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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133629
(43)【公開日】2023-09-25
(54)【発明の名称】車両制御装置、携帯機
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/20 20090101AFI20230915BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20230915BHJP
   H04W 84/10 20090101ALN20230915BHJP
【FI】
H04W84/20
H04W92/18
H04W84/10 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038709
(22)【出願日】2022-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】上澤 一暢
(72)【発明者】
【氏名】田中 将士
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067CC21
5K067EE02
5K067EE25
(57)【要約】
【課題】車両制御装置と携帯機とが無線接続された後の、携帯機の消費電力を抑制する。
【解決手段】車両に搭載される車両制御装置は、セントラルまたはペリフェラルのいずれかのロール(役割)に従って、携帯機と双方向の無線通信を行う。無線接続が確立する前は、車両制御装置がペリフェラルに設定され、携帯機がセントラルに設定される。無線接続が確立した後は、車両において第1の状態遷移(たとえば施錠状態から解錠状態への遷移)があった場合に、車両制御装置はセントラルに切り替わり、携帯機はペリフェラルに切り替わる。その後、車両において第2の状態遷移(たとえば解錠状態から施錠状態への遷移)があった場合は、車両制御装置はペリフェラルに切り替わり、携帯機はセントラルに切り替わる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、セントラルまたはペリフェラルのいずれかのロールに従って、携帯機と双方向の無線通信を行うことにより、車両の動作を制御する車両制御装置であって、
前記携帯機との間で無線接続が確立する前は、ペリフェラルに設定されて、セントラルである前記携帯機と無線通信を行い、
前記携帯機との間で無線接続が確立した後は、前記車両において所定の状態遷移があった場合に、ペリフェラルからセントラルに切り替わって、ペリフェラルである前記携帯機と無線通信を行う、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記車両において第1の状態遷移があった場合に、ペリフェラルからセントラルに切り替わって、ペリフェラルである前記携帯機と無線通信を行い、
その後、前記車両において第2の状態遷移があった場合に、セントラルからペリフェラルに切り替わって、セントラルである前記携帯機と無線通信を行う、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記第1の状態遷移は、施錠状態から解錠状態への遷移である、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記第1の状態遷移は、解錠状態から走行前の走行可能状態への遷移である、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記第1の状態遷移は、走行前の走行可能状態から走行中への遷移である、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記第2の状態遷移は、解錠状態から施錠状態への遷移である、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記第2の状態遷移は、走行後の走行可能状態から解錠状態への遷移である、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記第2の状態遷移は、走行中から走行後の走行可能状態への遷移である、ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
セントラルまたはペリフェラルのいずれかのロールに従って、車両に搭載された車両制御装置と双方向の無線通信を行う携帯機であって、
前記車両制御装置との間で無線接続が確立する前は、セントラルに設定されて、ペリフェラルである前記車両制御装置と無線通信を行い、
前記車両制御装置との間で無線接続が確立した後は、
前記車両において第1の状態遷移があった場合に、セントラルからペリフェラルに切り替わって、セントラルである前記車両制御装置と無線通信を行い、
その後、前記車両において第2の状態遷移があった場合に、ペリフェラルからセントラルに切り替わって、ペリフェラルである前記車両制御装置と無線通信を行う、ことを特徴とする携帯機。
【請求項10】
請求項9に記載の携帯機において、
前記第1の状態遷移によりセントラルからペリフェラルに切り替わった後、送信回数を間引いて前記車両制御装置と通信を行う、ことを特徴とする携帯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車などの車両に搭載され、ユーザが所持する携帯機との通信に基づいて車両の動作を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車には、ユーザが所持する携帯機と車両側の車両制御装置との間で双方向の無線通信を行い、その結果に基づいて車両の動作を制御するようにしたものがある。このような自動二輪車においては、車両制御装置は、双方向通信によってID照合による携帯機の認証を行い、認証結果が正常であればハンドルの解錠やエンジンの始動を許可する。この場合の通信方式としては、簡便さと省電力の観点から、近距離無線通信規格であるBLE(Bluetooth Low Energy;Bluetoothは登録商標)が広く採用されている。
【0003】
BLE通信では、双方向通信を行う一方のデバイスが「セントラル」となり、他方のデバイスが「ペリフェラル」となる。セントラルは、情報を提供する側のデバイスであり、ペリフェラルは情報を受け取る側のデバイスである。セントラルは「マスター」と同義であり、ペリフェラルは「スレーブ」と同義である。
【0004】
セントラルとペリフェラルが無線接続される前は、ペリフェラルは、短いパルス信号である接続要求信号(アドバタイズ信号)を周期的に送信する。セントラルは、あらかじめ設定された待受期間において、接続要求信号の受信を待ち受ける。そして、セントラルで接続要求信号が受信されると、セントラルとペリフェラルとの無線接続が確立し、両者間で双方向の通信が可能となる。特許文献1~6には、セントラルとペリフェラルとの間で双方向通信を行う各種のシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-12852号公報
【特許文献2】特開2019-213053号公報
【特許文献3】特開2013-229805号公報
【特許文献4】米国特許第11,013,062号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第109041031号明細書
【特許文献6】米国特許第11,122,389号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両に搭載される車両制御装置は、外部からの信号をいつでも受信できるように、常時動作させておく必要がある。このため、車両側の車両制御装置をセントラルとし、ユーザ側の携帯機をペリフェラルとすると、無線接続が確立する前の車両停車状態において、車両制御装置は、携帯機からの接続要求信号を待ち受ける間、動作状態を維持しなければならない。その結果、車両制御装置の消費電力が増大して、車載バッテリが消耗する。特に、自動二輪車の車載バッテリは、自動四輪車の車載バッテリに比べて容量が小さいため、短時間で消耗してしまう。一方、携帯機のほうは、ユーザの操作に基づいて動作を開始するので、動作状態となる時間を絞ることができる。こうしたことから、無線接続前においては、車両制御装置をペリフェラルとし、携帯機をセントラルとするのが好ましい。
【0007】
しかしながら、無線接続が確立して車両が走行可能な状態となった後も、携帯機がセントラルである状態がそのまま維持されると、携帯機は、車両の走行から停止までの間、一定時間間隔で常に車両制御装置と通信を行わねばならない。このため、携帯機では、電力消費が継続して内蔵バッテリの容量が減少し、車両制御装置との通信に支障が生じるおそれがある。一方、車両が走行を開始した後は、エンジンにより発電機が作動して車載バッテリが充電されるので、車両制御装置側ではバッテリ消耗の懸念はない。また、車両が電気自動車の場合は、定期的に外部から充電される機会が多いため、車両制御装置側でのバッテリ消耗の懸念はない。
【0008】
本発明は、車両制御装置と携帯機とが無線接続された後の、携帯機の消費電力を抑制することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車両制御装置は、車両に搭載され、セントラルまたはペリフェラルのいずれかのロールに従って、携帯機と双方向の無線通信を行うことにより、当該車両の動作を制御する装置である。携帯機との間で無線接続が確立する前は、車両制御装置はペリフェラルに設定されて、セントラルである携帯機と無線通信を行う。携帯機との間で無線接続が確立した後は、車両において所定の状態遷移があった場合に、車両制御装置のロールがペリフェラルからセントラルに切り替わる。
【0010】
たとえば、車両において第1の状態遷移があった場合は、車両制御装置は、ペリフェラルからセントラルに切り替わって、ペリフェラルである携帯機と無線通信を行う。また、その後、車両において第2の状態遷移があった場合は、車両制御装置は、セントラルからペリフェラルに切り替わって、セントラルである携帯機と無線通信を行う。
【0011】
第1の状態遷移の例としては、施錠状態から解錠状態への遷移、解錠状態から走行前の走行可能状態への遷移、走行前の走行可能状態から走行中への遷移などが考えられる。第2の状態遷移の例としては、解錠状態から施錠状態への遷移、走行後の走行可能状態から解錠状態への遷移、走行中から走行後の走行可能状態への遷移などが考えられる。
【0012】
本発明においては、車両制御装置と携帯機との間で無線接続が確立した後は、車両状態の遷移に応じて車両制御装置がセントラルに切り替わることで、携帯機はペリフェラルとなる。ペリフェラル側は、セントラル側からの応答要求に対して全て応答する必要はなく、送信回数を間引いて通信を行うことができる。このため、携帯機においては動作時間が短縮されて消費電力が低減される。また、ロールは車両の状態遷移があったときに自動的に切り替わるので、ユーザはロール切替のために特別の操作をする必要がない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザの使い勝手を損うことなく、無線接続確立後のロールを自動的に切り替えて、携帯機の消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による車両制御システムの全体図である。
図2】車両制御装置と携帯機の構成を示したブロック図である。
図3】車両制御装置と携帯機との間の通信の様子を示したタイムチャートである。
図4】ロール切替のステージを示した模式図である。
図5】ロール切替の各種のパターンを示した図である。
図6】車両制御装置と携帯機との間の通信手順を示した図である。
図7】車両制御装置と携帯機との間の通信手順を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。以下では、車両として、エンジンにより駆動される自動二輪車を例に挙げる。
【0016】
図1は、本発明による車両制御システムの一例を示している。車両制御システム100は、車両制御装置10と、携帯機20、30とから構成される。車両制御装置10は自動二輪車50に搭載されており、携帯機20、30は自動二輪車50のユーザにより所持される。車両制御装置10と携帯機20、30とは、前述のBLEによる双方向の通信を行う。携帯機20は、本実施形態ではキーフォブ(Key Fob;以下「FOB」と表記)であり、携帯機30は、本実施形態ではスマートフォンである。車両制御装置10に対する携帯機20、30の動作は基本的に同じであるので、以下では携帯機20についてのみ説明する。
【0017】
図2に示すように、車両制御装置10は、ECU(電子制御装置)から構成されていて、制御部11、送受信部12、アンテナ13、およびメモリ14を備えている。制御部11はCPUなどからなり、車両制御装置10の動作を制御する。送受信部12はアンテナ13を介して携帯機20と双方向の通信を行い、携帯機20へ信号を送信し、また携帯機20から信号を受信する。メモリ14には、制御部11の制御に必要なデータや、携帯機20のIDなどが記憶されている。
【0018】
車両制御装置10は、自動二輪車50に備わる操作部15、エンジンECU16、およびハンドルロックECU17と接続されている。操作部15には、メインスイッチ15aが設けられている。エンジンECU16は、自動二輪車50のエンジンの始動および停止を制御する。ハンドルロックECU17は、自動二輪車50のハンドルの施錠および解錠を制御する。
【0019】
携帯機20は、制御部21、送受信部22、アンテナ23、メモリ24、および操作部25を備えている。制御部21はCPUなどからなり、携帯機20の動作を制御する。送受信部22はアンテナ23を介して車両制御装置10と双方向の通信を行い、車両制御装置10へ信号を送信し、また車両制御装置10から信号を受信する。メモリ24には、制御部21の制御に必要なデータや、携帯機20のIDなどが記憶されている。操作部25には、電源スイッチであるオンオフスイッチ25aと、ランプ点滅やブザー鳴動により車両位置を知らせるためのアンサーバックスイッチ25bとが設けられている(図1も参照)。
【0020】
図3は、上述した車両制御システム100の基本的な動作を示したタイムチャートである。以下、図3を参照しながら、車両制御装置10と携帯機20との間の通信について説明する。
【0021】
図3(a)は、車両制御装置10と携帯機20が無線接続される前の動作を示している。前述したように、無線接続が確立する前は、車両制御装置10がペリフェラル、携帯機20がセントラルとなる。ペリフェラル側の車両制御装置10は、短いパルス信号である接続要求信号を一定時間間隔で、周期的に送信する。セントラル側の携帯機20では、周期的または断続的に接続要求信号を待ち受ける待受期間τが設定されており、この間、送受信部22がON(動作状態)となる。待受期間τにおいて接続要求信号が受信されると、車両制御装置10と携帯機20との無線接続が確立する。
【0022】
図3(b)は、車両制御装置10と携帯機20とが無線接続されてから、後述するロール切替が行われるまでの動作を示している。無線接続が確立した後は、セントラル側の携帯機20は、一定時間間隔でポーリング信号を送信し、これを受信したペリフェラル側の車両制御装置10は、携帯機20へレスポンス信号を返信する。この双方向の通信において、暗号化や通信間隔変更のためのデータが送受信され、また、ハンドルの解錠やエンジンの始動に必要な認証用データが送受信される。この認証用データには、携帯機20のIDが含まれている。そして、ID照合による認証が成功してハンドルの解錠などが行われると、それまでセントラルであった携帯機20はペリフェラルとなり、ペリフェラルであった車両制御装置10はセントラルとなる。すなわち、車両制御装置10と携帯機20の役割(ロール)が切り替わる。
【0023】
図3(c)は、ロールが切り替わった後の車両制御装置10と携帯機20の動作を示している。ロール切替後は、セントラルとなった車両制御装置10から、一定時間間隔でポーリング信号が送信され、ペリフェラルとなった携帯機20から、車両制御装置10へレスポンス信号が返信される。ここで、BLE通信においては、セントラル側からは、常に、ポーリング信号を周期的に送信する必要があるが、ペリフェラル側では、全てのポーリング信号に対してレスポンス信号を返信する必要はなく、レスポンス信号を間引いて送信することができる(破線のレスポンス信号は送信されない)。このため、ペリフェラル側の携帯機20では、レスポンス信号の送信回数が少なくて済み、その分、消費電力が低減される。
【0024】
次に、本発明におけるロール切替について、さらに詳しく説明する。本発明では、自動二輪車50の状態が、あらかじめ決められたある状態から他の状態へ遷移したときに、車両制御装置10と携帯機20のロールが切り替わる。図4は、この車両状態の遷移(以下、「ステージ」という。)を示した模式図である。
【0025】
図4では、自動二輪車50の状態として、「施錠状態」、「解錠状態」、「走行可能状態」、「走行中」の4つが規定されている。「施錠状態」は、自動二輪車50のハンドルが施錠された状態であり、「解錠状態」は、自動二輪車50のハンドルが解錠された状態である。「走行可能状態」は、エンジン始動中の自動二輪車50が停止している状態である。「走行中」は、自動二輪車50が発進してから停止するまでの状態である。
【0026】
図4からわかるように、自動二輪車50の状態は、図中で示した(1)~(6)の6つのステージにおいて遷移する。そして、あらかじめ決められた2つのステージで状態が遷移したときに、セントラルとペリフェラルのロールが自動的に切り替わる。すなわち、ステージ(1)~(6)はロール切替の条件を表しており、その内容は以下のとおりである。
【0027】
[ステージ(1):解錠]
自動二輪車50のハンドルが解錠されて、施錠状態から解錠状態へ遷移
[ステージ(2):エンジン始動]
自動二輪車50のエンジンが始動して、解錠状態から走行可能状態へ遷移
[ステージ(3):車速>0]
自動二輪車50が発進して走行可能状態から走行中へ遷移
[ステージ(4):車速=0]
自動二輪車50が停車して走行中から走行可能状態(エンジンは作動中)へ遷移
[ステージ(5):エンジン停止]
自動二輪車50のエンジンが停止して、走行可能状態から解錠状態へ遷移
[ステージ(6):施錠]
自動二輪車50のハンドルが施錠されて、解錠状態から施錠状態へ遷移
【0028】
図5は、上記の状態遷移に応じて、車両制御装置10と携帯機20のロールがどのように切り替わるかを表した図である。ここでは、(a)~(c)の3つの切替パターンが例示されている。図中、Prはペリフェラルを表し、Ctはセントラルを表している。
【0029】
図5(a)の例では、施錠状態から解錠状態へ遷移したとき(ステージ(1))と、解錠状態から施錠状態へ遷移したとき(ステージ(6))に、ロールが切り替わる。詳しくは、最初の施錠状態では、車両制御装置10がペリフェラルで、携帯機20がセントラルであるが、ステージ(1)で解錠状態になると、車両制御装置10がセントラルに切り替わり、携帯機20がペリフェラルに切り替わる。このロール切替状態は、図中の太枠で示すように、ステージ(1)からステージ(6)までの間、維持される。そして、自動二輪車50が停車して、ステージ(6)で解錠状態から施錠状態へ遷移すると、車両制御装置10が元のペリフェラルに切り替わり、携帯機20が元のセントラルに切り替わる。
【0030】
図5(b)の例では、解錠状態から走行可能状態(走行前)へ遷移したとき(ステージ(2))と、走行可能状態(走行後)から解錠状態へ遷移したとき(ステージ(5))に、ロールが切り替わる。詳しくは、最初の施錠状態および解錠状態では、車両制御装置10がペリフェラルで、携帯機20がセントラルであるが、ステージ(2)で走行可能状態(走行前)になると、車両制御装置10がセントラルに切り替わり、携帯機20がペリフェラルに切り替わる。このロール切替状態は、図中の太枠で示すように、ステージ(2)からステージ(5)までの間、維持される。そして、自動二輪車50のエンジンが停止して、ステージ(5)で走行可能状態(走行後)から解錠状態へ遷移すると、車両制御装置10が元のペリフェラルに切り替わり、携帯機20が元のセントラルに切り替わる。この状態は、ステージ(6)で解錠状態から施錠状態へ遷移した後も維持される。
【0031】
図5(c)の例では、走行可能状態(走行前)から走行中へ遷移したとき(ステージ(3))と、走行中から走行可能状態(走行後)へ遷移したとき(ステージ(4))に、ロールが切り替わる。詳しくは、最初の施錠状態から走行可能状態(走行前)までは、車両制御装置10がペリフェラルで、携帯機20がセントラルであるが、ステージ(3)で走行中へ遷移すると、車両制御装置10がセントラルに切り替わり、携帯機20がペリフェラルに切り替わる。このロール切替状態は、図中の太枠で示すように、ステージ(3)からステージ(4)までの間、すなわち自動二輪車50が走行している間、維持される。そして、自動二輪車50が停車して、ステージ(4)で走行中から走行可能状態(走行後)へ遷移すると、車両制御装置10が元のペリフェラルに切り替わり、携帯機20が元のセントラルに切り替わる。この状態は、ステージ(5)、(6)を経て施錠状態となった後も維持される。
【0032】
図5(d)は、本発明によらない場合の比較例である。ここでは、各ステージ(1)~(6)に関係なく、車両制御装置10はペリフェラルとして動作し、携帯機20はセントラルとして動作する。すなわち、各ステージに応じたロール切替は行われないので、無線接続後の車両制御装置10と携帯機20との間の通信は、常に、図3(b)に示したようになる。このため、携帯機20では、ポーリング信号の送信回数が多くなって消費電力が増加する。これに対し、本発明では、所定のステージでロールが切り替わり、車両制御装置10がセントラル、携帯機20がペリフェラルとなるので、図3(c)に示したように、携帯機20では、ポーリング信号の間引き送信が可能となって、消費電力が低減される。
【0033】
図6は、図5(a)において、施錠状態から解錠状態へ遷移するステージ(1)の詳細な通信手順を示している。
【0034】
最初、車両制御装置10はペリフェラルに設定されており、携帯機20はセントラルに設定されている。また、ハンドルロックECU17では、ハンドルのステータスが「施錠状態」となっている(S1)。ハンドルロックECU17は、このステータスを車両制御装置10へ通知する(S2)。ペリフェラルである車両制御装置10は、図3(a)のように、周期的に接続要求信号を送信している(S3)。一方、セントラルである携帯機20では、オンオフスイッチ25aが操作されてONになると(S4)、制御部21から送受信部22へ待機要求信号が送られる(S5)。これにより、送受信部22は、待受期間τ(図3(a)参照)で接続要求信号を待ち受ける。そして、接続要求信号が受信されると、携帯機20から車両制御装置10へ接続通知信号が送信され(S6、S7)、両者間の無線接続が確立する。
【0035】
その後、ロール切替が行われるまでは、車両制御装置10(ペリフェラル)と携帯機20(セントラル)との間で、図3(b)で示したような双方向の通信が行われる。この双方向通信では、まず携帯機20の認証を行うための暗号化処理が行われ(S8)、その結果が、車両制御装置10と携帯機20の各制御部11、21に通知される(S9、S10)。携帯機20の制御部21は、暗号に基づいて解錠識別信号(ID)を生成し、これを車両制御装置10へ送信する(S11、S12)。
【0036】
車両制御装置10では、制御部11が、解錠識別信号に基づくID照合によって携帯機20の認証を行い、解錠の可否を判定する(S13)。そして、認証結果が正常で解錠可と判定された場合は、制御部11からハンドルロックECU17へ、解錠指令が出力される(S14)。これを受けて、ハンドルロックECU17は、自動二輪車50のハンドルを解錠するとともに、ハンドルのステータスを「解錠状態」に変更し(S15)、このステータスを車両制御装置10へ通知する(S16)。
【0037】
車両制御装置10の制御部11は、解錠状態が通知されると、ロールの切替が必要と判定し(S17)、そのことを示す判定通知を携帯機20へ送信する(S18、S19)。携帯機20は、この判定通知を受信すると、ロールの切替を要求するロール切替要求信号を車両制御装置10へ送信する(S20)。この後、車両制御装置10と携帯機20との間で、ロール切替のための準備処理が行われる(S21)。この処理では、ロール切替後の信号の送信周期などのパラメータが設定される。
【0038】
そして、準備処理が終わるとロール切替が完了し(S22)、車両制御装置10はペリフェラルからセントラルに切り替わり(S23)、携帯機20はセントラルからペリフェラルに切り替わる(S24)。この時点から、車両制御装置10と携帯機20との間では、図3(c)で示したような双方向の通信が行われ、ペリフェラルとなった携帯機20は間引き通信を行う(S25)。以後、次に述べるステージ(6)までの間、この通信形態が継続される。
【0039】
図7は、図5(a)において、解錠状態から施錠状態へ遷移するステージ(6)の詳細な通信手順を示している。
【0040】
ハンドルロックECU17におけるハンドルのステータスは「解錠状態」であり(S50)、ハンドルロックECU17から車両制御装置10へ、このステータスが通知される(S51)。この状態で、車両のメインスイッチ15aにより施錠操作が行われると(S52)、当該操作が車両制御装置10へ通知される(S53)。これを受けて、車両制御装置10の制御部11は、ハンドルロックECU17に対して施錠指令を出力する(S54)。ハンドルロックECU17は、施錠指令を受信すると、自動二輪車50のハンドルを施錠するとともに、ハンドルのステータスを「解錠状態」から「施錠状態」に変更し(S55)、このステータスを車両制御装置10へ通知する(S56)。
【0041】
車両制御装置10の制御部11は、施錠状態が通知されると、ロールの切替が必要と判定し(S57)、そのことを示す判定通知を携帯機20へ送信する(S58、S59)。携帯機20は、この判定通知を受信すると、ロールの切替を要求するロール切替要求信号を車両制御装置10へ送信する(S60)。この後、車両制御装置10と携帯機20との間で、ロール切替のための準備処理が行われる(S61)。この処理では、ロール切替後の信号の送信周期などのパラメータが設定される。
【0042】
そして、準備処理が終わるとロール切替が完了し(S62)、車両制御装置10はセントラルからペリフェラルに切り替わり(S63)、携帯機20はペリフェラルからセントラルに切り替わる(S64)。この時点から、車両制御装置10と携帯機20との間では、図3(b)で示したような双方向の通信が行われる。
【0043】
なお、図6および図7は、図5(a)の例におけるロール切替の例であったが、図5(b)や図5(c)の例においても、ロールを切り替えるステージが図5(a)と異なるだけであるから、図5(a)と同様の仕組みに従って、ロール切替を行うことができる。
【0044】
以上述べた実施形態によれば、車両制御装置10と携帯機20との間の無線接続が確立する前は、車両制御装置10がペリフェラルで、携帯機20がセントラルとなっている(図3(a))。したがって、車両制御装置10では、接続要求信号を待ち受ける必要がなく、動作時間が長くならないので、消費電力が低減される。これにより、車載バッテリが短時間で消耗するのを回避することができる。
【0045】
一方、無線接続が確立した後は、自動二輪車50の状態の遷移に応じてロールが切り替わり、車両制御装置10がセントラル、携帯機20がペリフェラルとなる(図3(c))。したがって、携帯機20では、車両制御装置10からのポーリングに対して、レスポンス信号を間引いて送信することができるので、動作時間が短縮されて消費電力が低減される。その結果、携帯機20のバッテリの消耗によって、車両制御装置10と携帯機20との通信に支障が生じるのを回避することができる。また、セントラルとペリフェラルのロール切替は、車両の状態遷移に応じて自動的に行われるので、ユーザはロール切替のための特別の操作をする必要がなく、使い勝手が損なわれることがない。
【0046】
本発明では、上述した実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0047】
上述した実施形態においては、車両制御装置10と携帯機20(FOB)との間の通信について述べたが、車両制御装置10と携帯機30(スマートフォン)との間の通信も、同様の手順にしたがって行われる。また、携帯機20、30はFOBやスマートフォンに限らず、小型のタブレット端末や、身体に装着するウェアラブル端末などであってもよい。
【0048】
上述した実施形態においては、図5(a)の場合のロール切替のステージとして(1)と(6)を例に挙げたが、これに限らず、(1)と(5)や、(2)と(6)などのステージでロール切替を行ってもよい。同様に、図5(b)の場合も、(2)と(4)や、(3)と(5)のステージでロール切替を行ってもよい。
【0049】
上述した実施形態においては、図4のステージ(2)をエンジン始動とし、ステージ(5)をエンジン停止としたが、本発明では、自動二輪車50はモータを走行駆動源とする電動式のものであってもよく、その場合は、ステージ(2)はモータ始動となり、ステージ(5)はモータ停止となる。
【0050】
上述した実施形態においては、車両制御装置10と携帯機20との間の通信方式として、BLEを用いた例を挙げたが、BLEに代えて、Wi-Fi(登録商標)やZigBee(登録商標)のような他の通信方式を採用してもよい。
【0051】
上述した実施形態においては、車両として自動二輪車50を例に挙げたが、本発明は、自動二輪車に限らず、自動三輪車や自動四輪車などの車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 車両制御装置
11 制御部
12 送受信部
15a メインスイッチ
17 ハンドルロックECU
20 携帯機
21 制御部
22 送受信部
25a オンオフスイッチ
30 携帯機
50 自動二輪車(車両)
100 車両制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7