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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013369
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用リード端子
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
H01G9/008 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117506
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 弘和
(57)【要約】
【課題】 高い耐震性を備えながら電解コンデンサの静電容量を増大させる。
【解決手段】 電解コンデンサ用リード端子は、圧延部12及び棒状部18を有するタブ端子10と棒状部の一端部に溶接されたリード線20とを有する。圧延部は、その一端部が棒状部の他端部に接続された第1部分14aとその一端部が第1部分の他端部に接続された第2部分14bとその一端部が第2部分の他端部に接続された第3部分14cを有する。第1部分の幅方向及び棒状部の軸方向の双方に垂直であり且つ棒状部の軸線から離間する方向を特定方向と規定すると、第1部分は、棒状部の軸線から特定方向に偏心した位置からその軸線が棒状部の軸線と平行となるように延びており、第3部分は、その軸線が第1部分の軸線から特定方向に離間し且つその幅広面が第1部分の幅広面と平行となるように、その他端部が一端部に対して第1部分から離間する方向に延びている。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線の軸方向における一部が圧延された圧延部(12)と、前記金属線の他部により構成される棒状部(18)と、を有するタブ端子(10)と、
前記棒状部(18)の一端部に溶接されたリード線(20)と、
を備え、
前記圧延部(12)は、その一端部が前記棒状部(18)の他端部に接続された平板状の第1部分(14a)と、その一端部が前記第1部分の他端部に接続された第2部分(14b)と、その一端部が前記第2部分の他端部に接続された平板状の第3部分(14c)と、を有し、
前記第1部分(14a)の幅方向及び前記棒状部(18)の軸方向の双方に垂直であり且つ前記棒状部の軸線(A)から離間する方向を特定方向と規定すると、
前記第1部分(14a)は、前記棒状部(18)の前記軸線(A)から前記特定方向に所定の偏心距離(d1)だけ偏心した偏心位置から、その軸線(L1)が前記棒状部の前記軸線と平行となるように延びており、
前記第3部分(14c)は、その軸線(L3)が前記第1部分(14a)の軸線(L1)から前記特定方向に所定の離間距離(d2)だけ離間し且つその幅広面(Su,Sl)が前記第1部分(14a)の幅広面(Su,Sl)と平行となるように、その他端部が一端部に対して前記第1部分から離間する方向に延びており、
前記第2部分(14b)は、その一端側で前記第1部分(14a)に対して屈曲されているとともに、その他端側で前記第3部分(14c)に対して屈曲されている、
電解コンデンサ用リード端子。
【請求項2】
請求項1に記載の電解コンデンサ用リード端子であって、
前記圧延部(12)は、少なくとも前記第1部分(14a)の幅広面(Su,Sl)のうち前記軸線(A)に近いほうの幅広面(Su)上に、少なくとも前記第1部分と前記棒状部(18)の他端部とを接続するリブ(16)を更に有する、
電解コンデンサ用リード端子。
【請求項3】
請求項2に記載の電解コンデンサ用リード端子であって、
前記リブ(16)の厚みは、前記第1部分(14a)の前記一端部から前記他端部に向かって減少している、
電解コンデンサ用リード端子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の電解コンデンサ用リード端子であって、
前記第2部分(14b)は、前記一端側及び前記他端側が側面視においてそれぞれ円弧状となるように屈曲されている、
電解コンデンサ用リード端子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電解コンデンサ用リード端子であって、
前記第2部分(14b)のうち前記一端側で屈曲されている部分(14b1)及び前記他端側で屈曲されている部分(14b3)を除いた部分(14b2)は平板状であり、その軸線(L2)は前記特定方向に延びている、
電解コンデンサ用リード端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用リード端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電解コンデンサ用のリード端子が知られている。リード端子は、タブ端子と、リード線と、を備える。タブ端子は、金属線の軸方向における一部がプレス加工されることにより平板状に形成された圧延部と、当該金属線の他部により構成される棒状部と、を有する。リード線は金属製であり、棒状部の先端部に溶接されている。
【0003】
リード端子は、電解コンデンサの構成部品の1つである。電解コンデンサは、有底円筒状のケースと、コンデンサ素子と、一対のリード端子と、ケースの開口部を封閉する封口体と、を備える。コンデンサ素子は、一対の電極箔(陽極箔及び陰極箔)と、これらの電極箔間に設けられたセパレータと、を有する。コンデンサ素子は、各リード端子の圧延部を対応する電極箔に接続した状態で電極箔及びセパレータを筒状に巻回することにより形成され、その内部に電解質を保持している。コンデンサ素子は、ケースの内部に収容されている。封口体には一対の貫通孔が設けられている。コンデンサ素子の一端面から突出している一対のリード端子は、対応する貫通孔にそれぞれ挿通されている。具体的には、各リード端子は、棒状部が貫通孔の内部に位置し、リード線がケースの外部に位置するように貫通孔に挿通されている。
【0004】
近年、電解コンデンサを小型化するとともに静電容量を増大させる(大容量化する)技術の開発が進められている。電解コンデンサの静電容量は、コンデンサ素子の電極箔(厳密には、陽極箔)の表面積が大きくなるほど増大する。このため、電極箔の巻回量(別言すれば、ケース内部における電極箔の収容量)を増大させてその表面積を大きくするための様々な工夫が実施されている。
【0005】
例えば、電極箔を高い張力で巻回して単位容積当たりの巻回量を増大させることが行われている。また、コンデンサ素子をその平面視において真円に近い円筒形状に形成してケース内部との隙間を極力減らすことにより巻回量を増大させることが行われている。
【0006】
本願発明者は、電極箔の巻回量を更に増大させるために、コンデンサ素子の内部における一対のリード端子の圧延部間の距離を大きくすることを検討した。以下、具体的に説明する。図9A及び図9Bは、従来のリード端子101を示し、図10は、リード端子101を用いて形成された電解コンデンサ200の縦断面図を示す。但し、図10では、図の見易さを考慮してリード端子101は側面図として図示している(後述する図8図11A及び図11Bについても同様とする。)。図9A及び図9Bに示すように、リード端子101は、圧延部112及び棒状部18を有するタブ端子110と、リード線20と、を備える。圧延部112の幅方向(左右方向)及び厚み方向(上下方向)の中心を通過する線を圧延部112の中心線と規定すると、タブ端子110は、圧延部112の中心線が、棒状部118の軸線及びリード線20の軸線と一致するように形成されている。別言すれば、圧延部112は、棒状部18の前端部の中心から前方に延びている。
【0007】
図10に示すように、一対のリード端子101は、コンデンサ素子104の内部において、コンデンサ素子104の軸線から径外方向に等距離の位置に、圧延部112の幅広面同士が対向するように配置される。図10から明らかなように、対向する圧延部112間の距離(即ち、圧延部112の厚み方向の中心間距離)は、封口体106の貫通孔106aの中心間距離に略等しい。ここで、貫通孔106aの中心間距離はケース102の内部径と比べて小さい。このため、コンデンサ素子104のうち、「対向する圧延部112の間に配置されることになる部分を構成する電極箔及びセパレータ」の巻回方法に種々の制約が生じ、その結果、「圧延部112」と「電極箔及びセパレータ」との間に比較的に大きな隙間が形成されてしまい、電極箔の巻回量の増大を阻む要因となっていた。
【0008】
本願発明者は、この点に着目し、従来のリード端子101よりも圧延部間の距離が大きくされたリード端子を用いて電解コンデンサを形成することを検討した。図11Aは、そのようなリード端子201を用いて形成された電解コンデンサ300の縦断面図を示し、図11Bは、図11Aの領域Rの部分拡大図を示す。図11Aに示すように、リード端子201は、圧延部212及び棒状部18を有するタブ端子210と、リード線20と、を備える。圧延部212は、その後端側の一部が棒状部18の前端部の中心から前方に延びている点ではリード端子101と類似しているが、圧延部212の一部が2か所において屈曲されている点でリード端子101と相違している。
【0009】
即ち、図11Bに示すように、圧延部212は、棒状部18との境界位置である位置P101から前方に所定の距離だけ離間した位置P102において略直角に屈曲されているとともに、位置P102から所定の距離dcだけ離間した位置P103において前方に略直角に屈曲されている。圧延部212のうち、「位置P101から位置P102までの部分」、「位置P102から位置P103までの部分」及び「位置P103から前端部(図11A参照)までの部分」をそれぞれ「部分212a」、「部分212b」及び「部分212c」と規定すると、部分212cは部分212aと平行であり、且つ、部分212bは部分212a及び部分212cと直交している。なお、距離dcは、部分212aの厚み方向の中心と部分212cの厚み方向の中心との間の距離に等しい。図11A及び図11Bに示すように、リード端子201は、コンデンサ素子204の内部において部分212cが部分212aに対して径外方向に離間するように配置される。これにより、対向する部分212c間の距離は、従来の圧延部間距離(図10参照)と比較して2dcだけ大きくなる。なお、圧延部212のうち、部分212cがコンデンサ素子204の内部に配置され、部分212a及び部分212bは封口体106とコンデンサ素子204との間の空間に配置されている(厳密には、部分212cの後端側の一部はコンデンサ素子204の外部に位置している。)。
【0010】
ここで、リード端子201のように圧延部212が2か所において屈曲された形状を有するリード端子は、特許文献1に記載されている(特許文献1の図5参照)。しかしながら、特許文献1の電解コンデンサに上記形状を有するリード端子が用いられた理由は本願とは全く異なっている。
【0011】
即ち、特許文献1では、コンデンサ素子を形成する際、電極箔及びセパレータを巻回する条件によってはコンデンサ素子から導出されるリード端子の位置にばらつきが生じ、リード端子を封口体の貫通孔に適切に位置合わせできない場合がある。このような場合にリード端子を貫通孔に無理に挿通すると、ケースの内部にてコンデンサ素子が傾いて封口体がケースの開口部から飛び出したり、コンデンサ素子に外力が加わることに起因して電極箔とリード端子との接続部の接触抵抗が増大したりするなどして、電解コンデンサとしての特性が劣化するという問題があった。そこで、特許文献1では、リード端子の圧延部を屈曲させることによりコンデンサ素子から導出されるリード端子の位置が封口体の貫通孔の位置と一致するようにして上記問題の解決を図っている。なお、特許文献1では、「コンデンサ素子」、「セパレータ」、「リード端子」、「ケース」及び「圧延部」は、それぞれ「コンデンサユニット」、「スペーサ」、「リード」、「容器」及び「扁平部」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭52-68964号公報
【発明の概要】
【0013】
本願発明者は、電解コンデンサ300の構成によれば、対向する部分212cの間に配置されることになるコンデンサ素子204の電極箔及びセパレータの巻回方法の自由度が大幅に向上するため、「部分212c」と「電極箔及びセパレータ」との間に形成される隙間を大きく減少させることができ、電極箔の巻回量を好適に増大できると考えた。
【0014】
しかしながら、検討の結果、上記構成によればリード端子201が破断し易くなる可能性があるとの結論を得た。即ち、振動が頻発する環境下にて電解コンデンサ300が使用されると、振動に伴いコンデンサ素子204がケース102の内部で振動する。ここで、リード端子201は、棒状部18の部分において封口体106に固定されているため、コンデンサ素子204の振動に起因したモーメントが圧延部212の部分212bに作用するが、特に位置P103には最大のモーメントが作用することになる。その結果、圧延部212が位置P103において破断し易くなり、電解コンデンサ300の耐震性が低下する可能性がある。
【0015】
本発明は、上述した問題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、高い耐震性を備えながら電解コンデンサの静電容量を増大させることが可能な電解コンデンサ用リード端子を提供することにある。
【0016】
本発明による電解コンデンサ用リード端子は、
金属線の軸方向における一部が圧延された圧延部(12)と、前記金属線の他部により構成される棒状部(18)と、を有するタブ端子(10)と、
前記棒状部(18)の一端部に溶接されたリード線(20)と、
を備える。
前記圧延部(12)は、その一端部が前記棒状部(18)の他端部に接続された平板状の第1部分(14a)と、その一端部が前記第1部分の他端部に接続された第2部分(14b)と、その一端部が前記第2部分の他端部に接続された平板状の第3部分(14c)と、を有し、
前記第1部分(14a)の幅方向及び前記棒状部(18)の軸方向の双方に垂直であり且つ前記棒状部の軸線(A)から離間する方向を特定方向と規定すると、
前記第1部分(14a)は、前記棒状部(18)の前記軸線(A)から前記特定方向に所定の偏心距離(d1)だけ偏心した偏心位置から、その軸線(L1)が前記棒状部の前記軸線と平行となるように延びており、
前記第3部分(14c)は、その軸線(L3)が前記第1部分(14a)の軸線(L1)から前記特定方向に所定の離間距離(d2)だけ離間し且つその幅広面(Su,Sl)が前記第1部分(14a)の幅広面(Su,Sl)と平行となるように、その他端部が一端部に対して前記第1部分から離間する方向に延びており、
前記第2部分(14b)は、その一端側で前記第1部分(14a)に対して屈曲されているとともに、その他端側で前記第3部分(14c)に対して屈曲されている。
【0017】
本発明によれば、高い耐震性を備えながら電解コンデンサの静電容量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る電解コンデンサ用リード端子(以下、単に「リード端子」とも称する。)の斜視図である。
図2図1のリード端子の平面図である。
図3図1のリード端子の側面図である。
図4図1のリード端子の底面図である。
図5図1のリード端子の部分拡大図である。
図6図2のリード端子の部分拡大図である。
図7図3のリード端子の部分拡大図である。
図8図1のリード端子を用いて形成された電解コンデンサの縦断面図である。
図9A】比較例としての電解コンデンサ用リード端子の平面図である。
図9B図9Aのリード端子の側面図である。
図10図9Aのリード端子を用いて形成された電解コンデンサの縦断面図である。
図11A】別の比較例としての電解コンデンサ用リード端子を用いて形成された電解コンデンサの縦断面図である。
図11B図11Aの領域Rの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図7を参照して、本発明の一実施形態に係るリード端子1について説明する。リード端子1は、電解コンデンサ100(後述)の構成部品の1つである。図1乃至図4は、それぞれ、リード端子1の斜視図、平面図、側面図、及び、底面図である。図5乃至図7は、それぞれ、図1乃至図3のリード端子1の部分拡大図である。
【0020】
図1乃至図4に示すように、リード端子1は、前後方向に延びる長尺部材であり、タブ端子10と、リード線20と、溶接部22と、を備える。タブ端子10は、圧延部12と、棒状部18と、を備える。
【0021】
タブ端子10は、軸方向(前後方向)に亘って同一の径を有する所定長さの金属線から形成される。この金属線は、アルミニウム線の外表面全体を一次化成処理(ホウ酸及びアジピン酸等を含む化成液に浸漬する処理)により一次化成被膜(酸化被膜)で被覆し、その後、一次化成処理が施されたアルミニウム線を所定長さに切断することにより形成される。圧延部12は、金属線の軸方向における一部をプレス加工により圧延するとともに、その外周を切断する切断加工を行うことにより形成された部分である(形状については後述)。棒状部18は、金属線のうちプレス加工及び切断加工が行われずに残存している部分(即ち、金属線の他部により構成される部分)であり、金属線と同一の径を有する円柱である。棒状部18の軸線は前後方向に延びている。圧延部12は棒状部18の前端部(他端部)に接続されており、両者の境界位置は位置P1である。
【0022】
リード線20は、棒状部18の後端部(一端部)に溶接により接続されている。リード線20は、その外周面全体がスズめっきされたCP線(銅被覆鋼線)である。リード線20は、棒状部18よりも小径であり、その軸線は棒状部18の軸線と同軸である。なお、リード線20はCP線に限られず、例えばCu線(銅線)であってもよい。また、CP線又はCu線は、スズの代わりに、例えば鉛フリーはんだでめっきされていてもよい。
【0023】
溶接部22は、棒状部18とリード線20との間に形成されている。溶接部22は略半球状であり、棒状部18との境界位置において棒状部18と同一の径を有し、後方に向かうにつれて縮径している。
【0024】
圧延部12は、薄板部14と、リブ16と、を備える。薄板部14は、上面Suと、下面Slと、を有する。図5乃至図7に示すように、薄板部14は、平板状の第1部分14aと、平板状の第3部分14cと、第1部分14aと第3部分14cとを接続する第2部分14bと、を有する。
【0025】
第1部分14aは、薄板部14のうち位置P1から位置P2までの部分である。第1部分14aの後端部(一端部)は、位置P1において棒状部18の前端部(他端部)に接続されている。第1部分14aの幅方向及び厚み方向の中心を通過する線を「中心線L1」と規定すると、中心線L1は、平面視(図6参照)において棒状部18の軸線Aと一致している。別言すれば、第1部分14aは、平面視(図6参照)において軸線Aに関して左右対称となっている。第1部分14aの幅(左右方向の長さ)は、位置P1において棒状部18の径と同一であり、前方に向かうにつれて所定の幅となるまで増大し、所定の幅となった位置から位置P2までの部分においては前後方向に亘って略一定である。また、中心線L1は、側面視(図7参照)において、軸線Aから下方に距離d1だけ離間した位置から前後方向に延びている。即ち、第1部分14aは、棒状部18の前端部の中心から下方に所定の距離d1だけ偏心した偏心位置から前方に(即ち、中心線L1が軸線Aと平行となるように)延びている。なお、中心線L1は、「第1部分14aの軸線」の一例に相当する。
【0026】
なお、本実施形態では、「第1部分14aが棒状部18の前端部の中心から偏心している」とは、第1部分14aが軸線Aからその厚み方向に離間(偏心)していることを意味する。なお、第1部分14aの厚みが不均一であるなどして厚み方向が一義的に定まらない場合、「第1部分14aが棒状部18の前端部の中心から偏心している」とは、第1部分14aが、軸線Aから「第1部分14aの幅方向及び棒状部18の軸方向の双方に垂直な方向」に離間(偏心)していることを意味する。以下では、「第1部分14aの幅方向及び棒状部18の軸方向の双方に垂直であり且つ軸線Aから離間する方向」を「特定方向」と規定する。この規定によれば、「第1部分14aが棒状部18の前端部の中心から偏心している」とは、「第1部分14aが軸線Aから特定方向に偏心している」ことと同義である。本実施形態では、「下方」が特定方向の一例に相当する。以下では、距離d1を「偏心距離d1」とも称する。偏心距離d1は、側面視(図7参照)において、第1部分14aの下面Slが棒状部18の下端と略同一の高さとなるように予め設定されている。別言すれば、第1部分14aは、側面視においてその下面Slが棒状部18の下端から下方に突出しない範囲において、偏心距離d1が最大となるように偏心されている。
【0027】
第2部分14bは、薄板部14のうち位置P2から位置P3までの部分である。第2部分14bの後端部(一端部)は、位置P2において第1部分14aの前端部(他端部)に接続されている。第2部分14bの幅方向及び厚み方向の中心を通過する線を「中心線L2」と規定すると、中心線L2は、平面視(図6参照)において棒状部18の軸線Aと一致している。別言すれば、第2部分14bは、平面視(図6参照)において軸線Aに関して左右対称となっている。第2部分14bの幅は、前後方向に亘って略一定である。
【0028】
第2部分14bは、更に、部分14b1と、部分14b2と、部分14b3と、を有する。側面視(図7参照)において、部分14b1及び部分14b3は、それぞれ90°の中心角を有する円弧状に屈曲されている。より詳細には、部分14b1は、下面Slが上面Suに対して内周側となるような方向に屈曲されており、部分14b3は、上面Suが下面Slに対して内周側となるような方向に屈曲されている。部分14b2は平板状であり、部分14b1と部分14b3とを接続している。側面視(図7参照)すると明らかなように、部分14b2の中心線L2は、部分14b1から部分14b3に向かって下方(即ち、特定方向)に延びている。なお、部分14b2の中心線L2は、「部分14b2の軸線」の一例に相当する。
【0029】
上記の説明から明らかなように、中心線L2は、中心線L1と同一平面上(本実施形態では、前後方向及び上下方向に拡がる平面上)に位置している。
【0030】
第3部分14cは、薄板部14のうち位置P3からその前端部までの部分である。第3部分14cの後端部(一端部)は、位置P3において第2部分14bの前端部(他端部)に接続されている。第3部分14cの幅方向及び厚み方向の中心を通過する線を「中心線L3」と規定すると、中心線L3は、平面視(図6参照)において棒状部18の軸線Aと一致している。別言すれば、第3部分14cは、平面視(図6参照)において軸線Aに関して左右対称となっている。第3部分14cの幅は、前後方向に亘って略一定である。また、第2部分14bの部分14b1及び部分14b3が中心角90°の円弧状に屈曲されていることから明らかなように、第3部分14cは、第1部分14aと平行である(図7参照)。別言すれば、中心線L3は中心線L1と平行であり、第3部分14cの上面Su及び下面Slは、第1部分14aの上面Su及び下面Slとそれぞれ平行である。また、第3部分14cは、その前端部が後端部に対して第1部分14aから離間する方向に延びている。なお、中心線L3は、「第3部分14cの軸線」の一例に相当する。
【0031】
より詳細には、第3部分14cは、第1部分14aから下方(即ち、特定方向)に所定の距離d2だけ離間している(図7参照)。即ち、中心線L3は、中心線L1から下方に距離d2だけ離間している。以下では、距離d2を「離間距離d2」とも称する。離間距離d2は、第2部分14bの部分14b1及び部分14b3の各曲率並びに部分14b2の長さを制御することにより所望の値に設定され得る。なお、部分14b1及び部分14b3の各曲率は必ずしも同一でなくてもよい。
【0032】
上記の説明から明らかなように、中心線L3は、中心線L1及び中心線L2と同一平面上に位置している。
【0033】
なお、本実施形態では、第2部分14bの部分14b2は、部分14b1及び部分14b3が側面視においてそれぞれ中心角90°の円弧状に屈曲されることにより、下方に延びるように形成されているが、部分14b2の延在方向(即ち、中心線L2の延在方向)はこれに限られない。部分14b2は、第3部分14cと第1部分14aとの平行関係が維持される(即ち、中心線L3と棒状部18の軸線Aとの平行関係が維持される)限りにおいて、下方以外の方向に延在してもよい。即ち、「部分14b1における円弧の中心角」と「部分14b3における円弧の中心角」との和が180°に保たれる限り、部分14b2の延在方向は問わない。
【0034】
また、部分14b1及び部分14b3の側面視における屈曲形状は、円弧状に限られない。例えば、円弧以外の曲線状に屈曲されてもよいし、1又は複数の折り目をつけて屈曲されてもよい。即ち、第2部分14bは、部分14b1において第1部分14aに対して屈曲されているとともに、部分14b3において第3部分14cに対して屈曲されていれば、側面視におけるそれらの屈曲形状は問わない。また、部分14b1と部分14b3とを直接つなげることにより部分14b2を省略した構成が採用されてもよい。
【0035】
リブ16は、棒状部18との接続部分における薄板部14を補強するための部分である。リブ16は、薄板部14(厳密には、第1部分14aと、第2部分14bの部分14b1)の上面Su(即ち、棒状部18の軸線Aに近いほうの面)上に設けられ、薄板部14と棒状部18の前端部とを接続している。リブ16は、圧延部12を形成するためのプレス加工により形成される。リブ16は、平面視(図6参照)において左右対称な略台形形状を呈しており、その対称軸は棒状部18の軸線Aと幅方向において一致する。また、リブ16は、側面視(図7参照)において略三角形形状を呈している。
【0036】
リブ16は、面16aと、面16bと、面16cと、を有する。面16aは平坦であり、側面視(図7参照)においてリブ16の厚みが前方に向かうにつれて小さくなるように傾斜している。面16aの後方の外郭は左右対称に湾曲しており、その後端部は位置P1に位置している(図6参照)。面16aの前方の外郭は左右方向に直線状に延びており、第2部分14b(より詳細には、部分14b1)に接続されている。平面視(図6参照)における面16aの前後方向の長さはリード端子1の種類及び/又は用途に応じて決まっている。なお、面16aは、平坦面に限られず、上方又は下方に凸の曲面であってもよい。
【0037】
面16bは平坦であり、リブ16の右側の側面を構成している。面16bは、面16aと、薄板部14の上面Suと、を接続している(図5参照)。面16cは平坦であり、リブ16の左側の側面を構成している。面16cは、面16aと、薄板部14の上面Suと、を接続している(図5参照)。面16bと面16cは合同である。
【0038】
リード線端子1を製造する際は、まず、金属線とリード線20とを溶接し、次に、金属線をプレス加工及び切断加工してタブ端子10を形成する。圧延部12の上述した立体的な形状は、単一の工程(即ち、一度のプレス加工)により形成される。このため、圧延部12を複数の工程(典型的には、金属線の軸方向における一部を平板状にプレス加工してから屈曲加工を施すという工程)により形成する製造方法と比較して、薄板部14の第2部分14bの寸法誤差を低減でき、結果として、離間距離d2及びリード端子1の全長等の寸法誤差を低減できる。なお、金属線をプレス加工及び切断加工してタブ端子10を形成してから、棒状部18とリード線20とを溶接してもよい。ここで、金属線をプレス加工すると、その外周面に形成された一次化成被膜に亀裂が生じる。このため、圧延部12の外表面の一次化成被膜には複数の亀裂が生じている。そこで、これらの亀裂を修復するために、タブ端子10の形成後、圧延部12の所定の領域を二次化成被膜(酸化被膜)で被覆する二次化成処理が施される。二次化成処理には複数の種類があるが、本実施形態ではその種類は問わない。これらの二次化成処理は何れも周知であるため、それらの詳細な説明は省略する(詳細については、例えば、特開2000-340475号公報及び特開昭58-223310号公報を参照)。
【0039】
ここで、二次化成処理の種類によっては、圧延部12の一部にしか二次化成被膜が形成されず、圧延部12の他部においては一次化成被膜の亀裂が修復されない場合がある。この場合、圧延部12の他部を含む所定の領域を樹脂層で被覆する樹脂コーティング処理が実施されてもよい。なお、コンデンサ素子が保持する電解質が液体電解質又はハイブリッドタイプの電解質の場合、一次化成被膜に生じた亀裂が電解質により修復されることがある(いわゆる自己修復)。この場合、樹脂コーティング処理は必ずしも行う必要はない。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係るリード端子1は、薄板部14の第1部分14aが棒状部18の軸線Aから特定方向に偏心しており、且つ、第3部分14cが第1部分14aから特定方向に離間していることを特徴としている。この構成によれば、高い耐震性を備えながら電解コンデンサの静電容量を増大させることが可能となる。
【0041】
図8図11A及び図11Bを参照して具体的に説明する。図8は、リード端子1を用いて形成された電解コンデンサ100の縦断面図を示す。図8に示すように、リード端子1は、コンデンサ素子204の内部において第3部分14cが第1部分14aに対して径外方向に離間するように(即ち、特定方向が径外方向に一致するように)配置される。一方、図11Aは、比較例としてのリード端子201を用いて形成された電解コンデンサ300の縦断面図を示し、図11Bは、図11Aの領域Rの部分拡大図を示す。上述したように、リード端子201の圧延部212の部分212a(図11B参照)は偏心しておらず、部分212cは部分212aから径外方向に離間距離dcだけ離間している。
【0042】
リード端子1の偏心距離d1及び離間距離d2と、リード端子201の離間距離dcと、の間には、d1+d2=dcの関係が成立している。これにより、一対のリード端子1の対向する圧延部12(厳密には、第3部分14c)間の距離は、一対のリード端子201の対向する圧延部212(厳密には、部分212c)間の距離と同等となり、従来の圧延部間距離(図10参照)と比較して2(d1+d2)だけ大きくできる。このため、対向する第3部分14cの間に配置されることになるコンデンサ素子204の電極箔及びセパレータの巻回方法の自由度が大幅に向上するので、「第3部分14c」と「電極箔及びセパレータ」との間に形成される隙間を大きく減少させることができ、限られた空間を有するケース102の内部において電極箔の巻回量を好適に増大できる。
【0043】
また、d1+d2=dcが成立しているため、離間距離d2を離間距離dcに比べて偏心距離d1だけ低減させても、圧延部12間の距離を圧延部212間の距離と同等に保つことができる。即ち、離間距離d2を小さくしながら圧延部12間の距離を従来の圧延部間距離(図10参照)よりも格段に大きくできる。その結果、振動が頻発する環境下にて電解コンデンサ100が使用されてコンデンサ素子204が振動した場合であっても、圧延部12の第2部分14bの部分14b3(図5及び図7参照)に過大なモーメントが作用することを抑制でき、圧延部12が破断し難くなる。以上より、本実施形態に係るリード端子1によれば、高い耐震性を備えながら電解コンデンサ100の静電容量を増大させることが可能となる。
【0044】
なお、偏心距離d1を大きくするほど離間距離d2を小さくしても圧延部12間の距離を大きくできるため、偏心距離d1を大きくすることにより、より高い耐震性を備えたリード端子1を実現できる。
【0045】
また、圧延部12の第1部分14aが偏心していることにより、棒状部18の前端部においてリブ16を配置できる面積が増大するため、リブ16の寸法を従来よりも大きくできる。その結果、棒状部18との接続部分における薄板部14をより確実に補強でき、リード端子1の耐久性が向上する。
【0046】
更に、圧延部12の第2部分14bの部分14b1及び部分14b3が側面視において円弧状となるように屈曲されていることにより、部分14b1及び部分14b3(特に、部分14b3)に作用する負荷を分散させることができ、これらの部分において圧延部12が破断してしまう可能性を更に低減できる。
【0047】
また、圧延部12の第2部分14bの部分14b2が下方(特定方向)に延在するように形成されることにより、離間距離d2及びリード端子1の全長等の寸法誤差を低減できる。
【0048】
以上、本実施形態に係るリード端子について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、圧延部12は、平面視において棒状部18の軸線Aに関して左右対称でなくてもよい。圧延部12は、第1部分14aが棒状部18の軸線Aから特定方向に偏心しており、且つ、第3部分14cが第1部分14aから特定方向に離間するように形成されていれば、実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、リブ16は形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,101,201:リード端子、10,110,210:タブ端子、12,112,212:圧延部、14:薄板部、14a:第1部分、14b:第2部分、14b1,14b2,14b3:部分、14c:第3部分、16:リブ、18:棒状部、20:リード線、22:溶接部、100,200,300:電解コンデンサ、102:ケース、104,204:コンデンサ素子、106:封口体、106a:貫通孔、212a,212b,212c:部分

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B