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特開2023-133597アデノ随伴ウイルス第VIII因子ベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133597
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】アデノ随伴ウイルス第VIII因子ベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20230914BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230914BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230914BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230914BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230914BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230914BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 38/37 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
A61K35/76
A61P7/04
A61K48/00
A61K38/37
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023127698
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2021024332の分割
【原出願日】2014-09-10
(31)【優先権主張番号】61/877,042
(32)【優先日】2013-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506136483
【氏名又は名称】バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】505386502
【氏名又は名称】ユニバーシティー カレッジ ロンドン
(71)【出願人】
【識別番号】593230316
【氏名又は名称】セント・ジュード・チルドレンズ・リサーチ・ホスピタル
【氏名又は名称原語表記】St. Jude Children’s Research Hospital
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ピーター キャメロン コロシ
(72)【発明者】
【氏名】アミット ナサワニ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー マッキントッシュ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード トッデンハム
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ダビドフ
(57)【要約】
【課題】血友病Aを治療するための遺伝子治療法において有用な、機能的な第VIII因子タンパク質をコードする新規のAAVベクターを提供する。
【解決手段】本発明は、機能的に活性なFVIIIをコードするAAVベクター(本明細書では「AAV FVIIIベクター」と称される)を提供する。機能的に活性なFVIIIをコードするゲノムは、好ましくは7.0kb長以下、より好ましくは6.5kb長以下、さらにより好ましくは6.0kb長以下、さらにより好ましくは5.5kb長以下、さらにより好ましくは5.0kb長以下であり、増強されたプロモーター機能を有する。また、本発明は、本明細書に記載されるAAV FVIIIベクターを作製する方法および関連するその治療的用途に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全体が参照によって本明細書に援用される、2013年9月12日に出願された米国仮特許出願第61/877,042号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、高い発現活性を有するAAV FVIIIベクターおよび完全長または切断型の機能的FVIIIを発現するAAV FVIII ベクターを含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)第VIII因子(FVIII)ベクターに関する。また、本発明は、本明細書に記載されるAAV FVIIIベクターを作製する方法および関連するその治療的用途に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒトおよびいくつかの他の霊長類種に感染する、小型の複製欠損の無エンベロープの動物ウイルスである。AAVのいくつかの特徴により、このウイルスは遺伝子治療による治療用タンパク質の送達のための魅力的な媒介物となっており、例えば、AAVが、ヒト疾患を引き起こすことが知られておらず、軽度の免疫応答を誘導すること、並びにAAVベクターが、宿主細胞ゲノム内への組込みなしに分裂細胞および休止細胞の両方に感染可能であることが挙げられる。AAVを用いる遺伝子治療ベクターは、いくつかの臨床試験で、例えば、血友病Bの治療のためのヒト第IX因子(FIX)の肝臓への送達への使用が成功している(Nathwani etal., New Engl. J. Med.365:2357-2365, 2011)。
【0004】
しかしながらAAV遺伝子治療ベクターにはいくつかの欠点がある。具体的には、AAVベクターのクローニング能力が、前記ウイルスのDNAパッケージング容量の影響により、限定されている。野生型AAVの一本鎖DNAゲノムは約4.7キロ塩基(kb)である。実際には、約5.0kb以下のAAVゲノムが、AAVウイルス粒子の中に、完全にパッケージングされている(すなわち、完全長)と思われる。AAVベクター内の核酸ゲノムは約145塩基のAAV逆方向末端反復(ITR)を2つ有していなければならないという要件により、AAVベクターのDNAパッケージング容量は、最大約4.4kbのタンパク質コード配列がキャプシド形成され得る。
【0005】
このサイズ制限により、巨大な治療用遺伝子、すなわち、約4.4kb長よりも長い遺伝子は、一般に、AAVベクターでの使用に適していない。そのような治療用遺伝子の1つは第VIII因子(FVIII)遺伝子であり、この遺伝子は、N末端からC末端へ、19アミノ酸のシグナルペプチド、および3つの巨大ドメイン(すなわち、重鎖またはAドメイン、中央またはBドメイン、および軽鎖またはCドメイン)を含む、2332アミノ酸のポリペプチドをコードする約7.0kbのmRNAを有する。FVIIIにおけるAAVベクターのサイズ制限を克服するために使用された戦略の1つは、2つのAAVベクター、重鎖またはAドメインをコードする一方のAAVベクター、および軽鎖またはCドメインをコードするもう一方のAAVベクターを使用することであった(例えば、Coutu etal.、米国特許第6,221349号、同第6,200,560号および同第7,
351,577号を参照)。このサイズ制限を回避する別の戦略は、FVIIIの中央部分またはBドメインが欠失しており、SQ配列として知られる14アミノ酸リンカーで置換されているFVIIIをコードするAAVベクターを作製することであった(Ward et
al.,Blood, 117:798-807, 2011、およびMcIntosh et al., Blood 121:3335-3344, 20
13)。
【0006】
5.0kbよりも長いAAVゲノムを有するAAVベクターが文献で報告されているが、これらの場合の多くで、コードされた遺伝子の5’末端または3’末端が切断されていると思われる(Hirsch etal.,Molec. Ther. 18-6-8, 2010、およびGhosh et al., Bi
otech.Genet.Engin. Rev. 24:165-178, 2007参照)。しかし、AAV感染細胞において
、5’末端切断および3’末端切断を有する核酸の間で、重複した相同組換えが生じる結果、前記巨大タンパク質をコードする「完全な」核酸が作製され、それにより、機能的な完全長遺伝子が再構築されることが示されている。
【0007】
血友病Aを治療するための遺伝子治療法において有用な、機能的な第VIII因子タンパク質をコードする新規のAAVベクターが必要とされている。従って、本発明は、AAVウイルス粒子が治療用タンパク質をコードする核酸全体をキャプシド形成することにより(すなわち、完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクター)、ゲノムのサイズ超過という上記の問題を回避するような、または、切断されていてもされていなくてもよい機能的に活性な第VIII因子タンパク質を少なくとも生成するような、機能的に活性なFVIIIをコードするAAVベクターに関する。さらに、カプシドを対象とした免疫応答を回避するために、AAVベクターは、カプシド粒子当たりで、最高の標的タンパク質形質導入/発現活性を有しているべきである。本発明はまた、高い発現活性を有する完全AAV FVIIIベクターの作製に関する。最後に、本発明は、本明細書に記載されるAAV第VIII因子ベクターを作製するための方法、およびそれを使用するための関連方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,221,349号明細書
【特許文献2】米国特許第6,200,560号明細書
【特許文献3】米国特許第7,351,577号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、機能的に活性なFVIIIをコードするAAVベクター(本明細書では「AAV FVIIIベクター」と称される)を提供する。機能的に活性なFVIIIをコードするゲノムは、好ましくは7.0kb長以下、より好ましくは6.5kb長以下、さらにより好ましくは6.0kb長以下、さらにより好ましくは5.5kb長以下、さらにより好ましくは5.0kb長以下であり、増強されたプロモーター機能を有する。
【0010】
本明細書で使用される場合、「機能的に活性なFVIII」は、培養細胞において発現される場合のインビトロにおいて、または細胞もしくは体組織において発現される場合のインビボにおいて、野生型FVIIIタンパク質の機能性を有するFVIIIタンパク質である。これには、例えば、血液凝固が起こることを可能にすること、および血友病Aを患う対象において血液が凝固するのにかかる時間を短縮することが含まれる。野生型FVIIIは、凝固カスケードを介した血液凝固に関与しており、活性化FIX(FIXa)の補助因子として働いて、カルシウムイオンおよびリン脂質の存在下で、第X因子(FX)を活性化FX(FXa)に変換する複合体を形成する。従って、機能的に活性なFVIIIはFIXaと複合体を形成し得、この複合体はFXをFXaに変換し得る。
【0011】
本明細書で使用される場合、「AAVベクター」とは、転写調節エレメント、すなわち、一つまたは複数のプロモーターおよび/またはエンハンサーに機能的に連結したタンパク質コード配列、並びにポリアデニル化配列、並びに、所望により、前記タンパク質コード配列のエクソン間に挿入された一つまたは複数のイントロン、に隣接しているAAV5’逆方向末端反復(ITR)配列およびAAV3’ITRを有する、一本鎖または二本鎖の核酸を指す。一本鎖AAVベクターは、AAVウイルス粒子のゲノム内に存在し、本明細書で開示される核酸配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかであり得る核酸を指す。このような一本鎖核酸のサイズは塩基単位で与えられる。二本鎖AAVベクターは、AAVベクター核酸を発現または遺伝子導入するために使用される、プラスミド(例えば、pUC19)のDNA内、または二本鎖ウイルス(例えば、バキュロウイルス)のゲノム内に存在する核酸を指す。このような二本鎖核酸のサイズは塩基対(bp)単位で与えられる。
【0012】
用語「逆方向末端反復(ITR)」とは、本明細書で使用される場合、DNA複製の開始点として、およびウイルスゲノムのパッケージングシグナルとしてシスに機能する、AAVゲノムの5’末端および3’末端に存在する、当該技術分野において認知されている領域を指す。AAV ITRは、AAV repコード領域と一緒になって、宿主細胞ゲノムからの除去およびレスキュー、並びに宿主細胞ゲノムへの2つの隣接するITR間に挿入されたヌクレオチド配列の組込みを効率的に提供する。ある特定のAAV関連ITRの配列は、Yan etal.,J. Virol. 79(1):364-379 (2005)(その全体が参照によって本
明細書に援用される)により開示されている。
【0013】
「転写調節エレメント」は、遺伝子転写の調節に関与する遺伝子のヌクレオチド配列を指し、例えば、転写因子が結合することで、RNAポリメラーゼの結合を助け、発現を促進する、プロモーター、並びに応答エレメント、アクチベーターおよびエンハンサー配列、並びに抑制タンパク質が結合することで、RNAポリメラーゼの結合を阻止し、発現を妨げる、オペレーターまたはサイレンサー配列が含まれる。用語「肝臓特異的転写調節エレメント」は、肝組織特異的に遺伝子発現を調節する調節エレメントを指す。肝臓特異的調節エレメントの例としては、限定はされないが、マウスサイレチン(thyretin)プロモーター(mTTR)、内在性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトα1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)およびその活性断片、ヒトアルブミン最小プロモーター、並びにマウスアルブミンプロモーターが挙げられる。Enh1と共に、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6等の、肝臓特異的転写因子結合部位に由来するエンハンサーも考慮される。
【0014】
一実施形態では、本発明のAAVベクターは、14アミノ酸SQ配列によって置換されたBドメインを有する機能的に活性なFVIIIをコードする、すなわち、FVIII SQをコードする核酸を含む。SQ配列は、Ward etal., Blood, 117:798-807, 2011、およびMcIntosh etal., Blood 121:3335-3344, 2013において開示されている。FVI
IIコード領域配列は、コドンを最適化した配列である(Nathwani et al.、2013年1月24日に公開された米国特許出願公開第2013/0024960A1号(その全体が参照によって本明細書に援用される)、およびMcIntosh etal., Blood 121:3335-3344, 2013を参照)。この配列は「UCL SQ FVIII」と本明細書では称される。
【0015】
第1の態様では、本発明のAAVベクターは、図2Aに模式的に示されるProto1を含み、配列番号1に記載される核酸配列を含む。
【0016】
第2の態様では、本発明のAAVベクターは、図2Bに模式的に示されるProto1Sを含み、配列番号2に記載される核酸配列を含む。
【0017】
第3の態様では、本発明のAAVベクターは、図2Cに模式的に示されるProto2Sを含み、配列番号3に記載される核酸配列を含む。
【0018】
第4の態様では、本発明のAAVベクターは、図2Dに模式的に示されるProto3Sを含み、配列番号4に記載される核酸配列を含む。
【0019】
別の実施形態では、本発明のAAVベクターは、SQ配列を含むBドメイン全体、および軽鎖またはCドメインのすぐN末端側に位置するa3ドメインを欠失しているFVIIIをコードする核酸を含む。FVIIIコード領域配列はコドンを最適化した配列である(Nathwani etal.、2013年1月24日に公開された米国特許出願公開第2013/
0024960A1号(その全体が参照によって本明細書に援用される)、およびMcIntosh et al.,Blood 121:3335-3344, 2013を参照)。
【0020】
第1の態様では、本発明のAAVベクターは、図3Aに模式的に示されるProto4を含み、配列番号5に記載される核酸配列を含む。
【0021】
第2の態様では、本発明のAAVベクターは、図3Bに模式的に示されるProto5を含み、配列番号6に記載される核酸配列を含む。
【0022】
第3の態様では、本発明のAAVベクターは、図3Cに模式的に示されるProto6を含み、配列番号7に記載される核酸配列を含む。
【0023】
第4の態様では、本発明のAAVベクターは、図3Dに模式的に示されるProto7を含み、配列番号8に記載される核酸配列を含む。
【0024】
別の実施形態では、本発明のAAVベクターは、AAV2 5’逆方向末端反復(ITR)、肝臓特異的転写調節領域、コドンを最適化した機能的に活性なFVIIIコード領域、所望により一つまたは複数のイントロン、ポリアデニル化配列、およびAAV2 3’ITRを含む核酸を含む。好ましい実施形態では、肝臓特異的転写調節領域は、短縮型ApoEエンハンサー配列、186塩基ヒトα抗トリプシン(hAAT)近位プロモーター(5’非翻訳領域(UTR)の42塩基を含む)、並びに(i)34塩基ヒトApoE/C1エンハンサー、(ii)32塩基ヒトAATプロモーター 遠位X領域および(iii)ヒトAAT近位プロモーターの遠位エレメントの80の追加塩基からなる群から選択される一つまたは複数のエンハンサーを含み;コドンを最適化した機能的に活性なFVIIIコード領域はFVIII SQバリアントをコードする。別の好ましい実施形態では、肝臓特異的転写調節領域は、a1ミクログロブリン・エンハンサー配列および186塩基ヒトα抗トリプシン(AAT)近位プロモーターを含む。
【0025】
第1の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号9に記載される核酸配列を含むコンストラクト100ATGを含む。
【0026】
第2の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号10に記載される核酸配列を含むコンストラクト100ATG bGHポリAを含む。
【0027】
第3の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号11に記載されるコンストラクト100ATG短bGHポリA配列を含む。
【0028】
第4の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号12に記載される核酸配列を含むコンストラクト103ATGを含む。
【0029】
第5の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号13に記載される核酸配列を含むコンストラクト103ATG短bGHポリAを含む。
【0030】
第6の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号14に記載される核酸配列を含むコンストラクト105ATG bGHポリAを含む。
【0031】
第7の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号15に記載される核酸配列を含むコンストラクトDC172ATG FVIIIを含む。
【0032】
第8の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号16に記載される核酸配列を含むコンストラクトDC172ATG FVIII hAATを含む。
【0033】
第9の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号17に記載される核酸配列を含むコンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIIIを含む。
【0034】
第10の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号18に記載される核酸配列を含むコンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIII hAATを含む。
【0035】
第11の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号19に記載される核酸配列を含むコンストラクト2×セルピンA hAAT ATG FVIIIを含む。
【0036】
第12の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号20に記載される核酸配列を含むコンストラクト2×セルピンA hAAT ATG FVIII 2×μ-グロブリン・エンハンサーを含む。
【0037】
第13の態様では、本発明のAAVベクター 配列番号21に記載される核酸配列を含むコンストラクト100ATG 短ポリA 2×μ-グロブリン・エンハンサー。
【0038】
第14の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号22に記載される核酸配列を含むコンストラクト第VIII因子-BMN001を含む。
【0039】
第15の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号23に記載されるコンストラクト第VIII因子-BMN002配列を含む。
【0040】
第16の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号24に記載される核酸配列を含むコンストラクト99を含む。
【0041】
第17の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号25に記載される核酸配列を含むコンストラクト100を含む。
【0042】
第18の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号26に記載される核酸配列を含むコンストラクト100逆配向を含む。
【0043】
第19の態様では、本発明AAVベクター 配列番号27に記載される核酸配列を含むコンストラクト100AT。
【0044】
第20の態様では、本発明のAAVベクター 配列番号28に記載される核酸配列を含むコンストラクト100AT 2×MG。
【0045】
第21の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号29に記載される核酸配列を含むコンストラクト100AT 2×MG bGHポリAを含む。
【0046】
第22の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号30に記載される核酸配列を含むコンストラクト100AT 2×MG(逆)bGHポリAを含む。
【0047】
第23の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号31に記載される核酸配列を含むコンストラクト100 bGHポリAを含む。
【0048】
第24の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号32に記載される核酸配列を含むコンストラクト100~400を含む。
【0049】
第25の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号33に記載される核酸配列を含むコンストラクト101を含む。
【0050】
第26の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号34に記載される核酸配列を含むコンストラクト102配列を含む。
【0051】
第27の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号35に記載される核酸配列を含むコンストラクト103を含む。
【0052】
第29の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号36に記載される核酸配列を含むコンストラクト103逆配向を含む。
【0053】
第30の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号37に記載される核酸配列を含むコンストラクト103ATを含む。
【0054】
第31の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号38に記載される核酸配列を含むコンストラクト103AT 2×MGを含む。
【0055】
第32の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号39に記載される核酸配列を含むコンストラクト103AT 2×MG bGHポリAを含む。
【0056】
第33の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号40に記載される核酸配列を含むコンストラクト103 bGHポリAを含む。
【0057】
第34の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号41に記載される核酸配列を含む核酸を含むコンストラクト104を含む。
【0058】
第35の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号42に記載される核酸配列を含むコンストラクト105を含む。
【0059】
第36の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号43に記載される核酸配列を含むコンストラクト106を含む。
【0060】
第37の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号44に記載される核酸配列を含むコンストラクト106ATを含む。
【0061】
第38の態様では、本発明のAAVベクターは、配列番号45に記載される核酸配列を含むコンストラクト2×セルピンA hAATを含む。
【0062】
さらに他の実施形態では、本発明は、機能的な第VIII因子ポリペプチドをコードするベクターコンストラクトに関し、前記コンストラクトは、一つまたは複数の異なる配向の、上記コンストラクトおよびそれらの組合せの個々の成分のうちの一つまたは複数を含む。本発明は、逆配向の上記コンストラクトにも関する。
【0063】
本発明の一本鎖AAVベクターは、約7.0kb長未満、または6.5kb長未満、または6.4kb長未満、または6.3kb長未満、または6.2kb長未満、または6.0kb長未満、または5.8kb長未満、または5.6kb長未満、または5.5kb長未満、または5.4kb長未満、または5.4kb長未満、または5.2kb長未満または5.0kb長未満である。本発明の一本鎖AAVベクターは、約5.0kb長~約6.5kb長、約4.8kb長~約5.2k長、または4.8kb長~5.3kb長、または約4.9kb長~約5.5kb長、または約4.8kb長~約6.0kb長、または約5.0kb長~6.2kb長または約5.1kb長~約6.3kb長、または約5.2kb長~約6.4kb長、または約5.5kb長~約6.5kb長の範囲である。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、本発明のAAVベクターのいずれかを含む組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を作製する方法を提供する。前記方法は、本発明のAAVベクターのいずれかを形質移入された細胞を培養する段階、および形質移入された細胞の上清から組換えAAVを回収する段階を含む。
【0065】
本発明の細胞は、バキュロウイルスに感染しやすいあらゆる細胞型であり、例えば、High Five、Sf9、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf9、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B1-4、MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5およびAo38等の昆虫細胞が挙げられる。使用される好ましい哺乳類細胞は、HEK293、HeLa、CHO、NS0、SP2/0、PER.C6、Vero、RD、BHK、HT1080、A549、Cos-7、ARPE-19およびMRC-5細胞であり得、例えば、HEK293、HeLa、CHO、NS0、SP2/0、PER.C6、Vero、RD、BHK、HT1080、A549、Cos-7、ARPE-19およびMRC-5細胞等の哺乳類細胞が挙げられる。
【0066】
また本発明は、本発明のAAVベクターのいずれかまたは前述の本発明の方法によって作製されるあらゆるウイルス粒子を含むウイルス粒子を提供する。
【0067】
「AAVウイルス粒子(AAV virion)」または「AAVウイルス粒子(AAV viral particle)」または「AAVベクター粒子」とは、少なくとも1つのAAVカプシドタン
パク質およびキャプシド形成したポリヌクレオチドAAVベクターから構成されるウイルス粒子を指す。前記粒子は、異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳類細胞に送達される予定の導入遺伝子等の、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、通常、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」と称される。従って、このようなベクターはAAVベクター粒子内に含有されることから、AAVベクター粒子の作製には必然的にAAVベクターの作製が含まれる。
【0068】
また本発明は、本発明のAAVベクターのいずれかを含む細胞、およびこれらの本発明の細胞によって産生されるウイルス粒子を提供する。
【0069】
別の実施形態では、本発明は、血友病Aを患う患者を治療する方法を提供し、前記方法は、前記患者に、有効量の本発明のAAVベクターのいずれか、または本発明のウイルス粒子もしくは本発明の方法によって作製されるウイルス粒子を投与することを含む。
【0070】
更なる実施形態では、本発明は、血友病Aの治療用の薬剤を調製するための、本発明のAAVベクターのいずれかの用途を提供する。一つの態様では、前記薬剤は、血友病Aを治療するのに有効な量でヒトFVIIIを発現する、ある量のAAVベクターを含む。
【0071】
別の実施形態では、本発明は、血友病Aの治療のための、本発明のAAVベクターのいずれかを含む組成物を提供する。一つの態様では、前記組成物は、血友病Aを治療するのに有効な量でヒトFVIIIを発現する、ある量のAAVベクターを含む。
【0072】
別の実施形態では、本発明のAAVベクターは、血友病Aを患う患者を治療するのに有用なAAVウイルス粒子を作製するために使用される。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
AAV2 5’逆方向末端反復(ITR)、肝臓特異的な転写調節領域、コドンを最適化した機能的に活性なFVIIIコード領域、所望により一つまたは複数のイントロン、ポリアデニル化配列、およびAAV2 3’ITRを含む核酸を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)第VIII因子(FVIII)ベクター。
(項目2)
核酸が以下から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、項目1に記載のAAV
FVIII ベクター、
i. 配列番号1に記載されるProto1配列、
ii. 配列番号2に記載されるProto1S配列、
iii. 配列番号3に記載されるProto2S配列、
iv. 配列番号4に記載されるProto3S配列、
v. 配列番号5に記載されるProto4配列、
vi. 配列番号6に記載されるProto5配列、
vii. 配列番号7に記載されるProto6配列、
viii. 配列番号8に記載されるProto7配列、
ix. 配列番号9に記載されるコンストラクト100ATG配列、
x. 配列番号10に記載されるコンストラクト100ATG bGHポリA配列、
xi. 配列番号11に記載されるコンストラクト100ATG短bGHポリA配列、
xii. 配列番号12に記載されるコンストラクト103ATG配列、
xiii. 配列番号13に記載されるコンストラクト103ATG短bGHポリA配列、
xiv. 配列番号14に記載されるコンストラクト105ATG bGHポリA配列、xv. 配列番号15に記載されるコンストラクトDC172ATG FVIII配列、xvi. 配列番号16に記載されるコンストラクトDC172ATG FVIII hAAT配列、
xvii. 配列番号17に記載されるコンストラクトDC172 2×HCR ATG
FVIII配列、
xviii. 配列番号18に記載されるコンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIII hAAT配列、
xix. 配列番号19に記載されるコンストラクト2×セルピンA hAAT ATG
FVIII配列、
xx. 配列番号20に記載されるコンストラクト2×セルピンA hAAT ATG FVIII 2×μ-グロブリン・エンハンサー配列、
xxi. 配列番号21に記載されるコンストラクト100ATG 短ポリA 2×μ-グロブリン・エンハンサー配列、
xxii. 配列番号22に記載されるコンストラクト第VIII因子-BMN001配列、
xxiii. 配列番号23に記載されるコンストラクト第VIII因子-BMN002配列、
xxiv. 配列番号24に記載されるコンストラクト99配列、
xxv. 配列番号25に記載されるコンストラクト100配列、
xxvi. 配列番号26に記載されるコンストラクト100逆配向配列、
xxvii. 配列番号27に記載されるコンストラクト100AT配列、
xxviii. 配列番号28に記載されるコンストラクト100AT 2×MG配列、xxix. 配列番号29に記載されるコンストラクト100AT 2×MG ポリA配列、
xxx. 配列番号30に記載されるコンストラクト100AT 2×MG(逆)bGHポリA配列、
xxxi. 配列番号31に記載されるコンストラクト100 bGHポリA配列、
xxxii. 配列番号32に記載されるコンストラクト100~400配列、
xxxiii. 配列番号33に記載されるコンストラクト101配列、
xxxiv. 配列番号34に記載されるコンストラクト102配列、
xxxv. 配列番号35に記載されるコンストラクト103配列、
xxxvi. 配列番号36に記載されるコンストラクト103逆配向配列、
xxxvii. 配列番号37に記載されるコンストラクト103AT配列、
xxxviii. 配列番号38に記載されるコンストラクト103AT 2×MG配列、
xxxix. 配列番号39に記載されるコンストラクト103AT 2×MG ポリA配列、
xl. 配列番号40に記載されるコンストラクト103bGHポリA配列、
xli. 配列番号41に記載されるコンストラクト104配列、
xlii. 配列番号42に記載されるコンストラクト105配列、
xliii. 配列番号43に記載されるコンストラクト106配列、
xliv. 配列番号44に記載されるコンストラクト106AT配列、および
xlv. 配列番号45に記載されるコンストラクト2×セルピンA hAAT配列。
(項目3)
組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を作製する方法であって、
A)項目1または2に記載のAAVベクターを形質移入された細胞を培養し;
B)形質移入された細胞の上清から組換えAAV粒子を回収することを含む、
上記方法。
(項目4)
項目1または2に記載のウイルスベクターを含むウイルス粒子。
(項目5)
項目1または2に記載のウイルスベクターを含む細胞。
(項目6)
患者に有効量の項目1または2に記載のAAV FVIIIベクターを投与することを含む、血友病Aを患う患者を治療する方法。
(項目7)
血友病Aの治療用薬剤を調製するための、項目1または2に記載のAAV FVIIIベクターの用途。
(項目8)
血友病Aの治療用の、項目1または2に記載のAAV FVIIIベクターを含む組成物。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1はUCL SQベクターの模式図を示している。左から右に、UCL SQベクターは、AAV2 5’ITR、野生型AAV2ウイルス配列、34塩基ヒトApoE/C1エンハンサー、32塩基ヒトAATプロモーター遠位X領域、186塩基ヒトAATプロモーター(42塩基の5’UTR配列を含む)、コドンを最適化したヒトFVIII SQ配列(Nathwani etal.、2013年1月24日に公開された米国特許出願公開第2013/0024960A1号(その全体が参照によって本ん明細書に援用される)、およびMcIntosh etal.,Blood 121:3335-3344, 2013を参照)、49塩基合成ポリアデニル化配列、野生型AAV2ウイルス配列、およびAAV2 3’ITRを含む。UCL SQベクターは5081塩基長である。 図2は、Proto1、Proto1S、Proto2SおよびProto3Sベクターの模式図および配列を示している。
図2A】Proto1ベクターの模式図。 UCL SQベクター(図1参照)から開始して、外来性野生型AAV2ウイルス配列を除去し、ヒトAAT 5’UTRとヒトFVIIIコード領域との間の、およびヒトFVIII終止コドンと合成ポリアデニル化配列との間の、制限酵素認識部位に対応する配列を除去した。
図2B】Proto1S ベクターの模式図。Proto1ベクターから開始して、AAV2 5’ITRの3’末端における10塩基および3’ITRの5’末端における10塩基を除去した。
図2C】Proto2Sベクターの模式図。Proto1Sベクターから開始して、ヒトApoE/C1エンハンサーおよびヒトAATプロモーター遠位X領域を、ヒトFVIII配列のエクソン1およびエクソン2の間に挿入された100塩基 合成イントロン内に移動した。矢印で示されるように、ヒトApoE/C1エンハンサーおよびヒトAATプロモーター遠位X領域の配向は、Proto1Sでのそれらの配向と比較して反転している。
図2D】Proto3S ベクターの模式図。Proto2Sから開始して、ヒトAATプロモーター遠位X領域を、逆配向のヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーで置換した。 図3は、Proto4、Proto5、Proto6およびProto7ベクターの模式図を示している。
図3A】Proto4ベクターの模式図。Proto1ベクターから開始して、SQ配列およびa3ドメインを削除した。
図3B】Proto5 ベクターの模式図。Proto4ベクターから開始して、129塩基FVIIIイントロンを、ヒト第VIII因子配列のエクソン1およびエクソン2の間に挿入した。
図3C】Proto6ベクターの模式図。Proto5ベクターから開始して、ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーを、FVIIIイントロン内に順配向で挿入した。
図3D】(D)Proto7ベクターの模式図。Proto5ベクターから開始して、ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーを、FVIIIイントロン内に逆配向で挿入した。 図4A図4KKは、改善されたプロモーター/エンハンサー配列を有するAAV FVIIIベクターの模式図を示している。
図4A】コンストラクト100ATGの模式図。
図4B】コンストラクト100ATG bGHポリAの模式図。
図4C】コンストラクト100ATG短bGHポリAの模式図。
図4D】コンストラクト103ATGの模式図。
図4E】コンストラクト103ATG短bGHポリAの模式図。
図4F】コンストラクト105ATG bGHポリAの模式図。
図4G】コンストラクトDC172ATG FVIIIの模式図。
図4H】コンストラクトDC172ATG FVIII hAATの模式図。
図4I】コンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIIIの模式図。
図4J】コンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIII hAATの模式図。
図4K】コンストラクト2×セルピンA hAAT ATG FVIIIの模式図。
図4L】コンストラクト2×セルピンA hAAT ATG FVIII 2×μグロブリン・エンハンサーの模式図。
図4M】コンストラクト100ATG 短bGHポリA 2×μグロブリン・エンハンサーの模式図。
図4N】コンストラクト第VIII因子-BMN001の模式図。
図4O】コンストラクトFVIII-BMN002の模式図。
図4P】コンストラクト99の模式図。
図4Q】コンストラクト100の模式図。
図4R】コンストラクト100逆配向の模式図。
図4S】コンストラクト100ATの模式図。
図4T】コンストラクト100AT 2×MGの模式図。
図4U】コンストラクト100AT 2×MG bGHポリAの模式図。
図4V】コンストラクト100AT 2×MG(逆) bGHポリAの模式図。
図4W】コンストラクト100 bGHポリA。
図4X】コンストラクト100~400の模式図。
図4Y】コンストラクト101の模式図。
図4Z】コンストラクト102の模式図。
図4AA】コンストラクト103の模式図。
図4BB】コンストラクト103逆配向の模式図。
図4CC】コンストラクト103ATの模式図。
図4DD】コンストラクト103AT 2×MGの模式図。
図4EE】コンストラクト103AT 2×MG bGHポリAの模式図。
図4FF】103sbGHポリAの模式図。
図4GG】コンストラクト104の模式図。
図4HH】コンストラクト105の模式図。
図4II】コンストラクト106の模式図。
図4JJ】コンストラクト106ATの模式図。
図4KK】コンストラクト2×セルピンA hAATの模式図。
図5図5は、Rag2マウスにおけるProtoコンストラクトの評価の結果を示しており、Proto1が野生型と同様にFVIIIを形質導入することを示している。
図6図6は、Proto1、Proto1S、Proto2SおよびProto3Sが、VP1、VP2およびVP3タンパク質(図5)並びにVP1、VP2およびVP3 DNA(図6)を発現することを示している。
図7】同上。
図8図8は、プロモーターコンストラクトの改善がFVIIIの発現を増加させることを示している。
図9】同上。
図10】同上。
【発明を実施するための形態】
【0074】
大容量AAVベクターは5’末端でランダムに切断されており、5’AAV ITRを欠いている。AAVは一本鎖DNAウイルスであり、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかをパッケージングしているため、大容量AAVベクター内のセンス鎖は5’AAV
ITRを欠いており、標的タンパク質をコードする遺伝子の5’末端の一部を欠いている可能性があり、大容量AAVベクター内のアンチセンス鎖は3’ITRを欠いており、標的タンパク質をコードする遺伝子の3’末端の一部を欠いている可能性がある。標的細胞内でのセンスおよびアンチセンス切断型ゲノムのアニーリングによって、大容量AAVベクター感染細胞内で機能的な導入遺伝子が産生される。
【0075】
本発明は、機能的に活性なFVIII、すなわち、完全にパッケージングされたAAV
FVIIIベクターまたは高い発現活性を有するAAV FVIIIベクターをコードするAAVベクターを提供する。本発明のAAV FVIIIベクターは、発現/粒子が改善されており、AAVウイルス生産効率が改善され、精製が簡易化されている。一つまたは複数のイントロンをFVIIIタンパク質コード領域に導入することで、発現が増強される。エンハンサーの数および位置付けを再設定することによっても発現が増強される。
【0076】
UCL SQベクター
UCL SQベクターは、Nathwani et al.、2013年1月24日に公開された米国特許出願公開第2013/0024960A1号(その全体が参照によって本明細書に援用される)、およびMcIntosh etal.,Blood 121:3335-3344, 2013に詳細に記載されて
いるが、このベクターは、大容量、すなわち5.0kb超の、AAVベクターである。図1に示すように、UCL SQベクターは、左から右に、AAV血清型2(AAV2)5’ITR、野生型AAV2ウイルス配列、34塩基ヒトアポリポタンパク質E(ApoE)/C1エンハンサー、32塩基ヒトα抗トリプシン(AAT)プロモーター遠位X領域、186塩基ヒトAATプロモーター(42塩基の5’非翻訳領域(UTR)配列を含む)、Bドメインが14アミノ酸のSQ配列で置換されているコドンを最適化したヒトFVIII配列、49塩基合成ポリアデニル化配列、野生型AAV2ウイルス配列、およびAAV2 3’ITRを含む。UCL SQベクターは5081塩基長である。
【0077】
Nathwani etal.、2013年1月24日に公開された米国特許出願公開第2013/
0024960A1号、およびMcIntosh et al., Blood 121:3335-3344, 2013において示されているように、UCL SQベクターは、機能的に活性なFVIIIをインビトロおよびインビボで発現する。
【0078】
Proto1ベクター、Proto1Sベクター、Proto2SベクターおよびProto3Sベクター
大容量AAVベクターの問題を回避するため、および/またはAAVベクターの発現を増加させるために、本発明は、FVIII SQバリアントをコードする、完全にパッケージングされた、より小型の、すなわち5.0kb未満の、AAVベクターを提供する。Proto1の配列の4970bpヌクレオチド配列は配列番号1に記載される。
【0079】
AAVベクターProto1を作製するために、UCL SQベクターと比較して、機能的に活性なFVIIIの生産に不要と思われる配列を除去した。実施例1に示されるように、AAV2 5’ITRの3’側のAAV2ウイルス配列の53塩基、AAV2 3’ITRの5’側のAAV2ウイルス配列の46塩基、およびコドンを最適化したFVIII SQコード領域に隣接した11塩基を含む、110塩基の外来性DNAを除去した。得られるProto1ベクターは4970塩基長である。設計した際、Proto1ベクターが機能的FVIIIポリペプチドをインビトロまたはインビボで発現可能であるかどうかは不明であった。
【0080】
AAVベクターProto1Sを作製するために、AAV2 5’ITRの3’末端における10塩基、およびAAV32 3’ITRの5’末端における10塩基を、Proto1ベクターから除去した。得られるProto1Sベクターは4950塩基長である。Proto1Sの配列のヌクレオチド配列は配列番号2に記載される。
【0081】
AAVベクターProto2Sを作製するために、合成した100塩基のイントロンを、Proto1Sベクター内のコドンを最適化したFVIII SQ配列のエクソン1およびエクソン2の間に挿入した。34塩基のApoE/C1エンハンサーおよび32塩基のヒトAATプロモーター遠位X領域をヒトAATプロモーターの上流から除去し、合成イントロン内に逆配向(これらのエレメントがヒトAATプロモーターの上流に位置している場合の配向と比較して)に挿入した。得られるProto2Sベクターは4983塩基長である。Proto2Sの配列のヌクレオチド配列は配列番号3に記載される。
【0082】
AAVベクターProto3Sを作製するために、ヒトAATプロモーター遠位X領域をProto2Sベクターから除去し、逆配向の34塩基ApoE/C1エンハンサーの第2コピーで置換した。得られるProto3Sベクターは4984塩基長である。Proto3Sの配列のヌクレオチド配列は配列番号4に記載される。
【0083】
Proto4ベクター、ProtoSベクター、Proto6ベクターおよびProto7ベクター
AAVベクターのサイズを減少させるため、および/またはAAVベクターの発現を増加させるために、本発明は、完全にパッケージングされた、小型の、すなわち5.0kb未満の、Bドメインおよびa3ドメイン欠失FVIIIをコードするAAVベクターも提供する。
【0084】
AAVベクターProto4を作製するために、14アミノ酸SQ配列およびCドメインに隣接して位置するa3ドメインを、Proto1ベクターから除去した。除去されたFVIII配列の合計量は、55アミノ酸または165塩基である。得られるProto4ベクターは4805塩基長である。Proto4の配列のヌクレオチド配列は配列番号5に記載される。
【0085】
AAVベクターProto5を作製するために、129塩基の切断型FVIIIイントロンを、Proto4ベクター内のコドンを最適化したFVIII配列のエクソン1およびエクソン2の間に挿入した。得られるProto5ベクターは4934塩基長である。Proto5の配列のヌクレオチド配列は配列番号6に記載される。
【0086】
AAV Proto6ベクターを作製するために、34塩基のFVIIIイントロンを、Proto5ベクター内の順配向の34塩基 ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーで置換した。得られるProto6ベクターは4934塩基長である。Proto6の配列のヌクレオチド配列は配列番号7に記載される。
【0087】
AAV Proto7ベクターを作製するため、34塩基のFVIIIイントロンを、Proto5ベクター内の逆配向の34塩基 ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーで置換した。得られるProto7ベクターは4934塩基長である。Proto7の配列のヌクレオチド配列は配列番号8に記載される。
【0088】
向上したプロモーター/エンハンサー配列を有する追加のAAV FVIIIベクター
【0089】
Bドメインおよびa3ドメイン欠失FVIIIの発現を増加させるために、強力なプロモーターを有する大容量AAVベクターを作製し、これらのコンストラクトを、改変されたエンハンサー配列および/またはプロモーター配列を伴って作製した。いくつかの実施形態では、AAV FVIIIベクターは、切断型の機能的FVIIIを発現する。これらのコンストラクトは、ApoE HCRもしくはその断片、μ-グロブリン・エンハンサーもしくはその断片、ヒトα1アンチトリプシン・プロモーター(hAAT)もしくはその断片、セルピンAエンハンサーもしくはその断片、LP1プロモーターエンハンサーもしくはその断片、またはマクログロブリン・エンハンサーもしくはその断片等の、一つまたは複数のプロモーター配列およびエンハンサー配列を含む。これらのコンストラクトは、bGHポリA配列または合成ウサギβ-グロビンポリA配列等のポリアデニル化配列を含む。いくつかの実施形態では、前記コンストラクトは、hAATイントロンまたはヒトβ-グロビンイントロン等のイントロンまたはイントロンの断片を含む。
【0090】
コンストラクト100ATGは5511塩基長である。このコンストラクトは配列番号9に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~502はApoE HCRであり、塩基509~726はhAATプロモーターであり、塩基727~910は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基923~5296はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5305~5352は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5367~5511は3’AAV2 ITRである。
【0091】
コンストラクト100ATG bGH ポリAは5688塩基長である。このコンストラクトは配列番号10に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~502はApoE HCRであり、塩基509~726はhAATプロモーターであり、塩基727~910は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基923~5296はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5305~5529はbGHポリAであり、塩基5544~5688は3’AAV2 ITRである。
【0092】
コンストラクト100ATG短bGHポリAは5613塩基長である。このコンストラクトは配列番号11に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~502はApoE HCRであり、塩基509~726はhAATプロモーターであり、塩基727~910は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基923~5296はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5305~5454は短bGHポリAであり、塩基5469~5613は3’AAV2 ITRである。
【0093】
コンストラクト103ATGは5362塩基長である。このコンストラクトは配列番号12に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は4コピーの44bp ApoE反復であり、塩基360~577はhAATプロモーターであり、塩基578~761は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基774~5147はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5156~5203は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5218~5362は3’AAV2 ITRである。
【0094】
コンストラクト103ATG短bGHポリAは5464塩基長である。このコンストラクトは配列番号13に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は4コピーの44bp ApoE反復であり、塩基360~577はhAATプロモーターであり、塩基578~761は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基774~5147はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5156~5305はbGH短ポリAであり、塩基5320~5464は3’AAV2 ITRである。
【0095】
コンストラクト105ATG bGHポリAは6354塩基長である。このコンストラクトは配列番号14に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基173~512は2コピー(2×)の170bpミクログロブリン・エンハンサーであり、塩基519~736はhAATプロモーターであり、塩基737~920は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基933~5306はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5315~5539はbGHポリAであり、塩基5546~6195は2コピー(2×)の325bp ApoE HCRであり、塩基6210~6354は3’AAV2 ITRである。
【0096】
コンストラクトDC172ATG FVIIIは6308塩基長である。このコンストラクトは配列番号15に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~449は2コピー(2×)の145bpマクログロブリン・エンハンサーであり、塩基450~1347は898bp hAATプロモーターであり、塩基1348~1531は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基1544~5917はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5926~6149はbGHポリAであり、塩基6164~6308は3’AAV2 ITRである。
【0097】
コンストラクトDC172ATG FVIII hAATは5635塩基長である。このコンストラクトは配列番号16として記載されており、塩基1~145は5’AAV2
ITRであり、塩基160~449は2コピー(2×)の145bpマクログロブリン・エンハンサーであり、塩基457~674はhAATプロモーターであり、塩基675~858は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基871~5244はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5253~5476はbGHポリAであり、塩基5490~5635は3’AAV2 ITRである。
【0098】
コンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIIIは6962塩基長である。このコンストラクトは配列番号17に記載されており、塩基1~145は5’AAV2
ITRであり、塩基160~807は2コピー(2×)の321bp ApoE HCRであり、塩基814~1103は2コピー(2×)の145bpマクログロブリン・エンハンサーであり、塩基1104~2001は898bp hAATプロモーターであり、塩基2002~2185は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基2198~6571はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基6580~6803はbGHポリAであり、塩基6818~6962は3’AAV2 ITRである。
【0099】
コンストラクトDC172 2×HCR ATG FVIII hAATは6289塩基長である。このコンストラクトは配列番号18に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~807は2コピー(2×)の321bp ApoE HCRであり、塩基814~1103は2コピー(2×)の145bpマクログロブリン・エンハンサーであり、塩基1111~1328はhAATプロモーターであり、塩基1329~1512は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基1525~5898はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5907~6130はbGHポリAであり、塩基6245~6289は3’AAV2 ITRである。
【0100】
コンストラクト2×セルピンA hAAT ATG FVIIIは5430塩基長である。このコンストラクトは配列番号19に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基168~309は2コピー(2×)の71bpセルピンAエンハンサーであり、塩基326~543はhAATプロモーターであり、塩基544~727は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基740~5113はコドン最適化SQ
FVIIIであり、塩基5122~5271は短bGHポリAであり、塩基5286~5430は3’AAV2 ITRである。
【0101】
コンストラクト2×セルピンA hAAT ATG FVIII 2×μ-グロブリン・エンハンサーは5779塩基長である。このコンストラクトは配列番号20に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基168~309は2コピー(2×)の71bpセルピンAエンハンサーであり、塩基326~543はhAATプロモーターであり、塩基544~727は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基740~5113はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5122~5271は短bGHポリAであり、塩基5279~5618は2コピー(2×)の170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基5635~5779は3’AAV2 ITRである。
【0102】
コンストラクト100ATG 短bGHポリA 2×μグロブリン・エンハンサーは5962塩基長である。このコンストラクトは配列番号21に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~502はApoE HCRであり、塩基509~726はhAATプロモーターであり、塩基727~910は改変ヒトβグロビン第2イントロンであり、塩基923~5296はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5305~5454は短bGHポリAであり、塩基5462~5801は2コピー(2×)の170bpミクログロブリン・エンハンサーであり、塩基5818~5962は3’AAV2 ITRである。
【0103】
コンストラクト第VIII因子-BMN001は5919塩基長である。このコンストラクトは配列番号22に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~480はApoE HCRであり、塩基487~884は398bp hAATプロモーターであり、塩基885~1145は切断型hAATイントロンであり、塩基1155~5528はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5537~5760はbGHポリAであり、塩基5775~5919は3’AAV2 ITRである。
【0104】
コンストラクトFVIII-BMN002は5306塩基長である。このコンストラクトは配列番号23に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基175~705はLP1プロモーター/エンハンサーであり、塩基718~5091はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5100~5147は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5162~5306は3’AAV2 ITRである。
【0105】
コンストラクト99は5461塩基長である。このコンストラクトは配列番号24に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~627はApoE HCR/MARであり、塩基634~866はhAATプロモーターであり、塩基873~5246はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5255~5302は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5317~5461は3’AAV2 ITRである。
【0106】
コンストラクト100は5327塩基長である。このコンストラクトは配列番号25に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~493はApoE HCRであり、塩基509~726はhAATプロモーターであり、塩基739~5112はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5121~5168は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5183~5327は3’AAV2 ITRである。
【0107】
コンストラクト100逆配向は5309塩基長である。このコンストラクトは配列番号26に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~484は逆配向のApoE HCRであり、塩基491~708はhAATプロモーターであり、塩基721~5094はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5103~5150は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5165~5309は3’AAV2 ITRである。
【0108】
コンストラクト100ATは5532塩基長である。このコンストラクトは配列番号27に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~493はApoE HCRであり、塩基509~726はhAATプロモーターであり、塩基727~931はhAATイントロンであり、塩基944~5317はコドン最適化SQ
FVIIIであり、塩基5326~5373は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5388~5532は3’AAV2 ITRである。
【0109】
コンストラクト100AT 2×MGは5877塩基長である。このコンストラクトは配列番号28に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~493はApoE HCRであり、塩基508~847は2コピー(2×)の170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基854~1071はhAATプロモーターであり、塩基1072~1276はhAATイントロンであり、塩基1289~5662はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5671~5718は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5733~5877は3’AAV2 ITRである。
【0110】
コンストラクト100AT 2×MG bGHポリAは6054塩基長である。このコンストラクトは配列番号29に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~493はApoE HCRであり、塩基508~847は2コピー(2×)の170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基854~1071はhAATプロモーターであり、塩基1072~1276はhAATイントロンであり、塩基1289~5662はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5671~5895はbGHポリAであり、塩基5910~6054は3’AAV2 ITRである。
【0111】
コンストラクト100AT 2×MG(逆) bGHポリAは6054塩基長である。このコンストラクトは配列番号30に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~493はApoE HCRであり、塩基508~847は2コピー(2×)の逆配向170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基854~1071はhAATプロモーターであり、塩基1072~1276はhAATイントロンであり、塩基1289~5662はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5671~5895はbGHポリAであり、塩基5910~6054は3’AAV2 ITRである。
【0112】
コンストラクト100bGHポリAは5504塩基長である。このコンストラクトは配列番号31に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~493はApoE HCRであり、塩基509~726はhAATプロモーターであり、塩基739~5112はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基対5121~5345はbGHポリAであり、塩基5360~5504は3’AAV2 ITRである。
【0113】
コンストラクト100~400は5507塩基長である。このコンストラクトは配列番号32に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~493はApoE HCRであり、塩基512~906は398bp hAATプロモーターであり、塩基919~5292はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5301~5348は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5363~5507は3’AAV2 ITRである。
【0114】
コンストラクト101は5311塩基長である。このコンストラクトは配列番号33に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基170~477は2コピー(2×)の154bp ApoE HCRであり、塩基493~710はhAATプロモーターであり、塩基723~5096はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5105~5152は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5167~5311は3’AAV2 ITRである。
【0115】
コンストラクト102は5156塩基長である。このコンストラクトは配列番号34に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~322は154bp ApoE HCRであり、塩基338~555はhAATプロモーターであり、塩基568~4941はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基4950~4997は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5012~5156は3’AAV2 ITRである。
【0116】
コンストラクト103は5178塩基長である。このコンストラクトは配列番号35に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は4コピー(4x)の44bp ApoE HCRであり、塩基360~577はhAATプロモーターであり、塩基590~4963はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基4972~5019は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5034~5178は3’AAV2 ITRである。
【0117】
コンストラクト103逆配向は5160塩基長である。このコンストラクトは配列番号36に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~335は4コピー(4x)の逆配向44bp ApoE HCRであり、塩基342~559はhAATプロモーターであり、塩基572~4945はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基4954~5001は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5016~5160は3’AAV2 ITRである。
【0118】
コンストラクト103ATは5383塩基長である。このコンストラクトは配列番号37に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は4コピー(4x)の44bp ApoE HCRであり、塩基360~577はhAATプロモーターであり、塩基578~782はhAATイントロンであり、塩基795~4374はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5177~5224は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5239~5383は3’AAV2 ITRである。
【0119】
コンストラクト103AT 2×MGは5728塩基長である。このコンストラクトは配列番号38に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は4コピー(4x)の44bp ApoE HCRであり、塩基359~698は2コピー(2×)の170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基705~922はhAATプロモーターであり、塩基923~1127はhAATイントロンであり、塩基1140~5513はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5522~5569は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5584~5728は3’AAV2
ITRである。
【0120】
コンストラクト103AT 2×MG bGHポリAは5905塩基長である。このコンストラクトは配列番号39に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は4コピー(4x)の44bp ApoE HCRであり、塩基359~698は2コピー(2×)の170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基705~922はhAATプロモーターであり、塩基923~1127はhAATイントロンであり、塩基1140~5513はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5522~5746は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5761~5905は5’AAV2 ITRである。
【0121】
コンストラクト103 bGHポリAは5355塩基長である。このコンストラクトは配列番号40に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~344は4コピー(4x)の44bp ApoE HCRであり、塩基360~577はhAATプロモーターであり、塩基590~4963はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基4972~5196は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5211~5355は3’AAV2 ITRである。
【0122】
コンストラクト104は5618塩基長である。このコンストラクトは配列番号41に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基169~784は4コピー(4x)の154bp ApoE HCRであり、塩基800~1017はhAATプロモーターであり、塩基1030~5403はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5412~5459は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5474~5618は3’AAV2 ITRである。
【0123】
コンストラクト105は5993塩基長である。このコンストラクトは配列番号42に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基173~512は2コピー(2×)の170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基519~736はhAATプロモーターであり、塩基749~5122はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5131~5178は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5185~5834は2コピー(2×)のApoE HCRであり、塩基5849~5993は3’AAV2 ITRである。
【0124】
コンストラクト106は5337塩基長である。このコンストラクトは配列番号43に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基173~512は2コピー(2×)の170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基519~736はhAATプロモーターであり、塩基749~5122はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5131~5178は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5193~5337は3’AAV2 ITRである。
【0125】
コンストラクト106ATは5542塩基長である。このコンストラクトは配列番号44に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基173~512は2コピー(2×)の170bp μグロブリン・エンハンサーであり、塩基519~736はhAATプロモーターであり、塩基737~941はhAATイントロンであり、塩基954~5327はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基5336~5383は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基5398~5542は3’AAV2 ITRである。
【0126】
コンストラクト2×セルピンA hAATは5126塩基である。このコンストラクトは配列番号45に記載されており、塩基1~145は5’AAV2 ITRであり、塩基160~301はApoE HCRであり、塩基308~525はhAATプロモーターであり、塩基538~4911はコドン最適化SQ FVIIIであり、塩基4920~4967は合成ウサギβグロビンポリAであり、塩基4982~5126は3’AAV2
ITRである。
【0127】
AAVベクター
本明細書で使用される場合、用語「AAV」は、アデノ随伴ウイルスの一般的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、ある特定の機能が同時感染しているヘルパーウイルスによって与えられる、細胞内でのみ増殖する一本鎖DNAパルボウイルスである。現在、以下の表1に示される通り、特徴付けられているAAVの血清型は13種存在する。AAVの概説および総説は、例えば、Carter,1989, Handbook of Parvoviruses, Vol. 1, pp. 169-228、およびBerns,1990,Virology, pp.1743-1764, Raven Press, (New York)に見
出すことができる。しかし、種々の血清型は、遺伝子レベルにおいてでさえ、構造的に且つ機能的に、極めて密接に関連していることがよく知られているため、これらの同一の原理が追加のAAV血清型に適用可能であることは十分に予想できる。(例えば、Blacklowe,1988,pp.165-174 of Parvoviruses and Human Disease, J. R. Pattison, ed.
およびRose,Comprehensive Virology 3:1-61(1974)を参照)。例えば、全てのAAV
血清型は、一見、相同rep遺伝子によってもたらされるとてもよく似た複製特性を示し、全て、AAV6において発現されるもの等の3つの関連カプシドタンパク質を有している。関連性の度合いは、ゲノムの長さに沿った血清型間の広範なクロスハイブリダイゼーション;および「逆方向末端反復配列」(ITR)に相当する終端における類似のセルフアニーリングセグメントの存在を明らかにする、ヘテロ二本鎖解析によってさらに示される。類似の感染性パターンは、それぞれの血清型における複製機能が同様の調節管理下にあることも示す。
【0128】
「AAVベクター」は、本明細書で使用される場合、AAV末端反復配列(ITR)に挟まれた一つまたは複数の目的のポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を含むベクターを指す。このようなAAVベクターは、repおよびcap遺伝子産物をコードおよび発現するベクターを形質移入された宿主細胞内に存在する場合に、複製および感染性ウイルス粒子内へのパッケージングが可能である。
【0129】
「AAVウイルス粒子(AAV virion)」または「AAVウイルス粒子(AAV viral particle)」または「AAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパ
ク質およびキャプシド形成したポリヌクレオチドAAVベクターから構成されるウイルス粒子を指す。前記粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳類細胞に送達される予定の導入遺伝子等の、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、通常、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」と称される。従って、このようなベクターはAAVベクター粒子内に含有されることから、AAVベクター粒子の作製には必然的にAAVベクターの作製が含まれる。
【0130】
AAVの「rep」遺伝子および「cap」遺伝子は、それぞれ複製タンパク質およびキャプシド形成タンパク質をコードする遺伝子である。AAVのrep遺伝子およびcap遺伝子は、現在までに調べられた全てのAAV血清型において見出されており、本明細書および引用した参考文献に記載されている。野生型AAVでは、rep遺伝子およびcap遺伝子は通常、ウイルスゲノム内で互いに隣接して見出され(すなわち、これらは隣接または重複する転写単位として共に「連結」している)、これらは通常、AAV血清型の間で保存されている。また、AAVのrep遺伝子およびcap遺伝子は、個々に、および集合的に、「AAVパッケージング遺伝子」とも称される。本明細書におけるAAV
cap遺伝子は、repおよびadenoのヘルパー機能の存在下でAAVベクターをパッケージングすることが可能であり、標的細胞受容体と結合することが可能な、Capタンパク質をコードしている。いくつかの実施形態では、AAV cap遺伝子は、特定のAAV血清型(例えば表1に示される血清型)に由来するアミノ酸配列を有するカプシドタンパク質をコードしている。
【表1】
【0131】
AAVの作製に使用されるAAV配列は、いかなるAAV血清型のゲノムに由来していてもよい。通常、AAV血清型は、アミノ酸レベルおよび核酸レベルで有意に相同的なゲノム配列を有し、同様の一連の遺伝的機能を与え、本質的に物理的且つ機能的に等価なウイルス粒子を生成し、ほぼ同一の機構により複製および構築する。AAV血清型のゲノム配列およびゲノム類似性の考察については、例えば、GenBankアクセッション番号U89790;GenBankアクセッション番号J01901;GenBankアクセッション番号AF043303;GenBankアクセッション番号AF085716;Chlorini etal.,J. Vir. 71: 6823-33(1997); Srivastava et al., J.Vir. 45:555-6
4 (1983);Chlorini et al., J. Vir. 73:1309-1319 (1999); Rutledge et al., J. Vi
r. 72:309-319(1998);およびWu et al., J. Vir. 74: 8635-47 (2000)を参照されたい
【0132】
知られている全てのAAV血清型のゲノム構築は非常に似ている。AAVのゲノムは、約5,000ヌクレオチド(nt)長未満の直鎖状一本鎖DNA分子である。逆方向末端反復(ITR)は、構造に関係しない複製(Rep)タンパク質および構造(VP)タンパク質のユニークな翻訳領域クレオチド配列と隣接している。VPタンパク質はカプシドを形成する。末端の145ntは自己相補的であり、T字形ヘアピンを形成するエネルギー的に安定な分子内二本鎖が形成され得るように構築されている。これらのヘアピン構造は、ウイルスDNA複製の開始点として機能し、細胞性DNAポリメラーゼ複合体のプライマーとして働く。Rep遺伝子は、Repタンパク質、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40をコードしている。Rep78およびRep68はp5プロモーターから転写され、Rep52およびRep40はp19プロモーターから転写される。cap遺伝子は、VPタンパク質、VP1、VP2、およびVP3をコードしている。cap遺伝子はp40プロモーターから転写される。
【0133】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列は、Sf9細胞またはHEK細胞等の特定の細胞型における発現のための発現制御配列に機能的に連結している。昆虫宿主細胞または哺乳類宿主細胞において外来遺伝子を発現するための、当業者に公知の手法が、本発明を実施するために使用され得る。昆虫細胞においてのポリペプチドの分子エンジニアリングおよび発現のための方法論は、例えば、Summers and Smith.1986. A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Culture Procedures,Texas Agricultural Experimental Station Bull.No.7555, Col
lege Station,Tex.; Luckow. 1991. In Prokop et al., Cloning and Expression
of Heterologous Genes in Insect Cells with Baculovirus Vectors'Recombinant DNA Technology and Applications,97-152;King, L. A. 及び R. D.Possee,
1992, The baculovirus expression system,Chapman and Hall, UnitedKingdom; O
'Reilly, D. R.,L. K. Miller, V. A. Luckow, 1992, Baculovirus Expression Vecto
rs: A Laboratory Manual,New York; W.H. Freeman 及び Richardson,C. D., 1995, B
aculovirus Expression Protocols,Methods in Molecular Biology,volume 39;
米国特許第4,745,051号;米国特許出願公開第2003148506号;および国際公開第03/074714号、に記載されている。AAVカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写に特に適したプロモーターは、例えば、多角体(polyhedron)プロモーターである。しかし、昆虫細胞において活性な他のプロモーター、例えば、p10、p35またはIE-1プロモーターが当該技術分野において知られており、上記の参考文献に記載されるさらなるプロモーターも考慮される。
【0134】
異種タンパク質の発現のための昆虫細胞の使用は文書により十分に裏付けられており、例えば、核酸、例えばベクター、例えば昆虫細胞適合ベクターをそのような細胞に導入する方法、およびそのような細胞を培養液中で維持する方法等である。例えば、METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,ed.Richard, Humana Press, NJ (1995);O'Reilly et al., B
ACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS,A LABORATORY MANUAL, OxfordUniv. Press (1994)
; Samulski etal., J. Vir. 63:3822-8 (1989); Kajigaya et al.,Proc. Nat'l. Acad
. Sci. USA 88:4646-50 (1991); Ruffing et al., J. Vir.66:6922-30 (1992); Kirnb
auer et al.,Vir. 219:37-44 (1996); Zhao et al., Vir.272:382-93 (2000);およびS
amulski et al.、米国特許第6,204,059号を参照されたい。いくつかの実施形
態では、昆虫細胞におけるAAVをコードする核酸構築体は、昆虫細胞適合ベクターである。「昆虫細胞適合ベクター」または「ベクター」は、本明細書で使用される場合、昆虫または昆虫細胞の増殖性形質転換またはトランスフェクションが可能である核酸分子を指す。例示的な生物学的ベクターには、プラスミド、直鎖状核酸分子、および組換えウイルスが含まれる。昆虫細胞適合性であればいかなるベクターも使用可能である。前記ベクターは昆虫細胞ゲノム内に組み込まれ得るが、前記ベクターの昆虫細胞内での存在は永続的である必要はなく、一過性のエピソーム性ベクターも含まれる。前記ベクターは、あらゆる既知の手段によって、例えば、細胞の化学的処理、エレクトロポレーション、または感染によって、導入され得る。いくつかの実施形態では、前記ベクターは、バキュロウイルス、ウイルスベクター、またはプラスミドである。より好ましい実施形態では、前記ベクターはバキュロウイルスであり、すなわち、コンストラクトがバキュロウイルスベクターである。バキュロウイルスベクターおよびそれらの使用法は、昆虫細胞の分子工学に関する上記の引用文献に記載されている。
【0135】
バキュロウイルスは、節足動物の、エンベロープを有するDNAウイルスであり、そのうちの2つのメンバーは、細胞培養液中で組換えタンパク質を生産するための周知の発現ベクターである。バキュロウイルスは、巨大なゲノム内容物の特定の細胞への送達を可能にするように操作可能である、環状の二本鎖ゲノム(80~200kbp)を有している。ベクターとして使用されるウイルスは、通常、オートグラファ・カリフォルニカ多カプシド核多核体病ウイルス(Autographa californica multicapsid nucleo polyhedrovirus:AcMNPV)またはカイコ(Bombyxmori(Bm)NPV)(Kato etal.,2010
)である。
【0136】
バキュロウイルスは通常、組換えタンパク質の発現のための、昆虫細胞の感染に使用される。具体的には、昆虫における異種遺伝子の発現は、例えば、米国特許第4,745,051号;Friesen etal(1986);欧州特許第127,839号;同第155,476
号;Vlak etal (1988);Miller et al (1988); Carbonell et al (1988); Maeda et
al(1985);Lebacq-Verheyden et al (1988); Smith et al (1985); Miyajima et al (
1987);およびMartin etal (1988)に記載されるように達成することができる。タンパク
質生産に使用することができる多数のバキュロウイルス株および変異体並びに対応する許容的昆虫宿主細胞が、Luckow et al (1988), Miller etal (1986); Maeda et al (1985)およびMcKenna(1989)に記載されている。
【0137】
組換えAAVの作製法
本開示は、昆虫細胞または哺乳類細胞において組換えAAVを作製するための材料および方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記ウイルスコンストラクトは、一つまたは複数の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの挿入を可能にするための、プロモーターおよび前記プロモーターの下流の制限酵素認識部位をさらに含み、前記プロモーターおよび前記制限酵素認識部位は、5’AAV ITRの下流および3’AAV ITRの上流に位置する。いくつかの実施形態では、前記ウイルスコンストラクトは、制限酵素認識部位の下流および3’AAV ITRの上流の転写後調節エレメントをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記ウイルスコンストラクトは、制限酵素認識部位に挿入され、プロモーターと機能的に連結されたポリヌクレオチドをさらに含み、前記ポリヌクレオチドは目的タンパク質のコード領域を含む。当業者に理解されるように、本出願で開示されるAAVベクターのいずれか1つが、組換えAAVを作製するためのウイルスコンストラクトとして前記方法において使用可能である。
【0138】
いくつかの実施形態では、前記ヘルパー機能は、アデノウイルスまたはバキュロウイルスのヘルパー遺伝子を含む一つまたは複数のヘルパープラスミドまたはヘルパーウイルスによって与えられる。アデノウイルスまたはバキュロウイルスのヘルパー遺伝子の非限定例としては、限定はされないが、E1A、E1B、E2A、E4およびVAが挙げられ、これらは、AAVパッケージングにヘルパー機能を与え得る。
【0139】
AAVのヘルパーウイルスは、当該技術分野において公知であり、例えば、アデノウイルス科およびヘルペスウイルス科に由来するウイルスが含まれる。AAVのヘルパーウイルスの例としては、限定はされないが、米国特許出願公開第20110201088号(この米国特許出願公開の開示は参照によって本明細書に援用される)に記載されるSAdV-13ヘルパーウイルスおよびSAdV-13様ヘルパーウイルス、ヘルパーベクターpHELP(アプライド・ビロミクス社(Applied Viromics))が挙げられる。適切な
ヘルパー機能をAAVに与え得るAAVのいかなるヘルパーウイルスまたはヘルパープラスミドも本明細書で使用可能であることは、当業者に理解される。
【0140】
いくつかの実施形態では、AAV cap遺伝子はプラスミド内に存在する。前記プラスミドはAAV rep遺伝子をさらに含む。いかなるAAV血清型(例えば、限定はされないが、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13およびそのあらゆるバリアント)に由来するcap遺伝子および/またはrep遺伝子も、組換えAAVを作製するために本明細書で使用することができる。いくつかの実施形態では、AAV cap遺伝子は、血清型1、血清型2、血清型4、血清型5、血清型6、血清型7、血清型8、血清型9、血清型10、血清型11、血清型12、血清型13またはそのバリアントに由来するカプシドをコードする。
【0141】
いくつかの実施形態では、昆虫細胞または哺乳類細胞が、ヘルパープラスミドまたはヘルパーウイルス、AAV cap遺伝子をコードするウイルスコンストラクトおよびプラスミドを形質移入され得;同時形質移入後に前記組換えAAVウイルスが種々の時点において収集され得る。例えば、組換えAAVウイルスは、同時形質移入の約12時間後、約24時間後、約36時間後、約48時間後、約72時間後、約96時間後、約120時間後、またはこれらいずれか2つの時点の間の時間後に、収集され得る。
【0142】
また組換えAAVは、感染性組換えAAVを作製するのに適切な、当該技術分野において公知のいかなる常法を用いても作製することができる。いくつかの例では、組換えAAVは、AAV粒子生産に必要な成分のいくつかを安定に発現する昆虫細胞または哺乳類細胞を用いることによって作製され得る。例えば、AAV rep遺伝子およびAAV cap遺伝子、並びにネオマイシン耐性遺伝子等の選択マーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)が、前記細胞のゲノム内に組み込まれ得る。前記昆虫細胞または哺乳類細胞は次に、ヘルパーウイルス(例えば、ヘルパー機能を与えるアデノウイルスまたはバキュロウイルス)、並びに5’AAV ITRおよび3’AAV ITR(および、所望であれば、異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列)を含むウイルスベクターに同時感染され得る。この方法の利点は、細胞が選択可能であること、および組換えAAVの大量生産に適していることである。別の非限定例として、プラスミドではなく、アデノウイルスまたはバキュロウイルスが、rep遺伝子およびcap遺伝子をパッケージング細胞に導入するために使用され得る。さらに別の非限定例として、5’および3’AAV
LTR並びにrep-cap遺伝子を含有するウイルスベクターの両方が産生細胞のDNAに安定に組み込まれ得、組換えAAVを生産するためにヘルパー機能が野生型アデノウイルスによって与えられ得る。
【0143】
AAV生産で使用される細胞型
本発明のAAVベクターを含むウイルス粒子は、AAVまたは生物学的生成物(biologic product)の生産を可能にし、培養液中で維持することができる、いかなる無脊椎動
物細胞型を用いてもレドキュー(redocued)することができる。例えば、使用される昆虫細胞株は、ヨトウガ(Spodopterafrugiperda)由来の細胞、例えば、SF9、SF21、SF900+、ショウジョウバエ細胞株、蚊細胞株、例えば、ヒトスジシマカ(Aedesalbopictus)由来細胞株、家蚕細胞株、例えばカイコガ(Bombyxmori)細胞株、イラクサギ
ンウワバ(Trichoplusia ni)細胞株、例えば、High Five細胞または鱗翅目細胞株、例えば、アスカラパ・オドラタ(Ascalaphaodorata)細胞株であり得る。好ましい昆虫細胞は、High Five、Sf9、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf9、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B1-4、MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5およびAo38を含む、バキュロウイルスに感染し易い昆虫種由来の細胞である。
【0144】
バキュロウイルスは、節足動物の、エンベロープを有するDNAウイルスであり、そのうちの2つのメンバーは細胞培養液中で組換えタンパク質を生産するための周知の発現ベクターである。バキュロウイルスは、特定の細胞への巨大なゲノム内容物の送達を可能にするように操作することができる、環状二本鎖ゲノム(80~200kbp)を有する。ベクターとして使用されるウイルスは、一般的には、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)多カプシド核多核体病ウイルス(AcMNPV)またはカイ
コ(Bombyx mori)(Bm NPV)(Kato etal., 2010)である。
【0145】
バキュロウイルスは、一般的に、組換えタンパク質の発現のための昆虫細胞の感染に使用される。具体的には、昆虫における異種遺伝子の発現は、例えば、米国特許第4,745,051号;Friesen etal(1986);欧州特許第127,839号;同第155,4
76号;Vlak etal(1988);Miller et al (1988);Carbonell et al (1988);Maeda et
al(1985);Lebacq-Verheyden etal (1988);Smith et al (1985);Miyajima et al (19
87);およびMartin etal (1988)に記載されるように達成され得る。タンパク質生産に使
用することができる多数のバキュロウイルス株および変異体並びに対応する許容的昆虫宿主細胞が、Luckow etal (1988), Miller et al(1986); Maeda et al (1985)およびM
cKenna (1989)に記載されている。
【0146】
本発明の別の態様では、本発明の方法はまた、AAVの複製または生物学的産物の生産を可能にし、培養液中で維持可能な、あらゆる哺乳類細胞型を用いて実行される。使用される好ましい哺乳類細胞は、HEK293、HeLa、CHO、NS0、SP2/0、PER.C6、Vero、RD、BHK、HT1080、A549、Cos-7、ARPE-19およびMRC-5細胞であり得る。
【0147】
AAV FVIIIベクターの試験
本発明の完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクターを試験するためのアッセイは、例えば、(1)ヒト肝臓由来の細胞株であるHepG2細胞におけるAAVベクター核酸を含む二本鎖DNAプラスミドの一過性導入による、肝臓特異的なmRNA発現およびスプライシング、並びにFVIIIタンパク質の産生および分泌のインビトロにおけるチェック;(2)293細胞およびバキュロウイルス感染昆虫細胞におけるAAV
FVIIIベクターを含むAAVウイルス粒子の生産;(3)アルカリ性ゲル解析および複製アッセイによるAAVベクター核酸の評価;並びに(4)Rag2マウスにおけるFVIII発現、FVIII活性、およびFVIII比活性の評価を含む。これらのアッセイは、実施例に詳細に記載される。
【0148】
本発明の完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクターは、UCL SQベクターと少なくとも同一の発現および/または活性を示し、UCL SQベクターと比較して1.5倍、2倍、3倍、4倍、または5倍またはそれより多い発現および/または活性を示すことが好ましい。
【0149】
本発明の完全にパッケージングされたAAV FVIIIベクターは、断片ゲノムの混入がほとんどまたは全く無い高いベクター収率を有し、UCL SQベクターと比較して1.5倍、2倍、3倍、4倍、または5倍より高いベクター収率を有することが好ましい。
【0150】
本発明の他の態様および利点は、以下の実例を考慮することにより理解される。
【実施例0151】
実施例1
Proto1、Proto1S、Proto2SおよびProto3Sベクターの作製
UCL SQベクターは、Nathwani et al.、2013年1月24日に公開された米国特許出願公開第2013/0024960A1号(その全体が参照によって本ん明細書に援用される)、およびMcIntosh etal., Blood 121:3335-3344, 2013に詳細に記載されており、大容量、すなわち、5.0kb超のAAVベクターである。図1に示すように、UCL SQベクターは、左から右に、AAV血清型2(AAV2)5’ITR、野生型AAV2ウイルス配列、34塩基ヒトアポリポタンパク質E(ApoE)/C1エンハンサー、32塩基ヒトα抗トリプシン(AAT)プロモーター遠位X領域、186塩基ヒトAATプロモーター(42塩基の5’非翻訳領域(UTR)配列を含む)、Bドメインが14アミノ酸のSQ配列で置換されているコドンを最適化したヒトFVIII配列、49塩基合成ポリアデニル化配列、野生型AAV2ウイルス配列、およびAAV2 3’ITRを含む。UCL SQベクターは5081塩基長である。
【0152】
UCL SQベクターよりも小型のベクターを得るために、本発明者らがFVIIIの発現および/もしくは活性、またはAAVウイルス粒子生産に不要と考えるDNA配列を、UCL SQベクター配列から除去した。AAV2 5’ITRの3’側のAAV2ウイルス配列の53塩基、AAV2 3’ITRの5’側のAAV2ウイルス配列の46塩基、およびコドンを最適化したFVIII SQコード領域に隣接した11塩基を含む、外来性DNA配列を除去した。4970塩基長の得られるProto1ベクターは図2Aに模式図で示され、この配列は配列番号1に記載される。Proto1は、感染性ウイルスを生産し、機能的な第VIII因子ポリペプチドをコードする。
【0153】
AAV2 ITR内のヘアピンループに隣接する配列も、組換えAAVベクターにおいて不要であり得る(Srivastava etal.、米国特許第6,521,225号;Wang eta
l., J.Virol.70:1668-1677, 1996;およびWang et al., J. Virol. 71:3077-3082, 1997
参照)。Proto1ベクターのサイズをさらに減少させるため、AAV2 5’ITR内のヘアピンループの3’側に隣接したAAV2配列の10塩基を除去し、AAV2 3’ITR内のヘアピンループの5’側に隣接したAAV2配列の10塩基を除去した。4950塩基長の得られるProto1Sベクターは、図2Bに模式図で示され、この配列は配列番号2に記載される。
【0154】
Proto1Sベクター内のFVIII SQバリアントの発現を増加させる試みにおいて、100塩基の合成イントロンを、コドンを最適化したFVIII配列内のエクソン1およびエクソン2の間に挿入した。イントロンの挿入は、例えばインターフェロン遺伝子等のイントロンを含まない遺伝子における、mRNA発現のレベルを増加させ得ることが知られている。
【0155】
エンハンサーは、距離および配向に非依存的に働くと定義される。34塩基ApoE/C1エンハンサーは、Gray et al.、米国特許第8,030,065号(FIX発現)およびNathwani etal.、米国特許出願公開第2013/0024960号(FVIII発
現)(共に、それらの全体が参照によって本発明に援用される)における、その推定的なエンハンサー活性によって例証されるように、FVIII発現に関して距離および配向非依存的に働く。DiSimone etal.,EMBO J. 6:2759-2766, 1987に記載される32塩基 ヒトAATプロモーター遠位X領域は、異種プロモーターの発現を増強する制御ドメイン内に位置する。
【0156】
Proto1Sベクター内のFVIII SQバリアントの発現をさらに増加させるための別の試みにおいて、合成イントロン配列は、34塩基 ヒトApoE/C1エンハンサーおよび32塩基 ヒトAATプロモーター遠位X領域を組み入れ、ヒトAATプロモーターの上流のその位置から移動された。これら2つの調節エレメントを、Proto1Sにおけるそれらの配向に対し逆配向に挿入した。4983塩基長の得られるProto2Sベクターは、図2Cに模式図で示され、配列は配列番号3に記載される。
【0157】
ヒトAATプロモーター遠位X領域は、イントロン内の転写開始点から下流で機能することが以前に示されていなかったため、Proto2S ベクター内のこの調節エレメントを、イントロン内のエンハンサーの第1コピーと同じ配向の、34塩基 ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーと置換した。4985塩基長の得られるProto3Sベクターは、図2Dに模式図で示され、この配列は配列番号4に記載される。
【0158】
Proto1、Proto1S、Proto2SおよびProto3Sベクター核酸を、pUC19細菌発現プラスミド内にクローニングすることによって、二本鎖形態のAAV FVIIIベクターを作製した。
【0159】
実施例2
Proto4、Proto5、Proto6およびProto7ベクターの作製
Proto1ベクターのサイズをさらに減少させるため、および/またはProto1ベクターと比較したFVIIIの発現を増加させるため、軽鎖またはCドメインに隣接して位置するa3ドメインを除去した。a3ドメインは、フォンウィルブランド因子(von
Willenbrand Factor)への結合に関与するが、インビボにおける機能的に活性なFV
IIIには不要であり得る。
【0160】
Proto1ベクターから開始して、14アミノ酸のSQ配列および41アミノ酸のa3ドメイン(野生型FVIIIのアミノ酸1649~1689に対応)を除去した。4805塩基長の得られるProto4ベクターは、図3Aに模式図で示され、この配列は配列番号5に記載される。
【0161】
Bドメインおよびa3ドメイン欠失FVIIIの発現を増加させる試みにおいて、129塩基の切断型FVIIIイントロンを、Proto4ベクター内のコドンを最適化したFVIII配列内のエクソン1およびエクソン2の間に挿入した。4934塩基長の得られるProto5ベクターは、図3Bに模式図で示され、この配列は配列番号6に記載される。
【0162】
Bドメインおよびa3ドメイン欠失FVIIIの発現をさらに増加させる試みにおいて、34塩基 ヒトApoE/C1エンハンサーの第2コピーを、Proto5ベクター内に、順配向または逆配向に挿入した。4934塩基長であり、イントロンの順配向ApoE/C1エンハンサーを有する得られるProto6ベクターは、図3Cに模式図で示され、この配列は配列番号7に記載される。
【0163】
4934塩基長であり、イントロンの逆配向ApoE/C1エンハンサーを有する得られるProto7ベクターは、図3Dに模式図で示され、この配列は配列番号8に記載される。
【0164】
Proto4、Proto5、Proto6およびProto7ベクター核酸をpUC19細菌発現プラスミド内にクローニングすることによって、二本鎖形態のAAV FVIIIベクターを作製した。
【0165】
実施例3
AAV FVIIIベクターの発現および活性を試験するためのアッセイ
本発明のAAV FVIIIベクターを試験するためのアッセイは、例えば、(1)ヒト肝臓由来の細胞株であるHepG2細胞におけるAAVベクター核酸を含む二本鎖DNAプラスミドの一過性導入による、肝臓特異的なmRNA発現およびスプライシング、並びにFVIIIタンパク質の産生および分泌のインビトロにおけるチェック;(2)293細胞およびバキュロウイルス感染昆虫細胞におけるAAV FVIIIベクターを含むAAVウイルス粒子の生産;(3)アルカリ性ゲル解析および複製アッセイによるAAVベクター核酸の評価;並びに(4)Rag2マウスにおけるFVIII発現、FVIII活性、およびFVIII比活性の評価を含む。
【0166】
一過性導入アッセイ
予備的なインビトロアッセイが行われ、本発明のAAV FVIIIベクターからのFVIIIの発現および活性が、UCL SQベクターからのFVIIIの発現および活性と比較される。本発明のAAV FVIIIベクターの二本鎖形態が、ヒト肝細胞株であるHepG2に一過性導入される。トランスフェクションの後、例えば、24または48時間後、培養上清中のFVIIIの抗原および活性が測定される。
【0167】
このアッセイを用いた場合、Proto1、Proto1SおよびProto2Sベクターを一過的導入されたHepG2細胞におけるFVIII活性は、UCL SQベクターを用いて得られたFVIII活性と同様であり、このことは、Proto1、Proto1SおよびProto2Sベクターが、機能的な第VIII因子タンパク質を発現可能であることを示している。
【0168】
293細胞およびバキュロウイルス感染昆虫細胞におけるAAVウイルス粒子の産生
本発明のAAV FVIIIベクターがFVIIIをコードする核酸を確かにパッケージングしていることを示すために、実施例1および2に記載されるように作製された二本鎖形態のAAV FVIIIベクターを、AAVウイルス粒子を産生可能な細胞内に導入した。第一のAAVウイルス産生系では、二本鎖形態のAAV FVIIIベクター核酸を含むプラスミドを、AAV CapおよびRepタンパク質を発現するプラスミド並びにAAVウイルス粒子産生に必要なアデノウイルスヘルパー機能を発現するプラスミドと共に、293細胞に同時導入する。第二のAAVウイルス産生系では、AAV FVIIIベクター核酸を発現するバキュロウイルスコンストラクト、並びにAAV CapおよびRepタンパク質を発現するバキュロウイルスコンストラクトを作製し、その後、昆虫Sf9細胞に同時感染させる。一過性導入された293細胞またはバキュロウイルス感染Sf9細胞内で産生される、得られるAAVウイルス粒子を、当該技術分野において公知の標準方法によって精製および解析する。
【0169】
アルカリ性ゲルアッセイおよび複製アッセイによる評価
アルカリ性ゲル電気泳動アッセイを用いて、パッケージングされた核酸のサイズを決定する。複製中心アッセイを用いて、AAV FVIIIベクターが両方のパッケージング法によってインタクトな形態でパッケージングされているかどうかを決定する。
【0170】
プライマー伸長アッセイを用いて、完全な末端を有する、すなわち、AAV2 5’ITR(センス鎖)または3’ITR(アンチセンス鎖)内のヘアピンループの5’末端において終結している、AAV FVIIIベクター核酸の量を定量化する。
【0171】
あるいは、PCRアッセイを用いて、AAV FVIIIベクター核酸が完全な末端を有しているかどうか、すなわち、AAV2 5’ITR(センス鎖)または3’ITR(アンチセンス鎖)内のヘアピンループの5‘末端において終結しているかどうかを決定する。
【0172】
Rag2マウスにおける評価
一過性導入された293細胞またはバキュロウイルス感染Sf9細胞パッケージ化ベクターにおいて産生されるAAVウイルス粒子を、静脈内に与えられる2e11、2e12、および2e13ウイルスゲノム(vg)/kgで、Rag2マウスにおいて、FVIIIの発現および活性について試験する。FVIIIの発現および/または活性はAAVウイルスまたはヒトFVIIIタンパク質に対する宿主免疫応答の存在によって複雑化されないため、Rag2マウスを本アッセイで使用する。
【0173】
ELISAに基づくアッセイを用いて、FVIII抗原を決定する。FXa活性化アッセイおよび/または凝固アッセイを用いて、FVIII活性を決定する。FVIII抗原アッセイおよびFVIII活性アッセイを用いて、FVIII比活性を決定する。
【0174】
現在好ましいその実施形態を考慮することによって、本発明の実施における多数の変更形態および変形形態の発生が当業者に予期される。従って、本発明の範囲に係るべき唯一の限定は、添付の特許請求の範囲に現れるもののみである。
【0175】
実施例4
改善されたプロモーター/エンハンサー配列を有するコンストラクトの作製
機能的FVIIIの発現を増加させる強力なプロモーターを有するさらなるAAVベクターを作製するため、改変されたエンハンサー配列および/またはプロモーター配列を有するコンストラクトを作製した。いくつかの実施形態では、前記コンストラクトは、短縮型のApoEエンハンサーまたはμグロブリン・エンハンサーを含んだ。これらのコンストラクトを標準的なDNAクローニング技術を用いて作製し、その配列を配列IS番号9~45に示す。
【0176】
実施例5
AAVウイルス粒子の作製
組換えバクミドの作製
DH10 Bacコンピテント細胞を氷上で解凍した。組換えシャトルプラスミド(例えば、pFB-GFP)を添加し、コンピテント細胞と穏やかに混合し、氷上で30分間インキュベートした。次に、コンピテント細胞をおよそ42℃の温度で30秒間加熱し、その後氷上で2分間冷却した。このコンピテント細胞を42℃で30秒間ヒートショックし、氷上で2分間冷却した。SOCを細胞に添加し、撹拌しながら37℃で4時間インキュベートして、組換えを起こさせた。インキュベーション中、2枚のLBプレート(形質転換のための種々の抗生物質(例えば、カナマイシン、ゲンタマイシンおよびテトラサイクリン)を追加で含有する 上にX-galを、続いてIPTGを塗布した。
【0177】
ある量のインキュベーション混合物が得られ、これを希釈した後、前記2枚のLBプレート上に塗布し、37℃でおよそ30~48時間インキュベートした。いくつかの白色コロニーを各プレートから選択し、LBプレート中に与えられた同一の抗生物質の組合せを含有するLB培地中で一晩培養した。次に、バクミドDNAおよびグリセロールストックを調製し、-80℃で保存した。
【0178】
組換えバクミドDNAの精製
ある量のバクミド・グリセロール・ストックを取り出し、実施例1に記載のLBプレート中に与えられた同一の抗生物質の組合せを含有するLB培地中でインキュベートする。培養物を37℃で一晩、振盪させながら増殖させる。次に、ある量の前記培養物を微量遠心管内で最高速度でおよそ30秒間スピンさせる。
【0179】
ピペットを用いてペレットを再懸濁緩衝液中で再懸濁し、次に溶解緩衝液を加え、管を数回反転させて緩衝液を混合し、次いで室温でおよそ5分間インキュベートした。例示的な再懸濁緩衝液は、50mM Tris-CL(pH8.0)、10mM EDTAおよび100μg/mL RNaseAを含む。例示的な溶解緩衝液は、200mM NaOHおよび1%SDSを含む。ある量の沈殿緩衝液(precipitate buffer)(例えば、3
.0M酢酸カリウムを含有する緩衝液(pH5.5))をゆっくりと加え、管を数回反転させて緩衝液を混合し、次いで氷上でおよそ10分間インキュベートした。管を最大速度でおよそ10分間遠心し、上清を、イソプロパノールを含有する管内に注いだ。管を数回反転させて溶液を混合した。
【0180】
次に、前記溶液を室温でおよそ15分間、最大速度で遠心し、ピペットを用いて遠心分離した直後に上清を取り除いた。
【0181】
ある量の70%エタノールを加えてペレットをリンスし、再度最大速度で1分間スピンした。次にエタノールを除去し、溶液を再度スピンして微量のエタノールを取り除く。ある量のTE/EB緩衝液を各管に加え、ペレットをピペットで注意深く溶解させる。すぐに使用しない場合はこの溶液を-20℃で保存した。
【0182】
組換えバキュロウイルスのP0ストックの作製
Sf9細胞を6ウェルプレート内におよそ1×10細胞/ウェル(または10cmプレート内に6×10細胞もしくは15cmディッシュ内に1.7×10細胞)で播種し、トランスフェクションの前に少なくとも1時間細胞を付着させた。
【0183】
トランスフェクション溶液AおよびBを以下の通りに調製する。溶液A:ある量のバクミドを、15mL管内の抗生物質を含有しないある量の無血清培地中に希釈した。溶液B:ある量のセルフェクチンを、15mL管内の抗生物質を含有しないある量の無血清培地中に希釈した。溶液Bを溶液Aに加え、ピペットでおよそ3回、ピペットで穏やかに混合し、室温で30~45分間インキュベートした。次に、プレートからの培地を吸引し、ある量の抗生物質非含有無血清培地を加えて細胞を洗浄した。抗生物質を含有しないある量のSF900IIを、脂質-DNA混合物を含有する各管に加えた。
【0184】
細胞からの培地を吸引し、トランスフェクション溶液を細胞に加え、細胞を28℃でおよそ5時間インキュベートした。トランスフェクション溶液を除去し、ある量の無血清培地および抗生物質を加え、28℃でおよそ4日間インキュベートした。組換えバキュロウイルスを含有する培地を収集し、1000rpmでおよそ5分間回転させて細胞片を除去した。バキュロウイルスを4℃暗下で保存した。
【0185】
バキュロウイルス(P1)の増幅
Sf9細胞をおよそ4×10細胞/mLに増殖させ、振盪フラスコ内で新鮮な培地でおよそ2×10細胞/mLに希釈した。ある量のSf9細胞に、ある量のP0ストックバキュロウイルスを感染させた。感染効率(MOI)はおよそ0.1である。
【0186】
Sf9細胞をおよそ3日間インキュベートし、バキュロウイルスを回収した。細胞を2,000rpmで5分間スピンして細胞をペレット状にし、上清を収集し、4℃暗下で保存した。クロンテック社のRapid Titer Kitプロトコルに従ってバキュロウイルスの力価を決定した。
【0187】
P1組換えバキュロウイルスを用いたAAVの生産
Sf9細胞を約1×10細胞/mLに増殖させ、約5×10細胞/mLに希釈した。希釈したある量のSf9細胞に、Bac-ベクター(5Moi)およびBac-ヘルパー(15Moi)を3日間感染させた。3日目に細胞生存率を評価した(およそ50%~70%の死細胞が観察される)。
【0188】
3000rpm、10分間の遠心分離により細胞ペレットを回収した。培地を除去し、細胞を溶解させた(または、すぐに使用しない場合は細胞ペレットを-20℃で保存した)。
【0189】
溶解およびバンド形成(banding)のプロトコル
ある量のSf9溶解緩衝液およびベンゾナーゼ(Benzonase)を核細胞ペレットに加え
、十分にボルテックスして細胞を再懸濁させる。再懸濁したSf9細胞を氷上でおよそ10分間インキュベートして、可溶化液を冷却した。可溶化液をおよそ20秒間超音波処理して細胞を十分に溶解させ、次に37℃でおよそ30分間インキュベートした。
【0190】
ある量の5M NaClを添加し、混合物をボルテックスした後、37℃でさらに30分間インキュベートした。ある量のNaClを添加して塩濃度を約500mMにし、ボルテックスし、8,000rpm、15℃で20分間遠心して、清澄な可溶化液を作製した。
【0191】
清澄可溶化液を超遠心段階に進ませる。長い針を有する注射器を通じて、最初に清澄可溶化液、次にある量の1.32g/cc、およびある量の1.55g/cc CsCl溶液を添加することにより、CsCl勾配を調製した。CsCl溶液間の接触面に印を付けた。PBSを遠心管の頂部まで加え、管を注意深く平衡させ、密封した。
【0192】
管を55,000rpm、15℃でおよそ20時間遠心した。各管の頂部に穴をあけ、2つのCsCl溶液の接触面マークの少し上に位置するAAVバンドに印を付ける。
【0193】
AAV溶液を70.1 Tiローター用遠心管に移して第二のCsCl遠心分離を行い、管の頂部近くまである量のCsCl溶液を加えた。管を平衡させ密封した。管を65,000rpmでおよそ20時間遠心し、AAVバンド(より低いバンド、より高いバンドは空のカプシドである)を収集した。
【0194】
実施例5
Rag2マウスにおけるコンストラクトの評価
コドン最適化SQ FVIIIコード遺伝子配列を含むAAVゲノムを、UCL SQ、Proto1、ProtoS1、ProtoS2およびProtoS3コンストラクトを用い、バキュロウイルスおよび293細胞を用いて作製した。パッケージングの限界は、バキュロウイルスが4800bp、293細胞が4950である。
【0195】
図5に示すように、切断型または非切断型のゲノムを有するProto1は、UCL SQコンストラクトと同様に、FVIIIを形質導入する。4~12%Bis-Tris
Gel上で測定される、バキュロウイルスおよび293T細胞可溶化物から生じるAAV5.2。図6に示すように、各試料はVP1、VP2およびVP3タンパク質を発現した。図7に示すように、AAV試料から得られたゲノムDNAを0.8%アルカリ性アガロースゲル上で泳動した。
【0196】
これらのAAVがバキュロウイルス系によって作られた場合、Proto1の形質導入はUCL SQコンストラクトと同様であった。イントロンを含有するProto2Sおよび3Sの包含は、Proto1よりも良好に形質導入しなかった。293細胞内で作られたAAVフランキング配列を含有するUCL SQベクターは、バキュロウイルス内でつくられたAAV配列を欠くUCL SQよりも強力であった。結果として、作用強度を増加させる試みにおいて、追加のエンハンサーをProto1、例えばコンストラクト101、102、102および104に付加した。
【0197】
実施例6
改善されたプロモーター配列/エンハンサー配列を有するAAV FVIIIベクターの発現および活性
コンストラクト99~コンストラクト106を含むAAVベクターの発現および活性を、水圧注入プロトコルを用いて試験した。水圧による送達は、インビボで肝臓プロモーターをスクリーニングするための迅速な方法である。実施例5に記載の方法を用いてAAVプラスミドDNAを作製し、次にTransIT-QR Hydrodynamic Delivery Solution中で希釈した。プラスミドDNAを、(マウス重量(g)/10)=0.1mL送達溶液)によって決定される体積で、5~6週齢C57Bl/6マウス(18~25g)の尾静脈に注射した。注射時間は5秒間未満であった。各マウスからの血漿を注射の48時間後に採取し、発現されたFVIII抗原の量を、ELISAアッセイを用いて測定した。
【0198】
漸増量のProto1プラスミド(2.5、5、12.5および50μg)をマウスの尾静脈に注射した。注射されたマウスの血漿中のFVIIIの量をELISA試験を用いて測定し、組換えFVIII(Xyntha SQ等価)を比較のための標準物質として用いた。
【0199】
発現を調べるため、コンストラクトp100~400、コンストラクト100(p100)、コンストラクトFVIII-BMN001(pFVIII-BMN001)、Proto1、コンストラクト100AT(p100-AT)、コンストラクト100 bGHポリA(p100-bGHPA)、コンストラクト101(p101)およびコンストラクト104(p104)の改善されたプロモーター/エンハンサー・エレメント。図8に示すように、全てのコンストラクトが機能的なFVIIIを種々の効率レベルで生産した。
【0200】
図9および図10は、種々のコンストラクトのプラスミド1μgの注射についてのデータを示す。図8に示すように、コンストラクトFVIII-BMN001、コンストラクトFVIII-BMN002、コンストラクト102(p102)、コンストラクト103(p103)およびコンストラクト104(p104)の注射は、10匹中5匹のマウスにおいて少なくとも20ngのFVIIIの発現をもたらした。図9に示すように、コンストラクトFVIII-BMN001、コンストラクト103(p103)、コンストラクト103-AT(p103-AT;398bp hAATプロモーター)、コンストラクト100(p100)、コンストラクト100AT(p100-AT;398bp hAATプロモーター)の注射は、10匹中5匹のマウスにおいて少なくとも100ng/mlのFVIIIの発現をもたらした。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
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図8
図9
図10
【配列表】
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【外国語明細書】