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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013350
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】浴室用椅子
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/12 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
A47K3/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117470
(22)【出願日】2021-07-15
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】514067591
【氏名又は名称】株式会社OneTaste
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】国村 あずさ
【テーマコード(参考)】
2D132
【Fターム(参考)】
2D132DA01
(57)【要約】
【課題】磁石を使用して壁パネルに吸着固定するときの姿勢が、水切り性のよい起立姿勢になるようにした浴室用椅子を提供する。
【解決手段】座板部10の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁20が下向きに連成されている。胴壁20の一部に磁石30を収容した凹部22を設け。この凹部22を蓋体40によって閉塞する。胴壁20を下拡がり形状に形成することで、2つの椅子100,100を嵌合状に積み重ね可能としてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板部の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁が下向きに連成された浴室用椅子であって、
胴壁の一部に磁石を収容した凹部が設けられ、この凹部が蓋体により閉塞されていることを特徴とする浴室用椅子。
【請求項2】
胴壁が下拡がり形状に形成された2つの当該浴室用椅子において、一方の浴室用椅子の胴壁が他方の浴室用椅子の胴壁に上下方向で積み重ね状に外嵌合可能であると共に、上記胴壁が座板部の周縁の一部から立ち上げられ腰当て部を有し、この腰当て部に上記凹部が設けられて、この凹部を閉塞している上記蓋体がこの腰当て部の外表面で露出している請求項1に記載した浴室用椅子。
【請求項3】
胴壁が下拡がり形状に形成された2つの当該浴室用椅子において、一方の浴室用椅子の胴壁が他方の浴室用椅子の胴壁に上下方向で積み重ね状に外嵌合可能であると共に、上段側の浴室用椅子の胴壁に設けられている上記凹部が、下段側の浴室用椅子の座板部と上段側の浴室用椅子の座板部との相互間に形成される隙間に配備されるようになっている請求項1に記載した浴室用椅子。
【請求項4】
胴壁に具備された平坦面に凹部を閉塞している上記蓋体の外表面が面一に連続し、かつ、胴壁に、上記蓋体の外表面よりも突出する部位が存在していない請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した浴室用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室で使用される浴室用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
先行例として、浴槽に入るときの階段として利用したり、浴槽内でくつろぐときに腰掛けて使用することのできる風呂用腰掛けが提案されていた(特許文献1参照)。このものは、腰掛けの足にゴム磁石を固定したものであり、このゴム磁石を利用して腰掛けを浴槽の底や洗い場の床などの自由な場所に滑らないように固定できるようにしたものであると考えられる。
【0003】
他の先行例として、浴室用椅子を支持部とこの支持部に着脱可能な座面とに分割し、座面の上面部に磁石を装備させたものが提案されている(特許文献2参照)。この浴室用椅子は、座面に装備されている磁石を利用して磁性面である浴室の壁パネルの表面に横倒し姿勢で吸着固定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53-124147号公報
【特許文献2】特開2001-104194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲の2つの先行例のうち、特許文献2によって提案されている浴室用椅子は、壁パネルに吸着固定したときに浴室用椅子が横倒し姿勢になる。このため、椅子の高さが高いものでは、壁パネルに吸着固定したときに横倒し姿勢の椅子が壁パネルから長く出っ張ってじゃまになりやすいだけでなく、座面の吸着部分に加わる重量が大きくなり、それに見合って吸着力の大きな磁石を用いる必要があるためにコスト高になりやすいという問題があると云える。また、壁パネルに浴室用椅子を横倒し姿勢で固定すると、椅子の内面に付着している水滴が流れ落ちにくくなり、それだけ水切り性が低下するおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は以上の状況の下でなされたものであり、安価に提供しやすく、しかも、磁石を使用して壁パネルに吸着固定して片付けるときの姿勢が、じゃまになりにくくて水切り性のよい起立姿勢になるようにした浴室用椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る浴室用椅子は、座板部の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁が下向きに連成された浴室用椅子であって、胴壁の一部に磁石を収容した凹部が設けられ、この凹部が蓋体により閉塞されている。というものである。
【0008】
この構成を有する浴室用椅子によれば、使用しないときに磁石を利用して磁性面である浴室の壁パネルに吸着固定しておくことが可能である。このため、浴室用椅子を浴室の壁パネルに吸着固定するという方法で片付けられるようになる。特に、この発明では、浴室用椅子の胴壁に設けた凹部に磁石を収容し、その凹部を蓋体で閉塞しているので、磁石を利用して浴室の壁パネルに吸着固定した浴室用椅子が起立姿勢になる。そのため、高さの高い浴室用椅子であっても、壁パネルから長く出っ張ることがないのでじゃまになりにくい。また、壁パネルに対する吸着部分に加わる重量がそれほど大きくならないために、磁石の吸着力をいたづらに大きくする必要がなくなって磁石にかかるコストが低減され、当該浴室用椅子を安価に提供しやすくなる。その上、壁パネルに浴室用椅子を起立姿勢で固定するようになるので、椅子の内面に付着している水滴が流れ落ちやすくなり、それだけ水切り性が向上することになる。
【0009】
本発明では、胴壁が下拡がり形状に形成された2つの当該浴室用椅子において、一方の浴室用椅子の胴壁が他方の浴室用椅子の胴壁に上下方向で積み重ね状に外嵌合可能であると共に、上記胴壁が座板部の周縁の一部から立ち上げられ腰当て部を有し、この腰当て部に上記凹部が設けられて、この凹部を閉塞している上記蓋体がこの腰当て部の外表面で露出している、という構成を採用することができる。これによれば、浴室用椅子を積み重ねて片付けたときに、腰当て部に設けられている凹部がじゃまにならないので、積み重ね状態ががたつきのない安定した状態になるという利点がある。また、浴室用椅子の高位の腰当て部が壁パネルに吸着固定されるので、浴室用椅子があたかも吊り下げられたような形態になって固定状態が安定する。
【0010】
本発明では、胴壁が下拡がり形状に形成された2つの当該浴室用椅子において、一方の浴室用椅子の胴壁が他方の浴室用椅子の胴壁に上下方向で積み重ね状に外嵌合可能であると共に、上段側の浴室用椅子の胴壁に設けられている上記凹部が、下段側の浴室用椅子の座板部と上段側の浴室用椅子の座板部との相互間に形成される隙間に配備されるようになっていることが望ましい。これによれば、凹部が胴壁の内面側に突き出すような形態で形成されていても、浴室用椅子を積み重ねて片付けたときに、胴壁に設けられている積み重ね状態ががたつきのない安定した状態になるという利点がある。
【0011】
本発明では、胴壁に具備された平坦面に凹部を閉塞している上記蓋体の外表面が面一に連続し、かつ、胴壁に、上記蓋体の外表面よりも突出する部位が存在していない、という構成を採用することが望ましい。これによれば、蓋体の外表面の全体が壁パネルに接触した状態で浴室用椅子が壁パネルに吸着固定されるために、磁石の吸着力が弱められることなく浴室用椅子の固定に有効に使われるようになる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る浴室用椅子は、磁石を利用して壁パネルに吸着固定させて片付けることが可能であるだけでなく、特に、高さの高い浴室用椅子であっても、壁パネルに対する吸着部分に加わる重量がそれほど大きくならないために、磁石にかかるコストが低減されて当該浴室用椅子を安価に提供することが可能なる。その上、壁パネルに浴室用椅子を起立姿勢で固定するようになるので、椅子の内面に付着している水滴が流れ落ちやすくなり、それだけ水切り性が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る浴室用椅子の概略斜視図である。
図2図1の浴室用椅子の縦断側面図である。
図3図1の浴室用椅子を積み重ねた状態の縦断側面図である。
図4】他の実施形態に係る椅子の縦断側面図である。
図5図4の椅子を積み重ねた状態の縦断側面図である。
図6】凹部、磁石及び蓋体の分解斜視図である。
図7】磁石収容箇所の横断平面図である。
図8】浴室用椅子を壁パネルに吸着固定した状態を例示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る浴室用椅子(以下、「椅子」という。)100の概略斜視図、図2図1の椅子100の縦断側面図、図3図1の椅子100を積み重ねた状態の縦断側面図である。
【0015】
図1のように、椅子100は、平面視略矩形の座板部10の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁20が下向きに連成されてなる。そして、座板部10の中央に水抜き開口11が備わっていると共に、胴壁20の4箇所の下端コーナー部には外側に向けて膨らみ出た補強用の枠部12が具備され、さらに、胴壁20の下端部の90度置きの4箇所に水逃がし用の凹入部13が備わっている。また、胴壁20には、座板部10の周縁の一部である後縁から立ち上げられた腰当て部21が備わっている。この椅子100は、樹脂で一体成形されている。なお、座板部10は形状は円形や他の形状であってもよい。
【0016】
図2のように、胴壁20の一部を形成している腰当て部21は中空Hを有する二重壁構造に形成され、その外壁部分に磁石30を収容した凹部22が設けられていて、この凹部22が、腰当て部21の外表面で露出している蓋体40により水密に閉塞されている。また、胴壁20は前後左右の4箇所の外表面のそれぞれが平坦面に形成されていると共に、それらの4箇所の外表面同士は滑らかな湾曲面によって連続している。さらに、図示のように胴壁20は下拡がり形状に形成されている。そして、図3のように、2つの当該浴室用椅子100,100において、一方の浴室用椅子100の胴壁20を他方の椅子100,100の胴壁20,20に上下方向で積み重ね状に外嵌合することができるようになっている。この実施形態のように、磁石30を収容した凹部22を腰当て部21の中空Hを有する二重壁構造の外壁部分に形成しておくと、図3のように2つの椅子100,100を積み重ねたときに凹部22が胴壁20の内側に突き出すことがないので、この凹部22が積み重ねのじゃまになってがたつきを生じる、ということが起こらなくなり、積み重ね状態が安定する。
【0017】
図4は他の実施形態に係る椅子100の縦断側面図、図5図4の椅子100を積み重ねた状態の縦断側面図である。図4に示した椅子100では、胴壁20における腰当て部21のやや下方部位に磁石30を収容した凹部22が設けられていて、この凹部22が胴壁20の内側に突き出ている。また、凹部22が蓋体40により閉塞されている。胴壁20の外表面の形状や、胴壁20が下拡がり形状に形成されている点は、図2に示した椅子100と同様である。図5のように、この実施形態に係る2つの浴室用椅子100,100においては、図3を参照して説明したところと同様に、一方の浴室用椅子100の胴壁20を他方の浴室用椅子100の胴壁20に上下方向で積み重ね状に外嵌合することができるようになっている。そして、上段側の一方の椅子100の胴壁20に設けられている凹部22が、下段側の他方の椅子100の座板部10と上段側の椅子の座板部10との相互間に形成される隙間Sに配備されるようになっている。このため、凹部22が胴壁20の内面側に突き出すような形態で形成されているにもかかわらず、凹部22が積み重ねのじゃまになってがたつきを生じる、ということが起こらないので積み重ね状態が安定する。
【0018】
図6は凹部22、磁石30及び蓋体40の分解斜視図、図7は磁石収容部位の横断平面図である。また、図8は椅子100を壁パネル200に吸着固定した状態を例示した側面図である。
【0019】
図6のように、図例では胴壁20(腰当て部21を含む。)に設けられている凹部22が矩形に形成されていて、この凹部22に矩形の磁石30が収容される。そして、凹部22に装着された蓋体40によって凹部22が閉塞される。蓋体40は接着剤などの接合手段を用いて凹部22の開口部位に固着される。また、磁石30は、凹部22内で動かないように位置決めされる。図7のように、蓋体40の外表面は、胴壁20の外表面と面一になっている。
【0020】
以上説明した椅子100は、胴壁20の凹部22に収容した磁石30を利用して、蓋体40を浴室の磁性面である壁パネルに吸着固定することが可能である。この場合、図1に示したように胴壁20の下端コーナー部に外側に向けて膨らみ出た補強用の枠部12が具備されていると、壁パネル200に接触した枠部12がじゃまになって蓋体40と壁パネル200との間に隙間が生じ、磁石30の吸着力が有効に作用しなくなるおそれがある。そこで、上記した2つの実施形態では、図1に示したように、胴壁20の後側2箇所の枠部12,12の一部を欠如することによって、それらの枠部12,12に、凹部22が設けられている胴壁20の平坦な外表面(背面)と面一の平坦面14,14を形成している。こうしておくと、凹部22が設けられている胴壁20の平坦な外表面と面一の平坦面14,14とが同一の仮想平面上に位置するようになる。このため、図8のように、磁性面である浴室の壁パネル200に椅子100を吸着固定したときに、椅子100の凹部22が設けられている胴壁20の平坦な外表面(背面)と2つの枠部21,21の平坦面14,14とが壁パネル200に接触し、かつ、蓋体40の外表面の全体が壁パネル200に隙間を生じずに吸着して磁石30の吸着力が有効に作用する。この作用は、要するに、胴壁20に具備された平坦面に凹部22を閉塞している蓋体40の外表面が面一に連続し、かつ、胴壁20に、蓋体40の外表面よりも突出する部位が存在していないという構成を採用することによって発揮される。
【0021】
上記した椅子100は、壁パネル200に起立姿勢で吸着固定されるので、高さの高い椅子100であっても、壁パネル200から長く出っ張ることがなくなって浴室を掃除するときなどにじゃまになりにくいだけでなく、壁パネル200に対する吸着部分に加わる重量がそれほど大きくならないために、磁石30の吸着力をいたづらに大きくする必要がなくなり、磁石30にかかるコストが低減されて椅子100を安価に提供しやすくなる。その上、椅子100を起立姿勢で固定するようになるので、椅子100の座板部10や胴壁20の内面に付着している水滴が流れ落ちやすくなり、それだけ水切り性も向上することになる。そのほか、図2のように、椅子100の高位の腰当て部21に設けた凹部22に磁石30を収容しておくと、壁パネルに吸着固定された椅子100があたかも吊り下げられたような形態になるために固定状態が安定するという利点がある。
【0022】
以上説明したように、上記した椅子100では、浴室や浴槽を掃除したりするときに椅子100がじゃまにならないように壁パネル200に吸着固定して片付けておくことができるという利便性がある。また、温泉や公衆浴場などのように多くの椅子100を使用する場所では、それらの椅子100を、図3図5のように積み重ねてコンパクトな形態で片付けておくことができるという利便性もある。
【符号の説明】
【0023】
10 座板部
20 胴壁
30 磁石
22 凹部
40 蓋体
21 腰当て部
100 椅子
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座板部の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁が下向きに連成された浴室用椅子であって、
胴壁の一部に磁石を収容した凹部が設けられ、この凹部が蓋体により閉塞されており、胴壁が下拡がり形状に形成された2つの当該浴室用椅子において、一方の浴室用椅子の胴壁が他方の浴室用椅子の胴壁に上下方向で積み重ね状に外嵌合可能であると共に、上記胴壁が座板部の周縁の一部から立ち上げられ腰当て部を有し、この腰当て部に上記凹部が設けられて、この凹部を閉塞している上記蓋体がこの腰当て部の外表面で露出していることを特徴とする浴室用椅子。
【請求項2】
座板部の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁が下向きに連成された浴室用椅子であって、
胴壁の一部に磁石を収容した凹部が設けられ、この凹部が蓋体により閉塞されており、
胴壁が下拡がり形状に形成された2つの当該浴室用椅子において、一方の浴室用椅子の胴壁が他方の浴室用椅子の胴壁に上下方向で積み重ね状に外嵌合可能であると共に、上段側の浴室用椅子の胴壁に設けられている上記凹部が、下段側の浴室用椅子の座板部と上段側の浴室用椅子の座板部との相互間に形成される隙間に配備されるようになっていることを特徴とする浴室用椅子。
【請求項3】
胴壁に具備された平坦面に凹部を閉塞している上記蓋体の外表面が面一に連続し、かつ、胴壁に、上記蓋体の外表面よりも突出する部位が存在していない請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載した浴室用椅子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室で使用される浴室用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
先行例として、浴槽に入るときの階段として利用したり、浴槽内でくつろぐときに腰掛けて使用することのできる風呂用腰掛けが提案されていた(特許文献1参照)。このものは、腰掛けの足にゴム磁石を固定したものであり、このゴム磁石を利用して腰掛けを浴槽の底や洗い場の床などの自由な場所に滑らないように固定できるようにしたものであると考えられる。
【0003】
他の先行例として、浴室用椅子を支持部とこの支持部に着脱可能な座面とに分割し、座面の上面部に磁石を装備させたものが提案されている(特許文献2参照)。この浴室用椅子は、座面に装備されている磁石を利用して磁性面である浴室の壁パネルの表面に横倒し姿勢で吸着固定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53-124147号公報
【特許文献2】特開2001-104194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲の2つの先行例のうち、特許文献2によって提案されている浴室用椅子は、壁パネルに吸着固定したときに浴室用椅子が横倒し姿勢になる。このため、椅子の高さが高いものでは、壁パネルに吸着固定したときに横倒し姿勢の椅子が壁パネルから長く出っ張ってじゃまになりやすいだけでなく、座面の吸着部分に加わる重量が大きくなり、それに見合って吸着力の大きな磁石を用いる必要があるためにコスト高になりやすいという問題があると云える。また、壁パネルに浴室用椅子を横倒し姿勢で固定すると、椅子の内面に付着している水滴が流れ落ちにくくなり、それだけ水切り性が低下するおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は以上の状況の下でなされたものであり、安価に提供しやすく、しかも、磁石を使用して壁パネルに吸着固定して片付けるときの姿勢が、じゃまになりにくくて水切り性のよい起立姿勢になるようにした浴室用椅子を提供することを目的としている。また、積み重ねて片付けたときに、積み重ね状態ががたつきのない安定した状態となり、コンパクトな形態で片付けておくことができる浴室用椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る浴室用椅子は、座板部の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁が下向きに連成された浴室用椅子であって、胴壁の一部に磁石を収容した凹部が設けられ、この凹部が蓋体により閉塞されており、胴壁が下拡がり形状に形成された2つの当該浴室用椅子において、一方の浴室用椅子の胴壁が他方の浴室用椅子の胴壁に上下方向で積み重ね状に外嵌合可能であると共に、上記胴壁が座板部の周縁の一部から立ち上げられ腰当て部を有し、この腰当て部に上記凹部が設けられて、この凹部を閉塞している上記蓋体がこの腰当て部の外表面で露出しているというものである。
【0008】
この構成を有する浴室用椅子によれば、使用しないときに磁石を利用して磁性面である浴室の壁パネルに吸着固定しておくことが可能である。このため、浴室用椅子を浴室の壁パネルに吸着固定するという方法で片付けられるようになる。特に、この発明では、浴室用椅子の胴壁に設けた凹部に磁石を収容し、その凹部を蓋体で閉塞しているので、磁石を利用して浴室の壁パネルに吸着固定した浴室用椅子が起立姿勢になる。そのため、高さの高い浴室用椅子であっても、壁パネルから長く出っ張ることがないのでじゃまになりにくい。また、壁パネルに対する吸着部分に加わる重量がそれほど大きくならないために、磁石の吸着力をいたづらに大きくする必要がなくなって磁石にかかるコストが低減され、当該浴室用椅子を安価に提供しやすくなる。その上、壁パネルに浴室用椅子を起立姿勢で固定するようになるので、椅子の内面に付着している水滴が流れ落ちやすくなり、それだけ水切り性が向上することになる。
【0009】
また、浴室用椅子を積み重ねて片付けたときに、腰当て部に設けられている凹部がじゃまにならないので、積み重ね状態ががたつきのない安定した状態になるという利点がある。また、浴室用椅子の高位の腰当て部が壁パネルに吸着固定されるので、浴室用椅子があたかも吊り下げられたような形態になって固定状態が安定する。
【0010】
本発明では、座板部の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁が下向きに連成された浴室用椅子であって、胴壁の一部に磁石を収容した凹部が設けられ、この凹部が蓋体により閉塞されており、胴壁が下拡がり形状に形成された2つの当該浴室用椅子において、一方の浴室用椅子の胴壁が他方の浴室用椅子の胴壁に上下方向で積み重ね状に外嵌合可能であると共に、上段側の浴室用椅子の胴壁に設けられている上記凹部が、下段側の浴室用椅子の座板部と上段側の浴室用椅子の座板部との相互間に形成される隙間に配備されるようになっている、という構成を採用することができる。これによれば、凹部が胴壁の内面側に突き出すような形態で形成されていても、浴室用椅子を積み重ねて片付けたときに、胴壁に設けられている凹部が積み重ねのじゃまになってがたつきを生じる、ということが起こらないので積み重ね状態ががたつきのない安定した状態になるという利点がある。
【0011】
本発明では、胴壁に具備された平坦面に凹部を閉塞している上記蓋体の外表面が面一に連続し、かつ、胴壁に、上記蓋体の外表面よりも突出する部位が存在していない、という構成を採用することが望ましい。これによれば、蓋体の外表面の全体が壁パネルに接触した状態で浴室用椅子が壁パネルに吸着固定されるために、磁石の吸着力が弱められることなく浴室用椅子の固定に有効に使われるようになる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る浴室用椅子は、磁石を利用して壁パネルに吸着固定させて片付けることが可能であるだけでなく、特に、高さの高い浴室用椅子であっても、壁パネルに対する吸着部分に加わる重量がそれほど大きくならないために、磁石にかかるコストが低減されて当該浴室用椅子を安価に提供することが可能なる。その上、壁パネルに浴室用椅子を起立姿勢で固定するようになるので、椅子の内面に付着している水滴が流れ落ちやすくなり、それだけ水切り性が向上することになる。また、本発明に係る浴室用椅子は、積み重ねて片付けたときに、積み重ね状態ががたつきのない安定した状態となり、コンパクトな形態で片付けておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る浴室用椅子の概略斜視図である。
図2図1の浴室用椅子の縦断側面図である。
図3図1の浴室用椅子を積み重ねた状態の縦断側面図である。
図4】他の実施形態に係る椅子の縦断側面図である。
図5図4の椅子を積み重ねた状態の縦断側面図である。
図6】凹部、磁石及び蓋体の分解斜視図である。
図7】磁石収容箇所の横断平面図である。
図8】浴室用椅子を壁パネルに吸着固定した状態を例示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る浴室用椅子(以下、「椅子」という。)100の概略斜視図、図2図1の椅子100の縦断側面図、図3図1の椅子100を積み重ねた状態の縦断側面図である。
【0015】
図1のように、椅子100は、平面視略矩形の座板部10の周縁から脚体として作用する下縁開口状の胴壁20が下向きに連成されてなる。そして、座板部10の中央に水抜き開口11が備わっていると共に、胴壁20の4箇所の下端コーナー部には外側に向けて膨らみ出た補強用の枠部12が具備され、さらに、胴壁20の下端部の90度置きの4箇所に水逃がし用の凹入部13が備わっている。また、胴壁20には、座板部10の周縁の一部である後縁から立ち上げられた腰当て部21が備わっている。この椅子100は、樹脂で一体成形されている。なお、座板部10は形状は円形や他の形状であってもよい。
【0016】
図2のように、胴壁20の一部を形成している腰当て部21は中空Hを有する二重壁構造に形成され、その外壁部分に磁石30を収容した凹部22が設けられていて、この凹部22が、腰当て部21の外表面で露出している蓋体40により水密に閉塞されている。また、胴壁20は前後左右の4箇所の外表面のそれぞれが平坦面に形成されていると共に、それらの4箇所の外表面同士は滑らかな湾曲面によって連続している。さらに、図示のように胴壁20は下拡がり形状に形成されている。そして、図3のように、2つの当該浴室用椅子100,100において、一方の浴室用椅子100の胴壁20を他方の椅子100,100の胴壁20,20に上下方向で積み重ね状に外嵌合することができるようになっている。この実施形態のように、磁石30を収容した凹部22を腰当て部21の中空Hを有する二重壁構造の外壁部分に形成しておくと、図3のように2つの椅子100,100を積み重ねたときに凹部22が胴壁20の内側に突き出すことがないので、この凹部22が積み重ねのじゃまになってがたつきを生じる、ということが起こらなくなり、積み重ね状態が安定する。
【0017】
図4は他の実施形態に係る椅子100の縦断側面図、図5図4の椅子100を積み重ねた状態の縦断側面図である。図4に示した椅子100では、胴壁20における腰当て部21のやや下方部位に磁石30を収容した凹部22が設けられていて、この凹部22が胴壁20の内側に突き出ている。また、凹部22が蓋体40により閉塞されている。胴壁20の外表面の形状や、胴壁20が下拡がり形状に形成されている点は、図2に示した椅子100と同様である。図5のように、この実施形態に係る2つの浴室用椅子100,100においては、図3を参照して説明したところと同様に、一方の浴室用椅子100の胴壁20を他方の浴室用椅子100の胴壁20に上下方向で積み重ね状に外嵌合することができるようになっている。そして、上段側の一方の椅子100の胴壁20に設けられている凹部22が、下段側の他方の椅子100の座板部10と上段側の椅子の座板部10との相互間に形成される隙間Sに配備されるようになっている。このため、凹部22が胴壁20の内面側に突き出すような形態で形成されているにもかかわらず、凹部22が積み重ねのじゃまになってがたつきを生じる、ということが起こらないので積み重ね状態が安定する。
【0018】
図6は凹部22、磁石30及び蓋体40の分解斜視図、図7は磁石収容部位の横断平面図である。また、図8は椅子100を壁パネル200に吸着固定した状態を例示した側面図である。
【0019】
図6のように、図例では胴壁20(腰当て部21を含む。)に設けられている凹部22が矩形に形成されていて、この凹部22に矩形の磁石30が収容される。そして、凹部22に装着された蓋体40によって凹部22が閉塞される。蓋体40は接着剤などの接合手段を用いて凹部22の開口部位に固着される。また、磁石30は、凹部22内で動かないように位置決めされる。図7のように、蓋体40の外表面は、胴壁20の外表面と面一になっている。
【0020】
以上説明した椅子100は、胴壁20の凹部22に収容した磁石30を利用して、蓋体40を浴室の磁性面である壁パネルに吸着固定することが可能である。この場合、図1に示したように胴壁20の下端コーナー部に外側に向けて膨らみ出た補強用の枠部12が具備されていると、壁パネル200に接触した枠部12がじゃまになって蓋体40と壁パネル200との間に隙間が生じ、磁石30の吸着力が有効に作用しなくなるおそれがある。そこで、上記した2つの実施形態では、図1に示したように、胴壁20の後側2箇所の枠部12,12の一部を欠如することによって、それらの枠部12,12に、凹部22が設けられている胴壁20の平坦な外表面(背面)と面一の平坦面14,14を形成している。こうしておくと、凹部22が設けられている胴壁20の平坦な外表面と面一の平坦面14,14とが同一の仮想平面上に位置するようになる。このため、図8のように、磁性面である浴室の壁パネル200に椅子100を吸着固定したときに、椅子100の凹部22が設けられている胴壁20の平坦な外表面(背面)と2つの枠部21,21の平坦面14,14とが壁パネル200に接触し、かつ、蓋体40の外表面の全体が壁パネル200に隙間を生じずに吸着して磁石30の吸着力が有効に作用する。この作用は、要するに、胴壁20に具備された平坦面に凹部22を閉塞している蓋体40の外表面が面一に連続し、かつ、胴壁20に、蓋体40の外表面よりも突出する部位が存在していないという構成を採用することによって発揮される。
【0021】
上記した椅子100は、壁パネル200に起立姿勢で吸着固定されるので、高さの高い椅子100であっても、壁パネル200から長く出っ張ることがなくなって浴室を掃除するときなどにじゃまになりにくいだけでなく、壁パネル200に対する吸着部分に加わる重量がそれほど大きくならないために、磁石30の吸着力をいたづらに大きくする必要がなくなり、磁石30にかかるコストが低減されて椅子100を安価に提供しやすくなる。その上、椅子100を起立姿勢で固定するようになるので、椅子100の座板部10や胴壁20の内面に付着している水滴が流れ落ちやすくなり、それだけ水切り性も向上することになる。そのほか、図2のように、椅子100の高位の腰当て部21に設けた凹部22に磁石30を収容しておくと、壁パネルに吸着固定された椅子100があたかも吊り下げられたような形態になるために固定状態が安定するという利点がある。
【0022】
以上説明したように、上記した椅子100では、浴室や浴槽を掃除したりするときに椅子100がじゃまにならないように壁パネル200に吸着固定して片付けておくことができるという利便性がある。また、温泉や公衆浴場などのように多くの椅子100を使用する場所では、それらの椅子100を、図3図5のように積み重ねてコンパクトな形態で片付けておくことができるという利便性もある。
【符号の説明】
【0023】
10 座板部
20 胴壁
30 磁石
22 凹部
40 蓋体
21 腰当て部
100 椅子
S 隙間