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特開2023-133663チップの実装装置およびチップの実装方法
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  • 特開-チップの実装装置およびチップの実装方法 図1
  • 特開-チップの実装装置およびチップの実装方法 図2
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  • 特開-チップの実装装置およびチップの実装方法 図5
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  • 特開-チップの実装装置およびチップの実装方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133663
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】チップの実装装置およびチップの実装方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230920BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H05K13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038764
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】小塩 哲平
(72)【発明者】
【氏名】廣田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】石川 明弘
(72)【発明者】
【氏名】末藤 伸幸
【テーマコード(参考)】
5E353
5F044
【Fターム(参考)】
5E353MM03
5E353MM07
5E353QQ21
5F044KK01
5F044LL01
5F044PP15
5F044PP16
5F044QQ01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により加熱したチップにペーストを付着させて基板に実装することができるチップの実装装置およびチップの実装方法を提供する。
【解決手段】チップを保持した加熱ツールをペーストの膜が形成された平坦部9aに設定されたディッピング位置P1~P6に下降させてペーストをチップに付着させ、加熱ツールを基板に向かって下降させてペーストが付着したチップを基板に実装するチップの実装方法は、ペーストをチップに付着させるペースト付着動作とペーストの膜を平坦部9aに形成する膜形成動作を交互に実行し、ペースト付着動作の際に一つ前のペースト付着動作で使用したディッピング位置P1とは異なるディッピング位置P2を使用する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップを保持した加熱ツールをペーストの膜が形成された平坦部に設定されたディッピング位置に下降させて前記ペーストを前記チップに付着させ、前記加熱ツールを基板に向かって下降させて前記ペーストが付着した前記チップを前記基板に実装するチップの実装装置であって、
ペーストをチップに付着させるペースト付着動作と前記ペーストの膜を前記平坦部に形成する膜形成動作を交互に実行し、ペースト付着動作の際に一つ前のペースト付着動作で使用したディッピング位置とは異なるディッピング位置を使用する、チップの実装装置。
【請求項2】
前記加熱ツールを移動させるボンディングヘッドと、
前記平坦部を有するペーストを入れた容器を有し、前記膜形成動作と前記ペーストの膜を前記容器の片方に集めて前記平坦部から除去するとともに前記ペーストを攪拌するペースト攪拌作業を実行するペースト供給部と、
少なくとも前記ボンディングヘッドと前記ペースト供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、ペースト付着動作の際に一つ前のペースト付着動作で使用したディッピング位置とは異なるディッピング位置に前記加熱ツールを下降させる、請求項1記載のチップの実装装置。
【請求項3】
前記制御部は、一度使用したディッピング位置については前記膜形成動作が所定回数行われた後に使用する、請求項2記載のチップの実装装置。
【請求項4】
チップを保持した加熱ツールをペーストの膜が形成された平坦部に設定されたディッピング位置に下降させて前記ペーストを前記チップに付着させ、前記加熱ツールを基板に向かって下降させて前記ペーストが付着した前記チップを前記基板に実装するチップの実装方法であって、
ペーストをチップに付着させるペースト付着動作と前記ペーストの膜を前記平坦部に形成する膜形成動作を交互に実行し、ペースト付着動作の際に一つ前のペースト付着動作で使用したディッピング位置とは異なるディッピング位置を使用する、チップの実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップにペーストを付着させて基板に実装するチップの実装装置およびチップの実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品の製造方法として、バンプ付きのチップの下面にフラックスなどのペーストを付着させる工程と、チップを基板に搭載する工程と、チップを基板に熱圧着する工程を、連続して実行するものが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、複数のワーク保持ヘッドと複数の熱圧着ツールが交互に配置されたロータリーヘッドを備えたボンディング装置が開示されている。このボンディング装置は、ロータリーヘッドをピッチ回転させながら、ワーク保持ヘッドがワーク供給ステーションでワークをピックアップし、粘液塗布ステーションでワークにペーストを付着させ、ボンディングステーションで基板に搭載し、次いで熱圧着ツールが基板に搭載されたチップを熱圧着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-22347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、チップを保持して基板に搭載するワーク保持ヘッドと熱源を有する熱圧着ツールを別々に備えることで、粘液塗布ステーションが供給するペーストが加熱により変質することを防止することができるものの、装置の構成が複雑かつ大掛かりとなるため更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、簡易な構成により加熱したチップにペーストを付着させて基板に実装することができるチップの実装装置およびチップの実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のチップの実装装置は、チップを保持した加熱ツールをペーストの膜が形成された平坦部に設定されたディッピング位置に下降させて前記ペーストを前記チップに付着させ、前記加熱ツールを基板に向かって下降させて前記ペーストが付着した前記チップを前記基板に実装するチップの実装装置であって、ペーストをチップに付着させるペースト付着動作と前記ペーストの膜を前記平坦部に形成する膜形成動作を交互に実行し、ペースト付着動作の際に一つ前のペースト付着動作で使用したディッピング位置とは異なるディッピング位置を使用する。
【0007】
本発明のチップの実装方法は、チップを保持した加熱ツールをペーストの膜が形成された平坦部に設定されたディッピング位置に下降させて前記ペーストを前記チップに付着させ、前記加熱ツールを基板に向かって下降させて前記ペーストが付着した前記チップを前記基板に実装するチップの実装方法であって、ペーストをチップに付着させるペースト付着動作と前記ペーストの膜を前記平坦部に形成する膜形成動作を交互に実行し、ペースト付着動作の際に一つ前のペースト付着動作で使用したディッピング位置とは異なるディッピング位置を使用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成により加熱したチップにペーストを付着させて基板に実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態のチップの実装装置の要部の構成を示す正面図
図2】本発明の一実施の形態のチップの実装装置の要部の構成を示す平面図
図3】本発明の一実施の形態のチップの実装装置が備えるペースト供給部の構成を示す平面図
図4】本発明の一実施の形態のチップの実装装置が備えるペースト供給部の構成を示す側方断面図
図5】本発明の一実施の形態のチップの実装装置が備えるペースト供給部における(a)ペースト攪拌作業の説明図(b)膜形成動作の説明図(c)ペースト付着動作の説明図
図6】(a)(b)(c)(d)本発明の一実施の形態のチップの実装装置が備えるペースト供給部において、加熱されたチップがペーストの膜に及ぼす影響の説明図
図7】本発明の一実施の形態のチップの実装装置が備えるペースト供給部の平坦部に設定された複数のディッピング位置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、チップの実装装置、ペースト供給部の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸として、基板搬送方向のX軸(図2における上下方向)、基板搬送方向に直交するY軸(図1における左右方向)が示される。図1、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ軸(図1における上下方向)が示される。
【0011】
まず図1図2を参照して、チップの実装装置(以下、単に「実装装置1」と称する。)の要部の構成について説明する。実装装置1は、チップを加熱し、チップにペーストを付着させ、ペーストが付着したチップを基板に実装する機能を有している。実装装置1には、チップ供給ステージ2、ペースト転写ステージ3、ボンディングステージ4がY軸に沿って配置されている。
【0012】
チップ供給ステージ2は、バンプ5aが形成された複数のチップ5を供給する機能を有している。ウェハ状態で個片に分割された複数のチップ5は、バンプ5aを上方に向けた状態で粘着シート6に保持されている。チップ5が貼着された粘着シート6は、リングホルダ7に取り付けられた状態でチップ供給ステージ2に配置される。チップ供給ステージ2は、リングホルダ7をX軸方向とY軸方向に移動させるリングホルダ移動機構(図示省略)を備えている。リングホルダ移動機構は、実装装置1が備える制御部Cによって制御されている。
【0013】
図1図2において、ペースト転写ステージ3には、ペースト8を入れた容器9を有し、制御部Cによって制御されているペースト供給部10が配置されている。容器9の平坦部9aには、ペーストの膜8aが形成される(図5(b))。ペースト供給部10の詳細な構成は後述する。ボンディングステージ4には、基板11を保持する基板ホルダ12が配置されている。ボンディングステージ4は、基板ホルダ12をX軸方向とY軸方向に移動させる基板ホルダ移動機構(図示省略)を備えている。基板ホルダ移動機構は、制御部Cによって制御されている。
【0014】
チップ供給ステージ2の上方には、粘着シート6からチップ5をピックアップするピックアップツール13が配置されている。ピックアップツール13は、制御部Cによって制御されているピックアップヘッド14によって支持されている。チップ5をチップ供給ステージ2からピックアップするピックアップ工程では、まずピックアップヘッド14は、チップ5を保持する面を下方に向けた状態でピックアップツール13を下降させて粘着シート6からチップ5をピックアップする。次いでピックアップヘッド14は、チップ5を保持する面が上方を向くようにピックアップツール13を180度回動させる(矢印a)。これにより、チップ5は上下が反転し、バンプ5aを下方に向けた状態でピックアップツール13に保持される。
【0015】
図1図2において、ピックアップツール13、ペースト供給部10、基板ホルダ12の上方には、ピックアップツール13が保持するチップ5を受け取って保持する加熱ツール15が配置されている。加熱ツール15は、制御部Cによって制御されているボンディングヘッド16によって支持されている。ボンディングヘッド16は、加熱ツール15をY軸方向と上下方向(Z軸方向)に移動させる。加熱ツール15は、保持したチップ5を加熱するヒータ15aを内蔵している(図5(c)参照)。
【0016】
図1において、加熱ツール15は、ピックアップツール13からバンプ5aを下方に向けた状態のチップ5を受け取る(受け取り工程)。次いで加熱ツール15は、ペースト供給部10でチップ5にペースト8を付着させ(矢印b)(ペースト付着工程)、基板ホルダ12が保持する基板11に実装する(矢印c)(実装工程)。加熱ツール15は、チップ5を受け取って基板11に実装する間に保持するチップ5を所定の温度(例えば、200℃)まで加熱し、加熱されたチップ5を基板11上に実装する。すなわちチップ5は、受け取り工程から実装工程の間、加熱ツール15によって加熱される。
【0017】
次に図3図4を参照して、ペースト供給部10の詳細な構成について説明する。図4は、図3におけるA-A断面図である。ペースト供給部10は、下プレート17の上面に配置された複数の柱18によって下方から支持された上プレート19の上部に、ペースト8を入れる容器9を備えている。容器9の凹部の底面は、ペースト8が膜状に形成される平坦部9aである。上プレート19の上面には、X軸に沿って延伸する2本のレール20が配置されている。容器9の下面には、レール20に沿って摺動する複数のスライダ21が配置されている。
【0018】
下プレート17と上プレート19の間には、制御部Cによって制御されているモータ22が配置されている。モータ22は、X軸に沿って延伸する送りねじ23を回転駆動する。送りねじ23には、ナット部24がかみ合わされて配置されている。送りねじ23が正逆回転することで、ナット部24はX軸に沿って往復移動する。ナット部24には、上プレート19に形成された開口19aを通して上方に突出し、容器9に連結された連結部材25が接続されている。この構成により、モータ22が送りねじ23を正逆回転させることで、容器9はレール20上をX軸に沿って往復移動する。
【0019】
図3図4において、容器9の上方には、Y軸に沿って延伸するブレード26とスキージ27が並行して配置されている。ブレード26は、ブレード昇降部28によって昇降可能に支持されている。スキージ27は、スキージ昇降部29によって昇降可能に支持されている。ブレード昇降部28とスキージ昇降部29は、制御部Cによって制御されている。
【0020】
次に図5を参照して、ペースト供給部10におけるペースト攪拌作業(ペースト攪拌工程)、膜形成動作(膜形成工程)、ペースト付着動作(ペースト付着工程)について説明する。
【0021】
図5(a)において、ペースト攪拌作業では、容器9がモータ22から遠い位置にある状態で(図3の状態)、制御部Cはスキージ昇降部29によりスキージ27を上昇させ、スキージ27の下面を容器9の平坦部9aから離反させる。次いで制御部Cはブレード昇降部28によりブレード26を下降させ、ブレード26の下面を容器9の平坦部9aに当接させる。次いで制御部Cはモータ22を駆動させ、容器9をモータ22側に移動させる(矢印d)。これにより、ブレード26が平坦部9aを相対的に摺動し、平坦部9aに形成されていたペーストの膜8aが容器9の片方(モータ22から遠い方)に集められ、平坦部9aから除去されるとともにペースト8が攪拌される。
【0022】
図5(b)において、膜形成動作では、容器9がモータ22に近い位置にある状態で(図5(a)の状態)、制御部Cはブレード昇降部28によりブレード26を上昇させ、ブレード26の下面を容器9の平坦部9aから離反させる。次いで制御部Cはスキージ昇降部29によりスキージ27を下降させ、ブレード26の下面を容器9の平坦部9aから所定の高さ(ペーストの膜8aの膜厚に相当)に位置させる。次いで制御部Cはモータ22を駆動させ、容器9をモータ22から遠い側に移動させる(矢印e)。これにより、スキージ27が平坦部9aの上方を所定の高さで移動し、ペーストの膜8aが平坦部9aに形成される。
【0023】
図5(c)において、ペースト付着動作では、平坦部9aにペーストの膜8aが形成された状態で、制御部Cはボンディングヘッド16によりチップ5を保持した加熱ツール15をペーストの膜8aが形成された平坦部9aに設定されたディッピング位置Pに下降させて(矢印f)、ペースト8をチップ5に付着させる。チップ5にペースト8が付着すると、制御部Cはボンディングヘッド16によりチップ5を保持した加熱ツール15を上昇させる(矢印g)。ペースト供給部10では、ペースト攪拌作業(ペースト攪拌工程)、膜形成動作(膜形成工程)、ペースト付着動作(ペースト付着工程)が、順番に繰り返し実行される。
【0024】
次に図6を参照して、加熱されたチップ5が容器9の平坦部9aに形成されたペーストの膜8aに及ぼす影響について説明する。図6(a)~(d)は、加熱ツール15が内蔵するヒータ15aによって加熱されたチップ5がペーストの膜8aに着地する平坦部9aのディッピング位置P付近の拡大図である。
【0025】
図6(b)は、膜形成動作により容器9の平坦部9aに形成されたペーストの膜8aのディッピング位置Pに(図6(a))、ペースト付着動作により加熱ツール15に保持されたチップ5が着地した状態を示している。加熱されたチップ5が着地したペーストの膜8aは、熱の影響によりペースト8に含まれる溶剤が揮発してペースト8の状態が変化した変質ペースト8bに変質する。
【0026】
図6(c)は、ペースト攪拌作業において、変質ペースト8bが形成されたディッピング位置P付近をブレード26が平坦部9aに対して相対的に摺動して(矢印h)、平坦部9aに形成されていたペーストの膜8aを除去している状態を示している。ペースト付着動作の直後のペースト攪拌作業によるブレード26による除去では、変質ペースト8bの一部は除去されずに平坦部9aの上に残留している。
【0027】
図6(d)は、ペースト攪拌作業の後、膜形成動作においてスキージ27が平坦部9aに対して相対的に移動して(矢印i)、平坦部9aにペーストの膜8aを形成している状態を示している。膜形成動作により、平坦部9aに残留していた変質ペースト8bの上にも、ペーストの膜8aが形成されている。この状態でペースト付着動作を行い、変質ペースト8bが残留しているディッピング位置Pにチップ5を着地させた場合、チップ5には正常にペースト8が付着されず、ペースト8の転写量がばらついて実装不良が発生するおそれがある。
【0028】
一方、平坦部9aに残留している変質ペースト8bには、新たに形成されたペーストの膜8aからペースト8に含まれる溶剤が供給されて一部が軟化する。変質ペースト8bが残留しているディッピング位置Pにチップ5を着地させずに、次のペースト攪拌作業を実行させると、摺動するブレード26により変質ペースト8bのうち軟化した一部が除去される。その後、膜形成動作とペースト攪拌作業(軟化した変質ペースト8bの除去)を複数回(例えば、6回)繰り返すことにより、変質ペースト8bが形成されていたディッピング位置Pから残留していた変質ペースト8bが除去されて、正常なペーストの膜8aのみが形成されるようになる。
【0029】
次に図7を参照しながら、加熱されたチップ5にペースト8を付着させて基板11に実装する作業を連続して実行するチップの実装方法について説明する。ペースト供給部10において、膜形成動作によってペーストの膜8aが形成される平坦部9aには、複数のディッピング位置P1~P6が設定されている。ディッピング位置P1~P6の数と位置は、チップ5のサイズ、加熱されるチップ5の温度、ペースト8の材質等に基づいて決定される。この例では、平坦部9aに、6箇所のディッピング位置P1~P6が設定されている。
【0030】
チップ5を基板11に実装する実装作業では、まず、チップ供給ステージ2からピックアップツール13がチップ5をピックアップして上下反転し(ピックアップ工程)、加熱ツール15がピックアップツール13からチップ5を受け取る(受け取り工程)。次いで膜形成動作(膜形成工程)によってペーストの膜8aが形成された平坦部9aのディッピング位置P1~P6のいずれかに、チップ5を保持した加熱ツール15を下降させてペースト8をチップに付着させる(ペースト付着工程)。次いで加熱ツール15を基板11の実装位置に下降させて、ペースト8が付着したチップ5を基板11に実装する(実装工程)。
【0031】
加熱ツール15に保持されたチップ5は、受け取り工程から実装工程の間、加熱ツール15が内蔵するヒータ15aによって加熱される。チップ5の実装作業では、ピックアップ工程から実装工程が繰り返し実行されることで、チップ供給ステージ2の粘着シート6に保持されたチップ5が順に基板11に実装される。
【0032】
以下、ペースト供給部10で実行されるペースト攪拌作業(ペースト攪拌工程)、膜形成動作(膜形成工程)、ペースト付着動作(ペースト付着工程)について説明する。図7において、1回目のペースト付着工程では、加熱ツール15が保持する第1のチップ5は、第1のディッピング位置P1に着地してペースト8が付着される。これにより、第1のディッピング位置P1には、変質ペースト8bが形成される。
【0033】
次いでペースト供給部10では、ペースト攪拌工程、膜形成工程が実行されて、平坦部9aにペーストの膜8aが形成される。2回目のペースト付着工程では、加熱ツール15が保持する第2のチップ5は、第2のディッピング位置P2に着地してペースト8が付着される。3回目のペースト付着工程では、加熱ツール15が保持する第3のチップ5は、第3のディッピング位置P3に着地してペースト8が付着される。
【0034】
以下同様に、ペースト攪拌工程、膜形成工程、ペースト付着工程が繰り返し実行され、6回目のペースト付着工程では、第6のチップ5は第6のディッピング位置P6に着地する。この間のペースト攪拌工程と膜形成工程の繰り返しにより、第1のディッピング位置P1には、正常にペーストの膜8aのみが形成されるようになる。次いで7回目のペースト付着工程では、加熱ツール15が保持する第7のチップ5は、最初に戻って第1のディッピング位置P1に着地してペースト8が付着される。すなわち、制御部Cは、一度使用したディッピング位置(第1のディッピング位置P1)については膜形成動作が所定回数(6回)行われた後に使用する。
【0035】
このように、本実施の形態のチップの実装方法では、ペースト8をチップ5に付着させるペースト付着動作(ペースト付着工程)とペーストの膜8aを平坦部9aに形成する膜形成動作(膜形成工程)を交互に実行し、ペースト付着動作の際に一つ前のペースト付着動作で使用したディッピング位置(第1のディッピング位置P1)とは異なるディッピング位置(第2のディッピング位置P2)を使用する。
【0036】
すなわち、ボンディングヘッド16とペースト供給部10を制御する制御部Cは、ペースト付着動作(2回目のペースト付着工程)の際に一つ前のペースト付着動作で使用したディッピング位置(1回目のペースト付着工程)とは異なるディッピング位置に加熱ツール15を下降させる。これによって、加熱されたチップ5には適切な転写量の正常なペースト8が付着され、基板11に安定して実装することができる。
【0037】
上記説明したように、本実施の形態のチップの実装装置(実装装置1)は、チップ5を保持した加熱ツール15をペーストの膜8aが形成された平坦部9aに設定されたディッピング位置Pに下降させてペースト8をチップ5に付着させ、加熱ツール15を基板11に向かって下降させてペースト8が付着したチップ5を基板11に実装する。
【0038】
その際、チップの実装装置は、ペースト8をチップ5に付着させるペースト付着動作とペーストの膜8aを平坦部9aに形成する膜形成動作を交互に実行し、ペースト付着動作(2回目のペースト付着工程)の際に、一つ前のペースト付着動作(1回目のペースト付着工程)で使用したディッピング位置(第1のディッピング位置P1)とは異なるディッピング位置(第2のディッピング位置P2)を使用する。これによって、簡易な構成により加熱したチップ5にペースト8を付着させて基板11に実装することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のチップの実装装置およびチップの実装方法は、簡易な構成により加熱したチップにペーストを付着させて基板に実装することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0040】
5 チップ
8 ペースト
8a ペーストの膜
9 容器
9a 平坦部
10 ペースト供給部
11 基板
15 加熱ツール
16 ボンディングヘッド
P、P1~P6 ディッピング位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7