(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133535
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】撮影装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G06T 7/70 20170101AFI20230914BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230914BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20230914BHJP
G06T 7/536 20170101ALI20230914BHJP
【FI】
G06T7/70 A
G06T7/00 350B
G06T7/00 650Z
G06T7/20 100
G06T7/536
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023126822
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2021163359の分割
【原出願日】2015-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克彦
(72)【発明者】
【氏名】杉江 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 理
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏平
(57)【要約】
【課題】車両前方を撮影する撮影方向が変化した場合であっても、好適に画像中の消失点位置を認識することが可能な撮影装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、車両の前方風景を撮影する前方撮影カメラ4と、基準対象移動判定部16と、消失点学習部17と、制御部19とを備える。消失点学習部17は、前方撮影カメラ4により撮影された前方画像Imを解析し、当該前方画像Imに含まれる消失点の位置を学習する。基準対象移動判定部16は、車両が走行中における前方画像Imを解析し、当該前方画像Imに含まれ、車両の一部となる基準対象物Tagを特定する。制御部19は、基準対象移動判定部16により特定された対象物の前方画像Im中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および距離に基づいて、消失点学習部17により学習された消失点の位置を補正する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される撮影装置であって、
前記車両の前方を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された前方画像に含まれる消失点の位置を学習する学習手段と、
前記前方画像に含まれる基準対象物を特定する特定手段と、
前記基準対象物の前記前方画像中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および移動量に基づいて、前記学習手段により学習された前記消失点の位置を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方画像中の消失点の位置を学習する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像中の消失点の位置を学習する技術が知られている。例えば、特許文献1には、カメラによる撮像データから検出した消失点位置のうち、カメラが撮像する領域内で予め特定された消失点位置又は学習済みの消失点位置とのずれ量が所定範囲外の消失点を、学習の対象外とみなす撮影装置が開示されている。また、特許文献2には、ハーフミラー、液晶ディスプレイ、及び車両前方を撮影するカメラユニットを備え、ルームミラーに対して、背面の上下クランパで上下から挟み付ける様に取り付けるドライブレコーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-189517号公報
【特許文献2】特開2014-229049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、現在の消失点位置とのずれ量を求めるのに適切でないデータ(例えば、カーブ路により一時的に見かけ上の消失点位置がずれた場合のデータ)を積極的に除外できるようにすることで消失点の学習精度を上げている。一方、特許文献2に示されるようなルームミラーへ取り付ける撮影装置が撮影した画像を用いて消失点を学習しようとする場合、例えば運転者が変わってルームミラーの角度を変化させた際などに、ルームミラーの角度と共にカメラの撮影方向が急峻に変化してしまう。この場合、特許文献1の技術では、ルームミラーの角度変化後の消失点の学習ができなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、車両前方を撮影する撮影方向が変化した場合であっても、好適に画像中の消失点位置を認識することが可能な撮影装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、車両に搭載される撮影装置であって、前記車両の前方を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された前方画像に含まれる消失点の位置を学習する学習手段と、前記前方画像に含まれる基準対象物を特定する特定手段と、前記基準対象物の前記前方画像中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および移動量に基づいて、前記学習手段により学習された前記消失点の位置を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、車両に搭載される撮影装置が実行する制御方法であって、前記車両の前方を撮影する撮影手段により撮影された前方画像に含まれる消失点の位置を学習する学習工程と、前記前方画像に含まれる基準対象物を特定する特定工程と、前記基準対象物の前記前方画像中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および移動量に基づいて、前記学習工程により学習された前記消失点の位置を補正する補正工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、車両に搭載されるコンピュータが実行するプログラムであって、前記車両の前方を撮影する撮影手段により撮影された前方画像に含まれる消失点の位置を学習する学習手段と、前記前方画像に含まれる基準前対象物を特定する特定手段と、前記基準対象物の前記前方画像中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および移動量に基づいて、前記学習手段により学習された前記消失点の位置を補正する補正手段として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係るナビゲーション装置の構成である。
【
図3】学習消失点補正処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】基準対象物の移動検知方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、車両に搭載される撮影装置であって、前記車両の前方風景を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された前方画像を解析し、当該前方画像に含まれる消失点の位置を学習する学習手段と、前記車両が走行中における前記前方画像を解析し、当該前方画像に含まれ、前記車両の一部となる対象物を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された前記対象物の前記前方画像中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および距離に基づいて、前記学習手段により学習された前記消失点の位置を補正する補正手段と、を備える。
【0011】
上記撮影装置は、車両の前方風景を撮影する撮影手段と、学習手段と、特定手段と、補正手段とを備える。学習手段は、撮影手段により撮影された前方画像を解析し、当該前方画像に含まれる消失点の位置を学習する。特定手段は、車両が走行中における前方画像を解析し、当該前方画像に含まれ、車両の一部となる対象物を特定する。補正手段は、特定手段により特定された対象物の前方画像中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および距離に基づいて、学習手段により学習された消失点の位置を補正する。撮影装置は、この態様により、撮影手段の撮影方向が急峻に変化した場合であっても、速やかに学習した消失点位置を補正して活用することができる。
【0012】
上記撮影装置の一態様では、前記車両のルームミラーに内蔵される、または前記ルームミラーに取り付けられる。この態様では、ルームミラーの角度調整により撮影方向が変化する。この場合であっても、撮影装置は、速やかに学習した消失点位置を補正して活用することができる。
【0013】
上記撮影装置の他の一態様では、前記補正手段は、前記車両に加わる加速度を検出する加速度センサが基準値以上の加速度を検出した場合に、前記対象物の前記前方画像中の位置が移動したか否かを判定し、前記対象物が移動したと判定した場合に前記消失点の位置を補正する。この態様では、撮影装置は、加速度センサの出力に基づき撮影方向が変わった可能性があると判断した場合のみ対象物の移動の有無を判定するため、処理負荷を好適に低減することができる。
【0014】
上記撮影装置の他の一態様では、前記補正手段は、前記車両の搭乗者による前記ルームミラーへの接触を検出する接触センサの出力に基づき、前記対象物の前記前方画像中の位置が移動したか否かを判定し、前記対象物が移動したと判定した場合に前記消失点の位置を補正する。この態様によっても、撮影装置は、撮影方向が変わった可能性があると判断した場合のみ対象物の移動の有無を判定するため、処理負荷を好適に低減することができる。
【0015】
上記撮影装置の他の一態様では、前記学習手段は、前記補正手段により前記消失点の位置が補正された場合、当該補正された消失点の位置に基づき前記消失点の位置の学習を再開する。この態様により、撮影装置は、前方画像中の消失点の位置が変化した場合であっても、位置が変化する前の処理結果を好適に活用して学習を再開することができる。
【0016】
本発明に係る他の実施形態では、車両に搭載される撮影装置が実行する制御方法であって、前記車両の前方風景を撮影する撮影手段により撮影された前方画像を解析し、当該前方画像に含まれる消失点の位置を学習する学習工程と、前記車両が走行中における前記前方画像を解析し、当該前方画像に含まれ、前記車両の一部となる対象物を特定する特定工程と、前記特定工程により特定された前記対象物の前記前方画像中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および距離に基づいて、前記学習工程により学習された前記消失点の位置を補正する補正工程と、を有する。撮影装置は、この制御方法を実行することで、撮影手段の撮影方向が急峻に変化した場合であっても、速やかに学習した消失点位置を補正して活用することができる。
【0017】
本発明に係る他の実施形態では、車両に搭載されるコンピュータが実行するプログラムであって、前記車両の前方風景を撮影する撮影手段により撮影された前方画像を解析し、当該前方画像に含まれる消失点の位置を学習する学習手段と、前記車両が走行中における前記前方画像を解析し、当該前方画像に含まれ、前記車両の一部となる対象物を特定する特定手段と、前記特定手段により特定された前記対象物の前記前方画像中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および距離に基づいて、前記学習手段により学習された前記消失点の位置を補正する補正手段として前記コンピュータを機能させる。コンピュータは、このプログラムを実行することで、撮影手段の撮影方向が急峻に変化した場合であっても、速やかに学習した消失点位置を補正して活用することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。以後において、「撮影方向」とは、カメラの正面となる方向であって、カメラの視野(撮影範囲)の中心を通る方向を指すものとする。
【0019】
[ナビゲーション装置の構成]
図1は、実施例に係るナビゲーション装置1の構成を示す。具体的には、
図1(A)は、ナビゲーション装置1が車室内のルームミラー12に装着された状態(単に「装着状態」とも呼ぶ。)における正面図を示し、
図1(B)は、装着状態におけるナビゲーション装置1の背面図を示し、
図1(C)は、装着状態におけるナビゲーション装置1の上面図を示す。以後では、ナビゲーション装置1の長手方向を「Y軸方向」、ナビゲーション装置1の短手方向を「X軸方向」、X軸及びY軸と垂直な方向を「Z軸方向」とし、各正方向を図のように定める。
【0020】
図1に示すナビゲーション装置1は、内蔵二次電池により駆動され、主に、ミラー部13と、前方撮影カメラ4と、ミラー部13の背面に存在するディスプレイ(表示手段)10と、挟持部14A~14Dとを有する。そして、ナビゲーション装置1は、装着状態において、挟持部14A~14Dがルームミラー12を挟持することでルームミラー12に対して固定される。そして、ナビゲーション装置1の装着状態では、ルームミラー12の鏡面と、ナビゲーション装置1の背面とが重なる。ナビゲーション装置1は、本発明における「撮影装置」の一例である。
【0021】
前方撮影カメラ4は、車両の前方を撮影した画像(「前方画像Im」とも呼ぶ。)を生成するためのカメラであり、ナビゲーション装置1の装着状態において、ルームミラー12と重ならないナビゲーション装置1の背面部分に配置される。また、前方撮影カメラ4は、ナビゲーション装置1の筺体内に回転可能に収容されており、図示しないリモートコントローラ等への操作に基づき、撮影方向が調整される。
【0022】
ミラー部13は、例えばハーフミラーであって、入射した一部の光を透過させ、その他の光を反射させる。これにより、ミラー部13は、背面にあるディスプレイ10が非発光状態では車両の後方風景を映す通常のミラーとして機能し、ディスプレイ10が発光状態では、ディスプレイ10から出射された光を透過させることで、運転者にディスプレイ10の表示内容を視認させる。ディスプレイ10は、前方撮影カメラ4が撮影した前方画像Imに、運転者を案内するための文字や図形などを表す案内画像を重畳させて表示する。
【0023】
ナビゲーション装置1は、前方画像Imを対象とした画像認識処理により、車線、信号機の点灯状態、先行車両などを検知し、検知結果に基づくテキスト画像や図形画像などを前方画像Imに重ねて表示したり、音声情報を出力したりする。ここで、ナビゲーション装置1は、処理負荷の低減のため、前方画像Im中に含まれる車線、信号機、先行車両などの検出処理を、前方画像Im中の消失点に基づき領域を限定して行う。例えば、ナビゲーション装置2は、信号機を検出する場合、消失点より上側の画像領域を検出範囲として信号機検出を行う。また、ナビゲーション装置1は、後述するように、ドライブレコーダとしても機能する。
【0024】
図2は、ナビゲーション装置1の機能ブロック図である。
図2に示すように、ナビゲーション装置1は、前方撮影カメラ4と、現在位置検出部5と、加速度センサ6と、ディスプレイ10と、画像バッファ部11と、不揮発性メモリ15と、基準対象移動判定部16と、消失点学習部17と、制御部19とを備える。
【0025】
現在位置検出部5は、例えばGPS受信機であり、車両の現在位置を示す情報を制御部19に供給する。加速度センサ6は、X軸、Y軸、及びZ軸の3軸方向の加速度を検出し、その検出信号を制御部19へ供給する。
【0026】
不揮発性メモリ15は、例えばSDカードなどの記憶媒体であり、制御部19の制御に基づき、前方撮影カメラ4が生成した前方画像Im等を記憶する。
【0027】
基準対象移動判定部16は、ルームミラー12の角度(「ミラー角」とも呼ぶ。)が変化した可能性があると判断した場合に、前方撮影カメラ4の撮影範囲内に存在する車両の一部(「基準対象物Tag」とも呼ぶ。)の前方画像Im中での移動方向及び移動距離を検知する。そして、基準対象移動判定部16は、検知した情報を制御部19へ供給する。ここで、基準対象移動判定部16は、加速度センサ6の出力に基づき、ミラー角が変化した可能性の有無を判定する。基準対象移動判定部16の処理の詳細については、[基準対象物の移動検知]のセクションで説明する。
【0028】
消失点学習部17は、車両の真正面方向に存在する不変的な消失点を学習する。具体的には、消失点学習部17は、走行車線の両側に塗布されている白線や、路面と縁石との境界線などを前方画像Imの画像解析により検出する。そして、消失点学習部17は、検出した左右の白線や境界線の車両進行方向の延長線上の交点である車線消失点の前方画像Im上の座標を、消失点の学習サンプル(「サンプル消失点座標CS」とも呼ぶ。)として記憶する。そして、消失点学習部17は、時系列で取得した複数のサンプル消失点座標CSを、移動平均などの統計的手法により平均化することで消失点を学習する。以後では、消失点学習部17が統計的手法により複数のサンプル消失点座標CSから学習した消失点の前方画像Im上の座標を「学習消失点座標CL」とも呼ぶ。
【0029】
制御部19は、CPU、CPUが実行する制御プログラムやデータなどを記憶するROM、CPUが動作する際のワークメモリとして各種データが逐次読み書きされるRAMなどを有し、ナビゲーション装置1の全般的な制御を行う。
【0030】
例えば、制御部19は、所定時間分の前方画像Imを画像バッファ部11に上書きし、加速度センサ6により所定値以上の加速度を検出した場合に、画像バッファ部11に保存した前方画像Imを不揮発性メモリ15に書き込む。また、制御部19は、撮影画像Imに基づき、公知の画像認識技術により、前方車両の検出、車線の検出、信号機の点灯色の検出などの種々の認識処理を行い、その認識結果に基づく案内画像を前方画像Imに重畳させてディスプレイ10に表示させる。このとき、制御部19は、消失点学習部17が算出した学習消失点座標CLに基づき、前方画像Im内での検出対象の領域を限定する。
【0031】
さらに、制御部19は、基準対象移動判定部16から基準対象物Tagの前方画像Im内での移動方向及び移動距離の情報を受信した場合に、当該移動方向及び移動距離に基づき学習消失点座標CLを補正する。そして、制御部19は、補正後の学習消失点座標CLを消失点学習部17に通知する。
【0032】
なお、ナビゲーション装置1は、
図2に示す各要素に加え、音声出力部などをさらに備えてもよい。基準対象移動判定部16は、本発明における「特定手段」、消失点学習部17は、本発明における「学習手段」、制御部19は、本発明における「補正手段」、基準対象移動判定部16、消失点学習部17、制御部19は、本発明におけるプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0033】
[処理フロー]
図3は、学習消失点座標CLを補正する処理(「学習消失点補正処理」とも呼ぶ。)の手順を示すフローチャートである。
【0034】
まず、基準対象移動判定部16は、車両の走行中の前方画像Imを時系列で比較し、前方画像Imでの位置が変化しない車両の一部を基準対象物Tagとして設定し、基準対象物Tagの色情報、輪郭の座標情報、及び輪郭の角部分などの輪郭内の特徴的な部分(「特徴点」とも呼ぶ。)の座標情報を記憶する(ステップS101)。
【0035】
次に、基準対象移動判定部16は、加速度センサ6の検出信号に基づき、所定の基準値以上の加速度が検知されたか否か判定する(ステップS102)。ここで、「基準値」は、ミラー角が変更されたか否かを判定するための加速度の閾値であり、例えば実験等に基づき予め定められる。この場合、基準対象移動判定部16は、XYZ軸の各加速度のうち最も大きい加速度と基準値とを比較してもよく、3次元空間における加速度のベクトル長と基準値とを比較してもよい。
【0036】
そして、基準対象移動判定部16は、基準値以上の加速度が検知された場合(ステップS102;Yes)、ミラー角が変化した可能性があると判断する。よって、この場合、基準対象移動判定部16は、前方撮影カメラ4から即時に取得した前方画像Imから基準対象物Tagを検出する処理を行い、基準対象物Tagの前方画像Im内での移動距離及び移動方向を算出する(ステップS103)。そして、基準対象移動判定部16は、算出した基準対象物Tagの移動距離及び移動方向の情報を制御部19へ供給する。ステップS103の処理の具体例については、[基準対象物の移動検知]のセクションで説明する。
【0037】
一方、基準対象移動判定部16は、基準値以上の加速度が検知されなかった場合(ステップS102;No)、ミラー角に変更がないと判断し、ステップS101へ処理を戻す。
【0038】
ステップS103の実行後、制御部19は、基準対象移動判定部16から受信した基準対象物Tagの前方画像Im内での移動距離及び移動方向の情報に基づき、基準対象物Tagが前方画像Im内で所定距離以上移動したか否か判定する(ステップS104)。「所定距離」は、例えば、学習消失点座標CLを補正する必要があると判断される画素数に定められる。一般に、ルームミラー12をユーザが操作したことによりルームミラー12が一時的に揺れた場合であっても、ミラー角(即ち前方撮影カメラ4の撮影方向)が最終的に変更されない場合がある。よって、制御部19は、ステップS104により、学習消失点座標CLの補正の要否を最終的に判断する。
【0039】
そして、基準対象物Tagが前方画像Im内で所定距離以上移動している場合(ステップS104;Yes)、制御部19は、学習消失点座標CLを、ステップS103で算出された基準対象物Tagの移動距離及び移動方向に基づき補正する(ステップS105)。そして、制御部19は、補正した学習消失点座標CLを消失点学習部17に通知する。その後、消失点学習部17は、補正された学習消失点座標CLに基づき、消失点の学習を再開する(ステップS106)。この場合、例えば、消失点学習部17は、記憶したサンプル消失点座標CSを全て消去し、補正後の学習消失点座標CLを所定サンプル数分の重みがあるとみなして学習を再開する。他の例では、消失点学習部17は、記憶した全てのサンプル消失点座標CSを上述の基準対象物Tagの移動距離及び移動方向に基づき補正し、補正後のサンプル消失点座標CSを、以後の学習消失点座標CLの算出に用いる。
【0040】
一方、基準対象物Tagが所定距離以上移動していない場合(ステップS104;No)、制御部19は、学習消失点座標CLを補正する必要性がないと判断し、ステップS102へ処理を戻す。
【0041】
[基準対象物の移動検知]
次に、基準対象移動判定部16が
図3のステップS101及びステップS103で実行する処理の具体例について説明する。
【0042】
図4(A)は、ミラー角が調整される前に前方撮影カメラ4が撮影した前方画像Imを示す。
図4(A)の前方画像Imには、車両の一部であるAピラー32と、ダッシュボード33とが表示されている。また、
図4(A)の位置31Aは、消失点学習部17が学習した学習消失点座標CLの位置を示す。
図4(A)に示すように、位置31Aは、車線消失点と重なっている。
【0043】
この場合、基準対象移動判定部16は、
図3のステップS101に基づき、前方画像Imを時系列で比較し、前方画像Imでの位置が変化しないAピラー32及びダッシュボード33を基準対象物Tagとみなす。そして、基準対象移動判定部16は、前方画像Im内におけるAピラー32及びダッシュボード33の輪郭(破線34参照)の座標情報や当該輪郭内の領域の色情報などを記憶する。さらに、基準対象移動判定部16は、基準対象物Tagの特徴点として、Aピラー32及びダッシュボード33の継ぎ目であってこれらの輪郭線の角度が急激に変化している位置35Aを検出し、位置35Aの前方画像Im内での座標情報を記憶する。
【0044】
図4(B)は、ミラー角が調整された後に前方撮影カメラ4が撮影した前方画像Imを示す。
図4(B)では、便宜上、
図4(A)において検出した輪郭を示す破線34及び特徴点を示す位置35Aについても図示されている。
【0045】
図4(B)の例では、基準対象移動判定部16は、所定の基準値以上の加速度が検知されたことから、ステップS103に基づき、
図4(B)に示す前方画像Imから基準対象物Tagを検出する処理を行う。この場合、基準対象移動判定部16は、例えば、
図4(A)の例で記憶した基準対象物Tagの輪郭の座標情報や基準対象物Tagの色情報に基づき、現在の前方画像Im内での基準対象物Tagの輪郭(一点鎖線36参照)及び特徴点に相当する位置35Bを検出する。そして、基準対象移動判定部16は、ミラー角度変化前に検出した特徴点を示す位置35Aからの位置35Bの移動距離及び移動方向を算出する。
図4(B)では、基準対象移動判定部16は、前方画像Imの右方向をX軸の正方向とした場合のX軸での特徴点の移動量「dX」と、前方画像Imの上方向をY軸の正方向とした場合のY軸での特徴点の移動量「dY」とを検出する。
【0046】
図4(C)は、補正後の学習消失点座標CLに対応する位置31Bを示す。この例では、制御部19は、移動量dX、dYに基づく基準対象物Tagの移動距離が所定距離以上であると判断し、学習消失点座標CLを補正する。具体的には、制御部19は、ミラー角の調整前に消失点学習部17が学習した学習消失点座標CLに相当する位置31AからX軸方向に移動量dX及びY方向に移動量dYだけ移動させた位置31Bの座標を、補正後の学習消失点座標CLとして認識する。この場合、位置31Bは、ミラー角変更後に撮影された前方画像Imの車線消失点と重なっている。このように、ナビゲーション装置1は、ミラー角が変更された場合であっても、今までに学習した学習消失点座標CLを有効に活用して現在の学習消失点座標CLを的確に認識することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施例に係るナビゲーション装置1は、車両の前方風景を撮影する前方撮影カメラ4と、基準対象移動判定部16と、消失点学習部17と、制御部19とを備える。消失点学習部17は、前方撮影カメラ4により撮影された前方画像Imを解析し、当該前方画像Imに含まれる消失点の位置を学習する。基準対象移動判定部16は、車両が走行中における前方画像Imを解析し、当該前方画像Imに含まれ、車両の一部となる基準対象物Tagを特定する。制御部19は、基準対象移動判定部16により特定された対象物の前方画像Im中の位置が移動した場合に、当該移動の方向および距離に基づいて、消失点学習部17により学習された消失点の位置を補正する。このようにすることで、ナビゲーション装置1は、前方撮影カメラ4の撮影方向が急峻に変化した場合であっても、速やかに学習した消失点位置を補正して活用することができる。
【0048】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0049】
(変形例1)
ナビゲーション装置1は、加速度センサ6に代えて、又はこれに加えて、ルームミラー12に搭乗者が接触したことを検出するための接触センサを備えていてもよい。
【0050】
この場合、接触センサは、ルームミラー12のミラー面上に設けられたタッチパネルであってもよいし、搭乗者がルームミラー12を角度変更する際に接触するルームミラー12のハウジングあるいはレバーに設けられた感圧スイッチなどであってもよい。この場合、制御部19は、
図3のステップS102において、接触センサの出力信号に基づき、ルームミラー12への接触があると判断した場合に、ミラー角が変更された可能性があると判断し、ステップS103へ処理を進める。
【0051】
(変形例2)
ナビゲーション装置1は、ドライブレコーダの機能を有しなくともよい。この場合、ナビゲーション装置1は、加速度センサ6を有さず、基準対象移動判定部16は、
図3のステップS102の加速度センサ6の出力に基づく判定処理を実行しなくともよい。
【0052】
この場合、基準対象移動判定部16は、ステップS101の実行後、ステップS103において前方画像Im中の基準対象物Tagの移動距離及び移動方向の算出を行い、基準対象物Tagが所定距離以上動いたか否かをステップS104で判定する。即ち、この場合、基準対象移動判定部16は、基準対象物Tagの移動を常時監視し続ける。
【0053】
このように、ナビゲーション装置1は、加速度センサ6を備えない場合であっても、好適にミラー角の変化を検知し、学習消失点座標CLの補正を行うことができる。
【0054】
(変形例3)
上記実施例では、ナビゲーション装置1は、車両に付属する純正のルームミラー12にナビゲーション装置1を挟み込んで保持するための挟持部14A~14Dを備えた。これに代えて、ナビゲーション装置1は、挟持部14A~14Dを備えず、ルームミラーに内蔵され、車両に付属する純正のルームミラーと交換できるものであってもよい。
【0055】
他の例では、ナビゲーション装置1は、ルームミラー12に取付けまたは内蔵されるものに限定されず、車両のダッシュボード上に設置されたディスプレイと一体に構成され、搭乗者によりディスプレイが視認しやすい向きに角度を変更自在なナビゲーション装置であってもよい。
【0056】
さらに別の例では、ナビゲーション装置1は、経路案内機能を有しないドライブレコーダなどであってもよい。