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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133405
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】自己消化性成形品
(51)【国際特許分類】
   A62D 1/06 20060101AFI20230914BHJP
   A62C 2/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A62D1/06
A62C2/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118952
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2021106049の分割
【原出願日】2017-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2016177543
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114905
【氏名又は名称】ヤマトプロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】富山 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昭光
(57)【要約】
【課題】 消火器や消火装置等を使用せずとも自己消火機能を発動することができ火災に対する安全対策が可能な自己消火性成形品の提供。
【解決手段】 本発明は、燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含み、自動車の部品に貼付して又は建物の火災の発生の可能性ある部材に貼付して使用されるシート状自己消火性成形品である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素酸 カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム及び塩素酸マグネシウムからなる群から選択される一つ又は複数の塩素酸塩を80~50質量部と、
酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一カリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸二カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩を6~1000質量部と、
燃焼して、前記塩素酸塩と共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分を20~50質量部と
を少なくとも含んでなる、自動車の部品に貼付して使用されるシート状自己消火性成形品。
【請求項2】
塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム及び塩素酸マグネシウムからなる群から選択される一つ又は複数の塩素酸塩を80~50質量部と、
酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一カリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸二カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩を6~1000質量部と、
燃焼して、前記塩素酸塩と共に前記カリウム塩を分解して、カリウムラジカルを含むエアロゾルを発生させる成分を20~50質量部と
を少なくとも含んでなる、建物の火災の発生の可能性ある部材に貼付して使用されるシート状自己消火性成形品。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシート状自己消火成形品の製造のための組成物であって、
塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム及び塩素酸マグネシウムからなる群から選択される一つ又は複数の塩素酸塩と、
酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一カリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸二カリウム及び重炭酸カリウムからなる群から選択される一つ又は複数のカリウム塩と
を少なくとも含んでなる、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含むこと、を特徴とする自己消火性成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な消火器や消火装置等には、ガス圧や電気回路を用いた着火方式等によって消火薬剤や消火ガスを噴出・拡散させるものが多く、例えば、作動させるための部品、消火薬剤や消火ガスを噴出・拡散させるための部品、着火させるための電気回路等の部品、温度や炎の感知器等、種々の部品を用いる必要がある。
【0003】
そのため、構造上、装置が消火器や消火装置が嵩張ってしまったり、その構造やシステムを設計したりする必要があり、また、各部品の管理や製造工程が煩雑になり、コスト面での負担も大きい。
【0004】
他方、例えば自動車や家等の建物等には、常に火災に対する安全対策が求められており、上記のような消火器や消火装置等を載置しておいたり、例えば不燃性材料や難燃性材料を構成部材に採用したりすることが行なわれているが(例えば特許文献1)、そのような安全対策では、消火器や消火装置等の載置場所が必要であったり、燃えにくい材料といっても不十分と言わざるを得ないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-5689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、消火器や消火装置等を使用せずとも自己消火機能を発動することができ火災に対する安全対策が可能な自己消火性成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかるに、本発明者らは、別途特許出願している「従来の粉末系の消火剤を使用した場合と比べて、消火器や消火装置等をよりコンパクトで軽量にすることができる消火剤組成物」を有効に使用できないか鋭意検討及び実験を繰り返した結果、これを用いて自動車の部品や建物を構成する部材に自己消火機能を持たせれば、上記目的を達成するために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含むこと、を特徴とする自己消火性成形品を提供するものである。このような構成を有する本発明の自己消火性成形品は、火災発生時に火災の熱エネルギーを用いて消火機能を有する化学種を発生させることにより自己消火機能を発動することができ、火消火器や消火装置等を使用せずとも火災に対する安全対策が可能である。
【0009】
上記本発明の自己消火性成形品は、平面状(例えば膜状、シート状、板状)又は立体状(例えば柱状)の形状を有することができ、種々の部品や部材に採用することができる。
【0010】
また、上記本発明の自己消火性成形品においては、上記消火剤組成物が、
燃料20~50質量%及び塩素酸塩80~50質量%を含有し、
更に前記燃料及び前記塩素酸塩の合計量100質量部に対して、6~1000質量部のカリウム塩を含有し、
熱分解開始温度が90℃超~260℃の範囲であること、
が好ましい。
【0011】
このような構成を有する消火剤組成物を用いれば、より確実に自己消火機能を発揮でき、従来の粉末系の消火剤を使用した場合と比べると、コンパクト化及び軽量化を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、火消火器や消火装置等を使用せずとも自己消火機能を発動することができ火災に対する安全対策が可能な自己消火性成形品を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の自己消火性成形品の一実施形態を示す模式図である。
図2】本発明の自己消火性成形品の別の実施形態を示す模式図である。
図3】本発明の自己消火性成形品のまた別の実施形態を示す模式図である。
図4】本発明の自己消火性成形品の更に別の実施形態を示す模式図である。
図5】本発明の自己消火性成形品を使用した消火性能の確認試験の試験方法を説明するための図である(燃焼空間容積が5L)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の自己消火性成形品の代表的な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各実施形態において重複する説明は省略することがあり、本発明はこれら図面に限定されるものではなく、また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0015】
≪第一実施形態≫
図1は、本発明の自己消火性成形品の一実施形態を示す模式図である。本実施形態における自己消火性成形品1はシート状であり、自動車のパネルや建物の壁等の被貼付物2に貼付して使用することができるものである。
【0016】
この自己消火性成形品1は、消火剤組成物にバインダー及びその他の成分を混合し、得られる混合物を成形機等を用いる従来公知の方法でシート状に成形することによって作製することが可能である。以下、この消火剤組成物、バインダー及びその他の成分について説明する。
【0017】
(1)消火剤組成物
消火剤組成物は、燃料(A成分)20~50質量%及び塩素酸塩(B成分)80~50質量%を含有し、更に前記燃料及び前記塩素酸塩の合計量100質量部に対して、6~1000質量部のカリウム塩(C成分)を含有し、熱分解開始温度が90℃超~260℃の範囲であること、を特徴とする。
【0018】
A成分である燃料は、B成分である塩素酸塩と共に燃焼により熱エネルギーを発生させて、C成分のカリウム塩に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分である。
【0019】
かかるA成分の燃料としては、例えば、ジシアンジアミド、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、尿素、メラミン、メラミンシアヌレート、アビセル、グアガム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボキシルメチルセルロースカリウム、カルボキシルメチルセルロースアンモニウム、ニトロセルロース、アルミニウム、ホウ素、マグネシウム、マグナリウム、ジルコニウム、チタン、水素化チタン、タングステン及びケイ素のうち
の少なくとも1種から選ばれるものが好ましい。なかでも、エアロゾルを発生させて消火するという本発明の効果をより確実に得られるという観点から、カルボキシルメチルセルロースナトリウムが特に好ましい。
【0020】
B成分の塩素酸塩は強力な酸化剤であり、A成分の燃料と共に燃焼により熱エネルギーを発生させ、C成分のカリウム塩に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分である。
【0021】
かかるB成分の塩素酸塩としては、例えば塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム及び塩素酸マグネシウムのうちの少なくとも1種から選ばれるものが好ましい。なかでも、本発明の効果をより確実に得られるという観点から、塩素酸カリウムが特に好ましい。
【0022】
ここで、A成分の燃料とB成分の塩素酸塩の合計100質量%中の含有割合は、以下のとおりである。
A成分:20~50質量%
好ましくは25~40質量%
より好ましくは25~35質量%
B成分:80~50質量%
好ましくは75~60質量%
より好ましくは75~65質量%
【0023】
次に、C成分のカリウム塩は、A成分とB成分の燃焼により生じた熱エネルギーによりエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させるための成分である。
【0024】
かかるC成分のカリウム塩としては、例えば酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一カリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸二カリウム及び重炭酸カリウムのうちの少なくとも1種から選ばれるものが好ましい。なかでも、本発明の効果をより確実に得られるという観点から、酢酸カリウム又はクエン酸三カリウムが特に好ましい。
【0025】
C成分の含有割合は、A成分とB成分の合計量100質量部に対して、6~1000質量部であるのが好ましく、より好ましくは10~900質量部、特に好ましくは10~100質量部である。
【0026】
更に、本発明の消火剤組成物は、熱分解開始温度が90℃超~260℃の範囲のものであり、好ましくは150℃超~260℃のものである。このような熱分解開始温度の範囲は、上記のA成分、B成分及びC成分を上記の割合で組み合わせることで調整することができる。
【0027】
上記消火剤組成物は、上記の熱分解開始温度の範囲を満たすことで、例えば点火装置等を使用することなく、火災発生時の熱を受けてA成分とB成分が自動的に着火燃焼して、C成分に由来するエアロゾル(カリウムラジカル)を発生させて消火することができる。
【0028】
なお、室内にある可燃物として一般的な木材の引火温度は260℃であり、火気を取扱う場所に設置する自動火災報知設備の熱感知器の一般的な作動温度である90℃以下では起動しない条件に熱分解開始温度を設定することで、速やかな消火ができると共に、前記熱感知器の誤作動も防止できる。特に、熱感知器の最大設定温度は150℃であるため、
熱分解開始温度の下限値を150℃超に設定することで高い汎用性が得られる。
【0029】
上記のような構成を有する消火剤組成物の形態は、特に制限されるものではなく、分散体等の液体又は粉末や所望する形状の成形体等の固体として使用することができる。分散体であれば、スプレー噴霧によりコーティング剤として使用することもできる。また、成形体は、顆粒、所望形状のペレット(円柱形状等)、錠剤、球形、円板等の形状にすることができ、見かけ密度が1.0g/cm以上のものであることが好ましい。
【0030】
(2)バインダー及びその他の成分
バインダー及びその他の成分としては、上記消火剤組成物の機能を害することなくその成形を可能とする材料であれば種々のものを用いることができ、特にバインダーとしては無機質バインダーであっても有機質バインダーであってもよい。なお、バインダーを用いなくても後述する分散剤を用いれば本発明の自己消火性成形品を作製することは可能である。
【0031】
無機質バインダーとしては、例えば、焼結性無機質材等を挙げることができ、この焼結性無機質材の具体例としては、例えば、電気絶縁性ガラス等を例示することができる。
【0032】
前記電気絶縁性ガラスとしては、具体的には二酸化ケイ素が50~60重量%、酸化アルミニウムが10~20重量%、酸化カルシウムが10~20重量%、酸化マグネシウムが1~10重量%、酸化ホウ素が8~13重量%等の範囲で含まれるEガラスと呼ばれるもの等を挙げることができる。
【0033】
また、上記焼結性無機質材は、鉛金属塩及びアルカリ金属酸化物含有量が前記焼結性無機質材の重量に対してそれぞれ1重量%未満のものであれば好ましい。かかる鉛金属塩としては、例えば、PbO、PbO2、Pb等を挙げることができ、前記アルカリ金属酸化物としては、例えば、NaO、KO等を挙げることができる。
【0034】
また、上記焼結性無機質材のなかでも、前記Eガラスは、アルカリ金属酸化物含有量が少なく、防・耐火パネルからなる防火戸等の建材に対する影響が少ないという観点から好ましい。
【0035】
次に、有機質バインダーとしては、例えば、具体的にはポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1-)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂類、 天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のゴム類、 ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂類、 上記熱可塑性樹脂類、ゴム類等のラテックス類、 上記熱可塑性樹脂類、ゴム類等のエマルション類、CMC(カルボキシメチルセルロース)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース) 等のセルロース誘導体等を挙げることができる。
【0036】
これら有機質バインダーは一種又は二種以上を使用することができ、なかでも、取扱性の面等から、ゴム類のラテックス類、エチレン-酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂エマルション、CMC等が好ましい。
【0037】
その他の成分としては、水等の分散剤、溶剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、無機充填材、粘着剤等を挙げることができ、消火剤組成物の組成、バインダーの種類及び所望する成形品の形態等によって適宜選択すればよい。
【0038】
≪第二実施形態≫
図2は、本発明の自己消火性成形品の第二実施形態を示す模式図である。本実施形態における自己消火性成形品11は消火性組成物を噴霧して膜状に成形したものであり、自動車のパネルや建物の壁等の被貼付物12に形成して使用することができるものである。
【0039】
この膜状の自己消火性成形品11は、上記の消火剤組成物にバインダー及びその他の成分(特に溶媒や分散媒)を混合し、得られる液状の混合物(溶液又は分散液)を噴霧器(図2のY)を用いる従来公知の方法で膜状に成形することによって作製することが可能である。
【0040】
≪第三実施形態≫
図3は、本発明の自己消火性成形品の第三実施形態を示す模式図である。本実施形態における自己消火性成形品21は、粒状に成形した上記の消火性組成物を、例えば木材チップ、バインダー及びその他の成分と混合して得られる混合物を、柱状に成形したものであり、建物の柱等として使用することができるものである。
【0041】
この自己消火性成形品21は、粒状に成形した上記の消火剤組成物に、木材チップ、バインダー及びその他の成分を混合し、得られる混合物を成形機を用いる従来公知の方法で柱状に成形することによって作製することが可能であり、全体に粒状消火剤組成物21aが分散している。
【0042】
≪第四実施形態≫
図4は、本発明の自己消火性成形品の第四実施形態を示す模式図である。本実施形態における自己消火性成形品31は、例えば木材チップ、バインダー及びその他の成分を混合して得られる混合物を柱状に成形し、その表面付近に消火剤組成物を含浸させたものであり、建物の柱等として使用することができるものである。
【0043】
この自己消火性成形品31は、例えば木材チップ、バインダー及びその他の成分を混合し、得られる混合物を成形機を用いる従来公知の方法で柱状に成形し、これを液状の消火剤組成物(溶液又は分散液)に浸漬等することによって作製することが可能であり、表面付近に消火剤組成物31aが含浸されている。
【0044】
以上、本発明の代表的な自己消化性成形品について説明したが、これらは全て上記の消火剤組成物を含んでいることから、火災発生時に火災の熱エネルギーを用いて消火機能を有する化学種を発生させることにより自己消火機能を発動することができ(図1のX部分)、火消火器や消火装置等を使用せずとも火災に対する安全対策が可能である。
【実施例0045】
≪実験例1≫(シート状)
<実施例1~13並びに比較例1~4>
表1に示すA成分、B成分及びC成分を表1に示す配合割合(水分を含まない乾燥物として)十分混合し、A成分、B成分及びC成分の合計量100質量部に対して、10質量
部相当のイオン交換水を添加してさらに混合した。得られた水湿混合品を110℃×16時間の恒温槽にて乾燥させて、水分1質量%以下の乾燥品にした。
次に、乾燥品をメノウ乳鉢にて破砕して500μm以下の粒径になるように整粒して粉砕物を得、粉砕物にCMCを添加して粘土状の混合物を得、この混合物を厚さ5mmのシート状に成形し、十分に乾燥させて本発明の自己消化性成形品1~9並びに比較自己消化性成形品1、3及び4を作製した。
【0046】
[評価試験]
(1)みかけ密度
上記のようにして得た自己消化性成形品のみかけ密度を、面積と厚さをデジタルノギスで測定し、測定値から求めた体積で重量を割ることにより求め、表1に記載した。
(2)消火試験
図5に示す装置にて消火試験1を実施した。
支持台51の上に鉄製の金網52を置き、その中心部に実施例および比較例の成形品56を置いた。金網52の上には、耐熱ガラス製の透明容器(5L)を被せて、金網52に面している部分以外は密閉した。金網52を介して成形品6の直下には、着火剤としてn-ヘプタン100mlを入れた皿55を置いた。この状態にてn-ヘプタンを着火して火炎57を生じさせ、成形品56を熱してエアロゾルを発生させ、炎57が消火できるかどうかを観察した。結果を表1に示した。
【0047】
≪実験例2≫(膜状)
<実施例14~26並びに比較例5~8>
実験例1と同様にして100μm以下の粒径になるように整粒して粉砕物に、十分な量のCMCを添加し、実験例1と比べて著しく粘度が低い分散液状の混合物を得た。この混合物を噴霧器に注入し、ガラス基板上に噴霧し、十分に乾燥させて厚さ300μmの膜状の本発明の自己消化性成形品14~26並びに比較自己消化性成形品5~8を作製した。
これらについて、実験例1と同様の消火試験を行ったところ、同様の結果が得られた。
【0048】
≪実験例3≫(ペレット状)
<実施例27及び比較例9>
実験例1の実施例1と同様にして作成した粉砕物を、粉砕品2.0gを内径9.6mmの所定の金型(臼)に充填し、杵を挿入の上、油圧ポンプで面圧220.5MPa(2250kg/cm)にて、5秒ずつ両面より加圧して、ペレット状の本発明の自己消化性成形品27を得た。また、同サイズの木材ペレットを比較成形品9とした。
これらについて、実験例1と同様の消火試験を行ったところ、自己消化性成形品27については消火し、比較成形品9については消火しなかった。
また、比較成形品9に自己消化性成形品27を混合して得た混合物について、同様の消火試験を行ったところ、自己消化性成形品27の割合が多いほど消火の効果が著しかった。つまり、自己消化性成形品27の割合が少ないほど、消火に時間を要し、また、消火できない場合もあった。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から、本発明の実施例の自己消化性成形品では、いずれも瞬時に消火できた。比較例では、一時的に火勢は小さくなったが、消火はできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
ただし、本発明は、上記のシート状、膜状、柱状の自己消化性成形品に限られるものではなく、様々な応用が可能であり、また、建物の壁以外の種々の貼付物や柱以外の成形品にも適用可能である。例えば、種々の樹脂製品や木材製品にも適用可能である。
【0052】
例えば、自動車の部品については、以下のような部品に適用することも可能である。
・ルームミラー
・ヘッドレスト
・ワイパーアーム、ワイパーブレード(フロント及びリア)
・トップカウル
・ヘッドライト、フォグランプ、フロント車幅灯、その他のランプ
・ラジエータグリル
・フロントウインカー
・フロントバンパー、リアバンパー、スカート
・サイドモール
・ステップ
・マッドフラップ(泥よけ)
・ドアアームレスト、ドアインナーハンドル、ドアロックノブ
・ハンドル
・ホーンパッド
・メーターパネル
・ハンドブレーキ
・ベンチレータ
・各種コントロールパネル
・シフトレバー
【0053】
また、建材については、例えば、屋根材、壁材、床材、建具等も挙げられる。上記の消火剤組成物をシート状に成形すれば壁材として用いることができ、また、板状に成形すれば屋根材、床材、建具等として用いることもできる。
【0054】
本発明の形態を挙げれば以下のとおりである。
(1)燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含むこと、を特徴とする自己消火性成形品。
(2)前記成形品が、平面状又は立体状であること、を特徴とする(1)に記載の自己消火性成形品。
(3)前記消化剤組成物が
燃料20~50質量%及び塩素酸塩80~50質量%を含有し、
更に前記燃料及び前記塩素酸塩の合計量100質量部に対して、6~1000質量部のカリウム塩を含有し、
熱分解開始温度が90℃超~260℃の範囲であること、
を特徴とする(1)又は(2)に記載の自己消火性成形品。
(4)前記カリウム塩の、10度毎分昇温のDSC(示差走査熱量測定)分析において100℃から440℃の間で発現した吸熱ピーク総量が、100J/gから900J/gであること、
を特徴とする(1)~(3)のうちのいずれかに記載の自己消火性成形品。
(5)前記カリウム塩が熱エネルギーによりカリウムラジカルを発生する化合物であること、
を特徴とする(1)~(4)のうちのいずれかに記載の自己消火性成形品。
(6)前記カリウム塩が、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一カリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸二カリウム及び重炭酸カリウムのうちの少なくとも1種であること、
を特徴とする(1)~(5)のうちのいずれかに記載の自己消火性成形品。
(7)前記燃料が前記塩素酸塩とともに燃焼して熱エネルギーを発生する化合物であること、を特徴とする(1)~(6)のうちのいずれかに記載の自己消火性成形品。
(8)前記燃料が、ジシアンジアミド、ニトログアニジン、硝酸グアニジン、尿素、メラミン、メラミンシアヌレート、アビセル、グアガム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、カルボキシルメチルセルロースカリウム、カルボキシルメチルセルロースアンモニウム、ニトロセルロース、アルミニウム、ホウ素、マグネシウム、マグナリウム、ジルコニウム、チタン、水素化チタン、タングステン及びケイ素のうちの少なくとも1種であること、
を特徴とする(7)記載の自己消火性成形品。
(9)前記塩素酸塩が、前記燃料とともに燃焼して熱エネルギーを発生する酸化剤化合物であること、を特徴とする(1)~(8)のうちのいずれかに記載の自己消火性成形品。
(10)前記塩素酸塩が、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム及び塩素酸マグネシウムのうちの少なくとも1種であること、を特徴とする(9)記載の自己消火性成形品。
【符号の説明】
【0055】
1、11、21、31・・・自己消化性成形品、
2、12・・・被貼付物、
21a、31a・・・消火剤組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼によりエアロゾルを発生して火災を消火抑制する消火剤組成物を含むこと、を特徴とする自己消火性成形品。