく取り除くことが可能であった。例えば、以下のエレメントは、2-ベクターパッケージング系および3-ベクターパッケージング系中の類似のエレメントの代わりとなり得た:
【0216】
プロモーター:伸長因子-1(EF-1)(配列番号34)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)(配列番号35)、およびユビキチンC(UbC)(配列番号36)は、CMVプロモーター(配列番号19)またはニワトリベータアクチン(CAG)プロモーター(配列番号13)の代わりとなり得る。これらの配列を、付加、置換、欠失、または変異によってさらに変化させることもできる。
【0217】
ポリA配列:SV40ポリA(配列番号37)およびbGHポリA(配列番号38)は、ウサギベータグロビンポリA(配列番号23)の代わりとなり得る。これらの配列を、付加、置換、欠失、または変異によってさらに変化させることもできる。
【0218】
HIV Gag、Pol、およびインテグラーゼ配列:ヘルパープラスミド中のHIV配列は、異なるHIVの株またはクレードから構築することができる。例えば、Bal株由来のHIV Gag(配列番号14)、HIV Pol(配列番号15)、およびHIV Int(配列番号16)を、本明細書中に概説したように、ヘルパー/ヘルパープラスRevプラスミド中に含有されるgag、pol、およびint配列と交換することができる。これらの配列を、付加、置換、欠失、または変異によってさらに変化させることもできる。
【0219】
エンベロープ:VSV-G糖タンパク質は、ネコ内因性ウイルス(RD114)(配列番号39)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)(配列番号40)、狂犬病(FUG)(配列番号41)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)(配列番号42)、A型インフルエンザ家禽ペストウイルス(FPV)(配列番号43)、ロスリバーアルファウイルス(RRV)(配列番号44)、マウス白血病ウイルス10A1(MLV)(配列番号45)、またはエボラウイルス(EboV)(配列番号46)由来の膜糖タンパク質と置換することができる。これらのエンベロープの配列は、本明細書中の配列部分として特定される。さらに、これらの配列を、付加、置換、欠失、または変異によってさらに変化させることもできる。
【0220】
要約すると、部分的に、3ベクター系と4ベクター系とを以下の通りに比較および対比することができる。3ベクターレンチウイルスベクター系は以下を含有する:1.ヘルパープラスミド:HIV Gag、Pol、インテグラーゼ、およびRev/Tat;2.エンベローププラスミド:VSV-G/FUGエンベロープ;および3.治療ベクター:RSV 5’LTR、プサイパッケージングシグナル、RRE、cPPT、H1、shFDPS、CMV、BTN3A3(R381H)T2A IL-2、WPRE、および3’δ LTR。4ベクターレンチウイルスベクター系は以下を含有する:1.ヘルパープラスミド:HIV Gag、Pol、およびインテグラーゼ;2.Revプラスミド:Rev;3.エンベローププラスミド:VSV-G/FUGエンベロープ;および4.治療ベクター:RSV 5’LTR、プサイパッケージングシグナル、RRE、cPPT、H1、shFDPS、CMV、BTN3A3(R381H)T2A IL-2、WPRE、および3’δ LTR。上記エレメントと対応する配列は、本明細書中の配列表の部分として特定される。
【0221】
(実施例2)
FDPSを阻害するレンチウイルスベクターの開発
この実施例の目的は、本明細書中でLV-shFDPSとも称されるFDPS阻害レンチウイルスベクターを開発することであった。
【0222】
阻害性RNAの設計:ホモサピエンスファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)mRNAの配列(NM_002004.3)を使用して、ヒト細胞においてFDPSレベルをノックダウンするための潜在的なsiRNAまたはshRNA候補を検索した。Broad Instituteが主催するGPP Web Portal(http://portals.broadinstitute.org/gpp/public/)またはThermo ScientificのBLOCK-iT RNAi Designer(https://rnaidesigner.thermofisher.com/rnaiexpress/)などのsiRNAまたはshRNA設計プログラムによって潜在的なRNA干渉配列を同定した。shRNA発現を調節するために、H1(配列番号10)、U6(配列番号47)または7SK(配列番号48)などのRNAポリメラーゼIIIプロモーターのすぐ3’側において、個々の選択したshRNA配列をレンチウイルスベクターに挿入した。これらのレンチウイルスshRNA構築物を使用して細胞への形質導入を行い、特定のmRNAレベルの変化を測定した。mRNAレベルの低下のために最も強力なshRNAをマイクロRNA骨格内に個々に埋め込むことで、EF1アルファまたはCMV RNAポリメラーゼIIプロモーターのいずれかによる発現を可能とした。マイクロRNA骨格はmirbase.orgから選択した。RNA配列を合成siRNAオリゴヌクレオチドとしても合成し、レンチウイルスベクターを使用せずに細胞内に直接導入した。
【0223】
レンチウイルスベクターの構築:FDPS shRNAのため、BamHIおよびEcoRI制限部位を含有するオリゴヌクレオチド配列は、Eurofins Genomicsによって合成された。重複するセンスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド配列を混合し、70℃から室温へと冷却しながらアニーリングさせた。37℃で1時間、制限酵素BamHIおよびEcoRIを用いてレンチウイルスベクターを消化した。消化したレンチウイルスベクターをアガロースゲル電気泳動により精製し、Thermo ScientificのDNAゲル抽出キットを使用してゲルから抽出した。DNA濃度を決定し、ベクターをオリゴに混合し(3:1の比)、アニーリングおよびライゲートさせた。ライゲーション反応は、室温で30分間、T4 DNAリガーゼを用いて行った。2.5マイクロリットルのライゲーション混合物を25マイクロリットルのSTBL3コンピテント細菌細胞に加えた。42℃での熱ショック後に形質転換を達成した。アンピシリンを含有する寒天プレート上に細菌細胞を広げ、薬物抵抗性コロニー(アンピシリン抵抗性プラスミドの存在を指し示す)を回収し、LB培地中で増殖させた。オリゴ配列の挿入を確認するために、Thermo ScientificのDNAミニプレップキットを用いて、回収した細菌培養物からプラスミドDNAを抽出した。レンチウイルスベクター中へのshRNA配列の挿入は、shRNAの発現を調節するために使用されるプロモーター用の特異的プライマーを使用してDNAシークエンシングによって検証した。以下の標的配列を使用して、FDPSをノックダウンするための例示的なshRNA配列を決定した:GTCCTGGAGTACAATGCCATT(FDPS標的配列#1;配列番号49);
GTCCTGGAGTACAATGCCATTCTCGAGAATGGCATTGTACTCCAGGACTTTTT
(FDPS shRNA配列#1;配列番号1);
GCAGGATTTCGTTCAGCACTT
(FDPS標的配列#2;配列番号50);
GCAGGATTTCGTTCAGCACTTCTCGAGAAGTGCTGAACGAAATCCTGCTTTTT(FDPS shRNA配列#2;配列番号2);
GCCATGTACATGGCAGGAATT
(FDPS標的配列#3;配列番号51);
GCCATGTACATGGCAGGAATTCTCGAGAATTCCTGCCATGTACATGGCTTTTT
(FDPS shRNA配列#3;配列番号3);
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGT
(FDPS標的配列#4;配列番号52);および
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTCTCGAGACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT
(FDPS shRNA配列#4;配列番号4)。
【0224】
前記のいずれも限定することなく、
図2~4に詳述するように治療ベクター(本明細書中でレンチウイルスプラスミドとも称される)を構築することができる。引き続き
図4を参照すると、
ベクター1は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;CMV配列;BTN3A1配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター2は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;CMV配列;BTN3A3配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター3は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;CMV配列;BTN3A3(R381H)配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター4は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;H1配列;shFDPS配列;CMV配列;BTN3A1配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター5は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;H1配列;shFDPS配列;CMV配列;BTN3A3配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター6は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;H1配列;shFDPS配列;CMV配列;BTN3A3(R381H)配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター7は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;H1配列;shFDPS配列;AFP配列;BTN3A3(R381H)配列、WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター8は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;H1配列;shFDPS配列;CMV配列;IL-2配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター9は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;H1配列;shFDPS配列;CMV配列;IL-15配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター10は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;H1配列;shFDPS配列;CMV配列;IL-18配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
ベクター11は、左から右に、5’LTR配列;プサイ配列;RRE配列;H1配列;shFDPS配列;CMV配列;BTN3A3(R381H)配列;T2A配列;IL-2配列;WPRE配列;および3’LTR配列を含む。
【0225】
(実施例3)
PC3前立腺癌細胞におけるBTN3A3(R381H)またはBTN3A3(WT)の発現
この実施例は、
図5に示すように、レンチウイルス(LV)発現BTN3A3(R381H)またはBTN3A3(WT)によるPC3細胞におけるBTN3A3(R381H)またはBTN3A3(WT)の発現が、GD T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0226】
PC3細胞にLVベクター、LV-BTN3A3(R381H)、またはLV-BTN3A3(WT)のいずれかを形質導入した。形質導入の3日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたPC3細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞およびIL-2と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸およびIL-2で11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で選択した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸なしの場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LVベクターで0.37%、BTN3A3(R381H)で26.7%、LV-BTN3A3(WT)で0.44%であった。ゾレドロン酸ありの場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LVベクターで8.91%、BTN3A3(R381H)で35.2%、LV-BTN3A3(WT)で8.76%であった。
【0227】
(実施例4)
shRNA #4によるHepG2肝臓癌細胞におけるBTN3A3(R381H)の発現およびFDPSのノックダウン
この実施例は、
図6に示すように、レンチウイルス(LV)発現BTN3A3(R381H)およびFDPS shRNA #4によるBTN3A3(R381H)の発現およびFDPS細胞のノックダウンが、GD T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0228】
HepG2細胞にLVベクター、LV-BTN3A3(R381H)、またはLV-shFDPS-BTN3A3(R381H)を形質導入した。形質導入の3日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたHepG2細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞およびIL-2と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸およびIL-2で11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で選択した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2
T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸なしの場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LVベクターで0.6%、BTN3A3(R381H)で9.5%、LV-shFDPS-BTN3A3(R381H)と組み合わせて13.2%であった。ゾレドロン酸ありの場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LVベクターで7.2%、BTN3A3(R381H)で17.8%、LV-shFDPS-BTN3A3(R381H)と組み合わせて30.1%であった。
【0229】
(実施例5)
shRNA #4によるPC3前立腺癌細胞におけるBTN3A3(R381H)の発現およびFDPSのノックダウン
【0230】
この実施例は、
図7に示すように、レンチウイルス(LV)発現BTN3A3(R381H)およびFDPS shRNA #4によるBTN3A3(R381H)の発現およびFDPS細胞のノックダウンが、GD T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
PC3細胞にLVベクター、LV-BTN3A3(R381H)、またはLV-shFDPS-BTN3A3(R381H)を形質導入した。形質導入の3日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたPC3細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×10
5個のPBMC細胞およびIL-2と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸およびIL-2で11日間事前刺激してVγ9Vδ2
T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で選択した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸なしの場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LVベクターで0.1%、BTN3A3(R381H)で21.1%、LV-shFDPS-BTN3A3(R381H)と組み合わせて18.2%であった。ゾレドロン酸ありの場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LVベクターで13.6%、BTN3A3(R381H)で25.5%、LV-shFDPS-BTN3A3(R381H)と組み合わせて39.6%であった。
【0231】
(実施例6)
shRNA #4によるHepG2肝臓癌細胞におけるIL-2の発現およびFDPSのノックダウン
この実施例は、
図8に示すように、レンチウイルス(LV)発現IL-2およびFDPS shRNA #4によるIL-2の発現およびFDPS細胞のノックダウンが、GD
T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0232】
HepG2細胞にLV-shFDPSまたはLV-shFDPS-IL-2を形質導入した。形質導入の3日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたHepG2細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞、およびIL-2ありまたはなしで共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸およびIL-2で11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で選択した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸のみを用いた場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2
T細胞のパーセントは、LV-shFDPSで7.5%、LV-shFDPS-IL-2で20.1%であった。ゾレドロン酸およびIL-2を用いた場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LV-shFDPSで27.8%、LV-shFDPS-IL-2で24.7%であった。
【0233】
(実施例7)
shRNA #4によるPC3癌細胞におけるIL-2の発現およびFDPSのノックダウン
この実施例は、
図9に示すように、レンチウイルス(LV)発現IL-2およびFDPS shRNA #4によるIL-2の発現およびFDPS細胞のノックダウンが、GD
T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0234】
PC3細胞にLV-shFDPSまたはLV-shFDPS-IL-2を形質導入した。形質導入の3日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたPC3細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞、およびIL-2ありまたはなしで共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸およびIL-2で11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で選択した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸のみを用いた場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LV-shFDPSで24.6%、LV-shFDPS-IL-2で46.8%であった。ゾレドロン酸およびIL-2を用いた場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LV-shFDPSで48.6%、LV-shFDPS-IL-2で41%であった。
【0235】
(実施例8)
shRNA #4によるPC3癌細胞におけるIL-15の発現およびFDPSのノックダウン
この実施例は、
図10に示すように、レンチウイルス(LV)発現IL-15およびFDPS shRNA #4によるIL-15の発現およびFDPS細胞のノックダウンが、GD T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0236】
PC3細胞にLVベクター、LV-shFDPS、またはLV-shFDPS-IL-15を形質導入した。形質導入の3日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたPC3細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞、およびIL-2ありまたはなしで共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸およびIL-2で11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で選択した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸のみを用いた場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LVベクターで10%、LV-shFDPSで13%、LV-shFDPS-IL-15で14.6%であった。ゾレドロン酸およびIL-2を用いた場合、TNF-αを発現するVγ9Vδ2 T細胞のパーセントは、LVベクターで14.5%、LV-shFDPSで21.7%、LV-shFDPS-IL-15で21%であった。
【0237】
(実施例9)
LV-BTN3A3(R381H)およびLV-shFDPS-BTN3A3(R381H)によるPC3癌細胞およびHepG2癌細胞におけるBTN3A3の発現
この実施例は、
図11に示すように、レンチウイルス(LV)発現BTN3A3(R381H)が単独でおよびshFDPSと共に、PC3癌細胞およびHepG2癌細胞中でBTN3A3発現を増加させることを説明する。
【0238】
図11Aおよび
図11Bに示すように、PC3前立腺癌細胞またはHepG2肝臓癌細胞にLVベクターまたはLV-BTN3A3(R381H)を3日間形質導入した。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗BTN3A3(CD277)抗体を使用してBTN3A3を染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。PC3細胞およびHepG2細胞においてそれぞれ6から21および3から10への平均蛍光強度(MFI)の増加があった。
図11Cに示すように、HepG2肝臓癌細胞にLVベクターまたはLV-shFDPS-BTN3A3(R381H)を3日間形質導入した。4から18への平均蛍光強度(MFI)の増加があった。
【0239】
(実施例10)
Lv-shFDPS形質導入細胞およびゾレドロン酸による細胞傷害性Vγ2Vδ2細胞の刺激
この実施例は、
図12に示すように、細胞傷害性Vγ2Vδ2細胞の活性化が、shFDPSを発現するレンチウイルス(LV-shFDPS)およびゾレドロン酸での処理により増加することを説明する。
【0240】
HepG2肝臓癌細胞にLv-shFDPS、Lv-FDPS-IL-15(shRNAFDPSおよびヒトサイトカインインターロイキン15の両方を発現する)またはLv対照を形質導入し、72時間培養した。(1)Lv-shFDPSを形質導入された細胞、(2)Lv-FDPS-IL-15を形質導入された細胞、および(3)Lv対照を形質導入されたHepG2細胞にゾレドロン酸(1μM)を加えた。処理した細胞を24時間培養した。Lv-shFDPS形質導入細胞、Lv-FDPS-IL-15形質導入細胞、およびLv対照形質導入細胞を、Vγ9Vδ2細胞を富化したPBMCおよびタンパク質輸送インヒビター(BD GolgiStop)と4時間共培養した。4時間の刺激後、細胞を回収し、Vδ2フィコエリトリン(PE)およびTNFαアロフィコシアニン(APC)で標識し、フローサイトメトリーによって標識された細胞を分析した。
【0241】
1μMのゾレドロン酸の存在下での応答性Vγ9Vδ2 T細胞(細胞内サイトカイン染色により測定されるTNF-αを発現する)の頻度は、Lv対照におけるよりもLv-FDPSにおいて高く、Lv-FDPS-IL-15によりさらに増加することを結果は示した。100単位/mLのインターロイキン-2(IL-2)の添加は、Lv対照と比較してLv-FDPSを形質導入されたHepG2によるVγ9Vδ2 T細胞の活性化を増加させたが、IL-2はIL-15の代わりとなり、Vγ9Vδ2 T細胞の活性化についてLv-FDPSで処理されたHepG2とLv-FDPS-IL-15で処理されたHepG2との間の差異を低減させた。
【0242】
(実施例11)
マウスにおけるLv-shFDPS対Lv対照形質導入PC3腫瘍の成長曲線
この実施例は、
図13に示すように、マウスにおけるヒト前立腺がん(PC3)細胞の腫瘍成長速度がLv-shFDPSでの処置後に遅くなることを説明する。
【0243】
NSG(商標)マウスに、Matrigel(登録商標)およびLv-shFDPSまたはLv対照のうちの1つを形質導入した3百万個のPC3細胞を皮下注射した。腫瘍をモニターし、週に2回測定した。キャリパーを用いて各腫瘍の垂直直径を測定することにより腫瘍サイズを決定した。以下の式:d2×(D/2)(式中、d=最短の直径、D=最長の直径)を用いて腫瘍体積(mm3)を算出した。
【0244】
Lv-shFDPSでの処理および/または形質導入をされた異種移植PC3腫瘍は、Lv対照での処理および/または形質導入をされた異種移植PC3腫瘍の成長と比較してより遅い成長を示した。例えば、Lv対照異種移植PC3腫瘍が300mm3まで成長するには21日を要したが、Lv-shFDPS異種移植PC3腫瘍が300mm3まで成長するには30日を要した。
【0245】
(実施例12)
Vγ9Vδ2 T細胞および/またはゾレドロン酸ありまたはなしで処理したときのLv-FDPSまたはLv対照形質導入PC3腫瘍を異種移植したマウスの腫瘍成長および生存期間
この実施例は、Lv-shFDPSを形質導入された後にVγ9Vδ2 T細胞で処理された異種移植PC3腫瘍の処理は、ゾレドロン酸処理ありまたはなしで、腫瘍成長を遅くし、生存期間を増加させることを説明する。
【0246】
NSG(商標)マウスに、Matrigel(登録商標)およびLv-shFDPS(
図14および
図15においてFDPSノックダウンまたは「FDPS KD」とも称する)またはLv対照(
図14および
図15において「Lv」または「対照」とも称する)のうちの1つを形質導入した3百万個のPC3細胞を右脇腹に皮下注射した。腫瘍をモニターし、腫瘍サイズが約300mm
3に達するまで測定した。キャリパーを用いて各腫瘍の垂直直径を測定することにより腫瘍サイズを決定した。以下の式:d
2×(D/2)(式中、d=最短の直径、D=最長の直径)を用いて腫瘍体積(mm
3)を算出した。
【0247】
結果として生じた腫瘍が300mm3のサイズに達したときに、マウスを無作為化し、8つの群にグループ化した:Lv-shFDPS形質導入マウスの4つの群およびLv対照形質導入マウスの4つの群。Lv-shFDPS形質導入マウスおよびLv対照形質導入マウスのそれぞれからの1つの群を4週にわたり週に1回のPBMCの腹腔内注射で処置した。Lv-shFDPS形質導入マウスおよびLv対照形質導入マウスのそれぞれからの1つの群を100μg/kgのゾレドロン酸で処置した。Lv-shFDPS形質導入マウスおよびLv対照形質導入マウスのそれぞれからの1つの群をPBMCとゾレドロン酸と組み合わせて処置した。Lv-shFDPS形質導入マウスおよびLv対照形質導入マウスのそれぞれからの1つの群を4週にわたり週に1回のPBSの腹腔内注射で処置した(対照)。マウスの生存期間を、95日より短い期間または腫瘍サイズが2000mm3に達したときに観察した。試験の終わりに腫瘍を切除して観察した。
【0248】
図14に示すように、カプラン・マイヤー生存曲線は、Lv対照PC3異種移植(スクランブル)マウスと比較してLv-shFDPS PC3異種移植マウスにより達成された有意な生存上の利点を示した。PBMC(その多くがVγ9Vδ2細胞であった)で処置したLv-shFDPS異種移植マウスの生存率は、PBMCで処置しなかったLv-shFDPS異種移植マウスの生存率より高かった。PBMCでのLv対照PC3異種移植マウスの処置は生存期間に実質的に影響しなかった。
【0249】
図15に示すように、Lv-shFDPS異種移植PC3腫瘍の肉眼的観察は、Lv対照異種移植PC3腫瘍の腫瘍体積と比較してより小さい腫瘍体積を示した。PBMC(その多くがVγ9Vδ2細胞であった)で処置したLv-shFDPS異種移植PC3腫瘍の腫瘍体積は、PBMCで処置しなかったLv-shFDPS PC3腫瘍の腫瘍体積と比較して大きく減少した。PBMCで処置したまたは処置しなかったLv対照異種移植マウスの間で有意差は観察されず、腫瘍が2000mm
3のサイズに達したときにこれらの群の構成個体(constituent)を屠殺した。100μg/kgのゾレドロン酸でのLv-
shFDPS形質導入マウスおよびLv対照形質導入マウスの処置は、腫瘍サイズおよび生存期間のいずれに対しても明らかな効果を示さなかった。
【0250】
図16に示すように、Lv-shFDPS異種移植PC3腫瘍の外観の肉眼的観察は、PBMCで処置した腫瘍の体積は、PBMCで処置しなかったLv-shFDPS PC3腫瘍の腫瘍体積と比較して大きく減少することを示した。PBMCで処置した一部のLv-shFDPS PC3腫瘍は測定不可能な腫瘍を示した。
【0251】
(実施例13)
FDPS、GGPS1、およびIDI1を阻害するレンチウイルスベクターの開発
この実施例は、
図17に示すように、FDPS、GGPS1、およびIDI1を阻害するレンチウイルスベクターの開発を説明する。
【0252】
shRNA配列のクローニング:Thermo ScientificのBLOCK-iT RNAi Designer(https:rnaidesigner.thermofisher.com/rnaiexpress/)のBroad instituteからのshRNA設計プログラム(http://portals.broadinstitute.org/gpp/public/seq/search)を用いて潜在的なRNA干渉配列を同定した。BamHIおよびEcoRI制限部位を含有する短鎖ヘアピンオリゴヌクレオチド配列またはBsrGIおよびEcoRI制限部位を含有するマイクロRNA配列はEurofins Genomicsにより合成された。70℃でインキュベートした後、室温で1時間冷却することによりオリゴヌクレオチド配列をアニールさせた。並行して、制限酵素BamHIおよびEcoRIまたはBsrGIおよびEcoRIを37℃で1時間用いてレンチウイルスベクターを消化した。消化したレンチウイルスベクターをアガロースゲル電気泳動により精製し、DNAゲル抽出キット(Thermo Scientific)を使用してゲルから抽出した。それぞれについてDNA濃度を決定し、50ngのベクターを2マイクロリットルのアニールしたオリゴに加えた。T4 DNAリガーゼを用いて室温で30分間ライゲーション反応を行った。2.5マイクロリットルのライゲーション混合物を25マイクロリットルのStbI3コンピテント細菌細胞に加えた。42℃での熱ショックステップを用いて形質転換を行った。アンピシリンを含有する寒天プレート上に細菌細胞を画線し、選択したコロニーをLB培地中で増やした。オリゴ配列の挿入を確認するために、DNAミニプレップキット(Thermo
Scientific)を用いて、回収した細菌培養物からプラスミドDNAを抽出した。レンチウイルスベクター中へのshRNA配列の挿入は、H1またはEF-1プライマーを使用してDNAシークエンシングによって検証した。正しいshRNA配列を含有するレンチウイルスベクターを使用して、mRNAをノックダウンする能力を試験するためにレンチウイルス粒子をパッケージングした。細胞にレンチウイルス粒子を形質導入し、3日後に回収した。タンパク質およびmRNAの両方を分析した。
【0253】
FDPS shRNA配列の同定。Homo sapiensファルネシル二リン酸合成酵素(FDPS)mRNAの配列(NM_002004.3)を使用して、ヒト細胞においてFDPSレベルを低減させるための潜在的なshRNA候補を検索した。上記で議論したようなFDPS shRNA配列#1~4に加えて、FDPSをノックダウンするための以下の例示的なshRNAおよびマイクロRNA配列を決定した:
ACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCCTCGAGGCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTTTTTT
(FDPS shRNA配列#4A;配列番号64);
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTGAGCTCACTTTCTCAGCCTCCTTCTG
(FPDS shRNA配列#4R;配列番号65);
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTTTACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT
(FDPS shRNA配列#4TT;配列番号66);
GCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCTTTTT
(FDPS shRNA配列#4L;配列番号67);
AAGGTATATTGCTGTTGACAGTGAGCGACACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCGTGAAGCCACAGATGGCAGAAGGAGGCTGAGAAAGTGCTGCCTACTGCCTCGGACTTCAAGGGGCT
(FDPS miR30配列#1;配列番号68);
AAGGTATATTGCTGTTGACAGTGAGCGACACTTTCTCAGCCTCCTTCTGCGTGAAGCCACAGATGGCAGAAGGGCTGAGAAAGTGCTGCCTACTGCCTCGGACTTCAAGGGGCT
(FDPS miR30配列#3;配列番号69)。
【0254】
GGPS1 shRNA配列の同定。Homo sapiensゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素(GGPS1)mRNAの配列(NM_001037277.1)を使用して、ヒト細胞においてGGPS1を低減させるための潜在的なshRNA候補を検索した。以下の標的配列を使用して、GGPS1をノックダウンするための例示的なshRNA配列を決定した:
GCTTGAAGCTAAAGCCTATAA
(GGPS1標的配列#1;配列番号73);
GCTTGAAGCTAAAGCCTATAACTCGAGTTATAGGCTTTAGCTTCAAGCTTTTT
(GGPS1 shRNA配列#1;配列番号70);
GTACATTATCTTGAGGATGTA
(GGPS1標的配列#2;配列番号74);
GTACATTATCTTGAGGATGTACTCGAGTACATCCTCAAGATAATGTACTTTTT
(GGPS1 shRNA配列#2;配列番号71);
CCTGAGCTAGTAGCCTTAGTA
(GGPS1標的配列#3;配列番号75);および
CCTGAGCTAGTAGCCTTAGTACTCGAGTACTAAGGCTACTAGCTCAGGTTTTT
(GGPS1 shRNA配列#3;配列番号72)。
【0255】
IDI1 shRNA配列の同定:Homo sapiensイソペンテニル二リン酸デルタ-イソメラーゼ1(IDI1)mRNAの配列(NM_004508.3)を使用して、ヒト細胞においてIDI1レベルを低減させるための潜在的なshRNA候補を検索した。以下の標的配列を使用して、IDI1をノックダウンするための例示的なshRNA配列を決定した:
GCCAGTGGTGAAATTAAGATA
(IDI1標的配列;配列番号77);および
GCCAGTGGTGAAATTAAGATACTCGAGTATCTTAATTTCACCACTGGCTTTTT
(IDI1 shRNA配列;配列番号76)。
【0256】
(実施例14)
shFDPSを発現するレンチウイルスを形質導入されたHepG2肝細胞癌細胞におけるFDPS RNAおよびタンパク質の発現
この実施例は、HepG2細胞におけるshFDPSによるFDPS RNAおよびタンパク質の発現の低減を説明する。
【0257】
図18は、FDPSタンパク質発現がshFDPSにより低減することを示す。HepG2細胞を、shConまたは2つの異なるFDPS shRNA配列、LV-shFDPS #1(配列番号1)もしくはLV-shFDPS #4(配列番号4)のいずれかを含有するレンチウイルスベクターに5MOIで感染させた。48時間後、1μMのゾレドロン酸(Zol)ありまたはなしで細胞を処理した。72時間後、細胞を溶解し、抗FDPSおよびタンパク質ローディングコントロールとして抗アクチン抗体を使用してイムノブロットを行った。イムノブロットバンドのデンシトメトリーを定量し、LV-sh対照を1(100%)に設定した。FDPSタンパク質発現の62%(LV-shFDPS
#1(配列番号1))、48%(LV-shFDPS #1+Zol(配列番号1))、44%(LV-shFDPS #4(配列番号4))、および32%(LV-shFDPS #4+Zol(配列番号4))の低減があった。
【0258】
(実施例15)
shFDPSヘアピンループのバリエーションを発現するレンチウイルスを形質導入されたPC3前立腺癌細胞におけるFDPSタンパク質の発現
この実施例は、shFDPSヘアピンループのバリエーション;A(アンチセンス-ループ-センス)、R(センス-反転ループ-アンチセンス)、TT(センス-TT-アンチセンス)、およびL(センス-アンチセンス)がPC3細胞におけるFDPSタンパク質発現の低減に効果的であることを説明する。
【0259】
PC3細胞を、非標的化配列(shCon)またはshFDPSの異なるバリエーション、すなわち、shFDPS #4(配列番号4)、shFDPS-A(配列番号64)、shFDPS-R(配列番号65)、shFDPS-TT(配列番号66)、もしくはshFDPS-L(配列番号67)を含有するレンチウイルスベクターに5MOIで感染させた。72時間後、細胞を溶解し、RNeasy mini kitを使用してRNAを抽出した。SuperScript VILO cDNA合成キットを使用してRNAからcDNAを合成した。TaqMan Fast Advanced Master Mixを使用してPCR反応を行った後、Applied Biosystems QuantStudio3 qPCR装置(Thermo Scientific)を使用して定量PCR(qPCR)により試料を分析した。
【0260】
TaqMan FDPSプローブおよびFDPSプライマーを使用して定量PCRによりFDPS cDNAの発現を決定した。
図19Aについて、FDPSフォワードプライマー(5’-GTGCTGACTGAGGATGAGATG-3’)(配列番号79)およびリバースプライマー(5’-CCGGTTATACTTGCCTCCAAT-3’)(配列番号80)を使用して、Fam標識TaqManプローブ(5’-TAGCATCTCCTATCTCTGGGTGCCC-3’)(配列番号78)を用いてFDPSの発現を検出した。試料をアクチンの発現に対して正規化した。アクチンは、アクチンフォワードプライマー(5’-GGACCTGACTGACTACCTCAT-3’)(配列番号82)およびリバースプライマー(5’-CGTAGCACAGCTTCTCCTTAAT-3’)(配列番号83)を使用してFam標識TaqManプローブ(5’-AGCGGGAAATCGTGCGTGAC-3’)(配列番号81)を用いて検出した。shCon試料の相対的なFDPS RNA発現を100%に設定している。
図19Aに示すように、FDPS発現の95%(shFDPS #4(配列番号4))、75%(shFDPS-A(配列番号64))、95%(shFDPS-R(配列番号65))、90%(shFDPS-TT(配列番号66))および72%(FDPS-L(配列番号67))の減少があった。
【0261】
タンパク質発現に対するshFDPSバリエーションの効果を調べるために、PC3細胞を、sh対照またはshFDPS #4のバリエーションのいずれかを含有するレンチウイルスベクターに5MOIで感染させた。72時間後、細胞を溶解し、抗FDPSおよびタンパク質ローディングコントロールとして抗アクチン抗体を使用してイムノブロットを行った。イムノブロットバンドのデンシトメトリーを定量し、LV-sh対照を1(100%)に設定した。
図19Bに示すように、FDPSタンパク質発現の87%(LV-shFDPS #4(配列番号4))、13%(LV-shFDPS-A(配列番号64))、88%(LV-shFDPS-R(配列番号65))、81%(LV-FDPS-TT(配列番号66))、および37%(LV-FDPS-L(配列番号67))の低減があった。
【0262】
(実施例16)
miR30-FDPSを発現するレンチウイルスを形質導入されたHepG2肝細胞癌細胞におけるFDPSタンパク質の発現
この実施例は、miR30-FDPSを発現するレンチウイルスを形質導入された細胞におけるFDPSタンパク質の発現の減少を説明する。
【0263】
FDPSタンパク質の発現を測定するために、HepG2ヒト肝細胞癌細胞を、sh対照、shFDPS #3(配列番号3)、miR30-FDPS #1(配列番号68)、またはmiR30-FDPS #3(配列番号69)のいずれかを含有するレンチウイルスベクターに5MOIで感染させた。72時間後、NP-40溶解緩衝液を用いて細胞を溶解し、Bio-Radタンパク質アッセイ試薬を用いてタンパク質を測定した。50マイクログラムのタンパク質試料を4~12%のビス-トリスゲル(Thermo Scientific)の電気泳動にかけ、PVDF膜に転写した。ブロットを5%のブロッティンググレードブロッカーにおいて遮断した。抗FDPS抗体(Bethyl Laboratories)およびタンパク質ローディングコントロールとして抗アクチン抗体(Millipore Sigma)を使用してイムノブロットを行った。抗体を、HRPをコンジュゲートした二次抗体(Thermo Scientific)と結合させ、Immobilon Western ECL試薬(Millipore Sigma)を使用してLicor c-DiGit Blotスキャナーを用いて検出した。イムノブロットバンドのデンシトメトリーを、NIH画像ソフトウェアを用いて定量し、LV対照を1(100%)に設定した。
図20に示すように、FDPSタンパク質の発現のそれぞれ85%(LV-shFDPS #4(配列番号4))、59%(LV-miR30-FDPS #1(配列番号68))、および53%(LV-miR30-FDPS #3(配列番号69))の低減があった。
【0264】
(実施例17)
miR30-FDPS #1を発現するレンチウイルスを形質導入されたTHP-1単球性白血病癌細胞によるVγ9Vδ2 T細胞の活性化
この実施例は、
図21に示すように、LV発現miR30-FDPS miRNA #1(配列番号68)およびゾレドロン酸ありまたはなしでの処理によるTHP-1単球性白血病癌細胞における7日間のFDPSのノックダウンが、Vγ9Vδ2 T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0265】
THP-1細胞(2×105細胞)にLV対照またはLV-miR30 FDPS #1(配列番号68)を7日間形質導入した。1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたTHP-1細胞を5mLの丸底チューブ中で4時間2×105個のPBMC細胞と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸+IL-2で少なくとも11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で同定した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸なしの場合、LV対照は2.44%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激し、LV-miR30 FDPS #1(配列番号68)は28.4%を刺激した。ゾレドロン酸処理ありの場合、LV対照は23.8%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激し、LV-miR30 FDPS #1(配列番号68)は61.4%を刺激した。
【0266】
(実施例18)
shGGPS1を発現するレンチウイルスを形質導入されたHeLa子宮頸癌細胞におけるGGPS1タンパク質の発現
HeLa細胞を、sh対照または3つの異なるGGPS1 shRNA配列、すなわち、LV-shGGPS1 #1(配列番号70)、LV-shGGPS1 #2(配列番号71)、もしくはLV-shGGPS1 #3(配列番号73)のいずれかを含有するレンチウイルスベクターに5MOIで感染させた。72時間後、細胞を溶解し、Santa Cruz Biotechnology(商品番号sc-271680)の抗GGPS1抗体およびタンパク質ローディングコントロールとして抗アクチン抗体を使用してイムノブロットを行った。イムノブロットバンドのデンシトメトリーを定量し、LV-sh対照を1(100%)に設定した。
図22に示すように、FDPSタンパク質の発現のそれぞれ54%(LV-shGGPS1 #1(配列番号70))、69%(LV- shGGPS1 #2(配列番号71))、および51%(LV- shGGPS1 #3(配列番号72))の低減があった。
【0267】
(実施例19)
shFDPSまたはshGGPS1を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸で処理されたPC3前立腺癌細胞によるVγ9Vδ2 T細胞の活性化
この実施例は、
図23に示すように、LV発現FDPS shRNA #4(配列番号4)またはGGPS1 shRNA #1(配列番号1)を形質導入されたPC3細胞におけるFDPSまたはGGPS1の3日間のノックダウンおよびゾレドロン酸での処理がVγ9Vδ2 T細胞中のTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0268】
PC3細胞にLV対照またはLV-FDPS shRNA #4(配列番号4)またはLV-GGPS1 shRNA #1(配列番号70)を3日間形質導入した。形質導入の2日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたPC3細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸+IL-2で少なくとも11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で同定した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸なしの場合、LV対照は2.78%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、LV-FDPS shRNA #4(配列番号4)は0.77%を刺激し、LV-GGPS1 #1 shRNA(配列番号70)は1.23%を刺激した。ゾレドロン酸処理ありの場合、LV対照は5.71%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、LV-FDPS shRNA #4(配列番号4)は11.4%を刺激し、LV-GGPS1 #1 shRNA(配列番号70)は10%を刺激した。
【0269】
(実施例20)
shFDPSまたはshGGPS1を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸で処理されたHepG2肝細胞癌細胞によるVδ2+ T細胞の活性化
この実施例は、
図24に示すように、LV発現FDPS shRNA #4(配列番号4)またはGGPS1 shRNA #1(配列番号70)を形質導入されたHepG2細胞におけるFDPSまたはGGPS1の3日間のノックダウンおよびゾレドロン酸での処理がVγ9Vδ2 T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0270】
HepG2細胞にLV対照またはLV-FDPS shRNA #4(配列番号4)またはLV-GGPS1 shRNA #1(配列番号70)を3日間形質導入した。形質導入の2日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたHepG2細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸+IL-2で少なくとも11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で同定した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸なしの場合、LV対照は0.36%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、LV-FDPS shRNA #4(配列番号4)は0.9%を刺激し、LV-GGPS1 #1(配列番号70)shRNAは0.58%を刺激した。ゾレドロン酸処理ありの場合、LV対照は6.88%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、LV-FDPS shRNA #4(配列番号4)は21.1%を刺激し、LV-GGPS1 #1 shRNA(配列番号70)は12%を刺激した。
【0271】
(実施例21)
shFDPSまたはshGGPS1を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸で処理されたTHP-1細胞によるVγ9Vδ2 T細胞の活性化
この実施例は、
図25に示すように、Lv発現FDPS shRNA #4(配列番号4)および/またはGGPS1 shRNA #1(配列番号70)を形質導入されたTHP-1細胞におけるFDPSまたはGGPS1の3日間のノックダウンおよびゾレドロン酸での処理がVγ9Vδ2 T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0272】
THP-1細胞にLV対照またはLV-FDPS shRNA #4(配列番号4)またはLv-GGPS1 shRNA #1(配列番号70)を3日間形質導入した。形質導入の2日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたTHP-1細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸+IL-2で少なくとも11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で同定した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸なしの場合、LV対照は1.33%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、Lv-FDPS shRNA #4(配列番号4)は2.49%を刺激し、Lv-GGPS1 #1 shRNA(配列番号70)は1.22%を刺激し、および両方の組み合わせは1.91%を刺激した。ゾレドロン酸処理ありの場合、Lv対照は5.74%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、Lv-FDPS shRNA #4(配列番号4)は10.8%を刺激し、Lv-GGPS1 shRNA #1(配列番号70)は4.5%を刺激し、両方の組み合わせは11.5%を刺激した。
【0273】
(実施例22)
shIDI1を発現するレンチウイルスを形質導入されたPC3前立腺癌細胞におけるIDI1タンパク質の発現
この実施例は、IDI1 shRNA配列をコードするレンチウイルスベクターを用いた形質導入の、イムノブロット解析により決定されるIDI1発現に対する効果を説明する。
【0274】
PC3細胞を、sh対照またはIDI1 shRNA配列(配列番号76)のいずれかを含有するレンチウイルスベクターに5MOIで感染させた。72時間後、細胞を溶解し、Thermo Fisher(商品番号PA5-44207)からの抗IDI1抗体およびタンパク質ローディングコントロールとして抗アクチン抗体を使用してイムノブロットを行った。イムノブロットバンドのデンシトメトリーを定量し、Lv-sh対照を1(100%)に設定した。
図26に示すように、IDI1タンパク質の発現の88%の低減があった。
【0275】
(実施例23)
shFDPSまたはshIDI1を発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸で処理されたPC3前立腺癌細胞によるVγ9Vδ2 T細胞の活性化
この実施例は、
図27に示すように、Lv発現FDPS shRNA #4(配列番号4)またはIDI1 shRNA #1(配列番号76)を形質導入されたPC3細胞におけるFDPSまたはIDI1の3日間のノックダウンおよびゾレドロン酸での処理がVγ9Vδ2 T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0276】
PC3細胞にLv対照またはLv-FDPS shRNA #4(配列番号4)またはLV-IDI1 shRNA #1(配列番号76)を3日間形質導入した。形質導入の2日後、1μMのゾレドロン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたPC3細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸+IL-2で少なくとも11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で同定した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。ゾレドロン酸なしの場合、LV対照は3.82%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、LV-FDPS shRNA #4(配列番号4)は2.28%を刺激し、LV-IDI1 shRNA #1(配列番号76)は1.92%を刺激した。ゾレドロン酸処理ありの場合、LV対照は8.66%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、LV-FDPS shRNA #4(配列番号4)は36.9%を刺激し、LV-IDI1 shRNA #1(配列番号76)は12.9%を刺激した。
【0277】
(実施例24)
ゾレドロン酸(Zol)、FTI277(FTI)、またはザラゴジン酸(ZA)で処理されたTHP-1急性単球性白血病細胞によるVγ9Vδ2 T細胞の活性化
この実施例は、
図28に示すように、ゾレドロン酸での処理がVγ9Vδ2 T細胞中でのTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0278】
ZAは、ステロール合成に関与する経路におけるスクアレン合成酵素の小分子インヒビターである。THP-1細胞を、FDPSインヒビターZol(10μM)、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビターFTI(10μM)、またはZA(50μM)のいずれかで24時間処理した。THP-1細胞(2.5×105)を丸底の96ウェルプレート中で5時間2.5×105個のPBMC細胞と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸+IL-2で少なくとも11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で同定した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。非処理細胞は3.08%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、ゾレドロン酸処理は40.1%を刺激し、FTI277処理は11.7%を刺激し、ザラゴジン酸は2.13%を刺激した。
【0279】
(実施例25)
shFDPSを発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸(Zol)、FTI277(FTI)、またはザラゴジン酸(ZA)で処理されたPC3前立腺癌細胞によるVγ9Vδ2 T細胞の活性化
この実施例は、
図29に示すように、LV発現FDPS shRNA #4を形質導入されたPC3細胞のゾレドロン酸での処理がVγ9Vδ2 T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0280】
PC3細胞にLV対照またはLV-FDPS shRNA #4(配列番号4)を3日間形質導入した。形質導入の2日後、1μMのゾレドロン酸、1μMのFTI277、または5μMのザラゴジン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたPC3細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸+IL-2で少なくとも11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で同定した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2
T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。LV対照形質導入細胞では、非処理細胞は1.73%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、ゾレドロン酸処理は2.87%を刺激し、FTI277は1.64%を刺激し、ザラゴジン酸は1.57%を刺激した。LV-FDPS shRNA #4(配列番号4)形質導入細胞では、非処理細胞は1.77%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、ゾレドロン酸は50.3%を刺激し、FTI277は2.44%を刺激し、ザラゴジン酸は2.66%を刺激した。
【0281】
(実施例26)
shFDPSを発現するレンチウイルスを形質導入され、ゾレドロン酸(Zol)、FTI277(FTI)、またはザラゴジン酸(ZA)で処理されたHepG2肝細胞癌細胞によるVγ9Vδ2 T細胞の活性化
この実施例は、
図30に示すように、LV発現FDPS shRNA #4を形質導入されたHepG2細胞のゾレドロン酸での処理がVγ9Vδ2 T細胞におけるTNF-α発現を刺激することを説明する。
【0282】
HepG2細胞にLV対照またはLV-FDPS shRNA #4(配列番号4)を3日間形質導入した。形質導入の2日後、1μMのゾレドロン酸、1μMのFTI277、または5μMのザラゴジン酸ありまたはなしで細胞を処理した。24時間後、形質導入されたHepG2細胞を丸底の96ウェルプレート中で4時間5×105個のPBMC細胞と共培養した。PBMC細胞をゾレドロン酸+IL-2で少なくとも11日間事前刺激してVγ9Vδ2 T細胞を増やした。フルオロフォアにコンジュゲートさせた抗TCR-Vδ2抗体および抗TNF-α抗体を使用してVγ9Vδ2およびTNF-αを染色した後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。生細胞をゲーティングし、Vδ2+およびTNF-α+細胞をドットブロット上で同定した。活性化された細胞傷害性Vγ9Vδ2 T細胞はフローサイトグラムの右上の象限に現れた。LV対照形質導入細胞では、非処理細胞は1.82%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、ゾレドロン酸処理は3.02%を刺激し、FTI277は1.72%を刺激し、ザラゴジン酸は1.63%を刺激した。LV-FDPS shRNA #4(配列番号4)形質導入細胞では、非処理細胞は1.86%のTNF-α発現Vγ9Vδ2 T細胞を刺激した一方、ゾレドロン酸は50.8%を刺激し、FTI277は2.69%を刺激し、ザラゴジン酸は2.82%を刺激した。
【0283】
本開示のある特定の好ましい実施形態を上記に記載し、具体的に例示したが、いかなる発明もそのような実施形態に限定されることは意図されない。
【0284】
配列
以下の配列が本明細書中で参照され、本開示に組み込まれる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【表1-23】
【表1-24】
【表1-25】
【表1-26】
【表1-27】
【表1-28】