(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133669
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】エアクリーナ
(51)【国際特許分類】
F02M 35/024 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
F02M35/024 511B
F02M35/024 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038775
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】畠山 淳
(72)【発明者】
【氏名】坂 昭人
(57)【要約】
【課題】 大容量化が図りやすいエアクリーナを提供する。
【解決手段】 エアクリーナ10は、第1ケース1と、第2ケース2と、平板状のフィルタエレメント3とを有し、フィルタエレメントが第1ケースと第2ケースの間に挟持される。フィルタエレメント3は、周縁に環状のシール部4を有する。少なくとも第1ケース1には、シール部4に当接する環状のフランジ部12が設けられており、第1ケース1の周縁の少なくとも一部の区間において、フランジ部12が、ケース壁11の末端11aから、フィルタエレメント3の延在方向に沿って、ケースの内側に延在するとともに、フランジ部12のケース内側の末端13aから、フィルタエレメント3の延在方向に直交する方向に沿って、ガイド壁13が、ケース壁11と略平行に設けられる。ケース壁11とフランジ部12とガイド壁13の断面は、略コの字状の断面となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケースと、第2ケースと、平板状のフィルタエレメントとを有し、
フィルタエレメントが第1ケースと第2ケースの間に挟持されて、エアクリーナを通過する空気がフィルタエレメントによって濾過されるエアクリーナであって、
フィルタエレメントは、周縁に環状のシール部を有しており、
少なくとも第1ケースには、前記シール部に当接する環状のフランジ部が設けられており、
前記第1ケースの周縁の少なくとも一部の区間において、
前記フランジ部が、ケース壁の末端から、平板状フィルタエレメントの延在方向に沿って、ケースの内側に延在するように設けられるとともに、
前記フランジ部のケース内側の末端から、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って、ガイド壁が、ケース壁と略平行に設けられて、
ケース壁とフランジ部とガイド壁の断面が、略コの字状の断面となるように構成されている、
エアクリーナ。
【請求項2】
平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、シール部が多角形状であり、
平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、略コの字状となるように、前記一部の区間が、1つの辺の両端の角部を越えて隣の辺の少なくとも一部に達するように設けられている、
請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、
前記区間が全周にわたっている、
請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項4】
前記ケース壁と前記ガイド壁とが、リブにより互いに接続されている、
請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項5】
前記第1ケースは、
平板状フィルタエレメントの延在方向と略平行な分割面で第1ケースを分割した形状に形成されたケース第1分割体とケース第2分割体とを、接合一体化して構成されている、
請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項6】
周方向にわたってフランジ部の幅が変化しており、フランジ部の幅をシール部の幅よりも大きくした部分が設けられている、
請求項1に記載のエアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナ、特に平板状のフィルタエレメントを備えるエアクリーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアクリーナは、内燃機関に供給する空気や、燃料電池に供給する空気や、冷却風となる空気などを濾過し、清浄化するために使用される。自動車などでは、平板状のフィルタエレメントを備えるエアクリーナが広く使用されている。
【0003】
平板状のフィルタエレメントは、典型的には、アッパケースとロワケースの間に挟持されて、エアクリーナが構成され、エアクリーナ内部を通過する空気は、フィルタエレメントによって濾過される。通常、フィルタエレメントの周縁部には、環状にシール材が設けられて、ケースとフィルタエレメントの間をシールし、外部の汚染された空気が侵入しないようにされる。
例えば、特許文献1には、エアクリーナが、インレットを有する第1ケースのフランジと、アウトレットを有する第2ケースのフランジとの間に、濾材の外周枠部において挟持されるように構成され、濾材におけるエア流の下流側には、蒸発燃料ガスを吸着するための吸着シートが取り付けられることが開示されている。当該エアクーナによれば、エアクリーナのケースに対し、フィルタや吸着シートの組み付けを容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のエアクリーナでは、第1ケースのフランジおよび、第2ケースのフランジは、ケースの壁面から、ケースの外側に突出するように設けられている。本明細書において、以下、このようなフランジの設け方を、「外フランジ式」と呼ぶことにする。特許文献1にあるような外フランジ式にフランジが設けられたエアクリーナにおいては、エアクリーナのケースの壁面よりも、外側にフランジが突出する。
【0006】
近年、特に車両等において、エアクリーナを設ける空間の制限が強まっている。この理由としては、ハイブリッド自動車のモータジェネレータやバッテリー、給電システムなどの複雑なシステム/機関が車両に搭載されることになったことがあげられる。エアクリーナは、近くに配置される他の部品や部材をよけて設ける必要がある。一方で、エアクリーナ内部を通流する空気の流れを整え、空気が通流する吸気経路の消音性を高めるために、エアクリーナの容量はできる限り大きくしたい。
【0007】
本発明の目的は、大容量化が図りやすいエアクリーナを提供することにある。また、本発明の他の目的は、フランジの剛性を効果的に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、従来の外フランジ式のエアクリーナにおいては、フランジの外縁から所定の距離だけ内側に入った箇所にしかケース壁が設けられていないことに注目した。そして、ケース壁の端部から内側にフランジを設け、さらに、フランジの内側縁部からコの字状となるようにガイド壁を設けると、エアクリーナの大容量化を図れることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、第1ケースと、第2ケースと、平板状のフィルタエレメントとを有し、フィルタエレメントが第1ケースと第2ケースの間に挟持されて、エアクリーナを通過する空気がフィルタエレメントによって濾過されるエアクリーナであって、フィルタエレメントは、周縁に環状のシール部を有しており、少なくとも第1ケースには、前記シール部に当接する環状のフランジ部が設けられており、前記第1ケースの周縁の少なくとも一部の区間において、前記フランジ部が、ケース壁の末端から、平板状フィルタエレメントの延在方向に沿って、ケースの内側に延在するように設けられるとともに、前記フランジ部のケース内側の末端から、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って、ガイド壁が、ケース壁と略平行に設けられて、ケース壁とフランジ部とガイド壁の断面が、略コの字状の断面となるように構成されている、エアクリーナである(第1発明)。
【0010】
本明細書において、以下、このような、ケース壁の端部から内側にフランジを設け、さらに、フランジの内側縁部からコの字状断面となるようにガイド壁を設けるようなフランジの設け方を、「内フランジ式」と呼ぶことにする。
【0011】
第1発明において、好ましくは、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、シール部が多角形状であり、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、略コの字状となるように、前記一部の区間が、1つの辺の両端の角部を越えて隣の辺の少なくとも一部に達するように設けられている(第2発明)。また、第1発明において、好ましくは、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、前記区間が全周にわたっている(第3発明)。また、第1発明において、好ましくは、前記ケース壁と前記ガイド壁とが、リブにより互いに接続されている(第4発明)。また、第1発明において、好ましくは、前記第1ケースは、平板状フィルタエレメントの延在方向と略平行な分割面で第1ケースを分割した形状に形成されたケース第1分割体とケース第2分割体とを、接合一体化して構成されている(第5発明)。また、第1発明において、好ましくは、周方向にわたってフランジ部の幅が変化しており、フランジ部の幅をシール部の幅よりも大きくした部分が設けられている(第6発明)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエアクリーナ(第1発明)によれば、エアクリーナの容量が拡大される。また、第6発明のようなエアクリーナとした場合には、特にエアクリーナの容量が拡大される。
また、第2発明、第3発明、または第4発明のようなエアクリーナとした場合には、フランジの剛性が効果的に高められるとの効果も得られる。
また、第5発明のようなエアクリーナとした場合には、そのようなエアクリーナを製造しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態のエアクリーナの構成を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態のエアクリーナのシール部周辺の断面図である。
【
図3】第1実施形態のエアクリーナの第1ケースの断面図である。
【
図4】第1実施形態のエアクリーナの第1ケースの平面図および断面図である。
【
図5】第2実施形態のエアクリーナの第1ケースの平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、自動車の内燃機関に供給される空気を濾過するエアクリーナを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0015】
図1は、第1実施形態のエアクリーナ10の構成を示す分解斜視図である。
エアクリーナ10は、第1ケース1と、第2ケース2と、平板状のフィルタエレメント3とを有する。フィルタエレメント3が第1ケース1と第2ケース2の間に挟持され、第1ケース1と第2ケース2とによって構成される中空箱状のエアクリーナケースの内部空間が、平板状のフィルタエレメント3によって分割される。
【0016】
第1ケース1にはインレット5が設けられ、第2ケース2にはアウトレット6が設けられている。エアクリーナ10は内燃機関の吸気経路に設けられて、吸気経路を構成するダクト部材等がインレット5やアウトレット6に接続される。空気は、インレット5からエアクリーナに流入し、アウトレット6から流れ出ていく。エアクリーナ10を通過する空気がフィルタエレメント3によって濾過される。必須ではないが、第1ケース1および第2ケース2は、典型的には、熱可塑性樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)によって製造される。
【0017】
図2は、第1実施形態のエアクリーナ10のシール部4の周辺の断面図である。
平板状のフィルタエレメント3は、周縁に環状のシール部4を有している。シール部4によって、濾過されていない空気がエアクリーナに侵入し通過することが予防される。シール部4はゴムや発泡樹脂や、不織布などにより構成される。本実施形態では、フィルタエレメント3は、ひだ折りされた不織布ろ過材31が合成樹脂製の枠体32に一体化されて構成されている。ろ過材は不織布に限定されず、ろ紙であってもよく、発泡樹脂(スポンジ)等であってもよい。本実施形態では、枠体32の周縁にフランジ状に突出する部分が設けられて、その部分にゴム製のシール部4が一体化されている。
【0018】
環状のシール部4が、第1ケース1と第2ケース2の間に挟持される。ここで、少なくとも第1ケースには、前記シール部4に当接する環状のフランジ部12が設けられている。また、必須ではないが本実施形態では、第2ケース2にも、前記シール部4に当接する環状のフランジ部22が設けられている。環状のシール部4は、それぞれのケースのフランジ部12,22の間に挟持され、シール部4とフランジ部12,22の間がそれぞれシールされる。なお、環状のシール部4は、本実施形態のように全体形状が矩形状、長方形状となるように設けられていてもよいが、多角形状や円形状、楕円形状、長円形状など、他の形態であってもよい。
【0019】
なお、本実施形態では、第1ケース1と第2ケース2は、ともにフランジ部12,22を有しているが、これは必須ではない。典型的には、いわゆるクリーンサイドと呼ばれる、下流側のケース(本実施形態では第2ケース2)にフランジ部が設けられて、当該下流側ケースのフランジ部22とシール部4の間でシールがなされればよい。また、本実施形態では、第1ケース1のフランジ部12が、共に、後述する内フランジ式も設けられ、第2ケース2のフランジ部22が外フランジ式で設けられているが、第2ケース2のフランジ部22も内フランジ式に設けてもよい。
【0020】
第1実施形態のエアクリーナ10では、第1ケース1のフランジ部12が以下に説明するような構造で設けられる。以下、第1ケース1におけるフランジ部12について、その構造を説明する。
図3は第1実施形態のエアクリーナ10の第1ケース1の断面図である。
【0021】
第1ケース1において、フランジ部12が、ケース壁11の末端11aから、平板状フィルタエレメントの延在方向に沿って、ケースの内側に延在するように設けられる。フランジ部12とシール部4とが当接して、シールがなされる。ここでケース壁11とは、エアクリーナ10の内部空間と外部空間とを隔てる壁である。ケース壁11は、フィルタエレメント3が取り付けられる部分が解放された、解放箱状に形成されており、解放された端縁に相当する部分が、ケース壁11の末端11aである。また、平板状フィルタエレメントの延在方向とは、シール部4が環状に延在する平面に沿った方向のことでもあり、
図2および
図3では、図の左右方向や紙面奥行き方向である。
【0022】
フランジ部12は、少なくともシール部4と当接してシールが適切になされるような幅に設けられる。フランジ部12の幅は周方向にわたって一定であってもよいが、変化していてもよい。また、フランジ部12がシール部4に当接する部分は、平面であってもよいが、適宜、周方向に沿った溝や突起が設けられていてもよい。
【0023】
さらに、前記フランジ部12のケース内側の末端13aから、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って、ガイド壁13が、ケース壁11と略平行に設けられている。ここで、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向とは、
図2および
図3では、図の上下方向である。ガイド壁13は、フィルタエレメント3の位置決めや脱落防止となるような形態に設けてもよく、導風板となるような形態に設けてもよい。
【0024】
図2および
図3に示すように、ケース壁11とフランジ部12とガイド壁13は、それらの断面が、略コの字状の断面となるように構成されている。すなわち、ガイド壁13は、フランジ部12のケース内側の末端13aから、第1ケース1のケース奥側に向かって延在するように設けられている。
【0025】
本明細書においては、以下、このように、ケース壁11の末端11aからケースの内側に向かってフランジ部12が延在し、フランジ部12の内側の末端13aからガイド壁13が設けられ、ケース壁とフランジ部とガイド壁がコの字状の断面となる形態を、「内フランジ式」と呼ぶことにする。
【0026】
第1実施形態のエアクリーナ10では、第1ケース1の周縁の少なくとも一部の区間において、フランジ部12およびガイド壁13が、上記内フランジ式の形態となるように設けられる。必須ではないが、本実施形態のエアクリーナ10のように、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、前記区間が全周にわたっていること、すなわち、環状のシール部4やフランジ部12の全周にわたって、上記内フランジ式の構造となっていることが好ましい。また、必須ではないが、第1ケースと第2ケースの両方において、それぞれのケースの周縁の少なくとも一部の区間において、フランジ部12およびガイド壁13が、上記内フランジ式の形態となるように設けられることが好ましい。
【0027】
また、必須ではないが、第1実施形態のエアクリーナ10では、前記ケース壁11と前記ガイド壁13とが、リブ14,14により互いに接続されている。
図3に示すように、リブ14,14は、ケース壁11とガイド壁13に対し略垂直に、
図3において上下方向に延在するように設けられることが特に好ましい。
【0028】
また、必須ではないが、第1実施形態のエアクリーナ10では、第1ケース1は、2つの分割体1A,1Bを組み立てて構成されている。すなわち、平板状フィルタエレメントの延在方向と略平行な分割面Pで、第1ケース1を分割した形状に形成されたケース第1分割体1Aとケース第2分割体1Bとをあらかじめ作成した上で、ケース第1分割体1Aとケース第2分割体1Bとを接合一体化して、第1ケース1が構成されている。なお、分割面Pは、平板状フィルタエレメントの延在方向と厳密に平行である必要はなく、おおむね沿っていればよい。また、分割面Pは平面であってもよいが、円筒面や折れ面であってもよい。
【0029】
第1実施形態のエアクリーナ10は、公知の製造方法を応用して製造することができる。
フィルタエレメント3やシール部4は、公知の製造方法により製造され、組み立てられる。第1ケース1や第2ケース2は、典型的には、熱可塑性樹脂の射出成形等により製造される。フランジ部12やガイド壁13をケース壁11とともに一体成型するためには、適宜、スライド型や置き子などを利用すればよい。
【0030】
また、本実施形態のエアクリーナ10のように、第1ケースがケース第1分割体1Aとケース第2分割体1Bとを接合一体化して構成される場合には、第1分割体1Aとケース第2分割体1Bをそれぞれ熱可塑性樹脂の射出成型によって製造したうえで、両者を溶着(例えば熱板溶着や振動溶着)によって接合一体化して第1ケース1を製造してもよい。分割体の接合一体化は、接着剤や粘着剤、係止構造(スナップフィット)などを利用するものであってもよい。
【0031】
得られた第1ケース1と第2ケース2の間に、フィルタエレメント3を挟み込むように組み立てて、エアクリーナ10が完成する。第1ケース1と第2ケース2の間に、フィルタエレメント3やシール部4が確実に挟持されるよう、ボルト8,8やナット81,81などの締結部材や、クリップ部材(図示せず)や係止部材、バンド等を用いて、第1ケース1と第2ケース2が互いに閉じられる。なお、
図1ないし
図3においては、ボルト8,8に関連する取付穴や座面、ナット等の記載は省略している。
【0032】
第1実施形態のエアクリーナ10の作用および効果について説明する。
エアクリーナ10によれば、第1ケース1の周縁の少なくとも一部の区間において、内フランジ式にフランジ部12およびガイド壁13が設けられているために、すなわち、前記フランジ部12が、ケース壁11の末端11aから、平板状フィルタエレメント3の延在方向に沿って、ケースの内側に延在するように設けられるとともに、前記フランジ部12のケース内側の末端13aから、平板状フィルタエレメント3の延在方向に直交する方向に沿って、ガイド壁13が、ケース壁11と略平行に設けられて、ケース壁11とフランジ部12とガイド壁13の断面が、略コの字状の断面となるように構成されているために、エアクリーナの容量が拡大される。
【0033】
特許文献1にあるような従来技術のエアクリーナにおいては、フランジ部が外フランジ式に設けられるために、ケース壁がフランジ部よりも内側に立設されることになって、仮にフランジ部を許容しうる限り外側に設けたとしても、シール部に当接させるべきフランジ部の幅の分だけは、ケース壁がケース内側に位置することとなってしまい、その分だけ、エアクリーナの容量が少なくならざるを得なかった。エアクリーナの容量低下は、消音性能の低下や、通期抵抗の悪化、濾過性能の低下等につながりやすい。
【0034】
第1実施形態のエアクリーナ10によれば、内フランジ式の構造とした区間では、フランジ部12よりも外側にケース壁11が配置でき、エアクリーナの容量が拡大できる。
また、平板状のフィルタエレメント3は、製造しやすさの観点から、ろ過材31の部分が矩形状(直方体状)に形成されることが多く、そのため、シール部4も、平板状フィルタエレメントの延在方向と直交する方向に沿って見て、長方形状に設けられることが多い。
この場合、従来技術の外フランジ式のエアクリーナでは、長方形状のシール部に対応するフランジ部の内側の形状によって、ケース壁の位置やエアクリーナ容量が制約される。一方、第1実施形態のエアクリーナ10によれば、長方形状のシール部によって制約を受けるのは、ガイド壁13の配置だけであり、フランジ部12の幅や、ケース壁11の位置は、長方形状のシール部4による制約を受けない。すなわち、シール部の形状による制約を受けずに、ケース壁を周辺レイアウトが最大限に許容するところまで張り出させて設けることができ、エアクリーナの容量拡大に貢献する。
【0035】
また、第1実施形態のエアクリーナ10において、ケース壁11とフランジ部12とガイド壁13の断面が、略コの字状の断面となるように構成されていることは、平板状フィルタエレメント3の延在方向に直交する方向に、フランジ部12が弾性変形してしまうことを抑制し、シール性を高めることに貢献する。
【0036】
特に、第1実施形態のエアクリーナ10のように、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、内フランジ式にフランジ部が設けられている区間が、全周にわたっている場合には、ガイド壁13が周方向に連続した筒状に設けられることになり、ケース壁11とフランジ部12とガイド壁13とが、一体化されたシェル構造のように働いて、平板状フィルタエレメント3の延在方向に直交する方向に、フランジ部12が弾性変形してしまうことが、より効果的に抑制される。すなわち、フランジの剛性が効果的に高められる。
【0037】
また、必須ではないが、特に、第1実施形態のエアクリーナ10のように、ケース壁11とガイド壁13とが、リブ14により互いに接続されている場合には、ケース壁11とガイド壁13とが、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に相対変位することがより確実に阻止されるため、フランジ部12が弾性変形してしまうことがより効果的に抑制され、フランジの剛性が特に効果的に高められる。
【0038】
また、必須ではないが、第1実施形態のエアクリーナ10のように、内フランジ式にフランジ部12が設けられる第1ケース1が、平板状フィルタエレメント3の延在方向と略平行な分割面Pで第1ケース1を分割した形状に形成されたケース第1分割体1Aとケース第2分割体1Bとを、接合一体化して構成される、ようにすると、熱可塑性樹脂の射出成型によりケース第1分割体1Aとケース第2分割体1Bを製造する際の金型の構造がより簡単なものとなって、エアクリーナ10を製造しやすくなる。
【0039】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0040】
図4は、第1実施形態のエアクリーナ10の第1ケース1の平面図および断面図である。上記第1実施形態のエアクリーナ10においては、
図4にも示すように、フランジ部12の全周にわたって、上記内フランジ式の構造で、ケース壁11,フランジ部12、ガイド壁13が設けられていた。しかしながら、これは必須ではなく、内フランジ式の構造とされるのは、第1ケース1の周縁の少なくとも一部の区間であってもよい。
【0041】
図5は、第2実施形態のエアクリーナの第1ケース21の平面図および断面図である。第2実施形態のエアクリーナの第1ケース21においては、矩形状のフィルタエレメントを取り囲む4辺のうち、3辺が内フランジ式の構造とされ、残る1辺が外フランジ式の構造とされている。すなわち、
図5の正面図(左上の図)において左手に位置する辺12xでは、フランジ部212の内側にケース壁211が接続され、フランジ部212の外側にガイド壁213が接続される、外フランジ式の構造とされている。また、
図5の正面図において右手、上側、下側に位置する辺12a,12b,12cでは、フランジ部212の外側にケース壁211が接続され、フランジ部212の内側にガイド壁213が接続される、内フランジ式の構造とされている。
【0042】
第2実施形態のエアクリーナであっても、内フランジ式の構造とされた部分では、第1ケース21のケース壁211がより外側に配置されることになり、エアクリーナの容量が拡大される。
【0043】
また、本実施形態のエアクリーナのように、内フランジ式の構造とされた部分において、フランジの幅Wをシール部4の幅W0よりも大きくした部分を設けることが好ましい。特に、フランジの幅Wがシール部4の幅W0の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることが特に好ましい。幅Wが大きいと容量がより増やせる。また、フランジ部の幅Wは、
図4に示した実施形態のように、周方向にわたって一定の幅であってもよいが、
図5に示した第2実施形態のように、周方向にわたって幅が変化していてもよい。
このような構成とすれば、フィルタエレメントの形状の制約を受けやすいシール部の形状よりも、ケースの外側に向かって張り出すような形態でフランジ部212やケース壁211を設けることができ、エアクリーナの容量をより拡大できる。
【0044】
また、フランジ部の剛性を高めるとの観点からは、
図5に示した、第2実施形態のように、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、シール部が多角形状(限定されないが、特に矩形状)であり、フランジ部が内フランジ式の構造で設けられる区間が、平板状フィルタエレメントの延在方向に直交する方向に沿って見て、略コの字状となるように、すなわち、1つの辺の両端の角部を越えて隣の辺の少なくとも一部に達するように設けられていることが好ましい。すなわち、
図5の実施形態では、矩形状のフィルタエレメントを取り囲む上辺12b、右辺12a、下辺12cの3辺にわたる、略コの字状の区間において、内フランジ式の構造となっていて、その結果、右辺12aの両端(上端12dおよび下端12e)の角部を越えて隣の辺12b、12cの一部に達するように、内フランジ式構造の区間が設けられている。
【0045】
かかる構造とされていれば、右辺12aと上辺12bおよび下辺12cにおける、内フランジ式のコの字状断面のガイド壁213やケース壁211が筒状に連続して設けられることになり、ケース壁211とフランジ部212とガイド壁213とが、一体化されたシェル構造のように働いて、平板状フィルタエレメント3の延在方向に直交する方向に、フランジ部212が弾性変形してしまうことが、より効果的に抑制される。すなわち、フランジの剛性が効果的に高められる。
【0046】
また、上記第1実施形態のエアクリーナ10の説明においては、第1ケース1のフランジ部12が内フランジ式に設けられ、第2ケース2のフランジ部22が外フランジ式に設けられる例を示したが、第1ケース1および第2ケース2がともに、内フランジ式にフランジ部が設けられる実施形態としてもよい。第1ケース1または第2ケース2のいずれか一方において、フランジ部の全周にわたって、もしくは周方向の一部にわたって、内フランジ式にフランジ部やガイド壁が設けられるようにされていれば、容量増加の効果が得られる。また、上記第1実施形態のエアクリーナ10の説明においては、第1ケース1にインレット5が設けられ、第1ケース1の側がダストサイドである例について説明したが、クリーンサイド側のケースを第1ケースとみなしてもよい。
【0047】
上記実施形態の説明においては、エアクリーナの細部、例えば、ケースの開閉構造や、取り付け、固定構造等については、詳細な説明を省略したが、これらについては、従来技術における構造等を流用すればよい。
【0048】
また、上記実施形態のエアクリーナに、レゾネータなどの消音器を一体化して、いわゆるモジュール型のエアクリーナとしてもよい。また、エアクリーナには、適宜、空気流量センサや、燃料蒸気吸着フィルタ、ブローバイ通路などを設けることができる。
【0049】
上記実施形態のエアクリーナは、例示した内燃機関の吸気系以外の、他の技術分野にも応用できる。すなわち、エアクリーナは、内燃機関以外の機関や動力装置(例えば、ジェットエンジンや蒸気機関、燃料電池)などに供給される空気を濾過するためのエアクリーナであってもよく、バッテリー等を冷却するための冷却風を濾過するためのエアクリーナであってもよく、エアコンディショナーや換気装置を通過する空気を濾過するためのエアクリーナであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記実施形態のエアクリーナは、例えば内燃機関の吸気系に使用でき、スペース効率を改善できて産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0051】
10 エアクリーナ
1 第1ケース
1A ケース第1分割体
1B ケース第2分割体
11 ケース壁
12 フランジ部
13 ガイド壁
14 リブ
2 第2ケース
22 フランジ部
3 フィルタエレメント
31 ろ過材
32 枠体
4 シール部
8 ボルト