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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133631
(43)【公開日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ドア
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/82 20060101AFI20230915BHJP
   E06B 5/20 20060101ALI20230915BHJP
   E06B 7/10 20060101ALI20230915BHJP
   E06B 5/16 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
E06B3/82
E06B5/20
E06B7/10
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038723
(22)【出願日】2022-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000222325
【氏名又は名称】東洋シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101948
【弁理士】
【氏名又は名称】柳澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】諸留 充
(72)【発明者】
【氏名】亀井 敦
【テーマコード(参考)】
2E016
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E016HA02
2E016HA03
2E016HA05
2E016JA11
2E016KA05
2E016KA06
2E016LA01
2E016LB03
2E016LC03
2E016MA06
2E016MA11
2E016NA00
2E016RA03
2E036JA04
2E036JC03
2E036KA06
2E036LA01
2E036MA02
2E239BB03
2E239CA12
2E239CA26
2E239CA32
2E239CA42
2E239CA52
(57)【要約】
【課題】高い遮音性及び通気性を確保し、美観を向上させるとともに、防火性能を持たせることが可能なドアを提供する。
【解決手段】四周に設けられた枠部23の両面に表面板21を取り付け、一方の表面板21側に吸音材22を配置し、他方側に通気路24を設けている。上枠部41には上骨42a,bにより仕切られた空間47aを通気経路とすべく上部通気孔45a,bが設けられている。また、下枠部43には下骨44a~cにより仕切られた空間47b,cを通気経路とすべく下部通気孔46a~cが設けられている。上部通気孔45aと上部通気孔45b、及び、下部通気孔46a~cの少なくとも1つは、位置をずらして設け、下部通気孔46cから通気路24を通って上部通気孔45aに至る通気経路を蛇行させ、伝播する音を低減している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四周に枠部が設けられるとともに前記枠部の両面に表面板を取り付け、内部に吸音材と通気路を配置し、上辺及び下辺のそれぞれの枠部の最上辺と最下辺に通気孔を設けて前記通気路とともに上部から下部までの通気経路が確保され、四周はドア枠及びくつずりとの間を気密材により気密されたドアであって、上辺及び下辺のそれぞれの枠部は1または複数の空間に仕切られ、前記空間を枠部内の通気経路とする通気孔を設けており、上辺及び下辺のそれぞれの枠部に設けた通気孔の少なくとも1つは他の通気孔とずらした位置に設けたことを特徴とするドア。
【請求項2】
それぞれの前記表面板の内部側に、短手方向に間隔をあけて長手方向に補強材を設置し、一方の前記表面板に前記吸音材を設置して前記補強材で前記吸音材を挟み込み、他方の前記表面板に設けた前記補強材は前記吸音材に接していることを特徴とする請求項1に記載のドア。
【請求項3】
前記表面板に設けた前記補強材は、対向する前記表面板及び該表面板に設けた前記補強材とは接しないことを特徴とする請求項2に記載のドア。
【請求項4】
戸閉側の前記表面板を最上辺の前記通気孔より突出させた上部突出部を有するとともに、戸開側の前記表面板を最下辺の前記通気孔より突出させた下部突出部を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のドア。
【請求項5】
上辺及び下辺のそれぞれの枠部の前記空間に吸音材を配置したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のドア。
【請求項6】
前記通気経路に付加装置を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性を確保し、かつ、遮音性を高め、さらには美観を向上させるとともに、防火性能を持たせることが可能なドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内外の音を遮断する遮音性能を有するドアが広く使用されている。遮音のためには、気密性を高くし、ドア内部に配置した吸音材によりドアを通過する音を遮断することにより性能の向上を図ることができる。このような遮音性能を有するドアにおいても、室内外の通気を確保することが要求され、通気遮音性能を有するドアも開発されている。しかし、通気のためにドア内に通気経路を設けることは、その通気経路を通って音が伝播するため、遮音性能が低下してしまう。このような二律背反の遮音性能と通気性能を両立させるため、様々な開発がなされている。
【0003】
図12は、一般的な遮音通気性を有するドアの一例の断面図である。図中、81は表面板、82は桟材、83は通気経路、84は吸音材、85は換気口である。この図12に示した例は、例えば特許文献1に記載されているものである。2枚の表面板81の内側には吸音材84が貼り付けられ、遮音性を得ている。また、この2枚の表面板81の周縁間が桟材82により閉塞されて、内部に形成された空洞が通気経路83になっている。一方の表面板81の上部と他方の表面板81の下部に換気口85を設け、この換気口85と通気経路83とにより通気性を確保している。この通気経路83を伝播してくる音もあるが、両側の吸音材84により減衰され、また通気経路83が長いことにより、ある程度の遮音性を確保することができる。
【0004】
しかし、このような構造のドアでは、換気口85がドアの表面に露出しており、美観を損ねるという問題がある。また、吸音材84を両面に設けなければならず、製造工数が増加し、またドアの厚みが増してしまう。
【0005】
図13は、一般的な遮音通気性を有するドアの別の例の断面図である。図中、91は枠体、92は横材、93は貫通孔である。この図13に示した例は、例えば特許文献2に記載されているものである。矩形状の枠体91の内部に複数の横材92を配したフレームの両面に表面板を接合して構成されているものであって、枠体91の上材及び下材とした材および横材92に複数の貫通孔93を設けている。一般に音は、狭い空間から広い空間に抜けると拡散して弱まることから、貫通孔93を通過するたびに音は減衰してゆき、これによって通気経路を伝播する音を低減することができる。しかし、貫通孔93を小さくすると通気性が低下してしまうし、貫通孔93を大きくすると音の低減は図れない。また、音は経路長が長いほど減衰するが、貫通孔93は縦方向に同じ位置に配してあり、貫通孔93を通過してゆく音の経路長はドアの高さに限定されてしまう。さらに、横材92が両面の表面板に接するため、この横材92を通じて音が伝播してしまうという欠点もある。
【0006】
防火性能と換気性能を有するドアも考案されており、例えば特許文献3に記載されているものがある。防火性能を確保するために表面板や枠材などは鋼板により形成されており、一方の表面板に換気開口を設けるとともにドア下面に通気口を設けて通気経路を確保している。一方の表面板に換気開口が存在するため十分な防火性能が得られず、そのために火災などの際に通気経路を塞ぐための熱膨張材料を通気経路に設けるなどの必要が生じている。また、特許文献1などと同様に、表面板に換気開口を設けているため美観を損ねてしまう。なお、特許文献3に記載されている構成では防音性能は有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09-235960号公報
【特許文献2】特開2005-105579号公報
【特許文献3】特開2020-117971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、高い遮音性及び通気性を確保し、美観を向上させるとともに、防火性能を持たせることが可能なドアを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、四周に枠部が設けられるとともに前記枠部の両面に表面板を取り付け、内部に吸音材と通気路を配置し、上辺及び下辺のそれぞれの枠部の最上辺と最下辺に通気孔を設けて前記通気路とともに上部から下部までの通気経路が確保され、四周はドア枠及びくつずりとの間を気密材により気密されたドアであって、上辺及び下辺のそれぞれの枠部は1または複数の空間に仕切られ、前記空間を枠部内の通気経路とする通気孔を設けており、上辺及び下辺のそれぞれの枠部に設けた通気孔の少なくとも1つは他の通気孔とずらした位置に設けたことを特徴とするドアである。
【0010】
本願請求項2に記載の発明は、本願請求項1に記載の発明において、それぞれの前記表面板の内部側に、短手方向に間隔をあけて長手方向に補強材を設置し、一方の前記表面板に前記吸音材を設置して前記補強材で前記吸音材を挟み込み、他方の前記表面板に設けた前記補強材は前記吸音材に接していることを特徴とするドアである。
【0011】
本願請求項3に記載の発明は、本願請求項2に記載の発明における前記表面板に設けた前記補強材は、対向する前記表面板及び該表面板に設けた前記補強材とは接しないことを特徴とするドアである。
【0012】
本願請求項4に記載の発明は、本願請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明の構成に、さらに、戸閉側の前記表面板を最上辺の前記通気孔より突出させた上部突出部を有するとともに、戸開側の前記表面板を最下辺の前記通気孔より突出させた下部突出部を有していることを特徴とするドアである。
【0013】
本願請求項5に記載の発明は、本願請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発明の構成に、さらに、上辺及び下辺のそれぞれの枠部の前記空間に吸音材を配置したことを特徴とするドアである。
【0014】
本願請求項6に記載の発明は、本願請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発明の構成に、さらに、前記通気経路に付加装置を設けたことを特徴とするドアである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い遮音性を有するとともに高い通気性を確保しており、また美観を向上させることができる。さらに、本発明の構造では防火性能を持たせることが可能であり、防火換気防音ドアを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の一形態を示す正面図である。
図2】本発明の実施の一形態を示すA-A断面図である。
図3】本発明の実施の一形態を示すB-B断面図である。
図4】本発明の実施の一形態を示す上面図である。
図5】本発明の実施の一形態を示す下部貫通穴の位置関係の説明図である。
図6】本発明の実施の一形態における変形例を示す下枠部付近の断面図である。
図7】本発明の実施の一形態における別の変形例を示す一部断面図である。
図8】本発明の実施の一形態の別の例を示す断面図である。
図9】本発明の実施の一形態の別の例の変形例を示す断面図である。
図10】本発明の実施の一形態の別の例の別の変形例を示す断面図である。
図11】本発明の実施の一形態のさらに別の例を示す構成図である。
図12】一般的な遮音通気性を有するドアの一例の断面図である。
図13】一般的な遮音通気性を有するドアの別の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の一形態を示す正面図、図2は、同じくA-A断面図、図3は、同じくB-B断面図、図4は、同じく上面図、図5は、同じく下部通気孔の位置関係の説明図である。図中、11はドア、12はドア枠、13はヒンジ、21は表面板、22は吸音材、23は枠部、24は通気路、25,31は気密材、32はくつずり、41は上枠部、42a,bは上骨、43は下枠部、44a,b,cは下骨、45a、bは上部通気孔、46a~cは下部通気孔、47a~cは空間、48,49は補強材である。この例では、防音性及び通気性とともに防火性能を有するドアの一例を示している。なお、各図においてドア11を開く際にドア11が回動する方向の側を戸開側、ドア11を閉める際にドア11が回動する方向の側を戸閉側とし、またドア11の戸先-戸尻方向を左右方向(短手方向)としている。この例ではドア11の長手方向が上下方向であるとしている。
【0018】
ドア11は、枠部23が四周に設けられるとともに、枠部23の両面にそれぞれ表面板21が取り付けられている。この例では防火性能を有するため、表面板21は鋼板であり、枠部23には鋼材による骨材が用いられている。このようなドア11がヒンジ13によりドア枠12に取り付けられ、開閉自在に構成されている。後述するように、ドア11の枠部23の最上辺と最下辺に通気のための通気孔を設けており、表面板21には通気のための開口は設けられていない。これにより、通気性を有していながら、ドア11としての美観、意匠性を向上させることができる。
【0019】
ドア枠12の上部及び左右部には、ドア11と当接する部分に気密材31が設けられており、ドア11を閉めた際にドア11の戸閉側端部が気密材31に当接する。また、ドア枠12の下部にはくつずり32が設けられており、ドア11を閉めた際にドア11の下部(下枠部43)に設けられている気密材25とくつずり32が当接する。これらによって、ドア11を閉めた際の気密性を向上させ、ドア11の四周から漏れ出る音を低減している。
【0020】
ドア11の内部には、図2図3に示すように吸音材22を配置するとともに、通気路24を設けている。この例では、吸音材22は戸開側の表面板21の内側に配置し、吸音材22と戸閉側の表面板21との間を通気路24としている。この吸音材22によって戸開側と戸閉側との間の音の伝播を低減するとともに、通気路24を通過する音も吸音材22により吸音して戸開側に漏れ出る音を低減し、全体として高い遮音性能を実現している。また、この通気路24とともに、後述する上部及び下部の枠部である上枠部41および下枠部43に設けられている複数の通気孔とにより、ドア11の上部から下部までの通気経路を確保している。
【0021】
図3に示すように、戸開側の表面板21のドア11内部側には、上下方向(長手方向)に延在する補強材48が左右方向(短手方向)に間隔をあけて設置され、戸開側の表面板21の剛性を増している。この補強材48の間に吸音材22を配置している。図3に示す例では吸音材22を間隔を開けて配置しているが、もちろん、間隔を開けずに配置してもよい。
【0022】
また、戸閉側の表面板21のドア11内部側にも、上下方向(長手方向)に延在する補強材49が左右方向(短手方向)に間隔をあけて設置されている。この補強材49は、戸閉側の表面板21の剛性を増すとともに、通気路24を確保している。さらに、補強材49の先端部が吸音材22と当接して吸音材22の押さえとしても機能し、また戸閉側の表面板21に伝わる音を、補強材49を介して吸音材22により低減することができる。この補強材49は、戸開側の表面板21及び戸開側の表面板21に設けられている補強材48とは接していない。従って、両側の補強材を介して音が伝播することはなく、遮音性能の向上に寄与している。
【0023】
吸音材22は、補強材48により挟まれて左右方向(短手方向)の位置ずれが抑えられ、さらに補強材49により戸開側-戸閉側方向の位置ずれも抑えられて固定される。そのため、例えば表面板21に貼着するなどの工程を不要にして簡易な製造を可能にしている。
【0024】
なお、表面板21に設けられている補強材48及び補強材49は、上述のように相互に接しないように設けられるとともに、ドア11の四周に配置されている枠部23とも接しないように設けられている。このように補強材48,49を独立させることにより、補強材48,49を音が伝播しないようにし、防音効果を向上させている。
【0025】
ドア11の四周に設けられている枠部23、特に上部及び下部の枠部である上枠部41および下枠部43については、2以上の仕切り部を有して1以上の空間を形成している。例えば、後述するように複数の骨材を組み合わせて用いてもよいし、断面が略矩形の管材を用いてもよいし、他の構成であってももちろんよい。
【0026】
枠部23の上部の枠部である上枠部41及び左右の枠部は、この例では、鋼材を略コの字型に曲げた力骨と呼ばれる骨材を2重に配置している。上枠部41では、これらの骨材を上骨42a,42bとして示している。上枠部41には、この上骨42aと上骨42bとによって仕切られた空間47aが形成されている。そして、空間47aを仕切っている上骨42aには、外部と空間47aを貫通する上部通気孔45aが設けられ、この上部通気孔45aがドア11の最上辺の通気孔となる。また、同様に空間47aを仕切っている上骨42bには、空間47aと通気路24を貫通する上部通気孔45bが設けられている。これらの上部通気孔45a,45bを通じて外部と通気路24との間の通気を可能にしている。なお、最上辺の上部通気孔45aを通じて行われる外部との通気は、戸閉側はドア枠12の気密材31とドア11とが当接して通気できず、戸開側との通気が図られることになる。
【0027】
この上部通気孔45a,45bは、位置をずらして設けている。図4に示す例では、戸閉側-戸開側方向にずらすとともに、左右方向(短手方向)にもずらして設けている。もちろん、いずれかの方向のみにずらした構成であってもよい。上部通気孔45a,45bをずらして設けることによって通気経路を蛇行させている。上部通気孔45aや上部通気孔45bから空間47aに侵入してきた音は空間47a内で拡散して減衰する。それとともに、空間47aの壁などにより反射して減衰し、さらに蛇行した通気経路により伝播する長さが長くなってさらに減衰する。これらにより、伝播しようとする音を低減することができる。特に上枠部41に存在する空間47aで通気経路を蛇行させることから、通気経路の曲がりも大きくなり、同じ位置に上部通気孔45a、45bを設ける場合に比べて効率よく音を低減することができる。このような遮音性能の向上を、もともと存在する上枠部41において行うことができる。
【0028】
枠部23の下部の枠部である下枠部43についても、この例では3本の骨材を配置した場合を示している。これらの骨材を下骨44a,44b,44cとして示している。上述したように下枠部43には気密材25が設けられており、ドア11を閉めた際にドア枠12に設けられているくつずり32と当接してドア11を閉めた際の気密性を向上させ、遮音性能を向上させている。
【0029】
下枠部43には、下骨44a,44b,44cの3本の骨材を配置している。この下枠部43では、下骨44aと下骨44bとにより仕切られた空間47b、下骨44bと下骨44cとにより仕切られた空間47cが形成されている。そして、下骨44aには通気路24と空間47bを貫通する下部通気孔46aが、下骨44bには空間47bと空間47cを貫通する下部通気孔46bが、下骨44cには外部と空間47cを貫通する下部通気孔46cが、それぞれ設けられている。この下部通気孔46cがドア11の最下辺の通気孔となる。これらの下部通気孔46a,46b,46cを通じて外部と通気路24との間の通気を可能にしている。なお、この外部との通気は、戸開側は気密材25とくつずり32とが当接して通気できないことから、戸閉側との通気が図られることになる。
【0030】
この下枠部43の例のように3以上の部分に通気孔が設けられている場合、少なくとも1つの通気孔について他の通気孔とずらした位置に設ければよい。図5に下部通気孔46a,46b,46cの位置関係の一例を示している。図5に示す例では、下部通気孔46cの位置を、下部通気孔46a,46bと戸閉側-戸開側方向及び左右方向(短手方向)にずらして設けている。下部通気孔46a,46bと下部通気孔46cの位置をずらすことによって通気経路を蛇行させている。これにより、上枠部41の場合と同様にして、音が通る通気経路の長さが長くなるようにし、また音が直進せずに壁で反射する量を多くして、伝播する音を減衰させている。特に下枠部43にある空間で通気経路を蛇行させることから、通気経路の曲がりも大きくなり、効率よく音を低減することができる。このような遮音性能の向上を、もともと存在する下枠部43において行うことができる。
【0031】
もちろん、戸閉側-戸開側方向あるいは左右方向(短手方向)のみにずらしてもよい。また、下部通気孔46aと下部通気孔46bの位置についても、この例では戸閉側-戸開側方向に多少のずれをもって設けているが、さらに大きくずらしたり、左右方向(短手方向)にもずらして設けてもよい。
【0032】
上述のような上枠部41及び下枠部43の構造によって、通気経路は図2に二点破線で示すように上枠部41及び下枠部43で屈曲した経路となる。戸開側と戸閉側とが通気経路で結ばれていることによって、ドア11を閉めた状態でも換気を行うことができる。しかし、この通気経路を音が伝播して漏れ出るデメリットがあるが、通気路24に配置された吸音材22で吸音するとともに、上枠部41及び下枠部43で通気経路を蛇行させることによって、通気経路を伝播してくる音を減衰させることができる。このように、換気性能を有しながら防音性能を得ることができる。
【0033】
なお、上部通気孔45a,b及び下部通気孔46a~cの大きさについては任意であるが、上述のように通気経路を蛇行させるために位置をずらせる範囲で狭めておくことが望ましい。狭い通気孔から各空間や外部、通気路24等へ出て行く音は拡散して減衰することから通気孔は小さい方が防音性能としては望ましいが、通気孔を通過できる風量が減少することから、両者を勘案して大きさ、形状などを決めればよい。この例では、左右方向(短手方向)に延在するいくつかのスリット状の開口により上部通気孔45a,b及び下部通気孔46a~cを形成している。ここで、図3に示しているように吸音材22を間隔をあけて配置している場合、通気路24との通気を行う上部通気孔45b及び下部通気孔46aについては、吸音材22を配置している位置に合わせて設けるとよい。このような配置にすることによって、上部通気孔45bや下部通気孔46aから通気路24に侵入してきた音を吸音材22によって効率よく吸収させることができ、防音性能を向上させることができる。
【0034】
この例では上枠部41に1つ、下枠部43に2つの空間を設けた例を示しているが、形成される空間の数及びその形状はこの例に限られるものではない。例えば上枠部41に3以上の仕切り部を設けて2以上の空間を形成してもよいし、下枠部43に4以上の仕切り部を設けて3以上の空間を形成してもよい。また、形成される空間の形状も矩形に限られるものではないし、空間の配置も上下に設ける場合に限られるものではない。上枠部41と下枠部43のそれぞれについて、仕切られた各空間を通気経路とすべく通気孔を設けるとともに、複数の通気孔のうち少なくとも1つの通気孔について他の通気孔とずらした位置に設け、遮音性を向上させればよい。上枠部41に2つの空間を設けた例や、空間の形状、配置の変形例については後述している。
【0035】
図6は、本発明の実施の一形態における変形例を示す下枠部付近の断面図である。図中、51は突起材である。この変形例では、下枠部43の空間に突出した突起材51を設けた例を示している。下枠部43の下骨44a及び下骨44bで区切られた空間47b内に、突起材51を突出させている。この突起材51は、下骨44aに設けられた下部通気孔46aと、下骨44bに設けられた下部通気孔46bの間に設けており、上下方向(長手方向)に見たときに下部通気孔46a及び下部通気孔46bが隠れる程度に突出している。
【0036】
この突起材51によって、通気経路は図6に二点鎖線で示すように空間47b内で屈曲することになる。下部通気孔46bを通過して空間47bに侵入してきた音はそのまま直進しようとするが、突起材51により進行を阻まれ、突起材51を回り込んで下部通気孔46aに到達することになる。これによって音を減衰させることができ、遮音性を高めることができる。
【0037】
突起材51は、図6に示した例のように、上下方向(長手方向)に見たときに通気孔が隠れる程度以上に空間内に突出させることが望ましい。しかし、当該空間に設けられている通気孔の位置に応じて、一方の通気孔から他方の通気孔へ向かう直線上の一部にでもかかるように突起部51が設けられていれば、ある程度の遮音効果を期待することができる。
【0038】
このような突起材51は、いずれの空間に対しても配置することができ、例えば下枠部43の空間47cや、上枠部41の空間47aに配置してもよい。特に、左右方向(短手方向)や戸開-戸閉方向の位置が同じ、あるいは位置のずれが小さい通気孔が対向している場合、通気経路に侵入してきた音は直進して伝播しやすい。このような場合に突起材51を用いて通気経路を屈曲させ、蛇行させることによって、効率よく音の伝播を低減して遮音性を高めることができる。
【0039】
もちろん、突起材51は1つの空間に1つに限られるものではなく、複数の突起材51を互い違いに配置して空間における通気経路を屈曲させてもよい。また、突起材51は左右方向(短手方向)、戸開-戸閉方向に突出させるだけでなく、上下方向(長手方向)にも突出させ、空間内の通気経路を絞ったり、通気経路をより複雑にしてもよい。
【0040】
図7は、本発明の実施の一形態における別の変形例を示す一部断面図である。図中、52は吸音材である。上述の各例では、吸音材22はドア11の内部、特に枠部23で囲まれた内部に配置している。これ以外に、上枠部41や下枠部43内の空間や通気孔周辺に吸音材52を設けてもよい。
【0041】
図7(A)に示す例では、上枠部41に設けられている空間47a内に吸音材52を設けている。空間47aに侵入した音は上述のように蛇行した通気経路により減衰するが、それとともに、空間47a内に配置された吸音材52によって吸音され、さらに減衰する。これによって、さらに遮音性能を高めることができる。また、図7(A)に示した例では、空間47a内の通気経路は吸音材52を回り込む経路となる。これにより、さらに効率よく吸音することができる。
【0042】
図7(B)に示す例では、下枠部43に設けられている空間47b内に吸音材52を設けている。空間47bに侵入した音は空間47b内に配置された吸音材52によって吸音され、減衰する。これによって、さらに遮音性能を高めることができる。もちろん、空間47c内に吸音材52を配置してもよい。
【0043】
なお、吸音材52は上枠部41あるいは下枠部43のいずれかに設けてもよいし、両方に設けてもよい。また、複数の空間のうちいずれに設けるか、あるいはすべての空間に設けるかなどは任意である。さらに、各空間内の吸音材の配置位置についても任意である。
【0044】
図8は、本発明の実施の一形態の別の例を示す断面図である。図中、61は上部突出部、62は下部突出部である。この例では、戸閉側の表面板21について、上枠部41の上辺に設けられている最上部の通気孔である上部通気孔45aより上方に突出させた上部突出部61を設けている。ドア11を閉めた際には、ドア11の戸閉側の外周部がドア枠12に設けられている気密材31と当接して気密性を確保できる。ドア11の上部においても、上部突出部61を含めたドア11の戸閉側の上部がドア枠12の気密材31と当接することになる。
【0045】
また、ドア11の開閉のためにドア枠12の上部下面は上部突出部61の上端には接しないように構成されており、従って、上枠部41の上辺に設けられている上部通気孔45aとドア枠上部の下面との間の間隔x1は上部突出部61の高さ以上に広くとることができる。そのため、ドア11の上部での通気量を多くして通気性を高めることができる。
【0046】
ドア11の下部においては、戸開側の表面板21について、下枠部43の下辺に設けられている最下部の通気孔である下部通気孔46cより下方に突出させた下部突出部62を設けている。これにより、下枠部43の下辺に設けられている下部通気孔46cとドア枠下部の上面(くつずり32の上面)との間の間隔x2を下部突出部62の高さ以上に広くとることができる。そのため、ドア11の下部での通気量を多くして通気性を高めることができる。
【0047】
なお、下部突出部62を設けるに伴って、この例では気密材25も下部突出部62に設けている。これにより、ドア11を閉めた際に気密材25がドア枠12の下部に設けられているくつずり32と当接し、気密性を確保することができる。
【0048】
一般に防火ドアとして機能させる場合、下枠部43を除く枠部23とドア枠12とが重なり合い、下枠部43ではくつずり32とドア11の下端との隙間が10mm以下であれば防火性能があるとされている。ドア11の上部では上述のように上部突出部61とドア枠12の上部とが重なり合っており、ドア11の左右においてもドア枠12と重なり合っている。そして、ドア11の下部において下部突出部62の下端とくつずり32の上面との間隔を10mm以下にすれば防火性能を有する防音ドアとして構成することができる。
【0049】
この例では上部突出部61及び下部突出部62を設けた例を示しているが、例えば上部突出部61のみ、あるいは下部突出部62のみを設けて構成してもよい。また、図6に示した例のように、空間内に突起材51を設けてもよい。
【0050】
図9は、本発明の実施の一形態の別の例の変形例を示す断面図である。図中、42cは上骨、45cは上部通気孔、47dは空間、63は上部突出部押さえである。図8に示した例では、上部突出部61は戸閉側の表面板21を突出させているだけであるが、この変形例では、上部突出部61に上部突出部押さえ63を設けている。この上部突出部押さえ63によって上部突出部61を補強し、強度を増すことができる。
【0051】
また、この変形例では上枠部41にも複数の空間を設けた例を示している。具体的には、上枠部41を構成する上骨として上骨a,b,cの3本を設け、これらにより上枠部41の空間を仕切り、上枠部41に形成されていた空間47aとともに空間47dを形成している。そして、上骨42aには外部と空間47aを貫通する上部通気孔45aが、上骨42bには空間47aと空間47dを貫通する上部通気孔45bが、上骨42cには空間47dと通気路24を貫通する上部通気孔45cが、それぞれ設けられている。この上部通気孔45a,45b,45cを通じて、戸開側の外部と通気路24との間の通気を可能にしている。上部通気孔45aの上部の戸閉側は、上部突出部61とドア枠12に設けられている気密材31とが当接しており、気密性を確保している。
【0052】
上部通気孔45a,45b,45cは、それぞれ位置をずらして設けている。図9に示す例では、戸閉側-戸開側方向にずらしており、左右方向(短手方向)にもずらして設けている。特に、上部通気孔45bと上部通気孔45cとは上下方向(長手方向)に重ならない程度に戸閉側-戸開側方向にずらして設けており、通気路24から上部通気孔45cを通じて空間47dに侵入してきた音は、蛇行した通気経路に従って上部通気孔45bへと伝播することになる。そのため、空間47dに侵入してきた音は減衰し、上枠部41に空間が1つの場合に比べて遮音性能をさらに向上させることができる。
【0053】
また、この例では空間47aと空間47dとを仕切っている上骨42bの端部を上方へ延伸して折り返し、上部突出部押さえ63として用いている。これにより、遮音性能の向上と上部突出部61の補強を実現した上で部品点数を低減することができる。もちろん、空間を仕切っている上骨42bと上部突出部押さえ63とを別部材で構成してもよいことは言うまでもない。
【0054】
上述しているが、例えば上部突出部61を設けていない構成例においても上枠部41に2以上の空間を形成し、位置をずらした通気孔を設けてもよい。もちろん、下枠部43についても1または3以上の空間を形成するように仕切り部を設けてもよい。さらに、図6に示した突起材51を適宜設置してもよい。
【0055】
図10は、本発明の実施の一形態の別の例の別の変形例を示す断面図である。上述の各例においては、複数の空間を枠部に設ける場合、仕切られた空間は上下に重なるように設けられているが、これに限られるものではない。例えば図10(A)に示した例では、骨材42bの一部を上下方向に配置してその部分に上部通気孔45bを設けている。これにより、空間47aと空間47dは戸閉側-戸開側方向に並んで設けられることになる。
【0056】
このような空間の配置にすることによって、通気経路は二点鎖線で図示するように蛇行することになる。通気路24から上部通気孔45cを通じて空間47dに侵入してきた音は、そのまま直進できずに戸開側にある上部通気孔45bから空間47aに進む。空間47aに侵入してきた音もそのまま直進できず、上方にある上部通気孔45aから外部へと進むことになる。このような蛇行した通気経路を通ることによって音は減衰し、遮音性を高めることができる。
【0057】
また、枠部に設ける空間の形状は断面が矩形の空間に限られるものではない。図10(B)に示した例でも骨材42bの一部を上下方向に配置してその部分に上部通気孔45bを設けているが、空間47aを鍵型に設けた例を示している。空間47aは空間47dの戸開側及び上部に設けられており、上部通気孔45aは空間47dの上方に設けられている。
【0058】
このような空間の配置にすることによって、通気経路は二点鎖線で図示するように、図10(A)に示した例よりもさらに蛇行することになる。通気路24から通気孔45cを通じて空間47dに侵入してきた音は、そのまま直進できずに戸開側にある通気孔45bから空間47aに進む。空間47aに侵入してきた音もそのまま直進できずに上方へ向かうが、それでも直進できず、さらに戸閉側へ向かって通気孔45aから外部へと進むことになる。このような蛇行した通気経路を通ることによって音はさらに減衰し、遮音性を高めることができる。
【0059】
この例では上枠部41における空間配置の例を示したが、もちろん、下枠部43においても同様の空間配置を行うことができる。また、例えば仕切り部となる骨材を斜めに通し、その部分に通気孔を設けて、斜面を有する空間を形成してもよい。これらの例に限らず、様々な形状の空間を枠内に形成することができる。なお、枠部に空間を1つしか設けない場合でも、矩形以外の断面形状を有する空間を設けてもよい。また、例えば上部突出部61を設けていない構成例や下部突出部62を設けていない構成においても同様の変形が可能であるし、突起材51と組み合わせて用いるなど、様々な変形が可能であることは言うまでもない。
【0060】
図11は、本発明の実施の一形態のさらに別の例を示す構成図であり、図11(A)は戸閉側正面図、図11(B)はA-A断面図、図11(C)はB-B断面図である。図中、71は付加装置、72は着脱口である。この例では、通気路24内に付加装置71を設けた例を示している。付加装置71としては、例えば通気を促進するための換気ファンを設けたり、芳香剤や脱臭剤を設置し換気機能を利用して芳香を拡散あるいは脱臭したり、除菌あるいは滅菌装置を設けて衛生環境を改善したり、集塵装置を設けてちりやほこりの侵入あるいは放出を低減したりすることが考えられる。もちろん、これらを組み合わせた付加装置71を設置することもできるし、別の機能の付加装置71を設置することもできる。
【0061】
この例では、付加装置71は着脱自在に構成されている。付加装置71は戸閉側の表面板21に設けた着脱口72からドア11内部の通気路24に設置することができ、また取り外すことができる。例えばメンテナンスのために取り外したり、別の付加装置71に交換する際に、容易に行うことができる。なお、付加装置71を設置しない場合や、付加装置71を取り外した後には、めくら板などを着脱口72に設置して塞いでおけばよい。
【0062】
また、この例では図11(C)に示すように吸音材22を設けていない部分に付加装置71を設けており、ドア11の厚みに近い大きさの付加装置71まで設置可能にしている。例えば薄型の付加装置71で通気路24の厚み程度の大きさであれば、吸音材22を設置してある部分に付加装置71を設けてもよい。この場合、付加装置71を吸音材22に当接させ、付加装置71を吸音材22の押さえとして利用してもよい。
【0063】
図11(A)に示す例では付加装置71を4個設置できる例を示しており、うち1個が上枠部41に設置可能な例を示している。なお、図11(B)では一部破断して示しているため、上枠部41の付加装置を含む上部2個と下部1個の付加装置71について示している。もちろんこの例に限らず、1個または2個または3個、あるいは4個以上を設置できるように構成してもよい。また、上枠部41に限らず、下枠部43に付加装置を設けるなど、設置可能な範囲で任意の位置に付加装置を設置すればよい。また、上部突出部61,下部突出部62の有無など、上述した様々な構成に対して付加装置71を設置可能に構成することができる。
【0064】
上述の各例においては戸開側に吸音材22を配置し、戸閉側に通気路24を設けた構成を示しているが、これに限らず、例えば戸閉側に吸音材22、戸開側に通気路24を設けて構成してもよい。この場合、それぞれの通気孔の位置も配置に応じて変更すればよい。
【0065】
また、上述の各例ではドア11が防火ドアとしての機能を有するように、例えば表面板21は鋼板とし、枠部23も鋼材を用いているなどの対策を講じているが、防火性能が不要であれば各部の部材について代替可能な材料を用いてもかまわない。本発明では、このほかにも発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
11…ドア、12…ドア枠、13…ヒンジ、21…表面板、22…吸音材、23…枠部、24…通気路、25,31…気密材、32…くつずり、41…上枠部、42a~c…上骨、43…下枠部、44a,b,c…下骨、45a~c…上部通気孔、46a~c…下部通気孔、47a~d…空間、48,49…補強材、51…突起材、52…吸音材、61…上部突出部、62…下部突出部、63…上部突出部押さえ、71…付加装置、72…着脱口、81…表面板、82…桟材、83…通気経路、84…吸音材、85…換気口、91…枠体、92…横材、93…貫通孔。
図1
図2
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図10
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