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特開2023-133626医療・療法システム及びそれを実行する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133626
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】医療・療法システム及びそれを実行する方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20230914BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128214
(22)【出願日】2023-08-05
(62)【分割の表示】P 2023534269の分割
【原出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022029127
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522174281
【氏名又は名称】ロゴスサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
(57)【要約】
【課題】情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムによる診断・治療・予防等を行う医療システム及び当該システムを用いた方法であって、全ての診療科における医師、医療機関が適用可能であり、患者の疾病及び/又は生物心理社会的要因を推定する機能を有するシステム及びそれを実行する方法の提供。
【解決手段】
入力された病状や主訴に応答して、病状や主訴に対してタグ付けされている診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標を選択する工程と、
選択された指標を患者側に提示する工程と、
選択された指標及びそれに対する回答から患者の病状や主訴等に対応する疾病及び/又は生物心理社会的要因を決定する工程と、
を有することを特徴とする方法。

【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された病状や主訴に応答して、病状や主訴に対してタグ付けされている診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標を選択する工程と、
選択された指標を患者側に提示する工程と、
選択された指標及びそれに対する回答から患者の病状や主訴等に対応する疾病及び/又は生物心理社会的要因を決定する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
決定された疾病及び/又は生物心理社会的要因に対応する治療用アプリを選択する工程、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
病状や主訴を診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けることが出来る程度まで分析或いは解析する工程と、
前記選択された指標に対する患者の回答を、病状及び主訴に対応する疾病が特定できる程度まで分析或いは解析する機能を有する分析或いは解析する工程を有する請求項1の方法。
【請求項4】
患者の病状及び主訴が長期間に亘って治癒しておらず、当該患者が複数の医療機関に通院歴がある場合に、当該複数の医療機関の各々における診断結果、投薬された薬剤の種類の情報を取得し、疾病を推定する前記工程で当該情報を利用する工程を有する請求項1~3の何れか1項の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理端末(例えばスマートフォン)及び情報処理ネットワークシステム(例えばインターネット)を介して、医者と患者が直接面会することなく診断・治療・予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見等を行うための医療技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムを介して、医者と患者が直接面会することなく治療を行うための技術(いわゆる「医療用アプリ」)が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
そのような技術では、医療施設へ通うのが困難な過疎地や遠隔地に居住する患者の治療が可能である。また、プライバシーの関係で「治療を行っている」という事実を出来る限り秘匿したいという要請を有し、専門医師或いは専門家による治療を望まない患者であっても受診率を向上することが可能である。
【0003】
従来技術(例えば特許文献1、2)に係るシステムでは、疾患を特定し、当該疾患に特徴的な症状の有無に注目しており、全ての患者に対して同一の治療を行うことが基本であるが、治療が上手くいかない患者に対しては手詰まりとなる可能性が高い。
CBT(認知行動療法)は、身体疾患および精神疾患への汎用性が高く、その治療効果が注目されている。CBT、特にプロセスベースドCBT(プロセスに基づく認知行動療法)では、当該疾患に特徴的な症状の有無のみに着目するのではなく、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解していくことが重要である。そのためには、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定(アセスメント)すること、さらには当該疾患に特徴的な症状に対しても、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定することが不可欠である。上記のような個別の評定に基づくことで、その患者に最適な治療を実施することが可能となるが、従来技術(例えば特許文献1、2)では、係る評定は行われていない。
【0004】
また、ストレスや不安と関係している疾患は全ての診療科(皮膚科、歯科、耳鼻咽喉科、整形外科、内科、ペインクリニック科、神経内科、眼科等)と関係しており、認知行動療法の適用が治療に効果的な疾患も数多く存在する。
しかし、従来の医療用アプリは、対象とする疾病及びそれを取り扱う診療科が限定されており、疾患を特定し、当該疾患に特徴的な症状の有無に注目している。そのため、心理療法、特に認知行動療法に基づく医療用アプリが心因性疾患や心身症の治療に効果的であっても、その様な医療用アプリは、心理療法に関係する診療科以外では患者が実行する機会は少ない。
さらに、治療において患者の疾病を推定することは非常に重要であるが、既存の医療用のシステムはその様な機能は具備していない。
そして、診療科に関係なく、全ての医師、医療機関が利用可能であり、心理療法、特に認知行動療法を利用して疾病を推定する機能を有する総合診療ブロックを有するシステムは未だに提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6339298号公報
【特許文献2】特許第6245781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、情報処理端末及び情報処理ネットワークシステムによる診断・治療・予防等を行う医療システム及び当該システムを用いた方法であって、全ての診療科における医師、医療機関が利用可能であり、患者の疾病を推定する機能を有するシステム及びそれを実行する方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシステム(100)は、
(患者に対する)総合診療受付としての機能を奏するブロック(20:総合診療ブロック)を含み、
総合診療受付としての機能を有するブロック(20)は、
心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかについての診断横断的指標を記録する機能を有するブロック(10A1:診断横断的指標パート)と、
疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかについての疾患特異的指標を記録する機能を有するブロック(10A2:疾患特異的アセスメントパート)を有し、
前記診断横断的指標と疾患特異的指標は(患者の)病状や主訴に対してタグ付けされており、
入力された病状や主訴にタグ付けされた(対応した)診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標を(初回指標として)選択する機能と、選択された指標(初回指標)を患者側に提示する機能を有する指標選択ブロック(10B:指標選択パート)と、
前記選択された指標(初回指標)及びそれに対する(患者の)回答から患者の病状や主訴等に対応する疾病(候補疾病)を決定し(疾病を推定し)、決定された疾病(候補疾病)に対応する治療用アプリを選択する機能を有する疾病推定ブロック(10C:疾病推定パート)を有することを特徴としている。
【0008】
また本発明のシステム(100)は、
サーバー(10)と、
患者に使用される情報処理用端末(3)と、
医療機関で使用される情報処理用端末(4)を有し、
サーバー(10)は(患者に対する)総合診療受付としての機能を奏するブロック(20:総合診療ブロック)と、複数の医療用アプリ(30)を包含しており、
総合診療受付としての機能を有するブロック(20)は、
心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかについての診断横断的指標を記録する機能を有するブロック(10A1:診断横断的指標パート)と、
疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかについての疾患特異的指標を記録する機能を有するブロック(10A2:疾患特異的アセスメントパート)を有し、
前記診断横断的指標と疾患特異的指標は(患者の)病状や主訴に対してタグ付けされており、
入力された病状や主訴にタグ付けされた(対応した)診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標を(初回指標として)選択する機能と、選択された指標(初回指標)を患者側に提示する機能を有する指標選択ブロック(10B:指標選択パート)と、
前記選択された指標(初回指標)及びそれに対する(患者の)回答から患者の病状や主訴等に対応する疾病(候補疾病)を決定し(疾病を推定し)、決定された疾病(候補疾病)及び/又は生物心理社会的要因に対応する治療用アプリを選択する機能を有する疾病推定ブロック(10C:疾病推定パート)を有することを特徴としている。
【0009】
本発明において、サーバー(10)は、コンピュータその他の情報処理機械により構成されているのが好ましい。
本発明において、
前記総合診療受付としての機能を有するブロック(20)は、
(患者が訴える)病状や主訴を診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けることが出来る程度まで分析或いは解析する機能と、
指標選択ブロック(10B:指標選択パート)が提示した選択された指標(初回指標)に対する患者の回答を、病状及び主訴に対応する疾病(候補疾病)が特定できる程度まで分析或いは解析する機能を有する分析或いは解析するブロック(10D:回答解析パート)を有することが好ましい。
また本発明において、
前記総合診療受付としての機能を有するブロック(20)は、
患者の病状及び主訴が長期間に亘って治癒しておらず、当該患者が複数の医療機関に通院歴がある場合に、当該複数の医療機関の各々における診断結果、投薬された薬剤の種類(及びその他)の情報(治療履歴情報)を取得し、当該情報(治療履歴情報)を疾病推定ブロック(10C:疾病推定パート)に伝達する機能を有することが好ましい。
【0010】
本発明のシステム(100)において、医療用アプリ(30)の各々には、
日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを診断横断的に評定する機能を有するブロック(医療用アプリ30の各々における診断横断的アセスメントパート30A)と、
疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを疾患特異的に評定する機能を有するブロック(医療用アプリ30の各々における疾患特異的アセスメントパート30B)と、
診断横断的な評定における指標(診断横断的アセスメントの指標)と、疾患特異的な評定における指標(疾患特異的アセスメントの指標)と、その他の分類用情報に基づいて患者を特定の集団(例えば、クラスタ、グループ)に分類し、分類された集団とリンク付けされた治療モジュールを選択する機能を有するブロック(治療モジュール決定パート30D)を有することが好ましい。
【0011】
この場合、前記サーバー(10)における前記診断横断的に評定する機能を有するブロック(10A1)は、評定結果を、医療用アプリ(30)における診断横断的に評定する機能を有するブロック(30A)に送信する機能を有し、
前記サーバー(10)における前記疾患特異的に評定する機能を有するブロック(10A2)は、評定結果を、医療用アプリ(30)における疾患特異的に評定する機能を有するブロック(30B)に送信する機能を有しているのが好ましい。
【0012】
本発明の方法は、上述したシステム(100:請求項1~3の何れか1項のシステム)を実行する方法において、
(患者から)入力された病状や主訴に応答して、(患者の)病状や主訴に対してタグ付けされている診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標を(初回指標として)選択する工程(ステップS2)と、
選択された指標(初回指標)を患者側に提示する工程(ステップS3)と、
選択された指標(初回指標)及びそれに対する(患者の)回答から患者の病状や主訴等に対応する疾病(候補疾病)を決定する(疾病を推定する)工程(ステップS5)と、
決定された疾病(候補疾病)に対応する治療用アプリを選択する工程(ステップS6)、
を有することを特徴としている。
【0013】
本発明の方法において、
(患者が訴える)病状や主訴を診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けることが出来る程度まで分析或いは解析する工程と、
(指標選択ブロック10Bが提示した)前記選択された指標(初回指標)に対する患者の回答を、病状及び主訴に対応する疾病(候補疾病)が特定できる程度まで分析或いは解析する機能を有する分析或いは解析する工程を有することが好ましい。
【0014】
また本発明の方法において、
患者の病状及び主訴が長期間に亘って治癒しておらず、当該患者が複数の医療機関に通院歴がある場合に、当該複数の医療機関の各々における診断結果、投薬された薬剤の種類(及びその他)の情報(治療履歴情報)を取得し、疾病を推定する前記工程(疾病推定パート10Cで実行される工程)で前記情報(治療履歴情報)を利用する工程を有することが好ましい。
【0015】
本発明では、選定された医療用アプリ(30)の各々において、
日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを診断横断的に評定する工程(診断横断的アセスメントを行う工程)と、
疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを疾患特異的に評定する工程(疾患特異的アセスメントを行う工程)と、
診断横断的な評定における指標(診断横断的アセスメントの指標)と、疾患特異的に評定する指標(疾患特異的アセスメントの指標)と、その他の分類用情報に基づいて、患者を特定の集団(例えば、クラスタ、グループ)に分類し、分類された集団とリンク付けされた治療モジュールを選択する工程(治療モジュールを選択する工程)を有することが好ましい。
【0016】
本発明において、「医療用アプリ」という文言は、アプリケーションソフトのみならず、医療用アプリを実行するシステムを示す場合がある。
【発明の効果】
【0017】
上述の構成を具備する本発明によれば、入力された病状や主訴や精神的な不調の状況にタグ付けされた(対応した)診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標を(初回指標として)選択し、選択された指標(初回指標)を患者側に提示して、選択された指標(初回指標)及びそれに対する(患者の)回答から患者の病状や主訴等に対応する疾病(候補疾病)あるいはそれらに対応する生物心理社会的要因を決定(疾病を推定)することが出来る。ここで、入力された病状や主訴にタグ付けされた(対応した)診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標と、それに対する患者の回答を用いることにより、初めに疾患名等を指定した診断横断的アセスメントアセスメント及び/又は疾患特異的アセスメントアセスメントに比べて、広範な範囲での診断横断的アセスメント及び/又は疾患特異的アセスメントにより疾病を推定することが可能で、高精度の疾病の推定が可能になる。
【0018】
そして本発明によれば、メンタル的な疾患の診察科以外の診察科からのアクセスに対しても、診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標と、それに対する患者の回答を用いて疾病を推定するので、診察科の種類に拘泥することなく、高精度の疾病の推定が可能になる。
そして、診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をもちいて診断横断的アセスメント及び/又は疾患特異的なアセスメントを実行し、それに対する患者の回答を用いるため、、疾病が重複(合併)している場合においては重複している複数の疾病と、その重複の割合を決定することが可能である。つまり、心因性疾患や心身症は合併している場合が多い、たとえば、月経随伴症状によるイライラとうつ病の合併など、ので特に有効である。そして、患者毎の疾病の重複と、その割合に基づいて、本発明で選択される医療用アプリの内容を、患者毎、或いは疾患の種類毎にカスタマイズすることで一定の効果を上げることが可能である。すなわち、本発明によれば、複数の合併する疾患症状/状態のアセスメントが可能であり、パーソナライズされた最適な治療法を提案或いは提供することが出来る。例えば、心因性EDの患者が、抑うつ、不安、糖尿等の合併傾向を持つ場合には、アセスメントにより、重複した疾患の種類、あるいは生物・心理・社会的要因(、さらには、重複した割合)を評定して、個々の患者に最適な医療用アプリを提供することが出来る。
そして、各々の医療用アプリにおいても、量的測定指標を用いて診断横断的な評定、疾患特異的な評定を実行してクラスタ判定を行うことにより、治療のパーソナライズ化、最適化が図られる。
【0019】
本発明において用いられる医療用アプリでは、診断横断的アセスメントにより、生物心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定することが可能となる。さらに、疾患特異的アセスメントにより、当該疾患に特徴的な症状に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定することが可能となる。
これらの評定に基いて、その患者に最適な治療モジュールを提供することが出来る。特に、疾患を特定して治療するだけでは改善しない事例に対して、極めて効果的に医療(治療、診断、予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見等)に寄与することが出来る。
【0020】
本発明では、複数の患者およびまたはそのサポーターが同一の医療用アプリを一緒に使用する様に設定することが可能である。複数の患者が、例えばEDや不妊症(男性、女性)の患者におけるパートナー、うつ病や不安障害の患者における家族や援助者等が、同一の医療用アプリを一緒に使用する様に設定すれば、治療等に必要な情報やコンテンツを患者と共有し、治療モジュールに係るエクササイズを患者と共同で実行することで、患者と伴走することが出来て、疾患や援助の仕方についての理解と実践を深めることが出来る。
そして、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること(アドヒアランス)が確立し、治療効果の向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るシステムの概要を示す機能ブロック図である。
図2】実施形態におけるサーバーの機能ブロック図である。
図3】サーバーの総合診療ブロックで疾患を推定して医療用アプリを選択する手順を示すフローチャートである。
図4図2における医療用アプリの機能ブロック図である。
図5】実施形態で用いられる患者側の情報処理端末の機能ブロック図である。
図6】実施形態で用いられる医療機関側の情報処理端末の機能ブロック図である。
図7】実施形態で用いられるタグ付けの例を示した図である。
図8】実施形態で用いられる疾患等の推定の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本システムで用いられる機能はそれぞれ、サーバや情報処理端末上で動作するソフトウェアプログラムと、入出力手段によって構成されているが、ソフトウェアプログラムを、それらがプログラムされたFPGAなどのハードウェアとして、あるいはそれらの組み合わせとして構成しても良い。
図1において、全体を符号100で示すシステムは、総合診療ブロック20と医療用アプリ30を含むサーバー10(例えばコンピュータ)、患者に使用される情報処理端末3(患者側の情報処理用端末)、医師が使用し或いは医療機関で使用される情報処理端末4(医療機関側の情報処理端末)を有しており、これらは例えば情報処理ネットワーク60(例えばローカルエリアネットワーク或いはインターネット)により相互に接続されている。サーバー10については、図2を参照して後述する。
ここで「患者」なる文言は、何れかの疾患に罹患している可能性が有ることを自ら認識しており、且つ、その治療を行う意思のある個人を意味している。換言すれば、「患者」なる文言は、医療機関において医師、その他の関係者の指導により当該治療を行っている者のみに限定される訳ではなく、第三者が見れば「健常」と判断されるような者や第三者から本システムの利用を薦められた健常人等も包含し得る。
【0023】
図1において明示されていないが、患者側の情報処理用端末3は「日常生活下データを取得する装置」としての機能も有しており、例えばスマートフォン或いはパーソナルコンピュータ(PC、パソコン)等の情報処理機能及び通信機能を有する電子装置により構成することが出来る。或いは、日常生活下データを取得する装置として、ウェアラブル機器等を用いることも出来る。日常生活下データは、日常生活の中で様々な質問に答えてもらうことで収集する心理データを含む。また、例えば心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、反射速度、歩行速度、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データ、行動データも含んでいる。
後述するように、日常生活下データは、各種医療用アプリにおいて診断横断的アセスメントを実行する部分30A(図3)に送信されて、「日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを診断横断的な評定(診断横断的アセスメント)」に用いられる。
図1において、医療機関側の情報処理端末4は、情報処理機能及び通信機能を有する電子装置(例えばPC)を利用することが出来るが、スマートフォンやタブレット端末を利用することも可能である。
【0024】
ここで患者側の情報処理用端末3(例えばスマートフォン)はライン3L、ネットワーク60を介してサーバー10にアクセスするツールとして用いられるのみならず、診断横断的アセスメントに役立てるため、患者の「日常生活下データ」を計測して、医療用アプリ側に送信するためのツールとしても機能する。日常生活下データの計測や医療用アプリ30の診断横断アセスメントパートへの送信という機能は、係る機能を実行するための専用アプリを患者側の情報処理用端末3(例えばスマートフォン)にインストールすることにより可能になる。
そのような専用アプリをインストールする場合には、患者側の情報処理用端末3とネットワーク60とを接続する情報伝達ライン3L(有線或いは無線の場合が存在する)は、サーバー10にアクセスするためのアクセスラインであり、且つ、情報処理用端末3で計測した患者の日常生活下データを医療用アプリ側に送信するための情報伝達ラインでもある。
図1では示されていないが、医療機関側の情報処理端末4は、ネットワーク60を介してサーバー10にアクセスして、情報の授受を行う機能を有する通信ブロックを有している。
【0025】
図1には示されていないが、複数の患者側の情報処理端末3及び複数の医療機関側の情報処理端末4をネットワーク60に接続することも出来る。
図1では示されていないが、サーバー10はデータベース10Fを内蔵しているが、図示しないデータベース10はサーバー10とは別個に構成されており、ネットワーク60を介してサーバー10に接続されていても良い。
【0026】
図示はされていないが、サーバー10が医療あるいはヘルスケアのビックデータを利用し、或いは、そのようなビックデータと結合することにより、サーバー10におけるアセスメントや治療モジュールの選択の結果、治療の状況等をビックデータの一部として活用出来ると共に、ビックデータを活用して得られた知見を図示の実施形態に係るシステム100の性能向上に役立てることが可能になる。そして、ビックデータを活用して得られた知見、情報をAI(人工知能)のアルゴリズム構築に取り入れ、AIを用いた医療用アプリに発展させることも可能である。
【0027】
次に図2を参照して、図示の実施形態に係るシステム100のサーバー10について説明する。
サーバー10は総合診療ブロック20と複数の医療用アプリ30を有している。
総合診療ブロック20は、診療するブロックというよりは、患者を適切な診療科に案内するポータルサイト或いは総合受付の様な機能を有している。そして総合診療ブロック20は、診断横断的アセスメントで用いられる指標であって且つ患者の病状や主訴(主訴等:主訴、現病歴、既往歴等の病状)と総合診断的にタグ付けされている指標を記憶する診断横断的指標パート10A1と、疾患特異的アセスメントで用いられる指標であって且つ患者の病状や主訴(主訴等)と疾患特異的にタグ付けされている指標を記憶する疾患特異的指標パート10A2とを含んでいる。診断横断的指標パート10A1と疾患特異的指標パート10A2は、一体的に構成されていても、別体に構成されていても良い。
ここで、診断横断的指標を記憶する診断横断的指標パート10A1のみを単体で備えることもが可能である。
図2において、サーバー10は、複数の医療用アプリ30(30、30-1、3-2、・・・・)を有している。
図示の実施形態において、情報伝達ラインSL1、・・・は、有線のみならず、無線の場合もある。
【0028】
図2において、診断横断的指標パート10A1で記録されている指標は、生物心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定するための1つ以上の指標(診断横断的アセスメントを行うための指標、たとえば、特開2022-068362に記載されたPFQや、診断横断的なアセスメントを行うためのうつ病(BDI、SDSなど)や不安症等(LSAS、GAD-7など)の指標のセット))である。診断横断的指標パート10A1に記録されている指標を、入力された患者の病状や主訴等に基づいて適切な指標が選択されて、患者に対して提示される。具体的には、診断横断的指標パート10A1には、病名や病状や主訴と対応付けられた指標のリスト(図7(A))が記憶されており(本発明ではこの対応付けのことを「タグ」付けと呼んでいる)、患者の情報処理端末から入力された病名や病状や主訴がこのリストの「疾患、症状等」欄から検索され(例えば、「不安」と入力されていると、診断横断的2が該当するので、指標としてはGHQ)、それらとの対応関係の示された指標が選択され、患者に提示されることとなる。また、追加の機能として、合併症の項目に不眠と記録されているので、不眠についてももう一度検索を行って該当する指標を追加して用いても良い。なお、図7は対応関係(タグ付け)の一例で他の疾患、症状等、合併症、指標名などは適宜存在することは言うまでもない。また、疾患、症状等、あるいは合併症などはAIなどによって、随時更新するように設計することもできる。
疾患特異的指標パート10A2に記録されている指標は、病状や主訴等が入力された患者(対象者)が、特徴的な症状に対して、どの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定する(疾患特異的アセスメントを実行する)ための指標であり、複数の異なる疾患に対応するために、複数の異なる疾患に対応した指標を記録していると都合が良い。
医療機関の各種の診療科(図示せず)では、様々な疾病の患者に対して、主訴、現病歴、既往歴等と病状を確認する。患者の病状は、例えば「眠れない」、「○○(特定の部位)がずっと痛い」、「食欲がない」、「EDかも知れない」等である。
医療機関側の情報処理端末4(図1)を介して患者の病状や主訴等がサーバー10に入力され、診断横断的アセスメントパート10A1と疾患特定指標パート10A2では一体的に、これ等の種々の病状の一つ一つについてタグ付けされた指標が特定される(初回評価指標選択)。そして、特定された(選択された)指標が患者に提示される。具体的な指標の選択方法は図7(B)を用いて診断横断的な選択方法と同様に行われる。
診断横断的とは、心因性疾患、心身症、ストレス関連疾患に横断的に認められる生物心理社会的要因に基づくものであり、疾患特異的とは特定の疾患にのみ現れる特徴であり、全く異なる概念である。
【0029】
診断横断的指標パート10A1と、疾患特異的指標パート10A2に加えて、総合診療ブロック20は、指標選択パート10B、疾病推定ブロック10C、回答解析パート10D、治療履歴パート10Eを備えている。
指標選択パート10Bは、伝達ラテンSL2、SL3を介して診断横断的指標パート10A1と疾患特異的指標パート10A2からそれぞれ伝達された患者の病状や主訴等にタグ付けされた診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標(選択された指標)を、初回評価指標として、伝達ラインSL11を介して、当該病状や主訴等を訴える患者側、すなわち当該患者が診断等を受けている医療機関側の情報処理端末4、或いは当該患者が自宅等からアクセスしている場合には患者側の情報処理端末3に送信する機能を有している。そして指標選択パート10Bは、選択された指標に対する患者の回答があった際に、伝達ラインSL4を介して選択された指標を疾病推定ブロック10Cに伝達する機能を有している。
疾病推定ブロック10Cは、初回評価指標(選択された指標)とそれに対する患者の回答(伝達ラインSL9を経由して疾病推定ブロック10Cに送信)に基づいて、患者の病状や主訴等に対応する候補疾病及び/又は生物心理社会的要因を決定する機能を有している。係る候補疾病及び/又は生物心理社会的要因の決定が、当該患者の疾病及び/又は生物心理社会的要因の推定となる。そして、患者の病状及び主訴に対して選択された診断横断的指標、疾患特異的指標、それに対する患者の回答から、患者が複数種類の疾病に重複して罹患している場合には、その重複した疾病を推定することが可能である。換言すれば疾病推定ブロック10Cは、重複した疾病を推定する機能を有している。図8に推定方法の一例を示した。図8において、患者には指標Aと指標Bが提供されており、それぞれの回答を疾病推定ブロック10Cで、疾病推定ブロック10Cに記憶されたアルゴリズムに基づいて処理され、指標Aの回答結果が所定値A点以上か、未満かで、分岐され、A点以上の場合はさらに指標Bの結果が所定値B点以上か、未満かで分岐されて、推定がなされる。ここでは、すべての指標の評価結果の組み合わせに対するアルゴリズムを記憶し、それに基づいて推定を行うこともできるが、AI等を用いて指標と疾病や生物心理社会的要因との関係を構築したり、ネットワーク分析や、相関係数を用いた分析、AIを用いて前記アルゴリズムを修正しても良い。また、推定処理はこれらの統計処理に限られず、当業者の周知の手段を用いて推定を行っても良い。また、この例ではそれぞれ一つの疾病名あるいは生物心理社会的な要因に分類しているが、実際には複数の疾病名や生物心理社会的な要因に分類しても良い。あるいは、それぞれの複合を示すカテゴリのような分類でも構わない。
また、疾病推定ブロック10Cは、候補疾病等を決定するに際して、伝達ラインSL5を介して疾病情報用のデータベース10Fから必要な疾病情報(例えば病理学的な情報等)を取り出す機能も有している。
さらに疾病推定ブロック10Cは、(疾病推定ブロック10Cで決定された)候補疾病等に基づいて、当該候補疾病に対応する医療用アプリ(図4参照)を選択する機能(医療用アプリの選定機能)と、伝達ラインSL10を介して当該患者に関する情報を選択された医療用アプリ30(30-1~30-4)に伝達する機能を有している。
なお、図示の実施形態では、医療用アプリを包括的に表現する場合には符号30を用いて記載している。
【0030】
指標選択パート10Bにおいて患者の病状や主訴等に診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けするに際して、患者が訴える病状や主訴等が抽象的な場合や、漠然としている場合には、診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けが困難になる。図示の実施形態では、病状や主訴等が抽象的過ぎ或いは漠然としており、診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けることが困難な場合には、当該病状や主訴等は伝達ラインSLD1を介して回答解析パート10Dに送信される。回答解析パート10Dは、病状や主訴等を指標選択パート10Bで診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けできる程度まで分析或いは解析し、伝達ラインSLD2を介してタグ付けできる程度まで解析された病状等を指標選択パート10Bに送信する機能を有している。(解析はAIやディープラーニングを用いて行っても良い。)
回答解析パート10Dは、例えばチャットボットとしての機能を具備しており、伝達ラインSLD1を介して患者と通信することにより、病状や主訴等の内容を整理して、前記タグ付けが可能な程度まで具体化する。そのほか、音声による応答など他の入力直手段を用いても良い。
【0031】
選択された指標(初回指標)に対する患者の回答が不明確な場合には、疾病推定ブロック10Cにおいて、患者の病状や主訴等に対応する候補疾病等を決定することが困難となる。回答解析パート10Dは、その様な場合に、疾病推定ブロック10Cで候補疾病等が特定できる程度まで患者の回答を分析して、伝達ラインSLD3を介して、候補疾病等が特定できる程度まで分析された患者の回答を疾病推定ブロック10Cまで送信する機能を有している。
回答解析パート10Dは、例えばAIで構成して、病状や主訴等の内容を整理して、前記タグ付けが可能な程度まで具体化することが出来る。また回答解析パート10Dに、例えばチャットボットとしての機能を備えさせて、伝達ラインSLD1を介して患者と通信することにより、病状や主訴等の内容を整理して、前記タグ付けが可能な程度まで具体化する。或いは、チャットボット機能により患者と通信して、選択された指標(初回評価指標)に対する患者の回答を整理して、候補疾病等が推定可能な程度まで具体化する。
回答解析パート10Dにおいて、主訴や病状を分類してリスト化し、チェックボックスで複数選択可能に構成することが出来る。また、適正な指標にタグ付けするのに情報が不足している場合には、追加の質問を患者に送信し、患者が回答することにより、タグに分解するための「問答」が可能にせしめ、以て、適正なタグに誘導し、適正な指標を決定することが出る。
【0032】
ここで、長期間に亘って病状、主訴(例えば身体の不調)等が治癒せず、複数の医療機関に通院歴がある患者の場合には、以前に通院した医療機関における治療(例えば、疾病の見立て、処方された薬剤)が適切でない場合が存在する。そのため、複数の医療機関を長期間に亘って受信した旨の情報は、当該患者の疾病を推定するのに効果的である場合が多い。
図示の実施形態では、総合診療ブロック20は治療履歴パート10Eを備えており、治療履歴パート10Eは伝達ラインSL7を介して患者と通信し、長期間に亘って病状、主訴(例えば身体の不調)等が治癒せず、複数の医療機関に通院歴がある患者である場合に、当該複数の医療機関の各々における診断結果、投薬された薬剤の種類、その他の情報(治療履歴情報)を取得し、伝達ラインSL8を介して治療履歴情報を疾病推定ブロック10Cに伝達する機能を有している。これにより、効果がなかった治療法や薬剤の情報が疾病推定ブロック10Cに伝達され、以て、不適切な候補疾患が除外できる。
【0033】
図示の実施形態では、指標選択パート10Bから患者に提示された指標に対する患者の回答に基づいて、医療用アプリ30において、患者に最適な治療モジュールを選択することが可能である。すなわち、患者の病状及び主訴(主訴、現病歴、既往歴等の病状)に対して選択された診断横断的指標と疾患特異的指標を患者に提示し、患者が回答することにより、診断横断的アセスメントと疾患特異的アセスメントの双方を実施するのと同様な効果が期待され、初回評価指標に対する患者の回答から、最適な治療モジュールを選択することが可能である。特に、疾患を特定して治療するだけでは改善しない事例に対して、極めて効果的に医療(治療、診断、予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見等)に寄与することが出来る。
【0034】
ここで、患者の病状及び主訴に対して選択された診断横断的指標と疾患特異的指標を患者に提示し、患者が回答することにより、疾病が重複している場合においては、重複している複数の疾病(例えば、うつ病と心因性EDを併発している場合)と、その重複の割合(例えば、うつ病が70%、心因性EDが30%)を決定することが出来る。そして、患者毎の疾病の重複と、その割合に基づいて、本発明で選択される医療用アプリの内容を、患者毎、或いは疾患の種類毎にカスタマイズした上で一定の効果を上げることが可能である。
【0035】
主として図3を参照して、図2で示す総合診療ブロック20で医療用アプリを選択する手順について説明する。
図3において、ステップS1では、医療機関における各種の診療科(図示せず)で様々な疾病の患者に対して、主訴、現病歴、既往歴等の病状(病状や主訴等)を確認し、医療機関側の情報処理端末4(図1)を介して病状や主訴等をサーバー10に入力する。
ここで、患者の病状や主訴等は、患者が医療機関に通院している場合には、医療機関側の情報処理端末4から発信される。ただし、患者が医療機関に通院せず、自宅からサーバー10にアクセスしている場合も想定される。そのため、ステップS1では、医療機関側の情報処理端末4或いは患者側処理端末3から、サーバー10の総合診療ブロック20に、病状や主訴等が入力される
【0036】
次のステップS2では、ステップS1で入力された病状や主訴等に対応する診断横断的指標及び/又は疾患特的指標を選択する。すなわち、ステップS1で入力された病状や主訴等にタグ付けされた診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標(選択された指標:初回評価指標)を選択して、指標選択パート10Bに送信する。
ここで、患者の病状や主訴等が、診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けすることが出来ない程度に抽象的であり或いは漠然としている場合には、当該患者の病状や主訴等を回答解析パート10Dに送信し、回答解析パート10Dにおいて、当該病状や主訴等を診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標をタグ付けできる程度まで分析或いは解析してから、指標選択パート10Bに送信する。
そしてステップS3では、指標選択パート10Bに送信された診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標(選択された指標)は、初回評価指標として、医療機関側の情報処理端末4或いは患者側処理端末3に送信して、前記病状や主訴等を訴える患者に対して選択された指標を提示する。そしてステップS4に進む。
【0037】
ステップS4では、ステップS3で提示された指標(選択された指標:初回指標)に対して患者が回答し、その回答を疾病推定ブロック10Cに伝達する。
選択された指標(初回指標)に対する患者の回答が不明確であり、候補疾病を決定することが困難な場合には、当該不明確な回答を回答解析パート10Dに送信する。そして、疾病推定ブロック10Cで候補疾病が特定できる程度まで患者の回答を分析し、分析された患者の回答を疾病推定ブロック10Cまで送信する。
次のステップS5では、疾病推定ブロック10Cが、初回評価指標(選択された指標)とそれに対する患者の回答に基づいて、患者の病状や主訴等に対応する候補疾病を決定する。すなわち、ステップS1で病状や主訴等を入力し、ステップS4で回答した患者の疾病を推定する。ステップS5で疾病を推定する際に、疾病情報用のデータベース10Fから必要な疾病情報(例えば病理学的な情報等)を取り出し、参照する場合がある。ここで、診断横断的指標と疾患特異的指標を患者に提示し、患者が回答することにより、患者が複数種類の疾病に重複して罹患している場合には、その重複した疾病を推定することが可能である。すなわち、ステップS5では、患者が罹患している重複する疾病を推定することが出来る。
【0038】
ステップS5で疾病を推定するに際して、患者の病状や主訴等が長期間に亘って治癒しておらず、複数の医療機関に通院歴がある場合に、当該複数の医療機関の各々における診断結果、投薬された薬剤の種類、その他の情報(治療履歴情報)を治療履歴パート10Eが取得し、当該情報(治療履歴情報)を疾病推定ブロック10Cに伝達して、治療履歴情報を疾病の推定に利用することが出来る。
係る情報(治療履歴情報)は候補疾病の決定(疾病の推定)に効果的であり、疾病推定ブロック10Cにおいて当該患者の疾病の推定に大いに寄与することが出来る。その様な情報を用いて疾病を推定することにより、以前に通院した医療機関において適切でない治療(例えば、疾病の見立て、処方された薬剤が不適当な治療)が行われていた場合には、当該不適切に見立てられた疾病と同一の疾病を推定する可能性が減少する。
ステップS5で疾病を推定したならば、ステップS6に進む。
【0039】
ステップS6では、ステップS5で決定された候補疾病に基づいて、当該候補疾病に対する医療用アプリ30(30-1~30-4を選択する。そして、選択された医療用アプリ30(30-1~30-4)に対して、前記患者に関する情報を伝達する。それと共に、前記患者に対して、ステップS5で決定された候補疾病(推定された疾病)と治療アプリの情報を送信する。
ステップS6以降は、個々の医療用アプリ30(30-1~30-4)が実行される。
なお、明確には図示されていないが、図示の実施形態の変形例として、ポータルサイト或いは総合受付としての機能を有する総合診療ブロック20のみを備え、総合診療ブロック20の出力(候補疾病、疾病が重複しているか否か、適正な医療アプリ)をその他の機関(例えば保険会社等)に出力する様に構成することが可能である。
【0040】
次に、図4を参照して、図2における各種医療用アプリの概要を説明する。
図2に示す各種アプリ30、30-1、30-2・・・・の一つにおける機能ブロックを示す図4において、医療用アプリ30(図2に示す医療用アプリにおける何れか1つ)は、診断横断的アセスメントを実行する部分(医療用アプリ30における診断横断的アセスメントパート30A)と、疾患特異的アセスメントを実行する部分(医療用アプリ30における疾患特異的アセスメントパート30B)と、日常生活下データと診断横断的アセスメント及び疾患特異的アセスメントの結果及びその他の分類用情報に基づいて患者を該当するクラスタ(グループ等)に分類するクラスタ分析パート30Cと、当該疾病治癒のための治療モジュールを決定する治療モジュール決定パート30Dを有している。
図2に示す医療用アプリ30、30-1、30-2、・・・・の各々は、基本的には図4に示すのと同様な構成を有している。
図示の実施形態において、「医療用アプリ」という文言は、アプリケーションソフトのみならず、医療用アプリを実行するシステムをも意味している。
なお、図示の煩雑化の防止のため、図4においては信号伝達ラインの表示を省略する。
【0041】
医療用アプリ30における診断横断的アセスメントパート30Aでは、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、適応的な行動を評定することにより、アクセスしたユーザー(患者:対象者)の心理的柔軟性を評定する。適応的な行動の評定は、CBTの一つであるアクセプタント&コミットメント・セラピー(ACT)に基づいて行われている。そして、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、適応的な行動が見られる対象者であれば、健康的であり、生活の質が高く、ストレスが低く、各種疾患に対する抵抗力が高い状態にあると評定される。
診断横断的アセスメントパート30Aでは疾患を特定するための評定や、疾患に特徴的な症状の評定は行わない。診断横断的アセスメントパート30Aでは、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定するからである。
換言すると、医療用アプリ30における診断横断的アセスメントパート30Aにおいては、日常生活下データを用いて評定が行われる。そして、医療用アプリ30における診断横断的アセスメントパート30Aは、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを診断横断的に評定する(診断横断的アセスメントを行う工程)機能を有している。
また、医療用アプリ30における疾患特異的アセスメントパート30Bは、疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを疾患特異的に評定(疾患特異的アセスメントを行う工程)する機能を有している。
【0042】
医療用アプリ30のクラスタ分析パート30Cにおけるクラスタ分析に際して、総合診療ブロック20(図2)における指標選択パート10Bにおいてタグ付けされた診断横断的指標及び/又は疾患特異的指標と、それに対する患者の回答が利用できる場合がある。明示されていないが、図示の実施形態では、その様な場合に対処するべく、患者の病状や主訴等にタグ付けされた初回評価指標及びそれに対する患者の回答が医療用アプリ30に送信され、クラスタ分析パート30Cのクラスタ分析に用いられるように構成されている。
【0043】
図4において、クラスタ分析パート30Cでは、診断横断的アセスメントパート30Aにおける診断横断的アセスメントの結果(評定)及び/又は疾患特異的アセスメントパート30Bにおける疾患特異的アセスメントにおける結果(評定)、及びその他の分類用情報に基づいて、統計学的手法(例えばクラスタ分析)を用いて患者をクラスタ(グループ)に分類する(患者を特定の集団に分類する)。ここで、診断横断的アセスメントパート30Aにおける診断横断的アセスメントの結果(診断横断的アセスメントの評定)、疾患特異的アセスメントパート30Bにおける疾患特異的アセスメントの結果(疾患特異的アセスメントの評定)の各々により患者に対してクラスタ分析を行うことも出来るし、診断横断的アセスメント及び疾患特異的アセスメントの評定を統合してクラスタ分析を行うことも出来る。
【0044】
図4において、治療モジュール決定パート30Dでは、患者が分類されたクラスタ(集団)とリンク付けされた治療モジュール(或いはワーク)を選択する(治療モジュールを選択する工程)。リンク付けされた治療モジュールは、図4では図示しない医療用アプリごとの記録装置(データベース)に記録されている。
治療モジュールを実行することで、患者の適応的な行動が促進されることが期待できる。
図示はされていないが、各医療用アプリ30における治療モジュール決定パート30Dは、図示しないインターフェース及び情報伝達ラインを介して、選択した治療モジュールを患者側の情報処理端末3(図1図5)に伝達する機能を有している。ただし、サーバー10において、治療モジュール決定パート30Dが選択した治療モジュールを患者に対して実行する治療モジュール実行パートを設けることも可能である。
【0045】
本明細書において、心理療法の実行を、患者に対する介入と表現する場合がある。
図示の実施形態における医療用アプリでは、診断横断的アセスメントパート30Aの評定に基づく治療モジュールと、疾患特異的アセスメントパート30Bの評定に基づく治療モジュールの双方が提案可能である。換言すれば、診断横断的な介入と疾患特異的な介入の双方が可能である。
例えば診断横断的な介入では、「心理的柔軟性」の評定結果に対して、健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。疾患特異的な介入では、各疾患に特有な場面、状況等に対して、各クラスタに適切な技法で、当該疾患に応じた健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。
図示の実施形態における医療用アプリでは、診断横断的な介入が疾患特異的な介入に優先する。ただし、それに限定されない場合も存在する。
【0046】
医療用アプリ30において、「仮想現実」を用いた治療モジュールの提供が可能である。例えば、不安症の患者の場合であれば、仮想現実により「電車に乗る」という体験(仮想現実上の体験)をさせることが出来る。
例えば心因性EDであれば、医療用アプリが患者に提供するワークの一例として、例えば、公知の陰圧式勃起補助具(VCD)を用いたワークがある。当該ワークはパートナー(配偶者等)と実践することが好ましく、性交が可能な程度に勃起した事実、性交が上手くできた事実は患者の自信の回復に好影響を及ぼす。
ここで、医療用アプリ30においては、分類されたクラスタに対応して、患者が実行するべきホームワークが用意されている。当該ホームワークは、患者が実施すると症状の改善が期待でき、且つ、患者の主体性を向上させる様な内容に、予め編集されている。例えば、治療モジュール「注意訓練」では、1日に15分程度、音源に収録されている様々な音に対して注意を向けるトレーニングを行う。
【0047】
図示されていないが、医療用アプリ30において、治療モジュールによる治療の効果を評価する機能を有する評価パート(図示せず)を含む場合がある。当該評価パートは、既存の評価尺度等を用いて、所定のアルゴリズムに従って治療の効果を評価する機能を有する。患者に送信される評価内容には、例えば、症状を改善するための助言等が含まれる。一例として心因性EDの場合には、当該疾患に特徴的な症状である勃起機能の評価尺度(測定指標)として、国際勃起機能スコア(IIEF)を用いた評価を行う。国際勃起機能スコアでは、尺度得点から重症度分類がなされており、治療の効果を評価することが可能である。
ここで、患者側の端末3やウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得して、記録し、治療前後の効果測定の結果をレポート形式にすることが可能である。そして評価パートは、患者(或いは医師)に対してその様なフィードバックを実行する機能を有することが可能である。
【0048】
図示されていないが、治療の効果の評価尺度や測定指標の回答を入力するに際して、入力までの時間を記録するための計時手段及び記録手段、心拍数や血圧を測定する測定手段、患者の瞳孔開閉の様子や視線の向きや瞬きの回数を計測する手段(例えば患者側端末3がスマートフォンやPCである場合にはそのカメラ)、呼吸の回数の計測手段、体温の計測手段、或いは、顔色を観察する手段(例えば、患者側端末3のカメラ)を設け、指標入力時における客観的な情報をモニタリングして、回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置を設けていることが好ましい。
回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置を設けることにより、回答の精度や回答者の状態を客観的にモニタリングすることが出来る。回答者の状態としてモニタリングする事項としては、例えば、回答者である患者が測定指標をいい加減に入力していないか、「改善された」という結果を得るために偽りの入力をしていないか、測定指標を入力することでストレスが掛かっていないか、深く考え込んでいるかどうか、患者の反応性、患者の認知機能等である。この様なモニタリングにより、クラスタ分析の際の要因として取り入れることが出来る。
【0049】
回答の精度や回答者の状態を測定、観察する装置として、患者側端末3としてのスマートフォンやPCのカメラを用いた場合、当該カメラに専用のフィルターやレンズ等を装着して、上述したモニタリングを行うことが出来る。さらに、心拍数、血圧等の計測装置(図示せず)やアプリケーションを使用することが可能である。
さらに、匂いセンサー、脳波センサー等のデバイスを装着して回答者の客観的な情報を取得することが可能である。それにより、回答者の心身の状態を計測して、クラスタ分析の際の要因とすることも可能になる。そして、例えば脳波等を測定するヘッドセット状のデバイス等を装着すれば治療の実感が高まり、治療効果がさらに向上する。
【0050】
図示はされていないが、医療用アプリ30において、定期的に決めた時刻に合わせて定期或いは不定期に医療用アプリ使用を促すリマインド通知や励まし等のメッセージを送信する機能を有する装置を設けることが出来る。ゲーム的な要素を応用することも可能である。さらに、医療用アプリ30にアクセスすることについて患者に何かしらの報酬を与える機能を備えることが可能である。そして、医療用アプリ30にアクセスして医療用アプリを積極的に実行しようとする動機付けを高める様上記のような機能を有するウェアラブル機器等 を備えることが可能であり、治療を継続する(医療用アプリを継続使用する)という「正」の行動を強化することが出来る。
これ等の機能を発揮することにより、患者が医療用アプリ30にアクセスして治療モジュールを実行し続けたいという継続使用の意欲を高めて、治療途中で医療用アプリ30にアクセスしなくなる(治療途中で脱落する)事態を抑制し、医療用アプリ30による治療効果(或いは医療用アプリの効果)を向上することが出来る。
【0051】
リマインド通知の発信のタイミングについては、患者が活動しているか停止しているか?の情報と、患者が移動中であるか?在宅であるか?の情報(ステイタス管理)を管理して決定することが出来る。
また、日常生活下データから、心拍安定時、患者が暇な時等にリマインド通知を発信することが出来る。
さらに、患者側の情報処理端末3(例えばスマートフォン)の起動後(復帰後)は当該患者がスマートフォンに触れている可能性が高いので、その際にリマインド通知を発信することが出来る。
【0052】
医療用アプリ30における診断横断的アセスメント及び疾患特異的アセスメントに際して、スマートスピーカー等を用いて、音声による指標(例えば質問項目)の読み上げ、指示、ガイダンスその他に対して、患者が音声により入力し、記録し、応答すること等を可能にして、音声により相互に作用する機能(インタラクティブな機能)を具備する様に構成することが可能である。ここで、スマートスピーカー(AIスピーカー)は対話型の音声操作に対応したAIアシスタント機能を持つスピーカーであり、内蔵されているマイクで音声を認識し、情報の検索や連携家電の操作を行う。
【0053】
次に図5を参照して、患者側の情報処理端末3について説明する。患者側の情報処理端末3は、制御ブロック3A、表示ブロック3B、入力ブロック3C、記憶ブロック3D及び通信ブロック3Eを有している。
制御ブロック3Aは、患者側の情報処理端末3における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック3Bは、患者側の情報処理端末3の使用者(患者)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック3Cは、使用者(患者)が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック3Dは既存の記憶用機器により構成され、患者側の情報処理端末3のために、符号3Fで示す患者用プログラムが記憶されている。明示されていないが、データベース10F(図1)を記憶ブロック3Dとして用いることが可能である。通信ブロック3Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク60(図1)と接続する機能を有している。
患者側の情報処理端末3は、情報処理機能及び通信機能を有する電子機器であれば、特に限定はしない。ただし、昨今の普及を考慮すると、いわゆるスマートフォンの様な携帯型情報端末が好ましい。
【0054】
図6を参照して、医療機関側の情報処理端末4について説明する。医療機関側の情報処理端末4は、制御ブロック4A、表示ブロック4B、入力ブロック4C、記憶ブロック4D及び通信ブロック4Eを有している。
制御ブロック4Aは、医療機関側の情報処理端末4における情報処理等の制御を実行する機能を有している。表示ブロック4Bは、医療機関側の情報処理端末4の使用者(医師、医療機関の関係者等)に情報を表示する機能を有している。入力ブロック4Cは、医師、医療機関の関係者等が入力した情報を受け付ける機能を有している。
記憶ブロック4Dは既存の記憶用機器で構成され、医療機関側の情報処理端末4のため、符号4Fで示す医療機関用プログラムが記憶されている。データベース10F(図1)を記憶ブロック4Dとして用いることも可能である。通信ブロック4Eは、有線或いは無線の通信により、ネットワーク60(図1)と接続する機能を有している。
【0055】
明確には図示されていないが、システム100外部のWebサイト、例えば匿名患者会、チャットルーム、BBSを接続して、同じ疾病に悩む患者同士のコミュニティで医療用アプリの使用状況や推移を共有し、他の使用者に関するデータを統計的なデータとして見る様にすることが可能である。ここで、接続可能なシステム100外部のWebサイトは医療機関としての要件を満たす必要がある。
この様なシステム外部のWebサイトと接続することにより、各種疾病の自助グループ(例えば薬物依存症患者のための自助グループ)に参加することと同等な効果を得ることが出来て、治療続行のためのモチベーションをあげることが出来る。
【0056】
図示の実施形態において用いられる医療用アプリでは、日常生活下データを活用して、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)における「心理的柔軟性」や「マインドフルネス」の程度を可視化することが出来る。
日常生活下データとして、ウェラブル機器等で取得することが出来る生理学的データであるデジタルバイオマーカーを取得し、蓄積することにより、疾患の発症予測や状態把握・管理等に利用し、アセスメントの精度を向上させることが可能である。そして、よりパーソナライズされた最適な治療法を提案/提供することが出来る。さらに、機械学習やAIを用いたアルゴリズム開発におけるビッグデータとなり得る。
このビックデータを活用し、例えばAIを用いることにより、疾病の予測が可能であり、当該予測に基づいて予防対策を構築することも出来る。そして、疾病罹患を予防するための介入が可能である。或いは、ビックデータをAIで分析し、その分析結果に基づいて、個々の患者の個性、疾病の程度等に合致した内容(個々の患者に合った内容)の医療用アプリ、すなわち、患者毎にカスタマイズされたアプリを提供することが可能になる。
【0057】
図示の実施形態では、医療用アプリにおいて、日常生活下データを活用して、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)における「心理的柔軟性」や「マインドフルネス」の程度を可視化することが可能である。日常生活下データにおける心理データの例として、例えば、生態学的瞬間評価(EMA)の手法を用いて、毎朝、毎晩、その時の気分や感情、思考をその場でその時その瞬間に回答してもらうことが挙げられる。
【0058】
図示の実施形態において、各種医療用アプリにおける治療モジュールは、その内容が同一或いは類似する場合が存在する。そのため、疾患が重複しており、複数の医療用アプリを選択した場合、当該複数の医療用アプリが、同一或いは極めて類似する治療モジュールを提案する場合がある。
この様な場合、患者が選択された医療用アプリをそれぞれ独立して実行した場合には、同一或いは極めて類似する治療モジュールが繰り返して患者に提案されてしまう。重複疾患の割合によっては、同一の治療モジュールを繰り返すことが効果的である場合も存在するが、一般的に、同一或いは極めて類似する治療モジュールが患者に繰り返して提案されてしまうと、患者の「治療モジュールを実行しよう」というモチベーションが低下してしまう。或いは、決定された治療モジュールに対する患者の信頼性が低下する恐れがある。
また、従来の医療用アプリにおいては、重複疾患について対応しておらず、重複疾患の場合には、複数の疾患を特定して、それぞれに対応する医療用アプリを提示している。そのため、上述した様に、同一の治療モジュールが繰り返して提示され、類似した内容の治療モジュールが続けて提示されるという不都合が生じ易い。
【0059】
これに対して、図示の実施形態では、例えば疾病推定ブロック10Cにおいて、「選択された複数の医療用アプリにおける治療モジュールが同一にならない」という条件を追加して、重複疾患における同一の治療モジュールの重複を防止することが可能である。或いは、疾病推定ブロック10Cは、「選択された複数の医療用アプリにおける治療モジュールが同一にならない」ように選択する機能を有することが出来る。
また、類似した内容の治療モジュール同士を予めリンク付けして、疾病推定ブロック10Cにおいて、「選択された複数の医療用アプリにおいて、リンク付けされた治療モジュールがない」という条件を追加することが出来る。そのため、重複疾患において、類似した治療モジュールが患者に提示されることを防止出来る。或いは、疾病推定ブロック10Cは、「選択された複数の医療用アプリにおいて、リンク付けされた治療モジュールがない」ように選択する機能を有することが出来る。
そして、既存の医療用アプリが、図2図3で示す様に、図示の実施形態としてシステムに組み込まれたとしても、重複疾患の場合においても、同一の治療モジュールや類似した治療モジュールが患者に提示されることを防止出来る。
【0060】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば図示の実施形態においては、サーバー10に対して、疾病に対応したカスタマイズ、患者側のアプリケーションに対応させるカスタマイズ等を行うことが可能である。カスタマイズの手法については、公知技術を適用可能である。
また、本発明は、配偶者またはパートナーとの関係性の問題、勃起障害、うつ病、強迫症、パニック症、広場恐怖症、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安、限局性恐怖症、心的外傷後ストレス障害、複合性不安障害、不眠症、過敏性腸症候群、摂食障害と肥満、肥満その他の生活習慣病、双極性障害、境界性パーソナリティー障害、注意欠如・多動症、慢性または持続性疼痛、性機能障害、勃起障害以外の配偶者またはパートナーとの関係性の問題、アルコール依存その他の各種依存症、統合失調症及び他の重度精神病、全般性不安症や社交不安症やスピーチ不安その他の不安症、極限的恐怖症、不妊症(男性、女性)、アトピー性皮膚炎、過活動膀胱(尿失禁)、アンチエイジング、更年期障害等の、主として患者のメンタル面の状態に関連する疾患(疾病)であるか否かを推定することが出来る。そして、その他の疾病(疾患)であるか否かについて推定することが出来る。
【0061】
上述の実施例では、診断横断的指標パートおよび/または疾患特異的指標パートおよび指標選択パートで選択された指標への患者の回答結果によって疾患や生物心理社会的要因を推定し、それに応じた治療用アプリを提供し、その治療用アプリの中で再度アセスメントを行う例を示したが、推定された疾患や生物心理社会的要因に基づいて治療用アプリによる治療(ワーク)を開始(つまり、治療用アプリでのアセスメントを省略)してもよい。なお、治療用アプリで再度アセスメントを行うことで精度が上がることは言うまでもない。
【0062】
さらに、本発明は、コロナウィルス等の感染症の蔓延防止に寄与することが出来る。
また、幹細胞を用いた再生医療や幹細胞の上清を用いた治療と、本発明における各種医療用アプリとを組み合わせ、併用することで、より高い治療効果が期待できる。
それに加えて本発明においては量的測定指標や客観的なモニタリング手法、クラスタ分析を用いることが出来るので、第三者に対してプログラムのアルゴリズムを明確に説明することが可能であり、実際の結果による証拠とすることが容易である。そのため、各種承認に必要なデータを用意することが容易である。
【0063】
上述の例では、少なくとも疾患等に伴う精神的な状況を評価するための項目を含む診断横断的指標および疾患特異的な指標を用いて心因性疾患、心身症、ストレス関連疾患等の分類をすることを説明してきたが、さらに、器質性の疾患を評定するための問診項目や、指標を追加し、さらに、これらの評定を行うためのアルゴリズムを追加して、器質性の疾患等と、心因性の疾患と、生物心理社会的要因と、あるいはそれらの組み合わせを評定できる構成としても良い
【0064】
本発明で「診療」「医療」「治療」という言葉を用いているがこれは医師による診断・治療・予防のみを含むだけでなく、ヘルスケア、メンタルヘルスの維持・改善を含む概念であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
1・・・制御装置
3・・・患者側の情報処理端末(例えばスマートフォン)
4・・・医療機関側の情報処理端末(例えばPC)
10・・・サーバー
10A1・・・診断横断的指標パート
10A2・・・疾患特異的指標パート
10B・・・指標選択パート
10C・・・疾病推定パート
10D・・・回答解析パート
10E・・・治療履歴パート
20・・・総合診療ブロック
30・・・医療用アプリ
30A・・・医療用アプリにおける診断横断的アセスメントパート
30B・・・医療用アプリにおける疾患特異的アセスメントパート
30C・・・医療用アプリにおけるクラスタ分析パート
30D・・・医療用アプリにおける治療モジュール決定パート
60・・・ネットワーク
100・・・システム

図1
図2
図3
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図5
図6
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図8