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特開2023-133668複合粉末の製造方法、複合粉末、被処理水の処理方法、及び被処理水の処理設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133668
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】複合粉末の製造方法、複合粉末、被処理水の処理方法、及び被処理水の処理設備
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20230920BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20230920BHJP
   B03C 1/015 20060101ALI20230920BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20230920BHJP
   B03C 1/28 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C01G53/00 A
B03C1/00 A
B03C1/015
C02F1/58 L
B03C1/28 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038774
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】507027162
【氏名又は名称】DOWAテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 心太
(72)【発明者】
【氏名】中塚 清次
【テーマコード(参考)】
4D038
4G048
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB39
4D038BA02
4D038BB11
4D038BB17
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD04
4G048AE05
(57)【要約】
【課題】次亜塩素酸ナトリウムを含有する被処理水について、放流可能なレベルの清浄な処理水の生成から当該処理水の放流までを低コストで実施し得る方法、及び当該方法に好適な触媒を提供すること。
【解決手段】酸化ニッケル(II)粉末を、ニッケルイオン及び酸化剤の存在下、水中で攪拌混合して複合ニッケル酸化物粉末を製造し、この複合ニッケル酸化物粉末を、鉄(II)イオンの存在下、pH9~13の水中で60~90℃にてオゾン処理する、複合粉末の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ニッケル(II)粉末を、ニッケルイオン及び酸化剤の存在下、水中で攪拌混合して複合ニッケル酸化物粉末を製造し、前記複合ニッケル酸化物粉末を、鉄(II)イオンの存在下、pH9~13の水中で60~90℃にてオゾン処理する、複合粉末の製造方法。
【請求項2】
前記酸化ニッケル(II)粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が6~20μmである、請求項1に記載の複合粉末の製造方法。
【請求項3】
前記酸化ニッケル(II)粉末及びニッケルイオンを、質量比で10:1~3:1(酸化ニッケル(II)粉末:ニッケルイオン)の割合で使用する、請求項1又は2に記載の複合粉末の製造方法。
【請求項4】
前記酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムであり、前記次亜塩素酸ナトリウムの使用量が、前記ニッケルイオンに対して12~20モル倍である、請求項1~3のいずれかに記載の複合粉末の製造方法。
【請求項5】
前記複合ニッケル酸化物粉末及び鉄(II)イオンを、質量比で100:3~100:10(複合ニッケル酸化物粉末:鉄(II)イオン)の割合で使用する、請求項1~4のいずれかに記載の複合粉末の製造方法。
【請求項6】
酸化ニッケル(II)のコア粒子表面に不定比性の酸化ニッケル粒子が付着してなる複合ニッケル酸化物粒子の表面に、鉄及び酸素を含む磁性粒子が付着してなる、複合粉末。
【請求項7】
前記複合粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が6~18μmである、請求項6に記載の複合粉末。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の複合粉末の製造方法により製造された複合粉末、又は、請求項6若しくは7に記載の複合粉末の存在下、次亜塩素酸ナトリウムを含む被処理水を撹拌することで、前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応を実施する、被処理水の処理方法。
【請求項9】
前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応をバッチ式の反応装置内で実施し、前記分解反応の終了後に前記被処理水の撹拌を停止し、前記停止後1~60分間前記複合粉末を自然沈降させる、請求項8に記載の被処理水の処理方法。
【請求項10】
前記自然沈降の後、前記複合粉末の一部を含む上澄み液に対して磁選を行うことにより、前記上澄み液中の複合粉末を回収する、請求項9に記載の被処理水の処理方法。
【請求項11】
前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応を60分間以下で終了させる、請求項8~10のいずれかに記載の被処理水の処理方法。
【請求項12】
前記被処理水中の有効塩素濃度が0.1~12質量%であり、前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応の終了後の前記被処理水中の有効塩素濃度が0.1質量%未満である、請求項8~11のいずれかに記載の被処理水の処理方法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれかに記載の複合粉末の製造方法により製造された複合粉末又は請求項6若しくは7に記載の複合粉末の存在下で、次亜塩素酸ナトリウムを含む被処理水を撹拌し、前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応を実施するための反応装置と、前記反応装置から液体を磁選装置へ送る送液手段とを備える、前記被処理水の処理設備であって、
前記反応装置は、前記分解反応の終了後に前記被処理水の撹拌を停止して、当該停止後1~60分間前記複合粉末を自然沈降させるように構成されており、
前記送液手段は、前記反応装置から、前記自然沈降の後、前記複合粉末の一部を含む上澄み液を磁選装置に送るように構成されている、被処理水の処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粉末の製造方法、複合粉末、被処理水の処理方法、及び被処理水の処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
広く産業においては、塩素を含む化合物が殺菌や合成中間体など各種の用途で使用され、その結果次亜塩素酸ナトリウムを含む水や塩素を含むガスが継続的に発生する。塩素含有ガスについては、通常湿式洗浄塔などで水酸化ナトリウム水溶液と接触させて中和して、塔底に中和液を捕集することが行われているが、この処理においては塩化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムが副生する。すなわち、次亜塩素酸ナトリウムを含む水が生成する。
【0003】
前記の次亜塩素酸ナトリウム含有水は、含有する次亜塩素酸ナトリウムの濃度が一定以上であると、異臭を放ち、魚介類、水棲の植物等に有毒であり、さらに酸性になると塩素を再生するなどの性質があるため、次亜塩素酸ナトリウムを分解したうえで系外(公共河川、湖沼、海等)に放流する必要がある。
【0004】
このような次亜塩素酸ナトリウム含有水中の次亜塩素酸ナトリウムを分解するための触媒として、特許文献1では、三二酸化ニッケルに酸化ケイ素及びアルミニウム酸化物を所定割合で含むペレット状の触媒が提案されている。当該触媒は充填塔に充填され、その充填塔に被処理液を通すことで、被処理液中の次亜塩素酸ナトリウムを分解する。特許文献2にも、次亜塩素酸ナトリウム含有廃液の処理のための、酸化ニッケル触媒を使用した充填塔が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-149240号公報
【特許文献2】特開昭62-176592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
充填塔による次亜塩素酸ナトリウムの分解には長時間がかかる(例えば、特許文献2の実施例では次亜塩素酸ナトリウムの分解に20時間以上の時間がかかっている)。このような分解速度で、継続的に発生してくる次亜塩素酸ナトリウム含有水の処理を行うためには、充填塔を大型化する、充填塔を多数設けるなどの、単位時間あたりの処理量を多くする対応が必要となるが、これでは処理設備のコストが大きく上昇してしまう。なお次亜塩素酸ナトリウム含有水の処理プロセスとしては、次亜塩素酸ナトリウムを分解して、分解後の処理水について適宜必要な追加の処理を施したうえで系外へ放流するまでが含まれ、コストはこのプロセス全体で考えることになる。
【0007】
本発明は、次亜塩素酸ナトリウムを含有する被処理水について、放流可能なレベルの清浄な処理水の生成から当該処理水の放流までを低コストで実施し得る処理方法、及び当該処理方法に好適な触媒とその製造方法、処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次亜塩素酸ナトリウムの分解のための装置を大型化/多数化することなく、上記被処理水を低コストで処理するための手段として、次亜塩素酸ナトリウムの分解速度を高め、単位時間あたりの被処理水の処理量を増やすことが考えられる。この観点で本発明者らは検討を進め、次亜塩素酸ナトリウムの分解活性に優れることや、コストや安定性の点から、不定比性の酸化ニッケル粉末からなる触媒の使用に想到した。
【0009】
なお、粉末触媒を用いた被処理水の処理では、反応装置中で被処理水と触媒を混合撹拌するのが一般的である。しかし、この方法に前記不定比性酸化ニッケル粉末を使用した場合、次亜塩素酸ナトリウムの分解反応終了後に触媒が反応装置の下部ないし底部になかなか沈降しない。この(沈降していない)触媒を含む処理水をそのまま次工程に送ると、被処理水の処理の度に新たな触媒が必要となり、処理コストの上昇を招く。一方、触媒が反応装置中で沈降するのを待って上澄み液を次工程に送るようにすると、次亜塩素酸ナトリウムの分解に実質的に要する時間が長くなり、処理コストの上昇を招く。
【0010】
そこで、前記不定比性酸化ニッケル粉末の沈降性を高めるべく本発明者らは検討を進め、酸化ニッケル(II)粉末の粒子表面に不定比性の酸化ニッケル粒子を付着させて、複合ニッケル酸化物粉末とすることに想到した。しかし、当該複合ニッケル酸化物粉末の沈降性は、不定比性酸化ニッケル粉末よりは優れるが、まだ不十分だった。
【0011】
本発明者らは更に検討を行ったところ、この複合ニッケル酸化物粉末の構成粒子へ磁性粒子を更に複合化した複合粉末に想到した。そして当該複合粉末を用いて処理水中の次亜塩素酸ナトリウムを分解し、十分なレベルではないものの、短時間で相当量の複合粉末を沈降させた後、沈降しきっていない複合粉末を含む上澄み液に対して磁選を行うことで、複合粉末を回収するプロセスに想到した。
複合粉末が除去された磁選処理後水は、適宜フィルターろ過等を行ったうえで放流することができる。このようなプロセスであれば、短時間で次亜塩素酸ナトリウムの分解及び複合粉末の回収をすることができるので、放流までのプロセス全体を低コストで実施することができる。
【0012】
以上のようにして、本発明者らは本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]酸化ニッケル(II)粉末を、ニッケルイオン及び酸化剤の存在下、水中で攪拌混合して複合ニッケル酸化物粉末を製造し、この複合ニッケル酸化物粉末を、鉄(II)イオンの存在下、pH9~13の水中で60~90℃にてオゾン処理する、複合粉末の製造方法。
【0013】
[2]前記酸化ニッケル(II)粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が6~20μmである、[1]に記載の複合粉末の製造方法。
【0014】
[3]前記酸化ニッケル(II)粉末及びニッケルイオンを、質量比で10:1~3:1(酸化ニッケル(II)粉末:ニッケルイオン)の割合で使用する、[1]又は[2]に記載の複合粉末の製造方法。
【0015】
[4]前記酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムであり、該次亜塩素酸ナトリウムの使用量が、前記ニッケルイオンに対して12~20モル倍である[1]~[3]のいずれかに記載の複合粉末の製造方法。
【0016】
[5]前記複合ニッケル酸化物粉末及び鉄(II)イオンを、質量比で100:3~100:10(複合ニッケル酸化物粉末:鉄(II)イオン)の割合で使用する、[1]~[4]のいずれかに記載の複合粉末の製造方法。
【0017】
[6]酸化ニッケル(II)のコア粒子表面に不定比性の酸化ニッケル粒子が付着してなる複合ニッケル酸化物粒子の表面に、鉄及び酸素を含む磁性粒子が付着してなる、複合粉末。
【0018】
[7]前記複合粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が6~18μmである、[6]に記載の複合粉末。
【0019】
[8][1]~[5]のいずれかに記載の複合粉末の製造方法により製造された複合粉末又は[6]若しくは[7]に記載の複合粉末の存在下、次亜塩素酸ナトリウムを含む被処理水を撹拌することで、該次亜塩素酸ナトリウムの分解反応を実施する、前記被処理水の処理方法。
【0020】
[9]前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応をバッチ式の反応装置内で実施し、該分解反応の終了後に前記被処理水の撹拌を停止して、当該停止後1~60分間前記複合粉末を自然沈降させる、[8]に記載の処理方法。
【0021】
[10]前記自然沈降の後、前記複合粉末の一部を含む上澄み液に対して磁選を行うことにより、前記上澄み液中の複合粉末を回収する、[9]に記載の処理方法。
【0022】
[11]前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応を60分間以下で終了させる、[8]~[10]のいずれかに記載の処理方法。
【0023】
[12]前記被処理水中の有効塩素濃度が0.1~12質量%であり、前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応の終了後の前記被処理水中の有効塩素濃度が0.1質量%未満である、[8]~[11]のいずれかに記載の処理方法。
【0024】
[13][1]~[5]のいずれかに記載の複合粉末の製造方法により製造された複合粉末又は[6]若しくは[7]に記載の複合粉末の存在下で次亜塩素酸ナトリウムを含む被処理水を撹拌し、前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応を実施するための反応装置と、該反応装置から液体を磁選装置へ送る送液手段とを備える、前記被処理水の処理設備であって、
前記反応装置は、前記分解反応の終了後に前記被処理水の撹拌を停止して、当該停止後1~60分間前記複合粉末を自然沈降させるように構成されており、
前記送液手段は、前記反応装置から、前記自然沈降の後、前記複合粉末の一部を含む上澄み液を磁選装置に送るように構成されている、処理設備。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、次亜塩素酸ナトリウムを含有する被処理水について、放流可能なレベルの清浄な処理水の生成から当該処理水の放流までを、低コストで実施し得る被処理水の処理方法と処理設備、当該処理方法に好適な複合粉末とその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[1.複合粉末]
本発明の複合粉末は、上記の通り酸化ニッケル(II)(2価のニッケルの酸化物を意味する。以下同様)のコア粒子表面に不定比性の酸化ニッケル粒子が付着してなる複合ニッケル酸化物粒子の表面に、鉄及び酸素を含む磁性粒子が付着してなるものである。以下、複合粉末の各構成について説明する。
【0027】
<1-1.コア粒子>
本発明の複合粉末を構成するコア粒子は前記の通り酸化ニッケル(II)粒子である。後述する通り複合粉末は代表的には酸化ニッケル(II)粉末の粒子表面に不定比性の酸化ニッケル粒子を付着させるプロセスを経て製造されるが、酸化ニッケル(II)粉末の粒子表面には前記不定比性酸化ニッケル粒子が形成・付着しやすい。
【0028】
触媒活性の点から不定比性酸化ニッケル粒子は微細な粒子であることが好ましいが、微細であると沈降性が悪い。このような不定比性酸化ニッケル粒子を、当該ニッケル粒子よりも大きなコア粒子表面に付着させることで、触媒粒子としての沈降性を高めた。また、不定比性酸化ニッケル粒子の形状は、触媒活性の点から略球状であることが好ましい。
【0029】
<1-2.不定比性酸化ニッケル粒子>
上記の通り不定比性酸化ニッケル粒子が酸化ニッケル(II)粒子からなるコア粒子に付着して、複合ニッケル酸化物コア粒子を構成している。「不定比性」とは、化学式を単純な自然数の比率で表すことのできない性質を意味する。
【0030】
不定比性酸化ニッケル粒子は次亜塩素酸ナトリウムの分解反応について優れた触媒として機能する。当該不定比性酸化ニッケル粒子は好ましくはコア粒子に対して微細であり、比表面積が大きい。これも優れた触媒活性に寄与する。なお、不定比性酸化ニッケル粒子は、コア粒子の表面全体に付着していてもよいし、一部に付着していてもよい。
【0031】
<1-3.磁性粒子>
本発明の複合粉末は、複合ニッケル酸化物粒子の表面、すなわち不定比性酸化ニッケル粒子の表面及びコア粒子のうち不定比性酸化ニッケル粒子が付着していない箇所に、鉄及び酸素を含む磁性粒子が付着してなる。
【0032】
この磁性粒子は磁石に引き付けられる性質を有している。後述する本発明の複合粉末の製造方法により製造される複合粉末における磁性粒子はマグネタイトと考えられ、安価に製造可能である。磁性粒子の存在により、複合粉末全体として磁性(常磁性及び反磁性は含まれない)を帯び、磁選することが可能となる。また磁性粒子は、複合ニッケル酸化物粒子の表面全体を被覆している必要はなく、むしろ触媒活性の点ではある程度の不定比性酸化ニッケル粒子が露出しているのが好ましい。
【0033】
<1-4.複合粉末の粒子径>
本発明の複合粉末のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)は、触媒活性及び沈降性の観点から6~18μmであることが好ましく、7~15μmであることがより好ましく、8~13μmであることが特に好ましい。
【0034】
また、複合粉末の前記体積基準の累積10%粒子径(D10)は、触媒活性及び沈降性の観点から1~7μmであることが好ましく、2~6μmであることがより好ましく、3~5.5μmであることが特に好ましい。
【0035】
[2.複合粉末の製造方法]
本発明の複合粉末の製造方法においては、酸化ニッケル(II)粉末を、ニッケルイオン及び酸化剤の存在下、水中で攪拌混合して複合ニッケル酸化物粉末を製造し(工程1)、この複合ニッケル酸化物粉末を、鉄(II)イオンの存在下、pH9~13の水中で60~90℃にてオゾン処理することで、複合粉末を得る(工程2)。
【0036】
前記工程1により、ニッケルイオンから不定比性の酸化ニッケル粒子が形成され、その粒子が酸化ニッケル(II)粉末の粒子表面に付着すると考えられる。そして前記工程2は一般的なマグネタイトの製造方法であり、これにより、鉄及び酸素を含む磁性粒子が形成され、これが複合ニッケル酸化物粉末の粒子表面に付着すると考えられる。以下、本発明の複合粉末の製造方法の各構成について説明する。
【0037】
<2-1.酸化ニッケル(II)粉末>
本発明の複合粉末の製造方法におけるスタート原料となる酸化ニッケル(II)粉末は、触媒本体である不定比性酸化ニッケル粒子が付着するコア粒子である。これは、本発明の複合粉末において説明した酸化ニッケル(II)粉末と同様である。酸化ニッケル(II)粉末は鉱物の形態はブンセナイトと呼ばれ、外観は緑色である。
【0038】
酸化ニッケル(II)粉末の粒子径については、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)は、製造される複合粉末の触媒活性及び沈降性の観点から、6~20μmであることが好ましく、8~16μmであることがより好ましく、9~14μmであることが特に好ましい。また、酸化ニッケル(II)粉末の前記体積基準の累積10%粒子径(D10)は、3~11μmであることが好ましく、5~10μmであることがより好ましく、6~9μmであることが特に好ましい。
【0039】
<2-2.ニッケルイオン及び酸化剤>
ニッケルイオンは、酸化されることで黒色の不定比性酸化ニッケル粒子となる陽イオンである。ニッケルイオンの供給源は特に限定されるものではなく、その例としては、硫酸ニッケル、塩酸ニッケル及び硝酸ニッケルが挙げられる。
【0040】
酸化剤は、ニッケルイオンを酸化して不定比性酸化ニッケル粒子を形成し得るものであれば特に限定されず、その例としては、次亜塩素酸ナトリウムが挙げられる。
【0041】
酸化ニッケル(II)粉末が存在する状態で、水中でニッケルイオンを酸化することで、酸化ニッケル(II)粉末を構成する各粒子の表面に不定比性酸化ニッケル粒子が形成されつつ付着すると考えられる。この、不定比性酸化ニッケル粒子の形成反応の際の水の温度は、次亜塩素酸の分解や揮発を防止する観点から20~30℃が好ましい。また前記形成反応の際の水のpHは、塩素発生防止や不定比性酸化ニッケル粒子の酸化ニッケル(II)粒子への良好な付着の観点から2.5~6が好ましい。酸化ニッケル(II)粉末及びニッケルイオンの使用割合(酸化ニッケル(II)粉末:ニッケルイオン)は、最終的に形成される複合粉末の触媒活性及び沈降性の観点から、質量比で好ましくは10:1~3:1であり、より好ましくは7:1~4:1である。また不定比性酸化ニッケル粒子の形成を十分に行うために、酸化剤の使用量は、酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムの場合、ニッケルイオンに対して好ましくは12~20モル倍であり、より好ましくは15~18モル倍である。
【0042】
<2-3.磁性粒子の付着>
工程1で得られた複合ニッケル酸化物粉末を、鉄(II)イオンの存在下、pH9~13の水中で60~90℃にてオゾン処理することにより、前記粉末の粒子表面に磁性粒子が形成されつつ付着すると考えられる。なおこのオゾン処理は一般的なマグネタイトの製造方法である。鉄(II)イオンの供給源は特に限定されず、例えば硫酸第一鉄が挙げられる。複合ニッケル酸化物粉末と鉄(II)イオンの使用割合(複合ニッケル酸化物粉末:鉄(II)イオン)は、形成される複合粉末の触媒活性及び磁選のしやすさの観点から、質量比で100:3~100:10であることが好ましく、100:4~100:7であることがより好ましい。
【0043】
なおオゾン処理の具体的な方法としては、前記水中にオゾンを吹き込む方法が挙げられる。磁性粒子の生成効率の観点から、複合ニッケル酸化物粉末及び鉄(II)イオンを含む水を撹拌混合しながら、当該水中にオゾンを吹き込むことが好ましい。オゾン処理の時間(オゾンを吹き込む時間)やオゾンの供給量は、十分な磁性粒子が形成されれば特に限定されない。
【0044】
以上のようにして、本発明の複合粉末の製造方法の製造対象である複合粉末が得られる。複合粉末の粒子表面は実質的に磁性粒子及び不定比性酸化ニッケル粒子で構成されていると考えられ、これらの粒子はいずれも黒色なので、複合粉末の外観は黒色である。
【0045】
[3.被処理水の処理方法]
[背景技術]の項にて説明した通り、広く産業においては次亜塩素酸ナトリウムを含む被処理水が発生する。以上説明した本発明の複合粉末や複合粉末の製造方法で製造される複合粉末は、次亜塩素酸ナトリウムの分解反応の触媒として好適なので、前記被処理水の処理プロセスに好適に使用することができる。なお、次亜塩素酸ナトリウムの分解反応により塩化ナトリウム及び酸素が生成すると考えられている。以下、被処理水の次亜塩素酸ナトリウムの分解から分解処理した後の処理水の放流までの全体プロセスの実施の形態について説明する。
【0046】
<3-1.被処理水>
本発明の被処理水の処理方法における処理対象である被処理水中の次亜塩素酸ナトリウムの量については、例えば有効塩素濃度で0.1~12質量%である。なお本発明が処理対象とする被処理水は好ましくは比較的固形物の含有量が少ないものであり、その濁度(NTU)は例えば100以下であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下である。濁度の測定方法については、後述の実施例にて説明する。なお被処理水中の固形物や有機物の含有量が多いなどの場合は、前処理によりこれらの含有量を低減させておくのが好ましい。
【0047】
<3-2.次亜塩素酸ナトリウムの分解>
バッチ式の反応装置内に被処理水を導入し、複合粉末の存在下で被処理水を撹拌する。この際の被処理水の温度(次亜塩素酸ナトリウムの分解反応温度)は、反応効率や安全性の点から、好ましくは35~50℃である。分解反応の際の被処理水のpHは、塩酸や塩素ガスの発生を防止する観点から、好ましくは7.5以上であり、より好ましくは9~14である。分解反応の際の撹拌は撹拌子や回転羽を用いて行うことができ、その回転速度は、分解効率や反応時間の観点から好ましくは200~500rpmである。複合粉末の使用量は、基本的に多い方が次亜塩素酸ナトリウムの分解効率に優れるが、当該分解効率や反応時間、経済性の観点から、被処理水100質量部に対して、好ましくは1~30質量部であり、より好ましくは4~22質量部である。
【0048】
撹拌時間(分解反応時間)は、被処理水中の次亜塩素酸ナトリウムを十分に分解させる観点及び被処理水の処理効率の観点から、好ましくは60分間以下であり、より好ましくは10~45分間であり、より好ましくは15~30分間である。分解反応の終了(の基準)は各国の排水基準等に基づいて定めることになると考えられるが、例えば有効塩素濃度が1000ppm(0.1質量%)未満となった時点で分解反応終了、と定めることができる。複合粉末の使用量を例えば上記で説明した範囲に調整することで、分解反応の終了までに要する時間を前記のような短時間とすることができる。
【0049】
また触媒種によっては、何回かの使用で触媒が崩壊するなどして使えなくなってしまうことがあるが、本発明で使用する複合粉末の場合はそのようなことはなく、再使用できる。
【0050】
<3-3.複合粉末の自然沈降及び磁選>
次亜塩素酸ナトリウムの分解処理が終了したら、被処理水の撹拌を停止し、複合粉末を自然沈降させる。複合粉末は沈降性に優れるとともに磁選が可能であることから、複合粉末が完全に反応装置の下部ないし底部に沈降するまで自然沈降させる必要はなく、自然沈降にかける時間は例えば1~60分間、好ましくは1.5~30分間、より好ましくは2~10分間とすることができる。
【0051】
このような短時間の自然沈降でも相当量の複合粉末が沈降し、分解反応を受けた被処理水の上部(反応装置内の被処理水の深さを100としたときに、深さ50以下のところ)の濁度は5以下程度となる。
【0052】
複合粉末を沈降させた上澄み液(処理水)は、液中にわずかばかり複合粉末を含むが、粉末を含んだまま磁選装置に送り、磁選する。複合粉末は磁性を有しているので磁選で回収することができる。磁選の具体的な方法は、例えば以下の通りである。磁選装置内に設けられた流路に処理水を通し、この流路の壁(の外側)に磁石を設置しておくことで、流路の壁に複合粉末を付着させる。壁に付着した複合粉末は手作業で回収してもよいし、水を使用した逆洗により反応装置に戻してもよい。
【0053】
反応装置での自然沈降と、以上説明した磁選によって、実質的に全ての複合粉末を回収することができ、この複合粉末は上述の通り繰り返し使用できるので、本発明の被処理水の処理方法は触媒コストの点でも優れている。なお自然沈降を行わない場合には、磁選装置への負荷が大きく当該装置のメンテナンスコストが大きくなり、またメンテナンスの際には操業を停止することになり処理効率の低下にもつながる。
【0054】
<3-4.磁選処理後水のろ過>
前記磁選処理を受けた後の磁選処理後水について、何らかの夾雑物がある場合にはそれを除去するためろ過を行ってもよい。
【0055】
磁選処理後水は複合粉末も十分に除去されているので、ろ過フィルターへの負荷が小さい。そのため、本発明の被処理水の処理方法では、ろ過を実施する場合でも、高価な前記フィルターの交換頻度は非常に低くできる。
【0056】
<3-5.磁選処理後水の放流等>
必要に応じてろ過を行った磁選処理後水については、除去することが必要な金属イオンや有機物などを含んでいる場合はこれらを除去する。そのような処理を経た水は、系外(公共河川、湖沼、海等)に放流することができる。
【0057】
[4.被処理水の処理設備]
以上説明した本発明の被処理水の処理方法を実施する具体的な処理設備の構成の例を示すと、以下の通りである。
【0058】
本発明の複合粉末又は本発明の複合粉末の製造方法により製造された複合粉末の存在下で次亜塩素酸ナトリウムを含む被処理水を撹拌し、前記次亜塩素酸ナトリウムの分解反応を実施するための反応装置と、該反応装置から液体を磁選装置へ送る送液手段とを備える、前記被処理水の処理設備であって、前記反応装置は、前記分解反応の終了後に前記被処理水の撹拌を停止して、当該停止後1~60分間前記複合粉末を自然沈降させるように構成されており、前記送液手段は、前記反応装置から、前記自然沈降の後、前記複合粉末の一部を含む上澄み液を磁選装置に送るように構成されている、処理設備。
【0059】
前記反応装置は、濁度の測定手段を備えて次亜塩素酸ナトリウムの分解反応後の複合粉末の沈降具合をモニターできるようにしてもよい。また前記処理設備は、有効塩素濃度の測定手段を備えていてもよい。
【実施例0060】
[比較例1]
<触媒の用意>
以下の3種類の市販の次亜塩素酸ナトリウム分解用触媒を用意した。
【0061】
・A社製触媒・・・元素分析の結果より、ニッケルをアルミナに担持させた触媒と考えられる。
・B社製触媒・・・元素分析の結果より、アルミナ及びシリカに、コバルト、鉄及びマグネシウムを担持させた触媒と考えられる。
・C社製触媒・・・元素分析の結果より、アルミナに銅及びマンガンを担持させた触媒と考えられる。
【0062】
<分解性能確認試験>
用意した3種類の各触媒30gのそれぞれに、有効塩素濃度6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(水溶液100gがClOを6g含む)600mLを添加し、40℃で3枚パドルシャフトの回転数を100rpmとして攪拌した。用意した触媒は崩壊しやすいため、崩壊を防ぐため、後述する実施例の場合に比べて攪拌速度を遅くした。撹拌を開始してから所定の時間ごとに反応液をサンプリングし、当該反応液中の有効塩素濃度をパックテスト(共立理化学研究所製WAK-ClO(C)を使用)で測定した。分解反応の時間を通じて、反応液のpHは11~13にあった。測定結果を下記表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
B社製触媒とC社製触媒の次亜塩素酸ナトリウムの分解能力は低かった。またA~C社製触媒を使用した場合のいずれについても、分解反応の時間を通じて臭気は発生しなかったので、塩素は発生しなかったと考えられる。以下の比較例及び実施例についても同様である。そして、A~C社製触媒を使用した場合のいずれについても、有効塩素濃度が低下しており、また発泡も起こったので、A~C社製触媒によって、次亜塩素酸ナトリウムから塩化ナトリウム及び酸素が形成されたと考えられる。以下の比較例及び実施例についても同様である。
【0065】
<上澄み液濁度測定>
上記<分解性能確認試験>で撹拌開始から120分の時点で攪拌を止め、攪拌を止めてから下記表2に示す所定時間経過後における、反応液の深さを100としたときに深さ30の位置で液(上澄み液)をサンプリングし、その濁度(NTU:比濁法濁度単位)を求めた。濁度の測定にはHANNA製HI93414を用いた。測定結果を下記表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
[比較例2]
<複合ニッケル酸化物粉末の製造>
酸化ニッケル(II)粉末(緑色)(住友金属鉱山(株)製IPS2、マイクロトラック・ベル株式会社製のMT3300EXIIで測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)は11.5μm、累積10%粒子径(D10)は7.5μm)100gと、1.5mol/Lの硫酸ニッケル水溶液(pH:3.0)100mL又は200mLとを、1Lコニカルビーカ中で室温(約25℃)にて攪拌混合しながら、有効塩素濃度12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して攪拌した。なお、前記硫酸ニッケル水溶液100mLを使用した場合については次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量は900mL(ケース1)、硫酸ニッケル水溶液200mLを使用した場合については次亜塩素酸ナトリウム水溶液の使用量は2100mLである(ケース2)。
【0068】
前記(ケース1)では、[酸化ニッケル(II)粉末]:[ニッケルイオン(硫酸ニッケルは100%電離したとみなす)]の質量比は、約11.4:1であり、次亜塩素酸ナトリウムの使用量はニッケルイオンに対して約14モル倍であった。また前記ケース2では、[酸化ニッケル(II)粉末]:[ニッケルイオン]の質量比は、約5.7:1であり、次亜塩素酸ナトリウムの使用量はニッケルイオンに対して16モル倍であった。
【0069】
水による洗浄を3回実施し、洗浄後の粉末に有効塩素濃度12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して水で洗浄し、ろ過して、酸化ニッケル(II)コア粒子(緑色)の表面に略球状の不定比性の酸化ニッケル(黒色)粒子が付着した(と考えられる)粒子からなる複合ニッケル酸化物粉末を得た。複合ニッケル酸化物粉末としての色は黒色だった。硫酸ニッケル水溶液の使用量が100mLの場合(ケース1)に得られた粉末を複合ニッケル酸化物粉末A1と、硫酸ニッケル水溶液の使用量が200mLの場合(ケース2)に得られた粉末を複合ニッケル酸化物粉末A2とする。
【0070】
<分解性能確認試験>
上記で使用した酸化ニッケル(II)粉末(住友金属鉱山(株)製IPS2)、上記で得られた複合ニッケル酸化物粉末A1又は複合ニッケル酸化物粉末A2を各30gとり、これに有効塩素濃度12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液300mLと水300mLを添加し、40℃で3枚パドルシャフトの回転数を340rpmとして攪拌した。攪拌を開始してから所定の時間ごとに反応液をサンプリングし、当該反応液中の有効塩素濃度をパックテスト(共立理化学研究所製WAK-ClO(C)を使用)で測定した。分解反応の時間を通じて、反応液のpHは11~13にあった。測定結果を下記表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
<上澄み液濁度測定>
上記<分解性能確認試験>で、IPS2を使用した場合は撹拌開始後90分、複合ニッケル酸化物粉末A1を使用した場合は撹拌開始後90分、複合ニッケル酸化物粉末A2を使用した場合は撹拌開始後60分の時点で攪拌を止め、比較例1と同様に所定時間経過後における上澄み液の濁度を測定した。測定結果を下記表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
複合ニッケル酸化物粉末A1又はA2を使用した場合には、IPS2を使用した場合に比べて濁度が大きい(A1を使用した経過時間1分及び5分の場合を除く)。本件はビーカで行った、上澄み液をサンプリングした試験であるが、より大きい装置で次亜塩素酸ナトリウムを含む被処理水の処理を行った場合には、複合ニッケル酸化物粉末が十分に装置の底まで沈降するには更に長時間を要することになり、被処理水の処理効率の点で問題である。
【0075】
[実施例1]
<複合粉末の製造>
比較例2で得られた複合ニッケル酸化物粉末A2を40gとり、これを3Lパイレックス(登録商標)ビーカーに入れた水(1.5L、60℃)中にリパルプし、硫酸第一鉄7水和物11.6g及び48質量%水酸化ナトリウム水溶液7.2gを添加してpHを11とした。得られたスラリーの入ったパイレックス(登録商標)ビーカーを70℃のウォーターバスに漬けて、スラリー中にオゾンを吹き込み(0.1g/h)、1時間30分間曝気・攪拌した。前記複合ニッケル酸化物粉末A2に対する硫酸第一鉄7水和物における鉄(II)イオンの量は、硫酸第一鉄7水和物が全て電離したとの仮定の下、質量比でおよそ100:5.9(複合ニッケル酸化物粉末A2:鉄(II)イオン)だった。
【0076】
以上により得られた複合粉末の磁性は磁石で確認した。これより、複合粉末は、複合ニッケル酸化物粉末A2の粒子表面にマグネタイトが付着したものであると考えられる。また、得られた複合粉末の比較例2と同様の方法により測定した(D10)は4.6μm、(D50)は11μmであった。
【0077】
<分解性能確認試験>
上記で得られた複合粉末全量(48g)に有効塩素濃度6質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液800mLを添加し、40℃で3枚パドルシャフトの回転数を340rpmとして攪拌し、比較例2と同様に攪拌を開始してから所定の時間ごとの反応液中の有効塩素濃度を測定した。分解反応の時間を通じて、反応液のpHは11~13にあった。測定結果を下記表5に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
<上澄み液濁度測定>
上記<分解性能確認試験>で、撹拌開始後60分で攪拌を止め、比較例1と同様に所定時間経過後における上澄み液の濁度を測定した。また、同じく反応終了して撹拌を止めてから所定時間経過後に、比較例1と同様に上澄み液をサンプリングし、その液を磁選装置に流速2cm/sで通水した。この磁選装置は、240mTの希土類磁石を流路の側壁に8個配置できるものを3Dプリンターで制作したものである。磁選装置の流路(断面積2.95cm:高さ5mm、幅59mm)を通過した磁選処理後液を採取し、これの濁度を測定した。
【0080】
以上の測定結果を下記表6に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
[実施例2]<サイクルテスト>
実施例1と同様の操作を繰り返して製造した複合粉末を使用して、以下のサイクル試験を行った。
【0083】
1Lパイレックス(登録商標)ビーカに80gの複合粉末を入れた後、水400mLと有効塩素濃度12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液400mLを投入した。反応温度を40~50℃に保ち、撹拌機で攪拌し、次亜塩素酸ナトリウムを分解した。分解時間は30分間とした。分解反応の時間を通じて、反応液のpHは11~13にあった。
【0084】
前記の30分間の分解処理後、攪拌を停止し、3分間静置した。複合粉末を沈降させた液の半量を実施例1で使用したのと同様の磁選装置に流速2cm/sで通水し、液中に浮遊していた複合粉末(極微量)を回収した。複合粉末を沈降させた液の残り(約400mL、下部には複合粉末が沈降している。有効塩素濃度は、実質0質量%であり、後述する表7における処理率の計算においては0ppmとみなす)に、有効塩素濃度12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液400mLを投入し、再度次亜塩素酸ナトリウムの分解を実施した。
【0085】
この、次亜塩素酸ナトリウムの分解、複合粉末を沈降させた液の半量の排出、及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液400mLの投入を1サイクルとして、サイクルを繰り返した。
【0086】
各サイクルにおいて、次亜塩素酸ナトリウムの分解処理後液について有効塩素濃度をパックテスト(共立理化学研究所製WAK-ClO(C)を使用)で測定した。また、分解処理後の3分間静置後の上澄み液及び実施例1と同様に磁選処理を施した磁選処理後液の濁度を、比較例1と同様に測定した。
【0087】
以上の評価結果を下記表7に示す。なお下記表7における処理率は、被処理水(有効塩素濃度6質量%)中の有効塩素濃度をどれだけ低減させたかという割合であり、以下の計算式で求められる。
処理率=(60000ppm-分解処理後水中の有効塩素濃度(ppm))/60000ppm×100(%)
【0088】
【表7】