(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133636
(43)【公開日】2023-09-26
(54)【発明の名称】障害物検知装置、障害物検知方法及び障害物検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/537 20060101AFI20230919BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230919BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20230919BHJP
G01S 15/08 20060101ALI20230919BHJP
【FI】
G01S7/537
G08G1/16 C
G01S15/931
G01S15/08
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036411
(22)【出願日】2022-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 吉正
(72)【発明者】
【氏名】山田 誠介
【テーマコード(参考)】
5H181
5J083
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181FF04
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL06
5H181LL09
5J083AA02
5J083AB13
5J083AC17
5J083AC29
5J083AD04
5J083AE01
5J083AE08
5J083AF08
5J083AG05
5J083BA02
5J083BE19
5J083CA01
5J083CB01
5J083EB04
(57)【要約】
【課題】本開示は、他の車両が送信した搬送波による干渉を確度良く判定することにより、搬送波の送信間隔をできるだけ一定に維持しつつ、干渉による妨害を回避することができる障害物検知装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る障害物検知装置は、送受信制御手段、検知点特定手段及びゴースト尤度評価手段を備える。送受信制御手段は、複数の送受信器に所定の送信順に基づいて搬送波を順次送信させる。検知点特定手段は、送受信器が搬送波を受信した場合に、搬送波の送信から送受信器が搬送波を受信するまでの時間差に基づいて、検知した障害物の座標を示す検知点を順次特定する。ゴースト尤度評価手段は、検知点特定手段が特定した検知点が、車両とは異なる他の車両が送信した搬送波の受信によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載可能な複数の送受信器を制御する障害物検知装置であって、
前記複数の送受信器に所定の送信順に基づいて搬送波を順次送信させる送受信制御手段と、
前記送受信器が搬送波を受信した場合に、前記搬送波の送信から前記送受信器が前記搬送波を受信するまでの時間差に基づいて、障害物の座標を示す検知点を順次特定する検知点特定手段と、
前記検知点特定手段が特定した前記検知点が、前記車両とは異なる他の車両が送信した搬送波の受信によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価するゴースト尤度評価手段と、
を備え、
前記ゴースト尤度評価手段は、
前記検知点の移動パターンが、受信した搬送波が前記障害物からの反射波である場合の検知点の移動パターンと対応しない場合、または、前記検知点の移動パターンが、前記検知点がゴーストである場合の移動パターンに対応する場合、または、前記搬送波の強度または急峻度の特徴が、前記検知点がゴーストである場合の強度または急峻度の特徴に対応する場合、及び、前記検知点と方向及び速度が相関する、前記検知点とは異なる他の検知点が存在する場合、のうち、少なくとも1つに当たる場合に、前記検知点の、前記ゴースト尤度が高いと評価する、
障害物検知装置。
【請求項2】
前記検知点特定手段が特定する前記検知点に基づいて、前記検知点の移動量及び移動方向を特定する検知点追跡手段と、
を備え、
前記ゴースト尤度評価手段は、前記送受信制御手段が前記複数の送受信器に前記搬送波を順次送信させることにより生じる検知点の移動量及び移動方向が示す移動パターンと、前記検知点追跡手段が特定した前記移動量及び前記移動方向が示す移動パターンが対応しない場合、または、前記他の車両の複数の送受信器が順次送信することにより生じる検知点の移動量及び移動方向が示す移動パターンと、前記検知点追跡手段が特定した前記移動量及び前記移動方向が示す移動パターンが対応する場合の、何れかの場合に、前記検知点が、前記ゴースト尤度が高いと評価する、
請求項1に記載の障害物検知装置。
【請求項3】
前記複数の送受信器が受信した搬送波の強度の時間変化を示す受信波形を分析し、前記受信波形における前記検知点に対応するピーク波形を抽出して、前記ピーク波形のピーク強度、または前記ピーク波形の急峻度を算出する受信波形分析手段と、
を備え、
前記ゴースト尤度評価手段は、前記ピーク強度が、前記搬送波が前記検知点までの距離を往復した場合に予想される強度より大きい場合、あるいは、前記ピーク波形の急峻度が、反射により分散した場合に予想される急峻度より大きい場合、前記検知点が、前記ゴースト尤度が高いと評価する、
請求項1または2に記載の障害物検知装置。
【請求項4】
前記検知点追跡手段は、前記検知点の移動速度を推定し、
前記ゴースト尤度評価手段は、前記検知点特定手段が特定した前記検知点と略同一の方向にあって、前記検知点と略同一の方向に前記検知点の移動速度の略二倍の速度で移動する他の検知点が存在する場合、前記検知点が、前記ゴースト尤度が高いと評価する、
請求項2に記載の障害物検知装置。
【請求項5】
前記ゴースト尤度を所定のゴースト尤度閾値と比較するゴースト判定手段をさらに備え、
前記ゴースト判定手段が、前記ゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも大きいと評価した場合、前記送受信制御手段は、前記搬送波の送信間隔を変更する、
請求項1から4の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項6】
前記送受信制御手段は、前記検知点までの距離に応じて、前記搬送波の送信間隔を変更し、前記距離が短い時の前記送信間隔は、前記距離が長い時の前記送信間隔よりも小さい、
請求項5に記載の障害物検知装置。
【請求項7】
前記車両と前記検知点との距離に応じて、前記ゴースト尤度の評価、または前記ゴースト尤度閾値の設定を行い、前記距離が短いほど、前記搬送波の送信間隔の変更を行い易くする、
請求項5または6に記載の障害物検知装置。
【請求項8】
前記車両が走行する速度を示す車両速度に応じて前記ゴースト尤度の評価、または前記ゴースト尤度閾値の設定を行い、
前記車両速度が速いほど、前記搬送波の送信間隔の変更を行い易くする、
請求項5から7の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項9】
前記検知点が前記車両と交錯するまでの衝突余裕時間を算出する衝突余裕時間算出手段をさらに備え、
前記送受信制御手段は、前記衝突余裕時間が所定の衝突余裕時間閾値を下回る場合に、前記送信間隔を変更する、
請求項5から8の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項10】
前記送受信制御手段は、前記検知点の車幅方向の距離が減少傾向になる場合に、前記送信間隔を変更する、
請求項5から9の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項11】
前記検知点が前記車両と交錯する可能性に応じて緊急制動の要否を判定する衝突判定手段をさらに備え、
前記衝突判定手段は、前記ゴースト尤度が所定の閾値より高い検知点を、判定の対象としない、
請求項1から10の何れか1項に記載の障害物検知装置。
【請求項12】
前記搬送波の送信間隔を変更することによる悪影響を評価する悪影響評価手段と、
を備え、
前記悪影響評価手段は、前記検知点の方向が前記車両の進行方向と同じである、前記検知点の距離が減少方向である、前記検知点の減少速度が大きい、前記検知点の距離が小さい、前記車両の走行速度が速い、のうち、少なくとも1つに基づいて、前記悪影響を評価し、
前記悪影響評価手段が評価した前記悪影響、または前記悪影響の増減に応じて、ゴースト尤度の評価、または前記ゴースト尤度閾値の設定を行う、
請求項5または6に記載の障害物検知装置。
【請求項13】
車両に搭載可能な複数の送受信器を制御する障害物検知装置で実行される障害物検知方法であって、
前記複数の送受信器に所定の送信順に基づいて搬送波を順次送信させる送受信制御ステップと、
前記送受信器が搬送波を受信した場合に、前記搬送波の送信から前記送受信器が前記搬送波を受信するまでの時間差に基づいて、障害物の座標を示す検知点を順次特定する検知点特定ステップと、
前記検知点特定ステップが特定した前記検知点が、前記車両とは異なる他の車両が送信した搬送波の受信によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価するゴースト尤度評価ステップと、
を含み、
前記ゴースト尤度評価ステップは、
前記検知点の移動パターンが、受信した搬送波が前記障害物からの反射波である場合の検知点の移動パターンと対応しない場合、または、前記検知点の移動パターンが、前記検知点がゴーストである場合の移動パターンに対応する場合、または、前記搬送波の強度または急峻度の特徴が、前記検知点がゴーストである場合の強度または急峻度の特徴に対応する場合、及び、前記検知点と方向及び速度が相関する、前記検知点とは異なる他の検知点が存在する場合、のうち、少なくとも1つに当たる場合に、前記検知点の、前記ゴースト尤度が高いと評価する、
障害物検知方法。
【請求項14】
車両に搭載可能な複数の送受信器を制御する障害物検知装置に処理を実行させるための障害物検知プログラムであって、
前記複数の送受信器に所定の送信順に基づいて搬送波を順次送信させる送受信制御ステップと、
前記送受信器が搬送波を受信した場合に、前記搬送波の送信から前記送受信器が前記搬送波を受信するまでの時間差に基づいて、障害物の座標を示す検知点を順次特定する検知点特定ステップと、
前記検知点特定ステップが特定した前記検知点が、前記車両とは異なる他の車両が送信した搬送波の受信によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価するゴースト尤度評価ステップと、
を含み、
前記ゴースト尤度評価ステップは、
前記検知点の移動パターンが、受信した搬送波が前記障害物からの反射波である場合の検知点の移動パターンと対応しない場合、または、前記検知点の移動パターンが、前記検知点がゴーストである場合の移動パターンに対応する場合、または、前記搬送波の強度または急峻度の特徴が、前記検知点がゴーストである場合の強度または急峻度の特徴に対応する場合、及び、前記検知点と方向及び速度が相関する、前記検知点とは異なる他の検知点が存在する場合、のうち、少なくとも1つに当たる場合に、前記検知点の、前記ゴースト尤度が高いと評価する、
障害物検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、障害物検知装置、障害物検知方法及び障害物検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された送受信器等の測距センサ(以下、障害物検知装置ともいう)によって、先行車両、障害物、または歩行者等の物体を検知する技術が知られている。また、測距センサによる物体検知結果に基づいて、車両の走行安全性を向上させるための各種制御、例えば、自動ブレーキの作動や、運転者への報知等を行う技術が知られている。
【0003】
測距センサは、搬送波の送信間隔を所定の送信パターンに従って変え、自車両が受信する受信パターンを所定の送信パターンと比較することで、受信した搬送波が障害物からの反射波か、あるいは、干渉波(例えば、他車両が発信した搬送波)であるか、を判定し、干渉波である可能性がある場合は、干渉波による妨害を回避するために自車両の送信タイミング(送信パターン)を変更する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
しかしながら、搬送波の送信間隔を変更すると、車両の周辺に存在する物体を検知する追跡処理が複雑になるため、搬送波の送信間隔をできるだけ一定にしつつ、他の車両が送信した搬送波による干渉の影響を回避することが求められている。
【0006】
本開示は、他の車両が送信した搬送波による干渉を確度良く判定することにより、搬送波の送信間隔をできるだけ一定に維持しつつ、干渉による妨害を回避することができる障害物検知装置を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る障害物検知装置は、車両に搭載可能な複数の送受信器を制御する障害物検知装置であって、送受信制御手段と、検知点特定手段と、ゴースト尤度評価手段と、を備える。送受信制御手段は、前記複数の送受信器に所定の送信順に基づいて搬送波を順次送信させる。検知点特定手段は、前記送受信器が搬送波を受信した場合に、前記搬送波の送信から前記送受信器が前記搬送波を受信するまでの時間差に基づいて、障害物の座標を示す検知点を順次特定する。ゴースト尤度評価手段は、前記検知点特定手段が特定した前記検知点が、前記車両とは異なる他の車両が送信した搬送波の受信によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価する。また、ゴースト尤度評価手段は、前記検知点の移動パターンが、受信した搬送波が前記障害物からの反射波である場合の検知点の移動パターンと対応しない場合、または、前記検知点の移動パターンが、前記検知点がゴーストである場合の移動パターンに対応する場合、または、前記搬送波の強度または急峻度の特徴が、前記検知点がゴーストである場合の強度または急峻度の特徴に対応する場合、及び、前記検知点と方向及び速度が相関する、前記検知点とは異なる他の検知点が存在する場合、のうち、少なくとも1つに当たる場合に、前記検知点の、前記ゴースト尤度が高いと評価する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る障害物検知装置によれば、搬送波の送信間隔をできるだけ一定に維持しつつ、他の車両が送信した搬送波による妨害を受けずに検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車載システムが搭載された車両の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るセンサ制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るソナーの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るセンサ制御装置が備える機能の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るセンサ制御装置が特定する検知座標の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るセンサ制御装置が追跡する検知点の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の特徴の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の特徴の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係るセンサ制御装置が特定する検知座標の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るセンサ制御装置が特定する検知座標の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点の検知座標の特徴の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点の検知座標の特徴の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点の検知座標の特徴の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点の検知座標の特徴の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点と、センサ制御装置が特定する検知点の検知座標の特徴の一例を比較する図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点と、センサ制御装置が特定する検知点の検知座標の特徴の一例を示すテーブルである。
【
図17】
図17は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点と、センサ制御装置が特定する検知点の検知座標の特徴の一例を示すテーブルである。
【
図18】
図18は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の受信強度と、センサ制御装置が受信する場合の受信強度の一例を比較するグラフである。
【
図19】
図19は、実施形態に係るセンサ制御装置が探査波を制御するタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【
図20】
図20は、実施形態に係るセンサ制御装置が探査波を制御する前後の位相差を示した図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る車両システムが実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、変形例に係る車両システムが実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る障害物検知装置の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る車載システム100が搭載された車両1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、車両1は、操舵制御装置30、速度制御装置40、車両制御装置50、HMI(Human Machine Interface)装置60及びセンサ制御装置70を備える。本実施形態においては、車載システム100は、操舵制御装置30、速度制御装置40、車両制御装置50、HMI装置60及びセンサ制御装置70を含むものとする。なお、車両1には、さらに、他の装置が搭載されても良い。また、
図1では操舵制御装置30、速度制御装置40、車両制御装置50、HMI装置60及びセンサ制御装置70を別個の装置として図示しているが、これらの装置の一部または全てが統合されても良い。
【0012】
また、車両1は、ソナー21a、ソナー21b、ソナー21c、ソナー21d、ソナー22a、ソナー22b、ソナー22c、ソナー22d、撮像装置16a及び撮像装置16bを備える。
【0013】
ソナー21a、ソナー21b、ソナー21c、ソナー21d、ソナー22a、ソナー22b、ソナー22c及びソナー22dは、本実施形態における複数の送受信器の一例である。ソナー21a、ソナー21b、ソナー21c、ソナー21d、ソナー22a、ソナー22b、ソナー22c及びソナー22dのうち、ソナー21a、ソナー21b、ソナー21c及びソナー21dは車両1の前端部に設けられる。また、ソナー22a、ソナー22b、ソナー22c及びソナー22dは車両1の後端部に設けられる。
【0014】
以下、個々のソナー21a、ソナー21b、ソナー21c、ソナー21d、ソナー22a、ソナー22b、ソナー22c及びソナー22dと、ソナー22a、ソナー22b、ソナー22c及びソナー22dを特に区別しない場合には、ソナー21及びソナー22という。また、ソナー21a、ソナー21b、ソナー21c及びソナー21dを総称する場合には前方ソナー21という。また、ソナー22a、ソナー22b、ソナー22c及びソナー22dを総称する場合には後方ソナー22という。
【0015】
また、ソナー21及びソナー22に、これらを制御するセンサ制御装置70を加えたものは、ソナーシステム、または測距装置とも呼ばれる。ソナーシステムと区別するため、ソナー21及びソナー22をソナーモジュールと呼ぶことがある。ソナーシステムは搬送波を送受信し、送信から受信までの時間差を距離に換算する距測装置の一種であり、車両1では障害物検知装置として利用する。ソナーモジュールは送信器と受信器を兼ねているので、送受信器と呼ぶことがある。ソナーの場合、搬送波は音波(超音波)であるので、以下の搬送波を音波と読みかえても良い。
【0016】
ここでは、搬送波(音波)を様態に応じて呼び分けている。送信器が送信する搬送波を探査波、探査波が物体で反射して生じた搬送波を反射波、受信器が受信した搬送波を受信波、受信波のうち車両1以外が送信した探査波を受信したものを干渉波と呼ぶ。ここでは、車両1以外として近くにある他の車両のソナーを想定する。他の車両のソナーが送信した探査波(干渉波)は、物体で反射せずに受信器に直接届くので、直接波と呼ぶことがある。
【0017】
ソナー21及びソナー22は、車両1上で、周囲の物体の検知または測距に有利な位置に配置される。例えば、複数のソナー21及びソナー22は車両1の前端部及び後端部のバンパー上に、距離を置いて配置され、車両1の前後の物体を検知する。
【0018】
ソナー21及びソナー22は、車両1に備えられて超音波を送信し、車両1の周囲の物体が反射した反射波を受信するまでの時間を計測することで、車両1の周囲の物体を検知するとともに、検知した物体までの距離情報を得る。なお、本実施形態で「物体」または「障害物」という場合には、歩行者及び他の車両を含むものとする。また、車両1が走行するのに障害とならないもの、例えば、路面の凹凸等は障害物には含まれない。
【0019】
より詳細には、車両1の前端部の中央右寄りには第1の前方センターソナー21aが設けられ、車両1の前端部の中央左寄りには第2の前方センターソナー21bが設けられる。また、車両1の前端部において、第1の前方センターソナー21aよりも右側の角部の近くに、第1の前方コーナーソナー21cが設けられる。また、車両1の前端部において、第2の前方センターソナー21bよりも左側の角部の近くに、第2の前方コーナーソナー21dが設けられる。
【0020】
また、車両1の後端部の中央右寄りには第1の後方センターソナー22aが設けられ、車両1の後端部の中央左寄りには第2の後方センターソナー22bが設けられる。また、車両1の後端部において、第1の後方センターソナー22aよりも右側の角部の近くに、第1の後方コーナーソナー22cが設けられる。また、車両1の後端部において、第2の後方センターソナー22bよりも左側の角部の近くに、第2の後方コーナーソナー22dが設けられる。
【0021】
図1では、第1の前方センターソナー21aが物体を検知可能な範囲を検知範囲210a、第2の前方センターソナー21bが物体を検知可能な範囲を検知範囲210b、第1の前方コーナーソナー21cが物体を検知可能な範囲を検知範囲210c、第2の前方コーナーソナー21dが物体を検知可能な範囲を検知範囲210dとする。個々の検知範囲210a~210dを特に区別しない場合には、単に検知範囲210という。
【0022】
また、第1の後方センターソナー22aが物体を検知可能な範囲を検知範囲220c、第2の後方センターソナー22bが物体を検知可能な範囲を検知範囲220b、第1の後方コーナーソナー22cが物体を検知可能な範囲を検知範囲220c、第2の後方コーナーソナー22dが物体を検知可能な範囲を検知範囲220dとする。個々の検知範囲220a~210dを特に区別しない場合には、単に検知範囲220という。
【0023】
なお、
図1では各検知範囲210及び検知範囲220を分離して図示しているが、実際には、隣接するソナー21及びソナー22の検知範囲210及び検知範囲220同士は重複する。
【0024】
例えば、車両1が前進する場合には、車両1の前端部が車両1の進行方向側となるため、第1の前方センターソナー21aが第1の中央測距手段の一例となり、第2の前方センターソナー21bが第2の中央測距手段の一例となる。第1の前方センターソナー21a及び第2の前方センターソナー21bは、車両1の進行方向を指向して設けられている。また、この場合、第1の前方コーナーソナー21cが第1のコーナー測距手段の一例となり、第2の前方コーナーソナー21dが第2のコーナー測距手段の一例となる。
【0025】
さらに、車両1の前端部が車両1の進行方向側となる場合、第1の前方センターソナー21a及び第1の前方コーナーソナー21cが車両1の進行方向から右寄りの方向を指向して設けられた右側測距手段の一例となる。この場合、第2の前方センターソナー21c及び第2の前方コーナーソナー21dが車両1の進行方向から右寄りの方向を指向して設けられた左側測距手段の一例となる。
【0026】
また、第1の前方センターソナー21a、第2の前方センターソナー21b、第1の後方センターソナー22a、第2の後方センターソナー22bを特に区別しない場合には、単にセンターソナー21a、21b、22a、22bという。また、第1の前方コーナーソナー21c、第2の前方コーナーソナー21d、第1の後方コーナーソナー22c、第2の後方コーナーソナー22dを特に区別しない場合には、単にコーナーソナー21c、21d、22c、22dという。
【0027】
なお、以下、本実施形態においては、主として車両1の進行方向が前方である場合を例として、具体的な説明を記載するが、例えば、車両1の進行方向が後方である場合には、前方ソナー21を用いて例示した機能について、後方ソナー22に当てはめて適用しても良い。
【0028】
車両1が前方に直進する場合、車両1の進行方向に位置する障害物は、内寄りの第1の前方センターソナー21a及び第2の前方センターソナー21bにより検知される。また、車両1が前方に向かって左折または右折する場合、左折先または右折先に位置する物体は、第1の前方コーナーソナー21cまたは第2の前方センターソナー21bにより検知される。
【0029】
さらに、車両1の右側方から、車両1の右前方に障害物が進入する時は、第1の前方コーナーソナー21cまたは第1の前方センターソナー21aが最初に検知する。また、車両1の左側方から、車両1の左前方に障害物が進入する時は、第2の前方コーナーソナー21dまたは第2の前方センターソナー21bが最初に検知する。
【0030】
また、ソナー21及びソナー22の設置場所及び数は、
図1に示す例に限定されるものではない。ここで、ソナー21及びソナー22の詳細について
図3を用いて説明する。
図3は、実施形態に係るソナー21及びソナー22の構成の一例を示す図である。個々のソナー21及びソナー22は、ソナーモジュールともいう。ソナーモジュールは、コントローラ23、駆動回路241、受信回路242、圧電素子25を備える。
【0031】
また、コントローラ23は、タイマー231、通信回路232、波形メモリ233、判定回路234及び閾値メモリ235を備える。さらに、コントローラ23は、伝送路26を介してセンサ制御装置70と接続する。なお、コントローラ23は、車両制御装置50とも伝送路26を介して接続しても良い。
【0032】
ソナー21及びソナー22は、圧電素子25に交流電圧が印加されることにより、超音波(搬送波)を送信する。例えば、コントローラ23が駆動回路241を制御して、圧電素子25に50KHzの交流電圧を印加することにより、圧電素子25が同じ周波数の超音波を送信する。送信される超音波の包絡線はパルス状である。圧電素子25は、搬送波(超音波)をパルス波形でAM変調して送信する、と言い換えても良い。当該パルス状の超音波は、路面や障害物にあたると反射して、一部が反射波としてソナー21及びソナー22に返って来る。
【0033】
そして、圧電素子25は、返ってきた反射波の音圧を電圧に変換する。圧電素子25は、本実施形態における変換手段の一例である。受信回路242は、圧電素子25によって音圧から変換された電圧を、増幅した上で整流し、音波受信強度に変換する。当該変換された音波受信強度の時間変化を示す波形を受信波形という。
【0034】
受信信号と増幅された受信信号は交流であり、音波受信強度は増幅された受信信号を整流したものなので、交流と直流の違いがあるが、何れも受信信号を処理して得られたものなので、交流か直流かで区別せず、一括して受信信号と呼ぶことがある。受信回路242は、圧電素子25によって音圧から変換された電圧を増幅する不図示の増幅回路(アンプ)を備える。受信回路242に含まれる増幅回路または受信回路242は、本実施形態における増幅手段の一例である。
【0035】
図2に戻る。撮像装置16a及び撮像装置16bは、車両1の周囲を撮像するカメラである。
図1では、撮像装置16aは車両1の前端部に設けられ、車両1の前方を含む周囲を撮像可能である。また、撮像装置16bは車両1の後端部に設けられ、車両1の後方を含む周囲を撮像可能である。撮像装置16a、撮像装置16bの設置場所及び数は
図1に示す例に限定されるものではない。
【0036】
なお、後方の撮像装置16bは必須ではなく、撮像装置16aのみが車両1に搭載されていても良い。以下、撮像装置16a及び撮像装置16bを特に区別しない場合には、単に撮像装置16という。撮像装置16は、本実施形態における撮像手段の一例である。
【0037】
なお、ソナー21、ソナー22及び撮像装置16を総称して検知装置としても良い。また、車両1は、撮像装置16を備えなくとも良い。また、車両1は、GPS(Global Positioning System)信号を受信可能なアンテナ、及び受信したGPS信号に基づいて車両1の位置を表すGPS座標を特定するGPS装置(不図示)を備えても良い。
【0038】
操舵制御装置30は、車両1の舵角を制御する。操舵制御装置30は、舵角制御装置ともいう。操舵制御装置30は、例えば、車両1のパワーステアリングの操舵補助に有利な位置に配置される。
【0039】
速度制御装置40は、車両1の加速及び制動を制御する。速度制御装置40は、例えば、エンジンまたはモーターとブレーキの制御に有利な位置に配置される。
【0040】
車両制御装置50は、車両1の各種挙動を制御する装置であり、例えば、操舵制御装置30及び速度制御装置40の近傍に配置される。
【0041】
HMI装置60は、情報を表示可能なディスプレイと、ユーザによる操作を受け付け可能なタッチパネルまたはスイッチ等を含む。なお、ディスプレイとタッチパネルとは一体の装置として構成されても良い。ディスプレイは、表示部ともいう。タッチパネル及びスイッチを、操作部ともいう。また、HMI装置60に含まれる表示部及び操作部は、運転席周辺に配置される。
【0042】
センサ制御装置70は、ソナー21及びソナー22を制御する。センサ制御装置70は、ソナー21及びソナー22の間での干渉を最小限にするために、同時に送信するソナーの位置関係が車体の前後で対角線の関係になるように送信順を制御している。そのため、同じソナーシステムを備えた車と対面したり後続したりした場合も、同時に送信するソナーの位置関係が他車と対角線の関係になることがある。なお、センサ制御装置70は、さらに、撮像装置16を制御しても良い。あるいは、上述の車両制御装置50が撮像装置16を制御しても良い。
【0043】
センサ制御装置70、ソナー21及びソナー22は、本実施形態における障害物検知装置の一例である。なお、センサ制御装置70単体を障害物検知装置の一例としても良い。また、障害物検知装置は、車載システム100全体、あるいは車載システム100に含まれる操舵制御装置30、速度制御装置40、車両制御装置50及びHMI装置60の何れかが含まれるものとしても良い。
【0044】
操舵制御装置30、速度制御装置40、車両制御装置50、HMI装置60及びセンサ制御装置70は、例えば、CAN(Controller Area Network)等のローカルエリアネットワークで有線接続される。また、ソナー21、ソナー22及び撮像装置16は、ローカルエリアネットワークに接続しても良いし、センサ制御装置70または車両制御装置50と専用の配線で接続されても良い。
【0045】
次に、センサ制御装置70のハードウェア構成について説明する。
図2は、実施形態に係るセンサ制御装置70のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、センサ制御装置70は、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM(Random Access Memory)11C、I/F(インタフェース)11D、フラッシュメモリ11E等がバス11Fにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0046】
CPU11Aは、センサ制御装置70全体を制御する演算装置である。なお、CPU11Aは、プロセッサの一例であり、他のプロセッサまたは処理回路がCPU11Aの代わりに設けられても良い。ROM11Bは、CPU11Aによる各種処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM11Cは、例えば、センサ制御装置70の主記憶装置であり、CPU11Aによる各種処理に必要なデータを記憶する。
【0047】
I/F11Dは、データを送受信するためのインタフェースである。また、I/F11Dは、車両1内のCAN等を介して車両1に搭載された他の装置との間で情報の送受信をしても良い。また、フラッシュメモリ11Eは、書き込み可能な不揮発性の記憶媒体の一例である。ROM11B、RAM11C、及びフラッシュメモリ11Eは、記憶部ともいう。なお、センサ制御装置70は、フラッシュメモリ11Eの代わり、あるいはフラッシュメモリ11Eに加えて、HDD(Hard Disk Drive)等の他の記憶装置を備えても良い。
【0048】
また、操舵制御装置30、速度制御装置40、車両制御装置50及びHMI装置60のハードウェア構成についても、例えば、CPU等の処理回路、ROM、RAM、I/F、及びフラッシュメモリ等を備えるものとする。
【0049】
図4は、実施形態に係るセンサ制御装置70が備える機能の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、本実施形態のセンサ制御装置70は、受信波形取得手段701、受信波形分析手段702、検知点特定手段703、検知回数加算手段704、検知点追跡手段705、ゴースト尤度評価手段706、検知回数判定手段707、ゴースト尤度加算手段708、ゴースト尤度閾値設定手段709、送受信制御手段710、衝突判定手段711、衝突余裕時間算出手段712、悪影響評価手段713及びゴースト判定手段714を備える。なお、センサ制御装置70が備える機能はこれに限定されない。
【0050】
受信波形取得手段701は、複数の送受信器から受信波形を取得する。例えば、受信波形取得手段701は、車両1に搭載される複数のソナー21及びソナー22が受信した音波の、強度の時間変化を示す受信波形を取得する。
【0051】
具体的には、車両1に搭載されるソナー21及びソナー22は探査波を送信する。送信された探査波は車両1の周辺に存在する障害物にあたる。探査波が障害物にあたると、障害物で反射して音波が戻ってくる。ソナー21及びソナー22は障害物で反射して戻ってくる音波(反射波)を受信する。ソナー21及びソナー22は受信した音波の、強度の時間変化を示す受信波形を生成し、受信波形取得手段701は、ソナー21及びソナー22から受信波形を取得する。
【0052】
受信波形は受信波を交流電圧に変換し、更に増幅したものを包絡線検波(整流)したものであり、受信波の振幅の時間変化を表す波形である。探査波は搬送波をパルス波形でAM変調したものであり、包絡線検波はAM復調に当たる。受信波形では、パルス波形が崩れてピーク波形になっているので、ピーク波形の立ち上がり時刻を特定し、それをパルス波形の受信時刻として扱う。ソナーシステムは、パルスを搬送波(音波)に乗せた送信時刻から、パルスの受信時刻までの時間差を測定するものである、といってよい。
【0053】
受信波形分析手段702は、受信波形における検知点に対応するピーク波形の受信強度または急峻度を算出する。具体的には、受信波形分析手段702は、受信波形取得手段701が取得した受信波形からピーク波形を抽出し、その受信強度(最大値)または急峻度(受信強度の変化率、またはピーク波形の半値幅)を算出する。また、受信波形分析手段702は、後述する検知点特定手段703が特定した検知点に対応するピーク波形の受信強度または急峻度を評価する。ピーク波形の受信強度または急峻度の評価については後述する。
【0054】
検知点特定手段703は、1つの送受信器が探査波を送信してから、車両1の周辺に存在する障害物で反射して戻ってくる反射波を複数の送受信器が受信するまでの時間に基づいて、検知された障害物の座標を示す検知点を順次特定する。
【0055】
ここで、ソナー21及びソナー22が検知した障害物の座標を特定する方法について、
図5を用いて説明する。実施形態に係るソナーが特定する検知座標の一例を示す図である。
【0056】
ソナー80aが音波を送信し、T1(s)後に物体90aからの反射波を検知した場合、ソナー80aから物体90aまでの片道の距離をR1(m)とすると、音波の経路長は2R1(m)なので、音速M(m/s)で距離2R1進む間にT1経過したことになる。よって、ソナー80aから物体90aまでの片道の距離R1(m)は、R1=T1×M÷2で算出することができる。
【0057】
また、ソナー80bが、ソナー80aの送信からT2(s)後に物体90aからの反射波を検知した場合、音波の経路長はR1+R2(m)になるため、ソナー80bから物体90aまでの片道の距離R2(m)は、R2=T2×M-R1で算出することができる。
【0058】
ソナー80a及びソナー80bの位置は既知であるため、物体90aの検知点の位置は、ソナー80aを中心とする半径R1の円と、ソナー80bを中心とする半径R2の円の交点の位置として特定できる。また、物体90aの位置は、音波を送信した自車両ソナーの位置が起点となり特定される。
【0059】
図4に戻る。検知回数加算手段704は、検知点特定手段703が特定した検知点が繰り返し検知された回数を数える。具体的には、検知回数加算手段704は、検知点回数が初期化された後に検知点特定手段703が特定した検知点について、それ以前に検知していた検知点と同じ検知点でなければ、検知回数を1回目と数える。以後、検知点特定手段792が特定した検知点について、以前に検知していた検知点と同じ検知点であれば、その都度、検知回数を加算する。
【0060】
また、以前に検知していた検知点と同じ検知点を検知しないことが、所定回数あった場合には、検知回数加算手段704は検知回数を初期化する。検知点が以前に検知していた検知点と同じ検知点であるか否かは、後述する検知点追跡手段705が判定する。検知点追跡手段705は検知点の移動量及び移動方向を推定し、検知点の位置が前回と同じである場合に限らず、検知点の位置が前回と異なる場合にも、検知点が以前に検知していた検知点と同じ検知点であると判定することがある。
【0061】
検知点追跡手段705は、検知点特定手段703が特定する検知点に基づいて、検知点の移動量及び移動方向を推定し、検知点が以前に検知していた検知点と同じか否か判定する。検知点が以前に検知していた検知点と同じか否かの判定を同一性判定と呼ぶ。
【0062】
ここで、検知点追跡手段705が検知点を追跡することにより、障害物を特定する方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、実施形態に係るセンサ制御装置が追跡する検知点の一例を示す図である。
【0063】
ソナー21及びソナー22は、例えば、他の車両のソナーの送信音や、建設機械の発する音を受信することがある。しかし、建設機械の発する音のように、ソナーの発信周期と無関係に発せられた音の受信時刻と、ソナーの発信時刻との時間差はランダムであるため、時間差から検知点の位置を算出すると、検知点の位置は毎回、一定しない。
【0064】
そこで、複数回、連続して同じ位置に検知した検知点を障害物として特定し、前回までと無関係な位置に現れる検知点は妨害(雑音)として棄却する。つまり、障害物として特定される前の検知点は障害物候補であり、妨害を含んでいるが、毎回、概ね一定の位置に現れる検知点を検知点追跡手段705が選別することにより、障害物候補から妨害を取り除いている。
【0065】
しかし、受信波が他の車両のソナーの探査波(干渉波)の場合は、自車両のソナーの発信時刻との時間差が一定になり、干渉波によって生じた検知点が、毎回、一定の位置に現れることがあるので、容易に妨害として棄却できない場合がある。他の車両のソナーの探査波を、特に干渉波と呼び、干渉波によって生じた検知点をゴーストと呼ぶことにする。つまり、干渉波によるゴーストを反射波による検知点と分別して棄却することが、本願が解決しようとする課題の一つといえる。
【0066】
ここで、前回の検知で特定した検知点90bと、今回の検知で特定した検知点90cと、が同じ検知点であるかを追跡処理の中で判定する場合を考える。例えば、検知の周期が100(ms)の時、障害物の相対速度を20(km/h)(秒速に換算すると、5.5(m/s))と仮定すると、障害物は2回の検知の間に55(cm)移動する。
【0067】
同じ検知点であると判定する同一判定閾値を仮にT1(=60(cm))とすると、検知点90bと検知点90cとの距離差が同一判定閾値より小さいため、同じ物体が55(cm)移動していると判定する。つまり、前回の検知点から半径(同一判定閾値)T1の円内に検知点が存在すれば、同じ物体だと判定する。検知点追跡手段705は、同じ物体だと判定した検知点の位置の変化量から、物体の移動速度と移動方向を特定して、次に検知点が現れる位置を推定する。これを、移動の推定と呼ぶ。
【0068】
例えば、検知点追跡手段705は、今回までの検知点(検知点90bと検知点90c)から、次に検知点が現れると推定した点である検知点90dを中心とし、次回の検知座標を同一判定する範囲を示す半径T2の円(以下、移動の推定に基づく予測円ともいう)を算出し、予測円内に検知点90eがあれば、同一性判定閾値T1を半径とする円から外れていても、同じ物体だと判定する。
【0069】
一方で、検知点追跡手段705は、同一性判定閾値T1の円内に検知点90fがあっても、半径T2の予測円から外れていて、予測円の中に検知点90eがあることから、検知点90fは、検知点90b、検知点90c及び検知点90dとは別の物体であると判定する。つまり、前回の検知点からの距離が移動の推定を行う前の同一判定閾値以下でも、移動の推定に基づく予測円から外れていれば同一性判定で棄却して良い。
【0070】
図4に戻る。ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点が、車両1とは異なる他の車両が送信した干渉波による検知点(ゴースト)であることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価する。また、ゴースト尤度評価手段706は、検知点の移動量及び移動方向が、送受信器の位置の変化に対応する当該移動量及び当該移動方向と一致しない場合、検知点に対応するピーク波形が、予め定められたピーク波形と一致しない場合、及び、移動速度が検知点の移動速度の略二倍である、検知点とは異なる他の検知点が存在する場合、のうち、少なくとも1つが生じた場合に、検知点が、ゴースト尤度が高いと評価する。
【0071】
例えば、ゴースト尤度評価手段706は、検知点追跡手段705が特定した移動量及び移動方向が、送受信器の位置の変化に対応する当該移動量及び当該移動方向と一致しない場合、検知点が、ゴースト尤度が高いと評価する。
【0072】
また、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点のピーク波形に含まれる受信強度の最大値が、ピーク波形の位置に特定される距離で探査波が反射した場合の予め定めた受信強度の最大値より大きい場合、あるいは、検知点特定手段703が特定した検知点のピーク波形の急峻度が、予め定めた急峻度閾値より大きい場合、検知点が、ゴースト尤度が高いと評価する。
【0073】
さらに、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点と略同一の方向にあって、移動速度が検知点の移動速度の略二倍である異なる他の検知点が存在する場合、検知点が、ゴースト尤度が高いと評価する。
【0074】
ここで、自車両のソナーが他車両のソナーから妨害を受ける場合の検知点の特徴について、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7及び
図8は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の特徴の一例を示す図である。
【0075】
まず、
図7及び
図8において、ソナー80c、ソナー80d及びソナー80eは自車両のソナー、ソナー80f及びソナー80gを他車両のソナーであると仮定する。
図7は、ソナー80fとソナー80gが同時に送信した場合の検知点について説明する。
図8は、ソナー80cとソナー80gが同時に送信した場合の検知点について説明する。
【0076】
ソナー80c、ソナー80d及びソナー80eは、音波の受信時刻から距離を推定し、各ソナー80c、ソナー80d及びソナー80eを中心として検知により推定した距離を半径とする円を各々描くと、円の交点が検知点となる。
【0077】
ここで、
図7において、ソナー80dからソナー80fまでの距離をL1(m)、ソナー80c及びソナー80eまでの距離をL2(m)とする。ソナー80fとソナー80dが同時に送信する場合のソナー80dからの推定距離はL1/2(=R3)(m)になる。ソナー80c及びソナー80eでは、L2>L1なので、受信時刻がソナー80dよりも遅い。そのため、推定距離R4は推定距離R3よりも大きくなる。その結果、検知点は、ソナー80dから半径L1/2(=R3)(m)の円と、ソナー80c及びソナー80eから推定距離R4(R4>R3)(m)の円の、3つの円が交わる交点で表すことができる。
【0078】
推定距離R3と推定距離R4の距離の差は、ソナー80fからの距離の差で発生しており、同一の反射体からの距離差には対応していないので、ソナー80c及びソナー80eを中心とする円の組み合わせで特定される検知点90gと、ソナー80c及びソナー80dを中心とする円の組み合わせで特定される検知点90hと、ソナー80d及びソナー80eを中心とする円の組み合わせで特定される検知点90iと、は位置が異なる。
【0079】
しかし、3つの検知点は位置が接近しているので、同一の反射体の異なる部分が検知されたものとして処理される。そこで、検知点90g、検知点90h及び検知点90iの複数の検知点の重心を求めた位置を代表検知点90jと呼び、反射体の位置を代表させることにする。なお、代表検知点を単に検知点と呼んでも良い。
【0080】
次に、
図8において、ソナー80eからソナー80gまでの距離をL3(m)、ソナー80cからソナーgまでの距離をL4(m)、ソナー80dからソナーgまでの距離をL5(m)とする。ソナー80gとソナー80cが同時に送信する場合のソナー80cからの推定距離はL4/2(=R6)(m)になる。ソナー80dとソナー80eでの受信時刻はソナー80cより早いので、推定距離は80cからの推定距離よりも短い(R6>R7>R5)。その結果、算出される検知点は、ソナー80cから半径L4/2(=R6)(m)の円と、ソナー80dから半径R7(R7<R6)(m)の円と、ソナー80eから半径R5(R5<R7)(m)の円の、3つの円が交わる交点で表すことができる。
【0081】
ソナー80c及びソナー80dを中心とする円の組み合わせで特定される検知点90kと、ソナー80d及びソナー80eを中心とする円の組み合わせで特定される検知点90lと、ソナー80c及びソナー80eを中心とする円の組み合わせで特定される検知点90mと、は位置が異なるので、検知点90k、検知点90l及び検知点90miの複数の検知点の重心を求めた位置を代表検知点90nとする。代表検知点90nの位置は、
図7に示した代表検知点90jと位置が異なる。また、代表検知点90nの位置は、他車両の送信したソナー80g寄りに位置する。
【0082】
つまり、受信波が他車両のソナーからの干渉波である場合、自車両のソナー80c、ソナー80d及びソナー80eとの推定距離は、他車両のソナー80f及びソナー80gの送信との時間差と、他車両が送信するソナー80f及びソナー80gから自車両のソナー80c、ソナー80d及びソナー80eまでの距離で検知点が決まるため、他車両の送信したソナーに寄った位置に検知点が現れ、他車両の複数のソナーが順に送信すると、検知点の座標が他車両の送信したソナーの位置を追うような動きをする。
【0083】
検知点座標がばらつく現象は、例えば、障害物が面状の反射体である時の反射波による検知点にも発生するため、他車両のソナーモジュールとの違いを
図9及び
図10を用いて説明する。
図9及び
図10は、実施形態に係るセンサ制御装置が特定する検知座標の一例を示す図である。
【0084】
ソナー80cが送信した音波が、ソナー80c、ソナー80d及びソナー80eと対面する反射面Sで反射した場合、往復の経路長をソナー80cが2L6、ソナー80dが2L7、ソナー80eが2L8であるとする時、音波の経路が反射面に対して斜めになると経路長が伸びるため、L8>L7>L6のように送信したソナー80cから遠いソナー80eまでの経路が特に長くなる。
【0085】
また、ソナー80eからの推定距離は、実際の反射点までの距離L8よりも大きい2L8-L6と算出されるため、検知点は実際の反射点90uよりも送信したソナー80cの側に寄った反射点90qに特定される。その結果、ソナー80c、ソナー80d及びソナー80eの検知点の重心である代表検知点90rも、送信したソナー80c寄りに位置する。
【0086】
図示を略すが、ソナー80dが送信した場合、代表検知点はソナー80dの正面に位置する。
図10に示すように、ソナー80eが送信した場合、代表検知点はソナー80e寄りの90vに位置する。つまり、検知点がばらつく現象は、例えば、障害物が面状の反射体である時の反射波による検知点にも発生するが、代表検知点の位置は送信したソナーの位置に依存して変化し、送信したソナーの位置の側に寄って位置する。
【0087】
したがって、他車両のソナーから妨害を受ける場合、代表検知点の位置は自車両の送信したソナーの位置ではなく、他車両の送信したソナーの位置に寄るので、他車両のソナーモジュールから妨害を受ける場合と妨害を受けない場合とで、代表検知点の移動のパターンが異なる。
【0088】
次に、他車両のソナーモジュールから妨害を受ける場合の座標パターンの特徴について、
図11、
図12、
図13及び
図14を用いて説明する。
図11、
図12、
図13及び
図14は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点の検知座標の特徴の一例を示す図である。
図11、
図12、
図13及び
図14に示すグラフでは、横軸(X軸)は自車両2を基準とした前後方向の距離(m)、縦軸(Y軸)は、自車両2を基準とした車幅方向の距離(m)を示す。すなわち、自車両2及び他車両3を上から見ている状態である。
【0089】
また、
図11、
図12、
図13及び
図14に示す折れ線は、自車両2が備えるソナーが、他車両3が備えるソナーから送信される干渉波を受信している状態で他車両3がX軸と並行に前進した時に、受信した干渉波から特定される検知点の位置の軌跡である。前提として、
図11、
図12、
図13及び
図14における音速は340(m/s)とする。
【0090】
自車両2及び他車両3は、車両の前方に各々4つのソナーを備えた場合について説明する。具体的には、自車両2は、ソナー81a、ソナー81b、ソナー81c及びソナー81dを0.5(m)間隔で備える。また、他車両3は、ソナー82a、ソナー82b、ソナー82c及びソナー82dを0.5(m)間隔で備える。
【0091】
次に、自車両2及び他車両3の位置関係について説明する。自車両2及び他車両3は、対向する位置関係にある。具体的には、自車両2が備えるソナー81a、ソナー81b、ソナー81c及びソナー81dの座標は、
図11、
図12、
図13及び
図14において、ソナー81a(0,0)、ソナー81b(0,-1)、ソナー81c(0,-0.5)及びソナー81d(0,-1.5)に位置する。
【0092】
他車両3が備えるソナー82a、ソナー82b、ソナー82c及びソナー82dの座標は、
図11、
図12、
図13及び
図14において、ソナー82a(10,2)、ソナー81b(10,3)、ソナー81c(10,2.5)及びソナー81d(10,3.5)に位置する。他車両3が備えるソナーの座標は、他車両の移動に伴って、各々Y軸に向かって移動する。
【0093】
次に、自車両2及び他車両3が探査波を送信する送信時刻及び送信順序について説明する。
図11、
図12、
図13及び
図14において、自車両2及び他車両3のソナーが送信する送信時刻は同一であるものとする。また、
図11において、自車両2は、ソナー81a、ソナー81b、ソナー81c及びソナー81dの順序で探査波を送信する。
図12において、自車両2は、ソナー81b、ソナー81c、ソナー81d及びソナー81aの順序で探査波を送信する。
【0094】
図13において、自車両2は、ソナー81c、ソナー81d、ソナー81a及びソナー81bの順序で探査波を送信する。
図14において、自車両2は、ソナー81d、ソナー81a、ソナー81b及びソナー81cの順序で探査波を送信する。
図11、
図12、
図13及び
図14において、他車両3は、ソナー82a、ソナー82b、ソナー82c及びソナー82dの順序で探査波を送信する。
【0095】
次に、自車両2が特定する検知点の追跡について説明する。
図11、
図12、
図13及び
図14において、自車両2と他車両3のX軸上の相対距離が10(m)から0(m)に変化する場合について検知点の軌跡を示している。
【0096】
自車両2が特定する検知点は、前述のように、受信波が自車両のソナーが発信した探査波を障害物が反射した反射波であることを前提として座標を特定している。つまり、発信した自車両のソナーの位置が、検知点座標の計算の起点になる。しかし、干渉波を受信している状況では、干渉波を発信した他車両のソナーに寄った位置に検知点座標が現れる。その結果、他車両と自車両の発信時刻が同時である場合、同時に発信した自車両のソナーと他車両のソナーの組み合わせを両端とする線分の、中点付近に検知点が現れる。
【0097】
図11の場合、同時に発信した自車両のソナーと他車両のソナーの組み合わせを両端とする線分は一点で交差し、その交点が中点でもあるので、検知点は比較的に収束した位置に現れる。
図12の場合、同時に発信した自車両のソナーと他車両のソナーの組み合わせを両端とする線分は、一対を除き交差しない。その結果、検知点は
図11の場合よりも大きくばらつく。
図13の場合、同時に発信した自車両のソナーと他車両のソナーの組み合わせを両端とする線分の中点は、2点に分れる。その結果、
図11の場合よりは収束度が下がるが、
図12の場合よりも、検知点のばらつきは小さくなる。
【0098】
図14の場合は、
図12の場合と同様に、同時に発信した自車両のソナーと他車両のソナーの組み合わせを両端とする線分は、一対を除き交差しない。その結果、検知点は
図12の場合のように大きくばらつく。このように、干渉波を受信している状況では、同時に発信した自車両のソナーと他車両のソナーの組み合わせに依存した軌跡(移動パターン)を描いて検知点が移動する現象が起きる。
【0099】
図15は、上述した
図11、
図12、
図13及び
図14に示したソナーが妨害を受ける場合の検知点の軌跡の一部を抜粋し、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の検知点の軌跡(移動パターン)と、面状の反射体からの反射波を受信する場合の検知点の軌跡(移動パターン)とを比較する図である。
図15において、他車両3が送信する干渉波の送信順序は、ソナー82a、ソナー82b、ソナー82c及びソナー82dの順序で探査波を送信する場合について説明する。
【0100】
図15の1段目に示すように、自車両2におけるソナーの送信順序が、ソナー81a、ソナー81b、ソナー81c及びソナー81dの順序で探査波を送信した場合、面状の反射体に接近する場合の検知点の位置は、自車両2のソナーの位置に対応して、検知点811a、検知点811b、検知点811c及び検知点811dの順序で変化する。一方、他車両3が送信する干渉波によるゴーストである場合の検知点の位置は、他車両3のソナーの位置に対応して、検知点821a、検知点821b、検知点821c及び検知点821dの順序で変化する。
【0101】
検知点の最初の移動に着目して、検知点811aから検知点811bの移動と、検知点821aから検知点811bの移動とを比較すると、検知点が移動する方向が逆になっていること事がわかる。2番目から3番目、3番目から4番目も、移動する方向が逆であるので、干渉波の場合と反射波の場合で移動パターンが違っていることがわかる。
【0102】
また、
図15の2段目に示す様に、自車両2におけるソナーの送信順序が、ソナー81b、ソナー81c、ソナー81d及びソナー81aの順序で探査波を送信した場合、面状の反射体に接近する場合の検知点の位置は、自車両2のソナーの位置に対応して、検知点811b、検知点811c、検知点811d及び検知点811aの順序で変化する。一方、他車両3が送信する干渉波によるゴーストである場合の検知点の位置は、他車両3のソナーの位置に対応して、検知点821a、検知点821b、検知点821c及び検知点821dの順序で変化する。
【0103】
面状の反射体による反射波の場合、3番目から4番目への移動量が他の回の移動量よりも大きい。検知点の位置は発信するソナーに寄るようにばらつくので、自車両の発信するソナーが右端から左端に変わる回の移動量が、他の回の移動量よりも大きくなる。他車両3が送信する干渉波によるゴーストである場合は、多車両の発信するソナーが右端から左端に変わる回の移動量が、他の回の移動量よりも大きくなる。
図15の2段目の場合、多車両の発信するソナーが右端から左端に変わる回、つまり、移動量が最大である回は、4番目から5番目への移動なので、干渉波の場合と反射波の場合で移動パターンが違っていることがわかる。
【0104】
さらに、
図15の3段目に示すように、自車両2におけるソナーの送信順序が、ソナー81c、ソナー81d、ソナー81a及びソナー81bの順序で探査波を送信した場合、面状の反射体に接近する場合の検知点の位置は、自車両2のソナーの位置に対応して、検知点811c、検知点811d、検知点811a及び検知点811bの順序で変化する。
【0105】
一方、他車両3が送信する干渉波によるゴーストである場合の検知点の位置は、他車両3のソナーの位置に対応して、検知点821a、検知点821b、検知点821c及び検知点821dの順序で変化する。1段目の例と同様に、1番目から2番目、2番目から3番目、3番目から4番目の、移動する方向が逆であり、干渉波の場合と反射波の場合で移動パターンが違っていることがわかる。
【0106】
また、
図15の4段目に示す様に、自車両2におけるソナーの送信順序が、ソナー81d、ソナー81a、ソナー81b及びソナー81cの順序で探査波を送信した場合、面状の反射体に接近する場合の検知点の位置は、自車両2のソナーの位置に対応して、検知点811d、検知点811a、検知点811b及び検知点811cの順序で変化する。
【0107】
一方、他車両3が送信する干渉波によるゴーストである場合の検知点の位置は、他車両3のソナーの位置に対応して、検知点821c、検知点821d、検知点821a及び検知点821bの順序で変化する。2段目の例と同様に、面状の反射体による反射波の場合、1番目から2番目への移動量が他の回の移動量よりも大きいのに対し、干渉波の場合、4番目から5番目への移動量が他の回の移動量よりも大きいので、干渉波の場合と反射波の場合で移動パターンが違っていることがわかる。
【0108】
ゴースト尤度評価手段706は、車幅方向(Y軸)における検知点の位置の移動パターンが、自車両2の送信ソナーの位置と同じパターンである時は、受信波が干渉波ではなく、面状の反射体による反射波であると評価する。一方で、ゴースト尤度評価手段706は、車幅方向(Y軸)における検知点の位置の移動パターンが、自車両2の送信ソナーの位置の移動パターンと異なるパターンである場合は、受信波が他車両のソナーからの干渉波である尤度が高いと評価する。
【0109】
また、検知点の移動パターンは、自車両2のソナーが送信する順序と、他車両3のソナーが送信する順序との順序の差、及び、双方の発信時刻の時間差に依存する。ソナーの発信は4個の発信を1周期として繰り返すので、1周期を360度、送信間隔を90度に対応付けると、順序の差と時刻の差を併せて位相差と言い表すことができる。例えば、自車両2のソナーは、位相差が90度の倍数に近い場合は、自車両2のソナーと他車両3のソナーの発信時刻が接近しているので、干渉波による検知点(ゴースト)が自車両2と他車両3の間に現れる。
【0110】
また、位相差が90度の倍数に近い場合は、自車両2と他車両3の中点付近にゴーストが現れ、発信時刻に少し時間差がある場合は、中点から発信時刻が遅い方の車に少し寄った辺りにゴーストが現れる。また、発信時刻の時間差が、自車両2と他車両3の間を音波が伝わる片道の時間よりも長い場合、ゴーストは他車両3よりも遠い位置に現れるので、実質的に干渉波による影響を受けない、といって良い。
【0111】
また、位相差が、0度、90度、180度及び270度の場合に、略同時に発信する自車両2のソナーと他車両3のソナーの組み合わせが変わるので、
図11、
図12、
図13、
図14の折れ線、または、
図15の表の他車両3の干渉波による検知点の軌跡に示すように、検知点の移動パターンは位相差(送信順序)によって異なる。
【0112】
そこで、ゴースト尤度評価手段706は、干渉波が影響する位相差が90度の倍数の場合の検知点の移動パターンを記憶部に記憶しておき、記憶した検知点の移動パターンの何れかに近い移動パターンである場合、干渉波であることが尤もらしい、と評価する。
【0113】
例えば、他の車両の複数の送受信器が順次送信することにより生じる検知点の移動量及び移動方向が示す移動パターンと、検知点追跡手段が特定した移動量及び移動方向が示す移動パターンが対応する場合、言い換えれば、検知点の移動パターンが、検知点がゴーストである場合の移動パターンに対応する場合に、ゴースト尤度が高いと評価しても良い。
【0114】
ここで、記憶部に記憶する移動パターンについて、
図16及び
図17を用いて説明する。
図16及び
図17は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合に、センサ制御装置が特定する検知点の検知座標の特徴の一例を示すテーブルである。
【0115】
図16及び
図17に示す移動パターンのテーブルは、自車両2におけるソナーの送信順序が、ソナー81a、ソナー81b、ソナー81c及びソナー81dの順序で探査波を送信した場合について、面状の反射体による反射波の検知座標の動きと、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きについて示したテーブルである。また、横軸(X軸)は自車両2及び他車両3の進行方向、縦軸(Y軸)は、自車両2及び他車両3の車幅方向を示す。すなわち、自車両2及び他車両3を上から見ている状態である。
【0116】
図16では、検知点の移動量が最大になるタイミングと移動方向に着目するため、これに該当する移動を示す矢印を太線で表している。また、
図16では、面状の反射体による反射波から特定した検知座標を、面状の反射体の検知座標、と記している。
【0117】
図16に示すように、面状の反射体の検知座標の動きは、検知点812a、検知点812b、検知点812c、検知点812dの順序を1周期として移動する。また、面状の反射体の検知座標の最大移動量161は、Y軸の正の方向において、検知点812dから検知点812aに移動する場合に最大となる。
【0118】
また、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きは、位相差が0度の場合、検知点822a、検知点822b、検知点822c、検知点822dの順序を1周期として移動する。また、他車両3のソナーによるゴースト座標の検知座標の最大移動量162は、Y軸の負の方向において、検知点822dから検知点822aに移動する場合に最大となる。
【0119】
次に、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きは、位相差が90度の場合、検知点823a、検知点823b、検知点823c、検知点823dの順序を1周期として移動する。また、他車両3のソナーによるゴースト座標の検知座標の最大移動量163は、Y軸の負の方向において、検知点823aから検知点822bに移動する場合に最大となる。
【0120】
次に、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きは、位相差が180度の場合、検知点824a、検知点824b、検知点824c、検知点824dの順序を1周期として移動する。また、他車両3のソナーによるゴースト座標の検知座標の最大移動量164は、Y軸の負の方向において、検知点824bから検知点824cに移動する場合に最大となる。
【0121】
次に、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きは、位相差が270度の場合、検知点825a、検知点825b、検知点825c、検知点825dの順序を1周期として移動する。また、他車両3のソナーによるゴースト座標の検知座標の最大移動量163は、Y軸の負の方向において、検知点823aから検知点822bに移動する場合に最大となる。
【0122】
ここで、検知点座標の車幅方向の移動量が最大になる場合の移動方向について着目する。面状の反射体の検知座標の移動方向は、Y軸の正の方向であるのに対して、他車両3のソナーによるゴースト座標の移動方向は、Y軸の負の方向であり、移動方向が逆であり異なっている。したがって、ゴースト尤度評価手段706は、検知点座標の車幅方向の移動量が最大になる場合の移動方向が、面状の反射体の検知座標の移動方向と異なり、具体的には、面状の反射体の検知座標の移動方向と逆の場合、ゴースト尤度が高いと評価する。
【0123】
続いて、
図17に示すように、面状の反射体の検知座標の動きは、検知点813a、検知点813b、検知点813c、検知点813dの順序を1周期として移動する。また、面状の反射体の検知座標の移動方向について説明する。具体的には、検知点813aから813bの移動方向は、Y軸の負の方向、検知点813bから検知点813cの移動方向は、Y軸の正の方向、検知点813cから検知点813dの移動方向は、Y軸の負の方向、検知点813dから検知点813aの移動方向は、Y軸の正の方向である。
【0124】
次に、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きについて説明する。
図17に示す他車両3のソナーによるゴースト座標の動きの順序差は、自車両2が備えるソナーが探査波を送信する順序の差を示している。具体的には、順序差0は、ソナー81a及びソナー82aが最初に探査波を送信した場合である。順序差1は、ソナー81a及びソナー82bが最初に探査波を送信した場合である。順序差2は、ソナー81a及びソナー82cが最初に探査波を送信した場合である。順序差3は、ソナー81a及びソナー82dが最初に探査波を送信した場合である。
【0125】
図17では、同じ回(順番)での検知点の移動方向と移動量に着目するため、矢印の線の様態(実線と点線と二点鎖線)を使い分けて、同じ回(順番)での移動を示す矢印を同じ様態で表している。また、
図17では、面状の反射体による反射波から特定した検知座標を、面状の反射体の検知座標、と記している。
【0126】
順序差0の場合、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きは、検知点826a、検知点826b、検知点826c、検知点826dの順序を1周期として移動する。また、順序差0の場合の他車両3のソナーによるゴースト座標の移動方向は、検知点826aから826bの移動方向は、Y軸の正の方向、検知点826bから検知点826cの移動方向は、Y軸の負の方向、検知点826cから検知点826dの移動方向は、Y軸の正の方向、検知点826dから検知点826aの移動方向は、Y軸の負の方向である。
【0127】
順序差1の場合、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きは、検知点827a、検知点827b、検知点827c、検知点827dの順序を1周期として移動する。また、順序差1の場合の他車両3のソナーによるゴースト座標の移動方向は、検知点827aから827bの移動方向は、Y軸の負の方向、検知点827bから検知点827cの移動方向は、Y軸の正の方向、検知点827cから検知点827dの移動方向は、Y軸の負の方向、検知点827dから検知点827aの移動方向は、Y軸の正の方向である。
【0128】
続いて、順序差2の場合、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きは、検知点828a、検知点828b、検知点828c、検知点828dの順序を1周期として移動する。また、順序差2の場合の他車両3のソナーによるゴースト座標の移動方向は、検知点828aから828bの移動方向は、Y軸の正の方向、検知点828bから検知点828cの移動方向は、Y軸の負の方向、検知点828cから検知点828dの移動方向は、Y軸の正の方向、検知点828dから検知点828aの移動方向は、Y軸の負の方向である。
【0129】
続いて、順序差3の場合、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きは、検知点829a、検知点829b、検知点829c、検知点829dの順序を1周期として移動する。また、順序差1の場合の他車両3のソナーによるゴースト座標の移動方向は、検知点829aから829bの移動方向は、Y軸の負の方向、検知点829bから検知点829cの移動方向は、Y軸の正の方向、検知点829cから検知点829dの移動方向は、Y軸の負の方向、検知点829dから検知点829aの移動方向は、Y軸の正の方向である。
【0130】
ここで、面状の反射体の検知座標の動きと、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きのそれぞれの順序差について、Y軸方向の向きを比較すると、順位差が偶数(順序差0及び順序差2)の場合はY軸方向の向きが逆になるが、順序差が奇数(順序差1及び順序差3)の場合は、Y軸方向の向きが同じになる。
【0131】
また、検知座標のY軸方向の移動量について説明する。検知座標のY軸方向の移動量は、移動量171、移動量172及び移動量173とし、移動量の大きさを移動量171<移動量172<移動量173とする。
図17において、検知点813aから813bの移動量は移動量172、検知点813bから検知点813cの移動量は移動量171、検知点813cから検知点813dの移動量は移動量172、検知点813dから検知点813aの移動量は移動量173である。
【0132】
また、検知点826aから826bの移動量は移動量172、検知点826bから検知点826cの移動量は移動量171、検知点826cから検知点826dの移動量は移動量172、検知点826dから検知点826aの移動量は移動量173である。さらに、検知点827aから827bの移動量は移動量173、検知点827bから検知点827cの移動量は移動量172、検知点827cから検知点827dの移動量は移動量171、検知点827dから検知点827aの移動量は移動量172である。
【0133】
また、検知点828aから828bの移動量は移動量172、検知点828bから検知点828cの移動量は移動量173、検知点828cから検知点828dの移動量は移動量172、検知点828dから検知点828aの移動量は移動量171である。さらに、検知点829aから829bの移動量は移動量171、検知点829bから検知点829cの移動量は移動量172、検知点829cから検知点829dの移動量は移動量172、検知点829dから検知点829aの移動量は移動量172である。
【0134】
ここで、面状の反射体の検知座標の動きと、他車両3のソナーによるゴースト座標の動きのそれぞれの順序差について、移動量を比較すると、順序差が奇数(順序差1及び順序差3)の場合は、移動量が4回とも全て不一致になる。
【0135】
したがって、ゴースト尤度評価手段706は、検知座標の移動方向のY軸方向(車幅方向)の向きが逆になる(順序差が偶数)場合、検知座標に移動量が4回とも不一致になる(順位差が奇数)場合の、少なくとも1つが含まれる場合、ゴースト尤度が高いと評価しても良い。
【0136】
つまり、後述する送受信制御手段710が複数の送受信器に搬送波を順次送信させることにより生じる検知点の移動量及び移動方向が示す移動パターンと、検知点追跡手段705が特定した移動量及び移動方向が示す移動パターンが対応しない場合に、ゴースト尤度が高いと評価しても良い。これを、検知点の移動パターンが、受信した搬送波が障害物からの反射波である場合の検知点の移動パターンと対応しない場合に、ゴースト尤度が高いと評価する、と言い換えても良い。
【0137】
次に、受信波形の特徴によるゴースト尤度について説明する。ゴースト尤度評価手段706は、送受信器が搬送波を受信した強度の時間変化を示す受信波形の特徴が、搬送波が障害物からの反射波である場合の特徴と対応しない場合に、ゴースト尤度が高いと評価する。前述の通り、ここでいう搬送波とは音波である。他車両のソナーから妨害を受ける場合の受信強度について、
図18を用いて説明する。
【0138】
図18は、実施形態に係るソナーが妨害を受ける場合の受信強度と、センサ制御装置が受信する場合の受信強度の一例を比較するグラフである。
図18に示すグラフは、横軸は時間(距離)、縦軸は強度(dB)、すなわち音波受信強度を示す。また、グラフG1は、物体に反射した反射波の受信波形である。さらに、グラフG2は、他車両から送信される音波を受信した場合の受信波形である。
【0139】
まず、ソナーから送信される音波は、空気中を伝搬することにより強度が下がる伝搬損失と、波面が広がることにより強度が下がる拡散損失とにより弱くなる。但し、ソナーはできるだけ遠くまで音波が届くように指向性を与えて送信するので、指向性がなく全方向に放射された音波よりも、拡散による減衰は少ない。しかし、音波が物体にあたると、音波のエネルギーの一部は物体の内部または表面で失われ、残りのエネルギーが指向性の低い反射波となって放射される。
【0140】
つまり、搬送波が物体までの距離を往復する時、搬送波が反射波となった復路の方が、指向性が高かった往路よりも、単位距離当たりの拡散損失が大きい。一方、干渉波は指向性を保ったまま、何処にも反射せずに直接、受信器に届くので、一般に、反射波は干渉波よりも弱い。
【0141】
よって、受信波形に現れる検知点に対応するピーク波形のピーク強度が、搬送波が検知点までの距離を往復した場合に予想される強度より大きい場合は、ゴースト尤度を高く評価して良い。予想される強度は距離に応じて小さくなるので、予想される強度より大きいと判定する閾値は、距離の関数として設定すれば良い。また、空気中での伝搬損失は温度や湿度で変化するので、温度や湿度を関数に組み込んで、閾値を補正すると良い。また、閾値を設けずに、ピーク強度と予想される強度の差を求め、ピーク強度が予想される強度を上回る量が大きいほどゴースト尤度を高く評価するようにしても良い。
【0142】
また、物体の表面の形状が平面である場合、反射波として戻る割合が増えるが、ソナーからの距離が面内の位置によって異なり、遠近方向に分布を持つため、反射波のエネルギーは時間軸方向に分散する。特に、干渉が問題になる場面は自車両が他車両と向き合う場面であり、車体の前面は一様な平面ではなく、三次元的な奥行きを持つ形状であるので、反射波のエネルギーは時間軸方向に分散しやすい。そのため、反射波の受信波形であるグラフG1は、例えば、低く緩いドーム状になる。
【0143】
一方、他車両から送信される音波(干渉波)は、途中で反射していないので、物体表面で分散することもなく、空気中で時間軸方向に分散することもないため、干渉波の受信波形であるグラフG2は、例えば、高く鋭いスパイク状のピーク波形、つまり、急峻度の高い波形になる。
【0144】
よって、受信波形の急峻度が、検知点がゴーストである場合の急峻度に対応する場合は、ゴースト尤度を高く評価して良い。受信波形の急峻度とは、受信波形において検知点に対応して現れるピーク波形の時間軸方向の分散(強度が大きい部分の幅の広がり)であり、例えば、半値幅で急峻度を評価して良い。半値幅とはピークの前後で強度がピーク強度の半分になる2点で挟まれる幅である。半値幅が閾値よりも小さければ、ゴースト尤度を高く評価するようにしても良いし、閾値を設けずに半値幅が小さいほどゴースト尤度を高く評価するようにしても良い。
【0145】
閾値を設ける場合は、受信した搬送波(受信波)が反射波である場合の半値幅が物体の形状に依存するので、物体が種々の車両である時の半値幅を求めて、実験的に閾値を設定しても良い。なお、本実施形態では複数の特徴を捉えてゴースト尤度を総合的に評価するので、個々の評価の確実性を追求することは、必ずしも必要ではない。
【0146】
例えば、自車両のソナー21及びソナー22が、他車両から送信された干渉波を受信した場合、ゴースト尤度評価手段706は、受信波が自車両のソナーから検知点までの距離を往復していると仮定した場合を比較対象として、ピーク波形の受信強度または急峻度を評価し、受信強度が比較対象より強い、または、急峻度が比較対象より高い、と判定することになる。その評価結果から、検知点がゴーストである場合の強度または急峻度に対応するといえるので、当該検知点のゴースト尤度は高いと評価する。
【0147】
または、受信波のピーク強度が、搬送波が検知点までの距離を往復した場合に予想される強度より大きい場合、あるいは、ピーク波形の急峻度が、反射により分散した場合に予想される急峻度より大きい場合に、検知点のゴースト尤度が高いと評価する、と言い換えても良い。
【0148】
また、ゴースト尤度評価手段706は、受信波形上の検知点に対応するピーク波形のピーク強度と、受信波が検知点で反射された探査波である場合に予想される強度との差を求め、ピーク強度が検知点で反射された探査波を受信した場合に予想される強度を上回る量が大きいほどゴースト尤度を高く評価するようにしても良いし、受信波形上の検知点に対応するピーク波形の半値幅が小さいほどゴースト尤度を高く評価するようにしても良い。
【0149】
次に、前出の、当該検知点と方向及び速度が相関する、当該検知点とは異なる他の検知点について説明する。この、当該検知点とは異なる他の検知点は、ゴーストを発生させている他車両を、反射波で検知した検知点である。以下、他車両のソナーによるゴーストの接近速度と、他車両の検知点の接近速度の相関関係について説明する。
【0150】
ここで、自車両と他車両との実距離をL、音速をM、自車両と他車両のソナーが音波を送信していて、自車両が送信してから他車両のソナーが送信するまでの時刻差をDtとする。音波を送信した時点から音波を受信した時点までの時間を飛行時間(FT:フライトタイム)と呼ぶ。他車両が自車両の送信からDt遅れて送信すると、自車両のソナーモジュールが送信した時点から、干渉波の受信までの時間は、実際の飛行時間(L/M)よりDtだけ大きい、L/M+Dtになる。一方、自車両のソナーモジュールが発信した音波が他車両で反射し、自車両のソナーモジュールが受信した反射波の飛行時間は、2L/Mである。
【0151】
ソナーモジュールは音波が往復する前提で距離を算出するため、距離L=FT(飛行時間)×M(音速)/2で換算する。その結果、他車両までの距離Lが変化する時のゴーストの距離の変化量は、他車両の距離の変化量の半分として評価される。時間当たりの距離の変化量を速度に置き換えると、ゴーストの接近速度は、他車両の接近速度の半分である。
【0152】
ゴーストの接近速度を基準にすると、他車両の接近速度はゴーストの接近速度の略2倍である。また、ゴーストは、概ね他車両と自車両を結ぶ線上に現れるため、ゴーストが現れる方向は、他車両の方向と概ね同一になる。また、ソナーの発信順に依存した、周期的な検知点の移動パターンを均して、ゴーストの全体的な移動方向を特定すると、それも反射波で捉えた他車両の移動方向と概ね同一になるので、これらをゴースト尤度の評価条件に加えても良い。
【0153】
つまり、他車両である対向車を検知し、対向車の方向に対向車の接近速度の概ね半分の速度で接近する検知点があれば、それはゴーストである可能性が高いので、ゴースト尤度評価手段706は、ゴースト尤度が高いと評価する。これに誤差の考慮を加えて一般化すると、検知点特定手段が特定した検知点と略同一の方向にあって、当該検知点と略同一の方向に当該検知点の移動速度の略二倍の速度で移動する他の検知点が存在する場合、当該検知点のゴースト尤度が高いと評価する、と言い換えることができる。または、当該検知点と方向及び速度が相関する、当該検知点とは異なる他の検知点が存在する場合に、当該検知点のゴースト尤度が高いと評価する、といっても良い。
【0154】
図4に戻る。検知回数判定手段707は、例えば、検知した検知回数が8回以上であるか否かを判定する。検知回数が8回以上になる場合は、車両1が4つのソナーが備える場合、4つの各々のソナーが検知点を例えば2回以上検知した場合である。この場合、検知回数が8回以上であれば、検知点の移動パターンによるゴースト尤度評価が可能である。
【0155】
ゴースト尤度加算手段708は、例えば、直近4回の検知の間に、ゴースト尤度評価手段706が評価したゴースト尤度評価値を加算して、ゴースト尤度を出力する。これは、車両1が4つのソナーを周期的に作動させることを前提とした処理である。対向車の方向と発信するソナーの方向の関係によって、1周期4回の検知のうち特定の回でゴースト疑いの検知点を検出しないことがある。すると、そのような位置関係にある場合、その特定の回は検知点に対するゴースト尤度評価値の算出がないため、ゴースト尤度評価値が検知4回を1周期として変動する。
【0156】
そこで、例えば、直近4回の検知の間のゴースト尤度評価値の合計値をゴースト尤度とすることで、ゴースト尤度を安定化させる処理を加えているのである。例えば、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703により特定された検知点のゴースト尤度評価値を、検知点に紐づけて
図2のRAM11Cに記憶する。また、ゴースト尤度加算手段708は、検知点追跡手段705が過去の検知点と同一と判定した検知点の時系列と、検知点に紐づけられたゴースト尤度評価値とを、所定の期間(例えば、直近の検知4回)に渡って読み出し、読み出したゴースト尤度評価値を加算してゴースト尤度とする。
【0157】
但し、例示したゴースト尤度評価値を加算する処理は必須ではなく、最新のゴースト尤度評価値をゴースト尤度としても良い。また、ゴースト尤度評価手段706は検知点が特定の条件を満たす時に、ゴースト尤度評価値を追加的に出力することがあり、その際にゴースト尤度加算手段708は追加のゴースト尤度評価値をボーナス加算する。
【0158】
なお、ゴースト尤度加算手段708を持たない場合は、ゴースト尤度評価手段706の出力をゴースト尤度と呼んで良い。また、ゴースト尤度加算手段708の出力をゴースト尤度と呼び、ゴースト尤度評価手段706の出力はゴースト尤度評価値と呼び分ける場合も、ゴースト尤度評価値を単にゴースト尤度と呼ぶことがある。
【0159】
ゴースト尤度閾値設定手段709は、車両1と検知点との距離に応じて、ゴースト尤度に対応するゴースト尤度閾値を設定する。また、ゴースト尤度閾値設定手段709は、車両1が走行する速度を示す車両速度に応じてゴースト尤度閾値を設定する。さらに、ゴースト尤度閾値設定手段709は、後述する悪影響評価手段713が評価した悪影響、または悪影響の増減に応じてゴースト尤度閾値を設定する。ゴースト尤度閾値は、距離が短いほど低く設定し、車両速度が速いほど低く設定しても良い。詳細な説明は後述する。
【0160】
なお、悪影響の低減の手段はゴースト尤度閾値の変更に限らず、ゴースト尤度の評価を割り増ししたり、割り引いたりすることで行っても良い。後述する悪影響評価手段713は、検知点の方向が車両の進行方向と同じである、検知点の距離が減少方向である、検知点の減少速度が大きい、検知点の距離が小さい、車両の走行速度が速い、のうち、少なくとも1つに基づいて、悪影響を評価し、悪影響評価手段713が評価した悪影響、または悪影響の増減に応じて、ゴースト尤度の評価をするようにしても良い。
【0161】
例えば、車両と検知点との距離に応じて、ゴースト尤度の評価、またはゴースト尤度閾値の設定を行い、距離が短いほど、搬送波の送信間隔の変更を行い易くする調整と、車両が走行する速度を示す車両速度に応じてゴースト尤度の評価、またはゴースト尤度閾値の設定を行い、車両速度が速いほど、搬送波の送信間隔の変更を行い易くする調整の、2つを組み合わせて行っても良い。
【0162】
送受信制御手段710は、車両に搭載される複数の送受信器が送信するタイミングの制御を行う。または、送受信制御手段710は、ゴースト尤度がゴースト尤度閾値よりも大きいと後述するゴースト判定手段714が判定した場合に、探査波の送信間隔を変更する、といっても良い。また、送受信制御手段710は、障害物に衝突するまでの衝突余裕時間が所定の衝突余裕時間閾値を下回る場合に、送信間隔を短く変更することがある。
【0163】
次に、送受信制御手段710が、非干渉化処理を行う手段について
図19を用いて説明する。
図19は、実施形態に係るセンサ制御装置が制御して、送受信機に探査波を送信させるタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0164】
送受信制御手段710は、ゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも大きいと後述するゴースト判定手段714が判定した場合、探査波の送信間隔を変更する。探査波の送信間隔を変更することを非干渉化処理ともいう。非干渉化処理とは、自車両の送信タイミングをずらして、自車両から送信する送信位相と、他車両から送信される干渉波の位相が近い状態を解消する処理である。また、非干渉化処理を行うことを、非干渉化する、と略して呼ぶことがある。
【0165】
ここで、自車両のソナーは、送信間隔Tで送信しているものとする。
図19には、自車両のソナーが送信する時間を示している。具体的には、自車両のソナーが送信する時間は、時間814a、時間814b、時間814c、時間814d、時間815a、時間815b、時間815c、時間815d、時間816a、時間817a、時間817b、時間817c、時間817d、時間818a、時間818b、時間818c、時間818d、時間819a、時間820a、時間820b、時間820c及び時間820dとする。
【0166】
干渉が発生している状態の典型は、自車両のソナーと他車両のソナーが時間差0Tで(つまり同時に)発信している状態である。これを、例えば、自車両のソナーと他車両のソナーが時間差0.5Tで(つまり交互に)発信している状態にする操作が非干渉化処理である。送受信制御手段710は、自車両のソナーの送信タイミングを0.5Tずらす方法として、例えば、非干渉A、非干渉B、非干渉C及び非干渉Dに示す発信タイミング制御の何れか1つを実施すれば良い。
【0167】
具体的には、非干渉Aの場合、送信間隔が0.5Tの送信を1回挿入する。また、非干渉Bの場合、送信間隔が1.5Tの送信を1回挿入する。さらに、非干渉Cの場合、送信間隔が0.75Tの送信を2回挿入する。また、非干渉Dの場合、送信間隔が1.25Tの送信を2回挿入する。
図19の時間が0の時点で、自車両のソナーと他車両のソナーが時間差0Tで(つまり同時に)発信している状態であるとすると、非干渉AからDの何れの場合も、送信間隔を一時的に変更した回が終わった後(例えば、図示した最後の時点)では、自車両のソナーと他車両のソナーが時間差0.5Tで(つまり交互に)発信している状態になる。
【0168】
送信間隔は検知可能な距離に影響する。例えば、非干渉Aのように送信間隔を0.5Tにすると、送信してから0.6T後に反射波を受信した場合、FT=0.6Tとなる位置に障害物があるのか、FT=0.1Tとなる位置に障害物があるのか、判別ができない。つまり、送信間隔を短くすると、FT>送信間隔となる範囲では障害物を検知不能になる。
【0169】
例えば、FT=0.6Tとなる位置に障害物があって、その移動を追跡していた場合、その障害物は、送信間隔を0.5Tにした回では検知できないので、一時的に検知しなかったものとして処理する。なお、追跡処理では、検知しない回が続いた障害物は追跡を打ち切り、障害物を検知していないものとして処理するロスト判定(消失判定)を行うので、送信間隔を短くした回の前後で、何らかの理由で当該障害物の検知がなかった場合には、非干渉化処理の影響によるロスト判定が起きることがある。
【0170】
そこで、非干渉Cのように送信間隔を1Tから0.75Tにすると、送信間隔を1Tから0.5Tにした場合よりも、送信間隔の短縮によって検知不能になる範囲が狭くなるため、追跡への悪影響も抑えられる。例えば、FT=0.6Tとなる位置に障害物があって、その移動を追跡していた場合、障害物を検知不能になるのはFT>0.75Tの範囲なので、検知は途切れず、追跡を続けることができる。
【0171】
逆に、非干渉Bや非干渉Dのように送信間隔を広げると、送信間隔の変更によって障害物を検知不能になることがない。但し、送信間隔を広げると単位時間当たりの検知回数が減るので、検知や自動ブレーキのタイミングの遅れにつながることがある。また、送信間隔を変える回数を1回や2回に限らず、3回以上にして、送信間隔の変化量をさらに抑えても良い。
【0172】
続いて、非干渉化処理を行う効果について、
図20を用いて説明する。
図20は、非干渉化を行う前後の自車両のソナーと、他車両のソナーと、が送信する位相について示す。自車両のソナーが送信する送信位相は、送信位相841a、送信位相841b、送信位相841c、送信位相841d、送信位相842a、送信位相842b、送信位相842c及び送信位相842dとする。また、他車両のソナーが送信する送信位相は、送信位相831a、送信位相831b、送信位相831c、送信位相831d、送信位相832a、送信位相832b、送信位相832c及び送信位相832dとする。
【0173】
まず、非干渉化の前の状態として、自車両及び他車両のソナーが略同時に送信したと仮定する。その場合、自車両及び他車両のソナーの送信位相は、それぞれ、送信位相841a、送信位相841b、送信位相841c、送信位相841d、送信位相831a、送信位相831b、送信位相831c及び送信位相831dであり、位相が接近している。この場合、自車両のソナーは、他車両のソナーから妨害を受けている状態である。
【0174】
例えば、音速が340(m/s)、自車両の送信間隔が100(ms)の場合、送信した音波が17(m)離れた物体で反射するとFT=100(ms)後に戻る。つまり、この17(m)は送信間隔で決まる最大検知距離である。対向車までの距離が17(m)で、送信の時刻差を0とすると、非干渉化の前の場合、干渉波は50(ms)後に届くので、8.5mの距離に障害物があるように検知される。この8.5mの距離の検知点がゴーストであり、ゴーストが現れている状態が、自車両のソナーが他車両のソナーから妨害を受けている状態である。
【0175】
送受信制御手段710が、自車両の送信間隔をずらし、非干渉化処理を行うと、自車両及び他車両のソナーの送信位相は、それぞれ、送信位相842a、送信位相842b、送信位相842c、送信位相842d、送信位相832a、送信位相832b、送信位相832c及び送信位相832dであり、位相が約45度離れた状態になる。
【0176】
例えば、送信時刻差が50(ms)であるとすると、対向車の距離が17(m)の時、自車両が送信した音波は往復34(m)を飛んで100(ms)後に届く。自車両が送信した音波(干渉波)は、自車両が送信してから50(ms)後に送信され、片道17(m)を50(ms)かけて飛ぶので、干渉波は反射波と同時に届く。すると、干渉波の影響によって障害物が検知される距離は反射波で検知した距離と同じ17(m)になる。
【0177】
この場合、対向車より近い位置にはゴーストが現れないので、(実質的に)妨害を受けていない状態といって良い。また、対向車の距離が1.7(m)の場合、反射波は10(ms)後に届き、直接波は60(ms)後に届く。すると、反射波で検知した距離=1.7(m)よりも、干渉波によるゴーストが現れる距離=10.2(m)の方が遠くなるので、ゴーストは緊急制動の対象にならない。つまり、非干渉化すると、干渉波によるゴーストは、対向車以上の距離に遠ざかるため、干渉波に起因する誤ブレーキは発生しない。
【0178】
このように、非干渉化してもゴーストがなくなる訳ではないが、ゴーストが現れていた位置には検知点が現れなくなる。新たにゴーストが現れる位置は、衝突回避を目的とする障害物検知装置として実害がない位置なので、妨害がなくなるといって良い。しかし、受信していた音波が干渉波ではなく反射波だった場合、検知点の位置は非干渉化の前後で変わらない。つまり、非干渉化は、検知点がゴーストか実体のある障害物かを、確定的に判定する手段としても機能する。
【0179】
図4に戻る。衝突判定手段711は、検知点が車両1と交錯し、検知点に対応する障害物と車両1とが衝突する、衝突可能性を判定する。例えば、衝突判定手段711は、検知点特定手段703が検知し、検知点追跡手段705が特定した検知点の進路と、車両1の予定進路とが交錯、または車幅相当の距離まで接近する場合、検知点に対応する障害物と車両1との衝突可能性の有無を判定する。
【0180】
衝突余裕時間算出手段712は、検知点が車両1と交錯するまでの衝突余裕時間を算出する。具体的には、衝突余裕時間算出手段712は、衝突判定手段711が検知点に対応する障害物と車両1との衝突可能性があると判定した場合、障害物が車両1と交錯するまでの衝突余裕時間を算出する。
【0181】
なお、衝突判定手段711が検知点に対応する障害物と車両1との衝突可能性がないと判断した場合、衝突余裕時間算出手段712は、衝突余裕時間を数値上の最大値(一例として、255秒)としても良い。
【0182】
悪影響評価手段713は、探査波の送信間隔を変更することによる悪影響を評価する。具体的には、悪影響評価手段713は、検知点の方向が車両1の進行方向と同じである、検知点の距離が減少方向である、検知点の減少速度が大きい、検知点の距離が小さい、車両の走行速度が速い、の条件のうち、少なくとも1つの条件に基づいて、悪影響を評価する。
【0183】
ゴースト判定手段714は、ゴースト尤度がゴースト尤度閾値よりも大きいか否かを判定する。例えば、ゴースト判定手段714は、ゴースト尤度評価手段706が評価したゴースト尤度と、ゴースト尤度閾値設定手段709が設定したゴースト尤度閾値と比較して、ゴースト尤度がゴースト尤度閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0184】
障害物検知装置は、送受信制御手段710により、ソナー21及びソナー22が送信する探査波のタイミングを変更する非干渉化を実行した結果、検知点の位置が非干渉化の前後で変わらず、検知点がゴーストでないと判明した場合は、例えば、緊急制動を行う。その際に、非干渉化は、送信間隔を変更することによる検知の遅れが直接的に緊急制動の遅れにつながる恐れの他に、検知点の追跡に影響して、間接的に緊急制動の遅れにつながる恐れもある。
【0185】
送信間隔を変更すると、検知点追跡手段705の同一性判定において、予測円の大きさが変わるので、例えば、予測円の大きさが変わらなければ円内に入るはずだった検知点が予測円から外れたり、予測円に余分な検知点が入り込んで、移動速度の推定や移動方向の推定を誤らせたりすることがある。
【0186】
すると、非干渉化の前と少し位置が違っているだけの検知点が、以前の物体と同一の検知点ではなく、別の新たな物体の検知点であると判定されることがある。その場合、新たな物体は所定回数(例えば3回)続けて検知されるまでは障害物候補として扱われ、緊急制動の対象にならないので、結果的に緊急制動が遅れることになる。このように緊急制動が遅れる可能性がある場合、非干渉化により悪影響が発生するといって良い。
【0187】
非干渉化により、緊急制動の遅れや検知点の追跡の乱れ等、悪影響が発生することがあるが、発生しないこともある。悪影響の発生条件は、例えば、進行方向、接近方向、距離、自車速度、接近速度等の条件が挙げられる。
【0188】
進行方向の条件とは、検知点が自車両の進行方向に存在する場合である。この場合、緊急制動が必要になることがあるため、悪影響があり得る。一方で、検知点が自車両の進行方向に存在しない場合、例えば、自車両の前方に検知点があり、自車両が後退中である場合は、緊急制動は不要なため、悪影響はない。
【0189】
接近方向の条件とは、検知点が自車両の進行方向に向けて接近する場合である。この場合、自車両の進路上に障害物が進出すると緊急制動が必要になることがあるため、悪影響があり得る。一方で、検知点が自車両の進路から遠ざかるように移動していれば、悪影響はない。
【0190】
距離の条件とは、検知点が自車両に近い場合である。検知点が近ければ近いほど、緊急制動の必要性が上がるため、悪影響が増す。一方で、接近する障害物が十分遠くにあれば、緊急制動は不要なため、悪影響はない。
【0191】
自車速度の条件とは、自車速度が高い場合である。自車両速度が高ければ高いほど、緊急制動の必要性が上がるため、悪影響が増す。一方で、自車両の速度がゼロの場合、緊急制動は不要なため、悪影響はない。
【0192】
接近速度の条件とは、検知点の接近速度が速い場合である。検知点の接近速度が速い場合、検知点追跡手段705の同一性判定(検知点の追跡)で追跡を失敗しやすいため、悪影響が大きい。一方で、障害物の接近速度が遅い場合、検知点の追跡で見失いにくく、緊急制動も急に必要にならないため、悪影響は小さい。
【0193】
なお、悪影響の条件は一例であり、距離、自車速度及び接近速度を総合して(少なくとも2つを組み合わせて)、緊急制動が必要になるまでの衝突余裕時間を尺度とし、衝突余裕時間が少ないほど悪影響が増すと、悪影響の条件を定義しても良い。
【0194】
また、悪影響が大きい場合に時に非干渉化を行うと、緊急制動の遅れ等の影響が出る恐れがある。そこで、非干渉化が必要になる可能性がある場合は、悪影響が低い時期に非干渉化すると良い。具体的には、悪影響評価手段713は、悪影響の評価を示す悪影響評価値を求め、悪影響評価値に応じて、送受信制御手段710は非干渉化しても良い。
【0195】
悪影響が小さいか、もしくは悪影響がない場合、非干渉化しても車両1に対して実害はないため、例えば、ゴースト尤度との比較で非干渉化の実行を判定するゴースト尤度閾値を低く設定して、小さいゴースト尤度でも積極的に非干渉化するようにしても良いし、干渉ゴーストの特徴が一つだけの場合でも非干渉化して良い。早めに非干渉化してゴーストか否かを確定しておけば、後で悪影響が大きい条件になっても非干渉化の必要がないからである。
【0196】
また、例えば、悪影響評価値が上昇傾向にある場合、ゴースト尤度閾値を下げる補正を加えて、ペナルティが低い(悪影響が小さい)うちに非干渉化を行うようにしても良い。つまり、後になるほど悪影響が大きくなるなら、非干渉化を早めると良い。逆に、悪影響がある非干渉化をできるだけ行わないようにするために、車両1に実害が発生する直前のタイミングで非干渉化を行うようにしても良い。つまり、実害が発生しない範囲内で、非干渉化をできるだけ遅らせるようにしても良い。
【0197】
例えば、衝突判定手段711が判定する、検知点と衝突する可能性の有無と、衝突する可能性がある場合は、衝突余裕時間算出手段712が衝突するまでの衝突余裕時間を算出し、衝突余裕時間が所定の衝突余裕時間閾値を下回る場合に送信間隔を変更する非干渉化を行うようにしても良い。
【0198】
衝突余裕時間閾値は、例えば、障害物接近の報知と緊急制動の予告を判定するまでの余裕時間を示す第1余裕時間閾値と、緊急制動の実行を判定するまでの余裕時間を示す第1余裕時間閾値と、非干渉化の実行を判定するまでの余裕時間を示す第3余裕時間閾値と、がある。
【0199】
第3余裕時間閾値は、検知点が干渉ゴーストであった場合に、ドライバーが気付く前に干渉ゴーストであったと確定判定するための閾値である。例えば、第3衝突余裕時間閾値と第1衝突余裕時間閾値の差分(第3衝突余裕時間閾値-第1衝突余裕時間閾値)が、非干渉化により干渉ゴーストか否か確定させるのに要する時間(例えば、検知間隔2回分)よりも大きければ、障害物接近の報知と緊急制動の予告を行う前に非干渉化を行い、干渉ゴーストであるか否かの判定を確定できるので、ゴーストであった場合の誤警告による悪影響、つまりソナーが誤認識したとドライバーに受け取られる、心証上の悪影響の発生を回避することができる。
【0200】
非干渉化の実行時期は、ゴースト尤度評価の条件に応じて決定しても良い。例えば、ゴースト尤度評価手段706は、検知点の接近速度が対向車の接近速度の半分である場合にゴースト尤度が高いと評価する。このような速度の特徴による判定は、検知点特定手段が対向車を検知してから適用可能になる。仮に、検知点がゴーストである場合、ゴースト尤度は対向車を検知して接近速度を特定した時点で高くなるので、ゴースト尤度が閾値を越えた時点で、送受信制御手段710は、非干渉化しても良い。この場合、非干渉化の実行時期は、対向車を検知して接近速度を特定した時点で決まる。
【0201】
また、非干渉化は自車両と対向車のどちらかが行えば良いので、対向車が非干渉化を行うことを期待して、非干渉化を積極的には行わない方策を採っても良い。例えば、自車両と対向車が同じソナーシステムを備える場合に、双方が悪影響を評価して、悪影響が小さい側が非干渉化するようにしても良い。
図11のように、自車両2と他車両3が接近する場合、自車両2より他車両3のソナーが探査波を送信するタイミングが少し早いと、ゴーストは自車両2の近くに出現する。検知点がゴーストか否かを確定する必要性は、自車両2側の方が高いので、自車両2が非干渉化すれば、干渉の問題は解消する。
【0202】
しかしながら、検知点が自車両2に接近した状態で非干渉化すると、緊急制動の遅れなどの悪影響が発生する恐れがある。そこで、他車両3から見て、検知点が相手側車両に近いことを理由として、他車両3側で非干渉化するように送受信制御手段710を設定しても良い。なぜなら、自車両2及び他車両3が同じシステムを搭載している場合、悪影響が小さい方に非干渉化させると、システムとして全体最適な制御になるからである。但し、検知点が相手側車両に近いことを理由として非干渉化する制御を、対向車である相手側が備えていないこともある。その場合には、相手側は非干渉化を行わないので、検知点が接近しすぎる前に、自ら非干渉化する必要がある。
【0203】
上述した通り、検知点特定手段703が検知する検知可能距離は、送信間隔Tに応じて検知可能な距離の上限(M×T/2)が決まる。非干渉化のために、例えば、送信間隔が1.5倍の回を挿入すると、通常の検知可能な範囲内には検知不能になる領域は発生しないが、検知間隔が広がったことで、検知点の追跡に影響する。
【0204】
送信間隔が0.5倍の回を挿入すると、通常の検知可能距離の半分(M×T/4)以内では、検知間隔が0.5倍の回が増えるだけなので検知点の追跡への影響は小さいが、半分以上の距離では1回、検知がなくなるため、その次の回の検知点の追跡(同一性判定)で2回前の検知点と同一の検知点であると判定できず(つまり追跡に失敗して検知点を見失い)、新たな検知点と誤判定する恐れがある。
【0205】
一方、通常の検知可能範囲の1.5倍の距離の回を挿入すると、距離に関らず検知点の追跡に影響が出る。そこで、送信間隔が0.5倍の回を挿入するか、送信間隔が1.5倍の回を挿入するかを、検知可能距離の半分(M×T/4)を閾値として、検知点の距離に応じて選択しても良い。例えば、検知点の距離が閾値(M×T/4)以上の場合は、送信間隔が1.5倍の回を挿入し、検知点の距離が閾値(M×T/4)未満の場合は、送信間隔が0.5倍の回を挿入すると、全体としてリスクを小さくできる。
【0206】
検知点の距離が検知可能距離の以下の場合に送信間隔が0.5倍の回を挿入すると、検知可能距離の半分以内の領域では検知間隔が伸びることがなくなり、検知可能距離の半分より遠い範囲では検知が1回とぶが、より距離にある検知点の方が衝突判定の対象になり、検知可能距離の半分より遠い検知点は対象にならないので、デメリットは小さいといえる。また、検知可能距離の半分以上に検知点がある場合に送信間隔が1.5倍の回を挿入すると、距離に関わらず検知がとばされないため、全体としてデメリットが最小になる。
【0207】
また、上述した検知点が相手側車両に近いことを理由として非干渉化する際に、通常の検知可能距離の半分(M×T/4)を閾値として、検知点の距離が閾値以上であれば相手側車両が非干渉化することを期待して自らは非干渉化せず、検知点の距離が閾値未満であれば自車両側で非干渉化するように、送受信制御手段710が制御を切り替えても良い。
【0208】
例えば、検知点の距離が所定の閾値(一例として、M×T/4で、通常の送信間隔が100(ms)の場合、8.5(m))以上であれば、検知点が相手側車両に近い可能性が高いので、リスクが低い自車両側が、送信間隔Tの1.5倍の回を挿入して非干渉化する。この場合、検知点の追跡に悪影響が出ることがあるが、閾値以上の距離にある物体のトラッキングが乱れても、緊急制動の遅れ等の実質的な悪影響は発生しない。
【0209】
検知点の距離が所定の閾値未満になった時点で干渉状態が続いている場合、相手側が非干渉化しないと判定して、送受信制御手段710は、検知間隔が0.5倍の回を挿入して非干渉化する。この場合、閾値の距離は、緊急制動の作動を判定する距離よりも大きく、閾値未満の距離では検知のとびが発生しないので、悪影響は発生しない。
【0210】
非干渉化によって緊急制動が遅れる可能性を排除するためには、緊急制動の作動を判定する時期よりも早いタイミングで送受信制御手段710が非干渉化すれば良い。
【0211】
例えば、検知点特定手段703が特定した検知点が、所定の距離(一例として、衝突判定する距離+α)まで近づいた場合、送受信制御手段710は非干渉化する。つまり、自動ブレーキを必要とする距離よりも遠くで非干渉化する。または、上述のように、送受信制御手段710は、衝突までの衝突余裕時間が所定の衝突余裕時間閾値を下回った時に送信間隔の変更(非干渉化)をしても良い。
【0212】
また、例えば、検知点追跡手段705が、検知点の接近を待たず、検知点の車幅方向(Y軸方向)の距離が減少傾向になると判定した場合に、送受信制御手段710は送信間隔を変更する非干渉化をしても良い。検知点が、自車両の進路と並行な線上を移動する場合と、自車両の進路と並行な線から遠ざかる場合の何れかなら衝突の恐れはないので、非干渉化せずに放置しても良いが、自車両の進路に近づく側に移動しているなら、いずれ、非干渉化が必要になるからである。
【0213】
さらに、ゴースト尤度がゴースト尤度閾値を越えたとゴースト判定手段714が判定した回数が所定回数に達した時に非干渉化するようにしても良い。例えば、ゴースト尤度がゴースト尤度閾値以上であることを2回以上の所定回数(例えば、検知3回で障害物候補から障害物に格上げする場合は2回)判定した場合、送受信制御手段710は非干渉化を行う。または、例えば、検知3回で障害物候補から障害物に格上げされると、直ちに緊急制動を作動する距離に検知点がある場合には、前記の回数の条件にかかわらず1回の判定で非干渉化しても良い。
【0214】
上述した内容は、悪影響の概念を用いない非干渉化の判定方式であるが、悪影響評価手段713が悪影響を評価し、悪影響が増加する場合、または悪影響が所定の閾値を超える場合に、送受信制御手段710は非干渉化することで、悪影響が高い状態で非干渉化することを回避しても良い。また、悪影響を回避するために、非干渉化を行わない方法を用いても良い。
【0215】
干渉による問題は緊急制動が誤って作動することなので、ゴースト判定手段714により、ゴースト尤度が所定の閾値より高いと評価された検知点は、検知点が車両と交錯する可能性に応じて緊急制動の要否を判定する衝突判定の対象としないようにしても良い。または、衝突判定手段711は、ゴースト尤度が所定の閾値より高い検知点を、判定の対象としない、と言い換えても良い。そのようにすれば、ゴーストが接近しても緊急制動は作動せず、非干渉化による悪影響も発生しない。
【0216】
受信波形取得手段701、受信波形分析手段702、検知点特定手段703、検知回数加算手段704、検知点追跡手段705、ゴースト尤度評価手段706、検知回数判定手段707、ゴースト尤度加算手段708、ゴースト尤度閾値設定手段709、送受信制御手段710、衝突判定手段711、衝突余裕時間算出手段712、悪影響評価手段713及びゴースト判定手段714は、センサ制御装置70のCPU11Aによってプログラムが実行されることにより実現される。
【0217】
本実施形態のセンサ制御装置70で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0218】
また、本実施形態のセンサ制御装置70で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のセンサ制御装置70で実行されるプログラムを地上波データ放送等の放送システム経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態のセンサ制御装置70で実行されるプログラムを、ROM11B等に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
【0219】
次に、以上のように構成された車載システム100で実行される処理の流れについて説明する。
【0220】
図21は、本実施形態に係る車載システム100で実行される処理の流れの一例をフローチャートである。
【0221】
まず、
図21では、検知回数加算手段704が、検知回数を初期化している状態から開始するものとし、受信波形取得手段701は、複数の送受信器が受信する受信信号を取得している状態から開始するものとする。
【0222】
検知点特定手段703は、複数の送受信器のうち、1つの送受信器が所定の送信順に基づいて探査波を順次送信し、探査波が障害物で反射して生じた反射波を複数の送受信器が受信するまでの時間に基づいて、検知された障害物の座標を示す検知点を順次特定する(ステップS1001)。
【0223】
ここで、検知点特定手段703が特定した検知点がない場合(ステップS1001:No)、検知点が特定されるまで、ステップS1001を継続する。検知点特定手段703が特定した検知点がある場合(ステップS1001:Yes)、ステップS1002へ進む。
【0224】
特定した検知点がある場合、検知回数加算手段704は、検知点特定手段703が特定した検知点の検知回数を1回目と加算する(ステップS1002)。
【0225】
続いて、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点が、車両1とは異なる他の車両に搭載される送受信器が送信した干渉波によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価する(ステップS1003)。
【0226】
続いて、検知点特定手段703は、複数の送受信器のうち、1つの送受信器が所定の送信順に基づいて探査波を順次送信し、探査波が障害物で反射して生じた反射波を複数の送受信器が受信するまでの時間に基づいて、検知した障害物の座標を示す検知点を順次特定する(ステップS1004)。
【0227】
ここで、検知点追跡手段705は同一性判定を行い、以前に検知していた検知点の中に、検知点特定手段703が特定した検知点と同じ検知点があるか判定する(ステップS1001)。同じ検知点がない場合(ステップS1004:No)、ステップS1001へ戻る。検知点特定手段703が特定した検知点と同じ検知点がある場合(ステップS1004:Yes)、ステップS1005へ進む。
【0228】
特定した検知点と同じ検知点がある場合、検知回数加算手段704は、検知点特定手段703が特定した検知点の検知回数を1回、加算する(ステップS1005)。
【0229】
続いて、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点が、車両1とは異なる他の車両に搭載される送受信器が送信した干渉波によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価する(ステップS1006)。つまり、2回以上検知された検知点に限ってゴースト尤度を評価している。これは、検知が初回の検知点は障害物候補であり、緊急制動の対象でない(実害がない)からである。
【0230】
続いて、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点と略同一の方向にあって、検知点追跡手段705が推定した検知点の移動速度が検知点の移動速度の略二倍である異なる他の検知点が存在するか否かを評価する(ステップS1007)。
【0231】
ここで、ゴースト尤度評価手段706は、同方向に移動速度が略2倍の検知点がないと評価した場合(ステップS1007:No)は、ステップS1009へ進む。ゴースト尤度評価手段706は、同方向に移動速度が略2倍の検知点があり、ゴースト尤度が高いと評価した場合(ステップS1007:Yes)、ステップS1008へ進む。
【0232】
ゴースト尤度が高いと評価した場合、ゴースト尤度加算手段708は、ゴースト尤度評価手段706が出力するゴースト尤度評価値を加算する(ステップS1008)。
【0233】
続いて、ゴースト尤度加算手段708が加算したゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも大きいか否かをゴースト判定手段714が判定する(ステップS1009)。ここで、ゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも小さいとゴースト判定手段714が判定した場合(ステップS1009:No)は、ステップS1003へ戻る。ゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも大きいとゴースト判定手段714が判定した場合(ステップS1009:Yes)は、ステップS1010へ進む。
【0234】
所定のゴースト尤度閾値よりも大きい場合、検知点特定手段703は、特定した検知点の距離が閾値=M×T/4(送信間隔で決まる検知可能距離の半分)未満であるかを特定する(ステップS1010)。検知点特定手段703は、特定した検知点の距離がM×T/4未満である場合(ステップS1010:Yes)、ステップS1011へ進む。また、検知点特定手段703は、特定した検知点の距離がM×T/4以上である場合(ステップS1010:No)、ステップS1012へ進む。
【0235】
検知点の距離が閾値未満の場合、送受信制御手段710は、探査波の送信間隔を1回のみ0.5倍に変更して送信する(ステップS1011)。逆に閾値以上の場合は、送受信制御手段710は、探査波の送信間隔を1回のみ1.5倍に変更して送信する(ステップS1012)。つまり、送受信制御手段710は、検知点までの距離に応じて、探査波の送信間隔を変更し、検知点の距離が短い時の送信間隔は、検知点の距離が長い時の前記送信間隔よりも小さい。
【0236】
続いて、送信間隔を変更(非干渉化)して送信した後の検知(受信)において、非干渉化する前の、ゴースト疑いの検知点と同じ検知点があるか、判定する。具体的には、検知点特定手段703は、複数の送受信器のうち、1つの送受信器が所定の送信順に基づいて探査波を順次送信し、探査波が障害物で反射して生じた反射波を複数の送受信器が受信するまでの時間に基づいて、検知した障害物の座標を示す検知点を順次特定する。検知点追跡手段705は、ゴースト疑いの検知点(ゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも大きい検知点)の近くにある検知点について同一性判定を行い、ゴースト疑いの検知点と同じ検知点であるか判定する(ステップS1013)。
【0237】
ここで、検知点特定手段703が特定した検知点の中に、ステップS1009で判定したゴースト疑いの検知点と同じ検知点がない場合(ステップS1013:No)、ステップS1019へ進む。これは、非干渉化によりゴースト疑いの検知点が消えた場合の分岐であり、分岐先で検知回数を初期化して処理を終了する。
【0238】
一方で、検知点特定手段703が特定した検知点の中に、ステップS1009で判定したゴースト疑いの検知点と同じ検知点がある場合(ステップS1013:Yes)、ステップS1014へ進む。これは、非干渉化してもゴースト疑いの検知点が消えず、ゴーストではない(実体がある障害物である)ことが判明した場合である。
【0239】
ゴースト疑いの検知点と同じ検知点がある場合、衝突余裕時間算出手段712は、検知点が車両1と交錯するまでの衝突余裕時間を算出する。続いて、衝突判定手段711は、検知点が車両1と交錯し、検知点に対応する障害物と車両との衝突可能性を判定する(ステップS1014)。
【0240】
ここで、衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第1余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第1余裕時間閾値よりも大きい場合(ステップS1014:No)、ステップS1013へ戻る。衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第1余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第1余裕時間閾値よりも小さい場合(ステップS1014:Yes)、ステップS1015へ進む。
【0241】
続いて、HMI装置60は、障害物接近及び緊急制動予告に関する報知を行う(ステップS1015)。
【0242】
続いて、衝突余裕時間算出手段712は、検知点が車両1と交錯するまでの衝突余裕時間を算出する。続いて、衝突判定手段711は、検知点が車両1と交錯し、検知点に対応する障害物と車両との衝突可能性を判定する(ステップS1016)。
【0243】
ここで、衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第2余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第2余裕時間閾値よりも大きい場合(ステップS1016:No)、ステップS1015へ戻る。衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第2余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第2余裕時間閾値よりも小さい場合(ステップS1016:Yes)、ステップS1017へ進む。
【0244】
衝突余裕時間が第2余裕時間閾値よりも小さい場合、速度制御装置40は、車両1の制動装置を制御し、緊急制動を行う(ステップS1017)。続いて、速度制御装置40は、車両1の速度がゼロか否かを判定する(ステップS1018)。ここで、速度制御装置40は、車両1の速度がゼロでない場合(ステップS1018:No)、ステップS1017へ戻り、これを車両1の速度がゼロになるまで繰り返す。速度制御装置40は、車両1の速度がゼロである場合(ステップS1018:Yes)、ステップS1019へ進む。
【0245】
車両1の速度がゼロである場合、検知回数加算手段704は、加算した検知回数を初期化する(ステップS1019)。検知回数が初期化されると、本処理は終了する。
【0246】
以上、説明したように、本実施形態の障害物検知装置は、検知点特定手段703が特定した検知点が、車両とは異なる他の車両に搭載される送受信器が送信した干渉波によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価するゴースト尤度評価手段706を備える。
【0247】
ゴースト尤度評価手段706は、検知点の移動量及び移動方向が、送受信器の位置の変化に対応する当該移動量及び当該移動方向と一致しない場合、検知点に対応するピーク波形が、予め定められたピーク波形と一致しない場合、及び、移動速度が検知点の移動速度の略二倍である、検知点とは異なる他の検知点が存在する場合、のうち、少なくとも1つが生じた場合に、検知点が、ゴースト尤度が高いと評価する。
【0248】
以上の本実施形態の構成によれば、探査波の送信間隔をできるだけ一定に維持しつつ、干渉波による妨害を受けずに検知することができる。
【0249】
上述した実施形態では、ゴースト判定の結果を受けて、送受信制御手段710が非干渉化の処理を行った後、ゴーストではないと判明した場合に、衝突余裕時間算出手段712が、検知点と車両1との交錯までの衝突余裕時間を算出する例について説明した。
【0250】
つまり、上述した実施形態では、非干渉化の実行時期をゴースト尤度の推移に委ねており、衝突判定との関係で非干渉化の実行時期を制御していない。しかし、以下の変形例1に示すように、緊急制動が必要となる前に非干渉化ができるよう、非干渉化の実行時期を制御しても良い。変形例1では、衝突判定手段711の衝突判定の結果を受けて、ゴースト尤度評価手段706が出力したゴースト尤度をゴースト尤度加算手段708が加算した上で、ゴースト判定を行う例について
図22を用いて説明する。
【0251】
(変形例1)
【0252】
本実施形態のフローチャート(
図21参照)では、非干渉化(送信間隔の変更)はゴースト尤度がゴースト尤度閾値を越えた時点で実行される。変形例1では、検知した回数や、緊急制動までの時間余裕との関係でゴースト尤度を加算することにより、必要性が低い時にはできるだけ非干渉化(送信間隔の変更)をせずに送信間隔を維持し、必要な時だけ非干渉化するように改良を加えている。
【0253】
また、ドライバーは、障害物接近の報知と緊急制動の予告をした時にドライバー自ら手動制動(一例として、ブレーキを踏み、車両速度を落とす等)することがある。手動制動は、緊急制動よりもドライバーが受ける衝撃が小さく好ましいため、第1衝突余裕時間閾値より小さい値である第2余裕時間閾値を設け、衝突余裕時間が第2余裕時間閾値を下回らない場合は緊急制動しないようにする。
【0254】
つまり、ドライバーが障害物接近の報知に応じて手動制動した場合は、緊急制動しないようにする。変形例1では、緊急制動までの時間余裕との関係でゴースト尤度を加算することにより、干渉ゴーストに対してはドライバーへの報知も起こらないようにすることができる。
【0255】
ここで、
図22を用いて、変形例1に対応する車載システム100で実行される処理の流れについて説明する。
図22は、変形例1に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0256】
まず、
図22では、検知回数加算手段704が、検知回数を初期化している状態から開始するものとし、受信波形取得手段701は、複数の送受信器が受信する受信信号を取得している状態から開始するものとする。
【0257】
検知点特定手段703は、複数の送受信器のうち、1つの送受信器が所定の送信順に基づいて探査波を順次送信し、探査波が障害物で反射して生じた反射波を複数の送受信器が受信するまでの時間に基づいて、検知した障害物の座標を示す検知点を順次特定する(ステップS2001)。
【0258】
ここで、検知点特定手段703が特定した検知点がない場合(ステップS2001:No)、検知点が特定されるまで、ステップS2001を継続する。検知点特定手段703が特定した検知点がある場合(ステップS2001:Yes)、ステップS2002へ進む。
【0259】
特定した検知点がある場合、検知回数加算手段704は、検知点特定手段703が特定した検知点の検知回数を1回目と加算する(ステップS2002)。
【0260】
続いて、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点が、車両1とは異なる他の車両に搭載される送受信器が送信した干渉波によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価する(ステップS2003)。
【0261】
続いて、検知点特定手段703は、複数の送受信器のうち、1つの送受信器が所定の送信順に基づいて探査波を順次送信し、探査波が障害物で反射して生じた反射波を複数の送受信器が受信するまでの時間に基づいて、検知した障害物の座標を示す検知点を順次特定する(ステップS2004)。
【0262】
ここで、検知点追跡手段705は同一性判定を行い、以前に検知していた検知点の中に、検知点特定手段703が特定した検知点と同じ検知点があるか判定する(ステップS2004)。同じ検知点がない場合(ステップS2004:No)、ステップS2001へ戻る。検知点特定手段703が特定した検知点と同じ検知点がある場合(ステップS2004:Yes)、ステップS2005へ進む。
【0263】
特定した検知点と同じ検知点がある場合、検知回数加算手段704は、検知点特定手段703が特定した検知点の検知回数を1回、加算する(ステップS2005)。
【0264】
続いて、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点が、車両1とは異なる他の車両に搭載される送受信器が送信した干渉波によるゴーストであることの尤もらしさを示すゴースト尤度を評価する(ステップS2006)。
【0265】
続いて、ゴースト尤度評価手段706は、検知点特定手段703が特定した検知点と略同一の方向にあって、検知点追跡手段705が推定した検知点の移動速度が検知点の移動速度の略二倍である異なる他の検知点が存在するか否かを評価する(ステップS2007)。
【0266】
ここで、ゴースト尤度評価手段706は、同方向に移動速度が略二倍の検知点がないと評価した場合(ステップS2007:No)は、ステップS2009へ進む。ゴースト尤度評価手段706は、同方向に移動速度が略二倍の検知点があり、ゴースト尤度が高いと評価した場合(ステップS2007:Yes)、ステップS2008へ進む。
【0267】
ゴースト尤度が高いと評価した場合、ゴースト尤度加算手段708は、ゴースト尤度評価手段706が出力するゴースト尤度評価値を加算する(ステップS2008)。
【0268】
検知回数判定手段707は、検知した検知回数が8回以上であるか否かを判定する(ステップS2009)。ここで、検知回数判定手段707は、検知した検知回数が8回未満である場合(ステップS2009:No)、ステップS2011へ進む。検知回数判定手段707は、検知した検知回数が8回以上である場合(ステップS2009:Yes)、ステップS2010へ進む。
【0269】
ステップS2010では、ゴースト尤度加算手段708は、ゴースト尤度評価手段706が出力したゴースト尤度評価値を加算する(ステップS2010)。このステップは検知回数が8回未満の場合はスキップされるので加算しない。これは検知回数が多いとゴーストと判定し易くする制御であり、一方で、検知回数が少ない間はゴーストと判定し難くする制御といっても良い。
【0270】
対向車からの干渉波でゴーストが発生している場合、対向車側が非干渉化すれば自車両は送信間隔を変更しなくて済むので、検知回数が少ない間はゴースト尤度を低めに計算して対向車が非干渉化するのを待ち、所定回数待っても検知点が消えない時だけゴースト尤度を高めに計算して、自車両側で非干渉化すれば良い。
【0271】
なお、ステップ2009では検知回数を評価しているが、検知回数の代わりに検知点までの距離を評価しても良い。ゴーストが問題になるシーンは他車両に接近するシーンなので、検知し始めてからの検知回数は、概ね、検知点までの距離の短縮に対応する。よって、検知点までの距離が短いほど緊急制動の必要性が高まるので、より非干渉化(探査波の送信間隔の変更)をし易くすると良い。
【0272】
続いて、衝突余裕時間算出手段712は、検知点が車両1と交錯するまでの衝突余裕時間を算出し、衝突判定手段711は、検知点が車両1と交錯し、検知点に対応する障害物と車両との衝突可能性を判定する(ステップS2011)。
【0273】
ここで、衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第3余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第1余裕時間閾値よりも大きい場合(ステップS2011:No)、ステップS2012をスキップしてステップS2013に進む。衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第3余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第3余裕時間閾値よりも小さい場合(ステップS2011:Yes)、ステップS2012へ進む。
【0274】
ステップS2012では、ゴースト尤度加算手段708は、ゴースト尤度評価手段706が出力したゴースト尤度評価値を加算する(ステップS2012)。これは衝突余裕時間が短い場合にゴーストと判定し易くするためのボーナス加算であり、逆に、衝突余裕時間が長い間はゴーストと判定し難くする制御といっても良い。
【0275】
対向車からの干渉波でゴーストが発生している場合、対向車側が非干渉化すれば自車両は送信間隔を変更しなくて済むので、検知点があっても衝突が差し迫っていない間はゴースト尤度を低めに計算して対向車が非干渉化するのを待ち、衝突が差し迫った時だけゴースト尤度を高めに計算して、自車両側で非干渉化すれば良い。
【0276】
また、簡易な制御として、車両1の速度が速いほど、より非干渉化(探査波の送信間隔の変更)をし易くしても良い。車両1の速度が速いほど衝突余裕時間が速く減り、より早く緊急制動の必要性が高まるので、より非干渉化(探査波の送信間隔の変更)をし易くすると良い。この時、例えば、衝突余裕時間に応じたゴースト尤度評価値を、車両1の速度が速いほど大きく割り増しても良い。
【0277】
続いて、ゴースト尤度加算手段708が加算したゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも大きいか否かを評価する(ステップS2013)。ここで、ゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも小さいとゴースト判定手段714が判定した場合(ステップS2013:No)は、ステップS2005へ戻る。ゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも大きいとゴースト判定手段714が判定した場合(ステップS2013:Yes)は、ステップS2014へ進む。
【0278】
所定のゴースト尤度閾値よりも大きい場合、検知点特定手段703は、特定した検知点の距離が閾値=M×T/4(送信間隔で決まる検知可能距離の半分)未満であるかを特定する(ステップS2014)。検知点特定手段703は、特定した検知点の距離がM×T/4未満である場合(ステップS2014:Yes)、ステップS2015へ進む。また、検知点特定手段703は、特定した検知点の距離がM×T/4以上である場合(ステップS2014:No)、ステップS2016へ進む。
【0279】
検知点の距離が閾値未満の場合、送受信制御手段710は、探査波の送信間隔を1回のみ0.5倍に変更して送信する(ステップS2015)。一方で、検知点の距離が閾値以上の場合は、送受信制御手段710は、探査波の送信間隔を1回のみ1.5倍に変更して送信する(ステップS2016)。
【0280】
続いて、送信間隔を変更(非干渉化)して送信した後の検知(受信)において、非干渉化する前の、ゴースト疑いの検知点と同じ検知点があるか、判定する。具体的には、検知点特定手段703は、複数の送受信器のうち、1つの送受信器が所定の送信順に基づいて探査波を順次送信し、探査波が障害物で反射して生じた反射波を複数の送受信器が受信するまでの時間に基づいて、検知した障害物の座標を示す検知点を順次特定する。
【0281】
検知点追跡手段705は、ゴースト疑いの検知点(ゴースト尤度が所定のゴースト尤度閾値よりも大きい検知点)の近くにある検知点について同一性判定を行い、ゴースト疑いの検知点と同じ検知点であるか判定する(ステップS2017)。
【0282】
ここで、検知点特定手段703が特定した検知点の中に、ステップS2013で判定したゴースト疑いの検知点と同じ検知点がない場合(ステップS2017:No)、ステップS2023へ進む。これは、非干渉化によりゴースト疑いの検知点が消えた場合の分岐であり、分岐先で検知回数を初期化して処理を終了する。
【0283】
逆に、検知点特定手段703が特定した検知点の中に、ステップS2013で判定したゴースト疑いの検知点と同じ検知点がある場合(ステップS2017:Yes)、ステップS2018へ進む。これは、非干渉化してもゴースト疑いの検知点が消えず、ゴーストではない(実体がある障害物である)ことが判明した場合である。
【0284】
ゴースト疑いの検知点と同じ検知点がある場合、衝突余裕時間算出手段712は、検知点が車両1と交錯するまでの衝突余裕時間を算出する。続いて、衝突判定手段711は、検知点が車両1と交錯し、検知点に対応する障害物と車両との衝突可能性を判定する(ステップS2018)。
【0285】
ここで、衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第1余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第1余裕時間閾値よりも大きい場合(ステップS2018:No)、ステップS2017へ戻る。衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第1余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第1余裕時間閾値よりも小さい場合(ステップS2018:Yes)、ステップS2019へ進む。
【0286】
衝突余裕時間が第1余裕時間閾値よりも小さい場合、HMI装置60は、障害物接近及び緊急制動予告に関する報知を行う(ステップS2019)。
【0287】
続いて、衝突余裕時間算出手段712は、検知点が車両1と交錯するまでの衝突余裕時間を算出する。続いて、衝突判定手段711は、検知点が車両1と交錯し、検知点に対応する障害物と車両との衝突可能性を判定する(ステップS2020)。
【0288】
ここで、衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第2余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第2余裕時間閾値よりも大きい場合(ステップS2020:No)、ステップS2019へ戻る。衝突判定手段711は、衝突余裕時間算出手段712が算出した衝突余裕時間と、第2余裕時間閾値と比較し、衝突余裕時間が第2余裕時間閾値よりも小さい場合(ステップS2020:Yes)、ステップS2021へ進む。
【0289】
衝突余裕時間が第2余裕時間閾値よりも小さい場合、速度制御装置40は、車両1の制動装置を制御し、緊急制動を行う(ステップS2021)。続いて、速度制御装置40は、車両1の速度がゼロか否かを判定する(ステップS2022)。ここで、速度制御装置40は、車両1の速度がゼロでない場合(ステップS2022:No)、ステップS2021へ戻り、これを車両1の速度がゼロになるまで繰り返す。速度制御装置40は、車両1の速度がゼロである場合(ステップS2022:Yes)、ステップS2023へ進む。
【0290】
車両1の速度がゼロである場合、検知回数加算手段704は、加算した検知回数を初期化する(ステップS2023)。検知回数が初期化されると、本処理は終了する。
【0291】
以上説明したように、変形例1では、検知した回数や、緊急制動までの時間余裕との関係でゴースト尤度を加算することにより、必要性が低い時にはできるだけ非干渉化(送信間隔の変更)をせずに送信間隔を維持し、衝突が差し迫った時だけ非干渉化するようにした。
【0292】
これにより、衝突が差し迫っていない間は非干渉化を行わず、対向車が先に非干渉化する事によって干渉ゴーストが解消される確率を大きくし、自車両はできるだけ非干渉化(送信間隔の変更)をしないようにすることができる。
【0293】
(変形例2)
本実施形態のフローチャート(
図21参照)では、非干渉化(送信間隔の変更)はゴースト尤度がゴースト尤度閾値を越えた時点で実行される。変形例1では、非干渉化の必要性の有無はゴースト尤度とゴースト尤度閾値の比較で判定するが、非干渉化のタイミングを、緊急制動との関係で変えている。
【0294】
つまり、緊急制動との関係で決まるタイミングで、ゴースト尤度がゴースト尤度閾値以上であれば非干渉化を実行する。そのため、ゴースト尤度の評価と判定を行う処理に続いて、緊急制動の要否を判定するフローチャートになっている。
【0295】
しかし、ゴースト尤度の評価と判定を行う処理と、緊急制動の要否を判定する処理は、独立して行っても良い。例えば、
図22に示すフローチャートを、ゴースト尤度評価のフロー(ステップS2001~ステップS2017、但し、ステップS2011を除く)と、緊急制動の要否を判定するフロー(ステップS2011と、ステップS2018~ステップS2022)に分割して、独立して処理しても良い。
【0296】
緊急制動を必要とする要因はゴースト疑いのある検知点に限られないので、独立して処理する方が合理的である。また、緊急制動の要否を判定する前提として非干渉化による確定判定(S2017)が必要なら、ステップS2011~ステップS2012のように、衝突余裕時間に応じてゴースト尤度評価値を加算するステップをゴースト尤度の評価を行うフローに加えれば良い。
【0297】
または、ゴースト尤度を加算するのではなく、閾値を下げるようにしても良い。例えば、衝突余裕時間が大きい時のゴースト尤度閾値を第1ゴースト尤度閾値、衝突余裕時間が小さい時のゴースト尤度閾値を第2ゴースト尤度閾値(<第1ゴースト尤度閾値)とし、緊急制動が差し迫った時点では閾値を引き下げて、ゴースト尤度が第2ゴースト尤度閾値を越えていれば非干渉化して、ゴーストか否かを確定するようにしても良い。
【0298】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0299】
1 車両
16、16a、16b 撮像装置
21a 第1の前方センターソナー
21b 第2の前方センターソナー
21c 第1の前方コーナーソナー
21d 第2の前方コーナーソナー
22a 第1の後方センターソナー
22b 第2の後方センターソナー
22c 第1の後方コーナーソナー
22d 第2の後方コーナーソナー
30 操舵制御装置
40 速度制御装置
50 車両制御装置
60 HMI装置
70 センサ制御装置
100 車載システム
701 受信波形取得手段
702 受信波形分析手段
703 検知点特定手段
704 検知回数加算手段
705 検知点追跡手段
706 ゴースト尤度評価手段
707 検知回数判定手段
708 ゴースト尤度加算手段
709 ゴースト尤度閾値設定手段
710 送受信制御手段
711 衝突判定手段
712 衝突余裕時間算出手段
713 悪影響評価手段
714 ゴースト判定手段