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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013370
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】太陽光発電装置用制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/67 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
G05F1/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117507
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】320011845
【氏名又は名称】アスムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174780
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】堀内 久司
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420BB03
5H420BB14
5H420CC03
5H420EB26
5H420FF03
5H420FF22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な制御で影の影響による発電効率の低下を抑制する太陽光発電装置用制御装置を提供する。
【解決手段】太陽光発電装置用制御装置Aを用いる太陽光発電装置Bは、複数のセル3が直列に接続された少なくとも1つのクラスタを有する太陽光パネル2と、パワーコンディショナ6と、MPPT制御装置と、を備えている。太陽光発電装置用制御装置は、最も低電圧側に位置する低電圧側セル3Laと、パワーコンディショナ6の陰極端子61との間に接続され、太陽光パネル2に電流を供給する電流供給部8と、電流供給部が供給する電流の電流値を制御する制御部7と、を備えている。制御部は、太陽光パネルに影が生じているか否かを判定する影判定部72と、影判定部により太陽光パネルに影が生じていると判定した場合に、電流供給部から、最適動作点における電流値よりも低い電流値の電流を供給するように制御する電流値制御部73と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池素子が直列に接続された少なくとも1つのクラスタを有する太陽光パネルと、パワーコンディショナと、MPPT制御装置と、を備えた太陽光発電装置に用いられる太陽光発電装置用制御装置であって、
最も低電圧側に位置する前記太陽電池素子と、前記パワーコンディショナの陰極との間に接続され、前記太陽光パネルに電流を供給する電流供給部と、
前記電流供給部が供給する電流の電流値を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記太陽光パネルに影が生じているか否かを判定する影判定部と、
前記影判定部により前記太陽光パネルに影が生じていると判定された場合に、前記電流供給部から、最適動作点における電流値よりも低い電流値の電流が供給されるよう制御する電流値制御部と、を備えた太陽光発電装置用制御装置。
【請求項2】
前記電流値制御部は、前記影判定部により前記太陽光パネルに影が生じていないと判定された場合に、前記電流供給部に対して、前記太陽光パネルの最大発電時における電流値以上の電流を供給するよう制御する請求項1記載の太陽光発電装置用制御装置。
【請求項3】
前記最も低電圧側に位置する太陽電池素子と前記パワーコンディショナの陰極との間の接続を、前記電流供給部を介した間接接続と、電流供給部をバイパスした直接接続と、に切り替える回路切替部を備え、
前記電流供給部は、前記最適動作点における電流値よりも低い電流値の電流を供給可能であり、
前記電流値制御部は、前記回路切替部に対して、前記影判定部により前記太陽光パネルに影が生じていないと判定された場合には前記直接接続となり、前記影判定部により前記太陽光パネルに影が生じていると判定された場合には前記間接接続となるよう制御する請求項1記載の太陽光発電装置用制御装置。
【請求項4】
前記太陽光発電装置は複数の前記太陽光パネルを備え、
前記複数の太陽光パネルのうち低電圧側の所定数の前記太陽光パネルの低電圧側電位と高電圧側電位との電位差を第1電圧とし、前記複数の太陽光パネルのうち残りの前記太陽光パネルの低電圧側電位と高電圧側電位との電位差を第2電圧として計測する電位差計測部を備え
前記影判定部は、前記第1電圧と前記第2電圧とに基づいて前記太陽光パネルに影が生じているか否かを判定する請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽光発電装置用制御装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、影の影響による太陽光発電装置の発電力の低下を抑制する太陽光発電装置用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出量の削減が叫ばれており、再生可能エネルギーに対する注目がより高まっている。特に太陽光発電は一般家庭にも普及し、身近な存在となっている。
【0003】
一般的な太陽光発電装置は、複数の太陽光パネルと、パワーコンディショナと、を備えている。太陽光パネルは、太陽光を受光すると発電する、多数の太陽電池素子(セル)から構成されている。太陽電池素子は直列に接続されており、発電された電力はパワーコンディショナへと送電される。太陽電池素子で発電された電気は直流であるため、パワーコンディショナによって交流に変換される。
【0004】
太陽光パネルは、発電時の動作電圧と電流との関係によって発電量が変動する性質を持っている。図5(a)は、I-V曲線と呼ばれ、太陽光パネル(太陽電池素子)の太陽光を受光して発電する際の電流と電圧との関係を表したものである。横軸は電圧であり、Vocは太陽光パネルに負荷を接続せずに開放した状態での電圧であり、開放電圧と呼ばれる。一方、縦軸は電流であり、Iscは太陽光パネルの出力端子間を短絡させたときに流れる電流値であり短絡電流と呼ばれる。電力Pは電圧Vと電流Iとの積で求められるため、このI-V曲線上の点をQ(i,v)とすると、点Qにおける発電電力pはi×vで表される。
【0005】
P=IVの関係を用いればI-V曲線から電圧Vと電力Pとの関係を表すP-V曲線を求めることができる。図5(b)は、図5(a)から求めたP-V曲線である。P-V曲線において、電力Pが最大となるときの点R(Vpm,Pmax)を最適動作点という。
【0006】
このような最適動作点は気象環境等によって変動するため、太陽光パネルの発電効率を高めるためにはそのときどきの最適動作点を探す必要がある。パワーコンディショナにはこの最適動作点に追従するよう動作させる機能を備えたものが実用化されている。
【0007】
最適動作点に追従するよう動作させる方法の一つに、MPPT(Maximum Power Point Tracking)と呼ばれる方法がある。詳細な制御方法の説明は省略するが、動作電圧を変動させつつそのときどきの最適動作点を探索し、その最適動作点で動作させる方法である。
【0008】
MPPTを用いた太陽光発電装置では、太陽光パネル上に物体の影がかかった際に発電効率が低下するという問題が知られている。図6は太陽光パネル上に物体の影がかかったときのP-V曲線である。この図に示されているように、太陽光パネル上に物体の影がかかると、多峰性(この例では双峰性)のP-V曲線となる。このとき、MPPTが最適動作点Rmaxではなく、他の極大点R’での電圧を動作電圧とする場合があり、この場合には発電効率が低下する。
【0009】
このような課題を解決するために、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1の技術では、太陽電池と、当該太陽電池の出力が最大となる最大電力点に対応する太陽電池の最適動作電流値に太陽電池電流値を追従させる、または前記最大電力点に対応する太陽電池の最適動作電圧値に太陽電池電圧値を追従させ、当該最大電力点で動作するように追従制御を行う電力調整装置と、を備え、前記太陽電池と、前記電力調整装置との間に設けられ、前記太陽電池の出力をスキャンし、複数のピークがある場合、最大のピークである前記最大電力点を検出し、前記電力調整装置の動作点が前記最大電力点で動作しているか否かを確認し、動作していない場合には、前記電力調整装置の動作可能な電圧範囲内で前記太陽電池が最適動作電圧となるように制御している。
【0010】
特許文献2の技術では、予め太陽光パネルにかかる影の態様を予測するための予測条件記憶しておき、その予測条件に基づいて影の態様およびP-V特性を予測し、その予測結果に基づいてMPPT制御を行う範囲を限定している。
【0011】
特許文献3の技術では、パワーコンディショナにMPPT制御を行う制御部が設けられており、制御部は、MPPT制御において、P-V曲線における値域の一方側から電力が増大する方向へアプローチする制御を行い、電力点が、最大電力点の候補である第1のピーク電力点に到達した場合に、その値域の範囲内で、離れた他の値に移動して再び電力が増大する方向へアプローチする制御を行うことにより、最大電力点の候補である他のピーク電力点を探索することを少なくとも1回実行するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2015-099447号公報
【特許文献2】特開2016-038816号公報
【特許文献3】特開2019-175278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1から3の技術では、影の影響によって太陽光パネルのP-V特性が多峰性となっている場合であっても、最適動作点で動作しやすくなっている。しかしながら、特許文献2,3の技術では、MPPT制御アルゴリズム自体を変更しているため、既存のパワーコンディショナに用いることができない。また、特許文献2の技術では、予測条件として記憶されていない落ち葉等の飛来物によって生じる影には十分に対応できない。一方、特許文献1の技術では、既存のMPPT制御機能を有するパワーコンディショナにも付加的に利用できるが、常に最適動作点を求めておく必要がある。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存の太陽光発電装置に利用でき、簡易な制御で影の影響による発電効率の低下を抑制できる太陽光発電装置用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、複数の太陽電池素子が直列に接続された少なくとも1つのクラスタを有する太陽光パネルと、パワーコンディショナと、MPPT制御装置と、を備えた太陽光発電装置に用いられる本発明に係る太陽光発電装置用制御装置の好適な実施形態の一つでは、最も低電圧側に位置する前記太陽電池素子と、前記パワーコンディショナの陰極との間に接続され、前記太陽光パネルに電流を供給する電流供給部と、前記電流供給部が供給する電流の電流値を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記太陽光パネルに影が生じているか否かを判定する影判定部と、前記影判定部により前記太陽光パネルに影が生じていると判定された場合に、前記電流供給部から、最適動作点における電流値よりも低い電流値の電流が供給されるよう制御する電流値制御部と、を備えている。
【0016】
この構成では、影判定部によって太陽光パネルに影が生じていると判定された際には、電流値制御部は電流供給部から、最適動作点における電流値よりも低い電流値の電流が供給されるよう制御する。これにより、太陽光パネルを流れる電流はその電流値に制限され、太陽光パネルから出力される電流値が低下する。この電流値の低下を検出したMTTP制御装置は、発電量が低下したと判断し、動作電圧をその低電流値に対応する電圧まで低下させる。この制御によって動作電圧が一旦大きく下がるため、この後のMPPT制御によって、真の最適動作点に収束させることができる。
【0017】
このような太陽光発電装置用制御装置を用いた場合には、太陽光パネルに影が生じていない場合には、その時点における最大の発電を行わせる必要がある。
【0018】
そのため、本発明に係る太陽光発電装置用制御装置の好適な実施形態の一つでは、前記電流値制御部は、前記影判定部により前記太陽光パネルに影が生じていないと判定された場合に、前記電流供給部に対して、前記太陽光パネルの最大発電時における電流値以上の電流を供給するよう制御する。
【0019】
この構成では、太陽光パネルに影が生じていない場合には、太陽光パネルの最大発電時における電流値以上の電流が供給されるため、太陽光パネルから出力される電流値は電流供給部からの電流値に制限されることなく、その時点における最大の発電を行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る太陽光発電装置用制御装置の好適な実施形態の一つでは、前記最も低電圧側に位置する太陽電池素子と前記パワーコンディショナの陰極との間の接続を、前記電流供給部を介した間接接続と、電流供給部をバイパスした直接接続と、に切り替える回路切替部を備え、前記電流供給部は、前記最適動作点における電流値よりも低い電流値の電流を供給可能であり、前記電流値制御部は、前記回路切替部に対して、前記影判定部により前記太陽光パネルに影が生じていないと判定された場合には前記直接接続となり、前記影判定部により前記太陽光パネルに影が生じていると判定された場合には前記間接接続となるよう制御する。
【0021】
この構成では、太陽光パネルに影が生じていない場合には、電流供給部がバイパスされ、最も低電圧側に位置する太陽電池素子とパワーコンディショナの陰極とが直接接続される。これにより、太陽光パネルはその時点における最大の発電を行うことができる。
【0022】
本発明に係る太陽光発電装置用制御装置の好適な実施形態の一つでは、 前記太陽光発電装置は複数の前記太陽光パネルを備え、前記複数の太陽光パネルのうち低電圧側の所定数の前記太陽光パネルの低電圧側電位と高電圧側電位との電位差を第1電圧とし、前記複数の太陽光パネルのうち残りの前記太陽光パネルの低電圧側電位と高電圧側電位との電位差を第2電圧として計測する電位差計測部を備え前記影判定部は、前記第1電圧と前記第2電圧とに基づいて前記太陽光パネルに影が生じているか否かを判定する。
【0023】
この構成では、複数の太陽光パネルを2つにグルーピングし、各々のグループの発電電圧を計測している。太陽光パネルの一部に影が生じていない状態では、各々の太陽光パネルは同程度の発電量である。そのため、例えば、各々のグループの発電電圧を各々グループの太陽光パネルの枚数で除した値(電圧値)を比較し、その値が大きく異なっていれば一部の太陽光パネルに影が生じていると判定することができる。このように、この構成では、一部の太陽光パネルに影が生じているか否かを簡易な構成で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】太陽光発電装置と、それに用いられる本発明に係る太陽光発電装置用制御装置と、の概略図である。
図2】本発明に係る太陽光発電装置用制御装置の詳細を表す図である。
図3】本発明に係る太陽光発電装置用制御装置の処理の流れを表すフローチャートである。
図4】チョッパ回路を用いた電流供給部の回路図である。
図5】(a)太陽光パネルのI-V特性を表すI-V曲線グラフ、(b)太陽光パネルのP-V特性を表すP-V曲線グラフである。
図6】太陽光パネルに影がかかった際のP-V特性を表すP-V曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を用いて、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明に係る太陽光発電装置用制御装置Aと、太陽光発電装置用制御装置Aを接続する太陽光発電装置Bの概略図である。なお、本発明における「太陽光発電装置用制御装置」とは太陽光発電装置Bと別体に構成された独立の装置のみでなく、太陽光発電装置Bに分離不能に接続された「回路」をも含んでいる。
【0026】
〔太陽光発電装置〕
本実施形態では、太陽光発電装置Bは、2枚の太陽光パネル2a,2bと、パワーコンディショナ6と、を備えている。なお、以下の説明において太陽光パネル2aと2bとを区別する必要がない場合には、太陽光パネル2と表記する。
【0027】
本実施形態における太陽光パネル2は、6×10のマトリクス状に配置された60個のセル(太陽電池素子)3を備えている。このうち、2×10のセル3をクラスタ21と称する。すなわち、各々の太陽光パネル2は3つのクラスタ21を備えている。当然ながら、セル3やクラスタ21の数は適宜変更可能である。以下の説明において、各クラスタを区別する際には、低電圧側(図中下側)からクラスタ21a,21b,21cと表記する。なお、以下の説明における低電圧側および高電圧側とは、パワーコンディショナ6の陰極側(図中下側)および陽極側(図中上側)を意味する。
【0028】
各々のクラスタ21では、横方向に配置されたセル3は直列に接続されており、図中右端の2つのセルも接続されている。したがって、同じクラスタ21に属する20個のセル3は直列に接続されている。以下の説明では、図1におけるクラスタ21の左端下側のセル3を始端セル31、左端上側のセル3を終端セル32と称する。すなわち、同じクラスタ21に属するセル3のうち、最も低電圧側に位置するセル32が始端セル31であり、最も高電圧側に位置するセル3が終端セル32である。また、各々の太陽光パネル2の最も高電圧側に位置するセル3を高電圧側セル3Hと称し、最も低電圧側に位置するセル3を低電圧側セル3Lと称する。各々の太陽光パネル2a,2bの高電圧側セル3Hおよび低電圧側セル3Lを区別する場合には、それぞれa,bを付記する。
【0029】
クラスタ21の終端セル32と、そのクラスタ21の高電圧側に隣接するクラスタ21の始端セルとが接続されている。例えば、クラスタ21aの終端セル32aと、クラスタ21bの始端セル31bとが接続されている。このように隣接するクラスタ21を接続することにより、太陽光パネル2に含まれる全てのセル3は直列接続となる。さらに、太陽光パネル2aの高電圧側セル3Haと、太陽光パネル2bの低電圧側セル3Lbと、が接続されている。このように隣接する太陽光パネル2を接続することにより、全ての太陽光パネル2aのセル3と太陽光パネル2bのセル3とが直列に接続される。
【0030】
各々のセル3の発電によって生じる電圧(以下、発電電圧と称する)は約0.5Vであるため、各々のクラスタ21の発電電圧は約10Vであり、各々の太陽光パネル2の発電電圧は約30Vとなる。したがって、本実施形態における太陽光発電装置Bの発電電圧は約60Vとなる。
【0031】
このように構成された太陽光パネル2に物体の影がかかったり、セル3が故障したりした際には、影がかかったり故障したりしたセル3の発電量が低下する。そのセル3の発電量の低下は、そのセル3が属するクラスタ21、さらには、太陽光パネル2全体の発電量の低下を招いてしまう。さらに、そのセル3が抵抗となるため、ホットスポットと呼ばれる高熱を発した状態となり、太陽光パネル2の故障の原因となる。
【0032】
このような状態を回避するために、バイパスダイオード4が設けられている。バイパスダイオード4は、各々のクラスタ21に並列となるように、始端セル31と終端セル32との間に接続されている。太陽光パネル2が正常に発電している状態では、バイパスダイオード4には逆方向電圧がかかるため、バイパスダイオード4には電流は流れず、電流はクラスタ21から高電圧側に隣接するクラスタ21に流れてゆく。しかし、影や故障等のためにクラスタ21に属する一部のセル3の発電量が低下した場合、例えば、クラスタ21cに属する一部のセル3の発電量が低下した場合には、クラスタ21a,21bが発電した電力によってバイパスダイオード4(この例ではバイパスダイオード4c)には順方向電圧がかかる。そうすると、クラスタ21bからの電流はクラスタ21cには流れず、バイパスダイオード4cから太陽光パネル2bに向けて流れる。すなわち、発電量が低下したクラスタ21cは電気的に切り離され、クラスタ21cの発電量の低下が太陽光パネル2全体に及ぶことを防止することができる。
【0033】
〔パワーコンディショナ〕
パワーコンディショナ6は、太陽光パネル2が発電した電気を家庭用の電気機器等で利用できるように変換する機器である。例えば、太陽光パネル2が発電した直流の電気を交流に変換する機能を有している。
【0034】
パワーコンディショナ6は、陰極端子61と陽極端子62とを備えている。太陽光パネル2aの低電圧側セル3Laは、本発明に係る太陽光発電装置用制御装置Aを介して陰極端子61に接続されている。一方、太陽光パネル2bの高電圧側セル3Hbは陽極端子62に接続されている。また、本発明におけるパワーコンディショナ6はMPPT制御を行うMPPT制御部63を備えている。したがって、本実施形態ではMPPT制御部63が本発明におけるMPPT制御装置に相当する。
【0035】
〔太陽光発電装置用制御装置〕
図2は、本実施形態における太陽光発電装置用制御装置Aの概略図である。本実施形態における太陽光発電装置用制御装置Aは、マイコン等から構成される制御部7と、制御部7からの制御電圧によって電流を制御する電流供給回路8(本発明における電流制御部の例)と、から構成されている。なお、図2においては、太陽光パネル2のセル3は一部を除いて省略している。
【0036】
制御部7は、電位差計測部71,影判定部72,電圧制御部73,影条件記憶部74を備えている。影条件記憶部74は、不揮発性記憶媒体から構成されており、太陽光パネル2が設置されている環境において、日時毎に太陽光パネル2に影が生じるか否かのデータ(以下、影条件と称する)を記憶している。影条件は、例えば、(月日,時間帯,影の有無)の3つの情報からなるデータの集合である。当然ながら、この影条件は太陽光パネル2が設置されている環境毎に異なるため、太陽光パネル2を設置した際に影条件記憶部74に記憶させる必要がある。また、周辺環境に変化があった際にも、影条件を更新することが望ましい。
【0037】
電位差計測部71は、各々の太陽光パネル2a,2bの発電電圧を計測する機能部である。本実施形態では、電位差計測部71には、太陽光パネル2aの高電圧側セル3Haからの出力電位(太陽光パネル2aの高電圧側電位および太陽光パネル2bの低電圧側電位に相当)と、太陽光パネル2bの高電圧側セル3Hbからの出力電位(太陽光パネル2bの高電圧側電位に相当)と、が入力されている。本実施形態における電位差計測部71は、ゼロ電位(太陽光パネル2aの低電圧側電位に相当)と太陽光パネル2aの高電圧側電位との電位差を計測することにより、太陽光パネル2aの発電電圧を求め、太陽光パネル2bの低電圧側電位と太陽光パネル2bの高電圧側電位との電位差を計測することにより、太陽光パネル2bの発電電圧を求めている。
【0038】
影判定部72は、図示しないタイマ等の計時手段から判定時における日時を取得し、取得した日時における影条件を影条件記憶部74から取得することにより、太陽光パネル2に影が生じているか否かを判定する。具体的には、影判定部72は、計時手段から取得した日時に該当する影情報を影条件記憶部74から取得し、その影情報に含まれる「影の有無」の値により太陽光パネル2に影が生じているか否かを判定する。
【0039】
上述の処理によって、影判定部72は太陽光パネル2に影が生じているか否かを判定するが、影は太陽光パネル2の周辺の固定的な環境(太陽光パネル2の周辺の建物、立木等)によって生じるだけでなく、雲や飛来物等によっても生じる場合がある。そのため、本実施形態における影判定部72は、影条件に基づいて影が生じていないと判定した場合であっても、電位差計測部71によって計測された電位差(発電電圧)に基づいて太陽光パネル2に影が生じているか否かを判定する。具体的には、以下の通りである。
【0040】
上述したように、電位差計測部71は、太陽光パネル2aの発電電圧(以下、第1電圧と称する)と、太陽光パネル2bの発電電圧の2つの電圧(以下、第2電圧と称する)を計測している。太陽光パネル2a、2bは同じスペックであるため、同じ条件で太陽光を受光していれば、第1電圧と第2電圧とは略等しくなる。しかしながら、一方の太陽光パネル2に影が生じた場合には、その太陽光パネル2の発電電圧は低下する。本実施形態における影判定部72は、この特性を用いて影の有無を判定している。すなわち、影判定部72は第1電圧と第2電圧との差異が閾値以上であれば、影が生じていると判定する。
【0041】
電圧制御部73は、影判定部72の判定結果に応じて、電流供給回路8に印加する電圧値を変動させ、電流供給回路8が太陽光パネル2に供給する電流値を制御する。したがって、本実施形態では電圧制御部73が本発明における電流値制御部に相当する。詳細は後述する。
〔電流供給回路〕
【0042】
電流供給回路8は、パワーコンディショナ6の陰極端子61と、太陽光パネル2aの低電圧側セル3Laとの間に設けられた電気回路であり、電圧制御部73によって印加される電圧値に応じて、太陽光パネル2aに流す電流値を制御する。本実施形態における電流供給回路8は、スイッチング電源SW,D/DコンバータDD,オペアンプOP,NPN型トランジスタT,NチャンネルFETトランジスタFET,コンデンサC,抵抗R1,R2,R3,R4,ダイオードD1,D2,D3等から構成されている。具体的な回路構成は以下の通りである。なお、スイッチング電源SWの入力端子(図中左側の2つの端子)には、図示しない交流電源が接続されている。この交流電源として、例えば、パワーコンディショナ6を用いることができる。
【0043】
パワーコンディショナ6の陰極端子61は、配線W1によってD/DコンバータDDの-Vin端子(図中左側下の端子)に接続されている。この配線W1には、スイッチング電源SWの-Vout端子(図中右側下の端子)からの配線が接続されている。
【0044】
スイッチング電源SWの+Vout端子(図中右側上の上の端子)は、配線W2によってD/DコンバータDDの+Vin端子(図中左側上の端子)に接続されている。また、この配線W2にはD/DコンバータDDのOn/Off端子(図中左側真ん中の端子)からの配線も接続されている。
【0045】
D/DコンバータDDの-Vout端子(図中右側下の端子)は配線W3によってオペアンプOPの負電源端子(図中下側の端子)に接続されている。一方、D/DコンバータDDの+Vout端子(図中右側上の端子)は配線W4によってオペアンプOPの正電源端子(図中上側の端子)に接続されている。また、配線W3と配線W4とはコンデンサCを介した配線により接続されている。
【0046】
配線W2から分岐する配線W5は抵抗R4(0.1Ω)を介してトランジスタTのコレクタ端子(図中下側の端子)に接続されている。一方、トランジスタTのエミッタ端子(図中上側の端子)は配線W6によって太陽光パネル2aの低電圧側セル3Laに接続されている。また、トランジスタTのベース端子(図中右側の端子)は配線W7によってFETトランジスタFETのソース端子(図中上側の端子)に接続されている。配線W5と配線W6とは、ダイオードD1,D2,D3介した配線により接続されている。また、配線W6と配線W7とは抵抗R3(10KΩ)を介した配線により接続されている。
【0047】
FETトランジスタFETのドレイン端子(図中下側の端子)は、抵抗R2(1MΩ)を介して、配線W8によってオペアンプOPの非反転入力端子(図中右側上の端子)に接続されている。また、FETトランジスタFETのゲート端子(図中右側の端子)は配線W9によってオペアンプOPの出力端子(図中左側の端子)に接続されている。
【0048】
オペアンプOPの反転入力端子(図中右側下の端子)は配線W10によって電圧制御部73に接続されている。配線W10は途中で分岐し、抵抗R1を介して接地されている。
〔制御処理〕
【0049】
以下に図3のフローチャートを用いて、本実施形態における太陽光発電装置用制御装置Aの制御処理の流れを説明する。なお、この制御処理は所定の時間間隔ごとや任意のタイミングで繰り返し実施されるものであるが、ここでは1回の制御処理について説明する。
【0050】
先ず、影判定部72は計時手段等から、処理を実行する時点の日時を取得する(#01)。そして、取得した日時に対応する影条件を影条件記憶部74から取得する(#02)。具体的には、本実施形態における影条件は(月日,時間帯,影の有無)の3つの情報であるため、影判定部72は、記憶されている複数の影条件から、取得した日時と一致する「月日」と「時間帯」の値を持つ影条件を取得する。そして、取得した影条件の「影の有無」の値によって、固定的な周辺状況によって太陽光パネル2に影が生じているか否かを判定する。ここで、「影の有無」の値が「影あり」を示すものであれば(#03のYes分岐)、電圧制御部73は電圧制御を行う(#06)。電圧制御の詳細は後述する。
【0051】
一方、「影の有無」の値が「影なし」を示すものであれば(#03のNo分岐)、影判定部72は飛来物や雲等の影響によって影が生じていないかを判定する。具体的には、影判定部72は、電位差計測部71に太陽光パネル2aの第1電圧および太陽光パネル2bの第2電圧を計測するよう指示を出し(#04)、第1電圧と第2電圧との差異が閾値よりも大きいか否かを判定する(#05)。第1電圧と第2電圧との差異が大きいということは、太陽光パネル2aの発電量と太陽光パネル2bの発電量との差異が大きいことを示しており、いずれかの太陽光パネル2に影が生じている可能性がある。したがって、第1電圧と第2電圧との差異が閾値よりも大きい場合には(#05のYes分岐)、電圧制御部73は電圧制御を行う(#06)。
【0052】
この影判定部72による影判定処理は、3枚以上の太陽光パネル2を備えている場合であっても適用することができる。太陽光パネル2が3枚以上の場合には、低電圧側の所定枚数の太陽光パネル2の発電電圧をその枚数で除したものを第1電圧、高電圧側の残りの太陽光パネル2の発電電圧をその枚数で除したものを第2電圧とすれば、#05の判定方法をそのまま用いることができる。
【0053】
この電圧制御は、MPPT制御部63が動作電圧を一時的に低下させることを目的としているため、電圧制御部73は、電圧制御を行った後は太陽光発電装置Bの動作電圧を監視する。そして、動作電圧が低下したことを検出すると(#07のYes分岐)、電圧制御を解除する(#08)。なお、図2には示していないが、電圧制御部73には太陽光発電装置Bの動作電圧を監視するために、その動作電圧が入力されている。
【0054】
次に、電圧制御部73の電圧制御による電流供給回路8の動作、および、電流供給回路8の電流制御による太陽光発電装置Bの動作電圧(動作点)の変化について説明する。
【0055】
先ず、電流供給回路8の動作について説明する。上述したように、オペアンプOPの反転入力端子は電圧制御部73に接続されており、電圧制御部73からの電圧が印加されている。ここで、電圧制御部73の印加電圧をvとする。オペアンプOPは、反転入力端子に電圧vが印加されると非反転入力端子の電圧もvとなるように出力電圧を変動させる。オペアンプOPの出力端子はFETトランジスタFETのゲート端子に接続されているため、オペアンプOPの出力電圧の変動により、FETトランジスタFETのゲート電圧が変動する。FETトランジスタFETのゲート電圧が変動すると、FETトランジスタFETのソース電流が変動する。FETトランジスタFETのソース端子はトランジスタTのベース端子に接続されているため、FETトランジスタFETのソース電流の変動はトランジスタTのベース電流の変動となり、トランジスタTのエミッタ電流が変動する。ここで、エミッタ電流は抵抗R4を流れる電流である。
【0056】
ここで、抵抗R4を流れる電流値を考える。オペアンプOPの非反転入力端子の電圧と反転入力端子の電圧とが同じになった状態(イマジナリショート)の抵抗R4を流れる電流値は、抵抗R4の抵抗値が0.1Ωであるため、v/(-0.1)[A]となる。本実施形態では、電圧制御部73は、電圧制御を行うとき(影検出時)には-0.2V、電圧制御を行わないとき(通常時)には-1Vの電圧を印加している。したがって、エミッタ電流は、太陽光パネル2a,2bに影が生じている場合には-0.2/(-0.1)=2[A]、影が生じていない場合には-1/(-0.1)=10[A]となる。このエミッタ電流は太陽光パネル2aに流れる。
【0057】
太陽光パネル2を流れる電流は、このエミッタ電流の電流値に制限される。すなわち、太陽光パネル2に影が生じていない場合には、太陽光パネル2には10Aの電流が流れることができるが、太陽光パネル2に影が生じている場合には、太陽光パネル2には2Aの電流しか流れることができない。そのため、影判定部72によって影が生じている判定され、電圧制御部73によって電圧制御が実行されると、太陽光パネル2の発電電流値が2Aに制限される。この発電電流値の低下を検知したパワーコンディショナ6のMPPT制御部63は、その電流値に適合した動作電圧に変化させる。動作電圧は一時的に大きく低下するが、その後、その動作電圧から山登り法等を用いて最適動作点に到達する。これにより、例えば、図6のP-V曲線において、影の影響によって動作点R’で動作していた場合であっても、上述の制御によって最適動作点Rmaxで動作させることができる。
【0058】
本実施形態では電流供給回路8から太陽光パネル2に供給される電流値を上述の値としているが、これらの値は使用する太陽光パネル2の仕様に応じて定めればよい。例えば、影が検出されない場合の電流値(本実施形態では10[A])は太陽光発電装置Bの最大発電電流以上とすることが望ましい。一方、影が検出された場合の電流値(本実施形態では2[A])は、最適動作点の電流値よりも十分小さい値とすることが望ましい。
【0059】
〔電流供給部の他の実施形態〕
当然ながら、本発明に係る電流供給部は上述の電流供給回路8以外にも様々に構成することができる。図4はチョッパ回路を用いた電流供給回路9(本発明における電流供給部の例)の回路図である。この電流供給回路9は、フォトカプラPC,スイッチング電源SW等を用い、低電流(本実施形態では2[A])の電流を生成するものである。スイッチング電源SWには、上述の電流供給回路8と同様に交流電源(図示せず)が接続されている。また、本実施形態では、フォトカプラPCとして東芝デバイス&ストレージ株式会社製のTLP250を用いている。なお、フォトカプラPCの周囲に付している数字は端子番号であり1番から8番端子はそれぞれ、N.C.,アノード,カソード,N.C.,GND,Vo,Vo,Vccである。
【0060】
この電流供給回路9も上述の電流供給回路8と同様に、パワーコンディショナ6の陰極端子61と太陽光パネル2aの低電圧側セル3Laに接続され、電圧制御部73からの制御電圧が入力されている。また、この実施形態では制御部7はPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力するPWM信号出力部75を備えており、PWM信号出力部75からの信号も電流供給回路9に入力されている。電流供給回路9は、電圧制御部73およびPWM信号出力部75からのPWM信号に基づいて、低電流(本実施形態では2[A])を発生させる。したがって、この電流供給回路9を用いた実施形態においては、電圧制御部73およびPWM信号出力部75が本願発明における電流値制御部に相当する。また、この電流供給回路9には、電圧制御部73からの電圧によって制御されるリレーRL(本発明における回路切替部の例)が接続されている。
【0061】
具体的には、影判定部72によって影が生じていないと判定された際には、電圧制御部73からの制御電圧によってリレーRLがOFF(図の状態)となり、1番端子と5番端子とが導通状態となる。この状態では、チョッパ回路はバイパスされ、パワーコンディショナ6の陰極端子61と太陽光パネル2aの低電圧側セル3Laとが直接接続される。一方、影判定部72によって影が生じていると判定された際には、電圧制御部73からの制御電圧によってリレーRLがONとなり、10番端子と5番端子とが導通状態となる。このとき、チョッパ回路からの低電流は太陽光パネル2aの低電圧側セル3Laへと流れる。これにより、上述の電流供給回路8と同様の作用効果を奏する。なお、チョッパ回路の具体的な動作については省略する。
【0062】
このように、本発明に係る太陽光発電装置用制御装置Aを用いれば、太陽光パネル2に影が生じた際に、太陽光パネル2を流れる電流値を制御することにより、従来のMPPT制御を用いて最適動作点で動作させることができ、発電量の低下を抑制することができる。
【0063】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態では、パワーコンディショナ6にMPPT機能を持たせたが、MPPT機能はパワーコンディショナ6とは別体の装置としても構わない。
【0064】
(2)上述の実施形態では、電流供給回路に印加する電圧を制御することによって電流供給回路から供給される電流を制御したが、電流供給回路の構成によっては他の方法を用いて電流供給回路を制御しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、MPPT制御機能を有する太陽光発電装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
A:太陽光発電装置用制御装置
B:太陽光発電装置
RL:リレー(回路切替部)
2,2a,2b:太陽光パネル
21,21a,21b,21c:クラスタ
3:セル
3La:低電圧側セル
6:パワーコンディショナ
62:陽極端子
63:MPPT制御部(MPPT制御装置)
7:制御部
71:電位差計測部
72:影判定部
73:電圧制御部
73:電流値制御部
74:影条件記憶部
8:電流供給回路(電流供給部)
9:電流供給回路(電流供給部)


図1
図2
図3
図4
図5
図6