IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇都宮工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-制振装置 図1
  • 特開-制振装置 図2
  • 特開-制振装置 図3
  • 特開-制振装置 図4
  • 特開-制振装置 図5
  • 特開-制振装置 図6
  • 特開-制振装置 図7
  • 特開-制振装置 図8
  • 特開-制振装置 図9
  • 特開-制振装置 図10
  • 特開-制振装置 図11
  • 特開-制振装置 図12
  • 特開-制振装置 図13
  • 特開-制振装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013342
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/84 20060101AFI20230119BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230119BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E04B1/84 Z
F16F15/02 C
G10K11/16 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117456
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】240000235
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人柴田・中川法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】松井 邦彰
【テーマコード(参考)】
2E001
3J048
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF07
2E001FA03
2E001FA14
2E001GA01
2E001GA11
2E001GA28
2E001HA33
3J048AD06
3J048BC03
3J048BF02
3J048DA01
3J048EA38
5D061GG10
(57)【要約】
【課題】 制振装置を使用しつつ騒音等の発生状況を問わず消音を可能にするための建築物吸音構造を提供する。
【解決手段】 建築物吸音構造は、建物構造体に使用される面材を支持する面材支持部に制振装置を装着し、生活騒音による面材の振動を低減させる。制振装置は、面材支持部に装着する装着手段と、面材に当接する面材当接部と、振動の伝達を受けて発振する発振手段とを備える。発振手段は、面材当接部に固着される固着領域と、この固着領域に連続しつつ面材当接部から所定間隔を有して振動自在な状態に形成される振動領域と、この振動領域に着脱可能に設けられるウエイトとを備える。吸音構造は、振動領域またはウエイトが振動により変位するとき、変位に対する抵抗力を作用させる抵抗部材が、振動領域もしくはウエイトのいずれかに接触可能に設けられている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物構造体に使用される面材を支持する面材支持部に制振装置を装着し、生活騒音による該面材の振動を低減させる吸音構造であって、
前記制振装置は、前記面材支持部に装着可能な装着手段と、該装着手段に支持されて前記面材に当接可能な面材当接部と、該面材当接部に設置され、振動の伝達を受けて発振する発振手段とを備え、前記発振手段は、前記面材当接部に固着される固着領域と、この固着領域に連続しつつ該面材当接部から所定間隔を有して振動自在な状態に形成される振動領域と、この振動領域に着脱可能に設けられるウエイトとを備えるものであり、
前記振動領域または前記ウエイトが振動により変位するとき、少なくとも一方向への変位に対する抵抗力を作用させる抵抗部材が、該振動領域もしくは前記ウエイトのいずれか一方または双方に接触可能に設けられていることを特徴とする建築物吸音構造。
【請求項2】
前記抵抗部材は、前記面材当接部もしくは前記固着領域と前記振動領域との間、複数の振動領域の隣接する間または前記面材当接部と前記ウエイトとの間のうち、任意に選択される一以上に配置される弾性部材であり、該弾性部材は、該振動領域または該ウエイトが、該固着領域または該面材当接部に接近する方向へ変位するとき、その変位に対する抵抗力を作用させるものである請求項1に記載の建築物遮音構造。
【請求項3】
前記抵抗部材は、前記面材の裏側に配置され、全体として適宜な弾性を有するグラスウールであり、前記弾性部材に代えて、または該弾性部材とともに配置されるものであって、該グラスウールを前記振動領域もしくは前記ウエイトのいずれか一方または双方に接触可能な状態で配置するものであり、該グラスウールは、該振動領域が前記固着領域から離間し、または該ウエイトが前記面材当接部から離間する方向へ変位するとき、その変位に対する抵抗力を作用させるものである請求項2に記載の建築物吸音構造。
【請求項4】
前記抵抗部材は、前記面材支持部に装着される制振装置ごとに異なる弾性特性を有するものが選択的に設けられるものである請求項2または3に記載の建築物吸音構造。
【請求項5】
前記抵抗部材は、前記面材ごとに異なる弾性特性を有するものが選択的に設けられるものであり、その弾性特性は、少なくとも4種類の中から選択的に使用されるものである請求項2または3に記載の建築物吸音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる生活騒音等により発生する建物構造体の振動を低減させるための吸音構造に関し、特に壁面や天井等の支持に使用される面材支持部に装着する制振装置を用いた吸音構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般住宅において、特に、密集して建造される住宅地または集合住宅にあっては、近隣または隣室もしくは上階で生活する人々によって発生する騒音や振動がしばしば問題となり、近隣トラブルの原因にもなっている。これらの騒音や振動は、日常生活において発生する音(いわゆる生活騒音)によるものであるが、生活習慣によっては、テレビや楽器から発生する音や会話の声、さらには上階での足音など多岐の原因によって発生するものである。これらの生活騒音は、振動により近隣または隣室もしくは下階に伝達され、これが不快音となっていた。また、ドアの開閉や上階での歩行によって発生する振動についても隣室や下階等に伝達し、これが不快振動となっていた。
【0003】
そこで一般的な建物構造体においては、壁面や天井を衝撃吸収構造とし、または防音材などを用いることで解消しようとしてきた。しかしながら、これらは、振動の伝達系において、振動の伝播を中断させる(振幅を小さくする)ために設けられるものであり、音や振動の共振現象による増幅効果までも低減させるには至っていない。すなわち、建物(特に面状部分)は、その構造によって振動する際に固有の周波数(固有振動数)を有しており、騒音等によって振動する場合、その振動の周波数(振動数)が建物固有の周波数(固有振動数)に接近すると、振幅が大きくなる。そのため、十分に振動の伝播を中断させない限りにおいては、共振現象による振動の増幅が生じるため、未だ十分な生活騒音等の解消には至っていないのが現状である。
【0004】
そこで、これらの共振現象による生活騒音や振動を低減させるために、振動対象部材に対して複数の振動可能なダンパウエイト(ゴム製ダンパに錘を装着したもの、以下同じ)を装着し、伝達される振動エネルギをウエイトに吸収させることにより、生活騒音等の振幅を打ち消すことで低減させていた(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-141600号公報
【特許文献2】特開2006-77517号公報
【特許文献3】特開2018-155094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に開示される技術は、振動対象部材(壁や天井)に振動可能なダンパウエイトを直接的に装着するものであるため、十分な制振効果を得るためには、振動対象部材ごとに複数のダンパウエイトを装着しなければならず、その数が膨大とならざるを得なかった。また、上記特許文献2に開示される技術は、天井(振動対象物)を支持する野縁に複数のダンパウエイトを装着するものであり、振動対象物に対する直接的な装着ではないものの、野縁に沿って複数のダンパウエイトを装着することによって、振動対象物の全体の振動を吸収させることが提案されていた。しかしながら、野縁にのみダンパウエイトを設ける構成では、振動の伝達源である振動対象物の振動を十分に解消させことは容易でなかった。すなわち、野縁は振動対象物を支持するものであって、建物構造体の中では比較的強固な構造であり、振動対象物から伝播される振動を十分に伝達することができず、ダンパウエイトによって解消される振動は振動対象物の振動全体の僅かなものとなっていた。
【0007】
このように多数のウエイトを装着することは、振動に抗するウエイトを多数設けることにより、制振の効果を期待するものであるが、その装着の数が多くなり、設置には非常に手間が掛かるうえ、個別のウエイトにおける固有振動数の調整が容易でなく、調整不良の場合には、現実に機能できるダンパウエイトが限定されることとなり、大幅な振動低減効果が期待できないなどの問題点があった。
【0008】
そこで、本願の発明者らは、壁面に当接可能な面材当接面部に発振部材を備えた制振装置を開発した(特許文献3参照)。この制振装置は、面材当接部から伝達される振動を打ち消すように発振部材が振動することで、生活騒音を解消させるものである。さらに、本願の発明者らにおいて、特願2020-044794として出願した制振装置を開発し、その制振効率を向上させることを可能とした。
【0009】
ところで、本願の発明者らが開発した上記構成の制振装置の基本的構成は、建物構造体に使用される面材を支持する面材支持部に装着して該面材の振動を低減させるものであり、前記面材支持部に装着可能な装着手段と、該装着手段に支持されて前記面材に当接可能な面材当接部と、該面材当接部に設置され、振動の伝達を受けて発振する発振手段とを備え、前記面材支持部に装着可能な装着手段と、該装着手段に支持されて前記面材に当接可能な面材当接部と、該面材当接部に設置され、振動の伝達を受けて発振する発振手段とを備え、前記装着手段と前記面材当接部とが一体的に構成されており、前記面材当接部は、部分的に前記面材および前記面材支持部の双方に挟持される固定領域とそれ以外の非固定領域とに区分されており、前記発振手段は、前記面材当接部の非固定領域に固着されている構成であった。
【0010】
上記のような構成の制振装置の場合には、面材支持部に装着される装着手段と面材当接部とが一体的に構成され、面材当接部は固定領域と非固定領域とに区分されていることから、装置全体は、面材支持部に固定された状態となり、面材当接部の非固定領域と発振手段とが振動可能な状態となる。これにより、面材当接部の非固定領域は僅かながら振動可能な状態となり、発振手段は、当該非固定領域に固着された状態で面材当接部とは別に振動することが可能となる。従って、生活騒音等によって生じる振動(振動エネルギ)は、面材および面材支持部を介して面材当接部に伝達され、発振手段が共振し、その振動(振動エネルギ)を吸収して打ち消すように作用する。このとき、面材当接部は発振手段を含めた状態で固有振動数を有し、発振手段はこれとは異なる固有振動数を有することとなることから、共振点が分散されて広い範囲の振動数による振動に対する制振を可能にすることとなるものであった。
【0011】
上記の構成における発振手段には、面材当接部に固着される固着領域と、この固着領域に連続しつつ該面材当接部から所定間隔を有して振動自在な状態に形成される振動領域と、この振動領域に着脱可能に設けられるウエイトとを備える構成とすることにより、発振手段は、固着領域が面材当接部と一体化し、面材当接部が振動する際には同様に振動することとなる一方、振動領域が固着領域に連続して振動の伝達を受けることができ、その際、固着領域とは異なる固有振動数により振動することを可能にしたものであった。
【0012】
そして、前記ウエイトを除く各部材をバネ鋼によって構成することにより、面材当接部においても柔軟な振動を誘発させ、また、このバネ鋼の肉厚を変化させることで固有振動数を変化させるものとしつつ、バネ鋼による振動の減衰により、最終的に制振を実現するものであった。
【0013】
上記構成の制振装置は、その構成から、重量物であるウエイトが振動エネルギを吸収することによる振動の軽減を目的とするものであるが、バネ鋼による振動の減衰を期待する場合にはウエイトの振動が長期化することも想定され得ることから、振動の長期化が騒音等の消音効果に与える影響を懸念するものとなっていた。すなわち、断続的な(単発の)振動であれば十分な消音効果が期待できるものであるが、継続的な(短時間による複数回の)振動が伝達される場合には、既に伝達された振動による振動領域への伝達が円滑に行えない可能性があるという懸念があった。
【0014】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、前述の制振装置を使用しつつ騒音等の発生状況を問わず消音を可能にするための建築物吸音構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明は、建物構造体に使用される面材を支持する面材支持部に制振装置を装着し、生活騒音による該面材の振動を低減させる吸音構造であって、前記制振装置は、前記面材支持部に装着可能な装着手段と、該装着手段に支持されて前記面材に当接可能な面材当接部と、該面材当接部に設置され、振動の伝達を受けて発振する発振手段とを備え、前記発振手段は、前記面材当接部に固着される固着領域と、この固着領域に連続しつつ該面材当接部から所定間隔を有して振動自在な状態に形成される振動領域と、この振動領域に着脱可能に設けられるウエイトとを備えるものであり、前記振動領域または前記ウエイトが振動により変位するとき、少なくとも一方向への変位に対する抵抗力を作用させる抵抗部材が、該振動領域もしくは前記ウエイトのいずれか一方または双方に接触可能に設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、第一義的には、発振手段が、面材当接部から伝達される振動を受けて発振し、生活騒音等によって生じる振動を打ち消すように作動する。これは、発振手段が、面材の振動の伝達を受けて共振(共鳴)して振動するものであり、面材の振動エネルギが発振手段に移動することにより低下し、騒音等による面材の振動を低減させるものである。また、第二義的には、発振手段の振動による振動領域またはウエイトの振動を抵抗部材が吸収し、振動エネルギを早期に分散させることとなる。これにより、継続的に面材が振動するような状況においても適宜振動を吸収し、騒音の伝達を解消させるものとなる。
【0017】
ここで、面材とは、天井の場合は、天井板(天井材または天井仕上げ材など)であり、壁面の場合は、壁板(壁面材または壁面仕上げ材など)であって、石膏ボードなどが使用される。また、面材支持部とは、天井の場合は野縁などの下地桟であり、壁面の場合は間柱や胴縁などの下地桟であって、木製桟の場合もあれば軽量形鋼製の場合がある。このような下地桟は天井面および壁面に適宜間隔で配置されており、個々の下地桟に対して適度な数の制振装置を装着することができる。
【0018】
上記構成の発明において、前記抵抗部材は、前記面材当接部もしくは前記固着領域と前記振動領域との間、複数の振動領域の隣接する間または前記面材当接部と前記ウエイトとの間のうち、任意に選択される一以上に配置される弾性部材であり、該弾性部材は、該振動領域または該ウエイトが、該固着領域または該面材当接部に接近する方向へ変位するとき、その変位に対する抵抗力を作用させるものとすることができる。
【0019】
このような構成の場合には、振動領域またはウエイトが振動により変位するとき、その変位のうち、固着領域または面材当接部に接近する状態において弾性部材による弾性力の作用によって、上記変位に対する抵抗力を作用させ、振動領域またはウエイトの振動を吸収させることができる。
【0020】
この場合においては、前記抵抗部材として、前記面材の裏側に配置され、全体として適宜な弾性を有するグラスウールを使用することができ、前記弾性部材に代えて、当該グラスウールを使用することができる。また、このグラスウールは、該弾性部材とともに配置される構成とすることができる。いずれの場合においても、グラスウールを前記振動領域もしくは前記ウエイトのいずれか一方または双方に接触可能な状態で配置するものであり、該グラスウールは、該振動領域が前記固着領域から離間し、または該ウエイトが前記面材当接部から離間する方向へ変位するとき、その変位に対する抵抗力を作用させるものとする。
【0021】
上記構成の場合には、断熱効果を得る目的で設置されるグラスウールを抵抗部材として兼用することができるものとなる。そして、このような断熱等のためのグラスウールは、面材の裏側(面材が面材支持部によって支持される側)において、全面に積層されることから、当然に発振手段が存在する付近にも設置されることとなる。そこで、このグラスウールを意図的に振動領域またはウエイトに接触させた状態で設けることにより、グラスウール全体として発揮される弾性による抵抗力を作用させるものである。このとき、発振手段は、面材とグラスウールとの中間に位置することとなるため、振動領域またはウエイトが面材から離間するように変位するとき、抵抗力が作用することとなるのである。そのため、振動領域またはウエイトの変位は減殺され、振動領域またはウエイトの振動を吸収させることができる。
【0022】
ここで、弾性部材に代えてグラスウールを使用する場合には、振動領域が固着領域から離間する方向へ変位するとき、または、ウエイトが面材当接部から離間する方向へ変位するとき、その変位に対する抵抗力を作用させるものとなり、一方向への変位の抑制により振動を吸収するものとなる。他方、弾性部材とともにグラスウールを使用する場合には、振動領域またはウエイトの振動による両方向への変位に対して抵抗力を作用させることとなり、双方によって振動領域またはウエイトの振動を吸収させることができる。
【0023】
上記構成における各抵抗部材は、前記面材支持部に装着される制振装置ごとに異なる弾性特性を有するものが選択的に設けられるものとすることができる。すなわち、同じ面材に対して複数の制振装置を設置する場合において、個々の制振装置に使用されるウエイトの重量を変化させることにより、発振手段の振動特性(共振周波数)が変化するため、その振動特性ごとに好適な抵抗力を付与させるものである。例えば、高い周波数(高振動数)に対応させるためには、ウエイトは軽量化されることから、抵抗力を弱くするために弾性力も弱いものが使用される。また、逆に低い周波数(低振動数)に対応させるためには、ウエイトを重量化するため、弾性力の強いものを使用して抵抗力を上昇させるのである。この場合、生活騒音に対する吸音に際しては、伝達される振動周波数は250Hz以下であるため、当該周波数帯域を複数に分割(例えば5分割)して、50Hzごとの振動周波数を低減させるように構成することができる。
【0024】
他方、上記構成における各抵抗部材は、面材ごとに異なる弾性特性を有するものが選択的に設けられるものであり、その弾性特性は、少なくとも4種類の中から選択的に使用されるものであるものとすることができる。
【0025】
ここで、「面材ごと」とは、部屋を構成する面(天井、床、壁など)に使用される面材の種類ごと(例えば、天井ごと、壁面ごと)を意味するほか、一種類の面(天井、床、壁など)に複数の面材が使用されるときの各面材(例えば、天井を構成する複数の面材ごと)を意味するものである。
【0026】
複数の面材で一種類の面(天井等)を構成する場合の面材ごとに異なる弾性特性の抵抗部材を使用するときは、前記の制振装置ごとに弾性特性を異ならせる場合に類似した機能する。すなわち、面材ごとに吸音させるべき振動周波数は異なるが、面(天井等)の全体において、各種の周波数に対応させることができる。他方、面材の種類ごとに異なる弾性特性の抵抗部材を使用するときは、各面に伝達する騒音の状態に応じて選択することができる。
【0027】
なお、4種類以上の異なる弾性特性の中から選択する場合、上述のとおり、生活騒音の吸音に際し、伝達される振動周波数が250Hz以下とされ、吸音が難しいとされる30Hz~100Hzの帯域を2分割し、30Hz~65Hzと65Hz~100Hzの2種類と、30Hz以下、100以上の2種類を追加するもので区分することができる。当然に上述と同様に50Hzごとに5分割した5種類としてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、面材から伝達される騒音等による振動は、ウエイトを含む制振装置の振動により、その振動エネルギが伝達され、面材そのものの振動が軽減され、さらに抵抗部材の設置により、制振装置の振動(振動領域またはウエイトの振動)が早期に分散され、振動を減殺させることができることから、継続的に発生する生活騒音の吸音を可能にすることができる。また、断続的(単発)の騒音についても、同様に吸音が可能であるから、騒音等の発生状況にかかわらず、適宜吸音することができるものとなる。
【0029】
また、抵抗部材として使用する弾性部材またはグラスウールの弾性特性を、制振装置の振動周波数(振動数)に応じて異ならせる場合には、多種の振動周波数(振動数)を生じさせる騒音の種類を広く網羅し、各周波数帯域の振動を制振させるものとなるから、各種の騒音に対する吸音効果を得ることができる。これもまた、騒音等の発生状況にかかわらず、適宜吸音することに資するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】制振装置の装着状態を示す説明図である。
図2】制振装置を構成する各部を示す説明図である。
図3】制振装置の全体構成を示す説明図である。
図4】制振装置の作動原理を示す説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図6】本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図7】第1の実施形態の作動態様を示す説明図である。
図8】第1の実施形態の変形例を示す説明図である。
図9】第1の実施形態の他の変形例を示す説明図である。
図10】第2の実施形態を示す説明図である。
図11】第2の実施形態の作動態様を示す説明図である。
図12】第2の実施形態の変形例を示す説明図である。
図13】第2の実施形態を使用する壁裏構造を示す説明図である。
図14】その他の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<前提と概要>
まず、本発明に使用する制振装置の概要について説明する。
図1は、制振装置が装着される建物の構造を示す図である。図は、制振装置1が装着される一例であって、面材11を天井材とし、面材支持部12を野縁としたものを示している。図の面材支持部(野縁)12は、木製のものを示しているが、アルミ製または軽量鉄骨製などもある。天井材に代えて壁面材とし、また、野縁に代えて壁面用下地桟とすることにより、壁面についても同様に使用できるものであるが、代表的な例として天井構造を示している。なお、一般的な天井構造としては、図示のように、建物の梁等に設けられる吊りボルト13の下部に装着されるハンガ14によって野縁受け15が支持され、野縁(面材支持部12)は、この野縁受け15との間で連結金具(クリップ等)16によって支持される構成となっている。制振装置1は、野縁等の下地桟(面材支持部)12に支持されるものであり、天井や壁面の表面側ではなく、裏面側に設置されるものである。
【0032】
例示の制振装置1は、前記の面材支持部(野縁等)12に装着されるものであり、制振装置1の一部が、面材(天井材等)11と面材支持部(野縁等)12との間に挟持される。一般的な建物構造に使用される面材(天井材等)11は、面材支持部(野縁等)12に対して、多数のビス等によって強固に固定されるものであり、最終的な挟持状態は強固なものとなり得る。
【0033】
<制振装置の各部の構成>
ここで、例示の制振装置1の詳細について説明する。図2は制振装置1の分解斜視図である。この図に示しているように、例示の制振装置1は、大別すると、面材当接部2と、発振手段3とで構成されている。前記面材支持部(野縁等)12に装着するための装着手段4は、面材当接部2から延出する帯状の装着部材41,42,43によって構成されている。
【0034】
面材当接部2は、全体として薄肉平板状に構成されており、その下面側(裏面側)に前記面材(天井材等)11が配置されることで当接可能な状態となるものである。この面材当接部2と同じ部材によって装着手段4が構成されている。この装着手段4(装着部材41,42,43)は、面材当接部2の延出基端縁21から両側に2つの装着部材41,42が延出され、また、この延出基端縁21の中央付近には、この基端縁21の一部を含む状態で折り曲げられつつ延出する装着部材43が構成されるものである。このような構成により、例示の装着手段4は、面材当接部2と同じ材料による連続した一体的構成となっているものである。
【0035】
ここで、上記の装着部材41,42,43は、両側に位置する2つ41,42が、前記面材支持部(野縁等)12の下面側(面材に当接する側)に配置され、中央の1つ43が、上面側に配置されるものであり、両者が面材支持部(野縁等)12を両側から把持することで装着可能とされている。それぞれの装着部材41,42,43の先端には係止部44,45,46が設けられ、中央の装着部材(上面用装着部材)43の立ち上がり基部47とともに面材支持部(野縁等)12の側面に当接して、装着状態を安定させるようになっている。
【0036】
中央に位置する上面用装着部材43の立ち上がり基部47は、面材当接部2の延出基端縁21を含む状態で折り曲げられて構成されていることから、その下端縁部48は、面材当接部2の延出基端縁21よりも延出方向後向きに所定の間隔Cだけ逸れた位置となっている。従って、装着手段4によって前記面材支持部(野縁等)12に装着される状態では、面材当接部2の表面(上面)のうち、延出基端縁21の位置から下端縁部48の位置までの範囲(所定間隔Cの範囲)が面材支持部(野縁等)12の下面に配置されることとなる。
【0037】
これにより、面材支持部(野縁等)12の下面側において前記面材(天井材等)11が固定されることにより、当該領域は、この両部材によって挟持されることとなる。そして、この領域は挟持によって固定されることから、固定領域20aとされるものである。なお、ここでは、両側の装着部材(下面用装着部材)41,42の一部を含めて固定領域20aとしている。
【0038】
また、面材当接部2は、面材支持部(野縁等)12との装着に直接関与しない領域20bが形成されており、この領域20bは、面材支持部(野縁等)12によって固定されないため非固定領域となる。そして、この非固定領域20bの適宜位置には、発振手段3を固着するための固着予定領域22が形成されている。固着予定領域22は、格別な構造上の特徴を有するものではなく、発振手段3を固着し得る面積相当の領域が確保されているものである。
【0039】
例示の制振装置1における発振手段3は、振動部材5とウエイト6とを備える構成としている。振動部材5は、全体が一枚の部材を2箇所で断面を弧状(略U字状)に湾曲させ、相互に適宜な間隔を有する下層51、中層52および上層53の三層による構造体として構成したものである。その下層51が面材当接部2の固着予定領域22に固着される部分である。その意味から、当該下層51が発振手段3の固着領域となるものである。この固着領域51が面材当接部2に固着されることにより、当該領域51は振動が制限されることとなるが、その上層(中層52および上層53)は振動可能となっているため、これらが振動領域となるものである。なお、振動領域における振動は、中層52および上層53そのものが振動するというよりも、専ら中層52の両側に位置する湾曲部54,55が、その曲率が変化することによって全体的に振動するものとなっている。
【0040】
また、上層53にウエイト6が設置されることによって発振手段3となるものであり、この上層53は、ウエイト6が搭載可能な平面部によって構成されるものである。この平面部には、ウエイト6との固定のため、かつ設置の状態を調整するため、複数(図は2つ)の長孔56,57が設けられている。
【0041】
他方のウエイト6は、重量調整のために同一に構成された複数のウエイト構成部60a,・・・,60dが一体化されており、その表面には貫設された複数(図は2個)の貫通孔61,62が設けられ、リベット63,64またはその他締着金具等によって、前述の振動部材5の上層53に設けられた長孔56,57を同時に挿通しつつ固定されるものである。
【0042】
<制振装置の全体構成>
上記のように構成された各部材により、図3(a)に示すように、例示の制振装置1は、面材当接部2を中心として、その非固定領域20bに発振手段3が固着され、固定領域20aの一部を利用した装着手段4が形成されるものであり、全体が一体的に構成されたものとなっている。これらの各部材のうち、ウエイト6を除く他の部材を全てバネ鋼によって構成することにより、当該部材は振動させることが可能となる。また、面材当接部2を延出して形成された装着部材41,42,43は、同じバネ鋼によって構成されることとなるから、延出されている部分が比較的容易に弾性変形させる(湾曲させる)ことができ、この弾性変形により、面材支持部(野縁等)12に容易に装着できるものである。
【0043】
このように、装着部材41,42,43を弾性変形させながら面材支持部(野縁等)12に装着させた状態を図3(b)に示す。この図に示されるように、装着部材41,42,43は、それぞれ面材支持部(野縁等)12の上面側および下面側に配置され、各先端に形成された係止部44,45,46が面材支持部(野縁等)12の側面を係止することとなる。これにより、係止部44,45,46と上面用装着部材43の立ち上がり基部47との間に、面材支持部(野縁等)12の側方が位置決めされ、全体として、面材支持部(野縁等)12を把持する状態となる。
【0044】
上記の装着状態により、面材当接部2の固定領域20aは、面材支持部(野縁等)12の下面側に配置され、さらに面材(天井材等)11を設置することにより、当該固定領域20aは、面材(天井材等)11によって挟持される状態となる。ウエイト6を除く他の部材はバネ鋼によって構成されることから、各部材は振動可能であるが、上記のように挟持される部分(固定領域)20aは、振動できない(または大きく制限される)状態となる。また、面材当接部2に固着される振動部材5の下層(固着領域)51は、面材当接部2の表面との固着により積層状態となるため、振動が制限される状態となっている。
【0045】
これに対し、面材当接部2の他の領域(発振手段3が固着されていない非固定領域20b)は、振動可能な状態であり、また、発振手段3を構成する振動部材5の下層51を除く部分、特に、中層52およびその両側の湾曲部54,55は、制限される部材との接触がないことから、当該部分は自在に振動できる状態となっている。なお、面材当接部2と振動部材5とは、異なる肉厚とする(例えば、振動部材5を厚肉とする)ことにより振動特性を変化させることができる。
【0046】
なお、面材当接部2の一部(固定領域20a)は、面材支持部(野縁等)12と面材(天井材等)11とで挟持されることから、両者間には、面材当接部2の肉厚程度の間隙を生じさせることとなる。この場合において、面材11として設置されるべき天井材または壁面材は、石膏ボード等であることから、前記の両部材間には0.6mm以下であれば格別異物とされることがない。そこで、例示の面材当接部は、バネ鋼により0.3mm~0.6mmの範囲としている。バネ鋼を使用することにより、薄肉でありながら高度に復元力(弾性力)を有する構成とすることができる。
【0047】
このような制振装置1の装着方法が可能であることから、装着手段4を面材支持部(野縁等)12に装着させることのみによって、制振装置1の全体を容易に装着することができるものとなる。
【0048】
<制振装置の作動原理>
例示の制振装置1は、上記のような状態で面材支持部(野縁等)12に装着され、固定領域20aが面材(天井材等)11と面材支持部(野縁等)12との間で挟持されることから、図4(a)に示すように、面材当接部2が面材(天井材等)11に当接した状態を維持しつつ発振手段3を振動させることができる。この発振手段3の振動は、面材(天井材等)11が生活騒音等に基づいて振動する際の共振によるものである。すなわち、生活騒音等が面材(天井材等)11を振動させ、その振動は、面材(天井材等)11から面材当接部2を介して発振手段3に伝達される。このとき、伝達される振動の振動数が、発振手段全体が有する固有振動数と一致するとき発振手段3が共振し、同じ振動数によって振動することとなる。この発振手段が振動することにより、面材(天井材等)11の振動エネルギは、発振手段3に吸収されることとなり、面材(天井材等)11の振動エネルギが減衰され、制振効果を発揮する。その結果として、生活騒音等を消音させることができる。
【0049】
上記のように発振手段3が、その固有振動数により振動する場合は、面材当接部2は、面材(天井材等)11の振動を伝達するための伝達部材として機能するものである。これに対し、図4(b)に示す状態は、面材当接部2が僅かながら振動する状態を示すものである。
【0050】
すなわち、図4(b)に示されているように、面材(天井材等)11は、面材支持部(野縁等)12によって支持されるものであり、一般的には、石膏ボードなどがネジ等で鋲着されるものである。従って、面材(天井材等)11が、生活騒音等によって振動する場合、その振動は面材支持部(野縁等)12に伝達されるものである。ところが、面材支持部(野縁等)12は、大きく振動しないため、面材(天井材等)11のみが振幅を繰り返す状態となる。そこで、面材支持部(野縁等)12に伝達される振動は、面材当接部2の固定領域20aを介して面材当接部2に伝達される。面材(天井材等)11から直接伝達される状態でもあるが、ここでは面材支持部(野縁等)12から伝達する振動のみに着目する。そうすると、面材支持部(野縁等)12によって固定されている固定領域20aが振動を受けると、当然に非固定領域20bに伝達することとなり、面材当接部2のうちの非固定領域20bの全体(すなわち、面材当接部2の一部および発振手段3による部分)を振動させる。そして、非固定領域20bは、固定領域20aに対して僅かながらバネ鋼の弾性力の範囲において適度な撓み(例えば、図中の間隙Hの範囲での撓み)が可能となり、その範囲での振動が可能となる。このとき、非固定領域20bの全体による固有振動数は、発振手段3のみにおける固有振動数とは、異なることから、異なる振動数により共振させることが可能となる。
【0051】
また、前述のように(図4(a)に示すように)、発振手段3が振動する際、その振動に伴って生ずる慣性力は面材当接部2に対して振動を誘発することとなる。他方、図4(b)に示すような面材当接部2が振動する場合には、その慣性力は発振手段3の振動を誘発することとなる。従って、発振手段3のみによる固有振動数と、面材当接部2のうちの非固定領域20bの全体による固有振動数との範囲内にある振動数において共振できるものとなる。すなわち、いずれか一方が振動する場合のほか、双方が振動することにより、その中間的な振動数に応じて共振できるのである。
【0052】
上記のような面材当接部2の振動は、固定領域20aの固定状態が異なることにより、非固定領域20bの全体における固有振動数を異ならせることが実験上明らかとなった。これは、面材当接部2をバネ鋼で構成する場合であり、固定領域20aが強固に固定される場合には、振動する領域と振動しない領域との境界が明確となるが、緩やかな固定状態の場合にはその境界幅が大きくなり、振動数に影響を与えることによるものと想定される。
【0053】
<第1実施形態>
そこで、本発明の第1の実施形態について説明する。図5は、本実施形態の構成を示す図であり、図5(a)は、制振装置1に弾性部材7を装着した状態を示し、図5(b)は、面材支持部(野縁等)12に制振装置1を設置した状態の正面視における吸音構造を示している。
【0054】
この図に示されているように、本実施形態は、上記に例示したような構成の制振装置1を使用するものであり、面材当接部2とウエイト6との間に弾性部材7(7a,7b)を装着したものである。この弾性部材7は、面材当接部2に固着され、ウエイト6とは固着されておらず、当該ウエイト6に対して直接的な接触が可能な状態としている。弾性部材7をウエイト6に接触可能とするため、弾性部材7は、振動部材5が配置されている部分を避けた状態で設けられるものとしている。具体的には、ウエイト6を振動部材5の幅方向Xに対して長尺に設け、その両端から両側に延出させておき、その延出部分65,66を利用するのである。他方、弾性部材7は、振動部材5の両側に分割配置されるものであり、ウエイト6の下面部に直接的に接触可能な状態としつつ、当該振動部材5との接触を避けるように設けている。
【0055】
なお、分割配置される二つの弾性部材7a,7bは、同種・同大のものが使用され、当該両弾性部材7a,7bの弾性特性を均等なものとしている。また、個々の弾性部材7a,7bの上面部は、ウエイト6の下面部に接触できればよいことから、平滑な面でなくてもよく、また平面でなくてもよいが、均等にウエイト6の振動を受けるために、平面としたものが好ましい。さらに、弾性部材7(7a,7b)の上面部が、ウエイト6の延出部分65,66の下面部と同じ面積としてもよいが、ウエイト6の振動方向が偏った方向となる場合を考慮し、確実な接触状態を得るために、弾性部材7(7a,7b)の上面部を延出部分65,66よりも大きく設けている。弾性部材7(7a,7b)の上面の少なくともどこかの一部において、ウエイト6の延出部分65,66が接触できるように構成しているのである。
【0056】
ところで、騒音等によって発生する振動は、制振装置1に伝達され、発振手段3が振動することで減衰されるものであるが、発振手段3による振動の中心は、ウエイト6の振動によるものとなる。このウエイト6の振動は、振動部材5の振動領域52,53の変形(特に湾曲部54,55の曲率変化、図3(b)参照)の繰り返しによるものであり、発振手段3の振動の継続中は、振動部材5がウエイト6を支持した状態を維持するものである。そのため、発振手段3の振動状態において、面材当接部2とウエイト6との関係のみを観察すれば、両者の距離を変化させる(接近および離間を繰り返す)こととなるものである。そこで、発振手段3の振動を減衰させるためには、所定の抵抗力をウエイト6に作用させることによることができ、そのために、弾性部材7をウエイト6に接触させるように設けているのである。
【0057】
弾性部材7(7a,7b)は、面材当接部2に固着され、ウエイト6との間は固着されないものとしている。従って、ウエイト6が振動する際、面材当接部2から離間するときは弾性部材7(7a,7b)には接触せず、面材当接部2に接近するときにのみ接触するものとしている。従って、使用される弾性部材7(7a,7b)は、面材当接部2とウエイト6の間において、ウエイト6によって圧縮される際に、その圧縮力を受けて変形しつつ弾性力(復元力)による反対方向への抵抗力を作用させればよいものであり、逆向きに付勢させ程の反発力を作用させる必要はない。
【0058】
そこで、本実施形態における弾性部材7(7a,7b)としては、例えば、棒状のグラスウールを想定している。同種の弾性力を得るために、低反発の発泡ウレタンなどを使用することができる。これらの材料を使用すれば、容易に面材当接部2とウエイト6との間に介在させることができるうえ、圧縮時における変形とともに適度な抵抗力を作用させることができる。なお、大きく反発することなく、適度な抵抗力としての作用が可能であれば、低反発としたシリコン樹脂や合成ゴムなどによって構成してもよい。
【0059】
本実施形態において使用される制振装置1は、前述のとおり、ウエイト6は、振動部材5の上層53に設置(固着)されることにより一体化されるものであることから、ウエイト6の変位は上層53の変位と一致するものとなる。従って、当該振動部材5の上層53はウエイト6と同一とみなすことができる。
【0060】
このような観点からは、例えば、図6に示すように、ウエイト6の下面側に代えて、振動部材5の上層53の下面に前記の弾性部材7(7a,7b)を接触可能な状態で設けてもよい。なお、図6(a)は、ウエイト6を省略した図であり、この図において上層53にウエイト6を固着した状態で吸音構造が構成されるものである。
【0061】
このような構成とするために、振動部材5の上層53は、振動部材5の幅方向Xに対して長尺に設け、その両端を外方に延出させた延出部分53a,53bを設けるものとしている。この延出部53a,53bは、ウエイト6の延出部65,66と同様に、振動部材5の下層51および中層52の両側に分割した状態で弾性部材7(7a,7b)を配置し、上層53の下面部に弾性部材7(7a,7b)の上面部を接触可能な状態としている。なお、弾性部材7(7a,7b)の底面側は、面材当接部2に固着させるものとしている。
【0062】
これにより、弾性部材7(7a,7b)は、面材当接部2と振動部材5の上層53との間に配置され、当該上層53が面材当接部2に接近するように変位するとき、弾性部材7(7a,7b)を圧縮することとなり、この圧縮の際に上層53に対して適宜な抵抗力を作用させることができるものとなっている。この抵抗力は結果的にウエイト6に対する抵抗力として作用するものとなる。
【0063】
<作動態様>
次に、上記構成の本実施形態の作動態様を説明する。図7は、発振手段3が振動するときの状態を示すものであり、制振装置1の右側面視で示している。なお、図7(a)は、振動前の状態を示し、図7(b)および(c)は振動状態を示す。また、弾性部材7(7a,7b)の上面部は、ウエイト6の下面部に接触可能な形態のみを示すが、弾性部材7(7a,7b)の上面部が振動部材5の上層53に接触可能な形態についても、その作動態様は同一とみなすことができるため、ここでは、ウエイト6の下面部に接触可能な状態とした形態のみを例示して説明する。
【0064】
まず、発振手段3の振動前の状態は、前述のとおり、弾性部材7(7a,7b)の上面側の一部がウエイト6の下面側に対向しつつ近接または当接した状態となっている。この状態では、ウエイト6は変位せず、面材当接部2との距離に変動はないものである。
【0065】
この状態から騒音等による振動の伝達を発振手段3が受けると、発振手段3が振動し始め、結果的にウエイト6が変位することとなる。このウエイト6の変位により、ウエイト6と面材当接部2との距離が長短を繰り返すこととなる。
【0066】
そこで、ウエイト6が面材当接部2から離間する状態に変位する場合には、図7(b)に示すように、ウエイト6の下面部は、弾性部材7a,7bの上面部から浮上した状態となり、間隙h1を有する状態で離間するのみである。弾性部材7a,7bは、下面において面材当接部2に固着されているため、ウエイト6の離間によって、状態が何ら変化することない。従って、ウエイト6が変位することを除けば、ウエイト6および弾性部材7a,7bの双方は、格別な変化を生じさせることはない。
【0067】
他方、ウエイト6が面材当接部2に接近する状態に変位する場合には、図7(c)に示すように、ウエイト6が弾性部材7a,7bに接触し、かつその接触部分について当該弾性部材7a,7bを圧縮させるように変位することとなる。この弾性部材7a,7bの圧縮に伴う変形(低反発の弾性変形)による復元方向への反力(復元力)がウエイト6に対する抵抗力として作用し、本来的なウエイト6の振幅を抑えることとなる。すなわち、ウエイト6は弾性部材7a,7bの変形に伴う弾性力(復元力)に抗する状態で変位するため、その弾性力(復元力)の抵抗を受けて振幅は減少し、少ない変位(h2)となり、結果的には、振動エネルギが弾性部材7a,7bによって吸収・減殺されることとなる。
【0068】
なお、当然のことながら、ウエイト6の振動は1度の弾性部材7a,7bとの接触(抵抗力付与)で消失するものではなく、複数回の接触(抵抗力付与)が繰り返され、徐々に減衰することとなる。そのため、第1回の接触の後、ウエイト6は再び面材当接部2から離間する状態に変位し(図7(b)参照)、ウエイト6は弾性部材7a,7bからも離間することとなり、さらにその後、再び弾性部材7a,7bに接触し、その抵抗力を受けることとなる。このような複数回の接触を繰り返すことにより、ウエイト6の振動が通常の状態で減衰するよりも少ない振動回数により早期に減衰させることができる。
【0069】
<第1実施形態の変形例>
図8は、第1の実施形態の変形例を示す。この変形例は、ウエイト6について、長さ方向Yに対して長尺な状態とし、装着手段4から離れる方向に延出させる延出部67を設け、この延出部67と面材当接部2との間に弾性部材7を配置したものである。この場合においても弾性部材7は面材当接部2においてのみ固着されるものとしている。これにより、面材当接部2とウエイト6との間に弾性部材7が配置されるという構造上の交通点を有しており、従って、ウエイト6が変位するとき、面材当接部2に接近する状態において、弾性部材7が圧縮されることとなり、その圧縮の際に抵抗力がウエイト6に作用するものとなる。
【0070】
なお、この場合の弾性部材7は、振動部材5との接触を避けるために、長さ方向に延出させたウエイト6を設けたため、当該振動部材5の両側に分割配置する必要はないものとなっている。また、図示は省略するが、上記ウエイト6の延出に代えて、振動部材5の上層53を同様に延出させてもよい。
【0071】
他の変形例としては、図9(a)に示すように、振動部材5の固着領域(下層)51と振動領域(中層)52との間に弾性部材7cを配置する構成とすることができ、また、図9(b)に示すように、隣接する二つの振動領域(中層および上層)52,53の間に弾性部材7dを配置する構成としてもよい。
【0072】
これらの弾性部材7c,7dは、いずれも振動部材5が振動しない状態において、両者間に介在させた状態となるように、その断面形状を略円錐台形とし、また、一方表面(底面部または上面部)において片方に固着するものである。一方表面のみが固着されることから、第1実施形態と同様に、圧縮される際において変位に対する抵抗力を発揮させることができるものである。
【0073】
なお、これらの弾性部材7c,7dは、狭小部分に配置されることから、比較的肉薄となるが、振動部材5の幅方向Xに連続して配置することが可能である。他方、振動時における相対的な振幅(相互間の距離の変化)が小さいことから、弾性率(抵抗力)を大きくしたものを使用することができる。また、図9(a)および(b)に示す二種類の弾性部材7c,7dを同時に配置してもよく、この場合には、二つの弾性部材7c,7dの双方によって、変位に対する抵抗力を発揮させることができるものとなる。
【0074】
また、これらの弾性部材7c,7dは、前掲の第1実施形態における弾性部材7a,7b(図5参照)、またはその変形例の弾性部材7(図8参照)などと併用してもよい。弾性部材7(7a~7d)が低反発の弾性材料で構成する場合、形状の復元に時間を要する場合があることから、多数の弾性部材7(7a~7d)を使用することにより、低反発材料を使用しつつ十分な抵抗力をさようさせることが期待されるからである。
【0075】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10(a)に本実施形態に基本構造を示す。本実施形態は、図10(a)に示すように、面材11の裏側に広面積の弾性部材8を設けたものである。面材11の裏側とは、天井構造体の場合には天井裏であり、壁構造体の場合には壁裏である。一般的な天井裏や壁裏には、断熱材などが設けられるための空間が存在しているため、この空間に弾性部材8を設置するのである。
【0076】
ここで、本実施形態に使用される弾性部材8は、断熱材や吸音材などとして面材の裏面側に設けられるグラスウールを兼用させるものとしている。すなわち、断熱材等に使用されるグラスウールは、全体として、低反発の弾性材料でもあることから、この低反発の弾性材料を主として断熱効果を発揮させ、副次的に弾性部材8として使用するのである。
【0077】
断熱材等として使用されるグラスウールは、微細なガラス繊維の集合体であり、シート状に成形された綿状材料である。一般的には数十cm~約1mの幅寸法によるロール状シート材であり、厚み寸法は数十mm程度である。そこで、本実施形態では、このグラスウールを面材11の裏側に敷設する際、制振装置1に接触させる状態で設けるものである。具体的には、発振手段3を構成する振動部材5またはウエイト6の表面に接触させるように配置するのである。
【0078】
グラスウールは、シート状の柔軟な材料であることから、面材11の裏側に積層する際には、面材11の裏面側に当接させるとともに、面材支持部(野縁等)12が存在する部分では、それを乗り越えて両側の面材11に当接させるように積層することができる。そして、当該面材支持部(野縁等)12に制振装置1が装着手段4によって装着されている部分においては、当該制振装置1を被覆させるように設けることができる。そこで、本実施形態では、その被覆の状態に際して、ウエイト6の上面部に接触状態として配置するのである。
【0079】
なお、図10(a)は、装着手段4よりもウエイト6の上面が面材11よりも突出している状態であるため、制振装置1をグラスウール(弾性部材)8によって被覆する状態にすれば、必然的にウエイト6も被覆されることとなり、接触可能な状態に設置できるが、図10(b)に示すように、装着手段4(面材支持部12)がウエイト6の上面よりも突出する場合には、グラスウール(弾性部材)8を適宜変形させることにより、意図的にウエイト6の上面にグラスウール(弾性部材)8を接触させるように設けるのである。
【0080】
そして、これらの図は天井裏を例示するものであり、弾性部材(グラスウール)8は、全体として適宜な重量を有することから、上述のような(図示のような)積層状態を維持させることができるものとなる。また、グラスウール(弾性部材)8は、シート状とした全体として幅方向への圧縮変形に対して低反発の弾性変形を生じるものであるから、その弾性変形の範囲で弾性部材として機能するものとなる。
【0081】
<作動態様>
本実施形態の場合には、図11(a)に示すように、発振手段3が振動していない状態において、グラスウール(弾性部材)8がウエイト6に接触した状態で被覆されている。そして、この被覆状態が維持されるものである。そして、この状態から、発振手段3が振動を開始する場合、ウエイト6が面材当接部2との距離を変化させるように移動する(変位する)こととなる。
【0082】
このとき、ウエイト6が面材当接部2に接近するように移動するときは、図11(b)に示すように、ウエイト6の上面部はグラスウール(弾性部材)8から離れる状態となるが、ウエイトが面材当接部2から離間するように移動するとき、図11(c)に示すように、グラスウール(弾性部材)8を圧縮させることとなるのである。ウエイト6が単にグラスウール(弾性部材)8から離間するのみの場合は大きく変位(変位幅h1)するが、グラスウール(弾性部材)8の抵抗力が作用する場合は小さく変位する(変位幅h2)。このとき、グラスウール(弾性部材)8は低反発の弾性変形を生じており、復元方向への反力(復元力)がウエイト6に対する抵抗力として作用しているのである。この抵抗力によって、ウエイト6の振幅を抑え、結果的には、振動エネルギがグラスウール(弾性部材)8によって吸収・減殺されることとなる。
【0083】
そして、第1の実施形態と同様に、ウエイト6の振動が複数回繰り返されることとなるが、その振動により、グラスウール(弾性部材)8が複数回圧縮されることとなり、その圧縮変形がなされる度に、抵抗力が作用されることとなるから、早期に振動を減衰することができるものとなる。
【0084】
<第2実施形態の変形例>
上記のようなグラスウール(弾性部材)8による振動の減殺構造に関し、グラスウール(弾性部材)8は、制振装置1を跨ぐ状態に設けるほか、図12(a)に示すように、隣接して設けられるシート状のグラスウール(弾性部材)81,82の両側端部において、断続的に被覆させてもよい。これは、シート状とするグラスウール81,82が、平面視において矩形であることから、その長辺方向が面材支持部(野縁等)12の軸線に直交方向とする場合(図11参照)のほか、面材支持部(野縁等)に軸線に平行に設ける場合によって異なる状態となる。このような設置状態であっても、ウエイト6の上面部に一つのグラスウール81が部分的に積層されることにより、ウエイト6に対する抵抗力を作用させることが可能となるものである。
【0085】
また、上記のグラスウール(弾性部材)8は、図12(b)に示すように、第1の実施形態における弾性部材7とともに設置するものとしてよい。このような構成の場合には、発振手段3の振動によりウエイト6の位置が変化する(変位する)際、面材当接部2に接近する方向へ変位するときは、第1実施形態における弾性部材7による抵抗力が作用し、逆に、面材当接部2から離間する方向へ変位するときは、グラスウールによる弾性部材8によって抵抗力を作用させるものとなる。ウエイト6は、振動による両方向への変位において、それぞれ抵抗力の作用を受けることとなるから、振動の減衰が一層早くなるものである。なお、当然のことではあるが、グラスウールによる弾性部材8と併用する弾性部材8は、第1実施形態の変形例を使用してよいものである。
【0086】
さらに、図13には、壁構造体における壁裏の状態を示す。壁裏における断熱材等に使用されるグラスウール(弾性部材)9は、外壁Aと面材11との間で挟持される状態であり、面材支持部(下地桟等)12が存在する部分は、グラスウール(弾性部材)9を弾性変形させる状態で設けられる。そのため、この面材支持部(下地桟等)12に制振装置1が設けられる場合も同様に、グラスウール(弾性部材)9が弾性変形された状態で設けられる。そのため、グラスウール(弾性部材)9は、ウエイト6に接触した状態で配置することができることから、前記と同様に、発振手段3が振動するとき、ウエイト6の振動を減衰させるように抵抗力を作用させることができるのである。
【0087】
<その他の変形例>
本発明に係る建築物吸音構造の実施形態は上記のとおりであるが、これらの各実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではない。従って、本発明の構成に他の構成要素を付加し、または構成要素を変更したものとすることができる。例えば、上記実施形態における制振装置1の発振手段4には、振動部材5として、板状部材をS字状に折曲してなる構成を例示したが、この振動部材5を他の形状とした制振装置1を使用することも可能である。
【0088】
振動部材5を他の形状に構成した場合であっても、基本的に、ウエイト6は、振動部材5の上層53の上面に設置されるものであるから、ウエイト6に延出部分65,66,67を構成すれば、第1の実施形態(または変形例)を採用することは可能となる。また、第2の実施形態によるグラスウール(弾性部材)8を設けた構成とすることも可能となる。
【0089】
ところで、振動部材5をU字状とする場合には、当該振動部材5は、固着領域(下層)51と一つの振動領域(上層)53とで構成されることとなるから、図14(a)に示すように、この固着領域51と振動領域53との間に弾性部材7を設ける構成とすることができる。また、図14(b)に示すように、振動部材5をM字状とする場合には、固着領域51の上部に複数の振動領域が存在するため、個々の間隙に、それぞれ弾性部材71,72,73を設置する構成としてもよい。
【0090】
さらにこれらの構成に付加して、面材当接部2とウエイト6との間にも弾性部材7(第1実施形態)を設け、またはグラスウール(弾性部材)8を被覆してもよい。つまり、複数の形態を適宜組み合わせた構成としてよいものである。
【0091】
なお、本発明に使用される制振装置1は、前述のとおり、各種の振動数に対応できる構成としている。また、ウエイト6は、重量調整のために複数のウエイト構成部60a~60dを積層状態で一体化させるものであるから、このウエイト構成部60a~60dの数を増減させることによって、異なる固有振動数によって発振できるものである。そこで、各調整された固有振動数に応じて、使用される弾性部材7,7a,7b,71,72,73,8,9の弾性特性を変化させた構成とすることができる。
【0092】
すなわち、低振動数(低周波)に対応させる場合には、ウエイト6の重量を大きくするため、変位の際の振動エネルギは大きくなるため、これに抵抗力を作用するため反発力を増大(抵抗力を大きく)する弾性特性とし、逆に高振動数(高周波)に対応させる場合は、反発力を減少(抵抗力を小さく)する弾性特性とするのである。このような弾性特性の変化は、低反発型の発泡ウレタン等の場合は発泡率の調整により、またグラスウールの場合にはガラス繊維の密度を調整することにより容易に操作できるものである。なお、弾性特性は、振動数に応じて変化させる必然性はなく、発振手段3(特にウエイト6)に対する抵抗力を作用させることができれば、振動エネルギの吸収に寄与することは明らかである。
【符号の説明】
【0093】
1 制振装置
2 面材当接部
3,103,203 発振手段
4 装着手段
5,105,205 振動部材
6,6a,6b ウエイト
7 弾性部材
11 面材(天井材等)
12 面材支持部(野縁等)
13 吊りボルト
14 ハンガ
15 野縁受け
16 連結金具(クリップ等)
20a 固定領域
20b 非固定領域
21 面材当接部の延出基端縁
22 固着予定領域
41,42 装着部材(下面用装着部材)
43 装着部材(上面用装着部材)
44,45,46 係止部
47 立ち上がり基部
48 立ち上がり基部の下端縁部
49 ネジ
51,151,251 振動部材の下層(固着領域)
52,252a,252b 振動部材の中層
53,153,253 振動部材の上層
54,55,154,254a,254b,255 湾曲部
56,57 長孔
60a,60b,60c,60d ウエイト構成部
61,62 貫通孔
63,64 リベット
7,7a,7b,7c,7d,71,72,73 弾性部材
8,9 グラスウール(弾性部材)
A 外壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14