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特開2023-133440葉酸受容体に標的化されたナノ粒子薬物コンジュゲートおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133440
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】葉酸受容体に標的化されたナノ粒子薬物コンジュゲートおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20230914BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230914BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230914BHJP
   C07K 4/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61K9/51
A61K47/54
A61K49/00
A61P35/02
A61P35/00
A61K47/04
C07K4/00 ZNA
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023123242
(22)【出願日】2023-07-28
(62)【分割の表示】P 2022545820の分割
【原出願日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】63/222,181
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/117,110
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/155,043
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/105,995
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/116,393
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/254,837
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/242,201
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522298163
【氏名又は名称】エルシダ オンコロジー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カイ マ
(72)【発明者】
【氏名】アラナパカム エム. ヴェンカテサン
(72)【発明者】
【氏名】フェン チェン
(72)【発明者】
【氏名】フェイ ウー
(72)【発明者】
【氏名】ミリク ジヤ ターカー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス コートニー ガーディニアー ザ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】ジェノ ジェイ. ジェルマーノ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ポール アダムス
(72)【発明者】
【氏名】フランシス ワイ.エフ. リー
(57)【要約】
【課題】がんなどの疾患の検出、予防、モニタリング、および/または処置のためのナノ粒子薬物コンジュゲート(NDC)を提供すること。
【解決手段】本開示は、超小型ナノ粒子、葉酸受容体(FR)標的化リガンド、およびリンカー-薬物コンジュゲートを含むナノ粒子薬物コンジュゲート(NDC)と、がんを処置するためのそれらの作製および使用方法に関する。本明細書には、がんなどの疾患の検出、予防、モニタリング、および/または処置のための、標的化リガンドとのおよび細胞毒性ペイロードとのコンジュゲーションを可能にする、ナノ粒子(例えば、多様式(multi-modal)シリカ系ナノ粒子などのシリカナノ粒子)を含むナノ粒子薬物コンジュゲート(NDC)について記述される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその内容がそれぞれ全体として本明細書に組み込まれる2020年10月27日に出願された米国仮出願第63/105,995号、2020年11月20日に出願された米国仮出願第63/116,393号、2020年11月23日に出願された米国仮出願第63/117,110号、2021年3月1日に出願された米国仮出願第63/155,043号、2021年7月15日に出願された米国仮出願第63/222,181号、2021年9月9日に出願された米国仮出願第63/242,201号、および2021年10月12日に出願された米国仮出願第63/254,837号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
がん細胞への治療薬(例えば、細胞毒性薬)の標的化された送達は、がん処置に関する新たなアプローチである。対象の健康な組織または臓器に対する送達された治療薬の毒性は、標的化された疾患領域への薬物の選択的送達によって大きく低減させることができ、改善された治療成績をもたらす。抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、標的化された薬物送達に関する一般的なプラットフォームであり、典型的には、がんを標的にすることができるモノクローナル抗体に共有結合した毒性の高い薬物物質を特徴とし、この毒性薬物物質は、がんの標的化の際に放出されるものである。しかしながら、生成の難しさ、薬物負荷容量の制限、不十分な腫瘍浸透、および腫瘍不均質性を克服する能力の欠如も含め、ADCなどの従来の標的化された薬物送達プラットフォームに関する多くの難題が残されている。
【0003】
Cornell大学およびMemorial Sloan Kettering Cancer Centerは、診断および治療の適用例で有意な潜在能力を有するCornellプライムドット(C’ドット)と呼ばれる超小型の10nm未満のシリカ-有機物ハイブリッドナノ粒子を開発した。例えばC’ドットは、がん成長を阻害するがんに標的化された薬剤である上皮成長因子受容体阻害剤、例えばゲフィチニブとコンジュゲートすることができる(WO 2015/183882 A1)。しかしながらEGFR阻害剤の作用機序(MOA)は、上皮成長因子受容体との能動的な結合を必要とし、したがって標的化されたがん細胞でのペイロードの連続的な高濃度が、がん細胞増殖を効果的に阻害するのに必要とされる。このタイプのMOAは、一般に、C’ドットの速い血液循環半減期に適合しない。
【0004】
FOLR1としても公知の葉酸受容体アルファ(FRα)は、がん治療の潜在的な標的として科学界からかなりの注目を浴びており、FRのその他のアイソフォームも潜在的な生物学的標的として明らかにされている。例えば、参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれるTargeting Folate Receptor Alpha For Cancer Treatment, Cheung, A., et al. Oncotarget (2016) 7 (32):52553; Targeting the folate receptor: diagnostic and therapeutic approaches to personalize cancer treatments, Ledermann, J. A. et al., Annals of Oncology (2015), 26:2034-2043を参照されたい。葉酸受容体(FR)は、卵巣、子宮内膜、乳房、結腸、および肺などの腫瘍内で過剰発現され得るのでがん治療の理想的な標的であるが、その正常組織における分布は低くかつ制限される。FRは、葉酸受容体およびトランスポーターとして働くことに加えて細胞成長調節およびシグナル伝達機能も示し得るという、新たな洞察が示唆されている。これらの特徴は一緒になって、FRを魅力的な治療標的にする。
【0005】
葉酸は、様々なメカニズムによって細胞に輸送され、最も普及しているメカニズムは、4種の糖ペプチドのメンバー(FRアルファ[FOLR1]、FRベータ[FOLR2]、FRガンマ[FOLR3]、およびFRデルタ[FOLR4])である葉酸受容体を経た媒介である。これら4種のメンバーの中で、アルファアイソフォーム(FRアルファまたはFRα)は、活性形態のフォレート、5-メチルテトラヒドロフォレート(5MTF)の結合および輸送に関して高い親和性を持つグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)係留膜タンパク質である。アルファアイソフォームは、ある特定の固形腫瘍において、例えば卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん、子宮がん、腎臓がん、肺がん、脳がん、胃腸がん、および乳癌において過剰発現することが報告されている。アルファアイソフォームは、ある特定の血液学的悪性疾患でも過剰発現し、これらの悪性疾患の処置に、例えば小児AMLを含む急性骨髄性リンパ腫(AML)の処置に利用することができる。この正常な組織または細胞における低く制限された分布は、腫瘍促進機能ならびに患者の予後と発現との関連の、新たな洞察と一緒になって、FRαを魅力ある治療標的にする。さらに、ベータアイソフォーム(FRβ)は、ある特定のがん、例えば急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)などの血液学的悪性疾患で過剰発現し、これらのがんに向けた標的化された療法を開発する機会を与える。
[0006]
多くのFRに標的化された薬物送達プラットフォームが、例えばADCおよび小分子薬物コンジュゲートの両方を使用してこれまでがん処置のために開発され試験されてきたが、それらの中には、それらの限られた治療成績に起因して、臨床使用のために首尾良く認められたものはない(EP 0624377 A2、US 9192682 B2、Leamon, et al., “Comparative preclinical activity of the folate-targeted Vinca alkaloid conjugates EC140 and EC145, Int. J. Cancer (2007) 121:1585-1592; Leamon et al., “Folate-Vinca Alkaloid Conjugates for Cancer Therapy: A Structure-Activity Relationships, Bioconjugate Chemistry (2014) 25:560-568; Scaranti, M., et al. Exploiting the folate receptor α in oncology. Nat Rev Clin Oncol. (2020) 17: 349-359)。
[0007]
したがって、FRに標的化された薬物送達プラットフォームの首尾良くなされる開発が、依然として非常に望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/183882号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0624377号明細書
【特許文献3】米国特許第9,192,682号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Targeting Folate Receptor Alpha For Cancer Treatment, Cheung, A., et al. Oncotarget (2016) 7 (32):52553
【非特許文献2】Targeting the folate receptor: diagnostic and therapeutic approaches to personalize cancer treatments, Ledermann, J. A. et al., Annals of Oncology (2015), 26:2034-2043
【非特許文献3】Leamon, et al., “Comparative preclinical activity of the folate-targeted Vinca alkaloid conjugates EC140 and EC145, Int. J. Cancer (2007) 121:1585-1592
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本開示は:(a)シリカナノ粒子、およびこのナノ粒子の表面に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG);(b)葉酸またはその誘導体もしくは塩を含み、直接またはスペーサー基を介して間接的にナノ粒子に付着された、標的化リガンド;および(c)リンカー-ペイロードコンジュゲートを含み:(i)ペイロードがエキサテカンであり;(ii)リンカー-ペイロードコンジュゲートが、直接またはスペーサー基を介して間接的にナノ粒子に付着され;(iii)リンカーが、プロテアーゼ-切断可能リンカーであり;および(iv)エキサテカンが、リンカーの切断の際に放出される、ナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)を提供する。
【0009】
本開示は:(a)シリカ系コアおよびこのコアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルを含むナノ粒子;このナノ粒子の表面に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG);およびこのナノ粒子のコア内に共有結合により被包された蛍光化合物;(b)葉酸受容体(FR)に結合し、葉酸またはその葉酸受容体結合誘導体を含み、かつ直接またはスペーサー基を介して間接的にナノ粒子に付着された、標的化リガンド;(c)ペイロードが細胞毒性剤である、リンカー-ペイロードコンジュゲートであって;このリンカー-ペイロードコンジュゲートが、直接またはスペーサー基を介して間接的にナノ粒子に付着され;この細胞毒性剤が、リンカーの切断の際に放出され;リンカー-ペイロードコンジュゲート中のリンカーが、プロテアーゼ切断可能リンカーであり;NDCが約1nmから約10nmの間、例えば約3nmから約8nmの間、または約3nmから約6nmの間の平均直径を有する、リンカー-ペイロードコンジュゲートを含む、ナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)にも関する。細胞毒性剤は、エキサテカンであってもよい。
【0010】
本開示のNDCにおいて、ナノ粒子のペイロードに対する平均比は、1から80に及んでもよく、例えば1から21(例えば、1から13、または1から12)であり、ナノ粒子の標的化リガンドに対する平均比は、1から50に及んでもよく、例えば1から25(例えば、1から11)である。
【0011】
本開示のNDCは、約1nmから約10nmの間、例えば約5nmから約8nmの間、約3nmから約8nmの間、または約3nmから約6nmの間の平均直径を有していてもよい。
【0012】
本開示のNDCは、任意の適切な色素または検出可能な化合物、例えば蛍光化合物を含んでいてもよい。例えば、本開示のNDCにおいて、蛍光化合物はCy5であってもよい。蛍光化合物は、ナノ粒子内に被包されてもよい(例えば、シリカコアに共有結合により連結される)。本開示のNDCは、葉酸受容体(FR)に結合する標的化リガンドを含むことができる。標的化リガンドは、葉酸またはその誘導体を含んでいてもよい。「葉酸」は、葉酸のアミドまたはエステルを包含してもよく、例えば葉酸は、アミドまたはエステル結合を介してそのカルボキシル末端でナノ粒子(またはスペーサー基)にコンジュゲートされてもよいことを、理解すべきである。例えば「葉酸」は、図1に示される例示的なNDCに存在する葉酸アミドを指してもよい。
【0013】
本開示のNDCは、構造(S-1):
【化1】

を含んでいてもよく、ペイロードはエキサテカンを含み;リンカーは、プロテアーゼ-切断可能リンカーを含み;かつケイ素原子はナノ粒子の部分である。
【0014】
例えば、本開示のNDCは、構造(S-1a):
【化2】

を含んでいてもよく、ケイ素原子は、ナノ粒子の部分である。
【0015】
本開示のNDCは、構造(S-2):
【化3】

を含んでいてもよく、標的化リガンドは、葉酸またはその葉酸受容体結合誘導体であり、ケイ素原子はナノ粒子の部分である。
【0016】
例えば、本開示のNDCは、構造(S-2a):
【化4】

を含んでいてもよく、ケイ素原子はナノ粒子の部分である。
【0017】
本開示のNDCは、構造(S-1)および(S-2)の組合せを含んでいてもよい。例えばNDCは、例えば図1に示されるように、構造(S-1a)および構造(S-2a)の両方を含んでいてもよい。構造S-1、S-1a、S-2、またはS-2aは、任意の所望の比で、例えば本明細書に開示される比で、NDC中に存在していてもよい。
【0018】
本開示は、シリカ系コアおよびこのコアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルを含むナノ粒子;ナノ粒子の表面に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG);ナノ粒子のコア内に共有結合により被包された蛍光化合物;葉酸である標的化リガンド;リンカー-ペイロードコンジュゲートであって、プロテアーゼ結合の際にC末端で加水分解を受けることが可能でありそれによってナノ粒子からペイロードを放出するプロテアーゼ切断可能リンカーであり、このプロテアーゼがセリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼを含み、リンカー-ペイロードコンジュゲート内のペイロードがエキサテカンまたはエキサテカンの類似体である、リンカー-ペイロードコンジュゲートを含み;蛍光化合物がCy5である、NDCにも関する。
【0019】
本開示は、シリカ系コアおよびコアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルを含むナノ粒子;ナノ粒子の表面に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG);ナノ粒子のコア内部に共有結合により被包されたCy5色素;葉酸受容体に結合する、葉酸である標的化リガンドであって、スペーサー基を経て間接的にナノ粒子に付着される標的化リガンド;スペーサー基を経て間接的にナノ粒子に付着され、構造
【化5】

を含む化合物を含む、リンカー-ペイロードコンジュゲートを含み;約1nmから約10nmの間(例えば、約1から約6nmの間)の平均直径を有する、NDCにも関する。
【0020】
本開示は:(a)シリカ系コアおよびコアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルを含むシリカナノ粒子;およびナノ粒子の表面に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG);(b)式(NP-3):
【化6】

の構造を含み、式中、xが4であり、yが9である、エキサテカン-リンカー部分;および(c)式(NP-2)
【化7】

の構造を含み、式中、xが4であり、yが3である、標的化リガンド部分を含み、エキサテカン-リンカー部分および標的化リガンド部分がそれぞれナノ粒子の表面にコンジュゲートされる、ナノ粒子薬物コンジュゲート(NDC)にも関する。NDCは、ナノ粒子のコア内に共有結合により被包された蛍光色素(例えば、Cy5)を含んでいてもよい。
【0021】
本開示は、有効量の本明細書に記述されるNDCを、それを必要とする対象に投与することを含む、葉酸受容体(FR)発現がん(例えば、葉酸受容体(FR)発現腫瘍)を処置する方法も提供する。方法は、NDCを、それを必要とする対象に静脈内投与することを含んでいてもよい。本開示の方法において、対象は、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん(例えば、HER2+乳がん、HR+乳がん、HR-乳がん、およびトリプルネガティブ乳がんを含む)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択されるがんを有していてもよい。本開示のNDCは、対象の腫瘍の免疫状態を修正する手段として使用され得る、腫瘍関連マクロファージを標的とするのに使用されてもよい。本開示のNDCは、進行、再発、または難治性固形腫瘍を処置する方法で使用されてもよい。
【0022】
本開示は、葉酸受容体(FR)発現がん(例えば、葉酸受容体(FR)発現腫瘍)を処置するためのNDCの使用を提供する。使用は、それを必要とする対象へのNDCの静脈内投与を含んでいてもよい。NDCの使用において、対象は、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん(例えば、HER2+乳がん、HR+乳がん、HR-乳がん、およびトリプルネガティブ乳がんを含む)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択されるがんを有していてもよい。NDCの使用において、がんは、進行、再発、または難治性固形腫瘍であってもよい。
【0023】
本開示は、葉酸受容体(FR)発現がん(例えば、葉酸受容体(FR)発現腫瘍)を処置するための医薬の製造における使用のための、NDCを提供する。医薬の製造での使用は、それを必要とする対象へのNDCの静脈内投与を含んでいてもよい。医薬の製造での使用は、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん(例えば、HER2+乳がん、HR+乳がん、HR-乳がん、およびトリプルネガティブ乳がんを含む)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択されるがんを有する対象への、NDCの投与を含んでいてもよい。本開示のNDCは、進行、再発、または難治性固形腫瘍を処置するための医薬の製造で使用されてもよい。
【0024】
本開示は、NDCおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む、医薬組成物にも関する。本明細書に開示される医薬組成物は、葉酸受容体(FR)発現がん(例えば、葉酸受容体(FR)発現腫瘍)を処置するのに使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1-1】図1は、ナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)の代表的な化学構造を示す。
図1-2】同上。
【0026】
図2図2は、例示的な官能化ナノ粒子(ジベンゾシクロオクチン(DBCO)官能化C’ドット)を合成するためのフローチャートを示す。
【0027】
図3-1】図3は、葉酸(FA)およびエキサテカンで官能化されたC’ドットを含む例示的なNDC(FA-CDC)を合成するためのフローチャートを示す。
図3-2】同上。
【0028】
図4図4は、例示的な官能化ナノ粒子(DBCO官能化C’ドット)の、代表的なUV-Vis吸光度スペクトルを示す。648nmでの吸収ピークは、C’ドットのコア内に共有結合により被包されたCy5色素に対応する。270から320nm付近の吸収ピークは、DBCO基に対応する。
【0029】
図5図5は、例示的なNDC(エキサテカンを含む葉酸(FA)官能化C’ドット(FA-CDC))の代表的なUV-Vis吸光度スペクトルを示す。648nmでの吸収ピークは、C’ドットのコア内に共有結合により被包されたCy5色素に対応する。330から400nm付近の吸収ピークは、エキサテカンに対応する。
【0030】
図6図6は、単一モードFCS相関関数によって当て嵌められた、例示的なNDC(葉酸(FA)官能化エキサテカン-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC))の蛍光相関分光法(FCS)の相関曲線を示す。平均流体力学直径は、FCS相関曲線の当て嵌めを介して得られた。
【0031】
図7図7は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)による例示的なNDC(葉酸(FA)官能化エキサテカン-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC))の溶出を示す、クロマトグラムを示す。FA-CDCの溶出(曲線下のストライプ線)を、様々な分子量を持つタンパク質標準の溶出時間(破線)と比較する。
【0032】
図8図8は、精製した例示的なNDC(葉酸(FA)官能化エキサテカン-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC))の、330nmでの逆相HPLCクロマトグラムを示す。この波長を使用して、合成後にまたはNDCの任意の分解に起因して存在し得るFA-CDCおよび不純物の両方をモニタリングすることができる。
【0033】
図9図9は、例示的なエキサテカン-ペイロードコンジュゲートのUV-Vis吸光度スペクトルを示す。エキサテカンは、360nm付近で吸収最大を有する。
【0034】
図10図10A~10Bは、標的化リガンドとして葉酸とおよびペイロードとしてエキサテカンとコンジュゲートされた、実施例3により調製された例示的なNDC(実施例1からの、エキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して調製されたNDC)の分析を提供する、代表的なHPLCクロマトグラフを示す。図10Aは、NDC上に保持された放出されていないペイロードに対応する約6.3分の溶出時間で単一ピークを示す、切断されていないNDCの360nmでの代表的なHPLCクロマトグラフを示す。図10Bは、放出されたエキサテカンペイロードに対応する約3から4分の溶出時間で追加のピークを示す、切断されたNDCの360nmでの代表的なHPLCクロマトグラムを示す。放出されたペイロードおよび保持されたペイロードの曲線下面積(AUC)を使用して、放出されたペイロードのパーセンテージを計算した。
【0035】
図11図11A~11Cは、カテプシン-Bと共にインキュベートした後の種々の時点での、標的化リガンドとして葉酸およびプロテアーゼ(カテプシン-B)切断可能エキサテカン-リンカーコンジュゲートが負荷された例示的なNDCの薬物放出分析を示すプロットである。図11Aは、カテプシン-Bと共にインキュベートした後の種々の時点でのNDC Bの逆相HPLCクロマトグラフを示す。図11Bは、カテプシン-Bと共にインキュベートした後の種々の時点での、NDC Cの逆相HPLCクロマトグラフを示す。図11Cは、カテプシン-Bと共にインキュベートした後の種々の時点での、NDC D(実施例1からの、エキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して調製された)の逆相HPLCクロマトグラフを示す。
【0036】
図12図12A~12Cは、カテプシン-B酵素と共にインキュベートした後の種々の時点でプロテアーゼ(カテプシン-B)切断可能エキサテカン-リンカーコンジュゲートが負荷された例示的なNDCの薬物放出動態を示す、プロットであり、ペイロードの半分が放出されることになる時間、即ち、T1/2を示す。図12Aは、NDC Bに関してT1/2が2.9時間であると示す。図12Bは、NDC Cに関してT1/2が2.6時間であると示す。図12Cは、NDC Dに関してT1/2が1.4時間であると示す。
【0037】
図13図13は、遊離葉酸と比較したときの、FRアルファ陽性(KB)細胞系における例示的なNDC(葉酸(FA)官能化薬物-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC))の競合結合を示す。
【0038】
図14-1】図14は、様々な葉酸リガンド密度を持つ(ナノ粒子当たり、平均して0、12、または25個のいずれかの葉酸分子)KB細胞系における代表的なNDC(2種の葉酸(FA)官能化薬物-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC))のフローサイトメトリーを示す。研究において使用された各NDCを調製するのに使用されるエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を、実施例1で記述する(化合物202)。遮断基における遮断は、1mMの遊離葉酸を使用して達成された。葉酸がないが同量のエキサテカン-リンカーコンジュゲートを持つCDCを、陰性対照基として使用した。
図14-2】同上。
【0039】
図15-1】図15は、代表的なNDC(様々な粒子当たりの薬物の比(DPR)を持つKB細胞系における3種の葉酸(FA)官能化薬物-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC))のフローサイトメトリーを示す。研究で使用されるNDCを調製するのに使用されるエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を、実施例1に記載する(化合物202)。遮断基における遮断は、1mMの遊離葉酸を使用して達成した。全てのFA-CDCは、12から22個の間の葉酸部分を含む。高い薬物-粒子比(DPR)を持つFA-CDCは、35から50個の間のエキサテカン-リンカーコンジュゲート基を含む。中間のDPRを持つFA-CDCは、17から25個の間のエキサテカン-リンカーコンジュゲート基を含む。低DPRを持つFA-CDCは、5から10個の間のエキサテカン-リンカーコンジュゲート基を有する。葉酸を持たず17から25個の薬物リンカーを持つCDCを、陰性対照基として使用した。
図15-2】同上。
【0040】
図16-1】図16は、24時間、様々な量のヒト血漿と共に事前にインキュベートされた、1nMでの代表的なNDC(葉酸(FA)官能化薬物-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC))のフローサイトメトリーを示す。遮断基における遮断は、1mMの遊離葉酸で達成された。研究で使用されるNDCを調製するのに使用される、エキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体は、実施例1において(化合物202)、ナノ粒子当たり平均25個のエキサテカン分子を提供することが記述される。ナノ粒子当たりの葉酸リガンドの平均数は、15であった。葉酸を持たずに同量の薬物リンカーを持つCDCを、陰性対照基として使用した。
図16-2】同上。
【0041】
図17図17は、1時間および24時間での、KB(++++)およびTOV-112D(-)細胞系における、例示的なNDC(NDC Bとして実施例で示される、葉酸(FA)官能化薬物-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC))の共焦点顕微鏡画像を示す。遮断基における遮断は、0.1mMの遊離葉酸を使用して達成された。FA-CDC(NDC B)上の葉酸リガンドの平均数は12であり、エキサテカン-リンカーコンジュゲートの数は40である)。リソソームを、生細胞内の酸性オルガネラを標識し追跡するための緑色蛍光色素であるLysoTracker(登録商標)グリーンを使用することにより染色した。カラー画像により(図示せず)、蛍光に起因してCDCは赤色に見え、リソソームは緑色に見え、核は青色に見える。
【0042】
図18図18は、例示的な葉酸受容体(FR)標的化NDC(NDC D、エキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して実施例3により調製された)、ペイロードなしのFR標的化ナノ粒子(FA-C’ドット)、FR標的化ADC、または対応するペイロードなしのFR標的化抗体で、37℃で4時間処置し、その後、洗浄したKB腫瘍スフェロイドのZ-スタック共焦点顕微鏡撮像を比較する画像である。スケールバー:200μm。
【0043】
図19-1】図19Aは、注射後1、24、48、および72時間で89Zr-DFO-FA-CDCが注射された健康なヌードマウスの代表的な最大値投影(maximum intensity projection)(MIP)PET/CT撮像を示す。
【0044】
図19-2】図19Bは、注射後2および24時間での健康なヌードマウスにおける89Zr-DFO-FA-CDCの生体内分布パターンを示す(n=3)。研究で使用されるNDCを調製するのに使用されるエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体は、実施例1に記載され(化合物202);各NDC(FA-CDC)上の葉酸リガンドの平均数は12であり;各NDC上のエキサテカン-リンカーコンジュゲートの平均数は25である。
【0045】
図20-1】図20A~20Fは、KB腫瘍保持マウス(n=7)における6種の例示的な葉酸受容体標的化NDC(NDC A~F)のin vivo腫瘍成長阻害研究を示す。NDC-Aは、ナノ粒子当たり約19個の薬物-リンカーコンジュゲート基と約18個の葉酸リガンドとを含む。NDC Bは、ナノ粒子当たり約25個の薬物-リンカー基と約15個の葉酸リガンドとを含む。NDC Cは、ナノ粒子当たり約19個の薬物-リンカーコンジュゲート基と約13個の葉酸リガンドとを含む。NDC Dは、ナノ粒子当たり約25個の薬物-リンカーコンジュゲート基と約12個の葉酸リガンドとを含む。NDC Eは、ナノ粒子当たり約17個の薬物-リンカーコンジュゲート基と約17個の葉酸リガンドとを含む。NDC Fは、ナノ粒子当たり約23個の薬物-リンカーコンジュゲート基と約20個の葉酸リガンドとを含む。
図20-2】同上。
【0046】
図21図21A~21Bは、コンジュゲートされていないイリノテカンと比較した、イリノテカン耐性およびナイーブKB細胞における例示的なNDCのIC50曲線を示す。図21Aは、通常のKB細胞(ナイーブ細胞)におけるおよびイリノテカンで4回処置したKB細胞(イリノテカン耐性細胞)における、イリノテカンのIC50曲線を示す。図21Bは、ナイーブ細胞における、およびイリノテカン耐性細胞における、例示的なNDCのIC50曲線を示す。この研究の例示的なNDCを調製するのに使用されるエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体は、実施例1で記載される(化合物202)。
【0047】
図22図22A~22Bは、コンジュゲートされていないエキサテカンと比較した、エキサテカン耐性およびナイーブKB細胞における例示的なNDCのIC50曲線を示す。図21Aは、通常のKB細胞(ナイーブ細胞)におけるおよびエキサテカンで4回または7回処置されたKB細胞(エキサテカン耐性細胞)におけるエキサテカンのIC50曲線を示す。図22Aは、ナイーブ細胞におけるおよびエキサテカン耐性細胞(4サイクルおよび7サイクルの前処置)における例示的なNDCのIC50曲線を示す。この研究の例示的なNDCを調製するのに使用されるエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を、実施例1に記載する(化合物202)。
【0048】
図23図23は、コンジュゲートされていないエキサテカンと比較した、種々のFR-アルファ過剰発現がん細胞系における様々な薬物の粒子に対する比(DPR)を持つ例示的な葉酸受容体標的化NDC(「FA-CDC」)の細胞毒性を実証する表を提供する。この研究の例示的なNDCを調製するのに使用されるエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を、実施例1に記載する(化合物202)。
【0049】
図24図24は、様々な3D患者由来白金耐性腫瘍スフェロイドにおける例示的なNDCの細胞毒性を示す表を提供する。この研究の例示的なNDCを調製するのに使用されるエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を、実施例1に記載する(化合物202)。
【0050】
図25図25A~25Dは、IGROV-1(FRアルファ陽性ヒト卵巣がん)および操作されたAML MV4;11細胞系(FRアルファを過剰発現する)の両方に対する、例示的なFR標的化NDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3に従い調製された)の特異的な葉酸受容体(FR)アルファ標的化能力を実証する、フローサイトメトリーヒストグラムを提供する。図25Aは、IGROV-1細胞系におけるFR標的化NDC(10nM)および非標的化NDC(陰性対照;10nM)のフローサイトメトリーヒストグラムである。図25Bは、IGROV-1細胞系における抗FRアルファ抗体-PEおよびアイソタイプ抗体-PE(陰性対照)の、フローサイトメトリーヒストグラムである。図25Cは、操作されたAML MV4;11細胞系(FRアルファを過剰発現する)の、FR標的化NDC(10nM)および非標的化NDC(陰性対照;10nM)のフローサイトメトリーヒストグラムである。図25Dは、操作されたAML MV4;11細胞系(FRアルファを過剰発現する)における抗FRアルファ抗体-PEおよびアイソタイプ抗体-PE(陰性対照)のフローサイトメトリーヒストグラムである。
【0051】
図26図26A~26Bは、非標的化NDCを陰性対照として使用した、IGROV-1(FRアルファ陽性ヒト卵巣がん)細胞系(図26A)およびMV4;11の操作されたAML MV4;11細胞系(FRアルファを過剰発現する)(図26B)における、例示的なNDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を使用して、実施例3により調製、化合物202)の、in vitro細胞毒性活性を示すグラフである。
【0052】
図27図27は、生理食塩水または例示的なNDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を使用して、実施例3により調製、化合物202)で、3つの異なる用量レジメンで(0.33mg/kg、Q3D×6(四角形で示される);0.50mg/kg、Q3D×3(ひし形で示される);または0.65mg/kg、Q3D×3(三角形で示される))処置後の、経時的な、FRアルファ過剰発現AMLマウスの体重変化を提供するグラフである。
【0053】
図28図28は、生理食塩水または例示的なNDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を使用して、実施例3により調製、化合物202)で、3つの異なる用量レジメン(0.33mg/kg、Q3D×6;0.50mg/kg、Q3D×3;または0.65mg/kg、Q3D×3)で処置したFRアルファ過剰発現AMLマウスの、in vivo生物発光撮像(BLI)からの画像を提供する。
【0054】
図29図29は、生理食塩水または例示的なNDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を使用して、実施例1により調製、化合物202)で、3つの異なる用量レジメン(0.33mg/kg、Q3D×6);0.50mg/kg、Q3D×3;または0.65mg/kg、Q3D×3)で処置したFRアルファ過剰発現AMLマウスの、定量的in vivo生物発光撮像分析を提供するグラフである。
【0055】
図30図30は、生理食塩水または例示的なNDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を使用して、実施例3により調製、化合物202)で、3つの異なる用量レジメン(0.33mg/kg、Q3D×6);0.50mg/kg、Q3D×3;または0.65mg/kg、Q3D×3)で処置したマウスから得られた、白血病細胞注射後42日目の、骨髄穿刺で検出された白血病を示すグラフである。
【0056】
図31図31は、FRアルファ過剰発現AMLマウスの調製、および例示的なNDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を使用して、実施例3により調製、化合物202)を3つの異なる用量レジメン(0.33mg/kg、Q3D×6);0.50mg/kg、Q3D×3;または0.65mg/kg、Q3D×3)でマウスに投与し、生物発光撮像(BLI)でマウスを撮像することに使用されるタイムラインの図である。各投与日は、三角形によって示される(即ち、全ての用量群に関して46、49、および52日目、同様に0.33mg/kg Q3D×6用量群について55、58、および62日目)。
【0057】
図32図32は、1時間および24時間後の、KB(++++)およびTOV-112D(-)細胞系での、例示的なNDC(葉酸(FA)官能化薬物-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC)、実施例ではNDC Dと示され、エキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して調製される)の共焦点顕微鏡画像を示す。遮断基における遮断は、0.1mMの遊離葉酸を使用して達成された。リソソームを、生細胞内の酸性オルガネラを標識し追跡するための緑色蛍光色素である、LysoTracker(登録商標)グリーンを使用することによって染色した。カラー画像では(図示せず)、蛍光に起因して、CDCが赤色に見え、リソソームが緑色に見え、核が青色に見える。
【0058】
図33図33A~33Bは、本明細書に開示される方法を使用して調製された例示的なNDCの安定性を実証するグラフである。図33Aは、37℃で7日間にわたる、ヒト血清における、ジエン系官能化ナノ粒子(即ち、実施例3に概説されるプロトコールに基づく)を使用して生成されたNDCの安定性、およびアミン系官能化ナノ粒子を使用して生成された比較NDCの安定性を比較する。図33Bは、37℃で7日間にわたる、マウス血清における、ジエン系二官能性前駆体を使用して生成されたNDCの安定性、およびアミン系二官能性前駆体を使用して生成された比較NDCの安定性を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明の詳細な説明
本明細書には、がんなどの疾患の検出、予防、モニタリング、および/または処置のための、標的化リガンドとのおよび細胞毒性ペイロードとのコンジュゲーションを可能にする、ナノ粒子(例えば、多様式(multi-modal)シリカ系ナノ粒子などのシリカナノ粒子)を含むナノ粒子薬物コンジュゲート(NDC)について記述される。
【0060】
本開示は:ナノ粒子;葉酸受容体に結合する標的化リガンド(例えば、葉酸またはその誘導体もしくは塩)、およびエキサテカンおよびプロテアーゼ切断可能リンカーを含み得るリンカー-ペイロードコンジュゲートを含む、ナノ粒子薬物コンジュゲート(NDC)を使用する組成物および方法を提供する。
【0061】
標的化リガンドおよびリンカー-薬物コンジュゲートの両方の、ナノ粒子に対するコンジュゲーションは、高速で簡単に行われ、多用途であり、高い生成物収率をもたらす、高度に効率的な「クリックケミストリー」反応を介して達成することができる。ペイロードは、切断可能なリンカー基を介してナノ粒子に付着される、エキサテカンまたはその塩もしくは類似体を含む細胞毒性剤であってもよい。切断可能なリンカー基は、細胞のエンドソームまたはリソソーム区画など、NDCががん細胞内(例えば、腫瘍細胞内)に内部移行するときに、切断することができ、NDCからの活性細胞毒性剤の放出を引き起こす。切断は、プロテアーゼ(例えば、カテプシンB)によって触媒されてもよい。
【0062】
本明細書に開示されるNDCは、部分的にはその物理的性質に起因して、薬物送達に最適なプラットフォームを提供する。例えば、NDCは、直径が極端に小さい(例えば、平均直径が約1nmから約10nmの間、例えば約5nmから約8nmの間)ナノ粒子を含み、腫瘍微小環境において増強された透過性および貯留(EPR)効果の利益を受けると共に、所望のクリアランスおよび薬物動態特性を保持する。
【0063】
本明細書に記述されるNDCには、他の薬物送達プラットフォームに勝る、ある特定の利点がある(例えば、FR標的化ADCなどのADC、およびFR標的小分子薬物(例えば、化学療法薬))。例えば、本開示の単一のNDCは、各ナノ粒子上に最大約80個の薬物分子(例えば、80個のエキサテカン分子)を、含んでいてもよい。対照的に、従来のADCでは、わずかに約4から8個の治療/薬物分子を抗体に付着することができ、従来のFR標的小分子薬物は、単一の治療/薬物分子にのみ限定される。このように、本明細書に記述されるNDCは、従来の薬物送達プラットフォームに対して少なくとも10倍の薬物分子NDCを運ぶことができ、比較的、より高い薬物負荷を、細胞に送達する。
【0064】
ADCおよびFR標的化小分子化学療法薬などの従来の葉酸受容体(FR)標的化薬物送達プラットフォームは、通常、高い受容体発現レベルを持つがん細胞において高い効力を示すが、中程度のまたは低いFR発現レベルを持つそのがん細胞における効力は、限定される。対照的に、本開示のNDCは、高いおよび低いFR発現レベルの両方を持つがん細胞を効果的に標的とすることができ、低いFR発現を持つがんに強力な治療を提供することができる(例えば、図23および実施例に記述される関連あるアッセイ参照)。
【0065】
メカニズムのいかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本明細書に開示されるNDCが多数のFR標的化リガンドを単一ナノ粒子上に含むことができるので、細胞表面でのいくつかのFRとの結合に対して多価またはアビディティ効果があると考えられる。対照的に、単一ADCは一般に、細胞表面の最大2個のFRに結合できるだけであり、単一FR標的化化学療法薬は、細胞表面の1つのFRに結合できるだけである。このように、本開示のFR標的化NDCの多価効果は、FRを発現する細胞に対するNDCの結合を著しく高めることができ、改善された標的化効率および治療成績をもたらす。この多価効果は、ADCまたはFR標的化化学療法薬など、従来のFRに標的化された薬物送達プラットフォームを使用して効果的に処置できない低いFR発現を有するがんの処置に対し、本開示のNDCを適切なものにすることもできる。
【0066】
固形腫瘍処置におけるADCの効力は、通常、その不十分な腫瘍透過によって大きく制限される。対照的に、本明細書に開示されるFR標的化NDCは、高度に有効な腫瘍透過性を示し、投与後に腫瘍全体にわたる治療薬の送達を可能にし、ADCの使用に対して固形腫瘍の処置における治療成績を改善する。
【0067】
本開示のNDCは、ADCなどの従来の薬物送達プラットフォームよりも小さいサイズを有する。特に、本開示のNDCは、腎クリアランスに関する粒度カットオフよりも小さく、NDCを腎臓から除去可能にし得る。その結果、対象に投与されるががん細胞に進入しないNDC(即ち、非標的化NDC)は、腎排出を介して身体から急速に除去することができる。この標的および/または除去手法は、ADCなどの従来の薬物送達プラットフォームと比較してNDCの毒性を低減させ、健康な組織または臓器におけるNDC(またはそのペイロード)の望ましくない蓄積を防止する。本開示のNDCは、ADCなどの従来の薬物送達プラットフォームよりも改善された生体内分布を示し、低減された副作用および毒性をもたらす。
【0068】
ナノ粒子
本開示は、シリカナノ粒子など、ナノ粒子を含むNDCに関する。ナノ粒子は、シリカ系コアおよびコアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルを含んでいてもよい。あるいは、ナノ粒子はコアのみ有しシェルがなくてもよい。ナノ粒子のコアは、反応性蛍光化合物および共反応性有機シラン化合物の反応生成物を含有していてもよい。例えば、ナノ粒子のコアは、反応性蛍光化合物と共反応性有機シラン化合物の反応生成物、およびシリカを含有していてもよい。本開示の好ましい態様では、ナノ粒子は、コア-シェル粒子である。
【0069】
コアの直径は、約0.5nmから約100nm、約0.1nmから約50nm、約0.5nmから約25nm、約0.8nmから約15nm、または約1nmから約8nmであってもよい。例えば、コアの直径は、約3nmから約8nm、または3nmから約6nmであってもよく、例えばコアの直径は、約3nmから約4nm、約4nmから約5nm、約5nmから約6nm、約6nmから約7nm、または約7nmから約8nmであってもよい。
【0070】
ナノ粒子のシェルは、テトラアルキルオルトシリケートなどのシリカ形成化合物、例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS)の反応生成物とすることができる。ナノ粒子のシェルは、ある範囲の層を有していてもよい。例えば、シリカシェルは、約1から約20層、約1から約15層、約1から約10層、または約1から約5層であってもよい。例えばシリカシェルは、約1から約3層を含んでいてもよい。シェルの厚さは、約0.5nmから約90nm、約0.5nmから約40nm、約0.5nmから約20nm、約0.5nmから約10nm、または約0.5nmから約5nmに及んでもよく、例えば約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、または約5nmである。例えば、シリカシェルの厚さは、約0.5nmから約2nmであってもよい。ナノ粒子のシリカシェルは、ナノ粒子の一部分のみまたは粒子全体を覆ってもよい。例えばシリカシェルは、ナノ粒子の約1から約100パーセント、約10から約80パーセント、約20から約60パーセント、または約30から約50パーセントを覆ってもよい。例えばシリカシェルは、約50から約100パーセントを覆ってもよい。シリカシェルは、固体、即ち実質的に非多孔質、メソポーラス、半多孔質のいずれかにすることができ、またはシリカシェルは、多孔質であってもよい。シリカナノ粒子は、固体、即ち実質的に非多孔質、メソポーラス、半多孔質のいずれかにすることができ、またはシリカナノ粒子は、多孔質であってもよい。一部の実施形態では、ナノ粒子は、非メソポーラスナノ粒子、例えば非メソポーラスシリカナノ粒子、例えば非メソポーラスシリカコア-シェルナノ粒子である。
【0071】
ナノ粒子の表面は、少なくとも1個の官能基を組み込むように修飾されてもよい。有機ポリマーは、ナノ粒子に付着されてもよく、当技術分野での任意の公知の技法によって少なくとも1個の官能基を組み込むように修飾することができる。官能基は、限定するものではないがジベンゾシクロオクチン(DBCO)、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、ジエン(例えば、シクロペンタジエン)、アミン、またはチオールを含むことができる。例えば、一方の末端にシランを含み、他方の末端にDBCO、マレイミド、NHSエステル、ジエン(例えば、シクロペンダジエン)、アミン、またはチオールを含む二官能性基は、シラン基を介してシリカナノ粒子の表面に縮合されてもよい。官能基の組込みは、「クリックケミストリー」、アミドカップリング反応、1,2-付加、例えばMichael付加、またはDiels-Alder(2+4)付加環化反応を使用するなど、当技術分野で公知の技法を経て達成することもできる。この組込みは、様々な標的化リガンド、造影剤、および/または治療剤の、ナノ粒子への付着を可能にする。
【0072】
ナノ粒子に付着され得る有機ポリマーは、限定するものではないが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリラクテート、ポリ乳酸、糖、脂質、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、およびこれらの組合せを含む。本開示の好ましい態様では、有機ポリマーがポリ(エチレングリコール)(PEG)である。
【0073】
本開示の好ましい態様では、ナノ粒子の表面が官能化される。例えば、ナノ粒子の表面は、ナノ粒子の合成から得られるもの以外の官能基を有することができる(例えば、-OH基(ナノ粒子表面の末端Si-OH基から得られる)およびPEG基(ナノ粒子表面のSi-PEG基から得られる))。そのような官能化および官能化法は、当技術分野で公知である。
【0074】
ナノ粒子は、非細孔表面(non-pore surface)および細孔表面(pore surface)を含んでいてもよい。実施形態では、個々のナノ粒子非細孔表面の少なくとも一部分および個々のナノ粒子細孔表面の少なくとも一部分が官能化される。実施形態では、ナノ粒子非細孔表面の少なくとも一部分および細孔表面の少なくとも一部分が、異なる官能化を有する。細孔表面は、本明細書では、内面とも呼ばれる。ナノ粒子は、非細孔表面(または非多孔質表面)を有していてもよい。非細孔表面は、本明細書では、外側ナノ粒子表面とも呼ばれる。
【0075】
ナノ粒子の細孔表面(例えば、細孔表面の少なくとも一部分)および/または非細孔表面(例えば、非細孔表面の少なくとも一部分)は、官能化することができる。例えばナノ粒子は、化合物の官能基がナノ粒子の表面に存在する(例えば、共有結合する)ように、化合物と反応することができる。表面は、親水性特性を有する表面を提供する親水性基(例えば、ケトン基、カルボン酸、カルボキシレート基、およびエステル基などの極性基)または疎水性特性を有する表面を提供する疎水性基(例えば、アルキル、アリール、およびアルキルアリール基などの非極性基)で官能化することができる。そのような官能化は、当技術分野で公知である。例えば、ジエトキシジメチルシラン(DEDMS)は、細孔表面の少なくとも一部分で縮合して、細孔表面が疎水性特性を有するようにすることができ、そのように官能化されていないナノ粒子に対して、疎水性細胞毒性ペイロードの増大した負荷性能が可能になる。
【0076】
本開示の好ましい態様では、ナノ粒子の表面は、ポリエチレングリコール(PEG)基で少なくとも部分的に官能化される。ナノ粒子に対するPEGの付着は、共有結合または非共有結合によって、例えばイオン結合、水素結合、疎水性結合、配位、接着、および物理吸収によって達成されてもよい。
【0077】
ある特定の態様では、PEG基は、ナノ粒子の表面に付着される(例えば、共有結合により付着される)。コア-シェルナノ粒子において、PEG基は、Si-O-C結合を介してシェルの表面でシリカに、またはコア内のシリカに共有結合される。コアナノ粒子では、PEG基は、コア内のシリカに共有結合される。
【0078】
好ましい態様では、ナノ粒子はコア-シェルナノ粒子であり、PEG基は、Si-O-C結合を介してシェルの表面でシリカに共有結合される。ナノ粒子表面上のPEG基は、生理学的環境において(例えば、対象において)ナノ粒子への血清タンパク質の吸着を防止することができ、効率的な尿排泄を容易にしかつナノ粒子の凝集を低下し得る(例えば、Burns et al. “Fluorescent silica nanoparticles with efficient urinary excretion
for nanomedicine”, Nano Letters (2009) 9(1):442-448参照)。
【0079】
PEG基は、全ての整数g/mol値およびそれらの間の範囲を含む400g/molから2000g/molの分子量(Mw)を有するPEGポリマーに由来してもよい。実施形態では、PEG基は、460g/molから590g/molのMwを有するPEGポリマーに由来し、6から9個のエチレングリコール単位を含有する。様々な実施形態において、ナノ粒子は、PEG基で少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも95%官能化されている。実施形態では、ナノ粒子は、細孔がアクセス可能のままであるような(例えば、細孔を官能化することができる)最大数のPEG基によりPEG基で官能化される。実施形態では、細孔表面は、末端シラノール(Si-OH)基を有するシリカ表面である。
【0080】
本明細書に開示されるポリエチレングリコール単位は、官能基、例えば「クリックケミストリー」基、例えばジベンゾシクロオクチン(DBCO)またはアジド、ジエン(例えば、シクロペンタジエン)、マレイミド、NHSエステル、アミン、チオール、または活性化アセチレン部分、例えば
【化8】

で官能化されてもよい。DBCOを使用できるが、官能基は別のアルキン、例えば別の歪んだアルキン(例えば、DIBOまたはその誘導体、またはDBCOの誘導体)であってもよい。また、官能基は、ニトロンまたはニトリルオキシドであってもよい。
【0081】
あるいは、または前述に加え、官能基は、PEG基を必ずしも必要とせずにNDCに導入することができる。例えばNDCは、「クリックケミストリー」基などの官能基、例えばジベンゾシクロオクチン(DBCO)またはアジド;ジエン(例えば、シクロペンタジエン);マレイミド;NHSエステル;アミン;チオール;または活性化アセチレン部分、例えば
【化9】

であって、任意の適切なリンカーを含み得るまたはリンカーを持たなくてもよいもので官能化されてもよい。DBCOは、ナノ粒子を官能化するのに使用できるが、官能基は、別のアルキン、例えば別の歪んだアルキン(strained alkyne)(例えば、DIBOまたはその誘導体、またはDBCOの誘導体)であってもよい。また、官能基は、ニトロンまたはニトリルオキシドであってもよい。
【0082】
例えば、DBCO官能化リンカーは、DBCO-リンカー-シラン化合物上のシラン基を、ナノ粒子の表面のシラノール基(例えば、C’ドット表面のPEG層の下)と反応させることにより、ナノ粒子(例えば、PEG化C’ドット)に導入されてもよい。同様に、ジエン官能化前駆体(例えば、シクロペンタジエン官能化前駆体)は、ジエン-リンカー-シランまたはジエン-シラン前駆体化合物上のシラン基を、ナノ粒子の表面(例えば、C’ドット表面のPEG層の下)のシラノール基と反応させ、その後、ナノ粒子上のジエンを、ジエノフィルを介して反応性基(例えば、DBCO)を含む第2の前駆体で官能化することによって、ナノ粒子(例えば、PEG化C’ドット)に導入されてもよい。DBCO-リンカー-シランまたはジエン-リンカー-シランのリンカー基は、PEG、炭素鎖(例えば、アルキレン)、ヘテロアルキレン基、または同様のものを含むがこれらに限定されない、任意の構造(または部分構造)を含むことができる。ナノ粒子に共有結合により付着されたジエン官能化リンカーは、例えばDBCO官能化基との反応によってさらに修飾されてもよい。例えば、ナノ粒子に共有結合により付着されたジエン官能化リンカーは、DBCO-リンカー-マレイミド化合物(またはその他の適切なDBCO-リンカー-ジエノフィル)に接触させて、ジエンとマレイミドとの間に付加環化物を形成してもよく、その結果、例えばDiels-Alder付加環化などの付加環化化学を使用して、その表面に付着されたDBCO基を含むNDCが得られる。
【0083】
官能化(例えば、DBCOまたはシクロペンタジエンなど、前述の官能基の1つによる)は、適切に官能化されたFR標的化リガンドおよび/または官能化薬物ペイロード(アジド官能化FR標的化リガンドおよび/またはアジド官能化薬物ペイロードなど)とナノ粒子とのコンジュゲーションを、カップリング反応によって、例えばクリックケミストリー、(3+2)付加環化反応、アミドカップリング、またはDiels-Alder反応を介して容易にする。この官能化手法は、製剤化学の多用途性およびFR標的化NDC構築物の安全性も改善する。
【0084】
本明細書に開示されるNDCの利点は、比較的安定なリンカーまたはスペーサー基、またはそれらの前駆体を使用して調製できることである。リンカーまたはスペーサー基、またはそれらの前駆体は、その他のリンカーまたは前駆体を使用して生じる可能性のある早期のまたは望ましくない切断を回避することができる。例えば、ナノ粒子を官能化するある特定の方法は、ナノ粒子にその他の部分をコンジュゲートするためにアミン基で修飾される、アミン-シラン前駆体(アミン官能化ナノ粒子を提供するため)を用いる。しかしながらアミン-シラン前駆体は、不安定になる可能性があり、反応中に自己縮合する可能性があり、望ましくない凝集を引き起こす。凝集体は、官能化ナノ粒子が分離するのが非常に難しくなる可能性がある。さらに、ナノ粒子の表面のアミン基は、望ましくない反応性を促進させる可能性があり、ペイロードの早期の放出または標的化リガンドの望ましくない放出をもたらし得る。
【0085】
本明細書に開示されるNDCは、比較的安定な前駆体を使用して生成することができ、NDCは、安定で高度に純粋である。例えば、本発明のNDCのナノ粒子は、シラン-ジエン前駆体(シラン-シクロペンタジエン前駆体など)を用いて調製して、1個または複数のジエン基で官能化されたナノ粒子を得ることができる。次いでジエン基は、ジエノフィル含有前駆体(例えば、PEG-マレイミド誘導体、例えばDBCO-PEG-マレイミド)などの第2の前駆体と反応させてもよく、安定な付加環化物が形成される。付加環化物を含む、得られた官能化ナノ粒子は、必要に応じて1種または複数の後続の前駆体(本明細書に記述される標的化リガンド前駆体および/またはペイロード-リンカーコンジュゲート前駆体など)と反応させて、ナノ粒子をさらに官能化してもよい。ジエン-シラン前駆体、および生成される付加環化物は、他の官能化ナノ粒子の望ましくない品質を示さず、例えば比較的高い血清安定性を有し、高い収率および純度で生成することができる(例えば、凝集した前駆体がない)。例えば、図33A~33Bを参照されたい。さらに、このナノ粒子官能化手法は高度にモジュール式であるので、任意の所望の比のペイロード、標的化リガンド、またはその他のものをナノ粒子に導入することができる。これらの方法およびそれらの利益を使用してナノ粒子を調製する例を、実施例で提供する。
【0086】
本開示のNDCは、式(NP):
【化10】

の構造を含んでいてもよく、
式中、xは0から20の整数、例えば4であり;ケイ素原子はナノ粒子の一部であり;トリアゾール部分に隣接する
【化11】

は、標的化リガンドまたはペイロード-リンカーコンジュゲートとの直接的または間接的な、例えばリンカーまたはスペーサー基、例えばPEG部分を介した付着点を示す。例えば付着は、リンカーもしくはスペーサー基、例えばリンカー-ペイロードコンジュゲートのリンカー、または葉酸受容体標的化リガンドのリンカーもしくはスペーサー基に対するもの、例えばPEG部分であってもよい。本開示のNDCは、ジエン(例えば、シクロペンタジエン)官能化ナノ粒子から、例えばリンカー部分(例えば、マレイミドなどのジエノフィルを含むリンカー)をジエンに付加環化反応によりコンジュゲートすることによって、調製されてもよい。
【0087】
ナノ粒子のシリカシェル表面は、表面官能基を導入する公知の架橋剤を使用することによって、修飾することができる。架橋剤には、限定するものではないが、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、N,N’-メチレン-ビス-アクリルアミド、アルキルエーテル、糖、ペプチド、DNA断片、またはその他の公知の官能的に等価な作用物質が含まれる。
【0088】
光学撮像(蛍光撮像など)だけでなく、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)、および磁気共鳴撮像(MRI)などのその他の撮像技法によってナノ粒子を検出可能にさせるために、ナノ粒子は、放射性核種などの造影剤とコンジュゲートされてもよい。
【0089】
ナノ粒子は、任意の適切な蛍光化合物、例えば蛍光有機化合物、色素、顔料、またはこれらの組合せを組み込んでもよい。そのような蛍光化合物は、ナノ粒子のコアのシリカマトリクス中に組み込むことができる。広く様々な適切な化学反応性蛍光色素/フルオロフォアが公知であり、例えば、MOLECULAR PROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH CHEMICALS, 6th ed., R. P. Haugland, ed. (1996)を参照されたい。本開示の好ましい態様では、蛍光化合物は、ナノ粒子のコア内部に共有結合により被包される。
【0090】
一部の態様では、蛍光化合物は、限定するものではないが、遊離蛍光色素に対してより大きい輝度および蛍光量子収量を提供することができるナノ粒子のシリカコア内に位置決めされる近赤外蛍光(NIRF)色素とすることができる。近赤外放出プローブは、低下した組織減衰および自己蛍光を示すことが周知である(Burns et al. “Fluorescent silica nanoparticles with efficient urinary excretion for nanomedicine”, Nano Letters (2009) 9(1):442-448)。
【0091】
本開示で使用され得る蛍光化合物(例えば、NDCによって被包される)には、限定するものではないが、Cy5、Cy5.5(Cy5++としても公知である)、Cy2、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリスリン、Cy7、フルオレセイン(FAM)、Cy3、Cy3.5(Cy3++としても公知である)、Texasレッド(スルホローダミン101酸塩化物)、LIGHTCYCLER(登録商標)-レッド 640、LIGHTCYCLER(登録商標)-レッド 705、テトラメチルローダミン(TMR)、ローダミン、ローダミン誘導体(ROX)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、ローダミン6G(R6G)、ローダミン誘導体JA133、Alexa蛍光色素(ALEXA FLUOR(登録商標)488、ALEXA FLUOR(登録商標)546、ALEXA
FLUOR(登録商標)633、ALEXA FLUOR(登録商標)555、およびALEXA FLUOR(登録商標)647など)、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、ヨウ化プロピジウム、アミノメチルクマリン(AMCA)、スペクトラムグリーン、スペクトラムオレンジ、スペクトラムアクア、LISSAMINE(商標)、および蛍光遷移金属錯体、例えばユーロピウムが含まれる。
【0092】
使用することができる蛍光化合物は、蛍光タンパク質、例えばGFP(緑色蛍光タンパク質)、増強型GFP(EGFP)、青色蛍光タンパク質および誘導体(BFP、EBFP、EBFP2、アズライト、mKalama1)、シアン蛍光タンパク質および誘導体(CFP、ECFP、Cerulean、CyPet)、ならびに黄色蛍光タンパク質および誘導体(YFP、Citrine、Venus、YPet)(WO 2008/142571、WO 2009/056282、WO 1999/22026)も含む。
【0093】
本開示の好ましい態様では、蛍光化合物は、Cy5およびCy5.5からなる群より選択される。好ましい態様では、蛍光化合物はCy5である。
【0094】
蛍光ナノ粒子は:(1)マレイミド、ヨードアセトアミド、チオスルフェート、アミン、N-ヒドロキシスクシンイミド(hydroxysuccimide)エステル、4-スルホ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル(STP)エステル、スルホスクシンイミジルエステル、スルホジクロロフェノールエステル、塩化スルホニル、ヒドロキシル、イソチオシアネート、カルボキシルを含むがこれらに限定されない反応性部分を持つ反応性蛍光色素(例えば、Cy5)などの蛍光化合物を、共反応性有機シラン化合物などの有機シラン化合物と共有結合によりコンジュゲートして、蛍光シリカ前駆体を形成し、蛍光シリカ前駆体を反応させて蛍光コアを形成するステップ;または(2)蛍光シリカ前駆体と、テトラアルコキシシランなどのシリカ形成化合物とを反応させて、蛍光コアを形成するステップによって合成されてもよい。次いで蛍光コアは、テトラアルコキシシランなどのシリカ形成化合物と反応させて、コア上にシリカシェルを形成することにより、蛍光ナノ粒子を提供してもよい。
【0095】
蛍光シリカ系ナノ粒子は、当技術分野で公知であり、参照によりその内容の全体が本明細書にそれぞれ組み込まれるUS 8298677 B2、US 9625456 B2、US 10548997 B2、US 9999694 B2、US 10039847 B2、およびUS 10548998 B2により記述される。
【0096】
本開示の好ましい態様では、NDCは、シリカ系コアとコアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルとを含むナノ粒子を含み、ポリエチレングリコール(PEG)がナノ粒子の表面に共有結合され、蛍光化合物は、ナノ粒子のコア内に共有結合により被包される。
【0097】
標的化リガンド
本開示のNDCは、直接またはスペーサー基を通して間接的にナノ粒子に付着された標的化リガンドを含んでいてもよい。標的化リガンドを持つNDCは、増大した透過性ならびにNDCの標的化能力に起因して、腫瘍細胞でのペイロード/薬物の内部移行を高めることができ、および/または腫瘍細胞内への薬物を送達することができる。標的化リガンドによれば、ナノ粒子は、リガンドと細胞成分との間の特異的結合を経て特定の細胞型を標的とすることが可能になる。標的化リガンドは、例えば細胞内環境をアッセイするために、細胞または障壁輸送へのナノ粒子の進入も容易にし得る。
【0098】
本開示の標的化リガンドは、腫瘍細胞上の受容体に結合することが可能である。特に、標的化リガンドは、FRアルファ(FRα、FOLR1としても公知である)、FRベータ(FRβ、FOLR2としても公知である)、FRガンマ(FRγ、FOLR3としても公知である)、およびFRデルタ(FRδ、FOLR4としても公知である)を含む、FRの4種のヒトアイソフォーム全てを含む葉酸受容体(FR)に結合することができる。本開示のナノ粒子の表面に対するFR標的化リガンドのコンジュゲーションは、FR過剰発現がん性細胞、組織、および腫瘍の標的化治療を可能にする。例えば、葉酸などの葉酸受容体アルファ(FRα)に結合することができる標的化リガンドを含む本開示のNDCは、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、腹膜がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、および精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)を標的とするのに使用されてもよい。葉酸受容体ベータ(FRβ)に結合することができる標的化リガンドを含む、本開示のNDCは、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、および腫瘍関連マクロファージを標的とするのに使用されてもよい。腫瘍関連マクロファージは、腫瘍の免疫状態を修飾する手段として、標的とすることができる。理論に拘束されることを望まないが、葉酸受容体に対するFR標的化NDCの結合親和性は、多価効果に起因して高めることができる。
【0099】
葉酸受容体は、卵巣、腎臓、肺、脳、子宮内膜、結腸直腸、膵臓、胃、前立腺、乳房、および非小細胞肺がんを含む固形腫瘍細胞において高度に発現することができる。FRは、卵管がん、子宮頸がん、中皮腫、子宮がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、肝臓がん、頭頸部がん、甲状腺がん、皮膚がん、および精巣がんを含むその他のがんで過剰発現される。FRは、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)などの血液悪性疾患においても過剰発現される。
【0100】
本開示の好ましい態様では、標的化リガンドは、葉酸受容体アルファ(FRα)、葉酸受容体ベータ(FRβ)、または両方に結合する。
【0101】
本開示は、子宮、卵巣、乳房、子宮頸部(cervix)、腎臓、結腸、精巣(例えば、精巣絨毛癌)、脳(例えば、上衣脳腫瘍)のがん(例えば、腺癌)、悪性胸膜中皮腫、および非機能性下垂体腺癌などであるがこれらに限定されない高レベルのFRαを有する特定の細胞型に結合することが可能なFR標的化リガンドを提供する。本開示は、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、および腫瘍関連マクロファージを標的とすることが可能なFR標的化リガンドも提供する。標的化リガンドは、FR、例えばFRαを結合することができる、任意の適切な分子、例えば小さな有機分子(例えば、葉酸塩または葉酸塩類似体)、抗体の抗原結合部分(例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv断片、Fv断片、dsFvダイアボディ(diabody)、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、または単離された相補性決定領域(CDR)領域)、抗体模倣物(antibody mimetic)(例えば、アプタマー、アフィボディ(affilin)、アフィリン(affimer)、アフィマー(anticalin)、アンチカリン(avimer)、アビマー、Darpin、および同様のもの)、核酸、脂質、および同様のものであり得る。
【0102】
本開示の態様では、標的化リガンドは、葉酸またはその葉酸受容体結合誘導体である。「葉酸」は、葉酸の任意のアミドまたはエステル誘導体を包含することができることが、理解されよう。例えば、遊離葉酸は、PEGまたはPEG誘導体などのスペーサー基を介してナノ粒子にコンジュゲートするように修飾されてもよい(例えば、アミド結合を、葉酸の末端カルボン酸とスペーサー基の窒素原子との間に形成することによって)。
【0103】
FR標的化NDCは、がん細胞または腫瘍内で蓄積し得るだけでなく、腫瘍組織に浸透し、最適な処置有効性のためにペイロードを腫瘍組織全体に送達し得る。いかなる特定の理論にもメカニズムにも拘束されることを望まないが、標的化リガンドは、がん細胞の表面の特定の受容体基に結合し、その結果、NDCの受容体媒介型細胞取込みをもたらすと考えられる。NDCのこの受容体媒介型細胞取込みは、エンドサイトーシスプロセスを介して生じ、最終的にはNDCをがん細胞内のエンドソームおよびリソソームに移送する。
【0104】
本開示の態様では、NDCは、直接またはスペーサー基を介して間接的にナノ粒子に付着される標的化リガンドを含む。例えば、標的化リガンドは、ナノ粒子のシリカを介して直接ナノ粒子に付着することができる(即ち、共有結合された)。好ましい態様では、標的化リガンドは、適切なスペーサー基を経て間接的にナノ粒子に付着される。
【0105】
スペーサー基は、スペーサーとして、例えば標的化リガンドとナノ粒子との間のスペーサーとして働くことができる、任意の基とすることができ、標的化リガンドをナノ粒子に付着することができる。スペーサー基は、2価のリンカー、例えば約5から約200原子(例えば、炭素原子、ヘテロ原子、またはこれらの組合せ)の間、例えば約5から約100原子の間、約5から約80原子の間、約10から約80原子の間、約10から約70原子の間、約10から約30原子の間、約20から約30原子の間、約30から約80原子の間、または約30から約60原子の間の鎖長を含む2価のリンカーであってもよい。適切なスペーサー基は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン(例えば、PEG)、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。例えば、スペーサー基は、PEG基、アルキレン基、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。スペーサー基は、置換されても置換されていなくてもよく、例えばスペーサー基は、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。例えばスペーサー基は、PEG基(または、PEGスペーサー)、アルキレン基(または、アルキレンスペーサー)、1個または複数のヘテロ原子、および/または1個または複数の環式基(例えば、ピペラジンなどのヘテロシクリレン基)を含んでいてもよい。
【0106】
葉酸などの標的化リガンドは、PEGスペーサー基を経て間接的に、ナノ粒子に付着されてもよい。葉酸は、例えば図1に示されるように、例えばPEGスペーサー基またはその他の2価のリンカーとのコンジュゲーションを容易にするために、アミドとしてNDC内に存在してもよい。PEGスペーサーにおけるPEGモノマーの数は、2から20個、2から10個、2から8個、または2から5個に及んでもよい。好ましい態様では、官能化FR標的化リガンドにおけるスペーサーとしてのPEG基の数は、3個である。
【0107】
ナノ粒子の、標的化リガンド(例えば、葉酸)に対する平均比は、約1から約50、約1から約40、約1から約30、または約1から約20に及んでもよい。例えば、ナノ粒子の、標的化リガンド(例えば、葉酸)に対する平均比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、1:40、または1:50であってもよい。例えば、ナノ粒子の、標的化リガンドに対する平均比は、約1から約20に及んでもよく、例えば各ナノ粒子上の葉酸分子の平均数は、約5から約10個の間、約10から約15個の間、または約15から約20個の間、例えばナノ粒子当たり約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、または約15個の葉酸分子である。本明細書に開示されるNDCは、約10個の葉酸分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約11個の葉酸分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約12個の葉酸分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約13個の葉酸分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約14個の葉酸分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約15個の葉酸分子を含んでいてもよい。
【0108】
ナノ粒子に付着される、より小さい数の標的化リガンドは、例えば腎クリアランスのカットオフサイズ範囲を満たすようナノ粒子の流体力学直径を維持するのを助けることができる(Hilderbrand et al., Near-infrared fluorescence: Application to in vivo molecular imaging, Curr. Opin. Chem. Biol., (2010) 14:71-79)。測定された標的化リガンドの数は、1個より多いナノ粒子に付着された標的化リガンドの平均数であってもよい。あるいは、1個のナノ粒子は、付着される標的化リガンドの数を決定するように測定されてもよい。
【0109】
ナノ粒子に付着される標的化リガンドの数は、光学撮像、蛍光相関分光法(FCS)、UV-Vis、クロマトグラフィー、質量分光法、または間接酵素分析などであるがこれらに限定されない任意の適切な方法によって測定することができる。
【0110】
標的化リガンドは、ナノ粒子のシリカとの共有結合を介してナノ粒子に付着することができる(例えば、スペーサー基を経て間接的に)。リガンドは、例えば、カップリング反応、クリックケミストリー(例えば、3+2クリックケミストリー反応)、付加環化(例えば、3+2または2+4付加環化反応、適切な官能基を使用する)、またはカルボキシレート、エステル、アルコール、カルバミド、アルデヒド、アミン、酸化硫黄、ニトリルオキシド、ニトロン、酸化窒素、ハロゲン化物、または当技術分野で公知の任意のその他の適切な化合物を介したコンジュゲーションを使用して、本明細書に記述されるナノ粒子にコンジュゲートされてもよい(例えば、ナノ粒子表面の官能基を介して)。
【0111】
本開示の好ましい態様では、FR標的化リガンドのコンジュゲーションは、ジアリールシクロオクチン(DBCO)基を使用する「クリックケミストリー」反応によって達成することができる。任意の適切な反応メカニズムは、標的化リガンドとナノ粒子との容易で制御された付着を達成することができる限り、「クリックケミストリー」に関して本開示で適合されてもよい。
【0112】
一部の態様では、三重結合(例えばアルキン、例えば末端アルキン)が、ナノ粒子の表面に導入される(例えば、ナノ粒子のシェルに共有結合によりコンジュゲートされたPEGを介して、または別の適切なリンカーもしくはスペーサー基を経て)。別に、アジド結合または三重結合に対して反応性のあるその他の基が、所望の標的化リガンド上に導入され得る。例えば、葉酸は、葉酸の末端カルボン酸と、アジドを一端に含むスペーサー基(例えば、PEG部分)とをコンジュゲートすることによって修飾されてもよい。遊離三重結合を含むナノ粒子(例えば、PEG化ナノ粒子)および標的化リガンド(三重結合に対して反応性のある基を含む)を混合して(銅またはその他の金属触媒と共にまたは無しで)、三重結合に対して反応性のある基(例えば、アジド)と三重結合との付加環化を行うことができ、その結果、標的化リガンドとナノ粒子とのコンジュゲーションがもたらされる(例えば、「クリックケミストリー」)。この手法の多くの変形例も、当業者に容易に明らかにされることになるので使用することができる。
【0113】
アジド官能化FR-リガンド(FR-リガンドはスペーサー基を含んでいてもよく、スペーサー基はアジド基を保有していてもよい)は、直接またはアルキン(例えば、DBCO基)を介して間接的にナノ粒子に付着することができる。PEG基などであるがこれらに限定されないスペーサー基は、FR標的化リガンド前駆体に存在することができ、ナノ粒子とのコンジュゲーションが容易になるように末端基(例えば、アジド)を保有していてもよく、コンジュゲーション後は、スペーサー基が標的化リガンドとナノ粒子との間に配置されてもよい。例えば、FR標的化リガンド前駆体は、式(D-1):
【化12】

の構造を含んでいてもよく、式中、yは0から20の整数(例えば、3)である。例えば、yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20、例えば2、3、または4であってもよい。
【0114】
一部の態様では、FR標的化リガンドは、アジド基などであるがこれらに限定されない適切な末端基で官能化されてもよい。アジド官能化FRリガンドは、直接またはDBCO基を介して間接的にナノ粒子に付着することができる。PEG基などであるがこれらに限定されないスペーサー基を、アジド官能化FRリガンドとナノ粒子との間に存在させることができる。好ましい態様では、FR標的化リガンドは、ナノ粒子の表面でDBCO基と反応するアジド基で終端するPEG基などであるがこれらに限定されないスペーサー基を含むように官能化される。
【0115】
FR標的化リガンドの官能化は、スペーサーとして親水性PEG基を含んでいてもよく、これにより水中の溶解度を高めることができ、ナノ粒子の凝集および沈殿を低減させまたは無くすことができる。
【0116】
本開示の態様では、官能化FR標的化リガンドに存在することができるスペーサーとしてのPEG基の数は、2から20、2から10、2から8、または2から5個の範囲であってもよい。好ましい態様では、官能化FR標的化リガンドにおけるスペーサーとしてのPEG基の数は、3個である。
【0117】
標的化リガンドを含む本開示のNDCは、式(NP-2):
【化13】

の構造を含んでいてもよく、式中、xは0から10の整数であり(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、例えば4)、yは、0から20の整数であり(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20、例えば3)、ケイ素原子は、ナノ粒子の一部である(例えば、コア-シェルシリカナノ粒子のシリカシェルと結合する)。例えば、xは4であってもよく、yは3であってもよい。本明細書に開示されるNDCの各ナノ粒子は、式(NP-2)の1個より多い分子を含んでいてもよく、例えば、ナノ粒子は、式(NP-2)の約1から約20個の間の分子、例えば式(NP-2)の約5から約20個の間の分子、式(NP-2)の約8から約15個の間の分子、式(NP-2)の約10から約15個の間の分子、例えば式(NP-2)の約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20個の分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、式(NP-2)の約12個の分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、式(NP-2)の約13個の分子を含んでいてもよい。
【0118】
リンカー-ペイロードコンジュゲート
本開示のNDCは、直接またはスペーサー基を介して間接的にナノ粒子に付着されるリンカー-ペイロードコンジュゲートを含むこともできる。好ましい態様では、リンカー-ペイロードコンジュゲートは、スペーサー基を経てナノ粒子に付着される。ペイロードは、エキサテカン、またはその塩もしくは類似体であってもよい。
【0119】
スペーサー基は、スペーサーとして、例えばペイロード/リンカーコンジュゲートとナノ粒子との間のスペーサーとして働くことができる任意の基とすることができ、リンカー-ペイロードコンジュゲートをナノ粒子に付着することができる。スペーサー基は、2価のリンカー、例えば約5から約200原子(例えば、炭素原子、ヘテロ原子、またはこれらの組合せ)の間、例えば約5から約100原子の間、約5から約80原子の間、約10から約80原子の間、約10から約70原子の間、約10から約30原子の間、約20から約30原子の間、約30から約80原子の間、または約30から約60原子の間の鎖長を含む2価のリンカーであってもよい。適切なスペーサー基は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン(例えば、PEG)、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。例えば、スペーサー基は、PEG基、アルキレン基、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。スペーサー基は、置換されても置換されていなくてもよく、例えばスペーサー基は、置換アルキレン、置換ヘテロアルキレン、またはこれらの組合せを含んでいてもよい。例えば、スペーサー基は、PEG基(またはPEGスペーサー)、アルキレン基(またはアルキレンスペーサー)、1個または複数のヘテロ原子、および/または1個または複数の環式基を含んでいてもよい。
【0120】
化学修飾は、本開示のコンジュゲートを調製する目的で、ペイロードとリンカーとの反応をより便利に行うために、ペイロードに対して行われてもよいことが理解されよう。例えば、官能基、例えばアミン、ヒドロキシル、またはスルフヒドリルは、ペイロード(例えば、エキサテカン)の活性またはその他の性質に対して最小限のまたは許容される効果をもたらす位置で、ペイロード(例えば、エキサテカン)に付加されてもよい。あるいは、ペイロード(例えば、ペンダントアミン基)上の既存の官能基は、リンカーへの付着点であってもよい。例えば、エキサテカンは、リンカー部分にカップリングするのに適したアミン官能基を含有する。
【0121】
ペイロード(例えば、エキサテカンペイロード、またはその塩もしくは類似体)は、細胞または細胞オルガネラの内部のナノ粒子から、例えば酵素によって切断することができ、それによってエキサテカンが、例えば細胞または細胞オルガネラ内に放出される。エキサテカンは、DNAとTopo-1酵素との複合体を安定化させることができるトポイソメラーゼ1(Topo-1)阻害剤であり、DNAの追放(relegation)を防止し、致命的なDNA鎖の破壊を誘発させる。これらのDNA病変の発生は、がん細胞の死滅に有効であり、本開示のNDCで所望の治療効果を達成することが可能になる。
【0122】
本開示の好ましい態様では、ペイロードはエキサテカンまたはその塩である。本開示のその他の好ましい態様では、ペイロードはエキサテカンの類似体またはその塩である。
【0123】
本開示の態様では、ナノ粒子のペイロードに対する平均比は、1から80、1から70、1から60、1から50、1から40、1から30、1から20、1から15、1から12、および好ましくは1から10に及ぶ。例えばナノ粒子のペイロード(例えば、エキサテカンまたはその塩もしくは類似体)に対する平均比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、1:32、1:34、1:36、1:38、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、または1:80であってもよい。例えば、各ナノ粒子上のエキサテカン分子の平均数は、ナノ粒子当たり約5から約10個の間、約10から約15個の間、約15から約20個の間、約20から約25個の間、または約25から約30個の間、例えば約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30個のエキサテカン分子であってもよい。本明細書に開示されるNDCは、約18個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約19個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約20個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約21個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約22個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約23個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約24個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約25個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約26個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、約27個のエキサテカン分子を含んでいてもよい。
【0124】
EndocyteおよびMerck & Co.により開発されたビンタフォリドは、卵巣がんなどのある特定のがんで過剰発現する葉酸受容体を標的とする小分子、および化学療法薬、ビンブラスチンからなる小分子薬物コンジュゲートである(US 7601332 B2およびUS 1002942 B2)。しかしながらビンタフォリドは、pH切断可能リンカーによって標的部分に付着される、ペイロードの単一分子のみ運ぶことが可能である。それとは対照的に、本開示では、数個の細胞毒性ペイロード(例えば、エキサテカン分子)を単一ナノ粒子の表面に組み込むことができる。
【0125】
リンカー-ペイロードコンジュゲートのリンカーは、活性ペイロードの酵素による放出に十分な条件下(例えば、放出を触媒することが可能な酵素を提示する条件)、in vitroならびにin vivoで活性ペイロードを放出することが可能な自己犠牲リンカー(self-immolative linker)とすることができる。
【0126】
本明細書に記述されるリンカーは、例えば、細胞毒性薬物ペイロード(例えば、エキサテカン)を、がん細胞に結合し(例えば、がん細胞の表面の受容体に結合する)かつ細胞内に(例えば、エンドソームおよびリソソーム区画を経て)内部移行される担体および/または標的部分(例えば、ナノ粒子)に付着するのに使用することができる。内部移行すると、リンカーは切断または分解されて、活性細胞毒性薬を放出することができる。特にプロテアーゼ切断可能リンカーは、そのペイロードを、細胞のリソソーム区画のカテプシン、トリプシン、またはその他のプロテアーゼなどのプロテアーゼの作用の下で放出することができる。
【0127】
本明細書に記述される切断可能リンカーは、式(F):
【化14】

の構造を含んでいてもよく、[AA]のそれぞれの場合は、天然または非天然アミノ酸残基であり;zは1から5の整数であり;wは1から4(例えば、2または3)の整数であり;および各
【化15】

は、例えばスペーサー基(例えば、PEG)またはリンカーの別の部分との、あるいはエキサテカン分子との付着点を示す。例えば、-[AA]-は、Val-Lys、Val-Cit、Phe-Lys、Trp-Lys、Asp-Lys、Val-Arg、またはVal-Alaを含んでいてもよく、zは2であってもよく、1つの
【化16】

は、PEG基の酸素原子との付着を示し、その他の
【化17】

は、エキサテカンの窒素原子との付着を示す。例えば、-[AA]-はVal-Lysを含んでいてもよい。
【0128】
本明細書に記述される切断可能リンカーは、式(F-1):
【化18】

の構造を含んでいてもよく、1つの
【化19】

は、PEG基の酸素原子との付着点を示し、その他の
【化20】

は、エキサテカンの窒素原子との付着点を示す。
【0129】
本開示のリンカーは、分子の一端または両端に反応性基を含有するリンカー前駆体から調製することができる。反応性基は、一端でのエキサテカンまたはその類似体とのコンジュゲーションが可能になるように、また他端でのナノ粒子とのコンジュゲーションが容易になるように、選択することができる。ペイロードは、リンカーとのコンジュゲーションを容易にするために、アミン、ヒドロキシル、ヒドラゾン、ヒドラジド、またはスルフヒドリル基を含有することが望ましい。例えば、エキサテカンは、リンカーとのそのコンジュゲーションを容易にすることができる第一級アミン基を含む。
【0130】
リンカー-ペイロードコンジュゲート前駆体は、任意の適切な技法および方法を使用してナノ粒子に付着することができ、多くのそのような技法が当技術分野で周知である。例えば、標的化ナノ粒子をベースにした薬物送達系を調製するのに使用することができるシリカ系コア-シェルまたはシリカ系コアナノ粒子について記述している、参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれるWO 2017/189961、WO 2015/183882、WO 2013/192609、WO 2016/179260、およびWO 2018/213851を参照されたい。さらに、リンカー-ペイロードコンジュゲート前駆体、またはリガンド-リンカー前駆体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるKolb et al. Angew. Chem. Int. Ed.
(2001) 40:2004-2021に記載された反応または方法を使用して、ナノ粒子に付着することができる。
【0131】
リンカー-ペイロードコンジュゲートは、直接または本明細書に記述されるスペーサー基などのスペーサー基を介して間接的にナノ粒子に付着されてもよい。適切なスペーサー基には、限定するものではないが2価のリンカー(例えば、本明細書に記述される2価のリンカー)、例えばPEGスペーサー、またはアルキレンスペーサー(例えば、メチレンスペーサー)であって、ヘテロ原子または環式基(例えば、ヘテロシクリレン基)をさらに含み得るものを含む。リンカー-ペイロードコンジュゲートは、シリカシェルの間隙または細孔内に吸収されることができ、または蛍光ナノ粒子などのナノ粒子のシリカシェル上にコーティングすることができる(例えば、ナノ粒子の表面に共有結合により付着される)。シリカシェルがナノ粒子の表面全てを覆わないその他の態様では、リンカー-ペイロードコンジュゲートを、例えば物理吸収によってまたは結合相互作用によって、蛍光コアに関連付けることができる。
【0132】
一部の態様では、リンカー-ペイロードコンジュゲートは、ナノ粒子の表面に共有結合されたPEG基に関連付けられてもよい。例えば、リンカー-ペイロードコンジュゲートは、PEGを経てナノ粒子に付着されてもよい。PEGは、ナノ粒子におよびリンカー-ペイロードコンジュゲートに付着するための、複数の官能基を有することができる。
【0133】
本開示の特定の態様では、リンカー-ペイロードコンジュゲート(またはリンカー-ペイロードコンジュゲート前駆体)を、親水性PEGスペーサーで官能化してもよい。リンカー-ペイロードコンジュゲート前駆体は、例えばナノ粒子表面のDBCO基との反応を介してナノ粒子の表面にリンカー-ペイロードコンジュゲートを共有結合により付着するのを容易にするために(例えば、スペーサー基を介して)、アジド基などであるがこれらに限定されない親水性PEGスペーサーおよび/または適切な末端基で官能化されてもよい。その他の末端基は、ナノ粒子(例えば、ジエン部分)上の適切な基に対する、例えば3+2付加環化反応を介したコンジュゲーションのために、ニトリルオキシドまたはニトロンを含むことができる。
【0134】
官能化リンカー-ペイロードコンジュゲート(またはその前駆体)に存在することができるスペーサーとしてのPEG基の数は、0から20個、例えば2から20個、2から10個、または5から8個に及んでもよく、例えば5、6、7、8、9、10、11、または12個である。好ましい態様では、官能化リンカー-ペイロードコンジュゲートにおけるスペーサーとしてのPEG基の数は、9個である。
【0135】
例えば、エキサテカンは、プロテアーゼ切断可能リンカーにコンジュゲートして、リンカー-ペイロードコンジュゲートを形成することができる。このリンカーコンジュゲートは、例えばDBCO基を介したナノ粒子の表面とのさらなるコンジュゲーションのため、アジドなどの末端反応性基を有するPEGスペーサーで官能化された前駆体から調製することができる。
【0136】
プロテアーゼ切断可能リンカーは、悪性腫瘍で過剰発現する酵素であるカテプシンB(Cat-B)に対して不安定になるように設計することができ、それによって、自己犠牲プロセスによりエキサテカンなどの細胞毒性剤の放出が行われる。
【0137】
リンカーペイロードコンジュゲート前駆体は、式(E-1):
【化21】

の構造を含むことができ、式中、yは0から20、例えば5から15の整数であり、例えば9である。
【0138】
本開示に記述されるリンカーおよびリンカー-ペイロードコンジュゲートには、従来の薬物送達プラットフォーム、リンカー、またはリンカー-ペイロードコンジュゲートと比較して、優れた血清安定性からより速い放出動態メカニズムまでいくつかの利点がある。また、これらのリンカーと様々な化学基とを対合させる能力は、これは著しい利点であるが最小限に抑えられた誘導体化と共に遊離ペイロード/薬物の選択的放出の機会を提供する。
【0139】
本開示の好ましい態様では、リンカー-ペイロードコンジュゲートにおけるリンカーは、プロテアーゼ切断可能リンカーである。
【0140】
ペイロード-リンカー部分を含む本開示のNDCは、式(NP-3):
【化22】

の構造を含んでいてもよく、式中、xは0から10の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、例えば4)であり、yは、0から20の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20、例えば9)であり、ケイ素原子はナノ粒子の一部である(例えば、コア-シェルシリカナノ粒子のシリカシェルに結合される)。例えばxは4であってもよく、yは9であってもよい。本明細書に開示されるNDCは、式(NP-3)の1個より多い分子を含んでいてもよく、例えば、ナノ粒子は、式(NP-3)の約1から約80個の間の分子、例えば式(NP-3)の約1から約60個の間の分子、式(NP-3)の約1から約40個の間の分子、式(NP-3)の約1から約30個の間の分子、式(NP-3)の約10から約30個の間の分子、式(NP-3)の約15から約25個の間の分子、例えば式(NP-3)の約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30個の分子を含んでいてもよい。
【0141】
プロテアーゼと接触すると(例えば、がん細胞のリソソーム内など、がん細胞内で)、本開示のNDCは切断を受けて遊離エキサテカンを放出し得る。本明細書に開示されるNDCの切断は、エキサテカン、二酸化炭素、および4-アミノベンジルアルコールをNDCから同時に放出し得る。例えば、本明細書に開示される例示的なNDCの切断は、以下のスキーム1に提示される。
【化23】
【0142】
スキーム1. 本明細書に開示されるNDCの例示的な切断メカニズム。
本明細書に開示されるNDCは、式(NP-2)の分子および式(NP-3)の分子の両方を含んでいてもよく、例えば各NDCは、式(NP-2)の約1から約20個の分子と、式(NP-3)の約1から約30個の分子とを含んでいてもよい。例えば、各NDCは、式(NP-2)の約10から約15個の分子と式(NP-3)の約15から約25個の分子とを含んでいてもよい。本明細書に開示されるNDCは、式(NP-2)の平均13個の分子と式(NP-3)の平均21個の分子;式(NP-2)の平均12個の分子と式(NP-3)の平均25個の分子;式(NP-2)の平均12個の分子と式(NP-3)の平均20個の分子を含んでいてもよい。
【0143】
本開示は:ナノ粒子;葉酸受容体に結合する標的化リガンド;およびリンカー-ペイロードコンジュゲートを含む、ナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)であって、平均直径が約1nmから約10nmの間であるものを対象とする組成物および方法を提供する。例えば、ナノ粒子は標的化リガンドとして葉酸を含み、リンカー-ペイロードコンジュゲートはプロテアーゼ切断可能リンカーを介してコンジュゲートされたエキサテカンを含み、NDCは、約1nmから約10nmの間の平均直径を有する。
【0144】
図1は、約6nmの平均直径を有する代表的なナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)を示し、これは、シリカ系コアおよびこのコアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェル、ナノ粒子の表面に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)、およびナノ粒子のコア内に共有結合により被包された蛍光化合物(Cy5)を含むナノ粒子、、葉酸受容体に結合できる標的化リガンドとしての葉酸(FA)、ならびにプロテアーゼ切断可能リンカー-エキサテカンコンジュゲートを含むリンカー-ペイロードコンジュゲートを含む。「葉酸」は、例えば葉酸がアミド基を介してスペーサー基(PEG)に共有結合により付着される図1に示されるように、葉酸の任意のアミドまたはエステル誘導体を包含するものであることが理解されよう。
【0145】
NDCは、約5nmから約8nmの間または約6nmから約7nmの間の平均直径を有していてもよい。NDCの平均直径は、蛍光相関分光法(FCS)(例えば、図6参照)およびゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(図7)などであるがこれらに限定されない任意の適切な方法によって測定することができる。
【0146】
本開示のNDCは、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)、および光学撮像(近赤外蛍光(NIRF)撮像、生物発光撮像、またはこれらの組合せを含む蛍光撮像など)のための造影剤で官能化することができるナノ粒子を含むことができる。
【0147】
89Zr、64Cu、68Ga、86Y、124I、および177Luを含むがこれらに限定されない放射性核種(放射性標識)などの造影剤を、ナノ粒子に付着してもよい。あるいはナノ粒子は、放射性核種に結合するよう適合されたキレーター部分、例えばDFO、DOTA、TETA、およびDTPAに付着することができる。そのようなナノ粒子は、PET、SPECT、CT、MRI、または光学撮像(近赤外蛍光(NIRF)撮像、生物発光撮像、またはこれらの組合せを含む蛍光撮像など)によって検出され得る。
【0148】
放射性核種はさらに、多重治療プラットフォームを創出するための治療剤として働くことができる。このカップリングによれば、治療剤は、標的化リガンドと細胞成分との間の特異的結合を経て特定の細胞型に送達されることが可能になる。
【0149】
プロテアーゼ切断可能リンカー-ペイロードコンジュゲート
リンカー-ペイロードコンジュゲートは、式(I)
【化24】

の化合物またはその塩を含んでいてもよく、
【0150】
式中、
【化25】

線は、スペーサー基を経たナノ粒子との付着を表し;Aは、Val-Cit、Phe-Lys、Trp-Lys、Asp-Lys、Val-Lys、Val-Arg、およびVal-Alaからなる群より選択されるジペプチドであり、またはAは、Val-Phe-Gly-Sar、Val-Cit-Gly-Sar、Val-Lys-Gly-Sar、Val-Ala-Gly-Sar、Val-Phe-Gly-Pro、Val-Cit-Gly-Pro、Val-Lys-Gly-Pro、Val-Ala-Gly-Pro、Val-Cit-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Lys-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Phe-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Ala-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、Phe-Lys-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、およびTrp-Lys-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸からなる群より選択されるテトラペプチドであり;ペイロードはエキサテカンであり、エキサテカンの第一級アミン基はZによって表され;RおよびRは出現するごとに独立して、水素、置換もしくは非置換C1~6アルキル、または置換もしくは非置換C1~6アルコキシ、またはヒドロキシルであり;RおよびRは、出現するごとに独立して、水素、ハロ、置換もしくは非置換C1~6アルキル、または置換もしくは非置換C1~6アルコキシであり;Rは、水素、置換または非置換C1~6アルキル;置換または非置換C3~7シクロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換C5~6ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;但し、Aがジペプチドである場合、RはHであり;R、R、およびRは出現するごとに独立して、水素、または置換もしくは非置換C1~6アルキルであり;Xは、不在、-O-、-CO-、または-NR-であり;Yは、不在、
【化26】

であり、ここで
【化27】

中のカルボニルは、Zに結合され;
但し、Yが
【化28】

である場合、Xは不在であり、nは1であり;Yが
【化29】

である場合、Xは不在であり、nは0であり;Yが
【化30】

である場合、Xは不在であり、nは0であり;および/またはXが-CO-である場合、Yが不在であり、nは0であり;XおよびXは独立して、-CH-または-N-であり;Xは-CH-であり;Xは-CH-であり;Zは-NR-または-O-であり;nは、0または1であり;qは、1から3である。
【0151】
式(I)の好ましい態様では、AはVal-Lysであり;R~Rはそれぞれ独立して水素であり;Xは不在であり;Yが
【化31】

であり、式中、
【化32】

中のカルボニルはZに結合し;nは1であり;X、X、X、およびXはそれぞれ独立して-CH-であり;Zは-NR-であり、ここでRは水素であり、Nは、エキサテカンペイロード中に存在する窒素原子である。
【0152】
式(I)のリンカー-ペイロードコンジュゲートにおいて、ペイロードは、リンカーに結合された官能基を有するエキサテカンであってもよく、この官能基はアミンである(エキサテカンがリンカーに結合された場合は第二級アミンであり、放出されると(またはコンジュゲーションの前)、即ち別個の分子実体として、エキサテカンのアミンは第一級アミンである)。
【0153】
例示的なリンカー-ペイロードコンジュゲート: 本開示の代表的なリンカー-ペイロードコンジュゲートには、限定するものではないが下記の部分構造が含まれ、ここで
【化33】

線は、ナノ粒子との直接結合、またはスペーサー基を経たナノ粒子との間接結合を表す。適切なスペーサー基には、限定するものではないがPEGスペーサーまたはアルキレンスペーサー(例えば、メチレンスペーサー)が含まれ、これはさらに、ヘテロ原子または環式基(例えば、ヘテロシクリレン基)を含んでいてもよい。好ましい態様では、スペーサー基がPEGスペーサーである。
【0154】
本開示の式(I)の例示的なリンカー-ペイロードコンジュゲートは、下記の部分構造:
【化34】

を含む。
【0155】
リンカーおよびその前駆体: 本開示のリンカー、および/またはその前駆体は、分子の両端に反応性基を含有することができる。反応性基は、エキサテカンまたはその塩もしくは類似体とのコンジュゲーションが、一端で可能になるように、および他端でナノ粒子とのコンジュゲーション(例えば、スペーサー基を介して)も容易になるように、選択することができる。例えば、リンカーは、エキサテカンの第一級アミンなど(リンカーとのコンジュゲーションにより第二級アミンになる)、エキサテカンの一部である化学的に反応性の官能基を介してエキサテカンに接続することができる。
【0156】
リンカーは、第一級または第二級アミンまたはカルボキシル基などのリンカーの一部である化学的に反応性の官能基を介して官能化ポリエチレングリコールまたはC~Cアルキル鎖にコンジュゲートすることができる。
【0157】
プロテアーゼ切断可能リンカー: プロテアーゼは、腫瘍細胞成長および生存から血管新生および侵襲までのがん疾患の全ての段階に関わる。したがって、リンカー/ペイロード系の活性化に向けての選択的誘発因子として、がんを処置するのに利用することができる。本開示は、プロテアーゼの作用により切断可能であり、それによって遊離ペイロード(例えば、エキサテカン)を放出する、リンカーに関する。カテプシンBなどのリソソームプロテアーゼおよびカテプシンAなどのセリンプロテアーゼ、またはトリペプチジル-ペプチダーゼIは、プロドラッグ開発の文脈において大々的に研究されてきた。カスパーゼなどのタンパク質分解酵素も、ペイロードの選択的活性化のためのまたはがん細胞などの標的細胞への特異的カーゴ送達のための生物学的誘発因子として利用されることが周知である。
【0158】
リンカー(またはその前駆体)は、式(I-A)
【化35】

の化合物を含むことができ、
式中:Aは、Val-Cit、Phe-Lys、Trp-Lys、Asp-Lys、Val-Lys、Val-Arg、およびVal-Alaからなる群より選択されるジペプチドであり、またはAは、Val-Phe-Gly-Sar、Val-Cit-Gly-Sar、Val-Lys-Gly-Sar、Val-Ala-Gly-Sar、Val-Phe-Gly-Pro、Val-Cit-Gly-Pro、Val-Lys-Gly-Pro、Val-Ala-Gly-Pro、Val-Cit-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Lys-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Phe-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Ala-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、Phe-Lys-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸、およびTrp-Lys-Gly-任意の天然または非天然N-アルキル置換アルファアミノ酸からなる群より選択されるテトラペプチドであり;RおよびRは出現するごとに独立して、水素、置換もしくは非置換C1~6アルキル、または置換もしくは非置換C1~6アルコキシ、またはヒドロキシであり;RおよびRは、出現するごとに独立して、水素、ハロ、置換もしくは非置換C1~6アルキル、または置換もしくは非置換C1~6アルコキシであり;Rは、水素、置換または非置換C1~6アルキル;置換または非置換C3~7シクロアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換C5~6ヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;但し、Aがジペプチドである場合、RはHであり;R’、R’、R’、R’、およびR’は出現するごとに独立して、水素、置換もしくは非置換C1~6アルキル、または置換もしくは非置換C1~6シクロアルキルであり;Xは、不在、-O-、-CO-、または-NR-であり;Yは、不在、
【化36】

であり、ここで
【化37】

中のカルボニルは、Zに結合され、但し、Yが
【化38】

である場合、Xは不在であり、nは1であり;但し、Yが
【化39】

である場合、Xは不在であり、nは0であり;但し、Yが
【化40】

である場合、Xは不在であり、nは0または1であり;但し、Xが-CO-である場合、Yが不在であり、nは0であり;Xは-CH-であり;Xは-CH-であり;Zは、ハロ、ヒドロキシ、-OSO-CH、-OSOCF、4-ニトロフェノキシ、-COCl、および-COOHからなる群より選択され;Zは、-NH、-NHR、および-COOHからなる群より選択される官能基であり;またはZは、-C(O)-Tであり;Tは、官能化ポリエチレングリコール、またはC~Cアルキル鎖であって、アジド、
【化41】

からなる群より選択される末端基を有するものであり;出現するごとにR、R、およびRは、独立して、水素、または置換もしくは非置換C1~6アルキルであり;nは0または1であり;およびqは1から3である。式(I-A)のある特定の態様では、Aは、Val-Lysであり;R~Rはそれぞれ独立して、水素であり;Xは不在であり;Yは、
【化42】

であり、ここで
【化43】

中のカルボニルは、Zに結合され;nは、1であり;X、X、X、およびXはそれぞれ独立して、-CH-であり;Zは、ハロ、ヒドロキシ、-OSO-CH、-OSOCF、4-ニトロフェノキシ、-COCl、および-COOHからなる群より選択される官能基であり;Zは、-NH、-NHR、および-COOHからなる群より選択される官能基であり、またはZは、-C(O)-Tであり、ここでTは、式(I-A)に定められた通りである。
【0159】
医薬組成物
本開示はさらに、疾患(例えば、葉酸受容体発現腫瘍に関連したがんなどの、がん)を処置するための医薬組成物であって、本明細書に記述されるNDCの有効量を含む医薬組成物を提供する。
【0160】
本開示の特定の態様では、NDCを含む医薬組成物は、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択されるがんを処置するのに使用することができる。NDCを含む医薬組成物は、例えば対象の腫瘍の免疫状態を修正するために、マクロファージに関連した腫瘍を標的とするのに使用してもよい。
【0161】
本開示の医薬組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤、例えば無毒性担体、佐剤、希釈剤、またはビヒクルであって、それと共に製剤化されるNDCの薬理学的活性に悪影響を及ぼさないものを含んでいてもよい。本開示の医薬組成物の製造に有用な、薬学的に受容可能な賦形剤は、医薬製剤の分野で周知のもののいずれかであり、不活性希釈剤、分散および/または造粒剤、表面活性剤および/または乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝化剤、滑沢剤(lubricating agent)、および/または油を含むことができる。本開示の医薬組成物の製造に有用な、薬学的に受容可能な賦形剤には、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、ホスフェート)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、グリセリド混合物(例えば、飽和植物脂肪酸の混合物)、水、塩、または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が含まれる。
【0162】
本開示の医薬組成物は、適切な薬学的単位剤形の形で経口投与されてもよい。本開示の医薬組成物は、錠剤、硬質または軟質ゼラチンカプセル、水溶液、懸濁物、リポソーム、およびその他の緩徐放出製剤、例えば成形ポリマーゲルを含む多くの形で調製されてもよい。
【0163】
NDCまたは組成物の適切な投与様式には、限定するものではないが経口、静脈内、直腸、舌下、粘膜、鼻、眼科的、皮下、筋肉内、経皮、脊椎、髄腔内、関節内、動脈内、くも膜下、気管支、リンパ系投与、腫瘍内、および活性成分の全身送達に適切なその他の経路が含まれる。
【0164】
本発明の医薬組成物は、経皮(パッチ、ゲル、クリーム、軟膏、またはイオン導入を介して受動的に);静脈内(ボーラス、輸液);皮下(輸液、デポー);経粘膜(頬側および舌下、例えば、口内分散性錠剤(orodispersible tablet)、オブラート、フィルム、および発泡製剤);結膜(点眼液);直腸(坐薬、浣腸);または皮内(ボーラス、輸液、デポー)を含むがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法によって投与されてもよい。組成物は、局所的に送達されてもよい。
【0165】
経口液体医薬組成物は、例えば、水性または油性の懸濁物、溶液、エマルジョン、シロップ、またはエリキシルの形であり得、あるいは使用前に水またはその他の適切なビヒクルと共に構成するための乾燥生成物として提供されてもよい。そのような液体医薬組成物は、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含んでいてもよい)、または保存剤などの、従来の添加剤を含有していてもよい。
【0166】
本開示の医薬組成物は、非経口投与用(例えば注射によって、例えば、ボーラス注射または連続輸液)に製剤化されてもよく、アンプル、プレフィルドシリンジ、輸液容器(例えば、小体積輸液容器)内の単位剤形として、または追加の保存剤を含有し得る複数回用量容器として、提供されてもよい。
【0167】
医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁物、溶液、またはエマルジョンなどの形をとってもよく、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤化剤(formulating agent)を含有してもよい。あるいは本開示の医薬組成物は、滅菌固体の無菌単離によって、または使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌発熱物質不含水と共に構成するために溶液からの凍結乾燥によって、得られる粉末形態であり得る。
【0168】
局所投与(例えば、表皮への)では、医薬組成物は、軟膏、クリーム、またはローションとして、あるいは経皮パッチの活性成分として製剤化されてもよい。適切な経皮送達システムは、例えば、A. Fisher et al.(米国特許第4,788,603号)、およびR. Bawa et al.(米国特許第4,931,279号;第4,668,506号;および第4,713,224号)であって、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるものに、開示されている。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性基剤と共に、適切な増粘剤および/またはゲル化剤の添加と共に製剤化されてもよい。ローションは、水性または油性基剤と共に製剤化されてもよく、一般に、1種または複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤も含有することになる。医薬組成物は、例えば参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,140,122号;第4,383,529号;または第4,051,842号に開示されるように、イオン導入を介して送達することもできる。
【0169】
口内の局所投与に適した医薬組成物は、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの矯味矯臭された基剤において本開示の医薬組成物を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に医薬組成物を含むトローチ;粘膜接着ゲル(mucoadherent gel)、および適切な液体担体中に医薬組成物を含むマウスウォッシュなどの単位剤形を含む。
【0170】
眼への局所投与では、医薬組成物は、参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる、滴、ゲル(S. Chrai et al, 米国特許第4,255,415号)、ガム(S. L. Lin et al, 米国特許第4,136,177号)として、または長期放出眼用インサートを介して(A. S. Michaels, 米国特許第3,867,519号、およびH. M. Haddad et al., 米国特許第3,870,791号)投与することができる。
【0171】
望む場合には、上述の医薬組成物は、例えば天然ゲル、合成ポリマーゲル、またはこれらの混合物を含む、例えばある特定の親水性ポリマーマトリクスと組み合わせることによって用いられる治療化合物の持続放出を与えるように適合させることができる。
【0172】
担体が固体である、直腸投与に適した医薬組成物は、単位用量坐薬として最も好ましく提供される。適切な担体には、カカオ脂、および当技術分野で一般に使用されるその他の材料が含まれ、坐薬は、医薬組成物と軟化または融解された担体(複数可)とを混合し、その後、型内で冷却かつ成形することによって都合良く形成されてもよい。
【0173】
膣投与に適した医薬組成物は、ナノ粒子および治療剤に加えて担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレーとして提供されてもよい。そのような担体は、当技術分野で周知である。
【0174】
吸入による投与では、本開示による医薬組成物は、吹送器(insufflator)、ネブライザー、または加圧パック、またはエアロゾルスプレーを送達するその他の都合よい手段から、都合良く送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適切な気体などの、適切な噴霧体を含んでいてもよい。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達する弁を設けることによって決定されてもよい。
【0175】
あるいは、吸入または吹送による投与では、本開示の医薬組成物は、乾燥粉末組成物、例えば医薬組成物と、ラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との、粉末混合物の形をとってもよい。粉末組成物は、単位剤形で、例えば、カプセルまたはカートリッジ、または例えばゼラチンまたはブリスターパックで提供されてもよく、そこからは粉末が、吸入器または吹送器の補助とともに投与され得るものである。
【0176】
鼻内投与では、本開示の医薬組成物は、液体スプレーを介して、例えばプラスチックボトルアトマイザーを介して投与されてもよい。これらの典型例は、MISTOMETER(登録商標)(イソプロテレノール吸入器-Wintrop)およびMEDIHALER(登録商標)(イソプロテレノール吸入器-Riker)である。
【0177】
本開示の医薬組成物は、矯味矯臭剤、着色剤、抗微生物剤、または保存剤などのその他の佐剤を含有してもよい。
【0178】
処置での使用に適した医薬組成物の量は、選択された治療剤とだけではなく、投与経路、処置される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても様々になり、最終的には主治医または臨床医の裁量によることが、さらに理解されよう。これらの要因の評価に関しては、参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれるJ. F. Brien et al., Europ. J. Clin. Pharmacol., 14, 133 (1978); およびPhysicians’ Desk Reference, Charles E. Baker, Jr., Pub., Medical Economics Co., Oradell, N.J. (41st ed., 1987)を参照されたい。
【0179】
投与および処置の方法
本開示のNDCは、対象に投与することができる。対象は、哺乳動物とすることができ、好ましくはヒトである。哺乳動物には、限定するものではないがネズミ、ラット、ウサギ、サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、家畜、競技用動物、ペット、ウマ、および霊長類が含まれる。
【0180】
NDCは、限定するものではないが下記の経路:経口、静脈内、鼻、皮下、局所、筋肉内、または経皮によって対象に投与されてもよい。例えば、本開示のNDCは、対象に静脈内投与されてもよい。
【0181】
本開示の方法および組成物は、医師または外科医が、FRを過剰発現するがんを含むがこれらに限定されないがんなどの疾患領域を特定し特徴付け、例えば脳手術で通常の手術用顕微鏡を使用して検出するのが難しい腫瘍周縁部を検出するなどの患部組織および正常組織を区別し、例えば病変ががん性であるか否かおよび除去すべきかまたは非がん性であり放置するか否かを決定することにより、または疾患の外科的病期判定において治療または外科的介入を指示するのを助けるのに、使用することができる。
【0182】
本開示の方法および組成物は、限定するものではないが、転移性疾患検出、処置応答モニタリング、およびペイロードの標的化された送達であって、血液脳関門を通過することによるものも含めて、使用されてもよい。
【0183】
本開示の方法および組成物は、早期疾患を含めた疾患の検出、特徴付け、および/または疾患の局在化の決定、疾患または疾患関連状態の重症度、疾患の病期決定、および/または疾患のモニタリングに使用することもできる。放出されたシグナルの存在、不在、またはレベルは、疾患状態を示すことができる。
【0184】
本開示の方法および組成物は、外科手順およびカテーテルをベースにした手順などの様々な治療介入をモニタリングおよび/またはガイドし、細胞ベースの治療を含めた薬物治療をモニタリングするのに使用することもできる。本開示の方法は、疾患または疾患状態の予後で使用することもできる。疾患部位の内部または周辺に常在する細胞部分集団、例えば幹様細胞(「がん幹細胞」)および/または炎症/食細胞は、本開示の方法および組成物を使用して特定されかつ特徴付けられてもよい。
【0185】
前述のそれぞれに関し、検出またはモニタリングできる(治療の前、間、または後)そのような疾患または疾患状態の例には、がん(例えば、黒色腫、甲状腺、結腸直腸、卵巣、肺、乳房、前立腺、子宮頸部、皮膚、脳、胃腸、口、腎臓、食道、骨がん)が含まれ、がんおよび/または悪性疾患を発症する感受性が高い対象、即ち、がんおよび/または悪性疾患、炎症(例えば、がん性病変の存在により誘発された炎症状態)、心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症および血管の炎症状態、虚血、卒中、血栓)、皮膚疾患(例えば、カポジ肉腫、乾癬)、眼科疾患(例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症)、感染性疾患(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む、細菌、ウイルス、真菌、および寄生生物感染)、免疫疾患(例えば、自己免疫障害、リンパ腫、多発性硬化症、関節リウマチ、糖尿病)、中枢神経系疾患(例えば、神経変性疾患、例えばパーキンソン病またはアルツハイマー病)、遺伝性疾患、代謝疾患、環境疾患(例えば、鉛、水銀、および放射性物質中毒、皮膚がん)、骨関連疾患(例えば、骨粗しょう症、原発性および転移性骨腫瘍、変形性関節症)、および神経変性疾患を発症する素因を有する対象を特定するのに使用できる。
【0186】
したがって本開示の方法および組成物は、例えば、腫瘍および/または共在幹様細胞(「がん幹細胞」)の存在および/または局在化、例えば腫瘍周辺領域における活性化マクロファージの存在を含む炎症細胞の存在および/または局在化、冠動脈および末梢動脈の急性閉塞(即ち、不安定プラーク)のリスクのある領域、拡張した動脈瘤の領域、頸動脈の不安定プラーク、および虚血領域を含む血管疾患の存在および局在化を決定するのに使用することができる。本開示の方法および組成物は、細胞死、損傷、アポトーシス、壊死、低酸素症、および血管新生の特定および評価で使用することもできる(PCT/US2006/049222)。
【0187】
本開示の方法は、有効量の本明細書に記述されるNDCを、それを必要とする対象に投与することを含む。例えば、NDCは、それを必要とする対象に静脈内投与することができる。「有効量」は、処置がなされる疾患または障害の徴候および/または症状を低減させる量、例えば腫瘍サイズまたは腫瘍負荷を低減させる量など、投与条件下で所望の生物学的または医学的応答を誘発するNDCの量である。投与される実際の量は、例えば、対象の年齢、体重、性別、全身の健康および薬物に対する耐性、疾患の重症度、選択される剤形、投与経路、およびその他の要因に基づいて、通常の技量を有する臨床医により決定することができる。
【0188】
方法の特定の態様では、対象は、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択されるがんを有する。
【0189】
本開示は、葉酸受容体発現腫瘍を処置するためのNDCの使用も含む。例えば、NDCの使用は、それを必要とする対象に静脈内投与することを含んでいてもよい。
【0190】
本開示は、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択されるがんを持つ対象でのNDCの使用にも関する。
【0191】
本開示のNDCは、葉酸受容体発現腫瘍を処置するための医薬の製造で使用されてもよく、このNDCは、それを必要とする対象に静脈内投与されるものであり、この対象は、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択されるがんを有する。
【0192】
本明細書に開示される組成物および方法は、本明細書に開示されるNDCを、1種または複数の追加の抗がん剤と組み合わせて投与することを含む、組成物および方法を含むことができる。そのような状況において、NDCは、追加の1種または複数の薬剤の前に、実質的に同時に、または後に、投与することができる。適切な追加の薬剤には、例えば化学療法剤、例えばメクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イフォスファミド、ブスルファン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、フォテムスチン、ストレプトゾトシン、ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミド、チオテパ、ミトマイシン、ジアジクオン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、メトトレキセート、ペメトレキセド、フルオロウラシル(例えば、5-フルオロウラシル)、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビン、アザシチジン、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、ペントスタチン、チオグアニン、メルカプトプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ビンフルニン、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、トポテカン、カムプトテシン、エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、ミトマイシンC、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ビサントレン、ゲムシタビン、シタラビン、および同様のものが含まれる。本明細書に開示される組成物および方法でNDCと共に使用することができるその他の抗がん剤には、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD1、抗PDL1、抗CTLA4抗体)、ホルモン受容体アンタゴニスト、およびその他の化学療法コンジュゲート(例えば、抗体-薬物コンジュゲート、およびナノ粒子薬物コンジュゲートなど)などが含まれる。
【0193】
本明細書の本発明の記述で使用される専門用語は、単に特定の実施形態について記述する目的のためであり、本発明を限定しようとするものではない。本発明の実施形態の記述でおよび添付される特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈がその他を明示しない限り、複数形も同様に含むものとする。また、本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連ある列挙された項目の1つまたは複数のいずれかおよび全ての可能性ある組合せを指すおよび包含する。
【0194】
「約」という用語は、ある値を指すとき、±20%または±10%を意味する。さらに、「約」という用語は、1つまたは複数の数値または数値範囲に関連して使用されるとき、ある範囲内の全ての数値を含む、全てのそのような数値を指し、記述される数値の上および下の境界まで拡張することによってその範囲を修飾すると理解すべきである。端点による数値範囲の列挙は、全ての数値、例えばその範囲内に包含される、小数部を含む整数(例えば、1から5の列挙は、1、2、3、4、および5を含み、同様にその小数部、例えば1.5、2.25、3.75、4.1、および同様のものを含む)、およびその範囲内の任意の範囲を含む。
【0195】
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたり、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含んでいる(comprising)」という用語は、文脈がその他を必要とする場合を除き、非排他的意味で使用される。同様に、「含む(include)」という用語およびその文法上の変形例は非限定的であるとし、したがってリストにおける項目の列挙は、列挙された項目を置換しまたは付加することができるその他の同様の項目を排除するものではない。
【0196】
特定の用語が本明細書で用いられるが、それらは一般的なおよび記述的な意味でのみ使用され、限定を目的とするものではない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本明細書で記述される主題が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0197】
詳細な記述および添付される特許請求の範囲では、用いられる略称および命名法は、アミノ酸およびペプチド化学で標準的なものであることが理解されよう。
【0198】
略称
本開示で使用される略称は、他に指示されない限り、下記の通りである:
Fmoc: フルオレニルメトキシカルボニル
MeOH: メタノール
Cit-OH: L-シトルリン
DCM: ジクロロメタン
EEDQ: 2-エトキシ-1-(エトキシカルボニル)-1,2-ジヒドロキノリン
THF: テトラヒドロフラン
NMR: 核磁気共鳴
DMSO: ジメチルスルホキシド
LCMS: 液体クロマトグラフィー-質量分光法
TEA: トリエチルアミン
HATU: (1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
DMF: ジメチルホルムアミド
DIPEA: N,N-ジイソプロピルエチルアミン
TMSCN: シアン化トリメチルシリル
RP HPLC: 逆相高圧液体クロマトグラフィー
SFC: 超臨界流体クロマトグラフィー
CAN: アセトニトリル
NMP: N-メチルピロリドン
r.t: 室温
TEA: トリエチルアミン
TFA: トリフルオロ酢酸
MTBE: メチルtert-ブチルエーテル
EtOAC: 酢酸エチル
PyBOP: (ベンゾトリアゾール(Benzotrizole)-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)
【0199】
定義
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1から18個の炭素原子、例えば1から約12個の炭素原子、または1から約6個の炭素原子を含み得る(「C1~18アルキル」)、1価の脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、単環式部分、または多環式部分、またはこれらの組合せとすることができる。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、および同様のものが含まれる。アルキル基のそれぞれの場合は、独立して、必要に応じて置換されてもよく、即ち置換されない(「非置換アルキル」)かあるいは1個または複数の置換基、例えば1から5個の置換基、1から3個の置換基、または1個の置換基で置換される(「置換アルキル」)。
【0200】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、2から18個の炭素原子、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を有し、三重結合を持たない1価の直鎖または分岐状炭化水素基を指す(「C2~18アルケニル」)。アルケニル基は、2から8個の炭素原子、2から6個の炭素原子、2から5個の炭素原子、2から4個の炭素原子、または2から3個の炭素原子を有していてもよい。1つまたは複数の炭素-炭素二重結合は、内部(例えば、2-ブテニル内)または末端(例えば、1-ブテニル内)とすることができる。アルケニル基の例には、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、オクタトリエニル、および同様のものが含まれる。アルケニル基のそれぞれの場合は、独立して、必要に応じて置換されてもよく、即ち、置換されない(「非置換アルケニル」)か、あるいは1個または複数の置換基、例えば1から5個の置換基、1から3個の置換基、または1個の置換基で置換される(「置換アルケニル」)。
【0201】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、2から18個の炭素原子、1つまたは複数の炭素-炭素三重結合を有する1価の直鎖または分岐状炭化水素基を指す(「C2~18アルキニル」)。アルキニル基は、2から8個の炭素原子、2から6個の炭素原子、2から5個の炭素原子、2から4個の炭素原子、または2から3個の炭素原子を有していてもよい。1つまたは複数の炭素-炭素三重結合は、内部(例えば、2-ブチニル内)または末端(例えば、1-ブチニル内)とすることができる。アルキニル基の例には、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、および同様のものが含まれる。アルキニル基のそれぞれの場合は、独立して、必要に応じて置換されてもよく、即ち、置換されない(「非置換アルキニル」)かあるいは1個または複数の置換基、例えば1から5個の置換基、1から3個の置換基、または1個の置換基で置換される(「置換アルキニル」)。
【0202】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアルキル」という用語は、非環式の安定な直鎖または分岐鎖、またはその組合せであって、少なくとも1個の炭素原子と、O、N、P、Si、およびSからなる群より選択される少なくとも1個ヘテロ原子とを含むものを指し、窒素および硫黄原子は必要に応じて酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子が必要に応じて四級化されてもよい。ヘテロ原子(複数可)O、N、P、S、およびSiは、ヘテロアルキル基の任意の位置に配置されてもよい。
【0203】
「アルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」、または「ヘテロアルキレン」という用語は、単独でまたは別の置換基の部分として、他に記述しない限りそれぞれアルキル、アルケニル、アルキニル、またはヘテロアルキルから誘導された2価のラジカルを意味する。「アルケニレン」という用語は、それ自体でまたは別の置換基の部分として、他に記述しない限りアルケンから誘導された2価のラジカルを意味する。アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、またはヘテロアルキレン基は、例えばC1~6員アルキレン、C1~6員アルケニレン、C1~6員アルキニレン、またはC1~6員ヘテロアルキレンと記述されてもよく、「員」という用語は、部分内の非水素原子を指す。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子は、鎖末端のいずれかまたは両方を占有することもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ、および同様のもの)。さらになお、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基では、連結基の式が書かれる方向によって、連結基の無配向が示唆される。例えば、式-C(O)R’-は、-C(O)R’-および-R’C(O)-の両方を表してもよい。アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、またはヘテロアルキレン基のそれぞれの場合は、独立して、必要に応じて置換されてもよく、即ち、置換されない(「非置換アルキレン」)かまたは1個または複数の置換基で置換される(「置換ヘテロアルキレン」)。
【0204】
本明細書で使用される場合、「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、「置換ヘテロアルキル」、「置換ヘテロアルケニル」、「置換ヘテロアルキニル」、「置換シクロアルキル」、「置換ヘテロシクリル」、「置換アリール」、および「置換ヘテロアリール」という用語は、それぞれアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリール部分を指し、その部分の1個または複数の炭素またはヘテロ原子上の1個または複数の水素原子を置き換える置換基を有している。そのような置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。シクロアルキルは、例えば上述の置換基でさらに置換することができる。
【0205】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、式-O-アルキルの基を指す。「アルコキシ」または「アルコキシル」という用語は、酸素原子に、共有結合により連結された、置換および非置換アルキル、アルケニル、およびアルキニル基を含む。アルコキシ基またはアルコキシルラジカルの例には、限定するものではないがメトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基が含まれる。置換アルコキシ基の例には、ハロゲン化アルコキシ基が含まれる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分などの基で置換することができる。ハロゲン置換アルコキシ基の例には、限定するものではないがフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、およびトリクロロメトキシが含まれる。
【0206】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、単環式であっても多環式であってもよい安定な芳香環系であって、その全ての環原子が炭素でありかつ置換されても置換されなくてもよいものを指す。芳香環系は、例えば、3~7個の環原子を有していてもよい。その例には、フェニル、ベンジル、ナフチル、アントラシル、および同様のものが含まれる。アリール基のそれぞれの場合は、独立して、必要に応じて置換されてもよく、即ち、置換されない(「非置換アリール」)かあるいは1個または複数の置換基で置換される(「置換アリール」)。
【0207】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、1個または複数の環ヘテロ原子を含むアリール基を指す。例えば、ヘテロアリールは、炭素原子ならびに窒素、酸素、および硫黄からなる群より独立して選択される1個または複数のヘテロ原子からなる安定な5-、6-、または7員単環式あるいは7-、8-または9員二環式芳香族複素環式環を含むことができる。窒素原子は、置換されても置換されなくてもよい(例えば、定義されるように、NまたはNRであり、ここでRはHまたはその他の置換基である)。ヘテロアリール基の例には、ピロール、フラン、インドール、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、および同様のものが含まれる。
【0208】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキレン」、「ヘテロシクリレン」、「アリーレン」、および「ヘテロアリーレン」という用語は、単独でまたは別の置換基の部分として、それぞれシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールから誘導される2価のラジカルを意味する。シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンのそれぞれの場合は、独立して、必要に応じて置換されてもよく、即ち、置換されない(「非置換アリーレン」)かあるいは1個または複数の置換基で置換される(「置換ヘテロアリーレン」)。
【0209】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、非芳香族環式炭化水素環、例えばその環構造内に3から8個の炭素原子を有する炭化水素環を含むものとする。シクロアルキルは、シクロブチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、および同様のものを含むことができる。シクロアルキル基は、単環式(「単環式シクロアルキル」)とすることができ、または二環式系などの縮合、架橋、またはスピロ環系(「二環式シクロアルキル」)を含有することができ、飽和され得るか、または部分的に不飽和であり得る。「シクロアルキル」は、上記定義されたシクロアルキル環が1個または複数のアリール基と縮合する環系も含み、その付着点はシクロアルキル環上にあり、そのような場合には炭素の数は、シクロアルキル環系における炭素の数を示し続ける。シクロアルキル基のそれぞれの場合は、独立して、必要に応じて置換されてもよく、即ち、置換されない(「非置換シクロアルキル」)かあるいは1個または複数の置換基で置換される(「置換シクロアルキル」)。
【0210】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」という用語は、1つまたは複数の環内に少なくとも2個の異なる元素の原子を含む(即ち、複素環式環のラジカル)、1価の環式分子構造を指す。複素環式環が有機化学の分野で十分に確立された用語である証拠として、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology, Oxford University Press, Oxford, 1997をさらに参照されたい。
【0211】
本明細書で使用される場合、「ジペプチド」という用語は、-A-A-として本明細書で示され得る2個のアミノ酸残基から構成されるペプチドを指す。例えば、本開示のプロテアーゼ切断可能リンカー-ペイロードコンジュゲートの合成に用いられるジペプチドは、Val-Cit、Phe-Lys、Trp-Lys、Asp-Lys、Val-Lys、およびVal-Alaからなる群より選択されてもよい。
【0212】
本明細書で使用される場合、「官能化ポリエチレングリコール」という用語は、官能基を含むポリエチレングリコールを指す。例えば、官能化ポリエチレングリコールは、アジド、
【化44】

からなる群より選択される末端基で官能化されたポリエチレングリコールであってもよく、式中、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は、出現するごとに独立して、水素、置換もしくは非置換C1~6アルキル、または置換もしくは非置換C1~6シクロアルキルである。好ましい態様では、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は出現するごとに、水素である。好ましい態様では、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は出現するごとにメチルである。
【0213】
本開示の一部の態様では、「官能化ポリエチレングリコール」という用語は、限定するものではないが下記の構造を指す。
【0214】
【化45】
【0215】
本明細書で使用される場合、Tは、官能化ポリエチレングリコールまたはC~Cアルキル鎖であって、アジド、
【化46】

からなる群より選択される末端基を有するものを指してもよく、式中、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は、出現するごとに、独立して水素、置換もしくは非置換C1~6アルキルまたは置換もしくは非置換C1~6シクロアルキルである。Tの好ましい態様において、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は出現するごとに、水素である。Tの好ましい態様において、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は出現するごとに、メチルである。好ましい態様において、Tは、アジド末端基を有する官能化ポリエチレングリコールである。好ましい態様では、Tは、アジド末端基を有するC~Cアルキル鎖である。ポリエチレングリコール(PEG)の反復単位(-O-CH-CH-)は、5~20単位に及ぶことができ、好ましくは5~15単位、より好ましくは6~12である。
【0216】
本明細書で使用される場合、Tは、アジド、
【化47】

からなる群より選択される末端基を有するC~Cアルキル鎖を指してもよく、式中、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は、出現するごとに独立して、水素、置換もしくは非置換C1~6アルキル、または置換もしくは非置換C1~6シクロアルキルである。好ましい態様では、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は出現するごとに、水素である。好ましい態様では、R1’、R2’、R3’、R4’、およびR5’は、出現するごとにメチルである。
【0217】
一官能化アジド末端PEGおよび一官能化アジド末端C~Cアルキル鎖を、公知の手順および適切な試薬、例えば本明細書に提供されるスキームに開示されるものを使用して、PEGから作製することができる。
【0218】
本明細書で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを指す。
【0219】
本明細書に記述されるアリールまたはヘテロアリール基は、1つまたは複数の環位置で、上述のような置換基で、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分で置換することができる。
【0220】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシ」という用語は、式-OHの基を指す。
【0221】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、ヒドロキシルラジカル(.OH)を指す。
【0222】
本明細書で使用される場合、「必要に応じて置換された」という文言は、非置換または置換を意味する。一般に、「置換された」という用語は、基(例えば、炭素または窒素原子)上の少なくとも1つの水素が、許容される置換基、例えば置換によって安定な化合物をもたらす置換基で置き換えられることを意味する。「置換された」という用語は、安定な化合物の形成をもたらす本明細書に記述される置換基のいずれかなど、有機化合物の全ての許容される置換基での置換を含むことができる。本開示の目的で、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/または本明細書に記述される任意の適切な置換基であってヘテロ原子の価数を満足させかつ安定な部分の形成をもたらすものを有していてもよい。
【0223】
本明細書で使用される場合、「テトラペプチド」という用語は、本明細書では-A-A-A-A-と記述され得る4個のアミノ酸残基から構成されるペプチドを指す。本開示のプロテアーゼ切断可能リンカー-ペイロードコンジュゲートの合成で用いられるテトラペプチドは、Val-Phe-Gly-Sar、Val-Cit-Gly-Sar、Val-Lys-Gly-Sar、Val-Ala-Gly-Sar、Val-Phe-Gly-Pro、Val-Cit-Gly-Pro、Val-Lys-Gly-Pro、Val-Ala-Gly-Pro、Val-Cit-Gly-任意の天然または非天然のN-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Lys-Gly-任意の天然または非天然のN-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Phe-Gly-任意の天然または非天然のN-アルキル置換アルファアミノ酸、Val-Ala-Gly-任意の天然または非天然のN-アルキル置換アルファアミノ酸、Phe-Lys-Gly-任意の天然または非天然のN-アルキル置換アルファアミノ酸、およびTrp-Lys-Gly-任意の天然または非天然のN-アルキル置換アルファアミノ酸からなる群より選択される。
【0224】
さらに、本明細書に記述される合成方法は様々な保護基を利用することが、当業者に理解されよう。本明細書で使用される場合、「保護基」という用語は、特定の官能部分、例えばO、S、またはNであって、多官能性化合物中の別の反応性部位で反応を選択的に実施できるように一時的に遮断されるものを指す。保護基は、当業者に公知の方法を使用して、化合物の合成中の適切な段階で導入され除去されてもよい。保護基は、文献に記述される有機合成の標準的な方法に従い適用される(Theodora W. Greene and Peter G. M. Wuts (2007) Protecting Groups in Organic Synthesis, 4th edition, John Wiley and Sons、保護基に関して参照により組み込まれる)。
【0225】
例示的な保護基には、限定するものではないが酸素、硫黄、窒素、および炭素保護基が含まれる。例えば、酸素保護基には、限定するものではないがメチルエーテル、置換メチルエーテル(例えば、MOM(メトキシメチルエーテル)、MTM(メチルチオメチルエーテル)、BOM(ベンジルオキシメチルエーテル)、PMBM(ピメトキシベンジルオキシメチルエーテル)、必要に応じて置換されたエチルエーテル、必要に応じて置換されたベンジルエーテル、シリルエーテル(例えば、TMS(トリメチルシリルエーテル)、TES(トリエチルシリルエーテル)、TIPS(トリイソプロピルシリルエーテル)、TBDMS(t-ブチルジメチルシリルエーテル)、トリベンジルシリルエーテル、TBDPS(t-ブチルジフェニルシリルエーテル)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、ベンゾエート(Bz)、トリフルオロアセテート、ジクロロアセテート)カーボネート、環式アセタール、およびケタールが含まれる。さらに窒素保護基には、限定するものではないがカルバメート(メチル、エチル、および置換エチルカルバメート(例えば、Troc)、アミド、環式イミド誘導体、N-アルキルおよびN-アリールアミン、イミン誘導体、およびエナミン誘導体などが含まれる。アミノ保護基には、限定するものではないがフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、カルボキシベンジル(Cbz)、アセトアミド、トリフルオロアセトアミドなどが含まれる。ある特定のその他の例示的な保護基を本明細書に詳述するが、本開示はこれら保護基に限定しようとするものではなく;むしろ様々な追加の等価な保護基が、当業者に公知の方法に従い利用され得ることが、理解されよう。
【0226】
本開示の全体を通して、ナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)は、時々、CDC(C’ドット-薬物コンジュゲート)、例えばFA-CDCと呼ばれてもよい。
【0227】
下記の実施例は、本発明の実施形態をさらに例示するために提供されるが、本発明の範囲を限定するものではない。それらは使用され得るものの典型例であるが、当業者に公知のその他の手順、方法、または技法が代わりに使用されてもよい。
【実施例0228】
本明細書に記述される本発明をより十分に理解し得るために、下記の実施例について述べる。これらの実施例は、ナノ粒子薬物コンジュゲート、使用方法、作製方法を示すのに提供され、その範囲を限定すると如何様にも解釈するものではない。
【0229】
本明細書に提供される化合物は、当業者に周知と考えられる、以下に述べる特定の合成プロトコールへの修正を使用して、容易に入手可能な出発材料から調製することができる。典型的なまたは好ましいプロセス条件(即ち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられた場合、その他のプロセス条件も、他に記述されない限り使用できることが理解されよう。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒と共に様々であり得るが、そのような条件は、慣例的な 最適化手順によって当業者が決定することができる。
【0230】
さらに、当業者に明らかにされるように、従来の保護基は、ある特定の官能基が望ましくない反応を受けないように必要と考えられる。特定の官能基に適切な保護基の選択、ならびに保護および脱保護に関する適切な条件は、当技術分野で周知である。例えば、数多くの保護基およびそれらの導入および除去は、Greene et al. Protecting Groups in Organic Synthesis, Second Edition, Wiley, New York, 1991およびそこに引用される参考文献に記載されている。
【0231】
一般的な方法
本明細書で論じる化合物を作製するのに有用な方法を、下記の実施例で述べ、ここで一般化する。当業者なら、これらの実施例を、本開示に従いリンカー-ペイロードコンジュゲート、リンカー、およびペイロード、およびそれらの薬学的に受容可能な塩を調製するよう適合できることが理解されよう。記述される反応において、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオ、またはカルボキシ基などの反応性官能基は、望む場合にはいつでも、例えば望ましくない反応を回避するように保護され得る。従来の保護基は、標準的な実施および合成技法に従い使用されてもよい。エキサテカンなどのペイロードを保持する新規なリンカーを合成するのに必要とされる材料は、商業的に得、それらの対応する類似体は、下記の実施例に開示されるように調製する。
【0232】
試薬は、商業上の供給元(Combi-Blocks/SIGMA-ALDRICH)から購入し、さらに精製することなく使用した。全ての非水性反応を、火炎乾燥したガラス容器で、アルゴンの陽圧下で実施した。無水溶媒は、商業上の供給元(RANKEM)から購入した。全てのアミノ酸、例えばCit、Val、Phe、Lys、Trp、Aspは、S配置を持つ天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施例において、テトラペプチドおよび非天然アミノ酸も使用することができる。フラッシュクロマトグラフィーを、示される溶媒系と共に230~400メッシュのシリカゲルで行った。プロトン核磁気共鳴スペクトルを、Bruker分光計で、溶媒としてDMSOを使用して400MHZで記録した。ピーク位置は、内部標準としてのテトラメチルシランから百万分率単位で低磁場に与えられる。J値は、ヘルツを単位として表される。質量分析は、エレクトロスプレー(ES)技法を使用して、(Agilent/Shimadzu)分光計で行った。HPLC分析は、Gemini C-18(1000×4.6mm;5u)を備えた(Agilent/Waters)、PDA-UV検出器で行い、試験した全ての化合物は、この方法を使用して>95%純粋であることが決定された。多くのプロテアーゼ切断可能リンカー-ペイロードコンジュゲートで見られるように、2つのピークが反応の終わりに単離された。ピーク-A(またはピーク-1)は、図示される立体化学を持つ所望の化合物である。
【0233】
本明細書に記述される手順に従い調製した化合物は、分取HPLC法により単離されてもよい。代表的なHPLC条件および方法を、以下に提示する:
【0234】
Agilent UPLC-MS;カラム:カラム-YMC Triart C18(2.1×33mm、3u)
【0235】
勾配条件:流量:1.0ml/分:カラム温度:50℃;溶媒A:水中0.01%HCOOH、および溶媒B:CHCN中0.01%HCOOH;移動相:95%[水中0.01%HCOOH]および5%[CHCN中0.01%HCOOH]、0.50分間保持、次いで3.00分で1%[水中0.01%HCOOH]および99%[CHCN中0.01%HCOOH]、この条件を4.00分まで保持し、最終的に4.10分で元の初期条件に戻り、4.50分間保持した(表1)。
表1:HPLC勾配条件。
【表1】
【0236】
(実施例1)
エキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体の合成
本開示のNDCを調製するのに適したエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体を、下記のプロトコールに従い合成することができる。エキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体は末端アジド基を含むので、それらは、クリックケミストリーを使用してアルキン部分(例えば、DBCO)で官能化されたナノ粒子に付着するのに適している。
(S)-2-アミノ-N-(4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)-6-((ジフェニル(pトリル)メチル)アミノ)ヘキサンアミド(161)の合成
【化48】

スキーム2:化合物(161)の合成。
【0237】
4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)アニリン(159)の合成: イミダゾール(5.54g、81.22mmol)を、(4-アミノフェニル)メタノール(75)(5.0g、40.61mmol)のDMF(25mL)中の溶液に0℃で添加し、その後、tert-ブチル(クロロ)ジフェニルシラン(13.39g、48.73mmol)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を水(20mL)でクエンチし、EtOAc(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮し、シリカゲル(230~400メッシュ)を使用して石油エーテル中10%のEtOAcで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)アニリン(159;6.6g)をゴム状物として得た。LCMS: m/z 362.31[(M+H)];R:2.58分;純度93.68%。
【0238】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメート(160)の合成: ジイソプロピルエチルアミン(4.18mL、24mmol)、HATU(6.08g、16mmol)、および4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)アニリン(159)(2.89g、8mmol)を、N2-(((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)-N6-(ジフェニル(p-トリル)メチル)-L-リシン(149)(5.0g、8mmol)のDMF(50mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を氷水でクエンチした。沈殿した固体を濾過し、真空乾燥して、(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメート(160;5.5g)を固体として得た。LCMS:m/z 990.37[(M+H)];R:2.84分、;純度96.79%。
【0239】
(S)-2-アミノ-N-(4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)-6-((ジフェニル(pトリル)メチル)アミノ)ヘキサンアミド(161)の合成: ピペリジン(16.5mL)を、(9H-フルオレン-9-イル)メチル(S)-(1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)カルバメート(160)(5.5g、5.68mmol)のDMF(38.5mL)中の溶液に、室温で添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLCによってモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、100%EtOAcで溶出するシリカゲル(230~400メッシュ)を使用したカラムクロマトグラフィーにより精製して、(S)-2-アミノ-N-(4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ヘキサンアミド(160;3.5g)をゴム状物として得た。LCMS:m/z 744.24[(M-H)];R:2.20分;純度90.16%。
4-((32S,35S)-1-アジド-35-(4-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ブチル)-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネート(191)の合成。
【化49】

スキーム3: 化合物(191)の合成。
【0240】
(9H-フルオレン-9-イル)メチル((S)-1-(((S)-1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(187)の合成: ジイソプロピルエチルアミン(1.54mL、8.83mmol)、HATU(2.24g、5.89mmol)、および(S)-2-アミノ-N-(4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ヘキサンアミド(161)(2.19g、2.94mmol)を、(((N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-L-バリン(1g、2.94mmol)のDMF(20mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を氷水でクエンチした。沈殿した固体を濾過し、真空乾燥して、(((9H-フルオレン-9-イル)メチル((S)-1-(((S)-1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(187;2.5g)を固体として得た。LCMS:MH 1067、保持時間2.42分。
【0241】
(S)-2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)-N-(4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ヘキサンアミド(188)の合成: ピペリジンのDMF(4.5mL)中の30%溶液を、(((9H-フルオレン-9-イル)メチル((S)-1-(((S)-1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)カルバメート(187)(1.5g、1.40mmol)のDMF(6mL)中の溶液に室温で添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、100%EtOAcで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、(S)-2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)-N-(4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ヘキサンアミド(188;1.1g)を固体として得た。
【化50】
【0242】
1-アジド-N-((S)-1-(((S)-1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(189)の合成: ジイソプロピルエチルアミン(0.49mL、2.83mmol)、HATU(719.47mg、1.89mmol)および(S)-2-((S)-2-アミノ-3-メチルブタンアミド)-N-(4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ヘキサンアミド(188)(800mg、0.94mmol)を、1-アジド-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-オイック酸(86)(484mg、0.94mmol)のDMF(8mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で6時間撹拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を水(15mL)でクエンチし、EtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮し、DCM中3%のMeOHで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、1-アジド-N-((S)-1-(((S)-1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(189;0.60g)をゴム状物として得た。
【化51】
【0243】
1-アジド-N-((S)-1-(((S)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(190)の合成: NHF(166mg、4.48mmol)を、1-アジド-N-((S)-1-(((S)-1-((4-(((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)メチル)フェニル)アミノ)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(189)(600mg、0.44mmol)のメタノール(10mL)中の溶液に室温で添加し、反応混合物を室温で6時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた残留物を水(15mL)で希釈し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSO上で乾燥し、減圧下で濃縮し、DCM中5%のMeOHで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、1-アジド-N-((S)-1-(((S)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(190;0.40g)をゴム状物として得た。
【化52】
【0244】
4-((32S,35S)-1-アジド-35-(4-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ブチル)-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネート(191)の合成: ピリジン(0.14mL、1.80mmol)および4-ニトロフェニルクロロホルメート(14)(145mg、0.72mmol)を、1-アジド-N-((S)-1-(((S)-6-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)-1-((4-(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)-1-オキソヘキサン-2-イル)アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル)-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(190)(400mg、0.36mmol)のDCM(10mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で6時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM中3%のMeOHで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、4-((32S,35S)-1-アジド-35-(4-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ブチル)-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネート(191;0.34g)をゴム状物として得た。LCMS:MH 1265、保持時間1.33分。4-((32S,35S)-35-(4-アミノブチル)-1-アジド-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバメート(202)の合成。
【化53】

スキーム4: プロテアーゼ切断可能リンカー-ペイロードコンジュゲート前駆体(202)の合成。
【0245】
4-((32S,35S)-1-アジド-35-(4-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ブチル)-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバメート(201)の合成: トリエチルアミン(0.09mL、0.62mmol)および(1R,9R)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1,2,3,9,12,15-ヘキサヒドロ-10H,13H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13-ジオンメタンスルホネート(エキサテカンメシレート;16;131mg、0.25mmol)を、4-((32S,35S)-1-アジド-35-(4-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ブチル)-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル(4-ニトロフェニル)カーボネート(191;311mg、0.25mmol)のNMP(2.5mL)中の溶液に0℃で添加し、混合物を室温で8時間撹拌した。反応の進行をLCMSによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を水(15mL)でクエンチし、クロロホルム中10%のメタノール(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム(NaSO)上で乾燥し、減圧下で濃縮した。ジエチルエーテルを粗製材料に添加し、得られた沈殿物を濾過し、DCM中5%のMeOHで溶出するカラムクロマトグラフィー(Combi-Flash(登録商標))を使用して精製して、4-((32S,35S)-1-アジド-35-(4-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ブチル)-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバメート(201)を固体(0.3g)として得た。LCMS:MH 1561、保持時間2.18分。
【0246】
4-((32S,35S)-35-(4-アミノブチル)-1-アジド-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバメート(202)の合成: トリフルオロ酢酸(TFA)のDCM中の1%溶液を、4-((32S,35S)-1-アジド-35-(4-((ジフェニル(p-トリル)メチル)アミノ)ブチル)-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバメート(201;300mg、0.19mmol)のDCM(5mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行をLCMSによりモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物をジエチルエーテルで粉砕し、RP分取HPLCにより精製して、4-((32S,35S)-35-(4-アミノブチル)-1-アジド-32-イソプロピル-30,33-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザヘキサトリアコンタン-36-アミド)ベンジル((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)カルバメート(202)(70mg)を固体として得た。
【化54-1】

【化54-2】
【0247】
(実施例2)
葉酸コンジュゲート前駆体の合成
本明細書に開示される葉酸受容体標的化NDCを調製するのに適した葉酸コンジュゲート前駆体を、下記の合成プロトコールの1つに従い調製することができる。葉酸コンジュゲート前駆体は末端アジド基を含むので、クリックケミストリーを使用してアルキン部分(例えば、DBCO)で官能化されたナノ粒子に付着するのに適している。
(S)-16-(4-(((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)アミノ)ベンズアミド)-1-アジド-13-オキソ-3,6,9-トリオキサ-12-アザヘプタデカン-17-オイック酸(606)の合成
【化55】
【0248】
化合物600の調製: 化合物599(160g、512mmol)をTFAA(800mL)に25℃で溶解し、窒素雰囲気下、暗所で5時間撹拌した。次いで溶媒を50℃で、真空中で除去して、粗製生成物を得た。粗製生成物をMTBE(750mL)で60分間粉砕し、次いで濾過して化合物600(203g、粗製)を固体として得、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【化56】
【0249】
化合物602の調製: TBTU(238g、740mmol)およびDIPEA(95.7g、740mmol)を、化合物601(225g、529mmol)のDMF(2.25L)中の溶液に添加した。20℃で30分間撹拌した後、2-(2-(2-(2-アジドエトキシ)エトキシ)エトキシ)エタン-1-アミン(試薬A;121g、555mmol)を添加し、混合物を50℃で12時間撹拌した。2種の反応混合物を合わせ、後処理し、残留物をHO(3L)で希釈し、酢酸エチル(1500mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(800mL×3)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、カラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル/酢酸エチル=100/1から1/1)により精製することにより、化合物602(590g)を油状物として得た。
【化57】
【0250】
化合物603の調製: N-エチルエタンアミン(1.27kg、17.4mol)を、化合物602(435g、695mmol)のDCM(4.35L)中の溶液に添加し、混合物を25℃で3時間撹拌した。次いで溶媒を室温で真空除去し、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=100/1から1/1)により精製して、化合物603(245g)を油状物として得た。
【化58】

化合物604の調製: TBTU(119g、372mmol)およびDIEA(160g、1.24mol)を、化合物600(101g、248mmol)のDMF(900mL)中の溶液に添加し、混合物を30分間撹拌した。次いでDMF(100mL)中の化合物603(100g、248mmol)を添加した。混合物を25℃で12時間撹拌した。2種の反応混合物を合わせ、濃縮し、残留物をHO(2.5L)で希釈し、酢酸エチル(1L×5)で抽出した。合わせた有機層をブライン(600mL×3)で洗浄し、NaSO上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、化合物4(420g、粗製)を固体として得、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0251】
化合物605の調製: KCO(585g、4.23mol)を、化合物604(420g、529mmol)のTHF(4.2mL)およびHO(500mL)中の溶液に添加し、混合物を60℃で0.5時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮してTHFを除去し、残留物をHO(500mL)で希釈し、HCl(M=1)でpH3に調節し、濾過し、減圧下で濃縮して、化合物605(260g、粗製)を固体として得、これをさらに精製することなく直接使用した。
【0252】
化合物606の調製: トリフルオロ酢酸(2.12kg、18.6mol)を一度に、CHCl(2.6L)中の化合物605(260g、373mmol)の混合物に20℃で、窒素下で添加し、混合物を20℃で5時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、HPLC(カラム:Agela DuraShell C18 250×80mm×10um;移動相:[水(10mM NHHCO)-MeOH];B%:5%~40%、20分)により精製して化合物606(52.5g、81.82mmol、収率21.96%)を固体として得た。(M+H)642.80;IR:2107(N結合)。
(S)-38-(4-(((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)アミノ)ベンズアミド)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オイック酸(472)の合成
【化59】

スキーム5: 葉酸コンジュゲート前駆体(472)の合成。
【0253】
tert-ブチル(1-アジド-30-オキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31-アザトリトリアコンタン-33-イル)カルバメート(465)の合成: トリエチルアミン(0.36mL、2.64mmol)、EDC(218mg、1.14mmol)、HOBT(154mg、1.14mmol)およびtert-ブチル(2-アミノエチル)カルバメート(464)(124mg、0.881mmol)を、1-アジド-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-オイック酸(86;450mg、0.881mmol)のDCM(20mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。出発材料の消費後、反応混合物をDCMおよび水で抽出し、有機層をNaSO上で乾燥し、真空蒸発させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、真空下で乾燥して、tert-ブチル(1-アジド-30-オキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31-アザトリトリアコンタン-33-イル)カルバメート(465;0.45g)を液体として得た。
【化60】
【0254】
N-(2-アミノエチル)-1-アジド-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(466)の合成: tert-ブチル(1-アジド-30-オキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31-アザトリトリアコンタン-33-イル)カルバメート(465)(350mg、0.462mmol)のDCM中の溶液を0℃に冷却し、そこにTFAを滴下添加し、次いで反応混合物をRTで16時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。出発材料の消費後、反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(3回)で共沸させて、粗製物(466)を得、DCM中5%のMeOHで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、N-(2-アミノエチル)-1-アジド-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(466;0.25g)を液体として得た。
【化61】
【0255】
tert-ブチル(S)-38-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(467)の合成: ジイソプロピルエチルアミン(0.174mL、1.0mmol)、PyBOP(416mg、0.8mmol)、およびN-(2-アミノエチル)-1-アジド-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサトリアコンタン-30-アミド(466)(331mg、0.6mmol)を、(S)-4-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-5-(tert-ブトキシ)-5-オキソペンタン酸(170mg、0.4mmol)のDMF(5mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。出発材料の消費後、反応混合物を低温で真空蒸発させ、DCM中5%のMeOHで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、tert-ブチル(S)-38-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(467;0.35g)を液体として得た。MH 962、保持時間1.81分。
【0256】
tert-ブチル(S)-38-アミノ-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(468)の合成: ピペリジンのDMF(1ml)中の30%溶液を、tert-ブチル(S)-38-((((9H-フルオレン-9-イル)メトキシ)カルボニル)アミノ)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(467;350mg、3.65mmol)のDMF(5mL)中の溶液に室温で添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLCによってモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮して、tert-ブチル(S)-38-アミノ-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(468;250mg)を得、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。MH 739、保持時間1.50分。
【0257】
tert-ブチル(S)-38-(4-(N-((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ベンズアミド)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(470)の合成: ジイソプロピルエチルアミン(0.107mL、0.613mmol)、PyBOP(254mg、0.49mmol)およびtert-ブチル(S)-38-アミノ-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(468)(271mg、0.368mmol)を、4-(N-((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド)安息香酸(469;100mg、0.245mmol)のDMF(5mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCによってモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を低温で真空濃縮し、次いでDCM中10%のMeOHで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、tert-ブチル(S)-38-(4-(N-((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ベンズアミド)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(470;180mg)を固体として得た。MH 1129、保持時間2.61分。
【0258】
(S)-38-(4-(N-((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ベンズアミド)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オイック酸(471)の合成: トリフルオロ酢酸(0.123mL、1.59mmol)を、tert-ブチル(S)-38-(4-(N-((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ベンズアミド)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オエート(470)(180mg、0.16mmol)のDCM中の溶液に室温で添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCによってモニタリングした。出発材料の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、DCM(3回)で共沸させて、粗製生成物(471;100mg)を得、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。MH 1073、保持時間2.34分。
【0259】
(S)-38-(4-(((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)アミノ)ベンズアミド)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オイック酸(472)の合成: 水性NH(DMFに溶解)(0.01mL、0.71mmol)を、(S)-38-(4-(N-((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ベンズアミド)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オイック酸(471;80mg、0.071mmol)のDMF(3mL)中の溶液に0℃で添加し、反応混合物を室温で6時間撹拌した。出発材料の完了後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物をRP分取HPLCにより精製して、(S)-38-(4-(((2-アミノ-4-オキソ-3,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル)アミノ)ベンズアミド)-1-アジド-30,35-ジオキソ-3,6,9,12,15,18,21,24,27-ノナオキサ-31,34-ジアザノナトリアコンタン-39-オイック酸(472;15mg)を固体として得た。
【化62】
【0260】
LCMS法:カラム-YMC TRIART C18(33×2.1mm、3u);(移動相:95%[0.1%HCOOH、水中]および5%[0.1%HCOOH、CHCN中]を0.50分間保持、次いで3.0分で1%[0.1%HCOOH、水中]および99%[0.1%HCOOH、CHCN中]にし、この組成を最長4.00分間保持し、最終的に4.10分で初期条件に戻し、4.50分間保持)流量-1.0ml/分。
【0261】
(実施例3)
ナノ粒子薬物コンジュゲート(NDC)の合成
ナノ粒子の調製
水性合成法を使用して、本開示の超小型ナノ粒子を調製し官能化することができる。例えば、WO 2016/179260 A1およびWO 2018/213851 A1(その内容の全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に概説される手順に基づく方法が、使用され得る。
【0262】
例えば、限定するものではないがCy5などの蛍光化合物を、マレイミド基で官能化して、正味の正電荷を有するマレイミド官能化蛍光化合物を提供することができる。これを、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)などのチオール-シランとコンジュゲートさせて、Cy5-シランなどのシラン官能化蛍光化合物を生成することができる。コンジュゲーションは、不活性雰囲気下で一晩(16~24時間)、室温(18~25℃)で、グローブボックス内のジメチルスルホキシド(DMSO)中で行ってもよい。
【0263】
翌日、合成の次のステップを、ガラスフラスコ、容器、または反応器などの適切なチャンバー内で行うことができ、pHが約8.5~10.5の脱イオン水の撹拌を伴い得、これはpH7.5~8.5の水酸化アンモニウムの水溶液を使用して達成することができる。次いでテトラアルキルオルトシリケートなどのシリカ前駆体、例えばテトラメチルオルトシリケート(TMOS)を、室温で激しく撹拌しながら反応チャンバーに添加し、その後、直ぐにシラン官能化蛍光化合物、例えば、Cy5-シランを添加することができる。反応を室温で一晩(1~48時間)撹拌したままにして、蛍光化合物、例えばCy5色素を被包するシリカコアを提供することができる。
【0264】
翌日、PEG-シランを、反応中に撹拌しながら室温で添加して、シリカコアをPEG分子でコーティングすることができ、反応をそのまま1~48時間撹拌させることができる。このステップの後、75~85℃で1~48時間加熱してもよい。次いで反応を室温に冷却し、精製することができる(例えば、反応の副生成物として形成された凝集体、およびいくらか存在する場合には細菌を除去するために、滅菌濾過を含む)。次いでナノ粒子のさらなる官能化を行ってもよい。
【0265】
ナノ粒子の官能化
本明細書に開示される方法を使用して調製されたナノ粒子を、例えば図2または3であるいは下記のスキーム6で概説される方法を使用して、さらに官能化してもよい。例えば、(3-シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン(「ジエン-シラン」)は、シクロペンタジエン基でナノ粒子(例えば、C’ドット)を官能化するのに使用することができ、次いでDBCO-PEG-マレイミドをジエン官能化ナノ粒子と反応させて、DBCO-官能化ナノ粒子を提供することができる。
【化63】

スキーム6. DBCOでナノ粒子を官能化する例示的な方法。
【0266】
例えば、Cy5-C’ドット(本明細書に記述される方法を使用して調製され得る)を脱イオン水で希釈して、撹拌棒を備えた丸底フラスコ内で所望の濃度、典型的には15から30μMの間にした。(3-シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン(シクロペンタジエン)を最初にDMSO中で100×に希釈し、次いで撹拌しながら反応に添加して、粒子のシクロペンタジエンに対する所望のモル比に到達させた。一晩反応させた後、10×PBSを反応に添加して1×PBSの最終濃度を達成した。次に、DBCO-マレイミド前駆体(例えば、DBCO-PEG4-マレイミド)をDMSO中に溶解し、反応に添加して、粒子のDBCOに対する所望のモル比に到達させた。約30分から1時間混合した後、一晩撹拌しながら反応混合物を80℃に加熱した。次いで反応溶液を濃縮し、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して精製して、ジエン系DBCO-C’ドットを得た。
【0267】
精製は、サイズ分離の原理に基づき行ってもよい。凝集体と、PEG化ナノ粒子の場合とは異なる分子量を有する遊離小分子とを、ゲル透過クロマトグラフィーカラム(GPC)またはタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システムを使用して分離した。2枚の異なる膜、300kDaおよび50kDaのカットオフサイズを用いて、それぞれ大きい凝集体および遊離小分子の除去を行った。GPCおよびTFFの両方のシステムを使用して、水性媒体を水、食塩水などに移した。脱イオン水中の精製されたDBCO-C’ドットは、再び滅菌濾過することができ、品質管理(QC)ステップを行い、その後、冷蔵庫内で2~8℃に保存することができる。
【0268】
理論に拘束されることを望まないが、シクロペンタジエン基の中性電荷は、他のタイプの前駆体により加速され得る(例えば、ジエン-シランの代わりにアミン-シランを使用するとき、第一級アミン基は加水分解を引き起こす可能性がある)連結中のアミド結合の加水分解を防ぐと考えられる。このように、この方法を使用して生成されたNDCは、非常に安定である(例えば、図33A~33Bの比較参照)。さらに、ジエン官能化ナノ粒子(例えば、シクロペンタジエン官能化ナノ粒子)をNDCSの調製で使用すると、反応中のシランの自己縮合が大幅に減じられ、その他の方法(例えば、アミン-シランを使用する)と比較して官能化ナノ粒子の安定性、サイズ均質性、反応収率、および純度が改善される。
【0269】
標的化NDCの調製
ナノ粒子(C’ドットとも呼ぶ)、標的化リガンド(葉酸)、およびリンカー-薬物コンジュゲートを含む本開示のNDCを、図3に提示されるフローチャートおよび以下のスキーム7で概説されるように調製することができる。官能化ステップで使用される標的化リガンド前駆体の量を調節することにより、ナノ粒子当たり所望の数の標的化リガンドを達成することができる。例えば、本開示のナノ粒子は、約10から約20個の葉酸部分、例えば約10、約11、約12、約13、約14、または約15個の葉酸部分を含有するように官能化され得る。同様に、官能化ステップで使用されるペイロード-リンカーコンジュゲート前駆体の量を調節することにより、ナノ粒子当たり所望の数のペイロード部分を達成することができる。例えば、本開示のナノ粒子は、約10から約40個のエキサテカン-リンカー部分、例えば約20、約21、約22、約23、約24、または約25個のエキサテカン部分を含有するように、官能化されてもよい。
【化64】

スキーム7. 葉酸部分およびエキサテカン-リンカー部分でナノ粒子を官能化する例示的な方法。
【0270】
葉酸コンジュゲートナノ粒子の合成: DBCO-C’ドット(図3ではC’ドットと呼ぶ)を脱イオン水で希釈して、15~45μMの濃度にした。DBCO-C’ドット溶液の温度が約18~25℃になった後、葉酸受容体(FR)-標的化リガンド前駆体、例えばアジドで官能化された葉酸(FA)(実施例2で調製された化合物606)をDMSO(0.021M)に溶解し、次いで室温で撹拌しながら反応に添加し、表面のDBCO基を介してFAで官能化されたC’ドットを提供する。DBCO-C’ドットとFAとの間の反応比を、1:5から1:30に保ち、溶液を18~25℃の温度で16~24時間撹拌した。FR標的化リガンドの添加の後、滅菌濾過、精製、およびQC試験を行って、FA-C’ドット(図3ではC’ドット中間体と呼ばれる)を得、2~8℃の冷蔵庫に保存することができる。FA-C’ドットは、例えばアジド官能基を持つ分子とのさらなるクリック反応で入手可能なDBCO基の一部分を含む。葉酸塩標的化リガンド(例えば、葉酸)は、例えばペイロード-リンカーコンジュゲートとのコンジュゲーション後、ナノ粒子にコンジュゲートできることが理解されよう。
【0271】
FR標的化リガンドコンジュゲーション反応の体積は、5mLから30Lに及ぶことができ、DBCO-C’ドットの濃度は15から45μMに及ぶことができる。下記のパラメーターは、600mLの典型的な反応体積および25μMのDBCO-C’ドット濃度に関して与えられる。DBCO-C’ドットのFR標的化リガンドに対する比は、粒子当たり所望の数のFR標的化リガンドが得られるように正確に制御し、典型的には、1:5から1:30に及ぶことができる。1:12の典型的な比で、葉酸塩-PEG-アジドをDMSOに溶解して0.021Mの濃度にし、葉酸塩-PEG-アジド/DMSO溶液8.571mLを反応に添加した。室温で一晩撹拌した後、反応混合物を、FA-C’ドットが得られるように精製し、またはFA-C’ドットの純度が95%以上である場合には次のコンジュゲーションステップに直接続くようにした。FR標的化リガンドの変換率は、典型的には95%よりも高い。
【0272】
各FA-C’ドット上に付着される葉酸基の数は、UV-Visによって特徴付けられ、代表的なUV-Vis吸光度スペクトルを図4に示す。各C’ドット上のDBCO基の数は、C’ドットおよびDBCO基の吸光係数を使用して計算することができる。
【0273】
エキサテカンを含むFA標的化NDC(またはFA-CDC)の合成: FA-C’ドットを脱イオン水で希釈して、15~45μMの濃度にした。FA-C’ドット溶液温度が18~25℃に達した後、DMSO(0.04M)に溶解したエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体(例えば、実施例1に記載される化合物202)カテプシンを、室温で撹拌しながら反応に添加した。このステップは、表面の利用可能なDBCO基を介してリンカー-薬物コンジュゲートでFA-C’ドットを官能化した。FA-C’ドットとリンカー-薬物コンジュゲートとの間の反応比を、約1:10~1:50に保持し、溶液を16~24時間撹拌した。リンカー-薬物コンジュゲートの添加の後、滅菌濾過および精製を行った。脱イオン水中のFA-CDC(NDCとも呼ぶ)を、QC試験し、冷蔵庫で2~8℃で保存した。
【0274】
切断可能エキサテカンコンジュゲーション反応の体積は、5mLから30Lに及ぶことができ、FA-C’ドットの濃度は15から45μMに及ぶことができる。下記のパラメーターは、典型的な反応体積600mLおよびFA-C’ドット濃度25μMに関して与えられる。FA-C’ドットの切断可能エキサテカンに対する比を精密に制御して、粒子当たり所望の数の切断可能エキサテカンを得、典型的には1:10から1:60に及ぶことができる。1:40の典型的な比では、切断可能エキサテカンをDMSOに溶解して0.04Mの濃度にし、切断可能エキサテカン/DMSO溶液15mLを反応に添加した。室温で一晩撹拌後、反応混合物を精製してFA-CDCを得た。
【0275】
各NDC、例えば葉酸(FA)官能化薬物-リンカーコンジュゲートC’ドット(FA-CDC)上に付着されたエキサテカンペイロードの数は、UV-Visによって特徴付けられてもよい。代表的なUV-Vis吸光度スペクトルを図5に示す。各C’ドット上のエキサテカンペイロードの数は、同じ波長での葉酸の吸収を差し引いた後に360nmでのC’ドットおよびエキサテカンの吸光係数を使用して、計算することができる。
【0276】
上述のように、ナノ粒子は、葉酸受容体標的化リガンドおよびペイロード-リンカーコンジュゲートで、任意の順序で官能化されてもよい(例えば、エキサテカンでナノ粒子を官能化するための上記概説されたプロトコールは、葉酸をコンジュゲートするためのプロトコールの前に実施されてもよい)。
【0277】
粒度決定: NDCの平均直径は、任意の適切な方法、例えば限定するものではないが蛍光相関分光法(FCS)(図6)およりゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(図7)によって測定することができる。
【0278】
FCSは、対物レンズの焦点を経た粒子拡散からもたらされた蛍光変動を検出する。次いで粒子拡散情報を、シグナル強度変動の自己相関から抽出し、そこからは単一モードFCS相関関数を使用して自己相関曲線を当て嵌めることにより平均流体力学的粒度を得ることができるものである。NDCの平均流体力学直径は、約6nmから約7nm(図6)であった。
【0279】
GPCは、分子ふるいクロマトグラフィーの1つのタイプであり、分離メカニズムは分析物(ここでは、NDC)のサイズに基づく。NDCの溶出時間を、様々な分子量を持つ一連のタンパク質と比較する。結果は、NDCの溶出時間が、158kDaから44kDaの間の分子量を持つタンパク質標準の場合と同等であり、約6.4nmの粒度平均流体力学的サイズと一致することを示唆する(図7)。
【0280】
純度分析: NDCの純度を、逆相HPLC(RP-HPLC)を使用して分析した。RP-HPLCを、市販のWaters Xbridge Peptide BEH C18カラムを使用するフォトダイオードアレイ検出器に連結する。RP-HPLCは、種々の極性を持つ分子を分離し、その超小型の10nmよりも小さい粒度のためNDCの分析法として適している。RP-HPLCを使用して、ナノ粒子を凝集体およびその他の化学的部分、例えばナノ粒子および分解生成物に非共有結合により関連付けられた標的化リガンドから十分に分離する。種々の化学的部分を、それらの溶出時間および固有のUV/Visスペクトルに基づき特定する。フォトダイオードアレイ検出器は、210から800nmのUV-Visスペクトルを収集し、問題の不純物は330nmで測定される。図8のNDCに関して示される代表的なクロマトグラムは、本開示のNDCの純度が99.0%よりも高いことを示唆する。
【0281】
(実施例4)
薬物放出アッセイ
本開示のNDCは、リンカー-ペイロードコンジュゲート、例えばプロテアーゼ切断可能リンカー、例えばカテプシン-B(Cat-B)切断可能リンカーを含む。プロテアーゼとの接触の際、NDCはペイロード(即ち、エキサテカン)を放出し得る。ナノ粒子上のリンカー-薬物コンジュゲートの薬物放出プロファイルおよび安定性を、下記のプロトコールに従い試験した。
【0282】
NDCを、実施例3に記述される方法を使用して調製し、次いで放出動態試験に関する所望の放出条件下でインキュベートした。アッセイで試験したNDCを、以下の表2に提示する。
表2:薬物放出アッセイで使用された例示的なNDC。
【表2-1】

【表2-2】

粒子当たりのFAリガンドの数は、12から22の間であり;粒子当たりのリンカー-薬物コンジュゲートの数は、17から25の間である。各ペイロード-リンカーは、DBCO部分を介してNDCにコンジュゲートされる(実施例3で概説されたプロトコールに従い調製される)。
【0283】
エキサテカンは、約360nmの波長での吸収最大を示し(図9)、このシグナルは、放出および安定性研究に関して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)でペイロードを追跡するのに使用することができる。放出された薬物 対 放出されていない薬物の量は、曲線下面積(AUC)を分析することにより、逆相HPLCを使用して測定した(図10Aおよび図10B)。
【0284】
一般的方法: 4.6mm×50mmの寸法、粒度5μm、および孔径300ÅのWaters Xbridge Peptide BEH C18カラムを使用した(部品番号186003622)。アセトニトリル(VWR HiPerSolv Chromanorm、UHPLCグレード)を、さらなる調製なしに受け取ったままの状態で使用し、脱イオン水中0.01%のトリフルオロ酢酸は、トリフルオロ酢酸(HPLCグレード、Millipore-Sigma)1mLを、IQ7000Millipore脱イオン水システムを使用して発生させた999mLの18.2MΩ・cmの脱イオン水中に添加することによって調製し、これを0.2μmのフィルターに通した後に、使用した。システムに使用されるシール洗浄は、90%の18.2MΩ・cm脱イオン水と10%のメタノール(HPLCグレード、VWR)とから構成された。注射針を、25体積%の18.2MΩ・cm脱イオン水、25体積%のアセトニトリル、25体積%のメタノール、および25体積%の2-プロパノールの混合物を使用して洗浄した。試料は、それぞれ、0.25から2μMの濃度範囲に調製し、注入体積は、60μLから10μLに及ぶ。より高い試料濃度を、検出器のシグナルが低い場合に使用することができる。全ての注入に使用されるバイアルは、プレスリットPTFE隔壁を有するスクリューキャップを持つ新鮮なWaters Total Recoveryバイアル(部品番号186000385C)である。
【0285】
任意の試料注入が開始される前に、PDAランプを点け、少なくとも30分間温めた。システムおよびカラムを、PDAランプが温まった後、95%の、脱イオン水中0.01%TFA、5%のアセトニトリルで少なくとも10分間、1.0mL/分の流量で平衡化した。18.2MΩ・cmの脱イオン水のみ含有する注入体積10μLの2回のブランク注入を、分析用の任意の試料の注入前に行った。使用した勾配は、95%の、脱イオン水中0.01%TFA、および5%のアセトニトリルで開始し、15%の、脱イオン水中0.01%TFA、85%のアセトニトリルまで、8分間にわたり直線状に変化させた。アセトニトリルの組成は、さらに1分にわたり95%まで増大させ、95%でさらに2分間保持して、任意の強力に保持された化合物が溶出されるのを確実にした。次いで溶媒の組成を、さらに1分間にわたりその勾配で元の出発時の組成に変化させて戻し、3分間平衡化させ、その後、別の注入を開始した。試料注入の間に、ブランク注入を実行して、持ち越しが起こらないことを確実にした。
【0286】
典型的なカテプシンB(Cat-B)プロテアーゼ切断研究では、2μL、0.33μg/μLのCat-B(sigma Aldrich)に最初に300μLの活性化緩衝液(25mM MES、5mM DTT、pH5.0)を添加し、2.2μg/mLのCat-Bを形成した。混合物を、使用前に室温で15分間保持した。活性化後、2μMの薬物-ナノ粒子コンジュゲート、100μLを、活性化Cat-B 100μLと混合した。次いで混合物を37℃に移した。選択されたインキュベーション後の時点(例えば、2、4、24時間)での切断動態をモニタリングするために、10μLの混合物を試料採取し、HPLC(TFA/アセトニトリル)に注入した。切断データの分析では、Empower 3 ApexTrack積分を使用して、全ての関連ある成分に関してピーク面積を決定した。
【0287】
カテプシン-Bとのインキュベーション後の種々の時点での3つの代表的なNDC(NDC B、NDC C、およびNDC D)のRP-HPLCクロマトグラフを、それぞれ図11A~11Cに示す。ペイロードの半分が各NDCから放出されるのにかかる時間、即ち、T1/2は、特定の実験条件下、当て嵌めにより分析され、それぞれ図12A~12Cに示される。図12Aは、NDC Bに関してT1/2が2.9時間であることを示す。図12Bは、NDC Cに関してT1/2が2.6時間であることを示す。図12Cは、NDC Dに関してT1/2が1.4時間であることを示す。
【0288】
安定性試験: 非切断条件下でのリンカー-薬物コンジュゲートの薬物放出プロファイルおよび安定性を評価するため、例示的なNDCを、リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液または動物血清中で、37℃でインキュベートした。NDCは、実施例1からのエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3に従い調製した)。
【0289】
PBS緩衝液中の典型的な安定性試験では、600μLのPBS混合物(薬物-ナノ粒子コンジュゲート濃度が2μMに保持され、一方、PBSの体積パーセンテージは50%として保持された)を調製し、37℃で保持した。ナノ粒子に付着されたリンカー-薬物コンジュゲートの安定性をモニタリングするために、選択されたインキュベーション後の時点(例えば、4、24、48、および72時間)で、10μLの混合物を試料採取し、HPLC(TFA/アセトニトリル)に注入した。切断データの分析では、Empower 3 ApexTrack積分を使用して、全ての関連ある成分に関するピーク面積を決定した。
【0290】
様々な種(例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、およびヒト)からの血漿中の典型的な安定性試験では、600μLの血漿混合物(薬物-ナノ粒子コンジュゲート濃度を2μMで保持し、一方、血漿の体積パーセンテージは62.5%として保持した)を調製し、37℃で保持した。リンカー-薬物コンジュゲートの安定性をモニタリングするために、選択されたインキュベーション後の時点(例えば、4、24、48、および72時間)で、80μLの混合物を最初に80μLの冷アセトニトリルと混合し、次いで10,000rpmでの30分間の遠心分離を行った。タンパク質の除去後、上澄み60μLを慎重に試料採取し、HPLCに注入した。カテプシン-B-切断可能NDCでは、TFA/アセトニトリルを使用した。安定性データの分析では、Empower 3 ApexTrack積分を使用して全ての関連ある成分のピーク面積を決定した。
【0291】
NDCのリンカー-ペイロードコンジュゲート(実施例1からのエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3で調製された)は安定であるが、それはエキサテカンの5%以下が24時間後に非切断条件下で、即ちPBS、ヒト血清、またはマウス血清中で維持したとき、リンカー薬物コンジュゲートから放出されたからである。
【0292】
(実施例5)
in vitroフローサイトメトリー細胞結合研究
本明細書に開示されるNDCの細胞結合活性を、下記のプロトコールに従い試験した。使用されたNDCは、実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3に従い調製した。ナノ粒子当たりの葉酸の量、およびナノ粒子当たりのエキサテカンの量は、実施例3で概説したプロトコールに従い調節することができた。
【0293】
細胞および細胞培養物: ヒトKB細胞系、SKOV-3細胞、およびTOV-112細胞系を、ATCCから購入した。I-GROV1、ヒト卵巣癌細胞系を、EMD Milliporeから購入した。細胞を、他に指定しない限り、葉酸不含RPMI 1640培地/10% FBS、および1%のペニシリン/ストレプトマイシン中で維持した。がん細胞を葉酸不含培地(RPMI 1640、ThermoFisher、GIBCO)中で、研究前に少なくとも1週間培養した。細胞結合研究は、4℃で60分間(n=3)、実施例3で調製された(濃度:1nM)FA-CDCと共に冷PBS(1%のBSAを含む)中で5×10細胞(合計で500uL、100万/mL)をインキュベートすることによって行った。その後、細胞懸濁物を生存度キット(LIVE/DEAD(商標)Fixable Violet Dead Cell Stain Kit、Thermo Fisher)で10~15分間染色した。次いで細胞を遠心分離し(2000rpm、5分)、冷PBS(1%のBSAを含む)を使用して洗浄し(2~3回)、その後、PBS(1%のBSAを含む)中に再懸濁した。三連の試料をLSRFortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)で分析した(Cy5チャネル、633nm/647nm、生/死細胞染料、405nm)。結果を、FlowJo and Prism 7ソフトウェア(GraphPad)を使用して処理した。
【0294】
競合結合研究(図13)を、実施例3のNDCを使用して行った。NDCの能動的な標的化は、1mMの遊離葉酸の存在と共にインキュベートすることによって完全に遮断することができる。
【0295】
競合結合研究は、遊離葉酸と比較したときにNDCの結合能力の>40倍の増強を示し、それぞれの超小型C’ドット上で複数の葉酸リガンドをコンジュゲートしたときの多価効果の存在を実証している(図13)。
【0296】
これらの結果は、多価効果を使用して標的化能力を増強させるため、ナノ粒子(C’ドット)の表面の多数の小さい腫瘍指向性リガンドをコンジュゲートさせる利点を実証する。葉酸受容体の標的化は、1mMの遊離葉酸の存在と共にインキュベートするなど、遊離葉酸の競合結合によって遮断することができる。
【0297】
フローサイトメトリーは、KB細胞系において様々な葉酸リガンド密度を有する2種のNDC製剤の同等の葉酸受容体標的化効力を示す。この研究でNDCを調製するのに使用される、リンカー-エキサテカンコンジュゲート前駆体は、実施例1に記載される(化合物202)。遮断基は、1mMの遊離葉酸を有する(図14)。
【0298】
結果は、葉酸リガンド密度がゼロから12に増大したとき(即ち、ナノ粒子当たり12個の葉酸分子)、葉酸受容体アルファの能動的な標的化において劇的な増大(>300倍のMFI)を実証し、一方、その密度を、ナノ粒子当たり25個の葉酸分子へさらに増大させても差はほとんど観察されなかった。
【0299】
フローサイトメトリーは、粒子当たり様々な薬物(DPR)(即ち、ナノ粒子当たりのエキサテカン分子の数)を持つKB細胞系における、3つのNDCの同等の葉酸受容体標的化効力を示す。遮断基は、1mMの遊離葉酸での受容体の遮断に関わった。ナノ粒子当たりのエキサテカンの種々の比を持つNDCを、実施例1に記載される化合物202を使用して調製し、研究の結果を図15に提示する。全てのFA-CDCは、12から22個の葉酸部分を含む。高い薬物-粒子の比(DPR)を含むFA-CDCは、35から50個の間のエキサテカン-リンカーコンジュゲート基を含む。中程度のDPRを含むFA-CDCは、17から25個の間のエキサテカン-リンカーコンジュゲート基を含む。低いDPRを含むFA-CDCは、5から10個の間のエキサテカン-リンカーコンジュゲート基を有する。
【0300】
これらの結果は、ほとんど変化しない3つのNDCのFCSサイジング変化と共に、本明細書に開示されるNDCの堅牢な表面化学および維持された葉酸受容体標的化能力を実証し、これは意外にも、ペイロードの負荷能力を変えることによって乱されず、その他の薬物送達プラットフォームに勝る本明細書に開示されるNDCの著しい利点を実証する。
【0301】
ヒト血漿中でNDCを予備インキュベートすることは、葉酸受容体標的化能力に悪影響を与えなかった。この研究は、タンパク質コロナの形成など、NDCに対するヒト血漿の可能性のある悪影響を試験するために設計された。タンパク質コロナの形成、およびその薬物送達システムの設計された能動的な標的化能力に対する悪影響は、文献において十分実証されてきた。このフローサイトメトリー研究の結果を図16に示し、この図は、24時間にわたり、様々な量のヒト血漿を持つ予備インキュベーション後の、1nMでNDCのほぼ変化のない葉酸受容体標的化効力を示している。NDCは、実施例1のエキサテカン-ペイロードコンジュゲート前駆体を使用して(化合物202)、実施例3の方法に従い調製した。遮断基は、1mMの遊離葉酸による遮断に関わった。この研究は、NDC上のタンパク質コロナ(存在する場合)の形成が、NDCのin vitro標的化能力にほとんど悪影響を及ぼさないことを明らかに実証した。
【0302】
(実施例6)
in vitro細胞生存率アッセイ:
本明細書に開示されるNDCのin vitro細胞毒性を、がん細胞で試験した。がん細胞を、葉酸不含培地(RPMI1640、ThermoFisher、GIBCO)中で少なくとも1週間、研究前に培養した。細胞を、不透明な96ウェルプレートに、ウェル当たり3×10細胞の密度(合計で90mL)で播き、一晩付着させた。翌日、細胞をNDC(実施例3に従い調製した)で、0~50nMの濃度範囲(0、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、50nM)で、10×ストックFA-CDC溶液10mLを添加することによって処置した。
【0303】
細胞を、事前に定められた曝露時間にわたり処置した(研究設計に応じて、例えば4~6時間または7日間)。短い曝露時間での生存率研究の場合、各ウェル中のがん細胞を、100mLのPBSで洗浄し、100mLの細胞培地でリフレッシュした。洗浄後、生存率アッセイ前の7日間にわたりプレートを37℃のインキュベーターに戻した。7日間の曝露時間の生存率研究の場合、追加の洗浄ステップは行わなかった。7日後、細胞生存率を、製造業者の指示に従って、CellTiter-Glo2.0アッセイ(Promega)を使用して評価した。生存率および増殖の両方に関するデータを、Prism7ソフトウェア(GraphPad)を使用してプロットした。葉酸標的化リガンドおよび薬物リンカーの類似の表面密度を持つ6つのFA-CDCの代表的な細胞生存率の結果を、表3に提示する。
表3.葉酸標的化リガンドおよびリンカー-薬物コンジュゲートの類似の表面密度を持つNDCの代表的な細胞生存率結果。
【表3-1】

【表3-2】

粒子当たりのFAリガンドの数は、12から22の間であり;粒子当たりのリンカー-薬物コンジュゲートの数は、17から25の間である。各ペイロード-リンカーは、DBCO部分を介してNDCにコンジュゲートされる(実施例3で概説されたプロトコールに従い調製された)。
【0304】
(実施例7)
がん細胞内のNDCの二次元(2D)共焦点撮像
2D共焦点撮像研究は、2つの例示的なNDCを使用して、様々なレベルの葉酸受容体利用可能性を持つ細胞の標的化を決定するために実施した。高い葉酸受容体発現(++++で示される)を持つ細胞は、KB細胞であった。FR発現のない細胞((-)で示される)はTOV-112D細胞系であった。FR遮断細胞も使用した。
【0305】
KB細胞を、10%のFBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシンを含む葉酸不含RPMI 1640培地中で維持した。TOV-112D細胞を、15%のFBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシンが追加補充された、最終濃度1.5g/Lの重炭酸ナトリウムを含有するMCDB 105培地と最終濃度2.2g/Lの重炭酸ナトリウムを含有する培地199との1:1混合物中で維持した。細胞をトリプシン処理し、8ウェルLab-Tekチャンバーカバーガラスに、ウェル当たり1.0×10細胞で播き、一晩培養して付着させた。
【0306】
NDCを実施例3に従い調製し、以下の表4に示す。NDC Dは、実施例1に記載されるリンカー-ペイロードコンジュゲート(202)を使用して調製した。
表4.2D共焦点撮像アッセイで使用した例示的なNDC。
【表4】
【0307】
NDCと共にインキュベーションする前に、細胞を葉酸不含RPMI 1640培地で1回洗浄した。NDCを葉酸不含RPMI 1640培地に添加して、最終濃度50nMにした。遮断条件では、葉酸(0.1M NaOH中に溶解した20mMストック)を添加して最終濃度0.1mMにし、NDCと同時にインキュベートした。細胞を、37℃で1時間または24時間のいずれかにわたりNDCと共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞を3回洗浄した。リソソームを染色するために、LysoTracker Green DND-26(Thermo Fisher Cat.L7526、ex/em504/511nm)を添加して、10%FBS、1%P/Sを含む葉酸不含RPMI 1640培地中で最終濃度100nMにし、37℃で45分間インキュベートした。細胞を1回洗浄して、残りのlysotracker色素を除去した。核を染色するために、Hoechst 33342溶液(Thermo Fisher Cat.62249、20mM)を、10%FBS、1%P/Sを含む葉酸不含RPMI 1640培地中で1:4000に希釈し、37℃で10分間インキュベートした。細胞を1回洗浄し、培地を、Nikonスピニングディスク共焦点顕微鏡、60×対物レンズ、405nm、488nm、640nmレーザー線、405チャネルで曝露時間100ms、488チャネルで500ms、および640チャネルで600msを使用する共焦点撮像のために、フェノールレッド不含RPMI 1640培地と交換した。
【0308】
1時間の時点でのKB(++++)およびTOV-112D(-)細胞系におけるNDCの共焦点顕微鏡撮像からの結果は、NDCが、高レベルの葉酸受容体を発現するKB細胞の細胞膜に主に存在するが、遮断条件または葉酸塩陰性細胞系TOV-112Dにおいて存在しないことを示し、葉酸受容体に対するNDCの特異的結合を示唆している。24時間後、膜結合NDCを内部移行させ、内部移行したNDCの量は、1時間の時点と比較して著しく増大した。内部移行したNDCは、LysoTrackerにより染色された酸性オルガネラ中に局在化し、これはNDCの輸送がエンドリソソーム経路を経て起こることを示している。NDCの結合能力に対する血清の効果も、一晩、10%のFBSが追加補充された培地中でNDCを予備インキュベートし、その後、それらを細胞と共にインキュベートすることによって調査したが、有意差は観察されず(データは図示せず)、血清の存在がNDCの結合能力に影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0309】
NDC Bの共焦点顕微鏡法の結果を図17に提示し、NDC Dの結果を図32に提示する。これらの画像は、本開示のNDCの高度に特異的な能動的標的化およびリソソーム輸送を実証し、FA標的化NDCが細胞に結合すると、葉酸受容体陽性細胞系内で内部移行するようになり、エキサテカンペイロードは切断されて(例えば、カテプシン-Bにより)、遊離エキサテカンをがん性細胞内に放出し得ることを示している。
【0310】
(実施例8)
KB細胞の3D腫瘍スフェロイドモデルにおけるFA-CDCの共焦点撮像
3D腫瘍スフェロイドモデルアッセイを実行して、本明細書に開示されるNDCの腫瘍浸透を決定した。アッセイは、例示的なNDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3に従い調製された)を、ペイロードなしのFA標的化ナノ粒子(やはり実施例3により調製され、FA前駆体のみ含み、エキサテカン-ペイロードコンジュゲート前駆体は含まない);葉酸受容体(FR)標的化ADC;および対応するペイロードなしのFR標的化抗体と比較した。FR標的化抗体は、ミルベツキシマブの公開された配列に基づき調製した(huMov19として米国特許第9,637,547号で提供され;その内容の全体は参照により本明細書に組み込まれる)。ADCを同じ抗体を用いて調製し、4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)-2-スルホ-酪酸(sSPDB)リンカー(米国特許第9,637,547号で使用されるリンカーをベースにして)を介してメイタンシノイド薬DM4(Syngene International Ltd.により創出された)とコンジュゲートさせた。ADCおよび抗体をそれぞれ、Cy5-NHSエステルとの反応によってCy5有機色素とコンジュゲートさせ、PD-10カラムにより精製した。
【0311】
Corning超低付着表面96ウェルスフェロイドマイクロプレートを、KB細胞を播く際に利用して、細胞密度10,000/ウェルを持つKBスフェロイドを有するようにした。単一細胞懸濁物を、トリプシン処理された単層から生成し、RPMI培地(葉酸不含)を使用して100,000細胞/mLに希釈した。細胞懸濁物100mLを、マイクロプレートの各ウェル内に分配した。プレートを、インキュベーター内で24時間保持して、細胞がスフェロイドを形成するようにした。KB細胞スフェロイドは、10×対物レンズの顕微鏡により容易に観察することができる。
【0312】
3D KBスフェロイドは、超低96ウェルマイクロプレート内で一晩培養後に形成された。NDC(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3に従い調製した)、葉酸標的化ナノ粒子(「FA-C’ドット」)、FR標的化ADC、またはペイロードなしのFR標的化抗体を、50nMの最終濃度でウェル(n=3)に添加し、37℃で4時間インキュベートした。それぞれ処置されたKBスフェロイドおよび対照スフェロイドを、PBSで3回洗浄し、次いで慎重にガラス底96ウェルプレート(Cellvis)に移して、レーザー線640nm、20×対物レンズを使用するNikon A1R-STED共焦点顕微鏡により観察した。Zスタックは、Z方向に1μmそれぞれ離れている二次元画像を得ることによって獲得した。
【0313】
NDC、FA-C’ドット、FR標的化ADC、およびペイロードなしのFR標的化抗体で処置されたKB腫瘍スフェロイドのZスタック共焦点顕微鏡撮像からの結果を、図18に示す。結果は、全体で>800mmの腫瘍スフェロイド全体にわたるNDCおよびFA-C’ドットの浸透および十分な拡散を示す。対照的に、標識された抗体およびADCは、腫瘍スフェロイド内部ではなく周囲にのみ蓄積された。効率的な腫瘍浸透を達成する、本明細書に開示されたNDCの能力は、非常に有利であり、従来の薬物送達プラットフォームと比較して有意な改善を示す。
【0314】
(実施例9)
DFO-FA-CDCの89Zr放射標識およびin vivo静止PET/CTおよび生体内分布研究
放射標識アッセイを実行して、本開示の葉酸受容体標的化NDCのin vivo生体内分布を決定した。アッセイで使用されるNDCを、キレーターデスフェリオキサミン(DFO)とコンジュゲートさせ、次いで放射性核種(89Zr)と結合させた。
【0315】
典型的な89Zr標識では、約1nmolのDFOコンジュゲートNDCを1mCiの89Zr-オキサレート(University of Wisconsin-Madison Cyclotronグループにより生成され提供された)と、37℃のHEPES緩衝液(pH8)中で60分間混合し;最終標識pHを7~7.5に保持した。標識収率は、ラジオインスタント薄層クロマトグラフィー(iTLC)を使用することによって、モニタリングすることができた。次いでエチレンジアミン四酢酸(EDTA)チャレンジ手順を導入して、任意の非特異的に結合された89Zrを粒子表面から除去した。次いで合成したままの標識NDC(89Zr-DFO-FA-CDC)を、PD-10カラムを使用することにより精製した。最終放射化学純度を、iTLCを使用することにより定量した。
【0316】
PET/CT撮像では、健康なヌードマウス(n=3)に200~300μCi(7.4~11.1MBq)の89Zr-DFO-FA-CDCをi.v.注射した。PET/CT画像を獲得する約5分前、マウスを、2%のイソフルラン/酸素ガス混合物の吸入によって麻酔をかけ、スキャナーベッド上に置き;麻酔は、1%イソフルラン/ガス混合物を使用して維持した。PET/CT撮像を、小動物PET/CTスキャナー(Inveon microPET/microCT)で、注射の1~2、24、48、および72時間後に行った。350~700keVのエネルギーウインドウおよび6nsの同時タイミングウインドウ(coincidence timing window)を使用した。データを、フーリエリビニング(Fourier rebinning)により2Dヒストグラムに選別し、横断画像を、フィルター補正逆投影(filtered back-projection)によって128×128×63(0.72×0.72×1.3mm)マトリクスに再構築した。PET/CT撮像データを正規化して、応答の不均一性、デッドタイムカウントロス(dead-time count loss)、陽電子分岐比、および注射時間までの物理的減衰を補正し;無減衰、散乱、または部分体積平均補正を適用した。再構築された画像のカウント率は、89Zrを含有するマウスサイズの水等価ファントムの撮像から誘導されたシステム較正因子の使用により、放射能濃度(組織のグラム当たりの注射された線量パーセンテージ、%ID/g)に変換された。PETデータの関心領域(ROI)分析を、IRWソフトウェアを使用して行った。注射後72時間で、個々のマウスそれぞれからの臓器を収集し、湿式秤量しガンマカウントした(Automatic Wizard2 γ-Counter、PerkinElmer)。89Zr-DFO-FA-CDCの取込みは、%ID/g(平均±SD)と表された。
【0317】
本開示のNDCは、正確な腫瘍標的化、深い腫瘍浸透、および高い腫瘍死滅効力を可能にした。NDCは、急速にかつ効率的に体内から除去され得、このことは、オフターゲット毒性の可能性を低減させ、改善された安全性プロファイルをもたらす。本明細書に開示されるNDC(標的化リガンド(葉酸)およびペイロード(エキサテカン)を含む)は、対象に投与することができ、血流中を循環することができ、がん(例えば、腫瘍)を標的とし、拡散し、浸透し、内部移行し、エキサテカンペイロードを切断し、がん細胞を死滅させることができる。
【0318】
この研究では、FA-CDCの腎クリアランスおよび生体内分布パターンを試験した。図19Aに示されるように、静脈内注射後、89Zr-DFO-FA-CDCは、心臓および動脈からの高い放射性シグナルによって示されるように、健康なヌードマウスの血流中を循環した。主要な放射性シグナルは、マウスの膀胱から見ることもでき、NDCの腎クリアランスが実証される。24時間後、注射された89Zr-DFO-FA-CDCの大部分がマウスの体内から除去された。注射後2時間および24時間での生体内分布パターンの変化も、図19Bに示す。予測されるように、NDCは、主要な腎クリアランス経路で血流中を循環することができ、一方、単核食細胞系(MPS)によるクリアランスが回避される(即ち、肝臓および脾臓)。
【0319】
(実施例10)
ヒトKB腫瘍モデルおよびin vivo効力研究
NDCのin vivo効力は、ヒトKB腫瘍マウスモデルを使用して実施した。アッセイは、エキサテカン-ペイロードコンジュゲート前駆体202(実施例1;ここではDと標識し、図20Dに示される)を使用して実施例3に従い調製されたNDCを、以下の表5に示されるNDC(NDC A~CおよびE~F)と比較した。各NDCを、対照および遊離エキサテカンと比較し、NDC EおよびFを、遊離エキサテカンおよびイリノテカン(CPT-11)と比較した。
表5.in vivo効力研究で使用された例示的なNDC。
【表5-1】

【表5-2】

粒子当たりのFAリガンドの数は12から22の間であり;粒子当たりのリンカー-薬物コンジュゲートの数は17から25の間である。各ペイロード-リンカーは、DBCO部分を介してNDCにコンジュゲートされる(実施例3で概説したプロトコールにより調製される)。
【0320】
ヒトKB細胞系をATCCから購入し、他に指定されない限り、葉酸不含RPMI 1640培地/10%FBS、および1%のペニシリン/ストレプトマイシン中で維持した。KB細胞を培養して適切な細胞カウントに達したら、細胞生存率を、血球計算盤およびトリパンブルー染色アッセイにより確認した。皮下移植では、各マウスにKB細胞を、注射当たり0.1mLのMatrigel/細胞希釈体積で、2×10細胞/マウスの密度で、大腿の左下部側面に注射した。皮下腫瘍体積が、本研究で必要な数のマウスにおいて75から150mmの触知可能なサイズに達したら、マウスを無作為化して、同等の腫瘍体積統計量と共に得られた各処置コホートに割り当てた。無作為化および研究コホート割当ての後、各用量コホートを、投与経路、投薬量、およびスケジュールに従い処置した。
【0321】
NDC B~Dのそれぞれの2つの用量レベルを、効力研究で使用した(NDC A、E、およびFに関してただ1つの用量レベル)。腫瘍体積測定は、用量処置期間中は2日ごとに、較正されたキャリパーを使用して行い、その後、生存期間の回復期間中は週に2回の測定を行い、腫瘍体積を、長さ(mm)×幅(mm)×幅(mm)×0.50の式を使用して決定した。体重測定は、用量処置期間中は2日ごとに行い、その後、生存期間の回復期間中は週に2回、測定を行った。マウスを、研究のエンドポイントが1000mmに達したときに、安楽死させた。腫瘍を収集し、腫瘍サイズを測定した。腫瘍を外科的に切除し、瞬間凍結して、将来の分析まで-80℃で保存した。
【0322】
図20A~20Fは、KB腫瘍保持マウス(n=7)における6つの葉酸受容体標的化NDCのin vivo腫瘍成長阻害研究を示す。in vivo効力研究に関して示された腫瘍成長チャートは、図20Dに示される、エキサテカン-ペイロードコンジュゲート前駆体202(実施例1から)を使用して実施例3に従い調製されたNDCで処置したマウスでの腫瘍成長阻害の明らかな応答を示す。同様に、成長阻害は、NDC A(図20A)、NDC B(図20B)、およびNDC C(図20C)で観察された。対照的に、NDC E(図20E)およびNDC F(図20F)で処置したマウスは、腫瘍成長の有意な阻害を示さなかった。NDCに関する用量を、図20A~20Fに提示する。腫瘍成長阻害の明らかな応答が、NDC A~Dで処置したマウスで観察された。生理食塩水を受けた対照群のマウスは、同じQ3DX3用量レジメンに従う。
【0323】
(実施例11)
薬物耐性細胞系におけるNDCの活性
アッセイは、薬物耐性がん細胞(特に、イリノテカン耐性KB細胞およびエキサテカン耐性KB細胞)でのその活性を決定するために、本明細書に開示されるNDCを使用して実施した。このアッセイで使用したNDCは、エキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202(実施例1から)を使用して実施例3に従い調製された。
【0324】
TOP1阻害剤耐性葉酸受容体アルファ陽性がん細胞の開発。
ナイーブのヒトKB細胞系をATCCから購入し、葉酸不含RPMI 1640培地/10%FBSおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシン中で維持した。TOP1阻害剤耐性KB細胞を開発するために、フラスコ内の細胞(50~60%コンフルエンス)を、増大する濃度のエキサテカン、トポテカン、SN-38、またはイリノテカンで、4カ月間にわたり繰り返し処置した。出発TOP1阻害剤処置濃度は、KB細胞のIC90値に近かった。各処置後、細胞を、新鮮なRPMI 1640培地で慎重に洗浄し、さらに2~3日間、50~60%コンフルエンスに達するまで増殖させた。TOP1阻害剤処置の次のラウンドは、2~10倍高いTOP1阻害剤濃度で開始した。
【0325】
耐性係数およびIC50アッセイ。
ナイーブのおよびTOP1阻害剤耐性KB細胞の両方を、葉酸不含培地(RPMI1640、ThermoFisher、GIBCO)で培養した。細胞を、不透明な96ウェルプレートに、ウェル当たり3×10細胞(合計で90μL)の密度で播き、一晩付着させた。翌日、細胞を、選択されたTOP1阻害剤(例えば、遊離エキサテカン)またはNDCで、適切な濃度範囲で処置した。TOP1阻害剤を両方のタイプの細胞に同じ期間にわたり曝露した後、細胞生存率を、製造業者の指示に従って、CellTiter-Glo2.0アッセイ(Promega)を使用して評価した。生存率および増殖の両方に関するデータを、Prism7ソフトウェア(GraphPad)を使用してプロットした。耐性係数は、下記の方程式:
【数1】

を使用することによって計算することができる。
【0326】
イリノテカン耐性KB細胞系およびNDCの効力試験
図21Aは、ナイーブのおよび耐性KB細胞の両方での、イリノテカンのIC50曲線を示し、5×イリノテカン耐性KB細胞の首尾良くなされた開発を実証し、ここでイリノテカン耐性KB細胞におけるIC50遊離イリノテカンは、ナイーブ細胞での668nMと比較して、3,618nMであった。図21Bは、ナイーブのKB細胞(IC50=0.27nM)および耐性KB細胞(IC50=0.26nM)でのNDC(FA-CDC)(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3に従い調製した)のIC50曲線を提供し、NDCは、ナイーブのKB細胞およびTOP1阻害剤耐性KB細胞の両方にわたって均一な高い効力を有することを示している。
【0327】
エキサテカン耐性KB細胞系およびNDCの効力試験
図22Aは、ナイーブのおよび耐性KB細胞の両方におけるエキサテカンのIC50曲線を示し、>8×のエキサテカン耐性KB細胞の首尾良くなされた開発を実証しており、ここで通常のKB細胞におけるエキサテカンのIC50は、エキサテカンで4回前処置したKB細胞において4nMでありかつエキサテカンで7回前処置したKB細胞において16.9nMであるのと比較して、2nMであった。図22Bは、ナイーブのおよび耐性KB細胞の両方(4×または7×前処置)におけるNDC(FA-CDC)(実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3に従い調製された)のIC50曲線を示し、ここでFA-CDCのIC50は、それぞれ0.27nM、0.28nM、および0.30nMであった。結果は、NDCが、ナイーブのおよび耐性KB細胞の両方において均一に高い効力を保有することを示した。
【0328】
(実施例12)
様々な葉酸受容体発現レベルを持つがん細胞でのNDCの活性
アッセイは、コンジュゲートされていないエキサテカンと比較して、種々のFRアルファ過剰発現がん細胞系において様々なレベルの薬物対粒子比を持つ、例示的なNDC(FA-CDC)の細胞毒性を決定するために実行した。NDCは、実施例1のペイロード-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3により調製した。試験したNDC(FA-CDC)は、43、20、8、および1の薬物対粒子比(DPR)を有していた(即ち、ナノ粒子当たり43、20、8、および1個のエキサテカン-リンカー基)。
【0329】
様々なFRアルファ発現レベル(KB(++++)、IGROV-1(++)、SK-OV-3(++)、HCC827(++)、A549(-)、およびBT549(-))を持つがん細胞を、葉酸不含培地(RPMI1640、ThermoFisher、GIBCO)中で、研究前の少なくとも1週間培養した。7日間曝露および6時間曝露に関するアッセイを、共に実行した。
【0330】
細胞を、不透明な96ウェルプレートに、ウェル当たり3×10細胞の密度(合計で90μL)で播き、一晩付着させた。翌日、細胞を、様々な薬物対粒子比(DPR)を持つNDCで、0~50nMに及ぶ濃度(0、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、50nM)で、10μLの10×ストック化合物を添加することにより処置した。
【0331】
6時間曝露の生存率研究では、細胞を6時間処置し、100μLのPBSで洗浄した(3×)。次いで100μLの新鮮な細胞培地を各ウェルに添加し、プレートをさらに7日間、37℃でインキュベートし、その後、製造業者の指示に従ってCellTiter-Glo(登録商標)細胞毒性アッセイ(Promega)を行った。7日間の曝露アッセイの結果を図23に提示し、これはNDCが、細胞におけるFR発現のレベルが異なるにも関わらず全ての細胞系にわたって非常に強力であることを実証する。
【0332】
7日間の曝露生存率研究では、細胞を、化合物と共に全7日間にわたりインキュベートし、その後、CellTiter-Glo(登録商標)細胞毒性アッセイを行った。半数阻害濃度(IC50)に関するデータを、Prism7ソフトウェア(GraphPad)を使用してプロットした。6時間曝露アッセイの結果を図23に提示し、これはNDCが、細胞内でのFR発現の種々のレベルにも関わらず全ての細胞系にわたって非常に強力であることを実証している。
【0333】
(実施例13)
患者由来のPt耐性腫瘍細胞系におけるNDCの細胞毒性
アッセイは、コンジュゲートされていないエキサテカンと比較して、Pt耐性である様々な患者由来の腫瘍細胞系における例示的なNDC(実施例1からのエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体化合物202を使用して、実施例1に従い調製した)の細胞毒性を確立するために実行した。細胞系は、卵巣がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん(HR+、HER2+;およびHR-、HER2+の両方;およびトリプルネガティブ乳がん(TNBC))、子宮内膜がん、および頭頸部(H&N)がんから得た。アッセイの結果を図24に提示する。
【0334】
細胞毒性効力を、KIYA-PREDICT(商標)アッセイを使用するKIYATECにより決定した。白金耐性の卵巣がん患者、子宮内膜がん患者、非小細胞肺がん患者、乳がん患者、トリプルネガティブ乳がん患者、頭頸部がん患者からの腫瘍組織のFRα免疫組織化学(ICH)スコアリングを、製造業者のプロトコールに従って、Biocare Medical FRa IHCアッセイキット(cat# BRI4006KAA)を使用することによるXenoSTARTによって実行した。種々の適応症からの合計28のPDXモデルを、IHCスコアに基づき選択し、KIYA-PREDICT(商標)アッセイのためにKIYATECに提供した。簡単に言うと、凍結保存されたPDX腫瘍を解凍し、酵素で解離させて単一細胞にし、384ウェルスフェロイドマイクロプレート(Corning)に播いた。フローサイトメトリーも行って、種々のPDXモデルの中でのFRαレベルを評価した。スフェロイド形成の24時間後、NDCまたは対照を、設計された濃度範囲で添加し、7日間インキュベートした。その後、細胞生存率を、CellTiter-Glo(登録商標)3D(Promega)により測定した。データを、Microsoft ExcelおよびGraphPad Prismで分析した。
【0335】
(実施例14)
小児急性骨髄性白血病モデルにおける例示的なNDCのin vitroおよびin vivo効力
アッセイは、葉酸受容体アルファ陽性小児急性骨髄性白血病モデルにおいて、例示的なNDC(実施例1からのエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体202を使用して、実施例3のプロトコールに従い調製した)のin vitroおよびin vivo効力を確立するために実施した。
【0336】
in vitroフローサイトメトリー細胞結合研究
がん細胞(IGROV-1およびAML MV4;11細胞系)を、葉酸不含培地(RPMI1640、ThermoFisher、GIBCO)中で、研究前の少なくとも1週間、培養した。細胞結合研究は、4℃で60分間(n=3)、例示的なNDCを含むまたは抗FRアルファフィコエリスリン(PE)コンジュゲート抗体(抗FRアルファ抗体-PE)(濃度:10nM)を含む冷リン酸緩衝食塩水(PBS)(1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含む)中で、5×10細胞(合計で500μL、100万/mL)をインキュベートすることによって行った。非標的化CDCおよびアイソタイプ抗体-PEを、それぞれ例示的なNDCおよび抗FRアルファ抗体-PEに対する陰性対照として使用した。次いで細胞懸濁物を、生存度キット(LIVE/DEAD(商標)Fixable Violet Dead Cell Stain Kit、Thermo Fisher)で10~15分間染色した。細胞を次に遠心分離し(毎分2000回転、5分)、冷PBS(1%のBSAを含む)で洗浄し(2~3回)、その後、PBS(1%のBSAを含む)に再懸濁した。三連の試料をLSRFortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)(Cy5チャネル、633nm/647nm、生/死細胞染料、405nm)で分析した。結果を、FlowJo and Prism 7ソフトウェア(GraphPad)を使用して処理した。
【0337】
例示的なNDCおよび抗FRアルファ抗体-PEのフローサイトメトリーヒストグラムを、それぞれの陰性対照(非標的化NDCまたはアイソタイプ抗体-PE)と比較したものを、図25A~25Dに示す。フロー研究は、IGROV-1(FRアルファ陽性ヒト卵巣がん)およびAML MV4;11細胞系の両方に対する、例示的なNDCの特異的なFRアルファ標的化能力を実証する。
【0338】
in vitro CellTiter-Glo(登録商標)細胞毒性アッセイ
がん細胞(IGROV-1およびAML MV4;11細胞系)を、葉酸不含培地(RPMI1640、ThermoFisher、GIBCO)中で、研究前の少なくとも1週間、培養した。細胞を、ウェル当たり3×10細胞の密度で(合計で90μL)、不透明な96ウェルプレートに播き、一晩付着させた。翌日、細胞を、10μLの10×ストックNDC溶液を添加することにより、0~100nMに及ぶ濃度の例示的なNDCで処置した。より短い曝露での生存率研究では、細胞を4時間処置し、100μLのPBSで洗浄した(3×)。次いでNDCを含まない、100μLの新鮮な細胞培地を各ウェルに添加し、プレートをさらに5日間、37℃でインキュベートし、その後、製造業者の指示に従ってCellTiter-Glo(登録商標)細胞毒性アッセイ(Promega)を行った。半数阻害濃度(IC50)に関するデータを、Prism7ソフトウェア(GraphPad)を使用してプロットした。
【0339】
FRアルファ陽性ヒト卵巣がんおよびMV4;11 AML細胞系における例示的なNDCのin vitro特異的細胞毒性活性を、図26A~26Bに示す。細胞を、指示される濃度の例示的なNDCで処置し、37℃で4時間インキュベートし、洗浄し、さらに5日間、インキュベーターに戻し、その後、CellTiter-Glo(登録商標)細胞毒性アッセイを行った。
【0340】
CBFA2T3-GLIS2融合陽性AML細胞系由来の異種移植モデル
例示的なNDCのin vivo抗腫瘍死滅活性を、細胞系由来異種移植(CDX)モデルで評価した。NOD scidガンマ(NSG)マウスに葉酸塩不含固形飼料を、AML細胞系を注射する前に1週間与えた。次いでルシフェラーゼレポーターが形質導入された1~500万の融合陽性細胞系(M07e、WSU-AML)および操作された細胞(MV4;11 FOLR+)を、尾部静脈注射を介してNSGマウスに移植した。白血病の負荷および処置に対する応答を、非侵襲性生体発光撮像(マウスの正面および背面の両方から)を使用してモニタリングし、顎下部の出血により引き出したマウス末梢血のフローサイトメトリー分析を隔週で実施し、これはCDC処置の第1週から開始した。マウスを、疾患の症状(頻呼吸、ねこ背、永続的な体重減少、疲労、後肢の麻痺を含む)に関してモニタリングした。食塩水対照群(コホート1)からのマウスは、白血病注射後の44日目の高いAML負荷に起因して安楽死させた(血液、骨髄、胸腺、肝臓、肺、および脾臓を含む組織を剖検で収集し、白血病細胞の存在を分析した)。処置群(コホート2~4)からのマウスには、毎週、生体発光撮像を受け続けさせ、体重のモニタリングを行った。マウスの調製、処置、および撮像に関するタイムラインの図を、図31に提示する。
【0341】
全てのマウスを無作為化し、その後、投薬および秤量を行って、以下の表6に基づき正しく設計された用量を提供した。白血病負荷および処置に対する応答を、非侵襲性生体発光撮像を使用して毎週モニタリングした。体重は、1日おきに測定した。マウスは、その体重損失が20%を超えた場合に終了させた。
表6.用量設計(群当たりn=5)
【表6】
【0342】
図27は、表6に示される3つの用量レベルで、生理食塩水および例示的なNDCで処置したAMLマウスの体重変化を提供する。生理食塩水群(コホート1)は、主に白血病負荷に起因して20%以内の体重損失を示した。0.33mg/kg(Q3D×6)用量群(コホート2)では、5匹中4匹のマウスがNDCに十分耐容性を示し(<20%損失)、体重は6回の用量後に増加し;一方、残りのマウスは、5回目の用量後に>20%の体重損失を示し、6回目の用量後にはさらなる体重損失を示した。0.50mg/kg(Q3D×3)の用量群(コホート3)では、5匹全てのマウスがNDCに十分耐容性を示し(<20%損失)、体重は3回の用量後に増加した。0.65mg/kg(Q3D×3)の群(コホート4)では、5匹のうち2匹のマウスがNDCに十分耐容性を示し(<20%損失)、体重は3回の用量後に増加し、一方、5匹中3匹のマウスは、3回目の用量後に>20%の体重損失を示した。
【0343】
図28は、それぞれの用量レジメン(即ち、表6からのコホート1~4)で生理食塩水または例示的なNDCで処置したAMLマウスから得られたin vivo生体発光画像(BLI)を提供する。コホート1~4の定量的in vivo生体発光撮像分析(即ち、表6に概説される各用量レジメンで、生理食塩水または例示的なNDCで処置されたAMLマウス)を、図29に提示する。生理食塩水群(コホート1)では、白血病負荷が進行し続け、その平均全身BLIシグナルは、34日間で>90倍に増大し、一方、白血病負荷の迅速な用量依存的抑制は、3つ全ての処置群(コホート2~4)で達成された。0.5mg/kg(Q3D×3)用量群(コホート3)は、白血病注射後1日目の負荷と比較した場合、34日目に11分の1の白血病負荷を示した。0.33mg/kg(Q3D×6)用量群(コホート2)と0.65mg/kg(Q3D×3)用量群(コホート4)と比較した場合、0.33mg/kgは、僅かに良好な応答で、より良好に耐容性を示した。まとめると、これらのデータは、例示的なNDCがFRアルファ陽性AMLマウスにおける白血病負荷を首尾良く抑制したことを示し、迅速で用量依存的な応答を示した。
【0344】
図30は、白血病注射後42日目の、コホート1~4(即ち、表6に示される各用量群で、生理食塩水または例示的なNDCで処置したマウス)の骨髄吸引の結果を示すグラフを提供する。白血病は、生理食塩水で処置したマウスの群(コホート1)で検出され、一方、検出可能な白血病負荷は、処置群からのマウス(コホート2~4)のいずれにおいても観察されなかった。
【0345】
(実施例15)
ジエン由来のリンカーの安定性
ジエン系官能化手法を使用して調製された、本明細書に開示されるNDCの安定性を決定するために、ジエン系官能化手法を使用して調製されたNDCの安定性を、アミン系官能化手法を使用して調製されたNDCと比較した。
【0346】
NDCを、0.9%食塩水、PBS、ヒト血漿(10%)、およびマウス血漿(10%)で、37℃で、種々の期間にわたり振盪乾燥浴内でインキュベートした。分析前に、等体積の冷アセトニトリルの添加を通して、試料中の血漿タンパク質を沈殿によって除去し、その後、Eppendorf 5425微量遠心分離機において10000rpmで遠心分離した。遠心分離後、透明な上澄みを遠心分離管から透明な完全回収HPLCバイアルに移した。目に見えるいかなる凝集もない上澄みを、等体積の脱イオン水で希釈して、HPLC分離の出発条件を満たすようにかつ感度の損失が回避されるように、試料マトリクスを調節した。次いで各試料の純度および不純物を、RP-HPLCにより定量する。
【0347】
ジエン-シラン前駆体を使用して、実施例3に記述された方法を使用して生成された標的化NDCは、マウスおよびヒト血漿において高い安定性を示し、アミン-シラン前駆体を使用して生成された対応するNDCに対して、安定性の有意な改善を示した(図33Aおよび33B参照)。ジエン-シラン前駆体を使用して調製されたNDCでは、エキサテカン薬物の95%よりも多くが、マウスおよびヒト血漿中で最長7日間にわたりNDC上に残され、これはRP-HPLCクロマトグラムでのNDCピークのUV-Visスペクトルによって得られた。一方、遊離エキサテカンをモニタリングする独立したRP-HPLCアッセイは、放出されたエキサテカンがRP-HPLCの検出限界(即ち0.02%)未満であることを示唆し、望ましくない遊離薬物の不在はさらに、それらの高い血漿安定性を実証した。標的化NDCは、0.9%の食塩水中、4℃での高い保存安定性も示した。それらの純度、サイズ分布、および流体力学直径は、RP-HPLC、SEC、およびFCSによってそれぞれ特徴付けられ、保存条件下では6カ月間にわたり変化しないままであった。そのような高い保存安定性は、臨床への移行および商業的製造の両方に関して重要な、別の重要なパラメーターである。
【0348】
(実施例16)
薬物動態および毒物学研究
例示的なNDCの薬物動態および毒物学を、ラットモデルでおよびイヌモデルで評価した。この研究で使用したNDCは、実施例1のエキサテカン-リンカーコンジュゲート前駆体化合物202を使用して、実施例3に従い調製した。上記実施例で実証されたように、この例示的なNDCは血漿中で非常に安定であり、in vitroおよびin vivoの両方で、様々な細胞系およびPDX由来の腫瘍モデルで抗腫瘍効力を誘発する。
【0349】
Wistar HanラットおよびBeagle犬で行われた15日間の反復用量毒物学および毒物動態(TK)研究では、NDCは、1時間の輸液を介してQW×3のスケジュールで投与されるとき、コンジュゲートされたエキサテカンの濃度に基づいて、ラットにおいて最大0.87mg/kg/日まで、およびイヌにおいて0.174mg/kg/日まで耐容性を示した。両方の種に関して観察された用量関連毒性は、骨髄および胃腸管に限定された。これらは、遊離ペイロード(エキサテカン)が投与されたときに観察されたものと同じ臓器であり、NDCにコンジュゲートされたエキサテカンの送達は、組織毒性プロファイルを広げないことを示唆している。観察された毒性は、2週間の回復期間の終わりまでに、回復されまたは実質的に低減された。薬物関連の肝臓、腎臓、肺、または眼の毒性は観察されず、また反復用量毒性研究において薬物関連死はなかった。
【0350】
15日間のGLP研究で推定されるTKパラメーターは、NDC、総エキサテカン(コンジュゲートされたおよび放出された)、および放出されたエキサテカンに関し、オスおよびメスでの類似の血漿曝露値を明らかにした。NDCは、ラットにおいて約15から20時間に及ぶ、およびイヌにおいて24から29時間に及ぶ平均循環半減期を示し、NDC、総エキサテカン、または遊離エキサテカンの蓄積は、1日から15日まで観察されなかった。AUC0~last(時・ng/mL)に基づいて、循環内に放出されたペイロードのレベルは、ラットおよびイヌにおいてそれぞれ、全ペイロードレベルの約0.3%および0.1%未満であった。NDC抗薬物抗体は、いずれの種においても誘発されなかった。まとめると、NDCは、好ましい非臨床的安全性/TKプロファイルを有する。
【0351】
本発明を、特定の好ましい実施形態を参照しながら特に図示し記述してきたが、当業者なら、添付される特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、その形態および詳細の様々な変更を行ってもよいことを理解すべきである。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)シリカナノ粒子、および前記ナノ粒子の表面に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)、
(b)葉酸またはその誘導体もしくは塩を含み、直接またはスペーサー基を経て間接的に前記ナノ粒子に付着された、標的化リガンド、および
(c)リンカー-ペイロードコンジュゲート
を含む、ナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)であって、
(i)前記ペイロードがエキサテカンであり、
(ii)前記リンカー-ペイロードコンジュゲートが、スペーサー基を経て前記ナノ粒子に付着され、
(iii)前記リンカーが、プロテアーゼ-切断可能リンカーであり、および
(iv)前記エキサテカンが、前記リンカーの切断の際に放出される、
ナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)。
(項目2)
前記ナノ粒子が、シリカ系コアと、前記コアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルとを含む、項目1に記載のNDC。
(項目3)
約1nmから約10nmの間の平均直径を有する、項目1または2に記載のNDC。
(項目4)
約5nmから約8nmの間の平均直径を有する、前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目5)
前記ナノ粒子のペイロードに対する平均比が、約1:1から約1:80、例えば約1:60、約1:40、約1:30、約1:28、約1:26、約1:25、約1:24、約1:23、約1:22、約1:21、約1:20、約1:19、または約1:18である、前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目6)
前記ナノ粒子の標的化リガンドに対する平均比が、約1:1から約1:50、例えば約1:40、約1:30、約1:25、約1:20、約1:15、約1:14、約1:13、約1:12、約1:11、または約1:10である、前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目7)
前記ナノ粒子:ペイロード:標的化リガンド(例えば、ナノ粒子:エキサテカン:葉酸)の平均比が、約1:20:10、1:20:11、1:20:12、1:20:13、1:20:14、1:20:15、1:21:10、1:21:11、1:21:12、1:21:13、1:21:14、1:21:15、1:22:10、1:22:11、1:22:12、1:22:13、1:22:14、1:22:15、1:23:10、1:23:11、1:23:12、1:23:13、1:23:14、1:23:15、1:24:10、1:24:11、1:24:12、1:24:13、1:24:14、1:24:15、1:25:10、1:25:11、1:25:12、1:25:13、1:25:14、または1:25:15である、前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目8)
前記ナノ粒子内(例えば、前記ナノ粒子の前記コア内)に共有結合により被包された蛍光化合物を含む、前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目9)
蛍光化合物が、Cy5およびCy5.5からなる群より選択される、項目7に記載のNDC。
(項目10)
式(NP):
【化65】

の構造を含み、
式中、
xは0から20の整数(例えば、4)であり、
ケイ素原子は、前記ナノ粒子の一部であり、および
トリアゾール部分に隣接する
【化66】

は、直接、あるいは例えばリンカーまたはスペーサー基、例えばPEG部分を介した間接的な、標的化リガンドまたはペイロード-リンカーコンジュゲートとの付着点を示す、
前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目11)
式(S-1):
【化67】

の構造を含み、
式中、
ペイロードはエキサテカンであり、
リンカーは、プロテアーゼ切断可能リンカー(例えば、カテプシン-B切断可能リンカー)であり、および
ケイ素原子は、前記ナノ粒子の一部である、
前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目12)
式(S-2):
【化68】

の構造を含み、
式中、
標的化リガンドは、葉酸またはその誘導体もしくは塩であり;および
ケイ素原子は、前記ナノ粒子の一部である、
前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目13)
前記リンカー-ペイロードコンジュゲートが、式(I):
【化69】

の構造またはその塩を含み、
式中、
【化70】

は、スペーサー基を経た前記ナノ粒子への結合を表し、
Aは、Val-Lysであり、
ペイロードはエキサテカンの残基であり、ここでZは、エキサテカンの窒素原子であり、R、R、R、R、およびRは、出現するごとに、独立して、水素であり、
Xは、不在であり、
Yは、
【化71】

であり、ここで
【化72】

中のカルボニルはZに結合し、
、X、X、およびXは、それぞれ独立して、-CH-であり、
Zは、-NR-であり、
は、水素であり、および
nは1である、
前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目14)
前記リンカー-ペイロードコンジュゲートが、プロテアーゼ結合の際にC末端で加水分解を受けることが可能なプロテアーゼ切断可能リンカーであり、それによって前記ナノ粒子から前記ペイロードを放出する、前記項目のいずれか一項に記載のNDC。
(項目15)
前記プロテアーゼが、セリンプロテアーゼまたはシステインプロテアーゼを含む、項目14に記載のNDC。
(項目16)
(a)シリカ系コアと、前記コアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルとを含むナノ粒子;前記ナノ粒子の表面に共有結合されたポリエチレングリコール(PEG)、および前記ナノ粒子の前記コア内に共有結合により被包されたCy5色素、
(b)葉酸受容体に結合する標的化リガンドであって、前記標的化リガンドは、葉酸でありかつスペーサー基を経て前記ナノ粒子に間接的に付着される、標的化リガンド、
(c)リンカー-ペイロードコンジュゲートであって、スペーサー基を経て間接的に前記ナノ粒子に付着され、
【化73】

を含む、リンカー-ペイロードコンジュゲート
を含み、約1nmから約6nmの間の平均直径を有する、
ナノ粒子-薬物コンジュゲート(NDC)。
(項目17)
(a)シリカ系コアと、前記コアの少なくとも一部分を取り囲むシリカシェルとを含むシリカナノ粒子;および前記ナノ粒子の表面に共有結合したポリレチレングリコール(PEG)、
(b)式(NP-3):
【化74】

の構造であって、
式中、xは4であり、yは9であり、ケイ素原子は前記ナノ粒子の一部である、構造、ならびに
(c)式(NP-2)
【化75】

の構造であって、
式中、xは4であり、yは3であり、ケイ素原子が前記ナノ粒子の一部である、構造
を含む、ナノ粒子薬物コンジュゲート(NDC)。
(項目18)
前記ナノ粒子の前記コア内に、共有結合により被包された蛍光色素(例えば、Cy5)を含む、項目17に記載のNDC。
(項目19)
葉酸受容体発現がん(例えば、葉酸受容体発現腫瘍)を処置する方法であって、有効量の前記項目のいずれか一項に記載のNDCを、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
(項目20)
前記NDCが、それを必要とする前記対象に静脈内投与される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記対象が、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択されるがんを有する、項目19または20に記載の方法。
(項目22)
葉酸受容体発現がん(例えば、葉酸受容体発現腫瘍)を処置するための、項目1から18のいずれか一項に記載のNDCの使用。
(項目23)
前記NDCが、それを必要とする対象に静脈内投与される、項目22に記載の使用。
(項目24)
前記がんが、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択される、項目22または23に記載の使用。(項目25)
葉酸受容体発現がん(例えば、葉酸受容体発現腫瘍)を処置するための医薬の製造における使用のための、項目1から18のいずれか一項に記載のNDC。
(項目26)
前記がんが、卵巣がん、子宮内膜がん、卵管がん、子宮頸がん、乳がん、肺がん、中皮腫、子宮がん、胃腸がん(例えば、食道がん、結腸がん、直腸がん、および胃がん)、膵臓がん、膀胱がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、脳がん、甲状腺がん、皮膚がん、前立腺がん、精巣がん、急性骨髄性白血病(AML、例えば、小児AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群より選択される、項目25に記載のNDC。
(項目27)
項目1から18のいずれか一項のNDCと、薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、医薬組成物。
(項目28)
静脈内投与に適している、項目27に記載の医薬組成物。
(項目29)
単位剤形にあり、例えばアンプル、プレフィルドシリンジ、輸液容器、または多用量容器内にある、項目27または28に記載の医薬組成物。
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
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図16-2】
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図19-2】
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【配列表】
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【外国語明細書】