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  • -着色層付偏光板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133694
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】着色層付偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038814
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 大山
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149FA61
2H149FC01
2H149FD20
2H149FD33
2H149FD35
(57)【要約】
【課題】偏光板に着色層が積層された着色層付偏光板の新たな製造方法を提供する。
【解決手段】着色層付偏光板の製造方法であって、せん断弾性率が10GPa以上である支持体と、粘着剤層と、偏光板と、着色層形成用組成物の塗布層と、をこの順に有する積層体を準備する工程、前記着色層形成用組成物の塗布層を硬化させる工程、及び前記粘着剤層及び前記支持体を前記積層体から剥離する工程、をこの順に有する、製造方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色層付偏光板の製造方法であって、
せん断弾性率が10GPa以上である支持体と、粘着剤層と、偏光板と、着色層形成用組成物の塗布層と、をこの順に有する積層体を準備する工程、
前記着色層形成用組成物の塗布層を硬化させる工程、及び
前記粘着剤層及び前記支持体を前記積層体から剥離する工程、
をこの順に有する、製造方法。
【請求項2】
前記積層体を準備する工程において、前記偏光板の一面に前記粘着剤層を介して前記支持体を貼合する工程及び前記偏光板の他面に前記着色層形成用組成物を塗布する工程をこの順に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記粘着剤層は、温度0℃における前記偏光板に対する180°剥離力が温度70℃における偏光板に対する180°剥離力よりも小さい、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記粘着剤層は、温度5℃におけるポリイミド試験板に対する180°剥離力が0.15N/25mm未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記粘着剤層は、温度50℃におけるポリイミド試験板に対する180°剥離力が0.30N/25mm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記粘着剤層及び前記支持体を前記積層体から剥離する工程において、前記積層体を温度0℃未満に冷却する操作を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記塗布層を硬化させる工程において、温度0℃以上で前記塗布層を乾燥させる操作を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記着色層は、前記偏光板の周縁部の全周に設けられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記着色層形成用組成物の粘度は15000cP以上30000cPである、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色層付偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の画像表示装置には、タッチパネルが搭載されることが多い。タッチパネルは通常、透明基板と、基板の端をつないで形成されるパッドの電極部とから構成される。画像表示装置を使用する際にタッチパネルの端のパッドの電極部等が視認されないようにするために、画像表示装置の周縁部に着色層を設けることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-064160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着色層を偏光板上に設けた場合、着色層の形成工程において偏光板が変形するという問題があった。本発明は、偏光板に着色層が積層された着色層付偏光板の新たな製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に例示する項目に関する。
[1] 着色層付偏光板の製造方法であって、
せん断弾性率が10GPa以上である支持体と、粘着剤層と、偏光板と、着色層形成用組成物の塗布層と、をこの順に有する積層体を準備する工程、
前記着色層形成用組成物の塗布層を硬化させる工程、及び
前記粘着剤層及び前記支持体を前記積層体から剥離する工程、
をこの順に有する、製造方法。
[2] 前記積層体を準備する工程において、前記偏光板の一面に前記粘着剤層を介して前記支持体を貼合する工程及び前記偏光板の他面に前記着色層形成用組成物を塗布する工程をこの順に含む、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記粘着剤層は、温度0℃における前記偏光板に対する180°剥離力が温度70℃における偏光板に対する180°剥離力よりも小さい、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 前記粘着剤層は、温度5℃におけるポリイミド試験板に対する180°剥離力が0.15N/25mm未満である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記粘着剤層は、温度50℃におけるポリイミド試験板に対する180°剥離力が0.30N/25mm以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記粘着剤層及び前記支持体を前記積層体から剥離する工程において、前記積層体を温度0℃未満に冷却する操作を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記塗布層を硬化させる工程において、温度0℃以上で前記塗布層を乾燥させる操作を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記着色層は、前記偏光板の周縁部の全周に設けられる、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記着色層形成用組成物の粘度は15000cP以上30000cPである、[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着色層付偏光板の新たな製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る着色層付偏光板の製造方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解しやすくするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0009】
本発明に係る着色層付偏光板の製造方法は、
せん断弾性率が10GPa以上である支持体と、粘着剤層と、偏光板と、着色層形成用組成物の塗布層と、をこの順に有する積層体を準備する工程、
前記着色層形成用組成物の塗布層を硬化させる工程、及び
前記粘着剤層及び前記支持体を前記積層体から剥離する工程、
をこの順に有する。
【0010】
着色層を形成する工程において、着色層形成用組成物を硬化させるために熱処理が行われることがある。このとき、着色層形成用組成物を塗布した偏光板は変形してしまうことがあった。特に偏光板に含まれる偏光子が延伸した偏光子である場合には、加熱によって偏光板がカールしやすいという問題があった。本発明に係る製造方法においては、せん断弾性率が10GPa以上である支持体に偏光板が積層され、この積層体に対して着色層形成用組成物の塗布層を硬化させる操作を行うことで、偏光板の変形を抑制することができる。本発明によれば、カールが抑制された着色層付偏光板を得ることができる。
【0011】
支持体と粘着剤層と偏光板と着色層形成用組成物の塗布層とをこの順に有する積層体を準備する工程について説明する。この工程においては、各層の積層順は特に限定されず、支持体上に粘着剤層を介して偏光板を積層したあとに着色層形成用組成物の塗布層を偏光板に設けてもよく、着色層形成用組成物の塗布層を偏光板に設けたあとに偏光板を支持体上に積層してもよい。積層体を準備する工程は、偏光板の一面に粘着剤層を介して支持体を貼合する工程及び偏光板の他面に着色層形成用組成物を塗布する工程をこの順に含むことが好ましい。この方法によれば、着色層形成用組成物の粘度が低い場合であっても、上記積層体を容易に得ることができる。支持体と粘着剤層と偏光板と着色層形成用組成物の塗布層とは、この順に直接接していてもよい。
【0012】
[1]支持体
支持体は、変形しにくい支持体であればよく、好ましくは温度変化によっても変形が少ない支持体である。支持体のせん断弾性率は10GPa以上であり、100GPa以下であってよく、20GPa以上、30GPa以上または40GPa以上であってよい。
【0013】
支持体の厚みは、上述のせん断弾性率となるように適宜設定することができるが、例えば20μm以上2000μm以下であってよく、50μm以上、70μm以上、100μm以上、200μm以上又は500μm以上であってよく、1000μm以下であってよい。
【0014】
支持体は、着色層形成後の偏光板からは剥離されるため、材質及び光透過性は特に限定されない。また、支持体は1層のみから構成されてよく、2層以上から構成されてもよい。支持体としては、ガラス板または樹脂板であってよく、ガラス板と樹脂板とが積層されていてもよい。支持体は、樹脂フィルムにハードコート層などを設けたり、添加剤を含んで強度を向上させてもよい。支持体に用いられる樹脂としては、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミド等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上混合して用いることができる。支持体が樹脂を含む場合、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミド又はポリアミドイミドを含む。
【0015】
[2]粘着剤層
粘着剤層は、支持体と偏光板とを貼合する。粘着剤層は、着色層形成用組成物の塗布層を形成する工程では剥離力が高く、着色層の形成後に支持体を偏光板から剥離する工程では剥離力が小さい性質を有することが好ましい。このような粘着剤層としては、温度感受性の粘着剤層を利用することができる。粘着剤層は、好ましくは室温(25℃)以上で剥離力が高く、0℃未満に冷却すると剥離力が低下する。
【0016】
粘着剤層の好ましい一例は、温度0℃における偏光板に対する180°剥離力が温度70℃における偏光板に対する180°剥離力よりも小さい粘着剤層である。粘着剤層は、好ましくは偏光板に対する180°剥離力が支持体に対する180°剥離力よりも小さい。粘着剤層は、温度5℃におけるポリイミド試験板に対する180°剥離力が好ましくは0.15N/25mm未満であり、より好ましくは0.1N/25mm未満であり、さらに好ましくは0.05N/25mm未満である。粘着剤層は、温度50℃におけるポリイミド試験板に対する180°剥離力が好ましくは0.30N/25mm以上であり、より好ましくは1.0N/25mm以上であり、さらに好ましくは3.0N/25mm以上である。180°剥離力は、JIS Z 0237:2009に従って測定することができる。
【0017】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であってよく、3μm以上、10μm以上又は20μm以上であってよく、50μm以下又は40μm以下であってもよい。粘着剤層の厚みは最大厚みとする。
【0018】
支持体と粘着剤層と偏光板とを積層する工程においては、支持体に粘着剤層を貼り付けたあとに偏光板を貼合してもよく、偏光板に粘着剤層を貼りつけたあとに支持体を貼合してもよい。粘着剤層は、あらかじめ離型フィルム等の間に粘着剤を塗工して形成した粘着剤層を支持体又は偏光板に貼付してもよく、支持体に粘着剤を塗布して支持体上に粘着剤層を直接積層してもよい。粘着剤層を介して貼合される対向面は、予めコロナ処理、プラズマ処理等を行ってもよく、行っていなくてもよく、また、プライマー層等を有していてもよく、有していなくてもよい。粘着剤層の塗工方法は特に限定されず、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなどの公知の塗工方式が利用できる。
【0019】
温度感受性の粘着剤層は、加熱により膨張および/または発泡し得る熱膨張剤と粘着剤ポリマーとを含有する層、加熱によりガラス結晶化する成分と粘着剤ポリマーとを有する層、加熱により融解して粘着剤の凝集力を低下せしめることにより粘着力を低下させる結晶性成分と粘着剤ポリマーとを含む組成物から形成された層、加熱により架橋反応ないし硬化反応を生ずる粘着力を低下させる成分と粘着剤ポリマーとを有する層、加熱により相分離を引き起こし粘着力低下させる成分と粘着剤ポリマーとを含有する層等が挙げられる。ここでいう粘着力とは、被着物(光学フィルムなど)を粘着剤層ごと基板(ガラスなど)から剥がすときの力をいう。粘着剤ポリマーとしては、粘着力低下させる成分の特性を阻害しない限り限定されず、例えば、天然ゴム、各種合成ゴム、アクリル系、ビニルアルキルエーテル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリアミド系、ウレタン系やスチレン・ジエンブロック共重合体系などのポリマーを例示できる。特に、長期保存安定性や設計の自由度が高いという点よりアクリル系ポリマーを好適に用いることができる。
【0020】
粘着剤層としては、例えば、いずれもニッタ株式会社製の「CS2325NA3」「CS2325NA4」、「CS2325NA2」、「CS5040C02」、「CS5040C05」、「CS5040C08」、「CS5010C25」、「CS5010C80」が挙げられる。
【0021】
[3]着色層形成用組成物の塗布層
着色層形成用組成物は、硬化させることにより着色層を形成することができる。着色層は、偏光板の周縁部の少なくとも一部に設けられ、好ましくは周縁部の全周に設けられる。偏光板の周縁部の全体に着色層が設けられているとき、偏光板を画像表示装置に用いた際に、着色層が額縁のように視認されることからデザイン性を向上させることができる。
【0022】
積層体の一部に設けらる着色層により生じる段差を小さくし、その後の光学積層体の貼合工程において気泡の発生を抑制する観点からは、着色層の厚みは好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。着色層の厚みは、例えば0.5μm以上であってよく、光学密度を高める観点から好ましくは0.7μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上である。着色層がテーパー部を有する場合、着色層の厚みは、着色層の最大厚みであることができる。
【0023】
着色層の光学密度は、例えば2.0以上であってよく、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上、特に好ましくは3.5以上である。光学密度は、例えば、光学密度測定器(製品名:361T、X-rite社製)で測定することができる。具体的には、まず、基材上に着色層を形成したサンプルを測定器にセットし、着色層の上部に配置された光源を点灯する。次いで、サンプルの着色層に焦点を合わせ、上部の光源を消灯する。サンプルの基材側に位置する測定用の光源を点灯し、着色層を測定領域として光学密度を測定する。光学密度は、着色層への入射光の強さをIとし、着色層を通った後の透過光の強さをIとしたとき、下記式:
光学密度=log10[I/I]
に従って計算することができる。
【0024】
着色層の形状及び色は限定されることはなく、画像表示装置の用途やデザインに応じて適宜選択し得る。着色層形成用組成物は、着色剤を含む。着色層は単層から形成されていてもよいし、複数の層から形成されていてもよい。着色層が複数の層から形成されている場合は、複数の層の内、少なくとも一つの層は着色剤を含む着色剤含有層であり、残りの層は着色剤を含んでいても、着色剤を含んでいなくてもよい。着色層は、着色剤を含む着色剤含有層の下側に、遮光性の高い着色剤含有層、又は密着性を向上させる下地層等を有してもよい。また、着色剤含有層を被覆するような透明の層を有してもよい。
【0025】
着色層形成用組成物の塗布層は、印刷法、塗布法等により形成することができる。着色層形成用組成物の塗布層は、偏光板の2つの主面のうち、どちらに形成されてもよい。着色層形成用組成物の塗布層は、偏光板の表面上に直接形成してよい。印刷法の具体例としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷が挙げられる。印刷法による印刷を繰り返して行い、所望の厚みの着色層を得るようにしてもよい。印刷法に用いられる着色層形成用組成物は、例えば、着色剤、バインダー、溶媒、任意の添加剤等を含んでよい。着色剤は、例えばバインダー樹脂100質量部に対して50~200質量部含まれる。
【0026】
着色剤は、所望の色に応じて適宜選択され得る。着色剤の色としては、黒色、赤色、白色、紺色、銀色、金色などが例示される。着色剤としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、アセチレンブラック等のカーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリオン、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等の無機顔料;フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド、アニリンブラック等の有機顔料または染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢顔料(パール顔料)が挙げられる。
【0027】
バインダーとしては、塩素化ポリオレフィン(例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。バインダー樹脂は、熱重合性樹脂であっても、光重合性樹脂であってもよい。
【0028】
着色層形成用組成物の粘度は、例えば15000cP以上30000cPであり、20000cP以上であってもよい。このような着色層形成用組成物は、スクリーン印刷に好適に用いることができる。粘度は、BROOKFIELD社 デジタル粘度計(型式:DV2T)を用いて、温度25℃、回転数60rpmで測定できる。
【0029】
[4]偏光板
偏光板は、直線偏光板であってもよいし、円偏光板であってもよい。直線偏光板としては、二色性色素を吸着させた延伸フィルム若しくは延伸層、又は二色性色素を塗布し硬化させたフィルムを偏光子として含むフィルム等が挙げられる。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性有機染料には、C.I.DIRECT RED 39等のジスアゾ化合物からなる二色性直接染料、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料が包含される。
【0030】
偏光子として用いられる、二色性色素を塗布し硬化させたフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物又は二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布し硬化させて得られる層等の重合性液晶化合物の硬化物を含むフィルム等が挙げられる。二色性色素を塗布し硬化させたフィルムは、二色性色素を吸着させた延伸フィルム、又は延伸層に比べて、屈曲方向に制限がないため好ましい。
【0031】
直線偏光板は、偏光子のみから構成されてもよいし、偏光子に加えて、熱可塑性樹脂フィルム、基材、配向膜、保護層をさらに含んでいてもよい。直線偏光板の厚みは、例えば2μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上60μm以下である。
【0032】
(1)延伸フィルム又は延伸層を偏光子として備える直線偏光板
二色性色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として備える直線偏光板について説明する。偏光子である、二色性色素を吸着させた延伸フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。かかる偏光子をそのまま直線偏光板として用いてもよく、その片面又は両面に後述する熱可塑性樹脂フィルムを貼合したものを直線偏光板として用いてもよい。
【0033】
偏光子の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下である。偏光子の厚みを薄くすることは、偏光板の薄膜化に有利である。偏光子の厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。
【0034】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸系化合物、オレフィン系化合物、ビニルエーテル系化合物、不飽和スルホン系化合物、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物が挙げられる。
【0035】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%以下であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えばアルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000以上10000以下であり、好ましくは1500以上5000以下である。
【0036】
次に、二色性色素を吸着させた延伸層を偏光子として備える直線偏光板について説明する。偏光子である、二色性色素を吸着させた延伸層は、通常、上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布する工程、得られた積層フィルムを一軸延伸する工程、一軸延伸された積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させて偏光子とする工程、二色性色素が吸着されたフィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。必要に応じて、基材フィルムを偏光子から剥離除去してもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、後述する熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同様であってよい。
【0037】
延伸フィルム又は延伸層である偏光子は、その片面又は両面に熱可塑性樹脂フィルムが貼合されている形態で積層体に組み込まれてもよい。この熱可塑性樹脂フィルムは、偏光子用の保護層、又は位相差フィルムとして機能し得る。熱可塑性樹脂フィルムは、例えば鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂など)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂など)等のポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;又はこれらの混合物等からなるフィルムであることができる。
【0038】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、薄型化の観点から、通常300μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下であり、なおさらに好ましくは60μm以下であり、また、通常5μm以上であり、好ましくは20μm以上である。熱可塑性樹脂フィルムは位相差を有していても、有していなくてもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、例えば後述の貼合層を用いて偏光子に貼合することができる。
【0039】
熱可塑性樹脂フィルム上にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及び耐スクラッチ性を向上させた熱可塑性樹脂フィルムとすることができる。
【0040】
(2)二色性色素を塗布し硬化させたフィルムを偏光子として備える直線偏光板
二色性色素を塗布し硬化させたフィルムを偏光子として備える直線偏光板について説明する。偏光子として用いられる、二色性色素を塗布し硬化させたフィルムは、液晶性を有する二色性色素を含む組成物、又は二色性色素と液晶化合物とを含む組成物を基材に塗布し硬化して得られるフィルム等が挙げられる。当該フィルムは、基材を剥離して又は基材とともに直線偏光板として用いてもよく、又はその片面又は両面に熱可塑性樹脂フィルムを保護層として有する構成で直線偏光板として用いてもよい。
【0041】
基材は熱可塑性樹脂フィルムであってよい。基材及び厚みは、上述の熱可塑性樹脂フィルムの説明において例示したものと同一であってよい。基材は、少なくとも一方の表面にハードコート層、反射防止層、又は帯電防止層を有する熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。基材は、偏光子が形成されない側の表面のみに、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層等が形成されていてもよい。基材は、偏光子が形成されている側の表面のみに、ハードコート層、反射防止層、帯電防止層等が形成されていてもよい。
【0042】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、上記延伸フィルム又は延伸層を偏光子として備える直線偏光板と同一のものが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムは、例えば接着剤や粘着剤を用いて偏光子に貼合することができる。
【0043】
二色性色素を塗布し硬化させたフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚みは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0044】
二色性色素を塗布し硬化させたフィルムとしては、具体的には、特開2013-37353号公報や特開2013-33249号公報等に記載のものが挙げられる。
【0045】
偏光板は、直線偏光板と位相差フィルムとを備えた円偏光板であることができる。直線偏光板の吸収軸と位相差層の遅相軸とが所定の角度となるように直線偏光板と位相差層とが配置された円偏光板は、反射防止機能を発揮することができる。
【0046】
位相差層は、1層であってもよく2層以上であってもよい。位相差層は、その表面を保護するオーバーコート層、位相差層を支持する基材フィルム等を有していてもよい。位相差層は、例えばλ/4の位相差を与える位相差層(λ/4層)、λ/2の位相差を与える位相差層(λ/2層)及びポジティブC層等が挙げられる。位相差層は、好ましくはλ/4層を含み、さらに好ましくはλ/4層とλ/2層又はポジティブC層の少なくともいずれかとを含む。位相差層がλ/2層を含む場合、直線偏光板側から順にλ/2層及びλ/4層を積層する。位相差層がポジティブC層を含む場合、直線偏光板側から順にλ/4層及びポジティブC層を積層してもよく、直線偏光板側から順にポジティブC層及びλ/4層を積層してもよい。位相差層の厚みは、たとえば0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下であり、より好ましくは1μm以上6μm以下である。
【0047】
位相差層は、上述した熱可塑性樹脂フィルムの材料として例示した樹脂フィルムから形成してもよいし、重合性液晶化合物が硬化した層から形成してもよい。位相差層は、さらに配向膜を含んでいてもよい。位相差層は、λ/4層と、λ/2層及びポジティブC層とを貼合するための貼合層を有していてもよい。
【0048】
重合性液晶化合物を硬化して位相差層を形成する場合、位相差層は、重合性液晶化合物を含む組成物を基材フィルムに塗布し硬化させることにより形成することができる。基材フィルムと塗布層との間に配向膜を形成してもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、上記熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同じであってよい。重合性液晶化合物を硬化してなる層から位相差層を形成する場合、位相差層は、配向膜及び基材フィルムを有する形態で光学積層体に組み込まれてもよい。位相差層は、直線偏光板の視認側とは反対側の面に、後述する貼合層を介して貼合され得る。
【0049】
直線偏光板の吸収軸と位相差層の遅相軸とが所定の角度となるように、直線偏光板と位相差層とが配置された偏光板は、反射防止機能を有する、すなわち円偏光板として機能し得る。位相差層がλ/4層を含む場合、直線偏光板の吸収軸とλ/4層の遅相軸とのなす角度は、45°±10°であることができる。位相差層は正波長分散性を有していてもよく、逆波長分散性を有していてもよい。λ/4層は、好ましくは逆波長分散性を有する。直線偏光板と、位相差層とは貼合層により貼合されていてよい。
【0050】
偏光板は、2つの層を接合するための貼合層を含むことができる。貼合層は、粘着剤組成物又は接着剤組成物から構成される層である。
【0051】
粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂をベースポリマーとすることができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。
【0052】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸化合物、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート化合物、グリシジル(メタ)アクリレート化合物等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0053】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する金属イオン、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物又はポリオール、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が例示される。架橋剤は、好ましくはポリイソシアネート化合物である。
【0054】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有してもよい。必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤等を含有させてもよい。
【0055】
活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー;官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物等の(メタ)アクリル系化合物が挙げられる。粘着剤組成物は、活性エネルギー線重合性化合物を、粘着剤組成物の固形分100質量部に対して0.1質量部以上含むことができ、10質量部以下、5質量部以下又は2質量部以下含むことができる。
【0056】
光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。光重合開始剤は、1種又は2種以上を含むことができる。粘着剤組成物が光重合開始剤を含むとき、その全含有量は、例えば粘着剤組成物の固形分100質量部に対し0.01質量部以上3.0質量部以下であってよい。
【0057】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0058】
粘着剤組成物からなる貼合層は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。粘着剤組成物からなる貼合層は、粘着剤組成物を用いて形成された粘着シートを用いて形成することもできる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された塗布層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する貼合層とすることができる。
【0059】
粘着剤組成物からなる貼合層の厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、20μm以上であってもよい。貼合層の厚みは最大厚みとする。
【0060】
接着剤としては、例えば水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等のうち1種又は2種以上を組み合わせて形成することができる。水系接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等を挙げることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、上述の接着剤を挙げることができる。
【0061】
接着剤からなる貼合層の厚みは、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上である。接着剤からなる貼合層の厚みは、屈曲性を高める観点から好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。
【0062】
着色層形成用組成物の塗布層を硬化させる工程について説明する。着色層形成用組成物の塗布層を硬化させることにより、着色層を形成することができる。着色層形成用組成物の塗布層を硬化させる方法は、着色層形成用組成物の性質により適宜選択することができる。例えば着色層形成用組成物は、温度0℃以上で塗布層を乾燥させる操作を含んでよく、紫外線等の活性エネルギー線を塗布層に照射する操作を含んでもよい。着色層形成用組成物を乾燥させるために加熱処理を行ってもよく、例えば積層体を温度50℃~80℃の条件下で15分~120分間、好ましくは30分~60分間放置してもよく、より好ましくは温度70℃の条件下で30分~60分間放置してよい。
【0063】
粘着剤層及び支持体を積層体から剥離する工程について説明する。粘着剤層として温度感受性の粘着剤層を使用した場合、粘着剤層及び支持体を積層体から剥離する工程は、積層体を0℃未満に冷却する操作を含むことが好ましい。本発明に使用される支持体はせん断弾性率が高く、変形しにくいため、柔軟性に富む支持体よりも粘着剤層を剥離することが難しい。しかしながら、上述したような温度感受性の粘着剤層を用いた場合、粘着剤層を冷却することにより剥離力を小さくすることができるため、粘着剤層及び支持体を容易に積層体から剥離させることができる。
【0064】
積層体の冷却は、例えば-5℃~-50℃で行ってよく、好ましくは積層体を-10℃で1分~60分間、より好ましくは5分~30分間放置してよい。
【0065】
図1に本発明に係る着色層付偏光板の製造方法の一例を示す。まず、保護層11、偏光子10及び位相差層12がこの順に積層された円偏光板を準備する。円偏光板の両面はプロテクトフィルム20,21が貼付されていてもよい。円偏光板の保護層11側又は位相差層12側のいずれかのプロテクトフィルムを剥離し、剥離面に粘着剤層31及び支持体30を貼合する。もう一方のプロテクトフィルムを剥離し、剥離面にスクリーン印刷により着色層形成用組成物の塗布層40を形成する。乾燥によって着色層形成用組成物を硬化させる。次に積層体を冷却し、積層体から粘着剤層31及び指示体30を剥離する。以上により、着色層付偏光板を製造することができる。着色層が積層されていない偏光板の表面には、プロテクトフィルム22が積層されてよい。
【0066】
プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する機能を有し、通常、樹脂フィルムと貼合層との積層体であることができる。樹脂フィルムを構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であってよい。プロテクトフィルムは、例えば画像表示素子にプロテクトフィルムを備える偏光板が貼合された後に、貼合層ごと剥離除去される。樹脂フィルムは、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂などで構成することができる。
【0067】
プロテクトフィルムを構成する樹脂フィルムの厚みは、例えば5μm以上200μm以下であることができ、好ましくは10μm以上180μm以下であり、より好ましくは20μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは30μm以上120μm以下である。厚みが5μm以上の場合には、偏光板を十分に保護することができ、また取扱性の面でも有利である。厚みが200μm以下であれば、コストや、プロテクトフィルムのリワーク性の面で有利である。
【0068】
プロテクトフィルムの剥離力は、例えば0.1gf/25mm以上20gf/25mm以下であり、好ましくは10gf/25mm以下であり、より好ましくは5.0gf/25mm以下である。剥離力の下限が上記範囲以上であれば、偏光板の表面を十分に保護することができる。剥離力の上限が上記範囲以下であれば、偏光板からプロテクトフィルムを容易に剥離することができる。
【0069】
<表示装置>
着色層付偏光板は表示装置に用いることができる。着色層付偏光板は、例えば貼合層を介して画像表示素子に積層され、表示装置を構成する。表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等の画像表示装置が挙げられる。表示装置はタッチパネル機能を有していることが好ましい。着色層付偏光板は、屈曲又は折り曲げ等が可能なフレキシブルディスプレイ(スライド式画面拡張ディスプレイを含む。)に用いてもよい。
【0070】
表示装置における構成要素の積層順としては、例えば前面板/円偏光板/セパレータ、前面板/円偏光板/有機EL表示素子、前面板/円偏光板/タッチセンサパネル/有機EL表示素子等が挙げられる。
【0071】
本発明に係る表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【実施例0072】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0073】
[層の厚みの測定]
層の厚みは、接触式膜厚測定装置(株式会社ニコン製「MS-5C」)を用いて測定した。接着剤層、偏光子層及び配向膜の厚みは、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製「OLS3000」)を用いて測定した。
【0074】
[せん断弾性率の測定]
せん断弾性率は、粘弾性測定装置(Anton Paar社製「MCR-301」)を使用して温度25℃における値を測定した。
【0075】
[光学密度の測定]
着色層の光学密度(OD値)は、OD Meter(X-Rite社、Model名:361T)を用いて測定した。
【0076】
[着色層付偏光板のカール量の測定]
作製した着色層付偏光板を長辺の長さが150mm、短辺の長さが50mmとなる長方形状に切り出した。この切出片から、プロテクトフィルムを剥離してサンプルとした。切出片は、その長辺が偏光板のTD方向と45度の角度をなすように切り出した。サンプルを十分に除電した後、サンプルの凹面を上にして基準面(水平な台)に置き、サンプルの対角線のうち、その延在方向が上記MD方向に平行な方向に相対的に近い対角線上にある2つの角のそれぞれについて、基準面からの高さを測定し、その平均値をカール量とした。
【0077】
[着色層付偏光板の製造]
<実施例1>
(1)両面にプロテクトフィルムが積層された円偏光板を準備した。
第1プロテクトフィルム及び第2プロテクトフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを含んでいた。
この円偏光板の構成は、第1プロテクトフィルム/保護層/偏光子/位相差層/第2プロテクトフィルムであった。より具体的には、保護層から位相差層までの厚みは38μmであり、保護層として厚み20μmのアクリル系樹脂フィルム/ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸した厚み7μmの偏光子/厚み5μmの貼合層A/(厚み3μmのλ/4層)/厚み1μmの貼合層B/厚み2μmのポジティブC層を備えていた。なお、貼合層Aと貼合層Bでは、同じ接着剤を使用した。
(2)この円偏光板から第2プロテクトフィルムを剥離し、その剥離面に、粘着フィルム(ニッタ株式会社製「CS2325NA3」、厚み25μm)を介して、ガラス[厚み700μm、せん断弾性率70GPa]を貼合した。
(3)第1プロテクトフィルムを剥離し、着色層形成用組成物を円偏光板の周縁部に塗布した。得られた積層体を温度70℃の環境下に60分間置き、着色層形成用組成物を硬化させ、厚み5μmの着色層を有する積層体を得た。
【0078】
上記着色層形成用組成物として、下記成分を含有する組成物を用いた。
(着色剤含有層形成用組成物(黒色)の調製)
(a)インク成分
アセチレンブラック 15質量%
ポリエステル 75質量%
グルタル酸ジメチルエステル 2.5質量%
コハク酸 2質量%
イソホロン 5.5質量%
(b)硬化剤
脂肪族ポリイソシアネート 75質量%
酢酸エチル 25質量%
(c)溶媒
イソホロン
(d)調製方法
インク成分100質量部に対し硬化剤を10質量部、溶媒を10質量部添加し、攪拌して、着色剤含有層形成用組成物(黒色)を得た。
【0079】
(4)更に、積層体を温度-10℃の環境下に5分間置いたあと、粘着フィルムごとガラスを除去した。以上により、実施例1の着色層付偏光板を得た。なお、得られた着色層付偏光板を評価する際、偏光板を保護する目的で粘着剤層の剥離面にはプロテクトフィルムを貼合した。
【0080】
<実施例2>
保護層を厚み40μmのアクリル系樹脂フィルムに変更する以外は、実施例1と同じ手順で、着色層付偏光板を作製した。
【0081】
<実施例3>
実施例1と同じ手順で、着色層付偏光板を作製した。
【0082】
<実施例4>
実施例1(3)記載の工程において、得られた積層体を温度60℃の環境下に60分間置き、着色層形成用組成物を硬化させ、厚み2μmの着色層を有する積層体を得た以外は、本願実施例1と同じ手順で着色層付偏光板を作製した。
【0083】
<実施例5>
実施例1(3)記載の工程において、得られた積層体を温度60℃の環境下に60分間置き、着色層形成用組成物を硬化させ、厚み1.5μmの着色層を有する積層体を得た以外は、本願実施例1と同じ手順で着色層付偏光板を作製した。
【0084】
<比較例1>
実施例1(1)記載の両面にプロテクトフィルムが積層された円偏光板から第2プロテクトフィルムを剥離し、その剥離面に、粘着フィルム(アクリル系粘着剤、厚み15μm)を介して、PETフィルム[厚み38μm、せん断弾性率2.5GPa]を貼合した。更に、第1プロテクトフィルムを剥離し、着色層形成用組成物を円偏光板の周縁部に塗布した。得られた積層体を温度70℃の環境下に60分間置き、厚み2.5μmの着色層を有する着色層形成用組成物を硬化させた後、粘着フィルムごとPETフィルムを除去しようとしたものの、粘着フィルムが円偏光板と強く接合されていて剥離できなかった。
【0085】
<比較例2>
実施例1(1)記載の両面にプロテクトフィルムが積層された円偏光板から第2プロテクトフィルムを剥離し、その剥離面に、粘着フィルム(アクリル系粘着剤、厚み25μm)を介して、ポリイミドフィルム[厚み75μm、せん断弾性率8GPa]を貼合した。更に、第1プロテクトフィルムを剥離し、着色層形成用組成物を円偏光板の周縁部に塗布した。得られた積層体を温度70℃の環境下に60分間置き、厚み2.5μmの着色層を有する着色層形成用組成物を硬化させた後、粘着フィルムごとPETフィルムを除去することにより、着色層付偏光板を得た。偏光板を保護する目的で粘着剤層の剥離面にはプロテクトフィルムを貼合した。
【0086】
[着色層の光学密度]
実施例1~5、比較例1,2について、着色層について、着色層形成用組成物を硬化した後の光学密度を上記方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0087】
[評価]
実施例1~5、比較例1,2の着色剤付偏光板について、支持体から剥離できるか否かを確認し、剥離できた着色層付偏光板についてはカール量を測定した結果を表1に示す。比較例1は、せん断弾性率が10GPa未満のプロテクトフィルムをそのまま支持体として使用しまた0℃未満に冷却する工程を経ずに作製したところ、得られた着色剤付偏光板はロール状に巻いてしまい、カールを測定することができなかった。比較例2は、せん断弾性率が10GPa未満のプロテクトフィルムを支持体として使用したところ、得られた着色剤付偏光板はカールが大きく、偏光板の変形を抑制できなかった。
【0088】
【表1】
【符号の説明】
【0089】
10 偏光子、11 保護層、12 位相差層、20,21,22 プロテクトフィルム、30 支持体、31 粘着剤層、40着色層形成用組成物の塗布層。
図1