(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133559
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】タンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 1/28 20060101AFI20230914BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230914BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20230914BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C07K1/28 ZNA
C12P21/08
C07K16/18
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023127122
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2021078450の分割
【原出願日】2015-10-13
(31)【優先権主張番号】62/064,397
(32)【優先日】2014-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100143638
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 真久
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハンター エフ. マランソン
(72)【発明者】
【氏名】プラティク ジャルリア
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル アルフォード
(57)【要約】
【課題】タンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法およびその使用の提供。
【解決手段】組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法、および組換えタンパク質産物の製造におけるかかる方法の使用が、本明細書で提供される。かかる方法によって産生される組換えタンパク質産物もまた提供される。本発明は、組換えタンパク質産物を特定の条件下でさらなる期間にわたってインキュベートすることで、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルのシフトが生じるという発見に、少なくとも一部基づく。このさらなる期間は、哺乳動物細胞培養物の衰退期の間のさらなる期間など、哺乳動物細胞培養物が臨界時点に達した後に生じるものとして測定され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2014年10月15日に出願された米国仮特許出願第62/064,397号(この開示は、その全体が参考として本明細書に援用される)に対する優先権および利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提供された、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる配列表を含む。2015年9月25日に作成された前記ASCIIコピーは、AXJ-196PC_SL.txtと命名され、サイズは6,321バイトである。
【0003】
本発明は、細胞培養および組換えタンパク質の製造の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞は、治療的または商業的に重要なタンパク質を産生するためにしばしば使用される。得られた組換えタンパク質産物は、各々がその独自のセットの生物物理学的特性を有する、種々のタンパク質分子を含有する。例えば、哺乳動物細胞培養物によって産生された組換えタンパク質産物は、1つまたは複数のタンパク質下位集団を有し得、各々の下位集団は、その独自の等電点を有する。タンパク質下位集団の等電点は、タンパク質の正味の電荷、溶解度、フォールディング、基質結合親和性、生物学的活性、およびヒト身体におけるクリアランス速度のうち1つまたは複数をもたらし得る。タンパク質に対する等電点の影響を考慮して、組換えタンパク質産物の等電性プロファイル(isoelectric profile)内で下位集団をシフトまたは再分布させることが望まれ得る。例えば、参照または出発等電性プロファイルと比較して、組換えタンパク質産物中の、特定の等電点を有するタンパク質下位集団(複数可)のうち1つまたは複数のレベル(または量)を増加または減少させることが望まれ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、組換えタンパク質産物を特定の条件下でさらなる期間にわたってインキュベートすることで、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルのシフトが生じるという発見に、少なくとも一部基づく。このさらなる期間は、哺乳動物細胞培養物の衰退期(decline phase)の間のさらなる期間など、哺乳動物細胞培養物が臨界時点(critical time point)に達した後に生じるものとして測定され得る。したがって、本明細書は、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法を含む。組換えタンパク質産物を製造する方法、および組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせるこれらの方法の使用を含む、薬物物質を製造する方法もまた、提供される。
【0006】
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期および/または静止期からなる第1の期間にわたって培養するステップ;(b)第1の期間の最後に、産物の等電性プロファイルをアッセイするステップ;ならびに(c)産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ、または産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で、(d)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルがさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(c)を反復するステップを含む方法が本明細書で提供される。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(c)でインキュベートされた産物は、培養物中の組換えタンパク質および哺乳動物細胞の混合物を含む。
【0007】
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;(b)産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で(c)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルが、より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップを含む方法も提供される。
【0008】
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;(b)産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で(c)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルが、より塩基性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップを含む方法も提供される。
【0009】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(a)は、哺乳動物細胞を流加培養することを含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この第1の期間は、約5日間から約12日間の間である。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この第2の期間は、約6時間から約120時間の間である。
【0010】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(b)でインキュベートされた産物は、培養物中の組換えタンパク質および哺乳動物細胞の混合物を含む。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この産物は、産生バイオリアクター中でインキュベートされる。本明細書に記載される方法のいずれかにおける一部の実施形態では、この産物は、貯蔵容器中でインキュベートされる。
【0011】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態は、ステップ(b)とステップ(c)の間に、培養物を清澄化するステップをさらに含み、ステップ(c)でインキュベートされた産物は、清澄化された組織培養培地中の組換えタンパク質を含む。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この方法は、ステップ(a)とステップ(b)の間に、培養物を清澄化するステップをさらに含み、ステップ(b)でインキュベートされた産物は、清澄化された組織培養培地中の組換えタンパク質を含む。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この産物は、貯蔵容器中でインキュベートされる。
【0012】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態は、ステップ(b)とステップ(c)の間に、組換えタンパク質を精製するステップをさらに含み、ステップ(c)でインキュベートされた産物は、希釈剤中の精製された組換えタンパク質を含む。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態は、ステップ(a)とステップ(b)の間に、組換えタンパク質を精製するステップをさらに含み、ステップ(b)でインキュベートされた産物は、希釈剤中の精製された組換えタンパク質を含む。
【0013】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(a)は、塩基性のプロファイルを有する産物を産生する少なくとも1つの条件下で、哺乳動物細胞を流加培養することを含み得、ステップ(c)は、この産物をより酸性のプロファイルにシフトさせる。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(a)は、塩基性のプロファイルを有する産物を産生する少なくとも1つの条件下で、哺乳動物細胞を流加培養することを含み得、ステップ(b)は、この産物をより酸性のプロファイルにシフトさせる。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この条件は、New Zealandウシ血清を含む培養培地中で培養することを含む。
【0014】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(a)は、酸性のプロファイルを有する産物を産生する少なくとも1つの条件下で、哺乳動物細胞を流加培養することを含み得、ステップ(c)は、この産物をより塩基性のプロファイルにシフトさせる。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(a)は、酸性のプロファイルを有する産物を産生する少なくとも1つの条件下で、哺乳動物細胞を流加培養することを含み得、ステップ(b)は、この産物をより塩基性のプロファイルにシフトさせる。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件は、約20%~約45%の間(例えば、約25%から約40%の間または約30%から約35%の間)の溶存酸素(dO2)濃度中でインキュベートすることを含む。
【0015】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件は、約7.0から約7.3の間(例えば、約7.0から約7.25の間、約7.0から約7.20の間、または約7.0から約7.15の間)のpHを有する培地中でインキュベートすることを含む。
【0016】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件は、約30℃から約37.5℃の間(例えば、約33℃から約37.5℃の間)の温度でインキュベートすることを含む。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルにシフトさせるのに十分な条件は、約200RPMから約400RPMの間(例えば、約220RPMから約350RPMの間または約220RPMから約300RPMの間)の撹拌速度でインキュベートすることを含む。
【0017】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(b)および/またはステップ(d)は、等電点電気泳動を含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、ステップ(c)は、等電点電気泳動を含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この等電点電気泳動は、キャピラリー電気泳動またはゲル電気泳動である。
【0018】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この組換えタンパク質は、免疫グロブリン、酵素、タンパク質または操作されたタンパク質である。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この組換えタンパク質は、抗体(例えば、ヒト抗体またはヒト化抗体)である。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この抗体は、ヒト補体タンパク質C5に特異的に結合する(例えば、エクリズマブ)。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、エクリズマブは、配列番号1を含む重鎖および配列番号2を含む軽鎖を含む。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、エクリズマブは、配列番号1からなる重鎖および配列番号2からなる軽鎖を含む。
【0019】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態は、(e)この産物を医薬組成物に製剤化するステップをさらに含む。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態は、(d)この産物を医薬組成物に製剤化するステップをさらに含む。
【0020】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、この組換えタンパク質産物の等電性プロファイルは、約5.2から約6.7の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団を含む。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で産物をインキュベートするステップは、これら7つのタンパク質下位集団の、より酸性のタンパク質下位集団のうち少なくとも2つの量の増加、およびより塩基性のタンパク質下位集団のうち少なくとも2つの量の減少を生じる。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、より酸性のタンパク質下位集団のうちのこれら少なくとも2つは、約5.2から約6.7の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団の、4番目および5番目に酸性が強いタンパク質下位集団であり得る。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、より塩基性の下位集団のうちのこれら少なくとも2つは、約5.2から約6.7の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団の、1番目および2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団であり得る。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、これら7つのタンパク質下位集団は、約5.45から約6.55の間の等電点を有する。
【0021】
約5.45から約6.55の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団を有する組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期または増殖期および静止期からなる第1の期間にわたって流加培養するステップ;(b)産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップであって、このより酸性のプロファイルは、これら7つのタンパク質下位集団の、4番目および5番目に酸性が強いタンパク質下位集団の量の増加、ならびにこれら7つのタンパク質下位集団の、1番目および2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の量の減少を含む、ステップ;ならびに任意選択で(c)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルが、より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップを含む方法も本明細書で提供される。
【0022】
約5.45から約6.5の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団を有する組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって流加培養するステップ;(b)産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップであって、このより酸性のプロファイルは、これら7つのタンパク質下位集団の、4番目および5番目に酸性が強いタンパク質下位集団の量の増加、ならびにこれら7つのタンパク質下位集団の、1番目および2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の量の減少を含む、ステップ;ならびに任意選択で(c)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルが、より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップを含む方法も提供される。
【0023】
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、このより酸性のプロファイルは、等電性プロファイルであり、これら7つのタンパク質下位集団の2番目、3番目および4番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の各々に存在するタンパク質の量は、プロファイル中のタンパク質の総質量の≧10%である;これら7つのタンパク質下位集団の3番目および4番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の各々に存在するタンパク質の量は、これら7つのタンパク質下位集団の2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の量未満である;これら7つのタンパク質下位集団の最も酸性のタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量は、プロファイル中のタンパク質の総質量の≦3%である;これら7つのタンパク質下位集団の2番目に酸性が強いタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量は、プロファイル中のタンパク質の総質量の≦6%である;これら7つのタンパク質下位集団の3番目に酸性が強いタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量は、プロファイル中のタンパク質の総質量の≦9%である;これら7つのタンパク質下位集団の最も塩基性のタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量は、プロファイル中のタンパク質の総質量の≦8%である;ならびにこれら7つのタンパク質下位集団の最も酸性の、2番目に酸性が強い、3番目に酸性が強い、および最も塩基性のタンパク質下位集団以外、タンパク質の総質量の≦6%であるタンパク質の量を有する他のタンパク質下位集団は存在しない。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施形態では、(b)のインキュベートするステップは、より酸性のプロファイルを有する組換えタンパク質産物を生じ得る。
【0024】
(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期および/または静止期からなる第1の期間にわたって培養するステップ;(b)第1の期間の最後に、この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定するステップ;ならびに(c)産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ、または産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で、(d)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルがさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(c)を反復するステップを含む方法によって産生される組換えタンパク質産物もまた提供される。
【0025】
(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;(b)産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で(c)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルが、より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップを含む方法によって産生される組換えタンパク質産物もまた提供される。
【0026】
(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;(b)産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で(c)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルが、より塩基性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップを含む方法によって産生される組換えタンパク質産物もまた提供される。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、
(a)産生バイオリアクター中で、前記産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、前記哺乳動物細胞の増殖期および/または静止期からなる第1の期間にわたって培養するステップ;
(b)前記第1の期間の最後に、前記産物の等電性プロファイルをアッセイするステップ;ならびに
(c)前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップ、または
前記産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で
(d)前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、前記等電性プロファイルがさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(c)を反復するステップ
を含む、方法。
(項目2)
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、
(a)産生バイオリアクター中で、前記産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、前記哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;
(b)前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で
(c)前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、前記等電性プロファイルが、より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップ
を含む、方法。
(項目3)
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、
(a)産生バイオリアクター中で、前記産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、前記哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;
(b)前記産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で
(c)前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、前記等電性プロファイルが、より塩基性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップ
を含む、方法。
(項目4)
ステップ(a)が、前記哺乳動物細胞を流加培養することを含む、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記第1の期間が、約5日間から約12日間の間である、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記第2の期間が、約6時間から約120時間の間である、項目5に記載の方法。
(項目7)
ステップ(c)でインキュベートされた前記産物が、培養物中の前記組換えタンパク質および前記哺乳動物細胞の混合物を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
ステップ(b)でインキュベートされた前記産物が、培養物中の前記組換えタンパク質および前記哺乳動物細胞の混合物を含む、項目2または3に記載の方法。
(項目9)
前記産物が、前記産生バイオリアクター中でインキュベートされる、項目7または8に記載の方法。
(項目10)
前記産物が、貯蔵容器中でインキュベートされる、項目7または8に記載の方法。
(項目11)
ステップ(b)とステップ(c)の間に、培養物を清澄化するステップをさらに含み、ステップ(c)でインキュベートされた前記産物が、清澄化された組織培養培地中の前記組換えタンパク質を含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
ステップ(a)とステップ(b)の間に、培養物を清澄化するステップをさらに含み、ステップ(b)でインキュベートされた前記産物が、清澄化された組織培養培地中の前記組換えタンパク質を含む、項目2または3に記載の方法。
(項目13)
前記産物が、貯蔵容器中でインキュベートされる、項目11または12に記載の方法。(項目14)
ステップ(b)とステップ(c)の間に、前記組換えタンパク質を精製するステップをさらに含み、ステップ(c)でインキュベートされた前記産物が、希釈剤中の精製された前記組換えタンパク質を含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
ステップ(a)とステップ(b)の間に、前記組換えタンパク質を精製するステップをさらに含み、ステップ(b)でインキュベートされた前記産物が、希釈剤中の精製された前記組換えタンパク質を含む、項目2または3に記載の方法。
(項目16)
ステップ(a)が、塩基性のプロファイルを有する産物を産生する少なくとも1つの条件下で、前記哺乳動物細胞を流加培養することを含み、ステップ(c)が、前記産物をより酸性のプロファイルにシフトさせる、項目1に記載の方法。
(項目17)
ステップ(a)が、塩基性のプロファイルを有する産物を産生する少なくとも1つの条件下で、前記哺乳動物細胞を流加培養することを含み、ステップ(b)が、前記産物をより酸性のプロファイルにシフトさせる、項目2に記載の方法。
(項目18)
前記条件が、New Zealandウシ血清を含む培養培地中で培養することを含む、項目16または17に記載の方法。
(項目19)
ステップ(a)が、酸性のプロファイルを有する産物を産生する少なくとも1つの条件下で、前記哺乳動物細胞を流加培養することを含み、ステップ(c)が、前記産物をより塩基性のプロファイルにシフトさせる、項目1に記載の方法。
(項目20)
ステップ(a)が、酸性のプロファイルを有する産物を産生する少なくとも1つの条件下で、前記哺乳動物細胞を流加培養することを含み、ステップ(b)が、前記産物をより塩基性のプロファイルにシフトさせる、項目3に記載の方法。
(項目21)
前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な前記条件が、約20%~約45%の間の溶存酸素(dO2)濃度中でインキュベートすることを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目22)
前記dO2濃度が、約25%から約40%の間である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記dO2濃度が、約30%から約35%の間である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な前記条件が、約7.0から約7.3の間のpHを有する培地中でインキュベートすることを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目25)
前記pHが、約7.0から約7.25の間である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記pHが、約7.0から約7.20の間である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記pHが、約7.0から約7.15の間である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な前記条件が、約30℃から約37.5℃の間の温度でインキュベートすることを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目29)
前記温度が、約33℃から約37.5℃の間である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルにシフトさせるのに十分な前記条件が、約200RPMから約400RPMの間の撹拌速度でインキュベートすることを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目31)
前記撹拌速度が、約220RPMから約350RPMの間である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記撹拌速度が、約220RPMから約300RPMの間である、項目31に記載の方法。
(項目33)
ステップ(b)および/またはステップ(d)が、等電点電気泳動を含む、項目1に記載の方法。
(項目34)
ステップ(c)が、等電点電気泳動を含む、項目2または3に記載の方法。
(項目35)
前記等電点電気泳動が、キャピラリー電気泳動またはゲル電気泳動である、項目33または34に記載の方法。
(項目36)
前記組換えタンパク質が、免疫グロブリン、酵素、タンパク質または操作されたタンパク質である、項目1から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記組換えタンパク質が抗体である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記抗体が、ヒト抗体またはヒト化抗体である、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記抗体が、ヒト補体タンパク質C5に特異的に結合する、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記抗体がエクリズマブである、項目39に記載の方法。
(項目41)
エクリズマブが、配列番号1を含む重鎖および配列番号2を含む軽鎖を含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
エクリズマブが、配列番号1からなる重鎖および配列番号2からなる軽鎖を含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
(e)前記産物を医薬組成物に製剤化するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目44)
(d)前記産物を医薬組成物に製剤化するステップをさらに含む、項目2または3に記載の方法。
(項目45)
前記組換えタンパク質産物の等電性プロファイルが、約5.2から約6.7の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団を含む、項目1または2に記載の方法。
(項目46)
前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で前記産物をインキュベートするステップが、前記7つのタンパク質下位集団の、より酸性のタンパク質下位集団のうち少なくとも2つの量の増加、およびより塩基性のタンパク質下位集団のうち少なくとも2つの量の減少を生じる、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記より酸性のタンパク質下位集団のうちの前記少なくとも2つが、約5.2から約6.7の間の等電点を有する前記7つのタンパク質下位集団の、4番目および5番目に酸性が強いタンパク質下位集団である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記より塩基性の下位集団のうちの前記少なくとも2つが、約5.2から約6.7の間の等電点を有する前記7つのタンパク質下位集団の、1番目および2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団である、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記7つのタンパク質下位集団が、約5.45から約6.55の間の等電点を有する、項目45に記載の方法。
(項目50)
約5.45から約6.55の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団を有する組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、
(a)産生バイオリアクター中で、前記産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、前記哺乳動物細胞の増殖期または増殖期および静止期からなる第1の期間にわたって流加培養するステップ;
(b)前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップであって、前記より酸性のプロファイルが、前記7つのタンパク質下位集団の、4番目および5番目に酸性が強いタンパク質下位集団の量の増加、ならびに前記7つのタンパク質下位集団の、1番目および2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の量の減少を含む、ステップ;ならびに任意選択で
(c)前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、前記等電性プロファイルが、前記より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップ
を含む、方法。
(項目51)
約5.45から約6.55の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団を有する組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法であって、
(a)産生バイオリアクター中で、前記産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、前記哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって流加培養するステップ;
(b)前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップであって、前記より酸性のプロファイルが、前記7つのタンパク質下位集団の、4番目および5番目に酸性が強いタンパク質下位集団の量の増加、ならびに前記7つのタンパク質下位集団の、1番目および2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の量の減少を含む、ステップ;ならびに任意選択で
(c)前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、前記等電性プロファイルが、前記より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップ
を含む、方法。
(項目52)
前記より酸性のプロファイルが、等電性プロファイルであり、ここで、
前記7つのタンパク質下位集団の2番目、3番目および4番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の各々に存在するタンパク質の量が、前記プロファイル中のタンパク質の総質量の≧10%である;
前記7つのタンパク質下位集団の3番目および4番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の各々に存在するタンパク質の量が、前記7つのタンパク質下位集団の2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の量未満である;
前記7つのタンパク質下位集団の最も酸性のタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量が、前記プロファイル中のタンパク質の総質量の≦3%である;
前記7つのタンパク質下位集団の2番目に酸性が強いタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量が、前記プロファイル中のタンパク質の総質量の≦6%である;
前記7つのタンパク質下位集団の3番目に酸性が強いタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量が、前記プロファイル中のタンパク質の総質量の≦9%である;
前記7つのタンパク質下位集団の最も塩基性のタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量が、前記プロファイル中のタンパク質の総質量の≦8%である;ならびに
前記7つのタンパク質下位集団の最も酸性の、2番目に酸性が強い、3番目に酸性が強い、および最も塩基性のタンパク質下位集団以外、タンパク質の総質量の≦6%であるタンパク質の量を有する他のタンパク質下位集団が存在しない、
項目50または51に記載の方法。
(項目53)
(b)のインキュベートするステップが、前記より酸性のプロファイルを有する組換えタンパク質産物を生じる、項目52に記載の方法。
(項目54)
(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、前記哺乳動物細胞の増殖期および/または静止期からなる第1の期間にわたって培養するステップ;
(b)前記第1の期間の最後に、前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定するステップ;ならびに
(c)前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップ、または
前記産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で、
(d)前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、前記等電性プロファイルがさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(c)を反復するステップ
を含む方法によって産生される組換えタンパク質産物。
(項目55)
(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、前記哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;
(b)前記産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で
(c)前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、前記等電性プロファイルが、より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップ
を含む方法によって産生される組換えタンパク質産物。
(項目56)
(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、前記哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;
(b)前記産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、前記哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、前記産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で
(c)前記産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、前記等電性プロファイルが、より塩基性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップ
を含む方法によって産生される組換えタンパク質産物。
【0027】
本明細書で使用する場合、名詞の前の単語「1つの(a)」または「複数の」は、1つまたは複数のその特定の名詞を示す。例えば、語句「哺乳動物細胞」は、「1つまたは複数の哺乳動物細胞」を示す。
【0028】
用語「等電性プロファイル」は、当技術分野で公知であり、溶液中のタンパク質産物の成分を、別個の等電点を有する下位集団へと分離するための等電点電気泳動法の使用を指す。溶液中のタンパク質は、いくらかの変動する量の化学的改変を有する分子の集団から構成される。一般に、等電点電気泳動法のために、pH勾配が確立され、タンパク質分子の集団を含むタンパク質の試料が導入される。試料集団中の個々のタンパク質分子は、それらの個々の等電点(pI)に対応する点まで移動することができる。タンパク質産物の等電性プロファイルは、当技術分野で公知の技術、例えば、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動またはゲル電気泳動を使用して決定され得る。一部の場合には、等電性プロファイルとは、あるpH勾配内のタンパク質産物のタンパク質集団のメンバーの実質的に全ての集団分布を指す。他の場合には、等電性プロファイルとは、タンパク質産物のタンパク質集団のメンバーのサブセットまたはその下位集団のサブセットを指す。等電性プロファイルは、各々が異なるpIを有する、タンパク質産物の1、2、3、4、5もしくは6つまたはそれ超の下位集団(例えば、等電性タンパク質バンド)を含み得る。等電性プロファイル中の各バンドは、そのバンドが位置する勾配中の点におけるpHに対応するpIを有する分子の下位集団を示す。
【0029】
用語「組換えタンパク質」は、当技術分野で公知であり、細胞培養系を使用して製造されたタンパク質を指す。これらの細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞または細菌細胞のいずれかに由来し得、ここで一般に、細胞培養物中の細胞は、目的の組換えタンパク質をコードする導入された核酸を含有する。組換えタンパク質をコードする核酸は、このタンパク質をコードする核酸に作動可能に連結した異種プロモーターもまた含有し得る。
【0030】
用語「組換えタンパク質産物」とは、細胞培養系を使用して製造された組換えタンパク質を含む組成物を指す。一部の場合には、この産物は、化学的改変および分解プロセスから生じる僅かに異なる生物物理学的特性を有し、別個の等電点を有する下位集団を生じる、組換えタンパク質の複数のメンバーを含み得る。組換えタンパク質産物は、例えば、清澄化された組織培養培地中の組換えタンパク質、希釈剤中の精製された組換えタンパク質、または培養物中の組換えタンパク質、液体培養培地および哺乳動物細胞の混合物であり得る。
【0031】
用語「産生バイオリアクター」とは、本明細書で使用する場合、培養物中の哺乳動物細胞の増殖および培養物中の哺乳動物細胞による組換えタンパク質産物の産生に十分な条件下で、哺乳動物細胞培養物をインキュベートするために適切な容器を指す。産生バイオリアクターの非限定的な例は、本明細書に記載される。産生バイオリアクターのさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0032】
語句「産物を産生するのに十分な条件」とは、哺乳動物細胞培養物による組換えタンパク質の産生を可能にする、物理的パラメーター、例えば、温度、溶存酸素、培地組成、混合速度および細胞密度のセットを指す。産物を産生するのに十分な条件の非限定的な例は、当技術分野で公知である。産物を産生するのに十分な条件の一部の例は、本明細書に記載される。
【0033】
用語「増殖期」とは、本明細書で使用する場合、生存細胞密度が時間をわたって増加する、哺乳動物細胞の培養中の期間を指す。これは、細胞培養物の静止期の間に時間をわたって観察される生存細胞密度における実質的な変化の欠如、または細胞培養物の衰退期の間に時間をわたって観察される生存細胞密度の減少とは、対照的である。
【0034】
用語「静止期」は、細胞培養の分野において公知であり、生存細胞密度が実質的に同じままである、細胞培養における期間を指す。
【0035】
語句「哺乳動物細胞の衰退期」とは、本明細書で使用する場合、生存細胞密度が減少し始める、細胞培養における期間を指す。
【0036】
語句「産物をアッセイする」とは、本明細書で使用する場合、産物(例えば、組換えタンパク質産物)の1つまたは複数の物理的および/または機能的特性を決定するために分析方法を実施することを指す。物理的特性の非限定的な例には、分子量、タンパク質配列、等電性プロファイル、パーセント凝集、グリコシル化フィンガープリント、リン酸化、アシル化、断片化および変性が含まれる。決定され得る産物の機能的特性の非限定的な例には、酵素活性、結合特異性および結合親和性が含まれる。
【0037】
語句「等電性プロファイルをシフトさせるのに十分な条件」とは、産物(例えば、組換えタンパク質産物)の等電性プロファイルを変化させる(例えば、酸性シフトまたは塩基性シフト)ために使用され得るパラメーター(例えば、時間、温度、pH、撹拌速度、CO2、温度、dO2および/または組織培養培地中に存在する試薬のうち1つまたは複数)のセットを指す。
【0038】
語句「より酸性のプロファイルにシフトさせる」とは、本明細書で使用する場合、産物の等電性プロファイルを、それらの条件の適用なしの産物のプロファイルと比較して、より酸性のプロファイルにシフトさせるのに十分な条件を適用することを指す。
【0039】
語句「より塩基性のプロファイルにシフトさせる」とは、本明細書で使用する場合、産物の等電性プロファイルを、それらの条件の適用なしの産物のプロファイルと比較して、より塩基性のプロファイルにシフトさせるのに十分な条件を適用することを指す。
【0040】
用語「臨界時点」とは、本明細書で使用する場合、細胞培養物(例えば、流加培養物)が、生存度において有意に悪化し始めると認識される時点を指す。この点の後では、組換えタンパク質の品質特性は、ますます負に影響され得る。例えば、生存細胞密度が流加バイオリアクター中でピークに達した後、生存細胞密度は衰退し始める。臨界時点は、細胞増殖の衰退期における特定の生存細胞密度と関連付けられ得る。臨界時点は、生存細胞密度が衰退期において特定の生存細胞密度、例えば、15×105細胞/mLまで減少する時間に基づき得る。同様に、特定のプロセスについて、この臨界時点は、他の値、例えば、生存細胞密度が、衰退期における生存細胞密度、例えば、10×105細胞/mL、11×105細胞/mL、12×105細胞/mL、13×105細胞/mL、14×105細胞/mL、16×105細胞/mL、17×105細胞/mL、18×105細胞/mL、19×105細胞/mL、20×105細胞/mL、30×105細胞/mL、40×105細胞/mLまたは50×105細胞/mLまで減少する時間において、設定され得る。
【0041】
用語「貯蔵容器」とは、本明細書で使用する場合、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルにおけるシフトを提供する物理的条件のセットの下で、組換えタンパク質産物(例えば、本明細書に記載される組換えタンパク質産物のいずれか)をインキュベートするために使用され得る、閉じた器(closed container)を指す。組換えタンパク質産物の等電性プロファイルにおけるシフトを提供する物理的条件の非限定的な例は、本明細書に記載される。
【0042】
用語「培養物を清澄化する」とは、本明細書で使用する場合、哺乳動物細胞を実質的に含まない液体培養培地(即ち、清澄化された組織培養培地)を得るために、哺乳動物細胞培養物から哺乳動物細胞を除去または分離することを指す。培養物を清澄化する方法の非限定的な例は、本明細書に記載される。培養物を清澄化するためのさらなる方法は、当技術分野で公知である。
【0043】
用語「清澄化された組織培養培地」とは、本明細書で使用する場合、哺乳動物細胞を実質的に含まないように処理された細胞培養物において使用される液体培養培地を指す。
【0044】
用語「New Zealandウシ血清アルブミン」とは、本明細書で使用する場合、New Zealandで誕生し繁殖されたウシ(例えば、ウシ海綿状脳症(BSE)も他の公知のプリオン病も含まない集団において誕生し飼育されたウシ)由来の血清タンパク質を指す。当業者は、かかる血清アルブミンが市販されていることを理解する。
【0045】
用語「哺乳動物細胞」とは、例えば、ヒト、ハムスター、マウス、ミドリザル、ラット、ブタ、ウシ、ハムスターまたはウサギを含む任意の哺乳動物由来のまたはかかる哺乳動物から誘導された、任意の細胞を指す。一部の実施形態では、この哺乳動物細胞は、不死化細胞、分化細胞または未分化細胞であり得る。
【0046】
用語「実質的に含まない」とは、本明細書で使用する場合、特定の物質を、少なくとも90%もしくは約90%含まない、または約95%、96%、97%、98%含まない、または少なくとも99%もしくは約99%含まない、または約100%含まない組成物(例えば、液体培養培地)を指す。
【0047】
用語「培養」または「細胞培養」とは、本明細書で使用する場合、物理的条件の制御されたセットの下での、液体培養培地中での哺乳動物細胞の維持または増殖を指す。
【0048】
用語「液体培養培地」または「培養培地」とは、哺乳動物細胞を培地中でin vitroで増殖させるのに十分な栄養素を含有する流体を指す。例えば、液体培養培地は、以下のうち1つまたは複数を含み得る:アミノ酸(例えば、20種のアミノ酸)、プリン(例えば、ヒポキサンチン)、ピリミジン(例えば、チミジン)、コリン、イノシトール、チアミン、葉酸、ビオチン、カルシウム、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チミジン、シアノコバラミン、ピルベート、リポ酸、マグネシウム、グルコース、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、セレンおよび他の必要な微量金属、ならびに炭酸水素ナトリウム。液体培養培地は、哺乳動物由来の血清または血清成分を含み得る。一部の場合には、液体培養培地は、哺乳動物由来の血清も別の抽出物も含有しない(化学的に規定された液体培養培地)。液体培養培地は、微量金属、哺乳動物成長ホルモンおよび/または哺乳動物増殖因子を含有し得る。液体培養培地の非限定的な例は、本明細書に記載されており、さらなる例は、当技術分野で公知であり、市販されている。
【0049】
用語「動物由来成分を含まない液体培養培地」とは、動物由来の任意の成分(例えば、タンパク質または血清)を含有しない液体培養培地を指す。
【0050】
用語「無血清液体培養培地」とは、動物血清を含有しない液体培養培地を指す。
【0051】
用語「血清添加された液体培養培地」とは、動物血清を含む液体培養培地を指す。
【0052】
用語「化学的に規定された液体培養培地」とは、化学的成分の実質的に全てが既知である液体培養培地を指す。例えば、化学的に規定された液体培養培地は、胎仔ウシ血清もウシ血清アルブミンもヒト血清アルブミンも含有しないが、それは、これらの調製物が、典型的には、アルブミンおよび脂質の複雑な混合物を含有するためである。
【0053】
用語「無タンパク質液体培養培地」とは、いずれのタンパク質(例えば、いずれの検出可能なタンパク質)も含有しない液体培養培地を指す。
【0054】
「回転撹拌」とは、当技術分野で周知の用語であり、例えば、バイオリアクター中の培養物における溶存O2濃度を増加させるための、例えば、時計回りまたは反時計回りの、概して円形の様式での、バイオリアクター(例えば、産生バイオリアクター)中での培養物の撹拌を指す。撹拌は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、円形または楕円形の動きで培養物を動かす装置、例えば、インペラを使用して、実施され得る。回転撹拌を実施するために使用され得る例示的なデバイスは、当技術分野で公知であり、市販されている。
【0055】
用語「免疫グロブリン」とは、免疫グロブリンタンパク質(例えば、可変ドメイン配列、フレームワーク配列または定常ドメイン配列)の少なくとも15アミノ酸(例えば、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100アミノ酸、または100超のアミノ酸)のアミノ酸配列を含有するポリペプチドを指す。免疫グロブリンは、例えば、軽鎖免疫グロブリンの少なくとも15アミノ酸、例えば、CDRH3などの重鎖免疫グロブリンの少なくとも15アミノ酸を含み得る。免疫グロブリンは、単離された抗体(例えば、IgG、IgE、IgD、IgAまたはIgM)であり得る。免疫グロブリンは、IgGのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)であり得る。免疫グロブリンは、抗体断片、例えば、Fab断片、F(ab’)2断片またはscFvであり得る。免疫グロブリンはまた、二重特異性抗体もしくは三重特異性抗体、またはダイマー、トリマーもしくはマルチマー抗体、またはダイアボディ(diabody)、DVD-Ig、CODV-Ig、Affibody(登録商標)もしくはNanobody(登録商標)であり得る。免疫グロブリンはまた、少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含有する操作されたタンパク質(例えば、融合タンパク質)であり得る。免疫グロブリンの非限定的な例は、本明細書に記載されており、免疫グロブリンのさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0056】
用語「タンパク質断片」または「ポリペプチド断片」とは、少なくとも4アミノ酸長もしくは約4アミノ酸長、少なくとも5アミノ酸長もしくは約5アミノ酸長、少なくとも6アミノ酸長もしくは約6アミノ酸長、少なくとも7アミノ酸長もしくは約7アミノ酸長、少なくとも8アミノ酸長もしくは約8アミノ酸長、少なくとも9アミノ酸長もしくは約9アミノ酸長、少なくとも10アミノ酸長もしくは約10アミノ酸長、少なくとも11アミノ酸長もしくは約11アミノ酸長、少なくとも12アミノ酸長もしくは約12アミノ酸長、少なくとも13アミノ酸長もしくは約13アミノ酸長、少なくとも14アミノ酸長もしくは約14アミノ酸長、少なくとも15アミノ酸長もしくは約15アミノ酸長、少なくとも16アミノ酸長もしくは約16アミノ酸長、少なくとも17アミノ酸長もしくは約17アミノ酸長、少なくとも18アミノ酸長もしくは約18アミノ酸長、少なくとも19アミノ酸長もしくは約19アミノ酸長、または少なくとも20アミノ酸長もしくは約20アミノ酸長であるか、あるいは20アミノ酸長を超えるポリペプチド配列の一部分を指す。
【0057】
用語「操作されたタンパク質」とは、生物(例えば、哺乳動物)内に存在する内因性核酸によって天然にコードされないポリペプチドを指す。操作されたタンパク質の例には、操作された酵素の安定性および/または触媒活性における増加を生じる1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、挿入または付加を有する改変された酵素、融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、二価抗体、三価抗体、4結合ドメイン抗体、ダイアボディ、ならびに少なくとも1つの組換え足場配列を含有する抗原結合タンパク質が含まれる。
【0058】
用語「精製する」または「精製」とは、特定の文脈では、細胞培養培地または細胞培養溶解物中に存在する1つまたは複数の他の成分(例えば、DNA、RNAまたは他のタンパク質)から、組換えタンパク質を少なくとも部分的に単離することを意味する。精製の程度は、重量で少なくとも5%もしくは約5%、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは約10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または少なくとも95%~99.9%もしくは約95%~99.9%純粋であるなど、特定され得る。液体培養培地からまたは哺乳動物細胞溶解物からタンパク質を集めるための非限定的な方法は、本明細書に記載されており、その他は、当技術分野で公知である。
【0059】
用語「分泌型タンパク質」または「分泌型組換えタンパク質」とは、哺乳動物細胞内で翻訳される場合、分泌シグナル配列を元々含んでいた組換えタンパク質を指す。シグナル配列は、通常、哺乳動物細胞において酵素的切断を介して除去され、タンパク質は、細胞外空間(例えば、液体培養培地)中に放出される。
【0060】
語句「勾配灌流」とは、本明細書で使用する場合、漸増的期間にわたって初期細胞培養物から除去されるまたは初期細胞培養物に添加される培養培地の容積における漸増的変化(例えば、増加または減少)を指す。期間は、灌流培養(例えば、毎日の培養培地再フィード速度)を利用する培養方法において、第1の期間中に、約24時間の期間、または約1分間から約24時間の間の期間、または24時間超の期間であり得る。各日に除去され置き換えられる培地の割合は、培養されている特定の細胞、初期播種密度、および特定の時間における細胞密度に依存して、変動し得る。
【0061】
用語「流加細胞培養」または「流加培養」とは、細胞培養物からの第1の液体培養培地の実質的なまたは顕著な除去なしの、初期細胞培養物への第2の培養培地(例えば、液体または固体培養培地)の漸増的または連続的添加を意味する。一部の場合には、この第2の液体培養培地は、第1の液体培養培地と同じである。他の場合には、この第2の液体培養培地は、第1の液体培養培地の濃縮形態であり、および/または乾燥粉末として添加される。
【0062】
「比産生率(specific productivity rate)」または「SPR」とは、本明細書で使用する場合、1日当たり哺乳動物細胞当たりの産生された組換えタンパク質の質量または酵素活性を指す。組換え抗体についてのSPRは、通常、質量/細胞/日として測定される。組換え酵素についてのSPRは、通常、単位/細胞/日または(単位/質量)/細胞/日として測定される。
【0063】
「容積産生率(volume productivity rate)」または「VPR」とは、本明細書で使用する場合、1日当たり培養物の容積当たり(例えば、バイオリアクター、容器またはチューブ容積の1L当たり)の産生された組換えタンパク質の質量または酵素活性を指す。組換え抗体についてのVPRは、通常、質量/L/日として測定される。組換え酵素についてのVPRは、通常、単位/L/日または質量/L/日として測定される。
【0064】
特記しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書に記載されている;当技術分野で公知の他の適切な方法および材料もまた使用され得る。材料、方法および実施例は、例示にすぎず、限定として解釈されない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリーおよび他の参考文献は、それらの全体が参照によって組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。
【0065】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、5日目から13日目までの、10,000Lバイオリアクターを使用して実施した第1の流加培養試行によって産生されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各バンドについてのバンド強度の百分率のグラフである。
【0067】
【
図2】
図2は、5日目から13日目までの、10,000Lバイオリアクターにおいて実施した第1の流加培養試行によって産生されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各バンドについてのバンド強度の百分率を示す別のグラフである。
【0068】
【
図3】
図3は、5日目から12日目までの、10,000Lバイオリアクターを使用して実施した第2の流加培養試行によって産生されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各バンドについてのバンド強度の百分率のグラフである。
【0069】
【
図4】
図4は、5日目から12日目までの、10,000Lバイオリアクターを使用して実施した第2の流加培養試行によって産生されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各バンドについてのバンド強度の百分率の別のグラフである。
【0070】
【
図5】
図5は、2Lバイオリアクター、ならびにpHおよびdO
2の以下の組合せのうち1つを使用して実施した流加培養試行における、時間をわたっての生存細胞密度のグラフである:pH7.0および15%のdO
2;pH7.32および50%のdO
2;pH7.32および5%のdO
2;pH6.95および50%のdO
2;ならびにpH6.95および5%のdO
2。平均データ(n=2)が示される。
【0071】
【
図6】
図6は、同じ培養物中の積分生存細胞濃度(integrated viable cell concentration)と比較して、2L流加バイオリアクター培養物によって産生されたmg/Lエクリズマブを比較するグラフである。異なる2L流加バイオリアクター培養試行を、2Lバイオリアクター、ならびにpHおよびdO
2の以下の組合せのうち1つを使用して実施した:pH7.0および15%のdO
2;pH7.32および50%のdO
2;pH7.32および5%のdO
2;pH6.95および50%のdO
2;ならびにpH6.95および5%のdO
2。平均データ(n=2)が示される。
【0072】
【
図7】
図7は、培養の10日目、12日目、14日目および16日目における、2Lバイオリアクター、7.0のpHおよび15%のdO
2を使用して実施した流加培養試行から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである。
【0073】
【
図8】
図8は、培養の10日目、12日目、14日目および16日目における、2Lバイオリアクター、7.32のpHおよび5%のdO
2を使用して実施した流加培養試行から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである。
【0074】
【
図9】
図9は、培養の5日目、8日目、10日目および14日目における、2Lバイオリアクター、6.95のpHおよび50%のdO
2を使用して実施した流加培養試行から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである。
【0075】
【
図10】
図10は、培養の10日目、12日目、14日目および16日目の、2Lバイオリアクター、7.32のpHおよび50%のdO
2を使用して実施した流加培養試行から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである。
【0076】
【
図11】
図11は、それぞれ、各培養の14日目の、2Lバイオリアクター、ならびにpHおよびdO
2の以下の組合せのうち1つを使用して実施した流加培養試行から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである:7.32のpHおよび5%のdO
2、7.32のpHおよび50%のdO
2、7.0のpHおよび15%のdO
2、ならびに6.95のpHおよび50%のdO
2。
【0077】
【
図12】
図12は、2Lバイオリアクター、ならびに以下の細胞供給源および原材料組合せのうち1つを使用して実施した流加培養試行における、時間をわたっての生存細胞密度を示すグラフである:細胞供給源Aおよび第1のセットの原材料(細胞培養試行11);細胞供給源Bおよび第1のセットの原材料(細胞培養試行12);細胞供給源Aおよび第2のセットの原材料(細胞培養試行14および15);ならびに細胞供給源Bおよび第2のセットの原材料(細胞培養試行13、16、17および18)。
【0078】
【
図13】
図13は、2Lバイオリアクター、ならびに以下の細胞供給源および原材料組合せのうち1つを使用して実施した流加培養試行における、時間をわたっての百分率細胞生存度を示すグラフである:細胞供給源Aおよび第1のセットの原材料(細胞培養試行11);細胞供給源Bおよび第1のセットの原材料(細胞培養試行12);細胞供給源Aおよび第2のセットの原材料(細胞培養試行14および15);ならびに細胞供給源Bおよび第2のセットの原材料(細胞培養試行13、16、17および18)。
【0079】
【
図14】
図14は、2Lバイオリアクター、ならびに以下の細胞供給源および原材料組合せのうち1つを使用して実施した流加培養試行における、産生力(積分生存細胞濃度と比較した、mgエクリズマブ/L)を示すグラフである:細胞供給源Aおよび第1のセットの原材料(細胞培養試行11);細胞供給源Bおよび第1のセットの原材料(細胞培養試行12);細胞供給源Aおよび第2のセットの原材料(細胞培養試行14および15);ならびに細胞供給源Bおよび第2のセットの原材料(細胞培養試行13、16、17および18)。
【0080】
【
図15】
図15は、培養の8日目、11日目、14日目、15日目および16日目の、2Lバイオリアクター、細胞供給源Aおよび第1のセットの原材料を使用して実施した流加培養試行(細胞培養試行11)から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである。
【0081】
【
図16】
図16は、培養の8日目、11日目、14日目、15日目および16日目の、2Lバイオリアクター、細胞供給源Bおよび第1のセットの原材料を使用して実施した流加培養試行(細胞培養試行12)から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである。
【0082】
【
図17】
図17は、培養の13日目、14日目、15日目および16日目の、2Lバイオリアクター、細胞供給源Bおよび第2のセットの原材料を使用して実施した流加培養試行(細胞培養試行13)から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである。
【0083】
【
図18】
図18は、培養の13日目、14日目、15日目および16日目の、2Lバイオリアクター、細胞供給源Aおよび第2のセットの原材料を使用して実施した流加培養試行(細胞培養試行14)から回収されたエクリズマブの等電性プロファイルにおける各タンパク質バンドについてのバンド強度の百分率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0084】
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法が、本明細書で提供される。本明細書に記載される方法は、所望の等電性プロファイルを有する組換えタンパク質産物を達成できる。例えば、所望の等電性プロファイルを有する組換えタンパク質は、以下のうち1つまたは複数を有し得る:最適な正味の電荷(例えば、正味の表面電荷)、(同じpHにおける、異なる等電性プロファイルを有する同じ組換えタンパク質と比較して)減少したレベルの沈殿、所望の流体中での(同じ流体中の、同じ条件下での、異なる等電性プロファイルを有する同じ組換えタンパク質と比較して)増大した溶解度、増大した生物学的活性(例えば、同じ条件下で試験した、異なる等電性プロファイルを有する同じ組換えタンパク質と比較した、基質、標的もしくは抗原に対する結合、結合特異性または酵素活性)、(同じ条件下で試験した場合の、異なる等電性プロファイルを有する同じ組換えタンパク質中の、適切にフォールディングされたタンパク質のレベルと比較して)増加したレベルの、組換えタンパク質産物中の適切にフォールディングされたタンパク質、ならびにヒトの身体における(同じ条件下で試験した場合の、異なる等電性プロファイルを有する同じ組換えタンパク質のクリアランス速度と比較して)減少したクリアランス速度。組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法の非限定的な態様は、以下に記載される。以下に記載される態様のいずれかは、任意の組合せで、または当技術分野で公知の任意の他の要素と共に、使用され得る。
【0085】
等電性プロファイルおよび等電性プロファイルを決定する方法
等電性プロファイルとは、タンパク質産物のタンパク質集団の少なくとも1つの下位集団の酸性および/または塩基性の性質を指す。等電性プロファイルとは、タンパク質産物中の1つまたは複数の下位集団中のタンパク質の量もまた指し得る。一部の例では、等電性プロファイルとは、タンパク質産物(例えば、組換えタンパク質産物)の少なくとも2つのタンパク質下位集団の酸性および/または塩基性の性質を指し、ここで、これら少なくとも2つのタンパク質下位集団の各々は、タンパク質産物中の他のタンパク質下位集団と比較して、異なる等電点を有する。等電性プロファイルとは、組換えタンパク質産物において検出された全てのタンパク質下位集団の酸性および/もしくは塩基性の性質を指し得るか、または等電性プロファイルとは、組換えタンパク質産物について検出されたタンパク質下位集団のうち少なくとも2つのサブセットの酸性および/もしくは塩基性の性質を指し得る。例えば、等電性プロファイルとは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15のタンパク質下位集団の酸性および/もしくは塩基性の性質を指し得る。かかるタンパク質下位集団は、等電点電気泳動ゲル中のバンドとして言及される。
【0086】
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルは、約pH4.0とpH7.3との間(例えば、約pH4.1と約pH7.3との間、約pH4.2と約pH7.3との間、約pH4.3と約pH7.3との間、約pH4.4と約pH7.3との間、約pH4.5と約pH7.3との間、約pH4.6と約pH7.3との間、約pH4.7と約pH7.3との間、約pH4.8と約pH7.3との間、約pH4.9と約pH7.3との間、約pH5.0と約pH7.3との間、約pH5.1と約pH7.3との間、約pH5.2と約pH7.3との間、約pH5.3と約pH7.3との間、約pH5.4と約pH7.3との間、約pH5.5と約pH7.3との間、約pH5.6と約pH7.3との間、約pH5.7と約pH7.3との間、約pH5.8と約pH7.3との間、約pH5.9と約pH7.3との間、約pH6.0と約pH7.3との間、約pH6.1と約pH7.3との間、約pH6.2と約pH7.3との間、約pH6.3と約pH7.3との間、約pH6.4と約pH7.3との間、約pH6.5と約pH7.3との間、約pH6.6と約pH7.3との間、約pH6.7と約pH7.3との間、約pH4.0と約pH7.0との間、約pH4.1と約pH7.0との間、約pH4.2と約pH7.0との間、約pH4.3と約pH7.0との間、約pH4.4と約pH7.0との間、約pH4.5と約pH7.0との間、約pH4.6と約pH7.0との間、約pH4.7と約pH7.0との間、約pH4.8と約pH7.0との間、約pH4.9と約pH7.0との間、約pH5.0と約pH7.0との間、約pH5.1と約pH7.0との間、約5.2と約pH7.0との間、約pH5.3と約pH7.0との間、約pH5.4と約pH7.0との間、約pH5.5と約pH7.0との間、約pH5.6と約pH7.0との間、約pH5.7と約pH7.0との間、約pH5.8と約pH7.0との間、約pH5.9と約pH7.0との間、約pH6.0と約pH7.0との間、約pH6.1と約pH7.0との間、約pH6.2と約pH7.0との間、約pH6.3と約pH7.0との間、約pH6.4と約pH7.0との間、約pH6.5と約pH7.0との間、約pH4.0と約pH6.8との間、約pH4.1と約pH6.8との間、約pH4.2と約pH6.8との間、約pH4.3と約pH6.8との間、約pH4.4と約pH6.8との間、約pH4.5と約pH6.8との間、約pH4.6と約pH6.8との間、約pH4.7と約pH6.8との間、約pH4.8と約pH6.8との間、約pH4.9と約pH6.8との間、約pH5.0と約pH6.8との間、約pH5.1と約pH6.8との間、約pH5.2と約pH6.8との間、約pH5.3と約pH6.8との間、約pH5.4と約pH6.8との間、約pH5.5と約pH6.8との間、約pH5.6と約pH6.8との間、約pH5.7と約pH6.8との間、約pH5.8と約pH6.8との間、約pH5.9と約pH6.8との間、約pH6.0と約pH6.8との間、約pH6.1と約pH6.8との間、約pH6.2と約pH6.8との間、約pH6.3とpH6.8との間、約pH4.0と約pH6.6との間、約pH4.1と約pH6.6との間、約pH4.2と約pH6.6との間、約pH4.3と約pH6.6との間、約pH4.4と約pH6.6との間、約pH4.5と約pH6.6との間、約pH4.6と約pH6.6との間、約pH4.7と約pH6.6との間、約pH4.7と約pH6.6との間、約pH4.8と約pH6.6との間、約pH4.9と約pH6.6との間、約pH5.0と約pH6.6との間、約pH5.1と約pH6.6との間、約pH5.2と約pH6.6との間、約pH5.3と約pH6.6との間、約pH5.4と約pH6.6との間、約pH5.5と約pH6.6との間、約pH5.6と約pH6.6との間、約pH5.7と約pH6.6との間、約pH5.8と約pH6.6との間、約pH5.9と約pH6.6との間、約pH6.0と約pH6.6との間または約pH6.1と約pH6.6との間の等電点を有するタンパク質下位集団を含み得る。
【0087】
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルは、約pH6.0とpH9.0との間、約pH6.2と約pH9.0との間、約pH6.4と約pH9.0との間、約pH6.6と約pH9.0との間、約pH6.8と約pH9.0との間、約pH7.0と約pH9.0との間、約pH7.2と約pH9.0との間、約pH7.4とpH9.0との間、約pH7.6と約pH9.0との間、約pH7.8と約pH9.0との間、約pH8.0と約pH9.0との間、約pH8.2と約pH9.0との間、約pH8.4と約pH9.0との間、約pH6.0と約pH8.5との間、約pH6.2と約pH8.5との間、約pH6.4と約pH8.5との間、約pH6.6と約pH8.5との間、約pH6.8と約pH8.5との間、約pH7.0と約pH8.5との間、約pH7.2と約pH8.5との間、約pH7.4と約pH8.5との間、約pH7.6と約pH8.5との間、約pH7.8と約pH8.5との間、約pH8.0とpH8.5との間、約pH6.0と約8.0との間、約pH6.2と約pH8.0との間、約pH6.4と約pH8.0との間、約pH6.6と約pH8.0との間、約pH6.8と約pH8.0との間、約pH7.0と約pH8.0との間、約pH7.2と約pH8.0との間、約pH7.4と約pH8.0との間、約pH6.0と約pH7.5との間、約pH6.2と約pH7.5との間、約pH6.4と約pH7.5との間、約pH6.6と約pH7.5との間、約pH6.8と約pH7.5との間または約pH7.0と約pH7.5との間の等電点を有するタンパク質下位集団を含み得る。
【0088】
エクリズマブの等電性プロファイルの非限定的な例は、約5.2から約6.7の間の等電点を有する7つまたは8つのタンパク質下位集団を含有する。より具体的には、エクリズマブの等電性プロファイルは、等電点電気泳動によって決定される、約5.45から約6.55の間のpIを有する7つまたは8つのバンドを含有する。エクリズマブについての参照等電性プロファイルのさらなる一例は、実施例に記載されている。
【0089】
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルを決定するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、等電点ゲル電気泳動(例えば、キャピラリー等電点ゲル電気泳動)およびチップは、当技術分野で公知である(例えば、Righettiら、Methods
Biochem. Anal. 54巻:379~409頁、2011年;Friedmanら、Methods Enzymol. 463巻:515~540頁、2009年;Koshelら、Proteomics 12巻:2918~2926頁、2012年;Sommerら、Electrophoresis 30巻:742~757頁、2009年;Shimuraら、Electrophoresis 30巻:11~28頁、2009年に記載される方法を参照のこと)。組換えタンパク質の等電性プロファイルを決定するためのさらなる方法は、当技術分野で公知である。組換えタンパク質産物の等電性プロファイルを決定するためのアッセイには、等電点ゲル電気泳動(例えば、キャピラリー等電点ゲル電気泳動)の実施が含まれ得る。本明細書に記載される方法のいずれかは、1つまたは複数の時点(例えば、第1の期間の最後、第2の期間の最後、または第2の期間中の1つもしくは複数の時点)において、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルを決定する1つまたは複数のステップを含み得る。一部の実施形態では、この組換えタンパク質産物は、等電性プロファイルの分析の前に精製される。この組換えタンパク質は、組織培養培地または清澄化された組織培養培地から精製され得る。一部の例では、この組換えタンパク質産物は、ある期間にわたって、約15℃、約10℃、約4℃、0℃、-20℃、-70℃または-80℃の温度で貯蔵される。この貯蔵時間は、通常、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルを決定するためのアッセイを実施する前の、24時間未満、48時間未満、3日間未満、4日間未満または1週間未満である。
【0090】
本明細書に記載される方法のいずれかにおける参照等電性プロファイルは、産物の等電性プロファイルを、より酸性のプロファイルもしくはより塩基性のプロファイル、または1つもしくは複数の有益な生物物理学的特性を有する組換えタンパク質産物の等電性プロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下でインキュベートする前の等電性プロファイルであり得る。有益な生物物理学的特性には、増大した溶解度、増大した酵素活性または結合活性、増大したin vivo半減期、および減少したin vivoクリアランスが含まれ得る。エクリズマブについての参照等電性プロファイルの非限定的な一例は、本明細書に記載される。
【0091】
哺乳動物細胞の培養
本明細書に記載される方法は、産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞を、第1の期間にわたって培養するステップを含む。例えば、この第1の期間は、増殖期および静止期を含む、増殖期および静止期からなる、または増殖期および静止期から本質的になる。この第1の期間は、通常、増殖期および静止期を含む。一部の実施形態では、この第1の期間は、増殖の衰退期の一部分を含む。一部の実施形態では、これらの哺乳動物細胞は、産物を産生し、哺乳動物細胞の分裂を促進するのに十分な条件下で、第1の期間にわたって培養される。本明細書に記載される方法において使用され得る哺乳動物細胞を培養する態様の非限定的な例は、以下に記載される。
【0092】
流加培養
本明細書に記載される方法における培養するステップは、流加培養を含み得る。当技術分野で公知のように、流加培養は、細胞培養物からの第1の液体培養培地の実質的なまたは顕著な除去なしの、初期細胞培養物への第2の培養培地の漸増的または連続的添加を含む。一部の場合には、この第2の培養培地は、第1の液体培養培地と同じである。この第2の培養培地は、液体形態または乾燥粉末のいずれかであり得る。他の場合には、この第2の培養培地は、第1の液体培養培地の濃縮形態であり、および/または乾燥粉末として添加される。
【0093】
この第2の培養培地は、第1の期間中のある特定の時点または複数の時点において、初期細胞培養物に添加され得る。例えば、この第2の培養培地は、第1の期間の開始後、6時間と7日間との間、約6時間と約6日間との間、約6時間と約5日間との間、約6時間と約4日間との間、約6時間と約3日間との間、約6時間と約2日間との間、約6時間と約1日間との間、約12時間と約7日間との間、約12時間と約6日間との間、約12時間と約5日間との間、約12時間と約4日間との間、約12時間と約3日間との間、約12時間と約2日間との間、約1日間と約7日間との間、約1日間と約6日間との間、約1日間と約5日間との間、約1日間と約4日間との間、約1日間と約3日間との間、約1日間と約2日間との間、約2日間と約7日間との間、約2日間と約6日間との間、約2日間と約5日間との間、約2日間と約4日間との間、約2日間と約3日間との間、約3日間と約7日間との間、約3日間と約6日間との間、約3日間と約5日間との間、約3日間と約4日間との間、約4日間と約7日間との間、約4日間と約6日間との間、約4日間と約5日間との間、約5日間と約7日間との間または約5日間と約6日間との間である時点において、初期細胞培養物に添加され得る。
【0094】
この第2の培養培地は、初期細胞培養物に連続的に添加され得るか、または第1の期間中に、この初期細胞培養物に周期的に(例えば、毎日)添加され得る。第2の培養培地が初期細胞培養物に周期的に添加される一部の例では、この第2の培養培地は、1回、2回、3回、4回、5回または6回、添加され得る。初期細胞培養物に添加される第2の液体培養培地の容積または第2の固体培養培地の量は、第1の期間中に変化(例えば、増加)し得る。第1の期間中の任意の24時間の期間にわたって初期細胞培養物に添加される第2の液体培養培地の容積は、バイオリアクターの初期容積の一部の割合であり得る。第1の期間中の任意の24時間の期間にわたって初期細胞培養物に添加される第2の液体培養培地の容積は、バイオリアクターの0.01×容積から約0.3×容積の間であり得る。この割合は、バイオリアクターの約0.01×容積と約0.28×容積との間、約0.01×容積と約0.26×容積との間、約0.01×容積と約0.24×容積との間、約0.01×容積と約0.22×容積との間、約0.01×容積と約0.20×容積との間、約0.01×容積と約0.18×容積との間、約0.01×容積と約0.16×容積との間、約0.01×容積と約0.14×容積との間、約0.01×容積と約0.12×容積との間、約0.01×容積と約0.10×容積との間、約0.01×容積と約0.08×容積との間、約0.01×容積と約0.06×容積との間、約0.01×容積と約0.04×容積との間、約0.025×容積と約0.3×容積との間、約0.025×容積と約0.28×容積との間、約0.025×容積と約0.26×容積との間、約0.025×容積と約0.24×容積との間、約0.025×容積と約0.22×容積との間、約0.025×容積と約0.20×容積との間、約0.025×容積と約0.18×容積との間、約0.025×容積と約0.16×容積との間、約0.025×容積と約0.14×容積との間、約0.025×容積と約0.12×容積との間、約0.025×容積と約0.10×容積との間、約0.025×容積と約0.08×容積との間、約0.025×容積と約0.06×容積との間、約0.025×容積と約0.04×容積との間、約0.05×容積と約0.3×容積との間、約0.05×容積と約0.28×容積との間、約0.05×容積と約0.26×容積との間、約0.05×容積と約0.24×容積との間、約0.05×容積と約0.22×容積との間、約0.05×容積と約0.20×容積との間、約0.05×容積と約0.18×容積との間、約0.05×容積と約0.16×容積との間、約0.05×容積と約0.14×容積との間、約0.05×容積と約0.12×容積との間、約0.05×容積と約0.10×容積との間、約0.1×容積と約0.3×容積との間、約0.1×容積と約0.28×容積との間、約0.1×容積と約0.26×容積との間、約0.1×容積と約0.24×容積との間、約0.1×容積と約0.22×容積との間、約0.1×容積と約0.20×容積との間、約0.1×容積と約0.18×容積との間、約0.1×容積と約0.16×容積との間、約0.1×容積と約0.14×容積との間、約0.1×容積との間、約0.15×容積と約0.3×容積との間、約0.15×容積と約0.2×容積との間、約0.2×容積と約0.3×容積との間または約0.25×容積と約0.3×容積との間であり得る。
【0095】
他の実施形態では、第1の期間中の任意の24時間の期間にわたって初期細胞培養物に添加される第2の液体培養培地の容積は、第1の期間の開始において、初期細胞培養物の0.02×容積と約1.0×容積との間、約0.02×容積と約0.9×容積との間、約0.02×容積と約0.8×容積との間、約0.02×容積と約0.7×容積との間、約0.02×容積と約0.6×容積との間、約0.02×容積と約0.5×容積との間、約0.02×容積と約0.4×容積との間、約0.02×容積と約0.3×容積との間、約0.02×容積と約0.2×容積との間、約0.02×容積と約0.1×容積との間、約0.05×容積と約1.0×容積との間、約0.05×容積と約0.8×容積との間、約0.05×容積と約0.7×容積との間、約0.05×容積と約0.6×容積との間、約0.05×容積と約0.5×容積との間、約0.05×容積と約0.4×容積との間、約0.05×容積と約0.3×容積との間、約0.05×容積と約0.2×容積との間、約0.05×容積と約0.1×容積との間、約0.1×容積と約1.0×容積との間、約0.1×容積と約0.9×容積との間、約0.1×容積と約0.8×容積との間、約0.1×容積と約0.7×容積との間、約0.1×容積と約0.6×容積との間、約0.1×容積と約0.5×容積との間、約0.1×容積と約0.4×容積との間、約0.1×容積と約0.3×容積との間、約0.1×容積と約0.2×容積との間、約0.2×容積と約1.0×容積との間、約0.2×容積と約0.9×容積との間、約0.2×容積と約0.8×容積との間、約0.2×容積と約0.7×容積との間、約0.2×容積と約0.6×容積との間、約0.2×容積と約0.5×容積orとの間、約0.2×容積と約0.4×容積との間であり得る。
【0096】
流加培養が本発明の方法において使用される場合、この第1の期間は、約4日間と約12日間との間、約4日間と約11日間との間、約4日間と約10日間との間、約4日間と約9日間との間、約4日間と約8日間との間、約4日間と約7日間との間、約4日間と約6日間との間、約4日間と約5日間との間、約5日間と約12日間との間、約5日間と約11日間との間、約5日間と約10日間との間、約5日間と約9日間との間、約5日間と約8日間との間、約5日間と約7日間との間、約6日間と約12日間との間、約6日間と約11日間との間、約6日間と約10日間との間、約6日間と約9日間との間、約6日間と約8日間との間、約7日間と約12日間との間、約7日間と約11日間との間、約7日間と約10日間との間、約7日間と約9日間との間、約8日間と約12日間との間、約8日間と約11日間との間、約8日間と約10日間との間、約9日間と約12日間との間、約9日間と約11日間との間または約10日間と約12日間との間であり得る。
【0097】
灌流培養
本明細書に記載される方法における培養するステップは、灌流培養であり得る。当技術分野で公知のように、灌流培養は、第1の容積の第1の液体培養培地を産生バイオリアクターから除去すること、および第2の容積の第2の液体培養培地を産生バイオリアクターに添加することを含み、この第1の容積および第2の容積は、ほぼ等しい。哺乳動物細胞は、ある種の細胞保持デバイスによって、または沈降コーンにおける細胞沈降などの技術を介して、バイオリアクター中に保持される。灌流培養における培地の除去および添加は、同時にもしくは逐次的に、またはこれら2つのある種の組合せで、実施され得る。さらに、除去および添加は、産生バイオリアクターの0.1%から800%の間、1%と700%との間、1%と600%との間、1%と500%との間、1%と400%との間、1%と350%との間、1%と300%との間、1%と250%との間、1%と100%との間、100%と200%との間、5%と150%との間、10%と50%との間、15%と40%との間、8%と80%との間または4%と30%との間の容積を除去および置き換える速度などで、連続的に実施され得る。
【0098】
除去される第1の容積の第1の液体培養培地および添加される第2の容積の第2の液体培養培地は、一部の例では、各24時間の期間にわたってほぼ同じに保持され得る。当技術分野で公知のように、第1の容積の第1の液体培養培地が除去される速度(容積/時間の単位)および第2の容積の第2の液体培養培地が添加される速度(容積/時間の単位)は、特定の細胞培養系の状態によって変動し得、それらに依存し得る。第1の容積の第1の液体培養培地が除去される速度(容積/時間の単位)および第2の容積の第2の液体培養培地が添加される速度(容積/時間の単位)は、ほぼ同じであり得る、または異なり得る。
【0099】
あるいは、除去および添加される容積は、各24時間の期間にわたって徐々に増加することによって変化し得る。例えば、各24時間の期間内に除去される第1の液体培養培地の容積および添加される第2の液体培養培地の容積は、培養期間にわたって増加され得る。この容積は、産生バイオリアクター容積の0.5%~約20%の間である容積から、第1の期間にわたって増加され得る。この容積は、産生バイオリアクター容積の約25%~約150%まで、または第1の液体培養培地容積まで、第1の期間にわたって増加され得る。
【0100】
本明細書に記載される方法の一部の例では、第1の期間の最初の48~96時間の後、(第1の期間内の)各24時間の期間中に、除去される第1の容積の第1の液体培養培地および添加される第2の容積の第2の液体培養培地は、第1の液体培養培地の容積の約10%から約95%、約10%から約20%、約20%から約30%、約30%から約40%、約40%から約50%、約50%から約60%、約60%から約70%、約70%から約80%、約80%から約90%、約85%から約95%、約60%から約80%または約70%である。
【0101】
当業者は、第1の液体培養培地および第2の液体培養培地が、同じ型の培地であり得ることを理解する。他の場合には、この第1の液体培養培地および第2の液体培養培地は、異なり得る。この第2の液体培養培地は、1つまたは複数の培地成分に関してより濃縮され得る。
【0102】
第1の容積の第1の液体培養培地は、任意の自動化システムを使用することによって除去され得る。例えば、交互接線流濾過が使用され得る。あるいは、第1の容積の第1の液体培養培地は、哺乳動物細胞を排除する分子量カットオフを有する滅菌メンブレンを通じて第1の容積の第1の液体培養培地を浸出させることまたはその重力流によって、除去され得る。あるいは、第1の容積の第1の液体培養培地は、少なくとも1分間、少なくとも2分間、3分間、4分間、5分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、40分間、50分間または1時間の期間にわたって、撹拌を停止させることまたは撹拌速度を顕著に減少させること、および第1の容積の第1の液体培養培地を、産生バイオリアクターの上部から取り出しまたは吸引することによって、除去され得る。
【0103】
第2の容積の第2の液体培養培地は、ポンプによって、第1の液体培養培地に添加され得る。この第2の液体培養培地は、手動で、例えば、第2の容積の第2の液体培養培地を第1の液体培養培地上に直接ピペッティングもしくは注入することによって、または自動化様式で、第1の液体培養培地に添加され得る。
【0104】
第1の期間
本明細書に記載される方法では、組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳動物細胞は、産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、第1の期間にわたって培養される。一部の実施形態では、この第1の期間は、哺乳動物細胞の増殖期からなる、または哺乳動物細胞の増殖期および静止期からなる。一部の実施形態では、この第1の期間は、培養されている哺乳動物細胞の増殖期、静止期、および衰退期の一部分からなる。他の例では、この第1の期間は、哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する。臨界時点の非限定的な例は、当技術分野で公知である。例えば、臨界時点は、細胞培養物が生存度において有意に悪化し始め、組換えタンパク質の臨界品質特性(critical quality attribute)における悪化を引き起こし得る時点である。別の一例では、臨界時点は、培養培地または細胞培養物中の組換えタンパク質産物が、分解産物の増大した形成、増大した変性、望ましくないグリコフォームの増大した形成、凝集物の増大した形成、および/または生物学的活性の喪失など、特定の品質特性において顕著に悪化し始めている時間であり得る。細胞培養物についての臨界時点を検出および決定するための方法は、産生されているタンパク質、およびタンパク質産物の意図した使用に依存する。例えば、タンパク質分解産物、変性組換えタンパク質、組換えタンパク質凝集物および組換えタンパク質生物学的活性を検出するための方法は、当技術分野で周知である。
【0105】
非限定的な例では、この臨界時点は、第1の期間の開始後、約5日間~約12日間の間、約5日間~約11日間の間、約5日間~約10日間の間、約5日間~約9日間の間、約5日間~約8日間の間、約5日間~約7日間の間、約6日間~約12日間の間、約6日間~約11日間の間、約6日間~約10日間の間、約6日間~約9日間の間、約6日間~約8日間の間、約7日間~約12日間の間、約7日間~約11日間の間、約7日間~約10日間の間、約7日間~約9日間の間、約8日間~約12日間の間、約8日間~約11日間の間、約8日間~約10日間の間、約9日間~約12日間の間、約9日間~約11日間の間または約8日間~約10日間の間である。臨界時点のさらなる例は、実施例に記載されている。
【0106】
哺乳動物細胞
本明細書に記載される方法において培養される哺乳動物細胞は、種々の異なる哺乳動物細胞であり得る。一部の例では、この哺乳動物細胞は、接着細胞であり、細胞培養物は、マイクロキャリアを含む。一部の例では、この哺乳動物細胞は、懸濁物中で増殖する細胞であり得る。本明細書に記載される方法を使用して培養され得る哺乳動物細胞の非限定的な例には、以下が含まれる:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO DG44細胞、CHO-K1細胞)、Sp2/0骨髄腫細胞、他の骨髄腫細胞、例えばNS/0細胞、B細胞、ハイブリドーマ細胞、T細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞(例えば、HEK 293EおよびHEK 293F)、アフリカミドリザル腎臓上皮細胞(Vero)細胞およびメイディン・ダービー・イヌ(コッカースパニエル)腎臓上皮細胞(MDCK)細胞。本明細書に記載される方法を使用して培養され得るさらなる哺乳動物細胞は、当技術分野で公知である。本明細書に記載される方法のいずれかの非限定的な例では、第1の期間のスタート時に産生バイオリアクター中に存在する哺乳動物細胞の細胞密度は、約0.1×106細胞/mL~約0.5×106細胞/mL、約0.2×106細胞/mL~約0.4×106細胞/mLまたは約0.25×106細胞/mL~約0.5×106細胞/mLである。
【0107】
本明細書に記載される方法において使用される哺乳動物細胞は、哺乳動物細胞のゲノム中に安定に組み込まれた、組換えタンパク質をコードする組換え核酸を含有することができる。一部の実施形態では、組換えタンパク質は、哺乳動物細胞によって組織培養培地中に分泌される。一部の場合には、培養された哺乳動物細胞は、シード培養物由来である。より具体的には、初期細胞培養物は、シードトレインプロセスの結果、または別の産生バイオリアクター由来の培養物である。
【0108】
培養培地
培養するステップにおいて使用され得る液体培養培地は、当技術分野で公知である。この液体培養培地には、哺乳動物血清または哺乳動物血清成分、例えば、成長ホルモンまたは増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは上皮増殖因子)が補充され得る。この哺乳動物血清または血清成分は、胎仔ウシ血清であり得、New Zealandウシ血清に排他的に由来し得る。あるいは、この液体培養培地は、化学的に規定された液体培養培地、動物由来成分を含まない液体培養培地、無血清液体培養培地または血清含有液体培養培地であり得る。化学的に規定された液体培養培地、動物由来成分を含まない液体培養培地、無血清液体培養培地および血清含有液体培養培地の非限定的な例は、市販されている。
【0109】
液体培養培地は、典型的には、グルコースなどの炭水化物由来のエネルギー源、アミノ酸(例えば、20種のアミノ酸+システインの基本的セット)、ビタミン、遊離脂肪酸、微量元素、および低濃度で要求される他の有機化合物を含有する。液体培養培地には、塩および緩衝液(例えば、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、ヌクレオシドおよび塩基(例えば、アデノシン、チミジンおよびヒポキサンチン)、タンパク質および組織加水分解物、ならびに/またはこれらもしくは他の添加剤の任意の組合せが補充することができる。
【0110】
本明細書に記載される方法において有用であり得る液体培養培地の非限定的な例には、例えば、CD CHO、Opti CHOおよびForti CHO(全てLife Technologies;Grand Island、NYから入手可能)、Hycell CHO培地(Thermo Fisher Scientific,Inc.;Waltham、MA)、Ex-cell CD CHO Fusion培地(Sigma-Aldrich Co.;St.Louis、MO)ならびにPowerCHO培地(Lonza Group,Ltd.;Basel、Switzerland)が含まれる。本発明の方法においてこれもまた有用であり得る培地成分には、化学的に規定された(CD)加水分解物、例えば、CDペプトン、CDポリペプチド(2つまたはそれ超のアミノ酸)およびCD増殖因子が含まれるがこれらに限定されない。液体組織培養培地および培地成分のさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0111】
哺乳動物細胞の培養において使用される培養培地は、約6.5と約7.5との間、約6.5と約7.4との間、約6.5と約7.3との間、約6.5と約7.2との間、約6.5と約7.1との間、約6.5と約7.0との間、約6.5と約6.9との間、約6.5と約6.8との間、約6.5と約6.7との間、約6.6と約7.5との間、約6.6と約7.4との間、約6.6と約7.3との間、約6.6と約7.2との間、約6.6と約7.1との間、約6.6と約7.0との間、約6.6と約6.9との間、約6.6と約6.8との間、約6.7と約7.5との間、約6.7と約7.4との間、約6.7と約7.3との間、約6.7と約7.2との間、約6.7と約7.1との間、約6.7と約7.0との間、約6.7と約6.9との間、約6.8と約7.5との間、約6.8と約7.4との間、約6.8と約7.3との間、約6.8と約7.2との間、約6.8と約7.1との間、約6.8と約7.0との間、約6.9と約7.5との間、約6.9と約7.4との間、約6.9と約7.3との間、約6.9と約7.2との間、約6.9と約7.1との間、約7.0と約7.5との間、約7.0と約7.4との間、約7.0と約7.3との間、約7.0と約7.2との間、約7.1と約7.5との間、約7.1と約7.4との間、約7.1と約7.3との間、約7.2と約7.5との間、約7.2と約7.4との間または約7.3と約7.5との間のpHを有し得る。
【0112】
当業者は、培養において使用される液体培養培地が、同じであり得るか、または細胞培養条件に依存して第1の期間中に変化し得ることを理解する。
【0113】
一部の実施形態では、流加培養物に添加される培養培地は、固体組成物であり得る。流加培養物に添加され得る固体培養培地の例は、当技術分野で公知である。
【0114】
撹拌
哺乳動物細胞の培養は、通常、培養物の混合のための、いくつかの形態の撹拌を含む。例えば、培養において使用される撹拌は、インペラを使用した回転撹拌であり得る。撹拌は、約200RPM~約500RPM、約200RPMと480RPMとの間、約200RPMと約460RPMとの間、約200RPMと約440RPMとの間、約200RPMと約420RPMとの間、約200RPMと約400RPMとの間、約200RPMと約380RPMとの間、約200RPMと約360RPMとの間、約200RPMと約340RPMとの間、約200RPMと約320RPMとの間、約200RPMと約300RPMとの間、約200RPMと約280RPMとの間、約200RPMと約260RPMとの間、約200RPMと約240RPMとの間、約200RPMと約220RPMとの間、約240RPMと約500RPMとの間、約240RPMと約480RPMとの間、約240RPMと約460RPMとの間、約240RPMと約440RPMとの間、約240RPMと約420RPMとの間、約240RPMと約400RPMとの間、約240RPMと約380RPMとの間、約240RPMと約360RPMとの間、約240RPMと約340RPMとの間、約240RPMと約320RPMとの間、約240RPMと約300RPMとの間、約240RPMと約280RPMとの間、約240RPMと約260RPMとの間、約260RPMと約500RPMとの間、約260RPMと約480RPMとの間、約260RPMと約460RPMとの間、約260RPMと約440RPMとの間、約260RPMと約420RPMとの間、約260RPMと約400RPMとの間、約260RPMと約380RPMとの間、約260RPMと約360RPMとの間、約260RPMと約340RPMとの間、約260RPMと約320RPMとの間、約260RPMと約300RPMとの間、約260RPMと約280RPMとの間、約280RPMと約500RPMとの間、約280RPMと約480RPMとの間、約280RPMと約460RPMとの間、約280RPMと約440RPMとの間、約280RPMと約420RPMとの間、約280RPMと約400RPMとの間、約280RPMと約380RPMとの間、約280RPMと約360RPMとの間、約280RPMと約340RPMとの間、約280RPMと約320RPMとの間、約280RPMと約280RPMとの間、約300RPMと約500RPMとの間、約380RPMと約480RPMとの間、約380RPMと約460RPMとの間、約380RPMと約440RPMとの間、約380RPMと約420RPMとの間、約380RPMと約400RPMとの間、約400RPMと約500RPMとの間、約400RPMと約480RPMとの間、約400RPMと約460RPMとの間、約400RPMと約440RPMとの間または約400RPMと約420RPMとの間の回転数で行われ得る。撹拌は、連続的にまたは周期的に実施され得る。
【0115】
温度
本明細書に記載される培養するステップは、32℃~約39℃、約32℃~約37℃、約32℃から約37.5℃の間、約34℃から約37℃の間、または約35℃から約37℃の間の温度で実施され得る。例えば、哺乳動物細胞は、第1の期間の開始から最後まで、約37℃の温度でインキュベートされ得る。当業者は、この温度が、第1の期間中に、例えば、1時間毎に、または毎日、僅かに変化され得るまたは変動し得ることを理解する。例えば、この温度は、第1の期間のスタートの約1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、14日後もしくは15日後に、または第1の期間内の任意の時点において、変化またはシフト(例えば、上昇または低下)され得る。例えば、この温度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10.0℃、上方にシフトされ得る。別の一例では、この温度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10℃、下方にシフトされ得る。
【0116】
CO2
培養するステップは、約1%~15%CO2、多くて、14%CO2、12%CO2、10%CO2、8%CO2、6%CO2、5%CO2、4%CO2、3%CO2、2%CO2もしくは約14%CO2、12%CO2、10%CO2、8%CO2、6%CO2、5%CO2、4%CO2、3%CO2、2%CO2、または多くて、1%CO2もしくは約1%CO2を含有する雰囲気を使用して実施することができる。産生バイオリアクター中にCO2をスパージするための方法は、当技術分野で周知である。
【0117】
本明細書に記載される方法のいずれかは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、85%、80%、85%、90%もしくは約20%、30%、40%、50%、60%、70%、85%、80%、85%、90%、または少なくとも95%もしくは約95%の湿度、または約100%の湿度を含む加湿雰囲気中で、第1の期間中に細胞を培養するステップもまた含み得る。
【0118】
dO2
培養するステップは、約3%と約55%との間、約3%と約50%との間、約3%と約45%との間、約3%と約40%との間、約3%と約35%との間、約3%と約30%との間、約3%と約25%との間、約3%と約20%との間、約3%と約15%との間、約5%と約55%との間、約5%と約50%との間、約5%と約45%との間、約5%と約40%との間、約5%と約35%との間、約5%と約30%との間、約5%と約25%との間、約5%と約20%との間、約5%と約15%との間、約5%と約10%との間、約10%と約55%との間、約10%と約50%との間、約10%と約45%との間、約10%と約40%との間、約10%と約35%との間、約10%と約30%との間、約10%と約25%との間、約10%と約20%との間、約15%と約55%との間、約15%と約50%との間、約15%と約45%との間、約15%と約40%との間、約15%と約35%との間、約15%と約30%との間、約15%と約25%との間、約15%と約20%との間、約20%と約55%との間、約20%と約50%との間、約20%と約45%との間、約20%と約40%との間、約20%と約35%との間、約20%と約30%との間、約20%と約25%との間、約25%と約55%との間、約25%と約50%との間、約25%と約45%との間、約25%と約40%との間、約25%と約35%との間、約25%と約30%との間、約30%と約55%との間、約30%と約50%との間、約30%と約45%との間、約30%と約40%との間、約30%と約35%との間、約35%と約55%との間、約35%と約50%との間、約35%と約45%との間、約35%と約40%との間、約40%と約55%との間、約40%と約50%との間、約40%と約45%との間、約45%と約55%との間、約45%と約50%との間または約50%と約55%との間の溶存酸素(dO2)を細胞培養物中で維持することによって実施され得る。
【0119】
組換えタンパク質
本明細書に記載される方法のいずれかにおける組換えタンパク質の非限定的な例は、軽鎖および重鎖免疫グロブリンを含む免疫グロブリン、ヒト補体タンパク質C5に特異的に結合するヒト化抗体を含む抗体、例えばエクリズマブ、または抗体断片、酵素、例えば、α-ガラクトシダーゼ、Myozyme、Cerezyme、非抗体タンパク質、例えば、ヒトエリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンアルファもしくはベータ、またはワクチンにおける使用のための免疫原性もしくは抗原性タンパク質もしくはタンパク質断片である。一部の実施形態では、この組換えタンパク質は、少なくとも1つの多機能性組換えタンパク質足場を含有する操作されたタンパク質である。例えば、Gebauerら、Current Opin. Chem. Biol. 13巻:245~255頁、2009年;および米国特許出願公開第2012/0164066号に記載される組換え抗原結合タンパク質を参照のこと。抗体である組換えタンパク質の非限定的な例には、以下が含まれる:パニツムマブ、オマリズマブ、アバゴボマブ(abagovomab)、アブシキシマブ、アクトクスマブ(actoxumab)、アダリムマブ、アデカツムマブ(adecatumumab)、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ(altumomab)、アマツキシマブ、アナツモマブ(anatumomab)、アポリズマブ、アチヌマブ(atinumab)、トシリズマブ、バシリキシマブ(basilizimab)、ベクツモマブ(bectumomab)、ベリムマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ(biciromab)、カナキヌマブ、セツキシマブ、ダクリズマブ、デノスマブ(densumab)、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ(efungumab)、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、エタラシズマブ(etaracizumab)、ゴリムマブ、インフリキシマブ、ナタリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシリズマブおよびトラスツズマブ。本明細書に記載される方法によって産生され得る治療抗体のさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0120】
エクリズマブは、配列番号1を含むまたは配列番号1からなる重鎖、および配列番号2を含むまたは配列番号2からなる軽鎖を含み得る。エクリズマブの重鎖および軽鎖をコードする核酸は、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第6,355,245号中の核酸配列およびAnら、mAbs 1巻:6号、572~579頁、2009年中のFc領域配列を参照のこと)。
【0121】
タンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる方法
本明細書で提供される方法は、産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ、または産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップもまた含む。このインキュベートするステップの非限定的な態様は、本明細書に記載される。
【0122】
インキュベートされた組換えタンパク質産物
第2の期間中にインキュベートされた組換えタンパク質産物は、培養物中の組換えタンパク質および哺乳動物細胞の混合物であり得る。一部の実施形態では、これらの方法は、いくつかの形態の濾過を介して、培養物を清澄化するステップをさらに含む。第2の期間中にインキュベートされた組換えタンパク質産物は、清澄化された組織培養培地中の組換えタンパク質でもあり得る。一部の実施形態では、これらの方法は、第2の期間にわたるインキュベーションの前に組換えタンパク質を精製するステップをさらに含み、第2の期間中にインキュベートされた組換えタンパク質産物は、希釈剤中の精製されたタンパク質産物である。この希釈剤は、緩衝液、例えばリン酸緩衝食塩水であり得る。
【0123】
インキュベーションに使用される容器
本明細書に記載される例のいずれかでは、この組換えタンパク質産物は、産生バイオリアクター(例えば、本明細書に記載される例示的な産生バイオリアクターのいずれか)中または貯蔵容器中でインキュベートされ得る。貯蔵容器は、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをシフトさせる(例えば、酸性シフトまたは塩基性シフト)のに十分な条件下で、組換えタンパク質産物をインキュベートするために備えられ得る。例えば、この貯蔵容器は、(本明細書に記載される任意の形態の)組換えタンパク質産物のdO2レベル、温度、pHおよびCO2レベルのうち1つまたは複数を調節するために備えられ得る。この貯蔵容器は、例えば、組換えタンパク質産物の撹拌を調節するためにも備えられ得る。この貯蔵容器は、例えば、約20Lと約5000Lとの間、約20Lと約4000Lとの間、約20Lと約2000Lとの間、約20Lと約1000Lとの間、約20Lと約800Lとの間、約20Lと約600Lとの間、約20Lと約400Lとの間、約20Lと約200Lとの間、約20Lと約100Lとの間、約50Lと約5000Lとの間、約50Lと約4000Lとの間、約50Lと約2000Lとの間、約50Lと約1000Lとの間、約50Lと約800Lとの間、約50Lと約600Lとの間、約50Lと約400Lとの間、約50Lと約200Lとの間、約50Lと約100Lとの間、約100Lと約5000Lとの間、約100Lと約4000Lとの間、約100Lと約2000Lとの間、約100Lと約1000Lとの間、約100Lと約800Lとの間、約100Lと約600Lとの間、約100Lと約400Lとの間、約100Lと約200Lとの間、約200Lと約5000Lとの間、約200Lと約4000Lとの間、約200Lと約2000Lとの間、約200Lと約1000Lとの間、約200Lと約800Lとの間、約200Lと約600Lとの間、約200Lと約400Lとの間、約500Lと約5000Lとの間、約500Lと約4000Lとの間、約500Lと約2000Lとの間、約500Lと約1000Lとの間、約500Lと約800Lとの間、約1000Lと約5000Lとの間、約1000Lと約4000Lとの間または約1000Lと約2000Lとの間の容積を有し得る。
【0124】
第2の期間
本明細書に記載される例のいずれかでは、第2の期間は、培養の臨界期間(critical time period)後、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、少なくとも24時間、少なくとも25時間、少なくとも26時間、少なくとも27時間、少なくとも28時間、少なくとも29時間、少なくとも30時間、少なくとも31時間、少なくとも32時間、少なくとも33時間、少なくとも34時間、少なくとも35時間、少なくとも36時間、少なくとも37時間、少なくとも38時間、少なくとも39時間、少なくとも40時間、少なくとも41時間、少なくとも42時間、少なくとも43時間、少なくとも44時間、少なくとも45時間、少なくとも46時間、少なくとも47時間、少なくとも48時間、少なくとも49時間、少なくとも50時間、少なくとも55時間、少なくとも60時間、少なくとも65時間、少なくとも70時間、少なくとも75時間、少なくとも80時間、少なくとも85時間、少なくとも90時間、少なくとも95時間、少なくとも100時間、少なくとも105時間、少なくとも110時間、少なくとも115時間、少なくとも120時間、少なくとも125時間、少なくとも130時間、少なくとも135時間、少なくとも140時間、少なくとも145時間、少なくとも150時間、少なくとも155時間、少なくとも160時間、少なくとも165時間、少なくとも170時間、少なくとも175時間、少なくとも180時間、少なくとも185時間、少なくとも190時間、少なくとも195時間または少なくとも200時間であり得る。
【0125】
本明細書に記載される、タンパク質産物をより塩基性の等電性プロファイルにシフトさせるための方法では、この第2の期間は、少なくとも2時間(例えば、培養の衰退期に入って少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、少なくとも24時間、少なくとも25時間、少なくとも26時間、少なくとも27時間、少なくとも28時間、少なくとも29時間、少なくとも30時間、少なくとも31時間、少なくとも32時間、少なくとも33時間、少なくとも34時間、少なくとも35時間、少なくとも36時間、少なくとも37時間、少なくとも38時間、少なくとも39時間、少なくとも40時間、少なくとも41時間、少なくとも42時間、少なくとも43時間、少なくとも44時間、少なくとも45時間、少なくとも46時間、少なくとも47時間、少なくとも48時間、少なくとも49時間、少なくとも50時間、少なくとも55時間、少なくとも60時間、少なくとも65時間、少なくとも70時間、少なくとも75時間、少なくとも80時間、少なくとも85時間、少なくとも90時間、少なくとも95時間、少なくとも100時間、少なくとも105時間、少なくとも110時間、少なくとも115時間、少なくとも120時間、少なくとも125時間、少なくとも130時間、少なくとも135時間、少なくとも140時間、少なくとも145時間、少なくとも150時間、少なくとも155時間、少なくとも160時間、少なくとも165時間、少なくとも170時間、少なくとも175時間、少なくとも180時間、少なくとも185時間、少なくとも190時間、少なくとも195時間または少なくとも200時間(例えば、衰退期の開始時にスタートする少なくとも2時間)であり得る。
【0126】
本明細書に記載される例のいずれか(例えば、タンパク質産物をより酸性の等電性プロファイルにシフトさせるための方法)では、この第2の期間は、培養の衰退期の約2時間~約200時間の間、約2時間と約180時間との間、約2時間と約160時間との間、約2時間と約140時間との間、約2時間と約120時間との間、約2時間と約100時間との間、約2時間と約80時間との間、約2時間と約60時間との間、約2時間と約40時間との間、約2時間と約20時間との間、約4時間と約200時間との間、約4時間と約180時間との間、約4時間と約160時間との間、約4時間と約140時間との間、約4時間と約120時間との間、約4時間と約100時間との間、約4時間と約80時間との間、約4時間と約60時間との間、約4時間と約40時間との間、約4時間と約20時間との間、約6時間と約200時間との間、約6時間と約180時間との間、約6時間と約160時間との間、約6時間と約140時間との間、約6時間と約120時間との間、約6時間と約100時間との間、約6時間と約80時間との間、約6時間と約60時間との間、約6時間と約40時間との間、約6時間と約20時間との間、約8時間と約200時間との間、約8時間と約180時間との間、約8時間と約160時間との間、約8時間と約140時間との間、約8時間と約120時間との間、約8時間と約100時間との間、約8時間と約80時間との間、約8時間と約60時間との間、約8時間と約40時間との間、約8時間と約20時間との間、約10時間と約200時間との間、約10時間と約180時間との間、約10時間と約160時間との間、約10時間と約140時間との間、約10時間と約120時間との間、約10時間と約100時間との間、約10時間と約80時間との間、約10時間と約60時間との間、約10時間と約40時間との間、約10時間と約20時間との間、約15時間と約200時間との間、約15時間と約180時間との間、約15時間と約160時間との間、約15時間と約140時間との間、15時間と約120時間との間、15時間と約100時間との間、15時間と約80時間との間、15時間と約60時間との間、15時間と約40時間との間、15時間と約20時間との間、約20時間と約200時間との間、約20時間と約180時間との間、約20時間と約160時間との間、約20時間と約140時間との間、約20時間と約120時間との間、約20時間と約100時間との間、約20時間と約80時間との間、約20時間と約60時間との間、約20時間と約40時間との間、約25時間と約200時間との間、約25時間と約180時間との間、約25時間と約160時間との間、約25時間と約140時間との間、約25時間と約120時間との間、約25時間と約100時間との間、約25時間と約80時間との間、約25時間と約60時間との間または約25時間と約40時間との間であり得る。
【0127】
産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件は、以下のうち1つまたは複数を含み得る:ある範囲の温度、ある範囲のdO2値、ある範囲のpH値、ある範囲の撹拌速度、および組換えタンパク質産物を含有する液体(例えば、細胞および組換えタンパク質を含有する細胞培養培地、組換えタンパク質を含有する清澄化された培養培地、または組換えタンパク質を含有する緩衝液)中への1つまたは複数の薬剤の添加。第2の期間中の、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせ得るpH値の例は、約pH7.00~約pH7.30の間、約pH7.00~約pH7.25の間、約pH7.00~約pH7.20の間、約pH7.00~約pH7.15の間、約pH7.00~約pH7.10の間、約pH7.00~約pH7.05の間、約pH7.05~約pH7.30の間、約pH7.05~約pH7.25の間、約pH7.05~約pH7.20の間、約pH7.05~約pH7.15の間、約pH7.05~約pH7.10の間、約pH7.10~約pH7.30の間、約pH7.10~約pH7.25の間、約pH7.10~約pH7.20の間、約pH7.10~約pH7.15の間、約pH7.15~約pH7.30の間、約pH7.15~約pH7.25の間、約pH7.15~約pH7.20の間、約pH7.20~約pH7.30の間、約pH7.20~約pH7.25の間または約pH7.25~約pH7.30の間である。
【0128】
第2の期間中の、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせ得るdO2値の例は、約2%~約35%の間、約2%~約35%の間、約2%~約30%の間、約2%~約25%の間、約2%~約20%の間、約2%~約15%の間、約2%~約10%の間、約2%~約5%の間、約5%~約35%の間、約5%~約30%の間、約5%~約25%の間、約5%~約20%の間、約5%~約15%の間、約5%~約10%の間、約10%~約35%の間、約10%~約30%の間、約10%~約25%の間、約10%~約20%の間、約10%~約15%の間、約15%~約35%の間、約15%~約30%の間、約15%~約25%の間、約15%~約20%の間、約20%~約35%の間、約20%~約30%の間、約20%~約25%の間、約25%~約35%の間、約25%~約30%の間または約30%~約35%の間である。
【0129】
第2の期間中の、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせ得る温度の例は、約30℃~約39℃の間、約30℃~約38℃の間、約30℃~約37.5℃の間、約30℃~約37℃の間、約30℃~約36℃の間、約30℃~約35℃の間、約30℃~約34℃の間、約30℃~約33℃の間、約30℃~約32℃の間、約31℃~約39℃の間、約31℃~約38℃の間、約31℃~約37.5℃の間、約31℃~約37℃の間、約31℃~約36℃の間、約31℃~約35℃の間、約31℃~約34℃の間、約31℃~約33℃の間、約32℃~約39℃の間、約32℃~約38℃の間、約32℃~約37.5℃の間、約32℃~約37℃の間、約32℃~約36℃の間、約32℃~約35℃の間、約32℃~約34℃の間、約33℃~約39℃の間、約33℃~約38℃の間、約33℃~約37.5℃の間、約33℃~約37℃の間、約33℃~約36℃の間、約33℃~約35℃の間、約34℃~約39℃の間、約34℃~約38℃の間、約34℃~約37.5℃の間、約34℃~約37℃の間、約34℃~約36℃の間、約35℃~約39℃の間、約35℃~約38℃の間、約35℃~約37.5℃の間、約35℃~約37℃の間、約36℃~約39℃の間、約36℃~約38℃の間、約36℃~約37.5℃の間、約37℃と約39℃との間、約37℃~約39℃の間または約36℃~約37℃の間である。
【0130】
第2の期間中の、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせ得る撹拌速度の例は、約200RPM~約400RPMの間、約200RPM~約380RPMの間、約200RPM~約360RPMの間、約200RPM~約340RPMの間、約200RPM~約320RPMの間、約200RPM~約300RPMの間、約200RPM~約280RPMの間、約200RPM~約260RPMの間、約200RPM~約240RPMの間、約200RPM~約220RPMの間、約220RPM~約400RPMの間、約220RPM~約380RPMの間、約220RPM~約360RPMの間、約220RPM~約340RPMの間、約220RPM~約320RPMの間、約220RPM~約300RPMの間、220RPM~約280RPMの間、約220RPM~約260RPMの間、約220RPM~約240RPMの間、約240RPM~約400RPMの間、約240RPM~約380RPMの間、約240RPM~約360RPMの間、約240RPM~約340RPMの間、約240RPM~約320RPMの間、約240RPM~約300RPMの間、約240RPM~約280RPMの間、約240RPM~約260RPMの間、約260RPM~約400RPMの間、約260RPM~約380RPMの間、約260RPM~約360RPMの間、約260RPM~約340RPMの間、約260RPM~約320RPMの間、約260RPM~約300RPMの間、約260RPM~約280RPMの間、約280RPM~約400RPMの間、約280RPM~約380RPMの間、約280RPM~約360RPMの間、約280RPM~約340RPMの間280RPM~約320RPMの間、約280RPM~約300RPMの間、約300RPM~約400RPMの間、約300RPM~約380RPMの間、約300RPM~約360RPMの間、約300RPM~約340RPMの間、約300RPM~約320RPMの間、約320RPM~約400RPMの間、約320RPM~約380RPMの間、約320RPM~約360RPMの間、約320RPM~約340RPMの間、約340RPM~約400RPMの間、約340RPM~約380RPMの間、約340RPMと約360RPMとの間、約360RPM~約400RPMの間、約360RPM~約380RPMの間または約380RPM~約400RPMの間である。
【0131】
第2の期間中の、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルにおける酸性シフトを誘導し得る条件の非限定的な例には、以下のうち1つまたは複数が含まれる:約200RPM~約280RPMの間、約210RPM~約270RPMの間、約220RPM~約260RPMの間、約230RPM~約250RPMまたは約240RPMの撹拌速度;約31.5℃と約41.5℃との間、約32.5℃と約40.5℃との間、約33.5℃と約39.5℃との間、約34.5℃と約38.5℃との間、約35.5℃と約37.5℃または約36.5℃の温度;約7.10と約7.50との間のpH(例えば、約7.15と約7.45との間、約7.20と約7.40との間、約7.25と約7.35との間または約7.32のpH;および約2%と約35%との間、約2%と約30%との間、約2%と約25%との間、約2%と約20%との間、約2%と約15%との間、約2%と約10%との間、約2%と約7%との間または約5%のdO2値。
【0132】
産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件には、以下のうち1つまたは複数が含まれ得る:時間、ある範囲の特定の温度、ある範囲の特定のdO2値、ある範囲の特定のpH値、ある範囲の特定の撹拌速度、および組換えタンパク質産物を含有する液体(例えば、細胞および組換えタンパク質を含有する細胞培養培地、組換えタンパク質を含有する清澄化された培養培地、または組換えタンパク質を含有する緩衝液)への1つまたは複数の薬剤(例えば、New Zealandウシ血清アルブミン)の添加。第1の期間にわたって産物を産生するために使用される例示的な条件のいずれかは、第2の期間中に、等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルにシフトさせるために使用され得る。組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルにシフトさせるために使用され得る例示的な条件は、以下に提供される。
【0133】
第2の期間中の、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせ得るdO2値の例は、例えば、約35%~約50%の間、約35%~約45%の間、約35%~約40%の間、約40%~約50%の間、または約45%~約50%の間である。
【0134】
第2の期間中の、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせ得るpH値の例は、例えば、約pH6.70~約pH7.00の間、約pH6.70~約pH6.90の間、約pH6.70~約pH6.90の間、約pH6.70~約pH6.80の間、約pH6.80~約pH7.00の間、pH6.80~約pH6.90の間または約pH6.90~約pH7.00の間である。
【0135】
より塩基性のプロファイルに向かう組換えタンパク質産物の等電性プロファイルのシフトは、例えば、培養の臨界期間の後、約10分間と約6時間との間、約10分間と約5.5時間との間、約10分間と約5.0時間との間、約10分間と約4.5時間との間、約10分間と約4.0時間との間、約10分間と約3.5時間との間、約10分間と約3.0時間との間、約10分間と約2.5時間との間、約10分間と約2.0時間との間、約10分間と約1.5時間との間、約10分間と約1.0時間との間または約10分間と約0.5時間との間である第2の期間を使用することによって、一部達成され得る。より塩基性のプロファイルに向かう組換えタンパク質産物の等電性プロファイルのシフトは、例えば、培養の衰退期の約10分間~約8時間の間、約10分間~約7.5時間の間、約10分間~約7.0時間の間、約10分間~約6.5時間の間、約10分間~約6.0時間の間、約10分間~約5.5時間の間、約10分間~約5.0時間の間、約10分間~約4.5時間の間、約10分間~約4.0時間の間、約10分間~約3.5時間の間、約10分間~約3.0時間の間、約10分間~約2.5時間の間、約10分間~約2.0時間の間、約10分間~約1時間の間または約10分間~約0.5時間の間である第2の期間を使用することによって、一部達成され得る(例えば、衰退期の開始時にまたは衰退期に入る選択された時間にスタートする第2の期間)。
【0136】
等電性プロファイルにおいて達成されるシフト
一部の実施形態は、塩基性のプロファイルを有する産物を産生する条件の使用を含む。例えば、原材料New Zealandウシ血清またはNew Zealandウシ血清アルブミンの使用は、より塩基性の等電性プロファイルを有する産物を産生し、インキュベートするステップは、産物をより酸性のプロファイルにシフトさせる。
【0137】
組換えタンパク質の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で組換えタンパク質産物をインキュベートするステップを含む方法の一部の実施形態は、プロファイル中のより酸性のタンパク質下位集団(複数可)のうち少なくとも1、2、3または4つのレベル(または量)の増加、およびプロファイル中のより塩基性のタンパク質下位集団のうち少なくとも1、2、3または4つのレベル(または量)の減少を生じる。等電性プロファイルが、約5.2から約6.7の間(例えば、約5.45から約6.55の間)の等電点を有する7つまたは8つのタンパク質下位集団を含む一部の実施形態では、この方法は、より酸性のタンパク質下位集団のうち少なくとも2、3、4または5つのレベル(または量)の増加、およびより塩基性のタンパク質下位集団のうち少なくとも2、3または4つのレベル(または量)の減少を生じる。
【0138】
組換えタンパク質の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で組換えタンパク質産物をインキュベートするステップを含む方法の一部の実施形態は、プロファイル中のより塩基性のタンパク質下位集団(複数可)のうち少なくとも1、2、3もしくは4つのレベル(または量)の増加、および/またはプロファイル中のより酸性のタンパク質下位集団(複数可)のうち少なくとも1、2、3もしくは4つのレベル(または量)の減少を生じる。
【0139】
特定の一例では、組換えタンパク質産物が、約5.45から約6.55の間の等電点を有する7つのタンパク質下位集団を有する場合(例えば、エクリズマブ)、このより酸性のプロファイルまたはより塩基性のプロファイルは、以下を含むか、以下からなるか、または以下から本質的になる:(1)タンパク質の総質量の≧10%の、これら7つのタンパク質下位集団の2番目、3番目および4番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の各々に存在するタンパク質の量;(2)これら7つのタンパク質下位集団の2番目に塩基性が強いタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量未満である、これら7つのタンパク質下位集団の3番目および4番目に塩基性が強いタンパク質下位集団の各々に存在するタンパク質の量;(3)最も酸性のタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量は、タンパク質の総質量の≦3%である;(4)2番目に酸性が強いタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量は、タンパク質の総質量の≦6%である;(5)3番目に酸性が強いタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量は、タンパク質の総質量の≦9%である;(6)最も塩基性のタンパク質下位集団に存在するタンパク質の量は、タンパク質の総質量の≦8%である;(7)これら7つのタンパク質下位集団の最も酸性の、2番目に酸性が強い、3番目に酸性が強い、および最も塩基性のタンパク質下位集団以外、タンパク質の総質量の≦6%であるタンパク質の量を有する他の微量タンパク質下位集団は存在しない。一部の実施形態では、このインキュベーションは、このより塩基性のおよび/またはより酸性のプロファイルを有する組換えタンパク質産物(例えば、エクリズマブ)を生じる。
【0140】
組換えタンパク質産物の等電性プロファイルを決定すること
一部の実施形態は、産物をアッセイして等電性プロファイルを決定する1つまたは複数のステップをさらに含む。例えば、産物をアッセイしてその等電性プロファイルを決定するステップは、第1の期間の最後の直後に、およびインキュベートするステップの前に、実施され得る。これは、組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、第2の期間中にこの産物をインキュベートするかどうかを決定するため、または組換えタンパク質産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、第2の期間中にこの産物をインキュベートするかどうかを決定するために、実施される。
【0141】
一部の実施形態は、等電性タンパク質産物のさらなるシフトが必要かどうかを決定するために、第2の期間の最後の直後に、この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定するさらなるステップをさらに含む。例えば、第2の期間の直後のアッセイするステップは、さらなるインキュベートするステップ、例えば、インキュベートするステップの反復が、より酸性のまたはより塩基性のプロファイルにシフトさせるために必要かどうかを決定するために、使用され得る。かかる決定は、第2の期間の最後に決定した等電性プロファイルを、参照プロファイル(例えば、本明細書に記載されるまたは当技術分野で公知の参照プロファイルのいずれか)と比較することによって行われ得る。
【0142】
組換えタンパク質産物を精製すること
当技術分野で公知のように、組換えタンパク質産物(例えば、シフトされた組換えタンパク質産物)は、当技術分野で公知の方法を使用して精製され得る。例えば、濾過およびクロマトグラフィー、例えば、親和性クロマトグラフィー、プロテインA捕捉クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、混合モード樹脂クロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーの1つまたは複数のステップが、シフトさせる前または後に、組換えタンパク質産物を精製するために使用され得る。組換えタンパク質産物(例えば、シフトされた組換えタンパク質産物)を精製するためのさらなる方法は、当技術分野で周知である。
【0143】
次いで、精製されたタンパク質産物(例えば、シフトされた組換えタンパク質産物)は、薬物物質を創製するために、薬学的に許容される賦形剤に任意選択で混合または添加され得る。薬学的に許容される賦形剤(例えば、天然に存在しない薬学的に許容される賦形剤)の例は、当技術分野で周知である。
【0144】
組換えタンパク質産物
本明細書に記載される方法のいずれかによって産生される組換えタンパク質産物もまた提供される。例えば、(a)産生バイオリアクター中で、産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期および/または静止期からなる第1の期間にわたって培養するステップ;(b)第1の期間の最後に、この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定するステップ;ならびに(c)産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ、または産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で、(d)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルがさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(c)を反復するステップを含む方法によって産生される組換えタンパク質産物(例えば、エクリズマブ)が、本明細書で提供される。
【0145】
(a)産生バイオリアクター中で、この産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;(b)産物の等電性プロファイルをより酸性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の中の少なくとも6時間からなる第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で(c)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルが、より酸性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップを含む方法によって産生される組換えタンパク質産物(例えば、エクリズマブ)もまた提供される。(a)産生バイオリアクター中で、この産物を産生するのに十分な条件下で、組換えタンパク質をコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を、哺乳動物細胞の増殖期を含み、かつ臨界時点において終結する第1の期間にわたって培養するステップ;(b)産物の等電性プロファイルをより塩基性のプロファイルに向けてシフトさせるのに十分な条件下で、哺乳動物細胞の衰退期の第2の期間にわたって、この産物をインキュベートするステップ;ならびに任意選択で(c)この産物をアッセイして等電性プロファイルを決定し、この等電性プロファイルが、より塩基性のプロファイルに向かうさらなるシフトを必要とする場合に、ステップ(b)を反復するステップを含む方法によって産生される組換えタンパク質産物(例えば、エクリズマブ)がさらに提供される。
【0146】
本明細書に記載される組換えタンパク質産物を産生するために使用される方法の非限定的な態様は、上記されており、限定なしに任意の組合せで使用され得る。
【実施例0147】
本発明を、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない、以下の実施例においてさらに記載する。
【0148】
(実施例1)
エクリズマブの等電性プロファイルのシフト
1セットの実験を実施して、エクリズマブの等電性プロファイルを、10,000Lバイオリアクター中で細胞培養物のインキュベーションを継続することによってシフトさせることができるかどうかを決定した。これらの実験では、培養物試料を毎日採取し、組換えエクリズマブを、プロテインA親和性クロマトグラフィーを使用して精製した。得られた精製されたエクリズマブの等電性プロファイルを、等電点電気泳動法を使用して決定した。これらの実験で使用した方法および材料は、以下に記載される。
【0149】
材料
これらの実験に使用される材料には、以下が含まれる:エクリズマブをコードする核酸を含有する哺乳動物細胞の培養物由来の、清澄化されたバイオリアクター試料、およびプロテインA Sepharoseカラム。
【0150】
方法
10,000L産生バイオリアクターに、エクリズマブをコードする核酸を含有する哺乳動物細胞を播種した。接種の5~15日後に、10,000Lバイオリアクター細胞培養物を、第1の実験および第2の実験において、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目および15日目に試料採取した。各試料を、遠心分離および0.22μm濾過によって清澄化し、2~8℃で貯蔵した。次に、各清澄化された試料に対して、2回目の濾過を行い、プロテインAカラムを通過させてエクリズマブを精製した。次いで、等電性プロファイリングを、精製されたエクリズマブ試料に対して実施した。
【0151】
結果
表1および2は、等電性タンパク質バンド1a、1、2、3、4、5および6の相対的量についての、それぞれ、第1および第2の10,000L細胞培養物において収集したデータをまとめる。これらのバンドを、5日目~13日目にわたって細胞培養物から取得された各試料について等電点ゲル電気泳動を使用して決定した、最も酸性から最も塩基性までの順序で番号付けした。これらの10,000L流加細胞培養物における臨界時点は、衰退期において生存細胞密度が減少し、約15×10
5細胞/mLの生存細胞密度に達する時点であると決定した。表1および2中のデータは、培養の臨界時点を超えて哺乳動物細胞の培養を継続することで、培養物中のエクリズマブの等電性プロファイルにおける酸性シフトを生じさせることができたことを実証している。第1の10,000Lバイオリアクター細胞培養物からのデータのグラフ表示は、
図1および2に示され、第2の10,000Lバイオリアクター細胞培養物からのデータのグラフ表示は、
図3および4に示される。
【0152】
図1~4に示されるデータはまた、培養の臨界時点を超えて哺乳動物細胞の培養を継続する場合に、培養物中の等電性プロファイル内の、異なるが控えめなバンドに対応するエクリズマブ分子の分布が、より塩基性の等電性プロファイルからより酸性の等電性プロファイルにシフトすることを実証している。第1の10,000L細胞培養物では、培養の5日目から13日目の間に観察された酸性バンド1a(0%から2%)、1(2%から6%)、2(4%から5%)および3(20%から29%)のレベル(または量)の増加が存在した。第1の細胞培養物における酸性バンドへの材料のこのシフトは、培養の5日目から13日目の間の塩基性バンド4(40%から32%)、5(21%から19%)、6(11%から7%)の量の減少によって反映された。バンド6よりも塩基性の1つのバンドは、10日後に完全に消失した。第2の10,000L細胞培養物でのデータは、時間をわたって、エクリズマブの等電性プロファイル内での材料の類似のシフトを示した。
【表1】
【0153】
この実施例のデータは、培養の臨界時点を超えるまたは培養物の衰退期の持続時間を延長させる第2の期間にわたって培養物のインキュベートを継続することで、培養物中のエクリズマブの等電性プロファイル内での材料の再分布または培養物中のエクリズマブの等電性プロファイルにおける「酸性シフト」が生じることを実証している。
【表2】
【0154】
(実施例2)
エクリズマブの等電性プロファイルにおけるシフトに対するpHおよびdO2の影響
次に、本発明者らは、細胞培養物によって産生された組換えタンパク質の得られた等電性プロファイルに対するpHおよびdO2の影響を評価することを試みた。これらの小規模細胞培養物について、エクリズマブをコードする核酸を含有するNS0哺乳動物細胞を、2L流加バイオリアクター中で培養した。
【0155】
方法
10個の2L小規模流加バイオリアクターのセットに、1.3Lの作業容積で、エクリズマブをコードする核酸を含有するNS0哺乳動物細胞を接種し、合計で16日間培養した。これらのバイオリアクターを、36.5℃の制御された温度で、240RPMの撹拌速度で培養した。スパージ空気の流量は、3sL/時間で始まり、9sL/時間まで増加し、その後、実験条件のために特定のdO2設定ポイントを維持するためにさらなる酸素を補給した。これらの細胞培養物を、以下に列挙する5つの異なる実験条件(条件1~5)で2連で試行した。各バイオリアクターを、0.02のpHデッドバンド設定ポイント(例えば、7.32±0.02)で試行した。その条件は以下の通りであった:
(1)pH7.0および15%のdO2(対照条件)(細胞培養試行1および2);
(2)pH7.32および5%のdO2(細胞培養試行3および4);
(3)pH7.32および50%のdO2(細胞培養試行5および6);
(4)pH6.95および5%のdO2(細胞培養試行7および8);ならびに
(5)pH6.95および50%のdO2(細胞培養試行9および10)。
【0156】
2Lバイオリアクター培養物の各々に、3.5×105細胞/mLの初期生存細胞密度で接種した。これらのバイオリアクターについての接種細胞供給源の各々は、同じ細胞バンク由来であった。シードトレインプロセスから増殖させた2つの複製の撹拌培養物を使用して、バイオリアクターに接種した。細胞培養試行1、7および8のバイオリアクターは、第1の撹拌培養物から接種し、細胞培養試行2、3、4、5、6、9および10のバイオリアクターは、第2の撹拌培養物から接種した。10個の2Lバイオリアクター培養物の0日目の細胞の世代数は、およそ77.3であった。
【0157】
プロセス規定されたフィードを、フィード規準の開始の際に各2L培養物に添加した。フィード規準を、細胞培養物が生存細胞密度≧14×105に達したときとして指定した。フィード規準に達したときに、2つの異なる液体培養培地を、滅菌シリンジおよびサイドアーム隔壁(sidearm septum)によって、バイオリアクター中に導入した。全ての2Lバイオリアクターについての両方の液体フィードは、総タンク容積の4%であった。液体フィードは52mLであり、133時間にわたって分配(供給)した。フィード添加の方法を、最初の5日間の間の9.4mLの各液体培養培地の毎日のボーラスフィードショット、供給の6日目および最終日の最終5.0mLアリコートを使用して実施した。New Zealandから供給されたBSAを、全ての培養培地および供給溶液において使用した。
【0158】
得られた等電性プロファイルを評価するために、75mLの試料を、以下のスケジュールで各2Lバイオリアクターから取り出した:試料を、細胞培養試行1、3および5については10日目、12日目および14日目に取得し、試料を、細胞培養試行2、4、6、7、8、9および10については、5日目、8日目および10日目に取得した。細胞培養試行2、4、6、7、8、9および10について、最終回収試料を、エクリズマブのプロテインA精製に使用し、引き続く等電点電気泳動アッセイを、14日目に実施した。細胞培養試行1、3および5について、最終回収試料を、16日目に採取した。培養培地の清澄化された試料を、各細胞培養物から調製し、エクリズマブを精製し、2℃~8℃で貯蔵した。エクリズマブ含有培養培地の貯蔵された試料を、引き続いて、プロテインAクロマトグラフィーによって精製し、等電性プロファイルを決定した。
【0159】
結果
5セットのバイオリアクター細胞培養条件における細胞増殖を決定した。
図5を参照のこと。全ての2Lバイオリアクターについての初期播種密度は一貫していた。7.32のpHを有する4つのバイオリアクターは、初期にはより速く増殖した。培養培地中での増殖に最適なpHは7.30であったので、これは驚くべきことではなかった。しかし、これら4つのバイオリアクターは、対照条件下のバイオリアクターまたはpH6.95に設定したバイオリアクターよりも迅速に衰退期に入った細胞培養物を有した。pH6.95およびpH7.32ならびに5%のdO
2設定ポイントに設定した細胞培養物は、それらの50%溶存酸素対応物と同じ積分生存細胞濃度(IVCC)を達成しなかった。これは、酸素がこれらの培養物における制約であったことを示唆した。pH7.0および15%のdO
2の対照条件は、高いpH条件と低いpH条件(それぞれ、pH7.32および6.95のpH)との間であり、このことは、pH7を下回る僅かなpH改変でさえ、細胞増殖に対して有意な影響を有し得ることを示している。
【0160】
5つの異なるバイオリアクター条件の産生力を決定した。
図6を参照のこと。比産生力における有意差が、5つの異なる試験したpH/dO
2条件の間で観察された。高い酸素または低い酸素のいずれかにおいて7.32のpH設定ポイントでバイオリアクターを試行させることは、比産生力に対して顕著な影響を有する。高い酸素(50%)で試行したpH7.32バイオリアクターは、その5%dO
2対応物と比較して、より高い積分生存細胞濃度およびより高い最終力価を達成した。pH6.95±0.02で試行したバイオリアクターは、より高い比産生力を有し、対照条件下で試行した2Lバイオリアクターと、産生力が類似していた。したがって、pH6.95では、差次的なdO
2設定ポイント(5%対50%)は、pH7.32でのdO
2の影響と比較して、比産生力または最終力価に対してそれほど影響を有さなかった。pH7.0および15%dO
2の対照条件で試行したバイオリアクターは、最も高い累積的な積分生存細胞濃度を生じた。対照条件で試行したバイオリアクターはまた、pH7.32および50%dO
2で試行したバイオリアクター細胞培養物よりも性能が優れていた。対照条件で試行したバイオリアクターは、非対照条件で試行したバイオリアクターよりも400mg/L超過する、1600mg/Lでエクリズマブを産生した。
【0161】
5セットの細胞培養条件下で産生された抗体の等電性プロファイルの進化を決定した。
図7から10を参照のこと。これらのデータは、エクリズマブについての等電性プロファイル中の特定のタンパク質バンドに存在する材料の量が、それが培養の臨界時点に接近しそれを超えるときを含む培養持続時間にわたってどのように変化するかを示している。これらのデータは、エクリズマブの等電性プロファイルに影響を与えると思われるpHとdO
2の間の相互作用が存在することもまた示している。一般的傾向は、培養持続時間が臨界時点を超えて培養物の衰退期に入って増加する場合に、等電性プロファイル中の酸性タンパク質バンド(例えば、バンド1、2および3)内の材料の量もまた増加することである。対応して、塩基性タンパク質バンド(例えば、バンド5および6)に存在する材料の量は減少する。驚くべきことに、このデータは、低いdO
2設定ポイントは、等電性プロファイル中の酸性タンパク質バンドの増加したレベル(または量)を生じるが、より高いdO
2設定ポイントは、等電性プロファイル中の塩基性タンパク質バンドの出現およびレベル(または量)を増加させることもまた示している。
【0162】
図11は、試験したバイオリアクター培養物のうち4つから14日目に回収したエクリズマブの等電性プロファイル中の異なるタンパク質バンドのレベル(または量)を示す。このデータは、低いdO
2が、より酸性のタンパク質バンド、具体的にはバンド1a、1、2および3のより高いレベル(または量)を生じ、より高いpHは、より酸性のタンパク質バンド、具体的にはバンド1および2のより高いレベル(または量)を生じることを、明確に示している。
【0163】
この実施例のデータは、臨界時点を超えて衰退期(例えば、この実施例では、細胞培養物の衰退期は、6日目または7日目あたりで始まる)に十分入る期間にわたって細胞培養物を培養した場合に、エクリズマブについてより酸性の等電性プロファイルへのシフトが生じたことを示している。この実施例の臨界時点は、細胞培養物が、増殖の衰退期に15×105細胞/mlを下回って衰退するときである。
【0164】
(実施例3)
等電性プロファイルに対する細胞供給源および原材料の影響
さらなるセットの実験を、哺乳動物細胞培養物によって産生されたエクリズマブの等電性プロファイルに対する細胞供給源および原材料の影響を決定するために実施した。これらの実験を実施するために使用した材料および方法は、以下に記載される。
【0165】
方法
8つの2Lバイオリアクターに接種し、合計18日間にわたってインキュベートした。各バイオリアクター培養物の作業容積は、1.3Lであった。2L流加バイオリアクター培養物の各々を、36.5℃の熱電対温度で240RPMで反時計回りに撹拌した。スパージ流量は、3sl/時間で始まり、9sl/時間まで上昇させ、その後、酸素補給を使用して、dO2設定ポイントを15%に維持した。バイオリアクター培養物を、±0.02のデッドバンドで、7.0のpHで試行した。2L流加バイオリアクター培養物のうち4つを、細胞供給源Aを用いて試行し、2L流加バイオリアクター培養物のうち4つを、細胞供給源Bを用いて試行した。各細胞供給源由来の2L流加バイオリアクター培養物のうち2つを、第1のセットの培養培地原材料を使用して培養し、他の6つの2L流加バイオリアクター培養物を、第2のセットの培養培地原材料を使用して培養した:各細胞供給源について3つの複製物。試験した実験条件の正確なセットは、表3に示される。8つのバイオリアクターに、撹拌培養物由来の細胞を接種した(即ち、1つの撹拌培養物を、各細胞供給源について調製した)。8つ全ての2L流加バイオリアクター培養物を、3.0×105細胞/mLの標的播種密度で接種した。
【0166】
バイオリアクター試行の各々において、各バイオリアクター中への2つの液体培養培地の供給を、培養物がフィード規準(≧14×10
5細胞/mLの生存細胞密度)に達したときに開始し、その際、1×ボーラスの培地補充物を、滅菌シリンジおよびサイドアーム隔壁を介して各バイオリアクター中に導入した。8つ全てのバイオリアクターについての両方のフィードは、各々総タンク容積の4%であった、または52mLの各々の液体培養培地を添加し、133時間にわたって分配した。フィード添加の方法を、最初の5日間の間の9.4mLの各フィードでの毎日のボーラスフィードショット、ならびに供給の6日目および最終日の5.0mLの最終ショットを使用して実施した。
【表3】
【0167】
試料(75mL)を、以下に記載するように各バイオリアクターから回収した。細胞培養試行11および12について、試料を、8日目、11日目、14日目、15日目および16日目に採取した。バイオリアクター試行13および14について、試料を、13日目、14日目、15日目および16日目に採取した。各試料中に存在するエクリズマブを、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製し、得られた精製されたタンパク質を、等電点電気泳動を使用して分析した。
【0168】
結果
8つの流加バイオリアクターについての細胞増殖を、
図12に示す。8つ全てのバイオリアクターについての初期播種密度は、容器毎に一貫している。黒の実線は、細胞供給源Bを接種した培養物からのデータを示し、黒の破線は、細胞供給源Aを接種した培養物からのデータを示す。第1のセットの原材料を含んだ2つのサブセット試行は、そのそれぞれの細胞供給源について矢印によって示される。このデータは、細胞供給源B由来の細胞が、細胞供給源Aの対応培養物よりも、より速く増殖し、より高いピーク生存細胞密度(VCD)に達し、VCDがゆっくりと衰退することを示している。第1のセットの原材料と共にインキュベートされた培養物は、第2のセットの原材料と共にインキュベートされた培養物と比較した場合、累積生存細胞密度がより低い。これは、細胞培養試行11データにおいて容易に見ることができる。
【0169】
各バイオリアクター培養物における、培養物中に時間をわたって存在する生存細胞の百分率は、
図13に示される。細胞供給源Aと細胞供給源Bの間のデータは類似して見えるが、細胞培養試行11は、最低の百分率の生存細胞密度を時間をわたって有する。細胞供給源Bを含有するバイオリアクターは、0日目~14日目の間、僅かにより高い百分率の生存細胞を有するようである。
【0170】
8つのバイオリアクター培養物の比産生力は、
図14に示される。細胞供給源は、培養物の産生力に対して影響を有する。第1のセットの原材料を使用する2つの培養物の増殖は、
図14中で矢印によって示される。使用した各細胞供給源について、第1のセットの原材料を使用する細胞試行は、第2のセットの原材料を使用するそれらの対応物と比較して、より低い比産生力を有した。細胞供給源Bを使用する4つのバイオリアクター培養物の平均力価は、細胞供給源Aを使用するバイオリアクター培養物についての僅か1.11グラム/リットルと比較して、1.64グラム/リットルであった。細胞供給源Bを使用するバイオリアクター培養物はまた、細胞1つ当たりでより産生的であった(
図14中の線の傾きによって観察される)。
【0171】
図15~18は、8つの異なるバイオリアクター培養物のうち4つから取得された試料から精製されたエクリズマブの等電性プロファイルの時間経過を示す。これらの時間経過研究において使用した4つの細胞培養試行は、細胞培養試行11、12、13および14であった(表4に示される)。
図15~18中のデータは、培養持続時間にわたるエクリズマブの等電性プロファイルにおける変化を示している(培養物が、臨界期間を超えるさらなる期間にわたってインキュベートされる、および/または培養物の衰退期間の間インキュベートされる場合)。
図15~18中のデータは、時間をわたっての等電性プロファイルにおける変化が、細胞供給源Aまたは細胞供給源Bを使用する両方の培養物について同じであることを示している。一般的傾向は、培養持続時間が臨界時点を超えて衰退増殖期に入って増加する場合に、酸性タンパク質バンド(タンパク質バンド1、2および3)のレベル(または量)が増加し、塩基性タンパク質バンド(タンパク質バンド5および6)が減少することであることが留意される。このデータは、低いdO
2設定ポイントが、より酸性のタンパク質バンドのレベル(または量)を増加させるが、高いdO
2設定ポイントが、より塩基性のタンパク質バンドの出現および頻度を増加させることもまた示している。同じ原材料を使用した細胞供給源Aおよび細胞供給源Bからのプロファイルは類似して見えるが、異なる原材料を使用する同じ細胞供給源からのプロファイルは、あまり似ていない。これらのデータは、使用した原材料が、これらの実験において、細胞供給源よりも、等電性プロファイルに対していっそう多くの影響を示すことを示している。第1のセットの原材料を使用したバイオリアクター培養物は両方とも、第2のセットの原材料を使用する培養物よりも早く、回収基準を満たした。
【0172】
細胞培養試行11および12は、16日目に以下の参照等電性プロファイルを満たした:タンパク質バンド3、4および5≧10%;タンパク質バンド3および4>タンパク質バンド5;タンパク質バンド1a≦3%;タンパク質バンド1≦6%;タンパク質バンド2≦9%;タンパク質バンド6≦8%;タンパク質バンド1a、1、2および6以外の微量タンパク質バンドなし;ならびに全てのタンパク質バンドは、5.45の等電点から6.55の等電点の間で分離した。細胞培養試行11および12は、細胞培養試行11については臨界時点(12日目)の4日後、細胞培養試行12については臨界時点(14日目)の2日後に、参照等電性プロファイルを満たした。これらの実験で使用した臨界時点は、生存細胞密度が15×105細胞/mLを下回って衰退した時点であった。培養がNew Zealandウシ血清成分(例えば、ウシ血清アルブミン)を利用する場合、等電性プロファイルにおける、より塩基性のタンパク質バンドに向かうかすかな全体的シフトが、おしなべて存在する。
【0173】
要約すると、これらのデータは、さらなる期間(臨界期間を超えてまたは培養物の衰退期に入る)にわたって培養物のインキュベートを継続することで、組換えタンパク質産物(例えば、本実施例ではエクリズマブなど)の等電性プロファイルにおけるシフトを生じ得ることを実証している。
【0174】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、上述の説明は、添付の特許請求の範囲の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するのではなく説明する意図であることを、理解すべきである。他の態様、利点および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【化1】