(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133633
(43)【公開日】2023-09-25
(54)【発明の名称】流体の組成を繰り返し変更するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B01D 36/02 20060101AFI20230915BHJP
B01F 23/45 20220101ALI20230915BHJP
B01F 23/20 20220101ALI20230915BHJP
B01F 25/421 20220101ALI20230915BHJP
【FI】
B01D36/02
B01F23/45
B01F23/20
B01F25/421
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023075945
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2021531896の分割
【原出願日】2019-12-05
(31)【優先権主張番号】102018009597.6
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】507266912
【氏名又は名称】ザトーリウス ステディム ビオテーク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ロイトホルト,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘリング,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】グルッマート,ウルリッヒ
【テーマコード(参考)】
4D116
4G035
【Fターム(参考)】
4D116BB01
4D116BC01
4D116DD07
4D116FF18B
4D116GG12
4D116GG13
4D116GG21
4D116QA44C
4D116QA44F
4D116QA51C
4D116QA51F
4D116QC02A
4D116QC04A
4D116QC04B
4D116QC12A
4D116QC13A
4D116QC22A
4D116QC32A
4D116QC43B
4D116TT01
4D116TT07
4D116VV07
4D116VV30
4G035AB27
4G035AB37
4G035AC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体の組成を繰り返し変更するための装置および方法を提供する。
【解決手段】装置は、流体の組成を変更するための第1のモジュール19、第2のモジュール21ならびに入り口および出口を備えたドウェルモジュール20を含む。本発明の好ましい態様によれば、第1または第2のモジュールはスタティックミキサである。スタティックミキサであるモジュールでは、透過流を排出する必要がなく、より簡単に流体の組成を繰り返し変更することができる。上記の好ましい態様は、第1のモジュールがスタティックミキサであり、第2のモジュールがフィルタユニットである場合と、第1のモジュールがフィルタユニットであり、第2のモジュールがスタティックミキサである場合とを含む。第1のモジュールがスタティックミキサであり、第2のモジュールがフィルタユニットである場合が好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の組成を繰り返し変更するための装置であって、流体の組成を変更するための第1のモジュール(19)、流体の組成を変更するための第2のモジュール(21)ならびに入り口(8)および出口(10)を備えたドウェルモジュール(20)を含み、
第1のモジュール(19)は流体導通様式でドウェルモジュール(20)の入り口(8)に接続され、ドウェルモジュール(20)の出口(10)は流体導通様式で第2のモジュール(21)に接続され、
第1のモジュール(19)または第2のモジュール(21)はフィルタユニットであるか、あるいは第1のモジュール(19)が第1のフィルタユニットであり、第2のモジュール(21)が第2のフィルタユニットであり、フィルタユニット(単数)および/またはフィルタユニット(複数)はそれぞれ
少なくとも1つの供給チャネル(2、12)、
少なくとも1つの第1の濾材(4、14)、
少なくとも1つの保持液チャネル(1、11)、
少なくとも1つの第2の濾材(5、15)、および
少なくとも1つの透過液チャネル(3、13)を有し、
第1の濾材(4、14)が供給チャネル(2、12)と保持液チャネル(1、11)を互いに区切り、第2の濾材(5、15)が保持液チャネル(1、11)と透過液チャネル(3、13)を互いに区切り、
供給チャネル(2、12)が流体導通様式で少なくとも1つの供給媒体用の入り口(6、16、24、27)に接続され、
保持液チャネル(1、11)が流体導通様式で少なくとも1つの流体用の入り口(7、10、23)および少なくとも1つの流体用の出口(8、17、32)に接続され、透過液チャネル(3、13)が流体導通様式で少なくとも1つの透過液用の出口(9、18、25、28)に接続されるように配置されている、
前記装置。
【請求項2】
第1のモジュール(19)が第1のフィルタユニットであり、第2のモジュール(21)が第2のフィルタユニットである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1または第2のモジュール(19、21)がスタティックミキサである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
流体の組成を繰り返し変更するための方法であって、
(a)請求項1~3のいずれか一項に記載の装置を提供すること;
(b)流体を第1のモジュール(19)に送ること;および
(c)第2のモジュール(21)から流体を排出することを含み、
ここで、ステップ(b)および/またはステップ(c)は、以下のステップ:
(i)供給媒体を供給媒体用の入り口(6、16、24、27)に送ること;
(ii)流体を流体用の入り口(7、10、23)に送ること;
(iii)流体用の出口(8、17、32)から流体を排出すること、および
(iv)透過液用の出口(9、18、25、28)から透過液を排出すること、を含む、
前記方法。
【請求項5】
第1のモジュール(19)に導かれる流体が、1以上の生成物および場合により1以上の不純物を含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1のモジュール(19)において、流体のpH値が低下および/または上昇し、第2のモジュール(21)において、流体のpH値が上昇および/または低下する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
第1のモジュール(19)において、流体のpH値が低下し、第2のモジュール(21)において、流体のpH値が上昇する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ドウェルモジュール(20)内の流体のドウェルタイムが1分~24時間である、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1のモジュール(19)が第1のフィルタユニットであり、第2のモジュール(21)が第2のフィルタユニットであり、
ステップ(b)が以下のステップ:
(b-i)供給媒体を供給媒体用の第1のフィルタユニットの入り口(6、24)に送ること;
(b-ii)流体を流体用の第1のフィルタユニットの入り口(7、23)に送ること;
(b-iii)流体を流体用の第1のフィルタユニットの出口(8)から排出すること;および
(b-iv)透過液を透過液用の第1のフィルタユニットの出口(9、25)から排出することを含み、
ステップ(c)が以下のステップ:
(c-i)供給媒体を供給媒体用の第2のフィルタユニットの入り口(16、27)に送ること;
(c-ii)流体を流体用の第2のフィルタユニットの入り口(10)に送ること;
(c-iii)流体を流体用の第2のフィルタユニットの出口(17、32)から排出すること;および
(c-iv)透過液を透過液用の第2のフィルタユニットの出口(18、28)から排出することを含む、
請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ウイルス不活化のための請求項1~3のいずれか一項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の組成を繰り返し変更するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのプロセスにおいて、流体の組成を繰り返し変更する必要がある。しかしながら、既存の方法では、このために流体の体積変化が必要になることがあり、これはプロセス管理をより困難にし得る。しかしながら、所望のとおりプロセス中の流体の体積を変更できることが望ましい。加えて、従来の方法では、不純物の同時分離はさらなる労力を要する。
【0003】
DE 10 2016 004 115 A1は連続ダイアフィルトレーションのためのクロスフロー濾過ユニットを開示している。
WO 2018/039163 A1は、卵白から異種タンパク質を精製する方法を開示している。
EP 3 116 552 A1は、連続的なウイルス不活化のための装置および方法を開示している。
EP 3 288 596 B1は、マイクロリアクターにおける連続的なウイルス不活化のための方法を開示している。
【発明の概要】
【0004】
よって、本発明の目的は、流体の体積変化に関して制限なしに、不純物を同時に除去しながら、流体の組成の穏やかな繰り返しの変更を可能にする装置および方法を提供することである。
上記の目的は、特許請求の範囲において特徴付けられる態様で達成される。
【0005】
第1の側面において、本発明は、流体の組成を繰り返し変更するための装置であって、流体の組成を変更するための第1のモジュール(19)、流体の組成を変更するための第2のモジュール(21)ならびに入り口(8)および出口(10)を備えたドウェルモジュール(20)を含み、第1のモジュール(19)は流体導通様式でドウェルモジュール(20)の入り口(8)に接続され、ドウェルモジュール(20)の出口(10)は流体導通様式で第2のモジュール(21)に接続され、第1のモジュール(19)または第2のモジュール(21)はフィルタユニットであるか、あるいは第1のモジュール(19)が第1のフィルタユニットであり、第2のモジュール(21)が第2のフィルタユニットであり、フィルタユニット(単数)および/またはフィルタユニット(複数)はそれぞれ少なくとも1つの供給チャネル(2、12)、少なくとも1つの第1の濾材(4、14)、少なくとも1つの保持液チャネル(1、11)、少なくとも1つの第2の濾材(5、15)、および少なくとも1つの透過液チャネル(3、13)を有し、第1の濾材(4、14)が供給チャネル(2、12)と保持液チャネル(1、11)を互いに区切り、第2の濾材(5、15)が保持液チャネル(1、11)と透過液チャネル(3、13)を互いに区切り、供給チャネル(2、12)が流体導通様式で少なくとも1つの供給媒体用の入り口(6、16、24、27)に接続され、保持液チャネル(1、11)が流体導通様式で少なくとも1つの流体用の入り口(7、10、23)および少なくとも1つの流体用の出口(8、17、23)に接続され、透過液チャネル(3、13)が流体導通様式で少なくとも1つの透過液用の出口(9、18、25、28)に接続されるように配置されている、前記装置に関する。
【0006】
本発明による装置は、流体の組成を穏やかな方法で繰り返し変更すると同時に、流体中の不純物を分離することを可能にする。とりわけ、本発明による装置および方法は、監視することができる期間に流体の組成を変更するのに好適である。加えて、組成の変更と共に、流体の量も同時に調整することができる。本発明による装置および方法はまた、連続作動モードにも好適である。
【0007】
本発明によれば、流体は、液体状または気体状の混合物、あるいは液体状または気体状の化合物として理解されるべきである。例えば、緩衝液は流体を表す。培地またはその液体および/または気体成分もまた流体であり得る。
【0008】
本発明によれば、第1および第2のモジュールのうちの少なくとも1つは、上で定義されたフィルタユニットである。さらにまた、第1および第2のモジュールは何ら特別な制限は受けない。これは、流体の組成を変更するために好適な任意の装置を使用できることを意味する。
【0009】
本発明の好ましい態様によれば、第1または第2のモジュールはスタティックミキサである。スタティックミキサであるモジュールでは、透過流を排出する必要がなく、当該方法をより簡単に実施することができ、特に経済的である。上記の好ましい態様は、第1のモジュールがスタティックミキサであり、第2のモジュールがフィルタユニットである場合と、第1のモジュールがフィルタユニットであり、第2のモジュールがスタティックミキサである場合とを含む。第1のモジュールがスタティックミキサであり、第2のモジュールがフィルタユニットである場合が好ましい。
【0010】
本発明のさらに好ましい態様によれば、第1または第2のモジュールは、第1および第2の濾材を備えた上記のフィルタユニットであり、第2または第1のモジュールは、少なくとも1つの濾材を有するさらなるフィルタユニットである。好ましくは、さらなるフィルタユニットは単一の濾材を有する。さらなるフィルタユニットは、例えば、滅菌フィルタであり得る。好ましくは、さらなるフィルタユニットは、1つの入り口のみおよび1つの出口のみを有する(デッドエンドフィルタ)。第1のモジュールが第1および第2の濾材を備えた上述のフィルタユニットであり、第2のモジュールが少なくとも1つの濾材を有するさらなるフィルタユニットであることが好ましい。本発明による本態様の装置では、例えば、沈殿反応を第1のモジュールで開始することができ、それにより、沈殿反応をドウェルモジュールで行うことができ、さらなるフィルタユニットが沈殿生成物を分離することができる。
【0011】
本発明のさらに好ましい態様によれば、第1または第2のモジュールは、第1および第2の濾材を備えた上記のフィルタユニットであり、第2または第1のモジュールは、少なくとも1つの供給チャネル、少なくとも1つの濾材および少なくとも1つの保持液チャネルを有するさらなるフィルタユニットであり、濾材が供給チャネルおよび保持液チャネルを互いに区切り、供給チャネルが流体導通様式で供給媒体用の少なくとも1つの入り口に接続され、保持液チャネルが流体導通様式で流体用の少なくとも1つの入り口および流体用の少なくとも1つの出口に接続されるように配置されている。濾材を備えたフィルタユニットは、第1および第2の濾材を備えた上記のフィルタユニットと同様に構成されているが、ただし第2の濾材および透過液チャネルおよびその出口がない。このさらなるフィルタユニットについては、第1および第2の濾材を備えたフィルタユニットに関する記述がそれに応じて適用される。さらなるフィルタユニットは、とりわけ、第1または第2のモジュールを通る流体の量を監視しない場合、使用することができる。濾材を備えたフィルタユニットを有するこの態様によれば、例えば、希釈を実施することができる。
【0012】
本発明のさらに好ましい態様によれば、第1または第2のモジュールは、第1および第2の濾材を備えた上記のフィルタユニットであり、第2または第1のモジュールは、少なくとも1つの保持液チャネル、少なくとも1つの濾材および少なくとも1つの透過液チャネルを有するさらなるフィルタユニットであり、濾材が保持液チャネルおよび透過液チャネルを互いに区切り、保持液チャネルが流体導通様式で流体用の少なくとも1つの入り口および流体用の少なくとも1つの出口に接続され、透過液チャネルは流体導通様式で透過液用の少なくとも1つの出口に接続されるように配置されている。濾材を備えたフィルタユニットは、第1および第2の濾材を備えた上記のフィルタユニットと同様に構成されているが、ただし第1の濾材および供給チャネルおよびその入り口がない。このさらなるフィルタユニットについては、第1および第2の濾材を備えたフィルタユニットに関する記述がそれに応じて適用される。さらなるフィルタユニットは、とりわけ、第1または第2のモジュールを通る流体の量を監視しない場合、使用することができる。濾材を備えたさらなるフィルタユニットを有するこの態様によれば、例えば、沈殿生成物を分離することができる。
【0013】
本発明のさらに好ましい態様によれば、第1または第2のモジュールは、第1および第2の濾材を備えた上記のフィルタユニットであり、第2または第1のモジュールは膜吸着体である。好ましくは、第1のモジュールは膜吸着体であり、第2のモジュールは第1および第2の濾材を備えたフィルタユニットである。この場合において、膜吸着体は最初に生成物(例えば、モノクローナル抗体、タンパク質)を含ませることができる。この目的のために、生成物を含有するローディング媒体が最初に膜吸着体に送られる。この手段により、ローディング媒体に含有される生成物が膜吸着体に吸着される。ローディング媒体は、ドウェルモジュールおよび第2のモジュール(フィルタユニット)を経由して、本発明によるデバイスを離れることができる。好ましくは、バルブを、膜吸着体の出口に、ローディング媒体が、ドウェルモジュールおよび第2のモジュールを通過する必要なしに、そこを通って排出され得るように取り付ける。ローディング媒体を排出すると、流体を溶離液として送ることができ、その結果、膜吸着体は、その上に吸着された生成物を流体に放出する。この場合において、膜吸着体に送られる流体は、好ましくは7未満、特に好ましくは2~6、より特に好ましくは3~5のpH値を有する。この手段により、流体に含有されるウイルスを不活化することができる。
【0014】
本発明のさらに好ましい態様によれば、膜吸着体の代わりに、クロマトグラフィー媒体を含有するクロマトグラフィーモジュールを使用することができる。クロマトグラフィー媒体は、例えば、ゲルまたはモノリスであり得る。膜吸着体を有する態様に関する上の記述は、それに応じて、クロマトグラフィーモジュールを有する態様に適用される。
【0015】
本発明の特に好ましい態様によれば、第1のモジュールは第1のフィルタユニットであり、第2のモジュールは第2のフィルタユニットである。この手段により、特に穏やかな繰り返しの組成変更を達成することができる。加えて、流体の体積は、第1のモジュールによって、およびまた第2のモジュールによっての両方によって調整することができる。同様に、この好ましい態様は、不純物を特に効果的に除去することを可能にする。
【0016】
本発明による装置は、センサを備えて提供することができる。好適なセンサは、pH値(pHセンサ)、導電率、圧力、および流量を測定するためのセンサ、ならびに分光センサ(UV、UV/Vis、IR、NIR分光法およびラマン分光法に対する)を包含する。
【0017】
センサは、本発明による方法を監視および制御するのに役立つ。好ましくは、センサは、保持液チャネルの出口(8、17)に取り付けられ、特に好ましくは、pHセンサが取り付けられる。このようにして、流体の組成または他の特性は、第1および/または第2のモジュールのフィルタユニットを離れる際に測定することができる。
【0018】
本発明による装置は、バルブおよび/またはポンプを有することができる。供給媒体および透過液の流体の物質の流れは、バルブおよび/またはポンプで制御することができる。好適なバルブは、例えば、ピンチバルブおよびニードルバルブである。好ましくは、バルブまたはポンプは保持液チャネルの出口に取り付けられる。保持液チャネル内の濾過圧力、およびよって第2の濾材を通る体積流量は、バルブおよび/またはポンプで調整することができる。それとは独立して、透過液チャネルの出口はバルブを有することが好ましい。出口のバルブの使用により、透過液チャネルを閉じることができる。これは、濾過ユニットにおいて、第2の濾材によって濾過が行われることなく、供給媒体と流体の組み合わせのみが望まれる場合に役立ち得る。
【0019】
第1および第2の濾材を備えたフィルタユニットは、保持液チャネル、供給チャネルおよび透過液チャネル内、好ましくは保持液チャネル内にインサートを供給することができる。このタイプのインサートは、保持液チャネル、供給チャネルおよび透過液チャネルを開いたままにするために、および/またはそれぞれのチャネルで最適な混合を確保するために好適である。インサートは、例えば、テキスタイル材料(例として、織布または編布および/または不織布)からなり得る。
【0020】
本発明によれば、ドウェルモジュールは、流体を受け入れ、それを再び排出するのに好適であるという条件で、何ら特別な制限を受けない。第1のモジュールにおける組成変更と第2のモジュールにおける組成変更の間の期間は、ドウェルモジュールのサイズおよび設計を通して調整することができる。ドウェルモジュールは、例えば、入り口および出口を備えた容器であり得る。ドウェルモジュールの特定の例は、流体を送るための入り口とそれを排出するための出口を備えた攪拌容器である。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、ドウェルモジュールは、ドウェルモジュール内の流体のドウェルタイムが1分~24時間、好ましくは5分~2時間、より好ましくは10分~1時間であるように構成される。
【0022】
ドウェルモジュールは、好ましくは、流体経路を規定する。流体経路は流体が流れることができる体積である、ただしそれはドウェルモジュール内にある。流体経路を規定するドウェルモジュールは、例えば、チューブまたはホースであり得る。この場合において、管状フローリアクターと同様に、チューブまたはホースの一端が入り口を形成し、他端がドウェルモジュールの出口を形成する。
【0023】
流体経路は、例えば、1以上の曲がりくねったチャネルおよび/または1以上のらせん状のチャネルを有し得る。1以上のチャネルは、例えば、プラスチック表面にインプレス、ミリングおよび/または射出成形することによって導入するか、または対応して形成されたホースおよび/または対応して形成されたチューブによって提供することができる。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、ドウェルモジュールは少なくとも1つの分割要素によって分割されるコヒーレント体積を含む。このように分割され、コヒーレントである体積は、流体が流れることができる流体経路を規定する。少なくとも1つの分割要素は、例えば、複数のデフレクタプレートおよび/またはデフレクタフィルムからなり得る。
【0025】
デフレクタフィルムを使用する場合、スペーサーをデフレクタフィルムの間に挿入することが好ましい。この手段により、デフレクタフィルムの機械的安定性および/または不動性を増強することができる。テキスタイル材料(例として、織布または編布および/または不織布)が、スペーサーとして好ましく使用される。テキスタイル材料により、流体の完全な混合が保証され、層流を有する領域の発生を減少させることができる。デフレクタプレートまたはフィルムが設置されていない場合、好ましくはドウェルモジュールによって規定される流体経路にスペーサー/テキスタイル材料を導入することもできる。
【0026】
本発明のさらに好ましい態様によれば、ドウェルモジュールは複数の並列フローチャネルを含む。各並列フローチャネルは、流体用の共通の入り口および共通の出口に接続可能である。このようにして、1以上の並列フローチャネルを共通の入り口と出口に接続する(流体は接続されたフローチャネルを流れる)か、共通の入り口と出口によってブロックする(流体はブロックされたフローチャネルを流れない)ことができる。よって、流体が流れる並列フローチャネルの数を変更することが可能であり、その結果、ドウェルモジュール内の流体のドウェルタイムを調節することができる。流体用の共通の入り口および共通の出口への並列フローチャネルの接続性は、例えば、バルブを活用して保証することができる。
【0027】
場合によりさらなるドウェルモジュールを第2のモジュールに接続することができ、前記ドウェルモジュールは、流体導通様式で第2のモジュールの出口に接続される。第1および/または第2のモジュールのように構築することができる第3のモジュールは、流体導通様式で、さらなるドウェルモジュールの出口に接続することができる。このタイプの配置により、組成変更のためのモジュールのカスケード、および流体の組成を2回以上変更することができるドウェルモジュールを構築することができる。
【0028】
本発明による装置は、1以上の第1のモジュール、1以上の第2のモジュールおよび/または1以上のドウェルモジュールを有することができる。これは、本発明によるデバイスが、2以上の第1のモジュール、2以上の第2のモジュールおよび/または2以上のドウェルモジュールを有することができることを意味する。かかる並列化により、第1のモジュール、第2のモジュールおよび/またはドウェルモジュールのスループットを適合させることができる。
【0029】
本発明による装置において、第1のモジュールは、流体を導通する様にドウェルモジュールの入り口に接続されている。加えて、ドウェルモジュールの出口は、流体導通方式で第2のモジュールに接続されている。それにより、第1のモジュールは、ドウェルモジュールの入り口に直接(すなわち、中間接続なしで)、または、中間接続を経由して、例えば、パイプラインまたはホースを介して、接続することができる。同じことが、ドウェルモジュールの出口と第2のモジュールとの間の接続にも当てはまる。直接接続により、本発明による装置のコンパクトな構造を実現することができる。中間接続が使用される場合、本発明による装置は、第1および第2のモジュールならびにドウェルモジュールから容易に組み立てることができ、必要に応じて、異なる設計のモジュールと組み合わせることができる。
【0030】
第1のモジュールが上記のようなフィルタユニットであり、第1および第2の濾材を有する場合、第1のモジュールの保持液チャネルの出口は、流体導通様式でドウェルモジュールの入り口に接続される。第2のモジュールが上記のようなフィルタユニットであり、第1および第2の濾材を有する場合、ドウェルモジュールの出口は、流体導通様式で、第2のモジュールの保持液チャネルの入り口に接続される。
【0031】
本発明によれば、装置は、第1および/または第2のモジュールとして、第1および第2の濾材を備えた上記の濾過ユニットを含む。本明細書において、かかるフィルタユニットに関する記述は、第1および第2のモジュールがかかるフィルタユニットである場合、およびまた第1および第2のモジュールのうちの一方のみがかかるフィルタユニットである場合の両方に適用される。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、フィルタユニットは、フラットフィルタモジュール、らせん状に巻かれた繊維モジュールまたは中空繊維モジュールであるところ、フラットフィルタモジュールが好ましい。フィルタユニットがフラットフィルタモジュールとして構成されている場合、第1の濾材および第2の濾材は平坦な形状を有する。表現「平坦」は、それぞれの濾材(フィルタ材料)が実質的に単一の平面にあることを示す。好ましくは、すべての濾材は、実質的に互いにほぼ平行である平面にある。本発明に従って好適な濾材は、特定の制限を受けず、例えば、セラミック膜、不織布および高分子膜であり得る。
【0033】
第1および第2の濾材は、供給媒体および流体の濾過に好適である。第1および第2の濾材は、供給媒体および流体に対して少なくとも部分的に透過性である。
【0034】
好ましい態様によれば、少なくとも第2の濾材は、流体に含有される可能性のある1以上の生成物に対して透過性ではない。このようにして、流体に含有されている可能性のある生成物が保持液チャネルから透過液チャネルに通過するのを防ぐ。好ましくは、第1の濾材はまた、流体に含有される可能性のある生成物に対して透過性ではない。以下により詳細に記載されるとおり、生成物は、例えば、抗体であり得る。
【0035】
第1の濾材および第2の濾材は、好ましくは、互いに独立して、それぞれ、0.5nm~1mm、特に好ましくは1nm~10μm、特に好ましくは2nmから100nmの孔径を有する。「互いに独立して」は、この文脈において、第1および第2の濾材が同じ孔径および/または材料特性を有する必要がないことを意味する。
【0036】
本発明によれば、少なくとも0.1μmの孔径で、すなわち、0.1~10μmの平均孔径を有する精密濾過膜について、孔径を決定するために、キャピラリーフローポロメトリーが使用される。これは、ガス/液体ポロシメトリーを要し、最初に湿った状態、次に乾燥した状態の膜サンプルで、ガスの圧力レベルと流量の差を測定する。測定の前に、膜サンプルは、湿潤液体と、存在するすべての細孔がこの液体で満たされるように接触させられる。細孔を満たしてサンプルを導入した後、測定セルを閉じて測定を開始する。測定開始後、ガス圧は自動的および段階的に上昇し、加えられた圧力に対応する細孔径はガス圧によって空になる。このプロセスは、関係のある細孔領域が検出されるまで、すなわち、測定領域に存在する最小の細孔でさえ液体がなくなるまで行われる。その後、圧力を再び下げ、今度は乾燥したサンプルで測定を自動的に繰り返す。2つの圧力/流量曲線間の差は、ヤングラプラスの式を使用した孔径分布を計算するために使用される(A. Shrestha, “Characterization of porous membranes via porometry”, 2012, Mechanical Engineering Graduate Theses & Dissertations, Paper 38, University of Colorado at Boulderも参照)。
【0037】
10μm超~1mmの孔径を決定するために、画像解析に基づいてJournal of Membrane Science 372(2011)の66~74頁に記載されている方法を使用することができる。
本発明によれば、0.1μm未満の孔径について、液液置換法が使用される。この方法は、キャピラリーフローポロメトリーと類似している。しかしながら、この場合において、差圧の増加の関数として測定されるのは、ガスの流量ではなく、置換する液体の流量である(R. Davila, “Characterization of ultra and nanofiltration commercial filters by liquid-liquid displacement porosimetry”, 2013も参照)。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、第1の濾材は第1の濾過膜である。第2の濾材は、好ましくは第2の濾過膜である。第1の濾材が第1の濾過膜であり、第2の濾材が第2の濾過膜であることが特に好ましい。濾過膜は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、セルロースおよびそれらの誘導体、ポリエーテルスルホン(PES)またはポリスルホンから作成することができるところ、架橋セルロース水和物が特に好ましい。
【0039】
本発明による装置は、流体の組成を繰り返し変更しなければならないすべての使用に好適である。特に、本発明による装置は、ウイルスの不活化に好適である。
【0040】
本発明による方法に関する以下の記述は、変更すべきところは変更して、本発明による装置に適用される。
【0041】
さらなる側面において、本発明は、流体の組成を繰り返し変更するための方法であって、(a)上記の本発明による装置を提供すること;(b)流体を第1のモジュールに送ること;および(c)第2のモジュールから流体を排出することを含み、ここで、ステップ(b)および/またはステップ(c)は、以下のステップ:(i)供給媒体を供給媒体用の入り口に送ること;(ii)流体を流体用の入り口に送ること;(iii)流体用の出口から流体を排出すること、および(iv)透過液用の出口から透過液を排出すること、を含む前記方法に関する。本発明による装置において、第1のモジュールは流体導通様式でドウェルモジュールの入り口に接続され、ドウェルモジュールの出口は流体導通様式で第2のモジュールに接続されるので、本発明による方法において、流体は、最初に第1のモジュールを通って流れ、次いでドウェルモジュールを通って、最後に第2のモジュールを通って流れる。
【0042】
本発明による方法に関する上記の記載は、変更すべきところは変更して、本発明による装置に適用される。
【0043】
本発明による方法は、流体の組成を繰り返し変更することが必要とされる任意の所望の使用に好適である。例えば、第1のモジュールにおいて、化学反応を開始するために流体を試薬と接触させ、化学反応をドウェルモジュールで実行し、第2のモジュールにおいて、例えば、さらなる試薬を添加することによって、反応を中断(クエンチ)することが可能である。
【0044】
本発明による方法のステップ(i)~(iv)により、同時に、流体からの不純物の分離と同様に、流体の組成の穏やかな変更を達成することができる。第2の濾材は、流体に含有される可能性のある任意の不純物が第2の濾材を通過して透過液の成分として排出されるように選択することができ、所望の生成物(例えばモノクローナル抗体)は、それらが第2の濾材を通過できないので流体中に残る。代替的に、第2の濾材は、望ましくない不純物が通過できないように選択することができる。この場合において、第2の濾材は生成物によって通過され得る。この場合において、望ましくない不純物が液体に残る。これは、方法の最後に、透過液が所望の生成物であり得るおよび/または所望の生成物を含有し得ることを意味する。
【0045】
本発明による方法は、第1のモジュールにおいて組成を変更することによって沈殿反応を開始し、沈殿反応をドウェルモジュールにおいて進行させ、第2のモジュールにおいて、例えば濾過によって沈殿生成物を分離するのに特に好適である。
【0046】
さらにまた、本発明による方法は、第1のモジュール内の流体に触媒を送達し、触媒によって触媒される反応をドウェルモジュールにおいて進行させ、第2のモジュールにおいて、触媒を流体から分離するのに好適である。触媒は何ら特別な制限を受けない。好ましくは、触媒は酵素(生体触媒)である。具体的には、本発明による方法は、ラクトースを含まないミルクを生成するのに好適である。この目的のために、ラクターゼを、供給チャネルを経由して、第1のモジュール内の流体、この場合においてラクトース含有ミルクである流体に送る。ドウェルモジュールにおいて、ラクターゼが流体に含有されるラクトースを変換する。第2のモジュールにおいて、ラクターゼが分離される。第1および第2の濾材を備えたフィルタユニットを使用する場合、ラクトースを含まないミルクを透過液として分離することができ、それによってラクターゼが保持液中に残る。
【0047】
本発明の好ましい態様によれば、第1のモジュールに導かれる流体は、1以上の生成物、および場合により1以上の不純物を含有する。
【0048】
生成物(単数)または生成物(複数)は何ら特定の制限を受けない。好ましくは、生成物はバイオテクノロジープロセスに由来し、好ましくは細胞によって生成される。本発明によれば、「細胞」は、ヒト、動物、植物、真菌、藻類および細菌に由来するものを包含する。本発明によれば、生成物がタンパク質(例として、抗体)、ウイルスおよび/またはワクチンであることも好ましい。
【0049】
タンパク質は、何ら特定の制限を受けず、例えば、酵素または抗体であることができ、タンパク質は、好ましくは、1以上の抗体である。抗体の特定の例は、免疫グロブリンA、D、E、G、Yおよびそれらの混合物である。抗体は、例えば、組換え、ポリクローナル、またはモノクローナルであり得る。
【0050】
さらにまた、生成物はウイルスまたはワクチンであり得る。ウイルスは、例えば、改変されたウイルス、例えば、遺伝子治療のためのウイルスであり得る。遺伝子治療のためのウイルスは、ウイルスに意図的に感染した患者の細胞に侵入し、それらのRNAおよび/またはDNAを細胞に導入する。ワクチンはまた、ウイルスおよび/またはウイルスフラグメントを含み得る。生成物と、以下でより詳細に記載する不純物との両方がウイルスを含み得るところ、この場合において、生成物ウイルスは不純物ウイルスとは異なる。原則として、例えば濾過により、生成物ウイルスを不純物ウイルスから分離することが可能である(生成物ウイルスと不純物ウイルスのサイズが異なる場合)。代替的に、またはそれに加えて、不純物ウイルスは、原則として、本発明による方法を使用して選択的に不活化することができる。例えば、不純物ウイルスは、生成物ウイルスがまだ不活化されないpH値で不活化される可能性がある。このようにして、生成物ウイルスを不活化することなく、不純物ウイルスだけを不活化することができる。
【0051】
包含されるいずれの不純物も望ましくない。それらは、濾過を活用して、例えば、第1および第2の濾材を備えたフィルタユニットを経由して、生成物から分離できる可能性がある。代替的にまたはそれに加えて、不純物は、本発明による方法によって、不活化、破壊、またはさもなければ無害化することができる可能性がある。具体的には、不純物はウイルス(これは、流体に含有される可能性のある所望の生成物ウイルスとは異なる)であり得る。不純物の例は、ウイルス以外に、塩、DNA、HCP(宿主細胞タンパク質)、糖および凝集体(例として、タンパク質凝集体)を包含する。
【0052】
特定の生成物(例えば、細胞から生成されるモノクローナル抗体などの医薬品)について、衛生上の理由から、望ましくないウイルスが不純物として含有され得る流体をウイルス不活化する必要があり得る。このウイルス不活化は、以下に記載するとおり、抗体含有流体のpH値の一時的に制限された変更によって達成することができる。
【0053】
本発明による方法の好ましい態様において、第1のモジュールにおいて、流体のpH値が低下および/または上昇し、それによって第2のモジュールにおいて、流体のpH値が上昇および/または低下する。かかるpH値の変更は、第1および第2のモジュールに酸および/または塩基を添加することによって達成することができる。それにより、第1のモジュールに送られる流体の初期pH値は、第2のモジュールから排出される流体のpH値に対応するか、または異なることができる。
【0054】
本発明の好ましい態様によれば、第1のモジュールにおいて、流体のpH値が低下する一方、第2のモジュールにおいて、流体のpH値が上昇する。本発明による方法のこの特定の態様では、不純物として流体に含有される任意のウイルスを不活化することができる。「不活化」は、ウイルスがもはや複製できなくなったことを意味する。好ましくは、pH値は、2~6の値、特に好ましくは3~5の値に低下する。
【0055】
上記のように、本発明の好ましい態様によれば、第1のモジュールは膜吸着体であり、第2のモジュールは第1および第2の濾材を備えたフィルタユニットである。この場合において、ステップ(a)の後およびステップ(b)の前に、本発明による方法は、好ましくは、ステップ(a’)第1のモジュールへのローディング媒体を送ること、および(a’’)第1モジュールからローディング媒体を排出することを含む。ローディング媒体は、ドウェルモジュールおよび第2のモジュール(フィルタユニット)を経由してデバイスを離れることができる。好ましくは、バルブは、膜吸着体の出口に、ローディング媒体がドウェルモジュールおよび第2のモジュールを通過する必要なしに、そこを通って排出することができるように、取り付けられる。
【0056】
流体が水性緩衝液および1以上の生成物および場合により1以上の不純物を含むおよび/またはそれらからなる混合物であることが特に好ましい。本発明による方法の特に好ましい態様によれば、第1のモジュールに送られる流体は、水性緩衝液、1以上のモノクローナル抗体および場合によりウイルスおよび場合により1以上の不純物を含有する。
【0057】
本発明によれば、保持液チャネルの入り口および出口での体積流量の調整により、流体の体積、よってそこに含有される成分の濃度を調整することができる。好ましくは、ステップ(ii)で送られた流体の体積流量と、ステップ(iii)で排出された流体の体積流量との比は、1:10~10:1である。さらにまた、ステップ(i)において送られる供給媒体の体積流量と、ステップ(ii)において送られる流体の体積流量との比は、好ましくは1:1000~10:1である。
【0058】
本方法の好ましい態様において、供給媒体は0.1~4バールの圧力で送られる。供給媒体は、保持液出口圧力よりも高い圧力で送られることが特に好ましい。さらにまた、保持液チャネルと透過液チャネルとの間の圧力差は、好ましくは0.1~1.5バールである。
【0059】
本発明の好ましい態様によれば、ドウェルモジュール内の流体のドウェルタイムは、1分~24時間、好ましくは5分~2時間、より好ましくは10分~1時間である。
【0060】
本発明の好ましい態様によれば、第1のモジュールは第1のフィルタユニットであり、第2のモジュールは第2のフィルタユニットであり、ステップ(b)は以下のステップ:(b-i)供給媒体を供給媒体用の第1のフィルタユニットの入り口に送ること;(b-ii)流体を流体用の第1のフィルタユニットの入り口に送ること;(b-iii)流体を流体用の第1のフィルタユニットの出口から排出すること;および(b-iv)透過液を透過液用の第1のフィルタユニットの出口から排出することを含み、ステップ(c)は以下のステップ:(c-i)供給媒体を供給媒体用の第2のフィルタユニットの入り口に送ること;(c-ii)流体を流体用の第2のフィルタユニットの入り口に送ること;(c-iii)流体を流体用の第2のフィルタユニットの出口から排出すること;および透過液を透過液用の第2のフィルタユニットの出口から排出することを含む。ステップ(b-iii)において排出された流体は、ドウェルモジュールの入り口に送られる。ドウェルモジュールから排出された流体は、ステップ(c-ii)において、流体用の第2のフィルタユニットの入り口に送られる。
【0061】
本発明による方法は、好ましくは連続的に、つまり、供給媒体および流体の一定/連続的な添加により操作され、その結果、流体の濃度を繰り返し変更するための特に効率的および経済的な方法を提供することが可能である。本発明によれば、流体の濃度を繰り返し変更するための「連続的」方法は、供給媒体およびまた流体の両方が連続的に送られる方法であると理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、本発明による装置および/または本発明による方法の例示的な態様である。
【
図2】
図2は、本発明による装置および/または本発明による方法の例示的な態様である。
【0063】
図1は、本発明による装置および/または本発明による方法の例示的な態様を示す。この態様の装置は、例えば、流体のpH値を調整するのに好適である。装置は3つのモジュールを有する:第1のモジュール(左)はドウェルモジュール(中央)に直接移行し、次に第2のモジュール(右)に直接移行する。
【0064】
第1モジュールと第2モジュールはそれぞれフィルタユニットである。各フィルタユニットは、保持液チャネル(1、11)、供給チャネル(2、12)、透過液チャネル(3、13)、第1の濾材(4、14)および第2の濾材(5、15)を有する。第1の濾材(4、14)は、供給チャネル(2、12)を保持液チャネル(1、11)から分離し、第2の濾材(5、15)は、保持液チャネル(3、13)から透過液チャネル(1、11)を分離する。
【0065】
第1のモジュール(第1のフィルタユニット)のフィルタユニットおよび/または第2のモジュール(第2のフィルタユニット)のフィルタユニットの保持液チャネル(1、11)の入り口(7、10)を経由して、流体は第1および/または第2のモジュールに送られる。供給媒体は、供給チャネル(2、12)の入り口(6、16)を経由して送られる。供給媒体は、第1の濾材(4、14)を通過し、したがって、保持液チャネル(1、11)内の流体と接触させられる。本発明によれば、同じ供給媒体を第1および第2のフィルタユニットに送ることができるところ、異なる組成を有する供給媒体が好ましく使用される。供給チャネル(2、12)を経由して、保持液中の流体の組成、例としてそのpH値、を変化させる流体が送られる。ウイルス不活化の場合において、保持液チャネル(1)内の流体のpH値の低下をもたらすために、酸性水溶液、例えば水中のクエン酸溶液を、第1のフィルタユニットの供給チャネルの入り口(6)を経由して第1の供給媒体として送ることができる。緩衝液(例として、水性リン酸緩衝液)または塩基性水溶液を、第2のフィルタユニットの保持液チャネル(11)内の流体のpH値が上昇するように、第2のフィルタユニットの供給チャネルの入り口(16)を経由して第2の供給媒体として送ることができる。
【0066】
第2の濾材(5、15)の特性は、流体の特定の成分のみが第2の濾材(5、15)を通過して、それによって所望の分離効果を達成するように選択することができる。具体的には、流体が生成物として1以上の抗体を含有する場合、抗体(単数)/抗体(複数)が流体に残り、透過液チャネル(3、13)を通過しないように、孔径2~100nmの限外濾過膜を第2の濾材(5、15)として使用することができる。さらにまた、第2の濾材(5、15)として孔径2~100nmの限外濾過膜を使用することにより、生成物として流体に含有されるワクチンを限外濾過膜によって保持することができる。第2の濾材(5、15)を通過することができる流体の成分(例として、不純物)は、少なくとも部分的または完全に第2の濾材(5、15)を通過することができ、透過液チャネル(3、13)およびその出口(9、18)を経由して、透過液として排出される。それにより、流体の組成の繰り返しの変更に加えて、不純物を分離することができる。
【0067】
第1のフィルタユニットの保持液チャネル(1)の出口(8)および/またはドウェルモジュールの入り口(8)を経由して、流体は第1のモジュールからドウェルモジュールに送られる。ドウェルモジュールは、流体が流れる流体経路を規定する複数のデフレクタ板を有する。流体経路の設計(経路の長さ、流体の流速および経路の面面積)を通して、ドウェルモジュール内の流体のドウェルタイムを調整することができる。よって、例えば、このドウェルタイムの間のウイルス不活化の場合、ウイルスは、第1のモジュールにおいて流体の調整された特性(例えば、低いpH値)を受け、その結果、ウイルスの完全な不活化が確保され得る。流体は、ドウェルモジュールを、その出口(10)および/または第2のフィルタユニットの保持液チャネルの入り口(10)を経由して離れる。
【0068】
図2は、本発明による装置および/または本発明による方法によるさらなる例示的な態様を示す。
図2に示される態様はまた、ウイルスの不活化、特に、モノクローナル抗体を含有する流体のウイルス不活化に好適である一方、同時に(透過液を経由して)流体から不純物を除去する。
【0069】
この態様において、流体は、圧力勾配を使用することによって保持液チャネルに導入され、同時に、保持液チャネルと透過液チャネルとの間の圧力勾配を使用することによって、透過液チャネルで濾過が行われる。圧力勾配は、例えば、第1のモジュール(19)および/または第1のフィルタユニット(19)の保持液チャネルの出口のバルブによって、および/または第2のモジュール(21)および/または第2のフィルタユニット(21)の保持液チャネルの出口のバルブによって、および/またはドウェルモジュール(20)の出口のバルブによって制御することができる。
【0070】
流体は、ポンプ(
図2には示されていない)を活用して、場合により上流に配置したクロマトグラフィーステップから、第1のフィルタユニット(19)の保持チャネルの入り口(23)に導入することができる。フィルタユニット(19、21)の第2の濾材の好適な分離境界の選択を通して、流体に含有される生成物/標的分子(例として、モノクローナル抗体)は、第2の濾材を通過することなく保持され得る。
【0071】
供給チャネルの入り口(24)を経由して、供給媒体(例えば、水性のクエン酸溶液)が供給チャネルに導入され、それにより、第1の濾材を経由して保持液チャネルに導入される。送られた量は、pHセンサ(26)によって測定されたpH値を使用して制御される。pH値は、例えば、7~3.5に下げることができる。
【0072】
同時に、この好ましい態様において、保持液チャネルと透過液チャネルとの間の圧力勾配を使用することにより、透過液チャネルで濾過を行う。透過チャネルの出口(25)での体積流量は、例示的な態様において、供給チャネルに送られる供給媒体の量の体積流量と同じサイズである。よって、流体に残っている成分の濃度、および流体の体積は一定のままである。
【0073】
好ましくは、2~100nmの領域の孔径を有する限外濾過器が、第2の濾材として使用される。第1および第2の濾材は、同じ孔径および/または材料特性を有する必要はない。好ましくは、保持液チャネルと透過液チャネルとの間の膜貫通圧力は、0.1~1.5バールである。供給チャネルと保持液チャネルとの間の膜貫通圧力は、好ましくは0.01~0.4バールである。
【0074】
図2に示される例示的な態様において、ドウェルモジュールは、第1のモジュール/第1のフィルタユニットに直接接続されている。この例示的な態様のドウェルモジュールにおいて、デフレクタフィルム(22)およびスペーサー(例として、テキスタイル材料;
図2には示されていない)のスタックの配置を使用することによって、チャネルが形成される。このチャネルは流体経路を形成する。当業者に知られている一般的なフラットフィルタ構造に従って、スタックは、例えば、プレス、オーバーモールドまたは射出成形によって組み合わせることができる。
【0075】
図2に示される態様の第2のモジュールにおいて、第1のモジュールと同様に、例えば、pH値7のリン酸緩衝塩溶液が、供給チャネルの入り口(27)を経由して供給チャネルに、それにより、第1の濾材を経由して保持液チャネルに導入される。送られる量は、pH値に基づいて調整することができる。pH値はセンサ(29)で測定できる。pH値は、例えば、3.5~7の値に上昇させることができる。
【0076】
圧力センサ(30)およびバルブ(31)を活用して、濾過圧力および出力体積流量を調整することができる。
【0077】
図2に示される例示的な態様において、50lのバッチ容量の(灌流)プロセスの場合において、第1および第2のモジュールの濾材の面積は、それぞれ1.5m
2にすることができ、ドウェルモジュールの全体のチャネル長(流体経路長)は2mにすることができるが、ただし、24時間の全持続時間、約35ml/分の連続体積流量が(灌流)プロセスに対して想定されている。この場合において、3.5のpH値でのドウェルモジュール内の流体のドウェルタイムは約42分になるであろう。
【符号の説明】
【0078】
参照符号
1、11 保持液チャネル
2、12 供給チャネル
3、13 透過液チャネル
4、14 第1の濾材
5、15 第2の濾材
6、16、24、27 供給媒体用入り口
7、10、23 流体用の透過液チャネルの入り口
8 ドウェルモジュールの入り口
8、17、32 流体用出口
9、18、25、28 透過液用出口
10 ドウェルモジュールの出口
19 第1のモジュール
20 ドウェルモジュール
21 第2のモジュール
22 デフレクタフィルム
26、29 pHセンサ
30 圧力センサ
31 バルブ
【0079】
本発明は、以下の参照例でさらに説明されるが、これに限定されない。
【0080】
参照例
以下の出発材料が提供された。
送液(流体):3.5のpH値を有する、0.1Mクエン酸緩衝液中の20g/lウシ血清アルブミン(BSA)
供給液:2のpH値を有する0.1Mクエン酸緩衝液
目的:送液の再緩衝(緩衝液交換)および供給液を活用したpH3.5~pH2.5へのpH値の低下およびドウェルモジュールにおけるインキュベーション。
【0081】
第1のモジュールとして、10kDaのMWCO(分子量カットオフ)を有するポリエーテルスルホンから作製された超微細膜タイプの第1および第2の濾材を備えた第1のフィルタユニットを使用した。第1の濾材の総膜面積は0.027m2であった。保持液を完全に混合するためのテキスタイル材料を、第1のフィルタユニットの保持液チャネルに導入した。
【0082】
プロセスを監視するために、膜間差圧(TMP)を測定した。さらにまた、保持液出口での保持液のタンパク質濃度を測定して、保持液中のBSAの濃度が送液の濃度に対応し、プロセスが平衡状態にあるときを決定した。さらにまた、保持液出口での保持液のpH値を測定して、保持液のpH値がpH2.5の目標設定値に対応し、プロセスが平衡状態にあるときを決定した。送液、供給液および保持液の体積流量は、それぞれ6ml/分、6.5ml/分、6ml/分であった。
【0083】
図3は、TMP、pHおよびタンパク質濃度のすべてのパラメーターで平衡状態に達したことを示している。保持液において必要な2.5のpH値が達成された。保持液チャネル内のテキスタイル材料により、保持液は最適に混合された。
【0084】
続いて、
図2に概略的に示すとおり、保持液を、50の連続したチャネルからなるドウェルモジュールに送った。チャネルをデフレクタフィルムによってそれぞれ細分化した。各チャネルの高さ、幅および長さはそれぞれ約0.41mm、30mmおよび150mmであった。これにより、ドウェルモジュールによって規定される流体経路の全長は約7500mmになった。ドウェルモジュール内の流体のドウェルタイムは、液体が入口に流入してから出口から液体が出現するまでの時間を測定することによって決定した。6ml/分のドウェルモジュールへの入口体積流量で、ドウェルタイムは15.5分と測定された。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明
【外国語明細書】