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特開2023-133418画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133418
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20230914BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20230914BHJP
   G09B 29/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G08G1/0969
G09B29/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119504
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2022051054の分割
【原出願日】2012-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】松永 英士
(72)【発明者】
【氏名】安士 光男
(57)【要約】
【課題】移動体が実際に到達可能な範囲を表示できること。
【解決手段】画像処理装置200は、移動体の残存エネルギー量に基づいて移動体の到達可能範囲を生成して表示部210に表示させる。取得部201は、移動体の現在地点に関する情報や、移動体の現在地点における初期保有エネルギー量に関する情報を取得する。算出部202は、移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量を算出する。探索部203は、移動体が現在地点から到達可能な地点である複数の到達可能地点を探索する。分割部204は、地図情報を複数の領域に分割する。付与部205は、分割部204によって分割された複数の領域にそれぞれ移動体が到達可能であるか否かを識別する識別情報を付与する。表示制御部206は、移動体の到達可能範囲を地図情報とともに表示部210に表示させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の到達可能範囲を定義する座標情報に基づいて前記到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出手段と、
抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換し、所定周波数以上の周波数成分を除去した結果に基づいて、前記輪郭を変形して表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体の残存エネルギー量に基づいて移動体の到達可能範囲を生成する画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムに関する。ただし、この発明の利用は、画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムに限らない。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の現在地点に基づいて、移動体の到達可能範囲を生成する処理装置が知られている(たとえば、下記特許文献1参照。)。下記特許文献1では、移動体の現在地点を中心に地図上の全方位を放射状に分割し、分割領域ごとに移動体の現在地点から最も遠い到達可能な交差点を地図情報のノードとして取得する。そして、取得した複数のノードを結んで得られるベジュ曲線を移動体の到達可能範囲として表示している。
【0003】
また、移動体のバッテリー残容量および電力消費量に基づいて、各道路における移動体の現在地点からの到達可能範囲を生成する処理装置が知られている(たとえば、下記特許文献2参照。)。下記特許文献2では、移動体の現在地点に接続する複数の道路において移動体の電力消費量を算出し、移動体のバッテリー残容量および電力消費量に基づいて各道路における移動体の走行可能距離を算出する。そして、移動体の現在地点と、当該現在地点から走行可能距離だけ離れた移動体の複数の到達可能地点とを地図情報のノードとして取得し、複数のノードを結んで得られる線分の集合体を移動体の到達可能範囲として表示している。
【0004】
また、電気自動車の走行可能範囲を表示する装置が知られている。(たとえば、下記特許文献3参照。)。下記特許文献3では、地図がメッシュ上に分割され、走行可能な範囲がメッシュ単位で表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-016094号公報
【特許文献2】特開平07-085397号公報
【特許文献3】特開2011-217509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、移動体の現在地点を中心に各方位における移動体から最も遠い到達地点のみを取得しているので、移動体の到達可能範囲の輪郭しか得られない。このため、移動体の現在地点と移動体から最も遠い到達地点との間に、海や湖など移動体が走行することのできない領域が含まれていたとしても、この移動体が走行することのできない領域を除外して移動体の到達可能範囲を取得することができないという問題点が一例として挙げられる。
【0007】
また、上述した特許文献2の技術では、移動体の到達可能範囲として道路のみを取得しているので、道路以外の範囲を移動体の到達可能範囲に含めることができない。また、移動体の到達可能範囲が移動体の走行可能な道路に沿った線分の集合体で表示されるので、到達可能範囲の輪郭を取得することができない。このため、移動体の到達可能範囲を見やすく、かつ漏れなく表示することが困難であるという問題点が一例として挙げられる。
【0008】
また、上述した特許文献3の技術において走行可能範囲をメッシュ単位で表示すると、外周を滑らかに表示することができず、視認性に欠けるという問題点が一例として挙げられる。また、他の走行可能範囲を表示する方法として、走行可能範囲を知るには、地図上をメッシュの区間に切り分け、主要な道路につき各メッシュに到達可能交差点があるか調べることが考えられる。しかしながら、演算量を減らす目的で全ての交差点で走行可能範囲を計算するのではなく、主要道路だけで計算するため、多くの欠落点が生じるという問題点が一例として挙げられる。このような欠落点を消去するために、画像処理の近傍処理を行うと、孤立点と孤立点を結ぶ外周が直線の組み合わせになり、滑らかに表示できず、視認性に欠けることになる。また、外周を直線で結んで描画する際に、外周点の数が多すぎると描画処理に時間がかかるという問題点が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる画像処理装置は、移動体の到達可能範囲を定義する座標情報に基づいて前記到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出手段と、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換し、所定周波数以上の周波数成分を除去した結果に基づいて、前記輪郭を変形して表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明にかかる画像処理装置は、移動体の到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出手段と、前記移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報が付与された領域の経度緯度情報に基づいて前記移動体の到達可能範囲を抽出し、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換して、所定周波数以上の周波数成分を除去してから逆変換することにより、前記周波数成分が除去された輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を表示手段に表示させる表示制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明にかかる画像処理装置は、移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報と、前記移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量とに基づいて、到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出手段と、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換して、所定周波数以上の周波数成分を除去してから逆変換することにより、前記周波数成分が除去された輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を表示手段に表示させる表示制御手段と、移動体の現在地点に関する情報、および、前記初期保有エネルギー量に関する情報、を取得する取得手段と、前記推定エネルギー消費量を算出する算出手段と、地点を示すノード群と地点間の経路を示すリンク群を含む地図情報、前記初期保有エネルギー量および前記推定エネルギー消費量に基づいて、前記移動体が現在地点から当該現在地点が位置するリンクに沿って到達可能な地点を探索する探索手段と、前記地図情報が複数の領域に分割されており、前記複数の領域のうち、前記現在地点から前記到達可能な地点までのリンクに重複する重複領域に対し、前記移動体が到達可能であることを示す識別情報を付与する付与手段と、を有し、前記抽出手段は、前記付与手段によって識別情報が付与された領域の当該識別情報に基づいて、前記地図情報から前記移動体の到達可能範囲の輪郭を抽出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明にかかる画像処理装置は、移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報と、前記移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量とに基づいて、到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出手段と、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換して、所定周波数以上の周波数成分を除去してから逆変換することにより、前記周波数成分が除去された輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を表示手段に表示させる表示制御手段と、を有し、前記表示制御手段は、前記移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報が付与された一の領域と当該一の領域と隣り合う到達可能の識別情報が付与された他の領域との位置関係に基づいて前記移動体の到達可能範囲の輪郭を抽出し、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換して、所定周波数以上の周波数成分を除去してから逆変換することにより、前記周波数成分が除去された輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明にかかる画像処理装置は、移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー情報と、前記移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量とに基づいて、到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出手段と、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換して、所定周波数以上の周波数成分を除去してから逆変換することにより、前記周波数成分が除去された輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を表示手段に表示させる表示制御手段と、を有し、前記表示制御手段は、逆変換後の偏角のうち所定角度より小さい偏角を持つ頂点を間引く間引き処理を実行し、間引き処理後の輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項12の発明にかかる画像処理装置は、地図情報から移動体の到達可能範囲の輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、前記輪郭抽出手段によって抽出された輪郭を構成する頂点群において隣接する頂点同士を結ぶ各線分を同一長さにする補完手段と、前記補完手段によって補完された輪郭を構成する頂点群の各頂点に規定された偏角と、前記線分の長さと、のうち、偏角のみを周波数変換する変換手段と、前記変換手段によって変換された偏角の周波数成分のうち、所定周波数以上の周波数成分を除去する除去手段と、前記除去手段による除去後の偏角の周波数成分を逆変換する逆変換手段と、を有し、前記逆変換手段によって前記周波数成分が除去された輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を、表示手段に表示させることを特徴とする。
【0015】
また、請求項13の発明にかかる画像処理方法は、移動体の到達可能範囲に関する情報を処理する画像処理装置における画像処理方法であって、移動体の到達可能範囲を定義する座標情報に基づいて前記到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出工程と、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換し、所定周波数以上の周波数成分を除去した結果に基づいて、前記輪郭を変形して表示手段に表示させる表示制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
また、請求項14の発明にかかる画像処理方法は、移動体の到達可能範囲に関する情報を処理する画像処理装置における画像処理方法であって、移動体の到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出工程と、前記移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報が付与された領域の経度緯度情報に基づいて前記移動体の到達可能範囲を抽出し、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換して、所定周波数以上の周波数成分を除去してから逆変換することにより、前記周波数成分が除去された輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を表示手段に表示させる表示制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、請求項15の発明にかかる画像処理方法は、移動体の到達可能範囲に関する情報を処理する画像処理装置における画像処理方法であって、移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報と、前記移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量とに基づいて、到達可能範囲の輪郭を抽出する抽出工程と、抽出した輪郭に含まれる頂点群の各頂点に規定された偏角を周波数変換して、所定周波数以上の周波数成分を除去してから逆変換することにより、前記周波数成分が除去された輪郭となる前記移動体の到達可能範囲を表示手段に表示させる表示制御工程と、移動体の現在地点に関する情報、および、前記初期保有エネルギー量に関する情報、を取得する取得工程と、前記推定エネルギー消費量を算出する算出工程と、地点を示すノード群と地点間の経路を示すリンク群を含む地図情報、前記初期保有エネルギー量および前記推定エネルギー消費量に基づいて、前記移動体が現在地点から当該現在地点が位置するリンクに沿って到達可能な地点を探索する探索工程と、前記地図情報が複数の領域に分割されており、前記複数の領域のうち、前記現在地点から前記到達可能な地点までのリンクに重複する重複領域に対し、前記移動体が到達可能であることを示す識別情報を付与する付与工程と、を含み、前記抽出工程は、前記付与工程によって識別情報が付与された領域の当該識別情報に基づいて、前記地図情報から前記移動体の到達可能範囲の輪郭を抽出することを特徴とする。
【0018】
また、請求項16の発明にかかる画像処理プログラムは、請求項13~15のいずれか一つに記載の画像処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、移動体の到達可能範囲の輪郭の表示例を示す説明図である。
図2図2は、実施の形態1にかかる画像処理装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、図2に示した表示制御部206の詳細な機能的構成例を示すブロック図である。
図4図4は、画像処理装置による画像処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図(その1)である。
図7図7は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図(その2)である。
図8図8は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図(その3)である。
図9図9は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図(その4)である。
図10図10は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について示す説明図である。
図11図11は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の別の一例について示す説明図である。
図12図12は、ナビゲーション装置500による到達可能地点を経度-緯度で示す一例の説明図である。
図13図13は、ナビゲーション装置500による到達可能地点をメッシュで示す一例の説明図である。
図14図14は、ナビゲーション装置によるクロージング処理の一例を示す説明図である。
図15図15は、ナビゲーション装置によるクロージング処理の一例を模式的に示す説明図である。
図16図16は、ナビゲーション装置によるオープニング処理の一例を示す説明図である。
図17図17は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の一例を模式的に示す説明図である。
図18図18は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出後のメッシュの一例を模式的に示す説明図である。
図19図19は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の別の一例について模式的に示す説明図である。
図20-1】図20-1は、輪郭データの補完処理例を示す説明図である。
図20-2】図20-2は、図20-1に示した補完処理でのベクトルの分解方法の一例を示す説明図である。
図20-3】図20-3は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の一例を模式的に示す説明図である。
図20-4】図20-4は、ナビゲーション装置による輪郭の向きの算出処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図21-1】図21-1は、輪郭データの曲座標表現を示す説明図である。
図21-2】図21-2は、周波数変換を示すグラフである。
図22図22は、輪郭データの間引き例を示す説明図である。
図23図23は、ナビゲーション装置による画像処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図24図24は、ナビゲーション装置による推定消費電力量算出処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図25図25は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索処理の手順を示すフローチャート(その1)である。
図26図26は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索処理の手順を示すフローチャート(その2)である。
図27図27は、ナビゲーション装置によるリンク候補判断処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図28図28は、ナビゲーション装置による識別情報付与処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図29図29は、ナビゲーション装置500による第1識別情報変更処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図30図30は、ナビゲーション装置による到達可能範囲輪郭抽出処理の手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
図31図31は、ナビゲーション装置による到達可能範囲輪郭抽出処理の手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
図32図32は、ナビゲーション装置500による平滑化処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図33図33は、勾配がある道路を走行する車両にかかる加速度の一例を模式的に示した説明図である。
図34図34は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索処理後の表示例の一例について示す説明図である。
図35図35は、ナビゲーション装置500による識別情報付与処理後の表示例の一例について示す説明図である。
図36図36は、ナビゲーション装置による第1識別情報変更処理後の表示例の一例について示す説明図である。
図37図37は、ナビゲーション装置500によるクロージング処理(膨張)後の表示例の一例について示す説明図である。
図38図38は、ナビゲーション装置500によるクロージング処理(縮小)後の表示例の一例について示す説明図である。
図39図39は、ナビゲーション装置500による平滑化処理後の表示例の一例について示す説明図である。
図40図40は、実施の形態2にかかる画像処理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。
図41図41は、実施の形態3にかかる画像処理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。
図42図42は、実施例2にかかる画像処理装置のシステム構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる画像処理装置、画像処理方法および画像処理プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる画像処理装置では、表示される移動体の到達可能範囲の輪郭を平滑化して、視認性の向上を図る。図1は、移動体の到達可能範囲の輪郭の表示例を示す説明図である。(A)は、平滑化処理前における移動体の到達可能範囲の一部の輪郭データを示す。(B)は、(A)の次状態であり、(A)で示した輪郭を平滑化した状態を示す。具体的には、(B)では、(A)に示した輪郭データに対して高速フーリエ変換をおこない、高周波成分を除去したあと、逆高速フーリエ変換をおこなった結果を示す。(B)の輪郭データは、高周波成分が除去されたため、(A)に比べて滑らかな曲線となる。(C)は、(B)の次状態を示し、輪郭データ上の外周点の一部を間引いた状態を示す。間引き対象となる外周点は、たとえば、偏角の絶対値が所定値より小さくなる点である。これにより、(C)の輪郭データは、(B)に比べて滑らかな曲線となる。
【0022】
このようにして、実施の形態1にかかる画像処理装置は、移動体の到達可能範囲の視認性の向上を図ることができる。また、実施の形態1にかかる画像処理装置は、高速フーリエ変換や逆高速フーリエ変換を用いているため、平滑化処理の高速化を図ることができる。また、実施の形態1にかかる画像処理装置は、各外周点の偏角の絶対値により間引いているため、簡単な処理により平滑化処理の高速化を図ることができる。
【0023】
図2は、実施の形態1にかかる画像処理装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。実施の形態1にかかる画像処理装置200は、移動体の残存エネルギー量に基づいて探索された移動体の到達可能地点に基づいて移動体の到達可能範囲を生成し表示部210に表示させる。また、画像処理装置200は、取得部201、算出部202、探索部203、分割部204、付与部205、表示制御部206によって構成される。
【0024】
ここで、エネルギーとは、たとえば、EV(Electric Vehicle)車などの場合、電気などに基づくエネルギーであり、HV(Hybrid Vehicle)車、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)車などの場合は電気などに基づくエネルギーおよび、たとえばガソリンや軽油、ガスなどに基づくエネルギーである。また、エネルギーとは、たとえば燃料電池車の場合、電気などに基づくエネルギーおよび、たとえば水素や水素原料になる化石燃料などである(以下、EV車、HV車、PHV車、燃料電池車は単に「EV車」という)。また、エネルギーとは、たとえば、ガソリン車、ディーゼル車など(以下、単に「ガソリン車」という)の場合、たとえば、ガソリンや軽油、ガスなどに基づくエネルギーである。たとえば残存エネルギーとは、たとえば、移動体の燃料タンクやバッテリー内、高圧タンクなどに残っているエネルギーであり、後の移動体の走行に用いることのできるエネルギーである。
【0025】
取得部201は、画像処理装置200を搭載した移動体の現在地点に関する情報や、移動体の現在地点において当該移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報を取得する。具体的には、取得部201は、たとえば、GPS衛星から受信したGPS情報などを用いて、自装置の現在位置を算出することによって現在地点に関する情報(位置情報)を取得する。
【0026】
また、取得部201は、たとえば、CAN(Controller Area Network)など通信プロトコルによって動作する車内通信網を介して、エレクトロニックコントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)によって管理されている移動体の残存エネルギー量を、初期保有エネルギー量として取得する。
【0027】
取得部201は、移動体の速度に関する情報や、渋滞情報、移動体情報を取得してもよい。移動体の速度に関する情報とは、移動体の速度、加速度である。また、取得部201は、たとえば、記憶部(不図示)に記憶された地図情報から道路に関する情報を取得してもよいし、傾斜センサなどから道路勾配などを取得してもよい。道路に関する情報とは、たとえば、道路種別や、道路勾配、路面状況などにより移動体に生じる走行抵抗である。
【0028】
算出部202は、移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量を算出する。所定区間とは、たとえば、道路上の一の所定地点(以下、「ノード」とする)と当該一のノードに隣り合う他のノードとを結ぶ区間(以下、「リンク」とする)である。ノードとは、たとえば、交差点やスタンドであってもよいし、所定の距離で区切られたリンク間の接続地点であってもよい。ノードおよびリンクは、記憶部に記憶された地図情報を構成する。地図情報は、たとえば、交差点(点)、道路(線や曲線)、領域(面)やこれらを表示する色などを数値化したベクタデータで構成される。
【0029】
具体的には、算出部202は、第一情報と、第二情報と、第三情報と、からなる消費エネルギー推定式に基づいて、所定区間における推定エネルギー消費量を推定する。より具体的には、算出部202は、移動体の速度に関する情報や移動体情報に基づいて、所定区間における推定エネルギー消費量を推定する。移動体情報とは、移動体の重量(乗車人数や積載荷物による重量も含む)、回転体の重量など、移動体走行時に消費または回収されるエネルギー量を変化させる要因となる情報である。なお、道路勾配が明らかな場合、算出部202は、さらに第四情報を加えた消費エネルギー推定式に基づいて、所定区間における推定エネルギー消費量を推定してもよい。
【0030】
消費エネルギー推定式とは、所定区間における移動体のエネルギー消費量を推定する推定式である。具体的には、消費エネルギー推定式は、エネルギー消費量を増減させる異なる要因である第一情報、第二情報および第三情報からなる多項式である。また、道路勾配が明らかな場合、消費エネルギー推定式には、さらに第四情報が加えられる。消費エネルギー推定式についての詳細な説明は後述する。
【0031】
第一情報は、移動体に搭載された駆動源が稼動した状態における移動体の停止時に消費されるエネルギーに関する情報である。駆動源が稼動した状態における移動体の停止時とは、移動体のエンジンに負荷がかからない程度に、エンジンを低速で空回りさせた状態である。すなわち、駆動源が可動した状態における移動体の停止時とは、アイドリング時である。EV車の場合、駆動源が可動した状態における移動体の停止時とは、移動体の停止状態であり、アクセルを踏めば、駆動源であるモータが可動し始める状態である。
【0032】
具体的には、第一情報は、たとえば、エンジンをかけたまま停車しているときや、信号などで停止しているときに消費されるエネルギー消費量である。すなわち、第一情報は、移動体の走行に関係しない要因で消費されるエネルギー消費量であり、移動体に備えられたエアコンやオーディオなどによるエネルギー消費量である。第一情報は、EV車の場合、ほぼゼロとしてもよい。
【0033】
第二情報は、移動体の加減速時に消費および回収されるエネルギーに関する情報である。移動体の加減速時とは、移動体の速度が時間的に変化している走行状態である。具体的には、移動体の加減速時とは、所定時間内において、移動体の速度が変化する走行状態である。所定時間とは、一定間隔の時間の区切りであり、たとえば、単位時間あたりなどである。回収されるエネルギーとは、EV車の場合、たとえば、移動体の走行時にバッテリーに充電される電力である。また、回収されるエネルギーとは、ガソリン車の場合、たとえば、消費される燃料を低減(燃料カット)し節約することのできる燃料である。
【0034】
第三情報は、移動体の走行時に生じる抵抗により消費されるエネルギーに関する情報である。移動体の走行時とは、所定時間内において、移動体の速度が一定、加速もしくは減速している走行状態である。移動体の走行時に生じる抵抗とは、移動体の走行時に移動体の走行状態を変化させる要因である。具体的には、移動体の走行時に生じる抵抗とは、気象状況、道路状況、車両状況などにより移動体に生じる各種抵抗である。
【0035】
気象状況により移動体に生じる抵抗とは、たとえば、雨、風などの気象変化による空気抵抗である。道路状況により移動体に生じる抵抗とは、道路勾配、路面の舗装状態、路面上の水などによる路面抵抗である。車両状況により移動体に生じる抵抗とは、タイヤの空気圧、乗車人数、積載重量などにより移動体にかかる負荷抵抗である。
【0036】
具体的には、第三情報は、空気抵抗や路面抵抗、負荷抵抗を受けた状態で、移動体を一定速度、加速もしくは減速で走行させたときのエネルギー消費量である。より具体的には、第三情報は、たとえば、向かい風により移動体に生じる空気抵抗や、舗装されていない道路から受ける路面抵抗などを、移動体が一定速度、加速もしくは減速で走行するときに消費されるエネルギー消費量である。
【0037】
第四情報は、移動体が位置する高度の変化により消費および回収されるエネルギーに関する情報である。移動体が位置する高度の変化とは、移動体の位置する高度が時間的に変化している状態である。具体的には、移動体が位置する高度の変化とは、所定時間内において、移動体が勾配のある道路を走行することにより高度が変化する走行状態である。
【0038】
また、第四情報は、所定区間内における道路勾配が明らかな場合に求めることができる付加的な情報であり、これによりエネルギー消費量の推定精度を向上することができる。なお、道路の傾斜が不明な場合、または計算を簡略化する場合、移動体が位置する高度の変化はないものとして、後述する消費エネルギー推定式における道路勾配θ=0としてエネルギー消費量を推定することができる。
【0039】
探索部203は、記憶部に記憶された地図情報、取得部201によって取得された移動体の現在地点および初期保有エネルギー量、並びに算出部202によって算出された推定エネルギー消費量に基づいて、移動体が現在地点から到達可能な地点である複数の到達可能地点を探索する。
【0040】
具体的には、探索部203は、移動体の現在地点から移動可能なすべての経路において、それぞれ、移動体の現在地点を始点とし、移動体からの経路上の所定地点どうしを結ぶ所定区間における推定エネルギー消費量の累計が最小となるように所定地点および所定区間を探索する。そして、探索部203は、移動体の現在地点から移動可能なすべての経路において、それぞれ、推定エネルギー消費量の累計が移動体の現時点での初期保有エネルギー量の範囲内にある所定地点を移動体の到達可能地点とする。
【0041】
より具体的には、探索部203は、移動体の現在地点を始点として、移動体の現在地点から移動可能なすべてのリンク、これらのリンクにそれぞれ接続するノード、これらのノードから移動可能なすべてのリンクと、移動体の到達可能なすべてのノードおよびリンクを順に探索する。このとき、探索部203は、新たな一のリンクを探索するごとに、一のリンクが接続する経路の推定エネルギー消費量を累計し、推定エネルギー消費量の累計が最小となるように当該一のリンクに接続するノードおよびこのノードに接続する複数のリンクを探索する。
【0042】
例えば、探索部203は、当該一のリンクおよび他のリンクが同一のノードに接続されている場合、このノードに接続する複数のリンクのうち、移動体の現在地点から当該ノードまでの推定エネルギー消費量の累計の少ないリンクの推定エネルギー消費量を使って当該ノードの推定エネルギー消費量の累計を算出する。そして、探索部203は、探索されたノードおよびリンクで構成される複数の経路において、それぞれ、推定エネルギー消費量の累計が移動体の初期保有エネルギー量の範囲内にあるすべてのノードを移動体の到達可能地点として探索する。このように推定エネルギー消費量の少ないリンクの推定エネルギー消費量を使うことにより、当該ノードの推定エネルギー消費量の正しい累計を算出することができる。
【0043】
また、探索部203は、移動体の移動が禁止された所定区間を、移動体の到達可能地点を探索するための候補から除いて当該到達可能地点を探索してもよい。移動体の移動が禁止された所定区間とは、たとえば、一方通行の逆走となるリンク、時間規制や季節規制により通行禁止区間となるリンクである。時間規制とは、たとえば、通学路や行事などに設定されることにより、ある時間帯で通行が禁止されることである。季節規制とは、たとえば、大雨や大雪などにより通行が禁止されることである。
【0044】
探索部203は、複数の所定区間のうち、一の所定区間の次に選択する他の所定区間の重要度が当該一の所定区間の重要度よりも低い場合、他の所定区間を、移動体の到達可能地点を探索するための候補から除いて当該到達可能地点を探索してもよい。所定区間の重要度とは、たとえば、道路種別などである。道路種別とは、法定速度や、道路の勾配、道路幅、信号の有無などの道路状態の違いにより区別することのできる道路の種類である。具体的には、道路種別とは、一般国道、高速道路、一般道路、市街地などを通る細街路などである。細街路とは、たとえば、市街地内にある幅員4メートル未満の建築基準法に規定された道路である。
【0045】
さらに、探索部203は、一の橋または一のトンネルの入口および出口が移動体の到達可能地点となる場合、分割部204によって分割される地図情報の一の橋または一のトンネルを構成するすべての領域が移動体の到達可能範囲に含まれるように移動体の到達可能地点を探索するのが好ましい。具体的には、探索部203は、たとえば、一の橋または一のトンネルの入口が移動体の到達可能地点となる場合、一の橋または一のトンネルの入口から出口に向かって、一の橋または一のトンネル上に複数の到達可能地点が探索されるように当該到達可能地点を探索してもよい。一の橋または一のトンネルの入口とは、一の橋または一のトンネルの、移動体の現在地点に近い側の始点である。
【0046】
分割部204は、地図情報を複数の領域に分割する。具体的には、分割部204は、探索部203によって探索された移動体の複数の到達可能地点のうち、移動体の現在地点から最も離れた到達可能地点に基づいて、地図情報を複数の矩形状の領域に分割し、たとえばm×mドットのメッシュに変換する。m×mドットのメッシュは、後述する付与部205によって識別情報が付与されたラスタデータ(画像データ)として扱われる。なお、m×mドットのそれぞれのmは同じ数値でも構わないし、異なる数値でも構わない。
【0047】
より具体的には、分割部204は、最大経度、最小経度、最大緯度、最小緯度を抽出し移動体の現在地点からの距離を算出する。そして、分割部204は、たとえば、移動体の現在地点から最も遠い到達可能地点と移動体の現在地点とをn等分したときの一の領域の大きさを、地図情報を複数の領域に分割したときの一の領域の大きさとし、地図情報をm×mドットのメッシュに分割する。このとき、メッシュの周辺のたとえば4ドット分を空白にするために、n=(m/2)-4とする。
【0048】
付与部205は、探索部203によって探索された複数の到達可能地点に基づいて、分割部204によって分割された複数の領域にそれぞれ移動体が到達可能であるか否かを識別する識別情報を付与する。具体的には、付与部205は、分割部204によって分割された一の領域に移動体の到達可能地点が含まれる場合、その一の領域に移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報を付与する。その後、付与部205は、分割部204によって分割された一の領域に移動体の到達可能地点が含まれない場合、その一の領域に移動体が到達不可能であることを識別する到達不可能の識別情報を付与する。
【0049】
より具体的には、付与部205は、m×mに分割されたメッシュの各領域に、到達可能の識別情報「1」または到達不可能の識別情報「0」を付与することで、m行m列の2次元行列データのメッシュに変換する。分割部204および付与部205は、このように地図情報を分割してm行m列の2次元行列データのメッシュに変換し、2値化されたラスタデータとして扱う。
【0050】
付与部205は、分割部204によって分割された複数の領域に対して識別情報の変更処理をおこなう第1変更部251および第2変更部252を備える。具体的には、付与部205は、第1変更部251および第2変更部252によって、地図情報が分割されてなるメッシュを2値化されたラスタデータとして扱い、クロージング処理(膨張処理後に縮小処理をおこなう処理)をおこなう。また、付与部205は、第1変更部251および第2変更部252によって、オープニング処理(縮小処理後に膨張処理をおこなう処理)をおこなってもよい。
【0051】
具体的には、第1変更部251は、識別情報が付与された一の領域に隣り合う他の領域に到達可能の識別情報が付与されている場合、当該一の領域の識別情報を到達可能の識別情報に変更する(膨張処理)。より具体的には、第1変更部251は、矩形状の一の領域の、左下、下、右下、右、右上、上、左上、左の8方向に隣り合う他の領域のうちのいずれかの領域に到達可能の識別情報である「1」が付与されている場合、当該一の領域の識別情報を「1」に変更する。
【0052】
第2変更部252は、第1変更部251による識別情報の変更後、識別情報が付与された一の領域に隣り合う他の領域に到達不可能の識別情報が付与されている場合、当該一の領域の識別情報を到達不可能の識別情報に変更する(縮小処理)。より具体的には、第2変更部252は、矩形状の一の領域の、左下、下、右下、右、右上、上、左上、左の8方向に隣り合う他の領域のうちのいずれかの領域に到達不可能の識別情報である「0」が付与されている場合、当該一の領域の識別情報を「0」に変更する。第1変更部251による膨張処理と、第2変更部252による縮小処理は、同じ回数ずつおこなう。
【0053】
このように、付与部205は、分割部204によって分割された複数の領域のうち、移動体が現在地点から到達可能な地点である到達可能地点を含む領域に、当該移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報を付与して当該移動体の到達可能範囲とする。その後、付与部205は、到達可能の識別情報を付与した領域に隣り合う領域にも到達可能の識別情報を付与し、移動体の到達可能範囲に欠損点が生じないように各領域の識別情報を変更する。
【0054】
また、付与部205は、地図情報の一の橋または一のトンネルの入口および出口に相当する分割された地図情報に、到達可能であることを識別する到達可能の識別情報が付与されている場合、当該一の橋または当該一のトンネルを構成するすべての領域に相当する分割された地図情報に、到達可能の識別手段を付与する。具体的には、付与部205は、たとえば、一の橋または一のトンネルの入口および出口に相当する各領域にそれぞれ到達可能の識別情報が付与されている場合、一の橋または一のトンネルの入口に相当する領域から出口に相当する領域に至るまでに移動体が移動可能な全領域に到達可能の識別情報を付与する。
【0055】
より具体的には、付与部205は、たとえば、第1変更部251による膨張処理前に、一の橋または一のトンネルの入口および出口に相当する各領域にそれぞれ到達可能の識別情報である「1」が付与されている場合で、一の橋または一のトンネル上に欠損点が生じているときに、一の橋または一のトンネルの入口に相当する領域と出口に相当する領域とを結ぶ区間上に位置する全領域の識別情報を「1」に変更する。一の橋または一のトンネルの入口に相当する領域と出口に相当する領域とを結ぶ区間とは、複数のカーブを含む道路に相当する区間であってもよいし、一本の直線状の道路に相当する区間であってもよい。
【0056】
表示制御部206は、付与部205によって識別情報が付与された領域の識別情報に基づいて、移動体の到達可能範囲を地図情報とともに表示部210に表示させる。具体的には、表示制御部206は、付与部205によって識別情報が付与された複数の画像データであるメッシュをベクタデータに変換し、記憶部に記憶された地図情報とともに表示部210に表示させる。
【0057】
図3は、図2に示した表示制御部206の詳細な機能的構成例を示すブロック図である。表示制御部206は、輪郭抽出部261と、補完部262と、変換部263と、除去部264と、逆変換部265と、間引き部266と、を有する。
【0058】
輪郭抽出部261は、到達可能の識別情報が付与された一の領域と当該一の領域と隣り合う到達可能の識別情報が付与された他の領域との位置関係に基づいて移動体の到達可能範囲の輪郭を抽出し表示部210に表示させる。より具体的には、輪郭抽出部261は、たとえば、フリーマンのチェインコードを用いて移動体の到達可能範囲の輪郭を示す輪郭データを抽出し、移動体の到達可能範囲を表示部210に表示させる。輪郭データ上の外周点を結ぶ線分データのうち、表示画面において直交しあうX軸とY軸のいずれかに平行な線分データは、同一長さである。
【0059】
また、輪郭抽出部261は、到達可能の識別情報が付与された領域の経度緯度情報に基づいて移動体の到達可能範囲を抽出し、表示部210に表示させてもよい。具体的には、輪郭抽出部261は、たとえば、m行m列の2次元行列データを1行ごとに1列目から到達可能の識別情報「1」を検索する。そして、表示制御部206は、2次元行列データの各行においてそれぞれ到達可能の識別情報「1」を含む連続する領域を検索し、最初に「1」を検出した領域の最小経度、最小緯度(領域の左上座標)と、最後に「1」を検出した領域の最大経度、最大緯度(領域の右下座標)とを結ぶ線分を対角線とする矩形領域を移動体の到達可能範囲として表示する。
【0060】
補完部262は、輪郭データ上の外周点を結ぶ線分データを補完する。具体的には、たとえば、補完部262は、線分データが、X軸とY軸のいずれにもに平行でない場合、補完部262は、当該線分データを、X方向成分の線分データと、Y方向成分の線分データに分解する。これにより、輪郭データを構成する各線分データは、同一長さとなる。
【0061】
変換部263は、フーリエ変換を利用して2次元の輪郭データを周波数変換する。具体的には、たとえば、変換部263は、高速フーリエ変換により、輪郭データを周波数変換する。より具体的には、変換部263は、輪郭データ上の隣り合う頂点(外周点)を始点・終点に持つベクトル列を計算する。そして、変換部263は、P型のフーリエ記述子を使う場合、各ベクトルの偏角と線分の長さに分解する。これにより、輪郭の形状特徴量が得られる。線分の長さは一定であるため、変換部263は、偏角の配列に対して高速フーリエ変換を実行する。
【0062】
除去部264は、変換部263によって変換された変換結果から、高周波成分を除去する。具体的には、たとえば、除去部264は、あらかじめ設定されたカットオフ周波数以上の周波数成分を、変換結果から除去する。より具体的には、除去部264は、変換部263により得られた偏角の周波数成分にローパスフィルタを通すことにより高周波成分を除去する。また、ユーザは、カットオフ周波数を変更することにより、輪郭データの滑らかさを調節することができる。
【0063】
逆変換部265は、除去部264による除去後の変換結果を輪郭データに戻す。具体的には、たとえば、逆変換部265は、逆高速フーリエ変換により、除去部264による除去後の変換結果を輪郭データに戻す。これにより、変換前の輪郭データよりも滑らかな輪郭データを得ることができる。
【0064】
間引き部266は、逆変換部265により得られた輪郭データを構成する線分データ群のうち、隣り合う線分データのなす角度の絶対値が所定値よりも小さい場合、隣り合う線分データ同士を接続する頂点を間引く。その後、間引き部266は、隣り合う線分データの反対側の頂点同士を結ぶことにより、輪郭データを修正する。これにより、簡単な処理により、より滑らかな輪郭データを得ることができる。
【0065】
つぎに、画像処理装置200による画像処理について説明する。図4は、画像処理装置による画像処理の手順の一例を示すフローチャートである。図4のフローチャートにおいて、画像処理装置200は、まず、取得部201によって、移動体の現在地点に関する情報、および、移動体の現在地点において移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報、を取得する(ステップS401,S402)。このとき、画像処理装置200は、移動体情報も取得してもよい。
【0066】
そして、画像処理装置200は、算出部202によって、移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量を算出する(ステップS403)。このとき、画像処理装置200は、移動体の経路上の所定地点どうしを結ぶ複数の所定区間における推定エネルギー消費量をそれぞれ算出する。つぎに、画像処理装置200は、探索部203によって、記憶部に記憶された地図情報と、ステップS402,S403において取得した初期保有エネルギー量および推定エネルギー消費量とに基づいて、移動体の複数の到達可能地点を探索する(ステップS404)。
【0067】
つぎに、画像処理装置200は、分割部204によって、ベクタデータからなる地図情報を複数の領域に分割し、ラスタデータからなるメッシュに変換する(ステップS405)。つぎに、画像処理装置200は、ステップS404において探索した複数の到達可能地点に基づいて、ステップS405において分割した複数の領域にそれぞれ、付与部205によって到達可能または到達不可能の識別情報を付与する(ステップS406)。その後、画像処理装置200は、ステップS406において識別情報を付与した複数の領域の識別情報に基づいて、表示制御部206によって移動体の到達可能範囲を表示部210に表示させ(ステップS407)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0068】
以上説明したように、実施の形態1にかかる画像処理装置200は、地図情報を複数の領域に分割して各領域ごとに移動体が到達可能か否かを探索し、各領域にそれぞれ移動体が到達可能または到達不可能であることを識別する到達可能または到達不可能の識別情報を付与する。そして、画像処理装置200は、到達可能の識別情報が付与された領域に基づいて移動体の到達可能範囲を生成する。このため、画像処理装置200は、海や湖、山脈など移動体の走行不可能な領域を除いた状態で移動体の到達可能範囲を生成することができる。したがって、画像処理装置200は、移動体の到達可能範囲を正確に表示することができる。
【0069】
また、画像処理装置200は、地図情報を分割した複数の領域を画像データに変換し、当該複数の領域にそれぞれ到達可能または到達不可能の識別情報を付与した後、クロージングの膨張処理をおこなう。このため、画像処理装置200は、移動体の到達可能範囲内の欠損点を除去することができる。
【0070】
また、画像処理装置200は、地図情報を分割した複数の領域を画像データに変換し、当該複数の領域にそれぞれ到達可能または到達不可能の識別情報を付与した後、オープニングの縮小処理をおこなう。このため、画像処理装置200は、移動体の到達可能範囲の孤立点を除去することができる。
【0071】
このように、画像処理装置200は、移動体の到達可能範囲の欠損点や孤立点を除去することができるので、移動体の走行可能範囲を2次元のなめらかな面でかつ見やすく表示することができる。また、画像処理装置200は、地図情報を複数の領域に分割して生成したメッシュの輪郭を抽出する。このため、画像処理装置200は、移動体の到達可能範囲の輪郭をなめらかに表示することができる。
【0072】
また、画像処理装置200は、移動体の到達可能地点を探索する道路を絞り込んで、移動体の到達可能地点を探索する。このため、画像処理装置200は、移動体の到達可能地点を探索する際の処理量を低減することができる。移動体の到達可能地点を探索する道路を絞り込むことで、探索可能な到達可能地点が少なくなったとしても、上述したようにクロージングの膨張処理がおこなわれることにより、移動体の到達可能範囲内に生じる欠損点を除去することができる。したがって、画像処理装置200は、移動体の到達可能範囲を生成するための処理量を低減することができる。また、画像処理装置200は、移動体の走行可能範囲を2次元のなめらかな面で見やすく表示することができる。
【実施例0073】
以下に、本発明の実施例1について説明する。本実施例では、車両に搭載されるナビゲーション装置500を画像処理装置200として、本発明を適用した場合の一例について説明する。
【0074】
(ナビゲーション装置500のハードウェア構成)
つぎに、ナビゲーション装置500のハードウェア構成について説明する。図5は、ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図5において、ナビゲーション装置500は、CPU501、ROM502、RAM503、磁気ディスクドライブ504、磁気ディスク505、光ディスクドライブ506、光ディスク507、音声I/F(インターフェース)508、マイク509、スピーカ510、入力デバイス511、映像I/F512、ディスプレイ513、カメラ514、通信I/F515、GPSユニット516、各種センサ517を備えている。各構成部501~517は、バス520によってそれぞれ接続されている。
【0075】
CPU501は、ナビゲーション装置500の全体の制御を司る。ROM502は、ブートプログラム、推定エネルギー消費量算出プログラム、到達可能地点探索プログラム、識別情報付与プログラム、地図データ表示プログラムなどのプログラムを記録している。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。すなわち、CPU501は、RAM503をワークエリアとして使用しながら、ROM502に記録された各種プログラムを実行することによって、ナビゲーション装置500の全体の制御を司る。
【0076】
推定エネルギー消費量算出プログラムでは、車両の推定エネルギー消費量を算出する消費エネルギー推定式に基づいて、一のノードと隣り合うノードとを結ぶリンクにおける推定エネルギー消費量を算出する。到達可能地点探索プログラムでは、推定プログラムにおいて算出された推定エネルギー消費量に基づいて、車両の現在地点での残存エネルギー量で到達可能な複数の地点(ノード)が探索される。識別情報付与プログラムでは、探索プログラムにおいて探索された複数の到達可能地点に基づいて、地図情報を分割した複数の領域に、車両が到達可能または到達不可能であることを識別する識別情報が付与される。地図データ表示プログラムでは、識別情報付与プログラムによって識別情報が付与された複数の領域に基づいて、車両の到達可能範囲をディスプレイ513に表示させる。
【0077】
磁気ディスクドライブ504は、CPU501の制御にしたがって磁気ディスク505に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。磁気ディスク505は、磁気ディスクドライブ504の制御で書き込まれたデータを記録する。磁気ディスク505としては、たとえば、HD(ハードディスク)やFD(フレキシブルディスク)を用いることができる。
【0078】
また、光ディスクドライブ506は、CPU501の制御にしたがって光ディスク507に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。光ディスク507は、光ディスクドライブ506の制御にしたがってデータが読み出される着脱自在な記録媒体である。光ディスク507は、書き込み可能な記録媒体を利用することもできる。着脱可能な記録媒体として、光ディスク507のほか、MO、メモリカードなどを用いることができる。
【0079】
磁気ディスク505および光ディスク507に記録される情報の一例としては、地図データ、車両情報、道路情報、走行履歴などが挙げられる。地図データは、カーナビゲーションシステムにおいて車両の到達可能地点を探索するときや、車両の到達可能範囲を表示するときに用いられ、建物、河川、地表面などの地物(フィーチャ)をあらわす背景データ、道路の形状をリンクやノードなどであらわす道路形状データなどを含むベクタデータである。
【0080】
音声I/F508は、音声入力用のマイク509および音声出力用のスピーカ510に接続される。マイク509に受音された音声は、音声I/F508内でA/D変換される。マイク509は、たとえば、車両のダッシュボード部などに設置され、その数は単数でも複数でもよい。スピーカ510からは、所定の音声信号を音声I/F508内でD/A変換した音声が出力される。
【0081】
入力デバイス511は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたリモコン、キーボード、タッチパネルなどが挙げられる。入力デバイス511は、リモコン、キーボード、タッチパネルのうちいずれか1つの形態によって実現されてもよいが、複数の形態によって実現することも可能である。
【0082】
映像I/F512は、ディスプレイ513に接続される。映像I/F512は、具体的には、たとえば、ディスプレイ513全体を制御するグラフィックコントローラと、即時表示可能な画像情報を一時的に記録するVRAM(Video RAM)などのバッファメモリと、グラフィックコントローラから出力される画像データに基づいてディスプレイ513を制御する制御ICなどによって構成される。
【0083】
ディスプレイ513には、アイコン、カーソル、メニュー、ウインドウ、あるいは文字や画像などの各種データが表示される。ディスプレイ513としては、たとえば、TFT液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどを用いることができる。
【0084】
カメラ514は、車両内部あるいは外部の映像を撮影する。映像は静止画あるいは動画のどちらでもよく、たとえば、カメラ514によって車両外部を撮影し、撮影した画像をCPU501において画像解析したり、映像I/F512を介して磁気ディスク505や光ディスク507などの記録媒体に出力したりする。
【0085】
通信I/F515は、無線を介してネットワークに接続され、ナビゲーション装置500およびCPU501のインターフェースとして機能する。ネットワークとして機能する通信網には、CANやLIN(Local Interconnect Network)などの車内通信網や、公衆回線網や携帯電話網、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN、WANなどがある。通信I/F515は、たとえば、公衆回線用接続モジュールやETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)ユニット、FMチューナー、VICS(Vehicle Information and Communication System:登録商標)/ビーコンレシーバなどである。
【0086】
GPSユニット516は、GPS衛星からの電波を受信し、車両の現在位置を示す情報を出力する。GPSユニット516の出力情報は、後述する各種センサ517の出力値とともに、CPU501による車両の現在位置の算出に際して利用される。現在位置を示す情報は、たとえば、緯度・経度、高度などの、地図データ上の1点を特定する情報である。
【0087】
各種センサ517は、車速センサ、加速度センサ、角速度センサ、傾斜センサなどの、車両の位置や挙動を判断するための情報を出力する。各種センサ517の出力値は、CPU501による車両の現在位置の算出や、速度や方位の変化量の算出に用いられる。
【0088】
図2に示した画像処理装置200の取得部201、算出部202、探索部203、分割部204、付与部205、表示制御部206は、上述したナビゲーション装置500におけるROM502、RAM503、磁気ディスク505、光ディスク507などに記録されたプログラムやデータを用いて、CPU501が所定のプログラムを実行し、ナビゲーション装置500における各部を制御することによってその機能を実現する。
【0089】
(ナビゲーション装置500による推定エネルギー消費量算出の概要)
本実施例のナビゲーション装置500は、自装置が搭載された車両の推定エネルギー消費量を算出する。具体的には、ナビゲーション装置500は、たとえば、速度、加速度、車両の勾配に基づいて、第一情報と、第二情報と、第三情報と、からなる消費エネルギー推定式のいずれか一つ以上の式を用いて、所定区間における車両の推定エネルギー消費量を算出する。所定区間とは、道路上の一のノード(たとえば交差点)と当該一のノードに隣り合う他のノードとを結ぶリンクである。
【0090】
より具体的には、ナビゲーション装置500は、プローブで提供される渋滞情報や、サーバを介して取得した渋滞予測データ、記憶装置に記憶されたリンクの長さや道路種別などに基づいて、車両がリンクを走行し終わるのに要する旅行時間を算出する。そして、ナビゲーション装置500は、次の(1)式~(2)式に示す消費エネルギー推定式のいずれかを用いて単位時間当たりの推定エネルギー消費量を算出し、車両がリンクを旅行時間で走行し終える際の推定エネルギー消費量を算出する。
【0091】
【数1】
【0092】
【数2】
【0093】
上記(1)式に示す消費エネルギー推定式は、加速時および走行時における単位時間当たりの消費エネルギーを推定する理論式である。ここで、εは正味熱効率、ηは総伝達効率である。移動体の加速度αと道路勾配θから重力の加速度gとの合計を合成加速度|α|とすると、合成加速度|α|が負の場合の消費エネルギー推定式は、上記(2)式で表される。すなわち、上記(2)式に示す消費エネルギー推定式は、減速時における単位時間当たりの消費エネルギーを推定する理論式である。このように、加減速時および走行時における単位時間当たりの消費エネルギー推定式は、走行抵抗と走行距離と正味モータ効率と伝達効率との積であらわされる。
【0094】
上記(1)式および(2)式において、右辺第1項は、アイドリング時のエネルギー消費量(第一情報)である。右辺第2項は、勾配成分によるエネルギー消費量(第四情報)および転がり抵抗成分によるエネルギー消費量(第三情報)である。右辺第3項は、空気抵抗成分によるエネルギー消費量(第三情報)である。また、(1)式の右辺第4項は、加速成分によるエネルギー消費量(第二情報)である。(2)式の右辺第4項は、減速成分によるエネルギー消費量(第二情報)である。
【0095】
上記(1)式および(2)式では、モータ効率と駆動効率は一定と見なしている。しかし、実際には、モータ効率および駆動効率はモータ回転数やトルクの影響により変動する。そこで、次の(3)式および(4)式に単位時間当たりの消費エネルギーを推定する実証式を示す。
【0096】
合成加速度|α+g・sinθ|が正の場合の推定エネルギー消費量を算出する実証式、すなわち、加速時および走行時における単位時間当たりの推定エネルギー消費量を算出する実証式は、次の(3)式であらわされる。また、合成加速度|α+g・sinθ|が負の場合の推定エネルギー消費量を算出する実証式、すなわち、減速時における単位時間当たりの推定エネルギー消費量を算出する実証式は、次の(4)式で表される。
【0097】
【数3】
【0098】
【数4】
【0099】
上記(3)式および(4)式において、係数a1,a2は、車両状況などに応じて設定される常数である。係数k1,k2,k3は、加速時におけるエネルギー消費量に基づく変数である。また、速度Vとしており、その他の変数は、上記(1)式および(2)式と同様である。右辺第1項は、上記(1)式および(2)式の右辺第1項に相当する。
【0100】
また、上記(3)式および(4)式において、右辺第2項は、上記(1)式および(2)式の、右辺第2項の勾配抵抗成分のエネルギーと、右辺第4項の加速度抵抗成分のエネルギーとに相当する。右辺第3項は、上記(1)式および(2)式の、右辺第2項の転がり抵抗成分のエネルギーと、右辺第3項の空気抵抗成分のエネルギーに相当する。(4)式の右辺第2項のβは、位置エネルギーと運動エネルギーの回収分(以下、「回収率」とする)である。
【0101】
また、ナビゲーション装置500は、上述したように車両がリンクを走行するのに要する旅行時間を算出し、車両がリンクを走行するときの平均速度および平均加速度を算出する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクにおける車両の平均速度および平均加速度を用いて、次の(5)式または(6)式に示す消費エネルギー推定式に基づいて、車両がリンクを旅行時間で走行し終える際の推定エネルギー消費量を算出してもよい。
【0102】
【数5】
【0103】
【数6】
【0104】
上記(5)式に示す消費エネルギー推定式は、車両が走行するリンクの高度差Δhが正の場合の、リンクにおける推定エネルギー消費量を算出する理論式である。高度差Δhが正の場合とは、車両が上り坂を走行している場合である。上記(6)式に示す消費エネルギー推定式は、車両が走行するリンクの高度差Δhが負の場合の、リンクにおける推定エネルギー消費量を算出する理論式である。高度差Δhが負の場合とは、車両が下り坂を走行している場合である。高度差がない場合は、上記(5)式に示す消費エネルギー推定式を用いるのが好ましい。
【0105】
上記(5)式および(6)式において、右辺第1項は、アイドリング時のエネルギー消費量(第一情報)である。右辺第2項は、加速抵抗によるエネルギー消費量(第二情報)である。右辺第3項は、位置エネルギーとして消費されるエネルギー消費量である(第四情報)。右辺第4項は、単位面積当たりに受ける空気抵抗および転がり抵抗(走行抵抗)によるエネルギー消費量(第三情報)である。
【0106】
ナビゲーション装置500は、道路勾配が明らかでない場合、上記(1)式~(6)式に示す消費エネルギー推定式の道路勾配θ=0として車両の推定エネルギー消費量を算出してもよい。
【0107】
つぎに、上記(1)式~(6)式で用いる回収率βについて説明する。上記(5)式において、右辺第2項をリンクにおける加速成分のエネルギー消費量Paccとすると、加速成分のエネルギー消費量Paccは、リンクにおける全エネルギー消費量(左辺)から、アイドリング時のエネルギー消費量(右辺第1項)と走行抵抗によるエネルギー消費量(右辺第4項)を減じたものであり、次の(7)式で表される。
【0108】
【数7】
【0109】
なお、上記(7)式では、車両は道路勾配θの影響を受けていないこととする(θ=0)。すなわち、上記(5)式の右辺第3項をゼロとする。そして、上記(7)式を上記(5)式に代入することで、次の(8)式に示す回収率βの算出式を得ることができる。
【0110】
【数8】
【0111】
回収率βは、EV車では0.7~0.9程度であり、HV車では0.6~0.8程度であり、ガソリン車では0.2~0.3程度である。なお、ガソリン車の回収率とは、加速時に要するエネルギーと減速時に回収するエネルギーとの割合である。
【0112】
(ナビゲーション装置500における到達可能地点探索の概要)
本実施例のナビゲーション装置500は、自装置が搭載された車両の現在地点から到達可能な複数のノードを車両の到達可能地点として探索する。具体的には、ナビゲーション装置500は、上記(1)~(6)式に示す消費エネルギー推定式のいずれか1つ以上を用いてリンクにおける推定エネルギー消費量を算出する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクにおける推定エネルギー消費量の累計が最小となるように車両の到達可能なノードを探索し到達可能地点とする。以下に、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について説明する。
【0113】
図6図9は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図である。図6図9では、地図データのノード(たとえば交差点)を丸印とし、隣り合うノードどうしを結ぶリンク(道路上の所定区間)を線分で示す(図10図11についても同様にノードおよびリンクを図示)。
【0114】
図6に示すように、ナビゲーション装置500は、まず、車両の現在地点600から最も近いリンクL1_1を探索する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクL1_1に接続するノードN1_1を探索し、到達可能地点を探索するためのノード候補(以下、単に「ノード候補」という)に追加する。
【0115】
つぎに、ナビゲーション装置500は、消費エネルギー推定式を用いて、車両の現在地点600とノード候補としたノードN1_1とを結ぶリンクL1_1における推定エネルギー消費量を算出する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクL1_1における推定エネルギー消費量3whを、たとえばノードN1_1に関連付けて記憶装置(磁気ディスク505や光ディスク507)に書き出す。
【0116】
つぎに、図7に示すように、ナビゲーション装置500は、ノードN1_1に接続するすべてのリンクL2_1,L2_2,L2_3を探索し、到達可能地点を探索するためのリンク候補(以下、単に「リンク候補」という)とする。つぎに、ナビゲーション装置500は、消費エネルギー推定式を用いて、リンクL2_1における推定エネルギー消費量を算出する。
【0117】
そして、ナビゲーション装置500は、リンクL2_1における推定エネルギー消費量4whとリンクL1_1における推定エネルギー消費量3whとを累計した累計エネルギー量7whを、リンクL2_1に接続するノードN2_1に関連付けて記憶装置(磁気ディスク505や光ディスク507)に書き出す(以下、「累計エネルギー量をノードに設定」とする)。
【0118】
さらに、ナビゲーション装置500は、リンクL2_1の場合と同様に、消費エネルギー推定式を用いて、リンクL2_2,L2_3における推定エネルギー消費量をそれぞれ算出する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクL2_2における推定エネルギー消費量5whとリンクL1_1における推定エネルギー消費量3whとを累計した累計エネルギー量8whを、リンクL2_2に接続するノードN2_2に設定する。
【0119】
また、ナビゲーション装置500は、リンクL2_3における推定エネルギー消費量3whとリンクL1_1における推定エネルギー消費量3whとを累計した累計エネルギー量6whを、リンクL2_3に接続するノードN2_3に設定する。このとき、ナビゲーション装置500は、累計エネルギー量を設定したノードがノード候補でない場合には、そのノードをノード候補に追加する。
【0120】
つぎに、図8に示すように、ナビゲーション装置500は、ノードN2_1に接続するすべてのリンクL3_1,L3_2_1、ノードN2_2に接続するすべてのリンクL3_2_2,L3_3,L3_4、およびノードN2_3に接続するリンクL3_5を探索し、リンク候補とする。つぎに、ナビゲーション装置500は、消費エネルギー推定式を用いて、リンクL3_1~L3_5における推定エネルギー消費量を算出する。
【0121】
そして、ナビゲーション装置500は、リンクL3_1における推定エネルギー消費量4whをノードN2_1に設定した累計エネルギー量7whに累計し、リンクL3_1に接続するノードN3_1に累計エネルギー量11whを設定する。また、ナビゲーション装置500は、リンクL3_3~L3_5においてもリンクL3_1の場合と同様に、各リンクL3_3~L3_5にそれぞれ接続するノードN3_3~N3_5に累計エネルギー量13wh,12wh,10whを設定する。
【0122】
具体的には、ナビゲーション装置500は、リンクL3_3における推定エネルギー消費量5whをノードN2_2に設定した累計エネルギー量8whに累計し、ノードN3_3に累計エネルギー量13whを設定する。ナビゲーション装置500は、リンクL3_4における推定エネルギー消費量4whをノードN2_2に設定した累計エネルギー量8whに累計し、ノードN3_4に累計エネルギー量12whを設定する。ナビゲーション装置500は、リンクL3_5における推定エネルギー消費量4whをノードN2_3に設定した累計エネルギー量6whに累計し、ノードN3_5に累計エネルギー量10whを設定する。
【0123】
一方、ナビゲーション装置500は、ノードN3_2のように一のノードに複数のリンクL3_2_1,L3_2_2が接続する場合には、車両の現在地点600から一のノードN3_2までの複数の経路における累計エネルギー量のうち、最小の累計エネルギー量10whを当該一のノードN3_2に設定する。
【0124】
具体的には、ナビゲーション装置500は、リンクL3_2_1における推定エネルギー消費量4whをノードN2_1に設定した累計エネルギー量7whに累計し(=累計エネルギー量11wh)、リンクL3_2_2における推定エネルギー消費量2whをノードN2_2に設定した累計エネルギー量8whに累計する(=累計エネルギー量10wh)。そして、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点600からリンクL3_2_1までの経路の累計エネルギー量11whと、車両の現在地点600からリンクL3_2_2までの経路の累計エネルギー量10whとを比較し、最小の累計エネルギー量となるリンクL3_2_2側の経路の累計エネルギー量10whをノードN3_2に設定する。
【0125】
ナビゲーション装置500は、上述したノードN2_1~N2_3のように車両の現在地点600から同一階層のノードが複数存在する場合、たとえば、同一レベルのノードのうち、累計エネルギー量が少ないノードに接続するリンクから順に推定エネルギー消費量および累計エネルギー量を算出する。具体的には、ナビゲーション装置500は、ノードN2_3、ノードN2_1、ノードN2_2の順に、各ノードに接続するリンクにおける推定エネルギー消費量をそれぞれ算出し、各ノードにおける累計エネルギー量に累計する。このように、推定エネルギー消費量および累計エネルギー量を算出するノードの順番を特定することにより、残存エネルギー量で到達可能な範囲を効率的に算出することができる。
【0126】
その後、ナビゲーション装置500は、ノードN3_1~N3_5からさらに深い階層のノードへと、上述したような累計エネルギー量の累計を続けていく。そして、ナビゲーション装置500は、予め設定された指定エネルギー量以下の累計エネルギー量が設定されたすべてのノードを、車両の到達可能地点として抽出し、到達可能地点として抽出されたノードの経度緯度情報をそれぞれのノードに関連付けて記憶装置に書き出す。
【0127】
具体的には、たとえば指定エネルギー量を10whとした場合、図9に斜線で塗りつぶされた丸印で示すように、ナビゲーション装置500は、10wh以下の累計エネルギー量が設定されたノードN1_1,N2_1,N2_2,N2_3,N3_2,N3_5を車両の到達可能地点として抽出する。予め設定された指定エネルギー量とは、たとえば、車両の現在地点600での残存エネルギー量(初期保有エネルギー量)である。
【0128】
図9に示す車両の現在地点600と複数のノードおよびリンクとで構成された地図データ900は到達可能地点探索を説明するための一例であり、ナビゲーション装置500は、実際には図10に示すように図9に示す地図データ900よりも広い範囲でさらに多くのノードおよびリンクを探索する。
【0129】
図10は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について示す説明図である。上述したようにすべての道路(細街路を除く)について累計エネルギー量を算出し続けていく場合、図10に示すように、各道路のすべてのノードにおける累計エネルギー量を漏れなく詳細に探索することができる。しかし、日本全国で約200万個のリンクにおける推定エネルギー消費量を算出し累計することとなり、ナビゲーション装置500の情報処理量が膨大となる。このため、ナビゲーション装置500は、たとえばリンクの重要度などに基づいて、移動体の到達可能地点を探索する道路を絞り込んでもよい。
【0130】
図11は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の別の一例について示す説明図である。具体的には、ナビゲーション装置500は、たとえば、車両の現在地点600周辺ではすべての道路(細街路を除く)において累計エネルギー量を算出し、ある一定距離以上離れた範囲では重要度の高い道路のみで累計エネルギー量を算出する。これにより、図11に示すように、ナビゲーション装置500によって探索されるノード数およびリンク数を減少させることができ、ナビゲーション装置500の情報処理量を低減させることができる。したがって、ナビゲーション装置500の処理速度を向上することができる。
【0131】
(ナビゲーション装置500における地図データ分割の概要)
本実施例のナビゲーション装置500は、上述したように探索された到達可能地点に基づいて、記憶装置に記憶された地図データを分割する。具体的には、ナビゲーション装置500は、ベクタデータで構成される地図データを、たとえば64×64ドットのメッシュ(X,Y)に変換し、地図データをラスタデータ(画像データ)にする。
【0132】
図12は、ナビゲーション装置500による到達可能地点を経度-緯度で示す一例の説明図である。また、図13は、ナビゲーション装置500による到達可能地点をメッシュで示す一例の説明図である。図12には、たとえば図10図11に示すように探索された到達可能地点の経度緯度情報(x,y)を絶対座標で図示している。図13には、到達可能地点に基づいて識別情報が付与された64×64ドットのメッシュ(X,Y)をスクリーン座標で図示している。
【0133】
図12に示すように、ナビゲーション装置500は、まず、複数の到達可能地点のそれぞれの経度x、緯度yに基づいて、絶対座標で点群1200を有する経度緯度情報(x,y)を生成する。経度緯度情報(x,y)の原点(0,0)は図12の左下である。そして、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点600の経度ofxから経度x方向に最も離れた到達可能地点の最大経度x_max、最小経度x_minまで距離w1,w2を算出する。また、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点600の緯度ofyから緯度y方向に最も離れた到達可能地点の最大緯度y_max、最小緯度y_minまで距離w3,w4を算出する。
【0134】
つぎに、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点600からの距離w1~w4のうち、最も距離のある、車両の現在地点600から最小経度x_minまでの距離w2(以下、w5=max(w1,w2,w3,w4)とする)のn分の1の長さがメッシュ(X,Y)の矩形状の一要素の1辺の長さとなるように、複数の到達可能地点を含む地図データを、たとえばm×mドット(たとえば64×64ドット)のメッシュ(X,Y)に変換する。
【0135】
具体的には、ナビゲーション装置500は、1メッシュと経度緯度の大きさとの比を倍率mag=w5/nとし、経度緯度情報(x,y)とメッシュ(X,Y)とが次の(9)式,(10)式を満たすように、経度緯度情報(x,y)をメッシュ(X,Y)に変換する。
【0136】
X=(x-ofx)/mag ・・・(9)
【0137】
Y=(y-ofy)/mag ・・・(10)
【0138】
経度緯度情報(x,y)をメッシュ(X,Y)に変換することにより、図13に示すように、車両の現在地点600は、m×mドットのメッシュ(X,Y)で構成される矩形状の画像データの中心となり、車両の現在地点600のメッシュ(X,Y)はX軸方向、Y軸方向ともに等しく、X=Y=m/2=n+4となる。また、メッシュ(X,Y)の周辺のたとえば4ドット分を空白にするためにn=(m/2)-4とする。そして、ナビゲーション装置500は、経度緯度情報(x,y)をメッシュ(X,Y)に変換するときに、メッシュ(X,Y)の各領域にそれぞれ識別情報を付与し、m行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュに変換する。
【0139】
具体的には、ナビゲーション装置500は、メッシュ(X,Y)の一の領域に車両の到達可能地点が含まれる場合、当該一の領域に車両が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報として、たとえば「1」を付与する(図13では1ドットをたとえば黒色で描画)。一方、ナビゲーション装置500は、メッシュ(X,Y)の一の領域に車両の到達可能地点が含まれない場合、当該の一の領域に車両が到達不可能であることを識別する到達不可能の識別情報として、たとえば「0」を付与する(図13では1ドットをたとえば白色で描画)。
【0140】
このように、ナビゲーション装置500は、地図データを分割した各領域にそれぞれ識別情報を付与したm行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュに変換し、地図データを2値化されたラスタデータとして扱う。メッシュの各領域は、それぞれ一定範囲の矩形状の領域であらわされる。具体的には、図13に示すように、たとえば、複数の到達可能地点の点群1300が黒色で描画されたm×mドットのメッシュ(X,Y)が生成される。メッシュ(X,Y)の原点(0,0)は左上である。
【0141】
(ナビゲーション装置500における識別情報付与の概要・その1)
本実施例のナビゲーション装置500は、上述したように分割されたm×mドットのメッシュ(X,Y)のそれぞれの領域に付与された識別情報を変更する。具体的には、ナビゲーション装置500は、m行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュに対してクロージング処理(膨張処理後に縮小処理をおこなう処理)をおこなう。
【0142】
図14は、ナビゲーション装置によるクロージング処理の一例を示す説明図である。図14(A)~図14(C)は、各領域にそれぞれ識別情報が付与されたm行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュである。図14(A)には、地図データの分割処理後、はじめて識別情報が付与されたメッシュ1400を示す。すなわち、図14(A)に示すメッシュ1400は、図13に示すメッシュと同一である。
【0143】
また、図14(B)には、図14(A)に示すメッシュ1400に対してクロージング処理(膨張)をおこなった後のメッシュ1410を示す。図14(C)には、図14(B)に示すメッシュ1410に対してクロージング処理(縮小)をおこなった後のメッシュ1420を示す。図14(A)~図14(C)に示すメッシュ1400,1410,1420において、到達可能の識別情報が付与された複数の領域によって生成される車両の到達可能範囲1401,1411,1421を黒く塗りつぶした状態で示す。
【0144】
図14(A)に示すように、識別情報付与後のメッシュ1400には、車両の到達可能範囲1401内に含まれる到達不可能な領域からなる欠損点1402(ハッチングされた到達可能範囲1401内の白地部分)が生じている。欠損点1402は、たとえば、図11に示すようにナビゲーション装置500による到達可能地点探索処理の負荷を低減させるためにノードおよびリンクを探索する道路を絞り込んだ場合に、到達可能地点となるノード数が少なくなることにより生じる。
【0145】
つぎに、図14(B)に示すように、ナビゲーション装置500は、識別情報付与後のメッシュ1400に対してクロージングの膨張処理をおこなう。クロージングの膨張処理では、識別情報付与後のメッシュ1400の、到達可能の識別情報が付与されている領域に隣り合う一の領域の識別情報が、到達可能の識別情報に変更される。これにより、膨張処理前(識別情報付与後)の車両の到達可能範囲1401内に生じていた欠損部1402が消滅する。
【0146】
また、膨張処理前の車両の到達可能範囲1401の最外周の領域に隣り合うすべての領域の識別情報が、到達可能な識別情報に変更される。このため、膨張処理後の車両の到達可能範囲1411の外周は、膨張処理をおこなうごとに、膨張処理前の車両の到達可能範囲1401の最外周の各領域の外周を囲むように1ドット分ずつ広がる。
【0147】
その後、図14(C)に示すように、ナビゲーション装置500は、メッシュ1410に対してクロージングの縮小処理をおこなう。クロージングの縮小処理では、膨張処理後のメッシュ1410の、到達不可能の識別情報が付与されている領域に隣り合う一の領域の識別情報が、到達不可能の識別情報に変更される。
【0148】
このため、膨張処理後の車両の到達可能範囲1411の最外周の各領域が、縮小処理がおこなわれるごとに1ドット分ずつ到達不可能な領域となり、膨張処理後の車両の到達可能範囲1411の外周が縮まる。これにより、縮小処理後の車両の到達可能範囲1421の外周は、膨張処理前の車両の到達可能範囲1401の外周とほぼ同様となる。
【0149】
ナビゲーション装置500は、上述した膨張処理および縮小処理は同じ回数ずつおこなう。具体的には、膨張処理が2回おこなわれた場合、その後の縮小処理も2回おこなわれる。膨張処理と縮小処理との処理回数を等しくすることで、膨張処理によって到達可能の識別情報に変更された車両の到達可能範囲の外周部分のほぼすべての領域の識別情報を、縮小処理によって元の到達不可能の識別情報に変更することができる。このようにして、ナビゲーション装置500は、車両の到達可能範囲内の欠損点1402を除去し、かつ外周を明瞭に表示可能な車両の到達可能範囲1421を生成することができる。
【0150】
より具体的には、ナビゲーション装置500は、次のようにクロージング処理をおこなう。図15は、ナビゲーション装置によるクロージング処理の一例を模式的に示す説明図である。図15(A)~図15(C)には、各領域にそれぞれ識別情報が付与されたh行h列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュを一例として示す。
【0151】
図15(A)は、識別情報付与後のメッシュ1500である。図15(B)は、図15(A)に対するクロージング処理(膨張)後のメッシュ1510である。図15(C)は、図15(B)に対するクロージング処理(縮小)後のメッシュ1520である。図15(A)~図15(C)のメッシュ1500,1510,1520には、到達可能の識別情報が付与された領域1501,1502をそれぞれ異なるハッチングで図示する。
【0152】
図15(A)に示すように、識別情報付与後のメッシュ1500には、c行f列、f行c列およびg行f列の領域1501に到達可能の識別情報が付与されている。図15(A)では、膨張処理後および縮小処理後における識別情報の変化が明確となるように、到達可能の識別情報が付与された各領域1501を離れた状態で配置している。
【0153】
ナビゲーション装置500は、このような識別情報付与後のメッシュ1500に対して、クロージングの膨張処理をおこなう。具体的には、図15(B)に示すように、ナビゲーション装置500は、c行f列の領域1501の左下、下、右下、右、右上、上、左上、左に隣り合う8つの領域(b行e列~b行g列、c行e列、c行g列およびd行e列~d行g列)1502の識別情報を、到達不可能の識別情報から到達可能の識別情報に変更する。
【0154】
また、ナビゲーション装置500は、c行f列の領域1501に対しておこなった処理と同様に、f行c列およびg行f列の領域1501においても隣り合う8つの領域1502の識別情報を到達可能の識別情報に変更する。このため、車両の到達可能範囲1511は、領域1502の識別情報が到達可能の識別情報に変更された分だけ、識別情報付与後のメッシュ1500における車両の到達可能範囲よりも広がる。
【0155】
つぎに、ナビゲーション装置500は、膨張処理後のメッシュ1510に対して、クロージングの縮小処理をおこなう。具体的には、図15(C)に示すように、ナビゲーション装置500は、到達不可能の識別情報が付与された領域(膨張処理後のメッシュ1510の白地部分)に隣り合うb行e列~b行g列、c行e列、c行g列およびd行e列~d行g列の8つの領域1502の識別情報を到達不可能の識別情報に変更する。
【0156】
また、ナビゲーション装置500は、b行e列~b行g列、c行e列、c行g列およびd行e列~d行g列の8個の領域1502に対しておこなった処理と同様に、到達不可能の識別情報が付与された領域に隣り合うe行b列~e行d列、f行b列、f行d列~f行g列、g行b列~g行e列、g行g列、h行e列およびh行g列の15個の領域1502の識別情報を到達不可能の識別情報に変更する。
【0157】
これにより、図15(C)に示すように、縮小処理後のメッシュ1520は、識別情報付与後のメッシュ1500と同様に、到達可能の識別情報が付与された3つの領域1501と、縮小処理後においても到達可能の識別情報が付与されたままの状態で残る1つの領域1502からなる車両の到達可能範囲1521が生成される。このように、膨張処理時に到達可能の識別情報が付与され、かつ縮小処理後に到達可能の識別情報が付与された状態で残る領域1502によって、識別情報付与後のメッシュ1500の到達可能範囲内に生じていた欠損点が消滅する。
【0158】
(ナビゲーション装置500における識別情報付与の概要・その2)
ナビゲーション装置500は、2次元行列データ(Y,X)のメッシュに対してオープニング処理(縮小処理後に膨張処理をおこなう処理)をおこない、外周を明瞭に表示可能な車両の到達可能範囲を生成してもよい。具体的には、ナビゲーション装置500は、次のようにオープニング処理をおこなう。
【0159】
図16は、ナビゲーション装置によるオープニング処理の一例を示す説明図である。図16(A)~図16(C)は、各領域にそれぞれ識別情報が付与されたm行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュである。図16(A)には、識別情報付与後のメッシュ1600を示す。図16(B)には、図16(A)に対するオープニング処理(縮小)後のメッシュ1610を示す。また、図16(C)には、図16(B)に対するオープニング処理(膨張)後のメッシュ1620を示す。図16(A)~図16(C)に示すメッシュ1600,1610,1620において、到達可能の識別情報が付与された複数の領域によって生成される車両の到達可能範囲1601,1611,1621を黒く塗りつぶした状態で示す。
【0160】
図16(A)に示すように、識別情報付与後のメッシュ1600における車両の到達可能範囲1601の外周に孤立点1602が多く生じている場合、識別情報付与後のメッシュ1600に対してオープニング処理をおこなうことで、孤立点1602を除去することができる。具体的には、図16(B)に示すように、ナビゲーション装置500は、識別情報付与後のメッシュ1600に対してオープニングの縮小処理をおこなう。
【0161】
オープニングの縮小処理では、識別情報付与後のメッシュ1600の、到達不可能の識別情報が付与されている領域に隣り合う一の領域の識別情報が、到達不可能の識別情報に変更される。これにより、縮小処理前(識別情報付与後)の車両の到達可能範囲1601内に生じていた孤立点1602が除去される。
【0162】
このため、識別情報付与後の車両の到達可能範囲1601の最外周の各領域が、縮小処理がおこなわれるごとに1ドット分ずつ到達不可能な領域となり、識別情報付与後の車両の到達可能範囲1601の外周が縮まる。また、識別情報付与後の車両の到達可能範囲1601に生じていた孤立点1602が除去される。
【0163】
その後、図16(C)に示すように、ナビゲーション装置500は、メッシュ1610に対してオープニングの膨張処理をおこなう。オープニングの膨張処理では、縮小処理後のメッシュ1610の、到達不可能の識別情報が付与されている領域に隣り合う一の領域の識別情報が、到達可能の識別情報に変更される。このため、膨張処理後の車両の到達可能範囲1621の外周は、膨張処理をおこなうごとに、縮小処理後の車両の到達可能範囲1611の最外周の各領域の外周を囲むように1ドット分ずつ広がる。
【0164】
ナビゲーション装置500は、オープニング処理においても、クロージング処理と同様に膨張処理および縮小処理は同じ回数ずつおこなう。このように膨張処理と縮小処理との処理回数を等しくすることで、縮小処理によって縮まった車両の到達可能範囲1611の外周を広げ、縮小処理後の車両の到達可能範囲1621の外周を縮小処理前の車両の到達可能範囲1601の外周に戻すことができる。このようにして、ナビゲーション装置500は、孤立点1602が生じず、かつ外周を明瞭に表示可能な車両の到達可能範囲1621を生成することができる。
【0165】
(ナビゲーション装置500における到達可能範囲の輪郭抽出の概要・その1)
本実施例のナビゲーション装置500は、m行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュに付与された識別情報に基づいて、車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。具体的には、ナビゲーション装置500は、たとえば、フリーマンのチェインコードを用いて車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。より具体的には、ナビゲーション装置500は、次のように車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。
【0166】
図17は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の一例を模式的に示す説明図である。また、図18は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出後のメッシュの一例を模式的に示す説明図である。図17(A)には、領域1700に隣り合う領域1710~1717の隣接方向を示す数字(以下、「方向指数(チェインコード)」という)と、方向指数に対応する8方向の矢印とを示す。図17(B)には、h行h列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュ1720を一例として示す。また、図17(B)には、到達可能の識別情報が付与された領域1721~1734および当該領域1721~1734に囲まれた到達可能の識別情報が付与された領域をハッチングで図示する。
【0167】
方向指数は、単位長さの線分の向いている方向を示す。メッシュ(X,Y)において、方向指数に対応する座標は、(X+dx,Y+dy)となる。具体的には、図17(A)に示すように、領域1700から左下に隣り合う領域1710へ向かう方向の方向指数は「0」である。領域1700から下に隣り合う領域1711へ向かう方向の方向指数は「1」である。領域1700から右下に隣り合う領域1712へ向かう方向の方向指数は「2」である。
【0168】
また、領域1700から右に隣り合う領域1713へ向かう方向の方向指数は「3」である。領域1700から右上に隣り合う領域1714へ向かう方向の方向指数は「4」である。領域1700から上に隣り合う領域1715へ向かう方向の方向指数は「5」である。領域1700から左上に隣り合う領域1716へ向かう方向の方向指数は「6」である。領域1700から左に隣り合う領域1717へ向かう方向の方向指数は「7」である。
【0169】
ナビゲーション装置500は、領域1700に隣り合う到達可能の識別情報「1」が付与された領域を左回りに検索する。また、ナビゲーション装置500は、領域1700に隣り合う到達可能の識別情報が付与された領域の検索開始点を、前回の方向指数に基づいて決定する。具体的には、ナビゲーション装置500は、他の領域から領域1700へ向かう方向指数が「0」であった場合、領域1700の左に隣り合う領域、すなわち方向指数「7」の方向に隣り合う領域1717から検索を開始する。
【0170】
同様に、ナビゲーション装置500は、他の領域から領域1700へ向かう方向指数が「1」~「7」であった場合、領域1700の左下、下、右下、右、右上、上、左上に隣り合う領域、すなわちそれぞれ方向指数「0」、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」の方向に隣り合う領域1710~1716から検索を開始する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1700から各領域1710~1717のいずれか一の領域から到達可能の識別情報「1」を検出した場合、到達可能の識別情報「1」を検出した領域1710~1717に対応する方向指数「0」~「7」を、領域1700に関連付けて記憶装置に書き込む。
【0171】
具体的には、ナビゲーション装置500は、次のように車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。図17(B)に示すように、ナビゲーション装置500は、まず、h行h列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュ1720のa行a列の領域から行単位で到達可能の識別情報が付与された領域を検索する。
【0172】
メッシュ1120のa行目のすべての領域には到達不可能の識別情報が付与されているので、つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュ1720のb行a列の領域からb行h列の領域に向かって到達可能の識別情報を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、メッシュ1720のb行e列の領域1721において到達可能の識別情報を検出した後、メッシュ1720のb行e列の領域1721から左回りに、車両の到達可能範囲の輪郭となる到達可能の識別情報を有する領域を検索する。
【0173】
具体的には、ナビゲーション装置500は、領域1721の左に隣り合うb行d列の領域はすでに検索済みのため、まず、領域1721の左下に隣り合う領域1722から左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1722の到達可能の識別情報を検出し、領域1721から領域1722へ向かう方向の方向指数「0」を、領域1721に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0174】
つぎに、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数「0」であるため、領域1722の左に隣り合うc行c列の領域から左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1722の左下に隣り合う領域1723の到達可能の識別情報を検出し、領域1722から領域1723へ向かう方向の方向指数「0」を、前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0175】
以降、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定し、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する処理を、方向指数に対応する矢印が領域1721に戻ってくるまで繰り返しおこなう。具体的には、ナビゲーション装置500は、領域1722の左に隣り合う領域から左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索し、領域1723の下に隣り合う領域1724の到達可能の識別情報を検出して、方向指数「1」を前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0176】
同様に、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定した後、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域を検索し、到達可能の識別情報を有する領域1724~1734を順次検出する。そして、ナビゲーション装置500は、方向指数を取得するごとに前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0177】
その後、ナビゲーション装置500は、領域1734の右上に隣り合うb行f列の領域から左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索し、領域1734の上に隣り合う領域1721の到達可能の識別情報を検出して、方向指数「5」を前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。これにより、記憶装置には、方向指数「0」→「0」→「1」→「0」→「2」→「3」→「4」→「3」→「2」→「5」→「5」→「6」→「6」→「5」がこの順で記憶される。
【0178】
このようにナビゲーション装置500は、最初に検出した領域1721から、当該領域1721に隣り合う到達可能の識別情報を有する領域1722~1734を左回りに順次検索し方向指数を取得する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1721から方向指数に対応する方向の一の領域を塗りつぶすことで、図18に示すように、車両の到達可能範囲の輪郭1801および当該輪郭1801に囲まれた部分1802からなる車両の到達可能範囲1800を有するメッシュを生成する。
【0179】
(ナビゲーション装置500における到達可能範囲の輪郭抽出の概要・その2)
本実施例のナビゲーション装置500による車両の到達可能範囲抽出の別の一例について説明する。ナビゲーション装置500は、たとえば、到達可能の識別情報が付与された2次元行列データ(Y,X)のメッシュの経度緯度情報に基づいて、車両の到達可能範囲の輪郭を抽出してもよい。具体的には、ナビゲーション装置500は、次のように車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。
【0180】
図19は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の別の一例について模式的に示す説明図である。図19に示すようなd行h列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュ1900を例に説明する。ナビゲーション装置500は、メッシュ1900の、到達可能の識別情報「1」が付与された領域を検索する。具体的には、ナビゲーション装置500は、まず、a行a列の領域からa行h列の領域に向かって到達可能の識別情報「1」を検索する。
【0181】
メッシュ1900のa行目のすべての領域には到達不可能の識別情報「0」が付与されているので、つぎに、ナビゲーション装置500は、b行a列の領域からb行h列の領域に向かって到達可能の識別情報「1」を有する領域を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報「1」を有するb行c列の領域1901の最小経度px1、最小緯度py1(領域1901の左上座標)を取得する。
【0182】
つぎに、ナビゲーション装置500は、b行d列の領域からb行h列の領域に向かって到達可能の識別情報「1」を有する領域を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報「1」を有する領域と、到達不可の識別情報「0」を有する領域との境界を検索し、到達可能の識別情報「1」を有するb行f列の領域1902の最大経度px2、最大緯度py2(領域1902の右下座標)を取得する。
【0183】
つぎに、ナビゲーション装置500は、b行c列の領域1901の左上座標(px1,py1)と、b行f列の領域1902の右下座標(px2,py2)とを対向する頂点とする矩形領域を塗りつぶす。
【0184】
つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュ1900のb行g列からb行h列の領域へ、さらにc行a列からc行h列に向かって到達可能の識別情報「1」を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報「1」を有するc行d列の領域1903の最小経度px3、最小緯度py3(領域1903の左上座標)を取得する。
【0185】
つぎに、ナビゲーション装置500は、c行e列の領域からc行h列の領域に向かって到達可能の識別情報「1」を有する領域を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報「1」を有する領域と、到達不可の識別情報「0」を有する領域との境界を検索し、到達可能の識別情報「1」を有するc行f列の領域1904の最大経度px4、最大緯度py4(領域1904の右下座標)を取得する。
【0186】
つぎに、ナビゲーション装置500は、c行d列の領域1903の左上座標(px3,py3)と、c行f列の領域1904の右下座標(px4,py4)とを対向する頂点とする矩形領域を塗りつぶす。
【0187】
その後、ナビゲーション装置500は、c行g列の領域からc行h列の領域へ、さらにd行a列からd行h列に向かって到達可能の識別情報「1」を有する領域を検索する。ナビゲーション装置500は、c行g列の領域からd行h列までのすべての領域には到達不可能の識別情報「0」が付与されているので、処理を終了する。
【0188】
このように、2次元行列データ(Y,X)のメッシュ1900の各行ごとに、到達可能の識別情報「1」を有する領域を塗りつぶすことにより、車両の到達可能範囲および車両の到達可能範囲の輪郭を取得することができる。
【0189】
(輪郭データの補完処理例)
図20-1は、輪郭データの補完処理例を示す説明図である。(A)は、補完前の輪郭データを示す。(A)では、ベクトル2001~2003が連結された状態を示す。ベクトル2001は、X軸方向に平行なベクトルであり、ベクトル2003もX軸方向に平行なベクトルである。ベクトル2001,2003は同一長さである。ベクトル2002は、X軸、Y軸に対し45度に交わるベクトルである。ベクトル2003の長さは、ベクトル2001,2003の長さの√2倍である。
【0190】
(B)は、補完後の輪郭データの一例を示す。(B)は、ベクトル2002を、ベクトル2004とベクトル2005に分解した状態を示す。ベクトル2004は、ベクトル2002のX軸方向成分であり、ベクトル2005は、ベクトル2002のY軸方向成分である。ベクトル2001,2002,2004,2005は同一長である。
【0191】
(C)は、補完後の輪郭データの他の例を示す。(C)は、ベクトル2002を、ベクトル2006とベクトル2007に分解した状態を示す。ベクトル2006は、ベクトル2002のY軸方向成分であり、ベクトル2007は、ベクトル2002のX軸方向成分である。ベクトル2001,2002,2006,2007は同一長である。
【0192】
図20-2は、図20-1に示した補完処理でのベクトルの分解方法の一例を示す説明図である。ベクトルを分解する場合、図17(A)に示したチェインコードが用いられる。また、図20-1の(B),(C)に示したように、2通りあるが、分解後のベクトルが到達可能範囲に包含されるよう分解される。
【0193】
たとえば、図20-2の(A),(B)において、塗りつぶされた領域が到達可能範囲とする。図20-1の(A)において、図17(A)を参照すると、ベクトル2101のチェインコードは「0」であるため、チェインコード「1」,「7」に対応するベクトル2101a,2101bに分解される。同様に、ベクトル2102のチェインコードは「2」であるため、チェインコード「3」,「1」に対応するベクトル2102a,2102bに分解される。同様に、ベクトル2103のチェインコードは「4」であるため、チェインコード「5」,「3」に対応するベクトル2103a,2103bに分解される。同様に、ベクトル2104のチェインコードは「6」であるため、チェインコード「7」,「5」に対応するベクトル2104a,2104bに分解される。
【0194】
また、図20-2の(B)において、図17(A)を参照すると、ベクトル2111のチェインコードは「0」であるため、チェインコード「7」,「1」に対応するベクトル2111a,2111bに分解される。同様に、ベクトル2112のチェインコードは「2」であるため、チェインコード「1」,「3」に対応するベクトル2112a,2112bに分解される。同様に、ベクトル2113のチェインコードは「4」であるため、チェインコード「3」,「5」に対応するベクトル2113a,2113bに分解される。同様に、ベクトル2114のチェインコードは「6」であるため、チェインコード「5」,「7」に対応するベクトル2114a,2114bに分解される。
【0195】
(輪郭の向きの判定)
ここで、輪郭の向きの判定方法について説明する。輪郭は、図20-2の(A)に示すように輪郭の向きが外回り(外側輪郭)の場合と、図20-2に示すように、内周り(穴)の輪郭がある。この輪郭の向きは、以下の手順で簡易的に判定する。
【0196】
図20-3は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の一例を模式的に示す説明図である。図20-3(A)には、領域1100に隣り合う領域1110~1117の隣接方向を示す数字(以下、「方向指数(チェインコード)」という)と、方向指数に対応する8方向の矢印とを示す。図20-3(B)には、i行i列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータ1120を一例として示す。また、図20-3(B)には、到達可能の識別情報が付与された領域1121~1138をハッチングで図示する。また、到達可能の識別情報が付与された領域1121~1138の内部には、到達不可能の識別情報が付与された領域1140~1142が存在している(白で図示)。
【0197】
方向指数は、単位長さの線分の向いている方向を示す。メッシュデータ(X,Y)において、方向指数に対応する座標は、(X+dx,Y+dy)となる。具体的には、図20-3(A)に示すように、領域1100から左下に隣り合う領域1110へ向かう方向の方向指数は「0」である。領域1100から下に隣り合う領域1111へ向かう方向の方向指数は「1」である。領域1100から右下に隣り合う領域1112へ向かう方向の方向指数は「2」である。
【0198】
また、領域1100から右に隣り合う領域1113へ向かう方向の方向指数は「3」である。領域1100から右上に隣り合う領域1114へ向かう方向の方向指数は「4」である。領域1100から上に隣り合う領域1115へ向かう方向の方向指数は「5」である。領域1100から左上に隣り合う領域1116へ向かう方向の方向指数は「6」である。領域1100から左に隣り合う領域1117へ向かう方向の方向指数は「7」である。
【0199】
ナビゲーション装置500は、領域1100に隣り合う到達可能の識別情報「1」が付与された領域を左回りに検索する。つまり、ナビゲーション装置500は、領域1100を中心とする反時計回りに、例えば領域1110を検索開始点として到達可能の識別情報「1」が付与された領域を検索する。ここで、ナビゲーション装置500は、領域1100に隣り合う到達可能の識別情報が付与された領域の検索開始点を、前回の方向指数に基づいて決定する。具体的には、ナビゲーション装置500は、他の領域から領域1100へ向かう方向指数が「0」であった場合、領域1100の上に隣り合う領域、すなわち方向指数「5」の方向に隣り合う領域1115を決定し、領域1115から検索を開始する。
【0200】
同様に、ナビゲーション装置500は、他の領域から領域1100へ向かう方向指数が「1」~「7」であった場合、領域1100の左上、左、左下、下、右下、右、右上に隣り合う領域、すなわちそれぞれ方向指数「6」、「7」、「0」、「1」、「2」、「3」、「4」の方向に隣り合う領域1116、領域1117、領域1110、領域1111、領域1112、領域1113、領域1114を決定し、決定された領域から検索を開始する。そして、ナビゲーション装置500は、検索を開始してから最初に到達可能の識別情報「1」を検出した場合、到達可能の識別情報「1」を検出した領域1110~1117に対応する方向指数「0」~「7」を、領域1100に関連付けて記憶装置に書き込む。
【0201】
このような、対象となる領域への方向指数に基づいて決定される、対象となる領域を中心とした反時計回りに検索を開始する開始領域を使って、ナビゲーション装置500は、次のように車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。なお、ここで示す、対象となる領域への方向指数と検索を開始する開始領域との関係は一例であって、他の関係でも車両の到達可能範囲の輪郭の抽出は可能である。図20-3(B)に示すように、ナビゲーション装置500は、まず、i行i列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータ1120のa行a列の領域から行単位で、到達不可能の識別情報が付与された領域から到達可能の識別情報が付与された領域に変化した領域を検出する。
【0202】
メッシュデータ1120のa行目のすべての領域には到達不可能の識別情報が付与されているので、つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュデータ1120のb行a列の領域からb行i列の領域に向かって到達可能の識別情報を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、b行の水平方向への走査により、メッシュデータ1120のb行f列の領域1121において到達可能の識別情報(輪郭検出の第1のスタート地点)を検出する。そして、輪郭検出の第1のスタート地点であるメッシュデータ1120のb行f列の領域1121を中心として左回りに、車両の到達可能範囲の輪郭となる到達可能の識別情報を有する領域を検索する。
【0203】
具体的には、ナビゲーション装置500は、水平方向への走査による領域1121への方向指数が「3」であるため領域1121の左下に隣り合う領域1122を決定し、決定された領域1122から領域1121を中心として左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1122の到達可能の識別情報を検出し、領域1121から領域1122へ向かう方向の方向指数「0」を、領域1121に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0204】
つぎに、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数「0」であるため、領域1122の上に隣り合うb行e列の領域を決定し、決定されたb行e列の領域から領域1122を中心として左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1122の左下に隣り合う領域1123の到達可能の識別情報を検出し、領域1122から領域1123へ向かう方向の方向指数「0」を、前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0205】
以降、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定し、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する処理を、方向指数に対応する矢印が領域1121に戻ってくるまで繰り返しおこなう。具体的には、ナビゲーション装置500は、領域1123の上に隣り合う領域を決定し、決定された領域から領域1123を中心として左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索し、領域1123の下に隣り合う領域1124の到達可能の識別情報を検出して、方向指数「1」を前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0206】
同様に、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定した後、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域を検索し、到達可能の識別情報を有する領域1124~1134を順次検出する。そして、ナビゲーション装置500は、方向指数を取得するごとに前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0207】
その後、ナビゲーション装置500は、領域1134の右に隣り合うc行h列を決定し、決定されたc行h列の領域から領域1134を中心として左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索し、領域1134の左上に隣り合う領域1121の到達可能の識別情報を検出して、方向指数「6」を前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。これにより、記憶装置には、方向指数「0」→「0」→「1」→「0」→「2」→「3」→「4」→「3」→「2」→「5」→「5」→「5」→「6」→「6」がこの順で記憶される。このようにして記憶された方向指数の連続した配列は、図20-3(B)に示す通り、到達可能範囲の輪郭をあらわしている。また、方向指数の連続した矢印の向きであらわされる到達可能範囲の輪郭の向きは、図20-3(B)に示す通り、左回りとなっている。これは、到達可能範囲の輪郭となる領域を左回りに検索したことをあらわしている。
【0208】
つぎに、ナビゲーション装置500は、到達可能範囲の他の輪郭を抽出する。具体的には、図20-3(B)に示すように、メッシュデータ1120のb行f列の領域1121からb行の水平方向への走査により、到達不可能の識別情報が付与された領域から到達可能の識別情報が付与された領域へ変化した他の領域を検出する。つまり、輪郭検出の第2のスタート地点を検出する。この際、一度、到達可能範囲の輪郭として抽出された領域は検出から除外されるので、領域1122や領域1123は輪郭検出の第2のスタート地点として検出されることはない。
【0209】
このようにして、到達可能範囲の他の輪郭のスタート地点、つまり、輪郭検出の第2のスタート地点として、d行g列の領域1135を検出する。そして、輪郭検出の第2のスタート地点であるメッシュデータ1120のd行g列の領域1135を中心として左回りに、車両の到達可能範囲の輪郭となる到達可能の識別情報を有する領域を検索する。
【0210】
具体的には、ナビゲーション装置500は、水平方向への走査により領域1135への方向指数は「3」であるため領域1135の左下に隣り合う領域1142を決定し、決定された領域1135を中心として左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1132の到達可能の識別情報を検出し、領域1135から領域1132へ向かう方向の方向指数「2」を、領域1135に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0211】
つぎに、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数「2」であるため、領域1132の左に隣り合うe行g列の領域を決定し、決定されたe行g列の領域から領域1132を中心として左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索した結果、領域1129の到達可能の識別情報を検出し、領域1132から領域1129へ向かう方向の方向指数「0」を、前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0212】
以降、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定し、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する処理を、方向指数に対応する矢印が領域1135に戻ってくるまで繰り返しおこなう。これにより、第2のスタート地点の領域1135を起点とする到達可能範囲の輪郭として、記憶装置には方向指数「2」→「0」→「7」→「6」→「5」→「4」→「2」がこの順で記憶される。このようにして記憶された方向指数の連続した配列は、図20-3(B)で示す通り、到達可能範囲の2つ目の輪郭をあらわしている。また、方向指数の連続した矢印の向きであらわされる到達可能範囲の2つ目の輪郭の向きは、図20-3(B)で示す通り、右回りとなっている。これは、到達可能範囲の輪郭となる領域を右回りに検索したことをあらわしている。
【0213】
さらに、ナビゲーション装置500は、到達可能範囲の他の輪郭を抽出する。具体的には、図20-3(B)に示すように、メッシュデータ1120のd行g列の領域1135からd行の水平方向への走査により、到達不可能の識別情報が付与された領域から到達可能の識別情報が付与された領域へ変化した他の領域を検出する。つまり、輪郭検出の第3以降のスタート地点を検出する。この際、一度、到達可能範囲の輪郭として探索された領域は検出から除外される。この走査はi行i列まで続けられる。
【0214】
以上のようにナビゲーション装置500は、最初に検出した領域1121から、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定し、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域があるか否かの検索する処理を方向指数に対応する矢印が領域1121に戻ってくるまで繰り返し行うことにより、領域1122~1134を探索し方向指数を取得する。さらに、次に検出した領域1135から、同様に、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定し、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域があるか否かの検索する処理を方向指数に対応する矢印が領域1135に戻ってくるまで繰り返し行うことにより、領域1132、領域1129、領域1128、領域1136、領域1137、領域1138を探索し方向指数を取得する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1121および領域1135から方向指数に対応する方向の一連の領域を塗りつぶすことで、車両の到達可能範囲の外輪郭と内輪郭およびこれら外輪郭と内輪郭に囲まれた部分が到達可能範囲とするメッシュデータを生成する。
【0215】
また、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定し、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域があるか否かの検索する処理を方向指数に対応する矢印が元の領域に戻ってくるまで繰り返し行うことにより得られる方向指数の連続した軌跡は、図20-3(B)で示すように、車両の到達可能範囲の外側輪郭では左回り(反時計回り)となる。また、車両の到達可能範囲の内側に到達不可能範囲がある場合、到達不可能範囲と接する到達可能範囲の内側輪郭の方向指数は右回り(時計回り)となる。つまり、方向指数の連続した矢印の向きが右回りであるのか、左回りであるのかを調べれば、かかる方向指数の連続した矢印の向きにより示される輪郭が到達可能範囲の外側輪郭であるのか、到達可能範囲の内側に到達可能不可能範囲がある場合の到達可能範囲の内側輪郭であるのか、を判別することができる。
【0216】
このようにして、求められた輪郭の向き(時計回りまたは反時計回り)は、図20-3(C)に示すように、到達可能範囲の輪郭データについて、1つの座標ごとのチェインコード(方向指数)1150と、輪郭の向きを表す付加情報1160を付与して表示制御部206に出力する。これにより、表示制御部206では、反時計回りの外輪郭1130により車両の到達可能範囲を表示でき、時計回りの内輪郭1140があれば、外輪郭1130の内部に車両の到達不可能範囲を表示することができるようになる。
【0217】
(輪郭の向きの算出処理)
図20-4は、ナビゲーション装置による輪郭の向きの算出処理の手順の一例を示すフローチャートである。ナビゲーション装置500は、輪郭検出によって出力されたチェインコード列を順に走査する(ステップS2201)。
【0218】
画素の操作による基準画素への進入方向の変化量の絶対値が、隣接画素数の半分以上である場合(例えば、4以上または-4以下)は、隣接画素数を1回加算または減算し、進入方向の変化量の絶対値が隣接画素数の半分より小さく(例えば、-3以上3以下)なるように補正する(ステップS2202)。そして、補正した進入方向の変化量と単位回転角(2π/隣接画素数)の積を計算し、進入方向の遷移による回転角度の累積を計算する(ステップS2203)。
【0219】
この後、全ての進入方向の線を走査し終えたか判断し(ステップS2204)、走査し終えていなければ(ステップS2204:No)、ステップS2201に戻り、走査し終えていれば(ステップS2204:Yes)、つぎに、進入方向の遷移による回転角度の累積が2πまたは0であるか判断する(ステップS2205)。判断結果、回転角度の累積が2πまたは0の場合には(ステップS2205:Yes)、進入方向の遷移が周回する方向が反時計回りであることが分かり(ステップS2206)、以上の処理を終了する。ここで、累積値が0の場合は反時計回りの特殊な場合とする。一方、回転角度の累積が-2πである場合には(ステップS2205:No)、進入方向の遷移が周回する方向が時計回りであることが分かり(ステップS2207)、以上の処理を終了する。
【0220】
上記輪郭の向きの処理について、具体的に、上述した図20-3(B)に示した輪郭(外輪郭および内輪郭)を用いて説明する。外輪郭については、一周するまでにおける方向指数の値が、「0」→「0」→「1」→「0」→「2」→「3」→「4」→「3」→「2」→「5」→「5」→「5」→「6」→「6」→「0」と変化する。各値間の変化量(差分)は、それぞれ「0」,「1」,「-1」,「2」,「1」,「1」,「-1」,「-1」,「3」,「0」,「0」,「1」,「0」,「-6」である。ここで、方向指数の変化について最後の「6」→「0」が示す「-6」の値は、図20-3(A)で見て隣接画素2つ分だけの変化であるため、補正値として「+8」を加え、「-6」の代わりに方向指数を「+2」であるとする。そして、合計の累積値を「8」(8×45°=360°)とし、この場合、反時計回り(外輪郭)であると判断する。
【0221】
また、内輪郭については、一周するまでにおける方向指数の値が、「2」→「0」→「7」→「6」→「5」→「4」→「2」→「2」と変化する。各値間の変化量(差分)は、それぞれ「-2」,「7」,「-1」,「-1」,「-1」,「-2」,「0」である。ここで、方向指数の変化について「0」→「7」が示す「7」の値は、図20-3(A)で見て隣接画素1つ分だけの変化であるため、補正値として「-8」を加え、「7」の代わりに方向指数を「-1」とする。合計の累積値を「-8」(-8×45°=-360°)とし、この場合、時計回り(内輪郭)であると判断する。
【0222】
このようにして、輪郭の向き(時計回りまたは反時計回り)を求め、輪郭データ算出部106(向き算出部107)は、図20-3(C)に示すように、到達可能範囲の輪郭データについて、1つの座標ごとのチェインコード(方向指数)1150と、輪郭の向きを表す付加情報1160を付与して表示制御部206に出力する。これにより、表示制御部206では、反時計回りの外輪郭1130により車両の到達可能範囲を表示でき、時計回りの内輪郭1140があれば、外輪郭1130の内部に車両の到達不可能範囲を表示することができるようになる。
【0223】
このようにして、輪郭の向きを判定したあと、輪郭が外回り(外側輪郭)である場合は、図20-2の(A)の方法、内周り(穴)のときは図20-2の(B)の方法を選択し、各々チェインコード間に新たにコードを挿入すればよい。
【0224】
(高周波成分除去例)
つぎに、変換部263、除去部264および逆変換部265による高周波成分除去例について説明する。
【0225】
まず、変換部263は、輪郭データを構成する線分群から、(緯度経度,実数座標系)の輪郭多角形を計算する。輪郭多角形として計算された緯度経度を、たとえば、X_i=(x_i,y_i)とする(ただし、i=0,1,・・・,N-1)。曲座標値で変換すると、z_i=x_i+j・y_i=|A_i|exp(j×φ_i)となる。また、線分の長さは、補完処理により同一長Uとなっている。したがって、輪郭データ上の各頂点は、z_i=x_i+j×y_i=U・exp(j×φ_i)と表現される。このあと、変換部263は、輪郭の隣り合う頂点を始点・終点に持つベクトル列を計算する。P型のフーリエ記述子を使う場合、変換部263は、各ベクトルを、各ベクトルの偏角φと線分の長さUに分解する。
【0226】
図21-1は、輪郭データの曲座標表現を示す説明図である。変換部263は、各頂点z_iから、各頂点z_iがなす線分w_iを下記の(11)式のように計算する。
w_i=(z_i+1 - z_i)/U=(x_i+1 - x_i)/U+j(y_i+1 -y_i)/U・・・(11)
【0227】
補完処理によって線分の長さUは一定であるため、変換部263は、偏角の配列w_Nに対して高速フーリエ変換を行う。具体的には、たとえば、変換部263は、線分列を表現した複素数配列w_iに対して高速フーリエ変換を行う。ここで、サンプル数を2のべき乗にするため、変換部263は、w_iの個数Nを上回る最も小さい2のべき乗値Mを計算する。つまり、2^(m-1)<N≦2^mを満たすM=2^mを求める。また、N<Mのとき、N≦i<Mを満たす余った成分w_iが存在する場合は全て「0」としておく。そして、変換部263は、M個のサンプル数でw_iに対して高速フーリエ変換を行う。これにより、下記の(12)式の偏角成分w_kが求められる。ただし、k=0,1,・・・,M-1とする。
【0228】
【数9】
【0229】
そして、除去部264は、偏角の周波数成分w_kにローパスフィルタを通すことにより高周波成分を除去する。図21-2は、周波数変換を示すグラフである。ここで、カットオフ率をcとすると、hc=(1-c)×M/2とし、除去部264は、w_kのうちM/2-hc<k<M/2+hcである成分を全て「0」にして、高周波成分を除去する。
【0230】
このあと、逆変換部265が、逆高速フーリエ変換を行い、高周波数成分が除去された偏角の配列w_Nを計算する。具体的には、逆変換部265は、下記の(13)式に示すように、高周波成分を除去した線分列w'_kに対して逆高速フーリエ変換を行う。
【0231】
【数10】
【0232】
そして、逆変換部265は、偏角w_Nおよび線分の長さUから平滑化後の輪郭多角形である再生曲線を求める。すなわち、逆変換部265は、高周波数成分を除去した線分列w'_iから再生曲線z'_iを求めて最終結果とする。
【0233】
具体的には、逆変換部265は、下記の(14)式に示すように、上記(11)式の逆計算を行う。
【0234】
z_i=z_i-1+U×w_i-1
z'_0=z_0
z'_i=z'_i-1+U×w'_i-1
ただし、i=1,…,N-1・・・(14)
【0235】
このようにして、元曲線z_iから平滑化された曲線z'_iが計算される。また、カットオフ率cを調整することで平滑化の強度を調整することができる。
【0236】
(輪郭データの間引き例)
図22は、輪郭データの間引き例を示す説明図である。図22において、ベクトルu,vは、輪郭データ上のベクトルである。A~Cは、輪郭データ上の頂点である。頂点Bが削除対象となる外周点である。ベクトルu,vのなす角度θの絶対値が所定値θthよりも大きく、180度に近い場合、間引き部266は、隣り合う線分データ同士を接続する頂点を間引く。計算には、ベクトルuとベクトルvの内積からθの余弦を計算し、所定の閾値cosθthと比較する。具体的には、頂点Bが下記式(15)を満たす場合、削除される。頂点Bが間引かれると頂点A,Cが結ばれることになり、緩やかな曲線が直線に変換されることになる。この間引き処理を外周上の各頂点に対して順に適用することで頂点数を削減した曲線を生成することができる。
【0237】
【数11】
【0238】
(ナビゲーション装置500における画像処理)
上述のように、ナビゲーション装置500は、車両の残存エネルギー量に基づいて探索された移動体の到達可能なノードに基づいて移動体の到達可能範囲を生成しディスプレイ513に表示させる。以下、たとえば、ナビゲーション装置500がEV車に搭載されている場合を例に説明する。
【0239】
図23は、ナビゲーション装置による画像処理の手順の一例を示すフローチャートである。図23のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置500は、まず、たとえば、通信I/F515を介して、自装置が搭載された車両の現在地点(ofx,ofy)を取得する(ステップS2301)。つぎに、ナビゲーション装置500は、たとえば、通信I/F515を介して、車両の現在地点(ofx,ofy)における車両の初期保有エネルギー量を取得する(ステップS2302)。
【0240】
つぎに、ナビゲーション装置500は、到達可能ノード探索処理をおこなう(ステップS2303)。つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュ生成および識別情報付与処理をおこなう(ステップS2304)。つぎに、ナビゲーション装置500は、車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する(ステップS2305)。そして、ナビゲーション装置500は、抽出した輪郭を示す輪郭データに対して、補完処理、高速フーリエ変換処理、高周波成分除去処理、逆高速フーリエ変換処理、および間引き処理を含む平滑化処理を実行する(ステップS2306)。その後、ナビゲーション装置500は、平滑化処理された輪郭データに基づいて、ディスプレイ513に車両の到達可能範囲を表示し(ステップS2307)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0241】
(ナビゲーション装置500における推定消費電力量算出処理)
つぎに、ナビゲーション装置500による推定消費電力量算出処理について説明する。図24は、ナビゲーション装置による推定消費電力量算出処理の手順の一例を示すフローチャートである。図24に示すフローチャートでは、上述したステップS2303の到達可能ノード探索処理でおこなう処理である。
【0242】
図24のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置500は、まず、通信I/F515を介して、プルーブデータなどの渋滞情報や渋滞予測データを取得する(ステップS2401)。つぎに、ナビゲーション装置500は、リンクの長さや、リンクの道路種別を取得する(ステップS2402)。
【0243】
つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS2401,S2402で取得した情報に基づいて、リンクの旅行時間を算出する(ステップS2403)。リンクの旅行時間とは、車両がリンクを走行し終わるのに要する時間である。つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS2401~S2403で取得した情報に基づいて、リンクの平均速度を算出する(ステップS2404)。リンクの平均速度とは、車両がリンクを走行する際の平均速度である。
【0244】
つぎに、ナビゲーション装置500は、リンクの標高データを取得する(ステップS2405)。つぎに、ナビゲーション装置500は、車両の設定情報を取得する(ステップS2406)。つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS2401~S2406で取得した情報に基づいて、上述した(1)式~(6)式のいずれか1つ以上の消費エネルギー推定式を用いて、リンクにおける推定消費電力量を算出し(ステップS2407)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0245】
(ナビゲーション装置500における到達可能地点探索処理)
つぎに、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索処理について説明する。図25図26は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索処理の手順を示すフローチャートである。図25図26のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置500は、探索始点に最も近いリンクL(i)_jに接続するノードN(i)_jをノード候補に追加する(ステップS2501)。探索始点とは、上述したステップS2501で取得した車両の現在地点(ofx,ofy)である。
【0246】
変数i,jは、任意の数値であり、たとえば、探索始点に最も近いリンクおよびノードをそれぞれリンクL(1)_jおよびノードN(1)_jとし、さらに、ノードN(1)_jに接続するリンクをリンクL(2)_j、リンクL(2)_jに接続するノードをノードN(2)_jとしていけばよい(j=1,2、・・・,j1)。変数j1は、任意の数値であり、同一の階層に複数のリンクまたはノードが存在することを意味する。
【0247】
つぎに、ナビゲーション装置500は、ノード候補が1つ以上あるか否かを判断する(ステップS2502)。ノード候補が1つ以上ある場合(ステップS2502:Yes)、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点からノード候補までの累計消費電力量が最小なノード候補を選択する(ステップS2503)。たとえば、ナビゲーション装置500がノード候補としてノードN(i)_jを選択したとして以降の処理を説明する。
【0248】
つぎに、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点からノードN(i)_jまでの累計消費電力量が指定エネルギー量より小さいか否かを判断する(ステップS2504)。指定エネルギー量とは、たとえば、車両の現在地点における車両の残存エネルギー量である。指定エネルギー量より小さい場合(ステップS2504:Yes)、ナビゲーション装置500は、ノードN(i)_jに接続するすべてのリンクL(i+1)_jを抽出する(ステップS2505)。
【0249】
つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS2505において抽出したリンクL(i+1)_jのうち、一のリンクL(i+1)_jを選択する(ステップS2506)。つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS2506において選択した一のリンクL(i+1)_jをリンク候補とするか否かを判断する候補判断処理をおこなう(ステップS2507,S2508)。
【0250】
一のリンクL(i+1)_jをリンク候補とする場合(ステップS2508:Yes)、ナビゲーション装置500は、一のリンクL(i+1)_jでの消費電力量算出処理をおこなう(ステップS2509)。つぎに、ナビゲーション装置500は、一のリンクL(i+1)_jに接続するノードN(i+1)_jまでの累計消費電力量W(i+1)_jを算出する(ステップS2510)。つぎに、ナビゲーション装置500は、ノードN(i+1)_jに接続する処理済みの他の経路があるか否かを判断する(ステップS2511)。
【0251】
処理済みの他の経路がある場合(ステップS2511:Yes)、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点からノードN(i+1)_jまでの累計消費電力量W(i+1)_jが他の経路での累計消費電力量よりも小さいか否かを判断する(ステップS2512)。他の経路での累計消費電力量よりも小さい場合(ステップS2512:Yes)、ナビゲーション装置500は、ノードN(i+1)_jに車両の現在地点からノードN(i+1)_jまでの累計消費電力量W(i+1)_jを設定する(ステップS2513)。
【0252】
一方、処理済みの他の経路がない場合(ステップS2511:No)、ナビゲーション装置500は、ステップS2513に進む。つぎに、ナビゲーション装置500は、ノードN(i+1)_jがノード候補であるか否かを判断する(ステップS2514)。ノード候補でない場合(ステップS2514:No)、ナビゲーション装置500は、ノードN(i+1)_jをノード候補に追加する(ステップS2515)。
【0253】
また、一のリンクL(i+1)_jをリンク候補としない場合(ステップS2508:No)、車両の現在地点からノードN(i+1)_jまでの累計消費電力量W(i+1)_jが他の経路での累計消費電力量以上である場合(ステップS2512:No)、ノードN(i+1)_jがノード候補である場合(ステップS2514:Yes)、ナビゲーション装置500は、ステップS2516へ進む。
【0254】
つぎに、ナビゲーション装置500は、すべてのリンクL(i+1)_jの候補判断処理が終了したか否かを判断する(ステップS2516)。すべてのリンクL(i+1)_jの候補判断処理が終了した場合(ステップS2516:Yes)、ノードN(i)_jをノード候補から外した後(ステップS2517)、ステップS2502へ戻る。そして、ナビゲーション装置500は、ノード候補が1つ以上ある場合(ステップS2502:Yes)、ノード候補の中から、車両の現在地点からの累計消費電力量が最小なノード候補を選択し(ステップS2503)、ステップS2503において選択したノード候補を次のノードN(i)_jとしてステップS2504以降の処理をおこなう。
【0255】
一方、すべてのリンクL(i+1)_jの候補判断処理が終了していない場合(ステップS2516:No)、ステップS2506へ戻る。そして、ナビゲーション装置500は、再度、ノードN(i)_jに接続する他のリンクL(i+1)_jを選択し、同一のノード候補に接続するすべてのリンクL(i+1)_jの候補判断処理が終了するまで(ステップS2516:Yes)、ステップS2507からステップS2515までの処理を繰り返しおこなう。また、ノード候補が1つ以上ない場合(ステップS2502:No)、車両の現在地点からノードN(i)_jまでの累計消費電力量が指定エネルギー量以上である場合(ステップS2504:No)、ナビゲーション装置500は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0256】
(ナビゲーション装置500におけるリンク候補判断処理)
つぎに、ナビゲーション装置500によるリンク候補判断処理について説明する。図27は、ナビゲーション装置によるリンク候補判断処理の手順の一例を示すフローチャートである。図27のフローチャートは、上述したステップS2507でおこなう処理の一例である。
【0257】
図27のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置500は、まず、ステップS2506において選択した一のリンクL(i+1)_jが通行禁止であるか否かを判断する(ステップS2701)。通行禁止でない場合(ステップS2701:No)、ナビゲーション装置500は、一のリンクL(i+1)_jが一方通行の逆走であるか否かを判断する(ステップS2702)。一方通行の逆走でない場合(ステップS2702:No)、ナビゲーション装置500は、一のリンクL(i+1)_jが時間規制や季節規制されているか否かを判断する(ステップS2703)。
【0258】
時間規制や季節規制されていない場合(ステップS2703:No)、ナビゲーション装置500は、一のリンクL(i+1)_jが一のリンクL(i+1)_jの車両の現在地点側のノードN(i+1)に接続するリンクL(i)_jよりも重要度が低いか否かを判断する(ステップS2704)。リンクL(i)_jよりも重要度が高い場合(ステップS2704:No)、ナビゲーション装置500は、一のリンクL(i+1)_jをリンク候補に決定し(ステップS2705)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0259】
一方、通行禁止である場合(ステップS2701:Yes)、一方通行の逆走である場合(ステップS2702:Yes)、時間規制や季節規制されている場合(ステップS2703:Yes)、接続するリンクL(i)_jよりも重要度が低い場合(ステップS2704:Yes)ナビゲーション装置500は、本フローチャートによる処理を終了する。
【0260】
(ナビゲーション装置500における識別情報付与処理)
つぎに、ナビゲーション装置500による識別情報付与処理について説明する。図28は、ナビゲーション装置による識別情報付与処理の手順の一例を示すフローチャートである。図28のフローチャートは、上述したステップS2304でおこなう処理である。
【0261】
図28のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置500は、まず、到達可能なノード(探索可能地点)の経度緯度情報(x,y)を取得する(ステップS2801)。つぎに、ナビゲーション装置500は、最大経度x_max、最小経度x_min、最大緯度y_max、最小緯度y_minを取得する(ステップS2802)。
【0262】
つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS2801で取得した車両の現在地点(ofx,ofy)から、最大経度x_maxまでの距離w1、最小経度x_minまでの距離w2、最大緯度y_maxまでの距離w3、最小緯度y_minまでの距離w4をそれぞれ算出する(ステップS2803)。つぎに、ナビゲーション装置500は、距離w1~w4のうちの最も長い距離w5=max(w1,w2,w3,w4)を取得する(ステップS2804)。
【0263】
つぎに、ナビゲーション装置500は、記憶装置に記憶された地図データを絶対座標系からスクリーン座標系へ変換するための倍率mag=w5/nを算出する(ステップS2805)。つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS2805において算出した倍率magを用いて地図データを絶対座標系からスクリーン座標系へ変換し、m×mドットのメッシュ(X,Y)を生成する(ステップS2806)。
【0264】
ナビゲーション装置500は、ステップS2806において、到達可能なノードを含むメッシュ(X,Y)に到達可能の識別情報を付与し、到達可能なノードを含まないメッシュ(X,Y)に到達不可能の識別情報を付与する。そして、ナビゲーション装置500は、第1識別情報変更処理をおこなうことで、橋またはトンネルに相当するメッシュ(X,Y)の欠損点を除去する(ステップS2807)。
【0265】
つぎに、ナビゲーション装置500は、第2識別情報変更処理をおこなう(ステップS2808)。つぎに、ナビゲーション装置500は、第3識別情報変更処理をおこない(ステップS2809)、本フローチャートによる処理を終了する。第2識別情報変更処理は、クロージングの膨張処理である。第3識別情報変更処理は、クロージングの縮小処理である。なお、本フローチャートでは、第1識別情報変更処理(ステップS2807)の後で第2識別情報変更処理(ステップS2808)と第3識別情報変更処理(ステップS2809)を行っているが、第2識別情報変更処理(ステップS2808)と第3識別情報変更処理(ステップS2809)の後で、第1識別情報変更処理(ステップS2807)を行ってもよい。
【0266】
(ナビゲーション装置500における第1識別情報変更処理)
つぎに、ナビゲーション装置500による第1識別情報変更処理について説明する。図29は、ナビゲーション装置500による第1識別情報変更処理の手順の一例を示すフローチャートである。図29のフローチャートは、上述したステップS2807でおこなう処理の一例である。具体的には、ナビゲーション装置500は、橋またはトンネルの入口および出口に相当する各領域の識別情報が到達可能の識別情報である場合に、橋またはトンネルに相当する領域に生じている欠損点を除去する。
【0267】
図29のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置500は、まず、my行mx列の2次元行列データのメッシュを取得する(ステップS2911)。つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j列の領域の識別情報を検索するために、変数i,jに1を代入する(ステップS2912,S2913)。つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j列の領域が橋またはトンネルの出入り口であるか否かを判断する(ステップS2914)。
【0268】
i行j列の領域が橋またはトンネルの出入り口である場合(ステップS2914:Yes)、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j列の領域の識別情報が「1」であるか否かを判断する(ステップS2915)。i行j列の領域の識別情報が「1」である場合(ステップS2915:Yes)、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j列の領域に対応する、橋またはトンネルの他方の出入り口の領域の位置情報(i1,j1)を取得する(ステップS2916)。
【0269】
つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュのi1行j1列の領域の識別情報が「1」であるか否かを判断する(ステップS2917)。i1行j1列の領域の識別情報が「1」である場合(ステップS2917:Yes)、ナビゲーション装置500は、i行j列の領域とi1行j1列の領域とを結ぶ区間上にあるすべての領域の位置情報を取得する(ステップS2918)。
【0270】
つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS2918において取得した各領域の識別情報を「1」に変更する(ステップS2919)。これにより、i行j列の領域とi1行j1列の領域とを結ぶ橋またはトンネルに相当する領域に生じている欠損点が除去される。ナビゲーション装置500は、ステップS2918において取得した各領域の識別情報がすべて「1」であった場合に、ステップS2919の処理をおこなわずにステップS2920へ進んでもよい。
【0271】
また、i行j列の領域が橋またはトンネルの出入り口でない場合(ステップS2914:No)、i行j列の領域の識別情報が「1」でない場合(ステップS2915:No)、および、i1行j1列の領域の識別情報が「1」でない場合(ステップS2917:No)、ナビゲーション装置500は、ステップS2920に進む。
【0272】
つぎに、ナビゲーション装置500は、変数jに1を加算し(ステップS2920)、変数jがmx列を超えているか否かを判断する(ステップS2921)。変数jがmx列を超えていない場合(ステップS2921:No)、ナビゲーション装置500は、ステップS2914に戻り、以降の処理を繰り返しおこなう。一方、変数jがmx列を超えている場合(ステップS2921:Yes)、ナビゲーション装置500は、変数iに1を加算し(ステップS2922)、変数iがmy行を超えているか否かを判断する(ステップS2923)。
【0273】
変数iがmy行を超えていない場合(ステップS2923:No)、ナビゲーション装置500は、ステップS2913に戻り、変数jに1を代入した後、以降の処理を繰り返しおこなう。一方、変数iがmy行を超えている場合(ステップS2923:Yes)、ナビゲーション装置500は、本フローチャートによる処理を終了する。これにより、ナビゲーション装置500は、my行mx列の2次元行列データのメッシュに含まれる橋またはトンネル上のすべての欠損点を除去することができる。
【0274】
また、ナビゲーション装置500は、ステップS2916において橋またはトンネルの他方の出入り口として取得されたi1行j1列の領域について、再度、橋またはトンネルの他方の出入り口であるか否かの判断(ステップS2914の処理)をおこなわなくてもよい。これにより、ナビゲーション装置500は、第1識別情報変更処理の処理量を低減させることができる。
【0275】
(ナビゲーション装置500における到達可能範囲輪郭抽出処理)
つぎに、ナビゲーション装置500による識別情報付与処理について説明する。図30図31は、ナビゲーション装置による到達可能範囲輪郭抽出処理の手順の一例を示すフローチャートである。図30図31のフローチャートは、上述したステップS2305でおこなう処理の一例であり、上述したナビゲーション装置500における到達可能範囲の輪郭抽出の概要・その2に示す到達可能範囲輪郭抽出処理である。
【0276】
図30図31のフローチャートにおいて、ナビゲーション装置500は、まず、my行mx列の2次元行列データのメッシュを取得する(ステップS3001)。つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS3001で取得したメッシュの各領域の経度緯度情報を取得する(ステップS3002)。
【0277】
つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j列の領域の識別情報を検索するために、変数iを初期化し、変数iに1を加算する(ステップS3003,S3004)。つぎに、ナビゲーション装置500は、変数iがmy行を超えているか否かを判断する(ステップS3005)。
【0278】
変数iがmy行を超えていない場合(ステップS3005:No)、ナビゲーション装置500は、変数jを初期化し、変数jに1を加算する(ステップS3006,S3007)。つぎに、ナビゲーション装置500は、変数jがmx列を超えているか否かを判断する(ステップS3008)。
【0279】
変数jがmx列を超えていない場合(ステップS3008:No)、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j列の領域の識別情報が「1」であるか否かを判断する(ステップS3009)。i行j列の領域の識別情報が「1」である場合(ステップS3009:Yes)、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j列の領域の左上座標(px1,py1)を取得する(ステップS3010)。i行j列の領域の左上座標(px1,py1)とは、i行j列の領域の最小経度px1、最小緯度py1である。
【0280】
つぎに、ナビゲーション装置500は、変数jがmx列より小さいか否かを判断する(ステップS3011)。変数jがmx列以上の場合(ステップS3011:No)、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j列の領域の右下座標(px2,py2)を取得する(ステップS3012)。i行j列の領域の右下座標(px2,py2)とは、i行j列の領域の最大経度px2、最大緯度py2である。
【0281】
つぎに、ナビゲーション装置500は、ステップS3010において取得した左上座標(px1,py1)と、ステップS3012において取得した右下座標(px2,py2)とを地図データに設定する(ステップS3016)。そして、ナビゲーション装置500は、左上座標(px1,py1)と、右下座標(px2,py2)とを対向する頂点とする矩形領域を塗りつぶし(ステップS3017)、ステップS3004に戻り、以降の処理を繰り返しおこなう。
【0282】
一方、変数jがmx列より小さい場合(ステップS3011:Yes)、ナビゲーション装置500は、変数jに1を加算し(ステップS3013)、メッシュのi行j列の領域の識別情報が「1」であるか否かを判断する(ステップS3014)。i行j列の領域の識別情報が「1」でない場合(ステップS3014:No)、ナビゲーション装置500は、メッシュのi行j-1列の領域の右下座標(px2,py2)を取得し(ステップS3015)、ステップS3016以降の処理をおこなう。
【0283】
また、i行j列の領域の識別情報が「1」である場合(ステップS3014:Yes)、ステップS3011に戻り、以降の処理を繰り返しおこなう。そして、変数iがmy行を超えている場合(ステップS3005:Yes)、ナビゲーション装置500は、本フローチャートによる処理を終了する。変数jがmx列を超えている場合(ステップS3008:Yes)、ステップS3004に戻り、以降の処理を繰り返しおこなう。
【0284】
(ナビゲーション装置500における平滑化処理)
つぎに、ナビゲーション装置500による平滑化処理について説明する。図32は、ナビゲーション装置500による平滑化処理の手順の一例を示すフローチャートである。図32のフローチャートは、上述したステップS2306でおこなう処理の一例である。
【0285】
まず、ナビゲーション装置500は、補完部262により、移動体の到達可能範囲の輪郭を示す輪郭データの補完処理を実行する(ステップS3201)。つぎに、ナビゲーション装置500は、変換部263により、補完処理後の輪郭データから得られた偏角の配列について高速フーリエ変換(FFT処理)を実行する(ステップS3202)。そして、ナビゲーション装置500は、除去部264により、周波数変換により得られた偏角の周波数成分にローパスフィルタを通すことにより高周波成分を除去する(ステップS3203)。つぎに、ナビゲーション装置500は、逆変換部265により、高周波成分が除去された偏角の周波数成分を逆高速フーリエ変換(逆FFT処理)することにより、輪郭データを再生する(ステップS3204)。そして、ナビゲーション装置500は、間引き部266により、頂点を間引く間引き処理を実行する(ステップS3205)。これにより、輪郭データが平滑化される。
【0286】
(道路勾配について)
つぎに、上記(1)式~(6)式の右辺に変数として用いられる道路勾配θについて説明する。図33は、勾配がある道路を走行する車両にかかる加速度の一例を模式的に示した説明図である。図33に示すように、道路勾配がθの坂道を走行する車両には、車両の走行に伴う加速度A(=dx/dt)と、重力加速度gの進行方向成分B(=g・sinθ)がかかる。たとえば、上記(1)式を例に説明すると、上記(1)式の右辺第2項は、この車両の走行に伴う加速度Aと、重力加速度gの進行方向成分Bの合成加速度Cを示している。また、車両が走行する区間の距離Dとし、走行時間Tとし、走行速度Vとする。
【0287】
道路勾配θを考慮せずに電力消費量の推定を行った場合、道路勾配θが小さい領域では推定消費電力量と実際の消費電力量との誤差が小さいが、道路勾配θが大きい領域では推定した推定消費電力量と実際の消費電力量との誤差が大きくなってしまう。このため、ナビゲーション装置500では、道路勾配、すなわち第四情報を考慮して燃費の推定をおこなうことで推定精度が向上する。
【0288】
車両が走行する道路の勾配は、たとえば、ナビゲーション装置500に搭載された傾斜計を用いて知ることができる。また、ナビゲーション装置500に傾斜計が搭載されていない場合は、たとえば、地図データに含まれる道路の勾配情報を用いることができる。
【0289】
(走行抵抗について)
つぎに、車両に生じる走行抵抗について説明する。ナビゲーション装置500は、たとえば、次の(16)式により走行抵抗を算出する。一般的に、走行抵抗は、道路種別や、道路勾配、路面状況などにより、加速時や走行時に移動体に生じる。
【0290】
【数12】
【0291】
(ナビゲーション装置によるクロージング処理後の表示例)
つぎに、ナビゲーション装置500によるクロージング処理後の表示例について説明する。図34は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索処理後の表示例の一例について示す説明図である。図35は、ナビゲーション装置500による識別情報付与処理後の表示例の一例について示す説明図である。図36は、ナビゲーション装置による第1識別情報変更処理後の表示例の一例について示す説明図である。また、図37は、ナビゲーション装置500によるクロージング処理(膨張)後の表示例の一例について示す説明図である。図38は、ナビゲーション装置500によるクロージング処理(縮小)後の表示例の一例について示す説明図である。
【0292】
図34に示すように、たとえば、ディスプレイ513には、地図データとともに、ナビゲーション装置500によって探索された複数の車両の到達可能地点が表示される。図34に示すディスプレイ513の状態は、ナビゲーション装置500によって到達可能地点探索処理がおこなわれたときの、ディスプレイに表示される情報の一例である。具体的には、図23のステップS2303の処理がおこなわれた状態である。
【0293】
つぎに、ナビゲーション装置500によって地図データが複数の領域に分割され、到達可能地点に基づいて各領域に到達可能または到達不可能の識別情報が付与されることで、図35に示すように、ディスプレイ513には、到達可能の識別情報に基づく車両の到達可能範囲3500が表示される。この段階では、車両の到達可能範囲3500内に、到達不可能な領域からなる欠損点が生じている。
【0294】
また、車両の到達可能範囲3500内には、たとえば、東京湾を横断する東京湾横断道路(東京湾アクアライン:登録商標)3510の両出入り口に相当する領域が含まれる。しかし、車両の到達可能範囲3500内には、東京湾横断道路3510上の全領域のうち、一の領域3511しか含まれていない。つぎに、ナビゲーション装置500によって第1識別情報変更処理がおこなわれることにより、図36に示すように東京湾横断道路上の欠損点が除去され、ディスプレイ513には、東京湾横断道路3510上の全領域3621が含まれた到達可能範囲3620が表示される。
【0295】
つぎに、ナビゲーション装置500によってクロージングの膨張処理がおこなわれることにより、図37に示すように、欠損点の除去された車両の到達可能範囲3700が生成される。また、すでに、第1識別情報変更処理によって東京湾横断道路上の全領域3621が到達可能範囲3620に含まれているため、クロージングの膨張処理後においても、東京湾横断道路上の全領域3710は、車両の到達可能範囲3700となる。その後、ナビゲーション装置500によってクロージングの縮小処理がおこなわれることにより、図38に示すように、車両の到達可能範囲3800の外周は、クロージングがおこなわれる前の車両の到達可能範囲3500の外周とほぼ同様の大きさとなる。なお、図38の東京湾横断道路上の全領域3810の境界および図38の東京湾横断道路上の全領域3810の夫々の境界は、メッシュに依存した境界の表示となるが、ここでは分かりやすいように斜め線の境界で表示している。
【0296】
そして、ナビゲーション装置500によって車両の到達可能範囲3800の輪郭3801を抽出することで、車両の到達可能範囲3800の輪郭をなめらかに表示することができる。また、クロージングによって欠損点を除去しているため、車両の到達可能範囲3800は、2次元のなめらかな面3802で表示される。また、クロージング縮小処理後においても、東京湾横断道路上の全領域3810は、車両の到達可能範囲3800またはその輪郭3801として表示される。
【0297】
図39は、ナビゲーション装置500による平滑化処理後の表示例の一例について示す説明図である。ナビゲーション装置500によって車両の到達可能範囲3900の輪郭3901が、図38の状態(輪郭3801)から平滑化されるため、車両の到達可能範囲3900は、2次元のよりなめらかな面3902で表示される。
【0298】
以上説明したように、ナビゲーション装置500によれば、地図情報を複数の領域に分割して各領域ごとに移動体が到達可能か否かを探索し、各領域にそれぞれ移動体が到達可能または到達不可能であることを識別する到達可能または到達不可能の識別情報を付与する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報が付与された領域に基づいて、移動体の到達可能範囲を生成する。このため、ナビゲーション装置500は、海や湖、山脈など移動体の走行不可能な領域を除いた状態で移動体の到達可能範囲を生成することができる。したがって、画像処理装置200は、移動体の到達可能範囲を正確に表示することができる。
【0299】
また、ナビゲーション装置500は、地図情報を分割した複数の領域を画像データに変換し、当該複数の領域にそれぞれ到達可能または到達不可能の識別情報を付与した後、クロージングの膨張処理をおこなう。このため、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能範囲内の欠損点を除去することができる。
【0300】
また、ナビゲーション装置500は、地図情報を分割した複数の領域を画像データに変換し、当該複数の領域にそれぞれ到達可能または到達不可能の識別情報を付与した後、オープニングの縮小処理をおこなう。このため、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能範囲の孤立点を除去することができる。
【0301】
このように、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能範囲の欠損点や孤立点を除去することができるので、移動体の走行可能範囲を2次元のなめらかな面でかつ見やすく表示することができる。また、ナビゲーション装置500は、地図情報を複数の領域に分割して生成したメッシュの輪郭を抽出する。このため、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能範囲の輪郭をなめらかに表示することができる。
【0302】
また、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能地点を探索する道路を絞り込んで、移動体の到達可能地点を探索する。このため、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能地点を探索する際の処理量を低減することができる。移動体の到達可能地点を探索する道路を絞り込むことで、探索可能な到達可能地点が少なくなったとしても、上述したようにクロージングの膨張処理がおこなわれることにより、移動体の到達可能範囲内に生じる欠損点を除去することができる。したがって、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能範囲を検出するための処理量を低減することができる。また、ナビゲーション装置500は、移動体の走行可能範囲を2次元のなめらかな面で見やすく表示することができる。
【0303】
また、ナビゲーション装置500は、高速フーリエ変換の前処理として、輪郭データを構成する線分データをX軸成分とY軸成分とに分解して、各線分データの長さを均一にした。これにより、輪郭データから得られた頂点ごとの偏角および長さのうち、偏角についてのみ高速フーリエ変換をおこなえばよいため、平滑化処理の高速化を図ることができる。また、補完処理では、線分データを、到達可能範囲に包含されるように分解するため、到達可能範囲に包含されないように分割される場合に比べて違和感が抑制され、視認性の向上を図ることができる。また、輪郭データの不要な頂点を間引く場合、偏角の大きさにより判断するため、簡単な間引き処理により平滑化処理の高速化を実現することができる。このように、実施の形態1にかかる画像処理装置では、表示される移動体の到達可能範囲の輪郭の平滑化を高速に実行して、視認性の向上を図ることができる。さらに、本手法では周波成分の値を直に操作することができるため、他の平滑化フィルタと比較しても平滑化の自由度が高い。また、移動平均による平滑化などと比較して、FFTを使用する方が誤差が少ないため、他の平滑化フィルタと比較しても、より正確な到達可能範囲を高速に表示することができる。
【0304】
したがって、例えば大小異なる残存燃料に対する複数の到達可能範囲で、一方の平滑化前の到達可能範囲が、他方の到達可能範囲を内包している場合にも、一方の平滑化後の到達可能範囲内に別の平滑化後の到達可能範囲が内包された状態で表示させることができるため、同時に複数の到達可能範囲を表示する際にも、視認性の向上を図ることができる。このように、音声処理におけるイコライザのように特定の周波数成分を自由自在に変更でき、他のフィルタよりも自由度が高い。また、移動平均よりもDFTでローパスをかけたほうが誤差が少ない。同時に、複数の到達可能範囲を描画したときに、誤差が少ないので、メッシュサイズに寄らず、大きい図形が小さい図形を含んだ状態として表示できるようになる。
【0305】
(実施の形態2)
図40は、実施の形態2にかかる画像処理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。実施の形態2にかかる画像処理システム4000の機能的構成について説明する。実施の形態2にかかる画像処理システム4000は、サーバ4010、端末4020によって構成される。実施の形態2にかかる画像処理システム4000は、実施の形態1の画像処理装置200の機能をサーバ4010および端末4020に備える。
【0306】
サーバ4010は、移動体に搭載された端末4020によって表示部210に表示させる情報を生成する。具体的には、サーバ4010は、移動体の到達可能範囲に関する情報を検出し端末4020に送信する。端末4020は、移動体に搭載されても構わないし、携帯端末として移動体の中で利用されても構わないし、携帯端末として移動体の外で利用されても構わない。そして、端末4020は、サーバ4010から移動体の到達可能範囲に関する情報を受信する。
【0307】
図40において、サーバ4010は、算出部202、探索部203、分割部204、付与部205、サーバ受信部4011、サーバ送信部4012によって構成される。端末4020は、取得部201、表示制御部206、端末受信部4021、端末送信部4022によって構成される。なお、図40に示す画像処理システム4000においては、図2に示した画像処理装置200と同一の構成部に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0308】
サーバ4010において、サーバ受信部4011は、端末4020から送信された情報を受信する。具体的には、たとえば、サーバ受信部4011は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された端末4020からの移動体に関する情報を受信する。移動体に関する情報とは、移動体の現在地点に関する情報、および、移動体の現在地点において移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報である。サーバ受信部4011によって受信された情報は、算出部202で参照される情報である。
【0309】
サーバ送信部4012は、付与部205によって移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報が付与された地図情報が分割されてなる複数の領域を移動体の到達可能範囲として、端末4020に送信する。具体的には、たとえば、サーバ送信部4012は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された端末4020に情報を送信する。
【0310】
端末4020は、たとえば、携帯端末の情報通信網や自装置に備えられた通信部(不図示)を介して通信可能な状態で、サーバ4010と接続されている。
【0311】
端末4020において、端末受信部4021は、サーバ4010からの情報を受信する。具体的には、端末受信部4021は、複数の領域に分割され、かつ当該領域のそれぞれに、移動体の到達可能地点に基づいて到達可能または到達不可能の識別情報が付与された地図情報を受信する。より具体的には、たとえば、端末受信部4021は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続されたサーバ4010から情報を受信する。
【0312】
端末送信部4022は、取得部201に取得された移動体に関する情報をサーバ4010に送信する。具体的には、たとえば、端末送信部4022は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続されたサーバ4010に移動体に関する情報を送信する。
【0313】
つぎに、実施の形態2にかかる画像処理システム4000による画像処理について説明する。画像処理システム4000による画像処理は、実施の形態1にかかる画像処理装置200とほぼ同一であるため、図4のフローチャートを利用して実施の形態1との差異について説明する。
【0314】
画像処理システム4000による画像処理は、実施の形態1にかかる画像処理装置200による画像処理のうち、推定エネルギー消費量算出処理、到達可能地点探索処理、識別情報付与処理、をサーバ4010がおこなう。具体的には、図4のフローチャートにおいて、端末4020は、ステップS401の処理をおこない、ステップS401で取得した情報をサーバ4010に送信する。
【0315】
つぎに、サーバ4010は、端末4020からの情報を受信する。つぎに、サーバ4010は、端末4020から受信した情報に基づいてステップS402~S406の処理をおこない、ステップS406で取得した情報を端末4020に送信する。つぎに、端末4020は、サーバ4010からの情報を受信する。そして、端末4020は、サーバ4010から受信した情報に基づいてステップS407をおこない、本フローチャートによる処理を終了する。
【0316】
以上説明したように、実施の形態2にかかる画像処理システム4000および画像処理方法は、実施の形態1にかかる画像処理装置200および画像処理方法と同様の効果を得ることができる。
【0317】
(実施の形態3)
図41は、実施の形態3にかかる画像処理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。実施の形態3にかかる画像処理システム4100の機能的構成について説明する。実施の形態3にかかる画像処理システム4100は、第1サーバ4110、第2サーバ4120、第3サーバ4130、端末4140によって構成される。画像処理システム4100は、実施の形態1の画像処理装置200の算出部202の機能を第1サーバ4110が備え、実施の形態1の画像処理装置200の探索部203の機能を第2サーバ4120が備え、実施の形態1の画像処理装置200の分割部204、付与部205の機能を第3サーバ4130が備え、実施の形態1の画像処理装置200の取得部201および表示制御部206の機能を端末4140が備える。
【0318】
図41において、端末4140は、実施の形態2の端末4020と同様の構成を有する。具体的には、端末4140は、取得部201、表示制御部206、端末受信部4141、端末送信部4142によって構成される。端末受信部4141は、実施の形態2の端末受信部4021と同様の構成を有する。端末送信部4142は、実施の形態2の端末送信部4022と同様の構成を有する。第1サーバ4110は、算出部202、第1サーバ受信部4111、第1サーバ送信部4112、によって構成される。
【0319】
第2サーバ4120は、探索部203、第2サーバ受信部4121、第2サーバ送信部4122、によって構成される。第3サーバ4130は、分割部204、付与部205、第3サーバ受信部4131、第3サーバ送信部4132、によって構成される。図40に示す画像処理システム4100においては、図2に示した画像処理装置200および図40に示した画像処理システム4000と同一の構成部に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0320】
第1サーバ4110において、第1サーバ受信部4111は、端末4140から送信された情報を受信する。具体的には、たとえば、第1サーバ受信部4111は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された端末4140の端末送信部4142からの情報を受信する。第1サーバ受信部4111によって受信された情報は、算出部202で参照される情報である。
【0321】
第1サーバ送信部4112は、算出部202によって算出された情報を第2サーバ受信部4121に送信する。具体的には、第1サーバ送信部4112は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された第2サーバ受信部4121に情報を送信してもよいし、有線で接続された第2サーバ受信部4121に情報を送信してもよい。
【0322】
第2サーバ4120において、第2サーバ受信部4121は、端末送信部4142および第1サーバ送信部4112によって送信された情報を受信する。具体的には、たとえば、第2サーバ受信部4121は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された第1サーバ送信部4112および端末送信部4142からの情報を受信する。第2サーバ受信部4121は、有線で接続された第1サーバ送信部4112からの情報を受信してもよい。第2サーバ受信部4121によって受信された情報は、探索部203で参照される情報である。
【0323】
第2サーバ送信部4122は、探索部203によって探索された情報を第3サーバ受信部4131に送信する。具体的には、たとえば、第2サーバ送信部4122は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された第3サーバ受信部4131に情報を送信してもよいし、有線で接続された第3サーバ受信部4131に情報を送信してもよい。
【0324】
第3サーバ4130において、第3サーバ受信部4131は、端末送信部4142および第2サーバ送信部4122によって送信された情報を受信する。具体的には、たとえば、第3サーバ受信部4131は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された第2サーバ送信部4122および端末送信部4142からの情報を受信してもよい。第3サーバ受信部4131は、有線で接続された第2サーバ送信部4122からの情報を受信してもよい。第3サーバ受信部4131によって受信された情報は、分割部204で参照される情報である。
【0325】
第3サーバ送信部4132は、付与部205によって生成された情報を端末受信部4141に送信する。具体的には、たとえば、第3サーバ送信部4132は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された端末受信部4141に情報を送信する。
【0326】
つぎに、実施の形態3にかかる画像処理システム4100による画像処理について説明する。画像処理システム4100による画像処理は、実施の形態1にかかる画像処理装置200とほぼ同一であるため、図4のフローチャートを利用して実施の形態1との差異について説明する。
【0327】
画像処理システム4100による画像処理は、実施の形態1にかかる画像処理装置200による画像処理のうち、推定エネルギー消費量算出処理を第1サーバ4110がおこない、到達可能地点探索処理を第2サーバ4120がおこない、識別情報付与処理を第3サーバ4130がおこなう。図4のフローチャートにおいて、端末4140は、ステップS401の処理をおこない、ステップS401で取得した情報を第1サーバ4110に送信する。
【0328】
つぎに、第1サーバ4110は、端末4140からの情報を受信する。つぎに、第1サーバ4110は、端末4140から受信した情報に基づいてステップS402,S403の処理をおこない、ステップS403で算出した情報を第2サーバ4120に送信する。つぎに、第2サーバ4120は、第1サーバ4110からの情報を受信する。つぎに、第2サーバ4120は、第1サーバ4110から受信した情報に基づいてステップS404の処理をおこない、ステップS404で探索した情報を第3サーバ4130に送信する。
【0329】
つぎに、第3サーバ4130は、第2サーバ4120からの情報を受信する。つぎに、第3サーバ4130は、第2サーバ4120からの情報に基づいてステップS405,S406の処理をおこない、ステップS406で生成した情報を端末4140に送信する。つぎに、端末4140は、第3サーバ4130からの情報を受信する。そして、端末4140は、第3サーバ4130から受信した情報に基づいてステップS407をおこない、本フローチャートによる処理を終了する。
【0330】
以上説明したように、実施の形態3にかかる画像処理システム4100および画像処理方法は、実施の形態1にかかる画像処理装置200および画像処理方法と同様の効果を得ることができる。
【実施例0331】
以下に、本発明の実施例2について説明する。図42は、実施例2にかかる画像処理装置のシステム構成の一例を示す説明図である。本実施例2では、車両に搭載されたナビゲーション装置4210を端末4020とし、サーバ4220をサーバ4010とする取得システム4200において、本発明を適用した場合の一例について説明する。画像処理システム4200は、車両4230に搭載されたナビゲーション装置4210、サーバ4220、ネットワーク4240によって構成される。
【0332】
ナビゲーション装置4210は、車両4230に搭載されている。ナビゲーション装置4210は、サーバ4220に車両の現在地点の情報および初期保有エネルギー量に関する情報を送信する。また、ナビゲーション装置4210は、サーバ4220から受信した情報をディスプレイに表示してユーザに報知する。サーバ4220は、ナビゲーション装置4210から車両の現在地点の情報および初期保有エネルギー量に関する情報を受信する。サーバ4220は、受信した車両情報に基づいて、車両4230の到達可能範囲に関する情報を生成する。
【0333】
サーバ4220およびナビゲーション装置4210のハードウェア構成は、実施例1のナビゲーション装置500のハードウェア構成と同一である。また、ナビゲーション装置4210は、車両情報をサーバ4220に送信する機能と、サーバ4220からの情報を受信してユーザに報知する機能に該当するハードウェア構成のみを備えていればよい。
【0334】
また、取得システム4200は、車両に搭載されたナビゲーション装置4210を実施の形態3の端末4140とし、サーバ4220の機能構成を実施の形態3の第1~3サーバ4110~4130に分散させた構成としてもよい。
【0335】
なお、本実施の形態で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD-ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0336】
200 画像処理装置
201 取得部
202 算出部
203 探索部
204 分割部
205 付与部
206 表示制御部
210 表示部
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