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特開2023-133596播種された肝細胞並びにその調製及び用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133596
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】播種された肝細胞並びにその調製及び用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20230914BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C12N5/071
C12Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127697
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2020516879の分割
【原出願日】2018-09-22
(31)【優先権主張番号】62/562,127
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512247773
【氏名又は名称】ライフネット ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジャン ボク
(72)【発明者】
【氏名】ムーアチソン,アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ルクリュイーズ,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジンソン
(57)【要約】
【課題】播種されたヒト肝細胞並びにその調製及び用途を提供する。
【解決手段】表面に播種されたヒト肝細胞を含む製造物に関し、播種された肝細胞の少なくともいくつかは、フィーダー細胞における1つ以上の肝細胞クラスターにあり、表面に付着される。播種されたヒト肝細胞を調製する方法も提供される。調製方法は、ヒト肝細胞をフィーダー細胞の存在下の表面に適用し、適用される肝細胞をフィーダー細胞と共培養し、及び表面に付着されるフィーダー細胞において共培養された肝細胞によって、1つ以上の肝細胞クラスターを形成することを含む。播種された肝細胞は、B型肝炎ウイルス(HBV)感染肝細胞培養モデルの調製及び薬剤試験を含む、様々な目的に使用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に播種されたヒト肝細胞を含む製造物であって、前記播種された肝細胞の少なくとも70%がフィーダー細胞上の1つ以上の肝細胞クラスターであり、前記フィーダー細胞が内皮細胞及び線維芽細胞であり、前記表面に付着される、表面に播種されたヒト肝細胞を含む製造物。
【請求項2】
前記1つ以上の肝細胞クラスターにおける前記播種された肝細胞の少なくとも90%が、直接肝細胞間接触にある、請求項1に記載の製造物。
【請求項3】
前記1つ以上の肝細胞クラスターが表面の少なくとも50%を覆う、請求項1に記載の製造物。
【請求項4】
前記表面が少なくとも3mmの最短の直径を有する、請求項1に記載の製造物。
【請求項5】
さらに培地を含み、前記播種された肝細胞の少なくとも90%が少なくとも7日間、前記表面に残る、請求項1に記載の製造物。
【請求項6】
さらに培地を含み、前記播種された肝細胞の少なくとも90%が少なくとも42日間、前記表面に残る、請求項1に記載の製造物。
【請求項7】
前記播種された肝細胞がアルブミンを産生する、請求項1に記載の製造物。
【請求項8】
前記播種された肝細胞がチトクロムP450を発現する、請求項1に記載の製造物。
【請求項9】
前記内皮細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の製造物。
【請求項10】
前記内皮細胞がヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)である、請求項1に記載の製造物。
【請求項11】
前記内皮細胞が肝細胞ではない、請求項1に記載の製造物。
【請求項12】
前記内皮細胞が増殖しない、請求項1に記載の製造物。
【請求項13】
前記内皮細胞が初代細胞である、又は最大7継代培養される、請求項1に記載の製造物。
【請求項14】
前記内皮細胞が不死ではない、請求項1に記載の製造物。
【請求項15】
前記線維芽細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の製造物。
【請求項16】
前記線維芽細胞がヒト皮膚線維芽細胞である、請求項1に記載の製造物。
【請求項17】
前記線維芽細胞が肝細胞ではない、請求項1に記載の製造物。
【請求項18】
前記線維芽細胞が増殖しない、請求項1に記載の製造物。
【請求項19】
前記線維芽細胞が初代細胞である、又は最大7継代培養される、請求項1に記載の製造物。
【請求項20】
前記線維芽細胞が不死ではない、請求項1に記載の製造物。
【請求項21】
前記播種された肝細胞、前記内皮細胞及び前記線維芽細胞が3:1:1~24:1:1の細胞比を有する、請求項1に記載の製造物。
【請求項22】
前記播種された肝細胞が1つのドナーから得られる、請求項1に記載の製造物。
【請求項23】
前記ドナーが微小脂肪変性をり患している、請求項22に記載の製造物。
【請求項24】
前記ドナーが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をり患している、請求項22に記載の製造物。
【請求項25】
前記播種された肝細胞が2つ以上のドナーから得られる請求項1に記載の製造物。
【請求項26】
(a)ヒト肝細胞をフィーダー細胞の存在下で表面に適用し、前記フィーダー細胞が内皮細胞及び線維芽細胞であり、
(b)工程(a)の後に、前記適用した肝細胞を前記フィーダー細胞と共培養し、並びに(c)前記フィーダー細胞上に、前記共培養された肝細胞によって、1つ以上の肝細胞クラスターを形成し、前記フィーダー細胞が前記表面に付着され、前記共培養された肝細胞の少なくとも85%が、1つ以上の肝細胞クラスターにあり、それによって播種されたヒト肝細胞が調製されることを含む、播種されたヒト肝細胞を調製する方法。
【請求項27】
工程(a)において、前記適用した肝細胞が、フィーダー細胞の非存在下で、前記表面において、60%未満の接着能を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(a)において、前記適用した肝細胞が、フィーダー細胞の非存在下で、前記表面において、少なくとも85%の接着能を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ以上の播種された肝細胞クラスターが前記表面の少なくとも50%を覆う、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記表面が少なくとも3mmの最短の直径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記播種された肝細胞の少なくとも90%が少なくとも7日間、前記表面に残る、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記播種された肝細胞の少なくとも90%が少なくとも42日間、前記表面に残る、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記フィーダー細胞が工程(a)の前に前記表面に付着される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記フィーダー細胞が工程(b)において前記表面に付着される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が細胞外マトリックスタンパク質の添加を除外する、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記肝細胞が工程(a)の前に凍結される、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
請求項26~36の何れか一項に記載の方法に従って調製される播種された肝細胞。
【請求項38】
請求項1~25の何れか一項に記載の製造物の播種された肝細胞又は請求項37に記載の播種された肝細胞に、前記播種された肝細胞の特性を変えるのに有効な量の医薬物質を投与することを含む、医薬物質を試験する方法。
【請求項39】
前記医薬物質が小分子、抗体、生ウイルス、ウイルスベクター、オリゴヌクレオチド及び細胞から成る群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1~25の何れか一項に記載の製造物の前記播種された肝細胞又は請求項37に記載の播種された肝細胞に有効量の薬剤を投与し、前記播種された肝細胞における前記薬剤の量を決定することを含む、薬剤代謝を試験する方法。
【請求項41】
請求項1~25の何れか一項に記載の製造物の前記播種された肝細胞又は請求項37に記載の播種された肝細胞に有効量の薬剤を投与し、前記播種された肝細胞における前記薬剤の位置を決定することを含む、薬剤輸送を試験する方法。
【請求項42】
請求項1~25の何れか一項に記載の製造物の前記播種された肝細胞又は請求項37の播種された肝細胞に有効量の薬剤を投与し、生存する播種された肝細胞を検出することを含む、薬剤の毒性を試験する方法。
【請求項43】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染肝細胞培養モデルを調製する方法であって、
(a)請求項1~25の何れか一項に記載の製造物の前記播種された肝細胞又は請求項37に記載の播種された肝細胞にB型肝炎ウイルス(HBV)を接種し、
(b)前記感染した播種された肝細胞を少なくとも14日間インキュベートし、それにより前記HBV感染肝細胞培養モデルが調製されることを含む、方法。
【請求項44】
(a)初代肝細胞を含む第1凍結保存バイアル、
(b)内皮細胞を含む第2凍結保存バイアル、
(c)線維芽細胞を含む第3凍結保存バイアル、並びに
(d)請求項26~36の何れか一項に記載の方法に従って、前記初代肝細胞、前記内皮細胞及び前記線維芽細胞を用いて、播種されたヒト肝細胞を調製する説明書を含む,
肝細胞を播種するキット。
【請求項45】
前記第2凍結保存バイアル及び前記第3凍結保存バイアルが同じである、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記第1凍結保存バイアル、前記第2凍結保存バイアル及び前記第3凍結保存バイアルが同じである、請求項44に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年9月22日に出願された米国特許仮出願第62/562,127号明細書の利益を主張し、その内容は全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して播種されたヒト肝細胞並びにその調製及び用途に関する。
【背景技術】
【0003】
ドナーから単離された初代ヒト肝細胞は、薬剤代謝又は薬剤誘発性肝損傷を研究するために2次元in vitro培養システムに使用されてきた。2次元in vitro培養システムにおいて、初代ヒト肝細胞は培地に保持され、表面(例えばプレート)に付着して、薬剤代謝、毒性又はウイルス感染の試験を行うのに適した肝細胞の単層を生成する。2次元in vitro培養システムについて、長期間、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、14、21、28、35、42又は49日間、少なくとも85%以上の接着能(plateability)を有する単離された初代ヒト肝細胞が望ましく、60%未満の接着能を有する単離された初代肝細胞を有する単離された初代ヒト肝細胞は、概して、あまり望ましくないと考えられ、長期間の実験に適さない。凍結保存された初代ヒト肝細胞バッチの高確率が薬剤代謝、毒性又はウイルス感染を試験する等の適用について、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)等の所望のドナー規格を有する多くのバッチの利用可能性を限定する接着性のない又は接着性に乏しい肝細胞の後者のカテゴリーに分類される。初代ヒト肝細胞の接着能、機能安定性及び培養寿命を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、播種されたヒト肝細胞並びにその調製及び用途に関する。
【0005】
表面に播種されたヒト肝細胞を含む製造物が提供される。播種された肝細胞の少なくとも70%がフィーダー細胞上の1つ以上の肝細胞クラスターにある。フィーダー細胞は、内皮細胞及び線維芽細胞であり、表面に付着される。製造物において、1つ以上の肝細胞クラスターの播種された肝細胞の少なくとも90%が、直接肝細胞間接触し得る。1つ以上の肝細胞クラスターは、表面の少なくとも50%を覆い得る。表面は、少なくとも3mmの最短の直径を有し得る。
【0006】
製造物は、さらに、培地を含み得、播種された肝細胞の少なくとも90%が少なくとも7又は42日間表面に残る。
【0007】
播種された肝細胞は、アルブミンを産生し得、及び/又はチトクロムP450を発現し得る。
【0008】
内皮細胞はヒト細胞であってもよい。例えば、内皮細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)であってもよい。内皮細胞は肝細胞でなくてもよい。内皮細胞は増殖性でなくてもよい。内皮細胞は、初代細胞であり得又は7継代まで培養されてもよい。内皮細胞は不死でなくてもよい。
【0009】
線維芽細胞はヒト細胞であってもよい。線維芽細胞はヒト皮膚線維芽細胞であってもよい。線維芽細胞は肝細胞でなくてもよい。線維芽細胞は増殖性でなくてもよい。線維芽細
胞は、初代細胞である又は7継代まで培養されてもよい。線維芽細胞は不死でなくてもよい。
【0010】
製造物において、播種された肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞は、3:1:1~24:1:1の細胞比を有し得る。
【0011】
播種された肝細胞は、1つのドナーから得ることができる。播種された肝細胞は、2つ以上のドナーから得ることができる。それぞれのドナーは微小脂肪変性(microsteatosis)及び/又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をり患し得る。
【0012】
播種されたヒト肝細胞を調製する方法も提供される。調製方法は、ヒト肝細胞を、フィーダー細胞の存在下、表面に適用し、フィーダー細胞は、内皮細胞及び線維芽細胞であり、適用工程の後に、適用した肝細胞をフィーダー細胞と共培養し、及び表面に付着されるフィーダー細胞上の共培養された肝細胞によって、1つ以上の肝細胞クラスターを形成することを含む。共培養された肝細胞の少なくとも85%は、1つ以上の肝細胞クラスターにある。適用される肝細胞は、フィーダー細胞の非存在下で、表面に60%未満の接着能を有し得る。適用される肝細胞は、フィーダー細胞の非存在下で、表面に少なくとも85%の接着能を有し得る。1つ以上の播種された肝細胞クラスターは、表面の少なくとも50%を覆い得る。表面は、少なくとも3mmの最短の直径を有し得る。
【0013】
調製方法に従って、播種された肝細胞の少なくとも90%が少なくとも7又は42日間表面に残り得る。フィーダー細胞は、適用工程の前又は共培養工程において表面に付着し得る。肝細胞は、適用工程の前に凍結されてもよい。
【0014】
調製方法は、細胞外マトリックスタンパク質の添加を除外し得る。
【0015】
それぞれの調製方法について、方法に従って調製される播種された肝細胞が提供される。
【0016】
医薬物質の試験を行う方法が提供される。方法は、播種された肝細胞の特性を変えるのに有効な量の医薬物質を播種された肝細胞に投与することを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。医薬物質は、小分子、抗体、生ウイルス、ウイルスベクター、オリゴヌクレオチド及び細胞から成る群から選択され得る。
【0017】
薬剤代謝を試験する方法が提供される。方法は、有効量の薬剤を播種された肝細胞に投与することを含み、播種された肝細胞における薬剤の量を決定することを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。
【0018】
薬剤輸送を試験する方法が提供される。方法は、有効量の薬剤を、播種された肝細胞に投与することを含み、播種された肝細胞における薬剤の位置を決定することを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。
【0019】
薬剤の毒性を試験する方法が提供される。方法は、有効量の薬剤を、播種された肝細胞に投与することを含み、生存している播種された肝細胞を検出することを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。
【0020】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染肝細胞培養モデルを調製する方法が提供される。方法は、播種された肝細胞にB型肝炎ウイルス(HBV)を接種し、感染した播種された肝細胞を少なくとも14日間インキュベートすることを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。
【0021】
肝細胞の播種のためのキットが提供される。キットは、初代肝細胞を含む第1の凍結保存バイアル、内皮細胞を含む第2凍結保存バイアル、線維芽細胞を含む第3凍結保存バイアル、並びに本発明の方法に従って、初代肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞で、播種されたヒト肝細胞を調製する説明書を含む。第2凍結保存バイアル及び第3凍結保存バイアルは同じであってもよい。第1凍結保存バイアル、第2凍結保存バイアル及び第3凍結保存バイアルは同じであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に記載のヒト肝細胞共培養物の模式図#1を示す。この模式図は、細胞培養物の調製及びタイムフレームによる分析を提供する。模式図#1に従って、肝細胞共培養物は、ヒト肝細胞を、0日目に事前に播種された内皮細胞及び線維芽細胞であるフィーダー細胞上に播種することによって調製される。EC、内皮細胞;Fb、線維芽細胞;MG、MATRIGEL。
図2】本発明の別の実施形態に記載のヒト肝細胞共培養物についての模式図#2である。この模式図は、細胞培養物の調製及びタイムフレームによる分析を提供する。模式図#2に従って、肝細胞共培養物は、ヒト肝細胞を、0日目に、内皮細胞及び線維芽細胞であるフィーダー細胞と一緒に播種することによって調製される。EC、内皮細胞;Fb、線維芽細胞;MG、MATRIGEL。
図3】肝細胞共培養物:皮膚線維芽細胞単独(左上)、不死化肝類洞内皮細胞単独(中央上)、初代肝細胞単独(右上)、線維芽細胞及び内皮細胞の混合物(左下)、並びに初代肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞の混合物(右下)に使用されるヒト細胞の形態を示す。
図4】肝細胞単一培養(単一培養)、フィーダー細胞を有する肝細胞共培養物(共培養)、又はフィーダー細胞培養物(フィーダー)におけるアルブミン、CyP450 1A2、CyP450 2B6及びCyP450 3A4遺伝子の、qRT-PCRによって測定された播種後1週間の発現レベルを示す。これらの4つの遺伝子のそれぞれの発現レベルは、単一培養よりも共培養に有意に高かった。*,p<0.05;**,p<0.01。
図5】誘導前後の、播種後7日間の単一培養又は共培養で播種された肝細胞数に基づいて正規化されたCyP450 1A2、CyP450 2B6又はCyP450 3A4の活性を示す。*,p<0.05;**,p<0.01。
図6】2週間の肝細胞の培養にわたってELISAによって測定されたアルブミン(ALB)及び尿素の分泌を示す。分泌されたアルブミン及び尿素のレベルは、単一培養よりも共培養の肝細胞において有意に高かった。Mono、単一培養;Co、共培養;*,p<0.05;**,p<0.01。
図7】単一培養(左)又は内皮細胞及び線維芽細胞による共培養(右)における懸濁グレードのヒト初代肝細胞の顕微鏡による観察を示す。単一培養の肝細胞は、播種後から離れ始め、共培養に播種された肝細胞の大部分は、良好な品質で付着したままであった。
図8】単一培養の接着性グレードの肝細胞に比べて、同様又はより高い発現レベルのCyP450 1A2(上)及びCyP450 3A4(下)を示す共培養の懸濁グレードの肝細胞を示す。両方の接着性及び懸濁グレードの肝細胞は、単一培養に比べて共培養のほうが高い代謝活性を示した。Mono-U、単一培養非誘導;Mono-I、単一培養誘導;Co-U、共培養非誘導;Co-I、共培養誘導。
図9】単一培養における接着性グレードの肝細胞に比べて、同様又はより高い分泌レベルのアルブミン(左)及び尿素(右)を示す共培養の懸濁グレードの肝細胞を示す。両方の接着性及び懸濁グレードの肝細胞は、単一培養に比べて共培養のほうが高い機能的アルブミン及び尿素分泌を示した。Mono-U、単一培養非誘導;Mono-I、単一培養誘導;Co-U、共培養非誘導;Co-I、共培養誘導。
図10】通常のサンドイッチ培養条件(単一培養)下の約7日間の培養で保持されたヒト初代肝細胞を示す。接着性グレードの肝細胞の3つのバッチ及び懸濁グレードの肝細胞の3つのバッチを含む肝細胞の6つのバッチは、4週間の培養にわたって観察された。大部分の肝細胞は、培養約7日目に離れた。
図11】最大6週間保持された共培養の内皮細胞及び線維芽細胞の混合物上に播種された肝細胞を示す。10倍の拡大。
図12】共培養における播種後43日間の肝細胞の免疫細胞化学的染色を示す。アルブミン(右下)及びCD31(左下)の染色は、肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞の地図的分布を示した。10倍の拡大。
図13】6週間の培養にわたる単一培養のCyP450 3A4に比べて、共培養のCyP450 3A4のより高い活性レベルを示す肝細胞を示す。CyP450 3A4の活性レベルは3週目にピークとなり、共培養では6週間代謝活性を維持し、単一培養では代謝活性が中断した。**,p<0.01。
図14】毛細胆管へのFITC結合CDFDAの流出を画像化することによって、観察される共培養におけるヒト肝細胞からの機能的胆汁分泌を示す。10倍の拡大。
図15】最大6週間保持された共培養条件下で、3つの別々のバッチ及びプールされた3つのバッチからの肝細胞を示す。肝細胞は、内皮細胞及び線維芽細胞の混合物に播種された翌日にMATRIGELで覆われた。10倍の拡大。
図16】3つの異なるバッチからプールされた肝細胞を共培養において最大6週間保持することができたことを示す。肝細胞は内皮細胞及び線維芽細胞の混合物においてMATRIGELで覆われずに培養された。10倍の拡大。
図17】MATRIGELをタッピングしない共培養の肝細胞からのアルブミン(左)及び尿素(右)の分泌レベルは、MATRIGELタッピングで共培養された肝細胞と同様であったことを示す。MG、MATRIGELタッピング;MGなし、MATRIGELタッピングなし;D4、4日目;D7、7日目。
図18】MATRIGELをタッピングしない共培養の肝細胞からのCyP450 3A4の発現レベルは、最大6週間MATRIGELタッピングで共培養された肝細胞と同様であったことを示す。MG、MATRIGELタッピング;MGなし、MATRIGELタッピングなし。
図19】ヒト初代肝細胞の3つの異なるバッチからのCyP450 3A4によって測定された代謝活性は、最大6週間の共培養における3つの異なるバッチからのプールされた肝細胞の代謝活性と同様であったことを示す。
図20】異なる源の内皮細胞が肝細胞培養を支持することを示す。不死化肝類洞内皮細胞(SEC)及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の両方は肝細胞培養を支持することができた。
図21】不死化肝類洞内皮細胞(SEC)又はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に共培養された肝細胞によるCyP450 1A2及びCyP450 3A4の類似の発現レベルを示す。D4、4日目;D7、7日目。
図22】不死化肝類洞内皮細胞(SEC)又はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に共培養された肝細胞によるアルブミン及び尿素の類似のレベルを示す。D4、4日目;D7、7日目。
図23】異なる細胞比の共培養における肝細胞の形態を示す。HH、ヒト肝細胞;Fb、線維芽細胞;EC、内皮細胞。
図24】異なる比の内皮細胞及び線維芽細胞で共培養された肝細胞によるCyP450 1A2及びCyP450 3A4の発現レベルを示す。12:1:1の肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞の細胞混合物は、その他の比の細胞混合物に比べて、CyP450 1A2及びCyP450 3A4の最も高い発現レベルを示す。CTRL、非誘導コントロール;Ind、誘導。
図25】複数のタイムポイントにおいて、共培養された肝細胞におけるB型肝炎ウイルス(HBV)についての細胞受容体としてのナトリウム・タウロコール酸共輸送体(NTCP)の発現レベルを示す。
図26】共培養における肝細胞及びフィーダー細胞の地図的分布を示す。細胞核の大きさは、画像の全体領域(左)及び肝細胞クラスター(右)から、ImageJソフトウェアで測定された。
図27】本発明の一実施形態に記載の共培養システムの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、播種された肝細胞並びにその調製及び用途を提供する。本発明は、内皮細胞及び線維芽細胞と共にヒト肝細胞を共培養することによって、ヒト肝細胞の接着能、機能的安定性及び培養寿命を改善するという発見に基づいている。
【0024】
本明細書で使用される「播種された肝細胞」という用語は、表面又はフィーダー細胞層に直接的又は間接的に付着したヒト肝細胞を指す。本明細書で使用される「接着能(plateability)」又は「接着性(plateable)」という用語は、肝細胞がプラスチック又は処理された表面(例えば、培養容器又はマルチウェルプレート)等の表面に、肝細胞を表面に暴露して、例えば、所定の時間(例えば、0.5、1、2、3、4、5、6又は12時間)内に付着する能力を指す。肝細胞の接着能は、所定の時間内に、例えば、フィーダー細胞又は非細胞物質(すなわち、細胞ではない物質)を介して、直接的又は間接的に表面に付着することができる細胞の割合によって特徴付けることができる。
【0025】
本明細書で使用される「フィーダー細胞」という用語は、肝細胞の生存及び機能の維持を補助する肝細胞以外の細胞を指す。フィーダー細胞の例として、線維芽細胞及び内皮細胞が挙げられる。非細胞物質は、化学化合物及び/又は生物分子であってもよい。非細胞物質の例として、細胞外マトリックスタンパク質、血液動態流条件、パラクリン及びオートクリン因子、接着性タンパク質、及び多糖類が挙げられる。
【0026】
肝細胞は、細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%が例えば所定の時間内に表面に付着することができる場合、接着性と考えることができる。
【0027】
肝細胞は、細胞のわずか70%、65%、60%、55%、50%、45%又は40%の細胞しか例えば所定の時間内に表面に付着することができない場合、接着性がない、又は接着性に乏しいと考えることができる。
【0028】
本明細書で使用される「肝細胞クラスター」という用語は、3次元構造の2つ以上の肝細胞の群を指す。肝細胞における肝細胞の少なくとも約70%、80%、90%、95%又は99%は、直接肝細胞間接触にあり得、ギャップ結合タンパク質(例えばコネキシン32)又はタイトギャップ結合関連タンパク質(tight-gap junction
associated protein)(例えばオクルディン、ZO-1、クローディン-1及びクローディン-4)の存在によって証明することができる。
【0029】
細胞間相互作用及び細胞結合の他に、共培養システムにおける肝細胞の全体形状及び3次元構造は、細胞シグナル伝達経路及び正常遺伝子発現プログラムを含む正常な構造及び機能を維持する。共培養システムは、経時的に肝細胞の3次元構造及び形状を維持し、したがって、細胞間相互作用を高め、正常な肝表現型の喪失及び細胞伸展を防ぐ。対照的に
、特にサブコンフルエント条件で単一培養物として保持される肝細胞は、経時的に細胞形状及び構造を喪失し、周囲の間質細胞及びそれらの支持ECM因子の非存在下で、伸展し始め、「より薄く」なる(高さを失う)。肝細胞の広範な細胞伸展による細胞形状の変質は、重要な機能の対応する減少及び喪失を示し始め、遺伝子発現プログラムが変化し、薬剤化合物に対する応答が変化する。
【0030】
本明細書で使用される「機能的安定性」又は「機能的に安定な」という用語は、所定の時間における1つ以上の肝細胞の基本的な肝細胞の機能の安定性を指す。基本的な肝細胞の機能として、アルブミン及び尿素合成率、チトクロムP450酵素活性率、及び誘導性チトクロムP450レベルが挙げられる。肝細胞の機能的安定性は、ドナーから単離された後の最初の期間、例えば、最初の4~6日間以内の、細胞の基本機能の割合によって最初に特徴付けることができ、所定の期間後も、例えば、続く1、2、3、4、5又は6日間又は1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10週間(例えば、最大28又は42日)、培地に維持される。肝細胞は、細胞の基本的な肝細胞の機能の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%が、5、10、15、20又は25%超の偏差なく、所定の期間後も保持される場合、機能的に安定と考えられる。
【0031】
本明細書で使用される「培養寿命」という用語は、生存及び機能を維持する肝細胞の寿命を指す。表面に付着される細胞は、また、播種細胞としても呼ばれる。播種細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%は、所定の期間、例えば、1、2、3、4、5若しくは6日間、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10週間、表面に付着して生存し続けることができる。生存肝細胞は、例えば、アルブミン及び尿素の産生及びチトクロムP450酵素活性によって証明されるように機能的である。
【0032】
本明細書で使用される「肝細胞」という用語は、1つ以上のドナーから単離され、又は得られ、及び所定の継代数(例えば、0、1、2、3、4又は5つの継代)について培養されたことのない初代肝細胞を指す。本明細書で使用される「プールされた肝細胞」という用語は、2つ以上のドナーから単離され、その後混合される初代肝細胞を指す。肝細胞は、特定のジェノタイピング情報に基づいてドナーから選択することができる。
【0033】
本明細書で使用される「ドナー」という用語は、肝臓を有する生きている哺乳動物を指す。哺乳動物は、ヒト、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、ラット若しくはマウス等のげっ歯類、ウマ、ヤギ、ヒツジ又はシカであってもよい。ドナーは、肝疾患若しくは病態、例えば、微小脂肪変性、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又は肝炎(例えば、A、B、C、D及びE)をり患したヒトであってもよい。NASH疾患の肝臓からの肝細胞は、サイトケラチン18等のマーカーを発現し得る。
【0034】
本明細書で使用される「内皮細胞」という用語は、任意の内皮細胞を指す。内皮細胞は、初代ヒト細胞、例えば、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)であってもよい。内皮細胞は肝細胞でなくてもよい。内皮細胞は、臍帯、肝臓、肺、腎臓、脳、膵臓、リンパ節、心臓、腸又はその他の動脈、血管又は毛細血管から単離することができる。内皮細胞は増殖性でなくてもよい。内皮細胞は、初代細胞であり得又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の継代まで培養されてもよい。内皮細胞は不死でなくてもよい。
【0035】
本明細書で使用される「線維芽細胞」という用語は、任意の線維芽細胞を指す。線維芽細胞は初代ヒト細胞、例えば、ヒト皮膚線維芽細胞であってもよい。線維芽細胞は皮膚、肺、膀胱、角膜又はその他の組織種から単離することができる。線維芽細胞は肝細胞でな
くてもよい。線維芽細胞は増殖性でなくてもよい。線維芽細胞は、初代細胞である又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の継代まで培養されてもよい。線維芽細胞は不死でなくてもよい。
【0036】
フィーダー細胞は、培養の7継代において、又は7継代の前に培養された皮膚線維芽細胞及びHUVECの不活性化及び凍結によって調製することができる。フィーダー細胞の不活性化は、マイトマイシンC又はガンマ照射で完了し、その後、PCNA又はBrdU又は細胞計数の何れかによって検証することができる。不活性なフィーダー細胞は、バイアルにつき共培養の1つのプレートを調製するために凍結することができる。フィーダー細胞のそれぞれのロットに試験を行って、限定されないが、細胞数、生存率、細胞倍加時間、殺菌性及び純度等の品質基準を保証することができる。本明細書で使用される線維芽細胞及び内皮細胞は、本明細書で使用される肝細胞に全く干渉しない、又は少ない干渉を有し得る。本明細書で使用される「干渉」という用語は、肝細胞の通常の特徴、例えば、生物活性を指す。例えば、線維芽細胞及び内皮細胞は、約0%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、20%、30%又は40%しか共培養で使用される肝細胞のアルブミン分泌、代謝クリアランス、誘導、トランスポータ活性、又はその他の生物活性を有することができない。線維芽細胞及び内皮細胞は、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%以上の細胞生存率を有し得る。HUVEC等の内皮細胞に対する線維芽細胞の比は、例えば、線維芽細胞マーカー(例えば、TE-7)及び内皮細胞マーカー(例えば、CD31)によって証明されるように、約1:10~約10:1の範囲、例えば、1:1、1:2、2:1又は任意のその他の所望の比にあってもよい。フィーダー細胞は、マイコプラズマ及びエンドトキシンを有しない場合がある。
【0037】
本明細書で使用される「共培養」という用語は、培地に2つ以上の細胞種を含む培養物を指す。本明細書で使用される「肝細胞共培養物」という用語は培地における肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞であるフィーダー細胞を含む培養物を指す。肝細胞及びフィーダー細胞の細胞比は、約1:40~約40:1の範囲にあり得、フィーダー細胞における線維芽細胞及び内皮細胞の細胞比は、約1:10~約10:1の範囲にあり得る。肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞の細胞比は、3:1:1、6:1:1、12:1:1~24:1:1にあり得る。肝細胞及びフィーダー細胞の細胞比並びにフィーダー細胞における線維芽細胞及び内皮細胞の細胞比は、共培養において肝細胞の接着能又は寿命を改善するように調節することができる。
【0038】
培地の細胞を含む組成物が提供される。細胞は、肝細胞(例えば、ヒト肝細胞)及びフィーダー細胞からなり得、内皮細胞及び線維芽細胞を含み得る。肝細胞は接着性であってもよい。肝細胞は機能的に安定していてもよい。肝細胞は細胞寿命を有してもよい。
【0039】
細胞は、一般的に、細胞の所望の特性(例えば、増殖)を促進するように開発された培地に培養される。肝細胞は、通常、所望の細胞濃度範囲内に肝細胞播種培地に培養される。線維芽細胞は、通常、所望の細胞濃度範囲内に線維芽細胞培地に培養される。内皮細胞は、通常、所望の細胞濃度範囲内に内皮細胞培地に培養される。肝細胞が内皮細胞及び線維芽細胞と共培養される場合、肝細胞播種培地、線維芽細胞培地及び内皮細胞培地は、細胞の播種及び/又は共培養に使用される共培養播種培地に寄与する。
【0040】
内皮細胞及び線維芽細胞に対する肝細胞の所望の細胞比を達成するために、共培養播種培地の組成物は調節することができる。共培養播種培地は、肝細胞播種培地、線維芽細胞培地及び内皮細胞培地を約(5-30):(1-5):(1-5)、例えば、約10:1:1~約20:1:1の容量比で含み得る。一実施形態において、共培養播種培地は、12:1:1の肝細胞培地、内皮細胞培地及び線維芽細胞の比を有し得、これは、12部の
肝細胞播種培地、1部の内皮細胞培地及び1部の線維芽細胞培地を意味する。
【0041】
肝細胞播種培地は、10%の熱不活性FBS(Gibco10082-147)、1倍のNEAA(非必須アミノ酸、Sigma M7145)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Gibco11360-070)、5μg/mLのインスリン及び5μMのデキサメタゾンを補充したDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地、Gibco21063-029)であってもよい。肝細胞播種培地は、10mMのHEPES(Fisher BP299100)、1倍のGlutamax(Gibco35050061)、1倍のITS-A(Gibco51300-044)及び10μMのデキサメタゾンを補充したWEM(William’s E Media、Gibco A1217601)であってもよい。
【0042】
内皮細胞培地は、LifeLineから購入することができる。内皮細胞培地は、VasulLife Basal Medium、5ng/mLのrh-FGF-b、50μg/mLのアスコルビン酸、1μg/mLのヒドロコルチゾン、2%のFBS、10mMのL-グルタミン、15ng/mLのrh IGF-1、5ng/mLのrh EGF、5ng/mLのrh VEGF及び0.75U/mLのヘパリン硫酸塩であってもよい。
【0043】
線維芽細胞培地は、10%のFBSを補充したDMEM高グルコース(Gibco11995-065)であってもよい。
【0044】
一実施形態において、肝細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100、例えば、少なくとも85%は、内皮細胞及び線維芽細胞の存在下で接着性である。別の実施形態において、肝細胞の100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%又は10%未満、例えば、60%未満は、内皮細胞及び線維芽細胞の非存在下で接着性であり得る。
【0045】
組成物における肝細胞(例えば、ヒト肝細胞)は播種することができる。播種された肝細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%、例えば、90%は、所定の期間、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、14、21、28、35、42又は49日間、例えば、少なくとも7又は42日間、表面に接着しながら生存し続けることができ、機能的であり続ける。
【0046】
表面に播種されたヒト肝細胞を含む製造物が提供される。播種された肝細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100、例えば、少なくとも70%がフィーダー細胞上の1つ以上の肝細胞クラスターにある。フィーダー細胞は、内皮細胞であり、線維芽細胞であり、表面に付着される。1つ以上の肝細胞クラスターの播種された肝細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100、例えば少なくとも90%が、直接肝細胞間接触し得る。1つ以上の肝細胞クラスターは、表面の少なくとも40%、50%、60%,70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100、例えば少なくとも50%を覆い得る。表面は少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は100mmの最短の直径を有し得る。
【0047】
製造物は、さらに培地を含み得る。培地は、肝細胞播種培地、内皮細胞培地及び線維芽細胞培地の混合物であってもよい。播種された肝細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100、例えば、少なくとも90%は、少なくとも3、4、5、6、7、14、21、28又は42日間、表面に残る。
【0048】
播種された肝細胞は、肝細胞の1つ以上の基本的な肝細胞機能を示すことができる。例
えば、播種された肝細胞は、アルブミンを産生し、及び/又はチトクロムP450を発現することができる。
【0049】
内皮細胞はヒト細胞であってもよい。例えば、内皮細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)である。内皮細胞は肝細胞でなくてもよい。内皮細胞は増殖性でなくてもよい。内皮細胞は、初代細胞であり得又は3、4、5、6、7、8、9、10、例えば7継代まで培養されてもよい。内皮細胞は不死でなくてもよい。
【0050】
線維芽細胞はヒト細胞であってもよい。線維芽細胞はヒト皮膚線維芽細胞であってもよい。線維芽細胞は肝細胞でなくてもよい。線維芽細胞は増殖性でなくてもよい。線維芽細胞は、初代細胞であり得又は3、4、5、6、7、8、9、10、例えば7の継代まで培養されてもよい。線維芽細胞は不死でなくてもよい。
【0051】
製造物において、播種された肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞は、肝細胞の接着能を改善する任意の細胞比、例えば、3:1:1、6:1:1、12:1:1~24:1:1を有し得る。
【0052】
播種された肝細胞は、1つ、2つ以上のドナーから得ることができる。それぞれのドナーは、肝疾患又は障害、例えば、微小脂肪変性及び/又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をり患し得る。
【0053】
播種されたヒト肝細胞を調製する方法が提供される。調製方法は、ヒト肝細胞をフィーダー細胞の存在下、表面に適用し、フィーダー細胞は、内皮細胞及び線維芽細胞であり、適用工程の後に、適用された肝細胞をフィーダー細胞と共培養し、及び表面に付着されるフィーダー細胞上の共培養された肝細胞によって、1つ以上の肝細胞クラスターを形成することを含む。共培養された肝細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100、例えば少なくとも70%は、1つ以上の肝細胞クラスターにある。
【0054】
適用される肝細胞は、フィーダー細胞の非存在下で、表面に70%、65%、60%、55%、50%、45%又は40%未満、例えば60%未満の接着能を有し得る。適用される肝細胞は、フィーダー細胞の非存在下で、表面に少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%、例えば少なくとも85%の接着能を有し得る。
【0055】
1つ以上の肝細胞クラスターは、表面の少なくとも40%、50%、60%,70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100、例えば少なくとも50%を覆い得る。表面は少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は100mmの最短の直径を有し得る。1つ以上の肝細胞クラスターの播種された肝細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100、例えば少なくとも90%が、直接肝細胞間接触し得る。
【0056】
播種された肝細胞の少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%、例えば、少なくとも90%は、内皮細胞及び線維芽細胞の存在下で、所定の期間、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、14、21、28、35、42又は49日間、例えば、少なくとも7又は42日間、接着したままであり、すなわち、表面に接着したままである。肝細胞は、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1日程度、例えば、3日程度しか内皮細胞及び線維芽細胞と共培養しなくてもよい。
【0057】
本発明の調製方法に従って、内皮細胞及び/又は線維芽細胞は、肝細胞が表面に付着す
る前、付着するとき、又は付着後に表面に付着することができる。内皮細胞及び/又は線維芽細胞は、共培養工程の前、間に表面に付着することができる。
【0058】
調製方法は、追加の細胞外マトリックスタンパク質を除外してもよい。追加の細胞外マトリックスタンパク質は、コラーゲンマトリックス、例えば、BioCoat、又はラット尾コラーゲン、HuGentra Matrix、MATRIGEL及びHuBiogelから成る群から選択することができる。
【0059】
調製方法は、さらに、播種された肝細胞を凍結することを含む。
【0060】
それぞれの調製方法について、調製される播種された肝細胞が提供される。
【0061】
医薬物質の試験を行う方法が提供される。方法は、播種された肝細胞の特性を変化させるのに有効な量の医薬物質を播種された肝細胞に投与することを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。医薬物質は、小分子、抗体、生ウイルス(B型肝炎又はC型肝炎)、ウイルスベクター、オリゴヌクレオチド及び細胞から成る群から選択され得る。
【0062】
薬剤代謝を試験する方法が提供される。方法は、有効量の薬剤を、播種された肝細胞に投与することを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。本明細書で使用される「薬剤代謝」という用語は、薬剤の転換又はクリアランスを指す。方法は、さらに、播種された肝細胞における薬剤の量を決定することを含む。
【0063】
薬剤輸送を試験する方法が提供される。方法は、有効量の薬剤を、播種された肝細胞に投与することを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。方法は、さらに、播種された肝細胞における薬剤の細胞取込及び分布を決定することを含む。
【0064】
薬剤の毒性を試験する方法が提供される。方法は、有効量の薬剤を、播種された肝細胞に投与することを含む。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。方法は、さらに、毒性イベントを検出することを含む。毒性イベントの検出は、残っている生存播種肝細胞の減少した割合によって証明することができる。
【0065】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染肝細胞培養モデルを調製する方法が提供される。方法は、播種された肝細胞にB型肝炎ウイルス(HBV)を接種し、感染した播種された肝細胞を少なくとも7、14又は21日間、例えば、14日間インキュベートすることを含む。HBV感染肝細胞培養モデルが調製される。播種された肝細胞は、本発明の製造物にあってもよく、又は本発明の方法に従って調製されてもよい。方法は、さらに、肝特異的胆汁酸輸送体、例えば、肝細胞のナトリウム・タウロコール酸共輸送体(NTCP)の転写又は発現レベルを決定し、所望の転写又は発現レベルのNTCPを有する肝細胞のバッチを選択し、本発明の方法に従って、肝細胞の選択されたバッチを播種し、その後、播種された肝細胞をB型肝炎ウイルス(HBV)に接種させる。タンパク質マトリックスで覆うことは、ウイルス接種効率を増加させるために、本発明では必要とされない場合がある。所望のNTCPレベルを有する懸濁グレード肝細胞バッチは、HBV接種に使用され得、長期の培養研究に適する場合がある。
【0066】
本発明に従って肝細胞を播種するキットが提供される。キットは、初代肝細胞を含む第1の凍結保存バイアル、内皮細胞を含む第2凍結保存バイアル、線維芽細胞を含む第3凍
結保存バイアル、並びに本発明の方法に従って、初代肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞で播種されたヒト肝細胞を調製する説明書を含む。第2凍結保存バイアル及び第3凍結保存バイアルは同じであってもよい。第1凍結保存バイアル、第2凍結保存バイアル及び第3凍結保存バイアルは同じであってもよい。キットは、1つのドナーからの肝細胞凍結保存バイアル又は複数のドナーからの肝細胞凍結保存バイアルを含み得る。キットは、肝細胞共培養システムについて、試験結果又は分析証明書(COA)を含む。キットは、調製方法のための使用説明書プロトコルを含む。キットは、肝細胞、線維芽細胞及び内皮細胞を解凍、播種及び培養するための培地を含む。
【0067】
肝細胞共培養システムを調製する方法が提供される。方法は、ドナーの肝臓から肝細胞を単離し、単離された肝細胞に線維芽細胞及び内皮細胞を加え、線維芽細胞及び内皮細胞と混合された肝細胞を凍結することを含む。方法は、さらに、培地において細胞を増殖することを含み、細胞は、肝細胞、線維芽細胞及び内皮細胞からなる。ドナーは、動物、好ましくはヒトであってもよい。
【0068】
使用準備済の肝細胞共培養システムが提供される。共培養肝細胞システムは、ECM基質コーティング、培養ウェルの表面に付着される線維芽細胞及び内皮細胞層、並びに線維芽細胞及び内皮細胞又は細胞層に付着される肝細胞層を有する、又は有しない培養ウェルを有する組織培養プレートを含み、肝細胞クラスター又は肝細胞の島を形成する。肝細胞の島としても知られる肝細胞クラスターは、線維芽細胞及び内皮細胞に播種又は共に播種された後に自己組織化される。肝細胞クラスター又は肝細胞島の内部の肝細胞は、直接肝細胞間接触を維持する。及び肝細胞は、カドヘリン及びコネキシン等の肝細胞間接着分子を産生する。共培養システムの70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%超の肝細胞は、肝細胞クラスターに分布し、直接肝細胞間接触を維持する。培養ウェルの表面の20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%超は、肝細胞クラスターによって覆われる。本明細書で使用される肝細胞は、1つのドナー、又は複数のドナーに由来することができる。及び共培養システムの内皮細胞は、培養の間、容器様構造を形成し得る(図27)。
【実施例0069】
実施例1 共培養ヒト肝細胞
ヒト初代肝細胞はヒト皮膚線維芽細胞及び内皮細胞と共培養され、特徴付けられた。この例において、懸濁グレードの肝細胞は、70%未満の接着能を有し、接着性グレードの肝細胞は少なくとも70%の接着能を有した。
【0070】
1.方法
1.1 ヒト初代肝細胞の単離及び冷凍保存
ヒト初代肝細胞は、ヒトドナーから単離され、その後、液体窒素に保存された。
【0071】
1.2 ヒト皮膚線維芽細胞及び内皮細胞の源
ヒト皮膚線維芽細胞は成人の皮膚から単離され、TE-7発現によって特徴付けられる。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、臍帯から単離され、CD31及び内皮(VE)-カドヘリン発現によって特徴付けられる。不死化ヒト肝類洞内皮細胞(SEC)はabm Inc.から購入された。皮膚線維芽細胞及び内皮細胞の両方は、10%のDMSO(Sigma)を含む継代#0又は#1の凍結培地で凍結された。
【0072】
1.3 共培養の不活性フィーダー細胞層の調製
成人の皮膚線維芽細胞は増殖され、10%のウシ胎仔血清を補充したDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地、Gibco)高グルコースにおいて集密度まで増殖された。HUVEC及びSECの両方は、Lonzaから購入された内皮細胞増殖培地において、集密
度になるまで増殖された。集密度になると、細胞は、TrypLE(Gibco)又はトリプシン-EDTA(Gibco)による酵素消化によって継代された。何れかの酵素は細胞を組織培養表面から離すために使用され、細胞の懸濁液を形成し、計数することができた。懸濁液の細胞は、その後、細胞懸濁液の容量を増やし、細胞懸濁液を以前播種されたときよりも大きい表面積の組織培養プラスチックに移動することによって、より低い密度で播種された。細胞は、10,000~15,000細胞/cmの密度で播種され、約5~7日毎に、集密度に達成すると継代された。細胞は、最大5回継代され、その後、有糸分裂的に不活性にされ、凍結された。
【0073】
マイトマイシンC又はガンマ照射は、二重鎖の破壊を引き起こすことによって細胞を不活性にするので、マイトマイシンCが、集密度な線維芽細胞及び/又は内皮細胞を不活性にするために使用された。不活性細胞は、有糸分裂的に不活性になり、増殖しなかった。端的には、細胞は、ダルベッコリン酸塩緩衝生理食塩水(DPBS、Gibco、Paisley、UK)で3回リンスされ、10μg/mlのマイトマイシンC(Sigma)とともに37℃で3時間インキュベートされ、その後、DPBSで3回リンスされた。不活性の後、線維芽細胞及び内皮細胞は、細胞数についてTrypLEで直ぐに分離され、その後、冷凍保存培地で1~2百万細胞/mlの濃度で再懸濁された。細胞は、その後凍結保存バイアルに分注され、-80℃で一晩保存された。翌日、細胞は、長期保存のために、液体窒素条件に移された。
【0074】
1.4 懸濁グレード及び接着性グレードのヒト肝細胞を不活性フィーダー細胞、内皮
細胞及び線維芽細胞の混合物に播種
ヒト皮膚線維芽細胞及び内皮細胞から成るフィーダー細胞は解凍され、コラーゲンコーティング(BioCoat、Corning)又はマトリックスコーティングされていない通常の組織培養プラスチック24若しくは96ウェルプレートのいずれかに25,000細胞/cm播種された。試験対象のフィーダー細胞の密度は、12,500細胞/cm~100,000細胞/cmであった。
【0075】
フィーダー細胞を播種してから30分後、初代ヒト肝細胞が150,000細胞/cm播種された(模式図#1)。伝統的に、肝細胞はコラーゲンコーティングされた組織培養プレートに250,000細胞/cm播種された。肝細胞の細胞密度は、共培養システムに調節されて、多少の肝細胞の相互作用を可能にし、肝細胞の付着率を説明することができる。あるいは、フィーダー細胞及び肝細胞は、肝細胞及びフィーダー細胞を均一な懸濁液に混合し、その後フィーダー細胞及び肝細胞をコラーゲンコーティングされたプレートに一緒に播種することによって、一緒に播種することができる(模式図#2)。肝細胞を播種してから4~6時間後、培地は交換されて、付着していない細胞及び細胞デブリを除去した。培地を交換する前のインキュベーション時間又は振盪条件は、培養プレートの種類(例えば、6ウェル、12ウェル、24ウェル、48ウェル、96ウェル、又は384ウェルプレート)によって変えることができる。
【0076】
肝細胞を播種してから16~20時間後、MATRIGEL等の余剰な細胞マトリックスは、培地上で肝細胞の成熟誘導のためにタッピングされた。培養プラットフォームは、余剰な細胞マトリックスを添加することなく成功した。
【0077】
1.5 共培養条件下の肝細胞の長期培養
伝統的な接着性肝細胞単一培養モデルは、最大7日間の培養を可能にし、高グレート肝細胞の分析を可能にし、それらの膜の崩壊によって伸展を開始し始め、それらの機能性を喪失するに至る。接着性グレートの肝細胞及び懸濁グレードの肝細胞は共培養モデルのフィーダー細胞に播種されて、最大6週間、それらの形態及び機能が研究された。培地は培養期間にわたり毎日交換された。肝細胞培地は、HEPES(Fisher)、Glut
aMAX(Gibco)、ITS+(インスリン、トランスフェリン、セレン複合体、BSA及びリノール酸、Gibco)、デキサメタゾン(Sigma)、及びWilliam’s E培地のピルビン酸ナトリウム(Gibco)を含んだ。
【0078】
6週間の培養にわたり、共培養の肝細胞は、培地12:1:1のHHCMと共に毎日与えられ、この培地は、それらの典型的な立方体形態、毛細胆管形成、CyP450酵素活性並びにアルブミン及び尿素分泌の試験において、12:1:1の容量比の肝細胞培地、内皮細胞培地及び線維芽細胞培地の混合物である。
【0079】
1.6 複数のドナーから肝細胞をプールすることによりドナー間の変動を除去
肝細胞は、多くはドナーに起因して、それらの付着率、形態、タンパク質発現及び酵素機能性が変化している。懸濁グレード又は接着性グレードに関わらず、複数のドナーからの肝細胞は、プールがこれらの変動のいくつかを減少又は除去するかどうかを決定するためにプールされた。3~10以上の異なるドナーからの肝細胞は個別に解凍され、数えられ、及び等量に一緒に混合された。プールされた肝細胞及び各ドナーからの肝細胞は、150,000細胞/cmで線維芽細胞及び内皮細胞のフィーダー層に個別に播種された。肝細胞は肝細胞が解凍される前後に一緒にプールされた。
【0080】
1.7 共培養条件における肝細胞の特徴付け
懸濁又は接着性グレードの肝細胞は、25,000細胞/cmで不活性フィーダー細胞に播種され、6週間共培養された。それらの典型的な立方体及び多核肝細胞形態は、6週間の培養にわたり、毛細胆管における5-(及び-6)-カルボキシ-2’、7’-ジクロロ-フルオレセインジアセタート(CDFDA、Invitrogen)の流出によって可視化された。
【0081】
1.8 共培養肝細胞のCyP450活性
共培養された肝細胞のCyP450 1A2、CyP450 2B6、及びCyP450 3A4活性は、製造者の説明書に従うことによってPromegaのP450-Glo(商標)アッセイで分析された。試料は、CyP450 1A2については100μMのオメプレゾール、CyP450 2B6については100nMのCITCO、及びCyP450 3A4については25μMのリファンピシンによって、48時間誘導された。
【0082】
複数週間の試験を行う場合、試料は5日間で回収することができ、その後、培地は、分析前の別の48時間、誘導培地に切り替えられた。誘導及び非誘導試料の活性レベルは6週間分析された。
【0083】
1.9 タンパク質及び遺伝子発現
使い古された培地試料は回収され、6週間の培養にわたり、共培養された肝細胞からアルブミン及び尿素レベルについて評価された。アルブミン、尿素、CyP450 1A2、CyP450 2B6及びCyP450 3A4についての遺伝子発現レベルは、6週間の培養にわたり、毎週評価された。共培養肝細胞は、培養から1週間、2週間及び6週間後に固定され、アルブミン、CD31、CD90、CyP450 1A2、CyP450 2B6及びCyP450 3A4が染色された。
【0084】
1.10 毛細胆管形成
5-(及び-6)-カルボキシ-2’,7’-ジクロロ-フルオレセインジアセタート(CDFDA)の流出は、共培養された肝細胞の内部の蛍光顕微鏡下で可視化された。共培養された肝細胞はDPBS(-Ca/-Mg)で2回リンスされ、その後、3:1:1のHHCMで37℃でインキュベートされ、5%のCOで10分間インキュベートされ、その後、37℃の5μMのCDFDA、5%のCOを含む3:1:1のHHCMで2
0分間インキュベートされた。細胞は、その後、DPBS(-Ca/-Mg)で2回リンスされ、フェノールレッドのない完全培地で画像化された。
【0085】
2.内皮細胞及び線維芽細胞の混合物におけるヒト肝細胞共培養の模式図:細胞培養物及びタイムフレームによる分析
2.1 模式図#1
模式図#1において、ヒト初代肝細胞は、フィーダー細胞として内皮細胞及び線維芽細胞の混合物で事前に播種された表面に播種された(図1)。
【0086】
フィーダー細胞を播種してから30~60分後、肝細胞がフィーダー細胞に添加されて、3:1:1の容量比の肝細胞播種培地、内皮細胞培地及び線維芽細胞培地の播種培地混合物、3:1:1のHHPMとも呼ばれる、において、3:1:1の細胞比の肝細胞、内皮細胞及び線維芽細胞を有する肝細胞共培養物を確立した。共培養された細胞は37℃で5%のCOに置かれ、肝細胞共培養物の最初に時間に、15分毎に4回、N-S及びE-Wの様式で振盪された。
【0087】
肝細胞の播種から4~6時間後、播種培地混合物は、3:1:1の容量比の内皮細胞培地、線維芽細胞培地及び肝細胞培地の培地混合物に変えた。
【0088】
肝細胞を播種してから20~24時間後、培地混合物は、使い古された培地になり、3:1:1の容量比の肝細胞播種培地、内皮細胞培地、及び線維芽細胞培地の新鮮な混合物、3:1:1のHHCMとも呼ばれる、に交換された。MATRIGEL等の細胞外マトリックスが、培地混合物に希釈され、細胞に加えられた場合、培地混合物は、続いて、新鮮な3:1:1のHHCMに毎日交換した。
【0089】
チトクロムP450(CyP450)レベルは、4日目又は7日目のいずれかにPromegaのP450Glo(商標)アッセイで決定された。
【0090】
毛細胆管は、CDFDAの流出によって、1週間のアッセイの5日目に可視化された。このアッセイは、延長された培養にわたり、複数回繰り返すことができた。
【0091】
タンパク質発現は、免疫細胞化学的(ICC)染色及びELISAによって検出された。ELISAを使用して、アルブミン及び尿素を検出し、定量化した。ELISAは24時間の培養後に回収された300μlの使い古された培地において実施された。誘導されていない及び誘導された試料は、長期培養にわたり、7日目及び様々なタイムポイントに、ICCについて固定された。細胞試料は、また、後のRNA抽出及びqPCR分析についてTrizolで急速凍結された。
【0092】
2.2 模式図#2
模式図#2において、ヒト初代肝細胞、内皮細胞、及び線維芽細胞が一緒に播種された(図2)。模式図#2は、模式図#1と同一であるが、ただし、凍結前に非増殖フィーダー細胞がヒト肝細胞と混合され、その後、同時に復活し、遠心分離にかけられ、再懸濁され、肝細胞の意図される適用及びグレードに依存して、100,000細胞/cm~775,000細胞/cmの密度で、コラーゲンコーティングされた組織培養プラスチックプレートに播種された。
【0093】
3.共培養された肝細胞対単一培養された肝細胞
ヒト初代肝細胞は、フィーダー細胞、内皮細胞及び線維芽細胞の混合物に播種されて、模式図#1又は2の下、共培養物を確立し、又はフィーダー細胞の非存在下、表面に播種されて、単一培養を確立した。模式図#1又は2の下、調製された共培養された肝細胞の
肝細胞特性(例えば、形態又は遺伝子発現)の有意差はなかった。模式図#1又は2の下、共培養された肝細胞は、単一培養された肝細胞よりも良好な肝細胞特性(例えば、形態又は遺伝子発現)を示した。
【0094】
共培養された肝細胞は、単一培養された肝細胞よりも良好な培養寿命及びより肝細胞の形態を示した(図3)。
【0095】
共培養された肝細胞は、7日目に、単一培養された肝細胞よりも、CyP450 1A2、CyP450 2B6及びCyP450 3A4の非常に高い遺伝子発現を示した(図4)。
【0096】
共培養された肝細胞は、7日目に、単一培養された肝細胞よりも、48時間の誘導後に高いCyP450 1A2活性及びCyP450 2B6活性を示した。さらに、7日目に、共培養された肝細胞は、単一培養された肝細胞と同様の誘導されたCyP450 3A4活性を示した(図5)。
【0097】
共培養された肝細胞は、単一培養された肝細胞に比べて、ELISAによって測定されるように、2週間の培養の間、非常に高いレベルのアルブミン及び尿素を分泌した(図6)。
【0098】
4.共培養された懸濁グレードヒト初代肝細胞対単一培養された接着性グレード肝細胞の改善された性能
懸濁グレードとして特徴付けられた肝細胞は、複数日間、集密度の単層を維持することができない。より多くの細胞を添加することでドナーの付着率を調節することは、肝細胞の付着及びコンフルエンスを改善しない。より多くの肝細胞が播種されて、特定のドナーの付着率を調節しても、追加のデブリが細胞は付着するのを妨げると考えられる。懸濁グレードの肝細胞の付着する能力がないことは、典型的な肝細胞の形態又は機能を示すことを妨げる。肝細胞共培養物の線維芽細胞及び内皮細胞から成るフィーダー細胞層の追加は、懸濁グレードの肝細胞の付着、形態及び機能性を改善した(図7~9)。
【0099】
共培養された懸濁グレードのヒト初代肝細胞の大部分は、接着したままであり、単一培養された懸濁グレードのヒト初代肝細胞の大部分は、付着せず、又は4日目まで表面から離れた(図7)。
【0100】
共培養された肝細胞は、また、単一培養された肝細胞を上回る細胞機能の改善を示した。共培養された懸濁グレードの肝細胞は、4日目及び7日目に、単一培養された懸濁グレードの肝細胞よりもCyP450 1A2活性及びCyP450 3A4活性の改善を示し、7日目を通じて高いレベルを維持した。共培養された懸濁グレードの肝細胞のCyP450 1A2活性は、4日目及び7日目に、単一培養された接着性グレードの肝細胞と同様であった。共培養された懸濁グレードの肝細胞のCyP450 3A4活性は、4日目及び7日目に、接着性グレードの肝細胞よりも高かった(図8)。共培養された懸濁グレードの肝細胞及び接着性グレードの肝細胞は、ELISAによって検出されたように、単一培養された懸濁グレードの肝細胞及び接着性グレードの肝細胞よりも高いアルブミン及び尿素発現を示し、維持した。共培養された懸濁グレード肝細胞は、4日目及び7日目に、単一培養された接着性グレードの肝細胞よりも高いアルブミン及び尿素発現を示した(図9)。
【0101】
5.共培養された肝細胞の寿命、形態、マーカー発現、代謝活性及び機能的胆汁分泌
単一培養された懸濁グレードのヒト初代肝細胞の大部分は表面に付着せず、表面に付着しなかった肝細胞は、培地において最大1週間後に表面から離れ始めた。接着性グレード
の肝細胞は、最初、高効率で表面に付着したが、表面から離れ、培養7日目までにそれらの立方体形態を喪失し始めた。接着性肝細胞は、培養11日目超の間、付着し続けなかった(図10)。
【0102】
共培養された懸濁グレードの肝細胞は、6週間以上維持された。線維芽細胞及び内皮細胞の非増殖フィーダー層状の小型の島に6週間付着し続けた肝細胞については立方体の肝細胞の形態が明白に維持された(図11)。より長いタイムポイントは試験されなかった。肝細胞とフィーダー細胞との相互作用は、アルブミン及びCD31染色によって可視化された。肝細胞は、細胞の複雑なネットワークとして、支持フィーダー層に統合された。肝細胞の機能は、アルブミン及びCyP450 3A4染色によって可視化されるように、このネットワークに保持された(図12)。共培養された懸濁グレードの肝細胞のCyP450 3A4活性は6週間保持された。共培養された懸濁グレードの肝細胞の高い活性は、サンドイッチ単一培養物として培養された同肝細胞の低いCyP450 3A4活性とは対照的であった(図13)。共培養された懸濁グレード肝細胞は発現し、6週間の培養の間、毛細胆管の機能的ネットワークを維持した(図14)。
【0103】
6.共培養された肝細胞の寿命:MATRIGELの存在下又は非存在下の共培養における肝細胞の成熟誘導
共培養された肝細胞は、MATRIGEL又は任意のその他の細胞外マトリックスを必要とせず、それらの形態、機能又は寿命を維持した。MATRIGELのある場合及びない場合の共培養された懸濁グレードの肝細胞の形態は、1~6週間にわたって、酷似した(図15及び16)。MATRIGELのある場合及びない場合の肝細胞は、小型の細胞の島及びそれらのフィーダー層を有するネットワークを形成した。フィーダー細胞と肝細胞との相互作用は、培養から6週間後にICCによって可視化され、毛細胆管が6週間観察された(データ示さず)。MATRIGELのある場合及びない場合で培養された肝細胞において、形態の差は観察されなかった。MATRIGELの存在は、共培養された肝細胞の機能性に影響しなかった。アルブミン及び尿素の濃度並びにCyP450 3A4活性は、MATRIGELのある場合及びない場合の共培養された肝細胞の6週間の培養において一定を維持した(図17及び18)。
【0104】
異なるドナーからの単一培養及び共培養された肝細胞は、形態、タンパク質発現及び酵素活性において著しい変化を示した。複数のドナーからの肝細胞は、一緒にプールされて、これらの変化を正規化することができた。共培養システムにおける3つのドナーからのプールされた肝細胞の付着率、集密度及び脂質蓄積は、正規化されたように見えた(図15及び16)。プールされた肝細胞のCyP450 3A4酵素活性は、個別のドナーからの肝細胞と比較する場合、平均又は僅かに平均よりも高く見えた(図19)。3つ以上のドナーからの肝細胞をプールする正規化効果は、in vitro試験の適用に有用である。
【0105】
フィーダー層は、内皮細胞及び線維芽細胞の複数の種類からなってもよい。類洞内皮細胞又はHUVECを含むフィーダー細胞層における共培養されたヒト肝細胞の形態及び機能が比較された。形態(図20)、CyP450活性(図21)又はアルブミン及び尿素(図22)の分泌において有意差は観察されなかった。
【0106】
7.共培養された肝細胞の細胞混合物の最適比
12,500細胞/cm~100,000細胞/cmのフィーダー層の密度が共培養システムにおいて試験された。異なるフィーダー細胞の密度における個別の肝細胞の形態は同様に見えたが、より低い密度のフィーダー細胞は、より多くの肝細胞間相互作用を可能にした(図23)。12,500細胞/cm(24:1:1)又は25,000細胞/cm(12:1:1)のフィーダー細胞の密度で共培養された肝細胞は、50,0
00細胞/cm(6:1:1)又は100,000細胞/cm(3:1:1)のより高い密度の肝細胞よりも、高いCyP450 1A2活性及びCyP450 3A4活性を示した(図24)。
【0107】
8.肝細胞の共培養についての複数の種類の培養プレート
24又は96ウェルプレートの何れかの内皮細胞及び線維芽細胞において共培養された肝細胞は、形態(図25、左及び中央パネル)、アルブミン分泌のレベル(図26)及びバイオマーカー発現(図27)等の同様の特徴を示した。コラーゲンコーティングされていない一般的な組織培養プラスチックにおいて共培養された肝細胞は、コラーゲンコーティングされたBioCoatプレートにおいて共培養された肝細胞に比べて、同様の形態(図25、右パネル)及びバイオマーカー発現パターン(図27)を示した。
【0108】
懸濁グレードの肝細胞のみを共培養したが、接着性グレードの肝細胞が6週間以上同様の高グレードの形態及び機能を維持することが予想される。より高いグレード細胞は、互いに及びフィーダー細胞とより迅速に、より複雑なネットワークを発現さえし得ることが予想される。
【0109】
実施例2 HBV感染モデル(NTCP発現)
NTCP(ナトリウム/タウロコール酸共輸送体)発現は、肝細胞によるHBVの取込に必要である。共培養された肝細胞は、免疫細胞化学で検出されるNTCPを7、11、14、19及び21日目に発現することが判明した。細胞は固定され、透過性にされ、及び1:100の濃度で、4℃で一晩、一次抗体SLC10A1(abcam 131084)でインキュベートされた。二次抗体Alexa Fluor488ヤギ抗ウサギ(Invitrogen A11008)は、1:1000の濃度で、4℃で1時間インキュベートされて、一次抗体を検出した。細胞はHoechstで対比染色された。NTCP発現は、BMG CLARIOstarで、483nm及び530nmで、全ウェル蛍光スキャニングで定量化された(図25)。したがって、NTCP発現は、2週間、共培養された肝細胞によって維持された。
【0110】
実施例3 細胞及び培地についての最適な比
1平方センチメートルあたり12,500、25,000、50,000及び100,000細胞のフィーダー細胞播種密度の肝細胞付着及びクラスター形成について試験が行われた。1平方センチメートルあたり150,000、250,000、375,000細胞の肝細胞播種密度が試験された。肝細胞培地、内皮細胞培地及び線維芽細胞培地の培地の比の理想的な細胞比についても試験が行われた。1平方センチメートルあたり12,500~25,000細胞のフィーダー細胞比及び1平方センチメートルあたり150,000細胞の肝細胞播種密度が最も高い付着率、クラスター形成及び肝細胞機能を示した。細胞比に合う培地の比は、また肝細胞の形態及び機能を最大に支持することが見つけられた。
【0111】
実施例4 肝細胞クラスター
線維芽細胞及び内皮細胞から成るフィーダー細胞の層は、フィーダー細胞が播種された後の数分以内に、組織培養プラスチック表面に付着した。フィーダー細胞は、フィーダー細胞が伸展し、遊走し、組織培養プラスチック表面を覆うのに充分な低密度で播種された。肝細胞は、その後、フィーダー細胞の上部に付着し、互いに遊走し、クラスター肝細胞を形成した。この肝細胞の遊走は、肝細胞の特徴に依存して、最初の時間又は最大48時間以内に発生した。肝細胞クラスターが形成されると、隣接する肝細胞は毛細胆管及びタイトな結合を形成した。毛細胆管は、4日目に開始するCDFDAの流出によって可視化された。連結タンパク質帯状オクルディン1、コネキシン-32は、免疫細胞化学を使用して7日目に可視化された。クラスターにおける肝細胞の少なくとも90%は、タイトな
ギャップ結合を示し、直接肝細胞間接触を示す。
【0112】
実施例5 クラスターの測定値
接着性品質の肝細胞は、全ての細胞領域に比べて、全体領域及び肝細胞クラスターによって占有されない領域の核の特徴の分析によって評価された。懸濁品質の肝細胞は、全ての細胞培養領域に比べて、クラスターによって占有される領域を分析することによって評価された。フィーダー細胞及び肝細胞は、それらのそれぞれの核の大きさによって分化された。線維芽細胞及び内皮細胞は、肝細胞よりも大きい平均核サイズを有する。フィーダー細胞の平均核サイズは、共培養のフィーダー細胞単独の核サイズを測定することによって確立された。平均フィーダー細胞+1つの標準偏差の閾値を使用して、肝細胞とフィーダー細胞とを区別した。使用される閾値は、345ピクセル^2未満の肝細胞核領域であった。全ての測定値は、ImageJで取られた(図26)。
【0113】
本明細書に記載される全ての書類、本、マニュアル、論文、特許、出願された特許出願、ガイド、要約及び/又はその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本発明のその他の実施形態は、本明細書に開示される本発明の明細書及び実施の考慮から、当業者に明らかである。本明細書及び実施例は、本発明の真の範囲及び趣旨が以下の請求項によって示されながら、例示に過ぎないと考えられることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2023-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に播種されたヒト肝細胞を含む製造物であって、前記播種された肝細胞の少なくとも70%がフィーダー細胞上の1つ以上の肝細胞クラスターであり、前記フィーダー細胞が内皮細胞及び線維芽細胞であり、前記表面に付着される、表面に播種されたヒト肝細胞を含む製造物。